JP2004175691A - フェナントロリン誘導体、その製造方法および用途 - Google Patents

フェナントロリン誘導体、その製造方法および用途 Download PDF

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Abstract

【課題】Alqに優るとも劣らない電子輸送性能を示す新規なフェナントロリン誘導体とその製造方法およびその用途の提供。
【解決手段】下記一般式(1)
【化1】
Figure 2004175691

〔式中、R〜Rは水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(アルキル基で置換されていてもよい)、アラルキル基(アリール基部分がアルキル基で置換されていてもよい)、アルキルアミノ基、RCOO−(Rはアルキル基、アリール基およびアラルキル基よりなる群から選ばれる)、シアノ基および
【化2】
−XA
(XはO、S、SeおよびTeよりなる群から選ばれた元素であり、Aはアルキル基またはアリール基である)
よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。〕
で示されるフェナントロリン誘導体、その製造方法およびその用途。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフェナントロリン誘導体、その製造方法、それよりなる電子輸送材料およびそれを用いた有機EL素子に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、下記式、
【化25】
Figure 2004175691
で示されるトリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(以下Alqと略称することがある)が有機EL素子の発光材料や電子輸送材料として広く使用されている。
しかし、Alqは効率のよい電子輸送材料であるが、このものを使用すると本来緑色の発光材料であるから、緑色に発光する。しかし緑色より短い波長たとえば青色を取り出したい場合にはAlqは使用することができない。そこで大きなバンドギャップをもつバソフェナンソロジン(BPhen)や下記式
【化26】
Figure 2004175691
で示されるバソクフロイン(Bathocuproine:BCP)がホールブロック層として電子輸送剤の代りに使用されている(特開2001−297881、特開2001−313178号など参照)。ところがこれらの蒸着膜は再結晶化をおこしやすく、また、これらを使用したEL素子は電子の注入効率もAlqに比べて低いものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、Alqに優るとも劣らない電子輸送性能を示す新規なフェナントロリン誘導体とその製造方法およびその用途を提供する点に関する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、下記一般式(1)
【化27】
Figure 2004175691
〔式中、R〜Rは水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(アルキル基で置換されていてもよい)、アラルキル基(アリール基部分がアルキル基で置換されていてもよい)、アルキルアミノ基、RCOO−(Rはアルキル基、アリール基およびアラルキル基よりなる群から選ばれる)、シアノ基および
【化28】
−XA
(XはO、S、SeおよびTeよりなる群から選ばれた元素であり、Aはアルキル基またはアリール基である)
よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。〕
で示されるフェナントロリン誘導体に関する。
本発明の第2は、前記Qが、下記式
【化29】
Figure 2004175691
【化30】
Figure 2004175691
【化31】
Figure 2004175691
【化32】
Figure 2004175691
【化33】
Figure 2004175691
【化34】
Figure 2004175691
【化35】
Figure 2004175691
【化36】
Figure 2004175691
【化37】
Figure 2004175691
【化38】
Figure 2004175691
【化39】
Figure 2004175691
【化40】
Figure 2004175691
【化41】
Figure 2004175691
〔式中、R〜R59は、水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(アルキル基で置換されていてもよい)、アラルキル基(アリール基部分がアルキル基で置換されていてもよい)、アルキルアミノ基、RCOO−(Rはアルキル基、アリール基およびアラルキル基よりなる群から選ばれる)、シアノ基および
【化42】
−XA
(XはO、S、SeおよびTeよりなる群から選ばれた元素であり、Aはアルキル基またはアリール基である)よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。〕
