JP2004177310A - 誘電正接測定器およびそれを用いた非接触電圧測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電線の活線部に対して非接触で誘電正接が測定できるようにして危険性を低減させると共に、簡単な構造で携帯が可能となった誘電正接測定器およびこの誘電正接測定器を用いて誘電正接を測定して、この誘電正接の値で測定電圧を補正することにより精度を向上させた非接触電圧測定装置を提供する。
【解決手段】絶縁体の誘電正接を測定する誘電正接測定器において、
導体に印加される交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を前記導体に
接する絶縁体を通して検出する第1の電流検出手段と、
前記絶縁体の誘電損失による誘電損失電流を前記絶縁体を通して検出する第2の電流検出手段と、
前記基準交流電流と前記誘電損失電流との位相差を求める位相差検出手段と、
前記位相差から前記絶縁体の誘電正接を算出する演算手段と、
を有することを特徴とする誘電正接測定器。
【選択図】 図1
【解決手段】絶縁体の誘電正接を測定する誘電正接測定器において、
導体に印加される交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を前記導体に
接する絶縁体を通して検出する第1の電流検出手段と、
前記絶縁体の誘電損失による誘電損失電流を前記絶縁体を通して検出する第2の電流検出手段と、
前記基準交流電流と前記誘電損失電流との位相差を求める位相差検出手段と、
前記位相差から前記絶縁体の誘電正接を算出する演算手段と、
を有することを特徴とする誘電正接測定器。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電線の被覆などの誘電正接を導電部と非接触で測定するようにした誘電正接測定器および測定した誘電正接により測定電圧を補正する非接触電圧測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、誘電正接の測定は電線の絶縁劣化を検査する場合などに用いられ、活線状態にて電線と大地間に流れる電流を検出し、この検出した電流と電線に印加されている電圧との位相差を測定するものがある(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
また、絶縁被覆された電線内の導体に印加される交流電圧を測定する場合、絶縁被覆を破ることなく電極を被覆上に当てて測定することができると、安全上有利であり、かつ簡便に測定することができる(例えば特許文献2参照。)。
このような非接触電圧測定装置では、芯線と電極との間に形成される結合容量を測定するために発信器やフィルタなどを用いるため構成が複雑となる。
これに対して、電線の電位を、芯線と電極との間に形成される結合容量と、基準のコンデンサの静電容量とで分圧し、コンデンサの容量を切り替えてそのときの分圧された電圧の値から結合容量を求め、この結合容量の値を用いて導体に印加された電圧を求めるものもある。非接地型の場合では、装置と大地間の浮遊容量も同様にして求める(例えば特許文献3参照。)。
このような非接触電圧測定装置では、上述の発振器などが不要になり簡便に非接触で電圧を測定することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平08−036005号公報
【特許文献2】
特許第3158063号公報
【特許文献3】
特開2001−255342号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の誘電正接測定器では、電線の電圧信号を活線部分から取り出すので感電の危険性があり、測定する場所も限定される。
また、従来の非接触電圧測定装置では、電線の芯線と装置の電極間にある被覆等の絶縁体には誘電正接があり、この誘電正接により結合容量の測定に誤差を生じ、この結果として電線の電圧測定にも大きな誤差を生じるという問題点があった。
【0006】
従って本発明が解決しようとする課題は、電線の活線部に対して非接触で誘電正接が測定できるようにして危険性を低減させると共に、簡単な構造で携帯が可能となった誘電正接測定器およびこの誘電正接測定器を用いて誘電正接を測定して、この誘電正接の値で測定電圧を補正することにより精度を向上させた非接触電圧測定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の通りの構成になった表示装置である。
【0008】
(1)絶縁体の誘電正接を測定する誘電正接測定器において、
導体に印加される交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を前記導体に
接する絶縁体を通して検出する第1の電流検出手段と、
前記絶縁体の誘電損失による誘電損失電流を前記絶縁体を通して検出する第2の電流検出手段と、
前記基準交流電流と前記誘電損失電流との位相差を求める位相差検出手段と、
前記位相差から前記絶縁体の誘電正接を算出する演算手段と、
を有することを特徴とする誘電正接測定器。
【0009】
(2)前記第1の電流検出手段は、
前記絶縁体のインピーダンスに対して十分大きいインピーダンスを有し、前記絶縁体を通して入力される電圧がその一端に印加される第1のコンデンサと、
この第1のコンデンサの他端に一端が接続され、他端が共通電位点に接続される第2のコンデンサと、
前記絶縁体を通して入力された電圧を前記第1、第2のコンデンサにより分圧した電圧に基づいて前記基準交流電流に対応する検出信号を出力する第1のアンプと、
から成り、
前記第2の電流検出手段は、
前記絶縁体のインピーダンスに対して十分小さいインピーダンスを有し、前記絶縁体を通して入力される電圧がその一端に印加され、他端が共通電位点に接続される第3のコンデンサと、
この第3のコンデンサの両端の電圧に基づいて前記誘電損失電流に対応する検出信号を出力する第2のアンプと、
から成ることを特徴とする(1)に記載の誘電正接測定器。
【0010】
