JP2004164856A - 電子線描画方法および高密度記録のための円盤状担体 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気転写用マスター担体の基板に、凹凸パターンを高精度に形成する。
【解決手段】表面に凹凸パターンを有する基板31を作製する際、レジスト12が塗布された円形基盤11に、電子ビームEBの走査により凹凸パターンに応じたパターンの描画を行う。パターンを構成する個々のエレメントの最小幅より小さいビーム径の電子ビームEBを、円形基盤11の円周方向に交差する方向に一定の振幅で往復振動させるとともに、円形基盤11を一方向Aに回転させることにより、電子ビームEBを円形基盤11上においてY1、Y2、Y3・・・Y8へと走査して、個々のエレメント上面形状12aの描画を行う。
【選択図】 図4
【解決手段】表面に凹凸パターンを有する基板31を作製する際、レジスト12が塗布された円形基盤11に、電子ビームEBの走査により凹凸パターンに応じたパターンの描画を行う。パターンを構成する個々のエレメントの最小幅より小さいビーム径の電子ビームEBを、円形基盤11の円周方向に交差する方向に一定の振幅で往復振動させるとともに、円形基盤11を一方向Aに回転させることにより、電子ビームEBを円形基盤11上においてY1、Y2、Y3・・・Y8へと走査して、個々のエレメント上面形状12aの描画を行う。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画する電子線描画方法に関するものである。
【0002】
また、本発明は、円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画して該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製される、高密度記録のための円盤状担体に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
従来より、磁性体の微細凹凸パターンにより転写情報を担持したマスター担体と、転写を受ける磁気記録部を有するスレーブ媒体とを密着させた状態で、転写用磁界を印加してマスター担体に担持した情報(例えばサーボ信号)に対応する磁化パターンをスレーブ媒体に転写記録する磁気転写方法が知られている。(例えば、特許文献1〜3参照)
磁気転写に使用されるマスター担体の作製方法としては、転写すべき情報に応じたレジストによる凹凸パターンが形成された原盤を基にして作製する、光ディスクスタンパー作成方法を応用した方法が考えられている。(例えば、特許文献4参照)
このマスター担体基板の凹凸パターンに応じたレジストへのパターン描画は、光ディスク原盤の作製と同様に、フォトレジストが塗布された円形基盤を回転させながら、転写する情報に応じて変調したレーザービームを照射して形成することが、一般に考えられる。
【0004】
しかしながら、記録密度の増大などに対応してトラック幅が狭くなると(例えば、トラック幅が0.3μm以下になると)、レーザービームでは描画径の限界に近づき、描画された部分の端部形状が円弧状となって矩形状のパターンの形成が困難となる。マスター担体基板の凹凸パターンの各エレメントの特にその上面形状は、この描画された部分に応じた形状となるものであり、該描画された部分の端部形状が円弧状となるとマスター担体基板の凹凸パターンの凸部上面形状が円弧状等の矩形から大きくはずれた形状となり、スレーブ媒体への所望の磁化パターンの形成が困難となる。
【0005】
そこで、本出願人は、レーザ光と比較して小さなビーム径を有する電子ビームを用いて、パターン描画を行う方法について特願2002−202629において提案している。
【0006】
この特願2002−202629においては、エレメントの上面形状の最小幅より小さいビーム径の電子ビームによるパターン描画を行う方法が提案されており、凹凸パターンの各エレメントの上面形状を、電子ビームを複数回走査させて描画する方法が記載されている。詳細には、例えば、凹凸パターンの各エレメントがトラック方向(円周方向)に垂直に延びる矩形状である場合に、電子ビームをトラック方向に垂直な方向(半径方向)に1走査させる毎に、基盤を微少回転させ、この1走査と微小回転を交互に複数回繰り返して1つのエレメントを描画する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−183623号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平10−40544号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平10−269566号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2001−256644号公報
【0011】
【特許文献5】
特開2001−110050号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、基盤の断続的な回転動作を伴う描画方法では、パターン描画に非常に時間がかかるという問題がある。
【0013】
また、凹凸パターンがトラック方向(円周方向)に垂直に延びる上面矩形のエレメントのみでなく、位相サーボパターンのように上面がトラック方向に斜めに交差して延びる斜辺を有する上面平行四辺形のエレメントを含む場合、電子ビームを半径方向に複数回走査させて描画すると、該斜めに交差して延びる斜辺が階段状になり、精度良く形成できないという欠点がある。このエレメント上面の平行四辺形の斜辺は、磁化遷移領域となる部分に対応するものであり、この直線性は信号再生時に非常に重要である。
【0014】
また、光ディスクにおいても、さらなる高密度化を図るためには、スタンパー作製時に電子ビームによる描画を行う必要が生じる可能性がある。
【0015】
また、現在、小型軽量化が可能な高密度磁気記録媒体として実現化が期待されているパターンドメディアの作製においては、電子ビームによりパターン露光を行うことが提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、特許文献5には、電子ビームを用いるとの記載はあるが、電子ビームによる描画方法についての詳細は開示されておらず、実際にはどのように描画を行っているのか明らかでない。
【0016】
いずれも円盤状担体であり、同心円状もしくは螺旋状のトラックを有する高密度記録用メディアを作製するためのもの、もしくは高密度記録用メディア自体である。それぞれ、その作製工程において、円形基盤上に塗布されたレジストに所望のパターンを描画して、該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を含む点で共通する。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みて、円形基盤上に塗布されたレジストに所望のパターンを精度良く描画する電子線描画方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
また、本発明は、電子線により精度よく描画されたパターンを有する、磁気転写用マスター担体、光ディスク用スタンパ、高密度磁気記録媒体パターンドメディア等の高密度記録のための円盤状担体を提供することを目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子線描画方法は、円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画する電子線描画方法であって、
前記パターンの描画を、該パターンの最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、前記円形基盤の円周方向に交差する方向に往復振動させると共に、前記円形基盤を一方向に回転させることにより行うことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の円盤状担体は、円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画して該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製される、高密度記録のための円盤状担体であって、
前記パターンの描画が、該パターンの最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、前記円形基盤の円周方向に交差する方向に往復振動させると共に、前記円形基盤を一方向に回転させることにより行われたものであることを特徴とするものである。
【0021】
ここで「所望のパターン」は、同心円状もしくは螺旋状の配列された1ビットもしくは数ビット単位のエレメントから構成されるものであってもよいし、グルーブ(もしくはランド)に対応する、同心円状もしくは螺旋状に連続的に延びて形成されるパターンを含むであってもよい。パターンの形状およびサイズ、配置は、円盤状担体毎で異なる。すなわち、「パターンの描画」とは、該パターンを構成する個々のエレメント等を描画することにより達成されるものである。
【0022】
「パターンの最小幅」とは、所望のパターンを構成するエレメントおよび/またはグルーブ等のパターンにおける、互いに対向する辺間の距離が最短である箇所の幅をいう。例えば、パターンを構成するエレメントが、略平行四辺形(矩形を含む)である場合、互いに平行な2組の辺のうち、対向する辺の間隔が短い方の1組の辺の間隔が、パターンの最小幅となる。
【0023】
描画するエレメント形状が、同心円状もしくは螺旋状のトラック方向に沿った互いに略平行な2辺とトラック方向に交差する互いに略平行な2辺からなる略平行四辺形である場合、電子ビームの基盤上における走査方向が、該平行四辺形を構成する、トラック方向に交差する辺の延びる方向と略平行となるようにして描画すればよい。また、このような略平行四辺形を描画するためには、電子ビームを一定の振幅で往復振動させればよい。この場合、前記電子ビームを振動させる「前記円周方向に交差する方向」は、円形基盤の回転を考慮して、電子ビームの基盤上における走査方向が所望の方向となるように制御すればよい。なお、円形基盤の円周方向とは、円形基盤の回転方向と略一致するものである。
