JP2004183623A - 可変容量型圧縮機の制御装置 - Google Patents

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Yuji Kawamura
裕司 河村
Yoshie Sato
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Abstract

【課題】外部制御式の可変容量型圧縮機において、圧縮機の回転速度が急変した場合に生じる軸動力のオーバーシュートやアンダーシュートを防ぎ、無駄な動力を抑えて燃料消費を低減する。
【解決手段】回転速度の変化と相関する外部情報の変化率から所定時間経過後の圧縮機の回転速度を予測し、この予測された回転速度に至るまでの圧縮機の回転に寄与する動力の変動量を予測し、この変動量を見込んで、所定時間経過後の圧縮に寄与する動力を推定する。そして、この圧縮に寄与する動力から所定時間経過後の圧縮機の吸入圧を演算し、この演算された吸入圧となるように可変容量型圧縮機の制御量を決定する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用空調装置に用いられる外部制御式の可変容量型圧縮機の制御装置に関し、特に、車速の急変時における外部制御を適正に行うものに関する。
【0002】
【従来の技術】
車載用エアコンシステムに用いられる可変容量型圧縮機は、蒸発器の吹出空気温度(あるいはフィン温度)を設定値とするような吸入圧力が得られるように吐出容量を制御するようにしている。この吐出容量の制御は、斜板が収容されたクランク室の圧力を圧力制御弁によって調節することで行われており、高い制御精度が要求される場合には、外部から電気制御する外部制御弁が用いられる。このような外部制御弁は、電磁ソレノイドなどのアクチュエータを有し、この電磁ソレノイドへの制御量(供給電流量)を外部から制御するようにしている。
【0003】
ところで、このような外制式可変容量型圧縮機を用いられた冷媒循環サイクルにおいては、サイクル稼動中に、車速が急激に変化する場合、例えば、アイドリング状態から急発進するような場合に、次のような不都合が確認されている。
【0004】
通常の外部制御弁による動作によれば、エンジン回転速度が増加すると、これに伴ってコンプレッサの回転速度が増加するので、図3(a)に示されるように、1,2秒後に吸入圧Psが低下すると共に吐出圧Pdが上昇することとなる。このため、外部制御弁は変化前の低圧状態を維持しようとするので、圧縮機のクランク室圧が増加し、ピストンストロークが小さくなって吐出容量が小さくなる。
【0005】
ところが、エンジン回転速度の変化が速い場合には、制御弁のこうした制御が間に合わず、ピストンストロークは即座に小さくならないことから、圧縮機のトルク低下が遅れ、このため、図3(b)の破線で示されるように、軸動力が一時的に過大となり、圧縮機の駆動に余分なエネルギーが消費される不都合があった。しかも、エンジン制御用のコントロールユニットは、車両のドライバビリティを確保することから、圧縮機のトルク変動を見越したトルク管理を行っているので、過渡走行時における燃料消費の低減は極めて困難であった。
【0006】
そして、しばらくすると、吹出空気温度が設定値より下がり、ようやくピストンストロークが小さくなるが、この場合には動力がアンダーシュートして下がり過ぎる不都合がある。
【0007】
このため、このような不都合を回避する策として、エンジン回転速度が増加した場合に、圧縮機を強制的にデストロークさせ、圧縮機動力を一時的に低下させることも考えられる(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−73941号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジン回転速度の増加時に圧縮機に対するトルクを一時的に低下させても、蒸発器の吹出空気温度を設定値に維持させる通常制御に戻す場合には、ピストンストロークが急激に大きくなり、圧縮機の軸動力が一時的に過大となってオーバーシュートする不都合がある。このため、エンジン回転速度の増加を検知し、単にピストンをデストロークさせるような制御を行ったのでは、適切な動力管理を行うことができないという問題がある。
【0010】
以上のような無駄な動力は、車両の速度が急減速する場合にも生じる。即ち、高速走行時にある吹出空気温度になるように外部制御弁が制御されているときに、例えば、ギアがニュートラルに切り替わると、1,2秒後に吸入圧力Psが上昇し、外部制御弁は変化前の低圧状態を維持しようとするので、クランク室圧が低下し、ピストンストロークが大きくなって吐出容量が増大するが、圧縮機の回転速度変化が急激になると、制御弁のこうした制御が遅れるので、吹出空気温度が上がったり、軸動力が過大となって余分なエネルギーが費やされる不都合がある。
