JP2004180843A - 医療器械 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、一様の力で目的とする生体組織を挟み込み、生体組織全体に一様に熱を加え、安定して、確実な処置効果を得るとともに、部品の加工精度や組立精度、変形などに影響されず、安価で、耐久性に優れた医療器械を提供することを最も主要な特徴とする。
【解決手段】第1把持部7及び第2把持部8間を閉じ、第1把持部7の刃部17が第2把持部8の弾性体19の当接面20を押圧した際に、刃部17が当接面20を押圧した際の押圧力によって弾性体19を弾性変形させる。このとき、弾性体突出部19によって弾性体19の弾性変形量を増大させて当接面20の移動量を増大させ、第1把持部7の刃部17と第2把持部8の弾性体19の当接面20の手元から先端まで一様の力で生体組織を挟み込み、生体組織全体に一様に熱を加える。
【選択図】 図3
【解決手段】第1把持部7及び第2把持部8間を閉じ、第1把持部7の刃部17が第2把持部8の弾性体19の当接面20を押圧した際に、刃部17が当接面20を押圧した際の押圧力によって弾性体19を弾性変形させる。このとき、弾性体突出部19によって弾性体19の弾性変形量を増大させて当接面20の移動量を増大させ、第1把持部7の刃部17と第2把持部8の弾性体19の当接面20の手元から先端まで一様の力で生体組織を挟み込み、生体組織全体に一様に熱を加える。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、開閉可能な一対のジョーの間で生体組織を把持した状態で生体組織を加熱し、生体組織の凝固及び凝固部位の切開などの加熱処置を行う医療器械に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、生体組織を把持するように開閉する一対の把持部(ジョー)と、一対の把持部を相対的に開閉操作する操作部とを備え、把持部の一方または両方に発熱体を設けた医療器械が知られている。この医療器械では一対の把持部間を閉操作して生体組織を把持した状態で発熱体を発熱させて生体組織の凝固や、凝固した生体組織の切開などの加熱処置を行うようになっている。
【0003】
この医療器械は通常、生体組織に含まれる血管の止血や、生体組織の表層の病変部や、出血部の焼灼、凝固、そして避妊を目的とした卵管の閉塞など多様な手術症例に用いられている。そして、この医療器械によって生体組織の凝固や、凝固した生体組織の切開などの加熱処置が行われる。
【0004】
また、生体組織の止血、焼灼、凝固、閉塞あるいは切開などのさまざまな処置を行う場合には、それに先立って予め剥離鉗子などの手術器具により、目的組織及び周辺組織を機械的に圧排し、把持し、剥離するなどの各作業を行い、内視鏡の視野や医療器械の作業領域を確保する手術操作が行われる。
【0005】
更に、例えば、特許文献1には相対的に開閉する一対の把持部の少なくとも一方にセラミックヒーターなどの発熱素子を設け、他方の把持部に柔軟性部材からなる受け部材を設けた手術器械が開示されている。
【0006】
この器械では、第1の把持部に生体組織と接触する刃物形状に突出した発熱板(処置部)が設けられている。この発熱板には熱源部である発熱素子が固定されている。そして、発熱素子で発生した熱を発熱板に伝熱させた状態で、第1、第2の把持部間に生体組織を挟み込むことにより、この発熱板と第2の把持部の受け部材との間に挟まれて圧迫された生体組織の加熱処置が行えるようになっている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−198137号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に開示される手術器械では、一対の把持部の基端部が回動軸を介して回動可能に連結されている。そして、一対の把持部が回動軸を中心に回動する動作にともない一対の把持部の先端側が相対的に開閉操作される構成になっている。
【0009】
そのため、上記従来構成の器械では、次のような問題がある。例えば、肉厚の生体組織の凝固や切開をする場合、第1、第2の把持部を大きく開いて伝熱部と受け部材との間に生体組織を挟む必要がある。この場合、第1、第2の把持部は手元端部側が回動軸を中心に回動する状態で第1、第2の把持部間の拡開角度が大きくなるので、第1、第2の把持部の先端側が大きく開いている。そして、伝熱部と受け部材の手元側では、第1、第2の把持部間の間隔が狭いので、第1、第2の把持部間で生体組織をしっかりと挟み込める。しかしながら、伝熱部と受け部材の先端側では、第1、第2の把持部間の間隔が大きいので、伝熱部および受け部材と、生体組織との間に隙間があいて、全く挟めない状態となる可能性がある。
【0010】
その結果、第1、第2の把持部の先端側と手元側とでは第1、第2の把持部間で挟持した生体組織に加えられる加圧力が異なるので、第1、第2の把持部の先端側と手元側とで生体組織に伝えられる熱のムラが生じ、生体組織の凝固や、切開などの処置にムラが生じる可能性がある。
【0011】
また、硬い生体組織の場合は、第1、第2の把持部に力を入れて生体組織を挟もうとすると、第1、第2の把持部がそれぞれ、撓んでしまう可能性がある。そのため、伝熱部と受け部材の手元側では、第1、第2の把持部の撓みが小さいので、生体組織に大きな圧迫力を加えることができるが、先端側では第1、第2の把持部の撓みが大きいので、生体組織にほとんど力が加わらない状態となる。その結果、この場合にも第1、第2の把持部の先端側から手元側まで一様には生体組織に熱を加えられずに、生体組織の凝固や、切開などの処置にムラが生じる可能性がある。
【0012】
さらに、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などにより、伝熱部材や、受け部材が変形したり、それぞれが設けられた把持部材に対して傾いた場合も、同様の問題が生じる。その結果、発熱板と受け部材との間に生体組織を先端側から手元側まで一様の圧迫力で挟むことができず、第1、第2の把持部の先端側から手元側まで一様には生体組織に熱を加えることができないので、熱発生素子で発生した熱が局部的に集中してしまい、目的部位の生体組織の凝固が不十分となったり、生体組織を一様に切り離せないなどの問題がある。
【0013】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、一方のジョーの刃部と他方のジョーの弾性体の当接面の手元から先端まで一様の力で目的とする生体組織を挟み込むことができ、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えることができ、目的とする生体組織の状態に係わらずに、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができるとともに、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができ、安価で、かつ、耐久性に優れた医療器械を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、一対のジョーを相対的に開閉操作する操作部と、
前記一対のジョー間を閉操作して生体組織を挟持した状態で前記生体組織の加熱処置を行う加熱処置手段とを備えた医療器械において、
前記加熱処置手段は、一方の前記ジョーに、発熱部と、この発熱部に発熱用のエネルギーを供給する手段と、前記生体組織に接触し、前記発熱部の熱を前記生体組織に伝える刃部とを設け、
他方の前記ジョーに、前記一対のジョーを閉じた際に前記刃部に当接する弾性体によって形成される当接面を設けて構成するとともに、
前記刃部が前記当接面を押圧した際の押圧力によって前記弾性体を弾性変形させる弾性変形量を増大させて前記当接面の移動量を増大させる移動量増大手段を設けたことを特徴とする医療器械である。
そして、本請求項1の発明では、一対のジョーを閉じ、一方のジョーの刃部が他方のジョーの弾性体の当接面を押圧した際に、刃部が当接面を押圧した際の押圧力によって弾性体を弾性変形させる。このとき、移動量増大手段によって弾性体の弾性変形量を増大させて当接面の移動量を増大させることにより、当接面の手元側で刃部と当接面が当接した後、更に当接面の先端まで当接するまでジョーが閉じるのを容易にして、一方のジョーの刃部と他方のジョーの弾性体の当接面との間でできるだけ一様の力で目的とする生体組織を挟み込み、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えるようにしたものである。
【0015】
請求項2の発明は、前記移動量増大手段は、前記弾性体を保持する保持部材の端面位置よりも前記弾性体の前記当接面を突出させて前記弾性体の両側に前記弾性体の弾性変形を許容させる弾性体突出部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械である。
そして、本請求項2の発明では、刃部が当接面を押圧する押圧力によって弾性体を弾性変形させる際に、弾性体突出部によって弾性体の両側に弾性体を弾性変形させやすくすることにより、当接面の移動量を増大させるようにしたものである。
【0016】
請求項3の発明は、前記移動量増大手段は、前記弾性体を保持する保持部材における前記弾性体の底部との接触面の少なくとも一部に前記弾性体と非接触状態で保持させて前記弾性体の底部に前記弾性体の弾性変形を許容させる弾性体非接触部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械である。
そして、本請求項3の発明では、刃部が当接面を押圧する押圧力によって弾性体を弾性変形させる際に、弾性体非接触部によって弾性体の底部の非接触部に弾性体を弾性変形させやすくしたものである。
【0017】
請求項4の発明は、前記弾性体突出部は、前記弾性体の両側面に前記弾性体の弾性変形時に前記弾性体の弾性変形を助長する凹陥状の溝部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の医療器械である。
そして、本請求項4の発明では、刃部が当接面を押圧する押圧力によって弾性体を弾性変形させる際に、弾性体突出部における弾性体の両側面の凹陥状の溝部によって弾性体を両側に弾性変形させやすくして弾性体の弾性変形を助長するようにしたものである。
【0018】
請求項5の発明は、前記移動量増大手段は、前記弾性体の内部に設けた空洞部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械である。
そして、本請求項5の発明では、刃部が当接面を押圧する押圧力によって弾性体を弾性変形させる際に、弾性体の内部の空洞部によって弾性体の当接面を弾性体の内部方向に弾性変形させやすくして弾性体の弾性変形を助長するようにしたものである。
【0019】
請求項6の発明は、前記弾性体は、複数層のゴムで構成し、各層のゴムをそれぞれ異なる色に設定したことを特徴とする請求項1に記載の医療器械である。
そして、本請求項6の発明では、使用にともない表面層のゴムに亀裂などの破損が生じると、表面層のゴムとは異なる色の内側層のゴムの表層が外から観察でき、目視にてゴムの破損が破損初期の段階で判別しやすくしたものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図4を参照して説明する。図1は本実施の形態の医療器械1のシステム全体の概略構成を示すものである。この医療器械1のシステムには鋏鉗子型の処置具2と電源装置3とが設けられている。
