JP4256147B2 - 機能性素子の製造方法およびその製造装置 - Google Patents
機能性素子の製造方法およびその製造装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4256147B2 JP4256147B2 JP2002332866A JP2002332866A JP4256147B2 JP 4256147 B2 JP4256147 B2 JP 4256147B2 JP 2002332866 A JP2002332866 A JP 2002332866A JP 2002332866 A JP2002332866 A JP 2002332866A JP 4256147 B2 JP4256147 B2 JP 4256147B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- photocatalyst
- layer
- wettability
- liquid
- pattern
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜厚の選択範囲が広く、高精細なパターンの形成を行うことが可能なインクジェット方式の機能性素子の製造方法およびその製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、インク液を液滴と呼ばれる小さな粒状にして対象物上に飛翔させることにより画点を形成してパターンを形成するインクジェット方式によるパターニング方法は、カラーフィルタ等の機能性素子のパターンの形成に活用されている。このインクジェット方式によるパターニング方式は、他のパターニング方法と比べて騒音が少なく、現像や定着などの処理が不要であるという利点を有している。
【0003】
このようなインクジェット方式においては、ノズルから液滴を吐出させてインクを対象物に塗布するため、ノズルの先端部分における微小なインクの付着や、静電気、およびインクに含有される気泡等の影響により、インクをノズルから吐出させた際、インクの着弾位置が目標位置に対してずれ、パターンの混合といった不都合が僅かな確率で生じることが問題であった。このような問題を解決するために、インクの粘度や表面張力を厳密に調整する手段が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1にはインク保持容器とノズルとの間にPTCヒータを固定し、加温したインクをノズルに供給する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、インク供給タンクを記録ヘッドの隣接に一体化させ、インク粘度を電気信号に変換し、電気信号によってインク温度を制御することで、常に一定の適性粘度特性を持つインクをノズルから吐出させる技術が開示されている。
【0006】
特許文献3には、インク液室内にインク液の温度を直接検知する温度センサを設け、この温度センサの出力に応じて、インク液室内のインク液の温度を適正な温度に制御する技術が開示されている。
【0007】
特許文献4には、インクタンク内のインクの温度の単位時間における変化率を算出する演算手段と、その変化率が所定範囲内に達したことを確認した後、インクの粘度の調整を開始するように粘度調整手段を制御する制御手段とを設けてなるインクジェットプリンタが開示されている。
【0008】
特許文献5には、インクの温度を制御する温度制御システムを設け、インクに対する最適な動作温度を決定することを可能とする情報が、インク容器に、温度制御システムによって読取られることにより、物理的に符号化する技術が開示されている。
【0009】
このようなインクジェット方式を用いた従来の機能性素子の製造方法の一例を図3を用いて説明する。まず、図3(a)に示すように、インクジェット装置から吐出される機能性部形成用塗工液に対して良好な濡れ性を示す親液性領域2および前記親液性領域2よりも機能性部形成用塗工液に対する接触角が大きく、濡れ性が親液性領域2よりも劣る撥液性領域3からなるパターンが形成されたパターン形成体1を準備する。次に、図3(b)に示すように、親液性領域2にインクジェット装置4を用いて機能性部形成用塗工液5を塗布する。この際、インクジェット装置4のノズル付近での機能性部形成用塗工液5の温度を調整することにより、温度依存性の機能性部形成用塗工液5の粘度を好適な範囲に調整し、良好な吐出を可能とする。これによりインクジェット装置4から吐出される機能性部形成用塗工液5の液滴を正確に親液性領域2に塗布することができる。インクジェット装置4のノズルから吐出された機能性部形成用塗工液5はパターン形成体1の親液性領域2上に着弾後、図3(c)に示すように、その粘度の関係から速やかに親液性領域2内に濡れ広がる。
【0010】
このような従来のインクジェット方式を用いた機能性素子の製造方法においては、機能性部形成用塗工液の粘度を低くすることにより液滴の着弾位置が目的位置に対してずれるといった不都合の発生を防止している。従って、インクジェット方式に用いられる機能性部形成用塗工液はその粘度の関係から流動性に富むため、パターン形成体上に着弾後、親液性領域内に速やかに濡れ広がる。一方、液滴が連続的に吐出されるため、親液性領域内の機能性部形成用塗工液表面には波が生じる。そして機能性部形成用塗工液が流動性に富む場合、この波は親液性領域内の機能性部形成用塗工液表面を良好に伝播する。このように波が良好に伝播してしまうと、親液性領域および撥液性領域における表面エネルギーの差により理論的に導かれる塗布量よりも、実際に親液性領域内に塗布することができる塗布量は少なくなってしまう。このように従来のインクジェット方式を用いた機能性素子の製造方法においては、パターンの混合といった不都合を防止し、かつある程度の膜厚を確保することは困難であった。また、所望の膜厚を実現するために隔壁を形成する方法も開発されているが、隔壁の形成に煩雑な手間を要するため製造効率上不利であった。
【0011】
【特許文献1】
特開平07−137294号公報
【特許文献2】
特開2002−148426号公報
【特許文献3】
特開2000−71442号公報
【特許文献4】
特開2002−59563号広報
【特許文献5】
特開2002−192745号広報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高精細なパターンの形成が可能であり、機能性部の膜厚の選択範囲が広い機能性素子の製造方法およびその製造装置を提供することを主目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、表面に親液性領域および撥液性領域からなるパターンを有するパターン形成体を準備するパターン形成体準備工程と、
上記パターン形成体表面の温度を0℃〜25℃の範囲内に冷却する冷却工程と、
上記冷却工程で冷却されたパターン形成体表面の親液性領域にインクジェット方式を用いて、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を塗布する塗布工程と、
上記機能性部形成用塗工液が塗布されたパターン形成体表面の温度を10℃〜35℃の範囲内とする昇温工程と、
を有することを特徴とする機能性素子の製造方法を提供する。
【0014】
本発明においては、パターン形成体の表面温度を上記範囲に冷却しているので、インクジェット装置により吐出された機能性部形成用塗工液は、パターン形成体の親液性領域上に着弾後、パターン形成体の表面温度の影響から粘度が上昇し流動性が低下する。また、パターン形成体を冷却すると、その表面の濡れ性は、全体的に機能性部形成用塗工液に対する接触角が高くなる方向に変化する傾向にある。従って、機能性部形成用塗工液は、親液性領域上に着弾後、径が広がりにくく、かつ速やかに濡れ広がることが抑制される。また流動性の関係から親液性領域に塗布される塗布量が増えても、連続的に吐出される液滴の影響から生じる波が機能性部形成用塗工液内に伝播しにくいため、このような波の物理的な影響を受けにくい。これにより十分な塗布量を確保することが可能となる。従って、インクジェット方式により形成される機能性部の膜厚の選択範囲を広げることができ、かつ微細なパターンを形成することができる。さらに、塗布工程後は昇温工程によりパターン形成体の表面温度を上記範囲内に戻しているので、機能性部形成用塗工液の粘度は元に戻り流動性が回復する。従って、機能性部形成用塗工液は親液性領域内に良好に濡れ広がり、親液性領域のパターンに沿って、高精細なパターンとすることができる。
【0015】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、上記パターン形成体が、外部刺激により液体に対する接触角が低下する濡れ性変化層を有し、上記濡れ性変化層上にパターン状に外部刺激を与えることにより、上記親液性領域および撥液性領域からなるパターンが形成されたものであることが好ましい。これにより、上記パターン形成体上に、濡れ性の違いによるパターンを容易に形成することが可能となり、製造効率等の面からも好ましいからである。
【0016】
上記請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載するように、上記パターン形成体が、基材と、上記基材上に形成された濡れ性変化層とを有していても良い。上記濡れ性変化層が自己支持性を有する場合には、上記濡れ性変化層は基材上に形成されていなくてもよいが、上記濡れ性変化層に自己支持性がない場合や、機能性素子に強度が必要な場合等には、上記濡れ性変化層が基材上に形成されていてもよいからである。
【0017】
上記請求項2または請求項3に記載の発明においては、請求項4に記載するように、上記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ上記濡れ性変化層が少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する光触媒含有層とすることができる。
【0018】
上記濡れ性変化層が、上記光触媒含有層であることにより、エネルギー照射に伴い、上記光触媒含有層自体の光触媒の作用により、液体との接触角が低下した親液性領域を形成することが容易に可能となるからである。
【0019】
上記請求項4に記載の発明においては、請求項5に記載するように、上記バインダが、オルガノポリシロキサンを含有する層であることが好ましい。本発明において、光触媒含有層に要求される特性としては、エネルギーが照射されていない場合は撥液性であり、エネルギーが照射された場合は光触媒含有層中の光触媒の作用により親液性となるといった特性である。このような特性を光触媒含有層に付与する材料として、オルガノポリシロキサンを用いることが好ましいからである。
【0020】
上記請求項5に記載の発明においては、請求項6に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。このようにフルオロアルキル基を含有するものであれば、エネルギー照射部分と未照射部分との濡れ性の差を大きくすることが可能となるからである。
【0021】
上記請求項5または請求項6に記載の発明においては、請求項7に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、YnSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを用いることにより、上述したような濡れ性の変化に対する特性を発揮することができるからである。
【0022】
上記請求項2または請求項3に記載の発明においては、請求項8に記載するように、上記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ上記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面の液体との接触角が低下する層である表面変化型濡れ性変化層とからなる層であってもよい。上記濡れ性変化層が、上記光触媒処理層および上記表面変化型濡れ性変化層からなることにより、エネルギー照射に伴い、上記光触媒処理層中の光触媒の作用により上記表面変化型濡れ性変化層の表面に親液性領域を形成することが可能となるからである。また、上記光触媒処理層と、形成される機能性部とが接触しないことから、上記機能性部が光触媒の影響を経時的に受ける可能性が少なく、高品質な機能性素子とすることが可能となるからである。
【0023】
上記請求項2または請求項3に記載の発明においては、請求項9に記載するように、上記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ上記濡れ性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記濡れ性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、表面の液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する表面変化型濡れ性変化層であってもよい。上記濡れ性変化層が、上記表面変化型濡れ性変化層であることにより、エネルギー照射に伴い、上記光触媒処理層側基板中の光触媒の作用により表面の液体との接触角が低下し、親液性領域を形成することが可能となるからである。
【0024】
上記請求項8または請求項9に記載の発明においては、請求項10に記載するように、上記表面変化型濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることが好ましい。本発明において、表面変化型濡れ性変化層に要求される特性としては、エネルギーが照射されていない場合は撥液性であり、エネルギーが照射された場合は光触媒処理層中の光触媒の作用により親液性となるといった特性である。このような特性を表面変化型濡れ性変化層に付与する材料として、オルガノポリシロキサンを用いることが好ましいからである。
【0025】
上記請求項10に記載の発明においては、請求項11に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。このようにフルオロアルキル基を含有するものであれば、エネルギー照射部分と未照射部分との濡れ性の差を大きくすることが可能となるからである。