よりなる群から選ばれた2環以上の芳香族基である請求項1記載のフェナントロリン誘導体に関する。
本発明の第3は、請求項1記載のフェナントロリン誘導体が下記式
【化43】
Figure 2004175691
で示される3,8−ジアントラセニルフェナントロリンである請求項1記載のフェナントロリン誘導体に関する。
本発明の第4は、請求項1記載のフェナントロリン誘導体が下記式、
【化44】
Figure 2004175691
または
【化45】
Figure 2004175691
で示される3,8−ジナフタレニルフェナントロリンである請求項1記載のフェナントロリン誘導体に関する。
本発明の第5は、下記一般式(2)
【化46】
Figure 2004175691
〔式中、Xはハロゲン、R〜Rは水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(アルキル基で置換されていてもよい)、アラルキル基(アリール基部分がアルキル基で置換されていてもよい)、アルキルアミノ基、RCOO−(Rはアルキル基、アリール基およびアラルキル基よりなる群から選ばれる)、シアノ基および
【化47】
−XA
(XはO、S、SeおよびTeよりなる群から選ばれた元素であり、Aはアルキル基またはアリール基である)
よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。〕
で示される3,8−ジハロゲン化フェナントロリンと一般式(3)
【化48】
Figure 2004175691
(式中、EおよびEは、水素およびアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、またEとEがアルキル基のとき両者が一体になって環を形成してもよく、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。)
で示されるホウ素化アリール化合物とを反応させることを特徴とする請求項1または2記載のフェナントロリン誘導体の製造方法に関する。
本発明の第6は、前記一般式(3)の化合物が下記一般式(4)
【化49】
Figure 2004175691
(式中、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。)
で示される化合物である請求項5記載のフェナントロリン誘導体の製造方法に関する。
本発明の第7は、前記一般式(3)の化合物が下記一般式(5)
【化50】
Figure 2004175691
(式中、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。)
で示される化合物である請求項5記載のフェナントロリン誘導体の製造方法に関する。
本発明の第8は、請求項1〜4いずれか記載のフェナントロリン誘導体よりなることを特徴とする電子輸送材料に関する。
本発明の第9は、請求項1〜4いずれか記載のフェナントロリン誘導体を含有する電子輸送層をもつことを特徴とする有機EL素子に関する。
【0005】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子に使用する一般式(1)の化合物のフェナントロリン誘導体は、アリール基、好ましくはナフチル基、アントラニル基、より好ましくはアントラニル基により、耐熱凝集性の少ないキャリアー輸送性を発揮することができる。また、中心の分子がフェナントロリン環であることから高い電子輸送性を示すことは明らかである。
【0006】
一般式(1)で示される本発明の化合物であるフェナントロリン誘導体を製造するための方法は前記一般式(1)におけるQが結合している部位はR、R、R、Rが結合している部位に較べて反応性が大変低いため、反応試薬の選定および場合により反応条件の設定に多大の工夫を要する。その1つの方法は、請求項5に示すとおりであるが、とくに好ましい方法の1つは、一般式(2)で示される3,8−ジハロゲン化フェナントロリンと一般式(4)で示されホウ素化アリール化合物とを反応させる方法であるが、この場合は、一般式(2)の化合物、一般式(4)の化合物およびPd〔P(Ph)〔ただしPhはフェニル基を指す。〕をジメチルホルムアミド(DMF)などの溶剤に溶解させ、ここに炭酸カリウム水溶液のようなアルカリ成分を添加して反応を進行させることができる。
【0007】
一般式(1)で示される本発明の化合物であるフェナントロリン誘導体を製造するためのもう1つの好ましい方法は、一般式(2)で示される3,8−ジハロゲン化フェナントロリンと一般式(5)で示される水酸基含有ホウ素化アリール化合物とを反応させる方法である。これらの場合は、一般式(2)の化合物と例えばChem.Rev.1995,95,2457〜2483あるいはTetrahedron Letters,vol.38,No.19,P3447〜3450,1997に例示された方法で一般式(3)〜(5)の化合物をジメチルホルムアミド(DMF)のような溶剤に溶かし、不活性ガス雰囲気下に触媒(たとえば有機リン系パラジウム触媒)と塩基(たとえばKPO、KCO、ナトリウムアルコラート、重曹などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩)の存在下で反応を行うことができる。
