JP2004163626A - パターン形成体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、高精細に機能性部を形成することが可能であり、かつ目的とする形状の膜厚の制御が容易であるパターン形成体およびパターン形成体の製造方法の提供を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基材と、前記基材上に形成された光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、前記特性変化層上に形成された特性が異なる特性変化パターンとを有するパターン形成体であって、前記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることを特徴とするパターン形成体を提供することにより上記目的を達成するものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性部の形状が制御されたカラーフィルタやレンチキュラーレンズをはじめとする機能性素子が形成可能なパターン形成体およびパターン形成体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年のパーソナルコンピューターの発達や携帯電話の普及に伴い、より高精細でかつ薄層軽量なディスプレイの製造競争が激化している。その中で、有機エレクトロルミネッセント(以下、エレクトロルミネッセントをELと略す場合がある。)素子等に用いられるカラーフィルタ(以下、カラーフィルタをCFと略す場合がある。)、色変換フィルター等は、そのような要求を満足し、次世代のディスプレイを担うものとして注目されている。
【0003】
これら有機EL素子等に用いられるCF、色変換フィルターを構成する複数の機能層の中には、微細なパターニングを必要とするものが多く、そのような微細なパターニングを行う方法としてインクジェット法が用いられている。インクジェット法は、パターニング精度に優れ、かつ製造効率に優れている等利点の多い方法である。
【0004】
さらに、インクジェット法は、インクジェット装置本体のノズル口から、粒状または霧状の塗工液を吐出し、目的箇所に着弾させ塗布する方法であるため、その塗工液としては、ノズル口から容易に吐出させることが可能な粘度、すなわち比較的希薄な濃度の塗工液であることが要求される。しかし、希薄な濃度の塗工液は粘度が低いため塗布後、過剰な濡れ広がりによりパターニング精度を低下させるおそれがある。このような塗工液の過剰な濡れ広がりを防止する手段として、隔壁等の設置や塗布する対象物に予め濡れ性の差を設けるなどの方法により、パターンの精度を向上させる方法が提案されている。
【0005】
上述のような方法を講じて形成された機能層の形状は、図7に示すような凸形状、または図8に示すような、凹形状の形状となることが多い。このような形状の機能層は、中心部と端部とで膜厚に差があり、この差が大きい場合は、機能性素子の種類によっては、この差を原因として不都合が生じる可能性がある。例えば、凸形状または凹形状の形状の機能層がCFの着色層または色変換フィルターの色変換層等の用途に用いられた場合、中心部と端部との膜厚の差から色調ムラが生じ高精細な発色を妨げ、素子寿命を低下させるといった影響を及ぼす。
【0006】
また、機能性素子の種類によっては、図7または図8に示すように中心部と端部とで膜厚が異なる場合や、段階的に膜厚が変化することが好ましい場合があるが、この際膜厚の制御が困難であるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のことから、高精細に機能性部を形成することが可能であり、かつ目的とする形状の膜厚の制御が容易であるパターン形成体およびパターン形成体の製造方法の提供が望まれている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は請求項1に記載するように、基材と、上記基材上に形成された光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、上記特性変化層上に形成された特性が異なる特性変化パターンとを有するパターン形成体であって、上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0009】
本発明のパターン形成体は、上記特性変化層を有することから、その特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成することが可能であり、またその特性変化パターン内における特性変化の度合いを異なるものとすることができるのである。また本発明のパターン形成体は、この特性の差を利用して、特性変化パターン上に容易に機能性部を形成することが可能であり、上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることから、パターン形成体上の特性変化パターンに沿って膜厚等の異なる機能性部を形成することが可能となる。
【0010】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有型濡れ性変化層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒含有型濡れ性変化層であることにより、エネルギー照射に伴い、光触媒含有型濡れ性変化層自体に含有される光触媒の作用によって、濡れ性変化層上の濡れ性が変化した特性変化パターンを有するパターン形成体とすることができる。また、その特性変化パターン内の濡れ性変化の度合いが異なるものとすることができるのである。さらに、この濡れ性の差を利用して、容易に上記パターン形成体上に機能性部を形成することができ、また特性変化パターン内における濡れ性変化の度合いの差を利用して、形成される機能性部の膜厚等が機能性部内において異なるものとすることが可能となるのである。
【0011】
上記請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載するように、エネルギー照射されていない部分とエネルギーが照射された部分において、上記光触媒含有型濡れ性変化層と、上記光触媒含有型濡れ性変化層上に機能性部を形成する機能性部形成用組成物との接触角が、20゜以上の差であることが好ましい。上記光触媒含有型濡れ性変化層においてエネルギー照射されていない部分は撥液性領域であり、エネルギーが照射された部分は親液性領域である。この濡れ性の差を利用して、上記特性変化パターン上に機能性部を形成する場合、上記光触媒含有型濡れ性変化層と機能性部を形成する機能性部形成用組成物との接触角の差が、エネルギー照射されていない部分すなわち撥インキ性領域とエネルギー照射された部分すなわち親インキ性領域において上記範囲より低い場合には、撥液性領域上にも機能性部形成用組成物が付着してしまう可能性があることから好ましくない。
【0012】
上記請求項2または請求項3に記載の発明においては、請求項4に記載するように、上記光触媒含有型濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることが好ましい。本発明において、光触媒含有型濡れ性変化層に要求される特性としては、エネルギーが照射されていない場合は撥液性であり、エネルギーが照射された場合は光触媒含有型濡れ性変化層自体に含有される光触媒の作用により親液性となるといった特性である。このような特性を光触媒含有型濡れ性変化層に付与する材料として、オルガノポリシロキサンを用いることが好ましいからである。
【0013】
上記請求項4に記載の発明においては、請求項5に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。このようにフルオロアルキル基を含有するものであれば、エネルギー照射部分と未照射部分との濡れ性の差を大きくすることが可能となるからである。
【0014】
上記請求項4または請求項5に記載の発明においては、請求項6に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを用いることにより、上述したような濡れ性の変化に対する特性を発揮することができるからである。
【0015】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項7に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する光触媒含有型密着性変化層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒含有型密着性変化層であることにより、エネルギーを照射に伴う光触媒含有型密着性変化層自体に含有される光触媒の作用によって、密着性の度合いが異なる特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることができるからである。
【0016】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項8に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とからなる層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒処理層および上記濡れ性変化層からなる層であることにより、エネルギー照射に伴う光触媒処理層中の光触媒の作用によって、上記濡れ性変化層表面に濡れ性が変化した特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることができる。またその特性変化パターン内の濡れ性の度合いが異なるものとすることができるのである。また、上記パターン形成体上の濡れ性の差を利用して、容易に機能性部を形成することができ、さらに特性変化パターン内における親液性の度合いの差を利用して、形成される機能性部の膜厚等が機能性部内において異なるものとすることが可能となるのである。
【0017】
上記請求項8に記載の発明においては、請求項9に記載するように、エネルギー照射されていない部分とエネルギーが照射された部分において、上記濡れ性変化層と、上記濡れ性変化層上に機能性部を形成する機能性部形成用組成物との接触角が、20゜以上の差であることが好ましい。上記濡れ性変化層においてエネルギー照射されていない部分は撥液性領域であり、エネルギーが照射された部分は親液性領域である。この濡れ性の差を利用して、上記特性変化パターン上に機能性部を形成する場合、上記濡れ性変化層と機能性部を形成する機能性部形成用組成物との接触角の差が、エネルギー照射されていない部分すなわち撥インキ性領域とエネルギー照射された部分すなわち親インキ性領域において上記範囲より低い場合には、撥液性領域上にも機能性部形成用組成物が付着してしまう可能性があることから好ましくない。
【0018】
上記請求項8または請求項9に記載の発明においては、請求項10に記載するように、上記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることが好ましい。本発明において、濡れ性変化層に要求される特性としては、エネルギーが照射されていない場合は撥液性であり、エネルギーが照射された場合は隣接する光触媒処理層中の光触媒の作用により親液性となるといった特性である。このような特性を濡れ性変化層に付与する材料として、オルガノポリシロキサンを用いることが好ましいからである。
【0019】
上記請求項10に記載の発明においては、請求項11に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。このようにフルオロアルキル基を含有するものであれば、エネルギー照射部分と未照射部分との濡れ性の差を大きくすることが可能となるからである。
【0020】
上記請求項10または請求項11に記載の発明においては、請求項12に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを用いることにより、上述したような濡れ性の変化に対する特性を発揮することができるからである。
【0021】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項13に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒処理層および上記分解除去層からなる層であることにより、エネルギー照射に伴う光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記分解除去層が分解除去された特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることができる。また、その特性変化パターン内の分解除去の度合いが異なる、深さの異なる凹凸が形成されたものとすることが可能となるのである。また、その特性変化パターン表面の凹凸を利用して、容易にパターン形成体上に機能性部を形成することができ、さらに特性変化パターン内における凹凸の深さの差を利用して、形成される機能性部の膜厚等が機能性部内において異なるものとすることが可能となるのである。
【0022】
上記請求項13に記載の発明においては、請求項14に記載するように、上記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることが好ましい。上記分解除去層が、上記の膜であることにより、比較的高い強度を有する欠陥のない膜を容易に形成することが可能となるからである。
【0023】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項15に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する密着性変化層とからなる層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒処理層および上記密着性変化層からなる層であることにより、エネルギー照射に伴う光触媒処理層中の光触媒の作用によって、上記密着性変化層上の密着性が変化した特性変化パターンが形成されており、また、その特性変化パターン内の密着性の度合いが異なるパターン形成体とすることができる。
