JP2004176235A - 不織布およびフィルター濾材 - Google Patents

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克成 松本
Hirofumi Yoshimitsu
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Abstract

【構成】極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンから得られ、好ましくは放射線グラフト法を利用して製造したカチオン交換基やアニオン交換基を有する不織布およびそれを用いたフィルター濾材。
【効果】本発明によれば、極限粘度[η]が5dl/g以上のポリオレフィンから得られる不織布を用いているので、従来品に比べ大気中や水中のイオンを除去する性能を維持したまま引張強度等の機械特性に優れたフィルター濾材を得ることが出来る。
【選択図】 無し

Description

【0001】
【発明の所属する技術分野】
本発明は、超高分子量ポリオレフィンから得られ、官能基を有する不織布および該不織布を用いたフィルター濾材に関する。
【0002】
【従来の技術】
不織布は、その嵩高性、外観・感触の多様性、通気性の良さ等のために、布の中で占める割合が年々増加しており、合成樹脂を材料とする不織布も製造されている。一方、超高分子量ポリエチレンは、汎用のポリエチレンに比べて、引張強度、耐衝撃性、耐摩耗性、摺動性等に優れており、エンジニアリングプラスチックのみならず、繊維材料としての用途が期待されている。しかし、この超高分子量ポリエチレンは、成形性が悪く、通常のポリエチレン、ポリプロピレンにおいて実施される成形方法(押出成形、射出成形)では成形が困難であった。このような点に鑑みて、超高分子量ポリエチレンのフィルム製造技術、延伸技術、解繊技術及び不織布製造技術等が種々提案されている。例えば、特開昭62−122736号公報(特許文献1)及び特開平9−183156号公報(特許文献2)では、フィルムの製造方法、製造装置、成形体が提案され、特開昭63−203816号公報(特許文献3)では、このフィルムの延伸方法が提案され、特開平6−10254号公報(特許文献4)では、不織布の製造方法、成形体が提案されている。
【0003】
ところで、前記従来技術においては不織布の用途についての言及がほとんど無く、超高分子量ポリエチレンを基材とした放射線グラフト性に優れた脆性や照射損傷の少ない不織布のケミカルフィルター濾材としての用途は知られていない。また一般に不織布は、紙おむつ材料や清掃材料などに用いられているものの新規用途開発が課題となっている。
【0004】
ケミカルフィルターとは、雰囲気汚染物質を除去することができるイオン交換不織布フィルターであり、粒子状不純物質のみならず、極微量に存在する酸性、塩基性化学汚染物質を効率よく除去することができるイオン交換不織布フィルターのことである。
【0005】
半導体産業において製造用クリーンルームの雰囲気汚染の制御は重要な課題である。汚染形態として、雰囲気汚染が直接プロセスを害する例として、例えばアンモニアが化学増幅型レジスト工程で微細パターンを崩す原因となっている。そのため、これらの化学汚染物質を除去するケミカルフィルターは製品の歩留まりの向上と高品質化を確保する上で今や半導体産業において不可欠なものである。
【0006】
従来のケミカルフィルター濾材は、芯/鞘の二層構造の繊維からなる不織布を用いている。例えば、芯部分の材料にはポリプロピレンを、鞘部分の材料には汎用のポリエチレンを用いた繊維がある。鞘部分を汎用のポリエチレンにすることで、低温でポリエチレン部分を熱接着出来、繊維や不織布の強度はポリプロピレン部分で維持される。この芯/鞘の二層構造の繊維からなる不織布を放射線グラフト重合法という電子線あるいはγ線を照射して表面改質し、不織布基材ポリマーに導入されたイオン交換基を持つグラフト鎖に対し、空気中の不純物質をイオン交換反応により、化学的に吸着し繊維内に固定し、雰囲気汚染物質を除去する。
【0007】
しかしながら、この芯/鞘の二層構造の繊維からなる不織布を用いると芯部分の材質として用いられるポリプロピレンが放射線により脆性や照射損傷の点で劣化し、不織布の強度が低下することが問題点となっている。
【特許文献1】特開昭62−122736号公報
【特許文献2】特開平9−183156号公報
【特許文献3】特開昭63−203816号公報