有機リン系パラジウム触媒としては特に下記式
【化51】
Figure 2004175691
(式中、Ar、Ar、Arは置換基を有することもあるアリール基よりそれぞれ独立して選ばれた基であり、前記置換基はアルキル基またはアルコキシ基であることができる。)
で示されるアリールリン系パラジウム触媒が好ましい。
具体的にはAr〜Arがすべてフェニル基のものやArがフェニル基でAr、Arがトリル基であるものなどを例示することができる。
具体的に言えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ4−メチルフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ3−メチルフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ2−メチルフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ4−メトキシフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ3−メトキシフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリ2−メトキシフェニルホスフィン)パラジウムなどが例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0008】
これらの反応で使用できる溶媒としてはトルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチルピロリドンなどの極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒については単独、あるいは混合して使用することができる。またこれらの溶媒に水を混合して使用することもできる。
【0009】
前記E、E、Q、A、R〜R59およびRにおけるアルキル基としては、直鎖または分岐の任意の炭素数のものであることができるが好ましくは炭素数1〜20のものであり、アリール基としては、縮合環の数が1個または複数のものであり、かつ縮合環にはアルキル置換基(前記アルキル基と同様のことが言える)があってもよく、前記複数とは2〜5個であることが好ましく、アラルキル基としては前記アルキル基とアリール基の任意の組合せによる基であることができ、アルキルアミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基であることができ、各アルキル基は前記と同様のアルキル基であることができる。ただし、これらの置換基の組合せにおいて立体障害が発生しない範囲で選択するのは当然のことである。
【0010】
本発明の化合物は、EL素子の電子輸送材料として使用できる。とくに、3,8−ジアントラセニルフェナントロリン(DAnPhen)は電子輸送兼発光層として有効に機能する。
【0011】
本発明の化合物を電子輸送層の形成材料として使用したEL素子としては、従来公知の層構成を採用することができる。例えば(イ)陽極/ホール輸送層/発光層/本発明化合物を用いた電子輸送層/電子注入層/陰極、(ロ)陽極/ホール輸送層/発光層/本発明化合物を用いた発光兼電子輸送層/電子注入層/陰極、(ハ)陽極/ホール輸送層/本発明化合物とドーパントからなる発光層/本発明化合物を用いた電子輸送層(電子注入剤を併用することがある)/電子注入層/陰極などの層構成を挙げることができる。
【0012】
具体的な本発明EL素子の層構成例を以下に示すが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
ITO/NPD/Alq(発光層)/DAnPhen/LiF/Al
ITO/NPD/Alq+dopant(発光層)/DAnPhen/LiF/Al
ITO/NPD/DAnPhen+dopant(発光層)/DAnPhen/LiF/Al
ITO/NPD/DAnPhen/DanPhen/LiF/LiF/Al
ITO/NPD/Alq(発光層)/DAnPhen/DanPhen+LiF/LiF/Al
ITO/NPD/Alq+dopant(発光層)/DAnPhen/DanPhen+LiF/LiF/Al
ITO/NPD/DAnPhen+dopant(発光層)/DanPhen+LiF/LiF/Al
なお、NPDはホール輸送剤N,N′−ジ(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニル−ベンジジンであり、DAnPhenは本発明の3,8−ジアントラセニルフェナントロリンであるが、このかわりに、本発明の他の化合物を用いてもよい。Alqは代表的な発光材料であり、その正式名称と化学構造は従来技術の項で述べたとおりである。LiFは電子注入層であり、LiFは電子注入剤として機能している。(DAnPhen+LiF)の層はDAnPhenの層とLiFの層との密着性を向上させるための層であり、このように上下の層の混合物の層を介在させることにより上下層の密着性を向上させる手段は、この分野ではよく行われる。ドーパントは従来公知のものが使用できるが、例えば本発明のDAnPhenは緑色に蛍光するからドーパントとしては、緑色から赤色の範囲の色素が使用できる。例えば、緑色の色素としてはキナクリドン、ジメチルキナクリドン、クマリンC540、クマリンC545Tなどがある。黄色の色素としてはルブレン、赤色の色素としてはナイルレッド、DCMなどが挙げられる。
