JP2004175100A - 多層構造をした包装用ストレッチフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性に優れた、多層構成の非塩ビ系包装用ストレッチフィルムを提供する。
【解決手段】フィルムを多層化し、そのベース層を、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメント及び芳香族ジカルボン酸と下記一般式(1)で示されるジオールからなるポリエステルを主成分とするソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル共重合体にて形成し、両外層をエチレン酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン及びα−オレフィン共重合体等のエチレン系樹脂で形成する。
HO(CH2CH2O)nH (n=2〜5) …(1)
【選択図】 なし
【解決手段】フィルムを多層化し、そのベース層を、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメント及び芳香族ジカルボン酸と下記一般式(1)で示されるジオールからなるポリエステルを主成分とするソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル共重合体にて形成し、両外層をエチレン酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン及びα−オレフィン共重合体等のエチレン系樹脂で形成する。
HO(CH2CH2O)nH (n=2〜5) …(1)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は包装用フィルムに関する。詳しくは、多層構成の包装用ストレッチフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
包装用ストレッチフィルムは各種分野で用いられており、中でも、食品包装用途とパレット包装用途は、その主たる用途となっている。
【0003】
食品包装用ストレッチフィルムは、食品を密封するため多く用いられている。即ち、スーパーマーケット等の小売店において、例えば青果物、鮮魚、生肉、惣菜等を適当な容器に載置し、これをこのフィルムでラッピングして店頭に陳列することにより、搬送及び展示中の塵埃付着防止に効果を発揮し、また、これを購入した一般家庭等においては、冷蔵庫での保存や電子レンジでの加熱時に、内容物の乾燥防止、風味等の保持、臭気の拡散や付着の防止等の面でその効果を発揮している。
【0004】
一方、パレット包装用ストレッチフィルムは、主に産業界で、比較的大形の包装に用いられる。即ち、このフィルムはパレットに積載された物品をパレットごと包装するのに用いられ、一般的な包装としての機能の他に、荷崩れ防止等の機能をも果たしている。
【0005】
従来、食品包装用ストレッチフィルムには、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンを用いた単層フィルムが使用されてきた。特に、ポリ塩化ビニリデンを2軸延伸したフィルムは、食品包装用ストレッチフィルムとして必要な諸特性をバランス良く備えているため、実用面で好適に用いられ、今日の食品包装用ストレッチフィルムの主流となっている。
【0006】
しかし、ポリ塩化ビニリデン及びポリ塩化ビニルは、焼却すると塩化水素ガスを発生し、大気汚染の原因となることが明らかとなっており、これらの樹脂よりなるフィルムもまた、その廃棄処理について環境衛生上の重大な問題を抱えている。
【0007】
そこで、近年、ポリ塩化ビニリデンやポリ塩化ビニルを用いない、いわゆる非塩ビ系の食品包装用ストレッチフィルムの開発が進んでいるが、これらの非塩ビ系フィルムは多層構成とされることが多い。これは、塩ビ系樹脂の優れた特質を、ただ1種の樹脂で代替するのが困難であることから、各層に包装用ストレッチフィルムとして必要とされる諸特性を配分して受持たせ、それによって、塩ビ系フィルムに匹敵する性能を持たせようとするためである。
【0008】
一方、パレット包装用ストレッチフィルムには、一般に、中間層に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、両外層にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いた多層構成のフィルムが用いられている。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−105214号公報(第2頁、特許請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、食品包装用、パレット包装用のいずれの多層フィルムにおいても、これらのフィルムに必要とされる諸特性、即ち、食品包装用ストレッチフィルムでは復元性と包装機械適性の面において、パレット包装用ストレッチフィルムでは延伸性と結束性の面において、それぞれ満足する性能を有し、かつコスト的にも見合うものはいまだに得られていない。
【0011】
食品包装用ストレッチフィルムにおいて、その復元性と包装機械適性は重用な要素である。即ち、フィルムの復元性が悪いと、例えば容器に内容物を載置してラッピングしたストレッチフィルムを指等で押圧した場合に、押し跡が残るため包装物の外観を損ねることとなる。また、包装機械適性が悪いと、自動包装機を用いて大量にラッピングをする場合に、フィルムがスムーズに繰出されなかったり切断できなかったり、フィルム表面にシワがよったような状態でラッピングされる等のトラブルを起こすこととなる。食品包装用ストレッチフィルムの主たる需要者である小売店等においては、包装物の外観を重視し、かつ、大量にラッピングを行う必要があるため、このような欠点は大きな問題となるのである。
【0012】
また、パレット包装用ストレッチフィルムにおいては、延伸性と結束性が重要な要素となる。即ち、パレットごと物品を包装して、荷崩れがしないようにするためには、フィルムをムラなく、そして切れることなく延伸する必要があると同時に、包装した物品をしっかりと保持するための結束性も要求されるからである。
【0013】
従って、上記各性質、即ち、延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性に優れたストレッチフィルムは、食品包装用、パレット包装用として好適であり、ひいては、包装機械を用いて大量に包装される小型物品から大型物品まで、各種包装用途に好適なものと言うことができる。
【0014】
本発明は、以上のような点を踏まえ、延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性に優れ、かつ、低コストで製造できる多層構成の非塩ビ系包装用ストレッチフィルムを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定のハードセグメント及びソフトセグメントをブロック共重合させて得られるポリエステル共重合体にてベース層が形成された多層フィルムは、上記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
即ち、本発明の包装用多層フィルムは、ベース層が、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメント及び芳香族ジカルボン酸と下記一般式(1)で示されるジオールからなるポリエステルを主成分とするソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル共重合体にて形成されることを特徴とする。
【0017】
【化2】
HO(CH2CH2O)nH (n=2〜5) …(1)
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の多層フィルムにおいて、ベース層を形成するポリエステルブロック共重合体は、特定のハードセグメントとソフトセグメントからなる。ここで、ハードセグメントとは、結晶性を有し、主としてフィルムの剛性に寄与する成分であり、ソフトセグメントとは、柔軟性を有し、主としてフィルムの柔軟性に寄与する成分である。
【0020】
本発明では、このハードセグメントの主成分をポリテトラメチレンテレフタレートとする。ポリテトラメチレンテレフタレートのジカルボン酸成分はテレフタル酸、ジオール成分はテトラメチレングリコールである。もっとも、これらの成分以外に、例えば、ジカルボン酸成分としては、ベンゼン環もしくはナフタレン環を有する芳香族ジカルボン酸、又は炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸等が、ジオール成分としては、炭素数2〜12の脂肪族ジオール又はシクロヘキサンジメタノールに代表される脂環族ジオール等が、ハードセグメントの成分として共重合されていてもよい。
【0021】
ただし、テレフタル酸及びテトラメチレングリコール以外の成分の共重合割合が高くなると、ハードセグメントの結晶性は低く、柔軟性は高くなる。このため、これとソフトセグメントとが構成するポリエステルブロック共重合体、そしてこのポリエステルブロック共重合体にて形成されるベース層を有するフィルムの柔軟性も高くなり、腰が弱くなって、結束性や包装機械適性に劣るものとなる。従って、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分及びテトラメチレングリコール以外のジオール成分の和は、全カルボン酸成分に対して40モル%未満、好ましくは30モル%未満であることを要する。
【0022】
また、ハードセグメントの結晶性が低くなると、これが構成するポリエステルブロック共重合体の融点も低くなる。従って、食品包装用途などにおいて包装物を電子レンジで加熱する必要等から、本発明のフィルムに耐熱性が要求される場合には、この点からも、テレフタル酸やテトラメチレングリコール以外の成分のハードセグメントへの共重合割合を抑える必要が生じる。この場合には、ベース層を形成するポリエステルブロック共重合体の融点を少なくとも150℃以上、特に160℃以上とすることが望ましい。