【特許文献4】特開平6−10254号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、放射線グラフト性に優れた脆性や照射損傷の少ない不織布を用いたケミカルフィルター濾材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる状況に鑑み、放射線グラフト性に優れた脆性や照射損傷の少ない不織布からなるケミカルフィルター濾材を得るべく、種々検討した結果、超高分子量ポリオレフィンを基材とした不織布は、強度および放射線グラフト性に優れており、しかも従来品の放射線による脆性や照射損傷が少ない不織布であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は
(1)極限粘度[η]が5dl/g以上のポリオレフィンから得られ、少なくとも窒素、酸素、硫黄、リンから選ばれる元素を含む官能基を有する不織布であり、
(2)官能基がスルフォン酸基、カルボキシル基、リン酸基、4級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基及び一級アミノ基であるから選ばれる不織布であり、
(3)引張強度がMD方向で15kg/5cm以上、CD方向で8kg/5cm以上である不織布であり、
(4)上記の不織布を用いたフィルター濾材である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の分子量の高いポリオレフィンから得られ、官能基を有する不織布は、例えば、極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンの延伸フィルムを、解繊してスプリットヤーンとした後、ウェブに成形し接合することにより得る任意の工程で、放射線グラフト法などを利用して官能基を導入することによって得られる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(超高分子量ポリオレフィン)
本発明では、共重合のことを重合と言うことがあり、共重合体のことを重合体ということがある。また、[η]が5dl/g以上のポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレンを、それぞれ超高分子量ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレンということがある。
【0013】
本発明に用いる超高分子量ポリオレフィンは、デカリン溶媒中、135℃で測定した極限粘度[η]が5dl/g以上、好適には8〜25dl/gで且つASTM D1238、F規格で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01g/10min以下のポリオレフィンである。具体的には、エチレンの単独重合体、エチレンと少量のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等とを共重合体して得られるエチレンを主体とした結晶性の共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンと上記αオレフィンとの結晶性共重合体等の他、ブテン、スチレンの重合体などの結晶性を有するオレフィン重合体である。これらの中で、エチレンの単独重合体およびエチレンを主体とした結晶性の共重合体が、経済性や安定性などの面から好適に用いられる
上記のような超高分子量ポリオレフィンには、必要に応じて公知の各種安定剤を配合してもよい。この安定剤としては、例えば、テトラキス〔メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート〕メタン、ジステアリルチオジプロピオネート等の耐熱安定剤、あるいはビス(2,2′,6,6′−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、2−(2−ヒドロキシ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾル等の耐候安定剤などが挙げられる。又、着色剤として無機系、有機系のドライカラーを添加してもよい。
【0014】
(延伸フィルム、延伸テープ)
本発明に用いる延伸フィルムや延伸テープは前記超高分子量ポリオレフィンをフィルムに成形した後、延伸、切断などを行うことによって得られる。尚、本発明では、MD方向を縦方向と言うことがあり、TD方向のことを横方向と言うことがある。
【0015】
延伸に用いるフィルムの製法に特に制限はないが、好ましい製造方法として、インフレーションフィルム成形法を挙げることが出来る。代表例として超高分子量ポリエチレンを用いた成形について詳細に説明する。この方法では、まず極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリエチレンをスクリュー押出機、好ましくは、溝付シリンダー(バレル)を具備するスクリュー押出機で溶融し、次いでマンドレルが押出機の第一スクリューと独立して回転する少なくともL/Dが5の第二スクリューを持つスクリューダイから前記溶融状態の超高分子量ポリエチレンを押し出した後、この押し出しにより形成された溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込んで膨比1.1〜20倍、好ましくは1.5〜15倍に膨張させる方法である。この際、得られるフィルムは樹脂の融点より5℃程度低い温度で横方向に10%以上熱収縮するフィルムであることが好ましい。
