JP2004185824A - 燃料電池システム - Google Patents

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JP2004185824A JP2002347694A JP2002347694A JP2004185824A JP 2004185824 A JP2004185824 A JP 2004185824A JP 2002347694 A JP2002347694 A JP 2002347694A JP 2002347694 A JP2002347694 A JP 2002347694A JP 2004185824 A JP2004185824 A JP 2004185824A
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Abstract

【課題】酸素を供給する通路を確実に切り替え、しかも、切り替え状態を維持するために無駄な電力を消費することのない燃料電池システムを提供する。
【解決手段】モータ256を滅勢すると、バルブギア298は、蓄勢された全開用コイルスプリング292の弾発力によって矢印B方向に回動し、バルブシャフト268を介して弁体266が弁開方向に回動する。このとき、緩衝レバー部294が全開ストッパねじ296に当接し、バルブギア298が弁体266の過剰全開方向にさらに回動することで衝撃力が緩和される。また、バルブギア298は、過剰回動することで蓄勢された緩衝用コイルスプリング306の弾発力によって矢印A方向に戻り、第2位置決め部材308が緩衝レバー部294に当接し、弁体266が全開状態に設定される。
【選択図】図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素とを反応させることで電気エネルギを生成する燃料電池と、前記酸素を所定温度に冷却して前記カソードに供給する冷却部とを備える燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子膜型燃料電池は、固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成されたセルに対し、複数のセルを積層して構成されたスタック(以下、燃料電池という。)を備えており、アノードに燃料として水素が供給され、カソードに酸化剤としてエアーが供給され、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動し、エアー中の酸素と電気化学反応を起こすことで発電エネルギが生成される。
【0003】
このような燃料電池において、酸化剤であるエアーは、エアーコンプレッサ等によって圧縮されてカソードに供給される。この場合、圧縮に伴う発熱によりエアー温度が上昇し過ぎると、発電効率が低下することから、通常、カソードの前段に冷却部を配設し、エアーを固体高分子電解質膜の適性に即した最適な温度に制御してカソードに供給するようにしている。
【0004】
一方、エアーの温度が低く、あるいは、燃料電池の系が必要な温度まで達しておらず、エアーコンプレッサ等によって圧縮しても十分な温度が得られない場合には、冷却部を経由させないで直接エアーをカソードに供給できることが必要である。
【0005】
このような要請に対応するため、例えば、冷却部と並列にバイパス通路を設け、エアーコンプレッサ等によって圧縮されたエアーを、温度に応じて冷却部またはバイパス通路を経由させてカソードに供給するように構成することが考えられる。この場合、冷却部とバイパス通路とを切り替える手段として、例えば、特許文献1に開示されたスロットル制御装置を利用することができる。
【0006】
このスロットル制御装置は、エンジンのスロットルバルブの開閉制御を電気的に行うものであり、スロットルバルブを開閉する制御モータに対する非通電時には、スロットルバルブをバックスプリングによって弁閉方向に付勢する一方、リリーフスプリングによって弁開方向に付勢した状態とすることで、スロットルバルブを一定のオープナ開度に保持する。また、エンジンをアクセルペダルが踏み込まれていないアイドリング状態とする場合には、制御モータに通電し、スロットルバルブをリリーフスプリングの弾発力に抗してオープナ開度以下のアイドリング開度に設定する。さらに、アクセルペダルが踏み込まれた場合には、バックスプリングの弾発力に抗して制御モータがスロットルバルブを弁開方向に回動する。
【0007】
