JP2004168045A - インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 インク吐出動作の安定性と印刷速度の高速化の両立を図る。
【解決手段】 ノズル14と圧力発生室16とからなる流路がインク充填状態にあるときの流路内のインクの慣性をM、流路内のインクの粘性抵抗をR、ノズルにおけるインクメニスカスの復帰力をKとしたとき、ルート(K/M)をωとし、(R/2M)をγとすると、0.2≦γ2/ω2≦1.0の関係を満たすように、インクの物性及び流路の形状を設定する。
【選択図】 図1
【解決手段】 ノズル14と圧力発生室16とからなる流路がインク充填状態にあるときの流路内のインクの慣性をM、流路内のインクの粘性抵抗をR、ノズルにおけるインクメニスカスの復帰力をKとしたとき、ルート(K/M)をωとし、(R/2M)をγとすると、0.2≦γ2/ω2≦1.0の関係を満たすように、インクの物性及び流路の形状を設定する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、オンディマインド方式のインクジェットヘッド及びこのヘッドを搭載したインクジェット記録装置に関する。
インクが充填された圧力発生室内の圧力を圧電部材への電圧印加によって変化させて、該圧力発生室に連通したノズルの開口からインク滴を吐出させるオンディマンド方式のインクジェットヘッドが知られている。しかしながら、この方式は,インク吐出動作の安定性を高めるとともに印刷速度の高速化を図ることは困難であった。ここで、吐出動作の安定性とは、吐出するインク滴の速度や体積の変動が少ない性質のことである。この吐出動作の安定性を確保するためには、インク吐出動作の開始時に、ノズル内のインクのメニスカス位置の変動を少なくし,メニスカス位置をノズルの開口付近に安定させることが要求される。
一方、印刷速度を速めるには、インクが吐出する周波数を高めればよい。インク吐出の駆動周波数を高めるためには、インクの吐出動作によって後退したメニスカスが元の位置に復帰する速度、すなわちメニスカス復帰速度を向上させる必要がある。しかし、メニスカス復帰速度を向上させると、メニスカスの復帰に伴うインクの流れの慣性によって、メニスカスがノズルの開口よりオーバーシュートしてしまう。このため、メニスカス位置がノズルの開口付近で不安定になりやすい。メニスカス位置が不安定な状態でインク吐出動作が開始されると、吐出速度や吐出体積がばらついたり、場合によっては不吐出現象が発生したりして、吐出動作の安定性が損なわれやすい。このように、メニスカス位置の安定化と、メニスカス復帰速度の向上を互いに両立させることは難しかった。
このような問題を解決するべく、従来、インクの物性とインク流路の形状との関係を数値的に規定し、目標とする印字速度を実現させるために最大の駆動周波数を10kHzとした場合に、環境温度が変化してもメニスカス位置の安定化とメニスカス復帰速度の向上を両立させるようにした技術が特許文献に開示されている。(例えば、特許文献1参照)
しかし、この特許文献に開示された従来技術においては、目標とする最大の駆動周波数を10kHzよりさらに高めようとした場合、メニスカスのオーバーシュートが大きく発生することが、本発明者のシミュレーションによって判明した。
しかし、この特許文献に開示された従来技術においては、目標とする最大の駆動周波数を10kHzよりさらに高めようとした場合、メニスカスのオーバーシュートが大きく発生することが、本発明者のシミュレーションによって判明した。
すなわち本発明者は、この従来技術に示されている数値範囲内の特性値として下記の数値を用いて、1滴のインク吐出させる動作のシミュレーションを行なった。
イナータンスの総和mT=9.8×107[kg/m4]
音響抵抗の総和rT=6.7×1012[Ns/m5]
インクの表面張力=30[mN/m]
このシミュレーションにより、インク吐出動作終了後のメニスカス位置の変動を求めると、図12の実線Pで示す結果が得られた。
音響抵抗の総和rT=6.7×1012[Ns/m5]
インクの表面張力=30[mN/m]
このシミュレーションにより、インク吐出動作終了後のメニスカス位置の変動を求めると、図12の実線Pで示す結果が得られた。
なお、図12の縦軸のメニスカス体積位置v(t)とは、メニスカスの位置を体積で表記したものである。なお、図13(a)に示すように、インク1のメニスカスがノズル2の開口2aより後退している場合は、ノズル2の開口2aより内部の空気の体積Viをメニスカス体積位置の負の値とする。また、同図(b)に示すように、インク1のメニスカスがノズル2の開口2aより前進している場合は、ノズル2の開口2aより突出している分のインク体積Voをメニスカス体積位置の正の値としたものである。