(3)導体に印加される交流電圧を前記導体に接する絶縁体を通して測定する非接触電圧測定装置において、
前記絶縁体を通して入力信号を取り込む電極と、
予め設けられた基準コンデンサの容量を変化させて前記導体と前記電極間の結合容量との間で分圧した前記入力信号に基づき前記結合容量を求め、この結合容量の値から前記交流電圧を求める電圧測定手段と、
前記交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を前記絶縁体を通して検出すると共に、前記絶縁体の誘電損失に伴う誘電損失電流を前記絶縁体を通して検出し、前記基準交流電流と前記誘電損失電流との位相差を求めて、この位相差から前記絶縁体の誘電正接を算出する誘電正接測定手段と、
前記誘電正接の値に基づき前記測定電圧手段で求めた交流電圧値を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする非接触電圧測定装置。
【0011】
(4)導体に印加される交流電圧を前記導体に接する絶縁体を通して測定する非接触電圧測定装置において、
前記絶縁体を通して入力信号を取り込む電極と、
予め設けられた基準コンデンサの容量を変化させて前記導体と前記電極間の結合容量との間で分圧した前記入力信号に基づき前記結合容量を求め、この結合容量の値から前記交流電圧を求める電圧測定手段と、
(1)または(2)に記載の誘電正接測定器と、
前記誘電正接測定器で測定した誘電正接の値に基づき前記測定電圧手段で求めた交流電圧値を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする非接触電圧測定装置。
【0012】
(5)前記電圧測定手段は、ブートストラップ回路を用いた高入力インピーダンス増幅器を有することを特徴とする(3)または(4)に記載の非接触電圧測定装置。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、図に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0014】
電力ケーブルなどの電線は絶縁体で被覆され、この絶縁体は誘電体としての性質を有している。誘電体に正弦波を印加したとき、キャパシタンスに流れる電流は電圧に対して90°進んだものとなるが、抵抗が入ると90°からδ°の遅れを生じる。これをtanδで表した値を誘電正接という。また遅れは誘電損失といい、このδ°遅れた電流が誘電損失電流である。
【0015】
図1は、誘電正接測定器の一実施例を示した構成図である。
図1は、本発明の誘電正接測定器を電線の誘電正接の測定に適用した場合を示している。
【0016】
図1において、第1の電流検出手段1は、電線7の芯線8に印加される交流電圧Ex1に対して90°進んだ交流電流を電極5から取り込み基準電流を検出する。導体である芯線8と絶縁体9と電極5による結合容量で芯線8から交流信号が誘電正接測定器に入力されることになる。
【0017】
コンデンサ11は、C1の容量値を有する第1のコンデンサであり、コンデンサ12は、C2の容量値を有する第2のコンデンサである。アンプ14は、ゲイン1のバッファアンプである。また、抵抗13は、抵抗値がR1であるアンプ14の内部抵抗を等価的に表示したものである。
【0018】
コンデンサ11は、一端が電極5に接続され、他端がコンデンサ12の一端とアンプ14の非反転入力端子に接続されている。コンデンサ12の他端は、共通電位点に接続されている。入力抵抗13は、等価的にコンデンサC12に並列に接続されるように表すことができる。アンプ14の反転入力端子は、アンプ14の出力端子に接続され、アンプ14は交流電圧V1を出力する。
【0019】
第2の電流検出手段2は、絶縁体9の誘電損失により遅れが生じた交流電流を電極6から取り込み誘電損失電流を検出する。第1の電流検出手段と同様に芯線8と絶縁体9と電極6による結合容量で芯線から交流信号が誘電正接測定器に入力されることになる。
【0020】
コンデンサ21はC3の容量値を有する第3のコンデンサであり、アンプ23はゲイン1のバッファアンプである。抵抗22は、抵抗値がR2であるアンプ23の内部抵抗を等価的に表示したものである。
【0021】
コンデンサ21の一端とアンプ23の非反転入力端子は、電極6に接続されている。コンデンサ21の他端は、共通電位点に接続されている。アンプ23の入力抵抗22は、等価的にコンデンサ21に並列に接続されるように表現することができる。アンプ23の反転入力端子は、アンプ23の出力端子に接続され、アンプ23は交流電圧V2を出力する。
【0022】
図示しないが共通電位点は、接地電位に接続されていて、これにより、電線7に電極5,6を当てることにより、芯線8と第1,第2の電流検出手段1,2との間で閉回路が構成される。
【0023】
位相差検出手段3は、交流電圧V1,V2の波形の位相差を検出する。演算手段4は、検出した位相差から誘電正接を算出する。
尚、演算手段4の後段に表示手段(図示せず)を設けて演算結果を表示させてもよい。
【0024】
電線7は円形の破線で表され、その中心にある円形の実線で示した導体部である芯線8と、芯線8の周囲にある絶縁体9とで構成される。
交流電圧Ex1は電線7の芯線8に大地を基準に印加されている電圧である。コンデンサ71は芯線8と電極5の間に生じる結合容量を示しCx1の容量値を有する。抵抗72は、芯線8と電極5の間の抵抗で抵抗値Rx1を有する。コンデンサ73は芯線8と電極6の間に生じる結合容量を示しCx2の容量値を有する。抵抗74は、芯線8と電極6の間の抵抗で抵抗値Rx2を有する。
絶縁体9内で生ずる結合容量と抵抗との関係は、コンデンサ71と抵抗72とが、コンデンサ73と抵抗74とが、それぞれ並列に接続された等価回路で表現することができる。
【0025】
ここで誘電正接について説明する。
図2は、誘電正接の説明に用いるコンデンサの等価回路である。
【0026】
コンデンサの等価回路は、容量値Cxのコンデンサ31と抵抗値Rxの抵抗32の並列接続により表現される。コンデンサ31および抵抗32の両端には、電圧Eが印加され、電流Ioが流れる。この電流Ioは、コンデンサ31に流れるIcと抵抗32に流れる電流Irの合成電流である。