【0024】
上記請求項1から請求項15までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項16に記載するように、上記光触媒が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択される1種または2種以上の物質であることが好ましく、中でも請求項17に記載するように、上記光触媒が酸化チタン(TiO)であることが好ましい。これは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0025】
また、本発明は請求項18に記載するように請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の、特性変化パターンに沿って、機能性部が形成されていることを特徴とする機能性素子を提供する。
【0026】
本発明によれば、上記パターン形成体の特性が変化した特性変化パターンの特性の差を利用して機能性部が形成されていることにより、高精細な機能性部を有し、かつ低コストで効率よく製造された機能性素子とすることが可能となるからである。
【0027】
上記請求項18に記載の発明においては、請求項19に記載するように、上記機能性部内における膜厚が異なるものとすることができる。上記パターン形成体の特性変化層上の特性が変化した特性変化パターンに沿って機能性部を形成することにより、その特性変化の度合いに応じて膜厚が異なる機能性部を容易に形成することが可能となるからである。
【0028】
また、本発明は請求項20に記載するように、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の、上記特性変化層上にエネルギーを照射し、上記特性変化層上の特性が変化した特性変化パターンを形成するパターン形成体の製造方法であって、
上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0029】
本発明によれば、上記特性変化層を有することにより、エネルギー照射をすることにより、容易に上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なるパターン形成体を製造することができ、またその特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なるパターン形成体を製造することが可能となる。
【0030】
上記請求項20に記載の発明においては、請求項21に記載するように、上記特性変化の度合いが異なる特性変化パターンの形成が、エネルギーの透過率が異なるフォトマスクを用いて行われるものとすることができる。上記エネルギーの透過率が異なるフォトマスクを用いることにより、光触媒を活性化、または直接特性変化層表面に作用して特性の変化を行うエネルギーの量を調整することが可能となる。これにより、エネルギーが多量に照射された領域の特性変化の度合いを大きく、またエネルギーが少量照射された領域の特性変化の度合いを小さくすることができ、形成された特性変化パターン内における特性変化の度合いを異なるものとすることが可能となるのである。
【0031】
上記請求項20に記載の発明においては、請求項22に記載するように、上記特性変化の度合いが異なる特性変化パターンの形成が、エネルギーの照射源における照射強度の差を用いて行われるものとすることができる。本発明における特性変化パターンを形成するエネルギー照射をする際に、例えばレーザ等を用いて、エネルギー照射源における照射強度を適宜調整することにより、光触媒を活性化させる等のエネルギー量の大小により、形成された特性変化パターン内における特性変化の度合いを異なるものとすることが可能となるのである。
【0032】
上記請求項20に記載の発明においては、請求項23に記載するように、上記特性変化層が少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層を有する層であり、上記特性変化の度合いが異なる特性変化パターンの形成が、上記光触媒処理層内の膜厚が異なる上記光触媒処理層を用いて行われるものとすることができる。上記光触媒処理層内の膜厚が異なることにより、エネルギーが照射された際に、光触媒処理層の膜厚が厚い部分は、光触媒処理層内部の光触媒により、光の散乱や吸収が行われ、光触媒処理層の膜厚が薄い部分に対して特性変化層表面に到達するエネルギーが減少する。これにより、光触媒処理層の膜厚に応じて、特性変化層に直接作用するエネルギーが多い部分と少ない部分とで、形成された特性変化パターン内における特性変化の度合いを異なるものとすることができるのである。
【0033】
上記請求項20から請求項22までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項24に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有型濡れ性変化層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒含有型濡れ性変化層であることにより、エネルギー照射に伴う光触媒含有型濡れ性変化層自体に含有される光触媒の作用によって、濡れ性が変化した特性変化パターンを有し、かつその特性変化パターン内の濡れ性変化の度合いが異なるパターン形成体とすることができる。また、この濡れ性の差を利用して、容易にパターン形成体上に機能性部を形成することができ、その特性変化パターン内における濡れ性変化の度合いの差を利用して、形成される機能性部の膜厚等が機能性部内において異なるものとすることが可能となるのである。
【0034】
上記請求項20から請求項22までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項25に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する光触媒含有型密着性変化層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒含有型密着性変化層であることにより、エネルギー照射に伴う光触媒含有型密着性変化層自体に含有される光触媒の作用によって、密着性の度合いが異なる特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることができるからである。
【0035】
上記請求項20から請求項23までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項26に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する層である濡れ性変化層とからなる層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒処理層および上記濡れ性変化層からなる層であることにより、エネルギー照射に伴う光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記濡れ性変化層表面に濡れ性が変化し、特性変化パターンを形成することができ、またその特性変化パターン内の濡れ性の度合いが異なるように形成されたパターン形成体とすることができる。またその特性変化パターン内の濡れ性の差を利用して、容易にパターン形成体上に機能性部を形成することができ、さらに特性変化パターン内における親液性の度合いの差を利用して、形成される機能性部の膜厚等が機能性部内において異なるものとすることが可能となるのである。
【0036】
上記請求項20から請求項23までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項27に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒処理層および上記分解除去層からなる層であることにより、エネルギー照射に伴う光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記分解除去層が分解除去された特性変化パターンを形成することができ、またその特性変化パターン内の分解除去の度合いが異なる、深さの異なる凹凸が形成されたパターン形成体とすることが可能となる。またその特性変化パターン表面の凹凸を利用して、容易にパターン形成体上に機能性部を形成することができ、さらに特性変化パターン内における凹凸の深さの差を利用して、形成される機能性部の膜厚等が機能性部内において異なるものとすることが可能となるのである。
【0037】
上記請求項20から請求項23までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項28に記載するように、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する密着性変化層とからなる層とすることができる。上記特性変化層が、上記光触媒処理層および上記密着性変化層からなる層であることにより、エネルギー照射に伴う光触媒処理層中の光触媒の作用によって、上記密着性変化層上の密着性が変化した特性変化パターンを容易に形成することができ、また、その特性変化パターン内の密着性の度合いが異なるパターン形成体とすることができるからである。
【0038】
また、本発明は請求項29に記載するように、請求項20から請求項28までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法により得られたパターン形成体表面の、上記特性変化パターンに沿って機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とする機能性素子の製造方法を提供する。本発明においては、上記パターン形成体上に形成された、特性変化の度合いが異なる特性変化パターンに沿って機能性部を形成することにより、その特性変化の度合いに対応して、機能性部の形状等が異なる機能性部を容易に形成することが可能となるのである。
【0039】
また、本発明は請求項30に記載するように、請求項18または請求項19に記載の機能性素子における上記機能性部が画素部であることを特徴とするカラーフィルタを提供する。上記機能性部が画素部であることにより、高精細に、目的とする形状の画素部が形成されたカラーフィルタとすることが可能であり、これにより様々な用途に用いることが可能なカラーフィルタとすることが可能となる。
【0040】
本発明は請求項31に記載するように、請求項18または請求項19に記載の機能性素子における上記機能性部がレンズであることを特徴とするレンチキュラーレンズを提供する。上記機能性部がレンズであることにより、容易に目的とする形状のレンズが形成されたものとすることができ、さまざまな用途に用いることが可能なレンチキュラーレンズとすることが可能となる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明は、カラーフィルタやレンチキュラーレンズをはじめとする機能性部の形状が制御可能なパターン形成体とそのパターン形成体を利用した機能性素子との製造方法、およびパターン形成体に関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0042】
A.パターン形成体
まず、本発明のパターン形成体について説明する。本発明のパターン形成体は、基材と、上記基材上に形成された光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、上記特性変化層上に形成された特性が異なる特性変化パターンとを有するパターン形成体であって、上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることを特徴とするものである。
【0043】
ここで、特性変化の度合いは、連続的に特性変化の度合いが異なるものであってもよく、また段階的に異なるものであってもよい。特性変化の度合いが連続的に異なるとは、特性変化層の特性変化の度合いが、特性変化層が光触媒処理層および分解除去層からなる層である場合を例として図1に示すように、基材1上に形成された特性変化層2(この場合は、光触媒処理層1と、光触媒処理層21上に形成された分解除去層22からなる層)の特性が変化した特性変化パターン4の、特性がなだらかに異なるものである。また、特性変化パターン内の特性変化の度合いが段階的に異なるとは、特性変化層が光触媒処理層および分解除去層からなる層である場合を例として図2に示すように、基材1上に形成された特性変化層2(この場合は、光触媒処理層1と、光触媒処理層21上に形成された分解除去層22からなる層)の特性が変化した特性変化パターン4の、特性が階段状に異なるものである。
【0044】
さらに、特性変化パターン内の特性変化の度合いは、特特性変化パターン間で異なるものであってもよく、特性変化層が光触媒処理層および分解除去層からなる層である場合を例として図3に示すように、基材1上に形成された特性変化層2(この場合は、光触媒処理層1と、光触媒処理層21上に形成された分解除去層22からなる層)の特性が変化した特性変化パターン4の特性が、形成された特性変化パターン4ごとに異なるものであってもよい。
【0045】
本発明のパターン形成体は、上記特性変化層を有することから、その特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成されたものとすることが可能であり、またその特性変化パターン内における特性変化の度合いを上述したように異なるものとすることができるのである。また本発明のパターン形成体は、この特性の差を利用して、容易にこの特性変化パターン上に機能性部を形成することが可能であり、その際上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることから、容易にパターン形成体上の特性変化パターンに沿って膜厚等の異なる機能性部を形成することが可能となる。以下、本発明のパターン形成体の各構成について説明する。