なお、実施例2に示す3,8−ジ−(1−ナフチル)フェナントロリン(D−1NaPhen)を用いる場合には、これが青色に蛍光するので青色〜赤色のドーパントが使用できる。青色のドーパントとしては、テトラフェニルブタジエン、ペリレンなどを挙げることができる。
【0013】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0014】
実施例1
(1)3,8−ジブロモフェナントロリン(DBrPhen)の合成
【化52】
Figure 2004175691
三口フラスコに1,10−フェナントロリン塩酸塩一水和物とニトロベンゼンを加え、130〜140℃に加熱し、これにニトロベンゼンに臭素を加えた溶液を一時間かけてゆっくりと滴下した。3時間反応させ、反応混合物を室温まで冷やした。濃アンモニア水で処理しジクロロメタンで抽出した後、水で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒、0.5%メタノールジクロロメタン溶液)により精製した。精製後、IRスペクトル、H−NMRスペクトルにて同定した。
【0015】
(2)9−アントラセニル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成
【化53】
Figure 2004175691
三口フラスコに9−ブロモアンスラセンと無水テトラヒドロフランを加え、室温、窒素気流下10分間撹拌し、ドライアイスアセトン溶液で冷却した後、さらに10分間撹拌した。10分後n−BuLi(ノルマルブチルリチウム)溶液をゆっくりと滴下し滴下後、20分間撹拌し一旦0℃まで冷却した。0℃で10分間撹拌した後、再びドライアイスアセトン溶液を用いて−78℃に冷却し、10分間撹拌して2−イソプロポキシ−4,4,4,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(DOB)を一気に加え、室温で24時間反応させた。反応終了後、水洗し、有機層を回収してエバポレーターで溶媒を除去後、カラムクロマトグラフィーで精製し、再結晶を行った。
【0016】
(3)3,8−ジアントラセニルフェナントロリン(DAnPhen)の合成
【化54】
Figure 2004175691
三口フラスコにDBrPh2.96mmol、ホウ素化アントラセン(BAN)6.5mmol、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム触媒すなわちPd〔P(Ph)0.70mmolをジメチルホルムアミド60mmolに溶解させ、炭酸カリウム水溶液(KCO4.0mmol相当量)を加え100℃で2.5日間反応させた。反応終了後クロロホルムで抽出し水で洗浄したあと硫酸マグネシウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィーにより精製した(展開溶媒 ジクロロメタン+25%メタノール溶液)。回収後、クロロホルム:ヘキサン溶液により再結晶を行い、黄色の固体を得た(収率29.8%)。同定はIRスペクトル(図1)、H−NMR(図2)、元素分析により行った。次ぎにこれの諸処の物性を測定した。図3の点線は3,8−ジアントラセニルフェナントロリン薄膜の吸収スペクトルを示し、図3の実線はその蛍光スペクトルを示す。
融点 300℃以上、
H−NMR(CDCl,TMS)δ(ppm)9.4,8.5,8.05(2H,2H,2H,part of Phen),8.68,8.17, 7.75,6.00−7.40(2H,4H,8H,part of Anthracene)
【0017】
実施例2
(1)1−ブロモナフタレンのホウ素化
【化55】
Figure 2004175691
1−ブロモナフタレンのTHF溶液を−78℃に冷却し、n−BuLiヘキサン溶液(1.6M)をゆっくりと滴下し、滴下後0℃に昇温し、30分撹拌した。つづいて再び−78℃に冷却し、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(DOB)を加え、室温で24時間反応させた。反応終了後、ジエチルエーテルで希釈し、水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後、ジエチルエーテルをエバポレーターにより除去し、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒、クロロホルム:ヘキサン=1:2)で精製した。精製後、白色固体を得た。H−NMRスペクトル、IRスペクトルにより同定した。
【0018】
(2)3,8−ジ−(1−ナフチル)フェナントロリン(D−1NaPhen)の合成