【0016】
超高分子量ポリエチレンの溶融物は、汎用のポリエチレンの溶融物に比べると極めて粘度が高く、ゴム状の粘性体であるため、L/Dが5未満のスクリューダイではダイより押出される前に完全に均一融合された溶融物とならないため、ダイから押出されたチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込んだ際にチューブが均一に膨らまなかったり、破れたりして良好なフィルムが得られない。第二スクリューを持つスクリューダイのマンドレルは、押出機の第一スクリューと独立して回転させることが好ましく、その回転数は必ずしも押出機の第一スクリューの回転数と同じである必要はない。
【0017】
チューブ状フィルムの内部に吹き込む気体に特に制限はない。通常は扱い易さや経済性を考慮して空気や窒素が好ましく用いられる。樹脂の融点より5℃程度低い温度での横方向の熱収縮率が10%未満のフィルムは、縦裂強度が低く150g/mmに満たないおそれがある。
【0018】
延伸に用いるフィルムの他の製造方法としては、圧縮成形法によって得られる丸棒の外皮部から連続的に刃物で削り出す方法やTダイフィルム成形法も例示できる。これらの中でも、フィルムの長さを調節する自由度や、生産性(例えば、工程数や設備の簡便性等)の観点から、本発明におけるフィルムの製造方法はインフレーションフィルム成形法が好ましい。
【0019】
本発明においては、上記のフィルムを延伸した後、テープ状にスリットする方法や、上記フィルムをテープ状にスリットした後、延伸する方法、等で延伸テープを得ることが後述する解繊処理を行う上で好ましい。
【0020】
スリットは、繰り出しロールを用いてフィルムを繰り出し、通常のフェザー刃のようなものを用いてテープ状にスリットする方法を好ましい例として挙げることができるが、公知の方法を特に制限なく採用することが出来る。
【0021】
上記のフィルムやテープを延伸する方法は公知の方法を採用することが出来る。好ましい具体例としては、上記のフィルムやテープを、加熱板と温風循環式システムを兼ね備えた加熱型の延伸槽内にて延伸する方法を例示することが出来る。特にテープ状にスリットしたテープを用いる方法が生産設備を小型化できる等の理由で好ましい。延伸を行う際の温度は、用いるポリオレフィンの種類によって異なるが、例えば、ポリエチレンの場合、100〜150℃の温度で行うことが好ましい。延伸倍率は少なくとも縦方向に2倍以上、好ましくは4〜10倍に延伸することにより得られる。延伸倍率が2倍未満では後述するスプリットヤーンの引張強度が不足するおそれがある。
【0022】
(スプリットヤーン)
本発明に用いるスプリットヤーンは、上記の延伸テープを解繊して得られるものであり、その引張強度が7g/デニール以上、好ましくは10g/デニール以上の通常30〜20000デニール、好ましくは100〜5000デニールである。引張強度が低いと不織布とした時に、引張強度が発現しないことがある。
【0023】
解繊は、公知の方法、例えばポーキュパインカッターあるいはスパイラルカッター等を用いて行われる。解繊条件としては、例えばポリエチレンの場合、80℃以下の温度で、解繊比(ロール周速/テープ速度)0.5〜4.0、好ましくは1.0〜3.0の条件で行うことが好ましい。また超高分子量ポリプロピレンの延伸テープを用いる場合は、その強度が高いため、ポーキュパインカッターでの解繊処理が好ましい。ポーキュパイン針は幅方向に0.5〜2mm、流れ方向に1〜10mmの間隔で、流れ方向に千鳥状又螺子状に植針するのが好ましい。又、針先長は1〜10mmが好適である。
【0024】
解繊を、80℃を越えた温度条件で行う場合、解繊し難くなり、未解繊、又は、不均一な解繊となる可能性がある。又、解繊比が前記数値よりも小さい場合には、繊維が荒くなり、大きい場合には網目が細かく、且つ羽毛状になりやすく強度が低下し易い。
【0025】
本発明のスプリットヤーンは、5〜200mm長、好ましくは、30〜150mm長の短繊維であることが好ましい。上記の解繊操作で得られたスプリットヤーンが上記の範囲外の場合等には、これを切断して長さを調節することもできる。また、開綿機で十分ほぐしたものが不織布製造のための材料として好ましい。(不織布)
