JP2004172306A - 光半導体素子収納用パッケージおよび光半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光半導体装置を高集積化および多機能化するとともに、高周波信号を効率よく伝送させ得るものとし、また内部の気密信頼性を向上させるとともに光半導体素子の熱を外部に効率よく放熱し得るものとする。
【解決手段】貫通穴1aが形成された平板状の金属製の基体1と、線路導体5cが形成されているとともに光半導体素子2の載置部が設けられた平板部5bおよび立壁部5aから成り、貫通穴1aに嵌着された入出力端子5と、貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に透光性部材4が接合された蓋体3とを具備する光半導体素子収納用パッケージにおいて、基体1の上側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体1の厚みをB、基体1の下側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍とする。
【選択図】 図1
【解決手段】貫通穴1aが形成された平板状の金属製の基体1と、線路導体5cが形成されているとともに光半導体素子2の載置部が設けられた平板部5bおよび立壁部5aから成り、貫通穴1aに嵌着された入出力端子5と、貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に透光性部材4が接合された蓋体3とを具備する光半導体素子収納用パッケージにおいて、基体1の上側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体1の厚みをB、基体1の下側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信等の分野に用いられる光半導体素子を収納するための光半導体素子収納用パッケージおよび光半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光通信等の分野において高い周波数で作動する半導体レーザ(LD),フォトダイオード(PD)等の光半導体素子を気密封止して収納した光半導体装置の例を図2に示す。図2は光半導体素子としてLDを内部に収納した光半導体装置の断面図である。同図において、21は基体、22は光半導体素子、23は金属製の蓋体、24は透光性部材、25は外部接続用ピン、26は光ファイバである。これらの基体21と外部接続用ピン25とで光半導体素子収納用パッケージが基本的に構成される。また、光半導体素子収納用パッケージに光半導体素子22を搭載し、透光性部材24が接合された蓋体23を接合することにより光半導体装置となる。
【0003】
基体21は鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金や銅(Cu)−タングステン(W)合金等の金属から成り、その上側主面の略中央部には、光半導体素子22が、アルミナ(Al2O3)質焼結体等のセラミックスから成る略直方体の基台28を介して基体21の上側主面に対して垂直な面に搭載固定される。光半導体素子22がこのように搭載されることにより、光半導体素子22から発する光信号が基体21の上方へ出射される。また、基体21には、Fe−Ni合金やFe−Ni−Co合金等の金属からなるピン25を挿通させるために上下主面間を貫通する貫通孔21aが形成されており、貫通孔21aに光半導体装置内外を導通する端子としての外部接続用ピン25を挿通させるとともに、外部接続用ピン25と貫通孔21aとの隙間にガラス等の誘電体から成る接合材を充填させ、基体21とピン25とを気密に接合する。これにより、ピン25が光半導体装置内外を導通する端子として機能する。
【0004】
なお、基台28に搭載された光半導体素子22は、その電極が外部接続用ピン25の光半導体素子22側の先端とボンディングワイヤ29等を介して電気的に接続されている。
【0005】
また、基体21の上側主面の外周部に接合され、上端が閉じられ下端23cが開かれた筒状であり上端面23aの略中央部に貫通孔23bが形成されており、Fe−Ni−Co合金等の金属から成る蓋体23が設けられる。蓋体23の下端23cは、例えば図2のような鍔状となっており、これにより基体21と蓋体23との接合面積が大きくなり、基体21と蓋体23とで構成される容器内部の気密信頼性が向上する。
【0006】
さらに、貫通孔23bを塞ぐように、貫通孔23bの上端面23a側開口の周囲に透光性部材24が接合される。透光性部材24はガラスやサファイア等から成る円板状,レンズ状,球状または半球状等のものであり、ガラスによる接合や半田付け等により蓋体23に気密に接合される。
【0007】
このような基体21、蓋体23および透光性部材24から主に構成される容器内部に光半導体素子22を収容し気密に封止する。
【0008】
最後に、光ファイバ26固定用の筒状の金属製の固定部材27が、蓋体23の外周面に溶接され、光ファイバ26が固定部材27の上面の貫通孔に外部から挿通固定されて透光性部材24の上方に固定され、外部接続用ピン25の外側の先端部が外部電気回路(図示せず)に電気的に接続されることによって、光半導体装置となる(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0009】
この光半導体装置は、外部電気回路から供給される電気信号によって光半導体素子22にレーザ光等の光を励起させ、この光を透光性部材24、光ファイバ26の順に透過させ、光ファイバ26を介して外部に伝送させることによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。この場合、光半導体素子22から光信号が正常に発光しているか確認するためのモニタ用PD(図示せず)が搭載されていてもよい。または、外部から光ファイバ26を介して伝送してくる光信号を、透光性部材24を透過させ光半導体素子22に受光させて、光信号を電気信号に変換することによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−183369号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の光半導体装置において、外部接続用ピン25が基体21の貫通孔21aに挿通されガラス等を介して気密に接合される構成であるため、外部接続用ピン25の直径寸法の最小加工限界、貫通孔21aの孔寸法、隣接する貫通孔21a間の間隔の最小加工限界等の制約があり、そのため、基体21に外部接続用ピン25を1本挿入するために大きな面積が必要とされ、基体21に取り付けられる外部接続用ピン25の本数が数本に限られるという問題点があった。
【0012】
さらに、光半導体装置内にはLD,PD等の光半導体素子22やモニタ用PDのみが収容され、光半導体素子22を駆動するためのドライバICは別の半導体素子収納用パッケージ内に収納され、外部電気回路を介してドライバICと光半導体装置とを電気的に接続する必要があり、光半導体素子22を駆動させるための装置全体が大型化するという問題点もあった。
【0013】
また、外部接続用ピン25をガラス等の接合材を介して基体21に接合しただけの端子構造であるため、外部接続用ピン25に外部から応力が加わった場合に接合材にクラック等の破損が生じ、光半導体装置内部の気密が損なわれるという問題点があった。
【0014】
さらに、外部接続用ピン25の貫通孔21aの上下開口の部位で高周波信号の反射等が発生し易いため、外部接続用ピン25の貫通孔21aに挿入されていない部位を特性インピーダンスに整合させた信号線路とするのが困難であり、外部接続用ピン25を伝送する高周波信号が外部接続用ピン25で反射等して伝送損失が生じ、高周波信号を効率よく伝送できなくなるという問題点もあった。特に、2GHz以上の高周波になると伝送効率が著しく劣化し易くなっていた。
【0015】
また、現在光信号の発光源として用いられるLDの多くは、光信号が光半導体素子22の側面から発光するため、光ファイバ26方向に発光させるためには、光半導体素子22を基体21の上側主面に対して垂直な面に載置する必要がある。従って、基体21の上側主面に基台28を設け、さらに基台28の基体21の上側主面に垂直な面に光半導体素子22を搭載するため、光半導体素子22と外部接続用ピン25とをボンディングワイヤ29により接続する際、作業性が悪く手間がかかるという問題点があった。
【0016】
また、光半導体素子22がAl2O3質セラミックス等からなる基台28を介して基体21に載置されるため、光半導体素子22が発した熱を外部に効率よく放熱できず、光半導体素子22に蓄熱して温度が上昇し、光半導体素子22の光の波長が変動するといった事態が生じ、光半導体素子22が正常に作動しなくなるという問題点があった。
【0017】