【0026】
上記請求項11に記載の発明においては、請求項12に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、YnSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを用いることにより、上述したような濡れ性の変化に対する特性を発揮することができるからである。
【0027】
上記請求項2または請求項3に記載の発明においては、請求項13に記載するように、上記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ上記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去型濡れ性変化層であり、かつ上記分解除去型濡れ性変化層に対する液体の接触角と、上記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した上記光触媒処理層に対する液体の接触角とが異なる層とからなる層であってもよい。上記濡れ性変化層が、上記光触媒処理層と、その上に形成された上記分解除去型濡れ性変化層とからなることにより、エネルギー照射に伴い、上記光触媒処理層中の光触媒の作用により、例えば上記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した光触媒処理層を親液性領域、上記分解除去型濡れ性変化層を撥液性領域とすることが可能となり、親液性領域と撥液性領域とからなるパターンを形成することが可能となるからである。
【0028】
上記請求項2または請求項3に記載の発明においては、請求項14に記載するように、上記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ上記濡れ性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記濡れ性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、分解除去される分解除去型濡れ性変化層であり、上記分解除去型濡れ性変化層に対する液体の接触角と、上記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した基材に対する液体の接触角とが異なる層であってもよい。
【0029】
上記濡れ性変化層が、上記分解除去型濡れ性変化層であることにより、エネルギー照射に伴い、上記光触媒処理層側基板における上記光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記分解除去型濡れ性変化層を分解除去することが可能となり、例えば上記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した基材を親液性領域、上記分解除去型濡れ性変化層を撥液性領域とする濡れ性の違いによるパターンを形成することが可能となるからである。
【0030】
上記請求項13または請求項14に記載の発明においては、請求項15に記載するように、上記分解除去型濡れ性変化層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることが好ましい。上記分解除去型濡れ性変化層が、上記の膜であることにより、比較的強度の高い欠陥のない膜を形成することが可能となるからである。
【0031】
上記請求項4から請求項15までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項16に記載するように、上記光触媒が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)から選択される1種または2種以上の物質であることが好ましく、中でも請求項17に記載するように、上記光触媒が酸化チタン(TiO2)であることが好ましい。これは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0032】
また、本発明は請求項18に記載するように、請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造方法により製造されたカラーフィルタを提供する。
【0033】
本発明によれば、上記機能性層が画素部であることにより、高精細な画素部を有するカラーフィルタとすることができ、また、画素部の形状や膜厚等を調整することが可能となることから、様々な用途に使用可能なカラーフィルタとすることができる。
【0034】
さらに本発明においては、請求項19に記載するように、インクジェット方式により機能性部形成用塗工液を吐出させる吐出手段と、上記吐出手段から吐出された機能性部形成用塗工液が着弾する基板を固定する固定手段と、上記固定手段に固定される基板の表面温度を0℃〜25℃の範囲内とする冷却手段とを有することを特徴とする機能性素子の製造装置を提供する。
【0035】
本発明においては、このような機能性素子の製造装置を用いることにより、機能性部形成用塗工液を安定に吐出させることができ、従来よりも機能性部形成用塗工液の塗布量を多くすることが可能であるため、機能性部形成用塗工液から形成される機能性部の膜厚の選択範囲を広くすることができ、かつ高精細なパターンの形成を容易に可能とすることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の機能性素子の製造方法およびその製造装置について詳細に説明する。
【0037】
A.機能性素子の製造方法
本発明のパターン形成体の製造方法は、表面に親液性領域および撥液性領域からなるパターンを有するパターン形成体を準備するパターン形成体準備工程と、上記パターン形成体表面の温度を0℃〜25℃の範囲内に冷却する冷却工程と、
上記冷却工程で冷却されたパターン形成体表面の親液性領域にインクジェット方式を用いて、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を塗布する塗布工程と、
上記機能性部形成用塗工液が塗布されたパターン形成体表面の温度を10℃〜35℃の範囲内とする昇温工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0038】
本発明の機能性素子の製造方法によれば、所望の膜厚を有し、高精細なパターンを容易に形成することができる。一般的にインクジェット方式により塗工液を吐出し、基板に着弾させるパターニング方法においては、基板上に濡れ性の違いによるパターンが形成されたパターン形成体を用い、塗工液に対する濡れ性が良好な親液性領域に塗工液を吐出する手法や、隔壁を設け隔壁内に塗工液を吐出する手法等が知られている。このようなインクジェット方式によるパターニング方法では、ノズルから安定に塗工液を塗布させるために、インクの粘度をある程度低く保つことが好ましく、このような粘度の低い塗工液は親液性領域上に着弾後良好な濡れ広がりを示す。その一方で、連続的に吐出される液滴の物理的な作用等により、親液性領域内の塗工液表面には波が発生し、この波の影響から親液性領域および撥液性領域における表面エネルギーの差により算出される親液性領域内に塗布することが可能な理論上の塗布量の範囲内であっても、撥液性領域に塗工液が侵食する場合があり、十分な膜厚を確保することは困難であった。
【0039】
そこで、本発明においては、機能性部形成用塗工液の塗布工程の前に冷却工程を設けることにより、上述した問題を解決するものである。すなわち、冷却工程により表面の温度が所定の範囲内にあるパターン形成体において、親液性領域上に塗布された機能性部形成用塗工液は、パターン形成体の表面温度の影響から、粘度が上昇し、流動性が低下するのである。また、冷却工程によりパターン形成体表面の濡れ性は、全体的に機能性部形成用塗工液に対する接触角が高くなる方向に変化する傾向がある。従って、機能性部形成用塗工液は、親液性領域上に着弾後、径が広がりにくく、速やかに濡れ広がることが抑制され、かつ流動性の関係から親液性領域に塗布される塗布量が増えても、連続的に吐出される液滴の影響から生じる波が機能性部形成用塗工液内に伝播しにくいため、機能性部形成用塗工液の塗布量を増加しやすくなる。従って、インクジェット方式により機能性部形成用塗工液を塗布し形成される機能性部の膜厚の選択範囲を広げることができる。また、冷却工程によりパターン形成体表面における機能性部形成用塗工液の接触角は全体的に大きくなる傾向にあるので、親液性領域上に着弾後の機能性部形成用塗工液の径は広がりにくいことから、微細なパターンの形成が可能となる。
【0040】
さらに、塗布工程後は昇温工程によりパターン形成体表面の温度を上記範囲内に戻しているので、機能性部形成用塗工液の粘度は低下し流動性が回復する。従って、機能性部形成用塗工液は親液性領域内に良好に濡れ広がり、親液性領域のパターンに沿って、高精細なパターンとすることができる。
【0041】
このような利点を有する本発明の機能性素子の製造方法について図面を用いて説明する。図1は、本発明の機能性素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【0042】
まず、図1(a)に示すように、表面に機能性部形成用塗工液に対する濡れ性が良好な親液性領域2と、親液性領域2よりも機能性部形成用塗工液に対する接触角が大きい撥液性領域3とからなる濡れ性の違いによるパターンが形成されたパターン形成体1を準備し、このパターン形成体1付近で液体窒素を循環させることにより、パターン形成体1の表面温度を所定の温度まで低下させる。
【0043】
次に、このようなパターン形成体1の親液性領域2上に、図1(b)に示すように、インクジェット装置4を用いて機能性部形成用塗工液5を塗布する。機能性部形成用塗工液5はパターン形成体1の親液性領域2上に着弾後、パターン形成体1の表面温度の影響から温度が低下し粘度が上昇する。これに伴い流動性は低下するため、連続的にインクジェット装置4から吐出される機能性部形成用塗工液5により及ぼされる物理的な影響を小さくすることができ、図1(c)に示すように十分な塗布量を確保することができる。また、冷却によりパターン形成体1表面は全体的に機能性部形成用塗工液5に対する接触角が大きくなる方向に変化するため、親液性領域2に着弾後の機能性部形成用塗工液5の径は、常温で塗布した時よりも小さくなり、微細なパターンの形成を可能とする。
【0044】
次いで、機能性部形成用塗工液5が塗布されたパターン形成体1の温度を所定の範囲内まで上げると、機能性部形成用塗工液5の粘度は回復し、流動性が上昇する。従って、図1(d)に示すように、親液性領域2内に良好に機能性部形成用塗工液5が濡れ広がる。本発明においては昇温工程により機能性部形成用塗工液5の粘度が回復しても、撥液性領域3へ機能性部形成用塗工液5が侵食することがない塗布量で親液性領域2内に塗布しているので、撥液性領域3へ機能性部形成用塗工液5が濡れ広がることがなく、高精細なパターンの形成が可能であると共に、所望の膜厚とすることができる。
【0045】
このような本発明の機能性素子の製造方法について各工程に分けて説明する。
【0046】
1.パターン形成体準備工程
本発明におけるパターン形成体準備工程とは、表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性の違いによるパターンが形成されたパターン形成体を準備する工程である。
【0047】
本工程により準備されるパターン形成体としては、インクジェット装置により吐出される機能性部形成用塗工液が塗布されるパターンに応じて、当該機能性部形成用塗工液が濡れ広がる親液性領域と、当該親液性領域よりも機能性部形成用塗工液に対する濡れ性が劣る撥液性領域とからなるパターンが表面に形成されているものであれば特に限定はされない。
【0048】
このようなパターン形成体の表面に形成されている親液性領域および撥液性領域の濡れ性としては、機能性部形成用塗工液を精度良くパターン状に塗布することができるのであれば特に限定はされないが、具体的には、以下の範囲であることが好ましい。
【0049】
まず、撥液性領域において、後述する機能性部形成用塗工液における接触角は、常温において30°以上、その中でも40°以上であることが好ましい。さらに常温において表面張力40mN/mの液体との接触角が10゜以上、好ましくは、表面張力30mN/mの液体との接触角が10゜以上、特に、表面張力20mN/mの液体との接触角が10゜以上であることが好ましい。撥液性領域は撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合には、撥液性が十分でなく、撥液性部形成用塗工液が残存する可能性が高いため好ましくないからである。
【0050】
また、親液性領域では、後述する機能性部形成用塗工液における接触角が常温において、20°以下、その中でも10°以下であることが好ましい。さらに、常温において表面張力40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは、表面張力50mN/mの液体との接触角が10゜以下、特に、表面張力60mN/mの液体との接触角が10゜以下であることが好ましい。親液性領域における液体との接触角が高いと、この部分での機能性部形成用塗工液の濡れ広がりが劣る可能性があるからである。
【0051】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0052】
このようなパターン形成体において、本発明では、親液性領域および撥液性領域からなるパターンを高精細に形成することができることから、外部刺激により液体に対する接触角が低下する方向に濡れ性が変化し、パターン状に外部刺激を与えることにより、親液性領域および撥液性領域からなるパターンを形成することができる濡れ性変化層であることが好ましい。この外部刺激により液体に対する接触角が低下する濡れ性変化層を有するパターン形成体については、後に詳しく説明する。
【0053】
2.冷却工程
次に、本発明において特に特徴的な工程である冷却工程について説明する。本発明における冷却工程とは、表面に親液性領域および撥液性領域からなる濡れ性の違いにおるパターンを有するパターン形成体の表面の温度を冷却手段により所定の温度まで冷却する工程である。
