JP2004174336A - 緩衝用キャップ - Google Patents
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Abstract
【課題】液の出入りに伴う液圧の緩衝作用が優れた、中空糸膜モジュール用の緩衝用キャップの提供。
【解決手段】透過水出口20内に緩衝用キャップ30が取付られており、緩衝用キャップ30の中空糸膜束16に面した開口部53はハニカム面となっている。透過水の排出により、中空糸膜束16がハニカム面と接触した場合、鋭角部分がないため、損傷されにくい。
【選択図】 図2
【解決手段】透過水出口20内に緩衝用キャップ30が取付られており、緩衝用キャップ30の中空糸膜束16に面した開口部53はハニカム面となっている。透過水の排出により、中空糸膜束16がハニカム面と接触した場合、鋭角部分がないため、損傷されにくい。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種排水、天然水等の浄化処理に好適な中空糸膜モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
液出入口を有するケースハウジング内に所要数の中空糸膜束を収容し、ケースハウジング内への液(原水、透過水等)の出入りを前記液出入口のみにより行うタイプの中空糸膜モジュールがあり、このようなタイプのものは、比較的大型のモジュールに適用されることが多い。
【0003】
しかし、このようなタイプの中空糸膜モジュールを用いて濾過運転するとき、液出入口から原水、透過水等が出入りすることなるため、液出入口に面した位置にある中空糸膜束のみが、原水、透過水等の出入りに伴う圧力を受け続ける結果、複数の中空糸膜束が揺れて、互いに衝突を繰り返すことになる。
【0004】
従来の中空糸膜モジュールにおける液出入口は、図6(a)で示すようなものである。中空糸膜モジュール100は、ハウジング本体部12内に所要数の中空糸膜束16が収容されており、ハウジング本体部12の側面には、液出入口20が設けられている。液出入口20の内側開口部20aは、図6(b)で示すような円形であり、運転していないときは、内側開口部20aの周縁と中空糸膜束16とは接触していない。しかし、運転を開始すると、液の出入りに伴って中空糸膜束16が揺れ動くため、内側開口部20aの周縁(特に鋭角なエッジ部分)と中空糸膜束16が衝突することが避けられない。
【0005】
上記のような衝突が生じた場合、中空糸膜束を構成する中空糸膜の断線等の破損が生じやすく、中空糸膜束の内、特定部位の中空糸膜の交換頻度が高くなるという問題があり、交換作業による濾過運転の中断、運転コストの上昇等の問題が生じる。なお、関連する先行技術として、液出入口部分に中空糸膜保護板を有する中空糸膜モジュールが知られている。(特開平8−206468号公報)
本発明は、中空糸膜モジュールの液出入口付近において、液出入りに伴う液圧を緩和することで、中空糸膜の損傷を防止し、長期間継続して安定した濾過運転ができるようにする、緩衝用キャップ、及びそれを用いた中空糸膜モジュールを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、課題の解決手段として、ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面から突き出して液出入口が設けられた中空糸膜モジュールにおいて、前記液出入口に取り付ける緩衝用キャップであり、
前記緩衝用キャップが、筒状緩衝部と筒状緩衝部の一端開口部に固着された透過水キャップからなり、筒状緩衝部の一部と透過水キャップがケースハウジング外に位置し、筒状緩衝部の一部と他端側開口部がケースハウジング内に位置するように取り付けられるものであり、
前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造である緩衝用キャップを提供する。
【0007】
筒状緩衝部と透過水キャップは、溶接等の手段により固着一体化されたものであるが、最初から一体の部材となるように作製したものでも良い。
【0008】
このように開口部が網状構造である緩衝用キャップにすることにより、図6で示した液出入口と比べると、液の出入りに伴う圧力を緩和することができる。更に、図6で示した液出入口と比べると、鋭角なエッジ部分が存在しないため、中空糸膜束の揺れにより、中空糸膜束と開口部が衝突したときに生じる衝撃の度合いを大幅に低下させることができる。更に、筒状緩衝部の一部と他端側開口部がケースハウジング内に位置するように取り付けられるため、ケースハウジング内周面と中空糸膜束との間に流路が確保できるので、揺れ動いた中空糸膜束により、開口部に至る流路の閉塞が防止される。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造であり、かつ複数の支持部材により開口部の外表面が仕切られているものである。
【0010】
このように網状構造の開口部の外表面を複数の支持部材で仕切ることにより、中空糸膜束と開口部が衝突したとき、主に中空糸膜束と支持部材とが衝突し、中空糸膜束と網状構造との衝突が制限されるので、衝突時における衝撃をより緩和することができる。更に支持部材により、網状構造の開口部を補強することができるので、耐久性が高められる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部の網状構造がハニカム構造であるものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップの網状構造である開口部の下記式から求められる開口率(A)が5〜80%であるものである。
【0013】
開口部中の孔の占有面積(A2)/開口部の全面積(A1)×100
このように開口率(A)を所定範囲内に設定することにより、好適な通液量を確保すると共に、液の出入りに伴う液圧が過度にならないように調整することができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、課題の他の解決手段として、ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面から突き出して液出入口が設けられた中空糸膜モジュールにおいて、前記液出入口に取り付ける緩衝用キャップであり、
前記緩衝用キャップが、筒状緩衝部と筒状緩衝部の一端開口部に固着された透過水キャップからなり、筒状緩衝部の一部と透過水キャップがケースハウジング外に位置し、筒状緩衝部の一部と他端側開口部がケースハウジング内に位置するように取り付けられるものであり、
前記緩衝用キャップの内、筒状緩衝部側面の少なくとも一部と、ケースハウジング内に位置する開口部が網状構造である緩衝用キャップを提供する。
【0015】
このように筒状緩衝部側面と開口部の両方を網状構造にすることにより、液の出入りが筒状緩衝部側面と開口部の両方からなされるため、液圧の緩衝作用がより高められると共に、請求項1の発明と同様の作用がなされる。更に、突設された液出入口と緩衝用キャップとの間隙に存在する液が筒状緩衝部側面の網状構造を経て入れ代えられるため、前記間隙における液の滞留が防止される。液の滞留が長期に亘ると、腐敗発生等の要因ともなるおそれがある。なお、筒状緩衝部側面は、一部又は全部を網状構造にすることができる。
【0016】
筒状緩衝部側面と開口部の網状構造の網目の大きさは異なっていても良く、この網目の大きさは、筒状緩衝部側面の網目の大きさが、開口部の網目よりも大きいことが好ましい。このような網目の関係にすることにより、好適な通液量を確保すると共に、液の滞留を防止できる。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、筒状緩衝部の長さが調整できるものである。ケースハウジングの容積、中空糸膜束の充填率の大小に伴う、液出入口と中空糸膜束との間隔の変化等に応じて、緩衝用キャップの長さが調整できるので好ましい。
【0018】
請求項9に係る発明は、請求項5〜8のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造であり、かつ複数の支持部材により開口部の外表面が仕切られているものである。
【0019】
請求項10に係る発明は、請求項5〜9のいずれかに記載の中空糸膜モジュールにおいて、筒状緩衝部側面及び/又はケースハウジング内に位置する開口部の網状構造がハニカム構造であるものである。