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、光半導体装置に取り付けられる端子数を増やして内部に収容する集積回路素子(IC)等の部品を増加させ、光半導体装置を高集積化および多機能化させるとともに、高周波信号を効率よく伝送させ得るものとし、また内部の気密信頼性を向上させるとともに光半導体素子の熱を外部に効率よく放熱し、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させ得るものとすることにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の光半導体素子収納用パッケージは、上下主面間を貫通する貫通穴が形成された平板状の金属製の基体と、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体が形成されているとともに前記一主面の一端部に光半導体素子の載置部が設けられた誘電体から成る平板部および該平板部の前記一主面に前記線路導体の一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部から成り、前記貫通穴に嵌着された入出力端子と、上端面の略中央部に貫通孔が形成されているとともに下端が開かれた筒状とされており、前記貫通孔の上端面側開口の周囲に透光性部材が接合され、前記基体の上側主面の外周部に前記一端部を前記透光性部材に対向させて覆うようにその下端で接合される金属製の蓋体とを具備する光半導体素子収納用パッケージにおいて、前記基体の上側主面と前記平板部の前記光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、前記基体の厚みをB、前記基体の下側主面と前記平板部の前記光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍であることを特徴とする。
【0019】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体が形成されているとともに一主面の一端部に光半導体素子の載置部が設けられた誘電体から成る平板部およびこの平板部の一主面に線路導体の一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部から成る入出力端子を具備することにより、平板部の上面に微細な間隔をもって線路導体を多数形成することができ、その結果、光半導体素子,モニタ用PDだけでなく、光半導体素子を駆動するためのドライバIC等の信号入出力をこの入出力端子で行なうことができる。
従って、外部電気回路に設けられていたドライバIC等を光半導体装置の内部や入出力端子の外側に実装し高集積化することができることから、光半導体素子を駆動させるための装置全体を小型化できる。
【0020】
また、貫通穴に入出力端子が嵌着されていることによって、従来のガラス接合された外部接続用ピンに比較して、外部接続用ピンの接合部にクラック等の破損が生じて光半導体装置内部の気密が破れるのを有効に抑制することができる。従って、外部接続用ピンをガラス等の接合材を介して基体の貫通孔に接合した従来の構造に比べ気密信頼性が大幅に向上する。また外部接続用ピンを介すことなく、入出力端子の線路導体で外部電気回路に接続することができるため、高周波信号が反射等して伝送損失が生じるのを抑制し、高周波信号の伝送効率を大幅に改善することができる。
【0021】
さらに、従来のように光半導体素子と外部接続用ピンとをボンディングワイヤにより接続する必要はなく、線路導体と光半導体素子とを同じ平板部の一主面上においてボンディングワイヤにより接続することができるため、ボンディングワイヤによる電気的な接続が容易となるとともに、ボンディングワイヤの長さも短くすることができボンディングワイヤのインダクタンスを小さくして高周波信号の伝送効率を向上させることができる。
【0022】
また、この入出力端子によって、平板部の上面に形成した線路導体のインピーダンスを特性インピーダンスに整合させることができ、入出力端子の線路導体を伝送する信号が高周波になっても、高周波信号を効率よく伝送できる。
【0023】
さらに、基体の上側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体の厚みをB、基体の下側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであることから、金属製の基体と入出力端子との熱膨張差により入出力端子に加わる応力を小さくして入出力端子にクラック等の破損が生じるのを抑制することができ、光半導体装置内部の気密性を保持することができる。また、CはAの1.5乃至5倍であることにより、平板部に載置された光半導体素子と光ファイバとの間の距離を小さくして両者間における光伝送効率を良くすることができるとともに、平板部の光半導体装置外部へ露出する面積を大きくして光半導体素子から発生する熱を効率よく光半導体装置外部に放散させ、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0024】
本発明の光半導体装置は、上記の光半導体素子収納用パッケージの前記載置部に光半導体素子がその受光部または発光部を前記透光性部材に対向させて載置固定されているとともに前記線路導体に電気的に接続され、前記基体の上側主面の外周部に前記蓋体の下端が接合されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の光半導体装置は、上記の構成により、上記本発明の光半導体素子収納用パッケージを用いた高周波伝送特性、気密信頼性および放熱性の優れたものとなる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の光半導体素子収納用パッケージおよび光半導体装置について以下に詳細に説明する。図1は本発明の光半導体装置について実施の形態の一例を示す断面図であり、1は基体、2は光半導体素子、3は金属製の蓋体、4は透光性部材、5は入出力端子、6は光ファイバである。これら基体1および入出力端子5で光半導体素子収納用パッケージが基本的に構成される。また、光半導体素子収納用パッケージに光半導体素子2を搭載し、透光性部材4が接合された蓋体3を接合することにより光半導体装置となる。
【0027】
本発明の光半導体素子収納用パッケージは、上下主面間を貫通する貫通穴1aが形成された平板状の金属製の基体1と、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体5cが形成されているとともに一主面の一端部に光半導体素子2の載置部が設けられた誘電体から成る平板部5bおよびこの平板部5bの一主面に線路導体5cの一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部5aから成り、貫通穴1aに嵌着された入出力端子5と、上端面3aの略中央部に貫通孔3bが形成されているとともに下端3cが開かれた筒状とされており、貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に透光性部材4が接合され、基体1の上側主面の外周部に一端部を透光性部材4に対向させて覆うようにその下端3cで接合される金属製の蓋体3とを具備している。
【0028】
本発明の基体1は、略円板状、略長方形等の平板状であり、Fe−Ni−Co合金やCu−W合金等の金属から成り、そのインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作される。
【0029】
また、基体1には、Al2O3質セラミックス等の誘電体から成る平板部5bおよびAl2O3質セラミックス等の誘電体から成る立壁部5aを具備した入出力端子5を挿入するために、基体1の上下主面間を貫通する貫通穴1aが設けられている。この貫通穴1aの内面には、入出力端子5の表面に設けられたメタライズ層が、銀(Ag)ロウ等のロウ材によって接合されることにより、貫通穴1aを塞ぐようにして入出力端子5が気密に接合される。
【0030】
入出力端子5は、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体5cが形成されるとともに一主面の一端部に光半導体素子2の載置部が設けられた平板部5bおよびこの平板部5bの一主面に線路導体5cの一部を間に挟んで接合された立壁部5aから構成される。平板部5bおよび立壁部5aは、Al2O3質焼結体,AlN質焼結体,3Al2O3・2SiO2質焼結体等の誘電体から成り、また、線路導体5cは、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等のメタライズ層から成る。
【0031】
