JP2004174421A - 塗工方法および塗工機 - Google Patents
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Abstract
【課題】フィルム状の基材に転写ロールを介して塗布液を精度よく塗工する塗工方法および塗工機を提供する。
【解決手段】塗布液Sの貯留された液溜槽2の液面よりも回転中心軸Pが下方に位置するように転写ロール3を設置するとともに、転写ロール3を挟んで第1および第2ブレード4,5で液溜槽2を略密閉状態にし、かつ塗布液Sを充填した状態で転写ロール3を回転駆動させながら塗布液Sをその周面に付着させて搬送し、基材Fに塗工する。
【選択図】 図1
【解決手段】塗布液Sの貯留された液溜槽2の液面よりも回転中心軸Pが下方に位置するように転写ロール3を設置するとともに、転写ロール3を挟んで第1および第2ブレード4,5で液溜槽2を略密閉状態にし、かつ塗布液Sを充填した状態で転写ロール3を回転駆動させながら塗布液Sをその周面に付着させて搬送し、基材Fに塗工する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム状の基材に塗布液、例えば表面コート剤、粘着剤などを塗工する塗工方法および塗工機に関するものであって、特に、塗布液を基材に精度よく塗工する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来フィルム状の基材に塗布液を塗工する際にスロットダイコータ、キスコータ、グラビアコータ、バーコータ、リバースコータなどが利用されている。
【0003】
例えばグラビアコータを用いた場合、液溜槽に転写ロールの一部分を浸漬させている。この転写ロール周面に塗布液を付着させて回転駆動することにより転写ロール周面の塗布液がフィルム状の基材に搬送・塗工されるようになっている。転写ロールの浸漬部分は、図4に示すように、転写ロール40の回転中心軸Pが液面よりも高い位置となる状態を維持するように、転写ロール下部を浸漬している。
【0004】
このように液溜槽への転写ロールの浸漬部分が少ないと、液面から基材までの塗布液の搬送距離が長くなり、大気との接触時間も長くなって塗布液が乾燥して転写ロールに固着したり、その搬送過程で転写ロール周面に付着した塗布液が流動して塗工ムラが発生したりするなどの問題が生じている。
【0005】
また、転写ロールの回転に伴って発生する波による液面のうねりが転写ロール周面への塗布液付着ムラを招き、このことが原因で塗工ムラが発生するといった問題もある。
【0006】
この問題を解消するために、特開平10−235839号公報に記載されたグラビア印刷機のインキング装置が提案・実施されている。
【0007】
具体的には、図5に示すように、ロール状のグラビア印刷版50の回転方向に対してインキ転移部の略直後にチャンバー状のインキ供給部51と、略直前にブレード52を具備するチャンバー状インキ回収部53とを備えている。また、チャンバー状インキ供給部51とチャンバー状インキ回収部53との間のグラビア印刷版円周上を密閉するためのフード54を設けている。したがって、インキ搬送過程で、グラビア印刷版50の周面のインキS1が乾燥しないようになっている。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−235839号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−235839に記載のインキ印刷装置は次のような問題がある。
すなわち、インキS1が加圧されながらチャンバー状インキ供給部51からグラビア印刷版50に向けて供給されるので、図5に示す鎖線で囲む部分Aには液溜まりが発生し、長時間放置しておくとインキS1が乾燥して固着堆積し、グラビア印刷版50の回転を阻害したり、固着物がフード内に詰まったり、さらに固着物が搬送されブレード52の部分に堆積してインキS1の印刷ムラを発生させるといった問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、フィルム状の基材に塗布液を精度よく塗工する塗工方法およびそれを用いた塗工機を提供することを主たる目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、フィルム状の基材に転写ロールを介して塗布液を塗工する塗工方法において、
前記転写ロールの回転中心軸を、前記塗布液を貯留する液溜槽の液面より下方に位置するように設置し、転写ロールを回転駆動させながら基材に塗布液を塗工することを特徴とするものである。
【0012】
(作用・効果)請求項1に記載の発明によれば、転写ロールの回転中心軸を液溜槽の液面よりも下方に位置するように設置することにより、転写ロールに付着した塗布液を基材の塗工位置まで搬送する距離および時間を短縮することができる。
【0013】
したがって、塗布液が大気に触れる時間が短縮され、乾燥して転写ロールに固着するのを防止できる。また、その搬送過程で転写ロール周面に付着した塗布液の流動を抑制でき、基材に対する塗布液の塗工ムラや外観不良も防止できる。さらに、基材に塗布液を塗工した後に転写ロールに残渣した塗布液についても、大気に触れる時間を短縮することができ、転写ロールに塗布液が固着するのを防止でき、固着物の付着による塗工ムラや外観不良を防止することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗工方法において、前記液溜槽の上端から転写ロール周面の上部にその先端が近接するように2枚のブレードを対向配備し、液溜槽を略密閉状態にしたことを特徴とするものである。
【0015】