【0020】
請求項11に係る発明は、請求項5〜10のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップの網状構造である開口部の下記式から求められる開口率(A)が5〜50%であるものである。
【0021】
開口部中の孔の占有面積(A2)/開口部全面積(A1)×100
このように開口率(A)を所定範囲内に設定することにより、好適な通液量を確保すると共に、液の出入りに伴う液圧が過度にならないように調整することができる。筒状緩衝部側面が網状構造であり、前記網目からも液の出入りがあるため、請求項4に係る発明と比べると、開口率(A)は低く設定できる。
【0022】
請求項12に係る発明は、請求項5〜11のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップの網状構造である筒状緩衝部側面の下記式から求められる開口率(B)が51〜80%であるものである。
【0023】
筒状緩衝部側面中の孔の占有面積(B2)/筒状緩衝部側面の全面積(B1)×100
このように開口率(B)を所定範囲内に設定することにより、開口部からの液の出入りを補完できると共に、液の滞留を防止できる。
【0024】
請求項13に係る発明は、請求項5〜12のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、開口部の開孔率(A)と筒状緩衝部側面の開孔率(B)との比率(A/B)が50/51〜5/80であるものである。
【0025】
開口率(A)及び(B)の比率を所定範囲に設定することにより、上記したそれぞれの作用が、より円滑に行われる。
【0026】
請求項14に係る発明は、他の課題の解決手段として、ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面に液出入口が設けられた中空糸膜モジュールであり、
前記液出入口に請求項1〜13のいずれかの緩衝用キャップが取り付けられおり、前記緩衝用キャップの作用により、液の出入りに伴う中空糸膜に対する圧力が緩和された中空糸膜モジュールを提供する。
【0027】
このように緩衝用キャップを取り付けることにより、中空糸膜モジュールの液出入口付近において、液出入りに伴う液圧を緩和することができるので、中空糸膜の損傷を防止し、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになる。
【0028】
請求項15に係る発明は、請求項14記載の中空糸膜モジュールにおいて、液出入口が、ケースハウジングの長さ方向中央部又はその近傍の側面に設けられているものである。
【0029】
請求項16に係る発明は、請求項14又は15記載の中空糸膜モジュールにおいて、所要数の中空糸膜が束ねられ、一端又は両端が固着された中空糸膜束が複数収容されているものである。
【0030】
請求項17に係る発明は、請求項14〜16のいずれかに記載の中空糸膜モジュールにおいて、緩衝用キャップが、ケースハウジング内に面した開口部と中空糸膜が正対するように取り付けられているものである。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の緩衝用キャップ、及びそれを用いた中空糸膜モジュールの実施の形態を説明する。
【0032】
(1)実施の形態1
図1は、緩衝用キャップ30を取り付けた中空糸膜モジュール10の長さ方向への断面図、図2(a)は、図1の幅方向への断面図、図2(b)は、図2(a)の緩衝用キャップ30の開口部を示す部分正面図である。
【0033】
中空糸膜モジュール10は、筒状のハウジング本体部12と、上部キャップ14と下部キャップ15とから外殻(ケースハウジング)が形成されている。なお、下部キャップ15を設けずに、ハウジング本体部12の下部を閉塞して底部を設けても良い。これらのハウジング本体部12、上部キャップ14、下部キャップ15は、繊維強化樹脂又はステンレス製であることが好ましい。
【0034】
上部キャップ14には、フランジ14bを有する上部出入口(原水供給口、透過水出入口又は逆圧洗浄水出入口)14aが設けられており、下部キャップ15には、フランジ15bを有する下部液出入口(原水供給口、透過水出入口又は逆圧洗浄水出入口)15aが設けられている。
【0035】
上部出入口14aには、例えば濃縮液ラインを形成するパイプ40を接続するが、このとき、上部出入口14aのフランジ14bと、パイプ40のフランジ41との間にはシール材を介在させることが望ましい。
【0036】
下部出入口15aには、例えば原水供給ラインを形成するパイプ42を接続するが、このとき、上部出入口15aのフランジ15bと、パイプ42のフランジ43との間にはシール材を介在させることが望ましい。
【0037】
ハウジング本体部12の側面中央部には、前記側面から外側に突き出た状態で、筒状の透過水出入口20(以下、20は透過水出入口とするが、原水供給口又は濃縮液出口にすることもできる。)が設けられている。
【0038】
透過水出入口20には、筒状緩衝部50と透過水キャップ21の組み合わせからなる緩衝用キャップ30が取り付けられている。透過水出入口20と緩衝用キャップ30は、接続部(透過水出入口20の端面と透過水キャップ21の端面の接触部)を外側から締付手段80(例えば、Vバンドカップリング;横浜ゴム(株)製)により締め付けることで固定されている。
【0039】
緩衝用キャップ30は、筒状緩衝部50(筒状本体部51)の一端開口部52の外周縁部と透過水キャップ21の内周面が、溶接部35において溶接固着されたものである。透過水キャップ21の開口部にはフランジ22が設けられており、先端にフランジ45を有する透過水ラインを形成するパイプ44とシール材を介して接続される。
【0040】
筒状緩衝部50は、筒状本体部51と、筒状本体部51の両端側に設けられた2つの開口部52、53を有している。筒状本体部51の外周面には、透過水出入口20の内周面と筒状本体部51の外周面との間の間隙に液が滞留することを防止するための所要数の液抜き孔36を設けることが望ましい。
【0041】
緩衝用キャップ30は、筒状緩衝部50の一部、一端側開口部52及び透過水キャップ21がハウジング本体部12外に位置し、筒状緩衝部50の一部と他端側開口部53がハウジング本体部12内に位置するように取り付けられている。
【0042】
開口部53のハウジング本体部12内に向く表面は、網状構造(ハニカム構造)となっており、透過水を通過させる数多くの六角形の通水孔54を有している。開口部53の開口率(A)は、好ましくは5〜80%、より好ましくは40〜70%、更に好ましくは50〜65%である。このように開口率(A)を所定範囲内に設定することにより、好適な通液量を確保すると共に、液の出入りに伴う液圧が過度にならないように調整することができる。
【0043】
開口部(ハニカム構造面)53は、図2(a)に示すように湾曲した形状となっており、開口部53の周縁部は、ハウジング本体部12の内周面12aから僅かに突き出されている。この突き出し部分の長さは、10mm以上であることが好ましく、30〜50mmであることがより好ましい。
【0044】
中空糸膜束16は、複数本の中空糸膜の一端又は両端が接着剤18で一体化された小さな束の集合体であり、小さな束同士は、それらの両端部において互いに接しており、接着剤18で一体化されている。一番外側の中空糸膜束16は、接着剤18によりハウジング本体部12端部の内壁面に固着されている。中空糸膜束16は、開口部(ハニカム構造面)53と正対している。
【0045】
このようにして中空糸膜束16同士を樹脂封止することにより、液の出入り(例えば、逆圧洗浄水の供給)に伴う流れによって中空糸膜束16同士が揺れて衝突を繰り返し、破損することが防止される。なお、下部キャップ15側は樹脂封止しなくても良いが、中空糸膜束16を液圧で揺れ難くする観点からは、上部キャップ14側と同様にして樹脂封止した方が好ましい。
【0046】
中空糸膜束16の充填率は特に制限されるものはないが、外側の中空糸膜束16の表面と、ハウジング本体部12の内周面12aとの間隔が、10mm以上であることが好ましく、30〜50mmであることがより好ましい。
【0047】