【0024】
円盤状担体としては、磁気転写用マスター担体、光ディスク用スタンパ、高密度磁気記録媒体パターンドメディア等が挙げられる。
【0025】
磁気転写用マスター担体とは、スレーブ媒体(磁気記録媒体)に転写する情報に応じたパターン状の磁性層を表面に有する担体であり、作製工程における前記所望のパターンの描画がなされる円形基盤は、マスター担体の基板そのものであってもよいし、該マスター担体を作製するための原盤であってもよい。なお、転写する情報としては、例えばサーボ信号が挙げられる。パターン状の磁性層は、描画された所望のパターンに応じたものとなる。
【0026】
「パターン状の磁性層」は、例えば、表面に凹凸パターンが形成された基板の凸部上面にのみもしくは凹凸パターンに沿って磁性層を積層することにより構成される。あるいは表面に凹凸パターンが形成された基板の凹部にのみ埋め込まれた磁性層により構成することもできる。また、平板基板上に形成された、凹凸形状の表面を有する磁性層により構成するものであってもよいし、平板基板上に互いに独立して複数の凸部状の磁性層が配列されて、パターン状の磁性層を構成するものであってもよい。表面に凹凸パターンが形成された基板が磁性体からなるものであれば、該凹凸パターンによりパターン状の磁性層を構成すると共に、この基板自体でマスター担体を構成することもできるが、基板上に磁性層が積層されることが好ましい。磁性層としては、軟磁性層もしくは半硬質磁性層が特に好ましい。
【0027】
なお、磁気転写用マスター担体のパターン状の磁性層は、前記所望のパターンに対応して形成されてなるものであり、凹凸パターンの凸部上面もしくは凹部開口からなるパターンが前記所望のパターンに対応するものである。なお、個々の凸部上面もしくは凹部の開口が、所望のパターンを構成する個々のエレメントに対応するものである。
【0028】
光ディスク用スタンパとは、光ディスクに転写すべき情報に応じた凹凸パターンを表面に有する担体であり、作製工程における前記所望のパターンの描画がなされる円形基盤は、スタンパそのものであってもよいし、該スタンパを作製するための原盤であってもよい。
【0029】
表面の凹凸パターンは、いわゆる、ランドとピット(およびグルーブ)に対応するものであり、前記所望のパターンに対応して形成されてなるものであり、ここでは、ピットおよびグルーブの上面(もしくは開口)からなるパターンが前記所望のパターンに対応するものである。
【0030】
高密度磁気記録媒体パターンドメディアとは、上述の特許文献5等に挙げられる、単磁区を構成する磁性体(単磁区微粒子)が物理的に孤立して規則的に配列されてなり、微粒子1個に1ビットを記録するメディアである。この作製工程における前記所望のパターンの描画がなされる円形基盤は、パターンドメディアの基板そのものであってもよいし、パターンドメディアを作製するための原盤であってもよい。パターンドメディアにおいては、単磁区微粒子が前記所望のパターンに対応して形成されるものであり、この単磁区微粒子の上面が所望のパターンを構成する個々のエレメントに対応するものである。
【0031】
【発明の効果】
本発明の電子線描画方法によれば、所望のパターンの最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、円形基盤の円周方向に交差する方向に一定の振幅で往復振動させると共に、円形基盤を一方向に回転させることにより、各パターンの描画を行うので、円形基盤を断続的に回転させていた場合と比較して描画速度を飛躍的に向上させることができる。
【0032】
また、トラック方向に対して斜めに交差して延びる斜辺を有するエレメントを描画する際、前述の従来技術のように、トラック方向もしくはこれに垂直な半径方向に電子ビームを複数回走査させて描画すると、エレメントのトラック方向に交差する斜辺が階段状になるという問題があったが、本発明によれば、電子ビームの走査方向が、結果としてエレメントのトラック方向に交差する斜辺方向となるように描画するため、該エレメントのトラック方向に交差する斜辺がほぼ直線となり、良好なパターン形状を得ることができる。
【0033】
上記電子線描画方法を用いた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された高密度磁気記録のための円盤状担体は、所望のパターンを高精度に担持するものとすることができる。
【0034】
上記電子線描画方法を用いた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された精度高いパターンを備えたマスター担体を磁気転写に用いれば、転写品位の高い磁気転写を実施することができる。
【0035】
上記電子線描画方法を用いた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された光ディスク用スタンパを用いれば、再生特性を向上させたCD、DVD等の光ディスクを得ることができる。
【0036】
上記電子線描画方法を用いた凹凸パターンを形成する工程を経て作製されたパターンドメディアは、高密度かつ精度よく配列されたパターンを備えたものとすることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0038】
本発明の磁気転写用マスター担体の作製方法について説明する。図1は、その磁気転写用マスター担体の原盤を作製する過程を示す模式図である。図2は、原盤表面の描画パターン(露光パターン)の一部を拡大した上面図である。
【0039】
なお、ここで描画パターンは、マスター担体の基板に形成すべき凹凸パターンに応じたパターンであり、凹凸パターンを構成する凸部の上面もしくは凹部の開口が描画パターン中の個別の描画すべきエレメントである。
【0040】
本実施の形態における磁気転写用マスター担体の原盤の作製方法について説明する。
【0041】
図1(a)に示すように、例えばシリコン、ガラスあるいは石英からなる円形基盤11を、1方向に回転させながら、スピンコート法により、ノズル13から、ポジ型電子ビーム描画用レジスト12が有機溶剤に溶解されたレジスト溶液12’を円形基板11上に塗布した後、ベークする。
【0042】
次に、図1(b)に示すように、電子ビーム描画用レジスト12が塗布された円形基盤11をA方向に回転させながら、サーボ信号等の転写情報に対応して変調した電子ビームEBを走査させることにより1トラック毎に所望のパターンを描画する。なお、円形基盤11の回転方向Aは、エレメント単位に微視的にみると、ほぼ径方向Yに垂直な方向X(以下、これを円周方向Xもしくはトラック方向Xという)とみなすことができる。
【0043】
次に、図1(c)に示すように、電子ビーム描画用レジスト12を現像処理して、同心円16に沿った所望のパターン15が電子ビーム描画用レジスト12に転写された基盤11を得る。
【0044】
ここで、図1(c)に示すパターン15は、同心円状に、所定の間隔で形成されるサーボ信号領域に形成されたサーボ信号に応じたパターンである。
【0045】
図2は、基盤表面の描画パターン(露光パターン)15の一部を拡大した上面図であり、具体的には1トラックの一部のみを示している。この描画パターン15は、円周方向(トラック方向)Xに斜めに交差して延びるエレメント12aを含むものである。図2中斜線で示した部分が電子ビームにより描画(露光)されたエレメント12aであり、その形状はトラック方向Xに角度θをなす斜辺を有する略平行四辺形である。なお、このエレメント12a等の露光部分は、現像により除去されて凹部となる。この凹凸パターンとされたレジストを備えた円形基盤が、磁気転写用マスター担体の原盤となる。
【0046】
図3は、本実施形態において用いられる電子ビーム露光装置の要部側面図(a)および上面図(b)を示すものである。電子ビーム露光装置40は、電子ビームEBをY方向(基盤径方向)およびX方向(円周方向)へ偏光させる偏光手段21、22を備えており、電子銃23から出射された電子ビームEBは偏光手段21、22および図示しないレンズ等を経て、描画パターンを構成する各エレメントの最小幅よりも小さいビーム径で円形基盤11上に照射される。なお、エレメント描画時には、偏光手段21、22を制御して電子ビームEBを、基盤の円周方向Xと交差する所定の方向に一定の振幅で微少振動させる。
【0047】
また、電子ビーム露光装置40は、円形基盤11を支持する円形ステージ41および該ステージ41の中心軸42と一致するように設けられたモータ軸を有するスピンドルモータ44を備えた回転ステージユニット45と、該回転ステージユニット45の一部を貫通し、円形ステージ41の一半径方向(上記Y方向)に延びる一本のシャフト46と、該回転ステージユニット45をシャフト46に沿って移動させるための移動手段とを備えている。回転ステージユニット45の一部には、上記シャフトと平行に配された、精密なネジきりが施されたロッド47が螺合され、このロッド47は、パルスモータ48によって正逆回転されるようになっており、このロッド47とパルスモータ48により回転ステージユニット45の移動手段が構成される。なおパルスモータの駆動、電子ビームの変調、偏光手段の制御等はコントローラ50によって行われる。
【0048】
図4は、図2に示したトラック方向Xに斜めに交差して延びるエレメント12aの描画方法の模式図を示す。円形基盤11をA方向に回転させるとともに、Y方向およびX方向偏光手段21、22をそれぞれ正弦波等の周期関数信号で互いに同期させて制御して電子ビームEBを所定の方向に一定の振幅で周期的に振動させることにより、結果として電子ビームEBをエレメント12aの所望の角度θを有する斜辺に沿った方向に複数回走査させて、略平行四辺形形状のエレメント12aの描画を行う。
【0049】
図4中、電子ビームEBをY1、Y2、Y3・・・・Y8へと順次走査させ、1つのエレメント12aの描画を行う。この際、電子ビームEBを所望の角度θを有する斜辺に沿った方向に走査させるように、Y方向およびX方向偏光手段21、22を制御して電子ビームEBの振動方向を調整する。ここでは、円形基盤11の回転速度は、電子ビームEBの振動の一周期で電子ビームの照射位置がY1からY3へ移動する程度であり、電子ビームEBの振動方向は、円形基盤11の回転による照射位置のトラック方向Xへの変移を考慮した方向としている。なお、1トラックのパターン描画後、回転ステージユニット40が移動されて、隣接する次のトラックの描画を開始する。
