JP3934025B2 - 多層配線基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント基板等の各種高精細な電気回路といった用途に用いることが可能な多層配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、多層配線基板の製造方法は、基板上に絶縁膜や、金属配線を形成することにより行われている。この際絶縁膜としては、ポリイミド樹脂等の絶縁性材料が用いられている。しかしながら、これらの絶縁膜に直接パターニングをすることが困難であることから、この絶縁膜に金属を全面めっきし、さらにドライフィルム等のフォトレジストをラミネートした後、フォトマスク等を用いてパターン露光し、現像する等の多数の工程が必要であった。また、現像時に生じる廃液は有害なものであり、環境に排出するためには処理を行う必要がある等の環境面での問題もあった。
【0003】
また、絶縁膜にスルーホールを開口する場合においては、一般に、金属配線上にポリイミド樹脂などの絶縁材料を塗布し、フォトレジストでスルホールパターンを形成した後エッチングを行い、スルーホールを開口する方法や、感光性の絶縁材料を利用して、露光と現像を行い、スルーホールを開口する方法、スルーホールを開口する部位に、オーバー露光によりフォトレジストでスルーホールの形状のパターンを形成し、ポリイミド系樹脂で被覆し、酸素プラズマなどでレジストパターンが露出するまでエッチングした後、露出したレジストを除去することによりスルーホールを開口する方法(例えば、特許文献1参照)等がある。
【0004】
しかしながら、これらの場合においても、絶縁膜のパターニングが困難であることから、スルーホール形成後レジストを除去する工程が必要である等、製造工程が煩雑であり、製造効率やコストの面等から問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−198687号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のことから、簡便な工程で高精細にパターンを形成することができ、さらに廃液処理といった問題のない多層配線基板の提供が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は請求項1に記載するように、光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、前記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された導電性パターンとからなる配線基板を、少なくとも2層以上積層してなることを特徴とする多層配線基板を提供する。
【0008】
本発明の多層配線基板は、上記特性変化層を有することにより、上記導電性パターンをその特性の変化したパターンに沿って容易に高精細に形成することが可能となり、その配線基板を積層することにより、高品質な多層配線基板とすることが可能となるのである。
【0009】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、隣接する配線基板の導電性パターン間に導電性コネクタを有していてもよい。上記導電性コネクタを有することにより、より複雑な多層配線基板とすることができ、様々な用途に用いることが可能となるからである。
【0010】
上記請求項1または請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載するように、上記導電性コネクタが、特性変化層に形成されたスルーホールに導電性材料が充填されてなるものであることが好ましい。これにより、上記導電性コネクタを、容易に形成することが可能となり、コストや製造効率の面からも好ましいからである。
【0011】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項4に記載するように、基材上に形成されているものであってもよい。本発明の多層配線基板における最下層部の配線基板の上記特性変化層が自己支持性を有しない場合や、多層配線基板に強度が必要とされる場合には、上記基材上に形成されていてもよいからである。
【0012】
上記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項5に記載するように、上記特性変化層の電気抵抗が、1×10Ω・cm〜1×1018Ω・cmの範囲内であることが好ましい。上記特性変化層は、上記導電性パターンの周囲に形成されており、上記特性変化層の電気抵抗が、上記の範囲内であることにより、優れた多層配線基板とすることが可能となるからである。
【0013】
上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項6に記載するように、上記特性変化層の少なくとも一つが、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であってもよい。上記特性変化層が、上記濡れ性変化層であることにより、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、例えばインクジェット法等により、容易に上記導電性パターンを形成することが可能となるからである。
【0014】
上記請求項6に記載の発明においては、請求項7に記載するように、上記濡れ性変化層が、上記濡れ性変化層上における40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることが好ましい。上記濡れ性変化層におけるそれぞれの濡れ性が、上述したような範囲内であることにより、容易に上記導電性パターンを高精細に形成することが可能となるからである。
【0015】
上記請求項6または請求項7に記載の発明においては、請求項8に記載するように、上記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることが好ましい。本発明において、濡れ性変化層に要求される特性としては、エネルギーが照射されていない場合は撥液性であり、エネルギーが照射された場合は対向する光触媒含有層中の光触媒の作用により親液性となるといった特性である。このような特性を濡れ性変化層に付与する材料として、オルガノポリシロキサンを用いることが好ましいからである。
【0016】
上記請求項8に記載の発明においては、請求項9に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。これにより、このようにフルオロアルキル基を含有するものであれば、エネルギー照射部分と非照射部分との濡れ性の差を大きくすることが可能となるからである。
【0017】
上記請求項8または請求項9に記載の発明においては、請求項10に記載するように、上記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを用いることにより、上述したような濡れ性の変化に対する特性を発揮することができるからである。
【0018】
上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項11に記載するように、上記特性変化層の少なくとも一つが、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、密着性が変化する密着性変化層であってもよい。
【0019】
上記特性変化層が、上記密着性変化層であることにより、例えば蒸着法等により、容易に上記導電性パターンを形成することが可能となるからである。
【0020】
上記請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項12に記載するように、上記特性変化層が、液体によりエッチングされる層であることが好ましい。これにより、上記特性変化層に液体を塗布することにより、例えばスルーホール等を形成することが可能となるからである。
【0021】
上記請求項12に記載の発明においては、請求項13に記載するように、上記液体が、アルカリ溶液であることが好ましい。上記液体がアルカリ溶液であることにより、効率よく上記特性変化層に例えばスルーホール等を形成することが可能となり、製造効率等の面から好ましいからである。
【0022】
また、本発明は請求項14に記載するように、
エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を調製する特性変化層調製工程と、
基体および光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板と、上記特性変化層とを、上記光触媒含有層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と、
上記特性変化パターンに沿って、導電性パターンを形成する導電性パターン形成工程と、
を有する配線基板形成工程を少なくとも2回以上行うことを特徴とする多層配線基板の製造方法を提供する。
【0023】
本発明によれば、上記特性変化パターン形成工程により、特性の変化した特性変化パターンが形成されることから、この特性変化パターンに沿って、例えばインクジェット法等により、容易に上記導電性パターンを形成することができ、高精細な配線基板を形成することが可能となるのである。また、上記配線基板形成工程を少なくとも2回以上行うことにより、多層配線基板とすることが可能となり、高精細な多層配線基板を製造することが可能となるのである。
【0024】
上記請求項14に記載の発明においては、請求項15に記載するように、2回目以降に行われる上記配線基板形成工程における特性変化層調製工程が、塗布法により行なわれることが好ましい。これにより、上記特性変化層を、直前の配線基板形成工程により形成された導電性パターンの周囲にも形成することが可能となり、酸素や水蒸気の影響を受けることを防止することが可能な高品質な多層配線基板とすることが可能となり、また製造効率の面からも好ましいからである。
【0025】
上記請求項14または請求項15に記載の発明においては、請求項16に記載するように、上記特性変化層調整工程後、上記光触媒含有層側基板と上記特性変化層とを、上記光触媒含有層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化したスルーホール特性変化パターンを形成するスルーホール特性変化パターン形成工程と、上記スルーホール特性変化パターンに沿って、液体を塗布することにより、スルーホールを形成するスルーホール形成工程とを有していてもよい。
【0026】
上記特性変化層調製工程後、上記スルーホール特性変化パターン形成工程を有することによって、スルーホールを形成するパターン状に、容易に上記特性変化層の特性を変化させることが可能であり、この特性の変化したパターンを利用して、容易にスルーホールを形成することが可能となるのである。これにより、高精細なスルーホールを少ない工程数で形成することが可能となり、低コストで高品質な多層配線基板を製造することが可能となるのである。
【0027】
上記請求項16に記載の発明においては、請求項17に記載するように、上記スルーホール形成工程が、アルカリ溶液を塗布することにより行われることが好ましい。これにより、効率よくスルーホール形成工程を行うことが可能となり、製造効率やコストの面からも好ましいからである。
【0028】