本発明の不織布は、上記の延伸テープあるいはスプリットヤーンを材料として製造することが好ましいが、これらの他の樹脂材料からなる繊維を加えてもよい。製造方法は、一般の不織布の製造方法を採用することができる。不織布原反を製造する方法としては、熱でスポット溶接する熱接着型、接着剤で材料を結合した接着剤型、材料同士を機械的に絡ませて結合した機械結合型、材料を静電気や空気流で移動捕集面に集積して結合した紡糸型等がある。
【0026】
熱接着型としては、熱エンボスで固める方法(サーマルボンド法)がある。接着剤型の不織布は、浸漬法、プリント法、スプレイ法、粉末法、溶融繊維法、などで製造される。基本的には、延伸テープあるいはスプリットヤーンでウェブを形成し、このウェブを複数枚積層して接着する。浸漬法では、ウェブを浸漬槽内の接着剤に浸漬してから乾燥、ベーキングして不織布を製造する。プリント法では、ニップコーター、リバースコーターなどでウェブに接着剤を部分的に添加してウェブ同士を接着する。スプレイ法ではウェブに接着剤をノズルから散布してウェブ同士を接着する。粉末法は粉末接着剤をウェブに散布し、ベーキングで溶融してウェブ同士を接着する。溶融繊維法は低融点の熱可塑性樹脂繊維をウェブに混合して、この繊維を溶融して接着する。機械結合型の方法としては、ニードルパンチ法、ステッチボンド法を挙げることができる。ニードルパンチ法は先端部分に倒鈎(barb)を持つ針でウェブをパンチングするもので、倒鈎(barb)によりウェブの構成繊維同士が機械的に絡み合う。ステッチボンド法では、糸を用いて例えばミシンの鎖縫いを応用してウェブ同士を結合する。また、紡糸型の方法を利用して、解繊したスプリットヤーンを移動捕集面で受けて集積し、結合する方法が挙げられる。
【0027】
さらに、上記の乾式製造法に加えて湿式製造法も採用することができる。これは、抄紙方法を利用したもので、材料を液中に分散し、この分散液にバインダーを加えて、丸網式抄紙機や長網式抄紙機などで抄紙して製造される。製造工程中において、必要に応じ、繊維の分散液に無機物質や有機溶剤によって繊維を膨潤溶解したり、分散液中にエマルション接着剤を入れたり、分散させた主繊維に接着用の熱可塑性樹脂繊維を混合したりすることが行われる。エマルション接着剤としては、引張強度、引裂強度を充分に与えるために、繊維交点に有効に働き接着力が発揮できる繊維間結合剤には、カルボキシル変性SBR、カルボキシル変性NBR等の反応型のゴムラテックスや、反応型または自己架橋型のアクリル酸エステルエマルションが単独かメラミン樹脂等の硬化剤を併用して使用される。また、抄紙後に得た不織布をカレンダ装置でヒートセットすることも行われる。
【0028】
本発明の不織布の製造には、これらの方法の中では熱エンボスで固める方法(サーマルボンド法)、ニードルパンチ法が好ましい。
【0029】
ポリオレフィン樹脂は、一般的に分子量が高くなるほど耐衝撃性が高い傾向があるので、本発明の不織布も高い耐衝撃性を有している。
【0030】
本発明の不織布は、目付が30g/m以上、好ましくは目付が80g/m以上であることが好ましい。
【0031】
本発明の不織布は後述する放射線等を用いたグラフト性に優れており、また極めて分子量の高いポリオレフィンを用いているので、放射線等による脆性や照射損傷が少なく、引張強度などの剛性や耐衝撃性にも優れている。このため、通常の不織布形状で用いることも、前述の芯−鞘構造の不織布として用いることもできる。
【0032】
(官能基の導入)
本発明の不織布は、少なくとも窒素、酸素、硫黄、リンから選ばれる元素を含む官能基を有している。このような官能基として好ましい例としては、スルフォン酸基、カルボキシル基およびリン酸基の様なカチオン性の官能基や、4級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基及び一級アミノ基の様なアニオン性の官能基などが挙げられる。上記のカチオン交換基やアニオン交換基は、後述するフィルター濾材にイオン交換体としての機能を付与することを主たる目的として導入される。
【0033】
これらの官能基は、化学的な処理、物理的な処理、添加剤による処理、コーティング処理、及び光、プラズマ、放射線などの励起エネルギーを利用する処理等の公知の方法で導入することが出来る。これらの中でも放射線やプラズマの様な励起エネルギーを利用する処理が、より高度な表面機能の創出のために好ましく、特には放射線によるグラフト法が好ましい。これらの方法は、前述の不織布を製造する任意の工程で用いることが出来るが、官能基を導入する効率を考慮すると、前述の解繊処理より後工程において採用することが好ましく、特には不織布製造後に行うことが好ましい。
【0034】
上記の放射線グラフト法に適した放射線源としては、好ましくはCo60のγ線源と電子線源が利用される。Co60のγ線源は、その透過深度が深く、厚みのある材料、例えばロール状にした不織布原反に照射するのに適している。しかし、単位時間当たりの放射線強度(線量率)が電子線よりも低いため、照射に要する時間が長くなる。
