JP2004175704A - 高純度アントラピリドン系化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インクジェットプリンタ用色素を調製する上で重要で、特定の反応工程を得て得られる下記式(1)を含む反応生成物中における副生成物(式(B))の含有量の少ない前記反応性生成物を得る方法を確立する。
【解決手段】前記式(2)で示される化合物と前記式(3)で示される化合物を、N,Nージメチルホルムアミド中で反応せしめ、前記式(4)で示される化合物とし、次いで式(4)の化合物に発煙硫酸を反応せしめて前記式(5)の化合物とし、次に前記式(5)の化合物に2,4,6ートリクロロー[1,3,5]ートリアジン、次いでアンモニアを反応せしめて得られる式(1)で示される化合物を製造するに当たり、前記式(4)の化合物を含む反応生成物に精製工程を施すことを特徴とする式(1)で示される化合物の高純度品の製造方法
【化1】
【化2】
【解決手段】前記式(2)で示される化合物と前記式(3)で示される化合物を、N,Nージメチルホルムアミド中で反応せしめ、前記式(4)で示される化合物とし、次いで式(4)の化合物に発煙硫酸を反応せしめて前記式(5)の化合物とし、次に前記式(5)の化合物に2,4,6ートリクロロー[1,3,5]ートリアジン、次いでアンモニアを反応せしめて得られる式(1)で示される化合物を製造するに当たり、前記式(4)の化合物を含む反応生成物に精製工程を施すことを特徴とする式(1)で示される化合物の高純度品の製造方法
【化1】
【化2】
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は染料用中間体の製造方法に関する。さらに詳しくは水溶性インク用染料として重要なアントラピリドン系中間体を高純度で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタによる記録方法としてはインクの各種吐出方式が開発されているが、いずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うというものである。インクジェットプリンタによる記録方法は、記録ヘッドと被記録材料とが直接接触しない為、音の発生がなく、又プリンタの小型化、高速化、カラー化が容易という特徴を有する為、近年急速に普及し、今後も大きな伸長が期待されている。コンピュータのカラーディスプレイ上の画像又は文字情報を、インクジェットプリンタにより、カラ−で記録するには、一般にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色で表現される。CRTディスプレイ等のR、G、Bによる加法混色画像をできるだけ忠実に減法混色画像により再現するには、使用する色素、中でもY、M、Cのインクに使用される色素は、できるだけY、M、Cそれぞれの標準に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。また、このようなインクジェットプリンタに使用されるインク組成物は長期の保存に対し安定であり、プリントした画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性等の堅牢度に優れていることが求められる。
【0003】
インクジェットプリンタの用途はOA用又は家庭用の小型プリンタ、産業用の大型プリンタまで拡大されてきており、耐水性及び耐光性等の堅牢度がこれまで以上に求められている。耐水性については、多孔質シリカ、カチオン系ポリマー、アルミナゾル又は特殊セラミックスなどインク中の色素を吸着し得る無機微粒子をPVA樹脂等と共に紙の表面にコーティングすることにより大幅に改良されたが、写真等の印刷物における保管時の耐湿性の向上等については更に厳しい品質向上が求められている。又、耐光性については、これを大幅に改良する技術は未だ確立されておらず、特にY、M、C、Kの4原色のうちマゼンタの色素はもともと耐光性が弱いものが多く、その改良が重要な課題となっている。
【0004】
鮮明性及び耐光性に優れるマゼンタの色素骨格としてはアントラピリドン系色素があり(例えば、特許文献1〜7参照)がる。
【0005】
【特許文献1】
特開昭59−74173
【特許文献2】
特開平2−16171
【特許文献3】
特開2000−109464
【特許文献4】
特開2000−169776
【特許文献5】
特開2000−191660
【特許文献6】
特開2001−72884
【特許文献7】
特開2001−139836
【特許文献8】
特願2002−277220
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人は、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶解安定性に優れたインクジェットプリンタ用のアントラピリドン系色素について、特許出願を行った(特許文献8参照)。該出願において、例えば、後記する式(A)で示されるアントラピリドン系色素を色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶解安定性とりわけ、水溶液中での安定性、経時安定性に優れたものとして紹介した。しかしながら前記特願において紹介した式(A)他のアントラピリドン系色素は十分に純度の高いものが得られないという問題があった。
本発明は、インクジェットプリンタ用インクを調製する上で有用な、特定のアントラピリドン系色素に誘導される中間体の高純度品、及びそれを効率よく製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、目的の中間体を製造する過程の中間生成物に特定の操作を加えることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は