【0046】
(特性変化層)
まず、本発明の特性変化層について説明する。本発明の特性変化層は、基材上に形成されており、光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する層であれば、その特性変化の種類等は限定されるものではない。本発明においては中でも特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有型濡れ性変化層である場合(以下、第一実施態様とする)、特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する光触媒含有型密着性変化層である場合(以下、第二実施態様とする)、特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、その光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とからなる層である場合(以下、第三実施態様とする)、特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、その光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層である場合(以下、第四実施態様とする)、および特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、その光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する密着性変化層とからなる層である場合(以下、第五実施態様とする)が好ましい。以下、各実施態様についてわけて説明する。
【0047】
(1)第一実施態様
まず、本発明のパターン形成体の特性変化層における第一実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の特性変化層における第一実施態様は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有型濡れ性変化層である。
【0048】
本実施態様における光触媒含有型濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴い、光触媒含有型濡れ性変化層自体に含有される光触媒が励起され、この光触媒の作用により光触媒含有型濡れ性変化層の表面の液体との接触角が低下する層であれば、特に限定されるものではない。
【0049】
本発明においては、特性変化層が上記光触媒含有型濡れ性変化層であることにより、表面に親液性の特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることができるのである。また、本発明においては、上述したように、特性変化パターン内の特性変化の度合いが異なるように形成されたものであることから、本実施態様においては、この特性変化パターン内において親液性の度合いが異なるように形成されたものである。
【0050】
これにより、例えば機能性部を形成する機能性部形成用組成物を塗布した際に、特性変化パターンに沿って、高精細に機能性部が形成することが可能となり、また特性変化パターン内の親液性の度合いが異なることによって、その表面エネルギーから、親液性が高い領域には膜厚が高く、親液性が低い領域には、膜厚が低く塗布され、形成された機能性部の膜厚を異なるものとすることが可能となるのである。
【0051】
ここで、機能性部を形成する機能性部形成用組成物は、溶剤系の材料、または非溶剤系の材料のどちらも用いることが可能であるが、特に特性変化パターン上に形成される機能性部の膜厚の差を大きくすることが可能であるという面から、溶剤系の材料を用いることが好ましい。
【0052】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、例えば機能性部形成用組成物等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、上述した機能性部形成用組成物等に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0053】
なお、本実施態様においては、上記光触媒含有型濡れ性変化層の液体との接触角が低下した特性変化パターン内において、親液性の高い領域と親液性の低い領域が形成されることとなる。そこで、エネルギーが照射されていない領域を撥液性領域とし、この撥液性領域の液体との接触角と比較して、液体との接触角が1°以上低い場合には親液性領域とすることとする。
【0054】
ここで、上記エネルギー照射により形成される親液性領域と、エネルギー未照射の撥液性領域との特性が、機能性部を形成する際に塗布される機能性部形成用組成物に対する接触角において、少なくとも20°以上、好ましくは30°以上異なる親液性領域および撥液性領域から形成されたパターンであることが好ましい。
【0055】
また、上記光触媒含有型濡れ性変化層は、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、機能性部形成用組成物との液体との接触角が20゜以上、好ましくは30゜以上であることが好ましく、また表面張力40mN/mの液体との接触角が20゜以上、好ましくは30゜以上の範囲内であることが好ましい。エネルギー照射されていない部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が低いと、この領域に機能性部形成用組成物が付着してしまう可能性があり、高精細な機能性部を形成することが困難となるからである。
【0056】
また、上記光触媒含有型濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、機能性部形成用組成物との液体との接触角が20゜以下、好ましくは10゜以下であることが好ましく、また表面張力40mN/mの液体との接触角が20゜以下、好ましくは10゜以下の範囲内であることが好ましい。
【0057】
エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、この部分での機能性部形成用組成物の広がりが劣る可能性があり、機能性部の欠け等の問題が生じる可能性があるからである。
【0058】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0059】
また、本実施態様において上述したような光触媒含有型濡れ性変化層を用いた場合、この光触媒含有型濡れ性変化層中にフッ素が含有され、さらにこの光触媒含有型濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、光触媒含有型濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有型濡れ性変化層が形成されていてもよく、またエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むように上記光触媒含有型濡れ性変化層が形成されていてもよい。
【0060】
上述したような光触媒含有型濡れ性変化層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本実施態様においては、このキャリアが光触媒含有型濡れ性変化層内のバインダ化合物に作用を及ぼし、その表面の濡れ性を変化させるものであると考えられる。
【0061】
以下、このような光触媒含有型濡れ性変化層を構成する、光触媒、バインダ、およびその他の成分について説明する。
【0062】
a.光触媒
まず、本実施態様で使用する光触媒について説明する。本実施態様で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
本実施態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本実施態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0064】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0065】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0066】
本実施態様に用いられる光触媒含有型濡れ性変化層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有型濡れ性変化層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0067】
b.バインダ
次に、本実施態様に使用するバインダについて説明する。本実施態様においては、光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性の変化をバインダ自体に光触媒が作用することにより行う場合(第1の形態)と、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有型濡れ性変化層に含有させることにより変化させる場合(第2の形態)と、これらを組み合わせることにより行う場合(第3の形態)の三つ形態に分けることができる。上記第1の形態および第3の形態において用いられるバインダは、光触媒の作用により光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる機能を有する必要があり、上記第2の形態では、このような機能は特に必要ない。
【0068】
以下、まず第2の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダについて説明し、次に第1の形態および第3の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を有するバインダについて説明する。
【0069】
上記第2の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、有機置換基を有しない、もしくは多少有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、これらはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合することにより得ることができる。
【0070】
このようなバインダを用いた場合は、添加剤として後述するエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有型濡れ性変化層中に含有させることが必須となる。
【0071】
次に、上記第1の形態および第3の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を必要とするバインダについて説明する。このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0072】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0073】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFSON(C)CCHSi(OCH
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有型濡れ性変化層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、金属ペーストの付着を妨げる機能を発現する。
【0074】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0075】
【化1】
Figure 2004163626
【0076】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0077】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物をバインダに混合してもよい。
【0078】
また、本実施態様においては、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、メチルメタクリレート単重合体または共重合体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PTFE等をバインダとして用い、これに光触媒を分散させて用いることも可能である。これにより、エネルギー照射に伴う上記光触媒の作用により、表面にOH基を導入することが可能となり、エネルギー照射された領域を親液性領域とすることが可能となるからである。
【0079】
(分解物質)
上記第2の形態および第3の形態においては、さらにエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有型濡れ性変化層に含有させる必要がある。すなわち、バインダ自体に光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能が無い場合、およびそのような機能が不足している場合に、上述したような分解物質を添加して、上記光触媒含有型濡れ性変化層上の濡れ性の変化を起こさせる、もしくはそのような変化を補助させるようにするのである。
【0080】
このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有型濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0081】
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
【0082】