【0021】
また、処置具2には一対の略直線状の操作アーム4,5(第1操作アーム4及び第2操作アーム5)が設けられている。これらの第1操作アーム4及び第2操作アーム5は中間部分で共通の回転軸6を介して自由に回転できるように連結されている。
【0022】
さらに、各操作アーム4,5には回転軸6よりも先端部側に、それぞれ、開閉可能な一対の把持部(ジョー)7,8(第1把持部7及び第2把持部8)が設けられている。ここで、第1操作アーム4の先端部側には第1把持部7が、また第2操作アーム5の先端部側には第2把持部8がそれぞれ形成されている。なお、これら操作アーム4,5の手元側には、術者が指を入れて処置具2を操作するためのリング部(操作部)9,10が設けられている。
【0023】
また、処置具2と電源装置3との間はケーブル11で連結されている。さらに、電源装置3には術者が足で電源装置3のON−OFFや、出力設定の調整などの制御をするためのフットスイッチ12が接続されている。
【0024】
また、図2(A),(B)は処置具2の先端部分の構造を示すものである。ここで、第1把持部7には図2(B)に示すように、開閉方向の面に対して垂直な平面上で湾曲する湾曲部7aが設けられている。なお、第2把持部8にも第1把持部7の湾曲部7aと対応する湾曲形状の湾曲部8a(図示せず)が設けられている。
【0025】
さらに、図2(A)に示すように、第1把持部7及び第2把持部8の外面側には、滑らかで、先端側に向かうにしたがって緩やかに細くなる先細形状を有する剥離面7b,8bがそれぞれ形成されている。そして、第1把持部7と第2把持部とを閉じた状態で、これらの剥離面7b,8bを用いて生体組織を擦ったり、生体組織の間に差し込む操作を行なうことにより、生体組織などの移動や除去、生体組織間の剥離を行ったり、更に、先端で血管や神経などの索状組織を扱うなどの手術操作を安全に、かつ確実に行うことができる。
【0026】
図2(A),(B)および図3に示すように、第1把持部7の内面(下面)側には軸方向に長く延びる処置部材取付け用の凹陥部7cが形成されている。この凹陥部7cには軸方向に長く延びる略ドーム型(略U字状の断面形状)の断熱枠13が装着されている。この断熱枠13は例えばフッ素樹脂や、シリコーンゴム、セラミックスなど熱を伝えにくい材料によって形成されている。
【0027】
また、断熱枠13の内側には処置部材である板状の伝熱部材14の一端部(図2(A)および図3中で、上端部)が挿入された状態で嵌着されている。この伝熱部材14は、例えば銅、銅合金、アルミニウム合金、タングステンあるいはモリブデン等、熱を効率良く伝える材料によって形成されている。
【0028】
さらに、伝熱部材14の上端部には複数、本実施の形態では3つの発熱体装着穴14aが形成されている。これら3つの発熱体装着穴14aにはそれぞれ発熱体(発熱部)15が装着されている。各発熱体15としては、例えばシリコーン半導体や、モリブデン薄膜抵抗などの熱発生素子や、ニクロム線などのように電気を熱に変換する物が用いられる。
【0029】
また、各発熱素子14には発熱のためのエネルギーを供給するリード線16a,16bの先端部が接続されている。各リード線16a,16bの基端部側はそれぞれ後方に向けて延出されている。さらに、各リード線16a,16bの基端部側は伝熱部材14の後端の近傍で1つに束ねられ、更に手元側に伸びて、前述のケーブル11に接続されている。そして、3個の発熱体15への通電時には、これらの発熱体15の熱を伝熱部材14で受け取るようになっている。
【0030】
さらに、図3に示すように伝熱部材14の下端部側には、断熱枠13の下面13aよりも下向きに突出し、先細り形状の刃部17が形成されている。この刃部17は、生体組織に接触して熱を伝えることにより、生体組織の加熱処置を行うようになっている。なお、刃部17の表面には、生体組織や血液が付着することを防ぐためにフッ素樹脂などの薄く非粘着性の皮膜が施されている。
【0031】
また、図3に示すように、第2把持部8の上面8cには、第1把持部7の刃部17と対向する位置に、例えばシリコーンゴムや、フッ素樹脂などの柔らかい材料からなる軸方向に細長い弾性部材(弾性体)18が設けられている。この弾性部材18の上面には第1把持部7と第2把持部8との間を閉じた際に、刃部17が全長にわたって突き当たって当接する平面状の当接面18aが形成されている。
【0032】
さらに、本実施の形態には弾性部材18を保持する第2把持部8の上面8cの位置よりも弾性部材18の当接面18aを上側に突出させた弾性体突出部19が設けられている。そして、この弾性体突出部19の両側面19aは略垂直に立設されている。これにより、図4に示すように刃部17が当接面18aを押圧した際の押圧力によって弾性体突出部19の両側面19aに向けて弾性部材18が弾性変形することを許容させるようになっている。そして、この弾性体突出部19によって弾性部材18を弾性変形させる弾性変形量を増大させて当接面18aの移動量を増大させる移動量増大手段が形成されている。
【0033】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の鋏鉗子型の処置具2の使用時にはこの処置具2の第1操作アーム4および第2操作アーム5の手元側の各リング部9,10に手指を差し込んだ状態で、第1操作アーム4および第2操作アーム5を回転軸6を中心に回動操作することにより、第1把持部7と第2把持部8との間が開閉操作される。
【0034】
そして、第1把持部7と第2把持部8との間を閉じると、最初に刃部17の手元側と当接面18aの手元側が当接して、刃部17の先端側と当接面18aの先端側は隙間があいた状態となり、第1把持部7と第2把持部8との間を更に強く閉じると、刃部17が当接面18aの全長にわたって突き当たって当接する。このとき、図4に示すように、刃部17が弾性部材18の中に沈み込む。そして、弾性部材18の上側部分は、刃部17によって図4中で左右に分けられると同時に、弾性体突出部19の両側面19aの立ち上がり部が上部側が外側に開く状態で傾く、あるいは、両側に張り出すことにより、左右に逃げることができる。これにより、弾性体突出部19によって弾性部材18を弾性変形させる弾性変形量が増大されて当接面18aの移動量が増大される。
【0035】
また、第1把持部7と第2把持部8との間を閉じて第1把持部7と第2把持部8との間に生体組織を挟み込んだ状態で、第1把持部7の内部の各発熱体15が通電加熱される。
【0036】
このとき、各発熱体15からの熱は伝熱部材14に伝熱され、伝熱部材14の先細状の刃部17が高温度に加熱される。そのため、第1把持部7と第2把持部8との間で伝熱部材14の刃部17に圧接されている生体組織はこの刃部17の熱によって加熱され、生体組織の凝固や切開が効率良く行なわれる。
【0037】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の処置具2では弾性部材18を保持する第2把持部8の上面8cの位置よりも弾性部材18の当接面18aを上側に突出させた弾性体突出部19を設けている。そして、刃部17が当接面18aを押圧した際の押圧力によって弾性体突出部19の両側面19aに向けて弾性部材18が弾性変形することを許容させている。これにより、第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じ、第1把持部7の刃部17が第2把持部8の弾性部材18の当接面18aを押圧した際に、弾性部材18の上側部分が、刃部17によって図4中で左右に分けられると同時に、弾性体突出部19の両側面19aの立ち上がり部が上部側が外側に開く状態で傾かせることができる。その結果、刃部17が当接面18aを押圧した際の押圧力によって弾性部材18を弾性変形させる際の弾性部材18の弾性変形量を弾性体突出部19によって増大させて当接面18aの移動量を従来よりも増大させることができる。
【0038】
そのため、刃部17を弾性部材18の中に深く沈み込ませることができるので、刃部17と弾性部材18との間の生体組織を挟み込む力を、手元側から先端まで、従来よりも一様にすることができ、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えることができる効果がある。これにより、目的とする生体組織の状態に係わらずに、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。
【0039】
さらに、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができ、安価で、かつ、耐久性に優れた医療器械を提供することができる。
【0040】
また、図5および図6は本発明の第2の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の処置具2における第2把持部8の弾性体突出部19に代えて弾性部材18の移動量増大手段の構成を次の通り変更したものである。なお、これ以外の部分は第1の実施の形態の医療器械1と同一構成になっており、第1の実施の形態の医療器械1と同一部分には同一の符号を付してここではその説明を省略する。
【0041】
すなわち、本実施の形態の第2把持部8には、刃部17と対向する位置に、軸方向に長く延び、刃部17の対向面側から裏側まで第2把持部8を横断するように貫通する貫通穴21が設けられている。そして、この貫通穴21によって弾性部材18の底部と非接触状態で保持させる弾性体非接触部が形成されている。なお、第2把持部8の貫通穴21に代えて第2把持部8を貫通していない凹陥状の溝部を設けてもよい。
【0042】
さらに、第2把持部8には貫通穴21の上部に貫通穴21よりも幅広の溝部22が形成されている。そして、この溝部22によって弾性部材18の受け台が形成されている。
【0043】
また、弾性部材18の上部には溝部22に嵌め込まれる幅広の突出部23が形成されている。弾性部材18の下部には貫通穴21に嵌め込まれる幅狭な幅狭部24が形成されている。そして、本実施の形態の弾性部材18は幅狭部24が貫通穴21に嵌め込まれ、かつ突出部23が溝部22に嵌め込まれた状態で、保持されている。これにより、弾性部材18は幅狭部24の底面24aが第2把持部8に非接触状態で支持されている。
【0044】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の鋏鉗子型の処置具2の使用時に第1把持部7と第2把持部8との間を閉じる操作時には第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じると、刃部17が当接面18aの全長にわたって突き当たって当接する。このとき、図6に示すように、刃部17が弾性部材18の中に沈み込み、弾性部材18の中央部分が刃部17によって下方向に押し下げられると同時に、弾性部材18の幅狭部24の底面24aが第2把持部8の貫通穴21の中に突出する状態で弾性部材18が弾性変形される。
【0045】