(作用・効果)請求項2に記載の発明によれば、2枚のブレードにより液溜槽が略密閉状態にされる。したがって、液溜槽の大気開放状態をなくして塗布液中の溶媒が大気中に揮発するのを回避できるので、塗布液の濃度変化を防止することができる。
【0016】
また、液溜槽に塗布液を貯留、充填することにより液溜槽内の空気を排除でき、槽内で塗布液が空気に接触するのを無くすことができる、結果、液面の乾燥を防止することができる。
【0017】
また、転写ロールの回転に伴って発生する波による液面のうねりを無くすことができ、転写ロール周面への塗布液付着ムラを防止できる、結果、基材に対する塗布液の塗工ムラを防止することができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の塗工方法において、前記転写ロールを挟んで基材搬送方向の前後に配備した2個のガイドロールの少なくともいずれかにより基材が押圧されることを特徴とするものである。
【0019】
(作用・効果)請求項3に記載の発明によれば、転写ロールを挟んで基材搬送方向の前後に配備した2個のガイドロールの少なくともいずれかにより基材が押圧される。そのため、基材にテンションがかけられて塗布液の塗工箇所に所定の押圧力が作用する。したがって、転写ロールに対向して基材を狭持するバックアップロールを用いる必要が無い。その結果、転写ロールとバックアップロールとで基材を狭持しながら搬送・塗工する過程で、バックアップロールの偏心や転写ロール形状のバラツキにより基材に直接に振動を与えて発生させていた塗工ムラを解消することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、フィルム状の基材に転写ロールを介して塗布液を塗工する塗工機において、
前記塗布液を貯留する液溜槽と、
前記液溜槽内の液面よりも下方に回転中心軸が位置するように設置した転写ロールと、
前記転写ロール周面に付着した塗布液の厚みを調節する第1ブレードと
を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
(作用・効果)請求項4に記載の発明によれば、転写ロールの回転中心軸を液溜槽の液面より下方に設置し、回転駆動させて転写ロール周面に塗布液を付着させて搬送し、その過程で第1ブレードにより塗布液の塗工厚みが調節される。したがって、転写ロールに付着した塗布液の搬送距離および時間が短縮されるので、塗布液が乾燥して転写ロールに固着するのを防止することができる。また、その搬送過程で転写ロール周面に付着した塗布液の流動を抑制でき、基材に対する塗布液の塗工ムラも防止できる。さらに、基材に塗布液を塗工した後に転写ロールに残渣した塗布液についても、大気に触れる時間を短縮することができ、転写ロールに塗布液が固着するのを防止でき、固着物の付着による塗工ムラを防止することができる。その結果、請求項1に記載の塗工方法を好適に実現することができる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の塗工機において、前記転写ロールを挟んで前記第1ブレードの反対側に液溜槽を閉塞する第2ブレードを備えたことを特徴とするものである。
【0023】
(作用・効果)請求項5に記載の発明によれば、転写ロールを挟んで第1ブレードの反対側に第2ブレードを設けることにより、液溜槽を略密閉状態にできる。したがって、大気開放による液面からの溶媒の揮発が回避され、塗布液の濃度変化により発生する塗工ムラや外観不良を解消することができる、結果、請求項2に記載の塗工方法を好適に実現することができる。
【0024】
本発明は、次のような解決手段も開示している。
【0025】
(1)フィルム状の基材を供給する基材供給手段と、供給される基材に塗布液を塗工する塗工手段と、塗布液が塗工された基材を乾燥する乾燥手段と、乾燥処理された基材を回収する回収手段とを備えた塗工装置において、
前記塗工手段は、塗布液を貯留する液溜槽と、
前記液溜槽内の液面よりも下方に回転中心軸が位置するように設置した転写ロールと、
前記転写ロールに付着した塗布液の厚みを調節するブレードと
を備えたことを特徴とする塗工装置。
【0026】
(1)の発明によれば、転写ロールの回転中心軸を液面よりも下方に位置するように設置することにより、液面から基材までの塗布液の搬送距離を短くされ、塗布液が大気に触れる時間も短縮される。所定の濃度を維持した塗布液は、基材に略均一に塗工される。塗布液が塗工された基材は、乾燥手段へと搬送されて乾燥処理された後に回収される。したがって、塗布液が基材に塗工されるまでの時間を短縮することにより、塗布液の乾燥による転写ロールへの固着の防止、およびその搬送過程での転写ロール周面に付着した塗布液の流動を抑制できる、結果、塗工ムラや外観不良の発生を防止することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
本実施例に係る塗工機の概略構成について、図を参照して説明する。図1は、本発明に係る塗工機の一例を示した側面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施例に係る塗工機1は、塗布液Sを貯留する液溜槽2と、液溜槽内で回転自在に軸支された転写ロール3と、先端が転写ロール周面に近接するように対向配備した第1ブレード4および第2ブレード5と、転写ロール3の上方に基材Fを搬送案内する2個のガイドロール6,7を備えた構成をしている。以下、各部の構成を詳細に説明する。
【0029】
液溜槽2は、転写ロール周面に塗布液Sを付着させるためのものであり、その内部に塗布液Sを供給する供給口9(図中左側)と、液溜槽内に過剰供給された塗布液Sを排出循環させる排出口10(図中右側)とを備えている。つまり、液溜槽2は、その内部に所定の液量を貯留(充填)した状態を維持するようになっており、所定量を超えた塗布液Sは、排出口10から排出されて配管Rを通り供給口9に戻るようになっている。