【0027】
図3は、図2の等価回路における電圧と各電流の関係をベクトルで表した図である。
電圧Eに対して抵抗32に流れる電流Irは電圧Eと同相であり、コンデンサ31に流れる電流Icは90°進んだ関係にある。これらの電流Ic,Irのベクトル和が電流Ioであり、このときの、電流Icと電流Ioとの成す角度δ°によるtanδが誘電正接である。
従って、誘電正接は次の式により求められる。
tanδ=1/(ωCxRx)=Ir/Ic
ここで、tanδは誘電正接、Cxはコンデンサ31の静電容量、Rxは抵抗32の抵抗値、ωは入力信号の角周波数、Icはコンデンサ31に流れる電流値、Irは抵抗32に流れる電流値である。
【0028】
図1に戻り、電極5から入力される電圧は、芯線8の電圧Ex1が、コンデンサ71と抵抗72の合成インピーダンスと、コンデンサ11、コンデンサ12および抵抗13の合成インピーダンスとで分圧されたものである。この電圧がコンデンサ11のインピーダンスとコンデンサ12および抵抗13の合成インピーダンスとで分圧されてアンプ14の出力交流電圧V1になる。
【0029】
ここで、電線7のコンデンサ71と抵抗72の合成インピーダンスに対してコンデンサ11のインピーダンスが、十分大きい場合、電極5の電圧は芯線8に印加された電圧Ex1と等しくなる。またコンデンサ12のインピーダンスに対して抵抗13のインピーダンスが、十分大きい場合、電圧Ex1はコンデンサ11とコンデンサ12のインピーダンスによる分圧比で分圧されてアンプ14の出力交流電圧V1になり、次式で表される。
V1=Ex1×C1/(C1+C2)
ここで、Ex1は芯線8の印加電圧、C1はコンデンサ11の静電容量、C2はコンデンサ12の静電容量である。
【0030】
電極6に入力される電圧は、芯線8の電圧Ex1がコンデンサ73と抵抗74の合成インピーダンスとコンデンサ21と抵抗22の合成インピーダンスとで分圧されアンプ23の出力交流電圧V2になる。
【0031】
ここで、電線のコンデンサ73と抵抗74の合成インピーダンスに対してコンデンサ21のインピーダンスが十分小さく、抵抗22のインピーダンスに対してコンデンサ21のインピーダンスが十分小さい場合には、コンデンサ21に流れる電流Ioは電圧Ex1と電線のコンデンサ73と抵抗74の合成インピーダンスで決定されるため次式で表される。
Io=Ex1/(1/ωCx2+Rx2)
V2=Io×1/ωC3
【0032】
ここで、Cx2は、コンデンサ73の静電容量、Rx2は抵抗74の抵抗値、C3はコンデンサ21の静電容量、ωは入力信号の角周波数である。
つまり、コンデンサ11,12により電圧Ex1から90°進んだ基準交流電流を電圧に変換して取り出し、コンデンサ21により誘電損失電流を電圧に変換して取り出しているということになる。
【0033】
図4は交流電圧Ex1と交流電圧V1、V2の関係をベクトルで表した図である。
図4において、アンプ14の出力交流電圧V1は芯線の交流電圧Exをコンデンサ11,12のみで分圧しているので、交流電圧Ex1と同位相になる。
【0034】
出力交流電圧V2は、誘電正接(tanδ)が少なければ交流電圧Ex1と同位相になり、誘電正接が大きくなると位相が遅れる。よって、アンプ14の出力交流電圧V1とアンプ23の出力交流電圧V2の電圧位相差を測定することにより誘電正接が求まる。
電圧位相差は、交流電圧V1とV2のゼロクロス(波形が共通電位等の基準電位を通過する点)を検出して検出時間の時間差から算出することができる。
【0035】
図5は、誘電正接の測定結果を示した図である。
測定条件として、電圧Ex1:100Vrms,Cx1,2:100pF,C11:1pF,C12:100pF,C13:0.01μF,測定周波数:60Hzである。
【0036】
図5において、左欄より、上記条件下でRx1,2の抵抗値を変化させて計算した誘電正接の値(理論値)、Rx1,2の抵抗値、本発明により実際に測定したV1,V2の電圧値、V1,V2の位相差、位相差と上記測定条件の値を用いて算出した誘電正接の値(実測値)、理論値に対する実測値の測定誤差が記載されている。
図5に示した測定結果により、誘電正接は約2〜5%の誤差で測定できる。
【0037】
図6は、本発明の非接触電圧測定装置の一実施例を示した構成図である。図6で、前出の図と同様のものは、同様の符号を付けて説明は省略する。
図6において、電圧測定手段61は、芯線8と電極66の結合容量から入力される電圧を内部のコンデンサにより分圧して芯線8の印加電圧を求める。
【0038】
図7に電圧測定手段61の一例を示した構成図を示す。
図7において、入力部110はコンデンサ113,114およびスイッチ115で構成される。111は電極であり、絶縁体で被覆された電線116に当てられる。コンデンサ112は電極111と絶縁被覆された電線116の芯線117間に形成される結合容量を表したものであり、Cx3はその容量値を表す。
【0039】
113,114はそれぞれC113、C114の容量値を有するコンデンサであり、その一端は電極111に接続され、他端はそれぞれスイッチ115の接点A、同Bに接続される。スイッチ115の共通接点Cは共通電位点に接続される。
【0040】
ブートストラップ回路120は抵抗121および122,コンデンサ123およびアンプ124から構成される。抵抗121,122は、それぞれR121,R122の抵抗値を有し、直列接続され、この共通接続回路の一端には入力部110の出力が印加され、他端は共通電位点に接続される。
このブートストラップ回路の出力がA/D変換器130でA/D変換され、演算手段140で電圧値が算出される。
【0041】
アンプ124の非反転入力端子には入力部110の出力が印加される。すなわち、抵抗121と122の直列回路の共通電位点側でない側に接続される。また、アンプ124の出力端子と反転入力端子は共通接続され、この共通接続点と抵抗121と122の接続点の間には容量値C123を有するコンデンサ123が接続される。
【0042】
