JP2004169144A - 有機物蒸気の被覆装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明では、製造した有機物蒸気を、安定して基材などの対象物に被覆できる有機物蒸気の被覆装置を提供することにあり、さらには粘性の高い液状の有機物の蒸気を、連続的且つ定量的に、安定して製造し、基材などの対象物に被覆できる有機物蒸気の被覆装置を提供することを課題とする。
【解決手段】真空容器と、該真空容器に有機物材料を供給できる供給手段と、該真空容器内に、供給された有機物材料を噴射させるための噴射手段と、噴射された有機物材料を蒸発させるための加熱板を備えてなり、該真空容器に蒸発した有機物材料を被覆するための被覆室が接続されてなる有機物蒸気の被覆装置において、該接続部分に流量コントローラ及び開閉可能な弁が設けてなることを特徴とする有機物蒸気の被覆装置としたものである。
【選択図】図1
【解決手段】真空容器と、該真空容器に有機物材料を供給できる供給手段と、該真空容器内に、供給された有機物材料を噴射させるための噴射手段と、噴射された有機物材料を蒸発させるための加熱板を備えてなり、該真空容器に蒸発した有機物材料を被覆するための被覆室が接続されてなる有機物蒸気の被覆装置において、該接続部分に流量コントローラ及び開閉可能な弁が設けてなることを特徴とする有機物蒸気の被覆装置としたものである。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製造された有機物蒸気を安定して、基材などの対象物へ被覆するための有機物蒸気の被覆装置に関するものである。また、粘性の高い液状の有機物材料を連続的に加熱・霧化・蒸発させ安定した有機物蒸気を製造し、被覆する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術分野】
液状の有機物を加熱基板上に噴霧することで瞬時に気化させ、有機物蒸気を製造し、次いで冷却された基材などの対象物に凝縮・固化させる、有機物被覆物の製造方法、いわゆるフラッシュ蒸着法が提案されている(特許文献1、2参照)。
このフラッシュ蒸着法は、気相を介する方法であるため、有機物を薄く、均一に、高純度で塗布することが可能であり、有機物被覆物の製造方法として極めて有望な方法の一つである。
【0003】
しかし、フラッシュ蒸着法では、製造した有機物蒸気の発生が不安定であり、容器内の圧力も不安定である。そして、発生した有機物蒸気を対象物に付着させる際、蒸気を発生させるための容器と蒸気を付着させるための容器との差圧で、蒸気を送り込む。しかし、容器内の有機物蒸気の圧力が不安定であるため、差圧を利用して送り込む時に脈動が発生し、被覆された有機物膜の膜圧も一定でなくなる。また、化学蒸着法(CVD)などの気相法などのように全てガスが膜になるわけではないものとは異なり、有機物蒸気が全て対象物に付着し、被膜となるため、脈動が膜に与える非常に大きいものである。
【0004】
また、有機物蒸気を製造する際、有機物の蒸発温度以上に加熱された加熱基板上に液状の有機物を供給して気化させる場合、加熱基板上から気化熱が奪われることによって加熱基板の温度が低下するが、その基板温度が蒸発温度以下に下がってしまうと、それ以上蒸発させることが出来なくなる。しかもこの液状の有機物がモノマ−やオリゴマ−などであった場合、加熱されることで重合・固化してしまう。また、一旦、有機物が加熱板上で重合・固化してしまうと、加熱基板上からそれらを取り除く事は難しく、サンドブラストなどによる清掃が必須となる。
【0005】
そこで、加熱基板上のある特定部分のみから気化熱が奪われることを避け、加熱基板の温度が蒸発温度以下に下がることを防ぐために、液状のモノマ−をインジェクタ−や超音波アトマイザーによって霧化させて広範囲に供給する手段が開示されている。
しかし、このような方法では、粘性の高い液状の有機物は、有機物がもつ表面張力により、液滴状の塊になってしまい、霧化して供給することはできず、そのため、有機物は不連続な塊状として供給され一部は蒸発し、一部は加熱基板上あるいは蒸発温度雰囲気下に加熱されている噴射口内部あるいは近傍で熱重合するため、霧状の蒸発体を安定して供給することは実現されていない。
【0006】
このような問題点に着目し、粘性の高い液体を霧化させるためになされたもので、その構成として1)平坦な回転表面をもつ円盤、2)円盤を回転させる手段、3)円盤表面に少量だが一定の流量で液体を供給し、回転することで液体膜を形成する手段、を有し、円盤を毎分3000〜5000回転の回転運動をさせることで液体膜は円盤の先端周囲から噴射された液滴として投げ出され、円盤の周囲を囲うように設置されたバンドヒータを有した加熱基板上で液滴はフラッシュ蒸着する、といった方法が提案されている(特許文献3)。
