JP4362730B2 - 磁気転写用マスター記録媒体、磁気記録媒体製造方法 - Google Patents

磁気転写用マスター記録媒体、磁気記録媒体製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気転写用マスター記録媒体、磁気転写方法、及び磁気記録媒体に係り、特に、ハードディスク装置等に用いられる磁気ディスクに、マスターディスクからフォーマット情報等の磁気情報パターンを転写するのに好適な磁気転写用マスター記録媒体、この磁気転写用マスター記録媒体を使用した磁気転写方法、及びこの磁気転写方法により磁気情報を記録した磁気記録媒体に関する。
近年、急速に普及しているハードディスクドライブに使用される磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーよりドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれるのが一般的である。この書き込みは、磁気ヘッドにより行うこともできるが、これらのフォーマット情報やアドレス情報が書き込まれているマスターディスクより一括転写する方法が効率的であり、好ましい。
この磁気転写技術は、マスターディスクと被転写ディスク(スレーブディスク)とを密着させた状態で、片側又は両側に電磁石装置、永久磁石装置等の磁界生成手段を配設して転写用磁界を印加し、マスターディスクの有する情報(たとえばサーボ信号)に対応する磁化パターンの転写を行うものである。
この磁気転写では、マスターディスクとスレーブディスクとの相対的な位置を変化させることなく静的に記録を行うことができ、しかも記録に要する時間も極めて短時間であるという利点を有している。
特に、近年の電子線描画技術に代表される超微細加工技術の進歩により、最短ビット長が100nm以下である信号のパターニングも可能となり、現在のハードディスクの面密度相当の信号の一括書き込みを磁気転写により行うことも可能となってきた。
従来より、この種の磁気転写技術として各種の提案がなされている(たとえば、特許文献1、2等。)。この特許文献1の提案は、基板の表面に情報信号に対応する磁性材料からなる凹凸形状が形成されたマスターディスクより一括転写するものである。特許文献2の提案は、磁気転写の際にマスターディスクとスレーブディスクとの密着性を向上させるものである。そして、これらの提案により、高密度の磁気転写ができるとされている。
特開平10−40544号公報 特開平10−269566号公報
しかしながら、磁気転写技術の大きな問題の1つとして、ビット長が小さい内周側の転写領域において、信号出力が外周側に比べて低くなることが指摘されている。そして、極端な場合には、内周側の転写領域において、信号出力が全くでないこともある。
その理由は、マスターディスクの各磁気パターン(ビット)において、径方向のビット長さはディスクの全面において均一であるが、周方向のビット長さはディスクの径方向位置により異なり、内周部分においてビット長が小さくなるからである。
したがって、内周部分におけるビットの面積も小さく、信号出力が外周側に比べて低くなる。この関係は、マスターディスクとスレーブディスクの磁性層とのスペーシングが大きくなることと等しく、信号出力が出にくく、書き込みエラーとなりやすい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、磁気転写を行う際の書き込みエラーを除去でき、高密度記録に対応した磁気転写用マスター記録媒体、この磁気転写用マスター記録媒体を使用した磁気転写方法、及びこの磁気転写方法により磁気情報を記録した磁気記録媒体を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、表面に多数の微細な凹凸状の磁性層パターンが形成されている円盤状の磁気記録媒体であって、前記磁性層パターンの円周方向の突起側面が円盤平面に対し傾斜角度θをなして形成され、該傾斜角度θが円盤の径位置によって異なるように形成されていることを特徴とする磁気転写用マスター記録媒体を提供する。
本発明者らは、上記課題解決のため各種の検討を行った結果、磁性層パターンの円周方向の突起側面の円盤平面に対する傾斜角度θにより信号出力が異なることに注目した。そして、磁場解析シミュレーション等の結果から、傾斜角度θを大きく(直角に近付ける)すると出力が大きくなり、逆に傾斜角度θを小さく(寝かせる)すると出力が小さくなることを見出した。
そして、マスターディスクの作成工程においてプロセス条件を最適化することにより、マスターディスクの内周側と外周側とで断面形状を意図的に変化させ、内周側と外周側における転写信号特性を均一に向上させることができることも解った。
