JP2004186056A - 固体電解質型燃料電池及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電極層と電解質層との間の層間剥離が生じることがほとんどなくなって、高温使用時における耐熱性及び昇温・降温時における耐熱衝撃性に優れているうえ、実効的な電極面積が増して発電特性が向上した固体電解質型燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質層2を一方の電極層3と他方の電極層4とで狭持した積層構造をなし、一方の電極層3の対向面3aには、この対向面3a上に直接設置された互いに略平行をなす複数の第1線状体5と、この第1線状体5及び対向面3a上で第1線状体5に対して適宜角度をもって設置された互いに略平行をなす複数の第2線状体6とから成る凹凸形成用の網目状構造層7を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】電解質層2を一方の電極層3と他方の電極層4とで狭持した積層構造をなし、一方の電極層3の対向面3aには、この対向面3a上に直接設置された互いに略平行をなす複数の第1線状体5と、この第1線状体5及び対向面3a上で第1線状体5に対して適宜角度をもって設置された互いに略平行をなす複数の第2線状体6とから成る凹凸形成用の網目状構造層7を設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、電気自動車の駆動源として用いられる固体電解質型燃料電池及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記した燃料電池は、化学エネルギーを電気化学的な反応により電気エネルギーに変換するものである。固体電解質型燃料電池の場合、燃料極、固体電解質及び空気極の各層を積層した3層構造をなし、これを燃料電池の発電部として外部から水素や炭化水素等の燃料ガスを供給し、空気極には空気等の酸化剤ガスを供給して電気を発生させる。
【0003】
固体電解質には、一般的にイットリア(Y2O3)や、酸化ネオジウム(Nd2O3)や、酸化サマリウム(Sm2O3)や、酸化ガドリニウム(Gd2O3)や、酸化スカンジウム(Sc2O3)などを固溶した安定化ジルコニアが用いられるほか、セリア(CeO2)系固溶体や、酸化ビスマスや、ランタンガレート(LaGaO3)などの材料が用いられる。この固体電解質層にとって特に重要なことは、電子を通さずにイオンを通す性能であり、酸素イオンが発電の導体である場合には、酸素イオンの導電特性が高いことが望まれる。また、固体電解質層の重要な特性としては、ガス不透過性であることが挙げられる。
【0004】
空気極には、一般的に銀(Ag)や、白金(Pt)などの金属系材料が用いられるほか、LaSrMnOやLaSrCoOに代表されるペロブスカイト構造の酸化物材料が用いられる。この空気極に必要な特性としては、酸化に強く、酸化ガスを透過し、電気伝導度が高く、酸素分子を酸素イオンに変換する触媒作用に優れていることが挙げられる。
【0005】
一方、燃料極には、ニッケル(Ni)や、ニッケルと固体電解質のサーメットなどが一般的に用いられる。この燃料極に要求される特性としては、還元雰囲気に強く、燃料ガスを透過し、電気伝導度が高く、水素分子をプロトンに変換する触媒作用に優れていることが挙げられる。
【0006】
固体電解質型燃料電池は、上記した特性をもった膜によって構成され、一般的な固体電解質型燃料電池の単位発電セルの場合、固体電解質層を空気極と燃料極とによって挟持した3層構造が採用される、すなわち、異なる材料から成る3つの層を積層した3層構造が採用される。このような固体電解質型燃料電池は、使用される環境によって高温にさらされる場合もあり、各層を構成する材料の熱膨張率の違いに起因する層間剥離が発生する恐れを有している。
【0007】
そこで、このような層間剥離に対処するため、例えば、特開平7−220730号公報には、電解質の表面に空隙を形成し、これらの空隙に固体電解質を構成する材料、若しくは、固体電解質を構成する材料と電極を構成する材料との混合物を配置した構造が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した従来の固体電解質型燃料電池において、空気極及び燃料極がいずれも電解質によって隔離されているため、各電極に対して集電機構をそれぞれ設置しなくてはならず、集電効率が悪いという問題があるうえ、上記した従来の固体電解質型燃料電池は、スクリーン印刷などの湿式法による製造を前提としているため、セルの微細化、薄膜化及び軽量化がいずれも困難であるという問題を有していた。
【0009】
また、頻繁な起動停止を伴う自動車等の移動体に搭載する場合、固体電解質型燃料電池のセル自体が軽量であることが必須であるのに加えて、熱耐久性及び耐熱衝撃性を向上させる必要があり、特に、上記固体電解質型燃料電池は熱伝導性の低いセラミック材料から構成されているため、頻繁な起動停止を伴う温度変化への応答を向上させるためには、セルを構成する各部位が軽薄短小であることが望ましく、これを実現するためには、電解質層のクラック又は電解質層と電極層との界面での剥離を防止することが極めて重要であり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、電極層と電解質層との間の層間剥離が生じることがほとんどなくなって、高温使用時における耐熱性及び昇温・降温時における耐熱衝撃性に優れているうえ、実効的な電極面積が増して発電特性が向上した固体電解質型燃料電池及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、電解質層を一方の電極層と他方の電極層とで狭持した積層構造をなす固体電解質型燃料電池において、電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面には、この対向面上に直接設置された互いに略平行をなす複数の第1線状体と、この第1線状体及び上記対向面上で第1線状体に対して適宜角度をもって設置された互いに略平行をなす複数の第2線状体とから成る凹凸形成用の網目状構造層を設けた構成としている。
【0012】
【発明の効果】