【化56】
Figure 2004175691
三口フラスコに実施例1の(1)で得られたジブロモ体2.95mmol、実施例2の(1)で得られたホウ素体11.8mmolを入れ、トルエン100mlとエタノール30mlと水5mlの混合溶液に溶解させ、窒素気流下室温で10分撹拌し、燐酸カリウム(KPO)8.85mmolを入れたあと燐酸カリウム(10mol%)が溶解するまで水を加え、さらにパラジウム触媒(20%mol)を加えた。反応温度を60℃に24時間反応させた。反応終了後、水洗いし有機層を回収、エバポレーターで溶媒除去したのち、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒、ジクロロメタン+1%メタノール)にて精製し、メタノールで再結晶を行った。収率54.8%。構造はIRスペクトル(図4)、H−NMRスペクトル(図5)、元素分析にて行った。図6の点線は、実施例2の3,8−ジ−(1−ナフチル)フェナントロリン薄膜の吸収スペクトルを示し、図6の実線はその蛍光スペクトルを示す。
【0019】
実施例3
(1)2−(2−ナフチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2−NaDOB)の合成
【化57】
Figure 2004175691
三口フラスコに1−ブロモナフタレン、乾燥テトラヒドロフラン(dryTHF)を加えた室温、窒素気流下10分撹拌し、ドライアイスアセトン溶液で冷却したのち、さらに10分撹拌した。10分後n−BuLi溶液をゆっくりと滴下し、滴下後、20分撹拌し一旦0℃まで冷却した。0℃で10分撹拌した後再びドライアイスアセトン溶液にて−78℃に冷却し、10分撹拌してDOBを一気に加え室温で24時間反応させた。反応終了後、水洗し有機層を回収してエバポレーターで溶媒を除去後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒、クロロホルム:ヘキサン=1:3)で精製しヘキサン溶液で再結晶を行い精製した。構造はIRスペクトル、H−NMRスペクトル、元素分析にて同定した。
【0020】
(2)3,8−ジ−(2−ナフチル)フェナントロリン(D−2NaPhen)の合成
実施例1の(1)で得られたジブロモ体2.95mmol、実施例3の(1)で得られたホウ素体11.8mmol、KPO8.85mmol、Pd〔P(Ph)20mmol、トルエン100ml、エタノール30ml、水5mlを用いて、実施例2の(2)に準じて合成した。同定は、IRスペクトル(図7)、H−NMRスペクトル(図8)で行った。図9の点線は、3,8−ジ−(2−ナフチル)フェナントロリン薄膜の吸収スペクトルを示し、図9の実線は同薄膜の蛍光スペクトルを示す。
【化58】
Figure 2004175691
【0021】
実施例4
(1)9−アンスリルボラン酸(9−AbA)の合成
【化59】
Figure 2004175691
三口フラスコに9−ブロモアントラセン58.3mmol、乾燥テトラヒドロフラン(dryTHF)100mlを入れ室温、窒素気流中15分撹拌し、ドライアイスアセトン溶液にて−78℃に冷却してさらに、10分撹拌した。10分後n−BuLi100mmol溶液をゆっくりと滴下し、30分撹拌してトリメチルボロン酸147mmolを一気に加えた。室温で20分撹拌した後、水、希塩酸水溶液の順で洗浄した。水槽をジエチルエーテルで3回抽出し、初めの有機層と合わせて、飽和食塩水にて一回水洗し、硫酸マグネシウムにて6時間ほど乾燥した。乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去し、黄色の粘液となり、室温で真空乾燥することにより橙色の固体を得た。この固体を5%アルカリ水溶液に溶解させ、吸引ろ過を何度か繰り返したろ液を回収した。このろ液に5〜10%HCl水溶液で中和〜弱酸にすることで水溶液に溶解したボロン酸が析出するため、析出したものを吸引ろ過にて回収する。吸引ろ過で十分に水気を取り、析出したものをジエチルエーテルに溶解させ、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去、室温で真空乾燥し固体を析出させた。収率67.2%。構造はIRスペクトルで同定した。
IR(KBr,cm−1)3286(−OH)883.2と725.1
【0022】
(2)9−アンスリルボラン酸を用いたジブロモフェナントロリンとのカップリング
【化60】
Figure 2004175691
三口フラスコにジブロモフェナントロリン2.0mmol、9−アントラニルホウ酸4.2mmol、ジメチルホルムアミド(DMF)100mlを入れ、窒素気流下で撹拌しながら、燐酸カリウム(KPO)8.0mmolを加え、60℃に加熱した後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム触媒Pd〔P(Ph)4.0mmol%を加え、24時間反応させた。反応終了後、水流し、有機層を回収したのち、エバポレーターで溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(展開触媒、ジクロロメタン+0.5%メタノール)で精製した。収率13.8%。構造は、IRスペクトル、H−NMRスペクトルで確認し、実施例1のものと一致した。