したがって、本発明によれば、磁気転写を行う際の書き込みエラーを除去でき、高密度記録に対応できる。
本発明において、前記磁性層パターンの円周方向の断面形状が、上面と両側面とを有する突起形状であり、最内周側の前記磁性層パターンにおいて前記上面と側面との境界部での上面と側面とがなす角度がθ1であり、最外周側の前記磁性層パターンにおいて前記上面と側面との境界部での上面と側面とがなす角度がθ2である場合、θ2>θ1となっていることが好ましい。
このように、磁性層パターンにおいて上面と側面との境界部での上面と側面とがなす角度により信号出力が異なり、外周側の角度θ2を内周側の角度θ1より大きくすることにより、内周側と外周側における転写信号特性を均一に向上させることができる。なお、θ1及びθ2は、後述する図4(a)に図示される。
なお、この角度θ1及びθ2は、90度以上の鈍角となっているが、90度以下の鋭角の場合もあり得る。また、上面及び側面の一方又は双方が直線状でなく曲線状(たとえば円弧状)の場合、上面と側面とがなす角度とは、境界部での上面と側面の接線同士(又は接線と直線と)がなす角度を意味する。
また、本発明において、前記傾斜角度θが、最内周側の角度θ1より最外周側の角度θ2まで増大するように形成されていることが好ましい。このように、傾斜角度θが、最内周側の角度θ1より最外周側の角度θ2まで、径の増大にしたがって、連続的に又は断続的に増大するように形成されていれば、転写信号特性を均一に向上させることができる。
本発明において、前記磁性層パターンの円周方向の断面形状が、上面と両側面とを有する突起形状であり、最内周側の前記磁性層パターンにおいて前記側面の下端部近傍と円盤平面とがなす角度がθ3であり、最外周側の前記磁性層パターンにおいて前記側面の下端部近傍と円盤平面とがなす角度がθ4である場合、θ4>θ3となっていることが好ましい。
このように、磁性層パターンにおいて側面の下端部近傍と円盤平面とがなす角度により信号出力が異なり、外周側の角度θ4を内周側の角度θ3より大きくすることにより、内周側と外周側における転写信号特性を均一に向上させることができる。なお、θ3及びθ4は、後述する図4(b)に図示される。
なお、この角度θ3及びθ4は、90度以上の鈍角となっているが、90度以下の鋭角の場合もあり得る。また、側面が直線状でなく曲線状(たとえば円弧状)の場合、円盤平面と側面とがなす角度とは、境界部での円盤平面と側面の接線とがなす角度を意味する。
また、本発明において、前記傾斜角度θが、最内周側の角度θ3より最外周側の角度θ4まで増大するように形成されていることが好ましい。このように、傾斜角度θが、最内周側の角度θ3より最外周側の角度θ4まで、径の増大にしたがって、連続的に又は断続的に増大するように形成されていれば、転写信号特性を均一に向上させることができる。
なお、磁性層パターンの円周方向の断面形状が正確な台形状であれば、θ1とθ3、及び、θ2とθ4は、それぞれ錯角の関係にあり等しいが、実際は正確な台形状より若干変形した形状であることが多く、θ1及びθ2とは別にθ3及びθ4を規定する意義はある。
また、本発明において、前記磁性層にFe、Co及びNiのうちの1以上が含まれ、Fe、Co及びNiの含有率の合計が該磁性層の80質量%以上であることが好ましい。このような組成の軟磁性層は、磁気特性が良好であり、磁気転写用マスター記録媒体に好適である。
また、本発明において、前記磁性層の上に非磁性層が設けられていることが好ましく、前記非磁性層がダイアモンドライクカーボンよりなることが好ましい。このように磁性層の上に非磁性の保護層が設けられていれば、長期使用による磁性層の劣化(磨耗等)を防止できる。特に、非磁性層の厚さを最内周側より最外周側まで増大するように形成すれば、一層転写信号特性を均一に向上させることができる。
また、本発明は、前記の磁気転写用マスター記録媒体と被転写用媒体とを密着させる密着工程と、磁界生成手段を設け、前記被転写用媒体と前記マスター記録媒体の円周方向に磁界を加え、前記マスター記録媒体の磁気パターンを前記被転写用媒体に転写させる磁気転写工程と、を備えることを特徴とする磁気転写方法を提供する。
本発明によれば、転写信号特性が面内で均一な磁気転写用マスター記録媒体を使用して被転写用媒体に磁気転写を行うので、被転写用媒体(スレーブディスク)への転写もエラーなく行える。
また、本発明は、前記の磁気転写方法によって磁気情報を記録したことを特徴とする磁気記録媒体を提供する。本発明によれば、磁気転写を行う際の書き込みエラーを除去でき、高密度記録に対応した磁気記録媒体(スレーブディスク)が得られる。