本発明の固体電解質型燃料電池では、上記した構成としているので、実効的な電極面積が拡大されて、電池の発電特性を高めることができ、加えて、接合面積の増大によって層間の密着性が向上し、電解質層と電極層との界面におけるクラックや亀裂の発生及び電解質層や電極層の割れをいずれも回避することができるので、熱耐久性や耐熱衝撃性を向上させることが可能であり、これにより、起動停止が迅速かつ頻繁に行われる固体電解質型燃料電池、すなわち、自動車等の移動体に搭載される固体電解質型燃料電池として非常に好適なものとなるという極めて優れた効果がもたらされる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の網目状構造層は、電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面に対して、マスク越しにスパッタリングなどによって成膜することで容易に形成することができる。すなわち、請求項5に記載しているように、電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面に縞状のパターンを有するマスクを設置して、このマスク越しに成膜することで複数の第1線状体を形成し、この後、上記マスクを適宜角度回転させるのに続いて、このマスク越しに成膜することで複数の第2線状体を形成することによって、網目状構造層を容易に形成することができる。この際、エッチングや研削などの加工を必要としないので、簡便かつ精度の高い構造とすることが可能である。
【0014】
上記網目状構造層は、表面に凸部を有する凹凸形成用としているため、電解質と電極層との接触面積を増加させることができ、この接触面積の増加は、電解質及び電極層の層間の密着性を向上させて、高温使用時における電解質材料と電極材料との各熱膨張率の違いに起因する層間剥離を防止する。
【0015】
この場合、網目状構造層の網目を規則的に形成することにより、発生した応力を等方的に分散させることができ、対向面に凹凸をランダムに形成した場合に懸念される応力集中などによる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0016】
ここで、線状体の層数は2層以上とする。線状体の層数を2層とする場合において、いかなる方向の応力にも対応し得るようにするためには、第1線状体と第2線状体とを互いにほぼ90°の角度を違えて積層することが効果的である。また、3層以上とする場合は、線状体の角度をランダムに違わせるよりも、その層数によって規則的な配置とすることが望ましく、このような線状体の規則的な配置により、中間層部全体、すなわち、燃料電池全体での応力分散効果を発生させることができる。
【0017】
例えば、中間層を3層設ける場合、2層目はその線状体が1層目の線状体に対してほぼ60°傾くようにして積層し、3層目はその線状体が1層目の線状体に対してほぼ120°(2層目の線状体に対してはほぼ60°)傾くようにして積層すると、全体では正六角形の各頂点に縞が向くように設置されることとなって、応力の分散を効果的に発現でき、これと同様にして、正八角形等の正多角形の各頂点に縞が向くように設置しても効果的である。
【0018】
また、線状体の交点である凸部は、交点以外の線状体の領域に比べて大きな突起となっており、これらの突起自身の体積が小さいため、熱膨張による変形量が小さく、したがって、これらの部分での剥離は発生しにくい。
【0019】
この場合、線状体の角部や上記凸部が応力集中場となって、亀裂等の原因となることが懸念される。しかし、線状体の角部に関しては、例えば、粘度の低いペーストで線状体を形成する、若しくは、線状体の形成時において電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面とマスクとの距離を離して斜め方向からスパッタリングなどで成膜することによって、緩やかな角部を形成し得る。一方、線状体の交点である凸部に関しては、線状体の幅や厚さを最適化することで凸部の大きさを変更可能であり、したがって、線状体や交点の凸部の形状を制御することにより、これらが原因となる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0020】
前述したように、電極と電解質との界面に線状体による凹凸が形成されており、交点においても凸部が形成されている。つまり、電極と電解質との界面には大きな凹凸が形成されていることから、界面長が長くなっていると考えられ、この界面長の拡大は実効的な電極面積を広げるのと同義であることから、電池の発電特性を高めることができる。
【0021】
本発明の固体電解質型燃料電池における網目状構造層は、電極層と電解質層との共相もしくは電極層と電解質層との中間の熱膨張係数を持つ。例えば、空気極の電極材料にLaMnO3を用い、電解質の材料にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた場合において、電極材料と電解質材料との中間の熱膨張係数を持つ材料とは、Laよりもイオン半径が小さい元素を固溶させたLa1−XCaXMnO3となる。ここで、中間の熱膨張係数とは、10.2〜11.2×10−6K−1と定義する。
【0022】
また、例えば、空気極の電極材料にLaMnO3を用い、電解質の材料にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた場合において、電極材料と電解質材料との共相とはLaMnO3とYSZとの混合物となり、ここに共相とは電極材料と電解質材料との混合物と定義する。これらの材料を網目状構造層に利用すれば、電極層と網目構造層との熱膨張差が小さくなると共に網目構造層と電解質層との熱膨張差も小さくなることから、昇降温時などの熱衝撃が加わった際の層間剥離を防止することができる。
【0023】
本発明の請求項4の固体電解質型燃料電池における網目状構造層は、電解質と電極との界面近傍に空隙を有している。これは隣接する線状体同士の間隔を狭めて形成し、その上から粘度の高いペーストを塗布する、又はグリーンシートを形成すれば、線状体の間に上層部の材料が入り込まずに空隙が形成されることとなる。これらの空隙を設けたことにより、界面近傍の燃料ガスや空気の拡散性が向上して反応抵抗の低下が抑制され、加えて、電気化学反応により燃料極近傍で生成される水蒸気などの反応生成物の排出が促進されることとなる。
【0024】
本発明の固体電解質型燃料電池において、電解質として機能する材料に関しては、微結晶構造、柱状構造、ラメラ構造などの緻密性の高い構造を有することが要求され、一方、電極として機能する材料に関しては、多孔質、柱状構造、ラメラ構造などのガス透過性を持つ構造を有することが要求される。
【0025】