【0030】
配管Rには、バルブVを介して塗布液供給源11が連接されている。つまり、塗工に使用されて減少しただけの塗布液Sを供給補充するようになっている。例えば、レベルゲージにより液溜槽内の液面を逐次検出し、検出結果と予め設定した液面の基準値とを比較し、求まる偏差に応じてバルブVを開放操作して塗布液Sを供給すればよい。
【0031】
転写ロール3は、その周面に塗布液Sを付着して搬送し、基材Fにその塗布液Sを塗工するものである。この転写ロール3は、その回転中心軸Pが塗布液の貯留された液溜槽2の液面よりも下方に位置するように設置されている。なお、転写ロール3としては、例えば、グラビアロール、コンマロール、およびキスロールなどが挙げられる。
【0032】
第1ブレード4は、平板状で基材Fに塗工する塗布液Sの塗工厚みを調節するものである。具体的には、転写ロール3に付着した塗布液Sの塗工量(厚み)を調節している。第1ブレード4はその基端が液溜槽2の上部に取り付けられており、その先端が転写ロール周面に向けて近接または接触するように配備されている。第1ブレード4を液溜槽2に取り付けることにより、図1に示すように、転写ロール3を挟んで液溜槽2の右側部分を略密閉状態にすることができる。
【0033】
つまり、第1ブレード4の先端は、使用する転写ロール3にもよるが、グラビアロールのように転写ロール周面に所定の深さを有する溝などが設けられている場合には、転写ロール周面に直接に接触させてもよいし、転写ロール周面が平坦な場合には塗工厚みに応じて転写ロール周面から先端までに所定の隙間を設けるように配備すればよい。なお、この第1ブレード4には、例えば、スエーデン鋼やポリエステルフィルムのものが使用される。
【0034】
第2ブレード5は、図1に示すように、平板状で転写ロール3を挟んで液溜槽2の左側部分を略密閉状態に閉塞するためのものである。つまり、第2ブレード5は、その基端が液溜槽3の上部に取り付けられており、その先端が転写ロール周面に向けて近接するように配備されている。したがって、転写ロール3の回転駆動を妨げないようになっている。なお、第2ブレード5は、第1ブレード4の反対側を閉塞できる部材であればよい。
【0035】
ガイドロール6,7は、基材Fに対する転写ロール3の塗工位置の前後に所定間隔をおいて2個配備されている。これら2個のガイドロール6,7のうち少なくともいずれかが微小下降し、基材Fとロール3の接触位置、つまり塗工箇所に所定の押圧力が作用するように、基材Fにテンションをかけるようになっている。
【0036】
塗工機1の構成としては、上述したグラビアコータに限定されるものではなく、例えばロールコータ、リバースコータ、キスコータ、コンマコータ、オフセットグラビアコータなどの液溜槽2が開放される形態の塗工方式などにも用いることもできる。
【0037】
次に、上述の塗工機の動作について説明する。
先ず、バルブVを開放して液溜槽2に塗布液Sを充填する。つまり、塗布液Sの液面が第1および第2ブレード4,5の下面に接触する位置まで塗布液Sを充填する。このとき、図示しないレベルゲージにより液面高さが逐次に検出され、所定量以上の塗布液Sが液溜槽2に供給されると、過剰供給された分の塗布液Sが排出口10から自動的に配管Rに排出される。
【0038】
次に所定速度で基材Fが搬送されると、この搬送に同調して転写ロール3が回転駆動し、転写ロール周面に付着した塗布液Sの厚みを第1ブレード4で調節しながら基材Fに塗布液Sを塗工する。このとき、塗工位置である転写ロール3と基材Fの接触位置に所定の押圧力がかかるようにガイドロール6が微小下降する。この状態を維持したまま、基材Fに塗布液Sが塗工されてゆく。
【0039】
なお、塗布液Sを塗工する過程で、液溜槽2から減少する塗布液Sの量は、バルブVの開閉操作により供給調節が行なわれ、液溜槽2に塗布液Sが常に充填された状態を維持する。
【0040】
また、上述の塗工機1を用いてプラスチックフィルム、ガラス用フィルムなどの最終製品を製造可能な塗工装置を構成することもできる。
【0041】
具体的には、図2に示すように、帯状の基材Fを原反ロール20から供給する供給部21と、供給部21から供給される基材Fに塗布液Sを塗工する塗工機1と、塗工処理が施された基材Fを乾燥処理する乾燥部22と、乾燥処理を施した基材Fをボビン24に巻取り回収する回収部25などを備えることにより実現することができる。
【0042】
なお、乾燥部22としは、例えば図2に示すヒータ23や図示しない熱風のブローを送風するノズルなどを備えた乾燥炉などを使用し、その内部で基材Fをロール方式で搬送してもよいし、フローティング方式で搬送するようにしてもよい。
【0043】
以上のように、転写ロール3の回転中心軸Pを塗布液Sの貯留された液溜槽2の液面より下方に位置するように設置することにより、液面から基材Fまでの塗布液Sの搬送距離および搬送時間を短縮することができ、大気に塗布液Sが触れる時間を短縮できる。同様に基材Fに塗布液Sを塗工した後に転写ロール3に残渣した塗布液Sについても、大気に触れる時間を短縮することができる。
【0044】
したがって、搬送過程で塗布液Sが乾燥して転写ロール3に固着するのを防止することができ、かつ、塗布液搬送過程で転写ロール周面に付着した塗布液Sの流動を抑制することができる。その結果、基材Fに対する塗布液Sの塗工ムラや外観不良を解消することができる。
【0045】
また、転写ロール3を挟んで第1および第2ブレード4,5で液溜槽2を略密閉状態にすることにより、塗布液Sの大気接触が回避され、塗布液Sから溶媒が揮発することによる塗布液の濃度変化を防止することもできる。
【0046】
さらに、第1および第2ブレード4,5の下面に液面が接触するように塗布液Sを液溜槽2に充填することにより、転写ロール3の回転駆動に伴って発生する波による液面のうねりを無くすことができ、うねりの影響によるロール3への塗布液付着ムラを防止することができる。