そこで、本実施の形態では第2把持部8に、刃部17の対向面側から裏側まで第2把持部8を横断するように貫通する貫通穴21を設けている。そのため、第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じた際に刃部17が弾性部材18の中に沈み込み、弾性部材18の中央部分が刃部17によって下方向に押し下げられると同時に、弾性部材18の幅狭部24の底面24aが第2把持部8の貫通穴21の中に突出する状態で弾性部材18を弾性変形させることができる。その結果、弾性部材18の幅狭部24の底面24aを第2把持部8の貫通穴21の中に逃がすことができるので、刃部17が当接面18aを押圧した際の押圧力によって弾性部材18を弾性変形させる際の弾性部材18の弾性変形量を第2把持部8の貫通穴21によって増大させて当接面18aの移動量を従来よりも増大させることができる。
【0046】
そのため、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様に刃部17を弾性部材18の中に深く沈み込ませることができるので、刃部17と弾性部材18との間に挟み込んだ生体組織を挟み込む力を、手元側から先端まで、従来よりも一様にすることができ、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えることができる効果がある。これにより、目的とする生体組織の状態に係わらずに、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。
【0047】
また、図7は本発明の第3の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の処置具2における第2把持部8の弾性体突出部19の構成を次の通り変更したものである。
【0048】
すなわち、本実施の形態の弾性体突出部19には、この弾性体突出部19の両側面19aの下端部(略垂直な立ち上がり部の根元近傍)に軸方向に延び、かつ弾性部材18の中心方向に向かって抉れた凹陥状の溝部31が設けられている。この溝部31は弾性部材18の弾性変形時に弾性部材18の弾性変形を助長するものである。
【0049】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の鋏鉗子型の処置具2の使用時に第1把持部7と第2把持部8との間を閉じる操作時には第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じると、刃部17が当接面18aの全長にわたって突き当たって当接する。このとき、第1把持部7の刃部17が第2把持部8の弾性部材18の当接面18aを押圧した際に、弾性部材18の上側部分を、刃部17によって図4中で左右に分けることができる。
【0050】
さらに、本実施の形態ではこれと同時に、弾性体突出部19の両側面19aの立ち上がり部の溝部31に弾性部材18を逃げ込ませることができるので、刃部17を弾性部材18の中に深く沈み込ませることができる。その結果、刃部17が当接面18aを押圧する押圧力によって弾性部材18を弾性変形させる際に、弾性体突出部19の両側面19aの下溝部31によって弾性部材18を両側に弾性変形させやすくして弾性部材18の弾性変形を助長することができる。
【0051】
そこで、本実施の形態では第1の実施の形態と同様に弾性部材18を保持する第2把持部8の上面8cの位置よりも弾性部材18の当接面18aを上側に突出させた弾性体突出部19を設けている。そのため、第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じ、第1把持部7の刃部17が第2把持部8の弾性部材18の当接面18aを押圧した際に、弾性部材18の上側部分を、刃部17によって図4中で左右に分けることができる。このとき、本実施の形態では弾性体突出部19の両側面19aの立ち上がり部の溝部31に弾性部材18を逃げ込ませることができるので、刃部17を弾性部材18の中に深く沈み込ませることができる。そのため、刃部17と弾性部材18との間に挟み込んだ生体組織を挟み込む力を、手元側から先端まで、従来よりも一様にすることができ、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えることができる効果がある。これにより、目的とする生体組織の状態に係わらずに、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。
【0052】
また、図8は第3の実施の形態(図7参照)の変形例を示すものである。本変形例のように、第2把持部8に保持されている弾性部材18の上面の当接面18aが第2把持部8の上面8cとほぼ同じ高さに設定されている場合(弾性体突出部19がない場合)には、弾性部材18の内部に、軸方向に延びる空洞部32を設け、この空洞部32によって移動量増大手段が形成される構成にしても良い。
【0053】
そして、本変形例では、刃部17が弾性部材18の上面の当接面18aを押圧する押圧力によって弾性部材18を弾性変形させる際に、弾性部材18の内部の空洞部32によって弾性部材18の当接面18aを弾性部材18の内部方向に弾性変形させやすくして弾性部材18の弾性変形を助長することができる。
【0054】
また、図9乃至図14は本発明の第4の実施の形態を示すものである。図9は本実施の形態の医療器械41全体の概略構成を示すものである。この医療器械41のシステムには鋏鉗子型の熱凝固切開鉗子である処置具42と電源装置43とが設けられている。
【0055】
また、処置具42には一対の略直線状の操作アーム44,45(第1操作アーム44及び第2操作アーム45)が設けられている。これらの第1操作アーム44及び第2操作アーム45は中間部分で共通の回転軸46を介して自由に回転できるように軸支されている。
【0056】
さらに、各操作アーム44,45には回転軸46よりも先端部側に、それぞれ、開閉可能な略湾曲した先細り形状の一対の把持部(ジョー)47,48(第1把持部47及び第2把持部48)が設けられている。ここで、第1操作アーム44の先端部側には第1把持部47が、また第2操作アーム45の先端部側には第2把持部48がそれぞれ形成されている。なお、これら操作アーム44,45の手元側には、術者が指を入れて処置具42を操作するためのリング部(操作部)49,50が設けられている。
【0057】
また、処置具42と電源装置43との間はケーブル51で連結されている。さらに、電源装置43には術者が足で電源装置43のON−OFFや、出力設定の調整などの制御をするためのフットスイッチ52が接続されている。
【0058】
また、図10は処置具42の先端部分の構造を示すものである。ここで、第1把持部47には発熱板53が、第2把持部48には受け部材54が設けられている。発熱板53の上方にはヒーター(図2(A),(B)の発熱体15参照)が設けられている。各ヒーターは接続ケーブル51を介して、電源装置43に接続されている。
【0059】
また、本実施の形態の処置具42の受け部材54は図11(A)に示す通り第2把持部48の金属材料で形成された母材55の外周面全体を被覆する複数層、本実施の形態では2層に積層された異なるゴム層56,57で構成されている。ここで、内側のゴム層56と、この内側ゴム層56の外周面全体を被覆する外側のゴム層57とはそれぞれ異なる色に設定されている。そして、第2把持部48の母材55の外周面全体に内側ゴム層56がゴムライニングにより積層され、さらにこの内側ゴム層56の外周面全体に外側ゴム層57がゴムライニングにより積層されている。
【0060】
さらに、外側ゴム層57の肉厚t1と、内側ゴム層56の肉厚t2との関係はt1<t2である。なお、両者の色は大きく異なり、例えば、外側ゴム層57の色は黒などの暗色、内側ゴム層56の色は白などの明色が好ましい。逆でも良い。さらに、内側ゴム層56および外側ゴム層57の各ゴムの材質としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどがある。
【0061】
また、本実施の形態の処置具42では図12に示すように第2操作アーム45の先端部側に第2把持部48を着脱可能に連結する連結溝部58が設けられている。なお、図12は第2操作アーム45の連結溝部58から第2把持部48を取外した状態を示す。
【0062】
ここで、第2把持部48の手元側端部には図13(A),(B)に示すように薄板形状の接続部59が設けられている。この接続部59は第2操作アーム45の連結溝部58と対応する形状に形成されている。
【0063】
また、第2操作アーム45の連結溝部58は第1操作アーム44と第2操作アーム45との間の開き角度が略90゜の角度に開いた状態で連結溝部58の全体が露出される。この状態で、第2把持部48の接続部59が第2操作アーム45の連結溝部58に係合される。なお、通常の使用時には第1操作アーム44と第2操作アーム45との間の開き角度が90゜に開くことは無い。そのため、通常の使用時には図11(B)に示すように第2把持部48の接続部59は第1操作アーム44の内側平面44aと第2操作アーム45との間で挟まれているので、第2把持部48の接続部59が第2操作アーム45の連結溝部58から外れることはない。
【0064】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の鋏鉗子型の処置具42は第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の処置具2と同様に使用される。そして、処置具42の使用にともない図14に示すように外側ゴム層57に亀裂などの破損部60が生じると、内側ゴム層56の表面が外から観察できる。ここで、内側ゴム層56と、外側ゴム層57とはそれぞれ異なる色に設定されているので、目視にて外側ゴム層57の破損部60が破損初期の段階で判別しやすい。
【0065】
また、外側ゴム層57の破損時には図12に示すように第1操作アーム44と第2操作アーム45とを90゜開くことにより、第2把持部48を第2操作アーム45から外すことが可能である。そのため、外側ゴム層57の破損時には第2把持部48のみを第2操作アーム45に簡単に交換することができる。
【0066】
そこで、上記構成の本実施の形態では2層に積層された異なる色のゴム層56,57によって処置具42の受け部材54を形成したので、外側ゴム層57の破損部60が破損初期の段階で判別できることができる。これにより、発熱板53が母材55に直接当接することを防止できる効果がある。
【0067】
また、外側ゴム層57より内側ゴム層56の厚さが厚いために、内側ゴム層56が完全に破損に到る前に外側ゴム層57の破損の確認が容易となる。そのため、外側ゴム層57が破損した時には第2把持部48のみを交換することが可能なため、経済性に優れる。
【0068】
また、図15は本発明の第5の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第4の実施の形態(図9乃至図14参照)の鋏鉗子型処置具42の構成を次の通り変更したものである。
【0069】
すなわち、本実施の形態では第2操作アーム45の第2把持部48に受け部材装着溝61が設けられている。この受け部材装着溝61にはゴムからなる受け部材62が着脱可能に装着されるようになっている。
【0070】
さらに、受け部材62の裏面には複数の取付け脚部63が突設されている。また、第2把持部48の受け部材装着溝61には受け部材62の取付け脚部63に係脱可能に係合する係合穴64が設けられている。そして、受け部材62は取付け脚部63が係合穴64に係脱可能に係合する状態で、第2把持部48の受け部材装着溝61に着脱可能に取付けられている。
【0071】