本発明の固体電解質型燃料電池において、固体電解質として、安定化ジルコニア(YSZ)、セリア含有固溶体、ランタンガレートなどを用いることができ、空気極として、LSM(LaSrCoO)、LSC(LaSrCoO)、Ar、Ptなどを用いることができ、燃料極として,Ni、Niサーメットなどを用いることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0026】
本発明の実施態様として、電解質膜厚を1μm〜5mmとし、線状体の線幅を1μm〜10mmとし、線状体の高さを1μm〜10mmとする。
【0027】
上記電解質、電極、電解質材料と電極材料との共相、及び電解質材料と電極材料との中間の熱膨張係数を持つ材料から成る線状構造層の形成方法としては、湿式成膜法及び乾式成膜法がある。湿式成膜法としては、例えば、スラリーコーティング法やテープキャスティング法があり、一方、乾式成膜法としては、例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、プラズマスプレー法、イオンプレーティング法、フレームスプレー法、プラズマジェットトーチ法、EVD法、CVD法がある。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す実施例において、空気極材料と燃料極材料は、構造上入れ替わっても燃料電池としての機能には差異はない。
【0029】
[実施例1]
図1は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池の一実施例を示している。
【0030】
図1(a)に部分的に示すように、この固体電解質型燃料電池1は、電解質層2を空気極として機能する一方の電極層3と燃料極として機能する他方の電極層4とで狭持した積層構造をなしており、空気極として機能する一方の電極層3の電解質層2との対向面3aには、図1(b)にも示すように、この対向面3a上に直接設置した互いに略平行をなす複数の第1線状体5と、この第1線状体5及び上記対向面3a上で第1線状体5に対してほぼ直交するようにして配置した互いに略平行をなす複数の第2線状体6とから成る凹凸形成用の網目状構造層7が設けてある。
【0031】
この固体電解質型燃料電池1を製造するに際しては、まず、空気極として機能する一方の電極層3(LaMnO3 層)上に縞状のパターンを有する金属製マスクを設置して、このマスク越しにLaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで上記対向面3aに互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成する。
【0032】
次いで、上記マスクを上記対向面3a上においてほぼ90°回転させるのに続いて、このマスク越しに上記第1線状体5及び対向面3aにLaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成することによって、凹凸形成用のLaMnO3 から成る網目状構造層7をLaMnO3 から成る空気極としての電極層3上に形成する。
【0033】
そして、このLaMnO3 から成る網目状構造層7の全面に対して、YSZをスパッタリングにより成膜して電解質層2を積層し、続いて、この電解質層2の全面に対して、NiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜して燃料極として機能する他方の電極層4を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0034】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1に対して、室温から1000℃までの範囲で昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、網目状構造層7を設けない場合と比べて約10%耐剥離性が向上したことを確認した。
【0035】
[実施例2]
図2は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池の他の実施例を示している。この実施例において、燃料極として機能する他方の電極層4(NiO及びYSZのサーメット層)上にYSZをスクリーン印刷して1400℃にて焼成を行うことで電解質層2を形成した。
【0036】
この後、電解質層2上にマスクを設置して、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、凹凸形成用の網目状構造層7を形成した。
【0037】
そして、電解質層2及び網目状構造層7の全面に対して、LaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで空気極として機能する一方の電極層3を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0038】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1に対して、室温から1000℃までの範囲で昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、網目状構造層7を設けない場合と比べて10%耐剥離性が向上したことを確認した。
【0039】
[実施例3]
図3は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示している。この実施例において、空気極として機能する一方の電極層3(LaMnO3層)上に縞状のパターンを有する金属製マスクを設置して、このマスク越しにLaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにLaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成することによって、凹凸形成用のLaMnO3 から成る網目状構造層7をLaMnO3 から成る空気極としての電極層3上に形成した。
【0040】