【0007】
しかし、この方法でも、円盤の先端周囲から噴射された液滴として投げ出され、液体が加熱板に到達する前に液体供給口付近が雰囲気温度に加熱されることから液状のモノマーやオリゴマーは重合・固化してしまい、蒸発体の定量供給は実現できていない。この問題により、現在に至るまで、粘性の高い液状の有機物を連続的に気化させ、基材などの対象物上に連続的に凝縮・固化させることによる有機物被覆物を安定して製造できる装置が提供されていなかったため、基材などの対象物上に均一な厚さで堆積させることも困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特許第2530350号公報
【特許文献2】
米国特許第4,954,371号
【特許文献3】
米国特許第4,722,515号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題とするところは、製造した有機物蒸気を、安定して基材などの対象物に被覆できる有機物蒸気の被覆装置を提供することにあり、さらには粘性の高い液状の有機物の蒸気を、連続的且つ定量的に、安定して製造し、基材などの対象物に被覆できる有機物蒸気の被覆装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、真空容器と、該真空容器に有機物材料を供給できる供給手段と、該真空容器内に、供給された有機物材料を噴射させるための噴射手段と、噴射された有機物材料を蒸発させるための加熱板を備えてなり、該真空容器に蒸発した有機物材料を被覆するための被覆室が接続されてなる有機物蒸気の被覆装置において、該接続部分に流量コントローラ及び開閉可能な弁を設けてなることを特徴とする有機物蒸気の被覆装置である。
【0011】
請求項2の発明は、前記真空容器に、有機物蒸気排気手段が接続されてなることを特徴とする請求項1に記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0012】
請求項3の発明は、前記噴射手段が、中間室と噴射口からなり、該中間室が、周期的に開閉可能な電磁弁を有することを特徴とする請求項1または2に記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0013】
請求項4の発明は、前記加熱板が凹凸面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0014】
請求項5の発明は、前記噴射口が、超音波発生装置を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0015】
請求項6の発明は、前記供給手段及び/又は噴射手段がヒーターを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0016】
【発明の実施形態】
以下、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態を示す装置説明図である。
図1において、真空容器1が具備され、該真空容器1内に具備された加熱板2に有機物材料を噴射するために、有機物材料を供給できる供給手段5と、供給された有機物材料を噴射するための噴射手段4を有し、該真空容器1には蒸発した有機物材料を被覆するための被覆室6が接続部を介して接続されており、該接続部に流量コントローラ7及び開閉可能な弁8が設けてなるものである。
【0017】
噴射手段4により真空容器1内に噴射された有機物材料は、加熱板2で気化し、有機物蒸気となる。有機物蒸気は、真空容器1に接続されている接続部を介して被覆室6へ送られ、被覆室6内の対象物に付着する。
【0018】
真空容器1内には圧力計を備え、真空容器1内の有機物の蒸発量、蒸気圧を図ることができる。
蒸発した有機物材料は、真空容器1と被覆室6の差圧を利用して被覆室6へ送り込むことができるが、真空容器1内の有機物の蒸発量、蒸気圧を一定にすることは難しく、差圧も変動するため、送り込む際、脈動が発生してしまう。
そこで本発明では、真空容器1と被覆室6の接続部に流量コントローラ7とバルブ8を設けることにより、被覆室6に流れ込む有機物蒸気の量を一定にし、被覆される膜厚を均一にできる。
また、真空容器1と被覆室6は圧力差があればよく、具体的には真空容器1内の圧力が102〜10−2Pa程度で、被覆室6内の圧力は10−1〜10−3Pa程度に設定できる。
【0019】