図12において、点線S1,S2は、次のインク吐出動作の開始時に動作の安定性に支障をきたさないメニスカス体積位置v(t)の許容範囲を示したものである。通常に用いられる印刷条件の場合、吐出体積に対して±5%以内であれば吐出安定性が得られる。ここで、この±5%の根拠は、当業者によって、画質が衰えない許容限界と見なされている数値範囲である。
したがって、図12から明らかなように、この従来技術に示されたインクジェットヘッドは、インク吐出後のメニスカスのオーバーシュートが大きく、メニスカスの変動が規定の許容範囲内に収まるまでの時間、すなわちメニスカス復帰時間が長い。このため、安定な吐出動作を確保しつつ、インクを吐出させるための駆動周波数を向上させることは困難である。
ところで、階調印刷を行なう技術として、複数の小インク滴を連続的に吐出させる技術が従来から知られている(例えば、特許文献2参照)。そこで本発明者は、この技術を先に述べた従来技術のインクジェットヘッドに適用し、階調印刷を行う場合における最大ドット径に相当する7滴のインク滴を連続的に吐出した場合の吐出動作のシミュレーションも行ない、インク吐出動作終了後のメニスカス位置の変動を求めた。その結果、図12の二点鎖線Qで示す結果が得られた。
図12に示されたように、複数の小インク滴を連続的に吐出させた場合には、1滴のみインクを吐出させた場合よりメニスカス復帰速度が大きくなるため、インク吐出後のメニスカスのオーバーシュートは1滴のみ吐出の場合よりさらに顕著である。したがって、複数の小インク滴を連続的に吐出させて階調印刷を行なう場合、メニスカス復帰時間の短縮はさらに困難である。
特開2000―117972号公報
特開2002―19103号公報
このように、従来のこの種のインクジェットヘッドにおいては、インク吐出動作の安定性を高めるとともに印刷速度の高速化、すなわち高い駆動周波数でインクを吐出させることが困難であった。
本発明の目的は、インク吐出動作の安定性を高めるととともに高い駆動周波数でインクを吐出させることができるインクジェットヘッド及びこのヘッドを搭載したインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決しその目的を達成するために、インクを吐出させるためのノズルとこのノズルに連通する圧力発生室とからなる複数の流路と、各流路にインクを供給する共通インク室と、各流路の圧力発生室内に充填されたインクに圧力変化を与えてノズルからインク滴を吐出させる圧力発生手段とを設けたインクジェットヘッドにおいて、流路がインク充填状態にあるときの流路内のインクの慣性をM、流路内のインクの粘性抵抗をR、ノズルにおけるインクメニスカスの復帰力をKとしたとき、ルート(K/M)をωとし、(R/2M)をγとすると、0.2≦γ2/ω2≦1.0の関係を満たすように、インクの物性及び流路の形状を設定したものである。
以上詳述したように本発明によれば、インク吐出動作の安定性を高めるととともに高い駆動周波数でインクを吐出させることができ、印刷速度の高速化を図ることができるインクジェットヘッド及びこのヘッドを搭載したインクジェット記録装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。はじめに、第1の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
図1はインクジェットヘッド10の縦断面図、図2は図1中I―Iの矢視断面図である。このインクジェットヘッド10は、図示しない基板上に圧電部材からなり圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータ11が固定される。このアクチュエータ11の上に振動板12が取付けられる。この振動板12の上に天板13が固定されている。また、天板13とアクチュエータ11との前端に、インクを吐出させるための複数のノズル14を形成したノズルプレート15が貼り付けられている。
ノズル14の詳細を図3に示す。図示するように、ノズル14は、板厚Lnのノズルプレート15の前面側に直径Doの開口を、後面側に直径Di(Di>Do)の開口をそれぞれ形成し、両開口間を連通して形成されている。
天板13には、ノズルプレート15に形成された各ノズル14にそれぞれ対応して、長さLc,幅Wc,高さHで示される複数の圧力発生室16が形成されている。各圧力発生室16の先端はそれに対応する各ノズル14の後端に連通している。また天板13には、各圧力発生室16にインクを供給するための共通インク室17が形成されており、各圧力発生室16の後端は共通インク室17と連通している。共通インク室17には、インク補給口18が形成されている。このインク補給口18を通って図示しないインク補給手段によりインクが供給されるようになっている。