上記請求項14から請求項17までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項18に記載するように、上記光触媒含有層が、光触媒からなる層であってもよい。上記光触媒含有層が光触媒のみからなる層であれば、特性変化層の特性を変化させる効率を向上させることが可能であり、効率的に特性変化パターンを製造することができるからである。
【0029】
上記請求項18に記載の発明においては、請求項19に記載するように、上記光触媒含有層が、光触媒を真空製膜法により基体上に製膜してなる層であることが好ましい。このように真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、表面の凹凸が少なく均一な膜厚の均質な光触媒含有層とすることが可能であり、特性変化層表面における特性変化パターンの形成を均一にかつ高効率で行うことができるからである。
【0030】
上記請求項14から請求項17までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項20に記載するように、上記光触媒含有層が、光触媒とバインダとを有する層であってもよい。このようにバインダを用いることにより、比較的容易に光触媒含有層を形成することが可能となり、結果的に低コストで多層配線基板の製造を行うことができるからである。
【0031】
上記請求項14から請求項20までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項21に記載するように、上記光触媒が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択される1種または2種以上の物質であることが好ましく、中でも請求項22に記載するように、上記光触媒が酸化チタン(TiO)であることが好ましい。これは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0032】
上記請求項14から請求項22までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項23に記載するように、上記多層配線基板が、基材上に形成されていてもよい。上記多層配線基板における最下層部の配線基板の上記特性変化層が自己支持性を有しない場合や、多層配線基板に強度が必要とされる場合には、上記基材上に形成されていてもよいからである。
【0033】
上記請求項14から請求項23までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項24に記載するように、上記特性変化層が、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された際に、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であることが好ましい。これにより、エネルギー照射部と、エネルギー非照射部との濡れ性の差を利用して、容易に上記導電性パターンを形成することが可能となるからである。
【0034】
上記請求項24に記載の発明においては、請求項25に記載するように、上記濡れ性変化層上における40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることが好ましい。これにより、エネルギー非照射部を撥液性領域、照射部を親液性領域とすること可能となり、それぞれ濡れ性が、上述したような範囲内であることにより、容易に上記導電性パターンを高精細に形成することが可能となり、高精細な多層配線基板を形成することが可能となるからである。
【0035】
上記請求項14から請求項23までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項26に記載するように、上記特性変化層が、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された際に、密着性が変化する密着性変化層であってもよい。これにより、エネルギー照射部およびエネルギー非照射部の密着性の違いを利用して、上記導電性パターンを、例えば蒸着法等により容易に形成することが可能となり、高精細な多層配線基板を形成することが可能となるからである。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明は、多層配線基板および多層配線基板の製造方法に関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0037】
A.多層配線基板
まず、本発明の多層配線基板について説明する。本発明における多層配線基板は、光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、上記特性変化層上にパターン状に形成された導電性パターンとからなる配線基板を、少なくとも2層以上積層してなることを特徴とするものである。
【0038】
本発明の多層配線基板は、例えば図1に示すように、特性変化層1と、上記特性変化層1上に形成された導電性パターン2とからなる配線基板3が、少なくとも2層以上積層されたことを特徴とするものであり、図2に示すように、多層配線基板が基材4上に形成されたものであってもよく、また、図3に示すように、特性変化層1と、上記特性変化層1上に形成された導電性パターン2とからなる配線基板3上に、上記配線基板3と同様の配線基板3′が積層されており、配線基板3における導電性パターン2と、隣接する配線基板3′における導電性パターン2′との間に導電性コネクタ16を有するものであってもよい。
【0039】
本発明によれば、上記配線基板が、上記特性変化層を有することにより、上記導電性パターンをその特性の変化したパターンに沿って容易に高精細に形成することが可能となり、その配線基板を積層することにより、高品質な多層配線基板とすることが可能となるのである。
【0040】
以下、上述したような多層配線基板の各構成について説明する。
【0041】
(特性変化層)
まず、本発明に用いられる特性変化層について説明する。本発明に用いられる特性変化層とは、光触媒の作用により特性が変化する層である。
【0042】
本発明においては、この特性変化層の電気抵抗が1×10Ω・cm〜1×1018Ω・cmの、中でも1×1015Ω・cm〜1×1018Ω・cmの範囲内であることが好ましい。特性変化層の電気抵抗が、上記範囲内より低い場合には、多層配線基板を形成した際に、後述する導電性パターンを電気配線として用いることが困難となるからである。
【0043】
また、本発明においては、上記特性変化層が、液体によりエッチングされる層であることが好ましく、中でもアルカリ溶液によりエッチングされる層であることが好ましい。これにより、例えば特性変化層に後述する導電性コネクタを形成するためのスルーホールを形成する際に、液体を用いて、容易にエッチングを行うことが可能となり、またその液体がアルカリ溶液であることにより、より効率的にエッチングを行うことが可能となるからである。
【0044】
また、本発明に用いられる特性変化層は上述したような特性を有していれば、その特性変化の種類等は特に限定されるものではないが、本発明に用いられる特性変化層は、中でも、光触媒の作用により液体との接触角が低下する方向に濡れ性が変化することによりパターンが形成される濡れ性変化層である場合、光触媒の作用により密着性が変化して密着性の差によるパターンが形成される密着性変化層、または光触媒の作用により分解除去され凹凸によるパターンが形成される分解除去層である場合の3つの場合が、特に得られる特性変化パターンの関係からより本発明の有効性を引き出すものであるので好ましい。以下、これらの濡れ性変化層、密着性変化層、および分解除去層について説明する。
【0045】
(1)濡れ性変化層
まず、本発明に用いられる濡れ性変化層について説明する。本発明に用いられる濡れ性変化層は、光触媒の作用により表面の濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、一般にはエネルギーの照射に伴う光触媒の作用により、その濡れ性変化層表面における液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であることが好ましい。
【0046】
このように、エネルギー照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とすることにより、エネルギーが照射された部分を親液性領域とし、エネルギーが照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、後述する導電性パターンを容易に形成することが可能となるのである。
【0047】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、後述する導電性パターンを形成する導電性パターン組成物に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、導電性パターン組成物に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0048】
上記濡れ性変化層は、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、50°以上、中でも90°以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、導電性パターンを形成しない領域にまで導電性パターン組成物が付着する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0049】
また、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、49°以下、好ましくは10°以下であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、後述する導電性パターン組成物の塗布に際して、親液性領域においても導電性パターン組成物をはじいてしまう可能性があり、親液性領域上に導電性パターンをパターニングすることが難しくなる可能性があるからである。
【0050】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0051】
また、本発明において上述したような濡れ性変化層を用いた場合、この濡れ性変化層中にフッ素が含有され、さらにこの濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記濡れ性変化層が形成されていてもよい。
【0052】
このような特徴を有する濡れ性変化層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性領域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0053】
したがって、このような濡れ性変化層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、この親液性領域のみに導電性パターン組成物を付着させ、導電性パターンを形成することが容易に可能となり、低コストで高精細な多層配線基板を形成することができる。
【0054】
