JP2004168604A - セメント - Google Patents
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Abstract
【課題】シリカフューム等の超微粉を使用しなくても極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができるセメントを提供する。
【解決手段】3CaO・Al2O3含有量が4質量%以下、4CaO・Al2O3・Fe2O3含有量が10質量%以下で、全アルカリ量が0.6質量%以下であるポルトランドセメントクリンカーの粉砕物と石膏とを含み、ブレーン比表面積が4000〜7000cm2/gであるセメント。前記ポルトランドセメントクリンカーにおいては、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性のさらなる向上の観点から、2CaO・SiO2含有量が40〜60質量%であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】3CaO・Al2O3含有量が4質量%以下、4CaO・Al2O3・Fe2O3含有量が10質量%以下で、全アルカリ量が0.6質量%以下であるポルトランドセメントクリンカーの粉砕物と石膏とを含み、ブレーン比表面積が4000〜7000cm2/gであるセメント。前記ポルトランドセメントクリンカーにおいては、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性のさらなる向上の観点から、2CaO・SiO2含有量が40〜60質量%であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)でも混練性や流動性に優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができるセメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
設計規準強度60N/mm2以上の高強度セメント質硬化体(ペースト・モルタル・コンクリート)を得るためには、高性能減水剤や高性能AE減水剤(以下、この2種を併せて「高性能減水剤」という)を用い、混練物を密実に成形できる範囲において、水セメント比をできるだけ小さくすることが最も効果的な方法である。しかし、水セメント比を小さくすれば、ペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性が低下し、水セメント比を極端に小さく(水/セメント比が20質量%以下)すれば、混練性は著しく低下し混練時間が極端に長くなるとともに流動性も著しく低下する。
【0003】
これを解決する手段として、シリカフューム等の超微粉を混和材として用いる方法がある(例えば、特許文献1)。シリカフュームは、比表面積20m2/g程度、平均粒径0.1μm程度の球状粒子である。このようなシリカフュームを高性能減水剤と併用することにより、ペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性を向上させることができるため、より低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの製造が可能となる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−29349号公報(第5頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
シリカフュームには、粉体状、顆粒状のものがある。顆粒状シリカフュームは、セメントなどの粉体材料と同様な輸送、計量および投入装置を使用できるという長所があるが、分散性に劣り、混練性や流動性、強度発現性の向上効果が小さいという欠点がある。一方、粉体状シリカフュームでは、混練性や流動性、強度発現性の向上効果は優れているが、超微粉であるため取り扱いが困難であり、既存の輸送、計量および投入装置をそのまま使用し難いという欠点がある。また、シリカフュームは高価であるため、ペースト・モルタル・コンクリートのコストが高くなるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点、知見に鑑みなされたものであって、その目的は、シリカフューム等の超微粉を使用しなくても極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができるセメントを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の鉱物組成を有するポルトランドセメントクリンカーの粉砕物と石膏とを含む特定のブレーン比表面積のセメントであれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、3CaO・Al2O3含有量が4質量%以下、4CaO・Al2O3・Fe2O3含有量が10質量%以下で、全アルカリ量が0.6質量%以下であるポルトランドセメントクリンカーの粉砕物と石膏とを含み、ブレーン比表面積が4000〜7000cm2/gであることを特徴とするセメントである(請求項1)。