【0035】
電子線源は、照射線量率がγ線源の300〜1000倍と高く短時間照射が可能であるが、透過深度が小さいため、ロールトゥーロールプロセスなどを用いて連続的に照射する方法が適している。加速電子線の透過深度は加速電圧に依存するため、200kV〜5MVの加速器が一般的に利用され、被照射体の厚みや照射規模によって選択される。グラフト反応に必要な照射線量は一般的に50〜200kGy程度であり、γ線で10時間、電子線で10秒程度の照射時間を要する。グラフト重合に利用する放射線源は基材の厚みや形状、照射規模を考慮してγ線と電子線の特徴を生かすように場合により使い分けられる。
【0036】
上記の官能基を導入する方法は、官能基を有するモノマーをグラフト重合するか、または、官能基を導入しやすいモノマーをグラフト重合した後、二次反応により官能基を導入してもよい。
【0037】
官能基を導入しやすいモノマーとして、スチレン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、アクロレイン等があるが、この範囲に限定されるわけではない。
【0038】
官能基を有するモノマーとしては、窒素原子を含む官能基を有するモノマーとして、アリールアミン、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル類等が、酸素原子を含む官能基を有するモノマーとして、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等が、リン元素を含む官能基を有するモノマーとして、含リン(メタ)アクリル酸エステル類等が、硫黄元素を含む官能基を有するモノマーとして、ビニルスルフォン酸ナトリウム、アリールスルフォン酸ナトリウム、スチレンスルフォン酸ナトリウム等があるが、この範囲に限定されるわけではない。これらの材料は、例えば後述するフィルター濾材として用いる場合、トラップする目的物の性質に合わせて適宜選択して用いられる。
【0039】
本発明の不織布は、前述した様に、引張強度が高く、通常MD方向で15kg/5cm以上、CD方向(MD方向と直角の方向)で8kg/5cm以上である。
【0040】
本発明の不織布は、空気中もしくは水中からイオン等を除去するフィルター濾材として好適に用いることが出来る。本発明のフィルター濾材は、通常のフィルターの持つ微粒子除去の効果と共に、アンモニア、硫化水素、硫黄酸化物、窒素酸化物などの有害ガスを除去する効果がある。また本発明のフィルター濾材は、超高分子量ポリオレフィンから得られる不織布を用いているので、放射線を用いたグラフト法などで官能基を導入している場合でも引張強度等が高い。このため、例えばクリーンルームフィルター濾材として用いると、クリーンルームの内気循環効率を高めることが出来る。
【0041】
本発明のケミカルフィルター濾材は、その使用目的に応じて、超高分子量ポリエチレンの[η]、不織布厚み、目付、不織布繊維表面へ導入する種々のイオン交換基を含むイオン交換体を調整することができる。
【0042】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り下記の実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
〈超高分子量ポリエチレンフィルムの製造工程〉
超高分子量ポリエチレン粉末([η]:13.8dl/g、MFR:0.01g/10min未満、融点:136℃、嵩密度:0.45g/cc)を用い、アウターダイ/マンドレル=20/17mmφからなるダイを接続した30mmφ押出機を、シリンダ温度280℃、ダイ温度170℃、スクリュー回転数を15rpmに設定し、ピンチロールで1.2m/minの速度で引き取りながら、スクリュー内部及びチューブダイのマンドレル内部に延在してなる6mmφの気体流通路から圧搾空気を吹き込んでチューブを冷却リング内径82mmφに接触する大きさに膨らませて(膨比=4.1)、折り幅128mm、厚み60μmからなる超高分子量ポリエチレンフィルムを製造した。
〈超高分子量ポリエチレン延伸テープの製造〉
前記フィルムを縦方向に幅30mmでスリットし、これを原反とした。次いで、この原反を140℃のエアオーブン延伸槽で6倍(1段延伸)に延伸した。
〈延伸テープの解繊処理〉前記で得られた延伸テープを冷却し、延伸テープ自体の温度を80℃以下とした後、ポーキパインカッターで解繊処理した。
〈不織布の製造〉
前記で得られた1000dのスプリットヤーンを、100mm長の短繊維に切断し、開綿機で十分にほぐした後、カードマシンを用いて200g/mのウェブを作成し、ニードルパンチでの絡み合いによる固定で不織布原反を得た。この不織布原反を次の方法で評価した。
