JP2004183109A - 不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】紙又は不織布状の成形体を構成できる構造を有し、また生分解性を有し、かつ再生可能な資源より合成され、更に可能熱可塑性を有し、かつ湿潤時の強度保持率が高い、不連続フィブリル状高分子材料、特に不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体とその製造方法を提供する。
【解決手段】長さ10μm〜10mmのフィブリル状およびフィルム状物のポリ乳酸から構成されることを特徴とする不連続フィブリル状ポリ乳酸であり、ポリ乳酸を溶媒に溶解した紡糸原液を、紡糸吐出口を通して混合セル内に吐出すると同時に、水蒸気を混合セル内に噴出し、混合セル内でポリ乳酸を剪断流速の下で凝固させ、形成された凝固体を前記溶媒および水蒸気と共に混合セルから、水又は、水及び前記溶媒の混合溶媒からなる凝固液中に排出することにより得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】長さ10μm〜10mmのフィブリル状およびフィルム状物のポリ乳酸から構成されることを特徴とする不連続フィブリル状ポリ乳酸であり、ポリ乳酸を溶媒に溶解した紡糸原液を、紡糸吐出口を通して混合セル内に吐出すると同時に、水蒸気を混合セル内に噴出し、混合セル内でポリ乳酸を剪断流速の下で凝固させ、形成された凝固体を前記溶媒および水蒸気と共に混合セルから、水又は、水及び前記溶媒の混合溶媒からなる凝固液中に排出することにより得られる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、天然資源問題と地球環境問題の観点から、化石資源から再生可能な資源を用いた化学原料体系へシフトする流れや、廃棄物問題から生分解性のある材料への関心が高まっている。特に再生可能な資源から合成される生分解性材料は、これらの問題を解決する一つの手段として有効である。
【0003】
一方、高分子材料は、その成形性の良さや素材の力学的・物理的・化学的性質の特徴を活かし、幅広い用途に用いられている。特にポリエチレンやポリプロピレンに代表される熱可塑性高分子材料は、溶融成形法により、繊維、フィルム、三次元成形体と様々な形に賦形可能であり、特に良く用いられている。
【0004】
ポリ乳酸は脂肪族ポリエステル材料の一種であり、光学活性な乳酸より合成されるポリ乳酸は生分解性に富んでいることが知られている。特にL−乳酸を出発物質としたポリ−L−乳酸(以後ポリ乳酸と表記)は、モノマーであるL−乳酸を、乳酸発酵法により再生可能な天然資源、例えばトウモロコシやサツマイモなどから取れるデンプンなどを出発原料として大量に合成することが可能であり、ポリ乳酸は土中の微生物により分解されるため、環境負荷の小さい高分子材料として注目されている。このためポリ乳酸を用いた繊維、フィルム、三次元成形体の開発が盛んに行われている。
【0005】
一方、不連続フィブリル状高分子材料は、木材パルプに代表されるように、紙または不織布等のシート状物を得るための原料として好適に利用されている。昨今はパルプモールディング法と呼ばれる手法によりトレイ状容器やボトル状容器を成形する際の原料としても利用されている。
【0006】
不連続フィブリル状高分子材料には、木材パルプや麻やケナフなどの非木材繊維を叩解して得られるセルロースを主体とする天然材料の他、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性高分子や、ポリアクリロニトリルや芳香族ポリアミドなどの溶剤可溶性高分子など各種知られており、かかる不連続フィブリル状高分子の製造方法は、例えば特開平9−241917号公報に開示されている。
【0007】
一般的に、不連続フィブリル状高分子材料よりなる成形体の力学的強度は、材料の表面より分岐した多数の触手状突起物が相互に絡み合うことで発現する。さらに力学的強度を向上させる手法としては、糊などに代表される接着剤として働く剤を成型時あるいは成形後に成形体に付与する手法がある。あるいは、熱可塑性を有する材料を、繊維状、パルプ状、あるいは粒子状物を成型時に混合し、成形後更に熱処理することにより熱可塑性材料を相互接着させる手法が知られている。
【0008】
しかしながら、一般的に熱可塑性を有する高分子材料には生分解性を有するものが少なく、ポリビニルアルコールが熱可塑性と生分解性を有する高分子材料として汎用的に利用されているのみである。しかしポリビニルアルコールは水溶性であることから、湿潤状態での強度保持に関しては問題があり、またその原料も一般的には化石資源由来である。
【0009】
かかる問題を解決するための高分子材料として、ポリ乳酸を用いた紙又は不織布状の構造を有し、適度な強度保持率を有する成形体は得られていなかった。
【0010】
【特許文献】
特開平9−241917号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙あるいは不織布状の成形体を構成できる構造を有し、また生分解性を有し、かつ再生可能な資源より合成され、更に可能熱可塑性を有し、かつ湿潤時の強度保持率が高い、不連続フィブリル状高分子材料、特に不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体とその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の要旨は、長さ10μm〜10mmのフィブリル状およびフィルム状物のポリ乳酸から構成されることを特徴とする不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体にあり、