また、真空容器には、有機物蒸気排気手段9を接続することで、真空容器1内の有機物蒸気の量、蒸気圧をコントロールすることができる。有機物蒸気排気手段9を設けることで、有機物蒸気の蒸気圧が高くなりすぎ、真空容器1内部で有機物蒸気が凝集し、熱重合するのを防ぐことができる。具体的には図1、図2にあるようなメカニカルブースターポンプ10、ロータリーポンプ11、コンスタンスバルブ12、リークバルブ13などからなる有機物蒸気排気手段9を設けることができる。また、真空容器1内の圧力を一定に調整することで、被覆室6と一定の差圧を保ち、流量コントローラ7を安定に稼動させることができる。
【0020】
また、本発明では、安定して蒸気を製造するために、噴射手段4は、中間室4aと噴射口4bからなるものを用いても良い。中間室4aは、周期的に開閉可能な電磁弁を有するものである。このようにすることで、供給手段から供給された有機物材料を一気に噴射手段に供給しないようにし、結果噴射手段から噴射される有機物材料が、液滴状になることを防ぎ、安定して霧化させるものである。
【0021】
供給手段5は、特に限定するものではないが、図2の形態においては、サージタンクに粘性の高い液状の有機物材料が充填されており、定量ポンプなどの圧送源により圧送され、ニードルバルブなどのバルブ、フィルタを経由し、噴射手段4に送られる。
【0022】
中間室4aでは、周期的に開閉可能な電磁弁を設けることにより、噴射口4bへ周期的に液状の有機物材料を送ることができる。
周期的に開閉可能な電磁弁を実現する手段として、制御装置4cなどを接続すれば良い。開閉の周期としては、用いる有機物材料の物性にもよるが、毎秒1〜500回の開閉ができることが好ましい。このようにして、液状有機物にレイリー分裂を引き起こし、微小な液滴状の有機物を形成することができる。噴射口4bに有機物材料を、微少な液滴状の状態で供給することにより、噴射口4bから塊になることなく、微粒化した有機物材料を噴射することができる。
このように弁の開閉のタイミングおよび開閉数を制御することで用いる所望の液量の有機物材料を噴射口4bに供給することができる。
【0023】
噴射口4bは、特に限定するものではないが、超音波式アトマイザーを用いたものであることが好ましい。超音波式アトマイザーを用いることにより、重合反応性の高い液状の有機物材料を微粒化又は霧化し、真空容器1内に具備された加熱板2に、噴射することができる。このような噴射口としては、例えばある超音波領域に固有周波数を持った材質からなり、超音波発生装置4dを備えるものが挙げられる。
【0024】
ある超音波領域に固有周波数を有した噴射口4bに送られ、超音波発生装置4dから一定の強度を持った超音波を該噴射口4bに印加することで液状の有機物材料を霧状にすることができる構造になっている。
【0025】
また、供給手段5から噴射手段4および真空容器1に、熱線式ヒータが巻いてもよい。このようにすることで、周囲を熱重合温度以下に調整し、有機物材料の粘度と流量を調整することが可能になる。
【0026】
真空容器1内には、供給された霧状の有機物材料を加熱気化するための、加熱板2が具備されている。加熱板2は、特に限定するものではないが、金属板またはセラミックスなどの熱伝導の小さい発熱体で構成することができる。また、凹凸面形状を有していても良く、供給された微粒又は霧状の有機物材料と加熱表面との接触面積を増加させてもよい。
【0027】
本発明の対象物は、製造した有機物材料からなる蒸気を被覆する対象となるものである。
対象物は特に限定するものではなく、板状の基材や、立体成形物などでもかまわない。また、その材質も特に限定するものではなく、有機高分子材料や、金属などでもかまわない。また、前記対象物は有機物蒸気を被覆した後、さらに他の機能層を積層しても良い。
また、対象物に付着した有機物材料は電離活性放射線で重合させることができる。
【0028】
本発明で用いる有機物材料とは、特に限定するものではなく、用途に応じて様々なものを用いることができる。中でも、溶剤を含まず真空中で有機樹脂層を形成でき、硬化速度が速く、生産性に優れた放射線硬化型樹脂であるアクリレートやメタクリレートからなるモノマーおよび/またはオリゴマーの混合物などを好適に用いることができる。
