JP2004176191A - 布帛及びその製造方法、通気性部材 - Google Patents

布帛及びその製造方法、通気性部材 Download PDF

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Seigo Yamamoto
誠吾 山本
Katsutoshi Yamamoto
勝年 山本
Tomohisa Konishi
智久 小西
Shusuke Ozaki
秀典 尾崎
Jun Asano
純 浅野
Shinichi Chaen
伸一 茶圓
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Abstract

【課題】布帛の機械的強度を改善することにある。
【解決手段】この布帛は、少なくとも一部に見掛け密度が2g/cm以上の高密度部を有している。この高密度部は、布帛が厚み方向に加圧されることにより形成される。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、布帛に関する。また、本発明は、布帛の製造方法及び通気性部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
布帛は、金属、樹脂成型材料等に比べ、軽量、変形自在、加工容易等の利点を備え、そのような特性が要求される種々の用途に用いられている。
従来から用いられている布帛として、例えば、ステープルファイバー(繊維長の短い短繊維)から製造されるウェブや不織布がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
国際公開第WO096/10668A号パンフレット
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、布帛は、金属、樹脂成型材料等に比べ、引張強度、伸び率等の機械的強度が劣っている。特に、ステープルファイバーからなる不織布等にあっては、構成繊維の繊維長が短いため繊維間の絡み合いが小さく、織布、編物等の他の布帛に比べても、機械的強度が著しく劣る。
【0005】
本発明の目的は、布帛の機械的強度を改善することにある。また、本発明の目的は、そのような布帛の製造方法及びそのような布帛を用いた通気性部材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、布帛の少なくとも一部に高密度部を形成することにより、意外にも、布帛の機械的強度を改善できることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも一部に見掛け密度が2g/cm以上の高密度部を有している布帛、
(2)高密度部は厚み方向に加圧されることにより形成される、(1)に記載の布帛、
(3)フッ素樹脂製のステープルファイバーから実質的になる、(2)に記載の布帛、
(4)フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンである、(3)に記載の布帛、
(5)ポリテトラフルオロエチレンは、半焼成ポリテトラフルオロエチレンである、(4)に記載の布帛、
(6)フッ素樹脂製のステープルファイバーをウォータージェット交絡処理し、得られた不織布を厚み方向に加圧することにより得られる、(3)に記載の布帛、
(7)表面における高密度部の面積占有率は5%以上75%未満である、(1)に記載の布帛、
(8)表面における高密度部の面積占有率は75%以上である、(1)に記載の布帛、
(9)高密度部は光透過性を有している、(1)に記載の布帛、
(10)高密度部が形成された後、ポリテトラフルオロエチレンの融点以上の温度で熱処理されている、(4)に記載の布帛、
(11)一部に高密度部を有する(1)から(10)のいずれか1項に記載の布帛を備えた通気性部材、
(12)シート状物の少なくとも一部を厚み方向に加圧することにより、見掛け密度が2g/cm以上の高密度部を形成する、布帛の製造方法、
等を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
[布帛]
本発明の布帛について説明する。
本発明の布帛は、少なくとも一部に見掛け密度が2g/cm以上の高密度部を有している。
【0008】