本発明の第2の要旨は、ポリ乳酸を溶媒に溶解した紡糸原液を、紡糸吐出口を通して混合セル内に吐出すると同時に、水蒸気をポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向に対して0度以上、90度未満の角度で混合セル内に噴出し、混合セル内でポリ乳酸を剪断流速の下で凝固させ、形成された凝固体を前記溶媒および水蒸気と共に混合セルから、さらに、水又は、水及び前記溶媒の混合溶媒からなる凝固液中に排出することを特徴とするポリ乳酸フィブリル状およびフィルム状物の不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の製造方法にある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体は長さ10μm〜10mmのフィブリル状およびフィルム状物で構成している。本発明において3次元網状組織を形成するサブミクロンオーダー(約0.01ミクロン)〜ミクロンオーダー(約30ミクロン)の太さからなる無数の微細な繊維が枝分かれした構造を有するものをフィブリル状物といい、フィルム状とは、サブミクロンオーダー(約0.01ミクロン)〜ミクロンオーダー(約30ミクロン)の厚さを有した扁平状のものをいう。不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の長さは、10μm〜10mmであることが成形体の強度及び柔軟性の面から必要である。10μm未満では成形体強度が低くなる問題があり、10mmを超えると成形体が剛直となる問題がある。また、本発明の不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体は、フィブリル状物とフィルム状物との双方が存在していることが特徴であり、成形体の嵩高性を有している。
【0014】
フィブリル状およびフィルム状物の形態の幅(フィブリルの場合は直径)は小さく、比表面積が高い形態をしていることが好ましく、フィブリル状物の場合は直径0.1μm〜30μmフィルム状物の場合は幅0.1μm〜30μmが好ましい。さらに本発明では、少なくとも、1000μm以上の長さを有するフィブリル状又はフィルム状物の割合が5%以上をもつ不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体であることが好ましい。1000μm以上の長さを有するフィブリル状物の割合が5%未満であると、フィブリル状物相互の絡み合いが少なくなり成形体の力学的強度が不充分となる傾向がある。この不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体は、紙あるいは不織布、さらにはパルプモールディング法などによる成形体などに用いるのに好適である。
【0015】
また、不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の濾水度が200ml以上800ml以下であることが好ましい。濾水度が200ml未満では、フィブリル状物を成形体に加工する場合、特に湿式法で成形する場合、例えば湿式抄紙やパルプモールディング法などで加工する際に、水切れが悪く、成形工程を複雑にしてしまう。また濾水度が800mlより大きい場合は、フィブリル状物相互の絡み合いが少なくなる傾向があり好ましくない。
【0016】
次ぎに、このような不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の製造方法について説明する。本発明に用いるポリ乳酸とは、L−乳酸を出発物質として、環化2量体であるL,L−ラクチドを経由し開環重合で得ることが出来る。あるいはL−乳酸より直接脱水重縮合する事により得ることも出来る。なお、ポリ乳酸は、L−乳酸から合成されるホモポリマーに必ずしも限定されるものではなく、一部D−乳酸が混入したポリ乳酸でも良く、また乳酸以外のモノマーを含有する共重合体でも良い。これらのポリマーは本発明の効果を何ら制限するものではない。
【0017】
本発明で用いるポリ乳酸を溶解する溶媒としては、本発明に用いるポリ乳酸を溶解する溶剤であれば特に限定されるものではない。例えば、本発明で用いるポリ乳酸の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、アセトン等の単独溶剤が挙げられる。また、これらの混合溶媒を用いることも可能である。さらにポリ乳酸の溶解性に影響を与えない範囲で、水やエタノールなどの非溶剤を添加することも可能である。
【0018】
本発明に用いるポリ乳酸溶液の濃度は10〜70重量%が好ましい。ポリ乳酸溶液濃度が10重量%未満の場合、凝固体の形態が目的物とは異なった凝固体となり、70重量%より高い場合は集合セル中で噴射物の詰まりが発生し生産性が低下したり、凝固体が目的とする不連続フィブリル状とは異なる形状となる。
【0019】
本発明では、ポリ乳酸を溶媒に溶解した紡糸原液を、紡糸吐出口を通して混合セル内に吐出する。ここで用いる紡糸吐出口の口径は溶液の吐出量によって適宜選択が可能であるが、円形の孔の場合は、直径30μm〜0.5mm、好ましくは0.1mm〜0.3mmである。吐出口の形は特に限定するものではなく、矩形、三角等の形状も可能であり、また複数の吐出口から混合セルに吐出することも可能である。
【0020】
また、本発明では、水蒸気をポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向に対して0度以上、90度未満の角度で混合セル内に噴出させる。水蒸気の噴出角度を上記範囲に設定することで、凝固されたポリ乳酸、溶媒および水からなる懸濁液をすみやかに混合セルの出口から排出することが可能となる。さらに、比表面積の高い凝固体を得るためには、水蒸気の噴出角度を、20度から80度、より好ましくは30度から70度の範囲に設定する必要がある。この範囲内で両液を吐出することによって、混合セルに吐出されるポリ乳酸の紡糸原液と水蒸気が十分混合され、これら混合液は、すみやかに、剪断流となり、混合セルを通ることによって比表面積の高い凝固体を得ることが可能となる。ポリ乳酸の紡糸原液の吐出線と水蒸気の噴出線が並行な場合、すなわち両者のなす角度が0度の場合、ポリ乳酸の紡糸原液と水蒸気の混合が不十分となるが、十分な長さの混合セルを設けることによって、8m2/g以上の比表面積を有するポリ乳酸の凝固体を得ることが可能である。
【0021】