前記アクチュエータ11には、電極19a,19bが設けられている。この電極19a,19bに印加される電圧によってアクチュエータ11が伸縮する。アクチュエータ11が伸縮すると、振動板12を介して圧力発生室16の容積が拡張、収縮変化する。圧力室16の容積が拡張した後に収縮する変化すると、圧力発生室16内に充填されているインクの圧力が変化してノズル14からインク滴が吐出される。ここに、ノズル14とそれに対応する圧力発生室16とは、共通インク室17から供給されるインクの流路となっている。
図4はかかる構成のインクジェットヘッド10を搭載したインクジェット記録装置20の要部構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置20は、各部を制御するプリンタコントローラ21と、このプリンタコントローラ21からの印刷データを記憶する画像メモリ22と、前記プリンタコントローラ21によって制御され、画像メモリ22に記憶された印刷データを読み出してヘッド駆動回路24に転送する印刷データ転送回路23とを備えている。ヘッド駆動回路24は、印刷データ転送回路23から転送される印刷データに基づいてインクジェットヘッド10を駆動するようになっている。ヘッド駆動回路24がインクジェットヘッド10を駆動するときの駆動波形は、駆動波形制御回路26によって制御される。駆動波形制御回路26は、プリンタコントローラ21によって制御されるようになっている。また、このプリンタコントローラ21によって、記録媒体(図示しない)の搬送制御がされる。
第1の実施の形態において、インクジェットヘッド10に印加される駆動波形を図5に示す。この駆動波形は、インクジェットヘッド10の圧力発生室16を拡張させる拡張パルス31と、圧力発生室16を収縮させる収縮パルス32とからなり、インクジェットヘッド10の電極19a,19bに印加されることによって、1個のインク滴の吐出動作が行なわれるようになっている。
ここで、拡張パルス31の中心と収縮パルス32の中心との時間差は、インクの主音響共振周期Tcに合わせられている。また、拡張パルス31のパルス幅と収縮パルス32のパルス幅との比は、音響的な残留振動がほとんど相殺されるように調整されている。こうすることによって、インク吐出動作後のメニスカス位置の変動が残留圧力振動に乱されることがなくなり、メニスカス位置の変動は、インクの表面張力による比較的低速度の運動だけとなる。
このような構成のインクジェット記録装置に搭載されたインクジェットヘッド10において、インク滴が吐出された後、メニスカスが復帰するまでのメニスカスの運動について、以下に説明する。
ここで、メニスカス体積位置とは、図13(a),(b)で説明したように、インク1のメニスカスがノズル2の開口2aより後退している場合はノズル2の開口2aより内部の空気の体積Viをメニスカス体積位置の負の値とし、インク1のメニスカスがノズル2の開口2aより前進している場合はノズル2の開口2aより突出している分のインク体積Voをメニスカス体積位置の正の値としている。
式(1)において、Mは流路内のインクの慣性を示す。Mの値は、ρをインクの密度、Lcを圧力発生室16の長さ、Lnをノズル14の長さ、S(x)を位置xにおける流路の断面積とすると、次式(2)で与えられる。
インクジェットヘッド10において、式(2)及び式(8)の右辺を具体的に計算する。先ず、位置xが0からLcの範囲、すなわち流路の圧力発生室16の部分では、式(2)の右辺は次式(9)で表わされ、式(8)の右辺は次式(10)で表わされる。
この式(18)により、γ2−ω2<0の場合、メニスカス体積位置v(t)は振動する解が得られるので、メニスカスがオーバーシュートすることがわかる。
γ2−ω2<0の一例として、γ2/ω2=0.1とした場合において、1滴のインクを吐出させる動作のシミュレーションを行ったときのインク吐出動作終了後のメニスカス位置の変動を求めると、図6(a)の実線P1で示す結果が得られた。また、γ2−ω2<0の他の例として、γ2/ω2=0.5とした場合において、同様のシミュレーションを行ったときのインク吐出動作終了後のメニスカス位置の変動を求めると、図6(b)の実線P2で示す結果が得られた。また、γ2=ω2、つまりγ2/ω2=1.0とした場合において、同様のシミュレーションを行ったときのインク吐出動作終了後のメニスカス位置の変動を求めると、図6(c)の実線P3で示す結果が得られた。さらに、γ2−ω2>0の一例として、γ2/ω2=2.0とした場合において、同様のシミュレーションを行ったときのインク吐出動作終了後のメニスカス位置の変動を求めると、図6(d)の実線P4で示す結果が得られた。
なお、図6中の点線S1,S2は、インク吐出動作開始時に動作の安定性に支障をきたさないメニスカス変動の許容範囲を示したものであり、その範囲は吐出体積に対して±5%以下としている。これは、その許容範囲として、吐出体積に対して±5%以内であれば、通常に用いられる印刷条件で吐出安定性が得られるからである。