布帛は、多数の繊維で構成されるシート状物であり、ウェブ、不織布等、種々の形態のものが含まれる。布帛を構成する繊維としては、特に限定されないが、ウェブ及び不織布の場合は、フッ素樹脂製のステープルファイバーが好ましく用いられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)、特に、加圧により容易に繊維同士が結合して一体化する点で半焼成PTFEが好ましく用いられる。半焼成PTFEとは、示差走査熱量分析(;Differential Scanning Calorimetry、以下、DSC)において、未焼成PTFEの吸熱(615°K付近の吸熱)と焼成PTFEの吸熱(600°K付近の吸熱)の両方を表すものをいう。DSCは市販のDSC装置によって行うことができる。また、布帛を構成する繊維としては、PTFE製の繊維のみで構成される1種の繊維に限定されず、例えば、PTFE製繊維とPTFE以外の繊維とから構成される混紡繊維も含まれる。
【0009】
また、布帛の目付は、目地が均一である点で、25g/m以上であるのが好ましく、50g/m以上であるのがより好ましい。
さらに、布帛は、少なくとも一部に高密度部を有している。高密度部は、後述するように布帛の厚み方向に加圧されることにより形成された部分である。高密度部の見掛け密度は、布帛の引張強度が向上し、布帛が変形しにくくなる点で、2g/cm以上であるのが好ましく、2.1g/cm以上であるのがより好ましい。
【0010】
また、高密度部は、布帛表面において所定の面積占有率を有している。具体的には、面積占有率の上限は、通気性を確保する観点からは、75%以下であるのが好ましく、50%以下であるのがより好ましい。また、面積占有率の下限は、布帛の強度を補強できる点で、5%以上であるのが好ましく、10%以上であるのがより好ましい。但し、溶液等を透過させないための用途等として布帛が用いられる場合は、面積占有率は、溶液等に対する不透過性が得られる点で、75%以上であるのが好ましく、95%以上であるのがより好ましい。
【0011】
さらに、半焼成PTFEのステープルファイバーからなる布帛の場合、高密度部は、加圧されて繊維同士が圧着された結果、半透明若しくは透明な外観を呈しており、光透過性を有している。また、その場合の高密度部は、例えば100%エチレンアルコール液が透過しない性質を有している。ここで、光透過性を有しているとは、後述する測定方法により測定される光透過効率(%)が10%以上であるものをいう。ここで光透過性という場合は、布帛の目付が100g/m未満である場合においては、布帛の構成繊維の密度が不均一であることに起因する光の漏洩は含まれない。光の漏洩とは、例えば、高密度部を黒色のマジックインクで塗りつぶした場合に光のピンホールが見えるか若しくは溶液が高密度部を浸透、通過する場合をいう。
【0012】
本発明の布帛は、上述のように、見掛け密度が2.0g/cm以上の高密度部を有している。これにより、当該布帛は、機械的強度が向上している。また、本発明の布帛は、PTFEを材質に含む場合は、耐薬品性、耐熱性、撥水性及び低摩擦性に優れ、種々の用途に用いることができる。さらに、本発明の布帛は、PTFEステープルファイバーを材質とする場合は、高密度部が一定の光透過性を有し、所定のエンボス模様を有しているため、布帛全体として特有の美観を帯びている。
【0013】
また、本発明の布帛は、エンボス加工による高密度部の形成により強度が向上すると同時に通気性も保持しているため、例えば、濾紙状、バグ状、プリーツ円筒状等の種々の形状に加工されたフィルタ濾材その他の通気性部材としての使用に適している。特に、PTFEを材質とする場合は、例えば、その撥水性、耐薬品性を利用して液体中で使用されるフィルタ濾材として、好ましく用いることができ、また、通気性及び撥水性を利用して、シューズのインナー材料、オムツカバー材として用いることができる。
【0014】
[布帛の製造方法]
次に、本発明の布帛の製造方法について説明する。
ここでは、半焼成PTFEのステープルファイバーからなるウェブをウォータージェット交絡処理して布帛を製造する場合を例に説明する。
半焼成PTFEのステープルファイバーは、半焼成PTEFEフィルムを擦過、解繊することにより作成される。
【0015】
半焼成PTFEフィルムは、公知の方法で製造される。具体的には、PTFEフィルムは、例えば乳化重合法によって得られたPTFE微粉末(ファインパウダー)に潤滑剤を添加して熟成させたものをペースト押出しし、次いでカレンダー成形によりシート状にすること、或いは、懸濁重合法によって得られたPTFE微粉末(モールディングパウダー)を圧縮成形して予備成形体を作成し、これを焼成して得られるブロック状成形品をスカイブ加工してシート状にすること等によって製造することができる。そして、半焼成PTFEフィルムは、未焼成PTFEフィルムを、未焼成PTFEの融点(約337〜347℃)から焼成PTFEの融点(約327℃)との間の温度で熱処理することによって得られる。
【0016】
