JP2004172285A - 短波長レーザー光を用いた露光処理方法および短波長露光用ペリクルの保管方法 - Google Patents
短波長レーザー光を用いた露光処理方法および短波長露光用ペリクルの保管方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】100〜200nmの光を用いた露光処理において、ペリクル膜の劣化が少ない露光処理方法およびそのペリクルの保管方法を提供する。
【解決手段】波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程において、ペリクル膜およびフレームからなるペリクルを通して露光処理を行う際、99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンからなる不活性ガスと、99.5容量%以上の純度を有する酸素ガスとからなるガス雰囲気下で露光を行うことを特徴とする露光処理方法、および99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンを主成分とするガス雰囲気下でペリクルを保管することを特徴とするペリクルの保管方法。
【選択図】なし
【解決手段】波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程において、ペリクル膜およびフレームからなるペリクルを通して露光処理を行う際、99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンからなる不活性ガスと、99.5容量%以上の純度を有する酸素ガスとからなるガス雰囲気下で露光を行うことを特徴とする露光処理方法、および99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンを主成分とするガス雰囲気下でペリクルを保管することを特徴とするペリクルの保管方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長100〜200nmの光を用いるフォトリソグラフィにおけるペリクルを用いた露光方法およびこのペリクルの保管方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ペリクルとは、半導体装置または液晶表示板を製造する際の一工程であるフォトリソグラフィにおいて、フォトマスクやレチクル(以下これらをマスクという。)上に異物が乗り、露光時にパターン欠陥となることを防ぐためにマスクのパターン上に装着される保護具であって、ペリクル膜とフレームからなる。通常は接着剤を介して枠体(フレーム)に取り付けられたペリクル膜が、マスク面から一定距離をおいて設置される構造を有している。
【0003】
これらが使用される半導体装置や液晶表示板の製造分野では、配線や配線間隔の微細化進展にともない、フォトリソグラフィにおいても、用いられる光源の波長が急速に短波長化している。最小パターン寸法0.3μm以上の従来の露光技術では、i線光源(365nm)を用いたプロセスが主流であり、ペリクル膜の材料としてはニトロセルロース系材料が使用されてきた。
【0004】
最小パターン寸法0.3μm未満の配線加工のために、波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのフッ化アルゴンエキシマレーザー(以下、「ArFエキシマレーザー」という。)が導入されている。これらの波長領域では、ニトロセルロース系の膜材料では耐久性が不充分であり、非結晶性のパーフルオロポリマーがペリクル膜の材料として採用されている。
【0005】
一方、さらなる微細加工のために波長157nmのフッ素ガスエキシマレーザー(以下、「F2エキシマレーザー」という。)の使用が提案されている。波長200nm以下のArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー用のペリクル膜の材料としては、特定構造のフルオロポリマーが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
光源の短波長化が進むと、その光子エネルギーが大きくなり、例えば、ArFエキシマレーザーでは6.4eV(=147kcal/mol)ものエネルギーを持ち、このエネルギーは、有機ポリマーにおけるC−C結合の解離エネルギー(104kcal/mol)より十分大きいため、フッ素系のペリクル膜でも露光光照射による分解に起因する劣化によりペリクル膜の膜厚の減少が生じることになる。また露光照射の雰囲気については、通常の空気もしくは窒素雰囲気下でおこなうことが検討されていた。また、有機化合物や無機化合物の濃度を減らした窒素及び酸素の混合気体の雰囲気下で露光照射をおこなうことで、空気程度の組成(N2:O2=4:1)でも、通常の空気よりもペリクル膜の劣化が顕著に防止され、特に含フッ素重合体から成るペリクル膜の紫外域の光線による劣化を有効に防止することが可能となることが報告されている(特許文献2参照)。しかしながら、波長193nmのArFエキシマレーザーを使用した場合、上記雰囲気においても限定された寿命である。さらに波長157nmのF2エキシマレーザーを使用した場合、このような窒素と酸素の混合気体もしくは、純度の高い窒素を用いた場合でも有機ポリマーにおけるC−C結合の分解に起因する劣化によりペリクル膜の膜厚の減少が大きな問題となっている。
【0007】
【特許文献1】
特開平2001−330943号公報
【特許文献2】
特開2002−124449号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、100〜200nmの光を用いた露光処理において、ペリクル膜の劣化が少ない露光処理方法およびそのペリクルの保管方法を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討したところ、発明者らは、露光を行う際のガス雰囲気、特に不活性ガスの種類によりペリクル膜の耐光性が左右されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち100〜200nmの光にてペリクルを用いて露光する際に、ペリクルの耐光性を改善する雰囲気ガスを見出した。また、特定の不活性ガスをペリクルの保管時にも用いることによりペリクルの寿命を延長できること見出した。本発明は、100〜200nmの光を用いるフォトリソグラフィにおいて、ペリクルを下記の雰囲気ガスにて置換する露光処理方法およびペリクルの保管方法に関する下記発明である。
【0010】
(1) 波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程において、ペリクル膜およびフレームからなるペリクルを通して露光処理を行う際、99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンからなる不活性ガス(以下、単に「不活性ガス」という。)と、99.5容量%以上の純度を有する酸素ガスとからなるガス雰囲気下で露光を行うことを特徴とする露光処理方法、
(2) 99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンを主成分とするガス雰囲気下でペリクルを保管することを特徴とするペリクルの保管方法。
【0011】
本発明の露光処理方法は、特に100〜200nmのレーザー光(以下、「短波長レーザー光」ともいう。)による露光処理方法として適している。具体的には、波長193nmのArFエキシマレーザー光、157nmのF2エキシマレーザー光、特に好ましくは157nmのF2エキシマレーザー光によるフォトリソグラフィにおける露光処理方法として適している。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の露光処理方法において、用いられる不活性ガスのヘリウムおよびネオンは99.5容量%以上の純度を有する。純度が低い場合は、ガス中に含まれる有機、無機不純物、窒素がペリクル膜に吸着され、その部分より膜の分解が誘発されるなどのために、折角のヘリウムまたはネオンの効果が発揮されない。
特に、99.9容量%以上の純度を有することが好ましい。これらの不活性ガスは、2種類を併用してもよいが、コストおよび管理の観点からいずれか1種類を用いることが好ましい。なかでもヘリウムガスが最も好ましい。一方、不活性ガスとともに用いられる酸素ガスは純度が99.5容量%以上であり、99.9容量%以上であることが特に好ましい。
【0013】
また、上記の酸素ガスの混合量としては、不活性ガス:酸素の比率でみたとき、99.995:0.005〜99:1の容積比で混合して用いることが好ましい。酸素ガスを1容量%よりも少なくすることでペリクル膜の膜べりや破れが発生する可能性が著しく少なくなるため好ましい。また、酸素ガスが0.005容量%よりも多くすることで、同様に膜べりやピンホールなどが抑制される。最も好ましい容積比は、不活性ガス:酸素の比率が、99.995:0.005〜99.9:0.1の範囲の容積比で混合したガスである。
【0014】
本発明における不活性ガスと酸素ガスの混合ガスが耐光性を改善するメカニズムは定かではないが、以下のように推察される。例えば不活性ガスに窒素を用いた場合、100〜200nmの高エネルギーの光にさらされることにより、ペリクル膜に生成する微量なラジカルおよびこれらに誘発されて生成する窒素ラジカルが膜中に取り込まれると推定される。この現象は露光後の膜表面をX線光電子分光法で分析すると窒素が検出されることから支持される。これらの窒素化合物は微量の酸素などと反応し着色を呈したり、著しい光吸収を起こしたりして耐光性に影響を与えるものと考えられる。
本発明においては、ラジカル類に対して不活性なヘリウムまたはネオンを使用することによりラジカルに由来する反応が抑制されたと考えられる。
【0015】
また、ヘリウムとネオンは熱伝導率が窒素等に比べて大きいためペリクル膜に発生する熱を効率よく除熱することが可能である。例えば27℃においてヘリウムの熱伝導率は1499×10−4Wm−1K−1であり、ネオンは493×10−4Wm−1K−1である。一方窒素は259.8×10−4Wm−1K−1であることからヘリウムとネオンの除熱効果が大きいことがわかる。この除熱効果により、部分的な光吸収により温度が上昇した場合でもこの上昇を抑えペリクル膜の分解を抑制する方向に作用すると考えられる。
【0016】
また、酸素ガスについては、短波長レーザー光の照射により生成する微量のラジカルをトラップし、それ以上の分解を抑制する方向に作用するためと考えられる。
【0017】
一方、ペリクルを保管する条件は、99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンからなる不活性ガス雰囲気である。この場合、酸素ガスは混合しない方が好ましい。しかしながら、管理上又はコスト上の理由から、露光処理で使用される、酸素を微量混合した上記不活性ガスを使用してもよい。
ペリクルの保管においては、露光処理時に悪影響を及ぼす窒素ガスがペリクル膜に吸着または溶解されていないことから、露光処理時に耐光性が良好になると考えられる。
