JP2004167005A - カテーテル用インナー及びカテーテル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】細長部12A、アウターチューブの基端部の開口を閉鎖する栓体部12B、及びトンネラーが連結される連結部が形成された頭部12Cを備えたインナーをアウターチューブ内に挿入してカテーテルを構成する。インナーを引き抜くことによりカテーテル内部の析出物を容易に除去することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカテーテル用インナー及びカテーテルに係り、より詳しくは、腹膜灌流療法、特に持続携行式腹膜灌流(CAPD)療法に好適なカテーテル及びこのカテーテルに使用されるカテーテル用インナーに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
CAPDでは、腎不全患者の腹腔内に直径4〜6mmのシリコーンゴム製のカテーテルを植込み、このカテーテルを通して腹腔の中に透析液を注入し、腹腔に滞留した透析液を数時間後にカテーテルを通して排液することで透析療法を行う。
【0003】
このカテーテルの先端部には、多数の排液用管通孔である側孔が先端部の側壁を貫通するように穿設されており、カテーテルは、先端部が腹腔のダグラス窩に位置するように体内に留置される。
【0004】
通常、カテーテルは、腹部を開腹した後、縫合用のナイロン糸または吸収糸を腹膜にかけ、開腹部から腹腔内に挿入されて留置される。腹腔内に留置されたカテーテルは、カテーテルの腹腔内に留置された部分が移動しないように、腹膜や筋膜等に縫合して固定される。縫合固定時には、カフ部分で縫合用の糸を締め、カフを腹膜や筋膜に縫合して固定する。
【0005】
このカテーテル留置方法では、カテーテルの基端部が腹壁から外部に突出しているため、カテーテルの腹壁からの突出部周辺にダウングロウスが生じることがあり、このダウングロウスから細菌が侵入して傍カテーテル感染の原因の1つとなっている。
【0006】
一方、カテーテル留置時に、カテーテルの基端部を腹壁から外部に突出させずに、カテーテルの全長を長期間に亘って腹壁に埋設しておいて、この期間経過後にカテーテルの基端部を外部に取り出す方法(いわゆる、SMAP法)も知られている。この方法によれば、カテーテルの外周に繊維芽細胞が成長してカテーテルと生体との癒着が強くなった後に、カテーテルの基端部が腹壁の外部に取り出されるため、カテーテル外部からの細菌の侵入を防止することができる。
【0007】
しかしながら、長期間に亘ってカテーテルの全長を腹壁に埋設しておくため、カテーテルの先端部に穿設された多数の側孔及び先端部の開口から腹腔内容物がカテーテル内部に侵入し、カテーテル内部にフィブリンが析出することがある。このフィブリンの析出量が多い場合には、カテーテルの閉塞を起こす可能性がある。
【0008】
従来、カテーテルが閉塞した場合に、カテーテルの内部の析出物を除去するための治具等は存在しなかったので、カテーテルが閉塞した場合には再手術をする必要があった。
【0009】
また、カテーテルの閉塞に対処するために、先端部分に多数の側孔が穿設された内側チューブの先端部分を外側チューブで被覆し、内側チューブの外面または外側チューブの内面に形成した溝によってバイパス通路を形成することにより、側孔が閉鎖されてもバイパス通路を介して髄液を吸い出すことができるようにしたカテーテルが知られている(例えば、特許文献1)。
【0010】
しかしながら、従来のカテーテルでは、カテーテルの先端部分を二重チューブで形成するため、製造が困難である、という問題があった。
【0011】
本発明は、カテーテルが閉塞された場合にカテーテル内部に流路を容易に形成することができるカテーテル用インナー、及びこのインナーを備えた製造簡単なカテーテルを提供することを目的とする。
【0012】
【特許文献1】
特開平9−10315号公報
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のカテーテル用インナーは、 先端部に側壁を貫通する複数の排液用貫通孔が穿設されたアウターチューブ内に挿入可能な細長部と、前記アウターチューブの基端部の開口に挿入されて該開口を閉鎖する栓体部と、手術用器具が連結可能な連結部が形成された頭部と、が連結されて構成されている。
【0014】
また、本発明のカテーテルは、先端部に側壁を貫通する複数の排液用貫通孔が穿設されたアウターチューブと、上記のようにアウターチューブ内に挿入可能な細長部、前記アウターチューブの基端部の開口に挿入されて該開口を閉鎖する栓体部、及び手術用器具が連結可能な連結部が形成された頭部が連結されて構成されたインナーと、を含んで構成されている。