【0054】
このような本工程において、パターン形成体表面の温度は、0℃〜25℃の範囲内とする必要があり、その中でも、0℃〜15℃の範囲内となるように冷却することが好ましい。上記範囲内よりも表面温度を低くすると、結露等の現象によりパターン形成体表面に水滴が付き、劣化の原因となるため好ましくない。一方、上記範囲よりも表面温度を高くすると、機能性部形成用塗工液の温度低下による粘度の上昇や流動性の低下といった変化が十分に得られず、本発明の効果を得ることが難しくなるからである。また、パターン形成体の表面温度は、少なくとも後述する塗布工程まで上記範囲内にあるようにする。これにより、後述する塗布工程において、機能性部形成用塗工液の塗布量を十分に得ることができるからである。
【0055】
さらに、本工程によりパターン形成体表面は全体的に、機能性部形成用塗工液に対する接触角が高くなる方向に濡れ性が変化する傾向にあることが分かっている。図4は、基板上に後述する光触媒含有層を成膜した光触媒含有層基板を用い、光触媒含有層表面の温度を低下させた際の溶媒系塗工液における接触角の変化を示すグラフである。なお、溶媒系塗工液の表面張力は29mN/mである。図4に示すグラフから、光触媒含有層の表面は温度の低下に伴い、溶媒系塗工液に対する接触角が大きくなるように濡れ性が変化することが示唆される。
【0056】
このようなことから、パターン形成体は本工程により冷却された後は全体的に機能性部形成用塗工液に対する濡れ性が低下するため、親液性領域上に塗布された機能性部形成用塗工液の径は、一般的な塗布条件で塗布された場合よりも小さくなる。従って、微細なパターンを形成することができる。
【0057】
このような本工程においてパターン形成体の表面温度を上記範囲内とする冷却手段としては、パターン形成体表面をムラなく冷却することが可能な手段であれば特に限定はされない。具体的には、冷媒をパターン形成体が接触する部材内に循環させる方法、パターン形成体を低温状態に曝す方法等を挙げることができる。その中でも、冷媒をパターン形成体が接触する部材内に循環させる方法であることが好ましい。具体的には、冷媒を循環させ冷却したステージ上にパターン形成体を配置する方法等である。さらに、冷媒としては、循環させることによりパターン形成体の表面温度を上記範囲内に冷却することが可能なものであれば特に限定はされなく、具体的には、液体窒素等を挙げることができる。
【0058】
3.塗布工程
次に本発明における塗布工程について説明する。本発明における塗布工程とは、上述した冷却工程により冷却され表面温度が上記範囲内であるパターン形成体の親液性領域上に、インクジェット方式により機能性部形成用塗工液を塗布する工程である。
【0059】
本発明においては、機能性部形成用塗工液を塗布する前に、予めパターン形成体の表面温度を上記範囲内に設定していることから、パターン形成体の親液性領域上に着弾した機能性部形成用塗工液は、着弾後温度が低下し、この温度変化に伴い粘度の上昇、流動性の低下といった変化が生じることとなる。これにより機能性部形成用塗工液は親液性領域内に速やかに濡れ広がることが抑制され、十分な塗布量を確保することが可能となる。これは以下の理由による。
【0060】
すなわち、親液性領域および撥液性領域における表面エネルギー差の関係から、撥液性領域に機能性部形成用塗工液を侵食させることなく親液性領域に塗布することが可能な塗布量について理論上の数値を算出することができるが、従来では、理論的に導かれる塗布量よりも、物理的な要因、例えば、インクジェット装置のノズルから連続的に吐出される液滴が及ぼす物理的なエネルギー等を要因として、実際の塗布量は大幅に少なくなっていた。しかしながら、本発明においては、上述した冷却工程を設けることにより、本工程により塗布された機能性部形成用塗工液は、親液性領域に着弾後その粘度が上昇し、流動性が低下するといった効果が得られる。このような変化により、上記物理的な影響を小さくすることができるのである。従って、親液性領域上に塗布することができる理論上可能な塗布量まで塗布することが可能となる。よって、従来よりも親液性領域上に塗布することが可能な塗布量の上限を引き上げることとなるため、機能性部形成用塗工液から形成される機能性部の膜厚の選択範囲を広げることができる。また、上述した冷却工程によりパターン形成体表面における液体の接触角は全体的に大きくなる傾向にあるため、親液性領域上に着弾後の機能性部形成用塗工液の径は広がりにくく、微細なパターンの形成が可能となる。
【0061】
このような本工程において塗布される機能性部形成用塗工液とは、本発明により最終的に得られる機能性素子の機能性部を形成するための塗工液であり、パターン形成体の親液性領域上に塗布し、硬化等することにより機能性部を形成するものである。このような本発明における機能性部形成用塗工液は、最終的に得られる機能性素子の種類に応じてその材料等は選択されるものである。
【0062】
なお、ここでいう機能性とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)のような各種の機能を意味するものである。
【0063】
本発明においては、最終的に得られる機能性素子としてカラーフィルタ、エレクトロルミネッセント素子等を挙げることができ、その中でも、カラーフィルタであることが好ましい。例えば、機能性素子がカラーフィルタである場合には、機能性部として画素部を挙げることができ、機能性部形成用塗工液としては、一般的に画素部を形成する材料等を挙げることができる。
【0064】
また、本発明においてはインクジェット方式を用いて機能性部形成用塗工液を塗布することから、インクジェット方式に適したものが用いられる。このようなインクジェット方式に用いる当該塗工液の性質としては、溶媒を含み、粘度が低く、高沸点であること等が挙げられる。上記性質を有する機能性部形成用塗工液とすることにより、ノズルから速やかに滞りなく機能性部形成用塗工液を吐出させることができ、かつノズル内壁への機能性部形成用塗工液の残存を防止し、インクジェット装置の塗布精度を向上させることができるからである。
【0065】
このような機能性部形成用塗工液において、その粘度としては、上述した冷却工程において、冷却前と冷却後とで比較し、その粘度が上昇し、かつ親液性領域上に塗布した際に、即座に濡れ広がることを抑制できるのであれば特に限定はされない。
【0066】
本発明に用いられる機能性部形成用塗工液において、溶媒系の機能性部形成用塗工液とした場合には、常温における粘度が、5cps〜20cpsの範囲内、その中でも7cps〜14cps範囲内であることが好ましい。一方、水系の機能性部形成用塗工液とした場合には、常温における粘度が、3cps〜10cpsの範囲内、その中でも4cps〜7cps範囲内であることが好ましい。上記範囲内の粘度を有する機能性部形成用塗工液であれば、インクジェット方式によりノズルから塗工液を吐出させた際に、液滴の着弾位置が目的位置に対してずれるといった不都合の発生を防止することができるからである。
【0067】
なお、本発明における粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)によって、測定温度20℃で測定した値を用いることとする。
【0068】
また、上記機能性部形成用塗工液は、熱硬化型であってもよく、紫外線硬化型であってもよく、その硬化方法等は特に限定されるものではない。
【0069】
このような本工程により形成される機能性部の膜厚としては、親液性領域および撥液性領域における表面エネルギー差等によって変化するものであるが、一般的なその表面エネルギー差により規定すると、5μm〜20μmの範囲内の膜厚とすることが可能である。
【0070】
4.昇温工程
昇温工程とは、上述した機能性部形成用塗工液が塗布されたパターン形成体表面の温度を、所定の温度にまで昇温する工程である。このような本工程により冷却状態にあった機能性部形成用塗工液の温度が上昇し流動性が回復する。これに伴い親液性領域内に機能性部形成用塗工液が良好に濡れ広がるため、高精細なパターンを形成することができる。
【0071】
このような本工程におけるパターン形成体表面の温度としては、10℃〜35℃の範囲内であり、その中でも、25℃〜30℃の範囲内とすることが好ましい。上記範囲よりも表面の温度を低くすると、機能性部形成用塗工液の流動性が十分に回復せず、良好な濡れ広がりが得られないからであり、一方、上記範囲よりも表面の温度を高くすると、機能性部形成用塗工液の組成が変化するおそれがあるからである。
【0072】
このようにパターン形成体表面の温度を上述した範囲内とする方法としては、急激な温度変化が生じない方法であれば特に限定はされない。例えば、パターン形成体を室温に放置する等の方法が挙げられる。
【0073】
本発明においては、親液性領域および撥液性領域における表面エネルギーの差から最大限親液性領域に塗布することができる塗布量の範囲内で機能性部形成用塗工液を塗布しているので、昇温工程により機能性部形成用塗工液の粘度が回復しても、撥液性領域まで機能性部形成用塗工液が濡れ広がることはない。従って、パターン形成体の親液性領域のパターンに沿って高精細なパターンとすることができる。かつ、親液性領域に塗布することが可能な塗布量の上限を従来よりも高めることとなるため、機能性部の膜厚の選択範囲を広げることができる。
【0074】
5.その他
ここで、上記パターン形成体が、外部刺激により液体に対する接触角が低下する濡れ性変化層を有する場合のパターン形成体について説明する。
【0075】
上述したパターン形成体準備工程により準備されるパターン形成体としては、上述したようにインクジェット方式により吐出される機能性部形成用塗工液が塗布されるパターンに応じて、当該機能性部形成用塗工液が濡れ広がる親液性領域と、当該親液性領域よりも機能性部形成用塗工液に対する濡れ性が劣る撥液性領域とからなるパターンが表面に形成されているものであれば特に限定はされない。
【0076】
このようなパターン形成体において、本発明では、親液性領域および撥液性領域からなるパターンを高精細に形成することができることから、外部刺激により液体に対する接触角が低下する方向に濡れ性が変化し、パターン状に外部刺激を与えることにより、親液性領域および撥液性領域からなるパターンを形成することができる濡れ性変化層であることが好ましい。
【0077】
ここで、上記濡れ性変化層は、基材上に形成されていてもよく、またパターン形成体上に遮光部等が形成されていてもよい。以下、このパターン形成体が上記濡れ性変化層を有する場合の、パターン形成体を構成する各構成について説明する。
【0078】
(1)濡れ性変化層
まず、本発明に用いられる濡れ性変化層について説明する。本発明に用いられる濡れ性変化層は、外部刺激、例えば物理的刺激、化学的刺激等により液体に対する接触角が低下するものであれば、特に限定されるものではないが、本発明においては、製造効率やコストの面から、上記外部刺激が紫外光等のエネルギー照射により液体との接触角が低下するものであることが好ましい。これにより、光触媒等を用いて、大規模な装置や特別な材料を必要とすることなく、効率よく親液性領域と撥液性領域とからなるパターンを形成することが可能となるからである。
【0079】
このような特性を有する濡れ性変化層としては、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する光触媒含有層である場合(以下、第一実施態様とする)、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面の液体との接触角が低下する層である表面変化型濡れ性変化層とからなる層である場合(以下、第二実施態様とする)、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記濡れ性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、表面の液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する表面変化型濡れ性変化層である場合(以下、第三実施態様とする)、上記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去型濡れ性変化層であり、かつ上記分解除去型濡れ性変化層に対する液体の接触角と、上記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した前記光触媒処理層に対する液体の接触角とが異なる層とからなる層である場合(以下、第四実施態様とする)、または上記濡れ性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記濡れ性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、分解除去される分解除去型濡れ性変化層であり、上記分解除去型濡れ性変化層に対する液体の接触角と、上記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した基材に対する液体の接触角とが異なる層である場合(以下、第五実施態様とする)が好ましい。
【0080】
以下、各実施態様ごとに詳細に説明する。
【0081】
a.第一実施態様
まず、上記濡れ性変化層の第一実施態様について説明する。上記濡れ性変化層の第一実施態様は、上記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する光触媒含有層である場合である。
【0082】
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する層であれば特に限定されるものではなく、これにより、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となる。
【0083】
本実施態様に用いられる光触媒含有層は中でも、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10゜以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10゜以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分が、撥液性が要求される部分であることから、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をインクジェット方式により塗布し、硬化させて形成する場合等に、撥液性領域にも機能性部形成用塗工液が付着する可能性があることから、高精細に機能性部を形成することが困難となるからである。