以上説明したように、本発明によれば、磁気転写を行う際の書き込みエラーを除去でき、高密度記録に対応できる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る磁気転写用マスター記録媒体、磁気転写方法、及び磁気記録媒体の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、磁気記録媒体である磁気転写用マスターディスク46の磁性層パターンを示した図である。このマスターディスク46の表面には、複雑な磁性層パターンにより構成されるサーボウェッジ10A、10A…(ハッチング部分)と、サーボウェッジ10A、10A…の間に形成されるギャップ10B、10B…と呼ばれる磁性層のほとんどない部分(白地部分)が交互に形成されている。
図2は、磁気転写用マスターディスク46、又はマスターディスク46により磁気転写された磁気ディスク(スレーブディスク)を回転させ、磁気ヘッドがサーボウェッジ10A、10A…を通過するときに再生される信号の波形を示したものである。図2において、期間T10Aの範囲がサーボウェッジ10Aの1ピッチ分の信号であり、期間T10Bはギャップ10Bの1ピッチ分の信号(信号なし)である。
サーボウェッジ10Aの1ピッチ分の信号は、先頭(図の左)より、最初のプリアンブル50、サーボタイミングマーク52、セクターアドレス54、シリンダーアドレス56、定周期のバースト信号58(58A、58B、58C、及び58Dの4種よりなる)、及び最後のプリアンブル60よりなる。
図3は、マスターディスク46の表面の微細な突起状パターンを示す部分拡大斜視図である。マスターディスク46は円盤状に形成され、基板47の片面に磁性層(軟磁性層)48による微細な突起状パターンが形成された転写情報担持面が形成されており、基板47の反対側の面が不図示の密着手段に保持されている。この微細な突起状パターンの形成は、後述するフォトファブリケーション法等によりなされる。このマスターディスク46の片面(転写情報担持面)は、スレーブディスク40と密着される。
微細な突起状パターンは、平面視で長方形であり、厚さtの磁性層48が形成された状態で、トラック方向(図中の太矢印方向)の長さbと、半径方向の長さlとよりなる。この長さbとlの最適値は、記録密度や記録信号波形等により異なるが、たとえば、長さbを80nmに、長さlを200nmにできる。
この微細な突起状パターンはサーボ信号の場合は、半径方向に長く形成される。この場合、たとえば、半径方向の長さlが0.05〜20μm、トラック方向(円周方向)の長さが0.05〜5μmであることが好ましい。この範囲で半径方向の方が長いパターンを選ぶことが、サーボ信号の情報を担持するパターンとしては好ましい。
基板47表面の微細な突起状パターンの深さ(突起の高さ)は、80〜800nmの範囲が好ましく、100〜600nmの範囲がより好ましい。
以上のように、基板47表面の微細な突起状パターンの磁性層48が、磁性層パターンに該当し、微細な突起状パターン同士の間の凹部が非磁性層パターンに該当する。
マスターディスク46において、基板47がNi等を主体とした強磁性体の場合には、この基板47のみで磁気転写が可能であり、磁性層48は被覆しなくてもよいが、転写特性のよい磁性層48を設けることにより、より良好な磁気転写が行える。基板47が非磁性体の場合には、磁性層48を設けることが必要である。マスターディスク46の磁性層48は、保磁力Hcが48kA/m(≒600Oe)以下の軟磁性層であることが好ましい。
マスターディスク46の基板47としては、ニッケル、シリコン、石英ガラス等各種組成のガラス、アルミニウム、合金、各種組成のセラミックス、合成樹脂等が使用できる。この基板47表面の凹凸パターンの形成は、フォトファブリケーション法や、フォトファブリケーション法等で形成した原盤によるスタンパー法、等によって行える。
スタンパー法における原盤の形成は、たとえば、以下のように行える。表面が平滑なガラス板(又は石英ガラス板)の上にスピンコート法等によりフォトレジストの層を形成し、プレベーク後に、このガラス板を回転させながら、サーボ信号に対応して変調したレーザー光(又は電子ビーム)を照射し、フォトレジスト層の略全面に所定のパターン、たとえば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に露光する。
その後、フォトレジストの層を現像処理し、露光部分が除去されたフォトレジストの層により形成された凹凸形状を有するガラス原盤を得る。次いで、ガラス原盤の表面の凹凸パターンを基に、この表面にメッキ(電鋳)を施し所定厚さまで形成することにより、表面にポジ状の凹凸パターンを有するNi基板を作成する。そして、この基板をガラス原盤から剥離する。
