JP2004110948A - 磁気転写用マスター担体の作製方法 - Google Patents

磁気転写用マスター担体の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気転写用マスター担体の基板に、凹凸パターンを高精度に形成する。
【解決手段】表面に凹凸パターンを有する基板31を作製する際、レジスト12が塗布された円形基盤11に、電子ビームEBの走査により凹凸パターンに応じたパターンの描画を行う。円形基盤11を一方向Aに回転させるとともに、エレメントの最小幅より小さいビーム径の電子ビームEBを、円形基盤11の円周方向に交差する方向に一定の振幅で往復振動させ、照射開始位置Y1が電子ビームEBの振動振幅の谷、照射終了位置Y8が振動振幅の山となるように制御して、電子ビームEBを円形基盤11上において、Y1、Y2、Y3・・・Y8へと走査して、所望のエレメント上面形状12aの描画を行う。
【選択図】     図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体に情報を磁気転写するための凹凸パターンを有する基板を備えた磁気転写用マスター担体の作製方法に関し、特に、凹凸パターンを構成するエレメントの上面形状の描画を行う工程に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、磁性体の微細凹凸パターンにより転写情報を担持したマスター担体と、転写を受ける磁気記録部を有するスレーブ媒体とを密着させた状態で、転写用磁界を印加してマスター担体に担持した情報(例えばサーボ信号)に対応する磁化パターンをスレーブ媒体に転写記録する磁気転写方法が知られている。(例えば、特許文献1〜3参照)
磁気転写に使用されるマスター担体の作製方法としては、転写すべき情報に応じたレジストによる凹凸パターンが形成された原盤を基にして作製する、光ディスクスタンパー作製方法を応用した方法が考えられている。(例えば、特許文献4参照)
このマスター担体基板の凹凸パターンに応じたレジストへのパターン描画は、光ディスク原盤の作製と同様に、フォトレジストが塗布された円形基盤を回転させながら、転写する情報に応じて変調したレーザービームを照射して形成することが、一般に考えられる。
【0003】
しかしながら、記録密度の増大などに対応してトラック幅が狭くなると(例えば、トラック幅が0.3μm以下になると)、レーザービームでは描画径の限界に近づき、描画された部分の端部形状が円弧状となって矩形状のパターンの形成が困難となる。マスター担体基板の凹凸パターンの各エレメントの特にその上面形状は、この描画された部分に応じた形状となるものであり、該描画された部分の端部形状が円弧状となるとマスター担体基板の凹凸パターンの凸部上面形状が円弧状等の矩形から大きくはずれた形状となり、スレーブ媒体への所望の磁化パターンの形成が困難となる。
【0004】
そこで、本出願人は、レーザ光と比較して小さなビーム径を有する電子ビームを用いて、パターン描画を行う方法について特願2002−202629において提案している。
【0005】
この特願2002−202629においては、エレメントの上面形状の最小幅より小さいビーム径の電子ビームによるパターン描画を行う方法が提案されており、凹凸パターンの各エレメントの上面形状を、電子ビームを複数回走査させて描画する方法が記載されている。詳細には、例えば、凹凸パターンの各エレメントがトラック方向(円周方向)に垂直に延びる矩形状である場合に、電子ビームをトラック方向に垂直な方向(半径方向)に1走査させる毎に、基盤を微少回転させ、この1走査と微小回転を交互に複数回繰り返して1つのエレメントを描画する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−183623号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平10−40544号公報
【0008】
【特許文献3】
特開平10−269566号公報
【0009】
【特許文献4】
特開2001−256644号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、基盤の断続的な回転動作を伴う描画方法では、パターン描画に非常に時間がかかるという問題がある。