上述したような、フッ素を含む濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0055】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との濡れ性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような濡れ性変化層に導電性パターンを形成することにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に導電性パターンを形成することが可能となり、精度良く配線基板を得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0056】
このような濡れ性変化層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0057】
このような濡れ性変化層に用いられる材料としては、上述した濡れ性変化層の特性、すなわちエネルギー照射により対向する光触媒含有層中の光触媒により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであれば特に限定されるものではなく、具体的にはオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。本発明においては、中でも上記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0058】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
【0059】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0060】
また、特にフルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
【0061】
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH;および
CF(CFSON(C)CCHSi(OCH
【0062】
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、濡れ性変化層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、導電性パターン組成物を全面塗布した場合に、この導電性パターン組成物の付着を妨げることが可能となり、エネルギー照射部である親液性領域のみに導電性パターン組成物を付着させることが可能となる。
【0063】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0064】
【化1】
Figure 0003934025
【0065】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0066】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
【0067】
本発明においては、このようにオルガノポリシロキサン等の種々の材料を濡れ性変化層に用いることができるのであるが、上述したように、濡れ性変化層にフッ素を含有させることが、濡れ性のパターン形成に効果的である。したがって、光触媒の作用により劣化・分解しにくい材料にフッ素を含有させる、具体的にはオルガノポリシロキサン材料にフッ素を含有させて濡れ性変化層とすることが好ましいといえる。
【0068】
本発明における濡れ性変化層には、さらに界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0069】
また、濡れ性変化層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0070】
このような濡れ性変化層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することができる。
【0071】
また、本発明に用いられる濡れ性変化層は、表面の濡れ性が光触媒の作用により変化し得る材料で形成されたものであれば、自己支持性を有する材料であってもよく、また自己支持性を有さない材料であってもよい。なお、本発明でいう自己支持性を有するとは、他の支持材無しで有形な状態で存在し得ることをいうこととする。
【0072】
濡れ性変化層が自己支持性を有する材料である場合には、例えば濡れ性変化層となり得る材料からなる市販の樹脂製フィルムを用いることが可能であり、コスト面で有利であるといえる。このような材料としては、上述した材料を製膜したものが自己支持性を有するのであれば、これを用いることも可能であるが、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルフロライド、アセタール樹脂、ナイロン、ABS、PTFE、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリ弗化ビニリデン、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン等を挙げることができる。
【0073】
本発明においては、自己支持性のない濡れ性変化層であることが好ましい。上述した特性が大幅に変化する材料で形成される濡れ性変化層は、通常自己支持性のある材料が少なく、また、下から2層目以上の配線基板に用いられる濡れ性変化層に関しては、上記自己支持性のない材料を塗布法により塗布することにより、下層の配線基板の導電性パターン部を保護することが可能となるからである。これにより、酸素や水蒸気による影響を防止することが可能となるのである。
【0074】
本発明において上述した成分の濡れ性変化層を用いることにより、光触媒含有層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部の濡れ性を変化させて親液性とし、エネルギー未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、後述する導電性パターン組成物を塗布した場合においても、比較的容易にエネルギー照射部である親液性領域内のみに導電性パターン組成物を付着させることが可能であり、高精細な多層配線基板を低コストで製造することが可能となる。
【0075】
なお、本発明に用いられる濡れ性変化層は、上述したように光触媒の作用により濡れ性の変化する層であれば特に限定されるものではないが、特に、光触媒を含まない層であることが好ましい。このように濡れ性変化層内に光触媒が含まれなければ、その後多層配線基板として用いた場合に、経時的に影響を受ける心配をする必要がなく、長期間に渡り問題なく使用することが可能だからである。
【0076】
(2)密着性変化層
次に、本発明に用いられる密着性変化層について説明する。本発明に用いられる密着性変化層は、光触媒の作用により密着性が変化する層であれば、特に限定されるものではないが、一般にはエネルギーの照射に伴う光触媒の作用により、その密着性変化層表面における物との密着性が向上するように密着性が変化する層であることが好ましい。
【0077】
このように、エネルギー照射により物との密着性が向上するように密着性が変化する密着性変化層とすることにより、エネルギーが照射された部分を密着性良好領域、エネルギーが照射されていない部分を密着阻害領域とすることが可能となるのである。この密着性の差を利用して、例えば、全面に導電性パターンを形成する導電性パターン組成物を蒸着した場合に、密着性良好領域のみに導電性パターン組成物が密着し、密着阻害領域には導電性パターン組成物が密着しないことから、密着阻害領域における導電性パターン組成物を容易に除去することが可能となり、後述する導電性パターンを容易に形成することが可能となるのである。
【0078】
ここで、密着性良好領域とは、物との密着性が良好な領域であり、後述する導電性パターンを形成する導電性パターン組成物に対する密着性の良好な領域をいうこととする。また、密着阻害領域とは、物との密着性が悪い領域であり、導電性パターン組成物に対する密着性が悪い領域をいうこととする。
【0079】
本発明における密着性変化層は、密着性阻害物質を含有し、エネルギー照射により密着性阻害物質が除去される層である場合(第一の態様)と、エネルギー照射により密着性変化層上に凹凸が形成され、物理的に密着性が向上する場合(第二の態様)とがある。
【0080】
まず、第一の態様について説明する。本態様の密着性変化層は、密着性を阻害する物質が含有されており、この密着性阻害物質により、エネルギー照射されていない密着阻害領域においては、例えば蒸着法等により塗布された導電性パターン組成物が密着することを阻害することが可能となる。また、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、この密着性阻害物質が除去されることによって密着性が向上し、密着性良好領域を形成することが可能となるのである。
【0081】
この密着性変化層の第一の態様として、具体的には、上記濡れ性変化層で説明したものと同様のものを用いることが可能である。
【0082】
次に、第二の態様について説明する。本態様の密着性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、表面に凹凸が形成される層であり、この表面の凹凸によるアンカー効果により導電性パターン組成物の密着性を向上させることが可能となるのである。また、エネルギー照射されていない密着阻害領域においては、凹凸が形成されていないことから、導電性パターン組成物が密着することが困難であり、この密着性の差を利用して、特性変化パターンを容易に形成することが可能となるのである。
【0083】
この光触媒密着性変化層の第二の態様に用として具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、メチルメタクリレート単重合体または共重合体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、PTFE等を用いることが可能である。
【0084】
(3)分解除去層
次に、本発明に用いられる分解除去層について説明する。本発明に用いられる分解除去層とは、分解除去層用基板と、この分解除去層用基板上に形成された光触媒の作用により分解除去され、エネルギーが照射されたパターン状に分解除去される分解除去用層とを有する層である。
【0085】
上記分解除去用層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去用層のある部分と無い部分とからなるパターン、すなわち分解除去層用基板上に凹凸を有するパターンを形成することができるのである。この凹凸を利用して、例えばインクジェット法等により、導電性パターン形成用組成物を塗布することにより、導電性パターンを高精細に形成することが可能となるのである。
【0086】
なお、この分解除去用層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去用層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0087】
以下、分解除去用層および分解除去層用基板についてわけて説明する。
【0088】
(i)分解除去用層