このような構成により、ブートストラップ回路120の入力インピーダンスは帰還作用によって非常に高い値になる。すなわち、入力部110の動作はブートストラップ回路120が接続されることによって影響を受けることはなくなる。
【0043】
次に、この実施例の動作を説明する。なお、簡単にするために、ブートストラップ回路120のゲインを1とする。最初にスイッチ115の共通接点Cを接点A側に設定する。このときは芯線117の印加電圧Ex3は結合容量112とコンデンサ113で分圧された電圧がブートストラップ回路120に入力されるので、その出力電圧Vout1は、
【数1】
【0044】
になる。なお、結合容量値をCx3、コンデンサ113の容量値をC113とする。jは虚数単位、ωは入力信号の角周波数である。
【0045】
この式から、
【数2】
【0046】
が得られる。
【0047】
次に、スイッチ115の共通接点Cを接点B側に設定する。このときのブートストラップ回路120の出力電圧をVout2とすると、前記(1)式と同様にして、
【数3】
【0048】
が得られ、この(3)式から下式(4)が得られる。
【数4】
【0049】
前記(2)式と(4)式の右辺を等しいと置くと、
【数5】
【0050】
が得られ、この(5)式を整理すると、
【数6】
【0051】
が導かれる。
【0052】
すなわち、コンデンサ113、114の容量値は既知であるので、コンデンサ113を接続したときのブートストラップ回路120の出力Vout1とコンデンサ114を接続したときのブートストラップ回路120の出力Vout2から、前記(6)式によって結合容量値Cx3を求めることができる。
【0053】
また、この結合容量Cx3を前記(2)式または前記(4)式に代入すると、入力信号の電圧Ex3を計算することができる。
なお、図7において入力部110の出力をブートストラップ回路120に入力するようにしたが、必ずしもブートストラップ回路でなくてもよい。入力部110の動作に影響を与えない程度に入力インピーダンスが高い増幅器あるいはインピーダンス変換回路であればよい。
【0054】
図6に戻り、上述したように電圧測定手段61は、芯線8と電極66間の結合容量を算出し、この結合容量により、電圧値を算出して、芯線8の印加電圧値とするものであるが、絶縁体9の誘電正接により正確な結合容量が算出できないため測定電圧に誤差を生じる。
【0055】
誘電正接測定手段62は、図1の誘電正接測定器が用いられる。補正手段63は、電圧測定手段61が算出した電圧値に誘電正接測定手段62で求めた誘電正接により補正をかける。具体的には、校正により誘電正接に対する補正係数を予め設定しておき、電圧測定に際し、誘電正接を測定し、この誘電正接の値から補正係数を導いて、電圧測定手段61が算出した電圧値に乗ずる。
【0056】
これにより、絶縁体9の誘電正接による測定誤差を補正することができる。
尚、電圧測定および誘電正接測定で電極を共有するような場合は、電圧測定手段および誘電正接測定手段の前段に切替器(図示せず)を設ければよい。
制御手段64は、全体の制御を司り、補正手段63で補正された測定値を表示器65に表示する。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次の効果が期待でき
る。
【0058】
請求項1記載の発明によれば、導体に印加される交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流と、絶縁体の誘電損失による損失電流とを絶縁体を通して検出し、この検出信号の位相差から誘電正接を算出する。
これにより、活線状態の導体とは非接触で絶縁体の誘電正接が測定でき、安全性が向上し、感電事故を防ぐことが可能になる。
【0059】
請求項2の発明によれば、コンデンサとアンプの構成により絶縁体に流れる電流を検出し、誘電正接を算出するため、簡単な構造となり携帯も可能となる。
【0060】
請求項3および請求項4の発明によれば、誘電正接測定器で絶縁体の誘電正接を活線状態の導体と非接触で測定し、絶縁体の誘電正接が原因で生ずる非接触電圧測定装置の電圧の測定誤差を、測定した誘電正接の値に基づき補正することにより、測定電圧の精度を向上させることができる。
また、非接触による電線の電圧測定で安全性が向上し、感電事故を防ぐことが可能になる。
【0061】
請求項5の発明によれば高入力インピーダンス増幅器として、ブートストラップ回路を用いることにより。増幅器の帰還作用を利用して、簡単な回路で非常に高い入力抵抗が得られ、正確に電圧を測定できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電正接測定器の一実施例を示す構成図である。
【図2】誘電正接の説明に用いたコンデンサの等価回路である。
【図3】図2の等価回路における電圧と各電流の関係をベクトルで表した図である。
【図4】交流電圧Ex1と交流電圧V1,V2の関係をベクトルで表した図である。
【図5】誘電正接の測定結果を示した図である。
【図6】本発明の非接触電圧測定装置の一実施例を示した構成図である。
【図7】電圧測定手段の一実施例を示した構成図である。
【符号の説明】
1 第1の電流検出手段
2 第2の電流検出手段
3 位相差検出手段
4 演算手段
11,12,21 コンデンサ
14,23 アンプ
61 電圧測定手段
62 誘電正接測定手段
63 補正手段
【発明の属する技術分野】
この発明は、電線の被覆などの誘電正接を導電部と非接触で測定するようにした誘電正接測定器および測定した誘電正接により測定電圧を補正する非接触電圧測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、誘電正接の測定は電線の絶縁劣化を検査する場合などに用いられ、活線状態にて電線と大地間に流れる電流を検出し、この検出した電流と電線に印加されている電圧との位相差を測定するものがある(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
また、絶縁被覆された電線内の導体に印加される交流電圧を測定する場合、絶縁被覆を破ることなく電極を被覆上に当てて測定することができると、安全上有利であり、かつ簡便に測定することができる(例えば特許文献2参照。)。