このようなスロットル制御装置を燃料電池に適用し、スロットルバルブを開閉することにより、冷却部とバイパス通路との切り替えを行うことができる。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−303978号公報(段落[0034]、[0036]〜[0038]、図1、図2、図4、図5)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示されたスロットル制御装置では、制御モータに対する非通電時において、スロットルバルブが完全な弁閉状態に設定されていない。従って、完全な弁閉状態および弁開状態を得るためには、制御モータを常に駆動させておかなければならない。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、燃料電池に酸素を供給する通路を状況に応じて確実に切り替えることができ、しかも、切り替え状態を維持するために無駄な電力を消費することのない燃料電池システムを提供することを第1の目的とする。
【0011】
また、本発明は、燃料電池に酸素を供給する通路に連通または遮断する弁体を設け、完全な弁開状態を維持するために無駄な電力を消費することのない燃料電池システムを提供することを第2の目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素とを反応させることで電気エネルギを生成する燃料電池と、前記酸素を所定温度に冷却して前記カソードに供給する冷却部とを備える燃料電池システムにおいて、
前記冷却部に並列に配設され、前記酸素を前記冷却部を介することなく、直接前記カソードに供給するバイパス部と、
前記冷却部と前記カソードとの間に配設され、前記酸素を前記冷却部を介して前記カソードに供給する第1通路と、前記酸素を前記バイパス部を介して前記カソードに供給する第2通路とを切り替える通路切替部とを備え、
前記通路切替部は、
前記第1通路を連通または遮断する弁体と、
前記弁体を前記第1通路の連通方向に回動付勢する第1弾性部材と、
前記第1弾性部材による前記弁体の回動位置を規制し、前記第1通路を全開状態に設定する第1規制部材と、
前記第1弾性部材の弾発力に抗して前記弁体を前記第1通路の遮断方向に回動するモータと、
を備えることを特徴とする。
【0013】
この場合、酸素を冷却して供給する必要があるときには、モータを滅勢することにより、弁体が第1弾性部材の弾発力によって回動し、第1規制部材によって全開状態に設定されるため、冷却部が第1通路を介してカソードに連通される。従って、酸素は、冷却部によって所定温度に冷却されてカソードに供給され、発電が行われる。
【0014】
一方、酸素の冷却を回避する必要があるときには、モータを付勢することにより、第1弾性部材の弾発力に抗して弁体が回動して全閉状態に設定されるため、酸素が冷却部に供給されることがなく、バイパス部から第2通路を介してカソードに供給される。従って、冷却されていない酸素がカソードに供給され、発電が行われる。
【0015】
また、請求項2記載の発明では、弁体が第1通路を全開状態に設定する際、第1位置決め部材を第1弾性部材の弾発力によって回動させて第1規制部材に当接させた後、過剰全開状態となった弁体を第2弾性部材によって第1通路の遮断方向に回動させ、弁体に装着された第2位置決め部材を第1位置決め部材に当接させることにより、弁体が最終的な全開状態に正確に設定される。
【0016】
この場合、第1位置決め部材が第1規制部材に当接する際の衝撃力は、弁体が第2弾性部材の弾発力に抗して過剰全開状態まで回動することで吸収される。
【0017】
さらに、請求項3記載の発明では、弁体の過剰全開状態での回動位置を第2規制部材によって規制することにより、弁体が全開方向に過剰に回動する範囲を制限することができる。
【0018】
さらにまた、請求項4記載の発明では、弁体の回動位置から第1通路の開閉状態を検出する開度センサを設けることにより、通路切替部の状態を確実に把握することができる。
【0019】
さらに、請求項5記載の発明では、酸素を冷却部からカソードに供給する必要があるときには、モータを滅勢することにより、弁体を第1弾性部材の弾発力によって回動して全開状態とし、第1通路を連通することができる。また、カソードに対する酸素の供給を遮断するときには、モータを付勢し、第1弾性部材の弾発力に抗して弁体を回動し、第1通路を遮断することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1において、参照符号200は、本発明の実施の形態に係る燃料電池システムを示す。なお、燃料電池システム200は、例えば、電気自動車等の車両に搭載することができる。
【0021】
この燃料電池システム200は、例えば、固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成された多数のセルを積層した燃料電池スタック202を含む。前記燃料電池スタック202には、燃料ガスである水素がアノードに供給され、酸化剤ガスである酸素を含むエアーがカソードに供給される。