また、本発明においては、前記ポルトランドセメントクリンカー中の2CaO・SiO2含有量が40〜60質量%であることが好ましい(請求項2)。ポルトランドセメントクリンカー中の2CaO・SiO2含有量が前記範囲である場合、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性等をさらに向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のセメントは、3CaO・Al2O3(以降、C3Aと略す)含有量が4質量%以下、4CaO・Al2O3・Fe2O3(以降、C4AFと略す)含有量が10質量%以下で、全アルカリ量(以降、R2Oと称す)が0.6質量%以下であるポルトランドセメントクリンカーの粉砕物を含むものである。C3A、C4AF、R2Oがこの範囲内のポルトランドセメントクリンカーを使用することにより、極低水セメント比においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができるセメントが得られる。C3A、C4AF、R2Oのいずれかが前記範囲外では、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性が低下するので好ましくない。なお、クリンカー中のC3A、C4AF含有量は、化学成分Al2O3、Fe2O3(質量%)から、Bogueの計算式を用いて算出される値である。また、クリンカー中のR2Oは、化学成分Na2O、K2O(質量%)から、Na2O+0.658K2Oにより算出される値である。
【0010】
前記ポルトランドセメントクリンカーにおいては、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性のさらなる向上の観点から、2CaO・SiO2(以降、C2Sと略す)含有量が40〜60質量%であることが好ましい。このようなポルトランドセメントクリンカーとしては、低熱ポルトランドセメントクリンカーが挙げられる。
【0011】
本発明のセメントは、石膏を含むものである。石膏としては、ニ水石膏、半水石膏、無水石膏又はこれらの混合物を使用することができる。石膏の添加量は、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性の向上の観点、さらには凝結時間や強度発現性等の観点から、セメント中のSO3含有量が2.0〜4.0質量%となる量が好ましい。
【0012】
本発明のセメントのブレーン比表面積は4000〜7000cm2/gである。ブレーン比表面積をこの範囲とすることにより、極低水セメント比においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができる。ブレーン比表面積が4000cm2/g未満では、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性が低下するので好ましくない。ブレーン比表面積が7000cm2/gを越えると、粉砕に時間がかかりセメントの生産性が低下するうえ、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性が低下するので好ましくない。
本発明においては、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性のさらなる向上、さらには凝結時間や強度発現性等の観点から、セメントのブレーン比表面積は4300〜6700cm2/gが好ましく、4500〜6500cm2/gがより好ましい。
【0013】
本発明のセメントの製造方法は、特に限定するものではなく、例えば、▲1▼ポルトランドセメントクリンカーと石膏を混合粉砕してもよいし、▲2▼ポルトランドセメントクリンカー粉砕物と石膏を混合してもよい。セメントの生産性等の観点から、本発明においては、前記▲1▼のポルトランドセメントクリンカーと石膏を混合粉砕することが好ましい。混合粉砕に使用する装置は特に限定するものではなく、ボールミル等で行えばよい。
【0014】
本発明のセメントを使用して、ペースト・モルタル・コンクリートを製造する場合、その配合割合、混練方法、施工方法、養生方法は特に限定するものではない。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
1.使用材料
以下に示す材料を使用した。
1)セメントA;試製ポルトランドセメントクリンカー(C2S量54質量%、C3A量2.5質量%、C4AF量8.0質量%、R2O量0.5質量%)とニ水石膏との混合粉砕品(ブレーン比表面積4550cm2/g)
セメントB;試製ポルトランドセメントクリンカー(C2S量54質量%、C3A量2.5質量%、C4AF量8.0質量%、R2O量0.5質量%)とニ水石膏との混合粉砕品(ブレーン比表面積5200cm2/g)
セメントC;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製、ブレーン比表面積3300cm2/g)
セメントD;試製ポルトランドセメントクリンカー(C2S量26質量%、C3A量10質量%、C4AF量10質量%、R2O量0.6質量%)とニ水石膏との混合粉砕品(ブレーン比表面積5000cm2/g)
2)細骨材;小笠産陸砂
3)粗骨材;岩瀬産砕石
4)高性能減水剤;「レオビルドSP−8HU X2」(ポゾリス物産製)
5)水;水道水
【0016】
2.ペーストの調製および評価
前記各セメント、高性能減水剤および水を使用して表1に示す配合のペーストを調製した。ペーストの調製は、各材料をホバートミキサに投入して混練することにより行った。
【0017】
得られたペーストについて、下記の特性を測定した。
(1)混練時間
各材料が均一に混合され、かつ施工に適する流動性に達するまでに要する混練時間を測定した。
(2)フロー値
「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。
(3)Jpロート流下時間
土木学会規準JSCE−F 531−1999(PCグラウトの流動性試験方法)に記載される方法において、Jpロートから400cm3が流下する時間を測定した。
(4)圧縮強度
ペーストをφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で3日間水中養生後、85℃で48時間蒸気養生し、得た硬化体の圧縮強度(3本の平均値)を測定した。