このような非接触電圧測定装置では、芯線と電極との間に形成される結合容量を測定するために発信器やフィルタなどを用いるため構成が複雑となる。
これに対して、電線の電位を、芯線と電極との間に形成される結合容量と、基準のコンデンサの静電容量とで分圧し、コンデンサの容量を切り替えてそのときの分圧された電圧の値から結合容量を求め、この結合容量の値を用いて導体に印加された電圧を求めるものもある。非接地型の場合では、装置と大地間の浮遊容量も同様にして求める(例えば特許文献3参照。)。
このような非接触電圧測定装置では、上述の発振器などが不要になり簡便に非接触で電圧を測定することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平08−036005号公報
【特許文献2】
特許第3158063号公報
【特許文献3】
特開2001−255342号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の誘電正接測定器では、電線の電圧信号を活線部分から取り出すので感電の危険性があり、測定する場所も限定される。
また、従来の非接触電圧測定装置では、電線の芯線と装置の電極間にある被覆等の絶縁体には誘電正接があり、この誘電正接により結合容量の測定に誤差を生じ、この結果として電線の電圧測定にも大きな誤差を生じるという問題点があった。
【0006】
従って本発明が解決しようとする課題は、電線の活線部に対して非接触で誘電正接が測定できるようにして危険性を低減させると共に、簡単な構造で携帯が可能となった誘電正接測定器およびこの誘電正接測定器を用いて誘電正接を測定して、この誘電正接の値で測定電圧を補正することにより精度を向上させた非接触電圧測定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の通りの構成になった表示装置である。
【0008】
(1)絶縁体の誘電正接を測定する誘電正接測定器において、
導体に印加される交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を前記導体に
接する絶縁体を通して検出する第1の電流検出手段と、
前記絶縁体の誘電損失による誘電損失電流を前記絶縁体を通して検出する第2の電流検出手段と、
前記基準交流電流と前記誘電損失電流との位相差を求める位相差検出手段と、
前記位相差から前記絶縁体の誘電正接を算出する演算手段と、
を有することを特徴とする誘電正接測定器。
【0009】
(2)前記第1の電流検出手段は、
前記絶縁体のインピーダンスに対して十分大きいインピーダンスを有し、前記絶縁体を通して入力される電圧がその一端に印加される第1のコンデンサと、
この第1のコンデンサの他端に一端が接続され、他端が共通電位点に接続される第2のコンデンサと、
前記絶縁体を通して入力された電圧を前記第1、第2のコンデンサにより分圧した電圧に基づいて前記基準交流電流に対応する検出信号を出力する第1のアンプと、
から成り、
前記第2の電流検出手段は、
前記絶縁体のインピーダンスに対して十分小さいインピーダンスを有し、前記絶縁体を通して入力される電圧がその一端に印加され、他端が共通電位点に接続される第3のコンデンサと、
この第3のコンデンサの両端の電圧に基づいて前記誘電損失電流に対応する検出信号を出力する第2のアンプと、
から成ることを特徴とする(1)に記載の誘電正接測定器。
【0010】
(3)導体に印加される交流電圧を前記導体に接する絶縁体を通して測定する非接触電圧測定装置において、
前記絶縁体を通して入力信号を取り込む電極と、
予め設けられた基準コンデンサの容量を変化させて前記導体と前記電極間の結合容量との間で分圧した前記入力信号に基づき前記結合容量を求め、この結合容量の値から前記交流電圧を求める電圧測定手段と、
前記交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を前記絶縁体を通して検出すると共に、前記絶縁体の誘電損失に伴う誘電損失電流を前記絶縁体を通して検出し、前記基準交流電流と前記誘電損失電流との位相差を求めて、この位相差から前記絶縁体の誘電正接を算出する誘電正接測定手段と、
前記誘電正接の値に基づき前記測定電圧手段で求めた交流電圧値を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする非接触電圧測定装置。
【0011】
(4)導体に印加される交流電圧を前記導体に接する絶縁体を通して測定する非接触電圧測定装置において、
前記絶縁体を通して入力信号を取り込む電極と、
予め設けられた基準コンデンサの容量を変化させて前記導体と前記電極間の結合容量との間で分圧した前記入力信号に基づき前記結合容量を求め、この結合容量の値から前記交流電圧を求める電圧測定手段と、
(1)または(2)に記載の誘電正接測定器と、
前記誘電正接測定器で測定した誘電正接の値に基づき前記測定電圧手段で求めた交流電圧値を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする非接触電圧測定装置。
【0012】
(5)前記電圧測定手段は、ブートストラップ回路を用いた高入力インピーダンス増幅器を有することを特徴とする(3)または(4)に記載の非接触電圧測定装置。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、図に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0014】
電力ケーブルなどの電線は絶縁体で被覆され、この絶縁体は誘電体としての性質を有している。誘電体に正弦波を印加したとき、キャパシタンスに流れる電流は電圧に対して90°進んだものとなるが、抵抗が入ると90°からδ°の遅れを生じる。これをtanδで表した値を誘電正接という。また遅れは誘電損失といい、このδ°遅れた電流が誘電損失電流である。
【0015】
図1は、誘電正接測定器の一実施例を示した構成図である。
図1は、本発明の誘電正接測定器を電線の誘電正接の測定に適用した場合を示している。
【0016】