本発明に用いられる分解除去用層とは、エネルギー照射された部分が光触媒の作用により分解除去されてパターン状に凹凸を形成する層であれば、特に限定されるものではないが、本発明においては、凹凸を形成するのみならず、この分解除去用層が、後述する分解除去層用基板と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。これにより、分解除去用層が分解除去され、分解除去層用基板が露出した領域を親液性領域、上記分解除去用層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、上記凹凸のみではなく、この濡れ性の差を利用することにより、例えばインクジェット法等により、より容易に高精細な導電性パターンを形成することが可能となるのである。
【0089】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、後述する導電性パターン組成物に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、導電性パターン組成物に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0090】
また、上記分解除去用層は、40mN/mの液体との接触角が、50°以上、中でも90°以上であることが好ましい。これは、本発明は、残存する特性変化層が、撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、導電性パターンを形成しない撥液性領域にまで導電性パターン組成物が付着する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0091】
上記のような分解除去用層に用いることができる膜としては、具体的にはフッ素系や炭化水素系の撥液性を有する樹脂等による膜を挙げることができる。これらのフッ素系や炭化水素系の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させ、例としてスピンコート法等の一般的な成膜方法により形成することが可能である。
【0092】
また、本発明においては、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等を用いることにより、欠陥のない膜を形成することが可能であることから、このような成膜方法を用いることがより好ましいといえる。
【0093】
ここで、本発明に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
【0094】
▲1▼自己組織化単分子膜
自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer)の公式な定義の存在を発明者らは知らないが、一般的に自己組織化膜として認識されているものの解説文としては、例えばAbraham Ulmanによる総説“Formation and Structure of Self-Assembled Monolayers”, Chemical Review, 96, 1533-1554 (1996)が優れている。本総説を参考にすれば、自己組織化単分子膜とは、適当な分子が適当な基板表面に吸着・結合(自己組織化)した結果生じた単分子層のことと言える。自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルトリクロロシラン類やアルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に基板表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、フルオロカーボン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層基板表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本発明は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
【0095】
▲2▼ラングミュア−ブロジェット膜
本発明に用いられるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir-Blodgett Film)は、基板上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基板に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644-647
(2001)に詳しく述べられている。
【0096】
▲3▼交互吸着膜
交互吸着膜(Layer-by-Layer Self-Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基板上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説“Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly”Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430-442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
【0097】
また、分解除去用層の膜厚としては、後述する特性変化パターン形成工程において照射されるエネルギーにより分解除去される程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的な膜厚としては、照射されるエネルギーの種類や分解除去用層の材料等により大きく異なるものではあるが、一般的には、0.001μm〜1μmの範囲内、特に0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることが好ましい。
【0098】
(ii)分解除去層用基板
次に、本発明に用いられる分解除去層用基板について説明する。本発明に用いられる分解除去層用基板は、上述した分解除去用層をその表面に形成できる基板であれば、特に限定されるものではないが、本発明においては、上記分解除去用層と比較して、液体との接触角が低いことが好ましい。これにより、分解除去用層が分解除去され、分解除去層用基板が露出した領域を親液性領域、上記分解除去用層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、種々のパターンを形成することが可能となるからである。
【0099】
本発明における分解除去層用基板は、40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において49°以下、中でも10°以下であることが好ましい。本発明においては分解除去層用基板が、親液性が要求される部分であることから、後述する導電性パターン組成物の塗布に際して、親液性領域においても導電性パターン組成物をはじいてしまう可能性があり、親液性領域上に導電性パターン組成物をパターニングすることが難しくなる可能性があるからである。ここで、液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0100】
この場合、分解除去層用基板は表面を親液性となるように、表面処理したものであってもよい。材料の表面を親液性となるように表面処理した例としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理が挙げられ、分解除去層用基板上に形成する親液性の層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。
【0101】
(基材)
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明においては、例えば多層配線基板の最下層部に形成される特性変化層に自己支持性のない場合や、多層配線基板に強度が必要とされる場合に基材が用いられ、例として図2に示すように、基材4上に多層配線基板における最下層部の配線基板の特性変化層1が設けられる。
【0102】
このような基材としては、最終的に得られる多層配線基板の用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば通常のプリント配線板等の場合においては、一般的に用いられている材料、具体的には紙基材の樹脂積層板、ガラス布・ガラス不織布基材の樹脂積層板、セラミック、金属等を用いることができる。また、フレキシブル配線板においては、可撓性を有する樹脂製フィルムを基材として用いることも可能である。
【0103】
(導電性パターン)
次に、本発明に用いられる導電性パターンについて説明する。本発明に用いられる導電性パターンは、上述した特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された導電性を有するパターンであれば、そのパターンの形状や材料等は特に限定されるものではない。本実施態様における導電性パターンに用いられる材料として、具体的には、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム、パラジウム、鉛、スズおよびこれらのなかの金属を一種以上含む粉末状の金属または合金と、バインダ樹脂、分散材、有機溶剤からなる金属インキを挙げることができ、中でも銅および銀を用いた金属インキであることが好ましい。
【0104】
また、本発明の導電性パターンの形成方法は、上述した特性変化層の特性の変化により適宜選択されるものであるが、具体的には、蒸着法、無電界めっき、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット、電解ジェット等を含むノズル吐出手段等の手段等が挙げられる。
【0105】
(配線基板)
次に、本発明における配線基板について説明する。本発明における配線基板とは、上記特性変化層と、上記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って上記導電性パターンが形成されたものであり、その配線パターン等は特に限定されるものではない。
【0106】
(導電性コネクタ)
次に、本発明における導電性コネクタについて説明する。本発明における導電性コネクタとは、隣接する配線基板の導電性パターン同士を電気的に接続するために設けられる、導電性の材料により形成された部位であり、例えば図3に示すように、配線基板3における導電性部2と、隣接する配線基板3′における導電性部2′間に導電性の材料により形成されたものである。本発明においては、この導電性コネクタは、電気的に接続可能なものであれば、その形成方法等は特に限定されるものではないが、本発明においては、上述した特性変化層に形成されたスルーホールに導電性材料が充填されることにより、形成されたものであることが好ましい。
【0107】
ここで、本発明におけるスルーホールとは、導電性パターンと、この導電性パターンと特性変化層をはさんだ直下に存在する導電性パターンとを、電気的に接続する導電性コネクタを形成するために、特性変化層に設けられた孔部のことをいう。
【0108】
本発明の導電性コネクタに用いられる材料および形成方法は、上述した導電性パターンと同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
【0109】
(多層配線基板)
次に、本発明の多層配線基板について説明する。本発明の多層配線基板は、上記配線基板が少なくとも2層以上積層されたものであり、中でも3層から5層積層されたものであることが好ましい。
【0110】