(1)下記反応式(1)において、式(2)で示される化合物と式(3)で示される化合物を、N,Nージメチルホルムアミド中で反応せしめ、式(4)で示される化合物とし、次いで式(4)の化合物に発煙硫酸を反応せしめて式(5)の化合物とし、次に式(5)の化合物に2,4,6ートリクロロー[1,3,5]ートリアジン、次いでアンモニアを反応せしめて得られる式(1)で示される化合物において、式(1)で示される化合物を含む反応生成物中における式(B)で示される副生成物の含有量が液体クロマトグラム(波長254nmで検出)における面積割合で1.0%以下である前記反応生成物、
【0009】
【化8】
【0010】
【化9】
【0011】
【化10】
【0012】
【化11】
【0013】
(2)下記反応式(1)において、式(2)で示される化合物と式(3)で示される化合物を、N,Nージメチルホルムアミド中で反応せしめ、式(4)で示される化合物とし、次いで式(4)の化合物に発煙硫酸を反応せしめて式(5)の化合物とし、次に式(5)の化合物に2,4,6ートリクロロー[1,3,5]ートリアジン、次いでアンモニアを反応せしめて得られる式(1)で示される化合物を製造するに当たり、反応式(1)で示される式(4)の化合物を含む反応生成物に精製工程を施すことを特徴とする式(1)で示される化合物の高純度品の製造方法、
【0014】
【化12】
【0015】
【化13】
【0016】
【化14】
【0017】
(3)精製工程が有機溶媒、水又は両者の混合物で処理する方法である(2)記載の製造方法、
(4)有機溶媒がアルコ−ル類である(3)の製造方法、
(5)アルコール類がメタノールである(4)の製造方法、
(6)反応式(1)で得られた式(4)の化合物を含む反応生成物中におけるN,Nージメチルホルムアミドの含有量が1重量%以下である(2)の製造方法、に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。
本発明で目的とする中間体は、例えば次の反応式(2)のように架橋反応をおこなわせ、インクジェットプリンタ用インクを調製する上で極めて有用な色素に誘導されるものである。
【0019】
【化15】
【0020】
上記式においてXは架橋基を、Rは水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、シクロヘキシル基、モノ又はジアルキルアミノアルキル基又はシアノ低級アルキル基をそれぞれ示す。ここで「アルキル」とは、通常の「アルキル」の定義に入るものであれば特に制限はない。通常、炭素数1〜10程度のアルキル基、好ましくは1〜4程度の低級アルキル基である。また、アルコキシ、アラルキル等についても同様である。Rの具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等のC1〜C4のアルキルがあげられる。また、Rにおけるヒドロキシ低級アルキル及びシアノ低級アルキル基におけるアルキルとしては、例えばエチル、プロピル等があげられるが、エチルが好ましい。
【0021】
架橋基Xの具体例としては、例えば1,2−エチレンジイミノ基(−NH−CH2CH2−NH−)、1,4−ブチレンジイミノ基(−NH−C4H8−NH−)、1,6−ヘキシレンジイミノ基(−NH−C6H12−NH−)等のアルキレンジイミノ基、1,4−フェニレンジイミノ基(−NH−C6H4−p−NH−)、1,3−フェニレンジイミノ基(−NH−C6H4−m−NH−)等のフェニレンジイミノ基、4−スルホ−1,3−フェニレンジイミノ基{−NH−C6H4(p−SO3H)−m−NH−}、5−カルボキシ−1,3−フェニレンジイミノ基等の置換ジアミノフェニレン基、1,3−キシリレンジイミノ基(−NH−CH2−C6H4−m−CH2−NH−)、1,4−キシリレンジイミノ基(−NH−CH2−C6H4−p−CH2−NH−)、イミノ−p−フェニレンイミノ−(3−スルホ−p−フェニレン)イミノ基{−NH−C6H4(m−SO3H)−NH−C6H4−p−NH−}、1,4−ピペラジンジイル基(−NC4H8N−)、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレンイミノ)基(CH2[(4,1−C6H10)−NH−]2)、メチレンビス[(2−メチル4,1−シクロヘキシレン)イミノ]基(CH2[(2−CH3−4,1−C6H9)−NH−]2)、1,3−シクロヘキシレンビス(メチレンイミノ)基(−NH−CH2−C6H10−3−CH2−NH−)等があげられる。
【0022】
本発明において、前記式(1)他のスルホン酸基を有するアントラピリドン系化合物は遊離酸の形で、あるいはその塩の形態で存在する。その塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩又はアンモニウム塩として使用できる。好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩が挙げられる。又、塩の作り方としては、例えば、式(1)の化合物に食塩を加えて、塩析、濾過することによってナトリウム塩をウェットケーキとして得、そのウェットケーキを再び水に溶解後、塩酸を加えてpHを1〜2に調整して得られる結晶を濾過すれば、遊離酸(あるいは一部ナトリウム塩のまま)の形で得られる。更に、その遊離酸の形のウェットケーキを水と供に攪拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水を添加してアルカリ性にすれば、各々カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩が得られる。
【0023】
本発明における目的化合物である前記式(1)の中間体は次の工程を経て製造される。まず式(2)で示される化合物1モルに式(3)の化合物(メタアミノアセトアニリド)1〜5モルを、N,Nージメチルホルムアミド中、炭酸ナトリウムのような塩基性化合物及び、酢酸銅等の銅触媒の存在下、110〜150℃、2〜6時間反応(ウルマン反応)を行って、式(4)で示される化合物を得る。
【0024】
【化16】
【0025】
次いで、式(4)の化合物を8〜15重量%発煙硫酸中、50〜120℃で処理する事によりスルホン化及びアセチルアミノ基の加水分解を行い、式(5)の化合物を得る。次に(5)の化合物1モルに2,4,6−トリクロロー[1,3,5]−トリアジン(三塩化シアヌル)1〜1.2モルを、水媒体中、pH3〜7、5〜35℃で2〜8時間反応させて式(6)の化合物を得、引き続き同反応液中に過剰(通常20モル程度)のアンモニア(水)を加えて10〜50℃で1〜3時間反応させることにより式(1)の化合物を得る。