【0015】
本発明のカテーテルは、先端部に側壁を貫通する複数の排液用貫通孔が穿設されたアウターチューブ内に、インナーの細長部を挿入し、アウターチューブの基端部の開口にインナーの栓体部を挿入してアウターチューブの基端部の開口を閉鎖して組み立てる。この状態で、カテーテルの先端部を腹腔のダグラス窩に位置するように留置し、かつカテーテルの残りの部分を腹壁に埋設しておいて、所定期間経過後にカテーテルの基端部を腹壁外部に取り出す。
【0016】
本発明のカテーテルでは、アウターチューブの基端部の開口がインナーの栓体部により閉鎖されているので、カテーテルが埋設されているときに腹腔内容物がカテーテルの開口から排出されることはない。また、カテーテルの内部にインナーの細長部が挿入されているので、カテーテルの内部に析出物が析出しても、カテーテルの基端部を腹壁外部に取り出した際に頭部を操作してインナーをアウターチューブから引き抜くことにより、カテーテル内部の細長部が挿入されていた部分に空間が形成されるので、この空間を流路として利用することができる。また、この空間を介して腹腔内容物をカテーテルの開口から排出することができ、この際に腹腔内容物とともに析出物も同時に排出することができる。
【0017】
また、本発明のカテーテルは、先端部に側壁を貫通する複数の排液用貫通孔が穿設されると共に、基端部に側壁を貫通するシリンジ挿入用貫通孔が穿設されたアウターチューブと、前記アウターチューブ内に挿入可能な細長部、前記アウターチューブの基端部の開口に挿入されて該開口及び前記シリンジ挿入用貫通孔を閉鎖する栓体部、及び手術用器具が連結可能な連結部が形成された頭部が連結されて構成されたインナーと、を含んで構成することができる。
【0018】
このカテーテルでは、アウターチューブの基端部にシリンジ挿入用貫通孔が穿設されているので、アウターチューブの先端部を腹腔のダグラス窩に位置するように留置し、かつアウターチューブの基端部を腹壁外部に突出させた状態で、シリンジ挿入用貫通孔に生理食塩水が充填されたシリンジの先端を挿入し、生理食塩水をアウターチューブ内部に注入することで、アウターチューブ内部の空気が生理食塩水で置換され、アウターチューブ内部の空気を排出することができる。また、アウターチューブ内部が生理食塩水で満たされた後は、インナーの栓体部をアウターチューブの基端部の開口に挿入し、栓体部によってアウターチューブの基端部の開口及びシリンジ挿入用貫通孔を閉鎖することにより、生理食塩水が基端部の開口またはシリンジ挿入用貫通孔から排出されるのを防止することができる。
【0019】
そして、アウターチューブにインナーを挿入した状態で、カテーテルの残りの部分を腹壁に埋設しておいて、所定期間経過後にカテーテルの基端部を腹壁外部に取り出し、カテーテルの基端部を腹壁外部に取り出した際にインナーをアウターチューブから引き抜く。
【0020】
本発明のインナーの細長部には、螺旋を形成することができる。螺旋を形成することにより、インナーをアウターチューブから引き抜く際に、頭部を回しながら引き抜くことにより、析出物が螺旋によってアウターチューブの基端部の開口方向に押し上げられるため、容易に析出物を排出することができる。
【0021】
また、本発明のインナーはアウターカテーテル(アウターチューブ)の内腔に対し、充分細く設計されており、これにより、シリコン同士の摩擦による挿入、引き抜き操作の困難を解消している。また、インナーに施すことのできるらせん状の加工は、析出物の排除時のみならず、挿入、引き抜き操作時にねじりを加えることにより、ナットに対するボルトのような効果が得られる。即ち、ネジを締める方向にインナーを回すと挿入する方向にインナーを進める力が加わり、逆に回すと引き抜く方向にインナーを進める力が加わる。このことが挿入、引き抜き操作を更に容易にしている。このため、インナーに施すことのできるらせん状加工は市販されている一般の「ネジ」類と同一方向の捻りとしている。
【0022】
インナーを細くすることによって、引き抜き後に十分な流路が確保できない懸念があるが、腹腔内析出物は生体内の体液(この場合は腹水)に由来しており、一般にフィブリンと呼称される脆くて柔らかい蛋白質である。従ってインナー自体のねじり操作によって、容易に排除されることが期待できるばかりか、一部に取り残しが生じたとしても、引き抜き後に少なくともインナー自体の太さに相当する流路が形成されることにより、カテーテル本来の注排液操作に伴い、押し流され排出される性質のものである。
【0023】
また、インナーの頭部の側面に滑り止め処理を施すことにより、頭部を引張ったり回したりする等の操作をする際に滑り止めとなり、容易にインナーを引き抜いたり回したりすることができる。
【0024】