このような入出力端子5は以下のようにして作製される。例えば、平板部5bおよび立壁部5aがAl2O3質焼結体から成る場合、先ず酸化アルミニウム、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等の原料粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合して泥漿状と成す。これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成形技術により複数のセラミックグリーンシートを得る。次に、このセラミックグリーンシートに、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを、スクリーン印刷法等の厚膜形成技術により印刷塗布して、線路導体5cとなるメタライズ層を所定パターンに形成する。また、入出力端子5をAgロウ等を介して基体1にロウ付けするために、入出力端子5の基体1との接合部にも、線路導体5cと同様にしてメタライズ層を所定パターンに形成する。しかる後、セラミックグリーンシートを複数枚積層し、これを還元雰囲気中、約1600℃の温度で焼成することにより製作される。このようにして、入出力端子5に特性インピーダンスに整合された線路導体5cが形成される。
【0032】
また、入出力端子5は、その表面に基体1との接合のためのメタライズ層を形成せずに焼成し、焼成後に入出力端子5の表面をスライス切断加工あるいは研磨加工した後、そのスライス切断面あるいは研磨面にWやMo等を主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷法等の厚膜形成技術により印刷塗布して、これを還元雰囲気中、約1300℃の温度で焼成することにより製作してもよい。これにより、入出力端子5の表面を平坦にすることができ、基体1との接合をより良好にすることができる。
【0033】
そして、光半導体素子2と線路導体5cとは平板部5bの一主面においてボンディングワイヤ9等を介して電気的に接続される。本発明の入出力端子5を用いることにより、従来のように光半導体素子2と外部接続用ピンとをボンディングワイヤ9により接続する必要はなく、線路導体5cと光半導体素子2とを同じ平板部5b上の一主面においてボンディングワイヤ9により接続することができるため、ボンディングワイヤ9による電気的な接続が容易となるとともに、ボンディングワイヤ9の長さも短くすることができ、ボンディングワイヤ9のインダクタンスを小さくして高周波信号の伝送効率を向上させることができる。
【0034】
また、基体1の上側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体1の厚みをB、基体1の下側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍である。
【0035】
この構成により、金属製の基体1と入出力端子5との熱膨張差により入出力端子5に加わる応力を小さくして入出力端子5にクラック等の破損が生じるのを抑制することができ、光半導体装置内部の気密性を保持することができる。また、平板部5bに載置された光半導体素子2と光ファイバ6との間の距離を小さくして両者間における光伝送効率を良くすることができるとともに、平板部5bの光半導体装置外部へ露出する面積を大きくして光半導体素子2から発生する熱を効率よく光半導体装置外部に放散させ、光半導体素子2を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0036】
B<0.3mmの場合、入出力端子5と基体1との接合面積が小さくなるため、基体1の上側主面に対して入出力端子5を略垂直に取り付け、光半導体素子2の発光面と光ファイバ6とを精度よく対向させることが困難となり、光半導体素子2と光ファイバ6との間の光伝送効率が低下し易くなる。また、B>1.5mmの場合、入出力端子5と基体1との接合面積が大きくなり、入出力端子5と基体1との熱膨張差による応力が入出力端子5に加わり易くなり、入出力端子5にクラック等の破損が発生し易くなって光半導体装置内部を気密に保持することが困難になる。
【0037】
また、C<1.5Aの場合、入出力端子5の光半導体装置外部へ露出する面積が小さくなり、光半導体素子2から発生した熱を光半導体装置外部へ効率よく放散させるのが困難となる。その結果、光半導体素子2が作動して発生した熱により光半導体素子2の温度が上昇し、光半導体素子2が誤作動等を起こし易くなり、正常に作動し難くなる。また、C>5Aの場合、基体1の下側主面から入出力端子5が大きく突出して光半導体装置全体が大型化する。
【0038】
また、基体1の上側主面の外周部には、上端面3aの略中央部に貫通孔3bが形成され下端3cが開かれた筒状である蓋体3が設けられる。蓋体3の下端3cは、鉛(Pb)−錫(Sn)半田等の半田による半田付けや溶接等によって基体1と気密に接合される。なお、下端3cは、基体1との接合面積を大きくして、基体1と蓋体3とで構成される容器内部の気密信頼性を向上させるために、図1に示すような鍔状であることが好ましい。
【0039】
蓋体3は、断面形状(横断面形状)が円形または長方形等の多角形の筒状であり、Fe−Ni−Co合金等の金属から成り、そのインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作される。
なお、蓋体3は、筒状部と上端面3aが個々に製作され、それらをロウ付け、半田付け、溶接等によって接合したものであってもよい。
【0040】
蓋体3には、貫通孔3bを塞ぐように貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に、透光性部材4がガラス接合や半田付け等により気密に接合される。透光性部材4は、ガラスやサファイア等から成る円板状,レンズ状,球状または半球状等のものであり、球状の場合全周にわたる帯状部で、円板状やレンズ状の場合一主面の外周部で、半球状の場合平面部の外周部で蓋体3に接合される。
【0041】
本発明において、透光性部材4は貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に接合されており、この場合以下の点で有利である。即ち、蓋体3の外周の鍔状部に金属製の固定部材7を溶接する際の熱が蓋体3に局所的に加わり、蓋体3の透光性部材4との接合面に熱膨張による引っ張り応力が加わると、透光性部材4が蓋体3から剥がれ易くなるが、光半導体装置は内部を気密にするため外側から内側に気圧が加わり易く、気圧によって透光性部材4が蓋体3に押し付けられて剥がれにくくなる。一方、透光性部材4が貫通孔3bの上端面3aの裏面側開口の周囲に接合されていると、熱膨張による応力によって透光性部材4を剥がそうとする引っ張り応力と気圧による圧力とで、透光性部材4が蓋体3から容易に外れ易くなる。
【0042】
このような光半導体素子収納用パッケージは、基体1の貫通穴1aに嵌着された入出力端子5に設けられた光半導体素子2の載置部に、光半導体素子2をSn−Pb半田等の低融点ロウ材で載置固定するとともに、線路導体5cと光半導体素子2とをボンディングワイヤ9で電気的に接続し、基体1の上側主面の外周部に蓋体3をシーム溶接等により接合することにより、光半導体装置となる。
【0043】
そして、光半導体装置の蓋体3の外周の鍔状部には、光ファイバ6が上端面に固定されたFe−Ni−Co合金等の金属から成る略円筒状の固定部材7の下端面がレーザ溶接法等の溶接によって接合される。光ファイバ6が固定部材7を介して透光性部材4の上方に固定されることにより、光ファイバ6を介して内部に収容する光半導体素子2と外部との光信号の授受が可能となる。
【0044】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子2の電極を外部電気回路に電気的に接続し、例えば外部電気回路から供給される電気信号によって光半導体素子2にレーザ光等の光を励起させ、この光を透光性部材4、光ファイバ6の順に透過させ、光ファイバ6を介して外部に伝送することによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【0046】
【実施例】
本発明の光半導体装置の実施例を以下に説明する。
【0047】
(実施例1)
図1の光半導体装置を以下のようにして製作した。まず、直径5.5mmの円板状で、略中央に縦1.05mm×横3.85mmの長方形の貫通穴1aが設けられたFe−Ni−Co合金から成る基体1の貫通穴1aに、長さ6mm×幅3.8mm×厚さ0.5mmのAl2O3質焼結体から成る平板部5bの光半導体装置内側の端から1.65mmの位置に長さ2mm×幅3.8mm×厚さ0.5mmのAl2O3質焼結体から成る立壁部5aの長さ方向の中央が位置するようにして載置された入出力端子5を、立壁部5aの長さ方向の中央が基体1の厚さ方向の中央と一致するようにして貫通穴1aの周囲にAgロウ材を介して接合した。なお、この入出力端子5の平板部5bの光半導体装置内側の端部にはLDから成る光半導体素子2が搭載されており、平板部5bの立壁部5aが載置されている主面に形成されたWから成る線路導体5cとボンディングワイヤにより電気的に接続されている。
【0048】