【0050】
なお、エレメントの描画時において、図中クロスハッチで示す部分14が露光されず、平行四辺形の鋭角となるべきエレメント12aの角部が円弧状となる。円弧状部分は結果として、記録損失に繋がるものであり、これを低減するためには、電子ビームEB径を小さくし、走査回数を多くすることが有効であるが、描画効率との関係で適宜設定すればよい。なお、凹凸パターン凸部上面のトラック方向と交わる斜辺の直線性は、トラック幅方向のヘッド走査領域において非常に重要であるが端部においてはその影響は小さいと考えられる。
【0051】
このように、電子ビームEBの基盤上における走査方向が、結果としてエレメントのトラック方向と交差する斜辺となるように描画するので、描画されたエレメントの斜辺は略直線となり、結果として斜辺が略直線の上面形状の凸部からなる凹凸パターンを有する基板を形成することができる。このような基板を備えたマスター担体を用いれば、転写パターンの磁化遷移領域の直線性も向上する。
【0052】
なお、各エレメントの形状と電子ビーム描画用レジストの感度とを考慮しながら、電子ビームの出力およびビーム径を調整することが望ましい。
【0053】
上述の実施形態において、電子ビームEBの回転基盤上における走査方向が、トラック方向に対して所望の傾きθを有する方向、すなわち描画すべきエレメントのトラック方向に交差する斜辺の方向となるように、Y方向およびX方向偏光手段21、22を制御して電子ビームEBの振動方向を調整する際の、具体的な方法を図5を参照して以下に説明する。
【0054】
図5は、始点を原点としたXY座標系において、該原点から各象限に向けて延びる斜辺を有する平行四辺形およびその描画方法を模式的に示すものである。各図において斜辺の傾きはθ1〜θ4で示す。
【0055】
ここでは、電子ビームEBをy方向およびx方向それぞれに周期的に変移させる周期関数として、y=Asin(ωt+α)、x=Bsin(ωt+β)の正弦波を用いた描画方法について説明する。fは両周期関数の振動数、A、Bは各振幅、α、βは各位相、ω=2πfであり、それぞの周期関数の位相α、βが|β−α|=nπの関係にあるとき、基盤が静止していれば、電子ビームEBの軌跡は、xy座標においてA/Bの傾きを有する直線(図中鎖線K)となる。このとき、電子ビームEBの照射位置は、A/Bの傾きを有する直線上を単振動する。なお、各エレメントを描画する際、この単振動の最大振幅もしくは最小振幅の位置から照射を開始し、複数回振動させて、開始位置の位相からπずれた最小振幅もしくは最大振幅の位置で照射を終了させるよう制御する。
【0056】
一方、円形ステージの回転により、基盤上における電子ビームEBの照射位置は基盤が静止していた場合と比較して円周方向に変移する。電子ビーム照射位置におけるステージの回転に伴う線速度をvとすると、上述の周期関数の半周期1/2f時間に照射位置が、ステージの回転により円周方向(トラック方向)xに移動する距離Δxは、Δx=v/2fで表される。したがって、この距離Δxを考慮してX方向の振幅Bを設定するため、図5中の各平行四辺形のトラック方向xに交差して延びる斜辺の、トラック方向に対する傾きθについて、tanθ=2A/(2B+Δx)を満たすようにする。すなわち、所望の傾きθの平行四辺形を描画しようとする際、tanθ=2A/(2B+Δx)を満たすように各周期振動の振幅A,Bを定めればよい。なおここで、平行四辺形の傾きθとは、描画の始点を原点として、該原点を通る円周方向の直線からの傾き角度であり、0<θ<2π(θ≠π)である。
【0057】
すなわち、電子ビームEBは、原点から延びている所定傾きの一点鎖線Kに沿って振動させており、この鎖線Kは円盤が静止していた場合の電子ビームEBの軌跡を示すものである。電子ビームEBはこの鎖線Kに沿った振動を行うが、同時に円盤が図中−x方向に回転するために、結果として電子ビームEBは図に示すような軌跡Lを描く。
【0058】
図5(a)、(b)の描画方法について、例に挙げて説明する。図5(a)の場合、α=β=−π/2とし、例えばθ1=45°の平行四辺形を描く場合、tanθ1=2A/(2B+Δx)=1、すなわち2A=2B+Δxを満たすA、Bを定める。
【0059】
図5(b)の場合、α=−π/2、β=π/2とし、例えばθ2=135°の平行四辺形を描く場合、tanθ2=2A/(2B+Δx)=−1、すなわち2A=−(2B+Δx)を満たすA、Bを定める。
【0060】
なお、図5(a)および(c)に示す描画方法において、θ3=π+θ1とすれば略同一の平行四辺形を描くことができる。同様に、同図(b)および(d)に示す描画方法において、θ4=π+θ2 とすれば略同一の平行四辺形を描くことができる。
【0061】
なお、ここでは、正弦波を用いて描画する方法について詳述したが、本発明の描画方法は、この波形に限るものではなく、ビーム軌跡が、矩形波、パルス波、三角波等となるような種々の周期関数を採用することができる。
【0062】
次に、上記の原盤を用いた磁気転写用マスター担体の作製方法について説明する。図6はそのマスター担体の作製過程の一部を示す断面模式図である。
【0063】
図6(a)に示すように、上記のようなパターン描画方法により、基盤11上の電子ビーム描画用レジスト12上に所望のパターンを描画する。現像処理で露光した部分12aを除去し、電子ビーム描画用レジスト12からなる凹凸パターンを有する原盤を得る。
【0064】
次に、図6(b)に示すように、前記原盤の表面の凹凸パターン表面に薄い導電層を成膜し、その上に、電鋳を施し、金属の型をとったポジ状凹凸パターンを有する基板31を得る。
【0065】
その後、図6(c)に示すように、原盤から所定厚みとなった基板31を原盤から剥離する。基板31の表面の凹凸パターンは、原盤の凹凸形状が反転されたものである。
【0066】
基板31の裏面を研磨した後、この基板31をそのまま磁気転写用マスター担体とするか、あるいは、図6(d)に示すように、凹凸パターン上に磁性層32を被覆したものを磁気転写用マスター担体とする。
【0067】
また、前記原盤にメッキを施して状凹凸パターンを有する第2の原盤を作製し、この第2の原盤を使用してメッキを行い、ネガ状凹凸パターンを有する基板を作成してもよい。さらに、ポジ状凹凸パターンを有する第2の原盤にメッキを行うか樹脂液を押し付けて硬化を行ってネガ状凹凸パターンを有する第3の原盤を作製し、第3の原盤にメッキを行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作製してもよい。
【0068】
一方、前記円形基盤11に電子ビーム描画用レジストによる凹凸パターンを形成した後、電子ビーム描画用レジストをマスクにエッチングして円形基盤11に凹凸パターンを形成し、電子ビーム描画用レジストを除去した原盤を得てもよい。以降の工程は前記と同様にして基板31を形成することができる。
【0069】
いずれの場合も基板31の凹凸パターンの凸部あるいは凹部形状は、原盤のレジストの凹凸パターンに依存した形状となる。上述の通り、原盤の凹凸パターン作製時において、略平行四辺形形状のエレメントを、電子ビームEBの走査方向が、斜辺と一致するように描画することにより、エレメントの斜辺が直線となるので、凸部の上面形状の斜辺が略直線である凹凸パターンを備えた基板31を得ることができる。
【0070】
基板31の材料としては、NiもしくはNi合金を使用することができ、この基板を作製するための前記メッキとしては、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法が適用できる。基板31の凹凸パターンの深さ(突起の高さ)は、80nm〜800nmの範囲が好ましく、より好ましくは150nm〜600nmである。
【0071】
前記磁性層32は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。その磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)が用いることができる。特に好ましくはFeCo、FeCoNiである。磁性層32の厚みは、50nm〜500nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは100nm〜400nmである。
【0072】
前記原盤を用いて樹脂基板を作製し、その表面に磁性層を設けてマスター担体としてもよい。樹脂基板の樹脂材料としては、ポリカーボネート・ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィンおよびポリエステルなどが使用可能である。耐湿性、寸法安定性および価格などの点からポリカーボネートが好ましい。成形品にバリがある場合は、バーニシュまたはポリッシュにより除去する。また、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを使用して、原盤にスピンコート、バーコート塗布で形成してもよい。樹脂基板のパターン突起の高さは、50〜1000nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは100〜500nmの範囲である。この樹脂基板の表面の微細パターンの上に磁性層を被覆しマスター担体を得る。
【0073】
なお、情報に応じた凹凸パターンが形成された原盤に、樹脂液を塗布し硬化させて樹脂基盤を作製し、この樹脂基盤の凹凸パターン上に磁性層を成膜し、該磁性層の裏面の凹凸を研磨して平坦化した後、この磁性層の平坦裏面に電鋳により平坦基板を積層し、樹脂基盤より剥離することによって平板基板上に表面に凹凸パターンを有する磁性層が積層されてなるマスター担体を得ることもできる。
【0074】
次に、上記のようにして作製された磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法について説明する。図7はその磁気転写の基本工程の一例を示す断面模式図である。なお、図7に示す形態は面内記録方式である。