【0011】
そこで、この発明においては、外部制御式の可変容量型圧縮機において、圧縮機の回転速度が急変した場合に生じる軸動力のオーバーシュートやアンダーシュートを防ぎ、無駄な動力を抑えて燃料消費を低減することができる可変容量型圧縮機の制御装置を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る可変容量型圧縮機の制御装置は、外部制御弁の電流変化に対する時定数は、数十msecと早く、従ってこの電流信号を適切に制御することで上述の課題に対応できること、また、エアコン動力を、圧縮に寄与する動力(圧縮動力)と回転に寄与する動力(回転動力)とに分け、圧縮に寄与する動力を冷媒循環流量と圧縮比との積で考えることにより、蒸発器の吹出空気温度の設定値が同じである限り、回転変動の前後で圧縮機動力を一定に維持するように外部制御すればよいことから圧縮機の制御量が推定できることに基づいている。
【0013】
即ち、この発明にかかる可変容量型圧縮機の制御装置は、冷媒循環サイクルに用いられ、外部から供給される制御量を調節して吐出容量を制御するものにおいて、前記可変容量型圧縮機の回転速度の変化と相関する外部情報を検出する外部情報検出手段と、前記外部情報の変化率から所定時間経過後の前記可変容量型圧縮機の回転速度を予測する回転速度予測手段と、前記回転速度予測手段によって予測された回転速度に至るまでの圧縮機の回転に寄与する動力の変動量を予測する回転動力変動量予測手段と、前記回転動力変動量予測手段によって予測された変動量を見込んで、前記所定時間経過後の圧縮機の圧縮に寄与する動力を予測する圧縮動力予測手段と、前記圧縮動力予測手段によって予測された動力から前記所定時間経過後の圧縮機の吸入圧を演算する吸入圧演算手段と、前記可変容量型圧縮機の吸入圧を前記吸入圧演算手段によって演算された吸入圧とするように前記制御量を決定する制御量決定手段とを有することを特徴としている(請求項1)。
【0014】
ここで、可変容量型圧縮機は、吐出容量制御を司る圧力制御弁を有している場合には、制御量決定手段を、圧力制御弁へ供給する電流量を決定する手段とすればよく(請求項2)、外部情報検出手段は、例えば、アクセルペダルの踏み込み代を検出する手段を用いるとよい(請求項3)。
【0015】
したがって、回転速度予測手段によって、外部情報の変化率から所定時間経過後の圧縮機の回転速度が予測され、回転動力変動量予測手段によって、回転速度予測手段で予測された回転速度に至るまでの圧縮機の回転に寄与する動力の変動量が予測され、圧縮動力予測手段によって、回転動力変動量予測手段で予測された変動量を見込んで、所定時間経過後の圧縮機の圧縮に寄与する動力が予測される。そして、吸入圧演算手段によって、この予測された圧縮に寄与する動力から所定時間経過後の圧縮機の吸入圧が演算され、制御量決定手段によって、圧縮機の吸入圧が吸入圧演算手段で演算され吸入圧となるように圧縮機へ供給する制御量が決定される。
【0016】
よって、このような制御を用いれば、車速が急変しても、所定時間経過後の圧縮機の制御量を推定できるので、制御が間に合わなくなる不都合を回避することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面により説明する。
図1において、車両用空調装置に用いる外部制御式可変容量型圧縮機(以下、圧縮機という)の一実施形態が示されている。この圧縮機1は、走行用エンジン2からの動力を受け、この走行用エンジン2と同期して回転するクラッチレスタイプのもので、凝縮器3、減圧装置4、蒸発器5などと共に配管結合されて冷媒循環サイクル6を構成し、吐出容量を制御して吸入圧力を調節するようにしている。
【0018】
図1に示すように、圧縮機は、シリンダブロック11と、このシリンダブロック11のリア側(図中、右側)にバルブプレート12を介して組み付けられたリアヘッド13と、シリンダブロック11のフロント側(図中、左側)を閉塞するように組み付けられたフロントヘッド14とを有して構成されている。これらフロントヘッド14、シリンダブロック11、バルブプレート12、及び、リアヘッド13は、締結ボルト15により軸方向に締結されており、圧縮機全体のハウジングを構成している。
【0019】