【0047】
以下に、図1に示した塗工機1を用いて得られた離型紙の具体例と、図1に示す塗工機1を図4に示す従来機に置き換えて得られた離型紙との比較例とを示す。
【0048】
<具体例>
本具体例において、離型紙を製造する各種条件設定は以下の通りである。
【0049】
塗工する塗布液には、信越化学工業株式会社製の付加型シリコーン樹脂KS−778に触媒PL−50Tを1重量%配合し、n−ヘプタンで0.8重量%になるよう希釈化した塗布液を使用した。
【0050】
基材としては、東レ株式会社製のポリエステルフィルムS−105を使用した。
【0051】
塗工機の転写ロールには、直径100mmのグラビアロールを用い、東レ株式会社製のポリエステルフィルムS−105に塗布液を塗工した。このとき、基材走行速度とグラビアロールの回転速度を等速となるように設定し、塗工方法はダイレクトグラビア方式、つまり、基材の搬送方向とグラビアロールの回転方向とが逆になるようにした。
【0052】
また、液面から塗工位置までの距離を5mmとし、第1ブレードに厚さ0.4mmのスエーデン鋼製のものを、第2ブレードに厚さ0.25mmのポリエステルフィルムのものを使用した。
【0053】
以上の条件設定に基づき塗布液を基材に塗工した後、乾燥炉を用いて160℃で約3分の乾燥および反応をさせて離型紙を製造した。
【0054】
製造により得られた離型紙は、その表面に0.2μmのシリコーン樹脂が塗工されており、塗工面の反射光を目視により観察したところ、油膜状の塗工ムラによる外観不良は確認することができなかった。
【0055】
<比較例>
本比較例では、図4に示すように、上述の具体例装置における第2ブレードを備えず、かつ、グラビアロールの回転中心軸が塗布液の貯留された液溜槽の液面よりも高い位置に設置されている以外の条件設定は、先の具体例と同一である。
【0056】
本比較例により得られた離型紙は、その表面に0.2μmシリコーン樹脂が塗工されており、塗工面の反射光を目視により観察したところ、赤色と緑色で構成された油膜状の塗工ムラによる外観不良が確認された。
【0057】
以上のように、本具体例装置では、液面から塗工位置までの距離を短くするとともに、液溜槽を略密封状態にすることにより、搬送過程でグラビアロールに付着した塗布液の乾燥による固着、および液溜槽中の塗布液から溶媒が揮発して塗布液濃度が変化して発生する塗工ムラや外観不良を解消することがわかった。
【0058】
本発明は上述した実施例のものに限らず、次のように変形実施することもできる。
【0059】
(1)上記実施例では第1ブレード4と第2ブレード5により液溜槽2を略密閉状態に閉塞し、液溜槽2の塗布液Sを充填状態に維持していたが、塗布液Sを充填することなく液溜槽内で空間を有しながらも転写ロール3の回転中心軸Pを液面より下方に位置するように転写ロール3を設置してもよい。この場合、略密閉状態にある液溜槽内の湿度を調節し、塗布液Sの揮発を防止するようにするのが好ましい。
【0060】
(2)上記実施例では、第1ブレード4を液面に対して平行になるように設置していたが、図3に示すように、その先端が下方を向くように傾斜角を持たせて設置するようにしてもよい。この場合、第1ブレード4に弾性を有する材料を使用し、塗布液Sの塗工厚みを制御する。
【0061】
具体的には、搬送されてくる塗布液の接触により第1ブレード4に加わる押圧力と、その押圧力に対する第1ブレード4aの弾性力の関係を考慮しつつ第1ブレード4aの長さをスライド操作し、塗布液の塗工厚みを制御する。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、周面に塗布液を付着させて基材に塗布液を付着させる転写ロールの回転中心軸を塗布液の貯留された液溜槽の液面よりも下方に設置することにより、液面から塗工位置までの塗布液の搬送距離を短くすることができ、また、転写ロール周面に付着した塗布液が大気に接触する時間も短縮することができる。したがって、搬送過程で塗布液が乾燥して転写ロールに固着したり、転写ロール周面での塗布液の流動を抑制できたりするので、基材に対する塗工ムラや外観不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る塗工機の概略構成を示す側面図である。
【図2】実施例に係る塗工装置の概略構成を示した側面図である。
【図3】変形例装置の第1ブレードの構成を示す側面図である。
【図4】従来のグラビアロールの概略構成を示す側面図である。
【図5】従来のグラビア印刷機のインキング装置の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
2 … 液溜槽
3 … 転写ロール
4 … 第1ブレード
5 … 第2ブレード
6 … ガイドロール
7 … ガイドロール
S … 塗布液
T … 基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム状の基材に塗布液、例えば表面コート剤、粘着剤などを塗工する塗工方法および塗工機に関するものであって、特に、塗布液を基材に精度よく塗工する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来フィルム状の基材に塗布液を塗工する際にスロットダイコータ、キスコータ、グラビアコータ、バーコータ、リバースコータなどが利用されている。
【0003】
例えばグラビアコータを用いた場合、液溜槽に転写ロールの一部分を浸漬させている。この転写ロール周面に塗布液を付着させて回転駆動することにより転写ロール周面の塗布液がフィルム状の基材に搬送・塗工されるようになっている。転写ロールの浸漬部分は、図4に示すように、転写ロール40の回転中心軸Pが液面よりも高い位置となる状態を維持するように、転写ロール下部を浸漬している。
