JP2004182533A - コバルト回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミニウムと鉄のうちの少なくとも一種の不純物とともにコバルトを含有するリチウム二次電池廃材からコバルトを回収するにあたり、コバルトの高率回収と不純物の高率除去が両立し、かつ、汎用薬品等を用いて低コスト化できるコバルト回収方法を提供する。
【解決手段】リチウム二次電池廃材を浸出して得られたコバルト含有溶液等の、コバルトを含有し、不純物としてアルミニウムと鉄のうちの少なくとも一種を含有する溶液を過酸化水素水の添加等によって酸化し、苛性ソーダの添加等によってpHを4.0〜5.5に調整した後に、30〜90℃で120〜480分間熟成を行って固液分離することにより溶液中からのコバルト回収と不純物除去を効率的に行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不純物を含有するコバルト溶液からのコバルト回収方法、特にリチウム二次電池廃材からのコバルト回収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】リチウム二次電池は、軽量、高電気容量の電池としてよく知られており、各種携帯機器用二次電池として大量に使用されている。このリチウム二次電池の正極には、正極活物質として有価金属のコバルトを含むリチウムコバルト複合酸化物が使用されている。このリチウムコバルト複合酸化物から有価金属のコバルトを回収し再利用できる形態にすることは、資源リサイクルの観点から意義のあることである。
【0003】
このようなリチウム二次電池からのコバルトの回収方法としては、次の方法などが提案されている。すなわち、使用済みリチウム二次電池を焙焼、破砕、篩い分けして得られた篩下を二次焙焼し、次に酸で処理し、更に処理液に酸化性ガスを吹き込みながらpHを4〜5.5に調整して濾過した後、濾液にアルカリを添加し濾過して沈殿物を回収する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、コバルト成分を含むリチウムイオン電池廃材を無機酸で浸出し、浸出した水溶液のリンとアルミニウムイオンのモル比を0.6〜1.2に調整し、酸化電位を500mV以上で、鉄イオンを酸化し、該水溶液のpHを3.0〜4.5に調整し、不純物金属を沈殿除去し、精製溶液を取得し、この精製溶液に蓚酸を添加してコバルト蓚酸塩を、又は、この精製溶液のpHを6〜10に調整してコバルト水酸化物又はコバルト炭酸塩を沈殿として取得する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、コバルト化合物を含む電極材料又はこのような電極材料が金属箔に塗着されている金属箔塗着廃材からなる二次電池廃材を、アルキル燐酸を含む有機溶液と過酸化水素を含む水からなるエマルジョン抽出剤と接触させ、上記二次電池廃材中のコバルトを有機溶液中に選択的に溶出せしめ、得られた有機溶液からコバルトを回収する二次電池廃材からのコバルト回収方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−207349号公報
【特許文献2】
特開平11−6020号公報
【特許文献3】
特開平9−111360号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
1.従来技術の問題点の抽出
(1)有価金属の回収を工業的に行う場合には、経済性と品質のバランスが重要になるが、例えば溶媒抽出法によるコバルトの回収は使用溶媒のコストや抽出段数による操作や設備の複雑さで経済的ではない。
(2)不純物としてアルミニウム、鉄を含有するコバルト含有溶液において、過酸化水素水を加えた後、苛性ソーダを用いてpHを調整し、不純物を沈殿によって除去しようとした場合、不純物を完全除去するpHに調整すると、コバルトも共沈しコバルトの回収率が悪くなる。一方で、コバルトの回収率を確保するpHに調整すると、不純物濃度が低減できない場合がある。つまりコバルト回収率と不純物濃度の低減のバランスに問題があった。