そこで、本実施の形態では第2操作アーム45の第2把持部48に受け部材装着溝61を設け、この受け部材装着溝61に受け部材62を着脱可能に装着したので、第4の実施の形態よりも交換する部品が安価である。そのため、第4の実施の形態よりも経済性に優れる効果がある。
【0072】
また、図16は本発明の第6の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第5の実施の形態(図15参照)の鋏鉗子型処置具42における第2操作アーム45の第2把持部48の構成を次の通り変更したものである。
【0073】
すなわち、本実施の形態では第5の実施の形態の受け部材62の複数の取付け脚部63に代えて受け部材62の全長に渡って延設された細長い1本の取付け脚部71を設けている。さらに、第2操作アーム45の第2把持部48には受け部材62の取付け脚部71に係合する細長い受け部材装着溝72を設けている。
【0074】
そして、本実施の形態でも第2操作アーム45の第2把持部48に受け部材装着溝61を設け、この受け部材装着溝61に受け部材62を着脱可能に装着したので、第4の実施の形態よりも交換する部品が安価である。そのため、本実施の形態でも第5の実施の形態と同様に第4の実施の形態よりも経済性に優れる効果がある。
【0075】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1) 一対のジョーを相対的に開閉する操作部を備え、一対のジョーの間に生体組織を挟持した状態で前記生体組織の加熱処置を行う処置具を備えた医療器械において、一方のジョーに、発熱部と、組織に接触して発熱部の熱を組織に伝える刃部と、発熱部にエネルギーを供給する手段とが設けられ、他方のジョーに、ジョーを閉じると刃部に当接する当接面と、刃部が当接面を押した時に当接面の位置を移動可能とする弾性部とが設けられたことを特徴とする医療器械。
【0076】
(付記項2) 一対のジョーを相対的に開閉する操作部を備え、一対のジョーの間に生体組織を挟持した状態で前記生体組織の加熱処置を行う処置具を備えた医療器械において、一方のジョーに、発熱部と、組織に接触して発熱部の熱を組織に伝える刃部と、発熱部にエネルギーを供給する手段とが設けられ、他方のジョーに、ジョーを閉じると刃部に当接する当接面と、刃部が当接面を押した時に当接面の位置を移動可能とする逃げ部とが設けられたことを特徴とする医療器械。
【0077】
(付記項3) 互いに開閉する一対のハンドルと、ハンドルの先端に設けられたジョーと、前記ジョーの一方に設けられた発熱手段と、他方のジョーに設けられたゴムからなる受け部材と、を有し、発熱手段の発熱で組織を凝固切開する熱凝固切開処置具において、受け部材を少なくとも2層からなるゴムで構成し、各層のゴムの色を異なるものにした。
【0078】
(付記項4) 請求項1において、一対のハンドルが略90゜の角度をなした時、受け部材を有する他方のジョーはハンドルから着脱可能である。
【0079】
(付記項1、2の従来技術) 本発明は、開閉可能な一対のジョーの間で生体組織を把持した状態で生体組織を加熱し、生体組織の凝固及び凝固部位の切開などの加熱処置を行う医療器械に関する。
【0080】
一般に生体組織を把持するように開閉する一対の把持部(ジョー)を備え、把持部の一方または両方に発熱体を設け、生体組織を把持した状態で発熱体を発熱させて生体組織の凝固や凝固した生体組織の切開などの加熱処置を行う医療器械が知られている。この医療器械は通常、生体組織に含まれる血管の止血や生体組織の表層の病変部や出血部の焼灼、凝固そして避妊を目的とした卵管の閉塞など多様な手術症例に用いられている。そして、この医療器械によって生体組織の凝固や凝固した生体組織の切開などの加熱処置が行われる。
【0081】
また、生体組織の止血、焼灼、凝固、閉塞あるいは切開などのさまざまな処置を行う場合には、それに先立って予め剥離鉗子などの手術器具により、目的組織及び周辺組織を機械的に圧排し、把持し、剥離するなどの各作業を行い、内視鏡の視野や医療器械の作業領域を確保する手術操作が行われる。
【0082】
更に、例えば、特開2001−198137号公報には相対的に開閉する一対の把持部の少なくとも一方にセラミックヒーターなどの発熱素子を設け、他方の把持部に柔軟性部材からなる受け部材を設けた手術器械が開示されている。
【0083】
この器械では、第1の把持部に生体組織と接触する刃物形状に突出した発熱板(処置部)が設けられている。この発熱板には熱源部である発熱素子が固定され、発熱素子で発生した熱を発熱板に伝熱させ、第1、第2の把持部で組織を挟み込むことにより、この発熱板と第2の把持部の受け部材との間に挟まれて圧迫された生体組織の加熱処置が行えるようになっている。
【0084】
(付記項1、2が解決しようとする課題) しかし、特開2001−198137号公報に開示される手術器械では、発熱板と受け部材の間に組織を一様の圧迫力で挟んで一様の熱を伝えないと、熱発生素子で発生した熱が部分的に集中してしまい、目的部位の凝固が不十分となったり、組織を一様に切り離せないなどの問題がある。
【0085】
例えば、肉厚の組織の凝固や切開をする場合、第1、第2の把持部を大きく開いて伝熱部と受け部材の間に組織を挟まざるを得ないが、第1、第2の把持部を大きく開いているため、伝熱部と受け部材の手元側では、組織をしっかりと挟み込めるが、先端側では、組織との間に隙間があいて、全く挟めない状態となる。
【0086】
また、硬い組織の場合は、第1、第2の把持部に力を入れて挟もうとすると、第1、第2の把持部がそれぞれ、撓んでしまうために、伝熱部と受け部材の手元側では、組織に大きな圧迫力を加えられるが、先端側ではほとんど力が加わらない状態となる。
【0087】
その結果、生体組織に加えられる力や伝える熱のムラが生じて凝固や切開などのムラが生じることになる。
【0088】
また、伝熱部材や受け部材が変形したり、それぞれが設けられた把持部材に対して傾いた場合も、同様の問題が生じる。
【0089】
(付記項1、2の目的) 本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、目的とする組織の状態によらず、伝熱部と受け部材の手元から先端まで、従来よりも一様の力で挟み込み、一様の熱を加えて、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる手術器械を提供することを目的とする。
【0090】
また、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得るようにすることで、安価で、かつ、耐久性に優れた手術器械を提供することを目的とする。
【0091】
(付記項1、2の効果) 本発明により、目的とする組織の状態によらず、伝熱部と受け部材の間で一様の力で挟み込み、一様の熱を加えて、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。
【0092】
また、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得るようにすることで、安価で、かつ、耐久性に優れた手術器械を提供することができる。
【0093】
(付記項3、4の従来技術) 特開2001−198137に示すように発熱した発熱板と、それに当接するゴム(受け部材)で生体組織をはさんで、凝固切開する凝固切開処置具があった。
【0094】
(付記項3、4が解決しようとする課題) 前記の従来技術では発熱板の把持面が非常に狭い幅であるため、使用にともないゴムが破損する場合があった。さらに使用者が気づかずに使用を続けると、ゴムの破損が大きくなり、発熱板がゴムを貫通して金属部材に接触して、発熱板が破損するおそれがあった。
【0095】
(付記項3、4の目的) 以上の問題に着目して、本願は
▲1▼ 万一、ゴムが破損しても、破損の初期段階で使用者が破損を判別しやすい、熱凝固切開鉗子の提供を目的とする。
【0096】
▲2▼ 万一、ゴムが破損してもゴムの交換が可能な、熱凝固切開鉗子の提供を目的とする。
【0097】
(付記項3、4の課題を解決するための手段) 以上の問題を解決するため、以下の構成とした。
【0098】
互いに開閉する一対のジョーと、前記ジョーの一方に設けられた発熱手段と、他方のジョーに設けられたゴムからなる受け部材と、を有し、発熱手段の発熱で組織を凝固切開する熱凝固切開処置具において、受け部材を少なくとも2層からなるゴムで構成し、各層のゴムの色を異なるものにした。
【0099】
(付記項3、4の効果) ゴムの破損が破損初期の段階で判別できることにより、発熱板が母材に当接することを防止できる。また、表面層のゴムより内層のゴムの厚さが厚いために、内層のゴムが完全に破損に到る前に表面層のゴムの破損の確認が容易となる。表面層のゴムが破損した時にはジョーを交換することが可能なため、経済性に優れる。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、目的とする生体組織を、伝熱部と受け部材の手元から先端まで、一様の力で挟み込み、一様の熱を加えて、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。さらに、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得るようにすることができ、安価で、かつ、耐久性に優れた医療器械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の医療器械のシステム全体を示す概略構成図。
【図2】(A)は第1の実施の形態の鋏鉗子型処置具における先端部分の内部構造を示す要部の縦断面図、(B)は(A)のIIB−IIB線断面図。
【図3】図2(A)のIII−III線断面図。
【図4】第1の実施の形態の鋏鉗子型処置具の作用を説明するための説明図。
【図5】本発明の第2の実施の形態の鋏鉗子型処置具の先端部分の内部構造を示す要部の縦断面図。
【図6】第2の実施の形態の鋏鉗子型処置具の作用を説明するための説明図。
【図7】本発明の第3の実施の形態の鋏鉗子型処置具の先端部分の内部構造を示す要部の縦断面図。
【図8】第3の実施の形態の鋏鉗子型処置具における先端部分の内部構造の変形例を示す要部の縦断面図。
【図9】本発明の第4の実施の形態の医療器械のシステム全体を示す概略構成図。
【図10】第4の実施の形態の鋏鉗子型処置具における先端部分の側面図。
【図11】(A)は図10のXIA−XIA線断面図、(B)は図10のXIB−XIB線断面図。
【図12】第4の実施の形態の鋏鉗子型処置具におけるジョーをハンドルから取外した状態を示す平面図。
【図13】(A)は第4の実施の形態の鋏鉗子型処置具におけるジョーのハンドルとの連結部分を示す平面図、(B)は同側面図。
【図14】第4の実施の形態の鋏鉗子型処置具におけるジョーの外装用ゴムに亀裂などの破損が生じた状態を示す斜視図。
【図15】本発明の第5の実施の形態の鋏鉗子型処置具における要部構成を示す斜視図。
【図16】本発明の第6の実施の形態の鋏鉗子型処置具における要部構成を示す斜視図。
【符号の説明】
2 処置具
7 第1把持部(ジョー)
8 第2把持部(ジョー)
9,10 リング部(操作部)
14 伝熱部材
15 発熱体(発熱部)
17 刃部
18 弾性部材(弾性体)
18a 当接面