【0023】
一方、ハードセグメントと共にポリエステルブロック共重合体を構成するソフドセグメントについて、本発明は、その主成分をテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸と一般式(1)で示されるジオールからなるポリエステルとする。この場合も、これらの成分以外に、例えば、ジカルボン酸成分としては炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸、又はシクロヘキサンジカルボン酸に代表される脂環族ジカルボン酸等が、ジオール成分としては炭素数2〜12の脂肪族ジオール等が、ソフトセグメントの成分として共重合されていてもよい。
【0024】
ただし、芳香族ジカルボン酸及び一般式(1)で示されるジオール以外の成分の共重合割合が高くなると、ソフトセグメントの柔軟性は低くなる。このため、これとハードセグメントとが構成するポリエステルブロック共重合体も十分な柔軟性が得られなくなり、このポリエステルブロック共重合体にて形成されるベース層を有するフィルムは硬くて延伸性、復元性及び包装機械適性に劣るものとなる。従って、芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分及び一般式(1)で示されるジオール以外のジオール成分の和は、全カルボン酸成分に対して40モル%未満であることを要する。
【0025】
ハードセグメントとソフトセグメントの重量比は、ポリエステル共重合体全体を100とした場合に、20〜70対80〜30であることが望ましい。ハードセグメントが70重量部を超えた場合、通常、これらにより構成されるポリエステル共重合体の柔軟性は最適な範囲よりも低くなって、このポリエステル共重合体にてベース層が形成される本発明の多層フィルムは硬くて延伸性、復元性及び包装機械適性に劣るものとなる。また、ソフトセグメントが80重量部を超えた場合、通常、これらにより構成されるポリエステル共重合体の柔軟性は最適な範囲よりも高くなるため、このポリエステル共重合体にてベース層が形成される本発明の多層フィルムは腰が弱く、結束性や包装機械適性に劣るものとなる。この重量比は、特に25〜50対75〜50であることが望ましい。
【0026】
以上のようなポリエステル共重合体は、東洋紡績(株)製「ベルプレン」、デュポン社製「ハイトレル」、帝人化成(株)製「ヌーベラン」、日本合成化学(株)製「フレクマー」等として市販されており、容易に入手することができる。しかし、本発明の多層フィルムにおいては、上記した条件を具備するポリエステル共重合体であれば、上記市販品に限らずどのようなものでも、ベース層を形成するポリエステル共重合体として使用することができる。
【0027】
本発明の多層フィルムにおいて、両外層は、環境上及び衛生上の観点からエチレン系樹脂を主体として形成することが好ましい。この場合において、それぞれの外層を形成するエチレン系樹脂の種類や組成・混合割合等は、同じでも異なっていても構わない。
【0028】
かかるエチレン系樹脂として、例えばEVA、低密度ポリエチレン(LDPE)、LLDPE、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、α−オレフィン共重合体又はこれらの混合物等を使用することができる。また、これらは、メタロセン系触媒を用いて合成されたLDPE(M−LDPE)、LLDPE(M−LLDPE)又はVLDPE(M−VLDPE)等、シングルサイト系触媒を用いて合成されたものでも構わない。α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、ブテン−1−ヘキセン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1−オクテン−1共重合体、ブテン−1−ヘキセン−1−オクテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1−4−メチルペンテン−1共重合体等を好適に使用することができる。
【0029】
上記エチレン系樹脂の中では、包装用ストレッチフィルムの最外層として適当な柔軟性、粘着性及び低温ヒートシール性を有するという点で、EVA、特に酢酸ビニル含有率10〜30重量%のEVAが、本発明の多層フィルムの両外層を形成する樹脂として好ましい。一方、他のエチレン系樹脂、即ち、LDPE、LLDPE、VLDPE、α−オレフィン共重合体にて両外層を形成する場合には、低温ヒートシール性の観点から、できるだけ融点の低いものを選ぶことが望ましい。また、これらのエチレン系樹脂同士を2種以上混合することで、柔軟性、粘着性及び/又は低温ヒートシール性等の、包装用ストレッチフィルム最外層に求められる特性を相互に補完し、使用することもできる。
【0030】
本発明の多層フィルムにおいては、再生樹脂を使用することもできる。この場合において、再生樹脂は上記ベース層及び/又は両外層に混合しても、再生樹脂にて他の層を形成してもよい。再生樹脂としては、本発明の多層フィルムに必要とされる諸特性を損ねるものでない限り、いかなるもの・量でも使用することができる。しかし、コスト、廃棄物の減容化、効率性の観点から、本発明の多層フィルムの製造工程において生じる、トリミングロスを再生樹脂原料として利用することが最も好ましい。この場合において、得られる再生樹脂は、本発明のベース層とも両外層とも相溶し難いので、これらの層にこの再生樹脂を混合する場合には、ごく少量とすることが望ましい。こうしたトリミングロスを再生して再生樹脂を得る方法について特に制限はない。トリミングロスは公知の方法により再生することができる。
【0031】
本発明の多層フィルムにおいて、ベース層の厚みは、フィルム全体の厚みに対して5〜50%とすることが好ましい。これは、ベース層の機能(機械的強度、柔軟性又は剛性、耐熱性等の付与)と他の層の機能を、バランス良くフィルム自体の特性に反映させるためである。特に、ベース層がフィルム全体の厚みに対して10〜45%の厚みを有することが好ましい。
【0032】
本発明の多層フィルムは、以上に述べたベース層、両外層、再生樹脂にて形成される層に加え、他の層を有していても構わない。また、これら各層には、そのそれぞれの機能を損ねない範囲内で、包装用ストレッチフィルム全体としての性能を向上させるため、防曇剤、透明性改善剤、粘着剤、滑剤、ブロッキング防止剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0033】
例えば、本発明の多層フィルムを食品包装用ストレッチフィルムとして使用する場合には、両外層に防曇剤を添加することが好ましい。かかる防曇剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、クエン酸モノ、ジもしくはトリステアリルエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、N、Nビス(2−ヒドロキシエチル)脂肪酸アミン等の非イオン性界面活性剤を1種以上使用することができる。これらの両外層への添加量は、その添加に伴う悪影響を防止しつつ、必要な所定の効果を得るため、それぞれの層を形成する樹脂に対して1〜20重量部とすることが好ましい。
【0034】
本発明の多層フィルムは、公知のいかなる方法によっても製造することができる。しかし、操業性、安定性及び経済性等の観点からは、Tダイを用いた押出し法又は共押出し法による製造が好ましい。なお、共押出用のTダイとしては、マルチマニホールドタイプ、フィードブロックタイプのいずれでも使用することができる。
【0035】
【作用】
ストレッチフィルムの延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性の良し悪しには、そのフィルムの柔軟性あるいは剛性が大きく関わっている。そして、この柔軟性や剛性の指標となるのが、フィルムの引張り弾性率である。フィルム全体の引張り弾性率が10Mpa未満では、フィルムが柔らかすぎて伸びばかりが大きく腰がないため、結束性がなく、また、自動包装機でフィルムの繰出しや切断がスムーズにできないものとなる。一方、この弾性率が150Mpaを超えると、フィルムの剛性はあるものの硬くなりすぎるため、延伸性、復元性がなく、また、自動包装機で包装した場合には、フィルム表面にシワがよったような状態でラッピングされることとなる。
【0036】
また、フィルムの延伸性、復元性、結束性は、そのフィルムについての降伏点の有無とも相関がある。即ち、応力を加えながらフィルムを引張ってゆくと、フィルムによっては、ある一定の応力に達した時点で引張り伸びが降伏点に達する(この時の応力を『降伏点応力』、引張り伸びを『降伏点伸び』という。)が、降伏点に達した時点で、そのフィルムには回復不能な歪みが発生し、復元力が失われると共に延伸ムラが生じるようになる。従って、かかる降伏点の有無及びそのときの引張り伸びを調べることで、フィルムの延伸性、復元性、結束性を知ることができる。
【0037】
本発明においては、フィルムを多層化し、そのベース層を、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメント及び芳香族ジカルボン酸と一般式(1)で示されるジオールからなるポリエステルを主成分とするソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル共重合体にて形成し、これにより、引張り弾性率が10〜150Mpaで降伏点のないフィルム、換言すれば、包装用ストレッチフィルムとして必要な延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性を備えた非塩ビ系フィルムを与える。また、この多層フィルムの両外層は、エチレン系樹脂等の適当な樹脂で形成することにより、ベース層により与えられる延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性を妨げない柔軟性を有し、適度な低温ヒートシール性や粘着性を備えたものとすることができる。