図1において、第1の電流検出手段1は、電線7の芯線8に印加される交流電圧Ex1に対して90°進んだ交流電流を電極5から取り込み基準電流を検出する。導体である芯線8と絶縁体9と電極5による結合容量で芯線8から交流信号が誘電正接測定器に入力されることになる。
【0017】
コンデンサ11は、C1の容量値を有する第1のコンデンサであり、コンデンサ12は、C2の容量値を有する第2のコンデンサである。アンプ14は、ゲイン1のバッファアンプである。また、抵抗13は、抵抗値がR1であるアンプ14の内部抵抗を等価的に表示したものである。
【0018】
コンデンサ11は、一端が電極5に接続され、他端がコンデンサ12の一端とアンプ14の非反転入力端子に接続されている。コンデンサ12の他端は、共通電位点に接続されている。入力抵抗13は、等価的にコンデンサC12に並列に接続されるように表すことができる。アンプ14の反転入力端子は、アンプ14の出力端子に接続され、アンプ14は交流電圧V1を出力する。
【0019】
第2の電流検出手段2は、絶縁体9の誘電損失により遅れが生じた交流電流を電極6から取り込み誘電損失電流を検出する。第1の電流検出手段と同様に芯線8と絶縁体9と電極6による結合容量で芯線から交流信号が誘電正接測定器に入力されることになる。
【0020】
コンデンサ21はC3の容量値を有する第3のコンデンサであり、アンプ23はゲイン1のバッファアンプである。抵抗22は、抵抗値がR2であるアンプ23の内部抵抗を等価的に表示したものである。
【0021】
コンデンサ21の一端とアンプ23の非反転入力端子は、電極6に接続されている。コンデンサ21の他端は、共通電位点に接続されている。アンプ23の入力抵抗22は、等価的にコンデンサ21に並列に接続されるように表現することができる。アンプ23の反転入力端子は、アンプ23の出力端子に接続され、アンプ23は交流電圧V2を出力する。
【0022】
図示しないが共通電位点は、接地電位に接続されていて、これにより、電線7に電極5,6を当てることにより、芯線8と第1,第2の電流検出手段1,2との間で閉回路が構成される。
【0023】
位相差検出手段3は、交流電圧V1,V2の波形の位相差を検出する。演算手段4は、検出した位相差から誘電正接を算出する。
尚、演算手段4の後段に表示手段(図示せず)を設けて演算結果を表示させてもよい。
【0024】
電線7は円形の破線で表され、その中心にある円形の実線で示した導体部である芯線8と、芯線8の周囲にある絶縁体9とで構成される。
交流電圧Ex1は電線7の芯線8に大地を基準に印加されている電圧である。コンデンサ71は芯線8と電極5の間に生じる結合容量を示しCx1の容量値を有する。抵抗72は、芯線8と電極5の間の抵抗で抵抗値Rx1を有する。コンデンサ73は芯線8と電極6の間に生じる結合容量を示しCx2の容量値を有する。抵抗74は、芯線8と電極6の間の抵抗で抵抗値Rx2を有する。
絶縁体9内で生ずる結合容量と抵抗との関係は、コンデンサ71と抵抗72とが、コンデンサ73と抵抗74とが、それぞれ並列に接続された等価回路で表現することができる。
【0025】
ここで誘電正接について説明する。
図2は、誘電正接の説明に用いるコンデンサの等価回路である。
【0026】
コンデンサの等価回路は、容量値Cxのコンデンサ31と抵抗値Rxの抵抗32の並列接続により表現される。コンデンサ31および抵抗32の両端には、電圧Eが印加され、電流Ioが流れる。この電流Ioは、コンデンサ31に流れるIcと抵抗32に流れる電流Irの合成電流である。
【0027】
図3は、図2の等価回路における電圧と各電流の関係をベクトルで表した図である。
電圧Eに対して抵抗32に流れる電流Irは電圧Eと同相であり、コンデンサ31に流れる電流Icは90°進んだ関係にある。これらの電流Ic,Irのベクトル和が電流Ioであり、このときの、電流Icと電流Ioとの成す角度δ°によるtanδが誘電正接である。
従って、誘電正接は次の式により求められる。
tanδ=1/(ωCxRx)=Ir/Ic
ここで、tanδは誘電正接、Cxはコンデンサ31の静電容量、Rxは抵抗32の抵抗値、ωは入力信号の角周波数、Icはコンデンサ31に流れる電流値、Irは抵抗32に流れる電流値である。
【0028】
図1に戻り、電極5から入力される電圧は、芯線8の電圧Ex1が、コンデンサ71と抵抗72の合成インピーダンスと、コンデンサ11、コンデンサ12および抵抗13の合成インピーダンスとで分圧されたものである。この電圧がコンデンサ11のインピーダンスとコンデンサ12および抵抗13の合成インピーダンスとで分圧されてアンプ14の出力交流電圧V1になる。
【0029】
ここで、電線7のコンデンサ71と抵抗72の合成インピーダンスに対してコンデンサ11のインピーダンスが、十分大きい場合、電極5の電圧は芯線8に印加された電圧Ex1と等しくなる。またコンデンサ12のインピーダンスに対して抵抗13のインピーダンスが、十分大きい場合、電圧Ex1はコンデンサ11とコンデンサ12のインピーダンスによる分圧比で分圧されてアンプ14の出力交流電圧V1になり、次式で表される。
V1=Ex1×C1/(C1+C2)
ここで、Ex1は芯線8の印加電圧、C1はコンデンサ11の静電容量、C2はコンデンサ12の静電容量である。
【0030】
電極6に入力される電圧は、芯線8の電圧Ex1がコンデンサ73と抵抗74の合成インピーダンスとコンデンサ21と抵抗22の合成インピーダンスとで分圧されアンプ23の出力交流電圧V2になる。
【0031】
ここで、電線のコンデンサ73と抵抗74の合成インピーダンスに対してコンデンサ21のインピーダンスが十分小さく、抵抗22のインピーダンスに対してコンデンサ21のインピーダンスが十分小さい場合には、コンデンサ21に流れる電流Ioは電圧Ex1と電線のコンデンサ73と抵抗74の合成インピーダンスで決定されるため次式で表される。
Io=Ex1/(1/ωCx2+Rx2)
V2=Io×1/ωC3
【0032】
ここで、Cx2は、コンデンサ73の静電容量、Rx2は抵抗74の抵抗値、C3はコンデンサ21の静電容量、ωは入力信号の角周波数である。
