JP2014213313A - 濾過用基布 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】不織布で構成されている金属イオン吸着能を有する濾過用基布であって、該濾過用基布の一方の面側の吸着能と他方の面側の吸着能に差があり、2N以上の引張強度および5%以上の引張伸度を有する濾過用基布。
【選択図】なし
Description
本発明の濾過用基布は不織布で構成されており、金属イオン吸着能を有する。濾過用基布とは、液体や気体等の流体を濾過するためのフィルタのことである。
本発明の吸着の対象たる金属イオンは、必ずしもイオン化されていなければならないというわけではなく、イオン化されていない金属原子も包含する概念で用いられ、具体例として、例えば、銅、ナトリウム、鉛、カドミウム、鉄、ニッケル、亜鉛、アルミニウム等およびそれらのイオンが挙げられる。
金属錯体形成能を有する基は、金属原子とキレート環を形成し得る基であり、例えば、イミノジエタノール基、イミノジ酢酸基等が挙げられる。
具体的には、スルホン酸基は、例えば、銅イオン、ナトリウムイオンなどのような、半導体製造に用いられる純水に含まれる各種の金属イオンなどを吸着する。
イミノジ酢酸基は、例えば、鉛、カドミウムなどのような、飲料水または廃液に含まれ得る金属を捕捉する。
イミノジエタノール基は、例えば、鉛、カドミウムなどのような、飲料水または廃液に含まれ得る金属を捕捉する。なお、イミノジエタノール基は、アルカリ溶液中で好適に重金属を捕捉する。
条件(1);濾過用基布の両面における吸着基の存在量について、当該量が多い方の面側の存在量が少ない方の面側の存在量の2倍以上、特に2〜500倍、好ましくは10〜300倍、より好ましくは20〜300倍である。なお、存在量に関して測定機器によっては検出限界以下という結果が出る場合がある。その場合、存在量の値が0.00重量%となってしまい、倍率の計算ができないこととなるが、その場合は、0.01重量%と換算して計算を行うこととする。
条件(2);濾過用基布全体に金属イオンを吸着させたときの両面における該金属イオンの吸着量について、当該量が多い方の面側の吸着量が少ない方の面側の吸着量の2倍以上、特に2〜30倍、好ましくは3〜20倍、より好ましくは3〜15倍である。なお、条件(1)と同様に、存在量に関して測定機器によって検出限界以下という結果が出る場合は、0.01重量%と換算して計算を行うこととする。
引張強度および引張伸度は実施例で行った測定方法によって測定できる。
本発明においては、上記のような放射線照射グラフト加工を実施するに際して、一方の面側と他方の面側との間で吸着能に差を設けるために、放射線照射工程(I)において不織布の片面のみに放射線を照射する。
以下、本発明の濾過用基布の製造方法について詳しく説明する。
本工程では、不織布の片面のみに放射線を照射する。両面に放射線を付与すると、吸着能に差を設けることができない。
目付重量は不織布の面積と重量より求めることができる。
本工程では、前工程で放射線が照射された不織布に、ビニル系反応性モノマーを接触させてグラフト鎖を導入する。具体的には、放射線を照射した不織布を、大気下、窒素雰囲気下又は減圧下にあるビニル系反応性モノマーエマルジョンの液槽に浸漬して、液相にてグラフト重合させる。
具体的には、陰イオン系界面活性剤としては、特に限定はないが、アルキルベンゼン系、アルコール系、オレフィン系、リン酸系、アミド系の界面活性剤などであり、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。
陽イオン系界面活性剤は、特に限定はないが、オクタデシルアミン酢酸塩、トリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。非イオン系界面活性剤は、特に限定はないが、エトキシル化脂肪アルコール、脂肪酸エステルなどであり、例えば、Tween 80が挙げられる。
両性イオン系界面活性剤は、特に限定はないが、例えば、アンヒトール(商標)(花王株式会社)が挙げられる。
本工程では、グラフト鎖導入工程(II)で導入されたグラフト鎖に吸着基を導入する。
また例えば、工程(II)でビニル系反応性モノマーとしてグリシジルメタクリレートを用いた場合、グリシジルメタクリレートグラフト鎖に、ジエタノールアミンなどを反応させてアミノ化することによって、イミノジエタノール基等の基を導入することができる。
また例えば、工程(II)でビニル系反応性モノマーとしてスチレンを用いた場合、スチレングラフト鎖に、硫酸やクロロスルホン酸を反応させてスルホン化することによって、スルホン酸基を導入することができる。
また例えば、工程(II)でビニル系反応性モノマーとしてクロロメチルスチレンを用いた場合、クロロメチルスチレングラフト鎖を形成した不織布を、イミノジエタノール水溶液に浸漬することによって、イミノジエタノール基をグラフト鎖に導入することができる。
