JP2004174657A - 浸炭焼入れされたリング状物品の研削方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】浸炭焼入れされたリング状物品の内・外周面を効率的に高精度加工することのできる研削方法を提供する。
【解決手段】被加工物である浸炭焼入れされたリング状物品Wの外周面Woを支持した状態で回転を与えつつ、その外周面Woおよび内周面Wrを同時に研削することにより、リング状物品Wの残留応力を徐々に解放させ、外周面Woの切り込みを終了した後に内周面Wrの切り込みを継続することにより、内周面Wrの研削精度に影響を及ぼすことなく、かつ、偏肉を生じることなく、効率的に高精度加工することを可能とする。
【選択図】 図2
【解決手段】被加工物である浸炭焼入れされたリング状物品Wの外周面Woを支持した状態で回転を与えつつ、その外周面Woおよび内周面Wrを同時に研削することにより、リング状物品Wの残留応力を徐々に解放させ、外周面Woの切り込みを終了した後に内周面Wrの切り込みを継続することにより、内周面Wrの研削精度に影響を及ぼすことなく、かつ、偏肉を生じることなく、効率的に高精度加工することを可能とする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浸炭焼入れされたリング状の物品の外周面および内周面を研削加工する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
転がり軸受の軌道輪においては、軌道面はもちろんのこと、他の面も高い精度が要求される。すなわち、外輪においてはハウジングに嵌め込まれる外周面、内輪においては軸が嵌め込まれる内周面に高い精度が要求され、また、これら内外輪ともに、軌道面等の加工の基準となる両端面にも高い精度が要求され、従ってこれらの各面には、通常、研削加工が施される。
【0003】
従来の転がり軸受の軌道輪の研削工程は、外輪については、熱処理後、まず両端面(幅)を研削し、次いで外周面を研削した後、軌道面を研削し、最後にその軌道面を超仕上げ加工する。また、内輪については、熱処理後に同じく両端面(幅)を研削した後、軌道面を研削し、次いで内周面を研削した後、最後に軌道面を超仕上げ加工する、という工程が一般的に採用されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−118903号公報(第2頁,図6)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、転がり軸受の軌道輪の材質は、最も一般的にはSUJ2などの高炭素クロム軸受鋼が用いられ、通常の焼入れ(ずぶ焼)が施されたうえで研削されるのであるが、特に、自動車用の円錐ころ軸受などの高い靱性が要求される軌道輪には、低炭素の浸炭軸受用鋼が用いられ、浸炭焼入れにより表面のみが焼入れされる。
【0006】
浸炭焼入れを施した軌道輪は、高い靱性が得られるばかりでなく、表面のみにマルテンサイト変態が生じるため、表面に圧縮、内部に引張の応力が生じて残留し、表面に残留する圧縮応力は、表面の機械的強度の増大に寄与し、剥離寿命等にも有効であることが知られている。
【0007】
しかしながら、浸炭焼入れされた軌道輪のうち、特に薄肉のものについては、前記した従来の研削工程では、良好な真円度が得られないという問題がある。すなわち、例えば外輪に例にとって述べると、外周面を真円に研削した後に軌道面を研削すると、焼入れ後の歪みの程度に応じた確率で、外輪全体が数μm程度ではあるが楕円形状に歪み、軌道面のみならず外周面の真円度を悪化させてしまう。
【0008】
そこで、浸炭焼入れされた例えば比較的薄肉の円すいころ軸受の外輪等においては、外周面を、仕上がり寸法に対して所定量だけ取り代を残して研削(外周面粗加工)し、次いで軌道面を、同じく仕上がり寸法に対して所定量だけ取り代を残して研削(軌道面粗加工)し、更に外周面を仕上がり寸法に研削(外周面仕上げ加工)したうえで、軌道面を仕上がり寸法に研削(軌道面仕上げ加工)するといった工程が採用されている。
【0009】
このように外周面と軌道面とを交互に粗加工および仕上げ加工することは、工程数が増大してコストアップの要因となるばかりでなく、ワークを流す方向が、通常の焼入れされたワークのような一方向に流すのではなく、外周面の研削工程と軌道面の研削工程間で逆向きに流す必要があって煩雑であり、またリードタイムも長くなるという問題もある。