【0022】
カソードには、酸化剤供給部204からエアーが供給されるエアー供給口206と、カソード内のエアーや水を外部に排出するためのエアー排出部208が接続されたエアー排出口210とが設けられる。一方、アノードには、燃料供給部212から水素が供給される水素供給口214と、アノード内の水やエアーの一部を含む水素を希釈して外部に排出するための水素排出部216が接続された水素排出口218とが設けられる。
【0023】
燃料電池スタック202では、アノードで触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動し、カソードにおいて酸素と電気化学反応を起こすことにより、発電エネルギが生成される。
【0024】
エアー供給口206には、エアー供給用通路を介して、酸化剤供給部204と、冷却部220と、エアー通路切替部221(通路切替部)と、カソード加湿部222とが直列状態に接続される。また、冷却部220には、エアーバイパス部223(バイパス部)が並列状態に接続される。
【0025】
水素供給口214には、水素供給通路を介して、燃料供給部212と、圧力制御部224と、エゼクタ226と、アノード加湿部228とが直列状態に接続される。
【0026】
酸化剤供給部204は、例えば、図示しないスーパーチャージャ(圧縮機)およびこれを駆動するモータ等から構成され、燃料電池スタック202で酸化剤ガスとして使用されるエアーを断熱圧縮して燃料電池スタック202に圧送する。この断熱圧縮の際にエアーが加熱される。このように加熱されたエアーが、燃料電池スタック202の暖機に貢献する。
【0027】
また、前記酸化剤供給部204から供給されるエアーは、例えば、燃料電池スタック202の負荷や図示しないアクセルペダルの操作量等に応じて所定の圧力に設定されて燃料電池スタック202に導入されるとともに、必要に応じて冷却部220によって冷却され、バイパス通路232を介して圧力制御部224にパイロット圧として供給される。
【0028】
冷却部220は、例えば、図示しないインタークーラ等から構成され、流路に沿って流通する冷却水と熱交換することによって、燃料電池スタック202の通常運転時において前記酸化剤供給部204から供給されるエアーを冷却する。このため、エアーは、冷却部220によって所定温度に冷却される。
【0029】
エアー通路切替部221は、酸化剤供給部204から供給されたエアーの温度に応じて、エアーを冷却部220で冷却し第1通路225を介してカソード加湿部222に供給するか、冷却することなく第2通路227を介してエアーバイパス部223から直接カソード加湿部222に供給するかの切り替えを行う弁機構である。この構成の詳細については、後述する。
【0030】
エアー通路切替部221に並列状態で配設されるエアーバイパス部223は、例えば、エアー通路切替部221が閉塞され、酸化剤供給部204から供給されたエアーの圧力が所定値以上となったとき、バルブを開成してエアーをカソード加湿部222に供給する弁機構である。
【0031】
カソード加湿部222は、例えば、水透過膜を備えて構成され、水分を水透過膜の一方側から他方側へ透過させることにより、前記冷却部220によって所定の温度に冷却されたエアーを所定の湿度に加湿して燃料電池スタック202のエアー供給口206へと供給する。加湿されたエアーは燃料電池スタック202に供給され、該燃料電池スタック202の固体高分子電解質膜のイオン導電性が所定の状態に確保される。
【0032】
なお、燃料電池スタック202のエアー排出口210には、エアー排出部208が接続され、前記エアー排出部208に設けられた図示しない排出弁を通じてエアーが大気中に排気される。
【0033】
燃料供給部212は、例えば、燃料電池に対する燃料として水素を供給する図示しない水素ガスボンベからなり、燃料電池スタック202のアノードに供給する水素が貯蔵される。
【0034】
圧力制御部224は、例えば、空気式の比例圧力制御弁からなり、バイパス通路232を介して供給されるエアーの圧力をパイロット圧(パイロット信号圧)として、圧力制御部224の出口側圧力である二次側圧力を前記パイロット圧に対応した所定範囲の圧力に設定している。
【0035】
エゼクタ226は、図示しないノズル部とディフューザ部とから構成され、圧力制御部224から供給された水素がノズル部を通過する際に加速されてディフューザ部に向かって噴射される。ノズル部からディフューザ部に向かって水素が高速で流通する際、ノズル部とディフューザ部との間に設けられた副流室内で負圧が発生し、循環用通路230を介してアノードの排出ガスが吸引される。前記エゼクタ226で混合された水素および排出ガスは、アノード加湿部228へと供給される。