【0008】
2.解決すべき課題
本発明は、汎用薬品等を用いた経済的な方法において、上記のようなpH調整時のコバルトの回収率と不純物濃度の低減においてバランスのとれた、コバルトの回収方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、硫酸や苛性ソーダ等の汎用的で比較的廉価な薬材を用いて、不純物を含有するコバルト溶液に対して、pH調整後、液温を調整しながら溶液と沈殿物を時間をかけ撹拌する熟成という操作を加えることによって、コバルトの回収率を維持しながら、不純物の濃度を低減させることができる効率的かつ低コストのコバルト回収方法をなすに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は第1に、コバルト(Coと表すことがある。)を含有し、不純物としてアルミニウム(Alと表すことがある。)と鉄(Feと表すことがある。)のうちの少なくとも一種を含有する溶液を酸化し、pHを4.0〜5.5に調整後、30〜90℃で120〜480分間熟成を行って固液分離することによってコバルトの回収率向上と不純物濃度の低減を両立することを特徴とするコバルト回収方法を、第2に、前記溶液が硫酸酸性溶液であり、前記酸化が過酸化水素水、過硫酸ソーダ、オゾンおよび空気からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸化剤の添加によって行われ、前記pH調整が苛性ソーダ、消石灰および水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリの添加によって行われる、第1記載のコバルト回収方法を、第3に、前記酸化は銀−塩化銀電極を用いた前記溶液の電位を500〜900mVとする、第1または2に記載のコバルト回収方法を、第4に、前記硫酸酸性溶液が硫酸を用いてリチウム二次電池廃材を浸出して得られたコバルト含有溶液である、第2または3に記載のコバルト回収方法を、第5に、前記リチウム二次電池廃材がリチウム二次電池を焙焼し、粉砕して得られた粉末である、第4記載のコバルト回収方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施にあたっては、まず、硫酸溶液内でリチウム二次電池廃材からコバルトを浸出させる。この時の浸出液の温度は特に制限はないが、好ましくは30℃以上、より好ましくは40〜90℃である。また、上記硫酸溶液の硫酸濃度についても特に制限はないが、好ましくは5〜30wt%(wt%を単に%と表す。)、より好ましくは10〜25%である。また、リチウム二次電池廃材中のコバルトはリチウム二次電池の焙焼条件により酸化状態が異なり、コバルトが金属状態のものを多く含む廃材ではコバルトの浸出率が悪くなる場合がある。そのような場合は、酸化性ガスを硫酸溶液内に混合することで、廃材中の金属状態のコバルトの溶液内酸化を促進し、硫酸溶液内にイオンとして存在しやすくなると考えられ、あらゆる廃材に対応が可能となる。この酸化性ガスとしては空気、酸素等を用いることができ、経済性を考えれば空気が好ましい。
【0012】
次に浸出操作後の溶液を濾過し、不溶残渣(炭素成分、金属成分等)と濾液に分離する。この濾液内にはコバルトの他に、不純物としてアルミニウムと鉄のうちの少なくとも一種が含まれている。濾液に酸化剤、例えば過酸化水素水を添加した後、アルカリ、例えば苛性ソーダを添加することによってpHを調整する。ここで、酸化剤は過酸化水素水、過硫酸ソーダ、オゾンおよび空気等から選ばれ、アルカリは苛性ソーダ、消石灰および水酸化カリウム等から選ばれる。酸化剤は鉄イオンを2価から3価に酸化するために添加する。この溶液の電位は500〜900mVとするのがよい。500mV未満であると鉄イオンが十分に酸化されず鉄の除去が不十分となり、一方、900mVを超すとコバルトイオンが酸化されて中和(pH調整)時に不純物と共に沈殿する量が増え、コバルト回収率が悪くなる。3価に酸化された鉄イオンはpHが4.0以上で水酸化物として完全除去できる。アルミニウムについてはpHが4.0以上で鉄と共に沈殿し始めるので調整pHは4.0〜5.5、好ましくは4.5〜5.0である。ただし、このまま濾過に移ると水酸化アルミニウム、水酸化鉄と共に、局部中和で生成された水酸化コバルトが補集され、濾液内へのコバルト回収率が悪化してしまったり、溶液中に残存するアルミニウムが多くなるので、コバルトの回収率と不純物除去のバランスが良くない。