フロントヘッド14とシリンダブロック11とによって画設されるクランク室16には、一端がフロントヘッド14から突出する駆動シャフト17が収容されている。この駆動シャフト17のフロントヘッド14から突出した部分には、ボルト18によって軸方向に取り付けられた中継部材19が固定されており、この中継部材19にフロントヘッド14の端部に回転自在に外嵌され、且つ、走行用エンジン2にベルトを介して連結される駆動プーリ20がネジ止めなどの手段によって固定されている。また、この駆動シャフト17の一端側は、フロントヘッド14との間に設けられたシール部材21を介してフロントヘッド14との間が気密よく封じられると共にラジアル軸受22にて回転自在に支持されており、駆動シャフト17の他端側は、シリンダブロック11に収容されたラジアル軸受23にて回転自在に支持されている。
【0020】
シリンダブロック11には、前記ラジアル軸受23が収容される貫通孔24と、この貫通孔24を中心とする円周上に等間隔に配された複数のシリンダボア25とが形成されており、それぞれのシリンダボア25には、片頭ピストン26が往復摺動可能に挿入されている。この片頭ピストン26は、シリンダボア25内に挿入される頭部26aと、クランク室16に突出する係合部26bとを軸方向に接合して中空に形成されている。
【0021】
前記駆動シャフト17には、クランク室16内において、該駆動シャフト17と一体に回転するスラストフランジ27が固定されている。このスラストフランジ27は、フロントヘッド14に対してスラスト軸受28を介して回転自在に支持されており、このスラストフランジ27には、リンク部材29を介して斜板30が連結されている。斜板30は、駆動シャフト17上に設けられたヒンジボール31を中心に傾動可能に取り付けられているもので、スラストフランジ27の回転に同期して一体に回転するようになっている。そして、斜板30は、その周縁部分が前後に設けられた一対のシュー32を介して片頭ピストン26の係合部26bに係留されている。
【0022】
したがって、駆動シャフト17が回転すると、これに伴って斜板30が回転し、この斜板30の回転運動がシュー32を介して片頭ピストン26の往復直線運動に変換され、シリンダボア内において片頭ピストン26とバルブプレート12との間に形成される圧縮室の容積が変更されるようになっている。
【0023】
バルブプレート12には、それぞれのシリンダボア25に対応して吸入孔34と吐出孔35とが形成され、また、リアヘッド13には、圧縮室に供給する作動流体を収容する吸入室36と、圧縮室から吐出した作動流体を収容する吐出室37とが画設されている。吸入室36は、リアヘッド13の中央部分に形成されており、蒸発器5の出口側に通じる吸入口38に連通すると共にバルブプレート12の吸入孔34を介して圧縮室に連通可能となっている。また、吐出室37は、吸入室36の周囲に連続的に形成されており、凝縮器3の入口側に通じる吐出口に連通すると共にバルブプレート12の吐出孔35を介して圧縮室に連通可能となっている。ここで、吸入孔34は、バルブプレート12のフロント側端面に設けられた吸入弁39によって開閉され、吐出孔35は、バルブプレート12のリア側端面に設けられた吐出弁40によって開閉されるようになっている。
【0024】
この圧縮機1の吐出容量は、ピストン26のストロークによって決定され、このストロークは、ピストン26の前面にかかる圧力、即ち圧縮室の圧力(シリンダボア内の圧力)と、ピストンの背面にかかる圧力、即ちクランク室16内の圧力(クランク室圧Pc)との差圧によって決定される。具体的には、クランク室16内の圧力を高くすれば、圧縮室とクランク室16との差圧が小さくなるので、斜板30の傾斜角度(揺動角度)が小さくなり、このため、ピストン26のストロークが小さくなって吐出容量が小さくなり、逆に、クランク室16の圧力を低くすれば、圧縮室とクランク室16との差圧が大きくなるので、斜板30の傾斜角度(揺動角度)が大きくなり、このため、ピストン26のストロークが大きくなって吐出容量が大きくなる。
【0025】
そして、この例においては、シリンダブロック11、バルブプレート12、及びリアヘッド13に亘って形成された通路によって吐出室37とクランク室16とを連通する給気通路41が形成され、貫通孔24と連通するバルブプレート12に形成された通孔42やラジアル軸受23の隙間などによってクランク室16と吸入室36とを連通する絞り通路が形成され、給気通路41上に圧力制御弁43が設けられている。この圧力制御弁43は、リアヘッド13に形成された制御弁装着孔45に装着され、給気通路41の開度を調節することで、クランク室16の圧力(クランク室圧Pc)を制御しているもので、電磁ソレノイドなどのアクチュエータを有し、ソレノイドに供給される電流量を調節して給気通路の開度が制御されるようになっている。
【0026】