この基板をそのままプレス原盤とするか、凹凸パターン上に必要に応じて軟磁性層、保護膜等を被覆してプレス原盤とする。
また、ガラス原盤にメッキを施して、電鋳により第2の原盤を作成し、この第2の原盤に更にメッキを施して、電鋳によりネガ状凹凸パターンを有する反転原盤を作成してもよい。更に、第2の原盤にメッキを施して電鋳を行うか、低粘度の樹脂を押し付けて硬化させるかした、第3の原盤を作成し、第3の原盤にメッキを施して電鋳を行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作成してもよい。
基板の材料としては、金属ではNi又はNi合金を使用することができる。この基板を作成するメッキ法としては、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法等が適用できる。
磁性層48(軟磁性層)の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。磁性層48の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)を用いることができる。特に、FeCo、FeCoNiが好ましく用いることができる。
そして、磁性層48にFe、Co及びNiのうちの1以上が含まれ、Fe、Co及びNiの含有率の合計が磁性層48の80質量%以上であることが好ましい。このような組成の磁性層48は、磁気特性が良好であり、磁気転写用マスターディスク46に好適である。磁性層48の厚さtは、50nm〜500nmの範囲が好ましく、100nm〜400nmの範囲が更に好ましい。
図4は、マスターディスク46の表面の微細な突起状パターンの磁性層48がスレーブディスク40と密着している状態を示す部分拡大断面図である。
図4(a)に示されるように、磁性層48の円周方向の断面形状が、円盤平面と平行な上面と両側面とを有する略台形状であり、最内周側の磁性層48のパターンにおいて上面と側面との境界部での上面と側面とがなす角度がθ1であり、最外周側の磁性層48のパターンにおいて上面と側面との境界部での上面と側面とがなす角度がθ2である場合、θ2>θ1となっていることが好ましい。
このように、磁性層48のパターンにおいて上面と側面との境界部での上面と側面とがなす角度により信号出力が異なり、外周側の角度θ2を内周側の角度θ1より大きくすることにより、内周側と外周側における転写信号特性を均一に向上させることができる。
また、傾斜角度θが、最内周側の角度θ1より最外周側の角度θ2まで増大するように形成されていることが好ましい。このように、傾斜角度θが、最内周側の角度θ1より最外周側の角度θ2まで、連続的に増大するように形成されていれば、転写信号特性を均一に向上させることができる。
図4(b)に示されるように、磁性層48の円周方向の断面形状が、円盤平面と平行な上面と両側面とを有する略台形状であり、最内周側の磁性層48のパターンにおいて側面の下端部近傍と円盤平面とがなす角度がθ3であり、最外周側の磁性層48のパターンにおいて側面の下端部近傍と円盤平面とがなす角度がθ4である場合、θ4>θ3となっていることが好ましい。
このように、磁性層48のパターンにおいて側面の下端部近傍と円盤平面とがなす角度により信号出力が異なり、外周側の角度θ4を内周側の角度θ3より大きくすることにより、内周側と外周側における転写信号特性を均一に向上させることができる。
また、傾斜角度θが、最内周側の角度θ3より最外周側の角度θ4まで増大するように形成されていることが好ましい。このように、傾斜角度θが、最内周側の角度θ3より最外周側の角度θ4まで、連続的に又は断続的に増大するように形成されていれば、転写信号特性を均一に向上させることができる。
そのために、マスターディスク46の作成工程においてプロセス条件を最適化することにより、マスターディスク46の内周側と外周側とで断面形状を意図的に変化させ、内周側と外周側における転写信号特性を均一に向上させることができる。
具体的には、マスターディスク46を複製するための原版を作成する工程におけるRIE(Reactive Ion Eching)の条件や磁性層48を成膜するスパッタ条件を最適化することにより、マスターディスク46の内周側と外周側の領域におけるパターンの断面角度を連続的に変化させる。
特に、RIE法の場合、情報に対応した凹凸をEB描画、現像により作成した後、シリコンウエハのRIE工程において、エッチング室内の圧力を0.6Paより1Paに上げる、又は、ステージ外周側にガス流れを調整するフォーカスリングを設置し、内外周でエッチング特性を変化させる。
エッチング条件としては、たとえば、CHF/SF=48/2sccm、0.6Pa、ICP/Bias=100/30Wとする。なお、エッチング条件は、装置構造やプロセス条件により大きく異なる。
