JP2004168659A - フラットパネルディスプレイ用ガラス基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、フロート法で成形され、その表面に銀電極が形成されても、銀による発色を抑制できるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、フロート法によって板状に成形され、重量百分率で、SiO2 50〜65%、Al2O3 1〜15%、RO 10〜27%、ZrO2 1〜9%、Na2O 2〜12%、K2O 2〜13%、TiO2 0〜5%の組成を含有するガラスからなり、金属電極が形成される面が研磨されることによって、その表面に形成された還元性の異質層が除去されてなることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】 本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、フロート法によって板状に成形され、重量百分率で、SiO2 50〜65%、Al2O3 1〜15%、RO 10〜27%、ZrO2 1〜9%、Na2O 2〜12%、K2O 2〜13%、TiO2 0〜5%の組成を含有するガラスからなり、金属電極が形成される面が研磨されることによって、その表面に形成された還元性の異質層が除去されてなることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板及びその製造方法に関するものである。
従来よりガラス基板の成形法としては、フロート法、ロールアウト法、フュージョン法等が知られている。
フロート法は、溶融金属錫の上に溶融ガラスを浮かべて板状に成形する方法であり、大面積のガラス基板を安定して、しかも安価に大量生産できるため窓ガラスを始めとして広く用いられている。
またプラズマディスプレイ装置に用いられるガラス基板は、例えば40インチのように大面積であるため、フロート法による製造が最も適していると考えられている。
プラズマディスプレイ装置を製造する場合、まず前面ガラス基板と背面ガラス基板を準備し、これらのガラス基板上に金属ペーストや絶縁ペーストを塗布・焼成することによって、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ITO膜、ネサ膜等の電極、誘電体層、隔壁、蛍光体を形成する。次いで前面ガラス基板と背面ガラス基板を低融点封着ガラスでシールし、内部にキセノンと主放電ガスのネオンとの混合ガスを封入し気密封止する方法が採られる。
一般に金属電極の材料としては、クロム、アルミニウム、ニッケルが用いられるが、これらの金属膜を形成するには、蒸着やスパッタのような高価な成膜法が必要となるため、安価なスクリーン印刷で成膜できる銀電極を用いることが試みられている。
特開平9−55167号公報
しかしながら、フロート法によって成形されたガラス基板上に、銀(Ag)電極を形成すると、銀がガラス基板表面で反応し、発色を引き起こすという問題がある。しかもこの発色は、電極部のみならず、その周辺部にも現れやすく、このような銀電極やその周辺基板の発色が前面ガラス基板に現れると、表示性能(透明性、色バランス)が損なわれる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、フロート法で成形され、その表面に銀電極が形成されても、銀による発色を抑制できるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、上記目的を達成すべく、種々の実験を繰り返した結果、フロート法で成形されたガラス基板の表面に銀電極を形成すると発色するのは、ガラス基板の表面に形成された還元性の異質層に起因するものであることを見いだした。
つまり、ガラス基板をフロート法で成形する場合、成板工程においてガラス上面が還元雰囲気下に曝され、またガラス下面が金属錫浴と接触するため、ガラス基板の両面には、還元性の異質層が形成される。この異質層の厚みは、ガラス組成や成形条件によって、およそ0.1〜1000μmの範囲で変動する。
そして、このような表面異質層が形成されたガラス基板上に銀ペーストが塗布され、熱処理を受けると、銀成分がガラス表面層に拡散し、還元されて金属コロイド化するため発色を引き起こすことになるという知見に基づき、本発明を提案するに到った。
すなわち、本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、フロート法によって板状に成形され、重量百分率で、SiO2 50〜65%、Al2O3 1〜15%、RO 10〜27%、ZrO2 1〜9%、Na2O 2〜12%、K2O 2〜13%、TiO2 0〜5%の組成を含有するガラスからなり、金属電極が形成される面が研磨されることによって、その表面に形成された還元性の異質層が除去されてなることを特徴とする。
また、本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、金属電極が形成される面の反対面が未研磨であることを特徴とし、また、金属電極が、銀電極であることを特徴とし、さらに、研磨によって平均厚さで1〜1000μmの表面層が加工除去されてなることを特徴とし、また、プラズマディスプレイに用いられることを特徴とする。