本発明においては、隣接する配線基板の導電性パターン間に、上述したような導電性コネクタを有していてもよく、また最下層部の特性変化層に自己支持性がない場合や、多層配線基板に強度が必要とされる場合等には、多層配線基板が上記基材上に形成されたものであってもよい。
【0111】
B.多層配線基板の製造方法
次に、本発明の多層配線基板の製造方法について説明する。本発明の多層配線基板の製造方法は、
エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を調製する特性変化層調製工程と、
基体および光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板と、上記特性変化層とを、上記光触媒含有層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と、
上記特性変化パターンに沿って、導電性パターンを形成する導電性パターン形成工程と、
を有する配線基板形成工程を少なくとも2回以上行うことを特徴とする方法である。
【0112】
本発明の多層配線基板の製造方法は、配線基板工程を少なくとも2回以上、好ましくは3回から5回行うことを特徴とするものである。この配線基板形成工程を、図4を例として用いて説明する。
【0113】
まず、特性変化層1を調製する特性変化層調整工程を行う(図4(a))。次に、基体5および光触媒含有層6を有する光触媒含有層側基板7を、上記特性変化層1と光触媒含有層6とが所定の間隙となるように配置した後、例えばフォトマスク8等を用いて、所定の方向からエネルギー9をパターン状に照射する特性変化パターン形成工程を行う(図4(b))。これにより、上記特性変化層1上に特性の変化した特性変化パターン10が形成される。次に、この特性変化パターン10に沿って、例えばインクジェット法等により、導電性パターン2を形成する導電性パターン形成工程を行い、配線基板3を形成する(図4(d))。
【0114】
本発明の多層配線基板形成の製造方法は、上記特性変化パターンに沿って、導電性パターンを形成することから、高精細な導電性パターンを形成することができるのである。また、この配線基板形成工程を少なくとも2回以上行うことにより、多層配線基板とすることから、得られる多層配線基板を高精細な導電性パターンを有するものとすることが可能となるのである。
【0115】
また、本発明においては、図5に示すように、上記特性変化層調整工程後(図5(a))、上記配線基板形成工程で用いたものと同様の光触媒含有層側基板7と、上記特性変化層1とを、上記光触媒含有層5および上記特性変化層1が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、例えばフォトマスク8等を用いて、所定の方向からエネルギー9を照射することにより(図5(b))、上記特性変化層1表面に特性の変化したスルーホール特性変化パターン13を形成する(図5(c))スルーホール特性変化パターン形成工程を行い、そのスルーホール特性変化パターン13に沿って、液体を塗布することにより、スルーホール14を形成するスルーホール形成工程(図5(d))を行ってもよい。これにより、上記導電性パターン形成工程において、導電性パターンを形成するのと同時に、スルーホールにも導電性材料を充填することが可能となり、導電性パターン間を電気的に接続する導電性コネクタを容易に形成することが可能となるのである。以下、本発明の多層配線基板の製造方法について各工程ごとに説明する。
【0116】
(1)特性変化層調製工程
まず、本発明の特性変化層調製工程について説明する。本発明における特性変化層調製工程は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を調製する工程であれば、その方法等は特に限定されるものではないが、少なくとも2回目以降の配線基板形成工程においては、塗布法により行なわれることが好ましい。上記特性変化層調製工程が塗布法であることにより、直前の配線基板形成工程により形成された導電性パターンの周囲にも特性変化層を形成することが可能となり、これにより導電性パターンを酸素や水蒸気から保護することが可能となるのである。また、製造効率やコストの面からも好ましい。
【0117】
また、本発明に用いられる多層配線基板の最下層部に位置する配線基板の特性変化層が自己支持性を有しない場合は、その最下層部の特性変化層は、基材上に形成されることが必要である。
【0118】
なお、本発明に用いられる特性変化層、特性変化層の形成方法および基材等については、上述した「A.多層配線基板」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0119】
(2)特性変化パターン形成工程
次に、本発明における特性変化パターン形成工程について説明する。本発明における特性変化パターン形成工程は、基体および光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板と、上記特性変化層とを、上記光触媒含有層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成する工程である。
【0120】
本発明の特性変化パターン形成工程は、後述するスルーホール特性変化パターン形成工程およびスルーホール形成工程を行った配線基板について行ってもよく、またスルーホール特性変化パターン形成工程およびスルーホール形成工程を行っていない配線基板について行ってもよい。
【0121】
本工程は、後述する導電性パターン形成工程において形成される導電性パターンのパターン状にエネルギーを照射し、後述する導電性パターン形成工程において形成する導電性パターンのパターン状に、上記特性変化層の特性を変化させる工程である。これにより、後述する導電性パターン形成工程において、容易に導電性パターンを形成することが可能となるのである。以下、この工程の各構成についてそれぞれ説明する。
【0122】
(光触媒含有層側基板)
まず、本発明に用いられる光触媒含有層側基板について説明する。本発明に用いられる光触媒含有層側基板は、少なくとも光触媒含有層と基体とを有するものであり、通常は基体上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒含有層が形成されてなるものである。また、この光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部やプライマー層が形成されたものも用いることができる。以下、この光触媒含有層側基板の各構成について説明する。
【0123】
a.光触媒含有層
本発明に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよいし、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の特性は、特に親液性であっても撥液性であってもよい。
【0124】
本発明において用いられる光触媒含有層は、例えば上記図4(b)等に示すように、基体6上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図6に示すように、基体6上に光触媒含有層5がパターン状に形成されたものであってもよい。
【0125】
このように光触媒含有層をパターン状に形成することにより、後述する特性変化パターンの形成の項において説明するように、光触媒含有層を特性変化層にエネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いるパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、特性変化層上に特性変化領域と特性未変化領域とからなる特性変化パターンを形成することができる。
【0126】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0127】
また、光触媒含有層と特性変化層とを例えば密着させてエネルギー照射を行う場合には、実際に光触媒含有層の形成された部分のみの特性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒含有層と特性変化層とが対向する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
【0128】
このような光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが光触媒含有層上で特性変化層中の化合物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0129】
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0130】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0131】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0132】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0133】
本発明における光触媒含有層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、特性変化層上の特性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0134】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより特性変化層上の特性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に特性変化層上の特性を変化させることが可能となる。
【0135】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の他の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基体上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0136】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば後述する特性変化層の中の濡れ性変化層の説明の欄で詳しく説明するオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0137】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基体上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0138】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiXで表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0139】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基体上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0140】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0141】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0142】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0143】