次に、基体1の上面に、円筒部の内径が4.5mm,下端3cの外径が5.5mm,下端3cから上端面3aまでの高さが3mm,厚さが0.3mmであり、上端面3aに設けられた直径2.4mmの円形の貫通孔3bの周囲に直径3.2mm×厚さ0.3mmの円板状のサファイアからなる透光性部材4がAgロウを介してロウ付けされたFe−Ni−Co合金から成る蓋体3をシーム溶接法によって接合した。ここで、基体1の厚さBを表1に示す種々の値となるようにして、光半導体装置の試料を各20個作製した。
【0049】
各試料について気密性の評価を以下の手順で行った。まず、各試料をフロリナート系の揮発性の高い液体中に浸漬しグロスリーク試験を行い、液体中への気泡の発生の有無を評価し、気泡の生じない試料を良品とし、気泡の生じた試料を不良品とした。さらに、グロスリーク試験で良品であった試料について、4900Pa(パスカル)で2時間He加圧を行った後にHeリーク試験、即ち光半導体装置の内部にHeを加圧侵入させ、その後光半導体装置の外部へ漏れ出てくるHeを検出する試験を実施し、Heの検出量が5.0×10−9Pa・m3/sec以下の試料を良品とし、検出量が5.0×10−9Pa・m3/secを超える試料を不良品とした。
【0050】
さらに各試料について、基体1の上側主面と平板部5bの光半導体装置内側の端との直角度(JIS B 0621)を3次元測定器で計測し、直角度の公差が0.05mmを超える試料を不良品とした。これらの評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1より、基体1の厚さBが1.5mmを超える場合に気密性不良が発生し、基体1の厚さBが0.3mm未満となる場合には直角度不良が発生した。
【0053】
以上より、基体1の厚さBが0.3mm以上であると、入出力端子5の平板部5bを基体1に対して直角度の公差が0.05mm以下に精度よく固定できることがわかった。また、基体1の厚さBを1.5mm以下とすることにより、光半導体装置内部の気密を良好に保持できることが判った。
【0054】
(実施例2)
図1の光半導体装置を以下のようにして製作した。まず、直径5.5mm×厚さ0.3mmの円板状で、略中央に縦1.05mm×横3.85mmの長方形の貫通穴1aが設けられたFe−Ni−Co合金から成る基体1の貫通穴1aに、幅3.8mm×厚さ0.5mmのAl2O3質焼結体から成る平板部5bの光半導体装置内側の端から1.65mmの位置に長さ2mm×幅3.8mm×厚さ0.5mmの立壁部5aの長さ方向の中央が位置するようにして載置された入出力端子5を、立壁部5aの長さ方向の中央が基体1の厚さ方向の中央と一致するようにして貫通穴1aの周囲にAgロウ材を介して接合した。なお、この入出力端子5の平板部5bの光半導体装置内側の端部にはLDから成る光半導体素子2が搭載されており、平板部5bの立壁部5aが載置されている主面に形成されたWから成る線路導体5cとボンディングワイヤにより電気的に接続されている。
【0055】
次に、基体1の上面に、円筒部の内径が4.5mm,下端3cの外径が5.5mm,下端3cから上端面3aまでの高さが3mm,厚さが0.3mmであり、上端面3aに設けられた直径2.4mmの貫通孔3bの周囲に直径3.2mm×厚さ0.3mmの円板状のサファイアからなる透光性部材4がAgロウを介してロウ付けされたFe−Ni−Co合金から成る蓋体3をシーム溶接法によって接合した。ここで、入出力端子5の長さを表2に示す種々の値となるようにして、光半導体装置の試料を各20個作製した。
【0056】
各試料について、光半導体素子5を強制加熱(常温から150℃まで10分で加熱)したときに光半導体素子5が正常に作動するかどうか作動性を調べた。表2において、正常に作動しないものを不良品とした。
【0057】
【表2】
【0058】
表2より、基体1の上側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離Aと基体1の下側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離Cとの比C/Aが1.5未満の場合に正常に作動しないものがあった。
【0059】
以上より、C/Aを1.5以上とすることにより、光半導体素子5の熱を良好に放熱させて、光半導体素子5を正常に作動させ得ることがわかった。ただし、C/Aが5よりも長くなると、光半導体装置が大型化するので実用に適さないものとなる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行なうことは何等差し支えない。
【0061】
【発明の効果】
本発明の光半導体素子収納用パッケージは、上下主面間を貫通する貫通穴が形成された平板状の金属製の基体と、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体が形成されているとともに一主面の一端部に光半導体素子の載置部が設けられた誘電体から成る平板部およびこの平板部の一主面に線路導体の一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部から成り、貫通穴に嵌着された入出力端子と、上端面の略中央部に貫通孔が形成されているとともに下端が開かれた筒状とされており、貫通孔の上端面側開口の周囲に透光性部材が接合され、基体の上側主面の外周部に一端部を透光性部材に対向させて覆うようにその下端で接合される金属製の蓋体とを具備する光半導体素子収納用パッケージにおいて、基体の上側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体の厚みをB、基体の下側主面と前記平板部の光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍であるものとしたことから、平板部の上面に微細な間隔をもって線路導体を多数形成することができ、その結果、光半導体素子,モニタ用PDだけでなく、光半導体素子を駆動するためのドライバIC等の信号入出力をこの入出力端子で行なうことができる。従って、外部電気回路に設けられていたドライバIC等を光半導体装置の内部や入出力端子の外側に実装し高集積化することができることから、光半導体素子を駆動させるための装置全体を小型化できる。
【0062】
また、貫通穴に入出力端子が嵌着されていることによって、従来のガラス接合された外部接続用ピンに比較して、外部接続用ピンの接合部にクラック等の破損が生じて光半導体装置内部の気密が破れるのを有効に抑制することができる。従って、外部接続用ピンをガラス等の接合材を介して基体の貫通孔に接合した従来の構造に比べ気密信頼性が大幅に向上する。また外部接続用ピンを介すことなく、入出力端子の線路導体で外部電気回路に接続することができるため、高周波信号が反射等して伝送損失が生じるのを抑制し、高周波信号の伝送効率を大幅に改善することができる。
【0063】
さらに、従来のように光半導体素子と外部接続用ピンとをボンディングワイヤにより接続する必要はなく、線路導体と光半導体素子とを同じ平板部の一主面上においてボンディングワイヤにより接続することができるため、ボンディングワイヤによる電気的な接続が容易となるとともに、ボンディングワイヤの長さも短くすることができボンディングワイヤのインダクタンスを小さくして高周波信号の伝送効率を向上させることができる。
【0064】
また、この入出力端子によって、平板部の上面に形成した線路導体のインピーダンスを特性インピーダンスに整合させることができ、入出力端子の線路導体を伝送する信号が高周波になっても、高周波信号を効率よく伝送できる。
【0065】
さらに、基体の上側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体の厚みをB、基体の下側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであることから、金属製の基体と入出力端子との熱膨張差により入出力端子に加わる応力を小さくして入出力端子にクラック等の破損が生じるのを抑制することができ、光半導体装置内部の気密性を保持することができる。また、CはAの1.5乃至5倍であることにより、平板部に載置された光半導体素子と光ファイバとの間の距離を小さくして両者間における光伝送効率を良くすることができるとともに、平板部の光半導体装置外部へ露出する面積を大きくして光半導体素子から発生する熱を効率よく光半導体装置外部に放散させ、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0066】
本発明の光半導体装置は、上記の光半導体素子収納用パッケージの載置部に光半導体素子がその受光部または発光部を透光性部材に対向させて載置固定されているとともに線路導体に電気的に接続され、基体の上側主面の外周部に蓋体の下端が接合されていることから、上記本発明の光半導体素子収納用パッケージを用いた高周波伝送特性、気密信頼性および放熱性の優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光半導体装置について実施の形態の例を示す断面図である。
【図2】従来の光半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
1:基体
1a:貫通穴
2:光半導体素子
3:蓋体
3a:上端面