PTFEフィルムの擦過、解繊は、公知の方法で行われる。具体的には、例えば、高速回転する少なくとも1対の針刃ロールの間に、PTFEフィルムの一軸延伸物を通過させ、スプリットさせることにより行われる。PTFEフィルムのスプリットに用いられる装置としては、特開昭58−180621号公報に示されるものを用いることができるが、好ましくは、図1に示すような装置を用いることができる。
【0017】
この装置は、1対の針刃ロール31,32と、送り手段及び引き取り手段(共に図示せず)とを備えている。針刃ロール31,32は、それぞれの外周面に針刃34,35が植針されている。送り手段は、PTFEフィルム30の一軸延伸物を針刃ロール31,32に送るための手段である。引き取り手段は、針刃ロール31,32の間を通過したPTFEフィルムを引き取るための手段である。
【0018】
この装置では、送り手段によりPTFEフィルムを、針刃ロール31,32の間に通すと、PTFEフィルムは、針刃ロール31,32が回転することで針刃34,35によって擦過、解繊され、これにより、PTFEのステープルファイバー36が得られる。
なお、本発明では、ステープルファイバーは、後述するウェータージェット交絡処理による繊維間の交絡がより促進される点で、分枝、ループ構造を含むものが好ましく用いられる。
【0019】
得られた多数のステープルファイバーは、単に堆積した綿状物の状態で、比較的弱い圧力で加圧されることでシート状のウェブに加工される。
このようにして得られたウェブは、ウォータージェット交絡処理される。ウォータージェット交絡処理は、公知の方法で行われる。ここでは、通常のコットン繊維に用いられる条件が好ましく用いられる。
【0020】
ウォータージェット交絡処理されたウェブは、次いで高密度部が形成される。高密度部は、布帛が厚み方向に加圧されることで形成される。具体的には、高密度部は、例えば、表面に所定の凹凸模様が形成されたロールと表面にそのような凹凸を有しないロールとからなるロール対の間に上記ウェブをニップして通すこと(以下、エンボス加工ともいう。)により形成される。
【0021】
なお、本発明では、双方の表面が滑らかなロール対を用いてエンボス加工を行うこともできる。この場合、布帛には、シート方向全域にわたり高密度部が形成される。
高密度部が形成された布帛は、さらに高強度化、形状安定化を図るために、PTFEの融点以上の温度で熱処理されてもよい。例えば、高密度部が形成されたウェブは、PTFEの融点(約325〜350℃)以上に加熱したオーブン中で一定時間加熱することにより、熱処理することができる。この場合、ウェブの熱収縮を防ぐために、公知のテンター装置を用いてもよい。テンター装置とは、シート状物の両端部を保持して当該シート状物を一方向に搬送する装置であり、シート状物の両端部をチャックして保持するピンテンターまたはクリップテンターが好ましく用いられる。
【0022】
以上のような方法によれば、本発明の布帛を効率的に製造することができる。
【0023】
【実施例】
実施例1
(PTFEウェブの作製)
PTFEファインパウダーから常法により未焼成フィルムを作成した。この未焼成フィルムを、337℃に加熱された塩浴中において、45秒間熱処理を行うことによって半焼成フィルムを得た。この半焼成フィルムを、350℃に加熱された回転速度の異なる2つのロールにより長手方向に25倍の延伸を行い、一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムを、図1に示す装置を用いて、フィルムの送り速度1.5m/分に対して直径100mmの針刃ロールを回転数4500rpmで擦過、解繊を行い、ステープルファイバーをコンベア上に堆積させニップ線圧7.5kg/mの圧力で加圧してウェブを得た。得られたステープルファイバーは、繊度が12デニール、平均繊維長が15.1mmであった。また、得られたウェブは、目付150g/m、幅250mmであった。
【0024】
このウェブに対し、ウォータージェット交絡処理により繊維間交絡を行ったのち、水分乾燥して不織布(比較例1)を得た。比較例1の物性を表1に示す。ウォータージェット条件は、0.5mmのピッチで直線的に配置したノズルのノズル径0.07mm、水圧7MPa、ウェブ通過速度3m/分の4回通しであった。
【0025】
【表1】
Figure 2004176191
【0026】
なお、厚みは、100g/cmの荷重下でマイクロメーター(ミツトヨ社製「No.2330F」)を用いて測定した。引張強度及び伸び率は、比較例1及び実施例1の不織布を裁断して得た幅2cmの帯状物をサンプルとして、引っ張り試験機(島津製作所社製「オートグラフAG−1」)を用い、伸張速度200mm/分の条件下で測定した。光透過効率は、光度計(日立製作所社製「U−3310形分光光度計」)を用いて測定した。なお、光透過効率は、一般に、布帛の目付や厚みによって変化するが、ここで測定される光透過効率は、ウェブの目付が150g/mであるものを基準としている。