b.基体
本発明においては、例えば図4(b)に示すように、光触媒含有層側基板7は、少なくとも基体6とこの基体6上に形成された光触媒含有層5とを有するものである。
【0144】
この際、用いられる基体を構成する材料は、後述する特性変化パターンの形成の項で説明するエネルギーの照射方向や、得られる多層配線基板が透明性を必要とするか等により適宜選択される。
【0145】
すなわち、例えば多層配線基板が紙基体フェノール樹脂積層板といった不透明なものを基体として用いる場合においては、エネルギー照射方向は必然的に光触媒含有層側基板側からとなり、図4(b)に示すように、フォトマスク8を光触媒含有層側基板7側に配置して、エネルギー9を照射する必要がある。また、後述するように光触媒含有層側基板に光触媒含有層側遮光部を予め所定のパターンで形成しておき、この光触媒含有層側遮光部を用いて特性変化パターンを形成する場合においても、光触媒含有層側基板側からエネルギーを照射する必要がある。このような場合、基体は透明性を有するものであることが必要となる。
【0146】
一方、多層配線基板の基材が例えば透明樹脂フィルムである場合等であれば、多層配線基板の種類によっては、多層配線基板側にフォトマスクを配置してエネルギーを照射することも可能である。
【0147】
また本発明に用いられる基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、後述する特性変化パターン形成工程におけるエネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0148】
このように、本発明における光触媒含有層側基板に用いられる基体は特にその材料を限定されるものではないが、本発明においては、この光触媒含有層側基板は、繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒含有層との密着性が良好である材料が好適に用いられる。
【0149】
具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
【0150】
なお、基体表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0151】
c.光触媒含有層側遮光部
本発明に用いられる光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒含有層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0152】
このような光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板は、光触媒含有層側遮光部の形成位置により、下記の二つの実施態様とすることができる。
【0153】
一つが、例えば図7に示すように、基体6上に光触媒含有層側遮光部11を形成し、この光触媒含有層側遮光部11上に光触媒含有層5を形成して、光触媒含有層側基板7とする実施態様である。もう一つは、例えば図8に示すように、基体6上に光触媒含有層5を形成し、その上に光触媒含有層側遮光部11を形成して光触媒含有層側基板7とする実施態様である。
【0154】
いずれの実施態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒含有層側遮光部が、上記光触媒含有層と特性変化層との配置部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0155】
さらに、上記光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部を形成する実施態様においては、光触媒含有層と特性変化層とを所定の位置に配置する際に、この光触媒含有層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒含有層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0156】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒含有層と特性変化層とを対向させた状態で配置する際に、上記光触媒含有層側遮光部と特性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒含有層側基板からエネルギーを照射することにより、特性変化層上に特性変化パターンを精度良く形成することが可能となるのである。
【0157】
このよう光触媒含有層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒含有層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0158】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0159】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0160】
なお、上記説明においては、光触媒含有層側遮光部の形成位置として、基体と光触媒含有層との間、および光触媒含有層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒含有層が形成されていない側の表面に光触媒含有層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、特性変化パターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0161】
d.プライマー層
次に、本発明の光触媒含有層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本発明において、上述したように基体上に光触媒含有層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒含有層を形成して光触媒含有層側基板とする場合においては、上記光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成してもよい。
【0162】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による特性変化層の特性変化を阻害する要因となる光触媒含有層側遮光部および光触媒含有層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒含有層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で特性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0163】
なお、本発明においてプライマー層は、光触媒含有層側遮光部のみならず光触媒含有層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒含有層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0164】
図9はこのようなプライマー層を形成した光触媒含有層側基板の一例を示すものである。光触媒含有層側基板7の光触媒含有層側遮光部11が形成された基体6の光触媒含有層側遮光部11が形成されている側の表面にプライマー層12が形成されており、このプライマー層12の表面に光触媒含有層5が形成されている。
【0165】
本発明におけるプライマー層は、光触媒含有層側基板の光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0166】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiXで示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0167】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0168】
(特性変化パターンの形成)
次に、特性変化パターンの形成について説明する。本発明の特性変化パターン形成工程においては、上記光触媒含有層および上記特性変化層を所定の位置に配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面にパターンを形成する工程が行われる。以下、この特性変化パターンの形成について説明する。
【0169】
a.光触媒含有層および特性変化層の配置
本発明の特性変化パターン形成工程においては、まずエネルギー照射時に光触媒含有層と特性変化層とを光触媒の作用が及ぶように所定の間隔をおいて配置する必要があり、本発明においては、上述した光触媒含有層および特性変化層を200μm以下の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射する。この際、光触媒含有層および特性変化層を密着させてもよい。
【0170】
本発明において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって特性変化層の特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の特性変化層に対して特に有効である。
【0171】
一方、例えば300mm×300mmといった大面積の特性変化層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒含有層側基板と特性変化層との間に形成することは極めて困難である。したがって、特性変化層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに特性変化層上の特性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0172】
このように比較的大面積の特性変化層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒含有層側基板と特性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒含有層側基板と特性変化層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0173】
このように光触媒含有層と特性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒含有層と特性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、この場合も特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0174】
本発明においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0175】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒含有層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した特性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定の特性変化パターンを形成することが可能となる。