【0023】
実施例5
ITO/NPD/D−1NaPhen/LiF/Al素子の作成
ITO膜よりなる陰極上に、NPD〔N,N′−ジ−(1−ナフチル)−N,N′−ジフェニル−ベンジン〕を500Å厚に、ついで実施例2で得られたD−1NaPhen〔3,8−ジ−(1−ナフチル)フェナントロリン〕を600Å厚に真空蒸着した後、さらにLiFを5Åで、さらにその上にAlを1000Å厚で蒸着し、EL素子を作成した。
この素子の特性は、図10に示す。
図10に示すように、本発明のEL素子は、印加電流の変化によって色合いが微妙に変化するという特異な傾向を示すが、NPDを用いた素子やBCP(バソクフロイン)を用いた素子の場合は印加電流が変化しても、グラフが左右に移動することはなく、いいかえれば色相の変化は全く発生しない。
【0024】
実施例6
ITO/NPD/D−2NaPhen/LiF/Al素子の作成
ITO膜よりなる陰極上に、NPDを500Å厚に、ついで実施例3で得られたD−2NaPhenを600Å厚に真空蒸着した後、さらにLiFを5Åで、さらにその上にAlを1000Å厚で蒸着し、EL素子を作成した。
この素子の特性は、図11に示す。
図11に示すように、この実施例にかかる本発明のEL素子も印加電流に対応してEL素子が変化するが、NPDやBCPの場合は全く変化がない。
【0025】
比較例1
実施例1と同様の要領でITO/NPD(500Å)/BCP(700Å)/LiF(5Å)/Al(1000Å)の素子を作成した。
前記BCPは〔0002〕で述べたバソクフロイン(bathocuproine)である。
【0026】
実施例5および6のEL素子と比較例1のEL素子の物性を図12〜14に示す。図12〜14において、○印は実施例5の素子を、□印は実施例6の素子を、△印は比較例1の素子をそれぞれ示している。図12はそれぞれのルミネッセンス強度と電圧の関係を、図13はそれぞれの電流密度の電圧の関係を図14はそれぞれのルミネッセンス強度と電流密度の関係を示す。
実施例2で得られたα−NPhenを用いた素子からは、450nm付近にピークを有する水色発光が観察され、最高輝度3600cd/m@12.5V、最大視感効率0.44lm/W@8.5V、最大電流効率1.22cd/A(印加電圧8.5V)、外部量子効率0.81%であった。また、図10からわかるように電流量により若干短波長に変化した。これらのELスペクトルはNPDやD−1NaPhenのPLスペクトル(λmax=400nm)とも一致していないため、NPDとD−1NaPhenのエキシプレックスからの発光と考えられ、高電流密度下において再結合領域が変化していることが考えられる。
実施例3で得られたD−2NaPhenを用いた素子では、500nm付近にピークを有するややブロードな発光が得られ、最高輝度3100cd/m@9.5V、最大視感効率0.53lm/W@7.5V、最大電流効率1.32cd/A@8V、最大外部量子効率0.61%であった。このELスペクトルも図11にみられるように電流量に依存してスペクトルが変化した。これもD−1NaPhen同様NPDとのエキシプレックスと考えられ、450nm付近のショルダーの増大から高電流密度下においてNPD側に再結合領域が広がっていると考えられる。
比較のため、BCPを用いた素子も作製しグラフに載せている。
【0027】
【発明の効果】
(1)本発明により、Alqに優るとも劣らない電子輸送性能を示す新規な材料を提供することができた。
(2)本発明により、新しい電子輸送材料を用いたEL素子を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた3,8−ジアントラセニルフェナントロリンのIRスペクトル図である。
【図2】実施例1で得られた3,8−ジアントラセニルフェナントロリンのH−NMRスペクトル図である。
【図3】点線は、実施例1で得られた3,8−ジアントラセニルフェナントロリンよりなる薄膜の吸収スペクトル図であり、実線は同薄膜の蛍光スペクトル図である。
【図4】実施例2で得られた3,8−ジ−(1−ナフチル)フェナントロリンのIRスペクトル図である。
【図5】実施例2で得られた3,8−ジ−(1−ナフチル)フェナントロリンのH−NMRスペクトル図である。
【図6】点線は、実施例2で得られた3,8−ジ−(1−ナフチル)フェナントロリンよりなる薄膜の吸収スペクトル図であり、実線は同薄膜の蛍光スペクトル図である。
【図7】実施例3で得られた3,8−ジ−(2−ナフチル)フェナントロリンのIRスペクトル図である。
【図8】実施例3で得られた3,8−ジ−(2−ナフチル)フェナントロリンのH−NMRスペクトル図である。
【図9】点線は、実施例3で得られた3,8−ジ−(2−ナフチル)フェナントロリンよりなる薄膜の吸収スペクトル図であり、実線は同薄膜の蛍光スペクトル図である。
【図10】実施例5のEL素子のエレクトロルミネッセンス強度と波長の関係を示すグラフである。
【図11】実施例6のEL素子のエレクトロルミネッセンス強度と波長の関係を示すグラフである。