【0011】
また、凹凸パターンがトラック方向(円周方向)に垂直に延びる上面矩形のエレメントのみでなく、位相サーボパターンのように上面がトラック方向に斜めに交差して延びる斜辺を有する平行四辺形のエレメントを含む場合、電子ビームを半径方向に複数回走査させて描画すると、該斜めに交差して延びる斜辺が階段状になり、精度良く形成できないという欠点がある。
【0012】
エレメント上面の平行四辺形の斜辺は、磁化遷移領域となる部分に対応するものであり、この直線性は信号再生時に非常に重要である。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みて、磁気転写用マスター担体の作製方法において、凹凸パターンを構成するエレメントの上面形状を、電子ビームを用いて精度良く描画する方法を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気転写用マスター担体の作製方法は、凹凸パターンを有する基板を備えた磁気転写用マスター担体の作製方法であって、
前記基板を作製する工程として、レジストが塗布された円形基盤上に、電子ビームを走査することにより前記凹凸パターンを構成するエレメントの上面形状の描画を行う工程を含み、
該描画を、前記円形基盤を一方向に回転させるとともに、前記エレメントの上面形状の最小幅より小さいビーム形の電子ビームを、前記円形基盤の円周方向に交差する方向に一定の振幅で往復振動させ、該電子ビームの照射を該振幅の山から開始して谷で終了する、もしくは該振幅の谷から開始して山で終了することにより行うことを特徴とするものである。
【0015】
「凹凸パターンを有する基板」は、基板自体の表面が凹凸形状となっているもののみならず、平板基板と該平板基板上に積層された、表面が凹凸形状に形成された磁性層とからなるものであってもよい。なお、基板自体の表面が凹凸形状である場合には、該基板自体でマスター担体を構成することもできるが、基板上に磁性層が積層されることが好ましい。磁性層が積層される場合には、磁性層を凸部上面にのみもしくは凹凸パターンに沿って積層し、結果として表面に凹凸パターンを有するマスター担体を構成するものであってもよいし、凹部に磁性層を埋め込み結果として表面が平坦とされているマスター担体を構成するものであってもよい。
【0016】
「凹凸パターンを構成するエレメント」とは、トラック方向に交差して延びる略平行四辺形状の上面を有する凸部もしくは略平行四辺形状の開口を有する凹部である。したがって、「エレメントの上面形状」とは略平行四辺形状であり、ここでは凹部の開口の形状を含むものである。該略平行四辺形の互いに平行な1組の辺は、トラック方向に沿ったものであり、他の1組の辺は、トラック方向と交差するものである。該他の1組の辺がトラック方向に垂直な場合、矩形となり、ここでいう平行四辺形とは矩形を含むものである。
【0017】
したがって、前記電子ビームを振動させる「前記円周方向に交差する方向」は、円形基盤の回転を考慮して、電子ビームの基盤上における走査方向が所望の方向となるように制御されるものである。なお、円周基盤の円周方向とは、マスター担体作製時の円形基盤の回転方向で、結果として凹凸パターンが形成されるトラックのトラック方向と一致するものである。
【0018】
【発明の効果】
本発明の磁気転写用マスター担体の作製方法によれば、所望のエレメントの上面形状の最小幅より小さいビーム径の電子ビームを、円形基盤を一方向に回転さるとともに、円形基盤の円周方向に交差する方向に一定の振幅で往復振動させ、この際電子ビームの照射を、前記往復振動を表す波形の山から開始して谷で終了する、もしくは谷から開始して山で終了するようにして、所望のエレメントの上面形状を描画しているので、エレメントの上面形状の、トラック方向に交差する2つの斜辺を、より正確に互いに略平行に描画することができる。なお、この効果は、1つのエレメントを描画する際に電子ビームを往復させる回数が少なくなるほど顕著である。また、振幅の途中から描画を開始したり、終了したりすると、上述の斜辺の一部に段差ができると考えられるが、本発明によれば振幅の山もしくは谷から描画を開始、終了するので斜辺に段差が生じない。
【0019】
また、円形基盤を連続的に回転させながら描画するため、断続的に回転させていた場合と比較して描画速度を飛躍的に向上させることができる。