(フッ素の含有)
また、本実施態様においては、光触媒含有型濡れ性変化層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有型濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、光触媒含有型濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有型濡れ性変化層が形成されていることが好ましい。
【0083】
このような特徴を有する光触媒含有型濡れ性変化層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、後述するように容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとでき、また特性変化パターン内において、フッ素含有量の多い部分と少ない部分を形成することにより、濡れ性変化の度合いを異なるものとすることができるからである。
【0084】
上述したような、フッ素を含む濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、濡れ性の変化が大きな領域においては、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に、10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0085】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分とエネルギー未照射部分との濡れ性に大きな違いを生じさせることができ、またエネルギー照射部分の中でも、濡れ性変化が大きな部分と、濡れ性変化が小さな部分との違いを生じされることが可能となるからである。したがって、このような濡れ性変化層に機能性部を形成することにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に機能性部を形成することが可能となり、また親液性が大きな部分には膜厚が高く、親液性が小さな部分には膜厚を低く、精度よく機能性素子を得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0086】
このような光触媒含有型濡れ性変化層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for ChemicalAnalysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0087】
また、本実施態様においては、光触媒として上述したように二酸化チタンが好適に用いられるが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有型濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、このましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有型濡れ性変化層表面に含まれていることが好ましい。
【0088】
フッ素(F)が光触媒含有型濡れ性変化層にこの程度含まれることにより、光触媒含有型濡れ性変化層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥液性を確保でき、これによりエネルギーをパターン照射してフッ素含有量を減少させたパターン部分における表面の親液性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、パターン形成体上に形成される機能性素子の精度を向上させることができるからである。
【0089】
さらに、このようなパターン形成体においては、エネルギーをパターン照射して形成される親液性が高い領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
【0090】
親液性が高い領域におけるのフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、上記エネルギーが未照射である部分の撥液性との濡れ性の差を大きくすることができ、また特性変化パターン内における親液性の差を大きなものとすることが可能となるからである。
【0091】
(2)第二実施態様
次に、本発明のパターン形成体の特性変化層の第二実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の特性変化層の第二実施態様としては、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する光触媒含有型密着性変化層である。
【0092】
本実施態様における光触媒含有型密着性変化層は、エネルギー照射により光触媒含有型密着性変化層中に含有される光触媒が励起され、この光触媒の作用により、光触媒含有型密着性変化層表面の密着性が変化する。このような光触媒含有型密着性変化層であれば、特に限定されるものではないが、一般にはエネルギーの照射に伴う光触媒の作用により、その光触媒含有型密着性変化層表面における物との密着性が向上するように密着性が変化する層であることが好ましい。
【0093】
このように、エネルギー照射により物との密着性が向上するように密着性が変化する光触媒含有型密着性変化層とすることにより、エネルギーが照射された部分を密着性良好領域、エネルギーが照射されていない部分を密着阻害領域とすることが可能となるのである。この密着性の差を利用して、例えば、全面に機能性部を形成する機能性部形成用組成物を蒸着した場合に、密着性良好領域のみに機能性部形成用組成物が密着し、密着阻害領域には機能性部形成用組成物が密着しないことから、密着阻害領域における機能性部形成用組成物を容易に除去することが可能となり、機能性部を容易に形成することが可能なパターン形成体とすることができるのである。
【0094】
また本発明においては、上述したように、特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なるように形成され、本実施態様の特性変化層が光触媒含有型密着性変化層である場合においては、エネルギーが多量に照射された部分の密着性が大きく変化し、またエネルギーが少量照射された部分の密着性が小さく変化する。これにより、表面に密着性の異なるパターンが形成されたパターン形成体とすることが可能となるのである。
【0095】
ここで、密着性良好領域とは、物との密着性が良好な領域であり、後述する機能性部を形成する機能性部形成用組成物に対する密着性の良好な領域をいうこととする。また、密着阻害領域とは、物との密着性が悪い領域であり、機能性部形成用組成物に対する密着性が悪い領域をいうこととする。
【0096】
本実施態様に用いられる光触媒含有型密着性変化層は、少なくとも光触媒およびバインダを有する層であるが、本実施態様に用いられる光触媒については、上述した第一実施態様で説明した光触媒含有型濡れ性変化層における光触媒と同様であるので、ここでの説明は省略し、バインダについて説明する。
【0097】
本実施態様における光触媒含有型密着性変化層は、バインダ中に密着性阻害物質を含有し、エネルギー照射により密着性阻害物質が除去される層である場合(第一の形態)と、エネルギー照射により光触媒含有型密着性変化層上に凹凸が形成され、物理的に密着性が向上する場合(第二の形態)とがある。
【0098】
まず、第一の形態について説明する。本実施態様の光触媒含有型密着性変化層のバインダには、密着性を阻害する物質が含有されており、この密着性阻害物質により、エネルギー照射されていない密着阻害領域においては、例えば蒸着法等により塗布された機能性部形成用組成物が密着することを阻害することが可能となる。また、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、この密着性阻害物質が除去されることによって密着性が向上し、密着性良好領域を形成することが可能となるのである。
【0099】
この光触媒含有型密着性変化層の第一の態様に用いられるバインダとして、具体的には、上記光触媒含有型濡れ性変化層のバインダの項で説明したものと同様のものを用いることが可能である。
【0100】
次に、第二の形態について説明する。本実施態様の光触媒含有型密着性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面に凹凸が形成される層であり、この表面の凹凸によるアンカー効果により機能性部形成用組成物の密着性を向上させることが可能となるのである。また、エネルギー照射されていない密着阻害領域においては、凹凸が形成されていないことから、機能性部形成用組成物が密着することが困難であり、この密着性の差を利用して、特性変化パターンを容易に形成することが可能となるのである。
【0101】
この光触媒密着性変化層の第二の形態に用いられるバインダとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、メチルメタクリレート単重合体または共重合体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PTFE等を用いることが可能である。
【0102】
(3)第三実施態様
次に、本発明の特性変化層の第三実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の特性変化層の第三実施態様としては、特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、その光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とからなる層である。
【0103】
本実施態様における特性変化層は、上記光触媒処理層および上記濡れ性変化層からなり、エネルギー照射によって、光触媒処理層中の光触媒が励起され、隣接する濡れ性変化層表面の濡れ性が液体との接触角が低下するように変化する層である。
【0104】
これにより、表面が親液性領域となった特性変化パターンを有するパターン形成体とすることが可能となるのである。また、本発明においては、上述したように、上記特性変化パターンは、特性変化パターン内の特性変化の度合いが異なるように形成され、本実施態様においては、この特性変化パターン内において親液性の度合いが異なるように形成されたものである。
【0105】
これにより、例えば機能性部を形成する機能性部形成用組成物を塗布した際に、特性変化パターンに沿って、高精細に機能性部が形成することが可能となり、また特性変化パターン内の親液性の度合いが異なることから、その表面エネルギーにより、親液性が高い領域には膜厚が高く、親液性が低い領域には、膜厚が低く塗布され、形成された機能性部の膜厚を異なるものとすることが可能となるのである。
【0106】
ここで、機能性部を形成する機能性部形成用組成物は、溶剤系の材料、または非溶剤系の材料のどちらも用いることが可能であるが、特に特性変化パターン上に形成される機能性部の膜厚の差を大きくすることが可能であるという面から、溶剤系の材料を用いることが好ましい。
【0107】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、例えば機能性部形成用組成物等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、上述した機能性部形成用組成物等に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0108】
なお、本実施態様においては、親液性領域内においても、親液性の高い領域と親液性の低い領域が形成されることとなる。そこで、エネルギーが照射されていない領域を撥液性領域とし、この撥液性領域の液体との接触角と比較して、液体との接触角が1°以上低い場合には親液性領域とすることとする。
【0109】
また、上記エネルギー照射により形成される親液性領域と、エネルギー未照射の撥液性領域との特性が、その後塗布する機能性部形成用組成物との液体に対する接触角において、少なくとも20°以上、好ましくは30°以上異なる親液性領域および撥液性領域から形成されたパターンであることが好ましい。ここでいう液体との接触角は、第一実施態様と同様の方法により測定した値である。
【0110】
以下、本実施態様の特性変化層を構成する光触媒処理層および濡れ性変化層について、わけて説明する。
【0111】
a.光触媒処理層
本実施態様に用いられる光触媒処理層は、少なくとも光触媒を含有するものであり、光触媒処理層がバインダを有する場合は、上記第一実施態様で説明した光触媒含有型濡れ性変化層と同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、本実施態様においては、光触媒処理層上の濡れ性は特に変化する必要がないことから、バインダ自体に光触媒が作用することによる濡れ性の変化が生じない場合であっても、第一実施態様のように分解物質を光触媒処理層に含有させる必要がない。また、バインダを有する場合の光触媒処理層の製造方法は、上述した第一実施態様と同様であるので、これについての説明も省略する。
【0112】
一方、バインダを有さない場合の光触媒処理層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒処理層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒処理層とすることが可能であり、これにより濡れ性変化層上の濡れ性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることが可能となる。
【0113】
また、光触媒のみからなる光触媒処理層の他の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0114】
b.濡れ性変化層
次に、本実施態様に用いられる濡れ性変化層について説明する。
【0115】