3b:貫通孔
4:透光性部材
5:入出力端子
5a:立壁部
5b:平板部
5c:線路導体
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信等の分野に用いられる光半導体素子を収納するための光半導体素子収納用パッケージおよび光半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光通信等の分野において高い周波数で作動する半導体レーザ(LD),フォトダイオード(PD)等の光半導体素子を気密封止して収納した光半導体装置の例を図2に示す。図2は光半導体素子としてLDを内部に収納した光半導体装置の断面図である。同図において、21は基体、22は光半導体素子、23は金属製の蓋体、24は透光性部材、25は外部接続用ピン、26は光ファイバである。これらの基体21と外部接続用ピン25とで光半導体素子収納用パッケージが基本的に構成される。また、光半導体素子収納用パッケージに光半導体素子22を搭載し、透光性部材24が接合された蓋体23を接合することにより光半導体装置となる。
【0003】
基体21は鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金や銅(Cu)−タングステン(W)合金等の金属から成り、その上側主面の略中央部には、光半導体素子22が、アルミナ(Al2O3)質焼結体等のセラミックスから成る略直方体の基台28を介して基体21の上側主面に対して垂直な面に搭載固定される。光半導体素子22がこのように搭載されることにより、光半導体素子22から発する光信号が基体21の上方へ出射される。また、基体21には、Fe−Ni合金やFe−Ni−Co合金等の金属からなるピン25を挿通させるために上下主面間を貫通する貫通孔21aが形成されており、貫通孔21aに光半導体装置内外を導通する端子としての外部接続用ピン25を挿通させるとともに、外部接続用ピン25と貫通孔21aとの隙間にガラス等の誘電体から成る接合材を充填させ、基体21とピン25とを気密に接合する。これにより、ピン25が光半導体装置内外を導通する端子として機能する。
【0004】
なお、基台28に搭載された光半導体素子22は、その電極が外部接続用ピン25の光半導体素子22側の先端とボンディングワイヤ29等を介して電気的に接続されている。
【0005】
また、基体21の上側主面の外周部に接合され、上端が閉じられ下端23cが開かれた筒状であり上端面23aの略中央部に貫通孔23bが形成されており、Fe−Ni−Co合金等の金属から成る蓋体23が設けられる。蓋体23の下端23cは、例えば図2のような鍔状となっており、これにより基体21と蓋体23との接合面積が大きくなり、基体21と蓋体23とで構成される容器内部の気密信頼性が向上する。
【0006】
さらに、貫通孔23bを塞ぐように、貫通孔23bの上端面23a側開口の周囲に透光性部材24が接合される。透光性部材24はガラスやサファイア等から成る円板状,レンズ状,球状または半球状等のものであり、ガラスによる接合や半田付け等により蓋体23に気密に接合される。
【0007】
このような基体21、蓋体23および透光性部材24から主に構成される容器内部に光半導体素子22を収容し気密に封止する。
【0008】
最後に、光ファイバ26固定用の筒状の金属製の固定部材27が、蓋体23の外周面に溶接され、光ファイバ26が固定部材27の上面の貫通孔に外部から挿通固定されて透光性部材24の上方に固定され、外部接続用ピン25の外側の先端部が外部電気回路(図示せず)に電気的に接続されることによって、光半導体装置となる(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0009】
この光半導体装置は、外部電気回路から供給される電気信号によって光半導体素子22にレーザ光等の光を励起させ、この光を透光性部材24、光ファイバ26の順に透過させ、光ファイバ26を介して外部に伝送させることによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。この場合、光半導体素子22から光信号が正常に発光しているか確認するためのモニタ用PD(図示せず)が搭載されていてもよい。または、外部から光ファイバ26を介して伝送してくる光信号を、透光性部材24を透過させ光半導体素子22に受光させて、光信号を電気信号に変換することによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−183369号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の光半導体装置において、外部接続用ピン25が基体21の貫通孔21aに挿通されガラス等を介して気密に接合される構成であるため、外部接続用ピン25の直径寸法の最小加工限界、貫通孔21aの孔寸法、隣接する貫通孔21a間の間隔の最小加工限界等の制約があり、そのため、基体21に外部接続用ピン25を1本挿入するために大きな面積が必要とされ、基体21に取り付けられる外部接続用ピン25の本数が数本に限られるという問題点があった。
【0012】
さらに、光半導体装置内にはLD,PD等の光半導体素子22やモニタ用PDのみが収容され、光半導体素子22を駆動するためのドライバICは別の半導体素子収納用パッケージ内に収納され、外部電気回路を介してドライバICと光半導体装置とを電気的に接続する必要があり、光半導体素子22を駆動させるための装置全体が大型化するという問題点もあった。
【0013】
また、外部接続用ピン25をガラス等の接合材を介して基体21に接合しただけの端子構造であるため、外部接続用ピン25に外部から応力が加わった場合に接合材にクラック等の破損が生じ、光半導体装置内部の気密が損なわれるという問題点があった。
【0014】
さらに、外部接続用ピン25の貫通孔21aの上下開口の部位で高周波信号の反射等が発生し易いため、外部接続用ピン25の貫通孔21aに挿入されていない部位を特性インピーダンスに整合させた信号線路とするのが困難であり、外部接続用ピン25を伝送する高周波信号が外部接続用ピン25で反射等して伝送損失が生じ、高周波信号を効率よく伝送できなくなるという問題点もあった。特に、2GHz以上の高周波になると伝送効率が著しく劣化し易くなっていた。
【0015】
また、現在光信号の発光源として用いられるLDの多くは、光信号が光半導体素子22の側面から発光するため、光ファイバ26方向に発光させるためには、光半導体素子22を基体21の上側主面に対して垂直な面に載置する必要がある。従って、基体21の上側主面に基台28を設け、さらに基台28の基体21の上側主面に垂直な面に光半導体素子22を搭載するため、光半導体素子22と外部接続用ピン25とをボンディングワイヤ29により接続する際、作業性が悪く手間がかかるという問題点があった。
【0016】
また、光半導体素子22がAl2O3質セラミックス等からなる基台28を介して基体21に載置されるため、光半導体素子22が発した熱を外部に効率よく放熱できず、光半導体素子22に蓄熱して温度が上昇し、光半導体素子22の光の波長が変動するといった事態が生じ、光半導体素子22が正常に作動しなくなるという問題点があった。
【0017】
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、光半導体装置に取り付けられる端子数を増やして内部に収容する集積回路素子(IC)等の部品を増加させ、光半導体装置を高集積化および多機能化させるとともに、高周波信号を効率よく伝送させ得るものとし、また内部の気密信頼性を向上させるとともに光半導体素子の熱を外部に効率よく放熱し、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させ得るものとすることにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の光半導体素子収納用パッケージは、上下主面間を貫通する貫通穴が形成された平板状の金属製の基体と、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体が形成されているとともに前記一主面の一端部に光半導体素子の載置部が設けられた誘電体から成る平板部および該平板部の前記一主面に前記線路導体の一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部から成り、前記貫通穴に嵌着された入出力端子と、上端面の略中央部に貫通孔が形成されているとともに下端が開かれた筒状とされており、前記貫通孔の上端面側開口の周囲に透光性部材が接合され、前記基体の上側主面の外周部に前記一端部を前記透光性部材に対向させて覆うようにその下端で接合される金属製の蓋体とを具備する光半導体素子収納用パッケージにおいて、前記基体の上側主面と前記平板部の前記光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、前記基体の厚みをB、前記基体の下側主面と前記平板部の前記光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍であることを特徴とする。
