JP2004163549A - 反射防止膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】内部応力が小さく、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率が十分に低い反射防止膜を提供すること。
【解決手段】反射防止膜1は、基板2の表面に形成され、300nm以上の物理膜厚を有する。反射防止膜1の、基板2側から0〜50nmの領域を第1の領域101、50〜100nmの領域を第2の領域102、100〜150nmの領域を第3の領域103、150〜200nmの領域を第4の領域104、200〜250nmの領域を第5の領域105、250〜300nmの領域を第6の領域106としたとき、波長700nmの光の屈折率は、第1の領域101で1.350〜1.800、第2の領域102で1.400〜1.950、第3の領域で1.525〜2.100、第4の領域104で1.700〜2.250、第5の領域105で1.850〜2.250、第6の領域106で1.400〜2.250である。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、反射防止膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、レンズ、プリズム、フィルター等の光学部品では、その表面に反射防止膜を設けることが一般的に行われている。特に、近年光学機器の電子化が進むにつれて、CCD等の撮像デバイスを使用する光学系に、このような反射防止膜を設けた光学部品が使用される頻度が高くなってきた。CCDでは、近赤外光領域の光に対する感度がよいことから、可視光領域だけでなく、近赤外光領域でも良好な透過率特性を有する光学部品が強く求められている。近赤外光領域の光に対する感度が高いのは、CCDに限らず、他のSiを使用した撮像素子や、同様にSiを基板に使用している太陽電池パネル等でも同様である。
【0003】
従来、このような光学部品に用いられてきた反射防止膜では、反射防止帯域が狭いため、使用する波長域全域で十分な分光反射率特性を得るのが困難であった。
【0004】
上記のような要求に応える試みとして、例えば、ガラス基板上に、高屈折率物質からなる層と、低屈折率物質からなる層とを交互に積層してなる6層構成の反射防止膜がある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このような反射防止膜においても、反射防止帯域を十分に広くするのが困難であり、特に、700nm付近の可視光領域および900nm以上の近赤外光領域において、十分な反射防止効果を得るのが困難であった。
【0005】
また、ガラス基板上に、Taからなる層と、MgFからなる層とを、交互に繰り返し形成することにより得られる、14層を積層体としての反射防止膜も知られている(例えば、特許文献2参照。)。このような反射防止膜では、比較的広い波長領域で、良好な分光反射率特性が得られる。しかしながら、全く組成の異なる層を14層も積層し、しかも、MgFからなる第8層が光学膜厚330nm(物理膜厚230nm)と非常に厚いため、反射防止膜内において非常に大きな内部応力が発生し易かった。このような内部応力が発生すると、光学部品であるガラスレンズ基板が変形し、十分な光学特性が発揮されないという問題点を有していた。
【0006】
【特許文献1】
特公平2−61003号公報 (特許請求の範囲、第2頁左欄第26行目〜第41行目)
【特許文献2】
特開2000−111702号公報 (段落番号0040〜0042)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、内部応力が小さく、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率が十分に低い反射防止膜を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
【0009】
(1) 光学部品の表面に形成され、300nm以上の物理膜厚を有する反射防止膜であって、
前記光学部品側から0〜50nmの領域を第1の領域、50〜100nmの領域を第2の領域、100〜150nmの領域を第3の領域、150〜200nmの領域を第4の領域、200〜250nmの領域を第5の領域、250〜300nmの領域を第6の領域としたとき、
前記第1の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.350〜1.800であり、
前記第2の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.400〜1.950であり、
前記第3の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.525〜2.100であり、
前記第4の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.700〜2.250であり、
前記第5の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.850〜2.250であり、
前記第6の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.400〜2.250であることを特徴とする反射防止膜。
【0010】
これにより、内部応力が小さく、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率が十分に低い反射防止膜を提供することができる。
【0011】
(2) 物理膜厚が350nm以上であって、
前記光学部品側から300〜350nmの領域を第7の領域としたとき、
前記第7の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.350〜2.175である上記(1)に記載の反射防止膜。
【0012】
これにより、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0013】
(3) 物理膜厚が400nm以上であって、