本実施態様に用いられる濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するような層であれば、特に限定されるものではないが、本実施態様における濡れ性変化層は、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、機能性部形成用組成物との液体との接触角が20゜以上、好ましくは30゜以上であることが好ましく、また表面張力40mN/mの液体との接触角が20゜以上、好ましくは30゜以上の範囲内であることが好ましい。エネルギー照射されていない部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が低いと、この領域に機能性部形成用組成物が付着してしまう可能性があり、高精細な機能性部を形成することが困難となるからである。
【0116】
また、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、機能性部形成用組成物との液体との接触角が20゜以下、好ましくは10゜以下であることが好ましく、また表面張力40mN/mの液体との接触角が20゜以下、好ましくは10゜以下の範囲内であることが好ましい。
【0117】
エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、この部分での機能性部形成用組成物の広がりが劣る可能性があり、機能性部の欠け等の問題が生じる可能性があるからである。
【0118】
なお、ここでいう液体との接触角は、第一実施態様と同様の方法により測定した値である。
【0119】
この濡れ性変化層は、上記光触媒処理層の作用により濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、上述した第一実施態様の光触媒含有型濡れ性変化層中のバインダと同様の材料で形成することが好ましい。なお、このように上記第一実施態様の光触媒含有型濡れ性変化層中のバインダと同様の材料で形成した場合の濡れ性変化層の材料および形成方法に関しては、上記第一実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0120】
本実施態様において、この濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0121】
本実施態様において上述した成分の濡れ性変化層を用いることにより、隣接する光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部分の濡れ性を変化させて親液性とし、エネルギー未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができ、また特性変化パターン内の濡れ性の度合いの差を大きなものとすることが可能となるからである。
【0122】
なお、この濡れ性変化層には、上記第一実施態様における光触媒含有型濡れ性変化層の説明中「フッ素の含有」の項で記載したものと同様にして同様のフッ素を含有させることができる。
【0123】
また、本実施態様においては、濡れ性変化層中に光触媒を含有する必要がなく、この場合には、経時的に機能性部が光触媒の影響を受ける可能性を少なくすることが可能である。
【0124】
(4)第四実施態様
次に、本発明の特性変化層における第四実施態様について説明する。本発明の特性変化層における第四実施態様は、特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、その光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層である。
【0125】
本実施態様における特性変化層は、上記光触媒処理層および上記分解除去層から構成され、エネルギー照射によって、上記光触媒処理層中の光触媒が励起され、隣接する分解除去層が分解除去される層である。
【0126】
これにより、表面に凹凸が形成された特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることが可能となる。このように分解除去層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分からなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。また、本発明においては、上述したように、特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なるように形成され、本実施態様の特性変化層が光触媒処理層および分解除去層からなる層である場合においては、エネルギーが多量に照射された部分の分解除去層は分解除去層が完全に分解除去されて光触媒処理層が露出した深い凹部を形成し、またエネルギーが少量照射された部分の分解除去層は、表面に近い部分のみ分解除去され、浅い凹部を形成する。これにより、凹凸の深さの異なる特性変化パターンを有するパターン形成体とすることができる。これにより、目的とする形状に分解除去層が分解除去されたパターン形成体とすることができ、様々な用途に用いることが可能となるのである。
【0127】
また、機能性部形成用組成物をこの分解除去層の凹凸を利用して塗布することが可能であり、さらに、上記凹部の深さの差によって、膜厚の異なる機能性部を形成することが可能となる。
【0128】
なお、この分解除去層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0129】
ここで、本実施態様の特性変化層を構成する光触媒処理層については、上述した第三実施態様に用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略し、本実施態様に用いられる分解除去層について以下説明する。
【0130】
本実施態様に用いられる分解除去層は、上述したように、エネルギー照射に伴う隣接する光触媒処理層の影響により分解除去される層であれば、特に限定されるものではないが、本実施態様においては、凹凸を形成するのみならず、この分解除去層が、分解除去されて露出する光触媒処理層表面と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。これにより、分解除去層が分解除去され、光触媒処理層が露出した領域を親液性領域、上記分解除去層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、種々のパターンを形成することが容易となるからである。
【0131】
ここで、上記エネルギー照射により光触媒処理層が露出した領域である親液性領域と、エネルギー未照射の残存する分解除去層からなる領域である撥液性領域との特性が、その後塗布する機能性部形成用組成物が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角において、少なくとも20°以上、好ましくは30°以上異なる親液性領域および撥液性領域から形成されたパターンであることが好ましい。
【0132】
また、上記分解除去層、すなわち撥液性領域においては、機能性部形成用組成物との液体との接触角が20゜以上、好ましくは30゜以上であることが好ましく、また表面張力40mN/mの液体との接触角が20゜以上、好ましくは30゜以上の範囲内であることが好ましい。分解除去層、すなわち撥液性領域における液体との接触角が低いと、この領域に機能性部形成用組成物が付着してしまう可能性があり、高精細な機能性部を形成することが困難となるからである。
【0133】
また、分解除去層が分解除去されて露出した光触媒処理層、すなわち親液性領域においては、機能性部形成用組成物との液体との接触角が20゜以下、好ましくは10゜以下であることが好ましく、また表面張力40mN/mの液体との接触角が20゜以下、好ましくは10゜以下の範囲内であることが好ましい。
【0134】
光触媒処理層、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、この部分での機能性部形成用組成物の広がりが劣る可能性があり、機能性部の欠け等の問題が生じる可能性があるからである。ここで、液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0135】
この場合、後述する光触媒処理層は表面を親液性となるように、表面処理したものであってもよい。材料の表面を親液性となるように表面処理した例としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理が挙げられ、基板上に形成する親液性の層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。
【0136】
上記のような分解除去層に用いることができる膜としては、具体的にはフッ素系や炭化水素系の撥液性を有する樹脂等による膜を挙げることができる。これらのフッ素系や炭化水素系の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させ、例としてスピンコート法等の一般的な成膜方法により形成することが可能である。
【0137】
また、本実施態様においては、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、および交互吸着膜等を用いることにより、欠陥のない膜を形成することが可能であることから、このような成膜方法を用いることがより好ましいといえる。
【0138】
ここで、本実施態様に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
【0139】
(i)自己組織化単分子膜
自己組織化単分子膜(Self−Assembled Monolayer)の公式な定義の存在を実施態様者らは知らないが、一般的に自己組織化膜として認識されているものの解説文としては、例えばAbraham Ulmanによる総説“Formation and Structure of Self−Assembled Monolayers”, Chemical Review, 96, 1533−1554 (1996)が優れている。本総説を参考にすれば、自己組織化単分子膜とは、適当な分子が適当な基板表面に吸着・結合(自己組織化)した結果生じた単分子層のことと言える。自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルトリクロロシラン類やアルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に基板表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、フルオロカーボン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層基板表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本実施態様は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
【0140】
(ii)ラングミュア−ブロジェット膜
本実施態様に用いられるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir−Blodgett Film)は、基板上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基板に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644−647 (2001)に詳しく述べられている。
【0141】
(iii)交互吸着膜
交互吸着膜(Layer−by−Layer Self−Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基板上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説“Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly”Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430−442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
【0142】
また、分解除去層の膜厚としては、後述するエネルギー照射の項で説明する照射されるエネルギーにより分解除去される程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的な膜厚としては、照射されるエネルギーの種類や分解除去層の材料等により大きく異なるものではあるが、一般的には、0.001μm〜1μmの範囲内、特に0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることが好ましい。
【0143】
(5)第五実施態様
次に、本発明の特性変化層の第五実施態様について説明する。本発明の特性変化層の第五実施態様は、特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、その光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する密着性変化層とからなる層である。
【0144】
本実施態様における特性変化層は、上記光触媒処理層および上記密着性変化層からなり、エネルギー照射により光触媒処理層中の光触媒が励起され、隣接する密着性変化層の密着性を変化させる層である。
【0145】
これにより、本実施態様においては、表面に密着性が変化した特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることが可能となるのである。また、本発明においては、特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なるように形成され、本実施態様の特性変化層が密着性変化層を有する場合においては、エネルギーが多量に照射された部分の密着性が大きく変化し、またエネルギーが少量照射された部分の密着性が小さく変化する。