【0075】
面内磁気記録媒体への磁気転写の概要を図7に基づき説明する。なお、図7中スレーブ媒体はその片面の磁気記録部のみを記載している。まず、図7(a)に示すように、最初にスレーブ媒体2に初期静磁界Hinをトラック方向の一方向に印加して予め初期直流磁化を行う。その後、図7(b)に示すように、このスレーブ媒体2のスレーブ面(磁気記録部)と、マスター担体3の基板31の微細凹凸パターンに磁性層32が被覆されてなる情報担持面の凸部パターン32aとを密着させ、スレーブ媒体2のトラック方向に前記初期磁界Hinとは逆方向に転写用磁界Hduを印加して磁気転写を行う。転写用磁界Hduが磁性層32の凸部パターン32aに吸い込まれてこれに対応する部分のスレーブ媒体2の磁性層の磁化は反転せず、その他の部分の磁界が反転する結果、図7(c)に示すように、スレーブ媒体2のスレーブ面(トラック)にはマスター担体3の情報担持面の磁性層32の密着凸部パターン32aと凹部空間との形成パターンに応じた磁化パターンが転写記録される。
【0076】
図示のように、スレーブ媒体2の片面にマスター担体3を密着させて片面逐次転写を行う場合と、スレーブ媒体2の両面にそれぞれマスター担体3を密着させて両面同時転写を行う場合とがある。
【0077】
なお、初期磁界および転写用磁界は、磁気記録媒体の磁性層の保磁力、マスター担体および磁気記録媒体の磁性層の比透磁率を勘案して定められた値を採用する必要がある。
【0078】
垂直磁気記録媒体への磁気転写の場合にも、上記面内磁気記録媒体用とほぼ同様のマスター担体3が使用される。この垂直記録の場合には、スレーブ媒体2の磁化を、予め垂直方向の一方に初期直流磁化しておき、マスター担体3と密着させてその初期直流磁化方向と略逆向きの垂直方向に転写用磁界を印加して磁気転写を行うものであり、この転写用磁界がマスター担体3の凸部パターン32aの磁性層32に吸い込まれ、凸部パターン32aに対応する部分のスレーブ媒体2の磁性層の垂直磁化が反転し、凹凸パターンに対応した磁化パターンをスレーブ媒体2に記録することができる。
【0079】
スレーブ媒体2は、両面または片面に磁性層が形成されたハードディスク、高密度フレキシブルディスクなどの円盤状磁気記録媒体であり、その磁気記録部は塗布型磁気記録層あるいは金属薄膜型磁気記録層で構成される。金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。これらは磁束密度が大きいので明瞭な転写が行えるため好ましい。そして磁性層に必要な磁気異方性をつけるために、磁性材料の下(支持体側)には非磁性の下地層を設けることが好ましい。なお、非磁性層の結晶構造と格子定数は、磁性層に合わせる必要があり、そのためにはCr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等が好適である。
【0080】
初期磁界および転写用磁界を印加する磁界印加手段は、面内記録の場合には、例えば、スレーブ媒体2の半径方向に延びるギャップを有するコアにコイルが巻き付けられたリング型電磁石装置が上下両側に配設されてなり、上下で同じ方向にトラック方向と平行に発生させた転写用磁界を印加する。磁界印加時には、スレーブ媒体2とマスター担体3との密着体を回転させつつ磁界印加手段によって転写用磁界を印加する。なお、磁界印加手段を回転移動させるように設けてもよい。また、磁界印加手段は、片側にのみ配設するようにしてもよく、永久磁石装置を両側または片側に配設してもよい。
【0081】
垂直記録の場合の磁界印加手段は、極性の異なる電磁石または永久磁石をスレーブ媒体2とマスター担体3との密着体の上下に配置し、垂直方向に磁界を発生させて印加する。部分的に磁界を印加するものでは、スレーブ媒体2とマスター担体3との密着体を移動させるか磁界を移動させて全面の磁気転写を行う。
【0082】
本発明の電子線描画方法を用いたエレメント描画工程を含む光ディスク用スタンパ作製について説明する。
【0083】
図8は、光ディスク用スタンパの斜視図および一部拡大図を示すものである。図8に示すように、光ディスク用スタンパ120は、その表面に凸状のピット121とグルーブ122が螺旋状に配列されたパターンを有してなる。この凸状のピット121およびグルーブ122の上面形状が描画すべき所望のパターンを構成するものであり、本発明の電子線描画方法により所望のパターンを描画する工程を経て作製される。
【0084】
光ディスクスタンパの作製工程を図9に示し、説明する。
【0085】
まず。図9(a)に示すように、円形のシリコン基板111を、一方向に回転させながら、スピンコート法により、ノズル113から、電子線描画用レジスト112が有機溶剤に溶解されたレジスト溶液112’をシリコン基板111上に塗布した後、ベークする。なお、ここでは円形基盤としてシリコン基板を用いたが、導電膜を付与したガラス基板を用いてもよい。
【0086】
次に、図9(b)に示すように、電子線描画用レジスト112が塗布された円形シリコン基板111をA方向に回転させながら、ピットの長短(およびグルーブの長さ)に変換したデータに対応して変調した電子ビームEBを走査させることにより所望のパターンを描画する。ここでは、回転ステージ41を回転させるとともに、回転ステージ41をほぼ連続的にY方向に移動させることにより螺旋状のパターン(螺旋状に並んだピットおよびグルーブ等の上面に対応するパターン)116を描画する。なお、電子ビームEBの照射径はパターンの最小幅よりも小さいので、上述のマスター担体作製用の基盤上への個々のエレメントを描画する場合と同様にしてピットおよびグルーブ等の上面に対応するパターン116aを描画する。なお、図8に示すグルーブはウォブルグルーブであるので、所望のウォブルを形成するように電子ビームEBの振幅を変化させる等の制御を行って描画する。
【0087】
次に、図9(c)に示すように、電子線描画用レジスト112を現像処理して、螺旋状に形成された所望のパターン116が電子線描画用レジスト112に転写されたシリコン基板111を得る。これが光ディスク用スタンパの原盤となり、これを基に複数の光ディスク用スタンパが形成される。
【0088】
なお、上記のようにして作製された光ディスク用スタンパを用いて複数の光ディスクが複写成形される。
【0089】
エレメント描画時の電子線の軌跡は、周期関数としていかなる関数を用いるかによって異なり、これによりエレメント端部におけるレジストの露光量が異なるものとなるために、レジスト現像後の凹凸パターンの凸部の立ち上がり角度(図8中γで示す角度)が異なるものとなる。この立ち上がり角度は、再生特性に影響があると考えられる。従来のレーザ光による露光では、レーザ光の径により凸部の形状が決まるために、凸部の立ち上がり角度等の変更はできなかったが、ピットやグルーブの最小幅より小さい径の電子線を用いた本発明の描画方法を用いることにより、凸部の立ち上がり角度を所望のものとすることができるため、光ディスクにおける再生特性の最適なものを選ぶことができる。
【0090】
次に、本発明の電子線描画方法を用いたエレメント描画工程を含む、高密度磁気記録媒体パターンドメディアについて説明する。
【0091】
図10は、パターンドメディアの斜視図および一部拡大図を示すものである。図10に示すように、パターンドメディアスタンパ130は、その表面に凹部131aが同心円状のトラックに沿って規則的に配列された、凹凸パターンを表面に有する支持体131と、支持体131の凹部131aに埋め込まれた磁性体132とを備えている。支持体131に形成された凹部131aの開口形状、ここでは、磁性体132が埋め込まれている領域形状が、描画すべきパターンを構成するエレメントに対応するものであり、これを本発明の電子線描画方法により描画する工程を経て、凹凸パターンを表面に有する支持体131が作製され、凹部の磁性体が埋めこまれ、磁性体パターンを表面に有するパターンドメディアが作製される。
【0092】
なお、支持体131を円形基盤として、支持体131上にレジストを塗布し、該レジストに所望のパターンの描画を行う。該所望のパターンを構成する個々のエレメントの形状は略長方形であり、同心円状に規則的に配列されたものである。このエレメントの描画も既述のマスター担体作製時のエレメント描画と同様の制御により行う。その後、現像を行いレジストを凹凸パターンとし、例えば、特許文献5記載のように、該レジストをマスクとして支持体表面をエッチングし、磁性体を蒸着し、レジストをリフトオフすることにより、支持体131の凹部131aに磁性体132が埋め込まれた図10に示すパターンドメディアを作製する。なお、パターンドメディアの作製方法としては、マスター担体の作製方法の場合と同様に、凹凸パターンを表面に有する原盤を作製し、その原盤への電鋳により、凹凸パターンを表面に有する支持体を形成するようにしてもよい。パターンドメディアは、磁性体132が埋め込まれた形状のみならず、平板支持体上に凸部状の磁性体が規則的に配列されて構成されるものであってもよい。
【0093】
なお、本発明の電子線描画方法を用いた、高密度記録媒体用の円形基盤としての、磁気転写用マスター担体、光ディスク用スタンパおよびパターンドメディアの上述の作製方法は、一例であり、本発明の電子描画方法を用いて所望のパターンの描画を行い、凹凸パターンを形成する工程を経るものであれば上述の作製方法に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】マスター担体の原盤への凹凸パターン形成方法を示す模式図
【図2】描画パターンを示す上面図
【図3】電子ビーム露光装置の概略構成を示す要部側面図および上面図
【図4】電子ビーム描画方法を示す模式図
【図5】具体的な電子ビーム描画方法を示す模式図
【図6】本発明の磁気転写用マスター担体の作製方法を示す断面模式図
【図7】磁気転写の基本工程の一例を示す断面模式図
【図8】光ディスク用スタンパを示す斜視図
【図9】光ディスク用スタンパの原盤への凹凸パターン形成方法を示す模式図
【図10】パターンドメディアを示す斜視図
【符号の説明】
2 スレーブ媒体(磁気記録媒体)
3 磁気転写用マスター担体
11 円形基盤
12 電子ビーム描画用レジスト
12a 露光部分(エレメント)
13 ノズル
15 描画パターン