【0013】
このため、溶液、沈殿を共に温度調整し、撹拌を時間をかけて行う熟成操作を行う。この熟成中には、沈殿内のコバルトは分解され溶液中にイオンの形で溶出し、この時の分解によって生じる水酸イオンが溶液内のアルミニウムイオンと反応し溶液内のアルミニウムを更に低減しているものと思われる。また、水酸化アルミニウムの結晶性が良くなり、コバルトとの分離性が良くなると考えられる。この時、熟成中の温度は30〜90℃、好ましくは40〜80℃である。Alの除去としては、液中のAl濃度とCo濃度の比(単に、Al/Coと表す。)で0.2%以下が好ましく、熟成時間としてはアルミニウムやコバルトの濃度に応じて適正化する必要があり、120分間以上を必要とするが、480分間以上ではこの効果がほぼ飽和する。熟成終了後、濾過により水酸化アルミニウムと水酸化鉄の混合沈殿とコバルト含有水溶液とを固液分離する。
【0014】
上記熟成後の濾液は、アルカリ、例えば苛性ソーダを加え液性をアルカリ性にして水酸化コバルトを沈殿とし、液中のリチウム(Liと表すことがある。)、ナトリウム(Naと表すことがある。)と分離、回収できる。この時のpHは7以上、より好ましくは10以上である。濾過により水酸化コバルトと濾液とを固液分離後、得られた沈殿を水洗することで沈殿物に付着したリチウム、ナトリウム等の水溶性成分が除去でき、コバルト純度を高めることができる。
ここで得られた水酸化コバルトの沈殿は、適当な濃度の硫酸に溶解し、磁性粉等の原料の硫酸コバルトとして使用可能である。
【0015】
【実施例】
以下に実施例によって本発明をさらに具体的に示すが、本発明の技術的範囲はこの記載によって制限されるものではない。
【0016】
〔実施例1〕 コバルトを34.9%含有するリチウム二次電池廃材80gを、20%硫酸水溶液中に投入し、70℃で3時間浸出した。浸出後、得られた浸出液と不溶解残渣を濾過により分離し、コバルトを含有する硫酸水溶液500ml(lはリットルを表す。)を得た。この硫酸水溶液内のコバルト濃度は55.8g/lであった。この場合のリチウム二次電池廃材からのコバルトの浸出率は100%であった。上記のコバルトを含有する硫酸水溶液の組成を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 2004182533
【0018】
上記の硫酸水溶液を200ml分取し、35%過酸化水素水を1g添加した。銀−塩化銀電極を用いてこの添加後の溶液の電位を測定したところ650mVであった。液温を50℃にして10%苛性ソーダでpHを5.0に調整後、撹拌しながら480分間熟成し、濾過した。この時点での熟成後の濾液量は356mlとなり、コバルトの回収率は92.6%となった。なお、Al/Coは0.07%であった。上記の熟成後の濾液の組成を表2に示す。
【0019】
【表2】
Figure 2004182533
【0020】
上記の濾液にさらに10%苛性ソーダをpHが10になるまで添加し水酸化コバルト沈殿を得た。この沈殿を1リットルの純水で水洗を行い洗浄後の沈殿を硫酸溶液に溶解させ、硫酸コバルト溶液を294ml得た。得られた水溶液の組成は表3のようになり、最終的なコバルトの収率は92.6%、純度は99.1%となり、磁性粉の原料としての硫酸コバルト溶液を得ることができた。
【0021】
【表3】
Figure 2004182533
【0022】
〔実施例2〕 実施例1で得られた表1に示す硫酸水溶液を196ml分取し35%過酸化水素水を1g添加した。銀−塩化銀電極を用いてこの添加後の溶液の電位を測定したところ650mVであった。液温を50℃にして10%苛性ソーダでpHを5.0に調整後、撹拌しながら120分間熟成し、濾過した。この時点での溶液量は264mlとなり、コバルトの回収率は98.1%となった。なお、Al/Coは0.17%であった。上記の熟成後の濾液の組成を表4に示す。