【0004】
このように液溜槽への転写ロールの浸漬部分が少ないと、液面から基材までの塗布液の搬送距離が長くなり、大気との接触時間も長くなって塗布液が乾燥して転写ロールに固着したり、その搬送過程で転写ロール周面に付着した塗布液が流動して塗工ムラが発生したりするなどの問題が生じている。
【0005】
また、転写ロールの回転に伴って発生する波による液面のうねりが転写ロール周面への塗布液付着ムラを招き、このことが原因で塗工ムラが発生するといった問題もある。
【0006】
この問題を解消するために、特開平10−235839号公報に記載されたグラビア印刷機のインキング装置が提案・実施されている。
【0007】
具体的には、図5に示すように、ロール状のグラビア印刷版50の回転方向に対してインキ転移部の略直後にチャンバー状のインキ供給部51と、略直前にブレード52を具備するチャンバー状インキ回収部53とを備えている。また、チャンバー状インキ供給部51とチャンバー状インキ回収部53との間のグラビア印刷版円周上を密閉するためのフード54を設けている。したがって、インキ搬送過程で、グラビア印刷版50の周面のインキS1が乾燥しないようになっている。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−235839号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−235839に記載のインキ印刷装置は次のような問題がある。
すなわち、インキS1が加圧されながらチャンバー状インキ供給部51からグラビア印刷版50に向けて供給されるので、図5に示す鎖線で囲む部分Aには液溜まりが発生し、長時間放置しておくとインキS1が乾燥して固着堆積し、グラビア印刷版50の回転を阻害したり、固着物がフード内に詰まったり、さらに固着物が搬送されブレード52の部分に堆積してインキS1の印刷ムラを発生させるといった問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、フィルム状の基材に塗布液を精度よく塗工する塗工方法およびそれを用いた塗工機を提供することを主たる目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、フィルム状の基材に転写ロールを介して塗布液を塗工する塗工方法において、
前記転写ロールの回転中心軸を、前記塗布液を貯留する液溜槽の液面より下方に位置するように設置し、転写ロールを回転駆動させながら基材に塗布液を塗工することを特徴とするものである。
【0012】
(作用・効果)請求項1に記載の発明によれば、転写ロールの回転中心軸を液溜槽の液面よりも下方に位置するように設置することにより、転写ロールに付着した塗布液を基材の塗工位置まで搬送する距離および時間を短縮することができる。
【0013】
したがって、塗布液が大気に触れる時間が短縮され、乾燥して転写ロールに固着するのを防止できる。また、その搬送過程で転写ロール周面に付着した塗布液の流動を抑制でき、基材に対する塗布液の塗工ムラや外観不良も防止できる。さらに、基材に塗布液を塗工した後に転写ロールに残渣した塗布液についても、大気に触れる時間を短縮することができ、転写ロールに塗布液が固着するのを防止でき、固着物の付着による塗工ムラや外観不良を防止することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗工方法において、前記液溜槽の上端から転写ロール周面の上部にその先端が近接するように2枚のブレードを対向配備し、液溜槽を略密閉状態にしたことを特徴とするものである。
【0015】
(作用・効果)請求項2に記載の発明によれば、2枚のブレードにより液溜槽が略密閉状態にされる。したがって、液溜槽の大気開放状態をなくして塗布液中の溶媒が大気中に揮発するのを回避できるので、塗布液の濃度変化を防止することができる。
【0016】
また、液溜槽に塗布液を貯留、充填することにより液溜槽内の空気を排除でき、槽内で塗布液が空気に接触するのを無くすことができる、結果、液面の乾燥を防止することができる。
【0017】
また、転写ロールの回転に伴って発生する波による液面のうねりを無くすことができ、転写ロール周面への塗布液付着ムラを防止できる、結果、基材に対する塗布液の塗工ムラを防止することができる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の塗工方法において、前記転写ロールを挟んで基材搬送方向の前後に配備した2個のガイドロールの少なくともいずれかにより基材が押圧されることを特徴とするものである。
【0019】
(作用・効果)請求項3に記載の発明によれば、転写ロールを挟んで基材搬送方向の前後に配備した2個のガイドロールの少なくともいずれかにより基材が押圧される。そのため、基材にテンションがかけられて塗布液の塗工箇所に所定の押圧力が作用する。したがって、転写ロールに対向して基材を狭持するバックアップロールを用いる必要が無い。その結果、転写ロールとバックアップロールとで基材を狭持しながら搬送・塗工する過程で、バックアップロールの偏心や転写ロール形状のバラツキにより基材に直接に振動を与えて発生させていた塗工ムラを解消することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、フィルム状の基材に転写ロールを介して塗布液を塗工する塗工機において、
前記塗布液を貯留する液溜槽と、
前記液溜槽内の液面よりも下方に回転中心軸が位置するように設置した転写ロールと、
前記転写ロール周面に付着した塗布液の厚みを調節する第1ブレードと
を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