【0020】
また、トラック方向に対して斜めに交差して延びる斜辺を有するエレメントの上面形状を描画する際、前述の従来技術のように、トラック方向もしくはこれに垂直な半径方向に電子ビームを複数回走査させて描画すると、エレメントの上面形状のトラック方向に交差する斜辺が階段状になるという問題があったが、本発明によれば、電子ビームの走査方向が、結果としてエレメント上面のトラック方向に交差する斜辺方向となるように描画するため、該エレメントのトラック方向に交差する斜辺がほぼ直線となり、良好なパターン形状を得ることができる。
【0021】
本発明の作製方法により作製された精度高いパターンを備えたマスター担体を磁気転写に用いれば、転写品位の高い磁気転写を実施することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
本発明の磁気転写用マスター担体の作製方法について説明する。図1は、その磁気転写用マスター担体の原盤を作製する過程を示す模式図である。図2は、原盤表面の描画パターン(露光パターン)の一部を拡大した上面図である。
【0024】
なお、ここで描画パターンは、マスター担体の基板に形成すべき凹凸パターンに応じたパターンであり、凹凸パターンを構成する凸部もしくは凹部をエレメントと称し、描画パターン中の描画すべきエレメントの上面形状に対応する部分をエレメント部と称する。
【0025】
本実施の形態における磁気転写用マスター担体の原盤の作製方法について説明する。
【0026】
図1(a)に示すように、例えばシリコン、ガラスあるいは石英からなる円形基盤11を、1方向に回転させながら、スピンコート法により、ノズル13から、ポジ型電子ビーム描画用レジスト12が有機溶剤に溶解されたレジスト溶液12’を円形基板11上に塗布した後、ベークする。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、電子ビーム描画用レジスト12が塗布された円形基盤11をA方向に回転させながら、サーボ信号等の転写情報に対応して変調した電子ビームEBを走査させることにより1トラック毎に所望のパターンを描画する。なお、円形基盤11の回転方向Aは、エレメント部単位に微視的にみると、ほぼ径方向Yに垂直な方向X(以下、これを円周方向Xもしくはトラック方向Xという)とみなすことができる。
【0028】
次に、図1(c)に示すように、電子ビーム描画用レジスト12を現像処理して、所望のパターン15が電子ビーム描画用レジスト12に転写された基盤11を得る。これが磁気転写用マスター担体の原盤となる。
【0029】
図2は、原盤表面の描画パターン(露光パターン)15の一部を拡大した上面図であり、具体的には1トラックの一部のみを示している。この描画パターン15は、円周方向(トラック方向)Xに斜めに交差して延びるエレメント部12aを含むものである。図2中斜線で示した部分が電子ビームにより描画(露光)されたエレメント部12aであり、その形状はトラック方向Xに角度θをなす斜辺を有する略平行四辺形である。なお、このエレメント部12a等の露光部分は、現像により除去されて凹部となる。
【0030】
図3は、本実施形態において用いられる電子ビーム露光装置の要部側面図(a)および上面図(b)を示すものである。電子ビーム露光装置40は、電子ビームEBをY方向(基盤径方向)およびX方向(円周方向)へ偏光させる偏光手段21、22を備えており、電子銃23から出射された電子ビームEBは偏光手段21、22および図示しないレンズ等を経て、描画パターンを構成する各エレメント部の最小幅よりも小さいビーム径で円形基盤11上に照射される。なお、エレメント描画時には、偏光手段21、22を制御して電子ビームEBを、基盤の円周方向Xと交差する所定の方向に一定の振幅で微少振動させる。このとき、電子ビームEBの照射を、振動振幅の山で開始し谷で終了させる、もしくは谷で開始し山で終了させるよう制御する。
【0031】