次に、このLaMnO3 から成る網目状構造層7上に、YSZをスクリーン印刷して1400℃にて焼成を行うことで電解質層2を形成し、次いで、この電解質層2上にマスクを設置して、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、凹凸形成用の網目状構造層7を形成し、さらに、NiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜して燃料極として機能する他方の電極層4を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0041】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1に対して、室温から1000℃までの範囲で昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、網目状構造層7を設けない場合と比べて30%耐剥離性が向上したことを確認した。
【0042】
[実施例4]
図4は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示している。この実施例において、YSZから成る電解質層2の表面上にマスクを設置して、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、凹凸形成用の網目状構造層7を形成した後、この電解質層2及び網目状構造層7の全面に対して、LaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで空気極として機能する一方の電極層3を積層した。
【0043】
次に、YSZから成る電解質層2の裏面上にマスクを設置して、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、凹凸形成用の網目状構造層7を形成した後、この電解質層2及び網目状構造層7の全面に対して、NiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜して燃料極として機能する他方の電極層4を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0044】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1に対して、室温から1000℃までの範囲で昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、網目状構造層7を設けない場合と比べて30%耐剥離性が向上したことを確認した。
【0045】
[実施例5]
図5は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示している。図5(b)に示すように、燃料極として機能する他方の電極層4(NiO及びYSZのサーメット層)上に縞の間隔が狭い、すなわち、開口の間隔が狭いマスクを設置して、このマスク越しにNiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクをほぼ90°回転させて、このマスク越しにNiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、他方の電極層4上に凹凸形成用の網目状構造層7を形成した。
【0046】
次いで、図5(a)に示すように、NiO及びYSZのサーメットから成る網目状構造層7上に、YSZのペーストをスクリーン印刷して焼成させて電解質層2を形成する。
【0047】
この場合、上記マスクを使用したことにより、網目状構造層7の網目が細かく形成されているので、第2線状体6が電解質層2に直に接触する部位において、第2線状体6における第1線状体5とは反対側の面と電解質層2との間には、空隙8が形成されるようになっている。
【0048】
この後、電解質2の全面に対して、LaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで空気極として機能する一方の電極層3を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0049】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1を長時間発電させたところ、網目状構造層7の第2線状体6と電解質層2との間に多数の空隙8が設けてあるので、従来のセルで観測されていた燃料極における水蒸気の残留による開放端電圧の低下が観測されず、安定した出力が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体電解質型燃料電池の一実施例を示す部分断面説明図(a)及び斜視説明図(b)である。
【図2】本発明の固体電解質型燃料電池の他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図3】本発明の固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図4】本発明の固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図5】本発明の固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示す部分断面説明図(a)及び斜視説明図(b)である。
【符号の説明】
1 固体電解質型燃料電池
2 電解質層
3 空気極として機能する一方の電極層
3a 対向面
4 燃料極として機能する他方の電極層
5 第1線状体
6 第2線状体
7 網目状構造層
8 空隙
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、電気自動車の駆動源として用いられる固体電解質型燃料電池及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記した燃料電池は、化学エネルギーを電気化学的な反応により電気エネルギーに変換するものである。固体電解質型燃料電池の場合、燃料極、固体電解質及び空気極の各層を積層した3層構造をなし、これを燃料電池の発電部として外部から水素や炭化水素等の燃料ガスを供給し、空気極には空気等の酸化剤ガスを供給して電気を発生させる。
【0003】
固体電解質には、一般的にイットリア(Y2O3)や、酸化ネオジウム(Nd2O3)や、酸化サマリウム(Sm2O3)や、酸化ガドリニウム(Gd2O3)や、酸化スカンジウム(Sc2O3)などを固溶した安定化ジルコニアが用いられるほか、セリア(CeO2)系固溶体や、酸化ビスマスや、ランタンガレート(LaGaO3)などの材料が用いられる。この固体電解質層にとって特に重要なことは、電子を通さずにイオンを通す性能であり、酸素イオンが発電の導体である場合には、酸素イオンの導電特性が高いことが望まれる。また、固体電解質層の重要な特性としては、ガス不透過性であることが挙げられる。