図6(d)に示されるように、γ2−ω2>0、すなわちγ2/ω2>1の場合には、メニスカス体積位置v(t)は過減衰状態となり、メニスカスのオーバーシュートはないものの、メニスカスの復帰速度が遅い。また、図6(a),(b)に示されるように、γ2−ω2<0、すなわちγ2/ω2<1の場合は、メニスカス体積位置v(t)は減衰振動状態となり、メニスカスの復帰速度は速いものの、メニスカスはオーバーシュートする。これに対して、γ2=ω2、すなわちγ2/ω2=1の場合は、メニスカス体積位置v(t)は臨界減衰状態となり、メニスカスがオーバーシュートしない条件では、メニスカスの復帰速度が最速になる。
したがって、γ2=ω2となるようにすれば、メニスカスのオーバーシュートが発生しない範囲でメニスカスの復帰速度を最速にできることがわかる。しかし実際には、γ2/ω2=0.5の場合のように、オーバーシュートがわずかの場合は、それを許容することができ、その方がさらにメニスカス変動が許容値に収まるまでの時間、すなわちメニスカス復帰時間を短縮できる。
そこで、図7の曲線C1のようにインクの粘度を変えることによってγ2/ω2の値を変化させ、メニスカス復帰時間を調べて見ると、図8の記号“○”で示す値を取る。この値から、第1の実施の形態では、γ2/ω2が0.4のときメニスカスの復帰時間が最短になることがわかる。
したがって、第1の実施の形態では、γ2/ω2=0.4となるべく、インク慣性M、インク粘性抵抗R及びインクメニスカス復帰力Kがそれぞれ下記の値となるようにインクの物性及び流路の形状を設定してインクジェットヘッド10を構成することによって、メニスカスの復帰時間を短縮することができる。
インク慣性M= 9.82×107kg/m4
インク粘性抵抗R=1.90×1013Ns/m5
メニスカス復帰力K=2.30×1018N/m5
その結果、インク吐出動作の安定性と駆動周波数の向上すなわち印刷速度の高速化とを両立させることができる。
インク粘性抵抗R=1.90×1013Ns/m5
メニスカス復帰力K=2.30×1018N/m5
その結果、インク吐出動作の安定性と駆動周波数の向上すなわち印刷速度の高速化とを両立させることができる。
つまり、本発明は従来では考慮されていなかったメニスカスの復帰力Kを、インク慣性Mとインク粘性抵抗Rを最適化するためのパラメータとして用いることにより,インク吐出動作の安定性と駆動周波数の向上すなわち印刷速度の高速化とを両立させることができるインクの物性及び流路の関係を導きだすことができた。
なお、上記した従来の技術において開示されている数値を用いてシュミレションを行った結果では、
インク慣性M=9.82×107kg/m4
インク粘性抵抗R=6.94×1012Ns/m5
メニスカス復帰力K=2.30×1018N/m5
が得られた。これらの数値により
γ2/ω2=0.05 が得られる。
インク慣性M=9.82×107kg/m4
インク粘性抵抗R=6.94×1012Ns/m5
メニスカス復帰力K=2.30×1018N/m5
が得られた。これらの数値により
γ2/ω2=0.05 が得られる。
この値は、インクを吐出させた場合のメニスカスの復帰時間は、図8の実施形態1の系列においてγ2/ω2=0.05の場合に相当する。
従って、図8からわかるように、本発明において、γ2/ω2を0.2〜1.0と設定した範囲は、従来技術より大幅にメニスカス復帰時間を短縮できることが明らかであり、その結果、吐出動作の安定性を確保しつつ印刷速度を向上させることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態において、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置の構造は第1の実施の形態と同一であるので、図1〜図4を用いてその説明を省略する。
第2の実施の形態においては、駆動信号発生手段である駆動波形制御回路26の制御によってインクジェットヘッド10に印加される駆動波形を図9に示す波形とする。この波形は、第1の実施の形態で用いた駆動波形を7つ連続的につなげたものである。つまり、拡張パルス31-1〜31-7は圧力発生室16を拡張させ、収縮パルス32-1〜32-7は圧力発生室16を収縮させる。この駆動波形がインクジェットヘッド10の電極19a,19bに印加されることによって、7個の小インク滴が連続的にノズル14から吐出動作され、記録媒体上の同一画素内に付着される。このときの小インク滴の数を変化させて、記録媒体上の同一画素内に付着するインクの量を変化させることによって、階調印刷を行なうことができる。