保管するペリクルは、波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程において使用されるペリクルであることが好ましい。波長100〜200nmの光の中でも、フッ化アルゴンエキシマレーザー光やフッ素ガスエキシマレーザー光を露光に用いることが好ましい。
また、保管するペリクルのペリクル膜を構成する材料は、含フッ素ポリマー(A)であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の露光処理方法は、波長100〜200nmの光を用いた露光処理に有効であり、例えばフッ化アルゴンエキシマレーザー光(波長:193nm)、またはフッ素ガスエキシマレーザー光(波長:157nm)を用いた露光処理に好適に用いることができる。
【0019】
本発明の露光処理方法に用いられるペリクルは、従来公知のペリクルが使用される。例えば、アルミニウム等から成るフレームの一方の端部にペリクル膜を張架し、他方の端部に粘着剤を塗布してマスクに固定して使用するものが挙げられる。ペリクル膜の厚みとしては、0.1〜10μmが一般的であり、0.2〜5μmの範囲が好ましく、0.5〜2.0μmにあることがより好ましい。
【0020】
本発明におけるペリクル膜に使用される材料としては、波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程に使用される実質的に透明な有機質ポリマーが好ましい。エネルギーの高い露光光に対する耐光性が高いことが必要であるため、波長100〜200nmの光に対して実質的に透明なフッ素系ポリマーが好ましい。
ここで「実質的に透明な」とは、これらのエキシマレーザー光に対する透過率が膜厚1μmのフィルムにて95%以上、好ましくは96%以上であることをいう。
【0021】
本発明におけるペリクルを構成する材料としては、下記の含フッ素ポリマー(A)であることが好ましい。含フッ素ポリマー(A)は、炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーである。このポリマーの主鎖の炭素原子連鎖は原則としてモノマーの重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子が連結した連鎖からなる。したがって、含フッ素ポリマー(A)において「主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子またはフッ素含有置換基が結合した炭素原子とを含む」とは、重合性不飽和基を1個有するモノマーの重合により得られるホモポリマーの場合、モノマーの重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子の一方の炭素原子には水素原子が結合し他方の炭素原子には水素原子が結合していないモノマー(以下モノマー(a)という)のポリマーであることを意味する。
コポリマーの場合には、重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子の少なくともいずれかに水素原子が結合しているモノマー[以下モノマー(b)という]と重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子のいずれにも水素原子が結合していないモノマー[以下モノマー(c)という]とのコポリマーであってもよい。なお、モノマー(b)は、その範疇にモノマー(a)を含む。
さらに含フッ素ポリマー(A)は、モノマー(a)の2種以上のコポリマーであってもよく、モノマー(a)と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。同様に、モノマー(b)とモノマー(c)とそれら以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0022】
含フッ素ポリマー(A)は2個の重合性不飽和結合を有するモノマー(以下、「ジエンモノマー」という。)の環化重合により得られるポリマーであってもよい。通常このポリマーの場合には2個の重合性不飽和結合の4個の炭素原子がポリマーの主鎖を形成する。したがって、この含フッ素ポリマー(A)は、2個の重合性不飽和結合の4個の炭素原子の内1個以上の炭素原子が水素原子を有しかつ1個以上の炭素原子が水素原子を有しないモノマー[以下ジエンモノマー(d)という]の環化重合により得られるポリマーである。
コポリマーの場合には4個の炭素原子のいずれも水素原子を有しないジエンモノマー[以下ジエンモノマー(e)という]と重合性不飽和結合の炭素原子に水素原子を有するモノマー(このモノマーは重合性不飽和結合を2個有する環化重合しうるジエンモノマーであっても重合性不飽和結合を1個有するモノマーであってもよい)[以下モノマー(f)という]とのコポリマーであってもよい。さらに、含フッ素ポリマー(A)は、ジエンモノマー(d)と他のモノマーとのコポリマーであってもよく、ジエンモノマー(e)とモノマー(f)とそれら以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0023】
含フッ素ポリマー(A)がフッ素を有するポリマーであることより、上記モノマー(a)、モノマー(c)、ジエンモノマー(d)およびジエンモノマー(e)は重合性不飽和結合の炭素原子にフッ素原子またはフッ素含有有機基が結合していることが必要である。モノマー(b)、モノマー(f)は重合性不飽和結合の炭素原子にフッ素原子またはフッ素含有有機基が結合していることが必須ではないがそれらが結合していてもよい。
含フッ素有機基としては1価の基と2価の基が好ましい。2価の含フッ素有機基の2個の結合手は、重合性不飽和結合の2個の炭素原子それぞれに結合する(2個の炭素原子を含む環を形成する)場合と2個の炭素原子の一方のみに結合する(その1個の炭素原子を含む環を形成し他方の炭素原子が環外の炭素原子となる)場合とがある。
モノマー(a)〜モノマー(f)はその重合性不飽和基の炭素原子に水素原子、フッ素原子、アルキル基などの有機基、その他の置換基を有していてもよい。しかし、アルキル基などの有機基を側鎖に多数有するポリマーはその炭素原子に結合した水素原子が耐久性低下の要因となりやすくそのような置換基は少ない方が好ましい。
1価の含フッ素有機基としては含フッ素アルキル基と含フッ素アルコキシ基が好ましい。これらの基の炭素数は10以下、特に4以下が好ましい。これらの基は水素原子を含まないことが好ましく、フッ素原子のみを含む基が好ましい。
2価の含フッ素有機基としてはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数10以下(特に6以下)のポリフルオロアルキレン基が好ましい。このポリフルオロアルキレン基としてはパーフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子は、ポリフルオロアルキレン基の一方の末端に存在してもよく、両末端に存在してもよく、炭素原子間に存在してもよい。2価の含フッ素有機基としては直鎖状のものに限られず、分岐を有していてもよい。
1価の有機基としては、前記1価の含フッ素有機基とフッ素を有しない1価の有機基がある。フッ素を有しない1価の有機基としては炭素数10以下、特に4以下のアルキル基とアルコキシ基が好ましい。フッ素を有しない1価の有機基としては特にメチル基が好ましい。
【0024】
結晶性を有するポリマーは光散乱による透過率の低下やレチクル像のゆがみを引き起こすため、含フッ素ポリマー(A)の結晶化度は30%以下が好ましく、特に20%以下の非結晶性であることが好ましい。ポリマー分子中にバルキーな構造を導入することによりポリマーの結晶化度を下げることができる。したがって、バルキーな構造である脂肪族環をポリマーの主鎖に存在させてポリマーの結晶化を抑制し、非結晶性の透明性の高いポリマーとすることが好ましい。よって、含フッ素ポリマー(A)としては特に主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素ポリマーであることが好ましい。
「主鎖に脂肪族環構造を有する」とは主鎖の炭素原子の1個以上が脂肪族環を構成する炭素原子であることを意味する。この脂肪族環は、その脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上にフッ素原子または含フッ素有機基が結合している含フッ素脂肪族環であることが好ましい。また、この脂肪族環を構成する原子の一部は炭素原子以外の酸素原子や窒素原子などの原子であってもよい。好ましい脂肪族環は1〜2個の酸素原子を有する5〜8員環の含フッ素脂肪族環である。
【0025】
脂肪族環に重合性不飽和基を有するモノマーを用いることによって主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーが得られる。ジエンモノマー(d)やジエンモノマー(e)は環化重合により主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーを形成する。「脂肪族環に重合性不飽和基を有する」とは、脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性不飽和基を有するか、または、環を構成する炭素原子と環外の炭素原子との間に重合性不飽和基を有することを意味する。この脂肪族環としては含フッ素脂肪族環であることが好ましく、前記のように環を構成する原子として酸素原子を有していてもよい。
以下、含フッ素脂肪族環に重合性不飽和基を有するモノマーを含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーという。含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーの環を構成する原子としては炭素原子以外に1〜2個の酸素原子を有していてもよい。モノマー(c)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであることが好ましい。モノマー(a)、モノマー(b)およびモノマー(f)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであってもよい。
【0026】
モノマー(a)としてはフッ化ビニリデンやトリフルオロエチレンが好ましい。しかしこれらのモノマーのホモポリマーは結晶性となることが多く透明性が低い傾向にある。
【0027】
モノマー(b)としては、CHR1=CR2R3[R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。前記のようにモノマー(b)はモノマー(a)を含有している。R1、R2としては水素原子またはフッ素原子が好ましく、R3は水素原子、フッ素原子または炭素数4以下のアルキル基(特にメチル基)が好ましい。具体的には、エチレン、プロピレンなどのオレフィン、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどの重合性不飽和基の炭素原子に水素原子が結合したフルオロオレフィンがある。モノマー(b)としては、炭素数2〜3のオレフィンと炭素数2〜3のフルオロオレフィンが好ましい。特に好ましいモノマー(b)は、エチレンおよびプロピレンから選ばれたオレフィンおよびフッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンから選ばれたフルオロオレフィンである。