アクリレートモノマーとしては単官能アクリレートとして例えば、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール、メトキシ−トリエチレンクリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレンングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フフェトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、デトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロビルアクリレートなどがあげられる。二官能アクリレートとしては例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1.6ヘキサンジオールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクリレート、などがあげられる。その他にも多官能アクリレートとしてトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどをあげることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、真空容器内で製造された有機物蒸気を対象物に被覆する装置において、有機物蒸気を対象物に送り込む際の脈動を抑えることができ、均一な膜厚の有機物被覆膜を形成することができる。
また、噴射手段に周期的な開閉可能な電磁弁を有する中間室を設けることにより、安定して、微粒又は霧化した有機物材料を真空容器内の加熱板に供給することができ、安定した有機物蒸気を製造することができる。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る有機物蒸気の製造装置の概略図である。
【図2】本発明の実施形態の一例に係る有機物蒸気の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 真空容器
2 加熱板
3 リークバルブ
4 噴射手段
4a 中間室
4b 噴射口
4c 制御装置
4d 超音波発生装置
5 供給手段
6 被覆室
7 流量コントローラー
8 バルブ
9 有機物蒸気排気手段
10 メカニカルブースターポンプ
11 ロータリーポンプ
12 コンダクタンスバルブ
13 リークバルブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、製造された有機物蒸気を安定して、基材などの対象物へ被覆するための有機物蒸気の被覆装置に関するものである。また、粘性の高い液状の有機物材料を連続的に加熱・霧化・蒸発させ安定した有機物蒸気を製造し、被覆する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術分野】
液状の有機物を加熱基板上に噴霧することで瞬時に気化させ、有機物蒸気を製造し、次いで冷却された基材などの対象物に凝縮・固化させる、有機物被覆物の製造方法、いわゆるフラッシュ蒸着法が提案されている(特許文献1、2参照)。
このフラッシュ蒸着法は、気相を介する方法であるため、有機物を薄く、均一に、高純度で塗布することが可能であり、有機物被覆物の製造方法として極めて有望な方法の一つである。
【0003】
しかし、フラッシュ蒸着法では、製造した有機物蒸気の発生が不安定であり、容器内の圧力も不安定である。そして、発生した有機物蒸気を対象物に付着させる際、蒸気を発生させるための容器と蒸気を付着させるための容器との差圧で、蒸気を送り込む。しかし、容器内の有機物蒸気の圧力が不安定であるため、差圧を利用して送り込む時に脈動が発生し、被覆された有機物膜の膜圧も一定でなくなる。また、化学蒸着法(CVD)などの気相法などのように全てガスが膜になるわけではないものとは異なり、有機物蒸気が全て対象物に付着し、被膜となるため、脈動が膜に与える非常に大きいものである。
【0004】
また、有機物蒸気を製造する際、有機物の蒸発温度以上に加熱された加熱基板上に液状の有機物を供給して気化させる場合、加熱基板上から気化熱が奪われることによって加熱基板の温度が低下するが、その基板温度が蒸発温度以下に下がってしまうと、それ以上蒸発させることが出来なくなる。しかもこの液状の有機物がモノマ−やオリゴマ−などであった場合、加熱されることで重合・固化してしまう。また、一旦、有機物が加熱板上で重合・固化してしまうと、加熱基板上からそれらを取り除く事は難しく、サンドブラストなどによる清掃が必須となる。
【0005】
そこで、加熱基板上のある特定部分のみから気化熱が奪われることを避け、加熱基板の温度が蒸発温度以下に下がることを防ぐために、液状のモノマ−をインジェクタ−や超音波アトマイザーによって霧化させて広範囲に供給する手段が開示されている。
しかし、このような方法では、粘性の高い液状の有機物は、有機物がもつ表面張力により、液滴状の塊になってしまい、霧化して供給することはできず、そのため、有機物は不連続な塊状として供給され一部は蒸発し、一部は加熱基板上あるいは蒸発温度雰囲気下に加熱されている噴射口内部あるいは近傍で熱重合するため、霧状の蒸発体を安定して供給することは実現されていない。