【図12】実施例5(○印)、実施例6(□印)、比較例1(△印)のルミネッセンス強度と電圧の関係を示すグラフである。
【図13】実施例5(○印)、実施例6(□印)、比較例1(△印)の電流密度と電圧の関係を示すグラフである。
【図14】実施例5(○印)、実施例6(□印)、比較例1(△印)のルミネッセンス強度と電流密度の関係を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2004175691
    〔式中、R〜Rは水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(アルキル基で置換されていてもよい)、アラルキル基(アリール基部分がアルキル基で置換されていてもよい)、アルキルアミノ基、RCOO−(Rはアルキル基、アリール基およびアラルキル基よりなる群から選ばれる)、シアノ基および
    Figure 2004175691
    (XはO、S、SeおよびTeよりなる群から選ばれた元素であり、Aはアルキル基またはアリール基である)
    よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。〕
    で示されるフェナントロリン誘導体。
  2. 前記Qが、下記式
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    Figure 2004175691
    〔式中、R〜R59は、水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(アルキル基で置換されていてもよい)、アラルキル基(アリール基部分がアルキル基で置換されていてもよい)、アルキルアミノ基、RCOO−(Rはアルキル基、アリール基およびアラルキル基よりなる群から選ばれる)、シアノ基および
    Figure 2004175691
    (XはO、S、SeおよびTeよりなる群から選ばれた元素であり、Aはアルキル基またはアリール基である)
    よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。〕
    よりなる群から選ばれた2環以上の芳香族基である請求項1記載のフェナントロリン誘導体。
  3. 請求項1記載のフェナントロリン誘導体が下記式
    Figure 2004175691
    で示される3,8−ジアントラセニルフェナントロリンである請求項1記載のフェナントロリン誘導体。
  4. 請求項1記載のフェナントロリン誘導体が下記式、
    Figure 2004175691
    または
    Figure 2004175691
    で示される3,8−ジナフタレニルフェナントロリンである請求項1記載のフェナントロリン誘導体。
  5. 下記一般式(2)
    Figure 2004175691
    〔式中、Xはハロゲン、R〜Rは水素、アルキル基、アルコキシ基、アリール基(アルキル基で置換されていてもよい)、アラルキル基(アリール基部分がアルキル基で置換されていてもよい)、アルキルアミノ基、RCOO−(Rはアルキル基、アリール基およびアラルキル基よりなる群から選ばれる)、シアノ基および
    Figure 2004175691
    (XはO、S、SeおよびTeよりなる群から選ばれた元素であり、Aはアルキル基またはアリール基である)
    よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。〕
    で示される3,8−ジハロゲン化フェナントロリンと一般式(3)、
    Figure 2004175691
    (式中、EおよびEは、水素およびアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、またEとEがアルキル基のとき両者が一体になって環を形成してもよく、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。)
    で示されるホウ素化アリール化合物とを反応させることを特徴とする請求項1または2記載のフェナントロリン誘導体の製造方法。
  6. 前記一般式(3)の化合物が下記一般式(4)
    Figure 2004175691
    (式中、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。)
    で示される化合物である請求項5記載のフェナントロリン誘導体の製造方法。
  7. 前記一般式(3)の化合物が下記一般式(5)
    Figure 2004175691
    (式中、Qは2環以上の縮合環よりなる芳香族基である。)
    で示される化合物である請求項5記載のフェナントロリン誘導体の製造方法。
  8. 請求項1〜4いずれか記載のフェナントロリン誘導体よりなることを特徴とする電子輸送材料。
  9. 請求項1〜4いずれか記載のフェナントロリン誘導体を含有する電子輸送層をもつことを特徴とする有機EL素子。
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