この混合セルで、ポリ乳酸紡糸原液と水蒸気の混合により、該混合液に剪断が与えられ、ポリ乳酸の凝固が行われる。ここで、凝固とはポリ乳酸紡糸原液から凝固体を形成せしめる最小限の溶媒と凝固剤の置換を意味するものであり、凝固体は溶媒を含有したゲル状態をも含むものである。本発明でいう混合セルとは、具体的にはポリ乳酸紡糸原液と水蒸気が接触した位置から下方部に設けられた、ある一定の長さを有する隙間であり、その長さは、100mm以下、好ましくは10mm〜50mmである。混合セルを短くすると、得られる凝固体はフィルム状を呈する様になりフィブリル状物の存在が少なく、比表面積の小さな凝固体となる。さらに、混合セルの長さが0.1mm未満の場合、水蒸気により凝固されたポリ乳酸の一部が混合セル吐出口周辺に付着し、混合セル吐出口を閉塞しやすくなり、好ましくない。0.1mm以上の長さを有することで凝固したポリ乳酸は水蒸気による剪断流によって混合セルの出口よりすみやかに排出することができる。一方、混合セルを長くすると、ポリ乳酸紡糸原液と水蒸気が十分混合され、また、十分な剪断を受け、得られる凝固体はフィブリル状の繊維となり、比表面積の大きな凝固体を形成する。しかしながら、必要以上に長くすると生成するフィブリル状の繊維によって詰まりが発生し易くなり、工業的には問題となり、100mm以下が好ましい。
【0022】
混合セルの大きさは特に限定するものではないが、形成された繊維による詰まりを防止する上で、円筒状の形状を有する場合好ましくは1mmφ以上、矩形のスリットの場合でも1mm以上の大きさが必要である。また、混合セルの形状は上記の如く十分長さを有するものであればよく、断面の形状が円形、矩形等どのような形であっても本発明の繊維を得ることができる。なお、混合セルの出口方向へ断面積を小さくすること、また逆に大きくすること、さらに先端を丸くし、排出口を広げることも可能である。但し、混合セルの大きさは必要な水蒸気の線流速を得る上であまり大きいと好ましくない。水蒸気の線流速は水蒸気の噴出流量、及び混合セルの大きさによって変化するが、水蒸気の線流速は、100m/sec.以上が好ましい。100m/sec.以下あれば十分な比表面積を有する凝固体が得られ難く、混合セルの長さによってもことなるが、混合セル内での詰まりを発生しやすくなる。逆に線流速を上げると比表面積の高い凝固体を得ることができるが、線流速を上げるために必要以上に水蒸気を使用することは工業的な面で経済的でない。また、混合セルの断面積を小さくして線流速を高めることも可能であるが、前述したように極度な断面積の縮小は詰まりの原因となり好ましくない。
【0023】
水蒸気の噴出流量は混合セル内の剪断を与える一方、ポリ乳酸紡糸原液との接触によりポリ乳酸を凝固せしめる役割を有している。凝固を行うための水蒸気の適切な量は、紡糸原液の濃度、紡糸原液の吐出量によって変化するが、混合セル内での水蒸気の線流速が100m/sec.であれば十分である。水蒸気の噴出位置はポリ乳酸紡糸原液の吐出線の円周状または内部から噴出させることができる。ポリ乳酸紡糸原液の吐出口と水蒸気の噴出口は、できるだけ接近している構造が両液の混合を効果的に行うために望ましが、必要以上に近すぎると形成される凝固物によって水蒸気の噴出口を閉塞しやすくなるので、ポリ乳酸紡糸原液の吐出口の最外周位置と水蒸気の噴出口の最外周位置との距離を0.8mm以上になるように設計することが好ましい。
【0024】
形成されたポリ乳酸の凝固体、溶媒及び水蒸気の混合流体は、混合セル出口より、水又は水と該ポリ乳酸の溶媒の混合溶媒からなる凝固液中に排出される。混合セルより排出されたポリ乳酸の凝固体は溶媒により膨潤状態にある場合が多く、直接積層を行うと形成されたフィブリル繊維同士が融着し、比表面積の低下を引き起こす原因となり好ましくない。
【0025】
凝固液中の溶媒濃度は特に限定するものではないが、形成されたポリ乳酸の凝固体が膨潤しない範囲であれば本発明の素材を製造することができ、概ね溶媒濃度が、50重量%以下が好ましい。さらに、工業的な意味では、凝固液中の溶媒濃度を紡糸原液の溶解に使用される溶媒流量と水蒸気との重量比に保ち、物質バランスを取ることが、連続化した製造方法を考える上では好ましい。
【0026】
混合セルより凝固液中へ排出されたポリ乳酸の凝固体は、公知の方法による洗浄を行なうことによって湿潤した形態、さらに乾燥を施すことによって乾燥した形態の素材を得ることができる。また洗浄時に熱水を用いることで、溶剤の置換を促進すると共に、膨潤状態にある凝固体を緻密化させる事が可能となる。また熱水処理をした凝固体は、乾燥することなく吸引脱水や圧搾脱水により含水率を下げ、ケーキ状の形態を与えることもできる。
【0027】
このようにして得られた不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体は、公知の方法で紙、不織布やパルプモールディング法等により二次成形加工することができる。例えば、カーデイングやエアレイを含む乾式法、湿式法、ニードルパンチ、ウオータージェットパンチなどがある。本発明では、凝固中に浮遊した前記不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体を直接シート状物に二次成形加工することも可能である。
【0028】
さらには前記不連続フィブリル状ポリ乳酸単独でなく、その他の材料と複合成型加工を施しても良い。例えば、綿、麻、ケナフなどの天然繊維やアセテートなどの人造繊維さらにはポリエステルやポリエチレンなどの合成繊維、木材パルプや麻、ケナフ、アラミド系の叩解パルプ、さらには木材粉やタルクなどの無機粒子などと複合加工する事が出来る。
【0029】
また二次加工された成型品、複合加工された成型品を含む、にポリ乳酸が軟化/溶融する温度まで加熱し、不連続フィブリル状ポリ乳酸を相互融着させ材料強度を向上させることが可能である。加熱時には成型品が変形するのを防ぐため、金型等でプレスしても良い。
【0030】
図1に本発明に用いられる紡糸吐出口と水蒸気噴出口と混合セルからなるノズルを示すが、ポリ乳酸紡糸原液と水蒸気の噴出線と角度は原液流路の中心線と水蒸気流路の中心線の角度が0度以上90度未満に設計することによって行なうことができる。それ以外のノズル形状は特に限定するものではない。たとえば、ポリ乳酸の紡糸原液の吐出口を複数設けたり、ポリ乳酸の紡糸原液吐出口と凝固剤流体の噴出口は1対1で対応している複数のユニットを1つの混合セルで対応させたノズルを使用し、高生産化を図ることも、本発明の要件を満足するものであれば可能である。1はポリ乳酸の紡糸原液の流路、2はポリ乳酸の紡糸原液の吐出口、3は水蒸気の流入口、4は水蒸気流路、5は混合セル、6は混合セルの出口をそれぞれ示す。線▲1▼はポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向、線▲2▼は凝固剤流体の噴射線方向を示し、角▲3▼は両者のなす角度をしめす。
【0031】