また、電子ビーム露光装置40は、円形基盤11を支持する円形ステージ41および該ステージ41の中心軸42と一致するように設けられたモータ軸を有するスピンドルモータ44を備えた回転ステージユニット45と、該回転ステージユニット45の一部を貫通し、円形ステージ41の一半径方向(上記Y方向)に延びる一本のシャフト46と、該回転ステージユニット45をシャフト46に沿って移動させるための移動手段とを備えている。回転ステージユニット45の一部には、上記シャフトと平行に配された、精密なネジきりが施されたロッド47が螺合され、このロッド47は、パルスモータ48によって正逆回転されるようになっており、このロッド47とパルスモータ48により回転ステージユニット45の移動手段が構成される。なおパルスモータの駆動、電子ビームの変調、偏光手段の制御等はコントローラ50によって行われる。
【0032】
図4は、図2に示したトラック方向Xに斜めに交差して延びるエレメント部12aの描画方法の模式図を示す。円形基盤11をA方向に回転させるとともに、Y方向およびX方向偏光手段21、22をそれぞれ正弦波等の周期関数信号で互いに同期させて制御して電子ビームEBを所定の方向に一定の振幅で周期的に振動させることにより、結果として電子ビームEBをエレメント部12aの所望の角度θを有する斜辺に沿った方向に複数回走査させて、略平行四辺形形状のエレメント部12aの描画を行う。
【0033】
図4中、電子ビームEBをY1、Y2、Y3・・・・Y8へと順次走査させ、1つのエレメント部12aの描画を行う。ここでは、振幅の谷Y1から描画を開始し、振幅の山Y8で描画を終了するようにしている。描画の開始終了は、所定方向に単振動させている電子ビームEBのON、OFFにより制御することができ、本実施形態の場合、単振動の振幅の谷でON、複数回の振動の後、振幅の山でOFFすればよい。仮に、振幅の谷Y1から描画を開始し、振幅の谷Y7で描画を終了するようにすると、トラック方向に交差する2つの斜辺が互いに平行とならず、良好な平行四辺形形状を得ることができないが、上述のように振幅の谷から開始して山で終了するようにすれば、良好な平行四辺形形状を得ることができる。振動の周期に対して円盤の回転速度がある程度以上大きくなり、振動振幅の谷から山への電子ビームの走査軌跡と谷から山への走査軌跡との、トラック方向に対する傾きの差が大きくなるにつれ、振幅の谷で照射を開始し山で終了する、もしくは振幅の山で照射を開始し谷で終了するように制御することによる効果は顕著である。
【0034】
描画時には、電子ビームEBを所望の角度θを有する斜辺に沿った方向に走査させるように、Y方向およびX方向偏光手段21、22を制御して電子ビームEBの振動方向を調整する。ここでは、円形基盤11の回転速度は、電子ビームEBの振動の一周期で電子ビームの照射位置がY1からY3へ移動する程度であり、電子ビームEBの振動方向は、円形基盤11の回転による照射位置のトラック方向Xへの変移を考慮した方向としている。なお、1トラックのパターン描画後、回転ステージユニット40が移動されて、隣接する次のトラックの描画を開始する。
【0035】
なお、エレメント部の描画時において、図中クロスハッチで示す部分14が露光されず、平行四辺形の鋭角となるべきエレメント部12aの角部が円弧状となる。円弧状部分は結果として、記録損失に繋がるものであり、これを低減するためには、電子ビームEB径を小さくし、走査回数を多くすることが有効であるが、描画効率との関係で適宜設定すればよい。なお、凹凸パターン凸部上面のトラック方向と交わる斜辺の直線性は、トラック幅方向のヘッド走査領域において非常に重要であるが端部においてはその影響は小さいと考えられる。
【0036】
このように、電子ビームEBの基盤上における走査方向が、結果としてエレメント部のトラック方向と交差する斜辺となるように描画するので、描画されたエレメント部の斜辺は略直線となり、結果として斜辺が略直線の上面形状のエレメントからなる凹凸パターンを有する基板を形成することができる。このような基板を備えたマスター担体を用いれば、転写パターンの磁化遷移領域の直線性も向上する。
【0037】
なお、各エレメントの形状と電子ビーム描画用レジストの感度とを考慮しながら、電子ビームの出力およびビーム径を調整することが望ましい。
【0038】
上述の実施形態において、電子ビームEBの回転基盤上における走査方向が、トラック方向に対して所望の傾きθを有する方向、すなわち描画すべきエレメントのトラック方向に交差する斜辺の方向となるように、Y方向およびX方向偏光手段21、22を制御して電子ビームEBの振動方向を調整する際の、具体的な方法を図5を参照して以下に説明する。
【0039】