【0019】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体が形成されているとともに一主面の一端部に光半導体素子の載置部が設けられた誘電体から成る平板部およびこの平板部の一主面に線路導体の一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部から成る入出力端子を具備することにより、平板部の上面に微細な間隔をもって線路導体を多数形成することができ、その結果、光半導体素子,モニタ用PDだけでなく、光半導体素子を駆動するためのドライバIC等の信号入出力をこの入出力端子で行なうことができる。
従って、外部電気回路に設けられていたドライバIC等を光半導体装置の内部や入出力端子の外側に実装し高集積化することができることから、光半導体素子を駆動させるための装置全体を小型化できる。
【0020】
また、貫通穴に入出力端子が嵌着されていることによって、従来のガラス接合された外部接続用ピンに比較して、外部接続用ピンの接合部にクラック等の破損が生じて光半導体装置内部の気密が破れるのを有効に抑制することができる。従って、外部接続用ピンをガラス等の接合材を介して基体の貫通孔に接合した従来の構造に比べ気密信頼性が大幅に向上する。また外部接続用ピンを介すことなく、入出力端子の線路導体で外部電気回路に接続することができるため、高周波信号が反射等して伝送損失が生じるのを抑制し、高周波信号の伝送効率を大幅に改善することができる。
【0021】
さらに、従来のように光半導体素子と外部接続用ピンとをボンディングワイヤにより接続する必要はなく、線路導体と光半導体素子とを同じ平板部の一主面上においてボンディングワイヤにより接続することができるため、ボンディングワイヤによる電気的な接続が容易となるとともに、ボンディングワイヤの長さも短くすることができボンディングワイヤのインダクタンスを小さくして高周波信号の伝送効率を向上させることができる。
【0022】
また、この入出力端子によって、平板部の上面に形成した線路導体のインピーダンスを特性インピーダンスに整合させることができ、入出力端子の線路導体を伝送する信号が高周波になっても、高周波信号を効率よく伝送できる。
【0023】
さらに、基体の上側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体の厚みをB、基体の下側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであることから、金属製の基体と入出力端子との熱膨張差により入出力端子に加わる応力を小さくして入出力端子にクラック等の破損が生じるのを抑制することができ、光半導体装置内部の気密性を保持することができる。また、CはAの1.5乃至5倍であることにより、平板部に載置された光半導体素子と光ファイバとの間の距離を小さくして両者間における光伝送効率を良くすることができるとともに、平板部の光半導体装置外部へ露出する面積を大きくして光半導体素子から発生する熱を効率よく光半導体装置外部に放散させ、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0024】
本発明の光半導体装置は、上記の光半導体素子収納用パッケージの前記載置部に光半導体素子がその受光部または発光部を前記透光性部材に対向させて載置固定されているとともに前記線路導体に電気的に接続され、前記基体の上側主面の外周部に前記蓋体の下端が接合されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の光半導体装置は、上記の構成により、上記本発明の光半導体素子収納用パッケージを用いた高周波伝送特性、気密信頼性および放熱性の優れたものとなる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の光半導体素子収納用パッケージおよび光半導体装置について以下に詳細に説明する。図1は本発明の光半導体装置について実施の形態の一例を示す断面図であり、1は基体、2は光半導体素子、3は金属製の蓋体、4は透光性部材、5は入出力端子、6は光ファイバである。これら基体1および入出力端子5で光半導体素子収納用パッケージが基本的に構成される。また、光半導体素子収納用パッケージに光半導体素子2を搭載し、透光性部材4が接合された蓋体3を接合することにより光半導体装置となる。
【0027】
本発明の光半導体素子収納用パッケージは、上下主面間を貫通する貫通穴1aが形成された平板状の金属製の基体1と、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体5cが形成されているとともに一主面の一端部に光半導体素子2の載置部が設けられた誘電体から成る平板部5bおよびこの平板部5bの一主面に線路導体5cの一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部5aから成り、貫通穴1aに嵌着された入出力端子5と、上端面3aの略中央部に貫通孔3bが形成されているとともに下端3cが開かれた筒状とされており、貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に透光性部材4が接合され、基体1の上側主面の外周部に一端部を透光性部材4に対向させて覆うようにその下端3cで接合される金属製の蓋体3とを具備している。
【0028】
本発明の基体1は、略円板状、略長方形等の平板状であり、Fe−Ni−Co合金やCu−W合金等の金属から成り、そのインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作される。
【0029】
また、基体1には、Al2O3質セラミックス等の誘電体から成る平板部5bおよびAl2O3質セラミックス等の誘電体から成る立壁部5aを具備した入出力端子5を挿入するために、基体1の上下主面間を貫通する貫通穴1aが設けられている。この貫通穴1aの内面には、入出力端子5の表面に設けられたメタライズ層が、銀(Ag)ロウ等のロウ材によって接合されることにより、貫通穴1aを塞ぐようにして入出力端子5が気密に接合される。
【0030】
入出力端子5は、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体5cが形成されるとともに一主面の一端部に光半導体素子2の載置部が設けられた平板部5bおよびこの平板部5bの一主面に線路導体5cの一部を間に挟んで接合された立壁部5aから構成される。平板部5bおよび立壁部5aは、Al2O3質焼結体,AlN質焼結体,3Al2O3・2SiO2質焼結体等の誘電体から成り、また、線路導体5cは、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等のメタライズ層から成る。
【0031】
このような入出力端子5は以下のようにして作製される。例えば、平板部5bおよび立壁部5aがAl2O3質焼結体から成る場合、先ず酸化アルミニウム、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等の原料粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合して泥漿状と成す。これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成形技術により複数のセラミックグリーンシートを得る。次に、このセラミックグリーンシートに、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを、スクリーン印刷法等の厚膜形成技術により印刷塗布して、線路導体5cとなるメタライズ層を所定パターンに形成する。また、入出力端子5をAgロウ等を介して基体1にロウ付けするために、入出力端子5の基体1との接合部にも、線路導体5cと同様にしてメタライズ層を所定パターンに形成する。しかる後、セラミックグリーンシートを複数枚積層し、これを還元雰囲気中、約1600℃の温度で焼成することにより製作される。このようにして、入出力端子5に特性インピーダンスに整合された線路導体5cが形成される。
【0032】
また、入出力端子5は、その表面に基体1との接合のためのメタライズ層を形成せずに焼成し、焼成後に入出力端子5の表面をスライス切断加工あるいは研磨加工した後、そのスライス切断面あるいは研磨面にWやMo等を主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷法等の厚膜形成技術により印刷塗布して、これを還元雰囲気中、約1300℃の温度で焼成することにより製作してもよい。これにより、入出力端子5の表面を平坦にすることができ、基体1との接合をより良好にすることができる。
【0033】