結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
表1より、
1)実施例1〜4から、本発明のセメントを使用したペーストでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れることが判明した。また、本発明のセメントを使用したペーストでは、強度発現性にも優れることが判明した。
一方、
2)比較例1〜2から、ブレーン比表面積が小さいセメントを使用したペーストでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においては、混練性が著しく低下し混練時間が極端に長くなるとともに流動性も著しく低下することが確認された。また、比較例3から、C3A含有量が多いセメントを使用したペーストでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においては、混練性が著しく低下することが確認された。
【0020】
3.コンクリートの調製および評価
前記セメント、高性能減水剤、細骨材、粗骨材および水を使用して表2に示す配合のコンクリートを調製した。コンクリートの調製は、各材料をニ軸ミキサに投入して混練することにより行った。
【0021】
【表2】
【0022】
得られたコンクリートについて、下記の特性を測定した。
(1)混練時間
各材料が均一に混合され、かつ施工に適する流動性に達するまでに要する混練時間を測定した。
(2)スランプフロー
「JIS A 1150(コンクリートのスランプフロー試験方法)」に準じて測定した。
(3)Vロート流下時間
土木学会規準JSCE−F 512−1999(高流動コンクリートの漏斗を用いた流下試験方法(案))に記載される方法に準じてVロートの流下時間を測定した。
(4)圧縮強度
コンクリートをφ10×20cmの型枠に流し込み、28日間水中養生し、得た硬化体の圧縮強度(3本の平均値)を測定した。
結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
表3より、
1)実施例5〜6から、本発明のセメントを使用したコンクリートでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れることが判明した。また、本発明のセメントを使用したコンクリートでは、強度発現性にも優れることが判明した。
一方、
2)比較例4〜5から、ブレーン比表面積が小さいセメント(比較例4)、C3A含有量が多いセメント(比較例5)を使用したコンクリートでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においては、混練性が著しく低下することが確認された。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のセメントでは、シリカフューム等の超微粉を使用しなくても極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)でも混練性や流動性に優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができるセメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
設計規準強度60N/mm2以上の高強度セメント質硬化体(ペースト・モルタル・コンクリート)を得るためには、高性能減水剤や高性能AE減水剤(以下、この2種を併せて「高性能減水剤」という)を用い、混練物を密実に成形できる範囲において、水セメント比をできるだけ小さくすることが最も効果的な方法である。しかし、水セメント比を小さくすれば、ペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性が低下し、水セメント比を極端に小さく(水/セメント比が20質量%以下)すれば、混練性は著しく低下し混練時間が極端に長くなるとともに流動性も著しく低下する。
【0003】
これを解決する手段として、シリカフューム等の超微粉を混和材として用いる方法がある(例えば、特許文献1)。シリカフュームは、比表面積20m2/g程度、平均粒径0.1μm程度の球状粒子である。このようなシリカフュームを高性能減水剤と併用することにより、ペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性を向上させることができるため、より低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの製造が可能となる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−29349号公報(第5頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