21、22 偏光手段
31 マスター担体基板
32 磁性層
40 電子ビーム露光装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画する電子線描画方法に関するものである。
【0002】
また、本発明は、円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画して該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製される、高密度記録のための円盤状担体に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
従来より、磁性体の微細凹凸パターンにより転写情報を担持したマスター担体と、転写を受ける磁気記録部を有するスレーブ媒体とを密着させた状態で、転写用磁界を印加してマスター担体に担持した情報(例えばサーボ信号)に対応する磁化パターンをスレーブ媒体に転写記録する磁気転写方法が知られている。(例えば、特許文献1〜3参照)
磁気転写に使用されるマスター担体の作製方法としては、転写すべき情報に応じたレジストによる凹凸パターンが形成された原盤を基にして作製する、光ディスクスタンパー作成方法を応用した方法が考えられている。(例えば、特許文献4参照)
このマスター担体基板の凹凸パターンに応じたレジストへのパターン描画は、光ディスク原盤の作製と同様に、フォトレジストが塗布された円形基盤を回転させながら、転写する情報に応じて変調したレーザービームを照射して形成することが、一般に考えられる。
【0004】
しかしながら、記録密度の増大などに対応してトラック幅が狭くなると(例えば、トラック幅が0.3μm以下になると)、レーザービームでは描画径の限界に近づき、描画された部分の端部形状が円弧状となって矩形状のパターンの形成が困難となる。マスター担体基板の凹凸パターンの各エレメントの特にその上面形状は、この描画された部分に応じた形状となるものであり、該描画された部分の端部形状が円弧状となるとマスター担体基板の凹凸パターンの凸部上面形状が円弧状等の矩形から大きくはずれた形状となり、スレーブ媒体への所望の磁化パターンの形成が困難となる。
【0005】
そこで、本出願人は、レーザ光と比較して小さなビーム径を有する電子ビームを用いて、パターン描画を行う方法について特願2002−202629において提案している。
【0006】
この特願2002−202629においては、エレメントの上面形状の最小幅より小さいビーム径の電子ビームによるパターン描画を行う方法が提案されており、凹凸パターンの各エレメントの上面形状を、電子ビームを複数回走査させて描画する方法が記載されている。詳細には、例えば、凹凸パターンの各エレメントがトラック方向(円周方向)に垂直に延びる矩形状である場合に、電子ビームをトラック方向に垂直な方向(半径方向)に1走査させる毎に、基盤を微少回転させ、この1走査と微小回転を交互に複数回繰り返して1つのエレメントを描画する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−183623号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平10−40544号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平10−269566号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2001−256644号公報
【0011】
【特許文献5】
特開2001−110050号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、基盤の断続的な回転動作を伴う描画方法では、パターン描画に非常に時間がかかるという問題がある。
【0013】
また、凹凸パターンがトラック方向(円周方向)に垂直に延びる上面矩形のエレメントのみでなく、位相サーボパターンのように上面がトラック方向に斜めに交差して延びる斜辺を有する上面平行四辺形のエレメントを含む場合、電子ビームを半径方向に複数回走査させて描画すると、該斜めに交差して延びる斜辺が階段状になり、精度良く形成できないという欠点がある。このエレメント上面の平行四辺形の斜辺は、磁化遷移領域となる部分に対応するものであり、この直線性は信号再生時に非常に重要である。
【0014】
また、光ディスクにおいても、さらなる高密度化を図るためには、スタンパー作製時に電子ビームによる描画を行う必要が生じる可能性がある。
【0015】
また、現在、小型軽量化が可能な高密度磁気記録媒体として実現化が期待されているパターンドメディアの作製においては、電子ビームによりパターン露光を行うことが提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、特許文献5には、電子ビームを用いるとの記載はあるが、電子ビームによる描画方法についての詳細は開示されておらず、実際にはどのように描画を行っているのか明らかでない。
【0016】
いずれも円盤状担体であり、同心円状もしくは螺旋状のトラックを有する高密度記録用メディアを作製するためのもの、もしくは高密度記録用メディア自体である。それぞれ、その作製工程において、円形基盤上に塗布されたレジストに所望のパターンを描画して、該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を含む点で共通する。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みて、円形基盤上に塗布されたレジストに所望のパターンを精度良く描画する電子線描画方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
また、本発明は、電子線により精度よく描画されたパターンを有する、磁気転写用マスター担体、光ディスク用スタンパ、高密度磁気記録媒体パターンドメディア等の高密度記録のための円盤状担体を提供することを目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子線描画方法は、円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画する電子線描画方法であって、
前記パターンの描画を、該パターンの最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、前記円形基盤の円周方向に交差する方向に往復振動させると共に、前記円形基盤を一方向に回転させることにより行うことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の円盤状担体は、円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画して該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製される、高密度記録のための円盤状担体であって、
前記パターンの描画が、該パターンの最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、前記円形基盤の円周方向に交差する方向に往復振動させると共に、前記円形基盤を一方向に回転させることにより行われたものであることを特徴とするものである。
【0021】
ここで「所望のパターン」は、同心円状もしくは螺旋状の配列された1ビットもしくは数ビット単位のエレメントから構成されるものであってもよいし、グルーブ(もしくはランド)に対応する、同心円状もしくは螺旋状に連続的に延びて形成されるパターンを含むであってもよい。パターンの形状およびサイズ、配置は、円盤状担体毎で異なる。すなわち、「パターンの描画」とは、該パターンを構成する個々のエレメント等を描画することにより達成されるものである。
【0022】
「パターンの最小幅」とは、所望のパターンを構成するエレメントおよび/またはグルーブ等のパターンにおける、互いに対向する辺間の距離が最短である箇所の幅をいう。例えば、パターンを構成するエレメントが、略平行四辺形(矩形を含む)である場合、互いに平行な2組の辺のうち、対向する辺の間隔が短い方の1組の辺の間隔が、パターンの最小幅となる。
【0023】
描画するエレメント形状が、同心円状もしくは螺旋状のトラック方向に沿った互いに略平行な2辺とトラック方向に交差する互いに略平行な2辺からなる略平行四辺形である場合、電子ビームの基盤上における走査方向が、該平行四辺形を構成する、トラック方向に交差する辺の延びる方向と略平行となるようにして描画すればよい。また、このような略平行四辺形を描画するためには、電子ビームを一定の振幅で往復振動させればよい。この場合、前記電子ビームを振動させる「前記円周方向に交差する方向」は、円形基盤の回転を考慮して、電子ビームの基盤上における走査方向が所望の方向となるように制御すればよい。なお、円形基盤の円周方向とは、円形基盤の回転方向と略一致するものである。
【0024】
円盤状担体としては、磁気転写用マスター担体、光ディスク用スタンパ、高密度磁気記録媒体パターンドメディア等が挙げられる。
【0025】
磁気転写用マスター担体とは、スレーブ媒体(磁気記録媒体)に転写する情報に応じたパターン状の磁性層を表面に有する担体であり、作製工程における前記所望のパターンの描画がなされる円形基盤は、マスター担体の基板そのものであってもよいし、該マスター担体を作製するための原盤であってもよい。なお、転写する情報としては、例えばサーボ信号が挙げられる。パターン状の磁性層は、描画された所望のパターンに応じたものとなる。
【0026】
「パターン状の磁性層」は、例えば、表面に凹凸パターンが形成された基板の凸部上面にのみもしくは凹凸パターンに沿って磁性層を積層することにより構成される。あるいは表面に凹凸パターンが形成された基板の凹部にのみ埋め込まれた磁性層により構成することもできる。また、平板基板上に形成された、凹凸形状の表面を有する磁性層により構成するものであってもよいし、平板基板上に互いに独立して複数の凸部状の磁性層が配列されて、パターン状の磁性層を構成するものであってもよい。表面に凹凸パターンが形成された基板が磁性体からなるものであれば、該凹凸パターンによりパターン状の磁性層を構成すると共に、この基板自体でマスター担体を構成することもできるが、基板上に磁性層が積層されることが好ましい。磁性層としては、軟磁性層もしくは半硬質磁性層が特に好ましい。