また例えば、工程(II)でビニル系反応性モノマーとしてp−ハロアルキルスチレンを用いた場合、p−ハロアルキルスチレングラフト鎖上のハロゲン基をヨウ素で置換した後、イミノジ酢酸ジエチルを反応させてヨウ素をイミノジ酢酸ジエチル基で置換し、更に水酸化ナトリウム水溶液でエステル基を加水分解することによって、グラフト鎖にイミノジ酢酸基を導入することができる
本発明の濾過用基布は、各種フィルタに加工することができ、例えば、液体に溶解した金属イオンを吸着・回収する分野へ適用できる。具体的には、例えば、半導体製造に用いられる純水に含まれる各種の金属イオン、銅、ナトリウムなどは、スルホン酸基により吸着され、また、飲料水、廃液に含まれる鉛、カドミウムなどは、イミノジ酢酸基によって、捕捉される。
気体に含まれる有害成分の除去の例として、アンモニアやトリメチルアミンなどのアルカリガス、NO3、SO3などの酸性ガス、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどを吸着することができる。
本発明に係る濾過用基布と、高密度ポリエチレン又はPTFEの微多孔膜とを組み合わせて、プリーツ状または円筒状に積層してカートリッジ化してなる流体ろ過用カートリッジフィルタとして、用いることもできる。
本発明の濾過用基布に上記のような機械的加工がなされても、本発明の濾過用基布は機械的強度の低下を十分に抑制できるので、フィルタ用途に好適である。
(電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程)
平均繊維径が6μmの高密度ポリエチレン原料のメルトブロー不織布(目付け重量81g/m2、厚み0.38mm、繊維充填率24%)の片面に対して、電子線を窒素雰囲気下、加速電圧80kV、照射線量100kGyで照射した。次に、照射後のメルトブロー不織布を、予め調液し窒素置換(窒素バブリング)したエマルジョン状態のモノマー溶液に浸漬し、55℃に保持しながら、エマルジョングラフト重合を2時間行った。
使用したモノマー溶液は、溶液全体重量基準で、グリシジルメタクリレート(GMA)5重量%と界面活性剤であるTween20(ナカライテスク株式会社製)を0.5重量%含む純水エマルジョン溶液である。
グラフト率を評価したところ、GMAグラフト率は100%であった。
亜硫酸ナトリウムをイソプロパノール15%/純水85%に溶解し作製した濃度10%の亜硫酸ナトリウム溶液中に上記で得られたGMAグラフト重合不織布を浸漬し、80℃で9時間加熱してスルホン酸基の導入を行った。不織布を取り出し純水で洗浄、乾燥することにより、スルホン酸型不織布を得た。
濃度1Nの硫酸中に上記で得られたスルホン酸型不織布を浸漬し、80℃で2時間加熱して残エポキシ基の開環およびナトリウムイオンの水素イオンへの置換を行った。不織布を取り出し、純水で洗浄、乾燥することにより、イオン交換容量2meq/gのスルホン酸型イオン交換不織布を得た。なお、当該不織布の厚みは0.78mmであった。
(電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程)
エマルジョングラフト重合を1時間行ったこと以外、実施例1と同様の方法により、電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程を実施した。
グラフト率を評価したところ、GMAグラフト率は50%であった。
実施例1と同様の方法により、スルホン酸基導入工程を実施し、イオン交換容量1.3meq/gのスルホン酸型イオン交換不織布を得た。なお、当該不織布の厚みは0.54mmであった。
(電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程)
実施例1と同様の方法により、電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程を実施した。
グラフト率を評価したところ、GMAグラフト率は100%であった。
上記で得られたGMAグラフト重合不織布を、イミノジエタノールを純水に溶解し作製した濃度20%のイミノジエタノール溶液中に浸漬し、80℃で4時間加熱してイミノジエタノール基の導入を行った。不織布を取り出し純水で洗浄、乾燥することにより、イオン交換容量2.0meq/gのイミノジエタノール型不織布を得た。なお、当該不織布の厚みは0.70mmであった。
(電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程)
電子線を、加速電圧200kV、照射線量50kGyで照射したこと、およびエマルジョングラフト重合を5分行ったこと以外、実施例1と同様の方法により、電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程を実施した。
グラフト率を評価したところ、GMAグラフト率は100%であった。