【0036】
アノード加湿部228は、例えば、水透過膜を備えて構成され、水分を水透過膜の一方側から他方側へ透過させることにより、エゼクタ226から導出された水素を所定の湿度に加湿して燃料電池スタック202の水素供給口214へと供給する。加湿された水素は燃料電池スタック202に供給され、該燃料電池スタック202の固体高分子電解質膜のイオン導電性が所定の状態に確保される。
【0037】
燃料電池スタック202の水素排出口218には、例えば、図示しない排出制御弁を有する水素排出部216が循環用通路230を介して接続される。排出制御弁は、燃料電池スタック202の運転状態に応じて開閉動作が制御され、例えば、図示しない貯留タンクによって分離された排出ガス中の過剰な水等が燃料電池システム200の外部に排出される。
【0038】
次に、図2および図3に基づいてエアー通路切替部221の構成を詳細に説明する。
【0039】
エアー通路切替部221は、冷却部220とカソード加湿部222とを連通または遮断する第1通路225が形成されたボデイ250と、シール部材252を介してボデイ250に装着される蓋部材254とを備える。
【0040】
ボデイ250には、駆動源であるモータ256が組み込まれる。モータ256の駆動軸258には、駆動ギア260が固定され、駆動ギア260には、ボデイ250および蓋部材254間に植設されたアイドルシャフト262に係合するアイドルギア264の大径ギア部265が噛合する。
【0041】
また、ボデイ250には、弁体266が固定され、第1通路225を貫通するバルブシャフト268が装着される。第1通路225に配設される弁体266は、第1通路225の断面形状に対応した円形形状を呈し、ねじ部材270a、270bによりバルブシャフト268に固定される。バルブシャフト268は、一端部および他端部側がベアリング272a、272bを介してボデイ250に軸支される。
【0042】
ベアリング272aには、第1通路225からボデイ250の外部へのガス漏れを防止するためのカラー274が装着される。また、ベアリング272bの両側部には、第1通路225からボデイ250の内部へのガス漏れを防止するためのカラー276および278が装着される。さらに、カラー276に隣接してバルブシャフト268には、シール部材280が装着される。シール部材280は、第1通路225側に傾斜した状態でバルブシャフト268を周回する第1リップ部282aと、カラー276側に傾斜した状態でバルブシャフト268を周回する第2リップ部282bとを有する。これらの第1リップ部282aおよび第2リップ部282bにより、第1通路225からのボデイ250へのガス漏れおよび蓋部材254側から第1通路225への不純物、例えば、ベアリング272bの潤滑グリース等の侵入を確実に阻止することができる。
【0043】
蓋部材254側に延在するバルブシャフト268の他端部側外周部には、第1位置決め部材284が装着される。第1位置決め部材284は、バルブシャフト268に対して回動可能に装着されており、外周部にフランジ部286が形成される。一方、ベアリング272bが装着されるボデイ250のボス部288の外周部には、断面L字状のばね受け部材290が配設される。
【0044】
第1位置決め部材284のフランジ部286とばね受け部材290との間には、全開用コイルスプリング292(第1弾性部材)が配設される。全開用コイルスプリング292は、弁体266を開弁方向に回動させ、第1通路225を全開状態に保持するもので、一端部が第1位置決め部材284に係合し、他端部がばね受け部材290を介してボデイ250に係合する。
【0045】
第1位置決め部材284の外周部の所定部位には、図3に示すように、フランジ部286から外方向に突出する緩衝レバー部294が形成される。一方、ボデイ250には、緩衝レバー部294の回動域の所定部位に全開ストッパねじ296(第1規制部材)が配設される。全開ストッパねじ296は、全開用コイルスプリング292の弾発力により第1位置決め部材284が回動し、緩衝レバー部294が全開ストッパねじ296の端部に当接することで、弁体266の回動位置を第1通路225の全開位置に規制する部材として機能する。
【0046】
バルブシャフト268の他端部には、バルブギア298が係合する。バルブギア298は、外周部の一部にギア部300を有し、このギア部300がアイドルギア264の小径ギア部267に噛合する。第1位置決め部材284に対向するバルブギア298の内周面には、ばね受け部材302が配設される。一方、バルブギア298に対向する第1位置決め部材284には、周回する溝部304が形成される。ばね受け部材302と溝部304との間には、緩衝用コイルスプリング306(第2弾性部材)が配設される。緩衝用コイルスプリング306は、弁体266を過剰全開状態から閉弁方向に回動させ、第1通路225を全開状態とするもので、一端部がバルブギア298に係合し、他端部が第1位置決め部材284の緩衝レバー部294に係合する。