図3に戻って、磁性層48の上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の保護膜を設けることが好ましく、保護膜の上に更に潤滑剤層を設けてもよい。この場合、保護膜として厚さが5〜30nmのダイヤモンドライクカーボン膜と潤滑剤層とする構成が好ましい。
特に、保護膜として使用されるDCL膜をスパッタ条件の最適化により外周側を厚く、内周側を薄く成膜することが好ましい。このような構成により、一層転写信号特性を均一に向上させることができる。
また、磁性層48と保護膜との間に、Si等の密着強化層を設けてもよい。潤滑剤は、スレーブディスク40との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などの耐久性の劣化を改善する効果を有する。
マスターディスク46として、前記のプレス原盤を用いて樹脂基板を作成し、その表面に磁性層を設けて形成してもよい。樹脂基板の樹脂材料としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステルなどが使用できる。
このうち、耐湿性、寸法安定性及び価格などの点からポリカーボネートが好ましい。成形品にばりがある場合は、これをバーニシュ又は研磨加工により除去する。また、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを使用して、プレス原盤にスピンコート、バーコート等の塗布によりマスターディスク46を形成してもよい。樹脂基板のパターン突起の高さは、50〜1000nmの範囲が好ましく、100〜500nmの範囲が更に好ましい。
この樹脂基板の表面の微細パターンの上に磁性層48を被覆しマスターディスク46を得る。磁性層48の形成は、既述したように、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜方法、メッキ法などによる成膜方法で行える。
一方、マスターディスク46の形成方法の1種であるフォトファブリケーション法は、以下の手順で行う。先ず、たとえば、平板状の基板の平滑な表面にフォトレジストを塗布し、サーボ信号のパターンに応じたフォトマスクを用いた露光、現像処理により、情報に応じたパターンを形成させる。
次いで、エッチング工程により、パターンに応じて基板のエッチングを行い、磁性層48の厚さに相当する深さの穴を形成する。次いで、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜方法、メッキ法等により、形成した穴に対応した厚さで基板の表面まで磁性材料を成膜する。
次いで、フォトレジストをリフトオフ法で除去し、表面を研磨して、ばりがある場合には、これを取り除くとともに、表面を平滑化する。
次に、スレーブディスク40(図4〜図7参照)について説明する。スレーブディスク40は、両面又は片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体であり、マスターディスク46に密着させる以前に、グライドヘッド、研磨体などにより表面の微小突起又は付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシィング等)が必要に応じて施される。また、スレーブディスク40には予め初期磁化が施される。この詳細は後述する。
スレーブディスク40としては、ハードディスク、高密度フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体が使用できる。スレーブディスク40の磁気記録層には、塗布型磁気記録層、メッキ型磁気記録層、又は金属薄膜型磁気記録層が採用できる。
金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。これらは、磁束密度が大きいこと、磁界印加方向と同じ方向(面内記録なら面内方向)の磁気異方性を有していることより、明瞭な転写が行えるため好ましい。
そして磁性材料の下(支持体側)に必要な磁気異方性を付与するために、非磁性の下地層を設けることが好ましい。この下地層には、結晶構造と格子定数を磁性層48に合わすことが必要である。そのためには、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等を用いることが好ましい。
次に、磁気転写の概要について説明する。図5は磁気転写用マスターディスク46を使用して磁気転写を行うための磁気転写装置10の要部斜視図である。