【0146】
これにより、本実施態様においては、表面に密着性が変化した特性変化パターンが形成されたパターン形成体とすることが可能となるのである。
【0147】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層については、上述した第三実施態様で説明したものと同様であり、また密着性変化層については、上述した第二実施態様で説明した光触媒含有型密着性変化層に含有されるバインダと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0148】
(基材)
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明においては、上記特性変化層は、基材上に形成されるものであり、この基材としては、上述した特性変化層が形成されるものであれば、特に限定されるものでなく、パターン形成体の用途に応じて、可撓性を有するものであっても、可撓性を有さないものであってもよい。
【0149】
また、特に材料等は限定されるものではなく、必要に応じて種々の材料を用いることができる。具体的には、ガラス、アルミニウム、およびその合金等の金属、プラスチック、織物、不織布等を挙げることができる。
【0150】
(遮光部)
次に、本発明においては、パターン形成体に遮光部を有していてもよい。本発明における遮光部とは、例えばカラーフィルタにおけるブラックマトリックスのような遮光部等が挙げられる。
【0151】
このような遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0152】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0153】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0154】
(エネルギー照射)
次に、本発明におけるエネルギー照射について説明する。本発明においては、上述した特性変化層上にエネルギー照射が行われることにより、上述した特性変化層上に特性変化パターンが形成される。
【0155】
なお、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、特性変化層表面の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0156】
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように特性変化層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0157】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0158】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0159】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、特性変化層中の光触媒の作用により特性変化層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
【0160】
この際、特性変化層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0161】
本発明におけるエネルギー照射方向は、上述したように、基材が透明である場合は、基材側および特性変化層側のいずれの方向からフォトマスクを介したパターンエネルギー照射もしくはレーザの描画照射を行っても良い。一方、基材が不透明な場合は、特性変化層側からエネルギー照射を行なう必要があり、また遮光部を形成した場合は、基材側からエネルギー照射を行う必要がある。
【0162】
なお、この特性変化パターン内の特性変化の度合いが異なるように特性変化パターンを形成する方法については、後述する「C.パターン形成体の製造方法」において、詳述するので、ここでの説明は省略する。
【0163】
(パターン形成体)
本発明のパターン形成体は、上述した特性変化層上に、上述した特性変化パターンが形成されたものであれば、特に限定されるものではなく、例えばパターン形成体内に遮光部等を有しているものであってもよい。
【0164】
本発明のパターン形成体は、上記特性変化層を有することにより、容易にエネルギー照射を行うことにより、高精細に特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成することが可能となる。また、特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることから、パターン形成体上に機能性部を形成する際に、容易にパターン形成体上の特性変化パターンに沿って膜厚等の異なる機能性部を形成することが可能となるのである。
【0165】
B.機能性素子
次に、本発明の機能性素子について説明する。本発明の機能性素子は、上述したパターン形成体の特性変化パターンに沿って機能性部が形成されたことを特徴とするものである。
【0166】
本発明の機能性素子は、上記パターン形成体の特性変化層上の特性が変化した特性変化パターンに沿って機能性部が形成されることから、容易に高精細な機能性部を形成することが可能となり、結果的に低コストな機能性素子とすることが可能となるのである。また、上記特性変化パターン内の特性変化の度合いが異なることから、例えば上記特性変化層が光触媒含有型濡れ性変化層、または光触媒処理層および濡れ性変化層からなる層である場合には、機能性部形成用組成物を塗布することにより、その親液性の度合いに対応して、膜厚の厚い部分と薄い部分が形成される等、機能性部の形状等を制御することが可能となり、様々な用途に用いることが可能な機能性素子とすることができる。
【0167】
ここで機能性とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)のような各種の機能を意味するものである。
【0168】
本発明における機能性部の形成方法は、上記特性変化パターンの特性の変化の種類により適宜選択させるものであるが、例えば上記特性変化層が濡れ性変化層である場合には、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット、ディスペンサー等を含むノズル吐出手段等の手段を用いることが可能であり、本発明においては中でも、ノズル吐出手段を用いることが好ましい。上記ノズル吐出手段においては、目的とするパターン状に機能性部を形成する機能性部形成用組成物を塗布することが可能となり、より高精細に機能性部を形成することが可能となるからである。
【0169】
また、上記特性変化層が例えば光触媒処理層および分解除去層からなる層である場合には、インクジェット、ディスペンサー等を含むノズル吐出手段等の手段を用いることが好ましく、これにより分解除去層の凹凸を利用して、高精細な機能性部を形成することが可能となるからである。
【0170】
また、上記特性変化層が例えば光触媒含有型密着変化層、または光触媒処理層および密着性変化層からなる層である場合には、上記方法の他に、蒸着法、無電界めっき等も用いることが可能であり、機能性部形成用組成物を成膜後、密着阻害領域に付着した機能性部形成用組成物を除去することにより、密着性良好領域にのみ機能性部形成用組成物を密着させることができ、機能性部を形成することが可能となるのである。
【0171】
ここで、機能性部形成用組成物の材料としては、溶剤型材料および非溶剤型の材料の材料どちらも用いることが可能であるが、本発明においては溶剤型の材料であることが好ましい。本発明における機能性部は、上記特性変化パターンに沿って機能性部の膜厚が異なるものであることが好ましく、溶剤型の材料を用いることにより、溶剤が揮発する際に、この機能性部内の膜厚の差を大きいものとすることが可能となるからである。
【0172】
ここで、本発明により形成される機能性素子として、好ましいものは上記機能性部が画素部であるカラーフィルタ、上記機能性部がレンズであるレンチキュラーレンズ、または上記機能性部が基板上に形成された四角錘状の液晶配向制御用突起物であるMVAモード型の液晶表示装置、または上記機能性部が基板上に形成されたホログラム形成用部材であるホログラム等が挙げられる。
【0173】
C.パターン形成体の製造方法
次に、本発明におけるパターン形成体の製造方法について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の、上記特性変化層上にエネルギーを照射し、上記特性変化層上の特性が変化した特性変化パターンを形成するパターン形成体の製造方法であって、
上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることを特徴とする製造方法である。
【0174】
本発明においては、上記特性変化層を有することにより、エネルギーを照射することにより、特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成することができ、また容易にその特性変化パターン内における特性変化の度合いを調整することが可能となるのである。
【0175】
ここで本発明のパターン形成体の製造方法においては、特性変化の度合いが異なる上記特性変化パターンの形成の方法として、フォトマスク等により透過するエネルギー量を調整する場合(以下、第一実施態様とする)、エネルギーの照射源における照射強度等を調整する場合(以下、第二実施態様とする)、および上記特性変化層における光触媒処理層の膜厚を調整する場合(以下、第三実施態様とする)の3つの実施態様がある。以下、それぞれの実施態様についてわけて詳しく説明する。
【0176】
1.第一実施態様
まず、本発明のパターン形成体の製造方法における第一実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法における第一実施態様は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の、上記特性変化層上にエネルギーを照射し、上記特性変化層上の特性が変化した特性変化パターンを形成するパターン形成体の製造方法であって、上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なり、その特性変化の度合いが異なる特性変化パターンは、エネルギー照射の際に、フォトマスク等によりエネルギーの透過率を調整することにより形成されることを特徴とする方法である。
【0177】
本実施態様のパターン形成体の製造方法は、上記特性変化層が光触媒含有型濡れ性変化層である場合を例として、図4に示すように、まず、基材1と、基材1上に形成された特性変化層2とを有するパターン形成体用基板3を調整する(図4(a))。
【0178】
次に、上記特性変化層2に、例えばフォトマスク5等を用いてエネルギー6を所定の方向から照射する(図4(b))。このエネルギー6を照射する際、フォトマスク5におけるエネルギー透過率を調整する部分5′により、透過するエネルギー量が調整され、特性変化層2内の光触媒を活性化させるエネルギー、または直接特性変化層2に直接作用するエネルギーの量を特性変化パターン内で変化させることが可能となるのである。これにより、エネルギーが多量に照射された部分の特性変化の度合いを大きくすることができ、またエネルギーが少量照射された部分の特性変化の度合いを小さくすることが可能となることから、特性変化層2上のエネルギー6が照射された部分の特性が変化した特性変化パターン4内において、特性変化の度合いが異なるパターン形成体とすることが可能なるのである(図4(c))。
【0179】
ここで、エネルギーの透過率の調整は、上記の例ではフォトマスクによって行われたが、パターン形成体用基板中に、エネルギー透過率を調整する遮光部が形成され、この遮光部により特性変化の度合いが異なる特性変化パターンの形成が行われてもよい。
【0180】
ここで、本実施態様のパターン形成体の製造方法に用いられる特性変化層、基材、エネルギー照射等については上述した「A.パターン形成体」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略し、ここでは、本実施態様に用いられるエネルギーの透過率を調整するフォトマスク等についてのみ説明する。
【0181】
本実施態様においては、フォトマスク、パターン形成体用基板に用いられる遮光部等により、エネルギーの透過率を調整することが可能である。
【0182】
ここで、フォトマスクを例として説明する。本実施態様に用いられるフォトマスクは、例えば図4(b)に示すように、エネルギーを完全に透過させない遮光部分と、遮光部内に形成されたパターンの大きさ、遮光部内の光透過濃度等によりエネルギーの透過率が異なるように形成された部分5’とを有するものとすることができる。
【0183】
これにより、エネルギーが照射された際に、遮光部を透過するエネルギーを調整することが可能となり、上記特性変化層中の光触媒を励起するエネルギー、または直接特性変化層上に作用するエネルギーの量を調整することが可能となり、照射されたエネルギー量の多い領域と少ない領域との特性変化層上の特性変化の度合いを異なるものとすることができこと、目的とするパターン形成体を製造することが可能となるのである。
【0184】
上記のようなエネルギー透過率を調整した遮光部の形成方法としては、特に限定されるものではなく、遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0185】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、クロムを蒸着する際に用いる蒸着用マスクの開口部の大きさ、配置密度により、クロム蒸着パターン内の透過濃度を制御する方法や、蒸着時間あるいは蒸着量により、蒸着する膜厚を制御する方法等を用いることができる。