【0026】
【化17】
【0027】
【化18】
【0028】
上記において素原料として使用される式(2)の化合物は例えば、特許文献8従い、式(7)
【0029】
【化19】
【0030】
で示される化合物(式(7)においてRは水素原子、アルキル基、置換アルキル基他を示す。)1モルにベンゾイル酢酸エチルエステル1〜3モルをキシレン等の有機溶媒中、炭酸ナトリウム等の塩基性化合物の存在下、130〜180℃、5〜15時間反応を行うことに依って容易に得られる。
【0031】
式(2)で示される化合物と式(3)の化合物(メタアミノアセトアニリド)を、前記のようにして得られた式(4)で示される化合物を含む反応生成物を濾過後、残渣を容器に移し、これについて有機溶媒、水又はこれらの混合物中、1〜6時間撹拌処理(洗浄処理)を行う。有機溶媒としては水溶性の有機溶媒が好ましく、より好ましくはメタノール、エタノール等の低級アルコールであり、最も好ましくはメタノールである。使用する有機溶媒、水又はこれらの混合物の量は式(4)で示される化合物を含む反応生成物に対して(乾燥重量換算)重量比で4〜6倍が好ましい。又処理の温度、時間は処理すべき反応生成物に依ってかわるが、処理温度は通常室温(20〜30℃程度)から100℃、好ましくは室温で、処理時間は通常1〜6時間、好ましくは1〜2時間である。
処理が終わったら通常の方法で濾過し、使用した溶媒による洗浄を行い、次いで温水、水等に依る洗浄を行い、必要により、乾燥を行って式(B)で示される副生成物の含有量の少ない式(4)の化合物の高純度品を得る。
【0032】
次いで式(4)の化合物を発煙硫酸中で処理して式(5)の化合物が得られる。次いで2,4,6−トリクロロ−[1,3,5]−トリアジン、更にアンモニアを反応せしめて式(1)で示される化合物を含む反応生成物が得られる。反応生成物中に、式(B)で示される副生成物の含有量が高速液体クロマトグラム(波長254nmで検出)による面積百分率で1%以下であることが好ましい。
【0033】
尚、式(1)で示される中間体中の不純物、特に式(B)で示される副生成物の含有量は、高速液体クロマトグラフイーにより次のようにして測定することが出来る。即ち、式(1)で示される化合物を含有する生成物のサンプルを、例えばアセトニトリルに溶解し、5ミリモル濃度酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリルの時間変率混合液を溶出液として、通常の方法により高速液体クロマトグラムを行う事(波長254nm検出)により測定することが出来る。
【0034】
本発明者等は、式(2)の化合物と式(3)で示される化合物を、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として反応せしめ、式(4)で示される化合物とする過程に注目し、式(4)で示される化合物を含む生成物を濾過、乾燥後に溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド)が残存していると、発煙硫酸と反応させる時に、N,N−ジメチルホルムアミドがジメチルアミンに分解され、次の反応において2,4,6−トリクロロ−[1,3,5]−トリアジン及び式(5)の化合物と反応して式(B)で示される不純物が生成することを見出したものである。即ち反応式(1)の生成物に厳密な洗浄操作を加えてN,N−ジメチルホルムアミドを十分に除去することにより本発明の課題が解決される。
【0035】
本発明で得られた高純度の式(1)で示される化合物は前記したような方法によりジアミン類と縮合することにより、インクジェットプリンタ用インクとして極めて有用なアントラピリドン系色素に誘導される。
【0036】
本発明は、高純度の式(1)で示されるインクジェットプリンタ用アントラピリドン系色素を調製するための中間体を提供する。本発明の方法で得られた式(1)で示される中間体中における前記式(B)で示される副生生物の含有量の少ない生成物を原料として用いて製造されたアントラピリドン系色素は収率がよく又これを用いて調製されたインクジェットプリンタ用インクは、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶解安定性とりわけ、水溶液中での安定性、経時安定性において優れている。
【0037】
【実施例】
以下に本発明を実施例により、更に具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載の無い限り重量基準である。
【0038】
実施例1
(1)反応容器中、キシレン360部中に、攪拌しながら、式(7)(R=CH3)の化合物94.8部、炭酸ナトリウム3.0部、ベンゾイル酢酸エチルエステル144.0部を順次仕込み、昇温する。140℃〜150℃の温度で8時間反応を行い、その間、反応で生成するエタノールと水をキシレンと共沸させながら反応系外へ留出させ、反応を完結させる。次いで冷却し、30℃にてメタノール240部を添加して30分攪拌後、乾燥して式(2)(R=CH3)の化合物124.8部を淡黄色針状結晶として得た。
(2)次いで、N,N−ジメチルホルムアミド300部中に、攪拌しながら、式(2)(R=CH3)の化合物88.8部、メタアミノアセトアニリド75.0部、酢酸銅1水和物24.0部及び炭酸ナトリウム12.8部を順次仕込み、昇温する。120℃〜130℃で3時間反応を行う。約50℃に冷却して、メタノール120.0部を添加し、30分攪拌し、式(4)(R=CH3)の化合物を含有する反応液を得た。
【0039】
(3)反応液を濾別して得た反応生成物全量を、別に用意された容器中のメタノール500部に添加し、室温で1時間攪拌し濾別した。濾別して得られた沈殿を、80℃の湯500部で洗浄、乾燥して高純度の式(4)(R=CH3)で示される化合物79.2部を青味赤色結晶として得た。
洗浄処理時間を決定するためのN,N−ジメチルホルムアミドの定量は、以下のようにして行う。