図2は、本発明に使用されるノズルの内、ポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向と凝固剤流体の噴射線方向が同じ方向である場合、すなわち、角▲3▼が0度である場合のノズルを示している。図3は本発明の製造方法の一例を示すプロセスを示す概略図である。
【0032】
次に、図1にしたがって、本発明の製造方法をさらに説明する。ポリ乳酸の紡糸原液は、例えばポリ乳酸ペレットをジメチルアセトアミドに分散混合し、加熱溶解することによって容易に調製することが可能である。溶液濃度は特に限定するものではないが、工業的な意味から洗浄効率、溶剤回収等の後工程の効率を考えると、少なくとも10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。さらに、酸化チタン等の白色顔料や無機微粒子や蛍光微粒子、さらに水等の凝固剤を予め溶液中に添加することも可能である。
【0033】
かくして得られたポリ乳酸の紡糸原液は通常工業的に用いられる高粘度溶液を押し出すギヤポンプ又は押し出し機によって、窒素加圧下で押し出し、図1に示したノズルへ定量供給を行う。紡糸原液は、ノズルへ供給されるポリ乳酸溶液の流路1を通過した後、吐出口2より混合セル5へ押し出される。更にポリ乳酸紡糸原液を供給すると同時に、水蒸気を流入口3より供給する。供給された水蒸気はスリット状の流路4を通じて混合セル5へ噴射され、ポリ乳酸の紡糸原液と混合される。混合セル内でポリ乳酸は剪断流速下で凝固し、フィブリル状、フィルム状の凝固体となり、出口6より排出される。
【0034】
このようにして得た凝固体は、図3に示すように、さらに凝固液中へ排出され、公知の方法で溶媒を除去することによって本発明のポリ乳酸極細弾性繊維不織布用素材を得ることができる。
【0035】
本発明によるポリ乳酸極細弾性不織布の製造法は洗浄工程の後にまたは同時に公知のシート賦形装置を連続的に取り付け、シートを賦形後、公知の方法により乾燥を行うことによって、不織布に成形できる。また、使用される溶媒の回収も公知の方式を採用することで達成される。
【0036】
かくして得られた不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体はその他の繊維又はパルプ状物と混合し不織布状に成形され、或いはトウ状の繊維と混合することによって不織布の形成が可能である。混合される繊維の形態としては、トウ状、チョップドファイバー状さらにパルプ状のものを使用することができる。素材としては特に限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0038】
[実施例1]
ポリ乳酸500gをジメチルアセトアミド500gに溶解し、50重量%のポリ乳酸のジメチルアセトアミド溶液を調製した。次いで得られた溶液を30℃に保ったまま、1.5kg/cm2の窒素加圧下で押し出し、ギヤポンプを用いて図1に示したノズル部へ定量供給を行うと同時に水蒸気を供給した。水蒸気の供給量は減圧弁により供給圧力を規定することにより行なった。水蒸気量は図1に示すノズルより水蒸気のみを凝固液中に噴射し、単位時間当たりの重量の増分を求めることにより測定した。
【0039】
直径が0.2mmφの溶液吐出口、直径が2mmφ、長さが10mmの円筒状の混合セル、水蒸気流路がスリット状で開度を390μmに調製し、溶液流路の中心線とスリットの中心線とのなす角度が60度になるように製作したノズルを用い、ポリ乳酸のジメチルアセトアミド溶液の供給量を12ml/min、水蒸気の供給圧を3.0kg/cm2とし、温度30℃の水中へ噴出した。このときの水蒸気消費量は水換算で90g/minであった。凝固液中に浮遊したポリ乳酸の凝固体を捕集し、更に70℃の熱水で一晩洗浄を行い、40℃の熱風で乾燥し、この得られた凝固体を、走査型電子顕微鏡を用いて繊維側面の形態を観察した。さらに、投写型実体顕微鏡(日本光学社製プロファイルプロジェクター V−12)を用いて繊維の長さ方向の形態を観察した。得られた凝固体は太さがサブμmから10μm、長さ数十μmから数mmで、表面より分岐した多数の触手状突起物が観察されるフィブリル状、フィルム状を呈する集合体であった。JIS P8121のパルプ濾水度試験方法(1)カナダ標準形で測定したところ、濾水度が650mlである不連続フィブリル状成形体であった。本発明の課題である湿潤時の強度保持率等のデータがあれば提示して下さい。実施例2も同様。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様の方法でポリ乳酸40重量%のアセトン溶液を調製した。次いで得られた溶液を室温に保ったまま、1.5kg/cm2の窒素加圧下で押し出し、ギヤポンプを用いて実施例1と同じノズル部へ定量供給を行った。ポリ乳酸のアセトン溶液の供給量を10ml/min、水蒸気の供給圧を3.0kg/cm2とし、温度30℃の水中へ噴出した。このときの水蒸気消費量は水換算で90g/minであった。凝固液中に浮遊したポリ乳酸の凝固体を捕集し、更に70℃の熱水で一晩洗浄を行い、40℃の熱風で乾燥したところ、得られた凝固体は太さサブμmから10μm、長さ数十μmから数百μmで多数の表面より分岐した触手状突起物が観察されるフィブリル状、フィルム状を呈する集合体であった。JIS P8121のパルプ濾水度試験方法(1)カナダ標準形で測定したところ、濾水度が350mlであった。
【0041】
【発明の効果】
本発明はポリ乳酸の溶液から形成される不連続フィブリル状の凝固体であり、しかも紙または不織布等のシート状物やパルプモールディング法等に好適である不連続フィブリル状を提供する。
【0042】
また本不連続フィブリル状物は生分解性を有し、かつ再生可能な資源より合成され、更に可能熱可塑性を有し、かつ湿潤時の強度保持率が高い素材であり、その産業上の意義は大きい。
【0043】
本発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるノズルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明で用いられるノズルの別の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の比較例に使用されるノズルの断面図である。
【符号の説明】
1:ポリ乳酸の紡糸原液の流路
2:ポリ乳酸の紡糸原液の吐出口
3:水蒸気の流入口
4:水蒸気流路
5:混合セル