図1では、1つの中空糸膜束16の全体が、1つの結束手段26で被覆されている。結束手段26は、透水性でかつ伸縮性を有する筒状部材(但し、直径は中空糸膜束16の直径以下で、長さは中空糸膜束の長さと同程度のもの)、又は帯状部材(但し、幅は中空糸膜束の直径より大きくて、長さは中空糸膜束の長さと同程度のもの)を用いることができる。結束手段26として帯状部材を用いたときは、合わせ部分を接着する。
【0048】
結束手段26は、長さ方向の両端部が接着剤18の部分で中空糸膜束16と一体化されている。このように中空糸膜束16と一体化されていることにより、結束手段26が剥がれたり、脱落したりすることが防止される。
【0049】
また、帯状部材、環状部材(例えばOリング)又は管状部材(例えば樹脂又はゴムチューブ)のような結束手段により、中空糸膜束16の長さ方向中央部を結束することができる。帯状部材及び管状部材は巻き付け、更に締め付けて使用するため、それらの長さは中空糸膜束16の結束部の直径より長く、環状部材は穴に中空糸束を挿入して使用するため、その直径は、中空糸膜束16の結束部の直径以下である。
【0050】
図1に示す中空糸膜モジュール10の透過水出入口20に、図2に示す緩衝用キャップ30を取り付けた場合の作用について説明する。
【0051】
緩衝用キャップ30は、図2(b)に示すとおり、開口部53がハニカム構造となっているため、図6で示した液出入口と比べると、液の出入りに伴う液圧を低下させることができ(緩衝作用)、鋭角なエッジ部分も存在しない。
【0052】
このため、中空糸膜モジュール10を運転した際、透過水出入口20から透過水が排出されるときの流れ(液圧)により、中空糸膜束16が透過水出入口20(開口部53)に引き寄せられ、開口部53のハニカム構造面に衝突したときに生じる衝撃の度合いが大幅に軽減される。また、ハニカム構造にすることにより、強度が高められるため、耐久性が向上される。
【0053】
このように緩衝用キャップ30を取り付けることにより、中空糸膜モジュール10の透過水出入口20付近において、透過水の出入りに伴う液圧を緩和することができるので、中空糸膜束16の損傷が防止され、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになる。筒状本体部51に液抜き孔36を設けることにより、筒状本体部51の外周面と透過水出入口20の内周面との間の間隙に、原水、濃縮水、透過水、懸濁質(SS)が滞留することが防止される。
【0054】
(2)実施の形態2
図3(a)は、図3の緩衝用キャップ30を取り付けた、図1の中空糸膜モジュール10の幅方向への断面図、図3(b)は、図3(a)の筒状緩衝部50(筒状本体部51)の開口部53を示す部分正面図である。図3の緩衝用キャップ30は、開口部53のハウジング本体部12内に向く表面の構造が図2と異なるのみで、他は同一の構成のものである。
【0055】
開口部53は、網状構造(ハニカム構造)となっており、透過水を通過させる数多くの六角形の通水孔54を有している。ハニカム構造面には、円形枠56と、円形枠56に固着された複数の支持部材55とが配置されている。支持部材55は、開口部(ハニカム構造面)53を複数に区画している。この区画状態は、図3(b)のように一方向に区画されていても良いし、格子状のように複数方向に区画されていても良い。
【0056】
このように開口部53の外表面を複数の支持部材55で仕切ることにより、中空糸膜束16と開口部(ハニカム構造面)53が接触したとき、主に中空糸膜束16と支持部材55とが衝突し、中空糸膜束16とハニカム構造面53との衝突が制限されるので、衝突における衝撃をより緩和することができる。更に、支持部材55を配置することにより、ハニカム構造面53を補強することができる。
【0057】
このように緩衝用キャップ30を取り付けることにより、中空糸膜モジュール10の透過水出入口20付近において、透過水の出入りに伴う液圧を緩和することができるので、中空糸膜束16の損傷が防止され、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになる。
【0058】
(3)実施の形態3
図4(a)は、図4の緩衝用キャップ30を取り付けた、図1の中空糸膜モジュール10の幅方向への断面図、図4(b)は、図4(a)の筒状緩衝部50(筒状本体部51)の開口部53を示す部分正面図である。
【0059】
図1に示す中空糸膜モジュール10の透過水出入口20内には、緩衝用キャップ30が取り付けられている。緩衝用キャップ30は、筒状緩衝部50(筒状本体部51)の一端開口部52の外周縁部と透過水キャップ21の内周面が、溶接部35において溶接固着されたものである。
【0060】
筒状緩衝部50(筒状本体部51)の一部、一端側開口部52、透過水キャップ21は、ハウジング本体部12外に位置し、筒状緩衝部50の一部と他端側開口部53は、ハウジング本体部12内に位置するように取り付けられている。
【0061】
開口部53のハウジング本体部12内に向く表面は、円形の網状構造(円形孔を有する構造)となっており、透過水を通過させる数多くの円形の通水孔54を有している。通水孔54を有した円形の網状構造の周縁には、所要数のビス59により、シリコーンゴム58が固定されている。このシリコーンゴム58により、中空糸膜束26が開口部に衝突したときの衝撃が緩和されるので、中空糸膜が損傷しにくくなる。本発明における他の実施形態においても、同様にして開口部周縁にシリコーンゴムを取り付けることができる。
【0062】
開口部53の開口率(A)は、好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%、更に好ましくは20〜30%である。このように開口率(A)を所定範囲内に設定することにより、好適な通液量を確保すると共に、液の出入りに伴う液圧が過度にならないように調整することができる。
【0063】
開口部(円形孔構造面)53は、図4(a)に示すように湾曲した形状となっており、開口部53の周縁部53aは、ハウジング本体部12の内周面12aから僅かに突き出されている。
【0064】
筒状本体部51は、大部分がハニカム構造面(筒状本体部51aは全面、筒状本体部51bは約半分の面)となっており、数多くの六角形の通水孔57が設けられている。六角形の通水孔57の大きさは、円形の通水孔54よりも大きくなっている。筒状本体部51のハニカム構造面ではない部分(図中の白い部分であり、溶接部35ではない部分)には、液抜き孔36が設けられている。
【0065】
筒状本体部51の開口率(B)は、好ましくは51〜80%、より好ましくは55〜75%、更に好ましくは60〜70%である。このように開口率(B)を所定範囲内に設定することにより、開口部53からの透過水の出入りを補完すると共に、液出入口20の内周面と筒状本体部51の外周面との間に存在する間隙に、透過水、原水、濃縮水、懸濁質(SS)等が滞留することが防止される。
【0066】
開孔率(A)と開孔率(B)との比率(A/B)は、好ましくは50/51〜5/80、より好ましくは40/65〜15/75、更に好ましくは30/60〜20/70である。このように開口率(A)、(B)を関係付けることにより、それぞれの開口率を所定範囲に設定したことによる作用が、より円滑に発揮される。
【0067】
筒状本体部51は、長さを調整自在にできるようなものが好ましい。図4(a)では、筒状本体部51を51a、51bの2つに分け、環状固定具60で結合固定している。このような長さ調整手段は、▲1▼筒状本体部51bを大径にし、筒状本体部51aをやや小さな径にして、大径の筒状本体部51bの中に、小径の筒状本体部51aを所要長さだけ差し込んだ後、環状固定具60で締め付けて固定する方法、▲2▼同径の2つの筒状本体部51a、51bを、環状固定具60で結合固定する方法等を適用できる。
【0068】
このようにして、筒状本体部51の長さを調整自在にすることにより、ハウジング本体部12の容積、中空糸膜束16の充填率の大小に伴う、開口部53と中空糸膜束16との間隔の変化等に応じて、筒状本体部51の長さが調整できるようになる。
【0069】
図1に示す中空糸膜モジュール10の透過水出入口20に、図4に示す緩衝用キャップ30を取り付けた場合の作用について説明する。
【0070】
緩衝用キャップ30は、図4に示すとおり、開口部53が円形孔構造で、筒状本体部51がハニカム構造となっているため、図1、図2及び図6で示した液出入口と比べると、液の出入りに伴う液圧を低下させることができ(緩衝作用)、図6で示した液出入口と比べると、鋭角なエッジ部分も存在しない。