(作用・効果)請求項4に記載の発明によれば、転写ロールの回転中心軸を液溜槽の液面より下方に設置し、回転駆動させて転写ロール周面に塗布液を付着させて搬送し、その過程で第1ブレードにより塗布液の塗工厚みが調節される。したがって、転写ロールに付着した塗布液の搬送距離および時間が短縮されるので、塗布液が乾燥して転写ロールに固着するのを防止することができる。また、その搬送過程で転写ロール周面に付着した塗布液の流動を抑制でき、基材に対する塗布液の塗工ムラも防止できる。さらに、基材に塗布液を塗工した後に転写ロールに残渣した塗布液についても、大気に触れる時間を短縮することができ、転写ロールに塗布液が固着するのを防止でき、固着物の付着による塗工ムラを防止することができる。その結果、請求項1に記載の塗工方法を好適に実現することができる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の塗工機において、前記転写ロールを挟んで前記第1ブレードの反対側に液溜槽を閉塞する第2ブレードを備えたことを特徴とするものである。
【0023】
(作用・効果)請求項5に記載の発明によれば、転写ロールを挟んで第1ブレードの反対側に第2ブレードを設けることにより、液溜槽を略密閉状態にできる。したがって、大気開放による液面からの溶媒の揮発が回避され、塗布液の濃度変化により発生する塗工ムラや外観不良を解消することができる、結果、請求項2に記載の塗工方法を好適に実現することができる。
【0024】
本発明は、次のような解決手段も開示している。
【0025】
(1)フィルム状の基材を供給する基材供給手段と、供給される基材に塗布液を塗工する塗工手段と、塗布液が塗工された基材を乾燥する乾燥手段と、乾燥処理された基材を回収する回収手段とを備えた塗工装置において、
前記塗工手段は、塗布液を貯留する液溜槽と、
前記液溜槽内の液面よりも下方に回転中心軸が位置するように設置した転写ロールと、
前記転写ロールに付着した塗布液の厚みを調節するブレードと
を備えたことを特徴とする塗工装置。
【0026】
(1)の発明によれば、転写ロールの回転中心軸を液面よりも下方に位置するように設置することにより、液面から基材までの塗布液の搬送距離を短くされ、塗布液が大気に触れる時間も短縮される。所定の濃度を維持した塗布液は、基材に略均一に塗工される。塗布液が塗工された基材は、乾燥手段へと搬送されて乾燥処理された後に回収される。したがって、塗布液が基材に塗工されるまでの時間を短縮することにより、塗布液の乾燥による転写ロールへの固着の防止、およびその搬送過程での転写ロール周面に付着した塗布液の流動を抑制できる、結果、塗工ムラや外観不良の発生を防止することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
本実施例に係る塗工機の概略構成について、図を参照して説明する。図1は、本発明に係る塗工機の一例を示した側面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施例に係る塗工機1は、塗布液Sを貯留する液溜槽2と、液溜槽内で回転自在に軸支された転写ロール3と、先端が転写ロール周面に近接するように対向配備した第1ブレード4および第2ブレード5と、転写ロール3の上方に基材Fを搬送案内する2個のガイドロール6,7を備えた構成をしている。以下、各部の構成を詳細に説明する。
【0029】
液溜槽2は、転写ロール周面に塗布液Sを付着させるためのものであり、その内部に塗布液Sを供給する供給口9(図中左側)と、液溜槽内に過剰供給された塗布液Sを排出循環させる排出口10(図中右側)とを備えている。つまり、液溜槽2は、その内部に所定の液量を貯留(充填)した状態を維持するようになっており、所定量を超えた塗布液Sは、排出口10から排出されて配管Rを通り供給口9に戻るようになっている。
【0030】
配管Rには、バルブVを介して塗布液供給源11が連接されている。つまり、塗工に使用されて減少しただけの塗布液Sを供給補充するようになっている。例えば、レベルゲージにより液溜槽内の液面を逐次検出し、検出結果と予め設定した液面の基準値とを比較し、求まる偏差に応じてバルブVを開放操作して塗布液Sを供給すればよい。
【0031】
転写ロール3は、その周面に塗布液Sを付着して搬送し、基材Fにその塗布液Sを塗工するものである。この転写ロール3は、その回転中心軸Pが塗布液の貯留された液溜槽2の液面よりも下方に位置するように設置されている。なお、転写ロール3としては、例えば、グラビアロール、コンマロール、およびキスロールなどが挙げられる。
【0032】
第1ブレード4は、平板状で基材Fに塗工する塗布液Sの塗工厚みを調節するものである。具体的には、転写ロール3に付着した塗布液Sの塗工量(厚み)を調節している。第1ブレード4はその基端が液溜槽2の上部に取り付けられており、その先端が転写ロール周面に向けて近接または接触するように配備されている。第1ブレード4を液溜槽2に取り付けることにより、図1に示すように、転写ロール3を挟んで液溜槽2の右側部分を略密閉状態にすることができる。
【0033】
つまり、第1ブレード4の先端は、使用する転写ロール3にもよるが、グラビアロールのように転写ロール周面に所定の深さを有する溝などが設けられている場合には、転写ロール周面に直接に接触させてもよいし、転写ロール周面が平坦な場合には塗工厚みに応じて転写ロール周面から先端までに所定の隙間を設けるように配備すればよい。なお、この第1ブレード4には、例えば、スエーデン鋼やポリエステルフィルムのものが使用される。
【0034】