この第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様なシミュレーションを行ない、図7の曲線C1のようにインクの粘度を変えることによってγ2/ω2の値を変化させ、メニスカス復帰時間を調べて見ると、図8の記号“□”で示す値を取る。この値から、第2の実施の形態では、γ2/ω2が0.5のときメニスカスの復帰時間が最短になることがわかる。
したがって、第2の実施の形態では、γ2/ω2=0.5となるべく、インク慣性M、インク粘性抵抗R及びインクメニスカス復帰力Kがそれぞれ下記の値となるようにインクの物性及び流路の形状を設定してインクジェットヘッド10を構成することによってメニスカスの復帰時間を短縮でき、インク吐出動作の安定性と印刷速度の高速化の両立を図ることができる。
インク慣性M= 9.82×107kg/m4
インク粘性抵抗R=2.13×1013Ns/m5
メニスカス復帰力K=2.30×1018N/m5
このように、ノズル14から複数のインク滴を連続的に吐出させる第2の実施の形態においては、1滴のインクを吐出させる第1の実施の形態よりメニスカスの復帰時間を短縮することができる。これは、連続的に複数のインク滴を吐出させる場合、メニスカスの復帰速度が1滴のみの吐出の場合より大きくなる性質があるためである。従来技術ではメニスカス復帰速度が大きすぎてオーバーシュートが大きくなり、メニスカス復帰時間は1滴のみ吐出の場合より長かったのであるが、本実施の形態によりメニスカスのオーバーシュートが抑制されたことで、メニスカス復帰時間が1滴のみ吐出の場合より短くなるという相乗効果が得られた。
インク粘性抵抗R=2.13×1013Ns/m5
メニスカス復帰力K=2.30×1018N/m5
このように、ノズル14から複数のインク滴を連続的に吐出させる第2の実施の形態においては、1滴のインクを吐出させる第1の実施の形態よりメニスカスの復帰時間を短縮することができる。これは、連続的に複数のインク滴を吐出させる場合、メニスカスの復帰速度が1滴のみの吐出の場合より大きくなる性質があるためである。従来技術ではメニスカス復帰速度が大きすぎてオーバーシュートが大きくなり、メニスカス復帰時間は1滴のみ吐出の場合より長かったのであるが、本実施の形態によりメニスカスのオーバーシュートが抑制されたことで、メニスカス復帰時間が1滴のみ吐出の場合より短くなるという相乗効果が得られた。
なお、上記した従来の技術において開示されている数値を用いてシュミレションを行ったった結果では、第1の実施例の説明でも述べたように、γ2/ω2=0.05 が得られる。このインクジェットヘッドで複数のインク滴を連続的に吐出させた場合のメニスカスの復帰時間は、図8の実施形態2の系列においてγ2/ω2=0.05の場合となる。
従って、図8からわかるように、本発明において、γ2/ω2を0.2〜1.0と設定した範囲は、従来技術より大幅にメニスカス復帰時間を短縮できることが明らかであり、その結果、吐出動作の安定性を確保しつつ印刷速度を向上させることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図10は第3の実施の形態におけるインクジェットヘッド100の縦断面図であり、図1と同一機能を有する部分には同一符号を付している。なお、このインクジェットヘッド100の図10中I−I矢視断面図は第1及び第2の実施の形態のインクジェットヘッド10と同じなので、図2を用いてその説明を省略する。
インクジェットヘッド100は、図示しない基板上に圧電部材からなるアクチュエータ11が固定され、アクチュエータ11の上に振動板12が取付けられ、振動板12の上に天板13が固定されている。また、天板13とアクチュエータ11との前端に、インクを吐出させるための複数のノズル14を形成したノズルプレート15が貼り付けられている。天板13には、ノズルプレート15に形成された各ノズル14にそれぞれ対応して複数の圧力発生室16が形成されており、各圧力発生室16の先端とそれに対応する各ノズル14の後端とが連通している。
天板13とアクチュエータ11との後端には、オリフィスプレート41を介して側板42が固定されている。オリフィスプレート41には、各圧力発生室16と対応する位置に小孔を有するオリフィス43が穿設されている。オリフィス43の詳細を図11に示す。図示するように、オリフィス43は、板厚Lmのオリフィスプレートの後面側から前面側に一定の直径Dmで貫通するように形成されている。
側板42には、各圧力発生室16にインクを供給するための共通インク室17が形成されており、各圧力発生室16の後端はそれぞれオリフィス43を介して共通インク室17と連通している。共通インク室17には、インク補給口18が形成されており、このインク補給口18を通って図示しないインク補給手段によりインクが供給されるようになっている。ここに、オリフィス43は、共通インク室17から供給されるインク流路の一部を形成し、流体抵抗体として作用する。