19 弾性体突出部(移動量増大手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、開閉可能な一対のジョーの間で生体組織を把持した状態で生体組織を加熱し、生体組織の凝固及び凝固部位の切開などの加熱処置を行う医療器械に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、生体組織を把持するように開閉する一対の把持部(ジョー)と、一対の把持部を相対的に開閉操作する操作部とを備え、把持部の一方または両方に発熱体を設けた医療器械が知られている。この医療器械では一対の把持部間を閉操作して生体組織を把持した状態で発熱体を発熱させて生体組織の凝固や、凝固した生体組織の切開などの加熱処置を行うようになっている。
【0003】
この医療器械は通常、生体組織に含まれる血管の止血や、生体組織の表層の病変部や、出血部の焼灼、凝固、そして避妊を目的とした卵管の閉塞など多様な手術症例に用いられている。そして、この医療器械によって生体組織の凝固や、凝固した生体組織の切開などの加熱処置が行われる。
【0004】
また、生体組織の止血、焼灼、凝固、閉塞あるいは切開などのさまざまな処置を行う場合には、それに先立って予め剥離鉗子などの手術器具により、目的組織及び周辺組織を機械的に圧排し、把持し、剥離するなどの各作業を行い、内視鏡の視野や医療器械の作業領域を確保する手術操作が行われる。
【0005】
更に、例えば、特許文献1には相対的に開閉する一対の把持部の少なくとも一方にセラミックヒーターなどの発熱素子を設け、他方の把持部に柔軟性部材からなる受け部材を設けた手術器械が開示されている。
【0006】
この器械では、第1の把持部に生体組織と接触する刃物形状に突出した発熱板(処置部)が設けられている。この発熱板には熱源部である発熱素子が固定されている。そして、発熱素子で発生した熱を発熱板に伝熱させた状態で、第1、第2の把持部間に生体組織を挟み込むことにより、この発熱板と第2の把持部の受け部材との間に挟まれて圧迫された生体組織の加熱処置が行えるようになっている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−198137号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に開示される手術器械では、一対の把持部の基端部が回動軸を介して回動可能に連結されている。そして、一対の把持部が回動軸を中心に回動する動作にともない一対の把持部の先端側が相対的に開閉操作される構成になっている。
【0009】
そのため、上記従来構成の器械では、次のような問題がある。例えば、肉厚の生体組織の凝固や切開をする場合、第1、第2の把持部を大きく開いて伝熱部と受け部材との間に生体組織を挟む必要がある。この場合、第1、第2の把持部は手元端部側が回動軸を中心に回動する状態で第1、第2の把持部間の拡開角度が大きくなるので、第1、第2の把持部の先端側が大きく開いている。そして、伝熱部と受け部材の手元側では、第1、第2の把持部間の間隔が狭いので、第1、第2の把持部間で生体組織をしっかりと挟み込める。しかしながら、伝熱部と受け部材の先端側では、第1、第2の把持部間の間隔が大きいので、伝熱部および受け部材と、生体組織との間に隙間があいて、全く挟めない状態となる可能性がある。
【0010】
その結果、第1、第2の把持部の先端側と手元側とでは第1、第2の把持部間で挟持した生体組織に加えられる加圧力が異なるので、第1、第2の把持部の先端側と手元側とで生体組織に伝えられる熱のムラが生じ、生体組織の凝固や、切開などの処置にムラが生じる可能性がある。
【0011】
また、硬い生体組織の場合は、第1、第2の把持部に力を入れて生体組織を挟もうとすると、第1、第2の把持部がそれぞれ、撓んでしまう可能性がある。そのため、伝熱部と受け部材の手元側では、第1、第2の把持部の撓みが小さいので、生体組織に大きな圧迫力を加えることができるが、先端側では第1、第2の把持部の撓みが大きいので、生体組織にほとんど力が加わらない状態となる。その結果、この場合にも第1、第2の把持部の先端側から手元側まで一様には生体組織に熱を加えられずに、生体組織の凝固や、切開などの処置にムラが生じる可能性がある。
【0012】
さらに、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などにより、伝熱部材や、受け部材が変形したり、それぞれが設けられた把持部材に対して傾いた場合も、同様の問題が生じる。その結果、発熱板と受け部材との間に生体組織を先端側から手元側まで一様の圧迫力で挟むことができず、第1、第2の把持部の先端側から手元側まで一様には生体組織に熱を加えることができないので、熱発生素子で発生した熱が局部的に集中してしまい、目的部位の生体組織の凝固が不十分となったり、生体組織を一様に切り離せないなどの問題がある。
【0013】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、一方のジョーの刃部と他方のジョーの弾性体の当接面の手元から先端まで一様の力で目的とする生体組織を挟み込むことができ、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えることができ、目的とする生体組織の状態に係わらずに、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができるとともに、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができ、安価で、かつ、耐久性に優れた医療器械を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、一対のジョーを相対的に開閉操作する操作部と、
前記一対のジョー間を閉操作して生体組織を挟持した状態で前記生体組織の加熱処置を行う加熱処置手段とを備えた医療器械において、
前記加熱処置手段は、一方の前記ジョーに、発熱部と、この発熱部に発熱用のエネルギーを供給する手段と、前記生体組織に接触し、前記発熱部の熱を前記生体組織に伝える刃部とを設け、
他方の前記ジョーに、前記一対のジョーを閉じた際に前記刃部に当接する弾性体によって形成される当接面を設けて構成するとともに、
前記刃部が前記当接面を押圧した際の押圧力によって前記弾性体を弾性変形させる弾性変形量を増大させて前記当接面の移動量を増大させる移動量増大手段を設けたことを特徴とする医療器械である。
そして、本請求項1の発明では、一対のジョーを閉じ、一方のジョーの刃部が他方のジョーの弾性体の当接面を押圧した際に、刃部が当接面を押圧した際の押圧力によって弾性体を弾性変形させる。このとき、移動量増大手段によって弾性体の弾性変形量を増大させて当接面の移動量を増大させることにより、当接面の手元側で刃部と当接面が当接した後、更に当接面の先端まで当接するまでジョーが閉じるのを容易にして、一方のジョーの刃部と他方のジョーの弾性体の当接面との間でできるだけ一様の力で目的とする生体組織を挟み込み、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えるようにしたものである。
【0015】
請求項2の発明は、前記移動量増大手段は、前記弾性体を保持する保持部材の端面位置よりも前記弾性体の前記当接面を突出させて前記弾性体の両側に前記弾性体の弾性変形を許容させる弾性体突出部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械である。
そして、本請求項2の発明では、刃部が当接面を押圧する押圧力によって弾性体を弾性変形させる際に、弾性体突出部によって弾性体の両側に弾性体を弾性変形させやすくすることにより、当接面の移動量を増大させるようにしたものである。
【0016】
請求項3の発明は、前記移動量増大手段は、前記弾性体を保持する保持部材における前記弾性体の底部との接触面の少なくとも一部に前記弾性体と非接触状態で保持させて前記弾性体の底部に前記弾性体の弾性変形を許容させる弾性体非接触部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械である。
そして、本請求項3の発明では、刃部が当接面を押圧する押圧力によって弾性体を弾性変形させる際に、弾性体非接触部によって弾性体の底部の非接触部に弾性体を弾性変形させやすくしたものである。
【0017】
請求項4の発明は、前記弾性体突出部は、前記弾性体の両側面に前記弾性体の弾性変形時に前記弾性体の弾性変形を助長する凹陥状の溝部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の医療器械である。
そして、本請求項4の発明では、刃部が当接面を押圧する押圧力によって弾性体を弾性変形させる際に、弾性体突出部における弾性体の両側面の凹陥状の溝部によって弾性体を両側に弾性変形させやすくして弾性体の弾性変形を助長するようにしたものである。
【0018】
請求項5の発明は、前記移動量増大手段は、前記弾性体の内部に設けた空洞部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械である。
そして、本請求項5の発明では、刃部が当接面を押圧する押圧力によって弾性体を弾性変形させる際に、弾性体の内部の空洞部によって弾性体の当接面を弾性体の内部方向に弾性変形させやすくして弾性体の弾性変形を助長するようにしたものである。
【0019】
請求項6の発明は、前記弾性体は、複数層のゴムで構成し、各層のゴムをそれぞれ異なる色に設定したことを特徴とする請求項1に記載の医療器械である。
そして、本請求項6の発明では、使用にともない表面層のゴムに亀裂などの破損が生じると、表面層のゴムとは異なる色の内側層のゴムの表層が外から観察でき、目視にてゴムの破損が破損初期の段階で判別しやすくしたものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図4を参照して説明する。図1は本実施の形態の医療器械1のシステム全体の概略構成を示すものである。この医療器械1のシステムには鋏鉗子型の処置具2と電源装置3とが設けられている。
【0021】
また、処置具2には一対の略直線状の操作アーム4,5(第1操作アーム4及び第2操作アーム5)が設けられている。これらの第1操作アーム4及び第2操作アーム5は中間部分で共通の回転軸6を介して自由に回転できるように連結されている。
【0022】
さらに、各操作アーム4,5には回転軸6よりも先端部側に、それぞれ、開閉可能な一対の把持部(ジョー)7,8(第1把持部7及び第2把持部8)が設けられている。ここで、第1操作アーム4の先端部側には第1把持部7が、また第2操作アーム5の先端部側には第2把持部8がそれぞれ形成されている。なお、これら操作アーム4,5の手元側には、術者が指を入れて処置具2を操作するためのリング部(操作部)9,10が設けられている。
【0023】
また、処置具2と電源装置3との間はケーブル11で連結されている。さらに、電源装置3には術者が足で電源装置3のON−OFFや、出力設定の調整などの制御をするためのフットスイッチ12が接続されている。
【0024】
また、図2(A),(B)は処置具2の先端部分の構造を示すものである。ここで、第1把持部7には図2(B)に示すように、開閉方向の面に対して垂直な平面上で湾曲する湾曲部7aが設けられている。なお、第2把持部8にも第1把持部7の湾曲部7aと対応する湾曲形状の湾曲部8a(図示せず)が設けられている。
【0025】