シリカフュームには、粉体状、顆粒状のものがある。顆粒状シリカフュームは、セメントなどの粉体材料と同様な輸送、計量および投入装置を使用できるという長所があるが、分散性に劣り、混練性や流動性、強度発現性の向上効果が小さいという欠点がある。一方、粉体状シリカフュームでは、混練性や流動性、強度発現性の向上効果は優れているが、超微粉であるため取り扱いが困難であり、既存の輸送、計量および投入装置をそのまま使用し難いという欠点がある。また、シリカフュームは高価であるため、ペースト・モルタル・コンクリートのコストが高くなるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点、知見に鑑みなされたものであって、その目的は、シリカフューム等の超微粉を使用しなくても極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができるセメントを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の鉱物組成を有するポルトランドセメントクリンカーの粉砕物と石膏とを含む特定のブレーン比表面積のセメントであれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、3CaO・Al2O3含有量が4質量%以下、4CaO・Al2O3・Fe2O3含有量が10質量%以下で、全アルカリ量が0.6質量%以下であるポルトランドセメントクリンカーの粉砕物と石膏とを含み、ブレーン比表面積が4000〜7000cm2/gであることを特徴とするセメントである(請求項1)。
また、本発明においては、前記ポルトランドセメントクリンカー中の2CaO・SiO2含有量が40〜60質量%であることが好ましい(請求項2)。ポルトランドセメントクリンカー中の2CaO・SiO2含有量が前記範囲である場合、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性等をさらに向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のセメントは、3CaO・Al2O3(以降、C3Aと略す)含有量が4質量%以下、4CaO・Al2O3・Fe2O3(以降、C4AFと略す)含有量が10質量%以下で、全アルカリ量(以降、R2Oと称す)が0.6質量%以下であるポルトランドセメントクリンカーの粉砕物を含むものである。C3A、C4AF、R2Oがこの範囲内のポルトランドセメントクリンカーを使用することにより、極低水セメント比においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができるセメントが得られる。C3A、C4AF、R2Oのいずれかが前記範囲外では、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性が低下するので好ましくない。なお、クリンカー中のC3A、C4AF含有量は、化学成分Al2O3、Fe2O3(質量%)から、Bogueの計算式を用いて算出される値である。また、クリンカー中のR2Oは、化学成分Na2O、K2O(質量%)から、Na2O+0.658K2Oにより算出される値である。
【0010】
前記ポルトランドセメントクリンカーにおいては、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性のさらなる向上の観点から、2CaO・SiO2(以降、C2Sと略す)含有量が40〜60質量%であることが好ましい。このようなポルトランドセメントクリンカーとしては、低熱ポルトランドセメントクリンカーが挙げられる。
【0011】
本発明のセメントは、石膏を含むものである。石膏としては、ニ水石膏、半水石膏、無水石膏又はこれらの混合物を使用することができる。石膏の添加量は、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性の向上の観点、さらには凝結時間や強度発現性等の観点から、セメント中のSO3含有量が2.0〜4.0質量%となる量が好ましい。
【0012】
本発明のセメントのブレーン比表面積は4000〜7000cm2/gである。ブレーン比表面積をこの範囲とすることにより、極低水セメント比においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができる。ブレーン比表面積が4000cm2/g未満では、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性が低下するので好ましくない。ブレーン比表面積が7000cm2/gを越えると、粉砕に時間がかかりセメントの生産性が低下するうえ、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性が低下するので好ましくない。
本発明においては、極低水セメント比でのペースト・モルタル・コンクリートの混練性や流動性のさらなる向上、さらには凝結時間や強度発現性等の観点から、セメントのブレーン比表面積は4300〜6700cm2/gが好ましく、4500〜6500cm2/gがより好ましい。
【0013】
本発明のセメントの製造方法は、特に限定するものではなく、例えば、▲1▼ポルトランドセメントクリンカーと石膏を混合粉砕してもよいし、▲2▼ポルトランドセメントクリンカー粉砕物と石膏を混合してもよい。セメントの生産性等の観点から、本発明においては、前記▲1▼のポルトランドセメントクリンカーと石膏を混合粉砕することが好ましい。混合粉砕に使用する装置は特に限定するものではなく、ボールミル等で行えばよい。
【0014】
本発明のセメントを使用して、ペースト・モルタル・コンクリートを製造する場合、その配合割合、混練方法、施工方法、養生方法は特に限定するものではない。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
1.使用材料
以下に示す材料を使用した。
1)セメントA;試製ポルトランドセメントクリンカー(C2S量54質量%、C3A量2.5質量%、C4AF量8.0質量%、R2O量0.5質量%)とニ水石膏との混合粉砕品(ブレーン比表面積4550cm2/g)
セメントB;試製ポルトランドセメントクリンカー(C2S量54質量%、C3A量2.5質量%、C4AF量8.0質量%、R2O量0.5質量%)とニ水石膏との混合粉砕品(ブレーン比表面積5200cm2/g)
セメントC;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製、ブレーン比表面積3300cm2/g)