【0084】
また、上記光触媒含有層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10゜以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10゜以下となるような層であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を、親液性領域においてもはじいてしまう可能性があり、本実施態様におけるインクジェット方式により機能性部形成用塗工液を塗布した際に、機能性部形成用塗工液が十分に塗れ広がらず、機能性部を形成することが難しくなる可能性があるからである。
【0085】
なお、ここでいう液体との接触角は、上述した「1.パターン形成体準備工程」の中で記載した測定方法と同様の方法により測定されたものである。
【0086】
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、この光触媒含有層中にフッ素が含有され、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていてもよく、またエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むように形成されていてもよい。
【0087】
上述したような光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本実施態様においては、このキャリアが光触媒含有層内のバインダ化合物に作用を及ぼし、その表面の濡れ性を変化させるものであると考えられる。
【0088】
以下、このような光触媒含有層を構成する、光触媒、バインダ、およびその他の成分について説明する。
【0089】
(i)光触媒
まず、本実施態様に用いられる光触媒について説明する。本実施態様に用いられる光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0090】
本実施態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本実施態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0091】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0092】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径は50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0093】
本実施態様に用いられる光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0094】
(ii)バインダ
次に、本実施態様に用いられるバインダについて説明する。本実施態様においては、光触媒含有層上の濡れ性の変化をバインダ自体に光触媒が作用することにより行う場合(第1の形態)と、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させることにより変化させる場合(第2の形態)と、これらを組み合わせることにより行う場合(第3の形態)の三つの形態に分けることができる。上記第1の形態および第3の形態において用いられるバインダは、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる機能を有する必要があり、上記第2の形態では、このような機能は特に必要ない。
【0095】
以下、まず第2の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダについて説明し、次に第1の形態および第3の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を有するバインダについて説明する。
【0096】
上記第2の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、有機置換基を有しない、もしくは多少有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、これらはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合することにより得ることができる。
【0097】
このようなバインダを用いた場合は、添加剤としてエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層中に含有させることが必須となる。
【0098】
次に、上記第1の形態および第3の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を必要とするバインダについて説明する。このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0099】
上記の(1)の場合、一般式:
YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0100】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、機能性部を形成する機能性層形成用塗工液の付着を妨げる機能を発現する。
【0101】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0102】
【化1】
【0103】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0104】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0105】
(iii)分解物質
上記第2の形態および第3の形態においては、さらにエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させる必要がある。すなわち、バインダ自体に光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能が無い場合、およびそのような機能が不足している場合に、上述したような分解物質を添加して、上記光触媒含有層上の濡れ性の変化を起こさせる、もしくはそのような変化を補助させるようにするのである。
【0106】
このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0107】
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
【0108】
(iv)フッ素の含有
また、本実施態様においては、光触媒含有層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていることが好ましい。
【0109】
このような特徴を有する光触媒含有層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、後述するように容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0110】
したがって、このような光触媒含有層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、例えばインクジェット法等により、機能性層形成用塗工液を塗布した場合に、高精細な機能性部を形成することが可能となるからである。
【0111】
上述したような、フッ素を含む光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下である。
【0112】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親液性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような光触媒含有層に、例えば機能性層形成用塗工液を付着させることにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に機能性部を形成することが可能となり、精度の良い機能性素子を得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0113】
このような光触媒含有層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0114】
また、本実施態様においては、光触媒として上述したように二酸化チタンが好適に用いられるが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、このましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有層表面に含まれていることが好ましい。
【0115】
フッ素(F)が光触媒含有層にこの程度含まれることにより、光触媒含有層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥液性を確保でき、これによりエネルギーをパターン照射してフッ素含有量を減少させたパターン部分における表面の親液性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、最終的に得られる機能性素子の精度を向上させることができるからである。
【0116】
さらに、このような機能性素子においては、エネルギーをパターン照射して形成される親インク領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
【0117】
光触媒含有層中のフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、機能性素子を形成するためには十分な親液性を得ることができ、上記エネルギーが未照射である部分の撥液性との濡れ性の差異により、機能性素子を精度良く形成することが可能となり、利用価値の高い機能性素子を得ることができる。
【0118】
(v)光触媒含有層の製造方法
上述したようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより、光触媒含有層を形成することができる。
【0119】
b.第二実施態様
次に、上記濡れ性変化層における第二実施態様について説明する。上記濡れ性変化層における第二実施態様は、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面の液体との接触角が低下する層である表面変化型濡れ性変化層とからなる層である場合である。
【0120】
本実施態様においては、光触媒処理層上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する表面変化型濡れ性変化層が形成されていることから、エネルギー照射によって、光触媒処理層中の光触媒が表面変化型濡れ性変化層に作用し、表面変化型濡れ性変化層上のエネルギー照射された部分を、液体との接触角が低下するように変化させることが可能となるのである。以下、上記光触媒処理層および表面変化型濡れ性変化層について説明する。
【0121】
(i)光触媒処理層
本実施態様に用いられる光触媒処理層は、少なくとも光触媒を含有するものであり、光触媒処理層がバインダを有する場合は、上記第一実施態様で説明した光触媒含有層と同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、本実施態様においては、光触媒処理層上の濡れ性は特に変化する必要がないことから、バインダ自体に光触媒が作用することによる濡れ性の変化が生じない場合であっても、第一実施態様のように分解物質を光触媒処理層に含有させる必要がない。また、バインダを有する場合の光触媒処理層の製造方法は、上述した第一実施態様と同様であるので、これについての説明も省略する。
【0122】
一方、バインダを有さない場合の光触媒処理層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒処理層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒処理層とすることが可能であり、これにより表面変化型濡れ性変化層上の濡れ性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に表面変化型濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることが可能となる。
【0123】
また、光触媒のみからなる光触媒処理層の他の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0124】
(ii)表面変化型濡れ性変化層
次に、本実施態様に用いられる表面変化型濡れ性変化層について説明する。
【0125】
本実施態様に用いられる表面変化型濡れ性変化層は、上記光触媒処理層の作用により濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、上述した第一実施態様の光触媒含有層中のバインダと同様の材料で形成することが好ましい。なお、このように上記第一実施態様の光触媒含有層中のバインダと同様の材料で形成した場合の表面変化型濡れ性変化層の材料および形成方法に関しては、上記第一実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0126】
本実施態様において、この表面変化型濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0127】