【0038】
なお、本発明の多層フィルムは、押出し法又は共押出し法により製造しても、優れた包装機械適性を有している。
【0039】
即ち、押出し法又は共押出し法によるフィルムの製造法では、溶融した樹脂をTダイより膜状に押出した後、冷却ロールにて冷却してフィルムを形成し、形成されたフィルムは、幾つかの引張りロールにより引張られながら、巻取装置まで連続的に送られて巻き取られる。従って、その製造中、フィルムには常に巻取装置に向かってテンションがかかることとなり、フィルムを形成する樹脂は製造工程の進行方向に平行に配向しやすく(以下、この配向方向をMD方向といい、このMD方向と直角をなす方向をCD方向という。)、得られるフィルムの縦方向の強度と横方向の強度とのバランスは1:1を大きく外れることとなる。かかるフィルムは、自動包装機にて包装を行うと、包装に用いたフィルムの表面にシワが発生しやすいため、従来は、包装用ストレッチフィルムの製造に押出し法や共押出し法は用いられず、専らインフレーション法が用いられていた。
【0040】
本発明は、フィルムを多層構成とすると共に、この多層フィルムのベース層に、特定のハードセグメント及びソフトセグメントをブロック共重合させて得られる上記ポリエステル共重合体を用いることにより、かかる問題を解決し、操業性、安定性及び経済性に優れた押出し法又は共押出し法を用いて、包装用ストレッチフィルムを製造することを可能としたのである。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0042】
なお、本実施例において作成したフィルムは、以下の方法によりその性能を評価した。
【0043】
(1)引張り弾性率[Mpa]
幅1.5cm、長さ10cmの短冊型フィルムを、掴み間隔5cm、引張り速度50mm/minで引張り、MD方向又はCD方向についての応力−引張り伸び曲線(S−Sカーブ)を得る。そして得られた曲線から以下の式を用いて引張り弾性率を算出した。
【0044】
引張弾性率=H×L/(h/s)×Δ1×W×t×9.8
ここで、H:Δ1のときの荷重(kg)、L:掴み感覚(mm)、h:引張り速度(mm/min)、s:記録紙速度(mm/min)、Δ1:任意の引張伸び(mm)、W:試料幅(mm)、t:試料の厚さ(mm)を表す。値が低いほど柔軟なフィルムであることを示す。
【0045】
(2)降伏点応力[Mpa]、降伏点伸び[%]
(1)で得られた応力−引張り伸び曲線(S−Sカーブ)より求めた。なお、降伏点が発生しない場合は、「−」で表した。
【0046】
(3)破断点強度[Mpa]、破断点伸び[%]
上記(1)と同様にして得た応力−引張り伸び曲線(S−Sカーブ)より求めた。
【0047】
(4)復元性[mm]
突き上げ式自動包装機を用い、長さ25cm、幅15cm、高さ3.5cmのトレーを供試フィルムで包装した後、直径15mmの金属棒を垂直に押込み、押込まれたフィルムが元の状態に回復できる押込み深さの最大限を測定した。
【0048】
(5)応力保持率[%]
幅1.5cm、長さ10cmの短冊型フィルムを、掴み間隔5cm、引張り速度10mm/minで引張って5cm延伸した直後の応力aと、これをそのまま10分間放置したときの応力bより、以下の式を用いて求めた。
【0049】
b/a×100
なお、この値が大きいほど、そのフィルムは良い結束性を示す。
【0050】
(6)ストレッチ回復率[%]
上記(3)と同様にしてフィルムを延伸した後、荷重を除いて1日経過したときの長さcより、以下の式を用いて求めた。
【0051】
(5−c)/5×100
やはり、この値も大きいほど、そのフィルムは良い結束性を示す。
【0052】
(7)自己粘着性[g/2.5cm]
互いにエアが入らないように貼り合わせた幅25mm、長さ150mmの2枚のフィルムの一方の上から、質量300gのゴムロールを3往復させて荷重をかけ、これを圧着した後、一方のフィルムの外面を両面テープで支持板に貼りつけ、このフィルムから、圧着された他方のフィルムを300mm/分の速度で180度剥離する際に要する力を測定した
【0053】
(8)繰出し性
突き上げ式自動包装機を用い、長さ25cm、幅15cm、高さ3.5cmのトレーに牛肉100gをのせたものを幅35cmの供試フィルムで包装し、その際、搬送ベルトからフィルムがスムーズに繰出されるか否かを評価した。
【0054】
○・・・フィルムがスムーズに繰出された。
×・・・フィルムがスムーズに繰出されなかった。
【0055】
(9)包装物の表面状態
突き上げ式自動包装機を用い、長さ25cm、幅15cm、高さ3.5cmのトレーに牛肉100gをのせたものを供試フィルムで包装した後、フィルム表面のシワの発生状態を観察した。
【0056】
○・・・シワが全く発生しない。
△・・・少しシワが発生したものの、シワを修復し店頭に陳列可能である。
×・・・多量のシワが発生し、修復不可能である。
【0057】
(10)包装機械適性
上記(8)及び(9)の項目における評価結果を総合して、包装機械適性を評価した。
【0058】
○・・・上記項目の評価結果が全て○である。
△・・・上記項目の中、二つの項目の評価結果が○である。
×・・・上記項目の中、一つの項目の評価結果のみが○である。
【0059】
(11)ヒートシール性
突き上げ式自動包装機を用い、長さ25cm、幅15cm、高さ3.5cmのトレーを供試フィルムで包装し、温度85℃にてこのトレーの裏面でヒートシールを行い、そのシール状態を評価した。
【0060】
○・・・供試フィルムとトレー裏面が密着していた。
×・・・供試フィルムとトレー裏面が密着していなかった。
【0061】
(12)耐熱性[℃]
東京都条例1027号「ラップフィルムの品質表示」に準じて測定した(幅3cm、長さ14cmの短冊型フィルム試片の上下2.5cmを狭持し、下部に10gの荷重を懸け、この状態で加熱雰囲気下に1時間放置して、フィルムが切れない最高温度を10℃単位で測定。)。
【0062】
(13)透明性[%]
幅5cm、長さ5cmの正方形の供試フィルムにつき、(株)村上色彩技術研究所製ヘイズメーターにて測定した。
【0063】
(14)防曇性
90℃の熱湯を30cc入れたガラスコップ(直径5cm、高さ10cm)に、供試フィルム(幅10cm、長さ10cm)を1分間密着させた後、フィルム裏側の状態を観察した。
【0064】
○・・・全く曇っていない。
△・・・少し曇っていた。
×・・・曇っていて中の状態が全く見えない。
【0065】
[実施例1]
一般式(1)で示される融点210℃のポリエステルブロック共重合体(帝人化成(株)社製『ヌーベランP4110AN』)をベース層、エチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル(株)社製『エバフレックスP1907』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物を両外層として、共押出しTダイ法にて3層構造のフィルムを製造した。
【0066】
得られた3層フィルムの全厚みは12μm、各層厚は、外層5μm:ベース層2μm:外層5μm(1:0.4:1)であった。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0067】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0068】
[実施例2]
各層厚を外層4μm:ベース層4μm:外層4μm(1:1:1)とした他は、実施例1と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0069】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0070】
[実施例3]
一般式(1)で示される融点210℃のポリエステルブロック共重合体(帝人化成(株)社製『ヌーベランP4110AN』)をベース層、エチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル(株)社製『エバフレックスP1907』)97重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)3重量部を配合した樹脂組成物を両外層として、共押出しTダイ法にて3層構造のフィルムを製造した。
【0071】
得られた3層フィルムの全厚みは18μm、各層厚は、外層6μm:ベース層6μm:外層6μm(1:1:1)であった。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0072】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0073】
[実施例4]
各層厚を外層3μm:ベース層6μm:外層3μm(1:2:1)とした他は、実施例1と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0074】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0075】
[実施例5]
各層厚を外層4.5μm:ベース層9μm:外層4.5μm(1:2:1)とした他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0076】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0077】
[実施例6]
各層厚を外層2μm:ベース層8μm:外層2μm(1:4:1)とした他は、実施例1と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0078】