【0027】
なお、磁気転写用マスター担体のパターン状の磁性層は、前記所望のパターンに対応して形成されてなるものであり、凹凸パターンの凸部上面もしくは凹部開口からなるパターンが前記所望のパターンに対応するものである。なお、個々の凸部上面もしくは凹部の開口が、所望のパターンを構成する個々のエレメントに対応するものである。
【0028】
光ディスク用スタンパとは、光ディスクに転写すべき情報に応じた凹凸パターンを表面に有する担体であり、作製工程における前記所望のパターンの描画がなされる円形基盤は、スタンパそのものであってもよいし、該スタンパを作製するための原盤であってもよい。
【0029】
表面の凹凸パターンは、いわゆる、ランドとピット(およびグルーブ)に対応するものであり、前記所望のパターンに対応して形成されてなるものであり、ここでは、ピットおよびグルーブの上面(もしくは開口)からなるパターンが前記所望のパターンに対応するものである。
【0030】
高密度磁気記録媒体パターンドメディアとは、上述の特許文献5等に挙げられる、単磁区を構成する磁性体(単磁区微粒子)が物理的に孤立して規則的に配列されてなり、微粒子1個に1ビットを記録するメディアである。この作製工程における前記所望のパターンの描画がなされる円形基盤は、パターンドメディアの基板そのものであってもよいし、パターンドメディアを作製するための原盤であってもよい。パターンドメディアにおいては、単磁区微粒子が前記所望のパターンに対応して形成されるものであり、この単磁区微粒子の上面が所望のパターンを構成する個々のエレメントに対応するものである。
【0031】
【発明の効果】
本発明の電子線描画方法によれば、所望のパターンの最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、円形基盤の円周方向に交差する方向に一定の振幅で往復振動させると共に、円形基盤を一方向に回転させることにより、各パターンの描画を行うので、円形基盤を断続的に回転させていた場合と比較して描画速度を飛躍的に向上させることができる。
【0032】
また、トラック方向に対して斜めに交差して延びる斜辺を有するエレメントを描画する際、前述の従来技術のように、トラック方向もしくはこれに垂直な半径方向に電子ビームを複数回走査させて描画すると、エレメントのトラック方向に交差する斜辺が階段状になるという問題があったが、本発明によれば、電子ビームの走査方向が、結果としてエレメントのトラック方向に交差する斜辺方向となるように描画するため、該エレメントのトラック方向に交差する斜辺がほぼ直線となり、良好なパターン形状を得ることができる。
【0033】
上記電子線描画方法を用いた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された高密度磁気記録のための円盤状担体は、所望のパターンを高精度に担持するものとすることができる。
【0034】
上記電子線描画方法を用いた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された精度高いパターンを備えたマスター担体を磁気転写に用いれば、転写品位の高い磁気転写を実施することができる。
【0035】
上記電子線描画方法を用いた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された光ディスク用スタンパを用いれば、再生特性を向上させたCD、DVD等の光ディスクを得ることができる。
【0036】
上記電子線描画方法を用いた凹凸パターンを形成する工程を経て作製されたパターンドメディアは、高密度かつ精度よく配列されたパターンを備えたものとすることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0038】
本発明の磁気転写用マスター担体の作製方法について説明する。図1は、その磁気転写用マスター担体の原盤を作製する過程を示す模式図である。図2は、原盤表面の描画パターン(露光パターン)の一部を拡大した上面図である。
【0039】
なお、ここで描画パターンは、マスター担体の基板に形成すべき凹凸パターンに応じたパターンであり、凹凸パターンを構成する凸部の上面もしくは凹部の開口が描画パターン中の個別の描画すべきエレメントである。
【0040】
本実施の形態における磁気転写用マスター担体の原盤の作製方法について説明する。
【0041】
図1(a)に示すように、例えばシリコン、ガラスあるいは石英からなる円形基盤11を、1方向に回転させながら、スピンコート法により、ノズル13から、ポジ型電子ビーム描画用レジスト12が有機溶剤に溶解されたレジスト溶液12’を円形基板11上に塗布した後、ベークする。
【0042】
次に、図1(b)に示すように、電子ビーム描画用レジスト12が塗布された円形基盤11をA方向に回転させながら、サーボ信号等の転写情報に対応して変調した電子ビームEBを走査させることにより1トラック毎に所望のパターンを描画する。なお、円形基盤11の回転方向Aは、エレメント単位に微視的にみると、ほぼ径方向Yに垂直な方向X(以下、これを円周方向Xもしくはトラック方向Xという)とみなすことができる。
【0043】
次に、図1(c)に示すように、電子ビーム描画用レジスト12を現像処理して、同心円16に沿った所望のパターン15が電子ビーム描画用レジスト12に転写された基盤11を得る。
【0044】
ここで、図1(c)に示すパターン15は、同心円状に、所定の間隔で形成されるサーボ信号領域に形成されたサーボ信号に応じたパターンである。
【0045】
図2は、基盤表面の描画パターン(露光パターン)15の一部を拡大した上面図であり、具体的には1トラックの一部のみを示している。この描画パターン15は、円周方向(トラック方向)Xに斜めに交差して延びるエレメント12aを含むものである。図2中斜線で示した部分が電子ビームにより描画(露光)されたエレメント12aであり、その形状はトラック方向Xに角度θをなす斜辺を有する略平行四辺形である。なお、このエレメント12a等の露光部分は、現像により除去されて凹部となる。この凹凸パターンとされたレジストを備えた円形基盤が、磁気転写用マスター担体の原盤となる。
【0046】
図3は、本実施形態において用いられる電子ビーム露光装置の要部側面図(a)および上面図(b)を示すものである。電子ビーム露光装置40は、電子ビームEBをY方向(基盤径方向)およびX方向(円周方向)へ偏光させる偏光手段21、22を備えており、電子銃23から出射された電子ビームEBは偏光手段21、22および図示しないレンズ等を経て、描画パターンを構成する各エレメントの最小幅よりも小さいビーム径で円形基盤11上に照射される。なお、エレメント描画時には、偏光手段21、22を制御して電子ビームEBを、基盤の円周方向Xと交差する所定の方向に一定の振幅で微少振動させる。
【0047】
また、電子ビーム露光装置40は、円形基盤11を支持する円形ステージ41および該ステージ41の中心軸42と一致するように設けられたモータ軸を有するスピンドルモータ44を備えた回転ステージユニット45と、該回転ステージユニット45の一部を貫通し、円形ステージ41の一半径方向(上記Y方向)に延びる一本のシャフト46と、該回転ステージユニット45をシャフト46に沿って移動させるための移動手段とを備えている。回転ステージユニット45の一部には、上記シャフトと平行に配された、精密なネジきりが施されたロッド47が螺合され、このロッド47は、パルスモータ48によって正逆回転されるようになっており、このロッド47とパルスモータ48により回転ステージユニット45の移動手段が構成される。なおパルスモータの駆動、電子ビームの変調、偏光手段の制御等はコントローラ50によって行われる。
【0048】
図4は、図2に示したトラック方向Xに斜めに交差して延びるエレメント12aの描画方法の模式図を示す。円形基盤11をA方向に回転させるとともに、Y方向およびX方向偏光手段21、22をそれぞれ正弦波等の周期関数信号で互いに同期させて制御して電子ビームEBを所定の方向に一定の振幅で周期的に振動させることにより、結果として電子ビームEBをエレメント12aの所望の角度θを有する斜辺に沿った方向に複数回走査させて、略平行四辺形形状のエレメント12aの描画を行う。
【0049】
図4中、電子ビームEBをY1、Y2、Y3・・・・Y8へと順次走査させ、1つのエレメント12aの描画を行う。この際、電子ビームEBを所望の角度θを有する斜辺に沿った方向に走査させるように、Y方向およびX方向偏光手段21、22を制御して電子ビームEBの振動方向を調整する。ここでは、円形基盤11の回転速度は、電子ビームEBの振動の一周期で電子ビームの照射位置がY1からY3へ移動する程度であり、電子ビームEBの振動方向は、円形基盤11の回転による照射位置のトラック方向Xへの変移を考慮した方向としている。なお、1トラックのパターン描画後、回転ステージユニット40が移動されて、隣接する次のトラックの描画を開始する。
【0050】
なお、エレメントの描画時において、図中クロスハッチで示す部分14が露光されず、平行四辺形の鋭角となるべきエレメント12aの角部が円弧状となる。円弧状部分は結果として、記録損失に繋がるものであり、これを低減するためには、電子ビームEB径を小さくし、走査回数を多くすることが有効であるが、描画効率との関係で適宜設定すればよい。なお、凹凸パターン凸部上面のトラック方向と交わる斜辺の直線性は、トラック幅方向のヘッド走査領域において非常に重要であるが端部においてはその影響は小さいと考えられる。
【0051】
このように、電子ビームEBの基盤上における走査方向が、結果としてエレメントのトラック方向と交差する斜辺となるように描画するので、描画されたエレメントの斜辺は略直線となり、結果として斜辺が略直線の上面形状の凸部からなる凹凸パターンを有する基板を形成することができる。このような基板を備えたマスター担体を用いれば、転写パターンの磁化遷移領域の直線性も向上する。
【0052】