つまり、コンデンサ11,12により電圧Ex1から90°進んだ基準交流電流を電圧に変換して取り出し、コンデンサ21により誘電損失電流を電圧に変換して取り出しているということになる。
【0033】
図4は交流電圧Ex1と交流電圧V1、V2の関係をベクトルで表した図である。
図4において、アンプ14の出力交流電圧V1は芯線の交流電圧Exをコンデンサ11,12のみで分圧しているので、交流電圧Ex1と同位相になる。
【0034】
出力交流電圧V2は、誘電正接(tanδ)が少なければ交流電圧Ex1と同位相になり、誘電正接が大きくなると位相が遅れる。よって、アンプ14の出力交流電圧V1とアンプ23の出力交流電圧V2の電圧位相差を測定することにより誘電正接が求まる。
電圧位相差は、交流電圧V1とV2のゼロクロス(波形が共通電位等の基準電位を通過する点)を検出して検出時間の時間差から算出することができる。
【0035】
図5は、誘電正接の測定結果を示した図である。
測定条件として、電圧Ex1:100Vrms,Cx1,2:100pF,C11:1pF,C12:100pF,C13:0.01μF,測定周波数:60Hzである。
【0036】
図5において、左欄より、上記条件下でRx1,2の抵抗値を変化させて計算した誘電正接の値(理論値)、Rx1,2の抵抗値、本発明により実際に測定したV1,V2の電圧値、V1,V2の位相差、位相差と上記測定条件の値を用いて算出した誘電正接の値(実測値)、理論値に対する実測値の測定誤差が記載されている。
図5に示した測定結果により、誘電正接は約2〜5%の誤差で測定できる。
【0037】
図6は、本発明の非接触電圧測定装置の一実施例を示した構成図である。図6で、前出の図と同様のものは、同様の符号を付けて説明は省略する。
図6において、電圧測定手段61は、芯線8と電極66の結合容量から入力される電圧を内部のコンデンサにより分圧して芯線8の印加電圧を求める。
【0038】
図7に電圧測定手段61の一例を示した構成図を示す。
図7において、入力部110はコンデンサ113,114およびスイッチ115で構成される。111は電極であり、絶縁体で被覆された電線116に当てられる。コンデンサ112は電極111と絶縁被覆された電線116の芯線117間に形成される結合容量を表したものであり、Cx3はその容量値を表す。
【0039】
113,114はそれぞれC113、C114の容量値を有するコンデンサであり、その一端は電極111に接続され、他端はそれぞれスイッチ115の接点A、同Bに接続される。スイッチ115の共通接点Cは共通電位点に接続される。
【0040】
ブートストラップ回路120は抵抗121および122,コンデンサ123およびアンプ124から構成される。抵抗121,122は、それぞれR121,R122の抵抗値を有し、直列接続され、この共通接続回路の一端には入力部110の出力が印加され、他端は共通電位点に接続される。
このブートストラップ回路の出力がA/D変換器130でA/D変換され、演算手段140で電圧値が算出される。
【0041】
アンプ124の非反転入力端子には入力部110の出力が印加される。すなわち、抵抗121と122の直列回路の共通電位点側でない側に接続される。また、アンプ124の出力端子と反転入力端子は共通接続され、この共通接続点と抵抗121と122の接続点の間には容量値C123を有するコンデンサ123が接続される。
【0042】
このような構成により、ブートストラップ回路120の入力インピーダンスは帰還作用によって非常に高い値になる。すなわち、入力部110の動作はブートストラップ回路120が接続されることによって影響を受けることはなくなる。
【0043】
次に、この実施例の動作を説明する。なお、簡単にするために、ブートストラップ回路120のゲインを1とする。最初にスイッチ115の共通接点Cを接点A側に設定する。このときは芯線117の印加電圧Ex3は結合容量112とコンデンサ113で分圧された電圧がブートストラップ回路120に入力されるので、その出力電圧Vout1は、
【数1】
【0044】
になる。なお、結合容量値をCx3、コンデンサ113の容量値をC113とする。jは虚数単位、ωは入力信号の角周波数である。
【0045】
この式から、
【数2】
【0046】
が得られる。
【0047】
次に、スイッチ115の共通接点Cを接点B側に設定する。このときのブートストラップ回路120の出力電圧をVout2とすると、前記(1)式と同様にして、
【数3】
【0048】
が得られ、この(3)式から下式(4)が得られる。
【数4】
【0049】
前記(2)式と(4)式の右辺を等しいと置くと、
【数5】
【0050】
が得られ、この(5)式を整理すると、
【数6】
【0051】
が導かれる。
【0052】
すなわち、コンデンサ113、114の容量値は既知であるので、コンデンサ113を接続したときのブートストラップ回路120の出力Vout1とコンデンサ114を接続したときのブートストラップ回路120の出力Vout2から、前記(6)式によって結合容量値Cx3を求めることができる。
【0053】
また、この結合容量Cx3を前記(2)式または前記(4)式に代入すると、入力信号の電圧Ex3を計算することができる。
なお、図7において入力部110の出力をブートストラップ回路120に入力するようにしたが、必ずしもブートストラップ回路でなくてもよい。入力部110の動作に影響を与えない程度に入力インピーダンスが高い増幅器あるいはインピーダンス変換回路であればよい。
【0054】
図6に戻り、上述したように電圧測定手段61は、芯線8と電極66間の結合容量を算出し、この結合容量により、電圧値を算出して、芯線8の印加電圧値とするものであるが、絶縁体9の誘電正接により正確な結合容量が算出できないため測定電圧に誤差を生じる。
【0055】
誘電正接測定手段62は、図1の誘電正接測定器が用いられる。補正手段63は、電圧測定手段61が算出した電圧値に誘電正接測定手段62で求めた誘電正接により補正をかける。具体的には、校正により誘電正接に対する補正係数を予め設定しておき、電圧測定に際し、誘電正接を測定し、この誘電正接の値から補正係数を導いて、電圧測定手段61が算出した電圧値に乗ずる。