【0028】
モノマー(c)としては、CFR4=CR5R6[R4、R5、R6はそれぞれ独立にフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表すか、R4とR5は共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR6はフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表すか、または、R5とR6は共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR4はフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。この内、R4とR5が共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR6がフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す場合、および、R5とR6が共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR4がフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す場合、そのモノマー(c)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーの1種であり、以下このモノマーを含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)という。
【0029】
モノマー(c)としては、具体的には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの水素原子を有しないポリフルオロオレフィン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、並びに、下記式1、式2および式3で表される含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)などがある。特に好ましいモノマー(c)はパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)[すなわち、R11およびR12がいずれもトリフルオロメチル基である式1で表される化合物]である。
【0030】
【化1】
【0031】
上記式1〜式3においてR11〜R16はそれぞれ独立にフッ素原子または含フッ素有機基を表し、含フッ素有機基としてはパーフルオロアルキル基、特に炭素数1または2のパーフルオロアルキル基が好ましい。
モノマー(b)とモノマー(c)のコポリマーからなる含フッ素ポリマー(A)としては、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、プロピレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーなどの主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有しないポリマーであってもよいが、これらは透明性が充分とはいえない。しかし、膜と枠体を接着するための接着剤としては有用である。好ましい含フッ素ポリマー(A)はモノマー(b)と上記式1〜式3で表される含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)とのコポリマーである。この場合のモノマー(b)としては、エチレンなどのオレフィンおよび不飽和基の炭素原子に水素原子を有するフルオロオレフィンから選ばれた少なくとの1種のモノマーが好ましい。
【0032】
モノマー(b)とモノマー(c)のコポリマーにおけるモノマー(b)の重合により形成されたモノマー単位(以下モノマー単位(b)という。他のモノマー単位についても同様とする)とモノマー単位(c)との合計に対するモノマー単位(b)の割合は10〜70モル%が好ましい。モノマー(b)がエチレンなどの2個以上の水素原子(重合性不飽和結合の炭素原子に結合した水素原子)を有するモノマーの場合は10〜50モル%が好ましい。特に好ましいモノマー単位(b)の割合は20〜40モル%である。接着剤用の含フッ素ポリマー(A)においてはさらにモノマー単位(b)とモノマー単位(c)との合計に対するモノマー単位(b)の割合が40〜85モル%であるポリマーも好ましい。
なお、このポリマーにおける全モノマー単位に対するモノマー単位(b)とモノマー単位(c)の合計の割合は50〜100モル%が好ましく、特に80〜100モル%が好ましい。最も好ましいポリマーはモノマー(b)とモノマー(c)のみからなるコポリマー(ただし各モノマーは2種以上であってもよい)である。
【0033】
ジエンモノマー(d)としては、CH2=CR7−Q−CR8=CF2[ただし、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Qは2価の含フッ素有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。R7としては水素原子とフッ素原子が好ましく特に水素原子が好ましい。R8としてはフッ素原子または炭素数2以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0034】
Qとしては、炭素数10以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子はパーフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していてもよく、両末端に存在していてもよく、炭素原子間に存在していてもよい。エーテル性酸素原子を有しないパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数2〜6、一方の末端にエーテル性酸素原子を有するまたは炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数1〜4、両末端にエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数1〜3であることがより好ましい。分岐部の炭素原子を除いた炭素原子と酸素原子の合計数は2〜4であることが最も好ましい。
Qとしては、2,2−ジフルオロビニル基側にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル性酸素原子を有しない炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基が好ましい。さらに好ましいQは2,2−ジフルオロビニル基側にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基である。
すなわち、最も好ましいジエンモノマー(d)は、CH2=CH−Rf−O−CF=CF2[ただし、Rfは炭素数1〜4のパーフルオロアルキレン基を表す]で表されるモノマーである。このモノマーは環化重合性が高く、短波長光の透過性が高く機械的強度の高いポリマーが得られる(特開昭63−238111号公報、特開昭63−238113号公報等参照)。Rfとしては分岐を除いて炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基が好ましい。分岐が存在する場合は、分岐はトリフルオロメチル基が好ましく、分岐の数は1〜2が好ましい。
【0035】
なお、CH2=CR7−Q−CR8=CF2の環化重合により通常下記式4、式5、式6などで表されるモノマー単位(以下モノマー単位(d)という。)が形成される。CH2=CR7−Q−CR8=CF2で表されるジエンモノマー(d)としては、例えば以下の化合物がある。
【0036】
【化2】
【0037】
【化3】
【0038】
含フッ素ポリマー(A)は、ジエンモノマー(d)のホモポリマー(ただし、ジエンモノマー(d)の2種以上のコポリマーであってもよい)であってもよく、他のモノマーとのコポリマーであってもよい。他のモノマーとしては、モノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)、ジエンモノマー(e)などがある。コポリマーとしてはジエンモノマー(d)とモノマー(c)のコポリマーおよびジエンモノマー(d)とジエンモノマー(e)のコポリマーが好ましく、ジエンモノマー(d)とモノマー(c)のコポリマーがより好ましい。この場合のモノマー(c)としては、前記の含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)が好ましい。
この含フッ素ポリマー(A)における全モノマー単位に対するモノマー単位(d)の割合は30〜100%が適当であり、50〜100%が好ましく、100%であることが最も好ましい。
ジエンモノマー(e)としては、ジエンモノマー(d)の重合性不飽和基の炭素原子に結合した水素原子がすべてフッ素原子またはパーフルオロアルキル基に置換されたモノマーが好ましい。より好ましくは、CF2=CR9−Q−CR10=CF2[R9、R10はそれぞれ独立にフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Qは前記に同じ]で表されるモノマーが好ましい。ただし、前記したQにおけるエーテル性酸素原子の位置や数の制約はない。具体的には下記のようなモノマーがある。
【0039】
【化4】
【0040】
モノマー(f)としては前記モノマー(a)やモノマー(b)を使用しうる。特にモノマー(b)が好ましい。ジエンモノマー(e)とモノマー(f)の共重合においてはジエンモノマー(e)は環化重合により含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位を形成し、このモノマー単位(e)とモノマー単位(f)とを有するコポリマーが生成する。モノマー単位(e)とモノマー単位(f)とを有するコポリマーはさらに他のモノマー単位を有していてもよく、例えば前記モノマー単位(c)を有していてもよい。
【0041】
ジエンモノマー(e)とモノマー(f)のコポリマーにおいて、モノマー単位(e)とモノマー単位(f)との合計に対するモノマー単位(f)の割合は10〜70モル%が好ましい。エチレンなどの2個以上の水素原子(重合性不飽和結合の炭素原子に結合した水素原子)を有するモノマー(f)の場合は10〜60モル%が好ましい。特に好ましいモノマー(f)の割合は20〜50モル%である。なお、このポリマーにおける全モノマー単位に対するモノマー単位(e)とモノマー単位(f)の合計の割合は50〜100モル%が好ましく、特に70〜100モル%が好ましい。