【0006】
このような問題点に着目し、粘性の高い液体を霧化させるためになされたもので、その構成として1)平坦な回転表面をもつ円盤、2)円盤を回転させる手段、3)円盤表面に少量だが一定の流量で液体を供給し、回転することで液体膜を形成する手段、を有し、円盤を毎分3000〜5000回転の回転運動をさせることで液体膜は円盤の先端周囲から噴射された液滴として投げ出され、円盤の周囲を囲うように設置されたバンドヒータを有した加熱基板上で液滴はフラッシュ蒸着する、といった方法が提案されている(特許文献3)。
【0007】
しかし、この方法でも、円盤の先端周囲から噴射された液滴として投げ出され、液体が加熱板に到達する前に液体供給口付近が雰囲気温度に加熱されることから液状のモノマーやオリゴマーは重合・固化してしまい、蒸発体の定量供給は実現できていない。この問題により、現在に至るまで、粘性の高い液状の有機物を連続的に気化させ、基材などの対象物上に連続的に凝縮・固化させることによる有機物被覆物を安定して製造できる装置が提供されていなかったため、基材などの対象物上に均一な厚さで堆積させることも困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特許第2530350号公報
【特許文献2】
米国特許第4,954,371号
【特許文献3】
米国特許第4,722,515号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題とするところは、製造した有機物蒸気を、安定して基材などの対象物に被覆できる有機物蒸気の被覆装置を提供することにあり、さらには粘性の高い液状の有機物の蒸気を、連続的且つ定量的に、安定して製造し、基材などの対象物に被覆できる有機物蒸気の被覆装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、真空容器と、該真空容器に有機物材料を供給できる供給手段と、該真空容器内に、供給された有機物材料を噴射させるための噴射手段と、噴射された有機物材料を蒸発させるための加熱板を備えてなり、該真空容器に蒸発した有機物材料を被覆するための被覆室が接続されてなる有機物蒸気の被覆装置において、該接続部分に流量コントローラ及び開閉可能な弁を設けてなることを特徴とする有機物蒸気の被覆装置である。
【0011】
請求項2の発明は、前記真空容器に、有機物蒸気排気手段が接続されてなることを特徴とする請求項1に記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0012】
請求項3の発明は、前記噴射手段が、中間室と噴射口からなり、該中間室が、周期的に開閉可能な電磁弁を有することを特徴とする請求項1または2に記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0013】
請求項4の発明は、前記加熱板が凹凸面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0014】
請求項5の発明は、前記噴射口が、超音波発生装置を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0015】
請求項6の発明は、前記供給手段及び/又は噴射手段がヒーターを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置である。
【0016】
【発明の実施形態】
以下、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態を示す装置説明図である。
図1において、真空容器1が具備され、該真空容器1内に具備された加熱板2に有機物材料を噴射するために、有機物材料を供給できる供給手段5と、供給された有機物材料を噴射するための噴射手段4を有し、該真空容器1には蒸発した有機物材料を被覆するための被覆室6が接続部を介して接続されており、該接続部に流量コントローラ7及び開閉可能な弁8が設けてなるものである。
【0017】
噴射手段4により真空容器1内に噴射された有機物材料は、加熱板2で気化し、有機物蒸気となる。有機物蒸気は、真空容器1に接続されている接続部を介して被覆室6へ送られ、被覆室6内の対象物に付着する。
【0018】
真空容器1内には圧力計を備え、真空容器1内の有機物の蒸発量、蒸気圧を図ることができる。
蒸発した有機物材料は、真空容器1と被覆室6の差圧を利用して被覆室6へ送り込むことができるが、真空容器1内の有機物の蒸発量、蒸気圧を一定にすることは難しく、差圧も変動するため、送り込む際、脈動が発生してしまう。