表1より明らかなように、得られたフィルムは自己粘着性が強すぎるため繰出し性が悪く、その点で包装機械適性はやや劣るものであったが、延伸性、復元性に優れると共に耐熱性も備え、更に透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0079】
[実施例7]
各層厚を外層7.2μm:ベース層3.6μm:外層7.2μm(2:1:2)とした他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0080】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0081】
[実施例8]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNH725N』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例2と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0082】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0083】
[実施例9]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNH725N』)97重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)3重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0084】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0085】
[実施例10]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNC544A』)97重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)3重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0086】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0087】
[実施例11]
フィルムの全厚みを15μmとした以外は、実施例10と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0088】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0089】
[実施例12]
各層厚を外層3μm:ベース層6μm:外層3μm(1:2:1)とした他は、実施例8と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0090】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0091】
[実施例13]
各層厚を外層2μm:ベース層8μm:外層2μm(1:4:1)とした他は、実施例8と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0092】
表1より明らかなように、得られたフィルムは自己粘着性が強すぎるため繰出し性が悪く、その点で包装機械適性はやや劣るものであったが、延伸性、復元性に優れると共に耐熱性も備え、更に透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0093】
[実施例14]
ベース層と一方の外層との間に、再生樹脂のみにて形成した層を配した他は、実施例1と同様に、共押出しTダイ法にて4層構造のフィルムを製造した。なお、再生樹脂としては、本実施例で得られた4層フィルムのトリミングロスを再生して得られたペレットを使用した。
【0094】
得られた4層フィルムの全厚みは12μm、各層厚は、外層2.8μm:再生樹脂層2.4μm:ベース層4μm:外層2.8μm(0.7:0.6:1:0.7)であった。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0095】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0096】
[実施例15]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNH725N』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例14と同様にして4層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0097】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0098】
[実施例16]
ベース層とそれぞれの外層との間に、再生樹脂のみにて形成した層を配した他は、実施例1と同様に、共押出しTダイ法にて5層構造のフィルムを製造した。なお、再生樹脂としては、本実施例で得られた5層フィルムのトリミングロスを再生して得られたペレットを使用した。
【0099】
得られた5層フィルムの全厚みは12μm、各層厚は、外層2.8μm:再生樹脂層1.2μm:ベース層4μm:再生樹脂層1.2μm:外層2.8μm(0.7:0.3:1:0.3:0.7)であった。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0100】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0101】
[実施例17]
各層厚を外層2.8μm:再生樹脂層2μm:ベース層2.4μm:再生樹脂層2μm:外層2.8μm(1.17:0.83:1:0.83:1.17)とした他は、実施例16と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0102】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0103】
[実施例18]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNH725N』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例16と同様にして5層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0104】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0105】
[比較例1]
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル(株)社製『エバフレックスP1907』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物をベース層、融点210℃のポリエステルブロック共重合体(帝人化成(株)社製『ヌーベランP4110AN』)を両外層とした他は、実施例2と同様にして3層構造のフィルムを作成した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0106】
表2より明らかなように、得られたフィルムは延伸性及び復元性に優れ、耐熱性も備えており、透明性も満足するものであったが、自己粘着性が強すぎて繰出し性が悪く、包装物表面にはシワが多数発生して包装機械適性に劣り、防曇性も有しないものであった。
【0107】
[比較例2]
融点142℃のリアクターポリプロピレン(モンテルエスディケイサンライズ(株)社製『キャタロイC200F』)をベース層とした他は、実施例2と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0108】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、透明性と防曇性は満足するものであったが、CD方向の引張りに対して降伏点を有しており、延伸性及び復元性が悪く、また、包装物表面にシワがやや発生した点で包装機械適性に劣り、耐熱性にもやや劣るものであった。
【0109】
[比較例3]
融点142℃のリアクターポリプロピレン(モンテルエスディケイサンライズ(株)社製『キャタロイC200F』)をベース層とした他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0110】
表2より明らかなように、得られたフィルムはCD方向の引張りに対して降伏点を有し、延伸性に劣るものであった。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、非塩ビ系のストレッチフィルムでありながら、延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性に優れた包装用ストレッチフィルムを得ることができる。また、このフィルムには、かかる特性を保持しつつ、耐熱性、適度な低温ヒートシール性、粘着性その他の特性を付与することができる。
【0114】
しかも、これらのフィルムは、押出し法又は共押出し法によって製造することができる。
【0115】
従って、本発明によれば、包装物の外観が重視され、かつ、自動包装機を用いて大量にラッピングをする必要のある小売店等においても実用可能な、包装用ストレッチフィルムを経済的に得ることができる。また、この包装用ストレッチフィルムは、パレットに積載された物品をパレットごと包装する場合においても実用可能で、荷崩れ等を起こさない。
【0116】
即ち、本発明によれば、包装機械を用いて大量に包装される小型物品から大型物品まで、各種包装用途に好適な包装用ストレッチフィルムを経済的に得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は包装用フィルムに関する。詳しくは、多層構成の包装用ストレッチフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