前記光学部品側から350〜400nmの領域を第8の領域としたとき、
前記第8の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.950である上記(1)または(2)に記載の反射防止膜。
【0014】
これにより、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0015】
(4) 物理膜厚が450nm以上であって、
前記光学部品側から400〜450nmの領域を第9の領域としたとき、
前記第9の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.575である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0016】
これにより、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0017】
(5) 450nmを超える物理膜厚を有し、
前記光学部品側から450nmより離れた側の領域を第10の領域としたとき、
前記第10の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.425である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0018】
これにより、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0019】
(6) 2種以上の化合物を含む材料で構成されたものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0020】
これにより、各領域内、各領域間での光の屈折率の調整を容易に行うことができる。
【0021】
(7) 反射防止膜は、少なくとも、純物質の状態における波長700nmの光の屈折率が1.9以上の第1の化合物と、純物質の状態における波長700nmの光の屈折率が1.5以下の第2の化合物とを含む材料で構成されたものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0022】
これにより、各領域内、各領域間での光の屈折率の調整を容易に行うことができる。
【0023】
(8) TiO、ZrO、Ta、Nb、CeO、Yb、HfO、Nd、Pr11、La、Er、CdO、Eu、NiO、Cr、SnO、Sb、ZnO、ZnS、Sb、CdS、AlN、SiO、MgF、AlF、BaF、CaF、LiF、NaF、SrFから選択される2種以上を含み、これらの混合比の増減により、前記領域が形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0024】
これにより、各領域内、各領域間での光の屈折率の調整を容易に行うことができるとともに、内部応力をさらに小さくすることができ、また、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0025】
(9) 反射防止膜の膜厚方向に沿って、屈折率が非連続的に変化する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0026】
これにより、目標とする屈折率分布に成膜した屈折率分布を一致させることを容易にし、製造がより容易になる。
【0027】
(10) 前記光学部品は、波長700nmの光の屈折率が1.4〜2.0である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0028】
これにより、幅広い波長領域の反射率を十分低くした屈折率の異なる光学部品を提供できる。
【0029】
(11) 380〜980nmの波長領域の光の反射率が1.0%以下である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0030】
このように、幅広い波長領域の光の反射率を十分に低くすることにより、反射防止膜が形成された光学部品を様々な用途に好適に適用することができる。
【0031】
(12) 隣接する前記領域間での、波長700nmの光の屈折率の差の絶対値が、それぞれ0.3以下である上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0032】
これにより、反射防止膜は、内部応力がさらに発生し難いものとなり、前記領域内や隣接する領域間における界面剥離等の不都合の発生をより効果的に防止することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の反射防止膜を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の反射防止膜の好適な実施形態を示す断面図である。
反射防止膜1は、基板2の表面に形成されるものである。
【0035】
基板2としては、例えば、レンズ、プリズム、フィルター、光学ファイバー、ブラウン管等の光学部品が挙げられる。
【0036】
基板2の構成材料としては、例えば、光学ガラス、合成石英、水晶、アルミナ結晶、LiNbO結晶、KTP結晶、YAG結晶、BBO結晶、LBO結晶等の各種無機材料や、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられる。
【0037】
基板2は、波長700nmの光の屈折率が1.4〜2.0であるのが好ましく、1.45〜1.95であるのがより好ましい。基板2の屈折率がこのような範囲の値であると、より幅広い波長領域の反射率を十分低くした屈折率の異なる光学部品を提供できる。
【0038】
反射防止膜1は、300nm以上の物理膜厚を有するものである。物理膜厚が300nm未満であると、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率を十分に低くすることができない。
【0039】
反射防止膜1の物理的厚さは、300nm以上であれば特に限定されないが、300〜1000nmであるのが好ましく、350〜550nmであるのがより好ましく、400〜550nmであるのがさらに好ましく、450〜550nmであるのがもっとも好ましい。反射防止膜1の物理的厚さが前記上限値を越えると、構成材料等によっては、膜剥離等が発生し易くなる。