ここでは、電子ビームEBをy方向およびx方向それぞれに周期的に変移させる周期関数として、y=Asin(ωt+α)、x=Bsin(ωt+β)の正弦波を用いた描画方法について説明する。fは両周期関数の振動数、A、Bは各振幅、α、βは各位相、ω=2πfであり、それぞの周期関数の位相α、βが|β−α|=nπの関係にあるとき、基盤が静止していれば、電子ビームEBの軌跡は、xy座標においてA/Bの傾きを有する直線(図中鎖線K)となる。このとき、電子ビームEBの照射位置は、A/Bの傾きを有する直線上を単振動する。なお、各エレメントを描画する際、この単振動の最大振幅もしくは最小振幅の位置から照射を開始し、複数回振動させて、開始位置の位相からπずれた最小振幅もしくは最大振幅の位置で照射を終了させるよう制御する。
【0040】
一方、円形ステージの回転により、基盤上における電子ビームEBの照射位置は基盤が静止していた場合と比較して円周方向に変移する。電子ビーム照射位置におけるステージの回転に伴う線速度をvとすると、上述の周期関数の半周期1/2f時間に照射位置が、ステージの回転により円周方向(トラック方向)Xに移動する距離Δxは、Δx=v/2fで表される。したがって、この距離Δxを考慮してX方向の振幅Bを設定するため、図5中の各平行四辺形のトラック方向xに交差して延びる斜辺の、トラック方向に対する傾きθについて、tanθ=2A/(2B+Δx)を満たすようにする。すなわち、所望の傾きθの平行四辺形を描画しようとする際、tanθ=2A/(2B+Δx)を満たすように各周期振動の振幅A,Bを定めればよい。例えばθ=45°の平行四辺形を描く場合、tanθ=2A/(2B+Δx)=1、すなわち2A=2B+Δxを満たすA、Bを定める。
【0041】
電子ビームEBは、原点から延びている所定傾きの一点鎖線Kに沿って振動させており、この鎖線Kは円盤が静止していた場合の電子ビームEBの軌跡を示すものである。電子ビームEBはこの鎖線Kに沿った振動を行うが、同時に円盤が図中−x方向に回転するために、結果として電子ビームEBは図に示すような軌跡Lを描く。なお、図5においては、α=β=−π/2とした場合の電子ビームEBの基板上における軌跡Lを示している。
【0042】
次に、上記の原盤を用いた磁気転写用マスター担体の作製方法について説明する。図6はそのマスター担体の作製過程の一部を示す断面模式図である。
【0043】
図6(a)に示すように、上記のようなパターン描画方法により、基盤11上の電子ビーム描画用レジスト12上に所望のパターンを描画する。現像処理で露光した部分12aを除去し、電子ビーム描画用レジスト12からなる凹凸パターンを有する原盤を得る。
【0044】
次に、図6(b)に示すように、前記原盤の表面の凹凸パターン表面に薄い導電層を成膜し、その上に、電鋳を施し、金属の型をとったポジ状凹凸パターンを有する基板31を得る。
【0045】
その後、図6(c)に示すように、原盤から所定厚みとなった基板31を原盤から剥離する。基板31の表面の凹凸パターンは、原盤の凹凸形状が反転されたものである。
【0046】
基板31の裏面を研磨した後、この基板31をそのまま磁気転写用マスター担体とするか、あるいは、図6(d)に示すように、凹凸パターン上に磁性層32を被覆したものを磁気転写用マスター担体とする。
【0047】
また、前記原盤にメッキを施して状凹凸パターンを有する第2の原盤を作製し、この第2の原盤を使用してメッキを行い、ネガ状凹凸パターンを有する基板を作製してもよい。さらに、ポジ状凹凸パターンを有する第2の原盤にメッキを行うか樹脂液を押し付けて硬化を行ってネガ状凹凸パターンを有する第3の原盤を作製し、第3の原盤にメッキを行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作製してもよい。
【0048】
一方、前記円形基盤11に電子ビーム描画用レジストによる凹凸パターンを形成した後、電子ビーム描画用レジストをマスクにエッチングして円形基盤11に凹凸パターンを形成し、電子ビーム描画用レジストを除去した原盤を得てもよい。以降の工程は前記と同様にして基板31を形成することができる。
【0049】