【0010】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、浸炭焼入れされた円すいころ軸受の外輪をはじめとして、浸炭焼入れされたリング状物品の内・外周面を効率的に高精度加工することのできる研削方法の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の浸炭焼入れされたリング状物品の研削方法は、浸炭焼入れされたリング状物品の外周面を支持部材で支持した状態で回転を与えつつ、その外周面および内周面を、これらの各面に対応して設けた各砥石にそれぞれ切り込みを与えて同時に研削することにより、当該リング状物品の残留応力を解放しながら、外周面用の砥石の切り込みを停止した後、内周面用の砥石の切り込みを所定量だけ継続して停止することによって特徴づけられる。
本発明は、浸炭焼入れにより被加工物内に残留する応力を、内・外周面同時加工により解放しつつ、最終的に外周面基準により内周面を仕上げることによって、所期の目的を達成しようとするものである。
【0012】
すなわち、浸炭焼入れされた円すいころ軸受の外輪などのリング状物品が、外周面の研削後に内周面を研削することによって歪みが生じる原因は、本発明者らの研究により、以下の通り残留応力の再配列によるものであることが判明している。
【0013】
浸炭焼入れされたリング状物品の残留応力は、前記したように表面からの深さ方向に圧縮から引張に変わる分布を持っており、浸炭焼入れ後に楕円形状の歪みが生じているリング状物品の外周面および内周面を、それぞれ真円に研削すると、外周面において取り代が多くなる部位と、内周面において取り代が多くなる部位とが周方向に略90°だけずれることになり、これは、残留している圧縮応力の除去部位が外周と内周とで周方向に略90°ずれることを意味し、これによって物品の内部応力の分布が大きく変化し、物品を塑性変形させて再配列する。
【0014】
浸炭焼入れされた円すいころ軸受の外輪の従来の研削工程は、外周面粗加工および内周面(軌道面)粗加工によって、塑性変形と内部応力の再配列を行わせ、続く外周面仕上げ加工および内周面(軌道面)仕上げ加工時に歪みを生じさせないようにするものである。
【0015】
これに対し、本発明では、外周面と内周面を同時に研削する。これにより、残留応力は徐々に解放されて研削途中で再配列し、その残留応力の再配列によりリング状物品が塑性変形しても、外周面および内周面の研削を続けることによってその変形分が研削される。そして、本発明では、以上の外周面および内周面の研削加工をリング状物品の外周面を支持して行い、従って外周面は心無し研削となって被加工物の中心は外周面の研削に従って変化していくが、外周面の切り込みを停止した後に内周面の切り込みを続けることにより、最終的に内周面は外周面を基準として研削されることになり、偏肉等の発生も生じることなく、高精度で効率的な研削加工を達成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明方法を適用した研削盤による研削加工工程の説明図で、(A)は部分断面要部平面図であり、(B)は要部正面図である。
【0017】
この例は円すいころ軸受の外輪Wを加工する例を示しており、被加工物である外輪Wは、その大端面Weがバッキングプレート1に押し付けられた状態で、かつ、外周面Woが2つのシュー2に押し付けられた状態で、図1(B)に矢印Dwで示す向きに回転が与えられる。
【0018】
すなわち、バッキングプレート1は主軸1aの先端に固着されて矢印Dwの向きに回転するとともに、このバッキングプレート1は電磁力により外輪Wを引きつけるようになっている。シュー2は、外輪Wの外周面Woの未研削状態から仕上がりまでの間、当該シュー2が支持している外輪Wの回転中心がバッキングプレート1の回転中心に対してオフセットが生じるように配置されており、これにより、バッキングプレート1を回転させて電磁力により外輪Wを引きつけることにより、外輪Wは大端面Weがバッキングプレート1に、外周面Woがシュー2にそれぞれ押し付けられた状態で回転する。
【0019】