【0047】
バルブギア298の外周部の所定部位には、図3に示すように、第1位置決め部材284のフランジ部286の回動域に突出する第2位置決め部材308が配設される。この場合、バルブギア298の閉弁方向に対する回動域は、緩衝レバー部294によって規制される。
【0048】
また、バルブギア298におけるギア部300の回動域には、弁体266の過剰全開位置を規制する過剰全開ストッパ310(第2規制部材)が配設される。過剰全開ストッパ310は、ボデイ250の一部として形成されており、この過剰全開ストッパ310にギア部300の係止部312が当接することで、弁体266の過剰全開位置が規制される。
【0049】
さらに、バルブギア298の蓋部材254側には、凹部314が形成されており、この凹部314の内周部には、マグネット316a、316bが対向して配置される。一方、蓋部材254には、バルブギア298の凹部314に臨入するセンサ部318(開度センサ)が配設される。センサ部318には、マグネット316a、316bの磁界を検出するホール素子等からなる検出素子320がカバー部材321を介して配設される。検出素子320は、マグネット316a、316bの位置を検出することで、弁体266の開度を検知する。
【0050】
本実施形態の燃料電池システム200およびそれに適用されるエアー通路切替部221は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作について説明する。
【0051】
先ず、供給されるエアーの温度が低く、あるいは、燃料電池システム200の系が必要な温度まで達しておらず、従って、エアーを冷却することなく燃料電池スタック202に供給する必要がある場合について説明する。
【0052】
この場合、酸化剤供給部204によって圧縮加熱されたエアーを冷却部220を回避して第2通路227からエアーバイパス部223側に導くため、エアー通路切替部221を構成する弁体266を全閉状態に設定し、第1通路225を遮断する。
【0053】
エアー通路切替部221は、図2および図6に示すように、弁体266が全開状態に設定されており、この状態からモータ256が付勢される。モータ256が付勢されると、駆動軸258に装着された駆動ギア260が矢印A方向に回動し(図3参照)、駆動ギア260に噛合する大径ギア部265を介してアイドルギア264が矢印A方向に回動する。アイドルギア264の回動は、小径ギア部267に噛合するギア部300を介してバルブギア298を矢印A方向に回動させる。
【0054】
バルブギア298が矢印A方向に回動すると、それに軸支されたバルブシャフト268が回動し、弁体266が閉弁方向に回動する。この場合、バルブシャフト268を図6の状態から矢印A方向に90゜回動させることにより、弁体266は、第1通路225を完全に遮断する全閉状態に設定される(図4参照)。なお、センサ部318に配設された検出素子320は、マグネット316a、316bによる磁界を検出することにより、第1通路225が全閉状態に設定されたことを検知する。
【0055】
ここで、バルブシャフト268に対して回動可能な状態で装着された第1位置決め部材284の緩衝レバー部294には、バルブギア298に植設された第2位置決め部材308が係合しているため、第1位置決め部材284は、バルブギア298とともに矢印A方向に90゜回動する。このとき、一端部がボデイ250に係合し、他端部が第1位置決め部材284に係合する全開用コイルスプリング292は、第1位置決め部材284が回動することで弾発力が蓄勢される。
【0056】
以上のようにして、第1通路225がエアー通路切替部221を構成する弁体266によって遮断されることにより、燃料電池システム200の酸化剤供給部204とカソード加湿部222とがエアーバイパス部223を介して直接連通される。
【0057】
そこで、酸化剤供給部204に供給されたエアーは、第2通路227からエアーバイパス部223を介してカソード加湿部222に供給され、加湿されて燃料電池スタック202のエアー供給口206からカソードに供給される。一方、燃料供給部212から供給された水素は、圧力制御部224、エゼクタ226およびアノード加湿部228を介して燃料電池スタック202の水素供給口214からアノードに供給される。そして、燃料電池スタック202において発電が行われる。
【0058】
次に、供給されるエアーの温度が上昇し、あるいは、燃料電池システム200の系が必要以上の温度まで上昇し、冷却が必要となった場合について説明する。
【0059】