いずれの場合も基板31の凹凸パターンの凸部あるいは凹部形状は、原盤のレジストの凹凸パターンに依存した形状となる。上述の通り、原盤の凹凸パターン作製時において、略平行四辺形形状のエレメント部を、電子ビームEBの走査方向が、斜辺と一致するように描画することにより、エレメント部の斜辺が直線となっているので、凸部の上面形状の斜辺が略直線である凹凸パターンを備えた基板31を得ることができる。
【0050】
基板31の材料としては、NiもしくはNi合金を使用することができ、この基板を作製するための前記メッキとしては、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法が適用できる。基板31の凹凸パターンの深さ(突起の高さ)は、80nm〜800nmの範囲が好ましく、より好ましくは150nm〜600nmである。
【0051】
前記磁性層32は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。その磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)が用いることができる。特に好ましくはFeCo、FeCoNiである。磁性層32の厚みは、50nm〜500nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは100nm〜400nmである。
【0052】
前記原盤を用いて樹脂基板を作製し、その表面に磁性層を設けてマスター担体としてもよい。樹脂基板の樹脂材料としては、ポリカーボネート・ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィンおよびポリエステルなどが使用可能である。耐湿性、寸法安定性および価格などの点からポリカーボネートが好ましい。成形品にバリがある場合は、バーニシュまたはポリッシュにより除去する。また、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを使用して、原盤にスピンコート、バーコート塗布で形成してもよい。樹脂基板のパターン突起の高さは、50〜1000nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは100〜500nmの範囲である。この樹脂基板の表面の微細パターンの上に磁性層を被覆しマスター担体を得る。
【0053】
なお、情報に応じた凹凸パターンが形成された原盤に、樹脂液を塗布し硬化させて樹脂基盤を作製し、この樹脂基盤の凹凸パターン上に磁性層を成膜し、該磁性層の裏面の凹凸を研磨して平坦化した後、この磁性層の平坦裏面に電鋳により平坦基板を積層し、樹脂基盤より剥離することによって平板基板上に表面に凹凸パターンを有する磁性層が積層されてなるマスター担体を得ることもできる。
【0054】
次に、上記のようにして作製された磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法について説明する。図7はその磁気転写の基本工程の一例を示す断面模式図である。なお、図7に示す形態は面内記録方式である。
【0055】
面内磁気記録媒体への磁気転写の概要を図7に基づき説明する。なお、図7中スレーブ媒体はその片面の磁気記録部のみを記載している。まず、図7(a)に示すように、最初にスレーブ媒体2に初期静磁界Hinをトラック方向の一方向に印加して予め初期磁化(直流消磁)を行う。その後、図7(b)に示すように、このスレーブ媒体2のスレーブ面(磁気記録部)と、マスター担体3の基板31の微細凹凸パターンに磁性層32が被覆されてなる情報担持面の凸部パターン32aとを密着させ、スレーブ媒体2のトラック方向に前記初期磁界Hinとは逆方向に転写用磁界Hduを印加して磁気転写を行う。転写用磁界Hduが凸部パターン32aの磁性層32に吸い込まれてこの部分の磁化は反転せず、その他の部分の磁界が反転する結果、図7(c)に示すように、スレーブ媒体2のスレーブ面(トラック)にはマスター担体3の情報担持面の磁性層32の密着凸部パターン32aと凹部空間との形成パターンに応じた磁化パターンが転写記録される。
【0056】
図示のように、スレーブ媒体2の片面にマスター担体3を密着させて片面逐次転写を行う場合と、スレーブ媒体2の両面にそれぞれマスター担体3を密着させて両面同時転写を行う場合とがある。
【0057】
なお、初期磁界および転写用磁界は、磁気記録媒体の磁性層の保磁力、マスター担体および磁気記録媒体の磁性層の比透磁率を勘案して定められた値を採用する必要がある。