インクジェットヘッド100を搭載したインクジェット記録装置20の要部構成は、図4と同じである。この第3の実施の形態においては、第2の実施の形態と同様に、図9に示す駆動波形をインクジェットヘッド100に印加して、7個の小インク滴を連続的にノズル14から吐出動作させて、階調印刷を行なうものとする。
この場合、インクの慣性Mとインクの粘性抵抗Rを計算する際に、オリフィス43による抵抗成分も加味する必要がある。すなわち、オリフィス43の長さをLmとすると、インクの慣性Mは、前記式(2)の代わりに次式(19)で与えられる。
インクジェットヘッド100において、式(19)及び式(20)の右辺を具体的に計算する。先ず、位置xが0からLmの範囲、すなわち流路のオリフィス43の部分では、オリフィス43の穴径をDmとすると、式(19)の右辺は次式(21)で表わされ、式(20)の右辺は次式(22)で表わされる。
また、位置xがLmからLm+Lcの範囲、すなわち流路の圧力発生室16の部分と、Lm+LcからLm+Lc+Lnの範囲、すなわち流路のノズル14の部分では、第1の実施の形態と同じなので、式(19)(x=Lm〜Lm+Lc+Ln)の右辺はそれぞれ前記式(9)及び式(11)で表わされ、式(20)(x=Lm〜Lm+Lc+Ln)の右辺はそれぞれ前記式(10)及び式(12)で表わされる。
なお、インクメニスカスの復帰力Kは、前記式(7)を用いることができる。
この第3の実施の形態においても、第1及び第2の実施の形態と同様なシミュレーションを行ない、図7の曲線C2のようにインクの粘度を変えることによってγ2/ω2の値を変化させ、メニスカス復帰時間を調べて見ると、図8の記号“△”で示す値を取る。この値から、第3の実施の形態では、γ2/ω2が0.5のときメニスカスの復帰時間が最短になることがわかる。
したがって、第3の実施の形態では、γ2/ω2=0.5となるべく、インク慣性M、インク粘性抵抗R及びインクメニスカス復帰力Kがそれぞれ下記の値となるようにインクの物性及び流路の形状を設定してインクジェットヘッド100を構成することによってメニスカスの復帰時間をさらに短縮でき、インク吐出動作の安定性と印刷速度の高速化の両立を図ることができる。
インク慣性M= 1.13×108kg/m4
インク粘性抵抗R=2.28×1013Ns/m5
メニスカス復帰力K=2.30×1018N/m5
このように、共通インク室17と圧力発生室16とを連通する流路に流体抵抗体として作用するオリフィス43を介在させた第3の実施の形態においては、第1及び第2の各実施の形態よりメニスカスの復帰時間を短縮することができる。これは、オリフィス43の作用によりインク慣性Mをあまり大きくしなくてもインクの粘性抵抗Rを大きくすることができ、比較的容易にγの値を大きくすることができるためである。したがって、オリフィス43が設けられていない第1及び第2の実施の形態より、低粘度のインクで最適なγ2/ω2を得ることができる。
インク粘性抵抗R=2.28×1013Ns/m5
メニスカス復帰力K=2.30×1018N/m5
このように、共通インク室17と圧力発生室16とを連通する流路に流体抵抗体として作用するオリフィス43を介在させた第3の実施の形態においては、第1及び第2の各実施の形態よりメニスカスの復帰時間を短縮することができる。これは、オリフィス43の作用によりインク慣性Mをあまり大きくしなくてもインクの粘性抵抗Rを大きくすることができ、比較的容易にγの値を大きくすることができるためである。したがって、オリフィス43が設けられていない第1及び第2の実施の形態より、低粘度のインクで最適なγ2/ω2を得ることができる。
一般に、インク粘度が高いと、インク吐出時にインクミストが発生しやすくなる傾向がある。インクミストの発生は、ノズル14の周囲や記録媒体を汚すので、望ましくない。したがって、第3の実施の形態のように流体抵抗体を設けることによって、印刷時にインクミストの発生を低減させることができる。
なお、前記第1〜第3の各実施の形態では、それぞれメニスカスの復帰時間が最短となるようにγ2/ω2を選択したが、インクジェットヘッド10,100が動作する環境温度の変化によって、インクの粘度が変化し、γ2/ω2が変動する場合がある。あるいは、インクジェットヘッド10,100の設計上の都合から、必ずしもメニスカス復帰時間を最小化するγ2/ω2を選択できない場合もあり得る。そのような場合でも、図8に示されるように、γ2/ω2が0.2〜1.0の範囲内であればメニスカス復帰時間を短縮することができ、インクの吐出安定性と印刷速度の高速化を両立することができる。
また、各実施の形態では、インク慣性Mとインク粘性抵抗Rの算出に比較的簡単な数式を用いたが、インク流路の形状によっては、これらの値の算出が難しい場合がある。その場合でも市販の数値流体解析プログラムを用いることによって、インク慣性Mやインク粘性抵抗Rを求めることができる。