【0071】
このため、中空糸膜モジュール10を運転した際、透過水出入口20から透過水が排出されるときの流れ(液圧)により、中空糸膜束16が透過水出入口20(開口部53)に引き寄せられ、開口部53のハニカム構造面に衝突したときに生じる衝撃の度合いが大幅に軽減される。
【0072】
また筒状本体部51をハニカム構造にして、必要に応じて液抜き孔36を設けることにより、筒状本体部51の外周面と透過水出入口20の内周面との間の間隙に、原水、濃縮水、透過水、懸濁質(SS)が滞留することが防止される。
【0073】
このように緩衝用キャップ30を取り付けることにより、中空糸膜モジュール10の透過水出入口20付近において、透過水の出入りに伴う液圧を緩和することができるので、中空糸膜束16の損傷が防止され、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになる。
【0074】
(4)実施の形態4
図5(a)は、図5の緩衝用キャップ30を取り付けた、図1の中空糸膜モジュール10の幅方向への断面図、図5(b)は、図5(a)の緩衝用キャップ30の開口部を示す部分正面図である。
【0075】
図5の緩衝用キャップ30は、図4の緩衝用キャップ30と、図3の緩衝用キャップ30を組み合わせた構造のものであるため、それぞれの緩衝用キャップ30を組み合わせた作用がなされる。
【0076】
【実施例】
実施例1
図1及び図4に示すような中空糸膜モジュールを製造した。詳細は次の通りである。
【0077】
(ケースハウジング)
ハウジング本体部12は、内径450mm、外径465mm、長さ1110mmのFRP製のものを用い、両端にはSUS製の上部及び下部キャップ14、15を取り付けた。14aが濃縮液出口、15aが原水供給口となる。
【0078】
(透過水出口)
ハウジング本体部12の長さ方向中央部に、開口径300mmの透過水出口20を設けた。
【0079】
(中空糸膜束)
内径0.8mm、外径1.3mm、長さ1110mmの酢酸セルロース中空糸膜2050本で1束とした。1つの大日本プラスチック社製のネトロン軽包装「HR3L白70」(袋状の網からなるもの。図1中の26)内に、1つの中空糸膜束16を挿入し、中空糸膜束16の中央部を含む、長さ1060mmに相当する部分が被覆された状態のものを計24束作製した。
【0080】
(中空糸膜束の取り付け)
計24束の中空糸膜束16をハウジング本体部12内に挿入し、遠心シール機(東邦機械工業(株)製,横型遠心成型機)により、ハウジング本体部12の両端側に位置する中空糸膜束16相互、及び中空糸膜束16とハウジング本体部12の内壁面とをウレタン系接着剤〔コロネート4428:ニッポラン4221=52:48(日本ポリウレタン(株)製)〕で接着封止した。接着剤層厚みは両端の合計で100mm、有効膜面積は120m2であった。
【0081】
更に、計24束の中空糸膜束全体の直径が約390mmになるように、大日本プラスチック社製のネトロン軽包装「HR3L白70」を巻いて結束した。
【0082】
(緩衝用キャップ及びその取り付け)
緩衝用キャップ30は、筒状本体部51(51a、51b)、開口部53、開口部52とを有し、開口部53には、厚さ2mmのシリコーンゴム58が固定されている。
【0083】
筒状本体部51aは、外径290mm、肉厚2mm、筒状本体部51bは、外径294mm、肉厚2mmであり、筒状本体部51b内に筒状本体部51aが挿入された後、全体の長さ(51a+51bの最短部の長さ)が138.5mmになるように調整し、環状固定具60により固定した。このように長さを調整することで、実施の形態1で説明したとおり、ハウジング本体部12の内周面12aからの開口部53の周縁部の突き出し長さ(図4(a)の突出部53aの突き出し長さ)が30mmになるように設定した。
【0084】
筒状本体部51aは、開口率(B)65%のハニカム構造、筒状本体部51bは開口率(B)65%のハニカム構造、開口部53は開口率(A)27%の円形孔構造とした。
【0085】
緩衝用キャップ30は、透過水出入口20のフランジ部との間にOリング70を介した状態で挿入し、図2に示すようにして、Vバンドカップリング;横浜ゴム(株)製)を用いて固定した。
【0086】
以上のような中空糸膜モジュールを用いて、通常の濾過運転を行い、中空糸膜の損傷の程度を観察した。濾過運転条件は、以下のとおりである。但し、59分間濾過運転した後、次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄水(有効塩素濃度2〜5質量ppm)を用い、1分間の逆圧洗浄を行い、これを繰り返した。
【0087】
原水:河川水(濁度約1度)
膜間差圧:10〜70kPa
透過水量:25m3/hr
逆圧洗浄水量:100m3/hr
この運転条件で1年間の濾過運転を継続したが、中空糸膜には全く損傷が認められなかった。
【0088】
【発明の効果】
本発明の緩衝用キャップを中空糸膜モジュールの液出入口に取り付けることにより、液の出入りに伴う液圧が緩和されるので、中空糸膜束が揺れ動いて液出入口に接触し、損傷されることが防止される。このため、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになるので、運転コストが低下される。
【図面の簡単な説明】
【図1】中空糸膜モジュールの長さ方向の断面図。
【図2】図2(a)は、図2の緩衝用キャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図2(b)は、図2(a)の部分正面図。
【図3】図3(a)は、図3の緩衝用キャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図3(b)は、図3(a)の部分正面図。
【図4】図4(a)は、図4の緩衝用キャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図4(b)は、図4(a)の部分正面図。
【図5】図5(a)は、図5の緩衝用キャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図5(b)は、図5(a)の部分正面図。
【図6】図6(a)は、図6の従来のキャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図6(b)は、図6(a)の部分正面図。
【符号の説明】
10 中空糸膜モジュール
12 ケースハウジング
16 中空糸膜束
20 透過水出入口
30 緩衝用キャップ
50 筒状緩衝部
51 筒状本体部
52、53 開口部
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種排水、天然水等の浄化処理に好適な中空糸膜モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
液出入口を有するケースハウジング内に所要数の中空糸膜束を収容し、ケースハウジング内への液(原水、透過水等)の出入りを前記液出入口のみにより行うタイプの中空糸膜モジュールがあり、このようなタイプのものは、比較的大型のモジュールに適用されることが多い。
【0003】
しかし、このようなタイプの中空糸膜モジュールを用いて濾過運転するとき、液出入口から原水、透過水等が出入りすることなるため、液出入口に面した位置にある中空糸膜束のみが、原水、透過水等の出入りに伴う圧力を受け続ける結果、複数の中空糸膜束が揺れて、互いに衝突を繰り返すことになる。
【0004】
従来の中空糸膜モジュールにおける液出入口は、図6(a)で示すようなものである。中空糸膜モジュール100は、ハウジング本体部12内に所要数の中空糸膜束16が収容されており、ハウジング本体部12の側面には、液出入口20が設けられている。液出入口20の内側開口部20aは、図6(b)で示すような円形であり、運転していないときは、内側開口部20aの周縁と中空糸膜束16とは接触していない。しかし、運転を開始すると、液の出入りに伴って中空糸膜束16が揺れ動くため、内側開口部20aの周縁(特に鋭角なエッジ部分)と中空糸膜束16が衝突することが避けられない。
【0005】