【0186】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このような樹脂製遮光部のパターニング方法としては、フォトレジスト法あるいは塗布法により、形成するドットの大きさ、配置密度により樹脂製遮光部内の透過濃度を制御する方法や、フォトレジスト法あるいは塗布法により付着膜厚を制御する方法、銀塩写真法にて連続した光透過濃度階調を形成する手法等を用いることができる。
【0187】
なお、パターン形成体用基板における遮光部により、エネルギーの透過量を調整する場合においても、同様に形成することが可能である。
【0188】
ここで、本実施態様においては、エネルギー照射の方向は適宜選択され、パターン形成体用基板の遮光部によりエネルギーの透過量を調整する場合には、パターン形成体用基板側からエネルギー照射することが必要である。
【0189】
2.第二実施態様
次に、本発明におけるパターン形成体の製造方法の第二実施態様について説明する。本発明におけるパターン形成体の製造方法の第二実施態様は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の、上記特性変化層上にエネルギーを照射し、上記特性変化層上の特性が変化した特性変化パターンを形成するパターン形成体の製造方法であって、上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なり、その特性変化の度合いが異なる特性変化パターンは、エネルギーの照射源における照射強度等を調整することを特徴とする方法である。
【0190】
本実施態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図5に示すように、まず、基材1と、基材1上に形成された特性変化層2とを有するパターン形成体用基板3を調整する(図5(a))。
【0191】
次に、上記特性変化層2に、例えばフォトマスク5等を用いてエネルギー6を所定の方向から照射する(図5(b))。このエネルギー6を照射する際、エネルギーの照射源における照射強度を、照射する位置により変えることによって、特性変化層2内の光触媒を活性化させるエネルギー、または直接特性変化層2に作用するエネルギーの量を調整することが可能となるのである。これにより、エネルギー6が多量に照射された部分の特性変化の度合いを大きくすることができ、またエネルギー6が少量照射された部分の特性変化の度合いを小さくすることが可能となり、その特性変化パターン4内において、特性変化の度合いが異なるパターン形成体とすることが可能なるのである(図5(c))。
【0192】
ここで、本実施態様のパターン形成体の製造方法に用いられる特性変化層、基材等については上述した「A.パターン形成体」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略し、ここでは、本実施態様に用いられるエネルギーの照射についてのみ説明する。
【0193】
本実施態様においては、上記特性変化層に所定の方向からエネルギーを照射する。この際、例えばエネルギー源からの照射強度を調整することにより、特性変化層中の光触媒を励起させるエネルギー、または直接特性変化層の特性変化に寄与するエネルギーの量を調整し、特性変化層上に形成された特性変化パターン内における特性変化の度合いを調整するのである。これにより、エネルギーが多量に照射された領域の特性変化の度合いを大きくすることができ、またエネルギーが少量照射された領域の特性変化の度合いを小さくすることが可能となり、特性変化パターン内における特性変化の度合いを異なるパターン形成体を製造することが可能となるのである。
【0194】
また、本実施態様においては、照射時間を調整することによって、照射時間が長い部分の特性変化の度合いを大きく、また照射時間が短い部分の特性変化の度合いを小さくすることが可能である。
【0195】
また、本実施形態においては、照射強度の異なる複数の照射源を用いることによって、照射強度が高い照射源にて照射した部分の特性変化の度合いを大きく、また照射強度の低い照射源にて照射した部分の特性変化の度合いを低くすることが可能である。
【0196】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0197】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0198】
本実施態様においては、レーザ等を用いてパターン上に描画照射する場合が、特にエネルギー源の照射強度や照射時間を調整することが容易であることから好ましい。
【0199】
上述したようなエネルギー照射が終了すると、図5(c)に示すように特性変化パターン4が形成され、その特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なるパターン形成体となるのである。
【0200】
3.第三実施態様
次に、本発明のパターン形成体の製造方法における第三実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法における第三実施態様は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の、上記特性変化層上にエネルギーを照射し、上記特性変化層上の特性が変化した特性変化パターンを形成するパターン形成体の製造方法であって、上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なり、その特性変化の度合いが異なる特性変化パターンは、上記特性変化層における光触媒処理層の膜厚を調整することにより形成されることを特徴とする方法である。
【0201】
本実施態様は、上記特性変化層が光触媒処理層を有する層である場合に用いられる。本実施態様のパターン形成体の製造方法を上記特性変化層が光触媒処理層および分解除去層である場合を例として説明する。まず、例えば図6に示すように、基材1と、基材1上に形成された特性変化層2(ここでは光触媒処理層21および分解除去層22)とを有するパターン形成体用基板3を調整する(図6(a))。この際、光触媒処理層21は、光触媒処理層21内の膜厚が異なるように、形成される。
【0202】
次に、上記特性変化層2(ここでは光触媒処理層21および分解除去層22)に、例えばフォトマスク5等を用いてエネルギー6を基材1側から照射する(図6(b))。これにより、光触媒処理層21の膜厚が厚い部分は、光触媒処理層内の光触媒により、照射されたエネルギー6の散乱や吸収が行われ、光触媒処理層21の膜厚が薄い部分に対して分解除去層22表面に到達するエネルギーが減少する。これにより、光触媒処理層21の膜厚が厚い部分と薄い部分との間で、特性変化パターン4内における、分解除去の度合いが異なるパターン形成体とすることが可能なるのである(図5(c))。
【0203】
ここで、本実施態様のパターン形成体の製造方法に用いられる基材、光触媒処理層を有する特性変化層の種類、エネルギー等については上述した「A.パターン形成体」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略し、ここでは、本実施態様に用いられる光触媒処理層についてのみ説明する。
【0204】
本実施態様においては、上述したように光触媒処理層の膜厚により、特性変化層表面に照射されるエネルギーの量を調整するものである。
【0205】
ここで、特性変化層における光触媒処理層の膜厚を異なるものとした場合、光触媒処理層は、通常膜厚が厚くなることにより、低波長側(高エネルギー側)の光の透過率が低下する。これにより、上記光触媒処理層に、上記基材側からエネルギーを照射した際に、光触媒処理層表面の光触媒の活性化に寄与するエネルギー量、または直接特性変化層表面に到達し、特性変化に寄与するエネルギーが減少する。このエネルギー量が減少する原因としては、光触媒処理層内部に、光触媒が多量に存在すると、光触媒による光の散乱や吸収が行われ、光触媒処理層表面に到達するエネルギーが減少することが考えられる。
【0206】
この特性を利用して、光触媒処理層の膜厚の厚い部分と薄い部分とを形成することにより、光触媒処理層の膜厚が厚い部分の特性変化の度合いを小さくすることができ、また光触媒処理層の膜厚が薄い部分の特性変化の度合いを大きくすることが可能となるのである。
【0207】
このような光触媒処理層の形成方法としては、例えば基体上に凹凸を形成し、その基体上に光触媒処理層を形成する方法や、蒸着あるいはコーティングにおいて形成する場合に、異なる開口部を有するマスクを用い、複数回積層する方法や、コーティングにて形成する場合に、傾斜をもつように基板を配置し、レベリング、乾燥する方法や、乾燥速度を調整することにより乾燥硬化時の面内膜厚分布を制御する方法等が挙げられる
また、本実施態様においては、パターン形成体の基材側から例えばフォトマスク等を用いてエネルギーが照射されることが必要である。
【0208】
4.その他
また、本発明においては、上述した特性変化層中の特性変化パターンが形成される領域内において、その特性変化層の組成を調整することにより、特性変化層の特性変化の度合いを異なるものとすることも可能である。
【0209】
この場合おいては、例えば特性変化層が、光触媒処理層および濡れ性変化層からなる層である場合に、その濡れ性変化層中に含有されるフッ素基の含有量を変えることにより、例えばフォトマスク等を用いて特性変化パターンを形成するパターン状にエネルギーを照射した場合、フッ素基の含有量が多い部分は、親液性に変化する割合が低く、またフッ素基の含有量が少ない部分は、親液性に変化する割合を高くすることが可能となる。これにより、形成されたパターン形成体の特性変化パターン内における特性変化の割合が異なるものとすることが可能となるのである。
【0210】
ここで、本実施態様のパターン形成体の製造方法に用いられる基材、エネルギー照射等については上述した「A.パターン形成体」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0211】
D.機能性素子の製造方法
次に、本発明における機能性素子の製造方法について説明する。
【0212】
本発明の機能性素子の製造方法は、上述したパターン形成体の製造方法により形成されたパターン形成体の、上記特性変化パターンに沿って、機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とする方法である。
【0213】
上述した方法により形成されたパターン形成体は、特性変化層上に特性が変化した特性変化パターンが形成されており、その特性変化パターン内の特性変化の度合いが異なる。これにより、本発明の機能性素子の製造方法においては、上記特性変化パターンの特性の差を利用して、容易に高精細に機能性部を形成することが可能であり、また機能性部内において、例えば膜厚等が異なる機能性素子を形成することが可能となるのである。
【0214】
ここで、本発明における機能性部の種類や、機能性素子の製造方法等については、上述した「B.機能性素子」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0215】
E.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した機能性素子の機能性部が画素部であることを特徴とするものである。本発明においては、上記機能性部が画素部であることにより、画素部を高精細に形成することが可能であり、また画素部の膜厚を調整することが可能となる。これにより、例えば画素部の膜厚が異なることにより、液晶表示装置とした際の透過する色調を調整することが可能となることから半透過型液晶表示装置用のカラーフィルタ等として用いること等が可能となり、様々な用途に用いることが可能となるのである。
【0216】
ここで、通常カラーフィルタにおける着色層は、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3色で構成され、種々のパターン、例えばモザイク状、トライアングル状、ストライプ状等のパターンで形成されるものである。本実施態様の着色層においても、同様であり、このような着色層における着色パターン、着色面積は任意に設定することができる。
【0217】
また、本実施態様に用いられる着色層の材料としては、一般的にカラーフィルタの着色層として用いられる材料であれば、特に限定されるものではなく、一般的な着色層の材料として、顔料とバインダとその添加剤等により構成される。上記バインダの種類は、着色層の製造方法により変化するものであるが、一般的に着色層は顔料分散法により形成されることから、顔料分散法に必要とされる材料が好適に用いられる。また、画素部内の膜厚の差を大きくすることが容易であるという点から、上記材料は溶剤系であることが好ましい。
【0218】
F.レンチキュラーレンズ
次に、本発明のレンチキュラーレンズについて説明する。本発明のレンチキュラーレンズは、上述した機能性素子の機能性部がレンズであることを特徴とするものである。本発明においては、上記機能性部がレンズであることにより、レンズを高精細に形成することが可能であり、またレンズの膜厚を調整することが可能となる。これにより、目的とする形状のレンズを容易に形成することが可能となり、様々な用途に用いることが可能となるのである。
【0219】
ここで、本発明に用いられるレンズの材料としては、通常、レンチキュラーレンズのレンズとして用いることが可能な材料であれば、用いることが可能であり、また本発明においては、レンズ内の膜厚の差を大きくすることが容易であるという点から、上記材料は溶剤系であることが好ましい。
【0220】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本実施態様の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本実施態様の技術的範囲に包含される。