そこで本発明では、真空容器1と被覆室6の接続部に流量コントローラ7とバルブ8を設けることにより、被覆室6に流れ込む有機物蒸気の量を一定にし、被覆される膜厚を均一にできる。
また、真空容器1と被覆室6は圧力差があればよく、具体的には真空容器1内の圧力が102〜10−2Pa程度で、被覆室6内の圧力は10−1〜10−3Pa程度に設定できる。
【0019】
また、真空容器には、有機物蒸気排気手段9を接続することで、真空容器1内の有機物蒸気の量、蒸気圧をコントロールすることができる。有機物蒸気排気手段9を設けることで、有機物蒸気の蒸気圧が高くなりすぎ、真空容器1内部で有機物蒸気が凝集し、熱重合するのを防ぐことができる。具体的には図1、図2にあるようなメカニカルブースターポンプ10、ロータリーポンプ11、コンスタンスバルブ12、リークバルブ13などからなる有機物蒸気排気手段9を設けることができる。また、真空容器1内の圧力を一定に調整することで、被覆室6と一定の差圧を保ち、流量コントローラ7を安定に稼動させることができる。
【0020】
また、本発明では、安定して蒸気を製造するために、噴射手段4は、中間室4aと噴射口4bからなるものを用いても良い。中間室4aは、周期的に開閉可能な電磁弁を有するものである。このようにすることで、供給手段から供給された有機物材料を一気に噴射手段に供給しないようにし、結果噴射手段から噴射される有機物材料が、液滴状になることを防ぎ、安定して霧化させるものである。
【0021】
供給手段5は、特に限定するものではないが、図2の形態においては、サージタンクに粘性の高い液状の有機物材料が充填されており、定量ポンプなどの圧送源により圧送され、ニードルバルブなどのバルブ、フィルタを経由し、噴射手段4に送られる。
【0022】
中間室4aでは、周期的に開閉可能な電磁弁を設けることにより、噴射口4bへ周期的に液状の有機物材料を送ることができる。
周期的に開閉可能な電磁弁を実現する手段として、制御装置4cなどを接続すれば良い。開閉の周期としては、用いる有機物材料の物性にもよるが、毎秒1〜500回の開閉ができることが好ましい。このようにして、液状有機物にレイリー分裂を引き起こし、微小な液滴状の有機物を形成することができる。噴射口4bに有機物材料を、微少な液滴状の状態で供給することにより、噴射口4bから塊になることなく、微粒化した有機物材料を噴射することができる。
このように弁の開閉のタイミングおよび開閉数を制御することで用いる所望の液量の有機物材料を噴射口4bに供給することができる。
【0023】
噴射口4bは、特に限定するものではないが、超音波式アトマイザーを用いたものであることが好ましい。超音波式アトマイザーを用いることにより、重合反応性の高い液状の有機物材料を微粒化又は霧化し、真空容器1内に具備された加熱板2に、噴射することができる。このような噴射口としては、例えばある超音波領域に固有周波数を持った材質からなり、超音波発生装置4dを備えるものが挙げられる。
【0024】
ある超音波領域に固有周波数を有した噴射口4bに送られ、超音波発生装置4dから一定の強度を持った超音波を該噴射口4bに印加することで液状の有機物材料を霧状にすることができる構造になっている。
【0025】
また、供給手段5から噴射手段4および真空容器1に、熱線式ヒータが巻いてもよい。このようにすることで、周囲を熱重合温度以下に調整し、有機物材料の粘度と流量を調整することが可能になる。
【0026】
真空容器1内には、供給された霧状の有機物材料を加熱気化するための、加熱板2が具備されている。加熱板2は、特に限定するものではないが、金属板またはセラミックスなどの熱伝導の小さい発熱体で構成することができる。また、凹凸面形状を有していても良く、供給された微粒又は霧状の有機物材料と加熱表面との接触面積を増加させてもよい。
【0027】
本発明の対象物は、製造した有機物材料からなる蒸気を被覆する対象となるものである。
対象物は特に限定するものではなく、板状の基材や、立体成形物などでもかまわない。また、その材質も特に限定するものではなく、有機高分子材料や、金属などでもかまわない。また、前記対象物は有機物蒸気を被覆した後、さらに他の機能層を積層しても良い。
また、対象物に付着した有機物材料は電離活性放射線で重合させることができる。
【0028】
本発明で用いる有機物材料とは、特に限定するものではなく、用途に応じて様々なものを用いることができる。中でも、溶剤を含まず真空中で有機樹脂層を形成でき、硬化速度が速く、生産性に優れた放射線硬化型樹脂であるアクリレートやメタクリレートからなるモノマーおよび/またはオリゴマーの混合物などを好適に用いることができる。