攪拌中の試料の一部を採取し、乾燥試料0.05部にジメチルスルホキシドを加えて液量を20mlとしてよく振とうし、溶液試料1μlをガスクロマトグラフィーにて測定し、N,N−ジメチルホルムアミドを0.07重量%検出した。
【0040】
(4)96.6%硫酸178.5部に、攪拌下、水冷しながら26.5%発煙硫酸271.5部を添加して、10%発煙硫酸450部を調整した。水冷下、式(4)(R=CH3)の化合物77.0部を30分で添加し、昇温する。90℃〜100℃にて2時間反応を行った。次いで氷水1000部中に、上で得たスルホン化反応液を添加し、その間氷を加えながら40℃以下に保持した。水を加えて液量を1500部とし、濾過して、不溶解分を除去した。次いで母液に湯を加えて2250部とし、温度を50℃〜60℃に保ちながら、食塩450部を添加して2時間攪拌し、析出した結晶を濾過した。ウェットケーキをメタノール1500部と共に加熱攪拌し、1時間還流を行った。40℃に冷却後、濾過し、次いでメタノール300部で洗浄後、乾燥して式(5)(R=CH3)の化合物93.0部を赤色結晶として得た。
【0041】
(5)氷水100部にリパールOH(商品名、アニオン界面活性剤、ライオン株式会社製)0.3部を加え、溶解後2,4,6−トリクロロ−[1,3,5]−トリアジンシアヌルクロライド2.8部を添加し、30分攪拌した。次いで上記で得た式(5)(R=CH3)の化合物12.2部を8℃〜10℃にて添加し、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながらpHを3〜4に保ち、25〜30℃で4時間反応を行い、濾過して不溶解物を除去して、式(6)(R=CH3)の化合物を含有する反応液を得た。
(6)上記で得られた反応液中に、28%アンモニア水溶液20部を加えて昇温し、27〜30℃で2時間反応させた。反応後、水を加えて液量を300部に調整し、50℃〜55℃に保ちながら濃塩酸を添加し、pHを2に調整した後、その温度で食塩70部を添加し、攪拌した。1時間後結晶を濾別し、式(1)(R=CH3)の化合物を赤色ウェットケーキとして得た。
このウェットケーキについての、高速液体クロマトグラム(検出波長 254nm)における面積百分率は次の通りであった。
式(1)(R=CH3)の化合物 71.2%
式(B)(R=CH3)の化合物 0.5%
【0042】
実施例2
実施例1において、(3)の操作を次のように変更する以外は実施例1と同様な操作を行った。
反応液を濾別して得た反応生成物全量を、メタノール500部に添加し、80〜100℃で1時間還流洗浄処理し濾別した。濾別して得られた残渣を、80℃の湯500部で洗浄、乾燥して高純度の式(4)(R=CH3)で示される化合物を青味赤色結晶として得た。攪拌中の試料の一部を採取し、乾燥試料0.05部にジメチルスルホキシドを加えて液量を20mlとしてよく振とうし、溶液試料1μlをガスクロマトグラフィーにて測定し、N,N−ジメチルホルムアミドを0.08重量%検出した。
【0043】
比較例
実施例1において、その(3)のみ以下の操作に変更する以外は実施例1と同様に操作を行った。
反応液を濾過し、濾過残にメタノール500部を加えて再度濾過した。濾別して得られた残渣を、80℃の湯500部で洗浄、乾燥して式(4)(R=CH3)で示される化合物を青味赤色結晶として得た。
攪拌中の試料の一部を採取し、乾燥試料0.05部にジメチルスルホキシドを加えて液量を20mlとしてよく振とうし、溶液試料1μlをガスクロマトグラフィーにて測定し、N,N−ジメチルホルムアミドを7.65重量%を検出した。
又、生成物の高速液体クロマトグラム(検出波長254nm)における面積百分率で以下の結果を得た。
式(1)(R=CH3) 60.3%
式(B)(R=CH3) 6.6%
【0044】
応用例1
実施例1で得られた高純度の式(1)(R=CH3)の化合物10部に、メタキシリレンジアミン0.9部を加え、更に水を加えて液量を200部とし、昇温する。50〜60℃の温度で、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながら、pHを5.7〜6.3に保ち、1時間反応させ縮合反応を行い、濾過、乾燥をして式(A)(R=CH3、X=メタジアミノキシリレン基)で示される化合物6.9部を赤色結晶として得た。
【0045】
【0046】
上記で得られた脱塩処理したアントラピリドン化合物(色素成分)3.7部に、グリセリン5.0部、尿素5.0部、N−メチルー2−ピロリドン4.0部、イソプロピルアルコール3.0部、ブチルカルビトール2.0部を加え、さらにpHが8〜10、総量が100部になるように水酸化アンモニウム及び水を加えた。調整液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過することによりインクジェット用水性マゼンタインク組成物を得た。
【0047】
上記の水性マゼンタインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタ(商品名 Canon社BJ S−630)にセットし、通常の方法でプロフェッショナルフォトペーパー(PR−101(キャノン社製))に記録した。
記録画像の色相、鮮明性、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性をJNC(社団法人日本印刷産業機械工業会)のJAPAN Colorの標準マゼンタのカラーサンプル、特許文献3の実施例2のアントラピリドン化合物、および特許文献5の合成例1のアントラピリドン化合物との比較を行った。
【0048】
本発明の中間体を使用して得られたマゼンタインク組成物は、JNCマゼンタの色相に近似しており、鮮明性はより高かった。耐湿性試験でもブリードは認められず、また耐光性、耐オゾン性についても下記の特許文献3の実施例2のアントラピリドン化合物よりも格段に優れており、インクジェット用マゼンタ色素として適した化合物であった。
【0049】
【0050】
【発明の効果】