この場合、酸化剤供給部204によって圧縮加熱されたエアーを冷却部220に導いて冷却するため、エアー通路切替部221を構成する弁体266を全開状態に設定し、第1通路225を連通する。
【0060】
エアー通路切替部221は、図4に示すように、弁体266が全閉状態に設定されており、この状態からモータ256が滅勢される。モータ256が滅勢されると、バルブギア298が回動自在な状態となるため、蓄勢されていた全開用コイルスプリング292の弾発力により第1位置決め部材284が矢印B方向に回動する。このとき、第1位置決め部材284の緩衝レバー部294に係合する第2位置決め部材308を介してバルブギア298も矢印B方向に回動する。従って、バルブシャフト268を介して弁体266が閉弁方向に回動する。
【0061】
第1位置決め部材284が全開用コイルスプリング292の弾発力によって矢印B方向に所定角度回動すると、緩衝レバー部294が全開ストッパねじ296に当接するため、第1位置決め部材284の矢印B方向への回動が阻止される。一方、バルブギア298は、慣性力によってさらに矢印B方向に回動するため、バルブシャフト268に装着された弁体266は、第1通路225の全開状態からさらに回動し、過剰全開状態となる(図5参照)。
【0062】
この場合、第1位置決め部材284の緩衝レバー部294に係合していた第2位置決め部材308が慣性力によって緩衝レバー部294から離間するため、緩衝レバー部294が全開ストッパねじ296に当接した際の衝撃力のモータ256側に対する伝達が好適に緩和される。なお、バルブギア298の係止部312の回動域には、過剰全開ストッパ310が配設されているため、所定角度以上のバルブギア298の回動も阻止される。
【0063】
一方、緩衝用コイルスプリング306は、一端部が第1位置決め部材284に係合し、他端部がバルブギア298に係合しており、第1位置決め部材284の緩衝レバー部294が全開ストッパねじ296に当接して回動が阻止された後、バルブギア298が第1位置決め部材284に対して矢印B方向に回動することにより、緩衝用コイルスプリング306に弾発力が蓄勢される。従って、バルブギア298は、矢印B方向に所定角度回動した後、蓄勢された緩衝用コイルスプリング306の弾発力によって矢印A方向に戻されることになる。そして、第2位置決め部材308が緩衝レバー部294に再び当接することにより、弁体266が全開状態に正確に位置決めされる(図6参照)。なお、センサ部318に配設された検出素子320は、マグネット316a、316bによる磁界を検出することにより、第1通路225が全開状態に設定されていることを検知する。
【0064】
以上のようにして、第1通路225がエアー通路切替部221を構成する弁体266によって全開状態に設定されることにより、燃料電池システム200の酸化剤供給部204とカソード加湿部222とが冷却部220を介して連通される。
【0065】
そこで、酸化剤供給部204に供給されたエアーは、冷却部220によって所定温度に冷却され、エアー通路切替部221の第1通路225を介してカソード加湿部222に供給され、加湿されて燃料電池スタック202のエアー供給口206からカソードに供給される。一方、燃料供給部212から供給された水素は、圧力制御部224、エゼクタ226およびアノード加湿部228を介して燃料電池スタック202の水素供給口214からアノードに供給される。そして、燃料電池スタック202において発電が行われる。
【0066】
なお、上述した実施形態の説明では、モータ256を滅勢することで弁体266を全閉状態から全開状態に切り替えるようにしているが、全閉状態から全開状態に至るまでモータ256を付勢して切り替えを行った後、モータ256を滅勢するようにしてもよい。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、冷却部を介して酸素を供給する場合には、弁体を駆動するモータを滅勢状態とし、第1弾性部材の弾発力のみによって第1通路の全開状態を維持することができるため、全開状態の維持のために無駄な電力を消費することがない。
【0068】
また、弁体を全閉状態から全開状態に切り替える場合、弁体が過剰全開状態となるように設定されているため、弁体の回動によって生じるモータ側に対する衝撃力を緩和することができる。しかも、過剰全開状態となった弁体を第2弾性部材によって戻し、第2位置決め部材を第1位置決め部材に当接することにより、弁体を全開状態に正確に設定することができる。
【0069】