【0040】
図示の構成では、反射防止膜1は、450nmを超える物理膜厚を有している。
【0041】
以下の説明では、反射防止膜1の、基板2側から0〜50nmの領域を第1の領域101、50〜100nmの領域を第2の領域102、100〜150nmの領域を第3の領域103、150〜200nmの領域を第4の領域104、200〜250nmの領域を第5の領域105、250〜300nmの領域を第6の領域106、300〜350nmの領域を第7の領域107、350〜400nmの領域を第8の領域108、400〜450nmの領域を第9の領域109、450nmより離れた側の領域を第10の領域110として説明する。前記各領域は概念的なものであり、隣接する領域間の境界は明確なもの(例えば、各領域がそれぞれ異なる層に対応しているもの)であってもよいし、不明確なもの(領域間の境界で、組成または屈折率が連続するもの)であってもよい。
【0042】
本発明の反射防止膜1は、上記の各領域が以下のような条件を満足する点に特徴を有する。すなわち、第1の領域101は、波長700nmの光の屈折率が1.350〜1.800であり、第2の領域102は、波長700nmの光の屈折率が1.400〜1.950であり、第3の領域103は、波長700nmの光の屈折率が1.525〜2.100であり、第4の領域104は、波長700nmの光の屈折率が1.700〜2.250であり、第5の領域105は、波長700nmの光の屈折率が1.850〜2.250であり、第6の領域106は、波長700nmの光の屈折率が1.400〜2.250である。
【0043】
このような関係を満足することにより、反射防止膜1は、膜内の内部応力が十分に小さく、かつ可視光領域から近赤外光領域の光の反射率が十分に低いものとなる。
【0044】
また、第7の領域107は、波長700nmの光の屈折率が1.350〜2.175であるのが好ましい。これにより、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0045】
また、第8の領域108は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.950であるのが好ましい。これにより、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0046】
また、第9の領域109は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.575であるのが好ましい。これにより、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0047】
また、第10の領域110は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.425であるのが好ましい。これにより、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0048】
また、隣接する前記領域間での、波長700nmの光の屈折率の差の絶対値は、それぞれ0.3以下であるのが好ましく、0.2以下であるのがより好ましい。このように、隣接する領域間での、光の屈折率の差の絶対値が十分に小さいものであると、反射防止膜1の厚さ方向において、組成を急激に変化させることなく、各領域での光の屈折率を所望の値に調整することができる。その結果、反射防止膜1は、内部応力がさらに発生し難いものとなり、前記領域内や隣接する領域間における界面剥離等の不都合の発生をより効果的に防止することができる。
【0049】
反射防止膜1は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、2種以上の化合物を組合せて用いて形成されたものであるのが好ましい。反射防止膜1が2種以上の化合物で構成されたものであると、反射防止膜1の厚さ方向の各領域内、各領域間での光の屈折率の調整を容易に行うことができる。
【0050】
反射防止膜1を構成する材料としては、例えば、TiO、ZrO、Ta、Nb、CeO、Yb、HfO、Nd、Pr11、La、Er、CdO、Eu、NiO、Cr、SnO、Sb、ZnO、ZnS、Sb、CdS、AlN、SiO、MgF、AlF、BaF、CaF、LiF、NaF、SrF等が挙げられる。また、これらの化合物から選択される2種以上を含み、これらの混合比の増減により、前記の各領域が形成されているものであるのが好ましい。これにより、反射防止膜1の厚さ方向の各領域内、各領域間での光の屈折率の調整を容易に行うことができるとともに、内部応力をさらに小さくすることができ、また、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0051】
また、反射防止膜1は、前記化合物の中でも、TiO、ZrO、Ta、Nb、CeO、Yb、HfO、Nd、Pr11、La、Er、CdO、Eu、NiO、Cr、SnO、Sb、ZnO、ZnS、Sb、CdS、AlN等のような純物質の状態における波長700nmの光の屈折率が1.9以上の高屈折率物質と、SiO、MgF、AlF、BaF、CaF、LiF、NaF、SrF等のような純物質の状態における波長700nmの光の屈折率が1.5以下の低屈折率物質とを含む材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、反射防止膜1の厚さ方向の各領域内、各領域間での光の屈折率の調整を容易に行うことができるとともに、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率をさらに低くしたり、反射防止帯域をさらに広くすることができる。
【0052】
また、反射防止膜1は、その膜厚方向に沿って、屈折率が非連続的(ステップ状)に変化するものであってもよいし、屈折率が連続的に変化するものであってもよい。
【0053】
反射防止膜1の膜厚方向に沿って、屈折率が非連続的に変化するものであると、目標とする屈折率分布に成膜した屈折率分布を一致させることを容易にし、製造が簡単である。また、反射防止膜1の膜厚方向に沿って、屈折率が連続的に変化するものであると、反射防止膜1の内部応力をさらに小さくすることができる。