本発明により、高純度の式(1)で示されるインクジェットプリンタ用アントラピリドン系色素を調製するための中間体がえられた。本発明の方法で得られた式(1)で示される中間体中における前記式(B)で示される副生生物の含有量の少ない生成物を原料として用いて製造されたアントラピリドン系色素は収率がよく又これを用いて調製インクジェットプリンタ用インクは、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶解安定性とりわけ、水溶液中での安定性、経時安定性において優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は染料用中間体の製造方法に関する。さらに詳しくは水溶性インク用染料として重要なアントラピリドン系中間体を高純度で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタによる記録方法としてはインクの各種吐出方式が開発されているが、いずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うというものである。インクジェットプリンタによる記録方法は、記録ヘッドと被記録材料とが直接接触しない為、音の発生がなく、又プリンタの小型化、高速化、カラー化が容易という特徴を有する為、近年急速に普及し、今後も大きな伸長が期待されている。コンピュータのカラーディスプレイ上の画像又は文字情報を、インクジェットプリンタにより、カラ−で記録するには、一般にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色で表現される。CRTディスプレイ等のR、G、Bによる加法混色画像をできるだけ忠実に減法混色画像により再現するには、使用する色素、中でもY、M、Cのインクに使用される色素は、できるだけY、M、Cそれぞれの標準に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。また、このようなインクジェットプリンタに使用されるインク組成物は長期の保存に対し安定であり、プリントした画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性等の堅牢度に優れていることが求められる。
【0003】
インクジェットプリンタの用途はOA用又は家庭用の小型プリンタ、産業用の大型プリンタまで拡大されてきており、耐水性及び耐光性等の堅牢度がこれまで以上に求められている。耐水性については、多孔質シリカ、カチオン系ポリマー、アルミナゾル又は特殊セラミックスなどインク中の色素を吸着し得る無機微粒子をPVA樹脂等と共に紙の表面にコーティングすることにより大幅に改良されたが、写真等の印刷物における保管時の耐湿性の向上等については更に厳しい品質向上が求められている。又、耐光性については、これを大幅に改良する技術は未だ確立されておらず、特にY、M、C、Kの4原色のうちマゼンタの色素はもともと耐光性が弱いものが多く、その改良が重要な課題となっている。
【0004】
鮮明性及び耐光性に優れるマゼンタの色素骨格としてはアントラピリドン系色素があり(例えば、特許文献1〜7参照)がる。
【0005】
【特許文献1】
特開昭59−74173
【特許文献2】
特開平2−16171
【特許文献3】
特開2000−109464
【特許文献4】
特開2000−169776
【特許文献5】
特開2000−191660
【特許文献6】
特開2001−72884
【特許文献7】
特開2001−139836
【特許文献8】
特願2002−277220
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人は、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶解安定性に優れたインクジェットプリンタ用のアントラピリドン系色素について、特許出願を行った(特許文献8参照)。該出願において、例えば、後記する式(A)で示されるアントラピリドン系色素を色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶解安定性とりわけ、水溶液中での安定性、経時安定性に優れたものとして紹介した。しかしながら前記特願において紹介した式(A)他のアントラピリドン系色素は十分に純度の高いものが得られないという問題があった。
本発明は、インクジェットプリンタ用インクを調製する上で有用な、特定のアントラピリドン系色素に誘導される中間体の高純度品、及びそれを効率よく製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、目的の中間体を製造する過程の中間生成物に特定の操作を加えることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は
(1)下記反応式(1)において、式(2)で示される化合物と式(3)で示される化合物を、N,Nージメチルホルムアミド中で反応せしめ、式(4)で示される化合物とし、次いで式(4)の化合物に発煙硫酸を反応せしめて式(5)の化合物とし、次に式(5)の化合物に2,4,6ートリクロロー[1,3,5]ートリアジン、次いでアンモニアを反応せしめて得られる式(1)で示される化合物において、式(1)で示される化合物を含む反応生成物中における式(B)で示される副生成物の含有量が液体クロマトグラム(波長254nmで検出)における面積割合で1.0%以下である前記反応生成物、
【0009】
【化8】
【0010】
【化9】
【0011】
【化10】
【0012】
【化11】
【0013】
(2)下記反応式(1)において、式(2)で示される化合物と式(3)で示される化合物を、N,Nージメチルホルムアミド中で反応せしめ、式(4)で示される化合物とし、次いで式(4)の化合物に発煙硫酸を反応せしめて式(5)の化合物とし、次に式(5)の化合物に2,4,6ートリクロロー[1,3,5]ートリアジン、次いでアンモニアを反応せしめて得られる式(1)で示される化合物を製造するに当たり、反応式(1)で示される式(4)の化合物を含む反応生成物に精製工程を施すことを特徴とする式(1)で示される化合物の高純度品の製造方法、
【0014】
【化12】
【0015】
【化13】