【0023】
【表4】
Figure 2004182533
【0024】
上記以降の操作は実施例1と同様に試験をし、硫酸コバルトの水溶液を355ml得た。得られた水溶液の組成は表5のようになり、最終的なコバルトの収率は98.1%、純度は99.4%となり、磁性粉の原料としての硫酸コバルト溶液を得ることができた。
【0025】
【表5】
Figure 2004182533
【0026】
〔比較例〕 実施例1で得られた表1に示す硫酸水溶液の残り104mlを分取し35%過酸化水素水を1g添加した。銀−塩化銀電極を用いてこの添加後の溶液の電位を測定したところ650mVであった。液温を50℃にして10%苛性ソーダでpHを5.0に調整後、熟成を行わず濾過した。この時点での濾液量は141mlとなり、コバルトの回収率は90.1%となった。また、熟成を行わなかったので溶液内のアルミニウム濃度は前記の両実施例よりも濃度が高い結果となり、Al/Coは0.84%と高いものであった。上記の濾液の組成を表6に示す。
【0027】
【表6】
Figure 2004182533
【0028】
上記以降の操作は実施例1と同様に試験をし、硫酸コバルトの水溶液を140ml得た。得られた水溶液の組成は表7のようになり、最終的なコバルトの収率は90.1%、純度は98.1%となった。最終的なアルミニウム濃度は0.294g/lとなった。
【0029】
【表7】
Figure 2004182533
【0030】
また、実施例1と同様の硫酸水溶液を得て、熟成時間を10〜100分間(試験例5例)、1000〜10000分間(試験例1例)とした以外は実施例1と同様に行って熟成後の濾液のAl/Coを求め、前記の実施例1、実施例2および比較例における熟成後の濾液のAl/Coとともに図1に示した。熟成時間が120分間以上の場合に熟成後の濾液のAl/Coが目標値の0.2%以下に達すること明らかになった。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、不純物とともにコバルトを含有するリチウム二次電池廃材からコバルトを回収する際に、苛性ソーダ等のアルカリでのpH調整後に温度を調整しながら溶液と沈殿物を時間をかけ撹拌する熟成という操作を加えることによって、中和時のコバルトの損失をなくしコバルトの回収率を維持しながら、不純物の濃度を低減させることができるものであり、さらには、使用する薬材が硫酸、苛性ソーダ等と汎用的で比較的廉価なものであって、コバルトの回収を効率的かつ経済的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】熟成時間(分)と熟成後の濾液のAl/Coの比(%)との関係図

Claims (5)

  1. コバルトを含有し、不純物としてアルミニウムと鉄のうちの少なくとも一種を含有する溶液を酸化し、pHを4.0〜5.5に調整後、30〜90℃で120〜480分間熟成を行って固液分離することにより前記不純物を除去することを特徴とするコバルト回収方法。
  2. 前記溶液が硫酸酸性溶液であり、前記酸化が過酸化水素水、過硫酸ソーダ、オゾンおよび空気からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸化剤の添加によって行われ、前記pH調整が苛性ソーダ、消石灰および水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリの添加によって行われる、請求項1記載のコバルト回収方法。
  3. 前記酸化は銀−塩化銀電極を用いた前記溶液の電位を500〜900mVとする、請求項1または2に記載のコバルト回収方法。
  4. 前記硫酸酸性溶液が硫酸を用いてリチウム二次電池廃材を浸出して得られたコバルト含有溶液である、請求項2または3に記載のコバルト回収方法。
  5. 前記リチウム二次電池廃材がリチウム二次電池を焙焼し、粉砕して得られた粉末である、請求項4記載のコバルト回収方法。
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