6:混合セルの出口
▲1▼:重合体溶液の吐出線
▲2▼:凝固剤流体の噴射線
▲3▼:▲1▼と▲2▼のなす角度
【発明の属する技術分野】
本発明は不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、天然資源問題と地球環境問題の観点から、化石資源から再生可能な資源を用いた化学原料体系へシフトする流れや、廃棄物問題から生分解性のある材料への関心が高まっている。特に再生可能な資源から合成される生分解性材料は、これらの問題を解決する一つの手段として有効である。
【0003】
一方、高分子材料は、その成形性の良さや素材の力学的・物理的・化学的性質の特徴を活かし、幅広い用途に用いられている。特にポリエチレンやポリプロピレンに代表される熱可塑性高分子材料は、溶融成形法により、繊維、フィルム、三次元成形体と様々な形に賦形可能であり、特に良く用いられている。
【0004】
ポリ乳酸は脂肪族ポリエステル材料の一種であり、光学活性な乳酸より合成されるポリ乳酸は生分解性に富んでいることが知られている。特にL−乳酸を出発物質としたポリ−L−乳酸(以後ポリ乳酸と表記)は、モノマーであるL−乳酸を、乳酸発酵法により再生可能な天然資源、例えばトウモロコシやサツマイモなどから取れるデンプンなどを出発原料として大量に合成することが可能であり、ポリ乳酸は土中の微生物により分解されるため、環境負荷の小さい高分子材料として注目されている。このためポリ乳酸を用いた繊維、フィルム、三次元成形体の開発が盛んに行われている。
【0005】
一方、不連続フィブリル状高分子材料は、木材パルプに代表されるように、紙または不織布等のシート状物を得るための原料として好適に利用されている。昨今はパルプモールディング法と呼ばれる手法によりトレイ状容器やボトル状容器を成形する際の原料としても利用されている。
【0006】
不連続フィブリル状高分子材料には、木材パルプや麻やケナフなどの非木材繊維を叩解して得られるセルロースを主体とする天然材料の他、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性高分子や、ポリアクリロニトリルや芳香族ポリアミドなどの溶剤可溶性高分子など各種知られており、かかる不連続フィブリル状高分子の製造方法は、例えば特開平9−241917号公報に開示されている。
【0007】
一般的に、不連続フィブリル状高分子材料よりなる成形体の力学的強度は、材料の表面より分岐した多数の触手状突起物が相互に絡み合うことで発現する。さらに力学的強度を向上させる手法としては、糊などに代表される接着剤として働く剤を成型時あるいは成形後に成形体に付与する手法がある。あるいは、熱可塑性を有する材料を、繊維状、パルプ状、あるいは粒子状物を成型時に混合し、成形後更に熱処理することにより熱可塑性材料を相互接着させる手法が知られている。
【0008】
しかしながら、一般的に熱可塑性を有する高分子材料には生分解性を有するものが少なく、ポリビニルアルコールが熱可塑性と生分解性を有する高分子材料として汎用的に利用されているのみである。しかしポリビニルアルコールは水溶性であることから、湿潤状態での強度保持に関しては問題があり、またその原料も一般的には化石資源由来である。
【0009】
かかる問題を解決するための高分子材料として、ポリ乳酸を用いた紙又は不織布状の構造を有し、適度な強度保持率を有する成形体は得られていなかった。
【0010】
【特許文献】
特開平9−241917号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙あるいは不織布状の成形体を構成できる構造を有し、また生分解性を有し、かつ再生可能な資源より合成され、更に可能熱可塑性を有し、かつ湿潤時の強度保持率が高い、不連続フィブリル状高分子材料、特に不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体とその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の要旨は、長さ10μm〜10mmのフィブリル状およびフィルム状物のポリ乳酸から構成されることを特徴とする不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体にあり、
本発明の第2の要旨は、ポリ乳酸を溶媒に溶解した紡糸原液を、紡糸吐出口を通して混合セル内に吐出すると同時に、水蒸気をポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向に対して0度以上、90度未満の角度で混合セル内に噴出し、混合セル内でポリ乳酸を剪断流速の下で凝固させ、形成された凝固体を前記溶媒および水蒸気と共に混合セルから、さらに、水又は、水及び前記溶媒の混合溶媒からなる凝固液中に排出することを特徴とするポリ乳酸フィブリル状およびフィルム状物の不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の製造方法にある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体は長さ10μm〜10mmのフィブリル状およびフィルム状物で構成している。本発明において3次元網状組織を形成するサブミクロンオーダー(約0.01ミクロン)〜ミクロンオーダー(約30ミクロン)の太さからなる無数の微細な繊維が枝分かれした構造を有するものをフィブリル状物といい、フィルム状とは、サブミクロンオーダー(約0.01ミクロン)〜ミクロンオーダー(約30ミクロン)の厚さを有した扁平状のものをいう。不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の長さは、10μm〜10mmであることが成形体の強度及び柔軟性の面から必要である。10μm未満では成形体強度が低くなる問題があり、10mmを超えると成形体が剛直となる問題がある。また、本発明の不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体は、フィブリル状物とフィルム状物との双方が存在していることが特徴であり、成形体の嵩高性を有している。
【0014】