【0016】
【化14】
【0017】
(3)精製工程が有機溶媒、水又は両者の混合物で処理する方法である(2)記載の製造方法、
(4)有機溶媒がアルコ−ル類である(3)の製造方法、
(5)アルコール類がメタノールである(4)の製造方法、
(6)反応式(1)で得られた式(4)の化合物を含む反応生成物中におけるN,Nージメチルホルムアミドの含有量が1重量%以下である(2)の製造方法、に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。
本発明で目的とする中間体は、例えば次の反応式(2)のように架橋反応をおこなわせ、インクジェットプリンタ用インクを調製する上で極めて有用な色素に誘導されるものである。
【0019】
【化15】
【0020】
上記式においてXは架橋基を、Rは水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、シクロヘキシル基、モノ又はジアルキルアミノアルキル基又はシアノ低級アルキル基をそれぞれ示す。ここで「アルキル」とは、通常の「アルキル」の定義に入るものであれば特に制限はない。通常、炭素数1〜10程度のアルキル基、好ましくは1〜4程度の低級アルキル基である。また、アルコキシ、アラルキル等についても同様である。Rの具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等のC1〜C4のアルキルがあげられる。また、Rにおけるヒドロキシ低級アルキル及びシアノ低級アルキル基におけるアルキルとしては、例えばエチル、プロピル等があげられるが、エチルが好ましい。
【0021】
架橋基Xの具体例としては、例えば1,2−エチレンジイミノ基(−NH−CH2CH2−NH−)、1,4−ブチレンジイミノ基(−NH−C4H8−NH−)、1,6−ヘキシレンジイミノ基(−NH−C6H12−NH−)等のアルキレンジイミノ基、1,4−フェニレンジイミノ基(−NH−C6H4−p−NH−)、1,3−フェニレンジイミノ基(−NH−C6H4−m−NH−)等のフェニレンジイミノ基、4−スルホ−1,3−フェニレンジイミノ基{−NH−C6H4(p−SO3H)−m−NH−}、5−カルボキシ−1,3−フェニレンジイミノ基等の置換ジアミノフェニレン基、1,3−キシリレンジイミノ基(−NH−CH2−C6H4−m−CH2−NH−)、1,4−キシリレンジイミノ基(−NH−CH2−C6H4−p−CH2−NH−)、イミノ−p−フェニレンイミノ−(3−スルホ−p−フェニレン)イミノ基{−NH−C6H4(m−SO3H)−NH−C6H4−p−NH−}、1,4−ピペラジンジイル基(−NC4H8N−)、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレンイミノ)基(CH2[(4,1−C6H10)−NH−]2)、メチレンビス[(2−メチル4,1−シクロヘキシレン)イミノ]基(CH2[(2−CH3−4,1−C6H9)−NH−]2)、1,3−シクロヘキシレンビス(メチレンイミノ)基(−NH−CH2−C6H10−3−CH2−NH−)等があげられる。
【0022】
本発明において、前記式(1)他のスルホン酸基を有するアントラピリドン系化合物は遊離酸の形で、あるいはその塩の形態で存在する。その塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩又はアンモニウム塩として使用できる。好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩が挙げられる。又、塩の作り方としては、例えば、式(1)の化合物に食塩を加えて、塩析、濾過することによってナトリウム塩をウェットケーキとして得、そのウェットケーキを再び水に溶解後、塩酸を加えてpHを1〜2に調整して得られる結晶を濾過すれば、遊離酸(あるいは一部ナトリウム塩のまま)の形で得られる。更に、その遊離酸の形のウェットケーキを水と供に攪拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水を添加してアルカリ性にすれば、各々カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩が得られる。
【0023】
本発明における目的化合物である前記式(1)の中間体は次の工程を経て製造される。まず式(2)で示される化合物1モルに式(3)の化合物(メタアミノアセトアニリド)1〜5モルを、N,Nージメチルホルムアミド中、炭酸ナトリウムのような塩基性化合物及び、酢酸銅等の銅触媒の存在下、110〜150℃、2〜6時間反応(ウルマン反応)を行って、式(4)で示される化合物を得る。
【0024】
【化16】
【0025】
次いで、式(4)の化合物を8〜15重量%発煙硫酸中、50〜120℃で処理する事によりスルホン化及びアセチルアミノ基の加水分解を行い、式(5)の化合物を得る。次に(5)の化合物1モルに2,4,6−トリクロロー[1,3,5]−トリアジン(三塩化シアヌル)1〜1.2モルを、水媒体中、pH3〜7、5〜35℃で2〜8時間反応させて式(6)の化合物を得、引き続き同反応液中に過剰(通常20モル程度)のアンモニア(水)を加えて10〜50℃で1〜3時間反応させることにより式(1)の化合物を得る。
【0026】
【化17】
【0027】
【化18】
【0028】
上記において素原料として使用される式(2)の化合物は例えば、特許文献8従い、式(7)
【0029】
【化19】
【0030】
で示される化合物(式(7)においてRは水素原子、アルキル基、置換アルキル基他を示す。)1モルにベンゾイル酢酸エチルエステル1〜3モルをキシレン等の有機溶媒中、炭酸ナトリウム等の塩基性化合物の存在下、130〜180℃、5〜15時間反応を行うことに依って容易に得られる。
【0031】