上記のような衝突が生じた場合、中空糸膜束を構成する中空糸膜の断線等の破損が生じやすく、中空糸膜束の内、特定部位の中空糸膜の交換頻度が高くなるという問題があり、交換作業による濾過運転の中断、運転コストの上昇等の問題が生じる。なお、関連する先行技術として、液出入口部分に中空糸膜保護板を有する中空糸膜モジュールが知られている。(特開平8−206468号公報)
本発明は、中空糸膜モジュールの液出入口付近において、液出入りに伴う液圧を緩和することで、中空糸膜の損傷を防止し、長期間継続して安定した濾過運転ができるようにする、緩衝用キャップ、及びそれを用いた中空糸膜モジュールを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、課題の解決手段として、ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面から突き出して液出入口が設けられた中空糸膜モジュールにおいて、前記液出入口に取り付ける緩衝用キャップであり、
前記緩衝用キャップが、筒状緩衝部と筒状緩衝部の一端開口部に固着された透過水キャップからなり、筒状緩衝部の一部と透過水キャップがケースハウジング外に位置し、筒状緩衝部の一部と他端側開口部がケースハウジング内に位置するように取り付けられるものであり、
前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造である緩衝用キャップを提供する。
【0007】
筒状緩衝部と透過水キャップは、溶接等の手段により固着一体化されたものであるが、最初から一体の部材となるように作製したものでも良い。
【0008】
このように開口部が網状構造である緩衝用キャップにすることにより、図6で示した液出入口と比べると、液の出入りに伴う圧力を緩和することができる。更に、図6で示した液出入口と比べると、鋭角なエッジ部分が存在しないため、中空糸膜束の揺れにより、中空糸膜束と開口部が衝突したときに生じる衝撃の度合いを大幅に低下させることができる。更に、筒状緩衝部の一部と他端側開口部がケースハウジング内に位置するように取り付けられるため、ケースハウジング内周面と中空糸膜束との間に流路が確保できるので、揺れ動いた中空糸膜束により、開口部に至る流路の閉塞が防止される。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造であり、かつ複数の支持部材により開口部の外表面が仕切られているものである。
【0010】
このように網状構造の開口部の外表面を複数の支持部材で仕切ることにより、中空糸膜束と開口部が衝突したとき、主に中空糸膜束と支持部材とが衝突し、中空糸膜束と網状構造との衝突が制限されるので、衝突時における衝撃をより緩和することができる。更に支持部材により、網状構造の開口部を補強することができるので、耐久性が高められる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部の網状構造がハニカム構造であるものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップの網状構造である開口部の下記式から求められる開口率(A)が5〜80%であるものである。
【0013】
開口部中の孔の占有面積(A2)/開口部の全面積(A1)×100
このように開口率(A)を所定範囲内に設定することにより、好適な通液量を確保すると共に、液の出入りに伴う液圧が過度にならないように調整することができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、課題の他の解決手段として、ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面から突き出して液出入口が設けられた中空糸膜モジュールにおいて、前記液出入口に取り付ける緩衝用キャップであり、
前記緩衝用キャップが、筒状緩衝部と筒状緩衝部の一端開口部に固着された透過水キャップからなり、筒状緩衝部の一部と透過水キャップがケースハウジング外に位置し、筒状緩衝部の一部と他端側開口部がケースハウジング内に位置するように取り付けられるものであり、
前記緩衝用キャップの内、筒状緩衝部側面の少なくとも一部と、ケースハウジング内に位置する開口部が網状構造である緩衝用キャップを提供する。
【0015】
このように筒状緩衝部側面と開口部の両方を網状構造にすることにより、液の出入りが筒状緩衝部側面と開口部の両方からなされるため、液圧の緩衝作用がより高められると共に、請求項1の発明と同様の作用がなされる。更に、突設された液出入口と緩衝用キャップとの間隙に存在する液が筒状緩衝部側面の網状構造を経て入れ代えられるため、前記間隙における液の滞留が防止される。液の滞留が長期に亘ると、腐敗発生等の要因ともなるおそれがある。なお、筒状緩衝部側面は、一部又は全部を網状構造にすることができる。
【0016】
筒状緩衝部側面と開口部の網状構造の網目の大きさは異なっていても良く、この網目の大きさは、筒状緩衝部側面の網目の大きさが、開口部の網目よりも大きいことが好ましい。このような網目の関係にすることにより、好適な通液量を確保すると共に、液の滞留を防止できる。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、筒状緩衝部の長さが調整できるものである。ケースハウジングの容積、中空糸膜束の充填率の大小に伴う、液出入口と中空糸膜束との間隔の変化等に応じて、緩衝用キャップの長さが調整できるので好ましい。
【0018】
請求項9に係る発明は、請求項5〜8のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造であり、かつ複数の支持部材により開口部の外表面が仕切られているものである。
【0019】
請求項10に係る発明は、請求項5〜9のいずれかに記載の中空糸膜モジュールにおいて、筒状緩衝部側面及び/又はケースハウジング内に位置する開口部の網状構造がハニカム構造であるものである。
【0020】
請求項11に係る発明は、請求項5〜10のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップの網状構造である開口部の下記式から求められる開口率(A)が5〜50%であるものである。
【0021】
開口部中の孔の占有面積(A2)/開口部全面積(A1)×100
このように開口率(A)を所定範囲内に設定することにより、好適な通液量を確保すると共に、液の出入りに伴う液圧が過度にならないように調整することができる。筒状緩衝部側面が網状構造であり、前記網目からも液の出入りがあるため、請求項4に係る発明と比べると、開口率(A)は低く設定できる。
【0022】
請求項12に係る発明は、請求項5〜11のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、前記緩衝用キャップの網状構造である筒状緩衝部側面の下記式から求められる開口率(B)が51〜80%であるものである。
【0023】
筒状緩衝部側面中の孔の占有面積(B2)/筒状緩衝部側面の全面積(B1)×100
このように開口率(B)を所定範囲内に設定することにより、開口部からの液の出入りを補完できると共に、液の滞留を防止できる。
【0024】
請求項13に係る発明は、請求項5〜12のいずれかに記載の緩衝用キャップにおいて、開口部の開孔率(A)と筒状緩衝部側面の開孔率(B)との比率(A/B)が50/51〜5/80であるものである。
【0025】
開口率(A)及び(B)の比率を所定範囲に設定することにより、上記したそれぞれの作用が、より円滑に行われる。
【0026】
請求項14に係る発明は、他の課題の解決手段として、ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面に液出入口が設けられた中空糸膜モジュールであり、
前記液出入口に請求項1〜13のいずれかの緩衝用キャップが取り付けられおり、前記緩衝用キャップの作用により、液の出入りに伴う中空糸膜に対する圧力が緩和された中空糸膜モジュールを提供する。
【0027】
このように緩衝用キャップを取り付けることにより、中空糸膜モジュールの液出入口付近において、液出入りに伴う液圧を緩和することができるので、中空糸膜の損傷を防止し、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになる。
【0028】
請求項15に係る発明は、請求項14記載の中空糸膜モジュールにおいて、液出入口が、ケースハウジングの長さ方向中央部又はその近傍の側面に設けられているものである。