フィブリル状およびフィルム状物の形態の幅(フィブリルの場合は直径)は小さく、比表面積が高い形態をしていることが好ましく、フィブリル状物の場合は直径0.1μm〜30μmフィルム状物の場合は幅0.1μm〜30μmが好ましい。さらに本発明では、少なくとも、1000μm以上の長さを有するフィブリル状又はフィルム状物の割合が5%以上をもつ不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体であることが好ましい。1000μm以上の長さを有するフィブリル状物の割合が5%未満であると、フィブリル状物相互の絡み合いが少なくなり成形体の力学的強度が不充分となる傾向がある。この不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体は、紙あるいは不織布、さらにはパルプモールディング法などによる成形体などに用いるのに好適である。
【0015】
また、不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の濾水度が200ml以上800ml以下であることが好ましい。濾水度が200ml未満では、フィブリル状物を成形体に加工する場合、特に湿式法で成形する場合、例えば湿式抄紙やパルプモールディング法などで加工する際に、水切れが悪く、成形工程を複雑にしてしまう。また濾水度が800mlより大きい場合は、フィブリル状物相互の絡み合いが少なくなる傾向があり好ましくない。
【0016】
次ぎに、このような不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の製造方法について説明する。本発明に用いるポリ乳酸とは、L−乳酸を出発物質として、環化2量体であるL,L−ラクチドを経由し開環重合で得ることが出来る。あるいはL−乳酸より直接脱水重縮合する事により得ることも出来る。なお、ポリ乳酸は、L−乳酸から合成されるホモポリマーに必ずしも限定されるものではなく、一部D−乳酸が混入したポリ乳酸でも良く、また乳酸以外のモノマーを含有する共重合体でも良い。これらのポリマーは本発明の効果を何ら制限するものではない。
【0017】
本発明で用いるポリ乳酸を溶解する溶媒としては、本発明に用いるポリ乳酸を溶解する溶剤であれば特に限定されるものではない。例えば、本発明で用いるポリ乳酸の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、アセトン等の単独溶剤が挙げられる。また、これらの混合溶媒を用いることも可能である。さらにポリ乳酸の溶解性に影響を与えない範囲で、水やエタノールなどの非溶剤を添加することも可能である。
【0018】
本発明に用いるポリ乳酸溶液の濃度は10〜70重量%が好ましい。ポリ乳酸溶液濃度が10重量%未満の場合、凝固体の形態が目的物とは異なった凝固体となり、70重量%より高い場合は集合セル中で噴射物の詰まりが発生し生産性が低下したり、凝固体が目的とする不連続フィブリル状とは異なる形状となる。
【0019】
本発明では、ポリ乳酸を溶媒に溶解した紡糸原液を、紡糸吐出口を通して混合セル内に吐出する。ここで用いる紡糸吐出口の口径は溶液の吐出量によって適宜選択が可能であるが、円形の孔の場合は、直径30μm〜0.5mm、好ましくは0.1mm〜0.3mmである。吐出口の形は特に限定するものではなく、矩形、三角等の形状も可能であり、また複数の吐出口から混合セルに吐出することも可能である。
【0020】
また、本発明では、水蒸気をポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向に対して0度以上、90度未満の角度で混合セル内に噴出させる。水蒸気の噴出角度を上記範囲に設定することで、凝固されたポリ乳酸、溶媒および水からなる懸濁液をすみやかに混合セルの出口から排出することが可能となる。さらに、比表面積の高い凝固体を得るためには、水蒸気の噴出角度を、20度から80度、より好ましくは30度から70度の範囲に設定する必要がある。この範囲内で両液を吐出することによって、混合セルに吐出されるポリ乳酸の紡糸原液と水蒸気が十分混合され、これら混合液は、すみやかに、剪断流となり、混合セルを通ることによって比表面積の高い凝固体を得ることが可能となる。ポリ乳酸の紡糸原液の吐出線と水蒸気の噴出線が並行な場合、すなわち両者のなす角度が0度の場合、ポリ乳酸の紡糸原液と水蒸気の混合が不十分となるが、十分な長さの混合セルを設けることによって、8m2/g以上の比表面積を有するポリ乳酸の凝固体を得ることが可能である。
【0021】
この混合セルで、ポリ乳酸紡糸原液と水蒸気の混合により、該混合液に剪断が与えられ、ポリ乳酸の凝固が行われる。ここで、凝固とはポリ乳酸紡糸原液から凝固体を形成せしめる最小限の溶媒と凝固剤の置換を意味するものであり、凝固体は溶媒を含有したゲル状態をも含むものである。本発明でいう混合セルとは、具体的にはポリ乳酸紡糸原液と水蒸気が接触した位置から下方部に設けられた、ある一定の長さを有する隙間であり、その長さは、100mm以下、好ましくは10mm〜50mmである。混合セルを短くすると、得られる凝固体はフィルム状を呈する様になりフィブリル状物の存在が少なく、比表面積の小さな凝固体となる。さらに、混合セルの長さが0.1mm未満の場合、水蒸気により凝固されたポリ乳酸の一部が混合セル吐出口周辺に付着し、混合セル吐出口を閉塞しやすくなり、好ましくない。0.1mm以上の長さを有することで凝固したポリ乳酸は水蒸気による剪断流によって混合セルの出口よりすみやかに排出することができる。一方、混合セルを長くすると、ポリ乳酸紡糸原液と水蒸気が十分混合され、また、十分な剪断を受け、得られる凝固体はフィブリル状の繊維となり、比表面積の大きな凝固体を形成する。しかしながら、必要以上に長くすると生成するフィブリル状の繊維によって詰まりが発生し易くなり、工業的には問題となり、100mm以下が好ましい。
【0022】
混合セルの大きさは特に限定するものではないが、形成された繊維による詰まりを防止する上で、円筒状の形状を有する場合好ましくは1mmφ以上、矩形のスリットの場合でも1mm以上の大きさが必要である。また、混合セルの形状は上記の如く十分長さを有するものであればよく、断面の形状が円形、矩形等どのような形であっても本発明の繊維を得ることができる。なお、混合セルの出口方向へ断面積を小さくすること、また逆に大きくすること、さらに先端を丸くし、排出口を広げることも可能である。但し、混合セルの大きさは必要な水蒸気の線流速を得る上であまり大きいと好ましくない。水蒸気の線流速は水蒸気の噴出流量、及び混合セルの大きさによって変化するが、水蒸気の線流速は、100m/sec.以上が好ましい。100m/sec.以下あれば十分な比表面積を有する凝固体が得られ難く、混合セルの長さによってもことなるが、混合セル内での詰まりを発生しやすくなる。逆に線流速を上げると比表面積の高い凝固体を得ることができるが、線流速を上げるために必要以上に水蒸気を使用することは工業的な面で経済的でない。また、混合セルの断面積を小さくして線流速を高めることも可能であるが、前述したように極度な断面積の縮小は詰まりの原因となり好ましくない。