次に、本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法は、ガラス基板表面に金属電極が形成されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法において、重量百分率で、SiO2 50〜65%、Al2O3 1〜15%、RO 10〜27%、ZrO2 1〜9%、Na2O 2〜12%、K2O 2〜13%、TiO2 0〜5%の組成を含有するガラスを、フロート法によって板状に成形した後、金属電極が形成される面を研磨することによって、その表面に形成された還元性の異質層を除去することを特徴とする。
また、本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法は、金属電極が形成される面の反対面を研磨しないことを特徴とし、また、金属電極が、銀電極であることを特徴とし、さらに、研磨によって平均厚さで1〜1000μmの表面層を加工除去することを特徴とする。
本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、フロート法で成形された後、ガラス基板表面を研磨して、銀成分による発色の原因となる還元性の異質層を除去している。そのため、フロート法で成形され、表面に銀電極が形成されても、銀成分に起因する発色を抑えることができる。それ故、このガラス基板を前面ガラス基板として用いたプラズマディスプレイ装置は、透明性と色バランスに優れた画像が得られる。
本発明においては、フロート法で成形した後、金属電極が形成される面を研磨することによって、その表面に形成される還元性の異質層を除去している。そのため、得られたガラス基板は、後工程で、研磨面に金属電極が形成され、熱処理によって金属成分がガラス表面に拡散しても、還元されることがなく、発色を防止することができる。従って金属電極の構成材料として、還元されコロイド化しやすい銀を使用することができ、安価なスクリーン印刷で電極を形成することが可能となる。
また、本発明においては、研磨減量が少なすぎると、ガラス基板の表面に形成された還元性の異質層を十分に除去できず、逆に研磨減量が多すぎると、研磨コストが極端に上昇するため好ましくない。また極端に小さい厚みで研磨するのは技術的に困難であり、却ってコスト高となる。従って研磨減量は、平均厚さで1〜1000μm、好ましくは10〜100μmの範囲で、還元性の異質層の厚みに応じて調整される。
因みに従来より成形後のガラス基板表面の平面度を向上する目的で表面研磨することは広く行われているが、フロート成形法によって成形されたガラス基板の場合、比較的良好な平面度を有しているため、通常は研磨されない。また仮に研磨されても数μm〜十数μm程度であり、上記したような還元性の異質層の厚みが大きい場合には、異質層が残存することがある。
さらに本発明においては、研磨コストを配慮して、金属電極が形成される面の反対面は、未研磨のまま保持することが好ましい。
本発明のガラス基板の組成範囲を上記のように限定した理由は、次のとおりである。
SiO2は、ガラスのネットワークフォーマーであり、その含有量は50〜65%が好ましい。50%より少ないと、ガラスの歪点が低下し、ガラス基板を熱処理する際の熱収縮が大きくなり、パターンの位置ずれが発生するため好ましくない。一方、65%より多いと、熱膨張係数が小さくなり、絶縁ペーストやシーリングフリットのそれと整合しなくなるため反りが発生しやすくなる。
Al2O3は、ガラスの歪点を高める成分であり、その含有量は1〜15%が好ましい。1%より少ないと、上記効果が得られず、一方、15%より多いと、熱膨張係数が小さくなりすぎる。
RO(MgO、CaO、SrO、BaO)は、ガラスを溶融しやすくすると共に熱膨張係数を調整する作用を有し、その含有量は10〜27%である。10%より少ないと、歪点が低くなりすぎ、一方、27%より多いと、ガラスが失透しやすく、成形が困難となる。
ZrO2は、ガラスの化学的耐久性を向上させる成分であり、その含有量は1〜9%である。1%より少ないと、上記の効果が得られず、一方、9%より多いと、熱膨張係数が小さくなりすぎると共に、ガラスの溶融時に失透物が生成しやすく成形が困難となる。
Na2Oは、熱膨張係数を調整するための成分であり、その含有量は2〜12%である。2%より少ないと、熱膨張係数が小さくなりすぎ、一方、12%より多いと、歪点が低くなりすぎるため好ましくない。
K2Oも、熱膨張係数を調整するための成分であり、その含有量は2〜13%である。2%より少ないと、熱膨張係数が小さくなりすぎ、一方、13%より多いと、歪点が低くなりすぎる。
TiO2は、ガラスの紫外線による着色を防止する成分であり、その含有量は0〜5%である。プラズマディスプレイの場合、放電時に紫外線が発生するが、ガラス基板が紫外線によって着色すると、長期間に亘って使用している間に徐々に表示画面が見づらくなるため、TiO2を添加することが望ましい。しかしながらTiO2が5%より多いと、ガラスが失透しやすく、成形が困難となる。
また本発明においては、上記の成分以外にも、熱膨張係数を調整するためにLi2Oを、また消泡剤としてCl、SO3等の成分を、ガラス特性を損なわない範囲で含有させることもできる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
表1は、本発明のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の組成と特性を示すものである。
表1のガラス基板は、表中のガラス組成となるように原料を調合した後、フロート法で3mm厚の板状に成形し、得られた板ガラスを縦50mm、横50mmの大きさに切断加工することによって作製した。