【0004】
空気極には、一般的に銀(Ag)や、白金(Pt)などの金属系材料が用いられるほか、LaSrMnOやLaSrCoOに代表されるペロブスカイト構造の酸化物材料が用いられる。この空気極に必要な特性としては、酸化に強く、酸化ガスを透過し、電気伝導度が高く、酸素分子を酸素イオンに変換する触媒作用に優れていることが挙げられる。
【0005】
一方、燃料極には、ニッケル(Ni)や、ニッケルと固体電解質のサーメットなどが一般的に用いられる。この燃料極に要求される特性としては、還元雰囲気に強く、燃料ガスを透過し、電気伝導度が高く、水素分子をプロトンに変換する触媒作用に優れていることが挙げられる。
【0006】
固体電解質型燃料電池は、上記した特性をもった膜によって構成され、一般的な固体電解質型燃料電池の単位発電セルの場合、固体電解質層を空気極と燃料極とによって挟持した3層構造が採用される、すなわち、異なる材料から成る3つの層を積層した3層構造が採用される。このような固体電解質型燃料電池は、使用される環境によって高温にさらされる場合もあり、各層を構成する材料の熱膨張率の違いに起因する層間剥離が発生する恐れを有している。
【0007】
そこで、このような層間剥離に対処するため、例えば、特開平7−220730号公報には、電解質の表面に空隙を形成し、これらの空隙に固体電解質を構成する材料、若しくは、固体電解質を構成する材料と電極を構成する材料との混合物を配置した構造が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した従来の固体電解質型燃料電池において、空気極及び燃料極がいずれも電解質によって隔離されているため、各電極に対して集電機構をそれぞれ設置しなくてはならず、集電効率が悪いという問題があるうえ、上記した従来の固体電解質型燃料電池は、スクリーン印刷などの湿式法による製造を前提としているため、セルの微細化、薄膜化及び軽量化がいずれも困難であるという問題を有していた。
【0009】
また、頻繁な起動停止を伴う自動車等の移動体に搭載する場合、固体電解質型燃料電池のセル自体が軽量であることが必須であるのに加えて、熱耐久性及び耐熱衝撃性を向上させる必要があり、特に、上記固体電解質型燃料電池は熱伝導性の低いセラミック材料から構成されているため、頻繁な起動停止を伴う温度変化への応答を向上させるためには、セルを構成する各部位が軽薄短小であることが望ましく、これを実現するためには、電解質層のクラック又は電解質層と電極層との界面での剥離を防止することが極めて重要であり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、電極層と電解質層との間の層間剥離が生じることがほとんどなくなって、高温使用時における耐熱性及び昇温・降温時における耐熱衝撃性に優れているうえ、実効的な電極面積が増して発電特性が向上した固体電解質型燃料電池及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、電解質層を一方の電極層と他方の電極層とで狭持した積層構造をなす固体電解質型燃料電池において、電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面には、この対向面上に直接設置された互いに略平行をなす複数の第1線状体と、この第1線状体及び上記対向面上で第1線状体に対して適宜角度をもって設置された互いに略平行をなす複数の第2線状体とから成る凹凸形成用の網目状構造層を設けた構成としている。
【0012】
【発明の効果】
本発明の固体電解質型燃料電池では、上記した構成としているので、実効的な電極面積が拡大されて、電池の発電特性を高めることができ、加えて、接合面積の増大によって層間の密着性が向上し、電解質層と電極層との界面におけるクラックや亀裂の発生及び電解質層や電極層の割れをいずれも回避することができるので、熱耐久性や耐熱衝撃性を向上させることが可能であり、これにより、起動停止が迅速かつ頻繁に行われる固体電解質型燃料電池、すなわち、自動車等の移動体に搭載される固体電解質型燃料電池として非常に好適なものとなるという極めて優れた効果がもたらされる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の網目状構造層は、電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面に対して、マスク越しにスパッタリングなどによって成膜することで容易に形成することができる。すなわち、請求項5に記載しているように、電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面に縞状のパターンを有するマスクを設置して、このマスク越しに成膜することで複数の第1線状体を形成し、この後、上記マスクを適宜角度回転させるのに続いて、このマスク越しに成膜することで複数の第2線状体を形成することによって、網目状構造層を容易に形成することができる。この際、エッチングや研削などの加工を必要としないので、簡便かつ精度の高い構造とすることが可能である。
【0014】
上記網目状構造層は、表面に凸部を有する凹凸形成用としているため、電解質と電極層との接触面積を増加させることができ、この接触面積の増加は、電解質及び電極層の層間の密着性を向上させて、高温使用時における電解質材料と電極材料との各熱膨張率の違いに起因する層間剥離を防止する。
【0015】
この場合、網目状構造層の網目を規則的に形成することにより、発生した応力を等方的に分散させることができ、対向面に凹凸をランダムに形成した場合に懸念される応力集中などによる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0016】
ここで、線状体の層数は2層以上とする。線状体の層数を2層とする場合において、いかなる方向の応力にも対応し得るようにするためには、第1線状体と第2線状体とを互いにほぼ90°の角度を違えて積層することが効果的である。また、3層以上とする場合は、線状体の角度をランダムに違わせるよりも、その層数によって規則的な配置とすることが望ましく、このような線状体の規則的な配置により、中間層部全体、すなわち、燃料電池全体での応力分散効果を発生させることができる。
【0017】