磁気転写時には図6(a)に示される後述する初期直流磁化を行った後のスレーブディスク40のスレーブ面(磁気記録面)を、マスターディスク46の情報担持面(磁性層48)に接触させ、所定の押圧力で密着させる。そして、このスレーブディスク40とマスターディスク46との密着状態で、磁界生成手段30により転写用磁界を印加して、マスターディスク46の凹凸パターンをスレーブディスク40に転写する。
マスターディスク46による磁気転写は、スレーブディスク40の片面にマスターディスク46を密着させて片面に転写を行う場合と、図示しないが、スレーブディスク40の両面に一対のマスターディスク46を密着させて両面で同時転写を行う場合とがある。
転写用磁界を印加する磁界生成手段30は、密着保持されたスレーブディスク40とマスターディスク46の半径方向に延びるギャップ31を有するコア32にコイル33が巻き付けられた電磁石装置34、34が上下両側に配設されており、上下で同じ方向にトラック方向と平行な磁力線を有する転写用磁界を印加する。
磁界印加時には、スレーブディスク40とマスターディスク46とを一体的に回転させつつ磁界生成手段30によって転写用磁界を印加させ、マスターディスク46の凹凸パターンをスレーブディスク40のスレーブ面に磁気的に転写する。なお、この構成以外に磁界生成手段の方を回転移動させるようにしてもよい。
図6は、面内記録による磁気転写方法の基本工程を説明する説明図である。図7は、同じく斜視図である。先ず、図6(a)に示されるように、予めスレーブディスク40に初期磁界Hb をトラック方向の一方向に印加して初期磁化(直流消磁)を施しておく。
次に、図6(b)及び図7に示されるように、このスレーブディスク40の記録面(磁気記録部)とマスターディスク46の凹凸パターンPが形成された情報担持面とを密着させ、スレーブディスク40のトラック方向に初期磁界Hb とは逆方向に転写用磁界Ha を印加して磁気転写を行う。転写用磁界Ha が凹凸パターンの凸部の磁性層48に吸い込まれてこの部分の磁化は反転せず、その他の部分の磁界が反転する結果、図6(c)及び図7に示されるように、スレーブディスク40の磁気記録面にはマスターディスク46の凹凸パターンが磁気的に転写記録される。
次に、信号出力について説明する。図8は、スレーブディスク40に外部磁場を印加した際に、磁性層に発生する磁場分布を示すシミュレーション結果を示すグラフである。
スレーブディスク40は、外径65mm(公称2.5インチ)で、磁性層の保磁力Hcが3010Oe(2.38×10A/m)のものである。図8のグラフにおいて、横軸は、スレーブディスク40の円周方向の位置であり、縦軸は、磁場強度である。
マスターディスク46の凹凸パターン(図3参照)の上面と側面とがなす角度がθ1、θ2(図4(a)参照)は、角度をゆるくした例1のマスターでは115度であり、角度をゆるくした例2のマスターでは110度であり、本実施例のマスターでは90度である。なお、マスターディスク46の磁性層48の他の条件(厚さt、トラック方向長さb、半径方向長さl等)は、3者で同一である。
図8のグラフによれば、マスターディスク46の凹凸パターンの角度θ1、θ2が90度(垂直)に近い(本実施例のマスター)ほど良好な出力パターンとなっており、信号出力が出やすくなることが解る。逆に、角度θ1、θ2が90度から離れる(浅く接している従来型マスター1)と、出力パターンが不良で信号出力が出にくくなることが解る。
なお、角度θ3、θ4におけるシミュレーション結果は省略するが、上記のシミュレーション結果と同様の結果が得られている。
そこで、既述したように、マスターディスク46の製造工程において、プロセス条件を最適化することにより、内周側と外周とで凹凸パターンの断面形状を意図的に変化させ、内周側と外周側における転写信号特性を均一に向上させることができる。
以上説明した本発明の実施形態によれば、磁気転写を行う際の書き込みエラーを除去でき、高密度記録に対応できる。
なお、スレーブディスク40は、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)に組み込んで好適に使用できる。これに使用されるハードディスクドライブとしては、各ドライブメーカーより販売されている公知の各種装置を使用すればよい。
以上、本発明に係る磁気転写用マスター記録媒体、磁気転写方法、及び磁気記録媒体の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、上記実施形態においては、図3に示されるように、マスターディスク46の基板47の表面の微細な突起状パターンの磁性層48(磁性層パターンに該当)と、微細な突起状パターン同士の間の凹部(非磁性層パターンに該当)とで転写情報担持面となっているが、これ以外の態様をも採り得る。