本実施態様において上述した成分の表面変化型濡れ性変化層を用いることにより、隣接する光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部分の濡れ性を変化させて親液性とし、エネルギー未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。
【0128】
本実施態様に用いられる表面変化型濡れ性変化層は中でも、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10゜以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10゜以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分が、撥液性が要求される部分であることから、上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、上述した機能性部形成用塗工液をインクジェット方式により塗布し、硬化させて形成する場合に、撥液性領域にも機能性部形成用塗工液が付着する可能性があることから、高精細に機能性部を形成することが困難となるからである。
【0129】
また、上記表面変化型濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10゜以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10゜以下となるような層であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、例えば機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を、親液性領域においてもはじいてしまう可能性があるからである。なお、ここでの表面変化型濡れ性変化層における液体との接触角も、上述した「1.パターン形成体準備工程」において説明した方法により測定された値である。
【0130】
なお、この表面変化型濡れ性変化層には、上記第一実施態様における光触媒含有層の説明中「フッ素の含有」の項で記載したものと同様にして同様のフッ素を含有させることができる。
【0131】
なお、本実施態様においては、表面変化型濡れ性変化層中に光触媒を含有する必要がなく、この場合には、経時的に機能性部が光触媒の影響を受ける可能性を少なくすることが可能である。
【0132】
c.第三実施態様
次に、上記濡れ性変化層の第三実施態様について説明する。上記濡れ性変化層における第三実施態様は、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記濡れ性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、表面の液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する表面変化型濡れ性変化層である場合である。
【0133】
本実施態様における表面変化型濡れ性変化層は、例えば図5に示すように、表面変化型濡れ性変化層21と、光触媒を含有する光触媒処理層22および基体23とを有する光触媒処理層側基板20を準備する。次に、上記表面変化型濡れ性変化層21と光触媒処理層22とが、所定の間隙となるように配置された後、フォトマスク24等を用いて、所定の方向からエネルギー25を照射されることにより、表面変化型濡れ性変化層21上におけるエネルギー照射された部分の液体との接触角が低下するように濡れ性が変化するものである。
【0134】
なお、上記光触媒処理層側基板は、エネルギー照射の間のみ、上記位置に配置されていればよい。
【0135】
本実施態様に用いられる表面変化型濡れ性変化層については、第二実施態様で説明した表面変化型濡れ性変化層と同様であるので、ここでの説明は省略し、光触媒処理層側基板のみについて説明する。
【0136】
本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板は、少なくとも光触媒処理層と基体とを有するものであり、通常は基体上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒処理層が形成されてなるものである。また、この光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部やプライマー層が形成されたものも用いることができる。
【0137】
本実施態様においては、エネルギーを照射する際に、上記表面変化型濡れ性変化層と、上記光触媒処理層側基板における光触媒処理層とを所定の間隙をおいて対向させ、光触媒処理層側基板の光触媒処理層の作用により、表面変化型濡れ性変化層の濡れ性を変化させ、エネルギー照射後、光触媒処理層側基板を取り外すことにより濡れ性パターンが形成されるのである。以下、この光触媒処理層側基板の各構成について説明する。
【0138】
(i)光触媒処理層
本実施態様に用いられる光触媒処理層は、少なくとも光触媒を含有するものであり、バインダを有していても、有していなくてもよく、上述した第二実施態様の光触媒処理層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0139】
ここで、本実施態様において用いられる光触媒処理層は、例えば図5に示すように、基体23上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図6に示すように、基体23上に光触媒処理層22がパターン状に形成されたものであってもよい。
【0140】
このように光触媒処理層をパターン状に形成することにより、エネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いてパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、表面変化型濡れ性変化層上に親液性領域と撥液性領域とからなる濡れ性パターンを形成することができる。
【0141】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0142】
また、光触媒処理層と表面変化型濡れ性変化層とを例えば密着させてエネルギー照射を行う場合には、実際に光触媒処理層の形成された部分のみの濡れ性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒処理層と表面変化型濡れ性変化層とが対向する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
【0143】
(ii)基体
本実施態様においては、図5に示すように、光触媒処理層側基板は、少なくとも基体23とこの基体23上に形成された光触媒処理層22とを有するものである。この際、用いられる基体を構成する材料は、後述するエネルギーの照射方向や、得られる機能性素子が透明性を必要とするか等により適宜選択される。
【0144】
また本実施態様に用いられる基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0145】
なお、基体表面と光触媒処理層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0146】
(iii)光触媒処理層側遮光部
本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒処理層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0147】
このような光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板は、光触媒処理層側遮光部の形成位置により、下記の二つの態様とすることができる。
【0148】
一つが、例えば図7に示すように、基体23上に光触媒処理層側遮光部26を形成し、この光触媒処理層側遮光部26上に光触媒処理層22を形成して、光触媒処理層側基板とする態様である。もう一つは、例えば図8に示すように、基体23上に光触媒処理層22を形成し、その上に光触媒処理層側遮光部26を形成して光触媒処理層側基板20とする態様である。
【0149】
いずれの態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒処理層側遮光部が、上記光触媒処理層と表面変化型濡れ性変化層との配置部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0150】
さらに、上記光触媒処理層上に光触媒処理層側遮光部を形成する態様においては、光触媒処理層と表面変化型濡れ性変化層とを所定の位置に配置する際に、この光触媒処理層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒処理層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0151】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒処理層と表面変化型濡れ性変化層とを対向させた状態で配置する際に、上記光触媒処理層側遮光部と表面変化型濡れ性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒処理層側基板からエネルギーを照射することにより、表面変化型濡れ性変化層上に濡れ性変化パターンを精度良く形成することが可能となるのである。
【0152】
このような光触媒処理層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒処理層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0153】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0154】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0155】
なお、上記説明においては、光触媒処理層側遮光部の形成位置として、基体と光触媒処理層との間、および光触媒処理層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒処理層が形成されていない側の表面に光触媒処理層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、濡れ性変化パターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0156】
(iv)プライマー層
次に、本実施態様の光触媒処理層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本実施態様において、上述したように基体上に光触媒処理層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒処理層を形成して光触媒処理層側基板とする場合においては、上記光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成してもよい。
【0157】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による表面変化型濡れ性変化層の濡れ性変化を阻害する要因となる光触媒処理層側遮光部および光触媒処理層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒処理層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で濡れ性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0158】
なお、本実施態様においてプライマー層は、光触媒処理層側遮光部のみならず光触媒処理層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒処理層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0159】
本実施態様におけるプライマー層は、光触媒処理層側基板の光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0160】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiX4で示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0161】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0162】
d.第四実施態様
次に、上記濡れ性変化層の第四実施態様について説明する。上記濡れ性変化層の第四実施態様は、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去型濡れ性変化層であり、かつ上記分解除去型濡れ性変化層に対する液体の接触角と、上記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した前記光触媒処理層に対する液体の接触角とが異なる層とからなる層である場合である。
【0163】
本実施態様においては、上記光触媒処理層上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去型濡れ性変化層が形成されていることから、エネルギー照射によって、光触媒処理層中の光触媒が分解除去型濡れ性変化層に作用し、分解除去型濡れ性変化層上のエネルギー照射された部分を、分解除去することが可能となるのである。
【0164】
ここで、上記光触媒処理層については、上述した第二実施態様に用いられる光触媒処理層と同様であるので、ここでの説明は省略し、本実施態様に用いられる分解除去型濡れ性変化層について、以下詳しく説明する。
【0165】
本実施態様に用いられる分解除去型濡れ性変化層は、エネルギー照射された際に光触媒処理層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された部分の分解除去型濡れ性変化層が分解除去される層であり、かつこの分解除去型濡れ性変化層が、上記露出した光触媒処理層と比較して、液体との接触角が異なるものであれば、特に限定されるものではない。