例えば、中間層を3層設ける場合、2層目はその線状体が1層目の線状体に対してほぼ60°傾くようにして積層し、3層目はその線状体が1層目の線状体に対してほぼ120°(2層目の線状体に対してはほぼ60°)傾くようにして積層すると、全体では正六角形の各頂点に縞が向くように設置されることとなって、応力の分散を効果的に発現でき、これと同様にして、正八角形等の正多角形の各頂点に縞が向くように設置しても効果的である。
【0018】
また、線状体の交点である凸部は、交点以外の線状体の領域に比べて大きな突起となっており、これらの突起自身の体積が小さいため、熱膨張による変形量が小さく、したがって、これらの部分での剥離は発生しにくい。
【0019】
この場合、線状体の角部や上記凸部が応力集中場となって、亀裂等の原因となることが懸念される。しかし、線状体の角部に関しては、例えば、粘度の低いペーストで線状体を形成する、若しくは、線状体の形成時において電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面とマスクとの距離を離して斜め方向からスパッタリングなどで成膜することによって、緩やかな角部を形成し得る。一方、線状体の交点である凸部に関しては、線状体の幅や厚さを最適化することで凸部の大きさを変更可能であり、したがって、線状体や交点の凸部の形状を制御することにより、これらが原因となる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0020】
前述したように、電極と電解質との界面に線状体による凹凸が形成されており、交点においても凸部が形成されている。つまり、電極と電解質との界面には大きな凹凸が形成されていることから、界面長が長くなっていると考えられ、この界面長の拡大は実効的な電極面積を広げるのと同義であることから、電池の発電特性を高めることができる。
【0021】
本発明の固体電解質型燃料電池における網目状構造層は、電極層と電解質層との共相もしくは電極層と電解質層との中間の熱膨張係数を持つ。例えば、空気極の電極材料にLaMnO3を用い、電解質の材料にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた場合において、電極材料と電解質材料との中間の熱膨張係数を持つ材料とは、Laよりもイオン半径が小さい元素を固溶させたLa1−XCaXMnO3となる。ここで、中間の熱膨張係数とは、10.2〜11.2×10−6K−1と定義する。
【0022】
また、例えば、空気極の電極材料にLaMnO3を用い、電解質の材料にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた場合において、電極材料と電解質材料との共相とはLaMnO3とYSZとの混合物となり、ここに共相とは電極材料と電解質材料との混合物と定義する。これらの材料を網目状構造層に利用すれば、電極層と網目構造層との熱膨張差が小さくなると共に網目構造層と電解質層との熱膨張差も小さくなることから、昇降温時などの熱衝撃が加わった際の層間剥離を防止することができる。
【0023】
本発明の請求項4の固体電解質型燃料電池における網目状構造層は、電解質と電極との界面近傍に空隙を有している。これは隣接する線状体同士の間隔を狭めて形成し、その上から粘度の高いペーストを塗布する、又はグリーンシートを形成すれば、線状体の間に上層部の材料が入り込まずに空隙が形成されることとなる。これらの空隙を設けたことにより、界面近傍の燃料ガスや空気の拡散性が向上して反応抵抗の低下が抑制され、加えて、電気化学反応により燃料極近傍で生成される水蒸気などの反応生成物の排出が促進されることとなる。
【0024】
本発明の固体電解質型燃料電池において、電解質として機能する材料に関しては、微結晶構造、柱状構造、ラメラ構造などの緻密性の高い構造を有することが要求され、一方、電極として機能する材料に関しては、多孔質、柱状構造、ラメラ構造などのガス透過性を持つ構造を有することが要求される。
【0025】
本発明の固体電解質型燃料電池において、固体電解質として、安定化ジルコニア(YSZ)、セリア含有固溶体、ランタンガレートなどを用いることができ、空気極として、LSM(LaSrCoO)、LSC(LaSrCoO)、Ar、Ptなどを用いることができ、燃料極として,Ni、Niサーメットなどを用いることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0026】
本発明の実施態様として、電解質膜厚を1μm〜5mmとし、線状体の線幅を1μm〜10mmとし、線状体の高さを1μm〜10mmとする。
【0027】
上記電解質、電極、電解質材料と電極材料との共相、及び電解質材料と電極材料との中間の熱膨張係数を持つ材料から成る線状構造層の形成方法としては、湿式成膜法及び乾式成膜法がある。湿式成膜法としては、例えば、スラリーコーティング法やテープキャスティング法があり、一方、乾式成膜法としては、例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、プラズマスプレー法、イオンプレーティング法、フレームスプレー法、プラズマジェットトーチ法、EVD法、CVD法がある。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す実施例において、空気極材料と燃料極材料は、構造上入れ替わっても燃料電池としての機能には差異はない。
【0029】
[実施例1]
図1は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池の一実施例を示している。
【0030】
図1(a)に部分的に示すように、この固体電解質型燃料電池1は、電解質層2を空気極として機能する一方の電極層3と燃料極として機能する他方の電極層4とで狭持した積層構造をなしており、空気極として機能する一方の電極層3の電解質層2との対向面3aには、図1(b)にも示すように、この対向面3a上に直接設置した互いに略平行をなす複数の第1線状体5と、この第1線状体5及び上記対向面3a上で第1線状体5に対してほぼ直交するようにして配置した互いに略平行をなす複数の第2線状体6とから成る凹凸形成用の網目状構造層7が設けてある。
【0031】
この固体電解質型燃料電池1を製造するに際しては、まず、空気極として機能する一方の電極層3(LaMnO3 層)上に縞状のパターンを有する金属製マスクを設置して、このマスク越しにLaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで上記対向面3aに互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成する。
【0032】
次いで、上記マスクを上記対向面3a上においてほぼ90°回転させるのに続いて、このマスク越しに上記第1線状体5及び対向面3aにLaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成することによって、凹凸形成用のLaMnO3 から成る網目状構造層7をLaMnO3 から成る空気極としての電極層3上に形成する。
【0033】
そして、このLaMnO3 から成る網目状構造層7の全面に対して、YSZをスパッタリングにより成膜して電解質層2を積層し、続いて、この電解質層2の全面に対して、NiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜して燃料極として機能する他方の電極層4を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0034】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1に対して、室温から1000℃までの範囲で昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、網目状構造層7を設けない場合と比べて約10%耐剥離性が向上したことを確認した。
【0035】
[実施例2]
図2は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池の他の実施例を示している。この実施例において、燃料極として機能する他方の電極層4(NiO及びYSZのサーメット層)上にYSZをスクリーン印刷して1400℃にて焼成を行うことで電解質層2を形成した。
【0036】
この後、電解質層2上にマスクを設置して、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、凹凸形成用の網目状構造層7を形成した。
【0037】
そして、電解質層2及び網目状構造層7の全面に対して、LaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで空気極として機能する一方の電極層3を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0038】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1に対して、室温から1000℃までの範囲で昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、網目状構造層7を設けない場合と比べて10%耐剥離性が向上したことを確認した。
【0039】
[実施例3]
図3は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示している。この実施例において、空気極として機能する一方の電極層3(LaMnO3層)上に縞状のパターンを有する金属製マスクを設置して、このマスク越しにLaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにLaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成することによって、凹凸形成用のLaMnO3 から成る網目状構造層7をLaMnO3 から成る空気極としての電極層3上に形成した。
【0040】
次に、このLaMnO3 から成る網目状構造層7上に、YSZをスクリーン印刷して1400℃にて焼成を行うことで電解質層2を形成し、次いで、この電解質層2上にマスクを設置して、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、凹凸形成用の網目状構造層7を形成し、さらに、NiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜して燃料極として機能する他方の電極層4を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0041】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1に対して、室温から1000℃までの範囲で昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、網目状構造層7を設けない場合と比べて30%耐剥離性が向上したことを確認した。
【0042】
[実施例4]
図4は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示している。この実施例において、YSZから成る電解質層2の表面上にマスクを設置して、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、凹凸形成用の網目状構造層7を形成した後、この電解質層2及び網目状構造層7の全面に対して、LaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで空気極として機能する一方の電極層3を積層した。
【0043】
次に、YSZから成る電解質層2の裏面上にマスクを設置して、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクを適宜角度回転させて、このマスク越しにYSZをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、凹凸形成用の網目状構造層7を形成した後、この電解質層2及び網目状構造層7の全面に対して、NiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜して燃料極として機能する他方の電極層4を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0044】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1に対して、室温から1000℃までの範囲で昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、網目状構造層7を設けない場合と比べて30%耐剥離性が向上したことを確認した。
【0045】
[実施例5]
図5は、本発明に係わる固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示している。図5(b)に示すように、燃料極として機能する他方の電極層4(NiO及びYSZのサーメット層)上に縞の間隔が狭い、すなわち、開口の間隔が狭いマスクを設置して、このマスク越しにNiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第1線状体5を形成するのに続いて、上記マスクをほぼ90°回転させて、このマスク越しにNiO及びYSZのサーメットをスパッタリングにより成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体6を形成して、他方の電極層4上に凹凸形成用の網目状構造層7を形成した。
【0046】
次いで、図5(a)に示すように、NiO及びYSZのサーメットから成る網目状構造層7上に、YSZのペーストをスクリーン印刷して焼成させて電解質層2を形成する。
【0047】
この場合、上記マスクを使用したことにより、網目状構造層7の網目が細かく形成されているので、第2線状体6が電解質層2に直に接触する部位において、第2線状体6における第1線状体5とは反対側の面と電解質層2との間には、空隙8が形成されるようになっている。
【0048】
この後、電解質2の全面に対して、LaMnO3 をスパッタリングにより成膜することで空気極として機能する一方の電極層3を積層して本実施例の固体電解質型燃料電池1を得た。
【0049】
この形態は割断面の電子顕微鏡像によって確認できた。この燃料電池1を長時間発電させたところ、網目状構造層7の第2線状体6と電解質層2との間に多数の空隙8が設けてあるので、従来のセルで観測されていた燃料極における水蒸気の残留による開放端電圧の低下が観測されず、安定した出力が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体電解質型燃料電池の一実施例を示す部分断面説明図(a)及び斜視説明図(b)である。
【図2】本発明の固体電解質型燃料電池の他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図3】本発明の固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図4】本発明の固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示す部分断面説明図である。
【図5】本発明の固体電解質型燃料電池のさらに他の実施例を示す部分断面説明図(a)及び斜視説明図(b)である。
【符号の説明】
1 固体電解質型燃料電池
2 電解質層
3 空気極として機能する一方の電極層
3a 対向面
4 燃料極として機能する他方の電極層
5 第1線状体
6 第2線状体
7 網目状構造層
8 空隙
Claims (6)
- 電解質層を一方の電極層と他方の電極層とで狭持した積層構造をなす固体電解質型燃料電池において、電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面には、この対向面上に直接設置された互いに略平行をなす複数の第1線状体と、この第1線状体及び上記対向面上で第1線状体に対して適宜角度をもって設置された互いに略平行をなす複数の第2線状体とから成る凹凸形成用の網目状構造層を設けたことを特徴とする固体電解質型燃料電池。
- 電極層における電解質層との対向面上に第1線状体を設置する場合において、第1線状体及び第2線状体に、電極層と同質の材料、電極層の材料と電解質層の材料との共相材料、電極層の材料と電解質層の材料との中間の熱膨張係数を有する材料のいずれかの材料を用いたことを特徴とする請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 電解質層における電極層との対向面上に第1線状体を設置する場合において、第1線状体及び第2線状体に、電極層と同質の材料、電極層の材料と電解質層の材料との共相材料、電極層の材料と電解質層の材料との中間の熱膨張係数を有する材料のいずれかの材料を用いたことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電解質型燃料電池。
- 第2線状体が電極層又は電解質層に直に接触する部位において、第2線状体における第1線状体とは反対側の面と電極層又は電解質層との間に空隙を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の固体電解質型燃料電池。
- 電解質層を一方の電極層と他方の電極層とで狭持した積層構造をなす固体電解質型燃料電池を製造するに際して、電極層及び電解質層の各々の対向面のうちの少なくともいずれか一方の対向面に縞状のパターンを有するマスクを設置して、このマスク越しに成膜することで上記対向面に互いに略平行をなす複数の第1線状体を形成し、この後、上記マスクを上記対向面上において適宜角度回転させるのに続いて、このマスク越しに上記第1線状体及び対向面に成膜することで互いに略平行をなす複数の第2線状体を形成して、凹凸形成用の網目状構造層を設けることを特徴とする固体電解質型燃料電池の製造方法。
- 第2線状体に電極層又は電解質層を積層するに際して、上記第2線状体が電極層又は電解質層に直に接触する部位において、第2線状体における第1線状体とは反対側の面と電極層又は電解質層との間に空隙を設けて積層することを特徴とする請求項5に記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008218275A (ja) * | 2007-03-06 | 2008-09-18 | Mitsubishi Materials Corp | 固体酸化物形燃料電池 |
CN103190029A (zh) * | 2010-10-20 | 2013-07-03 | 新东工业株式会社 | 构成全固体电池的层构造体的制造方法、制造装置以及具备该层构造体的全固体电池 |
-
2002
- 2002-12-05 JP JP2002353173A patent/JP2004186056A/ja active Pending
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CN103190029A (zh) * | 2010-10-20 | 2013-07-03 | 新东工业株式会社 | 构成全固体电池的层构造体的制造方法、制造装置以及具备该层构造体的全固体电池 |
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