【0176】
本発明においては、このようなスペーサを一つの部材として形成してもよいが、工程の簡略化等のため、上記光触媒含有層側基板の欄で説明したように、光触媒含有層側基板の光触媒含有層表面に形成することが好ましい。なお、上記光触媒含有層側基板における説明においては、光触媒含有層側遮光部として説明したが、本発明においては、このようなスペーサは特性変化層表面に光触媒の作用が及ばないように表面を保護する作用を有すればよいものであることから、特に照射されるエネルギーを遮蔽する機能を有さない材料で形成されたものであってもよい。
【0177】
b.エネルギー照射
次に、上述したような配置を維持した状態で、対向する部分へのエネルギー照射が行われる。なお、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層による特性変化層表面の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0178】
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0179】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0180】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0181】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、特性変化層表面が光触媒含有層中の光触媒の作用により特性変化層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
【0182】
この際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0183】
本発明におけるエネルギー照射方向は、多層配線基板が透明である多層配線基板のパターンによっては、多層配線基板側から行ってもよいが、通常、光触媒含有層側基板側からエネルギー照射が行われる。
【0184】
すなわち、光触媒含有層側遮光部が形成されている場合は、光触媒含有層側基板側からエネルギー照射が行なわれる必要があり、かつこの場合は光触媒含有層側基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。なお、この場合、光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部が形成され、かつこの光触媒含有層側遮光部を上述したようなスペーサとしての機能を有するように用いた場合においては、多層配線基板の種類によっては、エネルギー照射方向は光触媒含有層側基板側からでも多層配線基板側からであってもよい。
【0185】
また、光触媒含有層がパターン状に形成されている場合におけるエネルギー照射方向は、上述したように、光触媒含有層と特性変化層とが対向する部分にエネルギーが照射されるのであれば、多層配線基板の種類によっては、いかなる方向から照射されてもよい。
【0186】
同様に、上述したスペーサを用いる場合も、対向する部分にエネルギーが照射されるのであれば、多層配線基板の種類によっては、いかなる方向から照射されてもよい。
【0187】
フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合は、フォトマスクが配置された側の基板、すなわち光触媒含有層側基板もしくは多層配線基板のいずれかが透明である必要がある。
【0188】
c.光触媒含有層側基板の取り外し
上述したようなエネルギー照射が終了すると、光触媒含有層側基板が特性変化層との配置位置から離され、これにより図4(c)に示すように特性変化パターン10が特性変化層1上に形成される。
【0189】
(3)導電性パターン形成工程
次に、本発明の導電性パターン形成工程について説明する。本発明の導電性パターン形成工程は、上記特性変化パターン形成工程で形成された特性変化パターンに沿って、導電性パターンを形成する工程であり、後述するスルーホール特性変化パターン形成工程およびスルーホール形成工程が行われた配線基板については、導電性パターンを形成することと同時にスルーホールを充填して、導電性コネクタを形成してもよい。
【0190】
本発明の導電性パターン形成工程は、上記特性変化パターン上に導電性パターンを形成することが可能な方法であれば、特に限定されるものではなく、上記特性変化層の特性により適宜選択されるものであるが、例えば上記特性変化層が濡れ性変化層である場合には、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット、電解ジェット等を含むノズル吐出手段等の手段を用いることが可能である。本発明においては中でも、ノズル吐出手段を用いることが好ましい。上記ノズル吐出手段においては、目的とするパターン状に導電性パターンを形成する導電性パターン組成物を塗布することが可能となり、より高精細に導電性パターンを形成することが可能となるからである。
【0191】
また、上記特性変化層が密着変化層である場合には、上記方法の他に、蒸着法、無電界めっき等も用いることが可能であり、導電性パターン組成物を成膜後、密着阻害領域に付着した導電性パターン組成物を除去することにより、密着性良好領域にのみ導電性パターン組成物を密着させることができ、導電性パターンを形成することが可能となるのである。
【0192】
ここで、上記スルーホールを充填し、導電性コネクタを形成する場合にも、同様の方法を用いることができることから、この導電性コネクタは、上記導電性パターンの形成と同時に行うことが可能である。
【0193】
(4)スルーホール特性変化パターン形成工程
次に、本発明のスルーホール特性変化パターン形成工程について説明する。本発明におけるスルーホール特性変化パターン形成工程とは、上記特性変化層調整工程後、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板と上記特性変化層とを、上記光触媒含有層および上記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化したスルーホール特性変化パターンを形成する工程である。
【0194】
本発明において、隣接する配線基板の導電性パターン間に導電性コネクタを形成する場合には、この導電性コネクタを形成するためのスルーホールを、特性変化層に形成するスルーホール特性変化層形成工程およびスルーホール形成工程を有していてもよい。上記スルーホール特性変化パターン形成工程により、上記特性変化層上に、特性の変化したスルーホール特性変化パターンを形成することにより、後述するスルーホール形成工程において、このスルーホール特性パターンの特性の差を利用して、例えば液体を滴下すること等により、容易にスルーホールを形成することが可能となるからである。
【0195】
このスルーホール形成工程における光触媒含有層側基板やエネルギーの照射等は、上述した特性変化パターン形成工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0196】
(5)スルーホール形成工程
次に、スルーホール形成工程について説明する。本発明におけるスルーホール形成工程は、上記スルーホール特性変化パターンに沿って、液体を塗布することにより、スルーホールを形成する工程である。
【0197】
上記液体の塗布は、スルーホールを形成することが可能な方法であれば、特に方法等は限定されるものではないが、本発明においては、他の部材と接触させることなくスルーホール特性変化領域のみに選択的に液体を塗布できる点から、ノズル吐出による方法を用いることが好ましい。このようなノズル吐出法としては、例えばマイクロシリンジ、ディスペンサー、インクジェット等を用いた方法、または針先より電解等の外部刺激により吐出する方法、針先に付着させた液体を特性変化領域に付着させる方法等を用いることができる。本発明においては、中でもディスペンサーまたはインクジェットを用いた方法であることが好ましい。
【0198】
また、本発明のスルーホール形成工程に用いられる液体は、アルカリ溶液であることが好ましく、具体的には有機アルカリと無機アルカリの水溶液を上げることができる。好ましいアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液を挙げることができ、pHとしては、pH7〜14、中でもpH10〜14、特にpH12〜14であることが好ましい。
【0199】
本発明に用いられる導電性パターンおよび導電性コネクタの材料は、上記「A.多層配線基板」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0200】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本実施態様の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本実施態様の技術的範囲に包含される。
【0201】
【実施例】
以下、本実施態様について、実施例を通じてさらに詳述する。
【0202】
(光触媒含有層側基板の形成・一層目形成用)
フォトマスク表面に、テイカ(株)製の光触媒用酸化チタンコーティング剤TKC301をコーティングし、350℃で3時間乾燥させ、光触媒含有層側基板を調整した。フォトマスクは、カーボンブラックと樹脂の分散体にて形成された膜厚1μmのブラックマトリックスが、20μmの幅のラインにて形成されたものを使用した。ラインは、マスクの開口部が配線基板の回路パターンとなるように設計した。
【0203】
(特性変化層の形成・一層目)
次にフルオロアルキルシランが主成分であるMF−160E(商品名、トーケムプロダクツ(株)製)0.4gに0.1N塩酸水3gを添加し、1時間室温にて攪拌した溶液を、膜厚0.7mmのガラス基板上にスピンコーティングし、150℃で10分間乾燥させた。これにより、基板上に撥液性を有する膜厚1μmの特性変化層が形成された。このとき特性変化層の電気抵抗は1×1012Ω・cmであった。
【0204】
(特性変化パターン形成・一層目)
特性変化層を形成した基板上に、光触媒含有層側基板を50μmのギャップをあけて配置し、光触媒含有層側基板側から超高圧水銀ランプにて露光した。これにより、特性変化層表面の露光された部分のみ親液性領域となった。露光量は365nmにて1000mJであった。
【0205】
(導電性材料の付与・一層目)
次に、銀微粒子分散体インキ(真空冶金製 Ag001T)を用い、インクジェットヘッドより特性変化層上の親液性領域のみに着弾するように吐出した。このインキの特性変化層に対する接触角は撥液性部分で50°、親液性部分で15°であった。着弾したインキは撥液性部分に付着することなく、親液性領域のみに濡れ広がった。
【0206】
100℃、3分間の乾燥後、250℃、15分間の焼成を行うことにより、上記フォトマスクの開口部と同様のパターン形状を有する、幅20μm、膜厚0.6μmの導電性パターンが形成された。導電性パターンの電気抵抗は6×10−6Ω・cmであった。
【0207】
(光触媒含有層側基板の形成・スルーホール形成用)
次に、配線基板の一層目形成用の光触媒含有層側基板の形成時に用いたものと同様の材料、塗布手法により、スルーホール形成用の光触媒含有層側基板を形成した。このとき、フォトマスクは、露光時に直径15μmの、円形状の複数の開口部が、上記金属パターン部分に重なるように配置されたものを使用した。
