JP2004168164A - フロントアクスルの加工方法、フロントアクスルの加工用の位置決め装置、及びフロントアクスルの加工用の治具装置、並びにフロントアクスルの製造方法 - Google Patents

フロントアクスルの加工方法、フロントアクスルの加工用の位置決め装置、及びフロントアクスルの加工用の治具装置、並びにフロントアクスルの製造方法 Download PDF

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【課題】専用の加工機械を使用することなく、加工工程を従来の3段階から2段階へ削減したフロントアクスルの加工方法、そのための位置決め装置、及び治具装置、並びにそれらを使用したフロントアクスルの製造方法を提供する。
【解決手段】第1工程として、ワーク1Wを、一側面を汎用中ぐり旋盤による加工面となる方向に向けて、少なくともキングピン穴3R,3Lを開設する位置を芯出しすることが可能な第1の治具J1に保持させ、板ばね座2L,2Rの取付面を形成する加工と、キングピン穴3R,3Lを開設する加工とを汎用中ぐり旋盤により行なう。第2工程として、第1工程での加工済みのワーク1Wを、一側面を汎用中ぐり旋盤による加工面と直交する方向に向けて、コッタ穴を開設する位置を芯出しすることが可能な第2の治具J2に保持させ、コッタ穴を開設する加工を汎用中ぐり旋盤により行なう。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフロントアクスル、即ち自動車の左右の前輪を繋ぐ部材の加工方法に関し、またそのための加工対象材の位置決め装置、及び治具装置に関し、更にそれらを使用したフロントアクスルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フロントアクスルは、自動車の左右の前輪をその両端で支持する部材であり、車輌の重量の一部を負担すると共に、一般的には操向のための機能も受け持っている。また、近年では前輪駆動方式または四輪駆動方式の自動車が増加していることから、駆動力を前輪へ伝えるための機能も受け持っている。
【0003】
以下、まず自動車のフロントアクスルの一般的な構成について説明する。図7(a) は操向機構として一般的なアッカーマン方式を採用した従来の自動車のフロントアクスル周りの構成を示すために車輌の後部側から見た模式図であり、図7(b) はフロントアクスルを上面から見た平面図、図7(c) はフロントアクスルを車輌の後方から見た立面図、図7(d) はフロントアクスルの両端部のキングピン穴付近の状態を示す部分的な模式図である。
【0004】
図中、1がフロントアクスルであり、その中央部分の断面形状は一般的にはHチャネル状に形成されており、その両端部は上方へ湾曲した形状のアーム部1L(左側),1R(右側)として形成されている。フロントアクスル1の中央部分の上面には板ばねを取り付けるための二つの板ばね座2L,2Rがフロントアクスル1の左右方向(長手方向)の線対称の位置に設けられている。これらの二つの板ばね座2L,2Rは、車体(シャーシー)との間に介装される板ばね(図示せず)をそれぞれ取り付けるためのものである。
【0005】
両アーム部1L,1Rの先端部には、フロントアクスル1の上下方向に、下部がやや外側へ開いて傾斜した軸心を有するキングピン穴3L,3Rがそれぞれ貫通して開設されている。このキングピン穴3L,3Rにはそれぞれ図示しないキングピンが挿通され、このキングピンにハブキャリア4L,4Rが取り付けられている。ハブキャリア4L,4Rには図示しないが、キングピンの軸長方向とは交差する方向を回転軸として前輪(実際にはタイヤのホイールハブ)が回転可能に取り付けられる。従って、ハブキャリア4L,4Rに取り付けられた前輪がフロントアクスル1の両アーム部1L,1Rのキングピンを枢軸として回動することにより、操向動作が可能である。
【0006】
一方のキングピン穴(図7に示す例では右側)3Rに挿通されたキングピンにはナックルアーム5の一端が固定され、このナックルアーム5の他端はドラッグリンク6の一端に枢支されている。一方、操舵輪7の回転に伴ってステアリングシャフト8が回転し、この回転がステアリングギア9を介してピットマンアーム10の回動運動に変換され、このピットマンアーム10の回動運動が前述したドラッグリンク6を前後動させる。このドラッグリンク6の前後動によって、ナックルアーム5がキングピン穴3Rに挿通されているキングピンを枢軸として回動し、結果的に上述したようにハブキャリア4Rをキングピンを枢軸として回動させる。
【0007】
一方、ハブキャリア4Rはタイロッドアーム11R,タイロッド12、タイロッドアーム11Lを介して他方のハブキャリア4Lをキングピン穴3Lに挿通されているキングピンを中心として回動させる。従って、操舵輪7の回転が結果的に両ハブキャリア4R,4Lが同時に同方向へ回動し、操向動作が行われる。