【0029】
請求項16に係る発明は、請求項14又は15記載の中空糸膜モジュールにおいて、所要数の中空糸膜が束ねられ、一端又は両端が固着された中空糸膜束が複数収容されているものである。
【0030】
請求項17に係る発明は、請求項14〜16のいずれかに記載の中空糸膜モジュールにおいて、緩衝用キャップが、ケースハウジング内に面した開口部と中空糸膜が正対するように取り付けられているものである。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の緩衝用キャップ、及びそれを用いた中空糸膜モジュールの実施の形態を説明する。
【0032】
(1)実施の形態1
図1は、緩衝用キャップ30を取り付けた中空糸膜モジュール10の長さ方向への断面図、図2(a)は、図1の幅方向への断面図、図2(b)は、図2(a)の緩衝用キャップ30の開口部を示す部分正面図である。
【0033】
中空糸膜モジュール10は、筒状のハウジング本体部12と、上部キャップ14と下部キャップ15とから外殻(ケースハウジング)が形成されている。なお、下部キャップ15を設けずに、ハウジング本体部12の下部を閉塞して底部を設けても良い。これらのハウジング本体部12、上部キャップ14、下部キャップ15は、繊維強化樹脂又はステンレス製であることが好ましい。
【0034】
上部キャップ14には、フランジ14bを有する上部出入口(原水供給口、透過水出入口又は逆圧洗浄水出入口)14aが設けられており、下部キャップ15には、フランジ15bを有する下部液出入口(原水供給口、透過水出入口又は逆圧洗浄水出入口)15aが設けられている。
【0035】
上部出入口14aには、例えば濃縮液ラインを形成するパイプ40を接続するが、このとき、上部出入口14aのフランジ14bと、パイプ40のフランジ41との間にはシール材を介在させることが望ましい。
【0036】
下部出入口15aには、例えば原水供給ラインを形成するパイプ42を接続するが、このとき、上部出入口15aのフランジ15bと、パイプ42のフランジ43との間にはシール材を介在させることが望ましい。
【0037】
ハウジング本体部12の側面中央部には、前記側面から外側に突き出た状態で、筒状の透過水出入口20(以下、20は透過水出入口とするが、原水供給口又は濃縮液出口にすることもできる。)が設けられている。
【0038】
透過水出入口20には、筒状緩衝部50と透過水キャップ21の組み合わせからなる緩衝用キャップ30が取り付けられている。透過水出入口20と緩衝用キャップ30は、接続部(透過水出入口20の端面と透過水キャップ21の端面の接触部)を外側から締付手段80(例えば、Vバンドカップリング;横浜ゴム(株)製)により締め付けることで固定されている。
【0039】
緩衝用キャップ30は、筒状緩衝部50(筒状本体部51)の一端開口部52の外周縁部と透過水キャップ21の内周面が、溶接部35において溶接固着されたものである。透過水キャップ21の開口部にはフランジ22が設けられており、先端にフランジ45を有する透過水ラインを形成するパイプ44とシール材を介して接続される。
【0040】
筒状緩衝部50は、筒状本体部51と、筒状本体部51の両端側に設けられた2つの開口部52、53を有している。筒状本体部51の外周面には、透過水出入口20の内周面と筒状本体部51の外周面との間の間隙に液が滞留することを防止するための所要数の液抜き孔36を設けることが望ましい。
【0041】
緩衝用キャップ30は、筒状緩衝部50の一部、一端側開口部52及び透過水キャップ21がハウジング本体部12外に位置し、筒状緩衝部50の一部と他端側開口部53がハウジング本体部12内に位置するように取り付けられている。
【0042】
開口部53のハウジング本体部12内に向く表面は、網状構造(ハニカム構造)となっており、透過水を通過させる数多くの六角形の通水孔54を有している。開口部53の開口率(A)は、好ましくは5〜80%、より好ましくは40〜70%、更に好ましくは50〜65%である。このように開口率(A)を所定範囲内に設定することにより、好適な通液量を確保すると共に、液の出入りに伴う液圧が過度にならないように調整することができる。
【0043】
開口部(ハニカム構造面)53は、図2(a)に示すように湾曲した形状となっており、開口部53の周縁部は、ハウジング本体部12の内周面12aから僅かに突き出されている。この突き出し部分の長さは、10mm以上であることが好ましく、30〜50mmであることがより好ましい。
【0044】
中空糸膜束16は、複数本の中空糸膜の一端又は両端が接着剤18で一体化された小さな束の集合体であり、小さな束同士は、それらの両端部において互いに接しており、接着剤18で一体化されている。一番外側の中空糸膜束16は、接着剤18によりハウジング本体部12端部の内壁面に固着されている。中空糸膜束16は、開口部(ハニカム構造面)53と正対している。
【0045】
このようにして中空糸膜束16同士を樹脂封止することにより、液の出入り(例えば、逆圧洗浄水の供給)に伴う流れによって中空糸膜束16同士が揺れて衝突を繰り返し、破損することが防止される。なお、下部キャップ15側は樹脂封止しなくても良いが、中空糸膜束16を液圧で揺れ難くする観点からは、上部キャップ14側と同様にして樹脂封止した方が好ましい。
【0046】
中空糸膜束16の充填率は特に制限されるものはないが、外側の中空糸膜束16の表面と、ハウジング本体部12の内周面12aとの間隔が、10mm以上であることが好ましく、30〜50mmであることがより好ましい。
【0047】
図1では、1つの中空糸膜束16の全体が、1つの結束手段26で被覆されている。結束手段26は、透水性でかつ伸縮性を有する筒状部材(但し、直径は中空糸膜束16の直径以下で、長さは中空糸膜束の長さと同程度のもの)、又は帯状部材(但し、幅は中空糸膜束の直径より大きくて、長さは中空糸膜束の長さと同程度のもの)を用いることができる。結束手段26として帯状部材を用いたときは、合わせ部分を接着する。
【0048】
結束手段26は、長さ方向の両端部が接着剤18の部分で中空糸膜束16と一体化されている。このように中空糸膜束16と一体化されていることにより、結束手段26が剥がれたり、脱落したりすることが防止される。
【0049】
また、帯状部材、環状部材(例えばOリング)又は管状部材(例えば樹脂又はゴムチューブ)のような結束手段により、中空糸膜束16の長さ方向中央部を結束することができる。帯状部材及び管状部材は巻き付け、更に締め付けて使用するため、それらの長さは中空糸膜束16の結束部の直径より長く、環状部材は穴に中空糸束を挿入して使用するため、その直径は、中空糸膜束16の結束部の直径以下である。
【0050】
図1に示す中空糸膜モジュール10の透過水出入口20に、図2に示す緩衝用キャップ30を取り付けた場合の作用について説明する。
【0051】
緩衝用キャップ30は、図2(b)に示すとおり、開口部53がハニカム構造となっているため、図6で示した液出入口と比べると、液の出入りに伴う液圧を低下させることができ(緩衝作用)、鋭角なエッジ部分も存在しない。
【0052】
このため、中空糸膜モジュール10を運転した際、透過水出入口20から透過水が排出されるときの流れ(液圧)により、中空糸膜束16が透過水出入口20(開口部53)に引き寄せられ、開口部53のハニカム構造面に衝突したときに生じる衝撃の度合いが大幅に軽減される。また、ハニカム構造にすることにより、強度が高められるため、耐久性が向上される。
【0053】
このように緩衝用キャップ30を取り付けることにより、中空糸膜モジュール10の透過水出入口20付近において、透過水の出入りに伴う液圧を緩和することができるので、中空糸膜束16の損傷が防止され、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになる。筒状本体部51に液抜き孔36を設けることにより、筒状本体部51の外周面と透過水出入口20の内周面との間の間隙に、原水、濃縮水、透過水、懸濁質(SS)が滞留することが防止される。
【0054】
(2)実施の形態2
図3(a)は、図3の緩衝用キャップ30を取り付けた、図1の中空糸膜モジュール10の幅方向への断面図、図3(b)は、図3(a)の筒状緩衝部50(筒状本体部51)の開口部53を示す部分正面図である。図3の緩衝用キャップ30は、開口部53のハウジング本体部12内に向く表面の構造が図2と異なるのみで、他は同一の構成のものである。