式(2)で示される化合物と式(3)の化合物(メタアミノアセトアニリド)を、前記のようにして得られた式(4)で示される化合物を含む反応生成物を濾過後、残渣を容器に移し、これについて有機溶媒、水又はこれらの混合物中、1〜6時間撹拌処理(洗浄処理)を行う。有機溶媒としては水溶性の有機溶媒が好ましく、より好ましくはメタノール、エタノール等の低級アルコールであり、最も好ましくはメタノールである。使用する有機溶媒、水又はこれらの混合物の量は式(4)で示される化合物を含む反応生成物に対して(乾燥重量換算)重量比で4〜6倍が好ましい。又処理の温度、時間は処理すべき反応生成物に依ってかわるが、処理温度は通常室温(20〜30℃程度)から100℃、好ましくは室温で、処理時間は通常1〜6時間、好ましくは1〜2時間である。
処理が終わったら通常の方法で濾過し、使用した溶媒による洗浄を行い、次いで温水、水等に依る洗浄を行い、必要により、乾燥を行って式(B)で示される副生成物の含有量の少ない式(4)の化合物の高純度品を得る。
【0032】
次いで式(4)の化合物を発煙硫酸中で処理して式(5)の化合物が得られる。次いで2,4,6−トリクロロ−[1,3,5]−トリアジン、更にアンモニアを反応せしめて式(1)で示される化合物を含む反応生成物が得られる。反応生成物中に、式(B)で示される副生成物の含有量が高速液体クロマトグラム(波長254nmで検出)による面積百分率で1%以下であることが好ましい。
【0033】
尚、式(1)で示される中間体中の不純物、特に式(B)で示される副生成物の含有量は、高速液体クロマトグラフイーにより次のようにして測定することが出来る。即ち、式(1)で示される化合物を含有する生成物のサンプルを、例えばアセトニトリルに溶解し、5ミリモル濃度酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリルの時間変率混合液を溶出液として、通常の方法により高速液体クロマトグラムを行う事(波長254nm検出)により測定することが出来る。
【0034】
本発明者等は、式(2)の化合物と式(3)で示される化合物を、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として反応せしめ、式(4)で示される化合物とする過程に注目し、式(4)で示される化合物を含む生成物を濾過、乾燥後に溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド)が残存していると、発煙硫酸と反応させる時に、N,N−ジメチルホルムアミドがジメチルアミンに分解され、次の反応において2,4,6−トリクロロ−[1,3,5]−トリアジン及び式(5)の化合物と反応して式(B)で示される不純物が生成することを見出したものである。即ち反応式(1)の生成物に厳密な洗浄操作を加えてN,N−ジメチルホルムアミドを十分に除去することにより本発明の課題が解決される。
【0035】
本発明で得られた高純度の式(1)で示される化合物は前記したような方法によりジアミン類と縮合することにより、インクジェットプリンタ用インクとして極めて有用なアントラピリドン系色素に誘導される。
【0036】
本発明は、高純度の式(1)で示されるインクジェットプリンタ用アントラピリドン系色素を調製するための中間体を提供する。本発明の方法で得られた式(1)で示される中間体中における前記式(B)で示される副生生物の含有量の少ない生成物を原料として用いて製造されたアントラピリドン系色素は収率がよく又これを用いて調製されたインクジェットプリンタ用インクは、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶解安定性とりわけ、水溶液中での安定性、経時安定性において優れている。
【0037】
【実施例】
以下に本発明を実施例により、更に具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載の無い限り重量基準である。
【0038】
実施例1
(1)反応容器中、キシレン360部中に、攪拌しながら、式(7)(R=CH3)の化合物94.8部、炭酸ナトリウム3.0部、ベンゾイル酢酸エチルエステル144.0部を順次仕込み、昇温する。140℃〜150℃の温度で8時間反応を行い、その間、反応で生成するエタノールと水をキシレンと共沸させながら反応系外へ留出させ、反応を完結させる。次いで冷却し、30℃にてメタノール240部を添加して30分攪拌後、乾燥して式(2)(R=CH3)の化合物124.8部を淡黄色針状結晶として得た。
(2)次いで、N,N−ジメチルホルムアミド300部中に、攪拌しながら、式(2)(R=CH3)の化合物88.8部、メタアミノアセトアニリド75.0部、酢酸銅1水和物24.0部及び炭酸ナトリウム12.8部を順次仕込み、昇温する。120℃〜130℃で3時間反応を行う。約50℃に冷却して、メタノール120.0部を添加し、30分攪拌し、式(4)(R=CH3)の化合物を含有する反応液を得た。
【0039】
(3)反応液を濾別して得た反応生成物全量を、別に用意された容器中のメタノール500部に添加し、室温で1時間攪拌し濾別した。濾別して得られた沈殿を、80℃の湯500部で洗浄、乾燥して高純度の式(4)(R=CH3)で示される化合物79.2部を青味赤色結晶として得た。
洗浄処理時間を決定するためのN,N−ジメチルホルムアミドの定量は、以下のようにして行う。
攪拌中の試料の一部を採取し、乾燥試料0.05部にジメチルスルホキシドを加えて液量を20mlとしてよく振とうし、溶液試料1μlをガスクロマトグラフィーにて測定し、N,N−ジメチルホルムアミドを0.07重量%検出した。
【0040】
(4)96.6%硫酸178.5部に、攪拌下、水冷しながら26.5%発煙硫酸271.5部を添加して、10%発煙硫酸450部を調整した。水冷下、式(4)(R=CH3)の化合物77.0部を30分で添加し、昇温する。90℃〜100℃にて2時間反応を行った。次いで氷水1000部中に、上で得たスルホン化反応液を添加し、その間氷を加えながら40℃以下に保持した。水を加えて液量を1500部とし、濾過して、不溶解分を除去した。次いで母液に湯を加えて2250部とし、温度を50℃〜60℃に保ちながら、食塩450部を添加して2時間攪拌し、析出した結晶を濾過した。ウェットケーキをメタノール1500部と共に加熱攪拌し、1時間還流を行った。40℃に冷却後、濾過し、次いでメタノール300部で洗浄後、乾燥して式(5)(R=CH3)の化合物93.0部を赤色結晶として得た。