バッキングプレート1を装着した主軸1aに隣接して、これと平行に外周面研削用砥石軸3aが配置されており、その先端に外周面研削用砥石3が装着されている。この外周面研削用砥石3は、図1(B)に矢印Doで示す向きに回転が与えられる。また、主軸1aに略対向して、軌道面研削用砥石軸4bが配置されており、その先端に軌道面研削用砥石4が装着されている。この軌道面研削用砥石4は、図1(B)に矢印Drで示す向きに回転が与えられる。また、この軌道面研削用砥石軸4bは、外輪Wの軌道面Wrの角度に応じた角度だけ主軸1aに対して斜めに配置されている。
【0020】
外周面研削用砥石軸3aおよび軌道面研削用砥石軸4aは、それぞれに対応して設けられている切り込み機構(図示せず)によって、図2にサイクル線図を示す通りの切り込みが与えられる。
【0021】
すなわち、外周面Woと軌道面Wrに対して同時に粗切り込みを開始し(t0)、所定の時間が経過した後、外周面Woに対する切り込みを仕上げ切り込みに切り換える(t1)。この外周面Woに対する仕上げ切り込み状態において、軌道面Wrに対する切り込みを仕上げ切り込みに切り換え(t2)、その軌道面Wrに対する仕上げ切り込み状態において、外周面Woに対する切り込みを停止し、スパークアウトに移行する(t3)。その間、軌道面Wrに対する仕上げ切り込みを継続し,この軌道面Wrに対する仕上げ切り込みを停止してスパークアウトに移行(t4)した後、外周面研削用砥石3を離脱させる(t5)。その間、軌道面Wrのスパークアウトを継続し、規定時間の経過後に軌道面研削用砥石4を離脱させる(t6)。
【0022】
以上のサイクルにおいて、外輪Wはその外周面Woと軌道面Wrとが同時に研削されていき、残留応力が徐々に解放され、その再配列により外輪Wが塑性変形しても、その変形分は外周面研削用砥石3および軌道面研削用砥石4によって研削される。また、外周面Woの切り込みを停止した後に軌道面Wrの切り込みを続行するため、外周面Woを基準として研削されている軌道面Wrの精度は通常のこの種の外輪軌道面を研削するための内面研削盤と同等とすることができると同時に、偏肉が生じる恐れもない。
【0023】
なお、以上の実施の形態では、浸炭焼入れされた円すいころ軸受の外輪の研削工程に本発明を適用した例を示したが、他の転がり軸受の軌道輪にも適用し得ることは勿論であるし、転がり軸受の軌道輪以外の物品で、浸炭焼入れされたリング状物品の内・外周面の研削にも等しく適用し得ることは言うまでもない。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、浸炭焼入れによる残留応力を、外周面と内周面を同時に研削することによって徐々に解放し、残留応力の再配列に起因する塑性変形分をその同時研削中に解消することができ、また、外周面を支持してその外周面と内周面とを研削する方法を採用しながら、外周面の切り込みを完了した後に内周面の切り込みを続行するため、内周面の研削精度は、通常の外周面支持による内面研削盤と同等の精度とすることができるとともに、偏肉が生じる恐れもない。
【0025】
その結果、残留応力の再配列に起因する歪みを除去するために、外周面と内周面の粗研削と仕上げ研削を交互に繰り返していた従来の方法に比して、同等の精度の製品をより短いリードタイムのもとに効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した研削盤による円すいころ軸受の外輪の研削工程の説明図で、(A)は部分断面要部平面図であり、(B)は要部正面図である。
【図2】本発明の実施の形態による研削サイクル線図である。
【符号の説明】
1 バッキングプレート
1a 主軸
2 シュー
3 外周面研削用砥石
3a 外周面研削用砥石軸
4 内周面研削用砥石
4a 内周面研削用砥石軸
W 外輪(被加工物)
Wo 外周面
Wr 軌道面
【発明の属する技術分野】
本発明は、浸炭焼入れされたリング状の物品の外周面および内周面を研削加工する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
転がり軸受の軌道輪においては、軌道面はもちろんのこと、他の面も高い精度が要求される。すなわち、外輪においてはハウジングに嵌め込まれる外周面、内輪においては軸が嵌め込まれる内周面に高い精度が要求され、また、これら内外輪ともに、軌道面等の加工の基準となる両端面にも高い精度が要求され、従ってこれらの各面には、通常、研削加工が施される。
【0003】