なお、各エレメントの形状と電子ビーム描画用レジストの感度とを考慮しながら、電子ビームの出力およびビーム径を調整することが望ましい。
【0053】
上述の実施形態において、電子ビームEBの回転基盤上における走査方向が、トラック方向に対して所望の傾きθを有する方向、すなわち描画すべきエレメントのトラック方向に交差する斜辺の方向となるように、Y方向およびX方向偏光手段21、22を制御して電子ビームEBの振動方向を調整する際の、具体的な方法を図5を参照して以下に説明する。
【0054】
図5は、始点を原点としたXY座標系において、該原点から各象限に向けて延びる斜辺を有する平行四辺形およびその描画方法を模式的に示すものである。各図において斜辺の傾きはθ1〜θ4で示す。
【0055】
ここでは、電子ビームEBをy方向およびx方向それぞれに周期的に変移させる周期関数として、y=Asin(ωt+α)、x=Bsin(ωt+β)の正弦波を用いた描画方法について説明する。fは両周期関数の振動数、A、Bは各振幅、α、βは各位相、ω=2πfであり、それぞの周期関数の位相α、βが|β−α|=nπの関係にあるとき、基盤が静止していれば、電子ビームEBの軌跡は、xy座標においてA/Bの傾きを有する直線(図中鎖線K)となる。このとき、電子ビームEBの照射位置は、A/Bの傾きを有する直線上を単振動する。なお、各エレメントを描画する際、この単振動の最大振幅もしくは最小振幅の位置から照射を開始し、複数回振動させて、開始位置の位相からπずれた最小振幅もしくは最大振幅の位置で照射を終了させるよう制御する。
【0056】
一方、円形ステージの回転により、基盤上における電子ビームEBの照射位置は基盤が静止していた場合と比較して円周方向に変移する。電子ビーム照射位置におけるステージの回転に伴う線速度をvとすると、上述の周期関数の半周期1/2f時間に照射位置が、ステージの回転により円周方向(トラック方向)xに移動する距離Δxは、Δx=v/2fで表される。したがって、この距離Δxを考慮してX方向の振幅Bを設定するため、図5中の各平行四辺形のトラック方向xに交差して延びる斜辺の、トラック方向に対する傾きθについて、tanθ=2A/(2B+Δx)を満たすようにする。すなわち、所望の傾きθの平行四辺形を描画しようとする際、tanθ=2A/(2B+Δx)を満たすように各周期振動の振幅A,Bを定めればよい。なおここで、平行四辺形の傾きθとは、描画の始点を原点として、該原点を通る円周方向の直線からの傾き角度であり、0<θ<2π(θ≠π)である。
【0057】
すなわち、電子ビームEBは、原点から延びている所定傾きの一点鎖線Kに沿って振動させており、この鎖線Kは円盤が静止していた場合の電子ビームEBの軌跡を示すものである。電子ビームEBはこの鎖線Kに沿った振動を行うが、同時に円盤が図中−x方向に回転するために、結果として電子ビームEBは図に示すような軌跡Lを描く。
【0058】
図5(a)、(b)の描画方法について、例に挙げて説明する。図5(a)の場合、α=β=−π/2とし、例えばθ1=45°の平行四辺形を描く場合、tanθ1=2A/(2B+Δx)=1、すなわち2A=2B+Δxを満たすA、Bを定める。
【0059】
図5(b)の場合、α=−π/2、β=π/2とし、例えばθ2=135°の平行四辺形を描く場合、tanθ2=2A/(2B+Δx)=−1、すなわち2A=−(2B+Δx)を満たすA、Bを定める。
【0060】
なお、図5(a)および(c)に示す描画方法において、θ3=π+θ1とすれば略同一の平行四辺形を描くことができる。同様に、同図(b)および(d)に示す描画方法において、θ4=π+θ2 とすれば略同一の平行四辺形を描くことができる。
【0061】
なお、ここでは、正弦波を用いて描画する方法について詳述したが、本発明の描画方法は、この波形に限るものではなく、ビーム軌跡が、矩形波、パルス波、三角波等となるような種々の周期関数を採用することができる。
【0062】
次に、上記の原盤を用いた磁気転写用マスター担体の作製方法について説明する。図6はそのマスター担体の作製過程の一部を示す断面模式図である。
【0063】
図6(a)に示すように、上記のようなパターン描画方法により、基盤11上の電子ビーム描画用レジスト12上に所望のパターンを描画する。現像処理で露光した部分12aを除去し、電子ビーム描画用レジスト12からなる凹凸パターンを有する原盤を得る。
【0064】
次に、図6(b)に示すように、前記原盤の表面の凹凸パターン表面に薄い導電層を成膜し、その上に、電鋳を施し、金属の型をとったポジ状凹凸パターンを有する基板31を得る。
【0065】
その後、図6(c)に示すように、原盤から所定厚みとなった基板31を原盤から剥離する。基板31の表面の凹凸パターンは、原盤の凹凸形状が反転されたものである。
【0066】
基板31の裏面を研磨した後、この基板31をそのまま磁気転写用マスター担体とするか、あるいは、図6(d)に示すように、凹凸パターン上に磁性層32を被覆したものを磁気転写用マスター担体とする。
【0067】
また、前記原盤にメッキを施して状凹凸パターンを有する第2の原盤を作製し、この第2の原盤を使用してメッキを行い、ネガ状凹凸パターンを有する基板を作成してもよい。さらに、ポジ状凹凸パターンを有する第2の原盤にメッキを行うか樹脂液を押し付けて硬化を行ってネガ状凹凸パターンを有する第3の原盤を作製し、第3の原盤にメッキを行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作製してもよい。
【0068】
一方、前記円形基盤11に電子ビーム描画用レジストによる凹凸パターンを形成した後、電子ビーム描画用レジストをマスクにエッチングして円形基盤11に凹凸パターンを形成し、電子ビーム描画用レジストを除去した原盤を得てもよい。以降の工程は前記と同様にして基板31を形成することができる。
【0069】
いずれの場合も基板31の凹凸パターンの凸部あるいは凹部形状は、原盤のレジストの凹凸パターンに依存した形状となる。上述の通り、原盤の凹凸パターン作製時において、略平行四辺形形状のエレメントを、電子ビームEBの走査方向が、斜辺と一致するように描画することにより、エレメントの斜辺が直線となるので、凸部の上面形状の斜辺が略直線である凹凸パターンを備えた基板31を得ることができる。
【0070】
基板31の材料としては、NiもしくはNi合金を使用することができ、この基板を作製するための前記メッキとしては、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法が適用できる。基板31の凹凸パターンの深さ(突起の高さ)は、80nm〜800nmの範囲が好ましく、より好ましくは150nm〜600nmである。
【0071】
前記磁性層32は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。その磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)が用いることができる。特に好ましくはFeCo、FeCoNiである。磁性層32の厚みは、50nm〜500nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは100nm〜400nmである。
【0072】
前記原盤を用いて樹脂基板を作製し、その表面に磁性層を設けてマスター担体としてもよい。樹脂基板の樹脂材料としては、ポリカーボネート・ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィンおよびポリエステルなどが使用可能である。耐湿性、寸法安定性および価格などの点からポリカーボネートが好ましい。成形品にバリがある場合は、バーニシュまたはポリッシュにより除去する。また、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを使用して、原盤にスピンコート、バーコート塗布で形成してもよい。樹脂基板のパターン突起の高さは、50〜1000nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは100〜500nmの範囲である。この樹脂基板の表面の微細パターンの上に磁性層を被覆しマスター担体を得る。
【0073】
なお、情報に応じた凹凸パターンが形成された原盤に、樹脂液を塗布し硬化させて樹脂基盤を作製し、この樹脂基盤の凹凸パターン上に磁性層を成膜し、該磁性層の裏面の凹凸を研磨して平坦化した後、この磁性層の平坦裏面に電鋳により平坦基板を積層し、樹脂基盤より剥離することによって平板基板上に表面に凹凸パターンを有する磁性層が積層されてなるマスター担体を得ることもできる。
【0074】
次に、上記のようにして作製された磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法について説明する。図7はその磁気転写の基本工程の一例を示す断面模式図である。なお、図7に示す形態は面内記録方式である。
【0075】
面内磁気記録媒体への磁気転写の概要を図7に基づき説明する。なお、図7中スレーブ媒体はその片面の磁気記録部のみを記載している。まず、図7(a)に示すように、最初にスレーブ媒体2に初期静磁界Hinをトラック方向の一方向に印加して予め初期直流磁化を行う。その後、図7(b)に示すように、このスレーブ媒体2のスレーブ面(磁気記録部)と、マスター担体3の基板31の微細凹凸パターンに磁性層32が被覆されてなる情報担持面の凸部パターン32aとを密着させ、スレーブ媒体2のトラック方向に前記初期磁界Hinとは逆方向に転写用磁界Hduを印加して磁気転写を行う。転写用磁界Hduが磁性層32の凸部パターン32aに吸い込まれてこれに対応する部分のスレーブ媒体2の磁性層の磁化は反転せず、その他の部分の磁界が反転する結果、図7(c)に示すように、スレーブ媒体2のスレーブ面(トラック)にはマスター担体3の情報担持面の磁性層32の密着凸部パターン32aと凹部空間との形成パターンに応じた磁化パターンが転写記録される。
【0076】
図示のように、スレーブ媒体2の片面にマスター担体3を密着させて片面逐次転写を行う場合と、スレーブ媒体2の両面にそれぞれマスター担体3を密着させて両面同時転写を行う場合とがある。
【0077】