【0041】
(5)氷水100部にリパールOH(商品名、アニオン界面活性剤、ライオン株式会社製)0.3部を加え、溶解後2,4,6−トリクロロ−[1,3,5]−トリアジンシアヌルクロライド2.8部を添加し、30分攪拌した。次いで上記で得た式(5)(R=CH3)の化合物12.2部を8℃〜10℃にて添加し、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながらpHを3〜4に保ち、25〜30℃で4時間反応を行い、濾過して不溶解物を除去して、式(6)(R=CH3)の化合物を含有する反応液を得た。
(6)上記で得られた反応液中に、28%アンモニア水溶液20部を加えて昇温し、27〜30℃で2時間反応させた。反応後、水を加えて液量を300部に調整し、50℃〜55℃に保ちながら濃塩酸を添加し、pHを2に調整した後、その温度で食塩70部を添加し、攪拌した。1時間後結晶を濾別し、式(1)(R=CH3)の化合物を赤色ウェットケーキとして得た。
このウェットケーキについての、高速液体クロマトグラム(検出波長 254nm)における面積百分率は次の通りであった。
式(1)(R=CH3)の化合物 71.2%
式(B)(R=CH3)の化合物 0.5%
【0042】
実施例2
実施例1において、(3)の操作を次のように変更する以外は実施例1と同様な操作を行った。
反応液を濾別して得た反応生成物全量を、メタノール500部に添加し、80〜100℃で1時間還流洗浄処理し濾別した。濾別して得られた残渣を、80℃の湯500部で洗浄、乾燥して高純度の式(4)(R=CH3)で示される化合物を青味赤色結晶として得た。攪拌中の試料の一部を採取し、乾燥試料0.05部にジメチルスルホキシドを加えて液量を20mlとしてよく振とうし、溶液試料1μlをガスクロマトグラフィーにて測定し、N,N−ジメチルホルムアミドを0.08重量%検出した。
【0043】
比較例
実施例1において、その(3)のみ以下の操作に変更する以外は実施例1と同様に操作を行った。
反応液を濾過し、濾過残にメタノール500部を加えて再度濾過した。濾別して得られた残渣を、80℃の湯500部で洗浄、乾燥して式(4)(R=CH3)で示される化合物を青味赤色結晶として得た。
攪拌中の試料の一部を採取し、乾燥試料0.05部にジメチルスルホキシドを加えて液量を20mlとしてよく振とうし、溶液試料1μlをガスクロマトグラフィーにて測定し、N,N−ジメチルホルムアミドを7.65重量%を検出した。
又、生成物の高速液体クロマトグラム(検出波長254nm)における面積百分率で以下の結果を得た。
式(1)(R=CH3) 60.3%
式(B)(R=CH3) 6.6%
【0044】
応用例1
実施例1で得られた高純度の式(1)(R=CH3)の化合物10部に、メタキシリレンジアミン0.9部を加え、更に水を加えて液量を200部とし、昇温する。50〜60℃の温度で、10%苛性ソーダ水溶液を滴下しながら、pHを5.7〜6.3に保ち、1時間反応させ縮合反応を行い、濾過、乾燥をして式(A)(R=CH3、X=メタジアミノキシリレン基)で示される化合物6.9部を赤色結晶として得た。
【0045】
【0046】
上記で得られた脱塩処理したアントラピリドン化合物(色素成分)3.7部に、グリセリン5.0部、尿素5.0部、N−メチルー2−ピロリドン4.0部、イソプロピルアルコール3.0部、ブチルカルビトール2.0部を加え、さらにpHが8〜10、総量が100部になるように水酸化アンモニウム及び水を加えた。調整液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過することによりインクジェット用水性マゼンタインク組成物を得た。
【0047】
上記の水性マゼンタインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタ(商品名 Canon社BJ S−630)にセットし、通常の方法でプロフェッショナルフォトペーパー(PR−101(キャノン社製))に記録した。
記録画像の色相、鮮明性、耐光性、耐オゾン性及び耐湿性をJNC(社団法人日本印刷産業機械工業会)のJAPAN Colorの標準マゼンタのカラーサンプル、特許文献3の実施例2のアントラピリドン化合物、および特許文献5の合成例1のアントラピリドン化合物との比較を行った。
【0048】
本発明の中間体を使用して得られたマゼンタインク組成物は、JNCマゼンタの色相に近似しており、鮮明性はより高かった。耐湿性試験でもブリードは認められず、また耐光性、耐オゾン性についても下記の特許文献3の実施例2のアントラピリドン化合物よりも格段に優れており、インクジェット用マゼンタ色素として適した化合物であった。
【0049】
【0050】
【発明の効果】
本発明により、高純度の式(1)で示されるインクジェットプリンタ用アントラピリドン系色素を調製するための中間体がえられた。本発明の方法で得られた式(1)で示される中間体中における前記式(B)で示される副生生物の含有量の少ない生成物を原料として用いて製造されたアントラピリドン系色素は収率がよく又これを用いて調製インクジェットプリンタ用インクは、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶解安定性とりわけ、水溶液中での安定性、経時安定性において優れている。
Claims (6)
- 精製工程が有機溶媒、水又は両者の混合物で処理する方法である請求項2記載の製造方法
- 有機溶媒がアルコ−ル類である請求項3の製造方法
- アルコール類がメタノールである請求項4の製造方法
- 反応式(1)で得られた式(4)の化合物を含む反応生成物中におけるN,Nージメチルホルムアミドの含有量が1重量%以下である請求項2の製造方法
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CN101848970B (zh) * | 2007-11-06 | 2014-04-02 | 日本化药株式会社 | 蒽吡啶酮化合物或其盐、洋红油墨组合物及着色体 |
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