【0054】
反射防止膜1(反射防止膜1を構成する各領域)は、いかなる方法で形成されたものであってもよいが、例えば、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング、スパッタリング、化学蒸着法(CVD)等の気相成膜法(乾式めっき法)、湿式めっき法、ディッピング等により形成することができる。
【0055】
以下、反射防止膜1を真空蒸着により形成する方法の一例について説明する。
図2は、反射防止膜の形成に用いる成膜装置の構成を示す断面図、図3は、図2中の可動材料供給源およびガイド部材の近傍を示す拡大平面図、図4は、図3中のA−A線断面図である。
【0056】
図2に示すように、成膜装置100は、チャンバ(真空炉)3と、基板(成膜形成対象物)2を保持する保持部4と、膜厚計5と、シャッタ6と、第1の材料供給源(固定材料供給源)7と、第2の材料供給源(可動材料供給源)8と、駆動系11と、制御手段12と、加熱ヒータ(図示せず)と、ガイド部材15とを有している。
【0057】
チャンバ3には、複数の管路が接続されている。その管路の1つは、チャンバ3内の雰囲気ガスを排気する真空ポンプ(図示せず)に接続されている。チャンバ3と真空ポンプの間には、バルブ13が取付けられている。また、他の管路は、雰囲気ガス(不活性ガス、反応ガス等)を導入するための管路である。その管路の途中には、バルブ14が取付けられている。
【0058】
このチャンバ3の雰囲気としては、通常、非酸化性雰囲気、例えば、減圧(真空)状態下、あるいは窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが好ましい。ここで雰囲気中には、少量の反応ガス(酸素ガス等)を導入することができる。酸化チタンには、TiO、Ti、TiOがあるが、成膜の際、これらが混合して基板2に成膜する可能性がある。そのため、チャンバ3内の酸素分圧を制御することにより蒸発物と酸素原子との結合を調整して所望の価数の酸化チタンを得ることができる。
【0059】
例えば、TiO、Ti、TiOのうちで光の吸収が最も少ないTiOを基板2に成膜しようとするには、酸素分圧を比較的高くすることが好ましい。このときの酸素分圧は、5×10−3Pa以上にして成膜することが好ましく、1×10−2〜3×10−2Paにして成膜することがより好ましい。5×10−3Pa未満では、結合する酸素原子が不足し、TiOやTiの量が増大するおそれがある。
【0060】
また、チャンバ3上部には、保持部4が設けられている。
この保持部4は、基板ホルダ41と、回転軸42と、基板ホルダ回転機構43とで構成されている。
【0061】
基板ホルダ41は、チャンバ3内の上部に配置されている。この基板ホルダ41の全体形状は、円盤状をなしている。
【0062】
基板ホルダ41には、基板2の成膜面に垂直方向に、すなわち、図2中上下方向に平行な複数の貫通した開口411が形成されている。開口411の形状は、基板2の形状に対応し、本実施形態では、円形状をなしている。
【0063】
回転軸42は、チャンバ3内の上部と上壁31とを貫通して、その一端が基板ホルダ41に設置されている。
【0064】
回転軸42が通る貫通孔には、シール部材32が設置され、チャンバ3の内部と外気とを遮断している。
【0065】
チャンバ3の外部には、支持部材(図示せず)により基板ホルダ回転機構43が設置されている。
【0066】
基板ホルダ回転機構43は、モータ(図示せず)と、減速手段(図示せず)等とを内蔵しており、このモータの回転を減速手段で減速しつつ、回転軸42に伝達する。なお、モータの作動/停止、回転速度、回転方向等は、後述する制御手段12により制御される。
【0067】
基板ホルダ41の上面412には、複数の基板2が保持されている。基板2の形状は、円盤状をなしている。それぞれ、基板2は、基板ホルダ41の上面412に開放する開口411に対応するよう配置されている。そして、それぞれの基板2には、対応した開口411内の領域に薄膜(反射防止膜1)が形成される。
【0068】
また、基板ホルダ41近傍には、膜厚計5が配置されている。この膜厚計5は、支持部材51に支持され、基板2の成膜面と同等の薄膜が形成される位置に膜厚モニタ(モニタ手段)として設置されている。
【0069】
膜厚計5に内蔵された水晶振動子の固有振動数の変化から薄膜の膜厚を検出する。この検出値は、制御手段12に入力される。制御手段12は、入力される検出値に基づいて基板2の薄膜の膜厚を求めることができる。これにより、所望の膜厚を精度良く形成することができる。
【0070】
また、基板ホルダ41の下部近傍には、シャッタ6が配置されている。シャッタ6の側部の一部は、チャンバ3の側部に設置・固定され、シャッタ6の全体を支持している。
【0071】
図2に示すように、シャッタ6は、基板2と蒸発源から蒸発した材料(成膜材料)とを遮断するよう閉じられている。これにより、シャッタ6の開放前に基板2に薄膜が形成することを防止できるので精度の高い膜厚を得ることができる。
【0072】
シャッタ6の開閉の制御方法は、後述の制御手段12について説明する部分で詳細に説明する。
【0073】
また、基板ホルダ41と上壁31との間には、加熱ヒータが配置されている。
この加熱ヒータは、チャンバ3内の基板2および雰囲気を加熱する。基板2が光学ガラスの場合には、基板温度を150〜350℃に加熱・保持することが好ましく、200〜300℃に加熱・保持することがより好ましい。これにより、得られる薄膜(反射防止膜1)の膜密度が向上する。基板2として樹脂材料等で構成された光学材料を使う場合には、基板変形を生じない程度に加熱・保持することが好ましい。なお、基板2および雰囲気の温度は、加熱ヒータ近傍に設置された熱電対(図示せず)により計測され、計測値は制御手段12に入力される。その計測値に基づいて制御手段12が加熱ヒータを制御する。
【0074】
チャンバ3内の底部には、第1の材料供給源7と第2の材料供給源8とが隣接して配置されている。第1の材料供給源7は、チャンバ3内の底面に固定された固定材料供給源であり、第2の材料供給源8は、後述する駆動系11により移動可能な可動材料供給源である。