含フッ素ポリマー(A)は前記のように含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位を含むポリマーであることが好ましい。含フッ素ポリマー(A)における全モノマー単位に対するこの含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位の割合は、20モル%以上、特に40モル%以上であることが好ましい。
特に好ましい含フッ素ポリマー(A)は、エチレンとパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)とのコポリマー、ジエンモノマー(d)のホモポリマー、および、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであるモノマー(c)とジエンモノマー(d)とのコポリマーである。
【0042】
本発明におけるペリクル膜とフレームは、含フッ素ポリマー(A)を含む接着剤により接着されていることが好ましい。
ペリクル膜とフレームを接着する接着剤用の含フッ素ポリマー(A)としては、例えば、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであるモノマー(c)とモノマー(b)とのコポリマー、ジエンモノマー(d)のポリマー、ジエンモノマー(e)とモノマー(f)とのコポリマーなどが好ましい。また、接着剤用の含フッ素ポリマー(A)は必ずしも高い透明性は要求されないことより、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有しないポリマーであってもよい。したがって、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー以外のモノマー(c)とモノマー(b)とのコポリマー(すなわち主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素ポリマー(A))も好ましい接着剤として使用できる。
主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素ポリマー(A)としては、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーなどがある。このようなポリマーにおけるモノマー単位(c)とモノマー単位(b)の合計に対するモノマー単位(b)の割合は、40〜85モル%が好ましく、特に50〜80モル%が好ましい。
【0043】
また、含フッ素ポリマー(A)を、ペリクル用フレームとペリクル膜との接着剤として用いる場合、接着性向上に有効な官能基が導入された含フッ素ポリマー(A)を用いることが好ましい。なお、ペリクル膜用の含フッ素ポリマー(A)は光透過性の面から官能基を有しないことが好ましい。
官能基含有含フッ素ポリマー(A)の官能基としては、枠体やペリクル膜に対して接着性を発現しうるものであれば特に制約はなく、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、エステル結合を有する基、アルケニル基、加水分解性シリル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基などが挙げられる。この官能基としては、枠体材料であるアルミニウムなどの金属類に対する接着性が良好で、保存安定性に富み、比較的低温でその効果が発現できる観点より、カルボン酸基が特に好適である。
【0044】
(実施例)
(例1)[含フッ素ポリマーAの合成例]
1,1,2,4,4,5−ヘキサフルオロ−3−オキサ−4−トリフルオロメチル−1,6−ヘプタジエン[CH2=CHCF(CF3)CF2OCF=CF2]30gおよび1H−パーフルオロヘキサン[CF3CF2CF2CF2CF2CF2H]70gを窒素置換した内容積100mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。
重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)パーオキシドの17mgを加え、系内を再度窒素で置換した後、5℃で72時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素環構造を有する非結晶性ポリマー(以下「重合体A」という。)を24g得た。
重合体Aの固有粘度[η]は、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中30℃で0.60dl/gであった。重合体Aのガラス転移温度は108℃であり、室温ではタフで透明ガラス状の重合体であり、屈折率は1.34と低かった。
【0045】
重合体Aの7gとパーフルオロトリブチルアミンの93gをガラス製フラスコ中に入れて40℃にて24時間加熱撹拌した。その結果、無色透明で濁りのない均一な溶液を得た。この溶液を研磨したガラス板上にスピン速度500rpmにて10秒、その後2000rpmにて20秒スピンコートを実施した後、80℃にて1時間、さらに180℃にて1時間加熱処理することにより、ガラス板上に均一で透明な膜が得られた。
【0046】
(例2)[含フッ素ポリマーBの合成例]
1,1,2,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン[CH2=CHCF2CF2OCF=CF2]20gおよびトリクロロトリフルオロエタンの40gを内容積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)パーオキシドの20mgを加え、系内を再度窒素で置換した後、18℃で10時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素環構造を有する非結晶性ポリマー(以下、「重合体B」という。)を10g得た。
重合体Bの固有粘度[η]は、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン中30℃で0.96dl/gであった。重合体Bのガラス転移点は90℃であり、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であり、屈折率は1.36と低かった。
この重合体Bを空気中320℃で3時間熱処理した後に水中に浸漬して変性した。変性された重合体BのIRスペクトル測定によりカルボキシル基のピークが確認され、その量は0.005ミリモル/gであった。この変性された重合体Bを以下「接着剤B」という。
【0047】
一方、接着剤Bの7gと1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの93gを上記と同様に処理して得た溶液をアルミニウムフレーム上に塗布し、室温で2時間乾燥した。その後、120℃のホットプレート上に接着面を上にしてアルミニウムフレームを載せて10分間加熱し、上記重合体Aの膜が形成されたガラス板を膜面をフレーム側にして圧着した。その状態で120℃で10分間保持して接着を完結させた。その後、膜をガラス板から剥離して、アルミニウムフレームに重合体Aからなる膜厚約1μmの均一な自立膜がついたペリクルを得た。
この膜の157nmの光の透過率は95%以上であった。
重合体Aの膜を有する各ペリクルについてフォトリソグラフィに用いられる157nmを発振するフッ素ガスエキシマレーザー光の照射試験を行った。
【0048】
(実施例1)
容積0.02m3の露光室に、上記ペリクル膜(膜厚1μm)をセットし、ガス導入口から純度99.999容量%以上のヘリウム(高純度ヘリウム:大洋東洋酸素株式会社製)99.99容量%、純度99.9容量%以上の酸素ガス0.01容量%の混合ガス(混合ガスC)を導入し露光室内の気体を置換した。その後、混合ガスCを0.2l/minの速度でフローさせた状態でフッ素ガスエキシマレーザー光(波長:157nm、パルスエネルギー密度:0.1(mJ/cm2)/pulse、周波数200Hz、照射面積1cm2)をペリクルに照射した。13000pulse照射後に上記ペリクル膜を取り出し、ペリクル膜の157nmの光の透過率を測定した。ペリクル膜の寿命を157nmの光の透過率の減少量1%までとすると、上記ペリクル膜の透過率の減少はほとんどなく、重合体Aの膜は極めて良好な耐性を示した。また、膜の剥離はなく、接着剤Bも良好な耐久性を示した。
【0049】
(実施例2)
混合ガスの組成を、実施例1と同じ高純度ネオン99.99容量%、純度99.9容量%以上の酸素ガス0.01容量%の混合ガス(混合ガスD)とした以外は実施例1と同様にして耐光性試験を行った。13000pulse照射後に上記ペリクル膜を取り出し、ペリクル膜の157nmの光の透過率を測定した。上記ペリクル膜の透過率の減少はほとんどなく、重合体Aの膜は極めて良好な耐性を示した。また、膜の剥離はなく、接着剤Bも良好な耐久性を示した。
【0050】
(比較例1)
混合ガスとして高純度窒素99.99容量%、純度99.9容量%以上の酸素0.01容量%を用いた以外は実施例1と同様にして耐光性試験を行った。13000pulse照射後に上記ペリクル膜を取り出したところ、重合体Aの膜には着色がみとめられ、膜の破れが発生し、使用に耐えないものであった。
【0051】
(比較例2)
混合ガスとして実施例1と同じ高純度ヘリウム100容量%のガスを用いた以外は実施例1と同様にして耐光性試験を行ったところ、著しい膜べりがみとめられ使用に耐えないものであった。
【0052】
(実施例3)
例2にて作成した重合体Aからなるペリクル膜を有するペリクルを純度99.999容量%以上のヘリウム(高純度ヘリウム:大洋東洋酸素株式会社製)で置換した保管容器(ステンレス製)に24時間放置した。その後、実施例1と同じ方法でペリクル膜の寿命を測定したところ該ペリクル膜は極めて良好な耐久性を示した。また、実施例1で寿命を測定したペリクルをさらに上記条件にて24時間放置した後、ペリクルを取り出し外観を観察したところ何ら異常は認められなかった。
【0053】
(比較例3)
実施例3における純度99.999容量%以上のヘリウムを純度99.999容量%以上の高純度窒素ガスに置き換える以外は実施例3と同様に、ペリクルを保管、および寿命の測定を実施した。その結果、該ペリクル膜には着色と膜の破れが発生し、それ以上の使用には耐えないものであった。また、実施例1で寿命を測定したペリクルをさらに上記条件下にて24時間放置した後、ペリクルを取り出し外観を観察したところ、若干の着色と大きな透過率低下が観測された。
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長100〜200nmの光を用いるフォトリソグラフィにおけるペリクルを用いた露光方法およびこのペリクルの保管方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ペリクルとは、半導体装置または液晶表示板を製造する際の一工程であるフォトリソグラフィにおいて、フォトマスクやレチクル(以下これらをマスクという。)上に異物が乗り、露光時にパターン欠陥となることを防ぐためにマスクのパターン上に装着される保護具であって、ペリクル膜とフレームからなる。通常は接着剤を介して枠体(フレーム)に取り付けられたペリクル膜が、マスク面から一定距離をおいて設置される構造を有している。