【0027】
次に、比較例1の不織布を1対のロールでニップすることによりエンボス加工を行い、高密度部を有する不織布を得た(実施例1)。1対のロールとしては、一方の表面にエンボス加工のための所定の模様が彫刻されるとともに、他方の表面が滑らかなものを用いた。エンボス加工は、以下の条件で行った。
ロール外径:200mm
ロール幅:350mm
ロール温度:250℃
ロールニップ圧力:線圧150kg/cm
ロール周速:3m/分
所定の模様:対角線長さ約2.5mm、線幅0.2mmの格子模様を連続して全面に設けたもの(ロール表面における彫刻部分の面積占有率:約25%)。
【0028】
実施例1の物性も併せて表1に示す。
実施例2
ここでは、比較例1の不織布を、他の1対のロールでニップすることにより、不織布の全面にわたりエンボス加工を行い、全面に高密度部を有する不織布(以下、見掛け密度が2.0g/cm以上のものを実施例2とし、2.0g/cm未満ものを比較例2とする。)を得た。1対のロールとしては、両方のロールが共にエンボス加工の模様を有しないものを用いた。実施例2及び比較例2の不織布を、上記光度計を用いて透過光量を測定した。また、100%エチルアルコール液を滴下して液玉の浸透状態を観察した。見掛け密度2.0g/cm以上の不織布ものは浸透せず弾いていた。
【0029】
表2に、実施例2における、1対のロールのニップ圧力(線圧)と光透過効率及び100%エチルアルコール液の浸透具合と見掛け密度との関係を示す。
【0030】
【表2】
Figure 2004176191
【0031】
光透過効率は、光の波長が650nm、450nmの2種の場合について測定した。光透過効率の測定は、実施例1と同様にして行った。見掛け密度の測定は、下式に従って算出した。
[数1]
(不織布の重量)/(不織布の体積)
(ここで、(不織布の体積)=(不織布の面積)×(不織布の厚み))
不織布の重量は、面積10cm四方に裁断して精密天秤で測定し、そのサンプルの中央と4隅を100g/平方cmの荷重で厚みを測定し、それを平均厚みとして計算した。
【0032】
エンボス加工は、以下の条件で行った。
ロール外径:200mm
ロール幅:350mm
ロール温度:250℃
ロール周速:3m/分
【0033】
【発明の効果】
本発明の布帛は、少なくとも一部に高密度部を有している。これにより、当該布帛は、機械的強度が改善されている。また、本発明の布帛は、PTFEを材質とする場合は、耐薬品性、耐熱性、撥水性及び低摩擦性に優れ、種々の用途に用いることができる。さらに、本発明の布帛は、高密度部が一定の光透過性を有しているため、布帛全体として特有の美観を帯びている。
【0034】
本発明の製造方法によれば、本発明の布帛を、効率的に製造することができる。
本発明の通気性部材は、一部に高密度部を有する本発明の布帛を備えているため、一定の通気性を保持しており、フィルタ濾材としての使用等に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】PTFEフィルムを擦過、解繊するための装置を示す縦断面図。

Claims (12)

  1. 少なくとも一部に見掛け密度が2g/cm以上の高密度部を有している、布帛。
  2. 前記高密度部は厚み方向に加圧されることにより形成される、請求項1に記載の布帛。
  3. フッ素樹脂製のステープルファイバーから実質的になる、請求項2に記載の布帛。
  4. 前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項3に記載の布帛。
  5. 前記ポリテトラフルオロエチレンは、半焼成ポリテトラフルオロエチレンである、請求項4に記載の布帛。
  6. フッ素樹脂製のステープルファイバーをウォータージェット交絡処理し、得られた不織布を厚み方向に加圧することにより得られる、請求項3に記載の布帛。
  7. 表面における前記高密度部の面積占有率は5%以上75%未満である、請求項1に記載の布帛。
  8. 表面における前記高密度部の面積占有率は75%以上である、請求項1に記載の布帛。
  9. 前記高密度部は光透過性を有している、請求項1に記載の布帛。
  10. 前記高密度部が形成された後、ポリテトラフルオロエチレンの融点以上の温度で熱処理されている、請求項4に記載の布帛。
  11. 一部に前記高密度部を有する請求項1から10のいずれか1項に記載の布帛を備えた通気性部材。
  12. シート状物の少なくとも一部を厚み方向に加圧することにより、見掛け密度が2g/cm以上の高密度部を形成する、布帛の製造方法。
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