【0075】
第1の材料供給源7は、蒸発源71と、ルツボ72と、電子銃73と、電子銃用電源731と、膜厚計74と、支持部材741とで構成されている。
【0076】
ルツボ72内には、蒸発源71が配置されている。この第1の材料供給源7の側部には、電子銃73が設置されている。該電子銃73は、高エネルギー密度の電子ビーム732を放出し、ルツボ72内の蒸発源71を加熱し、蒸発させる。
【0077】
第1の材料供給源7の上部には、所定の高さに設置された膜厚計74が設置され、支持部材741に支持されている。
【0078】
この膜厚計74は、前述の膜厚計5と同様に水晶振動子の固定振動数の変化から薄膜の膜厚を検出する。この検出値は、後述する制御手段12に入力される。これにより、後述する制御手段12は、材料供給速度を制御することができる。材料供給速度については、後述する。
【0079】
電子銃用電源731は、チャンバ3の外部に設置されている。電子銃用電源731からの配線により電子銃73に電力を供給する。電子銃73の電力は、制御手段12により制御される。
【0080】
図2中一点鎖線(図2中上下方向)は、基板2の成膜面の法線であって、かつ回転ホルダ41の回転軸と一致する線21である。第1の材料供給源7は、この線21上にはなく、線21から所定の距離、離間した位置に配置されている。すなわち、線21と、前記成膜面と第1の材料供給源7とを結ぶ線22(図2中二点鎖線)とは、所定の角度θをなしている。
【0081】
また、第1の材料供給源7は、その高さを変更できるようになっていてもよい。この場合、第1の材料供給源7の高さを変更する手段としては、例えば、第1の材料供給源7とチャンバ3の底部との間に支持部材(図示せず)を設置し、その支持部材に第1の材料供給源7の設置高さを変更するためのアジャスタ機構を取付けたり、高さの異なる支持部材を適宜交換して使用する構成とすることが挙げられる。
【0082】
また、前述した支持部材の形状および設置位置(例えば、図2中の左右方向の位置)を変更してもよい。
なお、このような調整は、通常、成膜を開始する以前に行う。
【0083】
第2の材料供給源8は、蒸発源81と、ルツボ82と、電子銃83と、電子銃用電源831と、膜厚計84と、支持部材841と、駆動系11と、摺動部85(図3)とで構成されている。
【0084】
上記においてルツボ82に配置される蒸発源81は、蒸発源71とは異なる組成の材料とされる。
【0085】
ルツボ82、電子銃83、電子銃用電源831、膜厚計84、支持部材841は、前述のルツボ72、電子銃73、電子銃用電源731、膜厚計74、支持部材741と同様のものである。
【0086】
第2の材料供給源8を移動するための駆動系11は、モータ部16と、出力軸17と、出力軸17に設置されているウォーム18とを有している。
【0087】
チャンバ3の外部に配置されたモータ部16は、ステッピングモータ(図示せず)、変速機(図示せず)等を内蔵している。そのステッピングモータの駆動により生じる回転力は、変速機で調整されつつ、出力軸17を介してウォーム18に伝達される。なお、出力軸17は、チャンバ3内の底壁33を貫通している。この出力軸17が通る貫通孔には、シール部材19が設置され、チャンバ3内と外気とを遮断し、チャンバ3の気密性を保っている。また、ステッピングモータの作動/停止、回転速度、回転方向等は、後述する制御手段12により制御される。
【0088】
ウォーム18は、ガイド部材15の下部に位置している。このウォーム18の全体形状は、第2の材料供給源8がガイド部材15に沿って移動した際、ウォーム18と第2の材料供給源8の底面821に形成された歯とが、常に歯合しているように、その外径が中央部から両端部に向かってそれぞれ増大するような円筒形状をなしている。
【0089】
図3および図4に示すように、第2の材料供給源8の両側部には、各々一対の摺動部85が設置されている。この摺動部85は、管状をなしており、その中空孔に後述するガイド部材15が挿通されている。
【0090】
チャンバ3の下方には、一対の棒状のガイド部材15が配置されている。各ガイド部材15の一端は、チャンバ3の側部に固定され、他端は、チャンバ3の底部に固定されている。また、各ガイド部材15は、第2の材料供給源8が移動するとき、第2の材料供給源8と基板2の成膜面(線21の上端)との距離を一定に保つよう、円弧状に湾曲している。第2の材料供給源8は、摺動部85を介して各ガイド部材15に支持されている。
【0091】
第2の材料供給源8は、線21上にはなく、線21から所定の距離、離間した位置で移動する。従って、線21と、前記成膜面と第2の材料供給源8とを結ぶ線23(図2中二点鎖線)とは、所定の角度θをなしている。
【0092】
ステッピングモータを所定の方向に駆動回転すると、それによりウォーム18を回転し、第2の材料供給源8は、ガイド部材15に沿ってウォーム18の一端から他端までの範囲で移動する。
【0093】
角度θは、第2の材料供給源8の移動とともに変化する。この角度θは、第2の材料供給源8がウォーム18のモータ部16からの遠位端に位置したとき最大となり、近位端に位置したとき最小となる。また、本実施形態では、角度θの最小の角度と角度θが一致するよう設定されている。
【0094】
角度θの範囲は、チャンバ3の形状、材料供給源の形状、特に、ルツボの形状等の諸条件により異なるが、0〜80°で行うことが好ましく、0〜60°で行うことがより好ましい。80°を超えると、成膜装置が大型化する。なお、図示の実施形態では、角度θの範囲は、10〜40°である。
【0095】
なお、ステッピングモータを用いることで第2の材料供給源8は、前記範囲を高速で、かつ所望の位置に正確に移動することができる。
【0096】
また、このような構成では、後述する制御手段12により、チャンバ3を閉鎖したまま、チャンバ3の外部から第2の材料供給源8の移動を制御でき、角度θを変更することができる。特に、角度θを変更するためにチャンバ3を開く等の成膜作業を中断することなく、製造時間を短縮することができる。
【0097】
制御手段12は、通常、マイクロコンピュータ(CPU)で構成されている。制御手段12は、基板ホルダ回転機構43、シャッタ6、電子銃用電源731および831、ステッピングモータ(図示せず)等を制御している。