【0003】
これらが使用される半導体装置や液晶表示板の製造分野では、配線や配線間隔の微細化進展にともない、フォトリソグラフィにおいても、用いられる光源の波長が急速に短波長化している。最小パターン寸法0.3μm以上の従来の露光技術では、i線光源(365nm)を用いたプロセスが主流であり、ペリクル膜の材料としてはニトロセルロース系材料が使用されてきた。
【0004】
最小パターン寸法0.3μm未満の配線加工のために、波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのフッ化アルゴンエキシマレーザー(以下、「ArFエキシマレーザー」という。)が導入されている。これらの波長領域では、ニトロセルロース系の膜材料では耐久性が不充分であり、非結晶性のパーフルオロポリマーがペリクル膜の材料として採用されている。
【0005】
一方、さらなる微細加工のために波長157nmのフッ素ガスエキシマレーザー(以下、「F2エキシマレーザー」という。)の使用が提案されている。波長200nm以下のArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー用のペリクル膜の材料としては、特定構造のフルオロポリマーが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
光源の短波長化が進むと、その光子エネルギーが大きくなり、例えば、ArFエキシマレーザーでは6.4eV(=147kcal/mol)ものエネルギーを持ち、このエネルギーは、有機ポリマーにおけるC−C結合の解離エネルギー(104kcal/mol)より十分大きいため、フッ素系のペリクル膜でも露光光照射による分解に起因する劣化によりペリクル膜の膜厚の減少が生じることになる。また露光照射の雰囲気については、通常の空気もしくは窒素雰囲気下でおこなうことが検討されていた。また、有機化合物や無機化合物の濃度を減らした窒素及び酸素の混合気体の雰囲気下で露光照射をおこなうことで、空気程度の組成(N2:O2=4:1)でも、通常の空気よりもペリクル膜の劣化が顕著に防止され、特に含フッ素重合体から成るペリクル膜の紫外域の光線による劣化を有効に防止することが可能となることが報告されている(特許文献2参照)。しかしながら、波長193nmのArFエキシマレーザーを使用した場合、上記雰囲気においても限定された寿命である。さらに波長157nmのF2エキシマレーザーを使用した場合、このような窒素と酸素の混合気体もしくは、純度の高い窒素を用いた場合でも有機ポリマーにおけるC−C結合の分解に起因する劣化によりペリクル膜の膜厚の減少が大きな問題となっている。
【0007】
【特許文献1】
特開平2001−330943号公報
【特許文献2】
特開2002−124449号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、100〜200nmの光を用いた露光処理において、ペリクル膜の劣化が少ない露光処理方法およびそのペリクルの保管方法を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討したところ、発明者らは、露光を行う際のガス雰囲気、特に不活性ガスの種類によりペリクル膜の耐光性が左右されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち100〜200nmの光にてペリクルを用いて露光する際に、ペリクルの耐光性を改善する雰囲気ガスを見出した。また、特定の不活性ガスをペリクルの保管時にも用いることによりペリクルの寿命を延長できること見出した。本発明は、100〜200nmの光を用いるフォトリソグラフィにおいて、ペリクルを下記の雰囲気ガスにて置換する露光処理方法およびペリクルの保管方法に関する下記発明である。
【0010】
(1) 波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程において、ペリクル膜およびフレームからなるペリクルを通して露光処理を行う際、99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンからなる不活性ガス(以下、単に「不活性ガス」という。)と、99.5容量%以上の純度を有する酸素ガスとからなるガス雰囲気下で露光を行うことを特徴とする露光処理方法、
(2) 99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンを主成分とするガス雰囲気下でペリクルを保管することを特徴とするペリクルの保管方法。
【0011】
本発明の露光処理方法は、特に100〜200nmのレーザー光(以下、「短波長レーザー光」ともいう。)による露光処理方法として適している。具体的には、波長193nmのArFエキシマレーザー光、157nmのF2エキシマレーザー光、特に好ましくは157nmのF2エキシマレーザー光によるフォトリソグラフィにおける露光処理方法として適している。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の露光処理方法において、用いられる不活性ガスのヘリウムおよびネオンは99.5容量%以上の純度を有する。純度が低い場合は、ガス中に含まれる有機、無機不純物、窒素がペリクル膜に吸着され、その部分より膜の分解が誘発されるなどのために、折角のヘリウムまたはネオンの効果が発揮されない。
特に、99.9容量%以上の純度を有することが好ましい。これらの不活性ガスは、2種類を併用してもよいが、コストおよび管理の観点からいずれか1種類を用いることが好ましい。なかでもヘリウムガスが最も好ましい。一方、不活性ガスとともに用いられる酸素ガスは純度が99.5容量%以上であり、99.9容量%以上であることが特に好ましい。
【0013】
また、上記の酸素ガスの混合量としては、不活性ガス:酸素の比率でみたとき、99.995:0.005〜99:1の容積比で混合して用いることが好ましい。酸素ガスを1容量%よりも少なくすることでペリクル膜の膜べりや破れが発生する可能性が著しく少なくなるため好ましい。また、酸素ガスが0.005容量%よりも多くすることで、同様に膜べりやピンホールなどが抑制される。最も好ましい容積比は、不活性ガス:酸素の比率が、99.995:0.005〜99.9:0.1の範囲の容積比で混合したガスである。
【0014】
本発明における不活性ガスと酸素ガスの混合ガスが耐光性を改善するメカニズムは定かではないが、以下のように推察される。例えば不活性ガスに窒素を用いた場合、100〜200nmの高エネルギーの光にさらされることにより、ペリクル膜に生成する微量なラジカルおよびこれらに誘発されて生成する窒素ラジカルが膜中に取り込まれると推定される。この現象は露光後の膜表面をX線光電子分光法で分析すると窒素が検出されることから支持される。これらの窒素化合物は微量の酸素などと反応し着色を呈したり、著しい光吸収を起こしたりして耐光性に影響を与えるものと考えられる。
本発明においては、ラジカル類に対して不活性なヘリウムまたはネオンを使用することによりラジカルに由来する反応が抑制されたと考えられる。
【0015】
また、ヘリウムとネオンは熱伝導率が窒素等に比べて大きいためペリクル膜に発生する熱を効率よく除熱することが可能である。例えば27℃においてヘリウムの熱伝導率は1499×10−4Wm−1K−1であり、ネオンは493×10−4Wm−1K−1である。一方窒素は259.8×10−4Wm−1K−1であることからヘリウムとネオンの除熱効果が大きいことがわかる。この除熱効果により、部分的な光吸収により温度が上昇した場合でもこの上昇を抑えペリクル膜の分解を抑制する方向に作用すると考えられる。
【0016】
また、酸素ガスについては、短波長レーザー光の照射により生成する微量のラジカルをトラップし、それ以上の分解を抑制する方向に作用するためと考えられる。
【0017】
一方、ペリクルを保管する条件は、99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンからなる不活性ガス雰囲気である。この場合、酸素ガスは混合しない方が好ましい。しかしながら、管理上又はコスト上の理由から、露光処理で使用される、酸素を微量混合した上記不活性ガスを使用してもよい。
ペリクルの保管においては、露光処理時に悪影響を及ぼす窒素ガスがペリクル膜に吸着または溶解されていないことから、露光処理時に耐光性が良好になると考えられる。
保管するペリクルは、波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程において使用されるペリクルであることが好ましい。波長100〜200nmの光の中でも、フッ化アルゴンエキシマレーザー光やフッ素ガスエキシマレーザー光を露光に用いることが好ましい。
また、保管するペリクルのペリクル膜を構成する材料は、含フッ素ポリマー(A)であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の露光処理方法は、波長100〜200nmの光を用いた露光処理に有効であり、例えばフッ化アルゴンエキシマレーザー光(波長:193nm)、またはフッ素ガスエキシマレーザー光(波長:157nm)を用いた露光処理に好適に用いることができる。
【0019】
本発明の露光処理方法に用いられるペリクルは、従来公知のペリクルが使用される。例えば、アルミニウム等から成るフレームの一方の端部にペリクル膜を張架し、他方の端部に粘着剤を塗布してマスクに固定して使用するものが挙げられる。ペリクル膜の厚みとしては、0.1〜10μmが一般的であり、0.2〜5μmの範囲が好ましく、0.5〜2.0μmにあることがより好ましい。
【0020】
本発明におけるペリクル膜に使用される材料としては、波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程に使用される実質的に透明な有機質ポリマーが好ましい。エネルギーの高い露光光に対する耐光性が高いことが必要であるため、波長100〜200nmの光に対して実質的に透明なフッ素系ポリマーが好ましい。
ここで「実質的に透明な」とは、これらのエキシマレーザー光に対する透過率が膜厚1μmのフィルムにて95%以上、好ましくは96%以上であることをいう。
【0021】