さらに、図2(A)に示すように、第1把持部7及び第2把持部8の外面側には、滑らかで、先端側に向かうにしたがって緩やかに細くなる先細形状を有する剥離面7b,8bがそれぞれ形成されている。そして、第1把持部7と第2把持部とを閉じた状態で、これらの剥離面7b,8bを用いて生体組織を擦ったり、生体組織の間に差し込む操作を行なうことにより、生体組織などの移動や除去、生体組織間の剥離を行ったり、更に、先端で血管や神経などの索状組織を扱うなどの手術操作を安全に、かつ確実に行うことができる。
【0026】
図2(A),(B)および図3に示すように、第1把持部7の内面(下面)側には軸方向に長く延びる処置部材取付け用の凹陥部7cが形成されている。この凹陥部7cには軸方向に長く延びる略ドーム型(略U字状の断面形状)の断熱枠13が装着されている。この断熱枠13は例えばフッ素樹脂や、シリコーンゴム、セラミックスなど熱を伝えにくい材料によって形成されている。
【0027】
また、断熱枠13の内側には処置部材である板状の伝熱部材14の一端部(図2(A)および図3中で、上端部)が挿入された状態で嵌着されている。この伝熱部材14は、例えば銅、銅合金、アルミニウム合金、タングステンあるいはモリブデン等、熱を効率良く伝える材料によって形成されている。
【0028】
さらに、伝熱部材14の上端部には複数、本実施の形態では3つの発熱体装着穴14aが形成されている。これら3つの発熱体装着穴14aにはそれぞれ発熱体(発熱部)15が装着されている。各発熱体15としては、例えばシリコーン半導体や、モリブデン薄膜抵抗などの熱発生素子や、ニクロム線などのように電気を熱に変換する物が用いられる。
【0029】
また、各発熱素子14には発熱のためのエネルギーを供給するリード線16a,16bの先端部が接続されている。各リード線16a,16bの基端部側はそれぞれ後方に向けて延出されている。さらに、各リード線16a,16bの基端部側は伝熱部材14の後端の近傍で1つに束ねられ、更に手元側に伸びて、前述のケーブル11に接続されている。そして、3個の発熱体15への通電時には、これらの発熱体15の熱を伝熱部材14で受け取るようになっている。
【0030】
さらに、図3に示すように伝熱部材14の下端部側には、断熱枠13の下面13aよりも下向きに突出し、先細り形状の刃部17が形成されている。この刃部17は、生体組織に接触して熱を伝えることにより、生体組織の加熱処置を行うようになっている。なお、刃部17の表面には、生体組織や血液が付着することを防ぐためにフッ素樹脂などの薄く非粘着性の皮膜が施されている。
【0031】
また、図3に示すように、第2把持部8の上面8cには、第1把持部7の刃部17と対向する位置に、例えばシリコーンゴムや、フッ素樹脂などの柔らかい材料からなる軸方向に細長い弾性部材(弾性体)18が設けられている。この弾性部材18の上面には第1把持部7と第2把持部8との間を閉じた際に、刃部17が全長にわたって突き当たって当接する平面状の当接面18aが形成されている。
【0032】
さらに、本実施の形態には弾性部材18を保持する第2把持部8の上面8cの位置よりも弾性部材18の当接面18aを上側に突出させた弾性体突出部19が設けられている。そして、この弾性体突出部19の両側面19aは略垂直に立設されている。これにより、図4に示すように刃部17が当接面18aを押圧した際の押圧力によって弾性体突出部19の両側面19aに向けて弾性部材18が弾性変形することを許容させるようになっている。そして、この弾性体突出部19によって弾性部材18を弾性変形させる弾性変形量を増大させて当接面18aの移動量を増大させる移動量増大手段が形成されている。
【0033】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の鋏鉗子型の処置具2の使用時にはこの処置具2の第1操作アーム4および第2操作アーム5の手元側の各リング部9,10に手指を差し込んだ状態で、第1操作アーム4および第2操作アーム5を回転軸6を中心に回動操作することにより、第1把持部7と第2把持部8との間が開閉操作される。
【0034】
そして、第1把持部7と第2把持部8との間を閉じると、最初に刃部17の手元側と当接面18aの手元側が当接して、刃部17の先端側と当接面18aの先端側は隙間があいた状態となり、第1把持部7と第2把持部8との間を更に強く閉じると、刃部17が当接面18aの全長にわたって突き当たって当接する。このとき、図4に示すように、刃部17が弾性部材18の中に沈み込む。そして、弾性部材18の上側部分は、刃部17によって図4中で左右に分けられると同時に、弾性体突出部19の両側面19aの立ち上がり部が上部側が外側に開く状態で傾く、あるいは、両側に張り出すことにより、左右に逃げることができる。これにより、弾性体突出部19によって弾性部材18を弾性変形させる弾性変形量が増大されて当接面18aの移動量が増大される。
【0035】
また、第1把持部7と第2把持部8との間を閉じて第1把持部7と第2把持部8との間に生体組織を挟み込んだ状態で、第1把持部7の内部の各発熱体15が通電加熱される。
【0036】
このとき、各発熱体15からの熱は伝熱部材14に伝熱され、伝熱部材14の先細状の刃部17が高温度に加熱される。そのため、第1把持部7と第2把持部8との間で伝熱部材14の刃部17に圧接されている生体組織はこの刃部17の熱によって加熱され、生体組織の凝固や切開が効率良く行なわれる。
【0037】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の処置具2では弾性部材18を保持する第2把持部8の上面8cの位置よりも弾性部材18の当接面18aを上側に突出させた弾性体突出部19を設けている。そして、刃部17が当接面18aを押圧した際の押圧力によって弾性体突出部19の両側面19aに向けて弾性部材18が弾性変形することを許容させている。これにより、第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じ、第1把持部7の刃部17が第2把持部8の弾性部材18の当接面18aを押圧した際に、弾性部材18の上側部分が、刃部17によって図4中で左右に分けられると同時に、弾性体突出部19の両側面19aの立ち上がり部が上部側が外側に開く状態で傾かせることができる。その結果、刃部17が当接面18aを押圧した際の押圧力によって弾性部材18を弾性変形させる際の弾性部材18の弾性変形量を弾性体突出部19によって増大させて当接面18aの移動量を従来よりも増大させることができる。
【0038】
そのため、刃部17を弾性部材18の中に深く沈み込ませることができるので、刃部17と弾性部材18との間の生体組織を挟み込む力を、手元側から先端まで、従来よりも一様にすることができ、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えることができる効果がある。これにより、目的とする生体組織の状態に係わらずに、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。
【0039】
さらに、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができ、安価で、かつ、耐久性に優れた医療器械を提供することができる。
【0040】
また、図5および図6は本発明の第2の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の処置具2における第2把持部8の弾性体突出部19に代えて弾性部材18の移動量増大手段の構成を次の通り変更したものである。なお、これ以外の部分は第1の実施の形態の医療器械1と同一構成になっており、第1の実施の形態の医療器械1と同一部分には同一の符号を付してここではその説明を省略する。
【0041】
すなわち、本実施の形態の第2把持部8には、刃部17と対向する位置に、軸方向に長く延び、刃部17の対向面側から裏側まで第2把持部8を横断するように貫通する貫通穴21が設けられている。そして、この貫通穴21によって弾性部材18の底部と非接触状態で保持させる弾性体非接触部が形成されている。なお、第2把持部8の貫通穴21に代えて第2把持部8を貫通していない凹陥状の溝部を設けてもよい。
【0042】
さらに、第2把持部8には貫通穴21の上部に貫通穴21よりも幅広の溝部22が形成されている。そして、この溝部22によって弾性部材18の受け台が形成されている。
【0043】
また、弾性部材18の上部には溝部22に嵌め込まれる幅広の突出部23が形成されている。弾性部材18の下部には貫通穴21に嵌め込まれる幅狭な幅狭部24が形成されている。そして、本実施の形態の弾性部材18は幅狭部24が貫通穴21に嵌め込まれ、かつ突出部23が溝部22に嵌め込まれた状態で、保持されている。これにより、弾性部材18は幅狭部24の底面24aが第2把持部8に非接触状態で支持されている。
【0044】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の鋏鉗子型の処置具2の使用時に第1把持部7と第2把持部8との間を閉じる操作時には第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じると、刃部17が当接面18aの全長にわたって突き当たって当接する。このとき、図6に示すように、刃部17が弾性部材18の中に沈み込み、弾性部材18の中央部分が刃部17によって下方向に押し下げられると同時に、弾性部材18の幅狭部24の底面24aが第2把持部8の貫通穴21の中に突出する状態で弾性部材18が弾性変形される。
【0045】
そこで、本実施の形態では第2把持部8に、刃部17の対向面側から裏側まで第2把持部8を横断するように貫通する貫通穴21を設けている。そのため、第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じた際に刃部17が弾性部材18の中に沈み込み、弾性部材18の中央部分が刃部17によって下方向に押し下げられると同時に、弾性部材18の幅狭部24の底面24aが第2把持部8の貫通穴21の中に突出する状態で弾性部材18を弾性変形させることができる。その結果、弾性部材18の幅狭部24の底面24aを第2把持部8の貫通穴21の中に逃がすことができるので、刃部17が当接面18aを押圧した際の押圧力によって弾性部材18を弾性変形させる際の弾性部材18の弾性変形量を第2把持部8の貫通穴21によって増大させて当接面18aの移動量を従来よりも増大させることができる。
【0046】
そのため、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様に刃部17を弾性部材18の中に深く沈み込ませることができるので、刃部17と弾性部材18との間に挟み込んだ生体組織を挟み込む力を、手元側から先端まで、従来よりも一様にすることができ、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えることができる効果がある。これにより、目的とする生体組織の状態に係わらずに、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。
【0047】
また、図7は本発明の第3の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の処置具2における第2把持部8の弾性体突出部19の構成を次の通り変更したものである。
【0048】
すなわち、本実施の形態の弾性体突出部19には、この弾性体突出部19の両側面19aの下端部(略垂直な立ち上がり部の根元近傍)に軸方向に延び、かつ弾性部材18の中心方向に向かって抉れた凹陥状の溝部31が設けられている。この溝部31は弾性部材18の弾性変形時に弾性部材18の弾性変形を助長するものである。