【0166】
このように分解除去型濡れ性変化層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去型濡れ性変化層のある部分と無い部分からなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。
【0167】
なお、この分解除去型濡れ性変化層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去型濡れ性変化層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0168】
また、本実施態様には、凹凸を形成するのみならず、分解除去型濡れ性変化層と、この分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した光触媒処理層との液体との接触角が異なることから、パターン形成体上に撥液性領域と、親液性領域を形成することが可能となるのである。
【0169】
ここで、本実施態様に用いられる分解除去型濡れ性変化層は、上記の中でも、分解除去型濡れ性変化層が、上記露出した光触媒処理層と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。これにより、分解除去型濡れ性変化層が分解除去された領域を親液性領域、上記分解除去型濡れ性変化層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、親液性領域と撥液性領域とからなるパターンを形成することが可能となるからである。
【0170】
ここで、本実施態様における分解除去型濡れ性変化層は、エネルギー照射後に残存している部分が撥液性領域となることから、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10゜以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10゜以下となるような層であることが好ましい。これは、分解除去型濡れ性変化層が本実施態様においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、インクジェット方式により、機能性部形成用塗工液を塗布した際に、撥液性領域にまで機能性部形成用塗工液が付着する可能性が生じることから、高精細な機能性素子とすることが困難となるからである。
【0171】
また、エネルギー照射により露出した光触媒処理層、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10゜以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10゜以下となるような層であることが好ましい。これは光触媒処理層、すなわち親液性領域における機能性部形成用塗工液との接触角が高い場合は、機能性部形成用塗工液を塗布した場合に、親液性領域においても機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、インクジェット方式により親液性領域上に機能性部を形成することが難しくなる可能性があるからである。ここで、液体との接触角は、上述した「1.パターン形成体準備工程」において説明した方法により測定した値である。
【0172】
本実施態様の分解除去型濡れ性変化層に用いることができる膜としては、具体的にはフッ素系や炭化水素系の撥液性を有する樹脂等による膜を挙げることができる。これらのフッ素系や炭化水素系の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させ、例としてスピンコート法等の一般的な成膜方法により形成することが可能である。
【0173】
また、本実施態様においては、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等を用いることにより、欠陥のない膜を形成することが可能であることから、このような成膜方法を用いることがより好ましいといえる。
【0174】
ここで、本実施態様に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
【0175】
(i)自己組織化単分子膜
自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer)の公式な定義の存在を発明者らは知らないが、一般的に自己組織化膜として認識されているものの解説文としては、例えばAbraham Ulmanによる総説“Formation and Structure of Self-Assembled Monolayers”, Chemical Review, 96, 1533-1554 (1996)が優れている。本総説を参考にすれば、自己組織化単分子膜とは、適当な分子が適当な基材表面に吸着・結合(自己組織化)した結果生じた単分子層のことと言える。自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルトリクロロシラン類やアルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に基材表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、フルオロカーボン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層基材表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本実施態様は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
【0176】
(ii)ラングミュア−ブロジェット膜
本実施態様に用いられるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir-Blodgett Film)は、基材上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基材に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644-647 (2001)に詳しく述べられている。
【0177】
(iii)交互吸着膜
交互吸着膜(Layer-by-Layer Self-Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基材上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説“Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly”Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430-442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
【0178】
また、分解除去型濡れ性変化層の膜厚としては、後述するエネルギー照射工程において照射されるエネルギーにより分解除去される程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的な膜厚としては、照射されるエネルギーの種類や分解除去型濡れ性変化層の材料等により大きく異なるものではあるが、一般的には、0.001μm〜1μmの範囲内、特に0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることが好ましい。
【0179】
e.第五実施態様
次に、上記濡れ性変化層の第五実施態様について説明する。上記濡れ性変化層の第五実施態様は、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記濡れ性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、分解除去される分解除去型濡れ性変化層であり、上記分解除去型濡れ性変化層に対する液体の接触角と、上記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した基材に対する液体の接触角とが異なる層である場合である。
【0180】
本実施態様においては、上述した第三実施態様と同様に、エネルギーを照射する際に、光触媒を含有する光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板を用いて、上記分解除去型濡れ性変化層と、上記光触媒処理層とを所定の間隙をおいて対向させ、光触媒処理層側基板の光触媒処理層の作用により、分解除去型濡れ性変化層をパターン状に分解除去した後、光触媒処理層側基板を取り外すことにより、分解除去型濡れ性変化層が分解されたパターンが形成されるのである。この際、分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出するのは後述する基材となる。この際、後述する基材は、表面を親液性となるように、表面処理したものであってもよい。材料の表面を親液性となるように表面処理した例としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理が挙げられ、基体上に形成する親液性の層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。
【0181】
本実施態様に用いられる分解除去型濡れ性変化層については、上述した第四実施態様と同様であり、また光触媒処理層側基板については、上述した第三実施態様で説明した光触媒処理層側基板と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0182】
(2)基材
次に、本実施態様のパターン形成体に用いられる基材について説明する。本実施態様においては、上記濡れ性変化層が自己支持性を有しない場合、また機能性素子に強度が必要な場合、または上述した濡れ性変化層の第五実施態様である場合等に、基材上に上記濡れ性変化層が形成される。
【0183】
本実施態様に用いられる基材は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
【0184】
また、本実施態様においては、上記濡れ性変化層の濡れ性が変化したパターンの形成に際してエネルギーを照射する必要性があるが、このエネルギーの照射において、基材側からエネルギーが照射される場合には、基材に透明性が必要とされる。
【0185】
なお、基材表面と濡れ性変化層との密着性を向上させるために、基材上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0186】
(3)その他
本実施態様においては、機能性素子の種類によって、パターン形成体中に遮光部が形成されていても良い。このように遮光部を有する場合は、エネルギー照射によるパターン形成に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、簡便な工程とすることが可能となり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0187】
このような遮光部の形成位置としては、基材上に形成し、その上から濡れ性変化層を形成する場合、すなわち基材と濡れ性変化層との間に形成する場合と、機能性部を形成する面と反対側の、濡れ性変化層またはパターン形成体が上記基材を有する場合には基材の表面にパターン状に形成する場合とがある。
【0188】
いずれの場合も、エネルギーの照射は、パターン形成体側からとなるが、全面に照射することにより、濡れ性変化層面にパターン状に濡れ性変化パターンを形成することができる。
【0189】
このような遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。この遮光部の形成方法については、上述した濡れ性変化層の第三実施態様における光触媒処理層側基板における光触媒処理層側遮光部の項において説明したものと同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
【0190】
(4)親液性領域および撥液性領域からなるパターンの形成
次に、上記濡れ性変化層への親液性領域および撥液性領域からなるパターン形成について説明する。本実施態様においては、所定の方向からエネルギーをパターン照射することにより、上記濡れ性変化層表面に濡れ性の違いによるパターンが形成され、このパターンに沿って、後述する機能性部が形成されるのである。
【0191】
なお、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、上記濡れ性変化層の濡れ性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0192】
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒に二酸化チタンが好ましく用いられ、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0193】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0194】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0195】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、濡れ性変化層が光触媒の作用により濡れ性が変化するのに必要な照射量とする。
【0196】
この際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させことが可能となり、効率的な濡れ性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0197】