さらに、本発明によれば、冷却部を介して酸素をカソードに供給する第1通路を連通する場合、弁体を駆動するモータを滅勢状態とし、第1弾性部材の弾発力のみによって第1通路を全開状態に維持することができるため、全開状態の維持のために無駄な電力を消費することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の燃料電池システムの構成ブロック図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムを構成するエアー通路切替部の断面図である。
【図3】図2に示すエアー通路切替部の要部分解構成図である。
【図4】図2に示すエアー通路切替部において、弁体が全閉状態にあるときの側面説明図である。
【図5】図2に示すエアー通路切替部において、弁体が過剰全開状態にあるときの側面説明図である。
【図6】図2に示すエアー通路切替部において、弁体が全開状態にあるときの側面説明図である。
【符号の説明】
200…燃料電池システム 202…燃料電池スタック
220…冷却部 221…エアー通路切替部
223…エアーバイパス部 225…第1通路
227…第2通路 250…ボデイ
254…蓋部材 256…モータ
266…弁体 268…バルブシャフト
284…第1位置決め部材 292…全開用コイルスプリング
294…緩衝レバー部 296…全開ストッパねじ
298…バルブギア 306…緩衝用コイルスプリング
308…第2位置決め部材 310…過剰全開ストッパ
312…係止部 316a、316b…マグネット
318…センサ部 320…検出素子

Claims (5)

  1. アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素とを反応させることで電気エネルギを生成する燃料電池と、前記酸素を所定温度に冷却して前記カソードに供給する冷却部とを備える燃料電池システムにおいて、
    前記冷却部に並列に配設され、前記酸素を前記冷却部を介することなく、直接前記カソードに供給するバイパス部と、
    前記冷却部と前記カソードとの間に配設され、前記酸素を前記冷却部を介して前記カソードに供給する第1通路と、前記酸素を前記バイパス部を介して前記カソードに供給する第2通路とを切り替える通路切替部とを備え、
    前記通路切替部は、
    前記第1通路を連通または遮断する弁体と、
    前記弁体を前記第1通路の連通方向に回動付勢する第1弾性部材と、
    前記第1弾性部材による前記弁体の回動位置を規制し、前記第1通路を全開状態に設定する第1規制部材と、
    前記第1弾性部材の弾発力に抗して前記弁体を前記第1通路の遮断方向に回動するモータと、
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 請求項1記載のシステムにおいて、
    前記第1通路の連通方向に対する前記弁体の回動に伴う前記第1弾性部材の弾発力によって変位し、前記第1規制部材に当接する第1位置決め部材と、
    前記第1弾性部材の弾発力によって過剰全開状態となった前記弁体を前記第1通路の遮断方向に回動付勢する第2弾性部材と、
    前記弁体に装着され、前記第2弾性部材の弾発力により前記弁体とともに前記第1通路の遮断方向に回動し、前記第1位置決め部材に当接することで前記弁体を全開状態に設定する第2位置決め部材と、
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  3. 請求項2記載のシステムにおいて、
    前記過剰全開状態での前記弁体の回動位置を規制する第2規制部材を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  4. 請求項1記載のシステムにおいて、
    前記通路切替部は、前記第1通路の開閉状態を検出する開度センサを備えることを特徴とする燃料電池システム。
  5. アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素とを反応させることで電気エネルギを生成する燃料電池と、前記酸素を所定温度に冷却して前記カソードに供給する冷却部とを備える燃料電池システムにおいて、
    前記冷却部と前記カソードとの間に配設され、前記酸素を前記冷却部を介して前記カソードに供給する第1通路と、
    前記第1通路を連通または遮断する弁体と、
    前記弁体を前記第1通路の連通方向に回動付勢する第1弾性部材と、
    前記第1弾性部材による前記弁体の回動位置を規制し、前記第1通路を全開状態に設定する第1規制部材と、
    前記第1弾性部材の弾発力に抗して前記弁体を前記第1通路の遮断方向に回動するモータと、
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
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