【0058】
垂直磁気記録媒体への磁気転写の場合にも、上記面内磁気記録媒体用とほぼ同様のマスター担体3が使用される。この垂直記録の場合には、スレーブ媒体2の磁化を、予め垂直方向の一方に初期直流磁化しておき、マスター担体3と密着させてその初期直流磁化方向と略逆向きの垂直方向に転写用磁界を印加して磁気転写を行うものであり、この転写用磁界がマスター担体3の凸部パターン32aの磁性層32に吸い込まれ、凸部パターン32aに対応する部分の垂直磁化が反転し、凹凸パターンに対応した磁化パターンをスレーブ媒体2に記録することができる。
【0059】
スレーブ媒体2は、両面または片面に磁性層が形成されたハードディスク、高密度フレキシブルディスクなどの円盤状磁気記録媒体であり、その磁気記録部は塗布型磁気記録層あるいは金属薄膜型磁気記録層で構成される。金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。これらは磁束密度が大きいので明瞭な転写が行えるため好ましい。そして磁性層に必要な磁気異方性をつけるために、磁性材料の下(支持体側)には非磁性の下地層を設けることが好ましい。なお、非磁性層の結晶構造と格子定数は、磁性層に合わせる必要があり、そのためにはCr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等が好適である。
【0060】
初期磁界および転写用磁界を印加する磁界印加手段は、面内記録の場合には、例えば、スレーブ媒体2の半径方向に延びるギャップを有するコアにコイルが巻き付けられたリング型電磁石装置が上下両側に配設されてなり、上下で同じ方向にトラック方向と平行に発生させた転写用磁界を印加する。磁界印加時には、スレーブ媒体2とマスター担体3との密着体を回転させつつ磁界印加手段によって転写用磁界を印加する。なお、磁界印加手段を回転移動させるように設けてもよい。また、磁界印加手段は、片側にのみ配設するようにしてもよく、永久磁石装置を両側または片側に配設してもよい。
【0061】
垂直記録の場合の磁界印加手段は、極性の異なる電磁石または永久磁石をスレーブ媒体2とマスター担体3との密着体の上下に配置し、垂直方向に磁界を発生させて印加する。部分的に磁界を印加するものでは、スレーブ媒体2とマスター担体3との密着体を移動させるか磁界を移動させて全面の磁気転写を行う。
【図面の簡単な説明】
【図1】マスター担体の原盤への凹凸パターン形成方法を示す模式図
【図2】描画パターンを示す上面図
【図3】電子ビーム露光装置の概略構成を示す要部側面図および上面図
【図4】電子ビーム描画方法を示す模式図
【図5】具体的な電子ビーム描画方法を示す模式図
【図6】本発明の磁気転写用マスター担体の作製方法を示す断面模式図
【図7】磁気転写の基本工程の一例を示す断面模式図
【符号の説明】
2  スレーブ媒体(磁気記録媒体)
3  磁気転写用マスター担体
11  円形基盤
12  電子ビーム描画用レジスト
12a  露光部分(エレメント部)
13  ノズル
15  描画パターン
21、22  偏光手段
31  マスター担体基板
32  磁性層
40  電子ビーム露光装置

Claims (1)

  1. 凹凸パターンを有する基板を備えた磁気転写用マスター担体の作製方法であって、
    前記基板を作製する工程として、レジストが塗布された円形基盤上に、電子ビームの走査により前記凹凸パターンを構成するエレメントの上面形状の描画を行う工程を含み、
    該描画を、前記円形基盤を一方向に回転させるとともに、前記エレメントの上面形状の最小幅より小さいビーム形の電子ビームを、前記円形基盤の円周方向に交差する方向に一定の振幅で往復振動させ、該電子ビームの照射を該振幅の山から開始して谷で終了する、もしくは該振幅の谷から開始して山で終了することにより行うことを特徴とする磁気転写用マスター担体の作製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008064957A (ja) * 2006-09-06 2008-03-21 Fujifilm Corp 電子ビーム描画装置及び電子ビームのずれ補償方法

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