セメントD;試製ポルトランドセメントクリンカー(C2S量26質量%、C3A量10質量%、C4AF量10質量%、R2O量0.6質量%)とニ水石膏との混合粉砕品(ブレーン比表面積5000cm2/g)
2)細骨材;小笠産陸砂
3)粗骨材;岩瀬産砕石
4)高性能減水剤;「レオビルドSP−8HU X2」(ポゾリス物産製)
5)水;水道水
【0016】
2.ペーストの調製および評価
前記各セメント、高性能減水剤および水を使用して表1に示す配合のペーストを調製した。ペーストの調製は、各材料をホバートミキサに投入して混練することにより行った。
【0017】
得られたペーストについて、下記の特性を測定した。
(1)混練時間
各材料が均一に混合され、かつ施工に適する流動性に達するまでに要する混練時間を測定した。
(2)フロー値
「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。
(3)Jpロート流下時間
土木学会規準JSCE−F 531−1999(PCグラウトの流動性試験方法)に記載される方法において、Jpロートから400cm3が流下する時間を測定した。
(4)圧縮強度
ペーストをφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で3日間水中養生後、85℃で48時間蒸気養生し、得た硬化体の圧縮強度(3本の平均値)を測定した。
結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
表1より、
1)実施例1〜4から、本発明のセメントを使用したペーストでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れることが判明した。また、本発明のセメントを使用したペーストでは、強度発現性にも優れることが判明した。
一方、
2)比較例1〜2から、ブレーン比表面積が小さいセメントを使用したペーストでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においては、混練性が著しく低下し混練時間が極端に長くなるとともに流動性も著しく低下することが確認された。また、比較例3から、C3A含有量が多いセメントを使用したペーストでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においては、混練性が著しく低下することが確認された。
【0020】
3.コンクリートの調製および評価
前記セメント、高性能減水剤、細骨材、粗骨材および水を使用して表2に示す配合のコンクリートを調製した。コンクリートの調製は、各材料をニ軸ミキサに投入して混練することにより行った。
【0021】
【表2】
【0022】
得られたコンクリートについて、下記の特性を測定した。
(1)混練時間
各材料が均一に混合され、かつ施工に適する流動性に達するまでに要する混練時間を測定した。
(2)スランプフロー
「JIS A 1150(コンクリートのスランプフロー試験方法)」に準じて測定した。
(3)Vロート流下時間
土木学会規準JSCE−F 512−1999(高流動コンクリートの漏斗を用いた流下試験方法(案))に記載される方法に準じてVロートの流下時間を測定した。
(4)圧縮強度
コンクリートをφ10×20cmの型枠に流し込み、28日間水中養生し、得た硬化体の圧縮強度(3本の平均値)を測定した。
結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
表3より、
1)実施例5〜6から、本発明のセメントを使用したコンクリートでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れることが判明した。また、本発明のセメントを使用したコンクリートでは、強度発現性にも優れることが判明した。
一方、
2)比較例4〜5から、ブレーン比表面積が小さいセメント(比較例4)、C3A含有量が多いセメント(比較例5)を使用したコンクリートでは、極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においては、混練性が著しく低下することが確認された。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のセメントでは、シリカフューム等の超微粉を使用しなくても極低水セメント比(水/セメント比が20質量%以下)においても混練可能であり、かつ、混練時間を短縮することができるうえ、流動性にも優れるペースト・モルタル・コンクリートを製造することができる。
Claims (2)
- 3CaO・Al2O3含有量が4質量%以下、4CaO・Al2O3・Fe2O3含有量が10質量%以下で、全アルカリ量が0.6質量%以下であるポルトランドセメントクリンカーの粉砕物と石膏とを含み、ブレーン比表面積が4000〜7000cm2/gであることを特徴とするセメント。
- ポルトランドセメントクリンカー中の2CaO・SiO2含有量が40〜60質量%である請求項1記載のセメント。
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JP2007223819A (ja) * | 2006-02-21 | 2007-09-06 | Matsushita Electric Works Ltd | ビーライト混合セメントおよびそれを用いたコンクリート製品の製造方法 |
JP2011068546A (ja) * | 2009-08-31 | 2011-04-07 | Taiheiyo Cement Corp | 高強度セメント組成物及び高強度セメント質硬化体 |
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