(1)不織布の目付は、以下の条件で測定された値(g/cm)である。
試験方法:JIS L1096
試験片形状:20cm×20cm
試験片数:3枚
(2)引張強度(MD:機械方向)、引張強度(CD:機械交差方向)の各値は、以下の条件で得られた引張強度(TS:kg/5cm)である。
試験方法:JIS L1096
試験片形状:5cm幅×30cm長
チャック間:20cm
引張速度:200cm/min
(3)耐薬品性は、以下の条件で測定されたものである。
試験方法:JIS K7114
温度:50℃
試験片形状:6cm×6cm
試験片数:3枚
〈不織布への放射線グラフト重合〉
前記で得られた不織布基材に電子線照射装置を用いて、加速電圧1.5MV、電子線電流10mA、コンベア速度2.3m/min、の条件により窒素雰囲気で行い、照射線量を200KGyとした。グラフト重合は、グラフト重合装置を用いて大気圧の窒素雰囲気で行った。あらかじめ電子線を照射した不織布に、アクリル酸(AA)の反応液を接触させた後、グラフト側鎖にカルボキシル基を導入したグラフト鎖の95%以上をイオン交換基に転換した5mmol/gの酸性イオン交換不織布を得た。この不織布はアンモニアの脱臭作用と共に微粒子のフィルター効果を有することが認められた。電子線照射後の不織布の引張強度については、上記(2)と同様の方法で評価した。
実施例2
〈不織布の製造〉
実施例1の条件で不織布原反を得た。
〈不織布への放射線グラフト重合〉
前記で得られた不織布基材に電子線照射装置を用いて、加速電圧2.0MV、電子線電流15mA、コンベア速度2.3m/min、の条件により窒素雰囲気で行い、照射線量を200KGyとした。グラフト重合は、グラフト重合装置を用いて大気圧の窒素雰囲気で行った。あらかじめ電子線を照射した不織布基材に、グリシジルメタアクリレート(GMA)の反応液を接触させた後、さらに三級アミンであるジエタノールアミンを反応させ、グラフト側鎖に三級アミノ基を導入したグラフト鎖の95%以上をイオン交換基に転換した5mmol/gの塩基性イオン交換不織布を得た。この不織布は塩化水素の脱臭作用と共に微粒子のフィルター効果を有することが認められた。電子線照射前後の不織布の物性は、実施例1と同様の方法で評価した。
比較例1
〈不織布への放射線グラフト重合〉
芯部分の材質が汎用のポリプロピレン([η]が3.8dl/g)で、鞘部分の材質が汎用のポリエチレン([η]が3.4dl/g)である芯/鞘構造の繊維からなる不織布基材に実施例1と同様の電子線照射およびグラフト重合によってカルボキシル基を付与した導入した酸性イオン換不織布を得た。電子線照射前後の不織布の物性については実施例1と同様の方法で評価した。電子線照射後の引張強度は、脆性による強度の低下が認められた。
比較例2
〈不織布への放射線グラフト重合〉
比較例1と同様の不織布を使用して電子線照射装置を用いて、加速電圧1.0MV、電子線電流5mV、コンベア速度2.3m/min、の条件により窒素雰囲気で行い、照射線量を25KGyとした。グラフト重合は、グラフト重合装置を用いて大気圧の窒素雰囲気で行った。あらかじめ電子線を照射した不織布基材に、グリシジルメタアクリレート(GMA)の反応液を接触させた後、さらに三級アミンであるジエタノールアミンを反応させ、グラフト側鎖に三級アミノ基を導入したグラフト鎖の50%以上をイオン交換基に転換した2.0mmol/gの塩基性イオン交換不織布を得た。微粒子のフィルター効果を有することが認められたが、塩化水素の脱臭効果はなかった。電子線照射前後の不織布の物性については実施例1と同様の方法で評価した。
次いで、これらの結果を表1に示す。
【表1】
Figure 2004176235
【0043】
【発明の効果】
本発明の放射線グラフト重合を利用して製造したイオン交換体超高分子量ポリエチレンを基材とする不織布は、従来の芯/鞘構造の繊維からなる不織布に比べて、放射線グラフト性に優れた脆性や照射損傷の少ないケミカルフィルター濾材としての用途が期待できる。

Claims (4)

  1. 極限粘度[η]が5dl/g以上のポリオレフィンから得られ、少なくとも窒素、酸素、硫黄、リンから選ばれる元素を含む官能基を有する不織布。
  2. 官能基がスルフォン酸基、カルボキシル基、リン酸基、4級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基及び一級アミノ基であるから選ばれる請求項1記載の不織布。
  3. 引張強度がMD方向で15kg/5cm以上、CD方向で8kg/5cm以上である請求項1記載の不織布。
  4. 請求項1の不織布を用いたフィルター濾材。
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