図9は、この例を示すマスターディスク46の部分拡大断面図である。このうち(a)は、非磁性の平坦な基板47の表面に微細な突起状パターンの磁性層48が形成され、磁性層48同士の間が非磁性層パターンとなっている態様であり、(b)は、非磁性の基板47の表面に微細なパターンの磁性層48が埋め込まれて形成され、磁性層48同士の間が非磁性層パターンとなっており、基板47の表面が平坦となっている態様である。このような態様のマスターディスク46であっても、本発明は好適に適用できる。
たとえば、図9(a)の場合、基板47の非磁性層パターンとなる部分にレジストパターンを形成し、次いで、基板47に軟磁性層を形成し、その後、レジストを剥離する、いわゆるリフトオフ法を採用できる。
図9(b)の場合、既述したように、RIE法を採用し、内外周でエッチング特性を変化させ、内外周で磁性層48が埋め込まれる部分の側壁の傾斜が異なるように加工すればよい。
磁気転写用マスターディスクの磁性層パターンを示した図 磁気ヘッドがサーボウェッジを通過するときに再生される信号の波形を示した図 マスターディスクの表面の微細な突起状パターンを示す部分拡大斜視図 マスターディスクの突起状パターンの磁性層がスレーブディスクと密着している状態を示す部分拡大断面図 磁気転写装置の要部斜視図 磁気転写方法の基本工程を説明する説明図 磁気転写方法の基本工程を示す斜視図 サブパルスの発生機構を説明するグラフ 他の例を示すマスターディスクの部分拡大断面図
符号の説明
10…磁気転写装置、30…磁界生成手段、31…ギャップ、32…コア、33…コイル、34…電磁石装置、40…スレーブディスク(被転写用ディスク)、46…マスターディスク、48…磁性層

Claims (8)

  1. 表面に多数の微細な凹凸状の磁性層パターンが形成されており、円周方向のビット長さが径方向位置によって異なり、内周側において前記ビット長が小さい円盤状の磁気転写用マスター記録媒体であって、
    表面に多数の微細な凹凸状の磁性層パターンが形成され、
    前記磁性層パターンの円周方向の断面形状が、上面と両側面とを有する突起形状であり、最内周側の前記磁性層パターンにおいて前記上面と側面との境界部での上面と側面とがなす角度がθ1であり、最外周側の前記磁性層パターンにおいて前記上面と側面との境界部での上面と側面とがなす角度がθ2である場合、θ1、θ2ともに90度以上であり、θ2>θ1となっている磁気転写用マスター記録媒体。
  2. 傾斜角度θが、最内周側の角度θ1より最外周側の角度θ2まで増大するように形成されている請求項1に記載の磁気転写用マスター記録媒体。
  3. 前記磁性層パターンの円周方向の断面形状が、上面と両側面とを有する突起形状であり、最内周側の前記磁性層パターンにおいて円盤平面と側面の下端部の境界でのそれぞれの接線がなす角度であって、磁性層パターンの外側の角度がθ3であり、最外周側の前記磁性層パターンにおいて円盤平面と側面の下端部の境界でのそれぞれの接線がなす角度であって、磁性層パターンの外側の角度がθ4である場合、θ3、θ4ともに90度以上であり、θ4>θ3となっている請求項1または2のいずれかに記載の磁気転写用マスター記録媒体。
  4. 前記傾斜角度θが、最内周側の角度θ3より最外周側の角度θ4まで増大するように形成されている請求項3に記載の磁気転写用マスター記録媒体。
  5. 前記磁性層にFe、Co及びNiのうちの1以上が含まれ、Fe、Co及びNiの含有率の合計が該磁性層の80質量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気転写用マスター記録媒体。
  6. 前記磁性層の上に非磁性層が設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気転写用マスター記録媒体。
  7. 前記非磁性層がダイアモンドライクカーボンよりなる請求項6に記載の磁気転写用マスター記録媒体。
  8. 磁気転写用マスター記録媒体に記録されている情報が書き込まれた磁気記録媒体の製造方法であって、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気転写用マスター記録媒体と被転写用媒体とを密着させる密着工程と、
    磁界生成手段を設け、前記被転写用媒体と前記マスター記録媒体の円周方向に磁界を加え、前記マスター記録媒体の磁気パターンを前記被転写用媒体に転写させる磁気転写工程と、
    を備えることにより、被転写用媒体から前記磁気記録媒体を製造することを特徴とする磁気記録媒体製造方法。
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