従来の転がり軸受の軌道輪の研削工程は、外輪については、熱処理後、まず両端面(幅)を研削し、次いで外周面を研削した後、軌道面を研削し、最後にその軌道面を超仕上げ加工する。また、内輪については、熱処理後に同じく両端面(幅)を研削した後、軌道面を研削し、次いで内周面を研削した後、最後に軌道面を超仕上げ加工する、という工程が一般的に採用されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−118903号公報(第2頁,図6)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、転がり軸受の軌道輪の材質は、最も一般的にはSUJ2などの高炭素クロム軸受鋼が用いられ、通常の焼入れ(ずぶ焼)が施されたうえで研削されるのであるが、特に、自動車用の円錐ころ軸受などの高い靱性が要求される軌道輪には、低炭素の浸炭軸受用鋼が用いられ、浸炭焼入れにより表面のみが焼入れされる。
【0006】
浸炭焼入れを施した軌道輪は、高い靱性が得られるばかりでなく、表面のみにマルテンサイト変態が生じるため、表面に圧縮、内部に引張の応力が生じて残留し、表面に残留する圧縮応力は、表面の機械的強度の増大に寄与し、剥離寿命等にも有効であることが知られている。
【0007】
しかしながら、浸炭焼入れされた軌道輪のうち、特に薄肉のものについては、前記した従来の研削工程では、良好な真円度が得られないという問題がある。すなわち、例えば外輪に例にとって述べると、外周面を真円に研削した後に軌道面を研削すると、焼入れ後の歪みの程度に応じた確率で、外輪全体が数μm程度ではあるが楕円形状に歪み、軌道面のみならず外周面の真円度を悪化させてしまう。
【0008】
そこで、浸炭焼入れされた例えば比較的薄肉の円すいころ軸受の外輪等においては、外周面を、仕上がり寸法に対して所定量だけ取り代を残して研削(外周面粗加工)し、次いで軌道面を、同じく仕上がり寸法に対して所定量だけ取り代を残して研削(軌道面粗加工)し、更に外周面を仕上がり寸法に研削(外周面仕上げ加工)したうえで、軌道面を仕上がり寸法に研削(軌道面仕上げ加工)するといった工程が採用されている。
【0009】
このように外周面と軌道面とを交互に粗加工および仕上げ加工することは、工程数が増大してコストアップの要因となるばかりでなく、ワークを流す方向が、通常の焼入れされたワークのような一方向に流すのではなく、外周面の研削工程と軌道面の研削工程間で逆向きに流す必要があって煩雑であり、またリードタイムも長くなるという問題もある。
【0010】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、浸炭焼入れされた円すいころ軸受の外輪をはじめとして、浸炭焼入れされたリング状物品の内・外周面を効率的に高精度加工することのできる研削方法の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の浸炭焼入れされたリング状物品の研削方法は、浸炭焼入れされたリング状物品の外周面を支持部材で支持した状態で回転を与えつつ、その外周面および内周面を、これらの各面に対応して設けた各砥石にそれぞれ切り込みを与えて同時に研削することにより、当該リング状物品の残留応力を解放しながら、外周面用の砥石の切り込みを停止した後、内周面用の砥石の切り込みを所定量だけ継続して停止することによって特徴づけられる。
本発明は、浸炭焼入れにより被加工物内に残留する応力を、内・外周面同時加工により解放しつつ、最終的に外周面基準により内周面を仕上げることによって、所期の目的を達成しようとするものである。
【0012】
すなわち、浸炭焼入れされた円すいころ軸受の外輪などのリング状物品が、外周面の研削後に内周面を研削することによって歪みが生じる原因は、本発明者らの研究により、以下の通り残留応力の再配列によるものであることが判明している。
【0013】
浸炭焼入れされたリング状物品の残留応力は、前記したように表面からの深さ方向に圧縮から引張に変わる分布を持っており、浸炭焼入れ後に楕円形状の歪みが生じているリング状物品の外周面および内周面を、それぞれ真円に研削すると、外周面において取り代が多くなる部位と、内周面において取り代が多くなる部位とが周方向に略90°だけずれることになり、これは、残留している圧縮応力の除去部位が外周と内周とで周方向に略90°ずれることを意味し、これによって物品の内部応力の分布が大きく変化し、物品を塑性変形させて再配列する。
【0014】