【0056】
これにより、絶縁体9の誘電正接による測定誤差を補正することができる。
尚、電圧測定および誘電正接測定で電極を共有するような場合は、電圧測定手段および誘電正接測定手段の前段に切替器(図示せず)を設ければよい。
制御手段64は、全体の制御を司り、補正手段63で補正された測定値を表示器65に表示する。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次の効果が期待でき
る。
【0058】
請求項1記載の発明によれば、導体に印加される交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流と、絶縁体の誘電損失による損失電流とを絶縁体を通して検出し、この検出信号の位相差から誘電正接を算出する。
これにより、活線状態の導体とは非接触で絶縁体の誘電正接が測定でき、安全性が向上し、感電事故を防ぐことが可能になる。
【0059】
請求項2の発明によれば、コンデンサとアンプの構成により絶縁体に流れる電流を検出し、誘電正接を算出するため、簡単な構造となり携帯も可能となる。
【0060】
請求項3および請求項4の発明によれば、誘電正接測定器で絶縁体の誘電正接を活線状態の導体と非接触で測定し、絶縁体の誘電正接が原因で生ずる非接触電圧測定装置の電圧の測定誤差を、測定した誘電正接の値に基づき補正することにより、測定電圧の精度を向上させることができる。
また、非接触による電線の電圧測定で安全性が向上し、感電事故を防ぐことが可能になる。
【0061】
請求項5の発明によれば高入力インピーダンス増幅器として、ブートストラップ回路を用いることにより。増幅器の帰還作用を利用して、簡単な回路で非常に高い入力抵抗が得られ、正確に電圧を測定できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電正接測定器の一実施例を示す構成図である。
【図2】誘電正接の説明に用いたコンデンサの等価回路である。
【図3】図2の等価回路における電圧と各電流の関係をベクトルで表した図である。
【図4】交流電圧Ex1と交流電圧V1,V2の関係をベクトルで表した図である。
【図5】誘電正接の測定結果を示した図である。
【図6】本発明の非接触電圧測定装置の一実施例を示した構成図である。
【図7】電圧測定手段の一実施例を示した構成図である。
【符号の説明】
1 第1の電流検出手段
2 第2の電流検出手段
3 位相差検出手段
4 演算手段
11,12,21 コンデンサ
14,23 アンプ
61 電圧測定手段
62 誘電正接測定手段
63 補正手段
Claims (5)
- 絶縁体の誘電正接を測定する誘電正接測定器において、
導体に印加される交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を前記導体に
接する絶縁体を通して検出する第1の電流検出手段と、
前記絶縁体の誘電損失による誘電損失電流を前記絶縁体を通して検出する第2の電流検出手段と、
前記基準交流電流と前記誘電損失電流との位相差を求める位相差検出手段と、
前記位相差から前記絶縁体の誘電正接を算出する演算手段と、
を有することを特徴とする誘電正接測定器。 - 前記第1の電流検出手段は、
前記絶縁体のインピーダンスに対して十分大きいインピーダンスを有し、前記絶縁体を通して入力される電圧がその一端に印加される第1のコンデンサと、
この第1のコンデンサの他端に一端が接続され、他端が共通電位点に接続される第2のコンデンサと、
前記絶縁体を通して入力された電圧を前記第1、第2のコンデンサにより分圧した電圧に基づいて前記基準交流電流に対応する検出信号を出力する第1のアンプと、
から成り、
前記第2の電流検出手段は、
前記絶縁体のインピーダンスに対して十分小さいインピーダンスを有し、前記絶縁体を通して入力される電圧がその一端に印加され、他端が共通電位点に接続される第3のコンデンサと、
この第3のコンデンサの両端の電圧に基づいて前記誘電損失電流に対応する検出信号を出力する第2のアンプと、
から成ることを特徴とする請求項1に記載の誘電正接測定器。 - 導体に印加される交流電圧を前記導体に接する絶縁体を通して測定する非接触電圧測定装置において、
前記絶縁体を通して入力信号を取り込む電極と、
予め設けられた基準コンデンサの容量を変化させて前記導体と前記電極間の結合容量との間で分圧した前記入力信号に基づき前記結合容量を求め、この結合容量の値から前記交流電圧を求める電圧測定手段と、
前記交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を前記絶縁体を通して検出すると共に、前記絶縁体の誘電損失に伴う誘電損失電流を前記絶縁体を通して検出し、前記基準交流電流と前記誘電損失電流との位相差を求めて、この位相差から前記絶縁体の誘電正接を算出する誘電正接測定手段と、
前記誘電正接の値に基づき前記測定電圧手段で求めた交流電圧値を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする非接触電圧測定装置。 - 導体に印加される交流電圧を前記導体に接する絶縁体を通して測定する非接触電圧測定装置において、
前記絶縁体を通して入力信号を取り込む電極と、
予め設けられた基準コンデンサの容量を変化させて前記導体と前記電極間の結合容量との間で分圧した前記入力信号に基づき前記結合容量を求め、この結合容量の値から前記交流電圧を求める電圧測定手段と、
請求項1または請求項2に記載の誘電正接測定器と、
前記誘電正接測定器で測定した誘電正接の値に基づき前記測定電圧手段で求めた交流電圧値を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする非接触電圧測定装置。 - 前記電圧測定手段は、ブートストラップ回路を用いた高入力インピーダンス増幅器を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の非接触電圧測定装置。
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