実施例1と同様の方法により、スルホン酸基導入工程を実施し、イオン交換容量2meq/gのスルホン酸型イオン交換不織布を得た。なお、当該不織布の厚みは0.82mmであった。
(電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程)
電子線を、加速電圧200kV、照射線量50kGyで照射したこと、およびエマルジョングラフト重合を2.5分行ったこと以外、実施例1と同様の方法により、電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程を実施した。
グラフト率を評価したところ、GMAグラフト率は50%であった。
実施例1と同様の方法により、スルホン酸基導入工程を実施し、イオン交換容量1.3meq/gのスルホン酸型イオン交換不織布を得た。なお、当該不織布の厚みは0.56mmであった。
(電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程)
電子線を、加速電圧200kV、照射線量50kGyで照射したこと、およびエマルジョングラフト重合を5分行ったこと以外、実施例1と同様の方法により、電子線照射工程およびグラフト鎖導入工程を実施した。
グラフト率を評価したところ、GMAグラフト率は100%であった。
実施例3と同様の方法により、イミノジエタノール基導入工程を実施し、イオン交換容量2.0meq/gのイミノジエタノール型イオン交換不織布を得た。なお、当該不織布の厚みは0.75mmであった。
実施例および比較例で得られた試料を以下に示す方法により評価した。各実施例および比較例において使用されたメルトブロー不織布(未処理品)についても同様に評価した(参考例1)。
前記した式により算出した。
なお各基材重量は十分に乾燥させた後の重量である。
試料幅15mm、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/分の条件下で、オートグラフ(AZ−10kNIS MO 島津製作所製)を用いて測定した。
試料の照射面と非照射面とにおいて、蛍光X線分析による元素分析を行った。
詳しくは波長分散型蛍光X線分析装置(ZSX100e;リガク社製)を用いて以下の条件で元素分析を行った。実施例1,2および比較例1,2では、硫黄原子の量に基づいて吸着基の量を測定した。実施例3および比較例3では、窒素原子の量に基づいて吸着基の量を測定した。
・EZスキャン法
・測定範囲:B〜U
・測定時間:長い(LONG)
・雰囲気:真空
・測定径:30mmφ(試料:1枚)
・試料モデル:バルク
試料を以下に示すCu吸着試験に供した後、上記と同様の蛍光X線分析による元素分析を行った。全ての実施例および比較例において、銅原子の量に基づいて吸着量を測定した。
試料(サイズ;150cm2(10cm×15cm))を1N硝酸150ml中に温度約20℃で24時間浸漬し、吸着基に付着していたNaなどの金属を予め除去した。
金属を除去した試料を超純水にて洗浄した。
洗浄した試料を濃度1重量%の硫酸銅溶液150mlに温度50℃で3時間浸漬した。
浸漬した試料を超純水にて洗浄した。
洗浄した試料を60℃にて乾燥した。
Claims (6)
- 不織布で構成されている金属イオン吸着能を有する濾過用基布であって、該濾過用基布の一方の面側の吸着能と他方の面側の吸着能に差があり、2N以上の引張強度および5%以上の引張伸度を有する濾過用基布。
- 金属イオン吸着基を放射線照射グラフト加工により導入することにより吸着能が付与された、請求項1に記載の濾過用基布。
- 濾過用基布が下記条件(1)または(2)の少なくとも一方を満たす請求項2に記載の基布;
条件(1);濾過用基布の両面における金属イオン吸着基の存在量について、当該量が多い方の面側の存在量が少ない方の面側の存在量の2倍以上である;
条件(2);濾過用基布全体に金属イオンを吸着させたときの両面における該金属イオンの吸着量について、当該量が多い方の面側の吸着量が少ない方の面側の吸着量の2倍以上である。 - 前記不織布がメルトブロー不織布である請求項1〜3のいずれかに記載の基布。
- 金属イオン吸着基が、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、アミノ基から選択されるイオン交換能を有する基、またはイミノジエタノール基、イミノジ酢酸基から選択される金属錯体形成能を有する基である請求項2に記載の基布。
- 放射線照射グラフト加工が、不織布の片面のみに放射線を照射する工程(I)、ビニル系反応性モノマーを前工程で放射線が照射された不織布に接触させてグラフト鎖を導入する工程(II)、および該グラフト鎖に金属イオン吸着基を導入する工程(III)を含む請求項2に記載の基布。
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