【0098】
制御手段12は、前述した基板ホルダ回転機構43のモータの作動/不作動を制御し、さらに、作動中の回転速度、回転方向等を制御する。この回転速度は、2〜100rpmであることが好ましく、10〜50rpmであることがより好ましい。2rpm未満では、膜厚を均一化することが困難であり、100rpmを超えると、回転の遠心力により基板2が固定位置から外れるおそれがある。なお、回転方向は、一方向に限るものではなく、例えば、正回転と逆回転を組み合わせた回転であってもよい。
【0099】
成膜の際、各材料供給源からのそれぞれの材料供給速度と、材料供給源と基板との距離と、基板の成膜面の法線と前記成膜面と材料供給源とを結ぶ線とのなす角度との3つの条件により薄膜の膜組成・膜構成が決定されるが、その内の材料供給速度を一定の速度に固定し、材料供給源と基板の成膜面との距離も一定の距離に固定しておけば、前記角度の変更のみで薄膜の膜組成・膜構成を制御できるので所望の薄膜を容易に得ることができる。制御手段12は、蒸発源71および81においてそれぞれの材料供給速度が一定になるよう電子銃73および83の作動を制御する。
【0100】
制御手段12は、各材料供給源からのそれぞれの材料供給速度を経時的に変化させるよう制御してもよい。特に、制御手段12は、第1の材料供給源7および第2の材料供給源8からの材料供給速度を各材料供給源の位置や角度に応じて可変とするよう制御してもよい。例えば、角度の増大に伴い、前記材料供給速度を減少させるよう制御することができる。このときには、角度θが最大となると、材料供給速度が小または0となり、基板2の成膜面には、蒸発源71の材料が優先的に成膜され、蒸発源71の材料の屈折率により近い薄膜が形成される。逆に、角度θが最小となると、材料供給速度が大となり、基板2の成膜面には、蒸発源81の材料が優先的に成膜され、蒸発源81の材料の屈折率により近い薄膜が形成される。これにより、基板2に形成される薄膜における含有成分の濃淡(含有量の差)をより大きくすることができる。
【0101】
材料供給速度は、例えば蒸発源71および81近傍に設置された膜厚計74、84に1秒間に形成される薄膜の膜厚として知ることができ、制御手段12は、その膜厚計74、84の検出値によりそれぞれの材料供給速度を制御する。
【0102】
成膜開始時において、制御手段12は、前述の膜厚計74、84の検出値に基づいてそれぞれの材料供給速度があらかじめ設定した速度に安定したと判断したら、シャッタ6を開く。
【0103】
また、成膜終了時において、制御手段12は、膜厚計5からの検出値に基づいて所望の膜厚に達したと判断したら、シャッタ6を閉じる。これにより、過剰な成膜を防止することができ、精度の高い膜厚を得ることができる。
【0104】
薄膜を形成するにおいて、制御手段12は、ステッピングモータの作動/不作動、駆動量、駆動方向、駆動のタイミング等をあらかじめ設定されたプログラムに従ってシーケンス制御する。これにより、成膜装置100の自動化が図れ、成膜を繰り返し行った場合に再現性良く成膜できる。
【0105】
また、角度θの変更を周期的に行うよう制御した場合、基板2の成膜面に屈折率が連続的に変化する薄膜(反射防止膜1)を形成することができる。
【0106】
なお、ステッピングモータの制御は、シーケンス制御に限るものではなく、手動制御でもよい。
【0107】
また、上記の説明では、成膜装置が、反射防止膜を構成する材料の供給源を2つ(第1の材料供給源および第2の材料供給源)有するものとして説明したが、材料の供給源を3つ以上有するものであってもよい。
【0108】
以上、反射防止膜の形成方法の一例について説明したが、反射防止膜の形成方法はこれに限定されるものではない。例えば、反射防止膜を気相成膜法により形成する場合、例えば、特開2001−59172号公報、特開2001−81548号公報に記載された方法等を用いることができる。これにより、前記各領域での組成、屈折率等をより確実にコントロールして、反射防止膜1を形成することができる。
【0109】
前述したような反射防止膜1は、380〜980nmの波長領域の光の反射率が1.0%以下であるのが好ましい。このように、幅広い波長領域の光に対する反射率を十分に低くすることにより、反射防止膜1が形成された基板2を様々な用途に好適に適用することができる。
【0110】
以上、本発明の反射防止膜について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0111】
例えば、前述した実施形態では、反射防止膜が450nmを超える物理膜厚を有する(すなわち、第1〜第10の領域を有する)構成について説明したが、本発明の反射防止膜は、300nm以上の物理膜厚を有する(すなわち、第1〜第6の領域を有する)ものであればよい。また、本発明の反射防止膜は、光学部品との密着性、接合強度を高めたり、光学部品の表面(最表層)の撥水性や防曇性を高めること等を目的とした下地層を介して、光学部品の表面に形成されたものであってもよい。また、反射防止膜の外表面(光学部品と接触する面とは反対側の面)には、撥水性や防曇性を高めたり、反射防止膜を保護すること等を目的とした被膜が形成されていてもよい。
【0112】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0113】
[1]反射防止膜の製造
(実施例1)
反射防止膜の形成は、図2〜図4に示すような成膜装置(ただし、第1の材料供給源と同様の構成の、図示しない第3の材料供給源を有する成膜装置)を用いた真空蒸着により、以下のようにして行った。
【0114】
まず、第1の材料供給源、第2の材料供給源、第3の材料供給源のルツボ内に、それぞれ、TiO(700nmの光の屈折率:2.2)、SiO(700nmの光の屈折率:1.45)、MgF(700nmの光の屈折率:1.375)を配置した。
【0115】
次に、直径30mm、厚さ0.5mmの平板状のS−BSL7ガラス基板(波長700nmの光の屈折率:1.55)を基板ホルダに取付け、真空蒸着装置内を2.0×10−3Paまで排気(減圧)した。
【0116】
その後、真空蒸着装置内に、酸素導入し、真空蒸着装置内の真空度を3.0×10−1Paとした。