本発明におけるペリクルを構成する材料としては、下記の含フッ素ポリマー(A)であることが好ましい。含フッ素ポリマー(A)は、炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーである。このポリマーの主鎖の炭素原子連鎖は原則としてモノマーの重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子が連結した連鎖からなる。したがって、含フッ素ポリマー(A)において「主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子またはフッ素含有置換基が結合した炭素原子とを含む」とは、重合性不飽和基を1個有するモノマーの重合により得られるホモポリマーの場合、モノマーの重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子の一方の炭素原子には水素原子が結合し他方の炭素原子には水素原子が結合していないモノマー(以下モノマー(a)という)のポリマーであることを意味する。
コポリマーの場合には、重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子の少なくともいずれかに水素原子が結合しているモノマー[以下モノマー(b)という]と重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子のいずれにも水素原子が結合していないモノマー[以下モノマー(c)という]とのコポリマーであってもよい。なお、モノマー(b)は、その範疇にモノマー(a)を含む。
さらに含フッ素ポリマー(A)は、モノマー(a)の2種以上のコポリマーであってもよく、モノマー(a)と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。同様に、モノマー(b)とモノマー(c)とそれら以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0022】
含フッ素ポリマー(A)は2個の重合性不飽和結合を有するモノマー(以下、「ジエンモノマー」という。)の環化重合により得られるポリマーであってもよい。通常このポリマーの場合には2個の重合性不飽和結合の4個の炭素原子がポリマーの主鎖を形成する。したがって、この含フッ素ポリマー(A)は、2個の重合性不飽和結合の4個の炭素原子の内1個以上の炭素原子が水素原子を有しかつ1個以上の炭素原子が水素原子を有しないモノマー[以下ジエンモノマー(d)という]の環化重合により得られるポリマーである。
コポリマーの場合には4個の炭素原子のいずれも水素原子を有しないジエンモノマー[以下ジエンモノマー(e)という]と重合性不飽和結合の炭素原子に水素原子を有するモノマー(このモノマーは重合性不飽和結合を2個有する環化重合しうるジエンモノマーであっても重合性不飽和結合を1個有するモノマーであってもよい)[以下モノマー(f)という]とのコポリマーであってもよい。さらに、含フッ素ポリマー(A)は、ジエンモノマー(d)と他のモノマーとのコポリマーであってもよく、ジエンモノマー(e)とモノマー(f)とそれら以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0023】
含フッ素ポリマー(A)がフッ素を有するポリマーであることより、上記モノマー(a)、モノマー(c)、ジエンモノマー(d)およびジエンモノマー(e)は重合性不飽和結合の炭素原子にフッ素原子またはフッ素含有有機基が結合していることが必要である。モノマー(b)、モノマー(f)は重合性不飽和結合の炭素原子にフッ素原子またはフッ素含有有機基が結合していることが必須ではないがそれらが結合していてもよい。
含フッ素有機基としては1価の基と2価の基が好ましい。2価の含フッ素有機基の2個の結合手は、重合性不飽和結合の2個の炭素原子それぞれに結合する(2個の炭素原子を含む環を形成する)場合と2個の炭素原子の一方のみに結合する(その1個の炭素原子を含む環を形成し他方の炭素原子が環外の炭素原子となる)場合とがある。
モノマー(a)〜モノマー(f)はその重合性不飽和基の炭素原子に水素原子、フッ素原子、アルキル基などの有機基、その他の置換基を有していてもよい。しかし、アルキル基などの有機基を側鎖に多数有するポリマーはその炭素原子に結合した水素原子が耐久性低下の要因となりやすくそのような置換基は少ない方が好ましい。
1価の含フッ素有機基としては含フッ素アルキル基と含フッ素アルコキシ基が好ましい。これらの基の炭素数は10以下、特に4以下が好ましい。これらの基は水素原子を含まないことが好ましく、フッ素原子のみを含む基が好ましい。
2価の含フッ素有機基としてはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数10以下(特に6以下)のポリフルオロアルキレン基が好ましい。このポリフルオロアルキレン基としてはパーフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子は、ポリフルオロアルキレン基の一方の末端に存在してもよく、両末端に存在してもよく、炭素原子間に存在してもよい。2価の含フッ素有機基としては直鎖状のものに限られず、分岐を有していてもよい。
1価の有機基としては、前記1価の含フッ素有機基とフッ素を有しない1価の有機基がある。フッ素を有しない1価の有機基としては炭素数10以下、特に4以下のアルキル基とアルコキシ基が好ましい。フッ素を有しない1価の有機基としては特にメチル基が好ましい。
【0024】
結晶性を有するポリマーは光散乱による透過率の低下やレチクル像のゆがみを引き起こすため、含フッ素ポリマー(A)の結晶化度は30%以下が好ましく、特に20%以下の非結晶性であることが好ましい。ポリマー分子中にバルキーな構造を導入することによりポリマーの結晶化度を下げることができる。したがって、バルキーな構造である脂肪族環をポリマーの主鎖に存在させてポリマーの結晶化を抑制し、非結晶性の透明性の高いポリマーとすることが好ましい。よって、含フッ素ポリマー(A)としては特に主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素ポリマーであることが好ましい。
「主鎖に脂肪族環構造を有する」とは主鎖の炭素原子の1個以上が脂肪族環を構成する炭素原子であることを意味する。この脂肪族環は、その脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上にフッ素原子または含フッ素有機基が結合している含フッ素脂肪族環であることが好ましい。また、この脂肪族環を構成する原子の一部は炭素原子以外の酸素原子や窒素原子などの原子であってもよい。好ましい脂肪族環は1〜2個の酸素原子を有する5〜8員環の含フッ素脂肪族環である。
【0025】
脂肪族環に重合性不飽和基を有するモノマーを用いることによって主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーが得られる。ジエンモノマー(d)やジエンモノマー(e)は環化重合により主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーを形成する。「脂肪族環に重合性不飽和基を有する」とは、脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性不飽和基を有するか、または、環を構成する炭素原子と環外の炭素原子との間に重合性不飽和基を有することを意味する。この脂肪族環としては含フッ素脂肪族環であることが好ましく、前記のように環を構成する原子として酸素原子を有していてもよい。
以下、含フッ素脂肪族環に重合性不飽和基を有するモノマーを含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーという。含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーの環を構成する原子としては炭素原子以外に1〜2個の酸素原子を有していてもよい。モノマー(c)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであることが好ましい。モノマー(a)、モノマー(b)およびモノマー(f)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであってもよい。
【0026】
モノマー(a)としてはフッ化ビニリデンやトリフルオロエチレンが好ましい。しかしこれらのモノマーのホモポリマーは結晶性となることが多く透明性が低い傾向にある。
【0027】
モノマー(b)としては、CHR1=CR2R3[R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。前記のようにモノマー(b)はモノマー(a)を含有している。R1、R2としては水素原子またはフッ素原子が好ましく、R3は水素原子、フッ素原子または炭素数4以下のアルキル基(特にメチル基)が好ましい。具体的には、エチレン、プロピレンなどのオレフィン、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどの重合性不飽和基の炭素原子に水素原子が結合したフルオロオレフィンがある。モノマー(b)としては、炭素数2〜3のオレフィンと炭素数2〜3のフルオロオレフィンが好ましい。特に好ましいモノマー(b)は、エチレンおよびプロピレンから選ばれたオレフィンおよびフッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンから選ばれたフルオロオレフィンである。
【0028】
モノマー(c)としては、CFR4=CR5R6[R4、R5、R6はそれぞれ独立にフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表すか、R4とR5は共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR6はフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表すか、または、R5とR6は共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR4はフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。この内、R4とR5が共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR6がフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す場合、および、R5とR6が共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR4がフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す場合、そのモノマー(c)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーの1種であり、以下このモノマーを含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)という。
【0029】