ところで、前記エンジン2は、エンジン制御ユニット(ECU)50によって制御されている。このECU50は、アクセルペダルの踏み代をエンジン吸気管路に設けられたスロットル弁の開度として検出するアクセル開度センサ51や、車速センサ52、エンジン回転速度センサ53などからの信号を入力し、これらセンサの入力信号から得られた情報に基づき、燃料噴射量や噴射タイミング、点火時期などを最適値に制御している。
【0027】
また、エンジン制御ユニット(ECU)50は、エアコン制御ユニット(A/C CU)54に接続されており、入力された各種センサから得られる情報(アクセル開度センサ51から得られたアクセル開度情報、車速センサ52から得られた車速情報、エンジン回転速度センサ53から得られたエンジン回転速度情報など)をエアコン制御ユニット54へ供給している。このエアコン制御ユニット(A/C CU)54には、圧縮機1の吐出圧を検出する吐出圧センサ55、圧縮機1の吸入圧を検出する吸入圧センサ56、外気温センサ57などの各種センサからの信号が入力されると共に、エアコンスイッチや車室の目標温度を設定する温度設定器などを備えた操作パネル58からの信号が入力され、空調装置の総合的な制御を行っている。
【0028】
ここで、エアコン制御ユニット(A/C CU)54は、中央演算装置(CPU)、読出専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力ポート等を備えて構成されるそれ自体公知のもので、メモリに与えられた所定のプログラムにしたがって各種センサやECU、操作パネルからの入力信号を処理し、圧力制御弁43に対しては、供給する電流量を制御するようにしている。
【0029】
図2において、エアコン制御ユニット(A/C CU)による圧力制御弁43へ供給する電流制御例がフロチャートとして示されており、以下、このフローチャートに基づいて制御動作例を説明する。
【0030】
エアコン制御ユニット(A/C CU)54は、空調装置を起動して、一連の初期処理を経た後に、この制御ルーチンの処理を所定の間隔で行うもので、ステップ60において、各種センサやECU50、操作パネル58からの前述した信号(アクセル開度、車速:Vs、エンジン回転速度:N、吐出圧:Pd、吸入圧:Ps、外気温度Tamb に対応する信号)を入力し、次のステップ62において、アクセル開度センサ51によって車両の加速度、即ち、エンジン回転速度Nの変化率(圧縮機回転速度変化)ΔNが所定値以上であるか否かを判定する。
【0031】
このステップで、速度変化が所定値αよりも小さいと判定された場合には、急速な車速変化で制御弁の動作が大きく遅れることはないので、蒸発器の吹出空気温度(あるいはフィン温度)を設定値とする通常の吐出容量制御を行うための供給電流が決定される(ステップ74)。これに対して、速度変化が所定値以上であると判定された場合には、急速に車速が変化しているので、制御弁43の動作が遅れる懸念があるため、ステップ64〜72に示す予測制御が行われる。
【0032】
ここで行われる予測制御は、エアコン動力、即ち、圧縮機に必要となる動力(圧縮機動力:L)を、圧縮に寄与する動力(圧縮動力=a(Gr*W) ) と回転に寄与する動力(回転動力=bN) とに分け、圧縮に寄与する動力を冷媒循環流量Grと、圧縮比又は冷凍サイクルの圧縮エンタルピ変化Wとの積と考え、圧縮機1の回転速度が変化しても、要求吹出空気温度が同じであれば、圧縮機動力Lと冷媒循環量Grが同じであることから、下記する数1の関係が成り立つことに基づいている。
【0033】
【数1】
a*Gr*W+b*N=a*Gr*W+b*N
【0034】
尚、Wは、圧縮機の回転速度がNであるときの冷凍サイクルの圧縮エンタルピ変化、Wは、圧縮機の回転速度がNであるときの冷凍サイクルの圧縮エンタルピ変化をそれぞれ表す。また、速度変化後の圧縮動力は、数1を変形すると、数2のようになる。
【0035】
【数2】
a*Gr*W=a*Gr*W−b(N−N
【0036】
ここで、Gr*Wは、Pd,Ps,Vs,Tamb の関数であり、また、Grは、Pd,Vs,Tamb の関数(Gr=f(Pd,Vs,Tamb ))、Wは、Pd,Psの関数(W=g(Pd,Vs,Tamb ))である。
【0037】
以上の関係を前提として、予測制御は、先ず、ステップ64において、アクセル開度情報に基づき、例えば3秒後の圧縮機1の回転速度を予測する。
【0038】
そして、次のステップ66において、前記ステップ64で予測された3秒後の回転速度に至るまでの圧縮機の回転に寄与する動力(回転動力)の変動量、すなわち、3秒後の回転速度での回転動力(b*N)と現在の回転速度での回転動力(b*N)との差b(N−N)を予測する。
【0039】
通常、過渡時での圧縮機効率は相対的に低下することから、この回転動力の変動量は、圧縮機効率の低下によるエアコン動力の増加量に相当している。よって、この増加量が圧縮機動力に反映されることとなるので、その分を差し引いた圧縮動力を上記数2によって計算することで、3秒後の圧縮動力を予測する(ステップ68)。