【0023】
水蒸気の噴出流量は混合セル内の剪断を与える一方、ポリ乳酸紡糸原液との接触によりポリ乳酸を凝固せしめる役割を有している。凝固を行うための水蒸気の適切な量は、紡糸原液の濃度、紡糸原液の吐出量によって変化するが、混合セル内での水蒸気の線流速が100m/sec.であれば十分である。水蒸気の噴出位置はポリ乳酸紡糸原液の吐出線の円周状または内部から噴出させることができる。ポリ乳酸紡糸原液の吐出口と水蒸気の噴出口は、できるだけ接近している構造が両液の混合を効果的に行うために望ましが、必要以上に近すぎると形成される凝固物によって水蒸気の噴出口を閉塞しやすくなるので、ポリ乳酸紡糸原液の吐出口の最外周位置と水蒸気の噴出口の最外周位置との距離を0.8mm以上になるように設計することが好ましい。
【0024】
形成されたポリ乳酸の凝固体、溶媒及び水蒸気の混合流体は、混合セル出口より、水又は水と該ポリ乳酸の溶媒の混合溶媒からなる凝固液中に排出される。混合セルより排出されたポリ乳酸の凝固体は溶媒により膨潤状態にある場合が多く、直接積層を行うと形成されたフィブリル繊維同士が融着し、比表面積の低下を引き起こす原因となり好ましくない。
【0025】
凝固液中の溶媒濃度は特に限定するものではないが、形成されたポリ乳酸の凝固体が膨潤しない範囲であれば本発明の素材を製造することができ、概ね溶媒濃度が、50重量%以下が好ましい。さらに、工業的な意味では、凝固液中の溶媒濃度を紡糸原液の溶解に使用される溶媒流量と水蒸気との重量比に保ち、物質バランスを取ることが、連続化した製造方法を考える上では好ましい。
【0026】
混合セルより凝固液中へ排出されたポリ乳酸の凝固体は、公知の方法による洗浄を行なうことによって湿潤した形態、さらに乾燥を施すことによって乾燥した形態の素材を得ることができる。また洗浄時に熱水を用いることで、溶剤の置換を促進すると共に、膨潤状態にある凝固体を緻密化させる事が可能となる。また熱水処理をした凝固体は、乾燥することなく吸引脱水や圧搾脱水により含水率を下げ、ケーキ状の形態を与えることもできる。
【0027】
このようにして得られた不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体は、公知の方法で紙、不織布やパルプモールディング法等により二次成形加工することができる。例えば、カーデイングやエアレイを含む乾式法、湿式法、ニードルパンチ、ウオータージェットパンチなどがある。本発明では、凝固中に浮遊した前記不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体を直接シート状物に二次成形加工することも可能である。
【0028】
さらには前記不連続フィブリル状ポリ乳酸単独でなく、その他の材料と複合成型加工を施しても良い。例えば、綿、麻、ケナフなどの天然繊維やアセテートなどの人造繊維さらにはポリエステルやポリエチレンなどの合成繊維、木材パルプや麻、ケナフ、アラミド系の叩解パルプ、さらには木材粉やタルクなどの無機粒子などと複合加工する事が出来る。
【0029】
また二次加工された成型品、複合加工された成型品を含む、にポリ乳酸が軟化/溶融する温度まで加熱し、不連続フィブリル状ポリ乳酸を相互融着させ材料強度を向上させることが可能である。加熱時には成型品が変形するのを防ぐため、金型等でプレスしても良い。
【0030】
図1に本発明に用いられる紡糸吐出口と水蒸気噴出口と混合セルからなるノズルを示すが、ポリ乳酸紡糸原液と水蒸気の噴出線と角度は原液流路の中心線と水蒸気流路の中心線の角度が0度以上90度未満に設計することによって行なうことができる。それ以外のノズル形状は特に限定するものではない。たとえば、ポリ乳酸の紡糸原液の吐出口を複数設けたり、ポリ乳酸の紡糸原液吐出口と凝固剤流体の噴出口は1対1で対応している複数のユニットを1つの混合セルで対応させたノズルを使用し、高生産化を図ることも、本発明の要件を満足するものであれば可能である。1はポリ乳酸の紡糸原液の流路、2はポリ乳酸の紡糸原液の吐出口、3は水蒸気の流入口、4は水蒸気流路、5は混合セル、6は混合セルの出口をそれぞれ示す。線▲1▼はポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向、線▲2▼は凝固剤流体の噴射線方向を示し、角▲3▼は両者のなす角度をしめす。
【0031】
図2は、本発明に使用されるノズルの内、ポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向と凝固剤流体の噴射線方向が同じ方向である場合、すなわち、角▲3▼が0度である場合のノズルを示している。図3は本発明の製造方法の一例を示すプロセスを示す概略図である。
【0032】
次に、図1にしたがって、本発明の製造方法をさらに説明する。ポリ乳酸の紡糸原液は、例えばポリ乳酸ペレットをジメチルアセトアミドに分散混合し、加熱溶解することによって容易に調製することが可能である。溶液濃度は特に限定するものではないが、工業的な意味から洗浄効率、溶剤回収等の後工程の効率を考えると、少なくとも10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。さらに、酸化チタン等の白色顔料や無機微粒子や蛍光微粒子、さらに水等の凝固剤を予め溶液中に添加することも可能である。
【0033】
かくして得られたポリ乳酸の紡糸原液は通常工業的に用いられる高粘度溶液を押し出すギヤポンプ又は押し出し機によって、窒素加圧下で押し出し、図1に示したノズルへ定量供給を行う。紡糸原液は、ノズルへ供給されるポリ乳酸溶液の流路1を通過した後、吐出口2より混合セル5へ押し出される。更にポリ乳酸紡糸原液を供給すると同時に、水蒸気を流入口3より供給する。供給された水蒸気はスリット状の流路4を通じて混合セル5へ噴射され、ポリ乳酸の紡糸原液と混合される。混合セル内でポリ乳酸は剪断流速下で凝固し、フィブリル状、フィルム状の凝固体となり、出口6より排出される。