モノマー(c)としては、具体的には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの水素原子を有しないポリフルオロオレフィン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、並びに、下記式1、式2および式3で表される含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)などがある。特に好ましいモノマー(c)はパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)[すなわち、R11およびR12がいずれもトリフルオロメチル基である式1で表される化合物]である。
【0030】
【化1】
【0031】
上記式1〜式3においてR11〜R16はそれぞれ独立にフッ素原子または含フッ素有機基を表し、含フッ素有機基としてはパーフルオロアルキル基、特に炭素数1または2のパーフルオロアルキル基が好ましい。
モノマー(b)とモノマー(c)のコポリマーからなる含フッ素ポリマー(A)としては、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、プロピレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーなどの主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有しないポリマーであってもよいが、これらは透明性が充分とはいえない。しかし、膜と枠体を接着するための接着剤としては有用である。好ましい含フッ素ポリマー(A)はモノマー(b)と上記式1〜式3で表される含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)とのコポリマーである。この場合のモノマー(b)としては、エチレンなどのオレフィンおよび不飽和基の炭素原子に水素原子を有するフルオロオレフィンから選ばれた少なくとの1種のモノマーが好ましい。
【0032】
モノマー(b)とモノマー(c)のコポリマーにおけるモノマー(b)の重合により形成されたモノマー単位(以下モノマー単位(b)という。他のモノマー単位についても同様とする)とモノマー単位(c)との合計に対するモノマー単位(b)の割合は10〜70モル%が好ましい。モノマー(b)がエチレンなどの2個以上の水素原子(重合性不飽和結合の炭素原子に結合した水素原子)を有するモノマーの場合は10〜50モル%が好ましい。特に好ましいモノマー単位(b)の割合は20〜40モル%である。接着剤用の含フッ素ポリマー(A)においてはさらにモノマー単位(b)とモノマー単位(c)との合計に対するモノマー単位(b)の割合が40〜85モル%であるポリマーも好ましい。
なお、このポリマーにおける全モノマー単位に対するモノマー単位(b)とモノマー単位(c)の合計の割合は50〜100モル%が好ましく、特に80〜100モル%が好ましい。最も好ましいポリマーはモノマー(b)とモノマー(c)のみからなるコポリマー(ただし各モノマーは2種以上であってもよい)である。
【0033】
ジエンモノマー(d)としては、CH2=CR7−Q−CR8=CF2[ただし、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Qは2価の含フッ素有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。R7としては水素原子とフッ素原子が好ましく特に水素原子が好ましい。R8としてはフッ素原子または炭素数2以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0034】
Qとしては、炭素数10以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子はパーフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していてもよく、両末端に存在していてもよく、炭素原子間に存在していてもよい。エーテル性酸素原子を有しないパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数2〜6、一方の末端にエーテル性酸素原子を有するまたは炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数1〜4、両末端にエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数1〜3であることがより好ましい。分岐部の炭素原子を除いた炭素原子と酸素原子の合計数は2〜4であることが最も好ましい。
Qとしては、2,2−ジフルオロビニル基側にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル性酸素原子を有しない炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基が好ましい。さらに好ましいQは2,2−ジフルオロビニル基側にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基である。
すなわち、最も好ましいジエンモノマー(d)は、CH2=CH−Rf−O−CF=CF2[ただし、Rfは炭素数1〜4のパーフルオロアルキレン基を表す]で表されるモノマーである。このモノマーは環化重合性が高く、短波長光の透過性が高く機械的強度の高いポリマーが得られる(特開昭63−238111号公報、特開昭63−238113号公報等参照)。Rfとしては分岐を除いて炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基が好ましい。分岐が存在する場合は、分岐はトリフルオロメチル基が好ましく、分岐の数は1〜2が好ましい。
【0035】
なお、CH2=CR7−Q−CR8=CF2の環化重合により通常下記式4、式5、式6などで表されるモノマー単位(以下モノマー単位(d)という。)が形成される。CH2=CR7−Q−CR8=CF2で表されるジエンモノマー(d)としては、例えば以下の化合物がある。
【0036】
【化2】
【0037】
【化3】
【0038】
含フッ素ポリマー(A)は、ジエンモノマー(d)のホモポリマー(ただし、ジエンモノマー(d)の2種以上のコポリマーであってもよい)であってもよく、他のモノマーとのコポリマーであってもよい。他のモノマーとしては、モノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)、ジエンモノマー(e)などがある。コポリマーとしてはジエンモノマー(d)とモノマー(c)のコポリマーおよびジエンモノマー(d)とジエンモノマー(e)のコポリマーが好ましく、ジエンモノマー(d)とモノマー(c)のコポリマーがより好ましい。この場合のモノマー(c)としては、前記の含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)が好ましい。
この含フッ素ポリマー(A)における全モノマー単位に対するモノマー単位(d)の割合は30〜100%が適当であり、50〜100%が好ましく、100%であることが最も好ましい。
ジエンモノマー(e)としては、ジエンモノマー(d)の重合性不飽和基の炭素原子に結合した水素原子がすべてフッ素原子またはパーフルオロアルキル基に置換されたモノマーが好ましい。より好ましくは、CF2=CR9−Q−CR10=CF2[R9、R10はそれぞれ独立にフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Qは前記に同じ]で表されるモノマーが好ましい。ただし、前記したQにおけるエーテル性酸素原子の位置や数の制約はない。具体的には下記のようなモノマーがある。
【0039】
【化4】
【0040】
モノマー(f)としては前記モノマー(a)やモノマー(b)を使用しうる。特にモノマー(b)が好ましい。ジエンモノマー(e)とモノマー(f)の共重合においてはジエンモノマー(e)は環化重合により含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位を形成し、このモノマー単位(e)とモノマー単位(f)とを有するコポリマーが生成する。モノマー単位(e)とモノマー単位(f)とを有するコポリマーはさらに他のモノマー単位を有していてもよく、例えば前記モノマー単位(c)を有していてもよい。
【0041】
ジエンモノマー(e)とモノマー(f)のコポリマーにおいて、モノマー単位(e)とモノマー単位(f)との合計に対するモノマー単位(f)の割合は10〜70モル%が好ましい。エチレンなどの2個以上の水素原子(重合性不飽和結合の炭素原子に結合した水素原子)を有するモノマー(f)の場合は10〜60モル%が好ましい。特に好ましいモノマー(f)の割合は20〜50モル%である。なお、このポリマーにおける全モノマー単位に対するモノマー単位(e)とモノマー単位(f)の合計の割合は50〜100モル%が好ましく、特に70〜100モル%が好ましい。
含フッ素ポリマー(A)は前記のように含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位を含むポリマーであることが好ましい。含フッ素ポリマー(A)における全モノマー単位に対するこの含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位の割合は、20モル%以上、特に40モル%以上であることが好ましい。
特に好ましい含フッ素ポリマー(A)は、エチレンとパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)とのコポリマー、ジエンモノマー(d)のホモポリマー、および、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであるモノマー(c)とジエンモノマー(d)とのコポリマーである。
【0042】
本発明におけるペリクル膜とフレームは、含フッ素ポリマー(A)を含む接着剤により接着されていることが好ましい。
ペリクル膜とフレームを接着する接着剤用の含フッ素ポリマー(A)としては、例えば、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであるモノマー(c)とモノマー(b)とのコポリマー、ジエンモノマー(d)のポリマー、ジエンモノマー(e)とモノマー(f)とのコポリマーなどが好ましい。また、接着剤用の含フッ素ポリマー(A)は必ずしも高い透明性は要求されないことより、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有しないポリマーであってもよい。したがって、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー以外のモノマー(c)とモノマー(b)とのコポリマー(すなわち主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素ポリマー(A))も好ましい接着剤として使用できる。