【0008】
ところで、上述のようなフロントアクスルは従来は、フロントアクスルの形状に成形された加工対象材(ワーク)に対して、(1)板ばね座2L,2Rの取り付け面を形成する加工、(2)板ばね座2L,2Rの面に平行にフロントアクスル1を貫通する種々の穴を開設する加工、(3)キングピン穴3L,3Rを開設する加工、の3段階の工程を順に経て加工されていた。
【0009】
ここで、(1)の板ばね座2L,2Rの取り付け面を形成する加工としては、加工対象材の所定の位置に板ばね座2L,2Rを取り付けるために必要なたとえばタップを切る、またはボルトを挿通させるための貫通穴を開設する、等の加工が必要である。また(2)の板ばね座2L,2Rの面に平行にフロントアクスル1を貫通する種々の穴を開設する加工としては、たとえば図7(d) に示されているようなキングピンのコッタ(ロックピン)穴3LL、タップ穴(ショックアブソーバ用のタップを切った穴)3SLを開設する等の加工が必要である。更に(3)のキングピン穴3L,3Rを開設する加工としては、両アーム部1L,1Rの先端部に極めて正確に位置決め(芯出し)して貫通穴を、それもフロントアクスルの長手方向とは傾斜した方向に開設する加工が必要である。
【0010】
なお、従来技術の参考としては以下のような特許文献1が知られている。
【0011】
【特許文献1】
特開平3−21501号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、フロントアクスルの加工には従来は、フロントアクスルの形状に成形された加工対象材に対して、(1)板ばね座の取り付け面を形成する加工、(2)板ばね座の面に平行にフロントアクスルを貫通する種々の穴を開設する加工、(3)キングピン穴を開設する加工、の3段階の工程が必要であり、従って、3段階の加工工程それぞれのための段取り、具体的には加工対象材の各工程用の治具への位置決めをした上での固定が必要であった。また、従来は、上述の3段階の加工のために各加工工程それぞれに専用の加工機械を使用する必要もあった。また、上述の(3)のキングピン穴を開設する加工に際しては、キングピン穴が開設されるべきフロントアクスルの両端のアーム部の先端部が上方へ湾曲しているため、いわゆるびびりが発生して正確な加工が行ない難いという問題もあった。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、専用の加工機械を使用することなく、換言すれば汎用の加工機械を使用することを可能にし、また加工工程を従来の3段階から2段階へ削減することにより、生産効率を向上させると共にコストを削減し得るフロントアクスルの加工方法、そのための加工対象材の位置決め装置、及び治具装置の提供を目的とする。更に本発明はそれらを使用したフロントアクスルの製造方法の提供をも目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るフロントアクスルの加工方法は、フロントアクスルの形状に成形された加工対象材の一側面に板ばね座取付面を形成する加工と、前記加工対象材の両端部に前記一側面側から他側面側へ貫通するキングピン穴を開設する加工と、前記加工対象材に前記一側面と交差する方向から貫通穴を開設する加工とを行なうフロントアクスルの加工方法であって、前記加工対象材を、前記一側面を加工機械による加工面となる方向に向けて、前記キングピン穴を開設する位置を芯出しすることが可能な第1の治具に保持させる第1の準備工程と、前記第1の治具に保持された加工対象材に、板ばね座取付面を形成する加工及びキングピン穴を開設する加工を前記加工機械により行なう第1の加工工程と、前記加工対象材を、前記一側面を前記加工機械による加工面と交差する方向に向けて、前記貫通穴を開設する位置を芯出しすることが可能な第2の治具に保持させる第2の準備工程と、前記第2の治具に保持された加工対象材に、前記貫通穴を開設する加工を前記加工機械により行なう第2の加工工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
このような本発明のフロントアクスルの加工方法では、第1工程として、加工対象材を、一側面を加工機械による加工面となる方向に向けて、少なくともキングピン穴を開設する位置を芯出しすることが可能な第1の治具に保持させることにより、この第1の治具に保持された加工対象材に対して、板ばね座取付面を形成する加工と、キングピン穴を開設する加工とが加工機械により行なわれ、第2工程として、第1工程での加工済みの加工対象材を、一側面を加工機械による加工面と交差する方向に向けて、貫通穴を開設する位置を芯出しすることが可能な第2の治具に保持させることにより、この第2の治具に保持された加工対象材に対して、貫通穴を開設する加工が加工機械により行なわれる。
【0016】
また本発明に係るフロントアクスルの加工方法は上述の発明において、前記第1の準備工程による加工対象材の保持に際して、前記加工対象材の両端部を、前記一側面側と他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動を制限する手段により前記第1の治具に保持させることを特徴とする。
【0017】
このような本発明のフロントアクスルの加工方法では、第1の治具による加工対象材の保持に際して、加工対象材の両端部が、一側面側と他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動を制限する手段により保持されることにより、キングピン穴を開設する加工に際していわゆるびびりが生じないように保持される。
【0018】
更に本発明に係るフロントアクスルの加工方法は上述の発明において、前記第1の治具と前記第2の治具とを一体的に取り付けた治具装置を使用し、前記第1及び第2の加工工程を連続的に行なうことを特徴とする。
【0019】
このような本発明のフロントアクスルの加工方法では、第1の治具と第2の治具とを一体的に取り付けた治具装置が使用され、加工機械による第1及び第2工程の加工が連続的に行なわれる。
【0020】
更に、本発明に係るフロントアクスルの加工用の位置決め装置は、フロントアクスルの形状に成形された加工対象材の一側面に板ばね座取付面を形成する加工と、前記加工対象材の両端部に前記一側面側から他側面側へ貫通するキングピン穴を開設する加工と、前記加工対象材に前記一側面と交差する方向から貫通穴を開設する加工とを行なうために前記加工対象材を治具上の所定の位置に位置決めするための位置決め装置であって、前記治具を所定の位置に位置決めして載置する台座と、該台座上に設置されており、前記治具上の加工対象材を前記台座に対して所定位置に位置決めする位置決め手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
このような本発明のフロントアクスルの加工用の位置決め装置では、治具が所定の位置に位置決めして台座上に載置され、この台座上に設置されている位置決め手段により治具上の加工対象材が台座に対して所定位置に位置決めされる。従って、加工対象材は治具上の所定の位置に位置決めされることになる。
【0022】
また本発明に係るフロントアクスルの加工用の位置決め装置は、前記治具は、板ばね座取付面が形成される一側面が加工機械による加工面となる方向に向けて保持する第1の治具を含み、前記加工対象材の両端部の、前記一側面側と他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動を制限する手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
このような本発明のフロントアクスルの加工用の位置決め装置では、第1の治具が、板ばね座取付面が形成される一側面が加工機械による加工面となる方向に向けて保持し、更に加工対象材の両端部の、一側面側と他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動が制限されることにより、キングピン穴を開設する加工に際していわゆるびびりが生じない。
【0024】
また本発明に係るフロントアクスルの加工用の治具装置は、フロントアクスルの形状に成形された加工対象材の一側面に板ばね座取付面を形成する加工と、前記加工対象材の両端部に前記一側面側から他側面側へ貫通するキングピン穴を開設する加工とを行なうために前記複数の加工対象材を保持する第1の治具と、前記加工対象材に前記一側面と交差する方向から貫通穴を開設する加工を行なうために前記複数の加工対象材を保持する第2の治具とを備え、前記第1の治具は、該第1の治具が位置決めされて載置される台座に対して前記第1の治具上で所定位置に位置決めされた前記加工対象材の両端部を、前記一側面側と前記他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動を制限する手段を有することを特徴とする。
【0025】
このような本発明のフロントアクスルの加工用の治具装置では、第1の治具により保持された複数のフロントアクスルの形状に成形された加工対象材の一側面に板ばね座取付面を形成する加工と、加工対象材の両端部に一側面側から他側面側へ貫通するキングピン穴を開設する加工とが行なわれ、第2の治具により保持された複数の加工対象材に一側面と交差する方向から貫通穴を開設する加工が行なわれ、この際に第1の治具が位置決めされて載置される台座に対して第1の治具上で所定位置に位置決めされた加工対象材の両端部が、一側面側と前記他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動が制限されることにより、キングピン穴を開設する加工に際していわゆるびびりが生じない。
【0026】
更に本発明に係るフロントアクスルの加工用の治具装置は、上述の発明において、前記第1の治具及び前記第2の治具を着脱可能に固定する手段を備えたことを特徴とする。
【0027】
このような本発明のフロントアクスルの加工用の治具装置では、上述の発明において、第1の治具及び第2の治具に加工対象材を予め保持させておき、必要に応じて取り付けて加工することができる。
【0028】
また本発明に係るフロントアクスルの製造方法は、前述の本発明のいずれかのフロントアクスルの加工方法を含むことを特徴とする。
【0029】
このような本発明のフロントアクスルの製造方法では、フロントアクスルの製造工程の途中に前述の本発明のいずれかのフロントアクスルの加工方法が含まれる。
【0030】
更に本発明に係るフロントアクスルの製造方法は、前述の本発明のいずれかのフロントアクスルの加工用の位置決め装置を使用することを特徴とする。
【0031】
このような本発明のフロントアクスルの製造方法では、フロントアクスルの製造工程の途中で前述の本発明のいずれかのフロントアクスルの加工用の位置決め装置が使用される。
【0032】
また更に本発明に係るフロントアクスルの製造方法は、前述の本発明のいずれかのフロントアクスルの加工用の治具装置を使用することを特徴とする。
【0033】
このような本発明のフロントアクスルの製造方法では、フロントアクスルの製造工程の途中で前述の本発明のいずれかのフロントアクスルの加工用の位置決め装置が使用される。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0035】
図1は本発明に係るフロントアクスルの加工方法に使用される治具装置としての治具ブロックJBの全体の構成例を示す模式的斜視図である。
【0036】
治具ブロックJBは、全体としては略直方体形状のボックス状に構成されている。具体的には、台座21と、この台座21に対して垂直に立設された板状の第1治具取付板J10と、同じく台座21に対して垂直に且つ第1治具取付板J10の背面に平行に立設された板状の第2治具取付板J20とを主要な構成部材としている。
【0037】
なお、第1治具取付板J10と第2治具取付板J20との間には適宜の幅のスペーサ、具体的には上面のスペーサ231と両側面にスペーサ232,233とが挿入されており、第1治具取付板J10と第2治具取付板J20との間に両側面のスペーサ232,233の幅の間隔が設定されている。また、両側面のスペーサ232,233間の間隔は第1治具取付板J10,第2治具取付板J20の大きさよりも小さくなっており、第1治具取付板J10,第2治具取付板J20の左右両端部の背後には空間が形成されている。
【0038】
そして、第1治具取付板J10の四隅には後述する第1治具J1を固定するための第1治具クランプ23が備えられている。各クランプ23は、第1治具取付板J10の背後の、換言すれば第2治具取付板J20との間の間隔の部分に配置されたシリンダ23Cと、このシリンダ23Cから第1治具取付板J10の表面へ突出したピストン23Pと、各ピストン23Pの先端に取り付けられた固定具23Fとからなる。
【0039】
なお、図1には示していないが、第2治具取付板J20の四隅にも後述する第2治具J2を固定するための第2治具クランプ24が備えられている。各クランプ24は、上述の各クランプ23と同様の構成であり、第2治具取付板J20の背後の、換言すれば第1治具取付板J10との間の間隔の部分に配置されたシリンダ24Cと、このシリンダ24Cから第1治具取付板J10の表面へ突出したピストン24Pと、各ピストン24Pの先端に取り付けられた固定具24Fとからなる。
【0040】
また、台座21の第1治具取付板J10と第2治具J2との間の間隔の部分には、この治具ブロックJB全体を加工機械のテーブルに固定するためのテーブルクランプ25がたとえば両側にそれぞれ備えられている。なお、台座21の底面には、この治具ブロックJBを加工機械のテーブルに固定する際の位置決め用の溝260乃至263等が設けられている。
【0041】
図2は本発明のフロントアクスルの加工用の位置決め装置である芯出しユニット30上に第1治具J1をセットした状態を示す模式的斜視図である。
【0042】
芯出しユニット30は、基本的にはフロントアクスルの形状に形成された個々の加工対象材(以下、ワークという)1Wを第1治具J1に位置決めして固定するためのものであるが、本実施の形態においては一例として5個のワーク1Wを一括して第1治具J1に固定する構成としてある。なお、以下においては、ワーク1Wの長手方向(図2上でX方向)を芯出しユニット30の左右方向とし、これに直交するY方向を上下方向とする。
【0043】
芯出しユニット30の台座31には、第1治具J1を位置決めしてセットするための基準キー32が備えられている。この基準キー32は台座31の左右方向中央の少なくとも上下方向の両端部に設けられた凸状の部材であり、第1治具J1の左右方向中心線に沿って裏面に設けられている位置決め用の溝321が嵌合することにより、第1治具J1の芯出しユニット30に対する左右方向の位置決めを行なう。
【0044】
また、芯出しユニット30の台座31の上下方向の少なくとも一方の端部の基準キー32を挟む2箇所には基準ブロック33が固定されている。この基準ブロック33は、芯出しユニット30上に第1治具J1をセットする際の上下方向の位置決めのためのものである。
【0045】
更に、芯出しユニット30の台座31の左右方向の両端部には、それぞれのワーク1Wのアーム部1L,1Rの位置決めのための、換言すればキングピン穴3L,3Rの位置決め(芯出し)のためのシーケンスブロック34が設置されている。それぞれのシーケンスブロック34は、台座31上に設置された本体341と、この本体341に台座31の中央向きに取り付けられており、且つ中央向きに往復移動する位置決め部材342とで構成されている。
【0046】
位置決め部材342は、前部が線端部に向けて開口した略V字状に形成されており、台座31上に設置されている本体341に対して左右方向に進退可能になっており、本体341に近い側から内側の所定位置へ移動することにより、各ワーク1Wのキングピン穴3R,3Lが設けられるアーム部1L, 1Rの先端部を抱え込むようにして位置決め出来るようになっている。
【0047】
なお、第1治具J1の左右方向の中央部には、各ワーク1Wを固定するための押さえクランプ35が備えられている。また、第1治具J1の左右方向の両端部寄りの位置には、各ワーク1Wのアーム部1L, 1Rを上下方向両側からクランプして固定する固定クランプ36が備えられている。
【0048】
図3は個々のワーク1Wが第1治具J1に位置決めして保持された状態を示すための模式図である。なお、図3(a) は平面図を、図3(b) は側面図をそれぞれ示している。
【0049】
各ワーク1Wは両板ばね座2L,2Rの下側の部分で台座38,38により第1治具J1上に載置されており、全体としては前述した押さえクランプ35により中央部を押さえらて第1治具J1に保持されている。また両端部のアーム部1L, 1Rは前述した固定クランプ36により両側からそれぞれ固定されている。更に前述の図2には示していないが、両アーム部1L, 1Rの先端に近いキングピン穴3R,3Lが開設されるべき部分の直近の位置の下側をびびり防止用クランプ37により支持されている。
【0050】
以上のような芯出しユニット30の使用方法は以下の通りである。まず、芯出しユニット30上に基準キー32及び基準ブロック33を利用して第1治具J1を位置決めして載置し、次に第1治具J1上のおおよその位置に5個のワーク1Wを載置する。次に、各シーケンスブロック34の位置決め部材342を本体341側からから内側へ所定の位置まで移動させることにより、各ワーク1Wの長手方向(左右方向)の位置決め、換言すれば各ワーク1Wのキングピン穴3R,3Lの芯出しが行なわれる。この状態で各固定クランプ36でそれぞれのワーク1Wのアーム部1L,1Rを両側から固定し、押さえクランプ35で各ワーク1Wの中央部分を固定し、さらにびびり防止用クランプ37により両アーム部1L, 1Rの先端のキングピン穴3R,3Lが開設されるべき位置の直近の位置を第1治具J1側からクランプして固定する。以上により、芯出しユニット30上に位置決めして載置された第1治具J1上に、5個のワーク1Wが第1治具J1に対して位置決めされた状態で保持されることになる。
【0051】
図4は上述のようにして5個のワーク1Wが位置決めされて固定された第1治具J1を治具ブロックJBに取り付けた状態を示す模式図である。但し、この図4では、板ばね座2L,2R取り付け面の加工(ボルト穴、タップ穴等の開設)及びキングピン穴3R,3Lを開設する加工が済んだ状態を示している。
【0052】
治具ブロックJBの第1治具取付板J10にその四隅に配置された第1治具クランプ23により、第1治具J1が位置決めされて固定されている。この状態では、各ワーク1Wはそれぞれの板ばね座2L,2Rの取付面が加工される面を治具ブロックJBの台座21の面と直交させた状態、換言すれば治具ブロックJBの前面に向けた状態になっている。なお、各ワーク1Wが押さえクランプ35、固定クランプ36、R,3Lが開設されるべき部分の直近の位置の下側をびびり防止用クランプ37により第1治具J1に固定されていることはいうまでもないが、図4ではそれらの図示を省略している。
【0053】
この図4に示す状態においては、各ワーク1Wのキングピン穴3R,3Lが開設されるべき位置(加工部位)は図2に示した芯出しユニット30により第1治具J1に対して位置決めされている。また、治具ブロックJBに対する第1治具J1の位置決めも第1治具クランプ23により行なわれている。更に、治具ブロックJB自体が加工機械のテーブルに対してテーブルクランプ25により位置決めされて固定されている。
【0054】
従って、この図4に示す状態において、加工機械、たとえば汎用の旋盤、より具体的には割出テーブル付NC横中ぐり旋盤の加工テーブルに治具ブロックJBをテーブルクランプ25により位置決めして固定することにより、板ばね座2L,2Rの取付面の加工とキングピン穴3R,3Lを貫通して開設する加工とを汎用の旋盤により行なうことができる。またこの際、各ワーク1Wの両端部のアーム部1L, 1Rの先端部のキングピン穴3R,3Lが開設されるべき位置の直近の部分がびびり防止用クランプ37により第1治具J1側から支持されているため、キングピン穴3R,3Lを開設するための機械加工中にアーム部1L, 1Rのびびりが抑制されて正確にキングピン穴3R,3Lを開設することが可能になる。
【0055】
図5は、上述のような第1治具J1を利用して板ばね座2L,2Rの取付面の加工とキングピン穴3R,3Lを貫通して開設する加工とが行なわれた後の各ワーク1Wを第2治具J2に保持させた状態を示す模式図である。
【0056】
第2治具J2には、ワーク1Wの板ばね座2L,2Rを所定位置にクランプする板ばね座クランプ装置50と、アーム部1L, 1Rのキングピン穴3R,3Lを所定位置にクランプするキングピン穴クランプ装置40とが所定の位置に取り付けられている。
【0057】
板ばね座クランプ装置50は、ワーク1Wを板ばね座2L,2Rを下面(上面でもよい))にして第2治具J2の所定位置に保持するためのものであり、第2治具J2上の所定位置に第2治具J2から突出する状態で固定された台座51上に各ワーク1Wの加工済みの板ばね座2L,2Rを載置し、上部からクランプ52によりクランプする構成になっている。
【0058】
また、キングピン穴クランプ装置40は、上述のようにして板ばね座クランプ装置50により第2治具J2の所定位置に保持された各ワーク1Wのキングピン穴3R,3Lそれぞれを上下両側からクランプ42, 41によりクランプする構成になっている。
【0059】
以上のような構成により、第2治具J2には本発明実施の形態では5個のワーク1Wがそれぞれ所定位置に保持される。
【0060】
図6は、前述した第1治具J1により板ばね座2L,2Rの取付面の加工とキングピン穴3R,3Lを貫通して開設する加工とが行なわれた後の各ワーク1Wが上述のような第2治具J2に保持された状態で治具ブロックJBの第2治具取付板J20にセットされた状態を示す模式図である。但し、各ワーク1Wが板ばね座クランプ装置50、キングピン穴クランプ装置40により第1治具J1に固定されていることはいうまでもないが、前述の図4に示した第1治具J1の場合と同様にそれらの図示を省略している。
【0061】
なお前述したように、lこの第2治具J2には、各ワーク1Wは板ばね座2L,2Rの取付面の加工及びキングピン穴3R,3Lを開設する加工が行なわれた面を下面(上面としてもよい)として保持されている。換言すれば、各ワーク1Wは第1治具J1にセットされていた状態とはその長手方向を軸として90度回転した状態で治具ブロックJBにセットされている。
【0062】
従ってこの図6に示す状態において、汎用の旋盤の加工テーブルに治具ブロックJBをテーブルクランプ25により位置決めして固定することにより、板ばね座2L,2Rの取付面と平行な軸長方向の穴、たとえばキングピン穴3R,3Lのコッタ(ロックピン)穴3LL、タップ穴(ショックアブソーバ用のタップを切った穴)3SL等を開設する加工を汎用の旋盤により行なうことができる。
【0063】
ところで、以上のような本発明のフロントアクスルの加工方法による全体の作業手順は以下のようになる。まず、第1治具J1にワーク1Wをセットし、この第1治具J1を治具ブロックJBにセットする。そして、治具ブロックJBにセットされた第1治具J1上の各ワーク1Wに対して必要な加工(板ばね座2L,2Rの取り付け面の加工及びキングピン穴3R,3Lの開設の加工)を行なう。第1治具J1上の全てのワーク1Wに対する加工が終了したら第1治具J1を治具ブロックJBから取り外す。
【0064】
このようにして第1治具J1上での加工が終了した各ワーク1Wを第2治具J2にセットし、第2治具J2を治具ブロックJBにセットする。そして、治具ブロックJBにセットされた第2治具J2上のワーク1Wに対して必要な加工(キングピン穴3R,3Lのコッタ(ロックピン)穴3LL、タップ穴(ショックアブソーバ用のタップを切った穴)3SL等を開設する加工)を行なう。
【0065】
一方、第1治具J1にはこの間に新たなワーク1Wをセットしておき、第2治具J2上のワーク1Wの加工が終了して第1治具J1が治具ブロックJBから取り外されたら直ちに治具ブロックJBに第1治具J1をセットする。以降は、上述の作業手順を連続的に反復する。
【0066】
なお、治具ブロックJBの両側に加工機械を設置しておくことにより、治具ブロックJBに同時に第1治具J1と第2治具J2とをセットして両方に対して同時に加工を行なうようにしてもよい。
【0067】
以上のように、第1治具J1に各ワーク1Wをセットした状態での板ばね座2L,2Rの取付面の加工とキングピン穴3R,3Lを貫通して開設する加工と、第2治具J2に各ワーク1Wをセットした状態での板ばね座2L,2Rの取付面と平行な軸長方向の穴、たとえばキングピン穴3R,3Lのコッタ穴等を貫通して開設する加工との2段階の加工工程を、従来のような専用の加工機械ではなく汎用の旋盤を使用して行なうことにより、ワーク1Wからフロントアクスルを加工して完成させることが可能になる。
【0068】
なお、本発明のフロントアクスルの製造方法は、その途中の工程において、上述したような本発明のフロントアクスルの加工方法を含むものであり、フロントアクスルの製造工程全体を効率化させることが可能になる。
【0069】
また、本発明のフロントアクスルの製造方法は、その途中の工程における上述したような本発明のフロントアクスルの加工方法の実施に際して、上述のような本発明のフロントアクスルの加工用の位置決め装置を使用するものであり、フロントアクスルの製造工程全体を効率化させることが可能になる。
【0070】
更に、本発明のフロントアクスルの製造方法は、その途中の工程における上述したような本発明のフロントアクスルの加工方法の実施に際して、上述のような本発明のフロントアクスルの加工用の治具装置を使用するものであり、フロントアクスルの製造工程全体を効率化させることが可能になる。
【0071】
【発明の効果】
以上に詳述したように本発明のフロントアクスルの加工方法によれば、従来は(1)板ばね座の取り付け面を形成する加工、(2)板ばね座の面に平行にフロントアクスルを貫通する種々の穴を開設する加工、(3)キングピン穴を開設する加工、の3段階の工程が必要であったが、上述の(1)及び(3)の加工を1段階で行なうことが可能になるので、加工工程の簡素化が実現し、これによって生産効率を向上させることが可能になると共にコストを削減し得るという優れた効果を奏する。
【0072】
また、上述の(3)のキングピン穴を開設する加工に際しても、キングピン穴が開設されるべきフロントアクスルの両端のアーム部の先端部が上方へ湾曲しているが、この部分を確実に固定して加工することが可能になるため、いわゆるびびりの発生を防止することが出来る。
【0073】
また本発明のフロントアクスルの加工用の位置決め装置、及びフロントアクスルの加工用の治具装置によれば、上述のような本発明のフロントアクスルの加工方法を容易に実現することが可能になるという優れた効果を奏する。
【0074】
更に、本発明のフロントアクスルの製造方法によれば、その工程の途中に上述のような本発明のフロントアクスルの加工方法を含むため、加工工程の簡素化が実現し、これによって生産効率を向上させることが可能になると共にコストを削減し得るという優れた効果を奏する。更に、上述の(3)のキングピン穴を開設する加工に際しても、キングピン穴が開設されるべきフロントアクスルの両端のアーム部の先端部が上方へ湾曲しているが、この部分を確実に固定して加工することが可能になるため、いわゆるびびりの発生を防止することが出来る。
【0075】
また更に本発明のフロントアクスルの製造方法によれば、その工程の途中の上述のような本発明のフロントアクスルの加工方法を容易に実現することが可能になるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフロントアクスルの加工方法に使用される治具ブロックの全体の構成例を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明のフロントアクスルの加工用の位置決め装置である芯出しユニットの全体の構成例を示す模式的斜視図である。
【図3】個々のワークが第1治具に位置決めして保持された状態を示すための模式図である。
【図4】5個のワークが位置決めされて固定された第1治具を本発明の治具ブロックに取り付けた状態を示す模式図である。
【図5】第1治具を利用して板ばね座の取付面の加工とキングピン穴を貫通して開設する加工とが行なわれた後の各ワークを第2治具に保持させた状態を示す模式図である。
【図6】ワークを保持した第2治具を治具ブロックにセットした状態を示す模式図である。
【図7】一般的なフロントアクスルの構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 フロントアクスル
1L,1R アーム部
2L,2R 板ばね座
3R,3L キングピン穴
3LL,3LR コッタ穴
30 芯出しユニット
23 第1治具クランプ
32 基準キー
321 位置決め用の溝
34 シーケンスブロック
36 固定クランプ
37 びびり防止用クランプ

Claims (10)

  1. フロントアクスルの形状に成形された加工対象材の一側面に板ばね座取付面を形成する加工と、前記加工対象材の両端部に前記一側面側から他側面側へ貫通するキングピン穴を開設する加工と、前記加工対象材に前記一側面と交差する方向から貫通穴を開設する加工とを行なうフロントアクスルの加工方法であって、
    前記加工対象材を、前記一側面を加工機械による加工面となる方向に向けて、前記キングピン穴を開設する位置を芯出しすることが可能な第1の治具に保持させる第1の準備工程と、
    前記第1の治具に保持された加工対象材に、板ばね座取付面を形成する加工及びキングピン穴を開設する加工を前記加工機械により行なう第1の加工工程と、
    前記加工対象材を、前記一側面を前記加工機械による加工面と交差する方向に向けて、前記貫通穴を開設する位置を芯出しすることが可能な第2の治具に保持させる第2の準備工程と、
    前記第2の治具に保持された加工対象材に、前記貫通穴を開設する加工を前記加工機械により行なう第2の加工工程と
    を含むことを特徴とするフロントアクスルの加工方法。
  2. 前記第1の準備工程による加工対象材の保持に際して、前記加工対象材の両端部を、前記一側面側と他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動を制限する手段により前記第1の治具に保持させることを特徴とする請求項1に記載のフロントアクスルの加工方法。
  3. 前記第1の治具と前記第2の治具とを一体的に取り付けた治具装置を使用し、前記第1及び第2の加工工程を連続的に行なうことを特徴とする請求項1に記載のフロントアクスルの加工方法。
  4. フロントアクスルの形状に成形された加工対象材の一側面に板ばね座取付面を形成する加工と、前記加工対象材の両端部に前記一側面側から他側面側へ貫通するキングピン穴を開設する加工と、前記加工対象材に前記一側面と交差する方向から貫通穴を開設する加工とを行なうために前記加工対象材を治具上の所定の位置に位置決めするための位置決め装置であって、
    前記治具を所定の位置に位置決めして載置する台座と、
    該台座上に設置されており、前記治具上の加工対象材を前記台座に対して所定位置に位置決めする位置決め手段と
    を備えたことを特徴とするフロントアクスルの加工用の位置決め装置。
  5. 前記治具は、板ばね座取付面が形成される一側面が加工機械による加工面となる方向に向けて保持する第1の治具を含み、前記加工対象材の両端部の、前記一側面側と他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動を制限する手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載のフロントアクスルの加工用の位置決め装置。
  6. フロントアクスルの形状に成形された加工対象材の一側面に板ばね座取付面を形成する加工と、前記加工対象材の両端部に前記一側面側から他側面側へ貫通するキングピン穴を開設する加工とを行なうために前記複数の加工対象材を保持する第1の治具と、
    前記加工対象材に前記一側面と交差する方向から貫通穴を開設する加工を行なうために前記複数の加工対象材を保持する第2の治具と
    を備え、
    前記第1の治具は、該第1の治具が位置決めされて載置される台座に対して前記第1の治具上で所定位置に位置決めされた前記加工対象材の両端部を、前記一側面側と前記他側面側とを結ぶ方向及びこの方向と交差する方向への移動を制限する手段を有することを特徴とするフロントアクスルの加工用の治具装置。
  7. 前記第1の治具及び前記第2の治具を着脱可能に固定する手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載のフロントアクスルの加工用の治具装置。
  8. 請求項1乃至3のいずれかに記載のフロントアクスルの加工方法を含むことを特徴とするフロントアクスルの製造方法。
  9. 請求項4又は5に記載のフロントアクスルの加工用の位置決め装置を使用することを特徴とするフロントアクスルの製造方法。
  10. 請求項6又は7に記載のフロントアクスルの加工用の治具装置を使用することを特徴とするフロントアクスルの製造方法。
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