第2ブレード5は、図1に示すように、平板状で転写ロール3を挟んで液溜槽2の左側部分を略密閉状態に閉塞するためのものである。つまり、第2ブレード5は、その基端が液溜槽3の上部に取り付けられており、その先端が転写ロール周面に向けて近接するように配備されている。したがって、転写ロール3の回転駆動を妨げないようになっている。なお、第2ブレード5は、第1ブレード4の反対側を閉塞できる部材であればよい。
【0035】
ガイドロール6,7は、基材Fに対する転写ロール3の塗工位置の前後に所定間隔をおいて2個配備されている。これら2個のガイドロール6,7のうち少なくともいずれかが微小下降し、基材Fとロール3の接触位置、つまり塗工箇所に所定の押圧力が作用するように、基材Fにテンションをかけるようになっている。
【0036】
塗工機1の構成としては、上述したグラビアコータに限定されるものではなく、例えばロールコータ、リバースコータ、キスコータ、コンマコータ、オフセットグラビアコータなどの液溜槽2が開放される形態の塗工方式などにも用いることもできる。
【0037】
次に、上述の塗工機の動作について説明する。
先ず、バルブVを開放して液溜槽2に塗布液Sを充填する。つまり、塗布液Sの液面が第1および第2ブレード4,5の下面に接触する位置まで塗布液Sを充填する。このとき、図示しないレベルゲージにより液面高さが逐次に検出され、所定量以上の塗布液Sが液溜槽2に供給されると、過剰供給された分の塗布液Sが排出口10から自動的に配管Rに排出される。
【0038】
次に所定速度で基材Fが搬送されると、この搬送に同調して転写ロール3が回転駆動し、転写ロール周面に付着した塗布液Sの厚みを第1ブレード4で調節しながら基材Fに塗布液Sを塗工する。このとき、塗工位置である転写ロール3と基材Fの接触位置に所定の押圧力がかかるようにガイドロール6が微小下降する。この状態を維持したまま、基材Fに塗布液Sが塗工されてゆく。
【0039】
なお、塗布液Sを塗工する過程で、液溜槽2から減少する塗布液Sの量は、バルブVの開閉操作により供給調節が行なわれ、液溜槽2に塗布液Sが常に充填された状態を維持する。
【0040】
また、上述の塗工機1を用いてプラスチックフィルム、ガラス用フィルムなどの最終製品を製造可能な塗工装置を構成することもできる。
【0041】
具体的には、図2に示すように、帯状の基材Fを原反ロール20から供給する供給部21と、供給部21から供給される基材Fに塗布液Sを塗工する塗工機1と、塗工処理が施された基材Fを乾燥処理する乾燥部22と、乾燥処理を施した基材Fをボビン24に巻取り回収する回収部25などを備えることにより実現することができる。
【0042】
なお、乾燥部22としは、例えば図2に示すヒータ23や図示しない熱風のブローを送風するノズルなどを備えた乾燥炉などを使用し、その内部で基材Fをロール方式で搬送してもよいし、フローティング方式で搬送するようにしてもよい。
【0043】
以上のように、転写ロール3の回転中心軸Pを塗布液Sの貯留された液溜槽2の液面より下方に位置するように設置することにより、液面から基材Fまでの塗布液Sの搬送距離および搬送時間を短縮することができ、大気に塗布液Sが触れる時間を短縮できる。同様に基材Fに塗布液Sを塗工した後に転写ロール3に残渣した塗布液Sについても、大気に触れる時間を短縮することができる。
【0044】
したがって、搬送過程で塗布液Sが乾燥して転写ロール3に固着するのを防止することができ、かつ、塗布液搬送過程で転写ロール周面に付着した塗布液Sの流動を抑制することができる。その結果、基材Fに対する塗布液Sの塗工ムラや外観不良を解消することができる。
【0045】
また、転写ロール3を挟んで第1および第2ブレード4,5で液溜槽2を略密閉状態にすることにより、塗布液Sの大気接触が回避され、塗布液Sから溶媒が揮発することによる塗布液の濃度変化を防止することもできる。
【0046】
さらに、第1および第2ブレード4,5の下面に液面が接触するように塗布液Sを液溜槽2に充填することにより、転写ロール3の回転駆動に伴って発生する波による液面のうねりを無くすことができ、うねりの影響によるロール3への塗布液付着ムラを防止することができる。
【0047】
以下に、図1に示した塗工機1を用いて得られた離型紙の具体例と、図1に示す塗工機1を図4に示す従来機に置き換えて得られた離型紙との比較例とを示す。
【0048】
<具体例>
本具体例において、離型紙を製造する各種条件設定は以下の通りである。
【0049】
塗工する塗布液には、信越化学工業株式会社製の付加型シリコーン樹脂KS−778に触媒PL−50Tを1重量%配合し、n−ヘプタンで0.8重量%になるよう希釈化した塗布液を使用した。
【0050】
基材としては、東レ株式会社製のポリエステルフィルムS−105を使用した。
【0051】
塗工機の転写ロールには、直径100mmのグラビアロールを用い、東レ株式会社製のポリエステルフィルムS−105に塗布液を塗工した。このとき、基材走行速度とグラビアロールの回転速度を等速となるように設定し、塗工方法はダイレクトグラビア方式、つまり、基材の搬送方向とグラビアロールの回転方向とが逆になるようにした。
【0052】
また、液面から塗工位置までの距離を5mmとし、第1ブレードに厚さ0.4mmのスエーデン鋼製のものを、第2ブレードに厚さ0.25mmのポリエステルフィルムのものを使用した。
【0053】
以上の条件設定に基づき塗布液を基材に塗工した後、乾燥炉を用いて160℃で約3分の乾燥および反応をさせて離型紙を製造した。
【0054】
製造により得られた離型紙は、その表面に0.2μmのシリコーン樹脂が塗工されており、塗工面の反射光を目視により観察したところ、油膜状の塗工ムラによる外観不良は確認することができなかった。
【0055】
<比較例>
本比較例では、図4に示すように、上述の具体例装置における第2ブレードを備えず、かつ、グラビアロールの回転中心軸が塗布液の貯留された液溜槽の液面よりも高い位置に設置されている以外の条件設定は、先の具体例と同一である。
【0056】