以上説明したように、本発明のカテーテル用インナーによれば、カテーテル内部が析出物により閉鎖された場合においても、インナーを引き抜くことにより、容易に流路を形成することができる。
【0025】
また、本発明のカテーテルによれば、アウターチューブ内にインナーを挿入して構成されているため、カテーテル内部が析出物により閉鎖された場合においても、インナーを引き抜くことにより、容易に流路を形成して排液することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態のカテーテルは、外径が例えば、5mm、内径が例えば、2mm〜2.5mmのシリコーンゴム製の両端部が開口した単管チューブで構成されたアウターチューブ10と、アウターチューブ10インナー12とで構成されている。
【0027】
アウターチューブ10は、腹腔に植込まれる先端部14と腹壁から外部に突出されて透析液が貯留されたバッグが接続される基端部16とを備えている。先端部14と基端部16との境界部分は、アウターチューブ10の先端が腹腔内で位置移動するのを回避する目的で、先端部を構成するシリコーンゴムと同じ硬度かまたは硬度が高いシリコーンゴム製の短い補強管18を被覆して補強されている。
【0028】
また、補強管18の中央部外周面には、カテーテルを腹部に固定するためのポリエステル製の不織布で構成されたカフ20が取り付けられている。なお、先端部14と基端部16との境界部分には、上記補強管18を設けることなく、カフを取り付けることもできる。
【0029】
先端部14には、直径が例えば1.0mm程度の排液用管通孔である多数の側孔22が穿設されている。多数の側孔22は、アウターチューブの側壁を直径方向に貫通してアウターチューブの軸方向に沿って所定間隔(例えば、5〜10mm)隔てて穿設された2列の第1側孔列と、この2列の第1側孔列の貫通方向と直交し、かつ貫通方向が交差しないように貫通された2列の第2側孔列とを備えている。このため、4列の側孔列の各々は、単管チューブの軸方向に沿って延在している。なお、第1側孔列の貫通方向は、第2側孔列の貫通方向の中間に位置している。
【0030】
基端部16の開口側には、シリンジの先端を挿入するための単一のシリンジ挿入用貫通孔16Aが側壁を貫通して設けられている。
【0031】
上記では、アウターチューブを1本の単管チューブで構成する例について説明したが、先端部14と基端部16とを別々の同径の単管チューブで形成し、先端部14と基端部16とを接着等により接続してアウターチューブを構成してもよい。この場合には、先端部14と基端部16との接続部分を上記の補強管で補強するのが好ましい。
【0032】
インナー12は、全体がシリコーンゴムで形成され、図2に示すように、アウターチューブ12内に挿入可能な螺旋状の細長部12Aと、アウターチューブ12の開口に挿入されて開口及びシリンジ挿入用貫通孔16Aを閉鎖する栓体部12Bと、トンネラー等の手術用器具が連結可能な連結部である有底孔12Dが穿設された頭部12Cと、が連結されて構成されている。
【0033】
頭部12Cの側面には、頭部の長さ方向に沿った溝または突起を周方向に等間隔に全周に亘って形成することで、頭部12Cを操作する際に滑り止めとなる滑り止め処理12Eが施されている。なお、半球状の穴または突起を全周に亘って多数形成して滑り止め処理を施してもよい。
【0034】
また、図3に示すように、細長部12Aは、細長部の長さ方向に螺旋状に複数の突条24を形成することで螺旋状に形成されている。本実施の形態では、4つの突条を周方向に沿って螺旋状に等間隔に配置しているため、細長部の端面は、図3に示すように十字状に形成される。
【0035】
次に、本実施の形態のカテーテルの留置方法について説明する。まず、カテーテルのインナーをアウターチューブから引き抜いて、アウターチューブとインナーとを別々にしておく。腹部を開腹した後、縫合用のナイロン糸または吸収糸を腹膜にかけ、開腹部からアウターチューブの先端部を腹腔内に挿入して、アウターチューブを腹腔内に留置する。腹腔内に留置されたアウターチューブを、アウターチューブの腹腔内に留置された部分が移動しないように、腹膜や筋膜等に縫合して固定する。縫合固定時には、カフ部分で縫合用の糸を締め、カフを腹膜や筋膜に縫合して固定する。
【0036】
続いて、インナーの細長部の先端をアウターチューブの基端部の開口から挿入して、細長部をアウターチューブの内部に挿入する。その後、生理食塩水が充填されたシリンジの先端をシリンジ挿入用貫通孔16Aに挿入し、生理食塩水をアウターチューブに注入してアウターチューブの内部を生理食塩水で充満させる。そして、インナーの栓体部12Bをアウターチューブに挿入し、アウターチューブの基端部の開口とシリンジ挿入用貫通孔16Aとを閉鎖する。これにより、アウターチューブの内部に充填された生理食塩水の漏れが防止される。