そして、光半導体素子2と線路導体5cとは平板部5bの一主面においてボンディングワイヤ9等を介して電気的に接続される。本発明の入出力端子5を用いることにより、従来のように光半導体素子2と外部接続用ピンとをボンディングワイヤ9により接続する必要はなく、線路導体5cと光半導体素子2とを同じ平板部5b上の一主面においてボンディングワイヤ9により接続することができるため、ボンディングワイヤ9による電気的な接続が容易となるとともに、ボンディングワイヤ9の長さも短くすることができ、ボンディングワイヤ9のインダクタンスを小さくして高周波信号の伝送効率を向上させることができる。
【0034】
また、基体1の上側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体1の厚みをB、基体1の下側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍である。
【0035】
この構成により、金属製の基体1と入出力端子5との熱膨張差により入出力端子5に加わる応力を小さくして入出力端子5にクラック等の破損が生じるのを抑制することができ、光半導体装置内部の気密性を保持することができる。また、平板部5bに載置された光半導体素子2と光ファイバ6との間の距離を小さくして両者間における光伝送効率を良くすることができるとともに、平板部5bの光半導体装置外部へ露出する面積を大きくして光半導体素子2から発生する熱を効率よく光半導体装置外部に放散させ、光半導体素子2を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0036】
B<0.3mmの場合、入出力端子5と基体1との接合面積が小さくなるため、基体1の上側主面に対して入出力端子5を略垂直に取り付け、光半導体素子2の発光面と光ファイバ6とを精度よく対向させることが困難となり、光半導体素子2と光ファイバ6との間の光伝送効率が低下し易くなる。また、B>1.5mmの場合、入出力端子5と基体1との接合面積が大きくなり、入出力端子5と基体1との熱膨張差による応力が入出力端子5に加わり易くなり、入出力端子5にクラック等の破損が発生し易くなって光半導体装置内部を気密に保持することが困難になる。
【0037】
また、C<1.5Aの場合、入出力端子5の光半導体装置外部へ露出する面積が小さくなり、光半導体素子2から発生した熱を光半導体装置外部へ効率よく放散させるのが困難となる。その結果、光半導体素子2が作動して発生した熱により光半導体素子2の温度が上昇し、光半導体素子2が誤作動等を起こし易くなり、正常に作動し難くなる。また、C>5Aの場合、基体1の下側主面から入出力端子5が大きく突出して光半導体装置全体が大型化する。
【0038】
また、基体1の上側主面の外周部には、上端面3aの略中央部に貫通孔3bが形成され下端3cが開かれた筒状である蓋体3が設けられる。蓋体3の下端3cは、鉛(Pb)−錫(Sn)半田等の半田による半田付けや溶接等によって基体1と気密に接合される。なお、下端3cは、基体1との接合面積を大きくして、基体1と蓋体3とで構成される容器内部の気密信頼性を向上させるために、図1に示すような鍔状であることが好ましい。
【0039】
蓋体3は、断面形状(横断面形状)が円形または長方形等の多角形の筒状であり、Fe−Ni−Co合金等の金属から成り、そのインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作される。
なお、蓋体3は、筒状部と上端面3aが個々に製作され、それらをロウ付け、半田付け、溶接等によって接合したものであってもよい。
【0040】
蓋体3には、貫通孔3bを塞ぐように貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に、透光性部材4がガラス接合や半田付け等により気密に接合される。透光性部材4は、ガラスやサファイア等から成る円板状,レンズ状,球状または半球状等のものであり、球状の場合全周にわたる帯状部で、円板状やレンズ状の場合一主面の外周部で、半球状の場合平面部の外周部で蓋体3に接合される。
【0041】
本発明において、透光性部材4は貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に接合されており、この場合以下の点で有利である。即ち、蓋体3の外周の鍔状部に金属製の固定部材7を溶接する際の熱が蓋体3に局所的に加わり、蓋体3の透光性部材4との接合面に熱膨張による引っ張り応力が加わると、透光性部材4が蓋体3から剥がれ易くなるが、光半導体装置は内部を気密にするため外側から内側に気圧が加わり易く、気圧によって透光性部材4が蓋体3に押し付けられて剥がれにくくなる。一方、透光性部材4が貫通孔3bの上端面3aの裏面側開口の周囲に接合されていると、熱膨張による応力によって透光性部材4を剥がそうとする引っ張り応力と気圧による圧力とで、透光性部材4が蓋体3から容易に外れ易くなる。
【0042】
このような光半導体素子収納用パッケージは、基体1の貫通穴1aに嵌着された入出力端子5に設けられた光半導体素子2の載置部に、光半導体素子2をSn−Pb半田等の低融点ロウ材で載置固定するとともに、線路導体5cと光半導体素子2とをボンディングワイヤ9で電気的に接続し、基体1の上側主面の外周部に蓋体3をシーム溶接等により接合することにより、光半導体装置となる。
【0043】
そして、光半導体装置の蓋体3の外周の鍔状部には、光ファイバ6が上端面に固定されたFe−Ni−Co合金等の金属から成る略円筒状の固定部材7の下端面がレーザ溶接法等の溶接によって接合される。光ファイバ6が固定部材7を介して透光性部材4の上方に固定されることにより、光ファイバ6を介して内部に収容する光半導体素子2と外部との光信号の授受が可能となる。
【0044】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子2の電極を外部電気回路に電気的に接続し、例えば外部電気回路から供給される電気信号によって光半導体素子2にレーザ光等の光を励起させ、この光を透光性部材4、光ファイバ6の順に透過させ、光ファイバ6を介して外部に伝送することによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【0046】
【実施例】
本発明の光半導体装置の実施例を以下に説明する。
【0047】
(実施例1)
図1の光半導体装置を以下のようにして製作した。まず、直径5.5mmの円板状で、略中央に縦1.05mm×横3.85mmの長方形の貫通穴1aが設けられたFe−Ni−Co合金から成る基体1の貫通穴1aに、長さ6mm×幅3.8mm×厚さ0.5mmのAl2O3質焼結体から成る平板部5bの光半導体装置内側の端から1.65mmの位置に長さ2mm×幅3.8mm×厚さ0.5mmのAl2O3質焼結体から成る立壁部5aの長さ方向の中央が位置するようにして載置された入出力端子5を、立壁部5aの長さ方向の中央が基体1の厚さ方向の中央と一致するようにして貫通穴1aの周囲にAgロウ材を介して接合した。なお、この入出力端子5の平板部5bの光半導体装置内側の端部にはLDから成る光半導体素子2が搭載されており、平板部5bの立壁部5aが載置されている主面に形成されたWから成る線路導体5cとボンディングワイヤにより電気的に接続されている。
【0048】
次に、基体1の上面に、円筒部の内径が4.5mm,下端3cの外径が5.5mm,下端3cから上端面3aまでの高さが3mm,厚さが0.3mmであり、上端面3aに設けられた直径2.4mmの円形の貫通孔3bの周囲に直径3.2mm×厚さ0.3mmの円板状のサファイアからなる透光性部材4がAgロウを介してロウ付けされたFe−Ni−Co合金から成る蓋体3をシーム溶接法によって接合した。ここで、基体1の厚さBを表1に示す種々の値となるようにして、光半導体装置の試料を各20個作製した。
【0049】
各試料について気密性の評価を以下の手順で行った。まず、各試料をフロリナート系の揮発性の高い液体中に浸漬しグロスリーク試験を行い、液体中への気泡の発生の有無を評価し、気泡の生じない試料を良品とし、気泡の生じた試料を不良品とした。さらに、グロスリーク試験で良品であった試料について、4900Pa(パスカル)で2時間He加圧を行った後にHeリーク試験、即ち光半導体装置の内部にHeを加圧侵入させ、その後光半導体装置の外部へ漏れ出てくるHeを検出する試験を実施し、Heの検出量が5.0×10−9Pa・m3/sec以下の試料を良品とし、検出量が5.0×10−9Pa・m3/secを超える試料を不良品とした。
【0050】
さらに各試料について、基体1の上側主面と平板部5bの光半導体装置内側の端との直角度(JIS B 0621)を3次元測定器で計測し、直角度の公差が0.05mmを超える試料を不良品とした。これらの評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1より、基体1の厚さBが1.5mmを超える場合に気密性不良が発生し、基体1の厚さBが0.3mm未満となる場合には直角度不良が発生した。
【0053】
以上より、基体1の厚さBが0.3mm以上であると、入出力端子5の平板部5bを基体1に対して直角度の公差が0.05mm以下に精度よく固定できることがわかった。また、基体1の厚さBを1.5mm以下とすることにより、光半導体装置内部の気密を良好に保持できることが判った。