【0049】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の鋏鉗子型の処置具2の使用時に第1把持部7と第2把持部8との間を閉じる操作時には第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じると、刃部17が当接面18aの全長にわたって突き当たって当接する。このとき、第1把持部7の刃部17が第2把持部8の弾性部材18の当接面18aを押圧した際に、弾性部材18の上側部分を、刃部17によって図4中で左右に分けることができる。
【0050】
さらに、本実施の形態ではこれと同時に、弾性体突出部19の両側面19aの立ち上がり部の溝部31に弾性部材18を逃げ込ませることができるので、刃部17を弾性部材18の中に深く沈み込ませることができる。その結果、刃部17が当接面18aを押圧する押圧力によって弾性部材18を弾性変形させる際に、弾性体突出部19の両側面19aの下溝部31によって弾性部材18を両側に弾性変形させやすくして弾性部材18の弾性変形を助長することができる。
【0051】
そこで、本実施の形態では第1の実施の形態と同様に弾性部材18を保持する第2把持部8の上面8cの位置よりも弾性部材18の当接面18aを上側に突出させた弾性体突出部19を設けている。そのため、第1把持部7と第2把持部8との間を強く閉じ、第1把持部7の刃部17が第2把持部8の弾性部材18の当接面18aを押圧した際に、弾性部材18の上側部分を、刃部17によって図4中で左右に分けることができる。このとき、本実施の形態では弾性体突出部19の両側面19aの立ち上がり部の溝部31に弾性部材18を逃げ込ませることができるので、刃部17を弾性部材18の中に深く沈み込ませることができる。そのため、刃部17と弾性部材18との間に挟み込んだ生体組織を挟み込む力を、手元側から先端まで、従来よりも一様にすることができ、目的とする生体組織全体に一様に熱を加えることができる効果がある。これにより、目的とする生体組織の状態に係わらずに、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。
【0052】
また、図8は第3の実施の形態(図7参照)の変形例を示すものである。本変形例のように、第2把持部8に保持されている弾性部材18の上面の当接面18aが第2把持部8の上面8cとほぼ同じ高さに設定されている場合(弾性体突出部19がない場合)には、弾性部材18の内部に、軸方向に延びる空洞部32を設け、この空洞部32によって移動量増大手段が形成される構成にしても良い。
【0053】
そして、本変形例では、刃部17が弾性部材18の上面の当接面18aを押圧する押圧力によって弾性部材18を弾性変形させる際に、弾性部材18の内部の空洞部32によって弾性部材18の当接面18aを弾性部材18の内部方向に弾性変形させやすくして弾性部材18の弾性変形を助長することができる。
【0054】
また、図9乃至図14は本発明の第4の実施の形態を示すものである。図9は本実施の形態の医療器械41全体の概略構成を示すものである。この医療器械41のシステムには鋏鉗子型の熱凝固切開鉗子である処置具42と電源装置43とが設けられている。
【0055】
また、処置具42には一対の略直線状の操作アーム44,45(第1操作アーム44及び第2操作アーム45)が設けられている。これらの第1操作アーム44及び第2操作アーム45は中間部分で共通の回転軸46を介して自由に回転できるように軸支されている。
【0056】
さらに、各操作アーム44,45には回転軸46よりも先端部側に、それぞれ、開閉可能な略湾曲した先細り形状の一対の把持部(ジョー)47,48(第1把持部47及び第2把持部48)が設けられている。ここで、第1操作アーム44の先端部側には第1把持部47が、また第2操作アーム45の先端部側には第2把持部48がそれぞれ形成されている。なお、これら操作アーム44,45の手元側には、術者が指を入れて処置具42を操作するためのリング部(操作部)49,50が設けられている。
【0057】
また、処置具42と電源装置43との間はケーブル51で連結されている。さらに、電源装置43には術者が足で電源装置43のON−OFFや、出力設定の調整などの制御をするためのフットスイッチ52が接続されている。
【0058】
また、図10は処置具42の先端部分の構造を示すものである。ここで、第1把持部47には発熱板53が、第2把持部48には受け部材54が設けられている。発熱板53の上方にはヒーター(図2(A),(B)の発熱体15参照)が設けられている。各ヒーターは接続ケーブル51を介して、電源装置43に接続されている。
【0059】
また、本実施の形態の処置具42の受け部材54は図11(A)に示す通り第2把持部48の金属材料で形成された母材55の外周面全体を被覆する複数層、本実施の形態では2層に積層された異なるゴム層56,57で構成されている。ここで、内側のゴム層56と、この内側ゴム層56の外周面全体を被覆する外側のゴム層57とはそれぞれ異なる色に設定されている。そして、第2把持部48の母材55の外周面全体に内側ゴム層56がゴムライニングにより積層され、さらにこの内側ゴム層56の外周面全体に外側ゴム層57がゴムライニングにより積層されている。
【0060】
さらに、外側ゴム層57の肉厚t1と、内側ゴム層56の肉厚t2との関係はt1<t2である。なお、両者の色は大きく異なり、例えば、外側ゴム層57の色は黒などの暗色、内側ゴム層56の色は白などの明色が好ましい。逆でも良い。さらに、内側ゴム層56および外側ゴム層57の各ゴムの材質としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどがある。
【0061】
また、本実施の形態の処置具42では図12に示すように第2操作アーム45の先端部側に第2把持部48を着脱可能に連結する連結溝部58が設けられている。なお、図12は第2操作アーム45の連結溝部58から第2把持部48を取外した状態を示す。
【0062】
ここで、第2把持部48の手元側端部には図13(A),(B)に示すように薄板形状の接続部59が設けられている。この接続部59は第2操作アーム45の連結溝部58と対応する形状に形成されている。
【0063】
また、第2操作アーム45の連結溝部58は第1操作アーム44と第2操作アーム45との間の開き角度が略90゜の角度に開いた状態で連結溝部58の全体が露出される。この状態で、第2把持部48の接続部59が第2操作アーム45の連結溝部58に係合される。なお、通常の使用時には第1操作アーム44と第2操作アーム45との間の開き角度が90゜に開くことは無い。そのため、通常の使用時には図11(B)に示すように第2把持部48の接続部59は第1操作アーム44の内側平面44aと第2操作アーム45との間で挟まれているので、第2把持部48の接続部59が第2操作アーム45の連結溝部58から外れることはない。
【0064】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の鋏鉗子型の処置具42は第1の実施の形態(図1乃至図4参照)の処置具2と同様に使用される。そして、処置具42の使用にともない図14に示すように外側ゴム層57に亀裂などの破損部60が生じると、内側ゴム層56の表面が外から観察できる。ここで、内側ゴム層56と、外側ゴム層57とはそれぞれ異なる色に設定されているので、目視にて外側ゴム層57の破損部60が破損初期の段階で判別しやすい。
【0065】
また、外側ゴム層57の破損時には図12に示すように第1操作アーム44と第2操作アーム45とを90゜開くことにより、第2把持部48を第2操作アーム45から外すことが可能である。そのため、外側ゴム層57の破損時には第2把持部48のみを第2操作アーム45に簡単に交換することができる。
【0066】
そこで、上記構成の本実施の形態では2層に積層された異なる色のゴム層56,57によって処置具42の受け部材54を形成したので、外側ゴム層57の破損部60が破損初期の段階で判別できることができる。これにより、発熱板53が母材55に直接当接することを防止できる効果がある。
【0067】
また、外側ゴム層57より内側ゴム層56の厚さが厚いために、内側ゴム層56が完全に破損に到る前に外側ゴム層57の破損の確認が容易となる。そのため、外側ゴム層57が破損した時には第2把持部48のみを交換することが可能なため、経済性に優れる。
【0068】
また、図15は本発明の第5の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第4の実施の形態(図9乃至図14参照)の鋏鉗子型処置具42の構成を次の通り変更したものである。
【0069】
すなわち、本実施の形態では第2操作アーム45の第2把持部48に受け部材装着溝61が設けられている。この受け部材装着溝61にはゴムからなる受け部材62が着脱可能に装着されるようになっている。
【0070】
さらに、受け部材62の裏面には複数の取付け脚部63が突設されている。また、第2把持部48の受け部材装着溝61には受け部材62の取付け脚部63に係脱可能に係合する係合穴64が設けられている。そして、受け部材62は取付け脚部63が係合穴64に係脱可能に係合する状態で、第2把持部48の受け部材装着溝61に着脱可能に取付けられている。
【0071】
そこで、本実施の形態では第2操作アーム45の第2把持部48に受け部材装着溝61を設け、この受け部材装着溝61に受け部材62を着脱可能に装着したので、第4の実施の形態よりも交換する部品が安価である。そのため、第4の実施の形態よりも経済性に優れる効果がある。
【0072】
また、図16は本発明の第6の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第5の実施の形態(図15参照)の鋏鉗子型処置具42における第2操作アーム45の第2把持部48の構成を次の通り変更したものである。
【0073】
すなわち、本実施の形態では第5の実施の形態の受け部材62の複数の取付け脚部63に代えて受け部材62の全長に渡って延設された細長い1本の取付け脚部71を設けている。さらに、第2操作アーム45の第2把持部48には受け部材62の取付け脚部71に係合する細長い受け部材装着溝72を設けている。
【0074】
そして、本実施の形態でも第2操作アーム45の第2把持部48に受け部材装着溝61を設け、この受け部材装着溝61に受け部材62を着脱可能に装着したので、第4の実施の形態よりも交換する部品が安価である。そのため、本実施の形態でも第5の実施の形態と同様に第4の実施の形態よりも経済性に優れる効果がある。
【0075】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1) 一対のジョーを相対的に開閉する操作部を備え、一対のジョーの間に生体組織を挟持した状態で前記生体組織の加熱処置を行う処置具を備えた医療器械において、一方のジョーに、発熱部と、組織に接触して発熱部の熱を組織に伝える刃部と、発熱部にエネルギーを供給する手段とが設けられ、他方のジョーに、ジョーを閉じると刃部に当接する当接面と、刃部が当接面を押した時に当接面の位置を移動可能とする弾性部とが設けられたことを特徴とする医療器械。
【0076】