なお、初期磁界および転写用磁界は、磁気記録媒体の磁性層の保磁力、マスター担体および磁気記録媒体の磁性層の比透磁率を勘案して定められた値を採用する必要がある。
【0078】
垂直磁気記録媒体への磁気転写の場合にも、上記面内磁気記録媒体用とほぼ同様のマスター担体3が使用される。この垂直記録の場合には、スレーブ媒体2の磁化を、予め垂直方向の一方に初期直流磁化しておき、マスター担体3と密着させてその初期直流磁化方向と略逆向きの垂直方向に転写用磁界を印加して磁気転写を行うものであり、この転写用磁界がマスター担体3の凸部パターン32aの磁性層32に吸い込まれ、凸部パターン32aに対応する部分のスレーブ媒体2の磁性層の垂直磁化が反転し、凹凸パターンに対応した磁化パターンをスレーブ媒体2に記録することができる。
【0079】
スレーブ媒体2は、両面または片面に磁性層が形成されたハードディスク、高密度フレキシブルディスクなどの円盤状磁気記録媒体であり、その磁気記録部は塗布型磁気記録層あるいは金属薄膜型磁気記録層で構成される。金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。これらは磁束密度が大きいので明瞭な転写が行えるため好ましい。そして磁性層に必要な磁気異方性をつけるために、磁性材料の下(支持体側)には非磁性の下地層を設けることが好ましい。なお、非磁性層の結晶構造と格子定数は、磁性層に合わせる必要があり、そのためにはCr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等が好適である。
【0080】
初期磁界および転写用磁界を印加する磁界印加手段は、面内記録の場合には、例えば、スレーブ媒体2の半径方向に延びるギャップを有するコアにコイルが巻き付けられたリング型電磁石装置が上下両側に配設されてなり、上下で同じ方向にトラック方向と平行に発生させた転写用磁界を印加する。磁界印加時には、スレーブ媒体2とマスター担体3との密着体を回転させつつ磁界印加手段によって転写用磁界を印加する。なお、磁界印加手段を回転移動させるように設けてもよい。また、磁界印加手段は、片側にのみ配設するようにしてもよく、永久磁石装置を両側または片側に配設してもよい。
【0081】
垂直記録の場合の磁界印加手段は、極性の異なる電磁石または永久磁石をスレーブ媒体2とマスター担体3との密着体の上下に配置し、垂直方向に磁界を発生させて印加する。部分的に磁界を印加するものでは、スレーブ媒体2とマスター担体3との密着体を移動させるか磁界を移動させて全面の磁気転写を行う。
【0082】
本発明の電子線描画方法を用いたエレメント描画工程を含む光ディスク用スタンパ作製について説明する。
【0083】
図8は、光ディスク用スタンパの斜視図および一部拡大図を示すものである。図8に示すように、光ディスク用スタンパ120は、その表面に凸状のピット121とグルーブ122が螺旋状に配列されたパターンを有してなる。この凸状のピット121およびグルーブ122の上面形状が描画すべき所望のパターンを構成するものであり、本発明の電子線描画方法により所望のパターンを描画する工程を経て作製される。
【0084】
光ディスクスタンパの作製工程を図9に示し、説明する。
【0085】
まず。図9(a)に示すように、円形のシリコン基板111を、一方向に回転させながら、スピンコート法により、ノズル113から、電子線描画用レジスト112が有機溶剤に溶解されたレジスト溶液112’をシリコン基板111上に塗布した後、ベークする。なお、ここでは円形基盤としてシリコン基板を用いたが、導電膜を付与したガラス基板を用いてもよい。
【0086】
次に、図9(b)に示すように、電子線描画用レジスト112が塗布された円形シリコン基板111をA方向に回転させながら、ピットの長短(およびグルーブの長さ)に変換したデータに対応して変調した電子ビームEBを走査させることにより所望のパターンを描画する。ここでは、回転ステージ41を回転させるとともに、回転ステージ41をほぼ連続的にY方向に移動させることにより螺旋状のパターン(螺旋状に並んだピットおよびグルーブ等の上面に対応するパターン)116を描画する。なお、電子ビームEBの照射径はパターンの最小幅よりも小さいので、上述のマスター担体作製用の基盤上への個々のエレメントを描画する場合と同様にしてピットおよびグルーブ等の上面に対応するパターン116aを描画する。なお、図8に示すグルーブはウォブルグルーブであるので、所望のウォブルを形成するように電子ビームEBの振幅を変化させる等の制御を行って描画する。
【0087】
次に、図9(c)に示すように、電子線描画用レジスト112を現像処理して、螺旋状に形成された所望のパターン116が電子線描画用レジスト112に転写されたシリコン基板111を得る。これが光ディスク用スタンパの原盤となり、これを基に複数の光ディスク用スタンパが形成される。
【0088】
なお、上記のようにして作製された光ディスク用スタンパを用いて複数の光ディスクが複写成形される。
【0089】
エレメント描画時の電子線の軌跡は、周期関数としていかなる関数を用いるかによって異なり、これによりエレメント端部におけるレジストの露光量が異なるものとなるために、レジスト現像後の凹凸パターンの凸部の立ち上がり角度(図8中γで示す角度)が異なるものとなる。この立ち上がり角度は、再生特性に影響があると考えられる。従来のレーザ光による露光では、レーザ光の径により凸部の形状が決まるために、凸部の立ち上がり角度等の変更はできなかったが、ピットやグルーブの最小幅より小さい径の電子線を用いた本発明の描画方法を用いることにより、凸部の立ち上がり角度を所望のものとすることができるため、光ディスクにおける再生特性の最適なものを選ぶことができる。
【0090】
次に、本発明の電子線描画方法を用いたエレメント描画工程を含む、高密度磁気記録媒体パターンドメディアについて説明する。
【0091】
図10は、パターンドメディアの斜視図および一部拡大図を示すものである。図10に示すように、パターンドメディアスタンパ130は、その表面に凹部131aが同心円状のトラックに沿って規則的に配列された、凹凸パターンを表面に有する支持体131と、支持体131の凹部131aに埋め込まれた磁性体132とを備えている。支持体131に形成された凹部131aの開口形状、ここでは、磁性体132が埋め込まれている領域形状が、描画すべきパターンを構成するエレメントに対応するものであり、これを本発明の電子線描画方法により描画する工程を経て、凹凸パターンを表面に有する支持体131が作製され、凹部の磁性体が埋めこまれ、磁性体パターンを表面に有するパターンドメディアが作製される。
【0092】
なお、支持体131を円形基盤として、支持体131上にレジストを塗布し、該レジストに所望のパターンの描画を行う。該所望のパターンを構成する個々のエレメントの形状は略長方形であり、同心円状に規則的に配列されたものである。このエレメントの描画も既述のマスター担体作製時のエレメント描画と同様の制御により行う。その後、現像を行いレジストを凹凸パターンとし、例えば、特許文献5記載のように、該レジストをマスクとして支持体表面をエッチングし、磁性体を蒸着し、レジストをリフトオフすることにより、支持体131の凹部131aに磁性体132が埋め込まれた図10に示すパターンドメディアを作製する。なお、パターンドメディアの作製方法としては、マスター担体の作製方法の場合と同様に、凹凸パターンを表面に有する原盤を作製し、その原盤への電鋳により、凹凸パターンを表面に有する支持体を形成するようにしてもよい。パターンドメディアは、磁性体132が埋め込まれた形状のみならず、平板支持体上に凸部状の磁性体が規則的に配列されて構成されるものであってもよい。
【0093】
なお、本発明の電子線描画方法を用いた、高密度記録媒体用の円形基盤としての、磁気転写用マスター担体、光ディスク用スタンパおよびパターンドメディアの上述の作製方法は、一例であり、本発明の電子描画方法を用いて所望のパターンの描画を行い、凹凸パターンを形成する工程を経るものであれば上述の作製方法に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】マスター担体の原盤への凹凸パターン形成方法を示す模式図
【図2】描画パターンを示す上面図
【図3】電子ビーム露光装置の概略構成を示す要部側面図および上面図
【図4】電子ビーム描画方法を示す模式図
【図5】具体的な電子ビーム描画方法を示す模式図
【図6】本発明の磁気転写用マスター担体の作製方法を示す断面模式図
【図7】磁気転写の基本工程の一例を示す断面模式図
【図8】光ディスク用スタンパを示す斜視図
【図9】光ディスク用スタンパの原盤への凹凸パターン形成方法を示す模式図
【図10】パターンドメディアを示す斜視図
【符号の説明】
2 スレーブ媒体(磁気記録媒体)
3 磁気転写用マスター担体
11 円形基盤
12 電子ビーム描画用レジスト
12a 露光部分(エレメント)
13 ノズル
15 描画パターン
21、22 偏光手段
31 マスター担体基板
32 磁性層
40 電子ビーム露光装置
Claims (2)
- 円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画する電子線描画方法であって、
前記パターンの描画を、該パターンの最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、前記円形基盤の円周方向に交差する方向に往復振動させると共に、前記円形基盤を一方向に回転させることにより行うことを特徴とする電子線描画方法。 - 円形基盤上に塗布されたレジストに電子線を照射して、所望のパターンを描画して該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製される、高密度記録のための円盤状担体であって、
前記パターンの描画が、該パターンの最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、前記円形基盤の円周方向に交差する方向に往復振動させると共に、前記円形基盤を一方向に回転させることにより行われたものであることを特徴とする円盤状担体。
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