【0054】
(実施例2)
図1の光半導体装置を以下のようにして製作した。まず、直径5.5mm×厚さ0.3mmの円板状で、略中央に縦1.05mm×横3.85mmの長方形の貫通穴1aが設けられたFe−Ni−Co合金から成る基体1の貫通穴1aに、幅3.8mm×厚さ0.5mmのAl2O3質焼結体から成る平板部5bの光半導体装置内側の端から1.65mmの位置に長さ2mm×幅3.8mm×厚さ0.5mmの立壁部5aの長さ方向の中央が位置するようにして載置された入出力端子5を、立壁部5aの長さ方向の中央が基体1の厚さ方向の中央と一致するようにして貫通穴1aの周囲にAgロウ材を介して接合した。なお、この入出力端子5の平板部5bの光半導体装置内側の端部にはLDから成る光半導体素子2が搭載されており、平板部5bの立壁部5aが載置されている主面に形成されたWから成る線路導体5cとボンディングワイヤにより電気的に接続されている。
【0055】
次に、基体1の上面に、円筒部の内径が4.5mm,下端3cの外径が5.5mm,下端3cから上端面3aまでの高さが3mm,厚さが0.3mmであり、上端面3aに設けられた直径2.4mmの貫通孔3bの周囲に直径3.2mm×厚さ0.3mmの円板状のサファイアからなる透光性部材4がAgロウを介してロウ付けされたFe−Ni−Co合金から成る蓋体3をシーム溶接法によって接合した。ここで、入出力端子5の長さを表2に示す種々の値となるようにして、光半導体装置の試料を各20個作製した。
【0056】
各試料について、光半導体素子5を強制加熱(常温から150℃まで10分で加熱)したときに光半導体素子5が正常に作動するかどうか作動性を調べた。表2において、正常に作動しないものを不良品とした。
【0057】
【表2】
【0058】
表2より、基体1の上側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離Aと基体1の下側主面と平板部5bの光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離Cとの比C/Aが1.5未満の場合に正常に作動しないものがあった。
【0059】
以上より、C/Aを1.5以上とすることにより、光半導体素子5の熱を良好に放熱させて、光半導体素子5を正常に作動させ得ることがわかった。ただし、C/Aが5よりも長くなると、光半導体装置が大型化するので実用に適さないものとなる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行なうことは何等差し支えない。
【0061】
【発明の効果】
本発明の光半導体素子収納用パッケージは、上下主面間を貫通する貫通穴が形成された平板状の金属製の基体と、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体が形成されているとともに一主面の一端部に光半導体素子の載置部が設けられた誘電体から成る平板部およびこの平板部の一主面に線路導体の一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部から成り、貫通穴に嵌着された入出力端子と、上端面の略中央部に貫通孔が形成されているとともに下端が開かれた筒状とされており、貫通孔の上端面側開口の周囲に透光性部材が接合され、基体の上側主面の外周部に一端部を透光性部材に対向させて覆うようにその下端で接合される金属製の蓋体とを具備する光半導体素子収納用パッケージにおいて、基体の上側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体の厚みをB、基体の下側主面と前記平板部の光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍であるものとしたことから、平板部の上面に微細な間隔をもって線路導体を多数形成することができ、その結果、光半導体素子,モニタ用PDだけでなく、光半導体素子を駆動するためのドライバIC等の信号入出力をこの入出力端子で行なうことができる。従って、外部電気回路に設けられていたドライバIC等を光半導体装置の内部や入出力端子の外側に実装し高集積化することができることから、光半導体素子を駆動させるための装置全体を小型化できる。
【0062】
また、貫通穴に入出力端子が嵌着されていることによって、従来のガラス接合された外部接続用ピンに比較して、外部接続用ピンの接合部にクラック等の破損が生じて光半導体装置内部の気密が破れるのを有効に抑制することができる。従って、外部接続用ピンをガラス等の接合材を介して基体の貫通孔に接合した従来の構造に比べ気密信頼性が大幅に向上する。また外部接続用ピンを介すことなく、入出力端子の線路導体で外部電気回路に接続することができるため、高周波信号が反射等して伝送損失が生じるのを抑制し、高周波信号の伝送効率を大幅に改善することができる。
【0063】
さらに、従来のように光半導体素子と外部接続用ピンとをボンディングワイヤにより接続する必要はなく、線路導体と光半導体素子とを同じ平板部の一主面上においてボンディングワイヤにより接続することができるため、ボンディングワイヤによる電気的な接続が容易となるとともに、ボンディングワイヤの長さも短くすることができボンディングワイヤのインダクタンスを小さくして高周波信号の伝送効率を向上させることができる。
【0064】
また、この入出力端子によって、平板部の上面に形成した線路導体のインピーダンスを特性インピーダンスに整合させることができ、入出力端子の線路導体を伝送する信号が高周波になっても、高周波信号を効率よく伝送できる。
【0065】
さらに、基体の上側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、基体の厚みをB、基体の下側主面と平板部の光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであることから、金属製の基体と入出力端子との熱膨張差により入出力端子に加わる応力を小さくして入出力端子にクラック等の破損が生じるのを抑制することができ、光半導体装置内部の気密性を保持することができる。また、CはAの1.5乃至5倍であることにより、平板部に載置された光半導体素子と光ファイバとの間の距離を小さくして両者間における光伝送効率を良くすることができるとともに、平板部の光半導体装置外部へ露出する面積を大きくして光半導体素子から発生する熱を効率よく光半導体装置外部に放散させ、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0066】
本発明の光半導体装置は、上記の光半導体素子収納用パッケージの載置部に光半導体素子がその受光部または発光部を透光性部材に対向させて載置固定されているとともに線路導体に電気的に接続され、基体の上側主面の外周部に蓋体の下端が接合されていることから、上記本発明の光半導体素子収納用パッケージを用いた高周波伝送特性、気密信頼性および放熱性の優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光半導体装置について実施の形態の例を示す断面図である。
【図2】従来の光半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
1:基体
1a:貫通穴
2:光半導体素子
3:蓋体
3a:上端面
3b:貫通孔
4:透光性部材
5:入出力端子
5a:立壁部
5b:平板部
5c:線路導体
Claims (2)
- 上下主面間を貫通する貫通穴が形成された平板状の金属製の基体と、一主面に一辺から対向する他辺にかけて線路導体が形成されているとともに前記一主面の一端部に光半導体素子の載置部が設けられた誘電体から成る平板部および該平板部の前記一主面に前記線路導体の一部を間に挟んで接合された誘電体から成る立壁部から成り、前記貫通穴に嵌着された入出力端子と、上端面の略中央部に貫通孔が形成されているとともに下端が開かれた筒状とされており、前記貫通孔の上端面側開口の周囲に透光性部材が接合され、前記基体の上側主面の外周部に前記一端部を前記透光性部材に対向させて覆うようにその下端で接合される金属製の蓋体とを具備する光半導体素子収納用パッケージにおいて、前記基体の上側主面と前記平板部の前記光半導体素子収納用パッケージ内側の端との間の距離をA、前記基体の厚みをB、前記基体の下側主面と前記平板部の前記光半導体素子収納用パッケージ外側の端との間の距離をCとしたとき、Bは0.3乃至1.5mmであり、CはAの1.5乃至5倍であることを特徴とする光半導体素子収納用パッケージ。
- 請求項1記載の光半導体素子収納用パッケージの前記載置部に光半導体素子がその受光部または発光部を前記透光性部材に対向させて載置固定されているとともに前記線路導体に電気的に接続され、前記基体の上側主面の外周部に前記蓋体の下端が接合されていることを特徴とする光半導体装置。
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