包装用ストレッチフィルムは各種分野で用いられており、中でも、食品包装用途とパレット包装用途は、その主たる用途となっている。
【0003】
食品包装用ストレッチフィルムは、食品を密封するため多く用いられている。即ち、スーパーマーケット等の小売店において、例えば青果物、鮮魚、生肉、惣菜等を適当な容器に載置し、これをこのフィルムでラッピングして店頭に陳列することにより、搬送及び展示中の塵埃付着防止に効果を発揮し、また、これを購入した一般家庭等においては、冷蔵庫での保存や電子レンジでの加熱時に、内容物の乾燥防止、風味等の保持、臭気の拡散や付着の防止等の面でその効果を発揮している。
【0004】
一方、パレット包装用ストレッチフィルムは、主に産業界で、比較的大形の包装に用いられる。即ち、このフィルムはパレットに積載された物品をパレットごと包装するのに用いられ、一般的な包装としての機能の他に、荷崩れ防止等の機能をも果たしている。
【0005】
従来、食品包装用ストレッチフィルムには、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンを用いた単層フィルムが使用されてきた。特に、ポリ塩化ビニリデンを2軸延伸したフィルムは、食品包装用ストレッチフィルムとして必要な諸特性をバランス良く備えているため、実用面で好適に用いられ、今日の食品包装用ストレッチフィルムの主流となっている。
【0006】
しかし、ポリ塩化ビニリデン及びポリ塩化ビニルは、焼却すると塩化水素ガスを発生し、大気汚染の原因となることが明らかとなっており、これらの樹脂よりなるフィルムもまた、その廃棄処理について環境衛生上の重大な問題を抱えている。
【0007】
そこで、近年、ポリ塩化ビニリデンやポリ塩化ビニルを用いない、いわゆる非塩ビ系の食品包装用ストレッチフィルムの開発が進んでいるが、これらの非塩ビ系フィルムは多層構成とされることが多い。これは、塩ビ系樹脂の優れた特質を、ただ1種の樹脂で代替するのが困難であることから、各層に包装用ストレッチフィルムとして必要とされる諸特性を配分して受持たせ、それによって、塩ビ系フィルムに匹敵する性能を持たせようとするためである。
【0008】
一方、パレット包装用ストレッチフィルムには、一般に、中間層に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、両外層にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いた多層構成のフィルムが用いられている。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−105214号公報(第2頁、特許請求の範囲)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、食品包装用、パレット包装用のいずれの多層フィルムにおいても、これらのフィルムに必要とされる諸特性、即ち、食品包装用ストレッチフィルムでは復元性と包装機械適性の面において、パレット包装用ストレッチフィルムでは延伸性と結束性の面において、それぞれ満足する性能を有し、かつコスト的にも見合うものはいまだに得られていない。
【0011】
食品包装用ストレッチフィルムにおいて、その復元性と包装機械適性は重用な要素である。即ち、フィルムの復元性が悪いと、例えば容器に内容物を載置してラッピングしたストレッチフィルムを指等で押圧した場合に、押し跡が残るため包装物の外観を損ねることとなる。また、包装機械適性が悪いと、自動包装機を用いて大量にラッピングをする場合に、フィルムがスムーズに繰出されなかったり切断できなかったり、フィルム表面にシワがよったような状態でラッピングされる等のトラブルを起こすこととなる。食品包装用ストレッチフィルムの主たる需要者である小売店等においては、包装物の外観を重視し、かつ、大量にラッピングを行う必要があるため、このような欠点は大きな問題となるのである。
【0012】
また、パレット包装用ストレッチフィルムにおいては、延伸性と結束性が重要な要素となる。即ち、パレットごと物品を包装して、荷崩れがしないようにするためには、フィルムをムラなく、そして切れることなく延伸する必要があると同時に、包装した物品をしっかりと保持するための結束性も要求されるからである。
【0013】
従って、上記各性質、即ち、延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性に優れたストレッチフィルムは、食品包装用、パレット包装用として好適であり、ひいては、包装機械を用いて大量に包装される小型物品から大型物品まで、各種包装用途に好適なものと言うことができる。
【0014】
本発明は、以上のような点を踏まえ、延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性に優れ、かつ、低コストで製造できる多層構成の非塩ビ系包装用ストレッチフィルムを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定のハードセグメント及びソフトセグメントをブロック共重合させて得られるポリエステル共重合体にてベース層が形成された多層フィルムは、上記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
即ち、本発明の包装用多層フィルムは、ベース層が、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメント及び芳香族ジカルボン酸と下記一般式(1)で示されるジオールからなるポリエステルを主成分とするソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル共重合体にて形成されることを特徴とする。
【0017】
【化2】
HO(CH2CH2O)nH (n=2〜5) …(1)
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の多層フィルムにおいて、ベース層を形成するポリエステルブロック共重合体は、特定のハードセグメントとソフトセグメントからなる。ここで、ハードセグメントとは、結晶性を有し、主としてフィルムの剛性に寄与する成分であり、ソフトセグメントとは、柔軟性を有し、主としてフィルムの柔軟性に寄与する成分である。
【0020】
本発明では、このハードセグメントの主成分をポリテトラメチレンテレフタレートとする。ポリテトラメチレンテレフタレートのジカルボン酸成分はテレフタル酸、ジオール成分はテトラメチレングリコールである。もっとも、これらの成分以外に、例えば、ジカルボン酸成分としては、ベンゼン環もしくはナフタレン環を有する芳香族ジカルボン酸、又は炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸等が、ジオール成分としては、炭素数2〜12の脂肪族ジオール又はシクロヘキサンジメタノールに代表される脂環族ジオール等が、ハードセグメントの成分として共重合されていてもよい。
【0021】
ただし、テレフタル酸及びテトラメチレングリコール以外の成分の共重合割合が高くなると、ハードセグメントの結晶性は低く、柔軟性は高くなる。このため、これとソフトセグメントとが構成するポリエステルブロック共重合体、そしてこのポリエステルブロック共重合体にて形成されるベース層を有するフィルムの柔軟性も高くなり、腰が弱くなって、結束性や包装機械適性に劣るものとなる。従って、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分及びテトラメチレングリコール以外のジオール成分の和は、全カルボン酸成分に対して40モル%未満、好ましくは30モル%未満であることを要する。
【0022】
また、ハードセグメントの結晶性が低くなると、これが構成するポリエステルブロック共重合体の融点も低くなる。従って、食品包装用途などにおいて包装物を電子レンジで加熱する必要等から、本発明のフィルムに耐熱性が要求される場合には、この点からも、テレフタル酸やテトラメチレングリコール以外の成分のハードセグメントへの共重合割合を抑える必要が生じる。この場合には、ベース層を形成するポリエステルブロック共重合体の融点を少なくとも150℃以上、特に160℃以上とすることが望ましい。
【0023】
一方、ハードセグメントと共にポリエステルブロック共重合体を構成するソフドセグメントについて、本発明は、その主成分をテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸と一般式(1)で示されるジオールからなるポリエステルとする。この場合も、これらの成分以外に、例えば、ジカルボン酸成分としては炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸、又はシクロヘキサンジカルボン酸に代表される脂環族ジカルボン酸等が、ジオール成分としては炭素数2〜12の脂肪族ジオール等が、ソフトセグメントの成分として共重合されていてもよい。
【0024】
ただし、芳香族ジカルボン酸及び一般式(1)で示されるジオール以外の成分の共重合割合が高くなると、ソフトセグメントの柔軟性は低くなる。このため、これとハードセグメントとが構成するポリエステルブロック共重合体も十分な柔軟性が得られなくなり、このポリエステルブロック共重合体にて形成されるベース層を有するフィルムは硬くて延伸性、復元性及び包装機械適性に劣るものとなる。従って、芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分及び一般式(1)で示されるジオール以外のジオール成分の和は、全カルボン酸成分に対して40モル%未満であることを要する。
【0025】