【0034】
このようにして得た凝固体は、図3に示すように、さらに凝固液中へ排出され、公知の方法で溶媒を除去することによって本発明のポリ乳酸極細弾性繊維不織布用素材を得ることができる。
【0035】
本発明によるポリ乳酸極細弾性不織布の製造法は洗浄工程の後にまたは同時に公知のシート賦形装置を連続的に取り付け、シートを賦形後、公知の方法により乾燥を行うことによって、不織布に成形できる。また、使用される溶媒の回収も公知の方式を採用することで達成される。
【0036】
かくして得られた不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体はその他の繊維又はパルプ状物と混合し不織布状に成形され、或いはトウ状の繊維と混合することによって不織布の形成が可能である。混合される繊維の形態としては、トウ状、チョップドファイバー状さらにパルプ状のものを使用することができる。素材としては特に限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0038】
[実施例1]
ポリ乳酸500gをジメチルアセトアミド500gに溶解し、50重量%のポリ乳酸のジメチルアセトアミド溶液を調製した。次いで得られた溶液を30℃に保ったまま、1.5kg/cm2の窒素加圧下で押し出し、ギヤポンプを用いて図1に示したノズル部へ定量供給を行うと同時に水蒸気を供給した。水蒸気の供給量は減圧弁により供給圧力を規定することにより行なった。水蒸気量は図1に示すノズルより水蒸気のみを凝固液中に噴射し、単位時間当たりの重量の増分を求めることにより測定した。
【0039】
直径が0.2mmφの溶液吐出口、直径が2mmφ、長さが10mmの円筒状の混合セル、水蒸気流路がスリット状で開度を390μmに調製し、溶液流路の中心線とスリットの中心線とのなす角度が60度になるように製作したノズルを用い、ポリ乳酸のジメチルアセトアミド溶液の供給量を12ml/min、水蒸気の供給圧を3.0kg/cm2とし、温度30℃の水中へ噴出した。このときの水蒸気消費量は水換算で90g/minであった。凝固液中に浮遊したポリ乳酸の凝固体を捕集し、更に70℃の熱水で一晩洗浄を行い、40℃の熱風で乾燥し、この得られた凝固体を、走査型電子顕微鏡を用いて繊維側面の形態を観察した。さらに、投写型実体顕微鏡(日本光学社製プロファイルプロジェクター V−12)を用いて繊維の長さ方向の形態を観察した。得られた凝固体は太さがサブμmから10μm、長さ数十μmから数mmで、表面より分岐した多数の触手状突起物が観察されるフィブリル状、フィルム状を呈する集合体であった。JIS P8121のパルプ濾水度試験方法(1)カナダ標準形で測定したところ、濾水度が650mlである不連続フィブリル状成形体であった。本発明の課題である湿潤時の強度保持率等のデータがあれば提示して下さい。実施例2も同様。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様の方法でポリ乳酸40重量%のアセトン溶液を調製した。次いで得られた溶液を室温に保ったまま、1.5kg/cm2の窒素加圧下で押し出し、ギヤポンプを用いて実施例1と同じノズル部へ定量供給を行った。ポリ乳酸のアセトン溶液の供給量を10ml/min、水蒸気の供給圧を3.0kg/cm2とし、温度30℃の水中へ噴出した。このときの水蒸気消費量は水換算で90g/minであった。凝固液中に浮遊したポリ乳酸の凝固体を捕集し、更に70℃の熱水で一晩洗浄を行い、40℃の熱風で乾燥したところ、得られた凝固体は太さサブμmから10μm、長さ数十μmから数百μmで多数の表面より分岐した触手状突起物が観察されるフィブリル状、フィルム状を呈する集合体であった。JIS P8121のパルプ濾水度試験方法(1)カナダ標準形で測定したところ、濾水度が350mlであった。
【0041】
【発明の効果】
本発明はポリ乳酸の溶液から形成される不連続フィブリル状の凝固体であり、しかも紙または不織布等のシート状物やパルプモールディング法等に好適である不連続フィブリル状を提供する。
【0042】
また本不連続フィブリル状物は生分解性を有し、かつ再生可能な資源より合成され、更に可能熱可塑性を有し、かつ湿潤時の強度保持率が高い素材であり、その産業上の意義は大きい。
【0043】
本発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるノズルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明で用いられるノズルの別の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の比較例に使用されるノズルの断面図である。
【符号の説明】
1:ポリ乳酸の紡糸原液の流路
2:ポリ乳酸の紡糸原液の吐出口
3:水蒸気の流入口
4:水蒸気流路
5:混合セル
6:混合セルの出口
▲1▼:重合体溶液の吐出線
▲2▼:凝固剤流体の噴射線
▲3▼:▲1▼と▲2▼のなす角度
Claims (4)
- 長さ10μm〜10mmのフィブリル状物およびフィルム状物のポリ乳酸から構成されることを特徴とする不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体。
- 少なくとも1000μm以上の長さを有するフィブリル状又はフィルム状物の割合が5%以上であることを特徴とする請求項1記載の不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体。
- JIS P−8121で規定される濾水度が、200ml以上800ml以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体
- 溶媒に溶解したポリ乳酸の溶液を、紡糸吐出口を通して混合セル内に吐出すると同時に、水蒸気をポリ乳酸の紡糸原液の吐出線方向に対して0度以上、90度未満の角度で混合セル内に噴出し、混合セル内でポリ乳酸を剪断流速の下で凝固させ、形成された凝固体を前記溶媒および水蒸気と共に混合セルから、さらに、水又は、水及び前記溶媒の混合溶媒からなる凝固液中に排出することを特徴とする不連続フィブリル状ポリ乳酸成形体の製造方法。
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