【0055】
開口部53は、網状構造(ハニカム構造)となっており、透過水を通過させる数多くの六角形の通水孔54を有している。ハニカム構造面には、円形枠56と、円形枠56に固着された複数の支持部材55とが配置されている。支持部材55は、開口部(ハニカム構造面)53を複数に区画している。この区画状態は、図3(b)のように一方向に区画されていても良いし、格子状のように複数方向に区画されていても良い。
【0056】
このように開口部53の外表面を複数の支持部材55で仕切ることにより、中空糸膜束16と開口部(ハニカム構造面)53が接触したとき、主に中空糸膜束16と支持部材55とが衝突し、中空糸膜束16とハニカム構造面53との衝突が制限されるので、衝突における衝撃をより緩和することができる。更に、支持部材55を配置することにより、ハニカム構造面53を補強することができる。
【0057】
このように緩衝用キャップ30を取り付けることにより、中空糸膜モジュール10の透過水出入口20付近において、透過水の出入りに伴う液圧を緩和することができるので、中空糸膜束16の損傷が防止され、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになる。
【0058】
(3)実施の形態3
図4(a)は、図4の緩衝用キャップ30を取り付けた、図1の中空糸膜モジュール10の幅方向への断面図、図4(b)は、図4(a)の筒状緩衝部50(筒状本体部51)の開口部53を示す部分正面図である。
【0059】
図1に示す中空糸膜モジュール10の透過水出入口20内には、緩衝用キャップ30が取り付けられている。緩衝用キャップ30は、筒状緩衝部50(筒状本体部51)の一端開口部52の外周縁部と透過水キャップ21の内周面が、溶接部35において溶接固着されたものである。
【0060】
筒状緩衝部50(筒状本体部51)の一部、一端側開口部52、透過水キャップ21は、ハウジング本体部12外に位置し、筒状緩衝部50の一部と他端側開口部53は、ハウジング本体部12内に位置するように取り付けられている。
【0061】
開口部53のハウジング本体部12内に向く表面は、円形の網状構造(円形孔を有する構造)となっており、透過水を通過させる数多くの円形の通水孔54を有している。通水孔54を有した円形の網状構造の周縁には、所要数のビス59により、シリコーンゴム58が固定されている。このシリコーンゴム58により、中空糸膜束26が開口部に衝突したときの衝撃が緩和されるので、中空糸膜が損傷しにくくなる。本発明における他の実施形態においても、同様にして開口部周縁にシリコーンゴムを取り付けることができる。
【0062】
開口部53の開口率(A)は、好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%、更に好ましくは20〜30%である。このように開口率(A)を所定範囲内に設定することにより、好適な通液量を確保すると共に、液の出入りに伴う液圧が過度にならないように調整することができる。
【0063】
開口部(円形孔構造面)53は、図4(a)に示すように湾曲した形状となっており、開口部53の周縁部53aは、ハウジング本体部12の内周面12aから僅かに突き出されている。
【0064】
筒状本体部51は、大部分がハニカム構造面(筒状本体部51aは全面、筒状本体部51bは約半分の面)となっており、数多くの六角形の通水孔57が設けられている。六角形の通水孔57の大きさは、円形の通水孔54よりも大きくなっている。筒状本体部51のハニカム構造面ではない部分(図中の白い部分であり、溶接部35ではない部分)には、液抜き孔36が設けられている。
【0065】
筒状本体部51の開口率(B)は、好ましくは51〜80%、より好ましくは55〜75%、更に好ましくは60〜70%である。このように開口率(B)を所定範囲内に設定することにより、開口部53からの透過水の出入りを補完すると共に、液出入口20の内周面と筒状本体部51の外周面との間に存在する間隙に、透過水、原水、濃縮水、懸濁質(SS)等が滞留することが防止される。
【0066】
開孔率(A)と開孔率(B)との比率(A/B)は、好ましくは50/51〜5/80、より好ましくは40/65〜15/75、更に好ましくは30/60〜20/70である。このように開口率(A)、(B)を関係付けることにより、それぞれの開口率を所定範囲に設定したことによる作用が、より円滑に発揮される。
【0067】
筒状本体部51は、長さを調整自在にできるようなものが好ましい。図4(a)では、筒状本体部51を51a、51bの2つに分け、環状固定具60で結合固定している。このような長さ調整手段は、▲1▼筒状本体部51bを大径にし、筒状本体部51aをやや小さな径にして、大径の筒状本体部51bの中に、小径の筒状本体部51aを所要長さだけ差し込んだ後、環状固定具60で締め付けて固定する方法、▲2▼同径の2つの筒状本体部51a、51bを、環状固定具60で結合固定する方法等を適用できる。
【0068】
このようにして、筒状本体部51の長さを調整自在にすることにより、ハウジング本体部12の容積、中空糸膜束16の充填率の大小に伴う、開口部53と中空糸膜束16との間隔の変化等に応じて、筒状本体部51の長さが調整できるようになる。
【0069】
図1に示す中空糸膜モジュール10の透過水出入口20に、図4に示す緩衝用キャップ30を取り付けた場合の作用について説明する。
【0070】
緩衝用キャップ30は、図4に示すとおり、開口部53が円形孔構造で、筒状本体部51がハニカム構造となっているため、図1、図2及び図6で示した液出入口と比べると、液の出入りに伴う液圧を低下させることができ(緩衝作用)、図6で示した液出入口と比べると、鋭角なエッジ部分も存在しない。
【0071】
このため、中空糸膜モジュール10を運転した際、透過水出入口20から透過水が排出されるときの流れ(液圧)により、中空糸膜束16が透過水出入口20(開口部53)に引き寄せられ、開口部53のハニカム構造面に衝突したときに生じる衝撃の度合いが大幅に軽減される。
【0072】
また筒状本体部51をハニカム構造にして、必要に応じて液抜き孔36を設けることにより、筒状本体部51の外周面と透過水出入口20の内周面との間の間隙に、原水、濃縮水、透過水、懸濁質(SS)が滞留することが防止される。
【0073】
このように緩衝用キャップ30を取り付けることにより、中空糸膜モジュール10の透過水出入口20付近において、透過水の出入りに伴う液圧を緩和することができるので、中空糸膜束16の損傷が防止され、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになる。
【0074】
(4)実施の形態4
図5(a)は、図5の緩衝用キャップ30を取り付けた、図1の中空糸膜モジュール10の幅方向への断面図、図5(b)は、図5(a)の緩衝用キャップ30の開口部を示す部分正面図である。
【0075】
図5の緩衝用キャップ30は、図4の緩衝用キャップ30と、図3の緩衝用キャップ30を組み合わせた構造のものであるため、それぞれの緩衝用キャップ30を組み合わせた作用がなされる。
【0076】
【実施例】
実施例1
図1及び図4に示すような中空糸膜モジュールを製造した。詳細は次の通りである。
【0077】
(ケースハウジング)
ハウジング本体部12は、内径450mm、外径465mm、長さ1110mmのFRP製のものを用い、両端にはSUS製の上部及び下部キャップ14、15を取り付けた。14aが濃縮液出口、15aが原水供給口となる。
【0078】
(透過水出口)
ハウジング本体部12の長さ方向中央部に、開口径300mmの透過水出口20を設けた。
【0079】
(中空糸膜束)
内径0.8mm、外径1.3mm、長さ1110mmの酢酸セルロース中空糸膜2050本で1束とした。1つの大日本プラスチック社製のネトロン軽包装「HR3L白70」(袋状の網からなるもの。図1中の26)内に、1つの中空糸膜束16を挿入し、中空糸膜束16の中央部を含む、長さ1060mmに相当する部分が被覆された状態のものを計24束作製した。
【0080】
(中空糸膜束の取り付け)
計24束の中空糸膜束16をハウジング本体部12内に挿入し、遠心シール機(東邦機械工業(株)製,横型遠心成型機)により、ハウジング本体部12の両端側に位置する中空糸膜束16相互、及び中空糸膜束16とハウジング本体部12の内壁面とをウレタン系接着剤〔コロネート4428:ニッポラン4221=52:48(日本ポリウレタン(株)製)〕で接着封止した。接着剤層厚みは両端の合計で100mm、有効膜面積は120m2であった。