【0040】
そして、Grは、Pd,Vs,Tamb によって推定され、Wは、Pd,Psから推定されるので、ステップ70において、ステップ68によって推定された3秒後の圧縮動力(a*Gr*W)から3秒後の吸入圧Ps’を予測し、ステップ72において、この予測された吸入圧Ps’と現在の吸入圧Psとの差に基づき圧力制御弁43へ供給電流を決定する。即ち、圧縮機1の吸入圧をステップ70によって予測された吸入圧とするように供給電流を決定する。
【0041】
したがって、車両が加速を始めると、その情報に基づき3秒先の吸入圧を予測して圧力制御弁の供給電流が決定されるので、車速急変時に制御弁の制御が間に合わなくなる不都合を回避することが可能となり、図3(b)の実線で見られるように、圧縮機の軸動力のオーバーシュートやアンダーシュートを防ぐことが可能となる。よって、圧縮機の軸動力が一時的に過大となり、圧縮機の駆動に余分なエネルギーが消費される不都合がなくなり、エンジン制御ユニット(ECU)50が、車両のドライバビリティを確保するために圧縮機のトルク変動を見越してトルク管理を行う場合でも、過渡走行時での燃料消費を低減することが可能となる。
【0042】
尚、上述の制御においては、車速が急速に増加する場合について述べたが、車速が急速に減速する場合も同様の制御を行うことで、圧縮機の動力管理が適切に行われ、燃料消費を低減することが可能となる。また、上述の例では、予測する時間を3秒後とした場合を示したが、車種などに応じて適宜変更しても良い。
【0043】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、所定時間経過後の圧縮機の制御量を推定し、これに基づいて圧縮機が制御されるので、車速急変時での応答遅れがなくなり、動力損失を回避することが可能となる。このため、車両の燃料消費を抑えることが可能となり、ドライバビリティを確保する必要から、圧縮機のトルク変動を見越したトルク管理を行う場合でも、燃料消費を低減させることが可能となる。
【0044】
また、圧縮機の制御量を予測して車速急変時での応答遅れをなくしたので、吹出空気温度を設定値に維持させることが可能となり、また、応答性の遅い制御弁を用いた場合でも、制御弁の特性の良否に拘わらず良好な動力管理が行え、無駄な動力損失を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る可変容量型圧縮機の動力制御装置の例を示す概略構成図である。
【図2】図2は、図1のエアコン制御ユニット(A/C CU)による制御動作例を示すフローチャートである。
【図3】図3(a)は、車速を増加させた場合の吐出圧Pd、吸入圧Ps、供給電流の変化を示す特性線図であり、図3(b)は、車速を増加させた場合の圧縮機回転速度、従来の制御による動力変化、本案の制御による動力変化を示す特性線図である。
【符号の説明】
1 圧縮機
6 冷媒循環サイクル
43 圧力制御弁
51 アクセル開度センサ

Claims (3)

  1. 冷媒循環サイクルに用いられ、外部から供給される制御量を調節して吐出容量を制御する可変容量型圧縮機の制御装置において、
    前記可変容量型圧縮機の回転速度の変化と相関する外部情報を検出する外部情報検出手段と、
    前記外部情報の変化率から所定時間経過後の前記可変容量型圧縮機の回転速度を予測する回転速度予測手段と、
    前記回転速度予測手段によって予測された回転速度に至るまでの圧縮機の回転に寄与する動力の変動量を予測する回転動力変動量予測手段と、
    前記回転動力変動量予測手段によって予測された変動量を見込んで、前記所定時間経過後の圧縮機の圧縮に寄与する動力を予測する圧縮動力予測手段と、
    前記圧縮動力予測手段によって予測された動力から前記所定時間経過後の圧縮機の吸入圧を演算する吸入圧演算手段と、
    前記可変容量型圧縮機の吸入圧を前記吸入圧演算手段によって演算された吸入圧とするように前記制御量を決定する制御量決定手段と
    を有することを特徴とする可変容量型圧縮機の制御装置。
  2. 前記可変容量型圧縮機は、吐出容量制御を司る圧力制御弁を有し、前記制御量決定手段は、前記圧力制御弁へ供給する電流量を決定するものであることを特徴とする請求項1記載の可変容量型圧縮機の制御装置。
  3. 前記外部情報検出手段は、アクセルペダルの踏み込み代を検出する手段であることを特徴とする請求項1記載の可変容量型圧縮機の動力制御装置。
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