【0037】
次に、頭部12Cの有底孔12Dにトンネラーの基端部を挿入し、頭部12Cの外周部等に糸を巻回して、トンネラーとカテーテルとを強固に締結する。その後、トンネラーの先端を腹壁のアウターチューブ縫合固定部の近傍に挿入し、アウターチューブの縫合固定部近傍からトンネラーを円弧状に腹壁内を通過させて、腹壁の所定個所からトンネラーの先端を貫通させて外部に突出させる。そして、トンネラーとカテーテルの締結を解いて、カテーテルの全長を腹壁内に埋設する。
【0038】
所定期間経過後に腹壁を切開してカテーテルの基端部を外部に取り出し、インナーをアウターチューブから引き抜く。これによって、フィブリンが析出してアウターチューブが閉鎖されていてもインナーを引き抜くことにより、アウターチューブ内に流路が確保されるため、腹腔内容物を外部に排出することができる。
【0039】
なお、必要に応じてインナーの頭部を回転させて細長部を回転させながらインナーを引き抜けば、インナーを容易に引き抜くことができる。
【0040】
また、上記では、アウターチューブの先端部を腹腔内に留置した後、アウターチューブにインナーを挿入する例について説明したが、アウターチューブにインナーを挿入してアウターチューブとインナーとを組み付けた状態で、アウターチューブの先端部を腹腔内に留置するようにしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のカテーテル用インナーによれば、カテーテル内部が析出物により閉鎖された場合においても、インナーを引き抜くことにより、容易に流路を確保することができる、という効果が得られる。
【0042】
また、本発明のカテーテルによれば、アウターチューブ内にインナーを挿入して構成されているため、カテーテル内部が析出物により閉鎖された場合においても、インナーを引き抜くことにより、容易に流路を確保して排液することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態のカテーテルの一部分を省略した側面図である。
【図2】本実施の形態のカテーテル用インナーの一部分を省略した側面図である。
【図3】インナーの細長部の端面図である。
【符号の説明】
10 アウターチューブ
12 インナー
Claims (9)
- 先端部に側壁を貫通する複数の排液用貫通孔が穿設されたアウターチューブ内に挿入可能な細長部と、
前記アウターチューブの基端部の開口に挿入されて該開口を閉鎖する栓体部と、
手術用器具が連結可能な連結部が形成された頭部と、
が連結されて構成されたカテーテル用インナー。 - 前記アウターチューブの基端部に側壁を貫通するシリンジ挿入用貫通孔が穿設されており、前記栓体部は、前記アウターチューブの基端部の開口に挿入されたときに、該開口及び前記シリンジ挿入用貫通孔を閉鎖するように構成されている請求項1に記載のカテーテル用インナー。
- 前記細長部に、螺旋を形成した請求項1または請求項2記載に記載のカテーテル用インナー。
- 前記頭部の側面に該頭部を操作する際に滑り止めとなる滑り止め処理を施した請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のカテーテル用インナー。
- 先端部に側壁を貫通する複数の排液用貫通孔が穿設されたアウターチューブと、
前記アウターチューブ内に挿入可能な細長部、前記アウターチューブの基端部の開口に挿入されて該開口を閉鎖する栓体部、及び手術用器具が連結可能な連結部が形成された頭部が連結されて構成されたインナーと、
を含むカテーテル。 - 先端部に側壁を貫通する複数の排液用貫通孔が穿設されると共に、基端部に側壁を貫通するシリンジ挿入用貫通孔が穿設されたアウターチューブと、
前記アウターチューブ内に挿入可能な細長部、前記アウターチューブの基端部の開口に挿入されて該開口及び前記シリンジ挿入用貫通孔を閉鎖する栓体部、及び手術用器具が連結可能な連結部が形成された頭部が連結されて構成されたインナーと、
を含むカテーテル。 - 前記細長部に、螺旋を形成した請求項5または請求項6記載のカテーテル。
- 前記頭部の側面に該頭部を操作する際に滑り止めとなる滑り止め処理を施した請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のカテーテル。
- 前記インナーの細長部をアウターチューブ内に挿入し、前記インナーの栓体部をアウターチューブの基端部の開口に挿入して該開口を閉鎖して組み立てた請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のカテーテル。
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