これらのガラス基板は、歪点が571℃以上であるため熱収縮が少なく、液相温度が1050℃以下であるため失透し難く、熱膨張係数が83〜89×10−7/℃であるため絶縁ペーストやシーリングフリットのそれと整合し、プラズマディスプレイ用ガラス基板として適していた。またこの種のガラス基板の体積抵抗率が低いと、ガラス中のアルカリ成分が薄膜電極と反応し、電極材料の電気抵抗値が変化しやすくなるため好ましくないが、これらのガラス基板は、体積抵抗率が1011.4以上と高く、しかも紫外線による着色度合いも少なかった。
尚、表中の歪点は、ASTM C336−71の方法に基づいて測定し、液相温度は、白金ボートに297〜500μmの粒径を有するガラス粉末を入れ、温度勾配炉に48時間保持した後の失透観察によって求めたものである。
また熱膨張係数は、ディラトメーターによって30〜380℃における平均熱膨張係数を測定したものであり、体積抵抗率は、ASTM C657−78に基づいて150℃における値を測定したものである。
さらに紫外線による着色の度合いは、ガラス基板を400Wの水銀ランプで48時間照射し、照射前後の波長400nmにおける紫外線透過率を測定し、その透過率の差を示したものである。この値が大きいほど、紫外線によって着色しやすいということになる。
次に表1の各ガラス基板について、それらの片面のみを表の研磨減量となるように研磨した。
その後、ガラス基板の研磨面上にスクリーン印刷で銀ペーストを印刷し、600℃で、1時間熱処理することによって電極膜を形成した。
各ガラス基板の表面を、研磨によって平均厚みで10μm以上加工除去した試料には、いずれも発色は認められなかったが、1μm加工除去した試料は、いずれも極僅かに発色した。また0.1μm加工除去した試料には、いずれも明らかに発色が認められ、未研磨の試料は、いずれも強く発色した。
これらのデータから、これらのガラス基板の表面に形成された還元性の異質層の厚みは、平均厚さで1μm以上、10μm未満であることが推定される。
また表の試料No.2のガラス基板の片面を10μm研磨した試料を2枚準備し、これらのガラス基板上に銀ペーストや絶縁ペーストを塗布・焼成することによって、銀電極、誘電体層、隔壁、蛍光体等を形成した。次いでこれらのガラス基板を低融点封着ガラスでシールし、内部にキセノンと主放電ガスのネオンとの混合ガスを封入し気密封止することによってプラズマディスプレイ装置を作製した。
こうして作製されたプラズマディスプレイ装置を作動させたところ、透明性と色バランスに優れた画像が得られた。
尚、上記の研磨は、研磨剤として酸化セリウムを使用し、オスカー式研磨機を用いて行った。また発色度合いは、各試料の発色部の反射率曲線(700〜400nm)から、C光源を用いた発色度合いを色度座標に表し、試料No.1の片面を1000μm研磨した試料を発色無しとした場合に、これと各比較試料の座標差が0.1未満で発色が認められないものを◎、また座標差が0.1〜0.2で極僅かに発色したものを○で示した。さらに座標差が0.2〜0.5で明らかに発色したものを△、座標差が0.5より大きく、強く発色したものを×で示した。
Claims (9)
- フロート法によって板状に成形され、重量百分率で、SiO2 50〜65%、Al2O3 1〜15%、RO 10〜27%、ZrO2 1〜9%、Na2O 2〜12%、K2O 2〜13%、TiO2 0〜5%の組成を含有するガラスからなり、金属電極が形成される面が研磨されることによって、その表面に形成された還元性の異質層が除去されてなることを特徴とするフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
- 金属電極が形成される面の反対面が未研磨であることを特徴とする請求項1記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
- 金属電極が、銀電極であることを特徴とする請求項1または2記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
- 研磨によって、平均厚さで1〜1000μmの表面層が加工除去されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
- プラズマディスプレイに用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
- ガラス基板表面に金属電極が形成されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法において、重量百分率で、SiO2 50〜65%、Al2O3 1〜15%、RO 10〜27%、ZrO2 1〜9%、Na2O 2〜12%、K2O 2〜13%、TiO2 0〜5%の組成を含有するガラスを、フロート法によって板状に成形した後、金属電極が形成される面を研磨することによって、その表面に形成された還元性の異質層を除去することを特徴とするフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
- 銀電極が形成される面の反対面を研磨しないことを特徴とする請求項6記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
- 金属電極が、銀電極であることを特徴とする請求項6または7記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
- 研磨によって、平均厚さで1〜1000μmの表面層を加工除去することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
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