アクリレートモノマーとしては単官能アクリレートとして例えば、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコール、メトキシ−トリエチレンクリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレンングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フフェトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、デトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロビルアクリレートなどがあげられる。二官能アクリレートとしては例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1.6ヘキサンジオールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクリレート、などがあげられる。その他にも多官能アクリレートとしてトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどをあげることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、真空容器内で製造された有機物蒸気を対象物に被覆する装置において、有機物蒸気を対象物に送り込む際の脈動を抑えることができ、均一な膜厚の有機物被覆膜を形成することができる。
また、噴射手段に周期的な開閉可能な電磁弁を有する中間室を設けることにより、安定して、微粒又は霧化した有機物材料を真空容器内の加熱板に供給することができ、安定した有機物蒸気を製造することができる。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る有機物蒸気の製造装置の概略図である。
【図2】本発明の実施形態の一例に係る有機物蒸気の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 真空容器
2 加熱板
3 リークバルブ
4 噴射手段
4a 中間室
4b 噴射口
4c 制御装置
4d 超音波発生装置
5 供給手段
6 被覆室
7 流量コントローラー
8 バルブ
9 有機物蒸気排気手段
10 メカニカルブースターポンプ
11 ロータリーポンプ
12 コンダクタンスバルブ
13 リークバルブ
Claims (6)
- 真空容器と、該真空容器に有機物材料を供給できる供給手段と、該真空容器内に、供給された有機物材料を噴射させるための噴射手段と、噴射された有機物材料を蒸発させるための加熱板を備えてなり、該真空容器に蒸発した有機物材料を被覆するための被覆室が接続されてなる有機物蒸気の被覆装置において、該接続部分に流量コントローラ及び開閉可能な弁を設けてなることを特徴とする有機物蒸気の被覆装置。
- 前記真空容器に、有機物蒸気排気手段が接続されてなることを特徴とする請求項1に記載の有機物蒸気の被覆装置。
- 前記噴射手段が、中間室と噴射口からなり、該中間室が、周期的に開閉可能な電磁弁を有することを特徴とする請求項1または2に記載の有機物蒸気の被覆装置。
- 前記加熱板が凹凸面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置。
- 前記噴射口が、超音波発生装置を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置。
- 前記供給手段及び/又は噴射手段がヒーターを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機物蒸気の被覆装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002337725A JP2004169144A (ja) | 2002-11-21 | 2002-11-21 | 有機物蒸気の被覆装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP5265583B2 (ja) * | 2008-02-14 | 2013-08-14 | 株式会社アルバック | 蒸着装置 |
-
2002
- 2002-11-21 JP JP2002337725A patent/JP2004169144A/ja active Pending
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