本比較例により得られた離型紙は、その表面に0.2μmシリコーン樹脂が塗工されており、塗工面の反射光を目視により観察したところ、赤色と緑色で構成された油膜状の塗工ムラによる外観不良が確認された。
【0057】
以上のように、本具体例装置では、液面から塗工位置までの距離を短くするとともに、液溜槽を略密封状態にすることにより、搬送過程でグラビアロールに付着した塗布液の乾燥による固着、および液溜槽中の塗布液から溶媒が揮発して塗布液濃度が変化して発生する塗工ムラや外観不良を解消することがわかった。
【0058】
本発明は上述した実施例のものに限らず、次のように変形実施することもできる。
【0059】
(1)上記実施例では第1ブレード4と第2ブレード5により液溜槽2を略密閉状態に閉塞し、液溜槽2の塗布液Sを充填状態に維持していたが、塗布液Sを充填することなく液溜槽内で空間を有しながらも転写ロール3の回転中心軸Pを液面より下方に位置するように転写ロール3を設置してもよい。この場合、略密閉状態にある液溜槽内の湿度を調節し、塗布液Sの揮発を防止するようにするのが好ましい。
【0060】
(2)上記実施例では、第1ブレード4を液面に対して平行になるように設置していたが、図3に示すように、その先端が下方を向くように傾斜角を持たせて設置するようにしてもよい。この場合、第1ブレード4に弾性を有する材料を使用し、塗布液Sの塗工厚みを制御する。
【0061】
具体的には、搬送されてくる塗布液の接触により第1ブレード4に加わる押圧力と、その押圧力に対する第1ブレード4aの弾性力の関係を考慮しつつ第1ブレード4aの長さをスライド操作し、塗布液の塗工厚みを制御する。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、周面に塗布液を付着させて基材に塗布液を付着させる転写ロールの回転中心軸を塗布液の貯留された液溜槽の液面よりも下方に設置することにより、液面から塗工位置までの塗布液の搬送距離を短くすることができ、また、転写ロール周面に付着した塗布液が大気に接触する時間も短縮することができる。したがって、搬送過程で塗布液が乾燥して転写ロールに固着したり、転写ロール周面での塗布液の流動を抑制できたりするので、基材に対する塗工ムラや外観不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る塗工機の概略構成を示す側面図である。
【図2】実施例に係る塗工装置の概略構成を示した側面図である。
【図3】変形例装置の第1ブレードの構成を示す側面図である。
【図4】従来のグラビアロールの概略構成を示す側面図である。
【図5】従来のグラビア印刷機のインキング装置の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
2 … 液溜槽
3 … 転写ロール
4 … 第1ブレード
5 … 第2ブレード
6 … ガイドロール
7 … ガイドロール
S … 塗布液
T … 基材
Claims (5)
- フィルム状の基材に転写ロールを介して塗布液を塗工する塗工方法において、
前記転写ロールの回転中心軸を、前記塗布液を貯留する液溜槽の液面より下方に位置するように設置し、転写ロールを回転駆動させながら基材に塗布液を塗工することを特徴とする塗工方法。 - 請求項1に記載の塗工方法において、
前記液溜槽の上端から転写ロール周面の上部にその先端が近接するように2枚のブレードを対向配備し、液溜槽を略密閉状態にしたことを特徴とする塗工方法。 - 請求項1または請求項2に記載の塗工方法において、
前記転写ロールを挟んで基材搬送方向の前後に配備した2個のガイドロールの少なくともいずれかにより基材が押圧されることを特徴とする塗工方法。 - フィルム状の基材に転写ロールを介して塗布液を塗工する塗工機において、
前記塗布液を貯留する液溜槽と、
前記液溜槽内の液面よりも下方に回転中心軸が位置するように設置した転写ロールと、
前記転写ロール周面に付着した塗布液の厚みを調節する第1ブレードと
を備えたことを特徴とする塗工機。 - 請求項4に記載の塗工機において、
前記転写ロールを挟んで前記第1ブレードの反対側に液溜槽を閉塞する第2ブレードを備えたことを特徴とする塗工機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002345670A JP2004174421A (ja) | 2002-11-28 | 2002-11-28 | 塗工方法および塗工機 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007268521A (ja) * | 2006-03-08 | 2007-10-18 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 塗布膜形成装置用前処理装置及び塗布膜形成装置用前処理方法、並びに、塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法 |
JP2010075777A (ja) * | 2008-09-24 | 2010-04-08 | Toray Ind Inc | 塗布方法および塗布装置 |
JP2012130896A (ja) * | 2010-12-24 | 2012-07-12 | Nakamoto Pakkusu Kk | 塗工装置 |
KR101794224B1 (ko) * | 2015-08-05 | 2017-11-07 | (주)케이에프엠 | 닥터챔버 |
-
2002
- 2002-11-28 JP JP2002345670A patent/JP2004174421A/ja active Pending
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