ハードセグメントとソフトセグメントの重量比は、ポリエステル共重合体全体を100とした場合に、20〜70対80〜30であることが望ましい。ハードセグメントが70重量部を超えた場合、通常、これらにより構成されるポリエステル共重合体の柔軟性は最適な範囲よりも低くなって、このポリエステル共重合体にてベース層が形成される本発明の多層フィルムは硬くて延伸性、復元性及び包装機械適性に劣るものとなる。また、ソフトセグメントが80重量部を超えた場合、通常、これらにより構成されるポリエステル共重合体の柔軟性は最適な範囲よりも高くなるため、このポリエステル共重合体にてベース層が形成される本発明の多層フィルムは腰が弱く、結束性や包装機械適性に劣るものとなる。この重量比は、特に25〜50対75〜50であることが望ましい。
【0026】
以上のようなポリエステル共重合体は、東洋紡績(株)製「ベルプレン」、デュポン社製「ハイトレル」、帝人化成(株)製「ヌーベラン」、日本合成化学(株)製「フレクマー」等として市販されており、容易に入手することができる。しかし、本発明の多層フィルムにおいては、上記した条件を具備するポリエステル共重合体であれば、上記市販品に限らずどのようなものでも、ベース層を形成するポリエステル共重合体として使用することができる。
【0027】
本発明の多層フィルムにおいて、両外層は、環境上及び衛生上の観点からエチレン系樹脂を主体として形成することが好ましい。この場合において、それぞれの外層を形成するエチレン系樹脂の種類や組成・混合割合等は、同じでも異なっていても構わない。
【0028】
かかるエチレン系樹脂として、例えばEVA、低密度ポリエチレン(LDPE)、LLDPE、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、α−オレフィン共重合体又はこれらの混合物等を使用することができる。また、これらは、メタロセン系触媒を用いて合成されたLDPE(M−LDPE)、LLDPE(M−LLDPE)又はVLDPE(M−VLDPE)等、シングルサイト系触媒を用いて合成されたものでも構わない。α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、ブテン−1−ヘキセン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1−オクテン−1共重合体、ブテン−1−ヘキセン−1−オクテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1−4−メチルペンテン−1共重合体等を好適に使用することができる。
【0029】
上記エチレン系樹脂の中では、包装用ストレッチフィルムの最外層として適当な柔軟性、粘着性及び低温ヒートシール性を有するという点で、EVA、特に酢酸ビニル含有率10〜30重量%のEVAが、本発明の多層フィルムの両外層を形成する樹脂として好ましい。一方、他のエチレン系樹脂、即ち、LDPE、LLDPE、VLDPE、α−オレフィン共重合体にて両外層を形成する場合には、低温ヒートシール性の観点から、できるだけ融点の低いものを選ぶことが望ましい。また、これらのエチレン系樹脂同士を2種以上混合することで、柔軟性、粘着性及び/又は低温ヒートシール性等の、包装用ストレッチフィルム最外層に求められる特性を相互に補完し、使用することもできる。
【0030】
本発明の多層フィルムにおいては、再生樹脂を使用することもできる。この場合において、再生樹脂は上記ベース層及び/又は両外層に混合しても、再生樹脂にて他の層を形成してもよい。再生樹脂としては、本発明の多層フィルムに必要とされる諸特性を損ねるものでない限り、いかなるもの・量でも使用することができる。しかし、コスト、廃棄物の減容化、効率性の観点から、本発明の多層フィルムの製造工程において生じる、トリミングロスを再生樹脂原料として利用することが最も好ましい。この場合において、得られる再生樹脂は、本発明のベース層とも両外層とも相溶し難いので、これらの層にこの再生樹脂を混合する場合には、ごく少量とすることが望ましい。こうしたトリミングロスを再生して再生樹脂を得る方法について特に制限はない。トリミングロスは公知の方法により再生することができる。
【0031】
本発明の多層フィルムにおいて、ベース層の厚みは、フィルム全体の厚みに対して5〜50%とすることが好ましい。これは、ベース層の機能(機械的強度、柔軟性又は剛性、耐熱性等の付与)と他の層の機能を、バランス良くフィルム自体の特性に反映させるためである。特に、ベース層がフィルム全体の厚みに対して10〜45%の厚みを有することが好ましい。
【0032】
本発明の多層フィルムは、以上に述べたベース層、両外層、再生樹脂にて形成される層に加え、他の層を有していても構わない。また、これら各層には、そのそれぞれの機能を損ねない範囲内で、包装用ストレッチフィルム全体としての性能を向上させるため、防曇剤、透明性改善剤、粘着剤、滑剤、ブロッキング防止剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0033】
例えば、本発明の多層フィルムを食品包装用ストレッチフィルムとして使用する場合には、両外層に防曇剤を添加することが好ましい。かかる防曇剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、クエン酸モノ、ジもしくはトリステアリルエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、N、Nビス(2−ヒドロキシエチル)脂肪酸アミン等の非イオン性界面活性剤を1種以上使用することができる。これらの両外層への添加量は、その添加に伴う悪影響を防止しつつ、必要な所定の効果を得るため、それぞれの層を形成する樹脂に対して1〜20重量部とすることが好ましい。
【0034】
本発明の多層フィルムは、公知のいかなる方法によっても製造することができる。しかし、操業性、安定性及び経済性等の観点からは、Tダイを用いた押出し法又は共押出し法による製造が好ましい。なお、共押出用のTダイとしては、マルチマニホールドタイプ、フィードブロックタイプのいずれでも使用することができる。
【0035】
【作用】
ストレッチフィルムの延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性の良し悪しには、そのフィルムの柔軟性あるいは剛性が大きく関わっている。そして、この柔軟性や剛性の指標となるのが、フィルムの引張り弾性率である。フィルム全体の引張り弾性率が10Mpa未満では、フィルムが柔らかすぎて伸びばかりが大きく腰がないため、結束性がなく、また、自動包装機でフィルムの繰出しや切断がスムーズにできないものとなる。一方、この弾性率が150Mpaを超えると、フィルムの剛性はあるものの硬くなりすぎるため、延伸性、復元性がなく、また、自動包装機で包装した場合には、フィルム表面にシワがよったような状態でラッピングされることとなる。
【0036】
また、フィルムの延伸性、復元性、結束性は、そのフィルムについての降伏点の有無とも相関がある。即ち、応力を加えながらフィルムを引張ってゆくと、フィルムによっては、ある一定の応力に達した時点で引張り伸びが降伏点に達する(この時の応力を『降伏点応力』、引張り伸びを『降伏点伸び』という。)が、降伏点に達した時点で、そのフィルムには回復不能な歪みが発生し、復元力が失われると共に延伸ムラが生じるようになる。従って、かかる降伏点の有無及びそのときの引張り伸びを調べることで、フィルムの延伸性、復元性、結束性を知ることができる。
【0037】
本発明においては、フィルムを多層化し、そのベース層を、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするハードセグメント及び芳香族ジカルボン酸と一般式(1)で示されるジオールからなるポリエステルを主成分とするソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル共重合体にて形成し、これにより、引張り弾性率が10〜150Mpaで降伏点のないフィルム、換言すれば、包装用ストレッチフィルムとして必要な延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性を備えた非塩ビ系フィルムを与える。また、この多層フィルムの両外層は、エチレン系樹脂等の適当な樹脂で形成することにより、ベース層により与えられる延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性を妨げない柔軟性を有し、適度な低温ヒートシール性や粘着性を備えたものとすることができる。
【0038】
なお、本発明の多層フィルムは、押出し法又は共押出し法により製造しても、優れた包装機械適性を有している。
【0039】
即ち、押出し法又は共押出し法によるフィルムの製造法では、溶融した樹脂をTダイより膜状に押出した後、冷却ロールにて冷却してフィルムを形成し、形成されたフィルムは、幾つかの引張りロールにより引張られながら、巻取装置まで連続的に送られて巻き取られる。従って、その製造中、フィルムには常に巻取装置に向かってテンションがかかることとなり、フィルムを形成する樹脂は製造工程の進行方向に平行に配向しやすく(以下、この配向方向をMD方向といい、このMD方向と直角をなす方向をCD方向という。)、得られるフィルムの縦方向の強度と横方向の強度とのバランスは1:1を大きく外れることとなる。かかるフィルムは、自動包装機にて包装を行うと、包装に用いたフィルムの表面にシワが発生しやすいため、従来は、包装用ストレッチフィルムの製造に押出し法や共押出し法は用いられず、専らインフレーション法が用いられていた。
【0040】
本発明は、フィルムを多層構成とすると共に、この多層フィルムのベース層に、特定のハードセグメント及びソフトセグメントをブロック共重合させて得られる上記ポリエステル共重合体を用いることにより、かかる問題を解決し、操業性、安定性及び経済性に優れた押出し法又は共押出し法を用いて、包装用ストレッチフィルムを製造することを可能としたのである。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0042】