浸炭焼入れされた円すいころ軸受の外輪の従来の研削工程は、外周面粗加工および内周面(軌道面)粗加工によって、塑性変形と内部応力の再配列を行わせ、続く外周面仕上げ加工および内周面(軌道面)仕上げ加工時に歪みを生じさせないようにするものである。
【0015】
これに対し、本発明では、外周面と内周面を同時に研削する。これにより、残留応力は徐々に解放されて研削途中で再配列し、その残留応力の再配列によりリング状物品が塑性変形しても、外周面および内周面の研削を続けることによってその変形分が研削される。そして、本発明では、以上の外周面および内周面の研削加工をリング状物品の外周面を支持して行い、従って外周面は心無し研削となって被加工物の中心は外周面の研削に従って変化していくが、外周面の切り込みを停止した後に内周面の切り込みを続けることにより、最終的に内周面は外周面を基準として研削されることになり、偏肉等の発生も生じることなく、高精度で効率的な研削加工を達成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明方法を適用した研削盤による研削加工工程の説明図で、(A)は部分断面要部平面図であり、(B)は要部正面図である。
【0017】
この例は円すいころ軸受の外輪Wを加工する例を示しており、被加工物である外輪Wは、その大端面Weがバッキングプレート1に押し付けられた状態で、かつ、外周面Woが2つのシュー2に押し付けられた状態で、図1(B)に矢印Dwで示す向きに回転が与えられる。
【0018】
すなわち、バッキングプレート1は主軸1aの先端に固着されて矢印Dwの向きに回転するとともに、このバッキングプレート1は電磁力により外輪Wを引きつけるようになっている。シュー2は、外輪Wの外周面Woの未研削状態から仕上がりまでの間、当該シュー2が支持している外輪Wの回転中心がバッキングプレート1の回転中心に対してオフセットが生じるように配置されており、これにより、バッキングプレート1を回転させて電磁力により外輪Wを引きつけることにより、外輪Wは大端面Weがバッキングプレート1に、外周面Woがシュー2にそれぞれ押し付けられた状態で回転する。
【0019】
バッキングプレート1を装着した主軸1aに隣接して、これと平行に外周面研削用砥石軸3aが配置されており、その先端に外周面研削用砥石3が装着されている。この外周面研削用砥石3は、図1(B)に矢印Doで示す向きに回転が与えられる。また、主軸1aに略対向して、軌道面研削用砥石軸4bが配置されており、その先端に軌道面研削用砥石4が装着されている。この軌道面研削用砥石4は、図1(B)に矢印Drで示す向きに回転が与えられる。また、この軌道面研削用砥石軸4bは、外輪Wの軌道面Wrの角度に応じた角度だけ主軸1aに対して斜めに配置されている。
【0020】
外周面研削用砥石軸3aおよび軌道面研削用砥石軸4aは、それぞれに対応して設けられている切り込み機構(図示せず)によって、図2にサイクル線図を示す通りの切り込みが与えられる。
【0021】
すなわち、外周面Woと軌道面Wrに対して同時に粗切り込みを開始し(t0)、所定の時間が経過した後、外周面Woに対する切り込みを仕上げ切り込みに切り換える(t1)。この外周面Woに対する仕上げ切り込み状態において、軌道面Wrに対する切り込みを仕上げ切り込みに切り換え(t2)、その軌道面Wrに対する仕上げ切り込み状態において、外周面Woに対する切り込みを停止し、スパークアウトに移行する(t3)。その間、軌道面Wrに対する仕上げ切り込みを継続し,この軌道面Wrに対する仕上げ切り込みを停止してスパークアウトに移行(t4)した後、外周面研削用砥石3を離脱させる(t5)。その間、軌道面Wrのスパークアウトを継続し、規定時間の経過後に軌道面研削用砥石4を離脱させる(t6)。
【0022】
以上のサイクルにおいて、外輪Wはその外周面Woと軌道面Wrとが同時に研削されていき、残留応力が徐々に解放され、その再配列により外輪Wが塑性変形しても、その変形分は外周面研削用砥石3および軌道面研削用砥石4によって研削される。また、外周面Woの切り込みを停止した後に軌道面Wrの切り込みを続行するため、外周面Woを基準として研削されている軌道面Wrの精度は通常のこの種の外輪軌道面を研削するための内面研削盤と同等とすることができると同時に、偏肉が生じる恐れもない。
【0023】