ここで、上述したように、濡れ性変化層中に、光触媒含有層または光触媒処理層を有しない態様の場合には、上述した光触媒処理層側基板を、濡れ性変化層と所定の間隔をおいて配置し、所定の方向からエネルギー照射を行うことが必要である。
【0198】
上記の配置とは、実質的に光触媒の作用が濡れ性変化層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と濡れ性変化層とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0199】
本実施態様において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって濡れ性変化層の濡れ性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の濡れ性変化層に対して特に有効である。
【0200】
一方、例えば300mm×300mmといった大面積の濡れ性変化層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と濡れ性変化層との間に形成することは極めて困難である。したがって、濡れ性変化層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して濡れ性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに濡れ性変化層上の濡れ性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0201】
このように比較的大面積の濡れ性変化層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と濡れ性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層側基板と濡れ性変化層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0202】
このように光触媒処理層と濡れ性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と濡れ性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に濡れ性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が濡れ性変化層に届き難くなり、この場合も濡れ性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0203】
本実施態様においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0204】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と濡れ性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が濡れ性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した濡れ性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、濡れ性変化層上に所定の濡れ性変化パターンを形成することが可能となる。
【0205】
本実施態様においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0206】
B.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した機能性素子の製造方法により形成されたカラーフィルタである。
【0207】
カラーフィルタにおける画素部の形状は、通常、マトリックス状やストライプ状であり、本発明においても同様である。本発明においては、このような画素部を形成する画素部形成用塗工液を塗布する前に、親液性領域のパターンが形成されたパターン形成体を冷却することにより、親液性領域上に精度良く、かつ所望の膜厚を有する画素部を形成することが可能となる。これにより、様々な用途に用いることが可能なカラーフィルタとすることが可能である。
【0208】
ここで、本発明のカラーフィルタは、上述した機能性素子の製造方法により製造することが可能であり、また一般的なカラーフィルタの製造に用いられる材料を用いることが可能である。
【0209】
C.機能性素子の製造装置
次に、本発明の機能性素子の製造装置について説明する。
【0210】
本発明の機能性素子の製造装置は、インクジェット方式により機能性部形成用塗工液を吐出させる吐出手段と、前記吐出手段から吐出された機能性部形成用塗工液が着弾する基板を固定する固定手段と、前記固定手段に固定される基板の表面温度を0℃〜25℃の範囲内とする冷却手段とを有することを特徴とするものである。
【0211】
本発明においては、このような機能性素子の製造装置とすることにより、機能性部形成用塗工液を安定に吐出させることができ、従来よりも機能性部形成用塗工液の塗布量を多く確保することができるため、機能性部形成用塗工液から形成される機能性部の膜厚の選択範囲を広くすることができ、かつ高精細なパターンの形成を容易に可能とすることができる。
【0212】
本発明の機能性素子の製造装置について図面を用いて説明する。図2は本発明の機能性素子の製造装置の一例を示した概略図である。
【0213】
まず、本発明の機能性素子の製造装置は、インクジェット方式により基板11表面に機能性部形成用塗工液を塗布するヘッド10を有する。さらに、このようなヘッド10により機能性部形成用塗工液が塗布される基板11を固定する固定手段12を有する。このような固定手段12としては、基板11を水平状態に安定に保持することが可能な手段であれば特に限定はされない。例えば、ステージ上で吸引することにより基板11を固定する手段等を挙げることができる。さらに、このような固定手段12により固定された基板11の表面温度を上述した範囲内に冷却する冷却手段13を有する。本発明における冷却手段13としては、基板11表面の温度を上述した範囲内とすることができる手段であれば特に限定はされない。具体的には、上述したように冷媒を基板11と接触する部材内で循環させる方法や、低温状態に基板11を曝す方法等を挙げることができる。その中でも冷媒を基板11と接触する部材内で循環させる方法であることが好ましい。例えば、冷媒を循環させ冷却したステージ上に基板11を配置する方法等である。この際用いる冷媒としては液体窒素等を挙げることができる。
【0214】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0215】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0216】
[実施例]
(1)光触媒含有層用塗工液の調整
下記の成分を混合し、100℃で20分間攪拌して、光触媒含有層用塗工液を調製した。
光触媒含有層用塗工液の組成
・イソプロピルアルコール:3g
・フルオロアルキルシラン(トーケムプロダクツ製、MF−160E:N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N−エチル−パーフルオロオクタンスルホンアミドのイソプロピルエーテル50重量%溶液):0.07g
・酸化チタンゾル(石原産業製、STK−01):3g
・シリカゾル(日本合成ゴム製、グラスカHPC7002):0.6g
・アルキルアルコキシシラン(日本合成ゴム製、HPC402C):0.2g
(2)光触媒含有層の形成
開口部76μm×259μmで線幅が23μmのクロム薄膜パターンからなるブラックマトリックスを有するソーダガラス製の透明基板上に、上記の光触媒含有層用塗工液をスピンコーターにより塗布し、150℃、10分間の乾燥処理後、加水分解、重縮合反応を進行させて、光触媒がオルガノポリシロキサン中に強固に固定された厚み0.5μmの透明な光触媒含有層を形成した。
【0217】
この光触媒含有層にマスクを介して水銀灯(波長365nm)により70mW/cm2の照度で3分間、光線を照射し、非照射部位と照射部位の水に対する接触角を測定した。接触角の測定は、接触角測定器(協和界面科学(株)製、CA−Z型)を用い、非照射部位又は照射部位にマイクロシリンジから水滴を滴下して30秒後に行った。その結果、非照射部位における水の接触角は70゜であるのに対して、照射部位における水の接触角は10゜以下であり、照射部位が高親水性となって、照射部位と非照射部位との濡れ性の差を利用してパターン形成が可能なことが確認された。
【0218】
さらに、JIS K6768に規定する濡れ性試験において示された標準液を用い、光触媒含有層の非照射部位に液滴を接触させて30秒後の接触角(θ)を測定し、ジスマンプロット(横軸:標準液の表面張力、縦軸:cosθ)を作成し、グラフを外挿したところ、cosθ=0となる点が示す表面張力、すなわち非照射部位の臨界表面張力は30mN/mだった。同じ方法で、照射部位における臨界表面張力を測定したところ、70mN/mだった。
【0219】
(3)光触媒含有層の露光
パターンピッチが76μm×259μmで、且つ、上記ブラックマトリックスの線幅(23μm)よりも狭い幅(10μm)の遮光パターンを有するマスクを、上記透明基板の光触媒含有層上に配置し、ブラックマトリックスと重なるように位置合わせした後、このマスクを介して水銀灯(波長365nm)により70mW/cm2の照度で50秒間、光触媒含有層を露光して、照射部位を高親水性とした。各照射部位は、ブラックマトリックス上に存在する幅10μmの非照射部により区画され、ブラックマトリックスに囲まれた76μm×259μmの大きさの画素部形成領域と、その周囲のブラックマトリックスと重なる領域を有していた。
【0220】
(4)画素部用着色インクの調整
カラーフィルタ用UV硬化型インク 青色画素部用着色インク組成
・顔料(C.I.ピグメントブルー15:6):5重量部
・高分子分散剤(AVECIA社製、ソルスパース24000):2重量部
・バインダー(ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体):3重量部
・モノマー1(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート):2重量部
・モノマー2(トリプロピレングリコールジアクリレート):5重量部
・開始剤(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパン)-1-オン:2重量部
・溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、29.9dyn/cm):81重量部
さらに、前記組成中のC.I.ピグメントブルー15:6に代えてC.I.ピグメントレッド254を同量用いるほかは青色画素部用着色インクの場合と同様にして赤色画素部用着色インクを調整した。さらに、前記組成中のC.I.ピグメントブルー15:6に代えてC.I.ピグメントグリーン36を同量用いるほかは青色画素部用着色インクの場合と同様にして緑色画素部用着色インクを調整した。
【0221】
(5)カラーフィルタの製造
インクジェットヘッドに各色の画素用着色インクを充填した。次に、当該ヘッドから各色画素用着色インクを、基板上に点在する青色用の画素部形成領域の中心部にドロップ径30μmで滴下した。
【0222】
滴下した各色の画素部用着色インクは、ブラックマトリックス上の非照射部においてはじかれ、各色の画素部形成領域においては均一に拡散して選択的に付着された。
【0223】
その後、各色の着色インク層を80℃、3分間乾燥させて、水銀灯(波長365nm)により70mW/cm2の照度で30秒間、光を照射して、さらに、230℃で30分間熱処理を行なって画素部を形成した。
【0224】
ここで基板を5℃で冷却する冷却工程を取り入れた場合には、インクジェットから塗布を行なったインク液滴が冷却基板の親液性領域上に着弾後、径が広がりにくく、かつ速やかに濡れ広がることが抑制された。また流動性の関係から親液性領域に塗布される塗布量が増えても、連続的に吐出される液滴の影響から生じる波が機能性部形成用塗工液内に伝播しにくいため、このような波の物理的な影響を受けにくい。これにより十分な塗布量を確保することが可能となった。また、インクジェットでの塗布した後、5℃の状態から常温にゆっくりと戻しながら十分なレベリングを行なった後に、80℃、3分間の乾燥を行なった。その結果、基板の表面温度を冷却する工程を取り入れなかった場合の最大塗布膜厚が2.5μmであったのに対し、3.5μmの塗布膜厚を形成することができるようになった。
【0225】
ここで、インクの温度と粘度との関係を図9、インクの温度と接触角との関係を図10、インクの温度と表面張力との関係を図11に示す。
【0226】
【発明の効果】
本発明によれば、パターン形成体の表面温度を上記範囲に冷却しているので、インクジェット装置により吐出された機能性部形成用塗工液は、パターン形成体の親液性領域上に着弾後、パターン形成体の表面温度の影響から粘度が上昇し流動性が低下する。また、パターン形成体を冷却すると、その表面の濡れ性は、全体的に機能性部形成用塗工液に対する接触角が高くなる方向に変化する傾向にある。従って、機能性部形成用塗工液は、親液性領域上に着弾後、径が広がりにくく、かつ速やかに濡れ広がることが抑制される。また流動性の関係から親液性領域に塗布される塗布量が増えても、連続的に吐出される液滴の影響から生じる波が機能性部形成用塗工液内を伝播しにくいため、このような波の物理的な影響を受けにくい。これにより十分な塗布量を確保することが可能となる。従って、インクジェット方式により形成される機能性部の膜厚の選択範囲を広げることができ、かつ微細なパターンを形成することができる。さらに、塗布工程後は昇温工程によりパターン形成体の表面温度を上記範囲内に戻しているので、機能性部形成用塗工液の粘度は元に戻り流動性が回復する。従って、機能性部形成用塗工液は親液性領域内に良好に濡れ広がり、親液性領域のパターンに沿って、高精細なパターンとすることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット方式による機能性素子の製造方法の一例を示した工程図である。
【図2】本発明の機能性素子の製造装置の一例を示した概略図である。