【0208】
(特性変化層の形成・二層目)
次に、特性変化層の一層目の形成時に用いたものと同様の材料、塗布手法により、上記の導電性パターンが形成された配線基板上に二層目の特性変化層を形成した。
【0209】
(スルーホール特性変化パターンの形成)
二層目の特性変化層を形成した基板上に、スルーホール形成用の光触媒含有層側基板を50μmのギャップをあけて配置し、光触媒含有層側基板側から超高圧水銀ランプにて露光した。これにより、特性変化層表面の露光された部分(直径15μmの円形状のパターン)のみ親液性領域であるスルーホール特性変化パターンが形成された。この際、露光量は365nmにて1500mJであった。
【0210】
(スルーホールの形成)
次に、上記複数の直径15μmのスルーホール特性変化パターンに、耐アルカリ処理を施したインクジェットヘッドから水酸化カリウム水溶液を塗布した。上記水酸化カリウム水溶液は撥液性部分に付着することなく、親液性領域のみに濡れ広がった。この際、水酸化カリウム水溶液はpH13であり、撥液性部分に対する接触角は55°、親液性部分に対する接触角は5°であった。
【0211】
これを1分間室温にて放置し、純水にてリンス後、乾燥することにより、親液性部分のみ特性変化層が分解除去され、金属配線部分が露出したスルーホールが形成された。
【0212】
(特性変化パターン形成・二層目)
上記スルーホールを形成した基板上に、一層目の回路パターン形成にて使用した光触媒含有層側基板により、一層目と同様の手法にて露光し、二層目の特性変化層表面の露光された部分のみを親液性領域とした。このとき、スルーホールの位置は光触媒含有層側基板の開口部の位置と重なるため、スルーホール周辺およびスルーホール側面は親液性となった。
【0213】
(導電性材料の付与・二層目)
一層目の導電性材料の付与と同様の材料および手法にて、導電性材料を付与した。着弾したインキは、撥液性部分に付着することなく、親液性部分のみに濡れ広がり、またスルーホールにも充填された。
【0214】
100℃、3分間の乾燥後、250℃、15分間の焼成を行うことにより、幅20μm、膜厚0.6μmの二層目の導電性パターンおよび導電性コネクタが形成された。
【0215】
(三層目以降)
二層目までの手法と同様の手法にて、配線基板が四層積層された多層配線基板を作成した。各配線パターンの電気的導通および、導電性コネクタによる各層回路パターン間の電気的導通が良好に取れる多層配線基板を形成することができた。
【0216】
【発明の効果】
本発明の多層配線基板は、上記特性変化層を有することにより、上記導電性パターンをその特性の変化したパターンに沿って容易に高精細に形成することが可能となり、その配線基板を積層することにより、高品質な多層配線基板とすることが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の多層配線基板の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の多層配線基板の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の多層配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図5】本発明の多層配線基板の製造方法のスルーホール形成工程を示す工程図である。
【図6】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 特性変化層
2 … 導電性パターン
3 … 配線基板
4 … 基材
5 … 光触媒含有層
6 … 基体
7 … 光触媒含有層側基板
8 … フォトマスク
9 … エネルギー
10… 特性変化パターン
11… 光触媒含有層側遮光部
12… プライマー層
13… スルーホール特性変化パターン
14… スルーホール
16… 導電性コネクタ

Claims (26)

  1. 光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、前記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された導電性パターンとからなる配線基板を、少なくとも2層以上積層してなることを特徴とする多層配線基板。
  2. 隣接する配線基板の導電性パターン間に導電性コネクタを有することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。
  3. 前記導電性コネクタが、特性変化層に形成されたスルーホールに導電性材料が充填されてなるものであることを特徴とする請求項2に記載の多層配線基板。
  4. 基材上に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板。
  5. 前記特性変化層の電気抵抗が、1×10Ω・cm〜1×1018Ω・cmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板。
  6. 前記特性変化層の少なくとも一つが、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板。
  7. 前記濡れ性変化層が、前記濡れ性変化層上における40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることを特徴とする請求項6に記載の多層配線基板。
  8. 前記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の多層配線基板。
  9. 前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項8記載の多層配線基板。
  10. 前記オルガノポリシロキサンが、YSiX(4−n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項8に記載の多層配線基板。
  11. 前記特性変化層の少なくとも一つが、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、密着性が変化する密着性変化層であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板。
  12. 前記特性変化層が、液体によりエッチングされる層であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板。
  13. 前記液体が、アルカリ溶液であることを特徴とする請求項12に記載の多層配線基板。
  14. エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を調製する特性変化層調製工程と、
    基体および光触媒を含有する光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板と、前記特性変化層とを、前記光触媒含有層および前記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と、
    前記特性変化パターンに沿って、導電性パターンを形成する導電性パターン形成工程と、
    を有する配線基板形成工程、
    および前記特性変化層に液体を塗布し、前記特性変化層をエッチングしてスルーホールを形成するスルーホール形成工程
    を有する多層配線基板の製造方法であって、
    前記配線基板形成工程を少なくとも2回以上行うことを特徴とする多層配線基板の製造方法。
  15. 2回目以降に行われる前記配線基板形成工程における前記特性変化層調製工程が、塗布法により行なわれることを特徴とする請求項14に記載の多層配線基板の製造方法。
  16. 2回目以降に行われる前記配線基板形成工程における前記特性変化層調整工程後、前記光触媒含有層側基板と前記特性変化層とを、前記光触媒含有層および前記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に特性の変化したスルーホール特性変化パターンを形成するスルーホール特性変化パターン形成工程を有し、
    前記スルーホール形成工程が、前記スルーホール特性変化パターンに沿って、液体を塗布することにより、スルーホールを形成する工程であることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の多層配線基板の製造方法。
  17. 前記スルーホール形成工程が、アルカリ溶液を塗布することにより行われることを特徴とする請求項14から請求項16までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板の製造方法。
  18. 前記光触媒含有層が、光触媒からなる層であることを特徴とする請求項14から請求項17までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板の製造方法。
  19. 前記光触媒含有層が、光触媒を真空製膜法により基体上に製膜してなる層であることを特徴とする請求項18に記載の多層配線基板の製造方法。
  20. 前記光触媒含有層が、光触媒とバインダとを有する層であることを特徴とする請求項14から請求項17までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板の製造方法。
  21. 前記光触媒が、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)から選択される1種または2種以上の物質であることを特徴とする請求項14から請求項20までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板の製造方法。
  22. 前記光触媒が酸化チタン(TiO)であることを特徴とする請求項21記載の多層配線基板の製造方法。
  23. 前記多層配線基板が、基材上に形成されていることを特徴とする請求項14から請求項22までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板の製造方法。
  24. 前記特性変化層が、前記光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された際に、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であることを特徴とする請求項14から請求項23までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板の製造方法。
  25. 前記濡れ性変化層上における40mN/mの液体との接触角が、エネルギーが照射されていない部分において50°以上であり、照射された部分において49°以下であることを特徴とする請求項24に記載の多層配線基板の製造方法。
  26. 前記特性変化層が、前記光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された際に、密着性が変化する密着性変化層であることを特徴とする請求項14から請求項23までのいずれかの請求項に記載の多層配線基板の製造方法。
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