数値流体解析プログラムを用いてインク慣性Mやインク粘性抵抗Rを求める方法は、例えば、Sung-Cheon Jung et al. がA Study on the Improvement of the Performance in Ink Jet Head ( Final Program and Proceedings of IS & T's NIP15: International Conference on Digital Printing Technologies, 1999 )の中で開示している。
また、各実施の形態では、流体抵抗体として小孔を有するオリフィス43を用いたが、そのほかに共通インク室17から各圧力発生室16にインクが流入する部位に網状の物、多孔質の物など、様々な物を流体抵抗体として適用することができる。
11…アクチュエータ、12…振動板、14…ノズル
16…圧力発生室17…共通インク室19a…電極
21…プリンタコントローラ
25…駆動波形制御回路
26…ヘッド駆動回路
43…オリフィス
16…圧力発生室17…共通インク室19a…電極
21…プリンタコントローラ
25…駆動波形制御回路
26…ヘッド駆動回路
43…オリフィス
Claims (3)
- インクを吐出させるためのノズルとこのノズルに連通する圧力発生室とからなる複数の流路と、前記各流路にインクを供給する共通インク室と、前記各流路の圧力発生室内に充填されたインクに圧力変化を与えて前記ノズルからインク滴を吐出させる圧力発生手段とを設けたインクジェットヘッドにおいて、
前記流路がインク充填状態にあるときの前記流路内のインクの慣性をM、前記流路内のインクの粘性抵抗をR、前記ノズルにおけるインクメニスカスの復帰力をKとしたとき、ルート(K/M)をωとし、(R/2M)をγとすると、0.2≦γ2/ω2≦1.0の関係を満たす物性の前記インク及び前記流路を有したことを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記流路は、前記共通インク室と圧力発生室との間に流体抵抗体を介在させたものであることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1または請求項2に記載のインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置であって、
前記ノズルから複数のインク滴を連続的に吐出させる駆動信号発生手段を具備したことを特徴とするインクジェット記録装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003369260A JP2004168045A (ja) | 2002-11-01 | 2003-10-29 | インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 |
Applications Claiming Priority (2)
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---|---|---|---|
JP2002320086 | 2002-11-01 | ||
JP2003369260A JP2004168045A (ja) | 2002-11-01 | 2003-10-29 | インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004168045A true JP2004168045A (ja) | 2004-06-17 |
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ID=32715929
Family Applications (1)
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Country Status (1)
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JP (1) | JP2004168045A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006240177A (ja) * | 2005-03-04 | 2006-09-14 | Canon Inc | インクジェット記録装置 |
-
2003
- 2003-10-29 JP JP2003369260A patent/JP2004168045A/ja active Pending
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