【0081】
更に、計24束の中空糸膜束全体の直径が約390mmになるように、大日本プラスチック社製のネトロン軽包装「HR3L白70」を巻いて結束した。
【0082】
(緩衝用キャップ及びその取り付け)
緩衝用キャップ30は、筒状本体部51(51a、51b)、開口部53、開口部52とを有し、開口部53には、厚さ2mmのシリコーンゴム58が固定されている。
【0083】
筒状本体部51aは、外径290mm、肉厚2mm、筒状本体部51bは、外径294mm、肉厚2mmであり、筒状本体部51b内に筒状本体部51aが挿入された後、全体の長さ(51a+51bの最短部の長さ)が138.5mmになるように調整し、環状固定具60により固定した。このように長さを調整することで、実施の形態1で説明したとおり、ハウジング本体部12の内周面12aからの開口部53の周縁部の突き出し長さ(図4(a)の突出部53aの突き出し長さ)が30mmになるように設定した。
【0084】
筒状本体部51aは、開口率(B)65%のハニカム構造、筒状本体部51bは開口率(B)65%のハニカム構造、開口部53は開口率(A)27%の円形孔構造とした。
【0085】
緩衝用キャップ30は、透過水出入口20のフランジ部との間にOリング70を介した状態で挿入し、図2に示すようにして、Vバンドカップリング;横浜ゴム(株)製)を用いて固定した。
【0086】
以上のような中空糸膜モジュールを用いて、通常の濾過運転を行い、中空糸膜の損傷の程度を観察した。濾過運転条件は、以下のとおりである。但し、59分間濾過運転した後、次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄水(有効塩素濃度2〜5質量ppm)を用い、1分間の逆圧洗浄を行い、これを繰り返した。
【0087】
原水:河川水(濁度約1度)
膜間差圧:10〜70kPa
透過水量:25m3/hr
逆圧洗浄水量:100m3/hr
この運転条件で1年間の濾過運転を継続したが、中空糸膜には全く損傷が認められなかった。
【0088】
【発明の効果】
本発明の緩衝用キャップを中空糸膜モジュールの液出入口に取り付けることにより、液の出入りに伴う液圧が緩和されるので、中空糸膜束が揺れ動いて液出入口に接触し、損傷されることが防止される。このため、長期間継続して安定した濾過運転ができるようになるので、運転コストが低下される。
【図面の簡単な説明】
【図1】中空糸膜モジュールの長さ方向の断面図。
【図2】図2(a)は、図2の緩衝用キャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図2(b)は、図2(a)の部分正面図。
【図3】図3(a)は、図3の緩衝用キャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図3(b)は、図3(a)の部分正面図。
【図4】図4(a)は、図4の緩衝用キャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図4(b)は、図4(a)の部分正面図。
【図5】図5(a)は、図5の緩衝用キャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図5(b)は、図5(a)の部分正面図。
【図6】図6(a)は、図6の従来のキャップを取り付けた図1の中空糸膜モジュールの幅方向の断面図、図6(b)は、図6(a)の部分正面図。
【符号の説明】
10 中空糸膜モジュール
12 ケースハウジング
16 中空糸膜束
20 透過水出入口
30 緩衝用キャップ
50 筒状緩衝部
51 筒状本体部
52、53 開口部
Claims (17)
- ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面から突き出して液出入口が設けられた中空糸膜モジュールにおいて、前記液出入口に取り付ける緩衝用キャップであり、
前記緩衝用キャップが、筒状緩衝部と筒状緩衝部の一端開口部に固着された透過水キャップからなり、筒状緩衝部の一部と透過水キャップがケースハウジング外に位置し、筒状緩衝部の一部と他端側開口部がケースハウジング内に位置するように取り付けられるものであり、
前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造である緩衝用キャップ。 - 前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造であり、かつ複数の支持部材により開口部の外表面が仕切られている請求項1記載の緩衝用キャップ。
- 前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部の網状構造がハニカム構造である請求項1又は2記載の緩衝用キャップ。
- 前記緩衝用キャップの網状構造である開口部の下記式から求められる開口率(A)が5〜80%である請求項1〜3のいずれかに記載の緩衝用キャップ。
開口部中の孔の占有面積(A2)/開口部の全面積(A1)×100 - ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面から突き出して液出入口が設けられた中空糸膜モジュールにおいて、前記液出入口に取り付ける緩衝用キャップであり、
前記緩衝用キャップが、筒状緩衝部と筒状緩衝部の一端開口部に固着された透過水キャップからなり、筒状緩衝部の一部と透過水キャップがケースハウジング外に位置し、筒状緩衝部の一部と他端側開口部がケースハウジング内に位置するように取り付けられるものであり、
前記緩衝用キャップの内、筒状緩衝部側面の少なくとも一部と、ケースハウジング内に位置する開口部が網状構造である緩衝用キャップ。 - 筒状緩衝部側面と開口部の網状構造の網目の大きさが異なっている請求項5記載の緩衝用キャップ。
- 筒状緩衝部側面の網目の大きさが、開口部の網目よりも大きい請求項6記載の緩衝用キャップ。
- 筒状緩衝部の長さが調整できる請求項5〜7のいずれかに記載の緩衝用キャップ。
- 前記緩衝用キャップのケースハウジング内に位置する開口部が網状構造であり、かつ複数の支持部材により開口部の外表面が仕切られている請求項5〜8のいずれかに記載の緩衝用キャップ。
- 筒状緩衝部側面及び/又はケースハウジング内に位置する開口部の網状構造がハニカム構造である請求項5〜9のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
- 前記緩衝用キャップの網状構造である開口部の下記式から求められる開口率(A)が5〜50%である請求項5〜10のいずれかに記載の緩衝用キャップ。
開口部中の孔の占有面積(A2)/開口部全面積(A1)×100 - 前記緩衝用キャップの網状構造である筒状緩衝部側面の下記式から求められる開口率(B)が51〜80%である請求項5〜11のいずれかに記載の緩衝用キャップ。
筒状緩衝部側面中の孔の占有面積(B2)/筒状緩衝部側面の全面積(B1)×100 - 開口部の開孔率(A)と筒状緩衝部側面の開孔率(B)との比率(A/B)が50/51〜5/80である請求項5〜12のいずれかに記載の緩衝用キャップ。
- ケースハウジング内に所要数の中空糸膜が収容され、ケースハウジングの側面に液出入口が設けられた中空糸膜モジュールであり、
前記液出入口に請求項1〜13のいずれかの緩衝用キャップが取り付けられており、前記緩衝用キャップの作用により、液の出入りに伴う中空糸膜に対する圧力が緩和された中空糸膜モジュール。 - 液出入口が、ケースハウジングの長さ方向中央部又はその近傍の側面に設けられている請求項14記載の中空糸膜モジュール。
- 所要数の中空糸膜が束ねられ、一端又は両端が固着された中空糸膜束が複数収容されている請求項14又は15記載の中空糸膜モジュール。
- 緩衝用キャップが、ケースハウジング内に面した開口部と中空糸膜が正対するように取り付けられている請求項14〜16のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
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-
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