【0221】
【実施例】
(光触媒含有型濡れ性変化層の形成)
イソプロピルアルコール3g、フルオロアルキルシラン(トーケムプロダクツ(株)製;MF−160E(商品名)、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N−エチルパーフルオロオクタンスルホンアミドのイソプロピルエーテル50重量%溶液)0.06g、酸化チタンゾル(石原産業(株)製;STK−01(商品名))3g、シリカゾル(日本合成ゴム(株)製;グラスカHPC7002(商品名))0.6g、およびアルキルアルコキシシラン(日本合成ゴム(株)製;HPC402H(商品名))0.2gを混合し、100℃で20分間攪拌した。この溶液を、表面に格子状のブラックマトリクスが形成された厚さ0.7mmの石英ガラス基板上にスピンコーティングし、150℃で20分間乾燥した。これにより、基板上に界面張力が20mN/mである膜厚0.2μmの撥液性を有する光触媒含有型濡れ性変化層が形成された。
【0222】
このとき使用したブラックマトリクスのパターンは幅20μmのラインが横100μmピッチ、縦300μmピッチにて格子状に形成されたものを使用した。
【0223】
(階調性を有する濡れ性変化パターンの形成)
この光触媒含有型濡れ性変化層表面に、フォトマスクを介して超高圧水銀ランプにて露光した。露光量は365nmにて900mJであった。このとき使用したフォトマスクは、銀塩写真法を用いたエマルジョンマスクを使用した。フォトマスクのパターンとしては、10μm幅のラインにて、横100μmピッチ、縦300μmピッチの格子状に形成された、完全に紫外線を遮断する遮光パターンと、前記遮光パターンにて囲まれたエリアに形成された階調遮光パターンにて構成した。前記階調遮光パターンは、前記エリアの中心部を最小の紫外線透過率を有する部分とし、前記エリアの中心部から端に向かうにつれ紫外線透過率が上昇、遮光パターンとの境界部において最大の紫外線透過率を有するような連続した濃度階調を有するパターンとした。
【0224】
露光時の位置合わせに際しては、光触媒含有層側基板の遮光部の中心が、上記光触媒含有型濡れ性変化層を形成した基板上のブラックマトリクスの中心に合うようアライメントをとった。
【0225】
光触媒含有型濡れ性変化層表面の階調露光されたエリアにおいては、前記エリアの中心部が表面エネルギーが最小であり、前記エリアの中心部から端部に向かい連続的に表面エネルギーが上昇し、前記エリアの端部において最大の表面エネルギーを有する、表面エネルギーの階調を有する領域となった。
【0226】
(マイクロレンズ形成)
上記連続的に表面エネルギーの異なる領域の中心部分をめがけ、インクジェットヘッドよりマイクロレンズ形成用組成物を吐出した。このときマイクロレンズアレイ形成用組成物は、水溶性紫外線硬化型樹脂組成物(エステルアクリレート樹脂:荒川化学工業社製AQ−9)90重量部、硬化開始剤(チバスペシャリティケミカルズ製イルガキュア1173)5重量部、蒸留水5重量部により調整した。
【0227】
着弾したマイクロレンズ形成用組成物は連続的に表面エネルギーの異なる領域すなわち横90μm、縦290μmの領域のみに濡れ広がった。撥液性領域にまで塗れ広がることは無かった。
【0228】
このとき、マイクロレンズ形成用組成物の撥液性部分に対する接触角は60°、階調露光された紫外線透過率が最大の部分に対する接触角は10°であった。
【0229】
クリーンオーブンで150℃にて30分間乾燥、硬化したところ、中心部の膜厚が1.0μmであり、中心部から端部に向かうにつれ膜厚は上昇し、端においては膜厚1.5μmとなる、凹形状を有するマイクロレンズアレイを形成した。
【0230】
【発明の効果】
本発明によるパターン形成体は、上記特性変化層を有することから、その特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成することが可能であり、またその特性変化パターン内における特性変化の度合いを異なるものとすることができるのである。また本発明のパターン形成体は、この特性の差を利用して、特性変化パターン上に容易に機能性部を形成することが可能であり、上記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることから、パターン形成体上の特性変化パターンに沿って膜厚等の異なる機能性部を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の特性変化パターンの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の特性変化パターンの他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の特性変化パターンの他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図5】本発明のパターン形成体の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図6】本発明のパターン形成体の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図7】パターン形成体の従来技術を示す概略断面図である。
【図8】パターン形成体の従来技術を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 基材
2 … 特性変化層
3 … パターン形成体用基板
4 … 特性変化パターン
5 … フォトマスク
6 … エネルギー
21… 光触媒処理層
22… 分解除去層

Claims (31)

  1. 基材と、前記基材上に形成された光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、前記特性変化層上に形成された特性が異なる特性変化パターンとを有するパターン形成体であって、前記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることを特徴とするパターン形成体。
  2. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有型濡れ性変化層であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体。
  3. エネルギー照射されていない部分とエネルギー照射された部分において、前記光触媒含有型濡れ性変化層と、前記光触媒含有型濡れ性変化層上に機能性部を形成する機能性部形成用組成物との接触角の差が20゜以上であることを特徴とする、請求項2に記載のパターン形成体。
  4. 前記光触媒含有型濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のパターン形成体。
  5. 前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成体。
  6. 前記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のパターン形成体。
  7. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する光触媒含有型密着性変化層であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体。
  8. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とからなる層であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体。
  9. エネルギー照射されていない部分とエネルギー照射された部分において、前記濡れ性変化層と、前記濡れ性変化層上に機能性部を形成する機能性部形成用組成物との接触角の差が20゜以上であることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成体。
  10. 前記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のパターン形成体。
  11. 前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項10に記載のパターン形成体。
  12. 前記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のパターン形成体。
  13. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体。
  14. 前記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成体。
  15. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する密着性変化層とからなる層であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体。
  16. 前記光触媒が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択される1種または2種以上の物質であることを特徴とする請求項1から請求項15までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。
  17. 前記光触媒が酸化チタン(TiO)であることを特徴とする請求項16に記載のパターン形成体。
  18. 請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の、前記特性変化パターンに沿って、機能性部が形成されていることを特徴とする機能性素子。
  19. 前記機能性部内における膜厚が異なることを特徴とする請求項18に記載の機能性素子。
  20. 基材と、前記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の、前記特性変化層上にエネルギーを照射し、前記特性変化層上の特性が変化した特性変化パターンを形成するパターン形成体の製造方法であって、
    前記特性変化パターン内における特性変化の度合いが異なることを特徴とするパターン形成体の製造方法。
  21. 前記特性変化の度合いが異なる特性変化パターンの形成が、エネルギーの透過率が異なるフォトマスクを用いて行われることを特徴とする請求項20に記載のパターン形成体の製造方法。
  22. 前記特性変化の度合いが異なる特性変化パターンの形成が、エネルギーの照射源における照射強度の差を用いて行われることを特徴とする請求項20に記載のパターン形成体の製造方法。
  23. 前記特性変化層が少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層を有する層であり、前記特性変化の度合いが異なる特性変化パターンの形成が、前記光触媒処理層内の膜厚が異なる前記光触媒処理層を用いて行われることを特徴とする請求項20に記載のパターン形成体の製造方法。
  24. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有型濡れ性変化層であることを特徴とする請求項20から請求項22までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  25. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する光触媒含有型密着性変化層であることを特徴とする請求項20から請求項22までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  26. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する前記光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する層である濡れ性変化層とからなる層であることを特徴とする請求項20から請求項23までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  27. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する前記光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層であることを特徴とする請求項20から請求項23までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  28. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する前記光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により密着性が変化する密着性変化層とからなる層であることを特徴とする請求項20から請求項23までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  29. 請求項20から請求項28までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法により得られたパターン形成体表面の、前記特性変化パターンに沿って機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とする機能性素子の製造方法。
  30. 請求項18または請求項19に記載の機能性素子における前記機能性部が画素部であることを特徴とするカラーフィルタ。
  31. 請求項18または請求項19に記載の機能性素子における前記機能性部がレンズであることを特徴とするレンチキュラーレンズ。
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