主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素ポリマー(A)としては、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーなどがある。このようなポリマーにおけるモノマー単位(c)とモノマー単位(b)の合計に対するモノマー単位(b)の割合は、40〜85モル%が好ましく、特に50〜80モル%が好ましい。
【0043】
また、含フッ素ポリマー(A)を、ペリクル用フレームとペリクル膜との接着剤として用いる場合、接着性向上に有効な官能基が導入された含フッ素ポリマー(A)を用いることが好ましい。なお、ペリクル膜用の含フッ素ポリマー(A)は光透過性の面から官能基を有しないことが好ましい。
官能基含有含フッ素ポリマー(A)の官能基としては、枠体やペリクル膜に対して接着性を発現しうるものであれば特に制約はなく、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、エステル結合を有する基、アルケニル基、加水分解性シリル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基などが挙げられる。この官能基としては、枠体材料であるアルミニウムなどの金属類に対する接着性が良好で、保存安定性に富み、比較的低温でその効果が発現できる観点より、カルボン酸基が特に好適である。
【0044】
(実施例)
(例1)[含フッ素ポリマーAの合成例]
1,1,2,4,4,5−ヘキサフルオロ−3−オキサ−4−トリフルオロメチル−1,6−ヘプタジエン[CH2=CHCF(CF3)CF2OCF=CF2]30gおよび1H−パーフルオロヘキサン[CF3CF2CF2CF2CF2CF2H]70gを窒素置換した内容積100mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。
重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)パーオキシドの17mgを加え、系内を再度窒素で置換した後、5℃で72時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素環構造を有する非結晶性ポリマー(以下「重合体A」という。)を24g得た。
重合体Aの固有粘度[η]は、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中30℃で0.60dl/gであった。重合体Aのガラス転移温度は108℃であり、室温ではタフで透明ガラス状の重合体であり、屈折率は1.34と低かった。
【0045】
重合体Aの7gとパーフルオロトリブチルアミンの93gをガラス製フラスコ中に入れて40℃にて24時間加熱撹拌した。その結果、無色透明で濁りのない均一な溶液を得た。この溶液を研磨したガラス板上にスピン速度500rpmにて10秒、その後2000rpmにて20秒スピンコートを実施した後、80℃にて1時間、さらに180℃にて1時間加熱処理することにより、ガラス板上に均一で透明な膜が得られた。
【0046】
(例2)[含フッ素ポリマーBの合成例]
1,1,2,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン[CH2=CHCF2CF2OCF=CF2]20gおよびトリクロロトリフルオロエタンの40gを内容積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)パーオキシドの20mgを加え、系内を再度窒素で置換した後、18℃で10時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素環構造を有する非結晶性ポリマー(以下、「重合体B」という。)を10g得た。
重合体Bの固有粘度[η]は、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン中30℃で0.96dl/gであった。重合体Bのガラス転移点は90℃であり、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であり、屈折率は1.36と低かった。
この重合体Bを空気中320℃で3時間熱処理した後に水中に浸漬して変性した。変性された重合体BのIRスペクトル測定によりカルボキシル基のピークが確認され、その量は0.005ミリモル/gであった。この変性された重合体Bを以下「接着剤B」という。
【0047】
一方、接着剤Bの7gと1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの93gを上記と同様に処理して得た溶液をアルミニウムフレーム上に塗布し、室温で2時間乾燥した。その後、120℃のホットプレート上に接着面を上にしてアルミニウムフレームを載せて10分間加熱し、上記重合体Aの膜が形成されたガラス板を膜面をフレーム側にして圧着した。その状態で120℃で10分間保持して接着を完結させた。その後、膜をガラス板から剥離して、アルミニウムフレームに重合体Aからなる膜厚約1μmの均一な自立膜がついたペリクルを得た。
この膜の157nmの光の透過率は95%以上であった。
重合体Aの膜を有する各ペリクルについてフォトリソグラフィに用いられる157nmを発振するフッ素ガスエキシマレーザー光の照射試験を行った。
【0048】
(実施例1)
容積0.02m3の露光室に、上記ペリクル膜(膜厚1μm)をセットし、ガス導入口から純度99.999容量%以上のヘリウム(高純度ヘリウム:大洋東洋酸素株式会社製)99.99容量%、純度99.9容量%以上の酸素ガス0.01容量%の混合ガス(混合ガスC)を導入し露光室内の気体を置換した。その後、混合ガスCを0.2l/minの速度でフローさせた状態でフッ素ガスエキシマレーザー光(波長:157nm、パルスエネルギー密度:0.1(mJ/cm2)/pulse、周波数200Hz、照射面積1cm2)をペリクルに照射した。13000pulse照射後に上記ペリクル膜を取り出し、ペリクル膜の157nmの光の透過率を測定した。ペリクル膜の寿命を157nmの光の透過率の減少量1%までとすると、上記ペリクル膜の透過率の減少はほとんどなく、重合体Aの膜は極めて良好な耐性を示した。また、膜の剥離はなく、接着剤Bも良好な耐久性を示した。
【0049】
(実施例2)
混合ガスの組成を、実施例1と同じ高純度ネオン99.99容量%、純度99.9容量%以上の酸素ガス0.01容量%の混合ガス(混合ガスD)とした以外は実施例1と同様にして耐光性試験を行った。13000pulse照射後に上記ペリクル膜を取り出し、ペリクル膜の157nmの光の透過率を測定した。上記ペリクル膜の透過率の減少はほとんどなく、重合体Aの膜は極めて良好な耐性を示した。また、膜の剥離はなく、接着剤Bも良好な耐久性を示した。
【0050】
(比較例1)
混合ガスとして高純度窒素99.99容量%、純度99.9容量%以上の酸素0.01容量%を用いた以外は実施例1と同様にして耐光性試験を行った。13000pulse照射後に上記ペリクル膜を取り出したところ、重合体Aの膜には着色がみとめられ、膜の破れが発生し、使用に耐えないものであった。
【0051】
(比較例2)
混合ガスとして実施例1と同じ高純度ヘリウム100容量%のガスを用いた以外は実施例1と同様にして耐光性試験を行ったところ、著しい膜べりがみとめられ使用に耐えないものであった。
【0052】
(実施例3)
例2にて作成した重合体Aからなるペリクル膜を有するペリクルを純度99.999容量%以上のヘリウム(高純度ヘリウム:大洋東洋酸素株式会社製)で置換した保管容器(ステンレス製)に24時間放置した。その後、実施例1と同じ方法でペリクル膜の寿命を測定したところ該ペリクル膜は極めて良好な耐久性を示した。また、実施例1で寿命を測定したペリクルをさらに上記条件にて24時間放置した後、ペリクルを取り出し外観を観察したところ何ら異常は認められなかった。
【0053】
(比較例3)
実施例3における純度99.999容量%以上のヘリウムを純度99.999容量%以上の高純度窒素ガスに置き換える以外は実施例3と同様に、ペリクルを保管、および寿命の測定を実施した。その結果、該ペリクル膜には着色と膜の破れが発生し、それ以上の使用には耐えないものであった。また、実施例1で寿命を測定したペリクルをさらに上記条件下にて24時間放置した後、ペリクルを取り出し外観を観察したところ、若干の着色と大きな透過率低下が観測された。
Claims (8)
- 波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程において、ペリクル膜およびフレームからなるペリクルを通して露光処理を行う際、99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンからなる不活性ガスと、99.5容量%以上の純度を有する酸素ガスとからなるガス雰囲気下で露光を行うことを特徴とする露光処理方法。
- 前記不活性ガスと前記酸素ガスとを99.995:0.005〜99:1の容積比で混合してなるガス雰囲気下で露光を行う請求項1に記載の露光処理方法。
- 前記ペリクル膜を構成する材料が含フッ素ポリマー(A)である請求項1または2に記載の露光処理方法。
含フッ素ポリマー(A):炭素原子の連鎖を主鎖とするポリマーであって、主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子または含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマー。 - 波長100〜200nmの光がフッ化アルゴンエキシマレーザー光またはフッ素ガスエキシマレーザー光である請求項1から3のいずれかに記載の露光処理方法。
- ペリクル膜およびフレームからなるペリクルを、99.5容量%以上の純度を有するヘリウムおよび/または99.5容量%以上の純度を有するネオンを主成分とするガス雰囲気下に保管することを特徴とするペリクルの保管方法。
- 波長100〜200nmの光を露光に用いるフォトリソグラフィ工程において使用されるペリクルである請求項5に記載のペリクルの保管方法。
- ペリクル膜を構成する材料が含フッ素ポリマー(A)である請求項5または6に記載のペリクルの保管方法。
含フッ素ポリマー(A):炭素原子の連鎖を主鎖とするポリマーであって、主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子または含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマー。 - 波長100〜200nmの光がフッ化アルゴンエキシマレーザー光またはフッ素ガスエキシマレーザー光である請求項5から7のいずれかに記載の保管方法。
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Legal Events
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A711 | Notification of change in applicant |
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