【0117】
その後、制御手段により、各電子銃電源、基板ホルダ回転機構、シャッタ、ステッピングモータ等を制御しつつ、成膜を行うことにより、波長700nmにおいて図5に示すような屈折率分布を有する反射防止膜を形成した。
【0118】
(実施例2)
反射防止膜が形成される基材(光学部品)として、波長700nmの光の屈折率が1.45のガラス基板を用い、厚さ方向の屈折率分布が、図6に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0119】
(実施例3)
反射防止膜が形成される基材(光学部品)として、波長700nmの光の屈折率が1.65のガラス基板を用い、厚さ方向の屈折率分布が、図7に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0120】
(実施例4)
反射防止膜が形成される基材(光学部品)として、波長700nmの光の屈折率が1.75のガラス基板を用い、厚さ方向の屈折率分布が、図8に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0121】
(実施例5)
反射防止膜が形成される基材(光学部品)として、波長700nmの光の屈折率が1.85のガラス基板を用い、厚さ方向の屈折率分布が、図9に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0122】
(実施例6)
厚さ方向の屈折率分布が、図10に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0123】
(実施例7)
反射防止膜が形成される基材(光学部品)として、波長700nmの光の屈折率が1.45のガラス基板を用い、厚さ方向の屈折率分布が、図11に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0124】
(実施例8)
反射防止膜が形成される基材(光学部品)として、波長700nmの光の屈折率が1.65のガラス基板を用い、厚さ方向の屈折率分布が、図12に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0125】
(実施例9)
反射防止膜が形成される基材(光学部品)として、波長700nmの光の屈折率が1.75のガラス基板を用い、厚さ方向の屈折率分布が、図13に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0126】
(実施例10)
反射防止膜が形成される基材(光学部品)として、波長700nmの光の屈折率が1.85のガラス基板を用い、厚さ方向の屈折率分布が、図14に示すようなものとなるように成膜条件を制御した以外は、前記実施例1と同様にして反射防止膜を形成した。
【0127】
(比較例)
図2〜図4に示すような成膜装置を用いて、直径30mm、厚さ0.5mmの平板状のS−BSL7ガラス基板(波長700nmの光の屈折率:1.55)の表面に、表1に示すような14層構成の反射防止膜(ガラス基板に接触する側から、第1層〜第14層を順次積層したもの)を形成した。なお、第1の材料としてはTa、第2の材料としてはMgFを用いた。
【0128】
【表1】
Figure 2004163549
【0129】
[2]評価
[2−1]反射率の測定
前記実施例1〜10の各反射防止膜について、350〜1050nmの波長領域における光の反射率を測定した。これらの結果を図15、図16に示す。
【0130】
[2−1]ニュートン縞の観察
前記各実施例および比較例で得られた反射防止膜について、波長632.8nmのHe−Neレーザを備えたフィゾー干渉計を用いたときに表面に現れるニュートン縞の本数を測定した。その結果を表2に示す。表中におけるニュートン縞の本数は正符号が凹面に、負符号が凸面に変形したことを示す。
【0131】
【表2】
Figure 2004163549
【0132】
図15、図16および表2の結果から明らかなように、本発明の反射防止膜は、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率が十分に低いものであった。また、表2から明らかなように、本発明の反射防止膜は、いずれも、内部応力が十分に小さく、ニュートン縞はほとんど認められなかった。
【0133】
これに対し、比較例の反射防止膜では、多くのニュートン縞が認められた。これは、比較例の反射防止膜では、内部応力が大きく、ガラス基板が変形しているためであると考えられる。
【0134】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、内部応力が小さく、可視光領域から近赤外光領域の光の反射率が十分に低い反射防止膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学部品の表面に形成された本発明の反射防止膜の好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】反射防止膜の形成に用いる成膜装置の構成を示す断面図である。
【図3】図2中の可動材料供給源およびガイド部材の近傍を示す拡大平面図である。
【図4】図3中のA−A線断面図である。
【図5】実施例1の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図6】実施例2の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図7】実施例3の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図8】実施例4の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図9】実施例5の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図10】実施例6の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図11】実施例7の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図12】実施例8の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図13】実施例9の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図14】実施例10の反射防止膜の厚さ方向の屈折率分布を示すグラフである。