なお、本実施例において作成したフィルムは、以下の方法によりその性能を評価した。
【0043】
(1)引張り弾性率[Mpa]
幅1.5cm、長さ10cmの短冊型フィルムを、掴み間隔5cm、引張り速度50mm/minで引張り、MD方向又はCD方向についての応力−引張り伸び曲線(S−Sカーブ)を得る。そして得られた曲線から以下の式を用いて引張り弾性率を算出した。
【0044】
引張弾性率=H×L/(h/s)×Δ1×W×t×9.8
ここで、H:Δ1のときの荷重(kg)、L:掴み感覚(mm)、h:引張り速度(mm/min)、s:記録紙速度(mm/min)、Δ1:任意の引張伸び(mm)、W:試料幅(mm)、t:試料の厚さ(mm)を表す。値が低いほど柔軟なフィルムであることを示す。
【0045】
(2)降伏点応力[Mpa]、降伏点伸び[%]
(1)で得られた応力−引張り伸び曲線(S−Sカーブ)より求めた。なお、降伏点が発生しない場合は、「−」で表した。
【0046】
(3)破断点強度[Mpa]、破断点伸び[%]
上記(1)と同様にして得た応力−引張り伸び曲線(S−Sカーブ)より求めた。
【0047】
(4)復元性[mm]
突き上げ式自動包装機を用い、長さ25cm、幅15cm、高さ3.5cmのトレーを供試フィルムで包装した後、直径15mmの金属棒を垂直に押込み、押込まれたフィルムが元の状態に回復できる押込み深さの最大限を測定した。
【0048】
(5)応力保持率[%]
幅1.5cm、長さ10cmの短冊型フィルムを、掴み間隔5cm、引張り速度10mm/minで引張って5cm延伸した直後の応力aと、これをそのまま10分間放置したときの応力bより、以下の式を用いて求めた。
【0049】
b/a×100
なお、この値が大きいほど、そのフィルムは良い結束性を示す。
【0050】
(6)ストレッチ回復率[%]
上記(3)と同様にしてフィルムを延伸した後、荷重を除いて1日経過したときの長さcより、以下の式を用いて求めた。
【0051】
(5−c)/5×100
やはり、この値も大きいほど、そのフィルムは良い結束性を示す。
【0052】
(7)自己粘着性[g/2.5cm]
互いにエアが入らないように貼り合わせた幅25mm、長さ150mmの2枚のフィルムの一方の上から、質量300gのゴムロールを3往復させて荷重をかけ、これを圧着した後、一方のフィルムの外面を両面テープで支持板に貼りつけ、このフィルムから、圧着された他方のフィルムを300mm/分の速度で180度剥離する際に要する力を測定した
【0053】
(8)繰出し性
突き上げ式自動包装機を用い、長さ25cm、幅15cm、高さ3.5cmのトレーに牛肉100gをのせたものを幅35cmの供試フィルムで包装し、その際、搬送ベルトからフィルムがスムーズに繰出されるか否かを評価した。
【0054】
○・・・フィルムがスムーズに繰出された。
×・・・フィルムがスムーズに繰出されなかった。
【0055】
(9)包装物の表面状態
突き上げ式自動包装機を用い、長さ25cm、幅15cm、高さ3.5cmのトレーに牛肉100gをのせたものを供試フィルムで包装した後、フィルム表面のシワの発生状態を観察した。
【0056】
○・・・シワが全く発生しない。
△・・・少しシワが発生したものの、シワを修復し店頭に陳列可能である。
×・・・多量のシワが発生し、修復不可能である。
【0057】
(10)包装機械適性
上記(8)及び(9)の項目における評価結果を総合して、包装機械適性を評価した。
【0058】
○・・・上記項目の評価結果が全て○である。
△・・・上記項目の中、二つの項目の評価結果が○である。
×・・・上記項目の中、一つの項目の評価結果のみが○である。
【0059】
(11)ヒートシール性
突き上げ式自動包装機を用い、長さ25cm、幅15cm、高さ3.5cmのトレーを供試フィルムで包装し、温度85℃にてこのトレーの裏面でヒートシールを行い、そのシール状態を評価した。
【0060】
○・・・供試フィルムとトレー裏面が密着していた。
×・・・供試フィルムとトレー裏面が密着していなかった。
【0061】
(12)耐熱性[℃]
東京都条例1027号「ラップフィルムの品質表示」に準じて測定した(幅3cm、長さ14cmの短冊型フィルム試片の上下2.5cmを狭持し、下部に10gの荷重を懸け、この状態で加熱雰囲気下に1時間放置して、フィルムが切れない最高温度を10℃単位で測定。)。
【0062】
(13)透明性[%]
幅5cm、長さ5cmの正方形の供試フィルムにつき、(株)村上色彩技術研究所製ヘイズメーターにて測定した。
【0063】
(14)防曇性
90℃の熱湯を30cc入れたガラスコップ(直径5cm、高さ10cm)に、供試フィルム(幅10cm、長さ10cm)を1分間密着させた後、フィルム裏側の状態を観察した。
【0064】
○・・・全く曇っていない。
△・・・少し曇っていた。
×・・・曇っていて中の状態が全く見えない。
【0065】
[実施例1]
一般式(1)で示される融点210℃のポリエステルブロック共重合体(帝人化成(株)社製『ヌーベランP4110AN』)をベース層、エチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル(株)社製『エバフレックスP1907』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物を両外層として、共押出しTダイ法にて3層構造のフィルムを製造した。
【0066】
得られた3層フィルムの全厚みは12μm、各層厚は、外層5μm:ベース層2μm:外層5μm(1:0.4:1)であった。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0067】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0068】
[実施例2]
各層厚を外層4μm:ベース層4μm:外層4μm(1:1:1)とした他は、実施例1と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0069】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0070】
[実施例3]
一般式(1)で示される融点210℃のポリエステルブロック共重合体(帝人化成(株)社製『ヌーベランP4110AN』)をベース層、エチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル(株)社製『エバフレックスP1907』)97重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)3重量部を配合した樹脂組成物を両外層として、共押出しTダイ法にて3層構造のフィルムを製造した。
【0071】
得られた3層フィルムの全厚みは18μm、各層厚は、外層6μm:ベース層6μm:外層6μm(1:1:1)であった。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0072】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0073】
[実施例4]
各層厚を外層3μm:ベース層6μm:外層3μm(1:2:1)とした他は、実施例1と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0074】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0075】
[実施例5]
各層厚を外層4.5μm:ベース層9μm:外層4.5μm(1:2:1)とした他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0076】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0077】
[実施例6]
各層厚を外層2μm:ベース層8μm:外層2μm(1:4:1)とした他は、実施例1と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0078】
表1より明らかなように、得られたフィルムは自己粘着性が強すぎるため繰出し性が悪く、その点で包装機械適性はやや劣るものであったが、延伸性、復元性に優れると共に耐熱性も備え、更に透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0079】
[実施例7]
各層厚を外層7.2μm:ベース層3.6μm:外層7.2μm(2:1:2)とした他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0080】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0081】
[実施例8]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNH725N』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例2と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0082】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0083】
[実施例9]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNH725N』)97重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)3重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0084】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0085】
[実施例10]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNC544A』)97重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)3重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0086】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0087】
[実施例11]
フィルムの全厚みを15μmとした以外は、実施例10と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0088】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性及び結束性に優れると共に自己粘着性、透明性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0089】
[実施例12]
各層厚を外層3μm:ベース層6μm:外層3μm(1:2:1)とした他は、実施例8と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0090】
表1より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0091】
[実施例13]
各層厚を外層2μm:ベース層8μm:外層2μm(1:4:1)とした他は、実施例8と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表1に示す。
【0092】
表1より明らかなように、得られたフィルムは自己粘着性が強すぎるため繰出し性が悪く、その点で包装機械適性はやや劣るものであったが、延伸性、復元性に優れると共に耐熱性も備え、更に透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0093】
[実施例14]
ベース層と一方の外層との間に、再生樹脂のみにて形成した層を配した他は、実施例1と同様に、共押出しTダイ法にて4層構造のフィルムを製造した。なお、再生樹脂としては、本実施例で得られた4層フィルムのトリミングロスを再生して得られたペレットを使用した。
【0094】
得られた4層フィルムの全厚みは12μm、各層厚は、外層2.8μm:再生樹脂層2.4μm:ベース層4μm:外層2.8μm(0.7:0.6:1:0.7)であった。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0095】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0096】
[実施例15]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNH725N』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例14と同様にして4層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0097】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0098】
[実施例16]
ベース層とそれぞれの外層との間に、再生樹脂のみにて形成した層を配した他は、実施例1と同様に、共押出しTダイ法にて5層構造のフィルムを製造した。なお、再生樹脂としては、本実施例で得られた5層フィルムのトリミングロスを再生して得られたペレットを使用した。
【0099】
得られた5層フィルムの全厚みは12μm、各層厚は、外層2.8μm:再生樹脂層1.2μm:ベース層4μm:再生樹脂層1.2μm:外層2.8μm(0.7:0.3:1:0.3:0.7)であった。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0100】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0101】
[実施例17]
各層厚を外層2.8μm:再生樹脂層2μm:ベース層2.4μm:再生樹脂層2μm:外層2.8μm(1.17:0.83:1:0.83:1.17)とした他は、実施例16と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0102】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0103】
[実施例18]
M−LLDPE(日本ポリオレフィン(株)社製『ハーモレックスNH725N』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物を両外層として用いた他は、実施例16と同様にして5層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0104】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、延伸性、復元性及び包装機械適性に優れると共に耐熱性も備え、更に自己粘着性、透明性・防曇性も満足する包装用ストレッチフィルムとして有用なものであった。
【0105】
[比較例1]
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル(株)社製『エバフレックスP1907』)95重量部とグリセリンオレート(防曇剤:理研ビタミン(株)社製『O−71−D』)5重量部を配合した樹脂組成物をベース層、融点210℃のポリエステルブロック共重合体(帝人化成(株)社製『ヌーベランP4110AN』)を両外層とした他は、実施例2と同様にして3層構造のフィルムを作成した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0106】
表2より明らかなように、得られたフィルムは延伸性及び復元性に優れ、耐熱性も備えており、透明性も満足するものであったが、自己粘着性が強すぎて繰出し性が悪く、包装物表面にはシワが多数発生して包装機械適性に劣り、防曇性も有しないものであった。
【0107】
[比較例2]
融点142℃のリアクターポリプロピレン(モンテルエスディケイサンライズ(株)社製『キャタロイC200F』)をベース層とした他は、実施例2と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0108】
表2より明らかなように、得られたフィルムは、透明性と防曇性は満足するものであったが、CD方向の引張りに対して降伏点を有しており、延伸性及び復元性が悪く、また、包装物表面にシワがやや発生した点で包装機械適性に劣り、耐熱性にもやや劣るものであった。
【0109】
[比較例3]
融点142℃のリアクターポリプロピレン(モンテルエスディケイサンライズ(株)社製『キャタロイC200F』)をベース層とした他は、実施例3と同様にして3層構造のフィルムを製造した。
このフィルムの特性を表2に示す。
【0110】
表2より明らかなように、得られたフィルムはCD方向の引張りに対して降伏点を有し、延伸性に劣るものであった。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、非塩ビ系のストレッチフィルムでありながら、延伸性、復元性、結束性及び包装機械適性に優れた包装用ストレッチフィルムを得ることができる。また、このフィルムには、かかる特性を保持しつつ、耐熱性、適度な低温ヒートシール性、粘着性その他の特性を付与することができる。
【0114】
しかも、これらのフィルムは、押出し法又は共押出し法によって製造することができる。
【0115】
従って、本発明によれば、包装物の外観が重視され、かつ、自動包装機を用いて大量にラッピングをする必要のある小売店等においても実用可能な、包装用ストレッチフィルムを経済的に得ることができる。また、この包装用ストレッチフィルムは、パレットに積載された物品をパレットごと包装する場合においても実用可能で、荷崩れ等を起こさない。
【0116】
即ち、本発明によれば、包装機械を用いて大量に包装される小型物品から大型物品まで、各種包装用途に好適な包装用ストレッチフィルムを経済的に得ることができる。
Claims (5)
- 両外層がエチレン系樹脂にて形成される、請求項1に記載の包装用多層フィルム。
- エチレン系樹脂として、エチレン酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、及びα−オレフィン共重合体より選択されるいずれか1以上の樹脂を使用する、請求項2に記載の包装用多層フィルム。
- ベース層の厚みの占める割合が、多層フィルムの全厚みに対して10〜50%である、請求項1、2又は3に記載の包装用多層フィルム。
- Tダイ押出法により製造される、請求項1、2、3又は4に記載の包装用多層フィルム。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019073308A (ja) * | 2017-10-16 | 2019-05-16 | 大倉工業株式会社 | ストレッチフィルムを用いたスリーブ包装方法、スリーブ包装用ストレッチフィルム、およびスリーブ包装体の製造方法 |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003129574A patent/JP2004175100A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019073308A (ja) * | 2017-10-16 | 2019-05-16 | 大倉工業株式会社 | ストレッチフィルムを用いたスリーブ包装方法、スリーブ包装用ストレッチフィルム、およびスリーブ包装体の製造方法 |
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