なお、以上の実施の形態では、浸炭焼入れされた円すいころ軸受の外輪の研削工程に本発明を適用した例を示したが、他の転がり軸受の軌道輪にも適用し得ることは勿論であるし、転がり軸受の軌道輪以外の物品で、浸炭焼入れされたリング状物品の内・外周面の研削にも等しく適用し得ることは言うまでもない。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、浸炭焼入れによる残留応力を、外周面と内周面を同時に研削することによって徐々に解放し、残留応力の再配列に起因する塑性変形分をその同時研削中に解消することができ、また、外周面を支持してその外周面と内周面とを研削する方法を採用しながら、外周面の切り込みを完了した後に内周面の切り込みを続行するため、内周面の研削精度は、通常の外周面支持による内面研削盤と同等の精度とすることができるとともに、偏肉が生じる恐れもない。
【0025】
その結果、残留応力の再配列に起因する歪みを除去するために、外周面と内周面の粗研削と仕上げ研削を交互に繰り返していた従来の方法に比して、同等の精度の製品をより短いリードタイムのもとに効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した研削盤による円すいころ軸受の外輪の研削工程の説明図で、(A)は部分断面要部平面図であり、(B)は要部正面図である。
【図2】本発明の実施の形態による研削サイクル線図である。
【符号の説明】
1 バッキングプレート
1a 主軸
2 シュー
3 外周面研削用砥石
3a 外周面研削用砥石軸
4 内周面研削用砥石
4a 内周面研削用砥石軸
W 外輪(被加工物)
Wo 外周面
Wr 軌道面
Claims (1)
- 浸炭焼入れされたリング状物品の内外周面をそれぞれ研削加工する方法であって、
リング状物品の外周面を支持部材で支持した状態で回転を与えつつ、その外周面および内周面を、これらの各面に対応して設けた各砥石にそれぞれ切り込みを与えて同時に研削することにより、当該リング状物品の残留応力を解放しながら、外周面用の砥石の切り込みを停止した後、内周面用の砥石の切り込みを所定量だけ継続して停止することを特徴とする浸炭焼入れされたリング状物品の研削方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002343202A JP2004174657A (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 浸炭焼入れされたリング状物品の研削方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2002343202A JP2004174657A (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 浸炭焼入れされたリング状物品の研削方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004174657A true JP2004174657A (ja) | 2004-06-24 |
Family
ID=32705027
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002343202A Pending JP2004174657A (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 浸炭焼入れされたリング状物品の研削方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004174657A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008080438A (ja) * | 2006-09-27 | 2008-04-10 | Ntn Corp | 複合研削加工方法 |
-
2002
- 2002-11-27 JP JP2002343202A patent/JP2004174657A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008080438A (ja) * | 2006-09-27 | 2008-04-10 | Ntn Corp | 複合研削加工方法 |
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