【図15】実施例1〜5の反射防止膜の、350〜1050nmの波長領域における光の反射率を示すグラフである。
【図16】実施例6〜10の反射防止膜の、350〜1050nmの波長領域における光の反射率を示すグラフである。
【符号の説明】
1 反射防止膜
101 第1の領域
102 第2の領域
103 第3の領域
104 第4の領域
105 第5の領域
106 第6の領域
107 第7の領域
108 第8の領域
109 第9の領域
110 第10の領域
2 基板
3 チャンバ(真空炉)
31 上壁
32 シール部材
33 底壁
4 保持部
41 基板ホルダ
411 開口
412 上面
42 回転軸
43 基板ホルダ回転機構
5 膜厚計
51 支持部材
6 シャッタ
7 第1の材料供給源(固定材料供給源)
71 蒸発源
72 ルツボ
73 電子銃
731 電子銃電源
732 電子ビーム
74 膜厚計
741 支持部材
8 第2の材料供給源(可動材料供給源)
81 蒸発源
82 ルツボ
821 底面
83 電子銃
831 電子銃電源
832 電子ビーム
84 膜厚計
841 支持部材
85 摺動部
11 駆動系
12 制御手段
13 バルブ
14 バルブ
15 ガイド部材
16 モータ部
17 出力軸
18 ウォーム
19 シール部材
21 線
22 線
23 線
100 成膜装置

Claims (12)

  1. 光学部品の表面に形成され、300nm以上の物理膜厚を有する反射防止膜であって、
    前記光学部品側から0〜50nmの領域を第1の領域、50〜100nmの領域を第2の領域、100〜150nmの領域を第3の領域、150〜200nmの領域を第4の領域、200〜250nmの領域を第5の領域、250〜300nmの領域を第6の領域としたとき、
    前記第1の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.350〜1.800であり、
    前記第2の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.400〜1.950であり、
    前記第3の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.525〜2.100であり、
    前記第4の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.700〜2.250であり、
    前記第5の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.850〜2.250であり、
    前記第6の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.400〜2.250であることを特徴とする反射防止膜。
  2. 物理膜厚が350nm以上であって、
    前記光学部品側から300〜350nmの領域を第7の領域としたとき、
    前記第7の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.350〜2.175である請求項1に記載の反射防止膜。
  3. 物理膜厚が400nm以上であって、
    前記光学部品側から350〜400nmの領域を第8の領域としたとき、
    前記第8の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.950である請求項1または2に記載の反射防止膜。
  4. 物理膜厚が450nm以上であって、
    前記光学部品側から400〜450nmの領域を第9の領域としたとき、
    前記第9の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.575である請求項1ないし3のいずれかに記載の反射防止膜。
  5. 450nmを超える物理膜厚を有し、
    前記光学部品側から450nmより離れた側の領域を第10の領域としたとき、
    前記第10の領域は、波長700nmの光の屈折率が1.000〜1.425である請求項1ないし4のいずれかに記載の反射防止膜。
  6. 2種以上の化合物を含む材料で構成されたものである請求項1ないし5のいずれかに記載の反射防止膜。
  7. 反射防止膜は、少なくとも、純物質の状態における波長700nmの光の屈折率が1.9以上の第1の化合物と、純物質の状態における波長700nmの光の屈折率が1.5以下の第2の化合物とを含む材料で構成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の反射防止膜。
  8. TiO、ZrO、Ta、Nb、CeO、Yb、HfO、Nd、Pr11、La、Er、CdO、Eu、NiO、Cr、SnO、Sb、ZnO、ZnS、Sb、CdS、AlN、SiO、MgF、AlF、BaF、CaF、LiF、NaF、SrFから選択される2種以上を含み、これらの混合比の増減により、前記領域が形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の反射防止膜。
  9. 反射防止膜の膜厚方向に沿って、屈折率が非連続的に変化する請求項1ないし8のいずれかに記載の反射防止膜。
  10. 前記光学部品は、波長700nmの光の屈折率が1.4〜2.0である請求項1ないし9のいずれかに記載の反射防止膜。
  11. 380〜980nmの波長領域の光の反射率が1.0%以下である請求項1ないし10のいずれかに記載の反射防止膜。
  12. 隣接する前記領域間での、波長700nmの光の屈折率の差の絶対値が、それぞれ0.3以下である請求項1ないし11のいずれかに記載の反射防止膜。
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