(付記項2) 一対のジョーを相対的に開閉する操作部を備え、一対のジョーの間に生体組織を挟持した状態で前記生体組織の加熱処置を行う処置具を備えた医療器械において、一方のジョーに、発熱部と、組織に接触して発熱部の熱を組織に伝える刃部と、発熱部にエネルギーを供給する手段とが設けられ、他方のジョーに、ジョーを閉じると刃部に当接する当接面と、刃部が当接面を押した時に当接面の位置を移動可能とする逃げ部とが設けられたことを特徴とする医療器械。
【0077】
(付記項3) 互いに開閉する一対のハンドルと、ハンドルの先端に設けられたジョーと、前記ジョーの一方に設けられた発熱手段と、他方のジョーに設けられたゴムからなる受け部材と、を有し、発熱手段の発熱で組織を凝固切開する熱凝固切開処置具において、受け部材を少なくとも2層からなるゴムで構成し、各層のゴムの色を異なるものにした。
【0078】
(付記項4) 請求項1において、一対のハンドルが略90゜の角度をなした時、受け部材を有する他方のジョーはハンドルから着脱可能である。
【0079】
(付記項1、2の従来技術) 本発明は、開閉可能な一対のジョーの間で生体組織を把持した状態で生体組織を加熱し、生体組織の凝固及び凝固部位の切開などの加熱処置を行う医療器械に関する。
【0080】
一般に生体組織を把持するように開閉する一対の把持部(ジョー)を備え、把持部の一方または両方に発熱体を設け、生体組織を把持した状態で発熱体を発熱させて生体組織の凝固や凝固した生体組織の切開などの加熱処置を行う医療器械が知られている。この医療器械は通常、生体組織に含まれる血管の止血や生体組織の表層の病変部や出血部の焼灼、凝固そして避妊を目的とした卵管の閉塞など多様な手術症例に用いられている。そして、この医療器械によって生体組織の凝固や凝固した生体組織の切開などの加熱処置が行われる。
【0081】
また、生体組織の止血、焼灼、凝固、閉塞あるいは切開などのさまざまな処置を行う場合には、それに先立って予め剥離鉗子などの手術器具により、目的組織及び周辺組織を機械的に圧排し、把持し、剥離するなどの各作業を行い、内視鏡の視野や医療器械の作業領域を確保する手術操作が行われる。
【0082】
更に、例えば、特開2001−198137号公報には相対的に開閉する一対の把持部の少なくとも一方にセラミックヒーターなどの発熱素子を設け、他方の把持部に柔軟性部材からなる受け部材を設けた手術器械が開示されている。
【0083】
この器械では、第1の把持部に生体組織と接触する刃物形状に突出した発熱板(処置部)が設けられている。この発熱板には熱源部である発熱素子が固定され、発熱素子で発生した熱を発熱板に伝熱させ、第1、第2の把持部で組織を挟み込むことにより、この発熱板と第2の把持部の受け部材との間に挟まれて圧迫された生体組織の加熱処置が行えるようになっている。
【0084】
(付記項1、2が解決しようとする課題) しかし、特開2001−198137号公報に開示される手術器械では、発熱板と受け部材の間に組織を一様の圧迫力で挟んで一様の熱を伝えないと、熱発生素子で発生した熱が部分的に集中してしまい、目的部位の凝固が不十分となったり、組織を一様に切り離せないなどの問題がある。
【0085】
例えば、肉厚の組織の凝固や切開をする場合、第1、第2の把持部を大きく開いて伝熱部と受け部材の間に組織を挟まざるを得ないが、第1、第2の把持部を大きく開いているため、伝熱部と受け部材の手元側では、組織をしっかりと挟み込めるが、先端側では、組織との間に隙間があいて、全く挟めない状態となる。
【0086】
また、硬い組織の場合は、第1、第2の把持部に力を入れて挟もうとすると、第1、第2の把持部がそれぞれ、撓んでしまうために、伝熱部と受け部材の手元側では、組織に大きな圧迫力を加えられるが、先端側ではほとんど力が加わらない状態となる。
【0087】
その結果、生体組織に加えられる力や伝える熱のムラが生じて凝固や切開などのムラが生じることになる。
【0088】
また、伝熱部材や受け部材が変形したり、それぞれが設けられた把持部材に対して傾いた場合も、同様の問題が生じる。
【0089】
(付記項1、2の目的) 本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、目的とする組織の状態によらず、伝熱部と受け部材の手元から先端まで、従来よりも一様の力で挟み込み、一様の熱を加えて、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる手術器械を提供することを目的とする。
【0090】
また、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得るようにすることで、安価で、かつ、耐久性に優れた手術器械を提供することを目的とする。
【0091】
(付記項1、2の効果) 本発明により、目的とする組織の状態によらず、伝熱部と受け部材の間で一様の力で挟み込み、一様の熱を加えて、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。
【0092】
また、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得るようにすることで、安価で、かつ、耐久性に優れた手術器械を提供することができる。
【0093】
(付記項3、4の従来技術) 特開2001−198137に示すように発熱した発熱板と、それに当接するゴム(受け部材)で生体組織をはさんで、凝固切開する凝固切開処置具があった。
【0094】
(付記項3、4が解決しようとする課題) 前記の従来技術では発熱板の把持面が非常に狭い幅であるため、使用にともないゴムが破損する場合があった。さらに使用者が気づかずに使用を続けると、ゴムの破損が大きくなり、発熱板がゴムを貫通して金属部材に接触して、発熱板が破損するおそれがあった。
【0095】
(付記項3、4の目的) 以上の問題に着目して、本願は
▲1▼ 万一、ゴムが破損しても、破損の初期段階で使用者が破損を判別しやすい、熱凝固切開鉗子の提供を目的とする。
【0096】
▲2▼ 万一、ゴムが破損してもゴムの交換が可能な、熱凝固切開鉗子の提供を目的とする。
【0097】
(付記項3、4の課題を解決するための手段) 以上の問題を解決するため、以下の構成とした。
【0098】
互いに開閉する一対のジョーと、前記ジョーの一方に設けられた発熱手段と、他方のジョーに設けられたゴムからなる受け部材と、を有し、発熱手段の発熱で組織を凝固切開する熱凝固切開処置具において、受け部材を少なくとも2層からなるゴムで構成し、各層のゴムの色を異なるものにした。
【0099】
(付記項3、4の効果) ゴムの破損が破損初期の段階で判別できることにより、発熱板が母材に当接することを防止できる。また、表面層のゴムより内層のゴムの厚さが厚いために、内層のゴムが完全に破損に到る前に表面層のゴムの破損の確認が容易となる。表面層のゴムが破損した時にはジョーを交換することが可能なため、経済性に優れる。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、目的とする生体組織を、伝熱部と受け部材の手元から先端まで、一様の力で挟み込み、一様の熱を加えて、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得ることができる。さらに、部品の加工精度や組立精度、あるいは、使用中あるいは保守・保管中の変形などに影響されることなく、安定して、確実な凝固や切開などの処置効果を得るようにすることができ、安価で、かつ、耐久性に優れた医療器械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の医療器械のシステム全体を示す概略構成図。
【図2】(A)は第1の実施の形態の鋏鉗子型処置具における先端部分の内部構造を示す要部の縦断面図、(B)は(A)のIIB−IIB線断面図。
【図3】図2(A)のIII−III線断面図。
【図4】第1の実施の形態の鋏鉗子型処置具の作用を説明するための説明図。
【図5】本発明の第2の実施の形態の鋏鉗子型処置具の先端部分の内部構造を示す要部の縦断面図。
【図6】第2の実施の形態の鋏鉗子型処置具の作用を説明するための説明図。
【図7】本発明の第3の実施の形態の鋏鉗子型処置具の先端部分の内部構造を示す要部の縦断面図。
【図8】第3の実施の形態の鋏鉗子型処置具における先端部分の内部構造の変形例を示す要部の縦断面図。
【図9】本発明の第4の実施の形態の医療器械のシステム全体を示す概略構成図。
【図10】第4の実施の形態の鋏鉗子型処置具における先端部分の側面図。
【図11】(A)は図10のXIA−XIA線断面図、(B)は図10のXIB−XIB線断面図。
【図12】第4の実施の形態の鋏鉗子型処置具におけるジョーをハンドルから取外した状態を示す平面図。
【図13】(A)は第4の実施の形態の鋏鉗子型処置具におけるジョーのハンドルとの連結部分を示す平面図、(B)は同側面図。
【図14】第4の実施の形態の鋏鉗子型処置具におけるジョーの外装用ゴムに亀裂などの破損が生じた状態を示す斜視図。
【図15】本発明の第5の実施の形態の鋏鉗子型処置具における要部構成を示す斜視図。
【図16】本発明の第6の実施の形態の鋏鉗子型処置具における要部構成を示す斜視図。
【符号の説明】
2 処置具
7 第1把持部(ジョー)
8 第2把持部(ジョー)
9,10 リング部(操作部)
14 伝熱部材
15 発熱体(発熱部)
17 刃部
18 弾性部材(弾性体)
18a 当接面
19 弾性体突出部(移動量増大手段)
Claims (6)
- 一対のジョーを相対的に開閉操作する操作部と、
前記一対のジョー間を閉操作して生体組織を挟持した状態で前記生体組織の加熱処置を行う加熱処置手段とを備えた医療器械において、
前記加熱処置手段は、一方の前記ジョーに、発熱部と、この発熱部に発熱用のエネルギーを供給する手段と、前記生体組織に接触し、前記発熱部の熱を前記生体組織に伝える刃部とを設け、
他方の前記ジョーに、前記一対のジョーを閉じた際に前記刃部に当接する弾性体によって形成される当接面を設けて構成するとともに、
前記刃部が前記当接面を押圧した際の押圧力によって前記弾性体を弾性変形させる弾性変形量を増大させて前記当接面の移動量を増大させる移動量増大手段を設けたことを特徴とする医療器械。 - 前記移動量増大手段は、前記弾性体を保持する保持部材の端面位置よりも前記弾性体の前記当接面を突出させて前記弾性体の両側に前記弾性体の弾性変形を許容させる弾性体突出部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械。
- 前記移動量増大手段は、前記弾性体を保持する保持部材における前記弾性体の底部との接触面の少なくとも一部に前記弾性体と非接触状態で保持させて前記弾性体の底部に前記弾性体の弾性変形を許容させる弾性体非接触部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械。
- 前記弾性体突出部は、前記弾性体の両側面に前記弾性体の弾性変形時に前記弾性体の弾性変形を助長する凹陥状の溝部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の医療器械。
- 前記移動量増大手段は、前記弾性体の内部に設けた空洞部であることを特徴とする請求項1に記載の医療器械。
- 前記弾性体は、複数層のゴムで構成し、各層のゴムをそれぞれ異なる色に設定したことを特徴とする請求項1に記載の医療器械。
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