【図3】従来のインクジェット方式による機能性素子の製造方法の一例を示した工程図である。
【図4】光触媒含有層を用いたパターン形成体において、温度変化に伴う溶媒系塗工液における接触角の変化を示したグラフである。
【図5】本発明における濡れ性変化層の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明における光触媒処理層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明における光触媒処理層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明における光触媒処理層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の実施例におけるインクの温度と粘度との関係を示したグラフである。
【図10】本発明の実施例におけるインクの温度と接触角との関係を示したグラフである。
【図11】本発明の実施例におけるインクの温度と表面張力との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1 … パターン形成体
2 … 親液性領域
3 … 撥液性領域
4 … インクジェット装置
5 … 機能性部形成用塗工液
Claims (18)
- 表面に親液性領域および撥液性領域からなるパターンを有するパターン形成体を準備するパターン形成体準備工程と、
前記パターン形成体表面の温度を0℃〜25℃の範囲内に冷却する冷却工程と、
前記冷却工程で冷却されたパターン形成体表面の親液性領域にインクジェット方式を用いて、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を塗布する塗布工程と、前記機能性部形成用塗工液が塗布されたパターン形成体表面の温度を10℃〜35℃の範囲内とする昇温工程と、
を有することを特徴とする機能性素子の製造方法。 - 前記パターン形成体が、外部刺激により液体に対する接触角が低下する濡れ性変化層を有し、前記濡れ性変化層上にパターン状に外部刺激を与えることにより、前記親液性領域および撥液性領域からなるパターンが形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記パターン形成体が、基材と、前記基材上に形成された濡れ性変化層とを有することを特徴とする請求項2に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ前記濡れ性変化層が少なくとも光触媒およびバインダを含有し、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する光触媒含有層であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記バインダが、オルガノポリシロキサンを含有する層であることを特徴とする請求項4に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項5に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記オルガノポリシロキサンが、YnSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の機能性素子形成体の製造方法。
- 前記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ前記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面の液体との接触角が低下する層である表面変化型濡れ性変化層とからなる層であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ前記濡れ性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、前記濡れ性変化層と前記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、表面の液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する表面変化型濡れ性変化層であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記表面変化型濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項10に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記オルガノポリシロキサンが、YnSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ前記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去型濡れ性変化層であり、かつ前記分解除去型濡れ性変化層に対する液体の接触角と、前記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した前記光触媒処理層に対する液体の接触角とが異なる層とからなる層であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記外部刺激がエネルギー照射であり、かつ前記濡れ性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、前記濡れ性変化層と前記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、分解除去される分解除去型濡れ性変化層であり、前記分解除去型濡れ性変化層に対する液体の接触角と、前記分解除去型濡れ性変化層が分解除去されて露出した基材に対する液体の接触角とが異なる層であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記分解除去型濡れ性変化層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記光触媒が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)から選択される1種または2種以上の物質であることを特徴とする請求項4から請求項15までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造方法。
- 前記光触媒が酸化チタン(TiO2)であることを特徴とする請求項16に記載の機能性素子の製造方法。
- インクジェット方式により機能性部形成用塗工液を吐出させる吐出手段と、前記吐出手段から吐出された機能性部形成用塗工液が着弾する基板を固定する固定手段と、前記固定手段に固定される基板の表面温度を0℃〜25℃の範囲内とする冷却手段とを有することを特徴とする機能性素子の製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002332866A JP4256147B2 (ja) | 2002-11-15 | 2002-11-15 | 機能性素子の製造方法およびその製造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002332866A JP4256147B2 (ja) | 2002-11-15 | 2002-11-15 | 機能性素子の製造方法およびその製造装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004170463A JP2004170463A (ja) | 2004-06-17 |
JP4256147B2 true JP4256147B2 (ja) | 2009-04-22 |
Family
ID=32697763
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002332866A Expired - Fee Related JP4256147B2 (ja) | 2002-11-15 | 2002-11-15 | 機能性素子の製造方法およびその製造装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4256147B2 (ja) |
Families Citing this family (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8334012B2 (en) * | 2004-12-20 | 2012-12-18 | Palo Alto Research Center Incorporated | Method for preprinting and/or reliquifying subpixels to achieve color uniformity in color filters |
JP2006332592A (ja) * | 2005-04-28 | 2006-12-07 | Ricoh Co Ltd | 電気部品、導電パターンの形成方法、およびインクジェットヘッド |
TWI302641B (en) * | 2005-12-23 | 2008-11-01 | Icf Technology Co Ltd | Method for manufacturing a thin film pattern layer |
JP5115410B2 (ja) * | 2008-09-08 | 2013-01-09 | セイコーエプソン株式会社 | 膜形成方法、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、及び電子機器 |
JP5095650B2 (ja) * | 2008-09-30 | 2012-12-12 | シャープ株式会社 | 膜パターンとその膜パターン形成方法、及び導電膜配線、並びに電気光学装置 |
JP2013101780A (ja) * | 2011-11-07 | 2013-05-23 | Ulvac Japan Ltd | インクジェット塗布装置及びインクジェット塗布方法 |
JP5869859B2 (ja) | 2011-12-09 | 2016-02-24 | 東レエンジニアリング株式会社 | 回路基板及び回路パターンの形成方法 |
-
2002
- 2002-11-15 JP JP2002332866A patent/JP4256147B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004170463A (ja) | 2004-06-17 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4236081B2 (ja) | パターン形成体の製造方法 | |
JP4201162B2 (ja) | パターン形成体の製造方法およびそれに用いるフォトマスク | |
JP4266596B2 (ja) | 導電性パターン形成体の製造方法 | |
US7390597B2 (en) | Method for manufacturing color filter | |
JP4245329B2 (ja) | 機能性素子の製造方法 | |
JP2004327357A (ja) | 機能性素子の製造方法およびその製造装置 | |
US7597968B2 (en) | Substrate for pattern formation | |
JP4256147B2 (ja) | 機能性素子の製造方法およびその製造装置 | |
JP2004302086A (ja) | パターン形成体の製造方法 | |
JP4417049B2 (ja) | 機能性素子の製造方法 | |
JP4560324B2 (ja) | パターン形成体の製造方法 | |
JP4300012B2 (ja) | 多層配線基板 | |
JP4229662B2 (ja) | パターン形成体およびその製造方法 | |
JP4844568B2 (ja) | パターン形成体の製造方法 | |
JP4451193B2 (ja) | パターン形成体の製造方法 | |
JP4632339B2 (ja) | 半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法 | |
JP4266597B2 (ja) | 導電性パターン形成体の製造方法 | |
JP4188007B2 (ja) | カラーフィルタの製造方法 | |
JP4236080B2 (ja) | カラーフィルタの製造方法 | |
JP4743254B2 (ja) | 導電性パターン形成体の製造方法 | |
JP2004061629A (ja) | 機能性素子の製造方法 | |
JP4321048B2 (ja) | パターン形成体 | |
JP2004264420A (ja) | パターン形成体およびパターン形成体の製造方法 | |
JP2004163627A (ja) | パターン形成体 | |
JP4601367B2 (ja) | カラーフィルタの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051107 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081111 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20081224 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20090127 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20090129 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120206 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130206 Year of fee payment: 4 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |