JP2004161197A - 車両挙動と差動制限の協調制御装置 - Google Patents

車両挙動と差動制限の協調制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】差動制限状態を誤判断して車両挙動制御を許可したり禁止したりすることなく、車両挙動と差動制限の制御干渉を確実に防止することができる車両挙動と差動制限の協調制御装置を提供すること。
【解決手段】運転者の操作によるVDCオフスイッチ28を持ち、各車輪に独立に制動力を付与することで、車両の挙動を制御するVDC/TCS/ABSコントローラ17と、左右後輪7,8間の差動制限を制御するデフロック制御コントローラ32と、を備えた車両において、前記VDCオフスイッチ28によりVDC非作動状態が選択されているときにのみ、前記デフロック制御コントローラ32によるデフロック制御の実施を許可する協調制御手段を設けた。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両挙動制御装置(例えば、VDC,VSCと呼ばれるシステム)と差動制限制御装置(例えば、デフロックシステム)とが共に搭載された車両における車両挙動と差動制限の協調制御装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
車両挙動制御装置においては、制御車両のアンダーステアやオーバーステア等の不安定挙動を抑制するために、各輪の制動力を独立に制御することが必要である。
【0003】
これに対し、オフロード等での走破性を向上させるために設けられているセンターデフロック機構やフロントデフロック機構やリヤデフロック機構は、前後輪間で、或いは、左右車輪間での差動を制限することを目的とした装置である。
【0004】
上記のようなデフロック機構を搭載した車両にて、車両挙動制御を行った場合には、デフロックにより各輪が独立に動くことがなく、差動制限により制動輪以外の車輪にも制動力が回り込み、適切な車両挙動制御効果を得ることができないという課題がある。
【0005】
そのような課題に対し、従来技術では、差動を制限するデフロック機構が働いているかどうかを検出するデフロック検出センサを設け、差動を制限するデフロック機構が働いていると判断されたとき、車両挙動制御を禁止したり、車両挙動制御量を変更させている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−344077号公報(第1頁)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の車両挙動制御装置にあっては、デフロック検出センサからのセンサ信号のみに依存し、車両挙動制御を禁止したり、車両挙動制御量を変更させているため、デフロック検出センサの異常により、デフロック状態を誤判断した場合には、デフロック機構作動中であるにもかかわらず、車両挙動制御を禁止できなかったり、適切な車両挙動制御量の変更ができなくなるというおそれや、デフロック機構非作動中であるにもかかわらず、不必要に車両挙動制御を禁止してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、差動制限状態を誤判断して車両挙動制御を許可したり禁止したりすることなく、車両挙動と差動制限の制御干渉を確実に防止することができる車両挙動と差動制限の協調制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、
運転者の操作による車両挙動制御非作動選択手段を持ち、各車輪に独立に制動力を付与することで、車両の挙動を制御する車両挙動制御手段と、
前後輪間の差動制限、或いは、左右輪間の差動制限を制御する差動制限制御手段と、
を備えた車両において、
前記車両挙動制御非作動選択手段により車両挙動制御非作動状態が選択されているときにのみ、前記差動制限制御手段による差動制限制御の実施を許可する協調制御手段を設けた。
【0010】
ここで、「車両挙動制御手段」とは、各車輪に独立に制動力を付与することにより車両挙動を制御する手段をいい、例えば、旋回時やレーンチェンジ時等において車両のステア特性を最適に制御するビークル・ダイナミクス・コントロール・システム(VDCシステム)等をいう。
【0011】
「差動制限制御手段」とは、前後輪間の差動制限、或いは、左右輪間の差動制限を制御する手段をいい、例えば、前後輪間にセンターデフロック機構を有する4輪駆動車や、前後輪間に駆動力配分クラッチを有する前後輪駆動トルク配分制御システムや、左右前輪または左右後輪間にデフロック機構を有する差動制限装置や、左右前輪または左右後輪間に差動制限クラッチを有する差動制限制御システム等をいう。また、差動制限制御の作動は、運転者の操作により手動的になされるものであっても良いし、車両の走行状態(例えば、前後輪回転速度差や左右輪回転速度差等)に応じて自動的になされるものであっても良い。
【0012】
【発明の効果】
よって、本発明の車両挙動と差動制限の協調制御装置にあっては、協調制御手段において、車両挙動制御非作動選択手段により車両挙動制御非作動状態が選択されているときにのみ、差動制限制御手段による差動制限制御の実施が許可されるため、差動制限状態を誤判断して車両挙動制御を許可したり禁止したりすることなく、車両挙動と差動制限の制御干渉を確実に防止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両挙動と差動制限の協調制御装置を実現する実施の形態を、図面に示す第1実施例〜第3実施例に基づいて説明する。
【0014】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例の車両挙動と差動制限の協調制御装置が適用された後輪駆動車のビークル・ダイナミクス・コントロール・システム(車両挙動制御手段の一例であり、以下、VDCシステムと略称する。)を示す全体システム図である。
【0015】
このVDCシステムは、例えば、滑りやすい路面でのレーンチェンジ時や旋回時に、燃料カットやスロットル開閉によるエンジン制御と、4輪独立のブレーキ制御により、車両の横滑りを軽減し、これにより制動・発進・旋回性能を高度に両立させ、車両挙動をドライバーの意図通りに制御するシステムである。
【0016】
なお、以下の文章中で用いる「TCS」はトラクション・コントロール・システム(Traction Control System)の略称であり、「ABS」はアンチロックブレーキシステム(Anti−lock Brake System)の略称である。
【0017】
図1において、1はエンジン、2はスロットルバルブ、3はスロットルモータ、4はリヤディファレンシャル、5は左前輪、6は右前輪、7は左後輪、8は右後輪であり、スロットルモータ3により駆動されるスロットルバルブ2の開度に応じてエンジン1の駆動力が制御され、エンジン駆動力は、リヤディファレンシャル4を介して左右後輪7,8へ伝達される。
【0018】
前記リヤディファレンシャル4には、後述するデフロック制御コントローラ32により作動が制御されるデフロック機構4aが内蔵されていて、このデフロック機構4aの解放により左右後輪7,8の差動を許容し、デフロック機構4aの締結により左右後輪7,8の差動が制限される。
【0019】
図1において、9はブレーキペダル、10はブースタ、11はマスターシリンダ、12はVDC/TCS/ABSアクチュエータ、13は左前輪ホイールシリンダ、14は右前輪ホイールシリンダ、15は左後輪ホイールシリンダ、16は右後輪ホイールシリンダであり、通常のブレーキ操作時はブレーキペダル9の踏み込み操作によりマスターシリンダ11にて発生したブレーキ液圧が、VDC/TCS/ABSアクチュエータ12を介して、4輪のホイールシリンダ13,14,15,16に供給され、4輪の各輪に制動力が付与される。
【0020】
前記VDC/TCS/ABSアクチュエータ12は、後述のVDC/TCS/ABSコントローラ17からのVDC/TCS/ABSアクチュエータ駆動信号を受けて、各車輪のホイールシリンダのブレーキ液圧を調整するもので、VDC制御時やTCS制御時には、VDC/TCS/ABSアクチュエータ12により発生したブレーキ液圧を、各車輪のホイールシリンダのうち、制動力の付与が必要なホイールシリンダに供給する。また、ABS制御時には、制動ロックを防止するようにVDC/TCS/ABSアクチュエータ12により各車輪のホイールシリンダ圧を調整する。
【0021】
図1において、17はVDC/TCS/ABSコントローラ(車両挙動制御手段)、18はエンジン制御コントローラ、19はA/T制御コントローラ、20は左前輪速センサ、21は右前輪速センサ、22は左後輪速センサ、23は右後輪速センサ、24はブレーキ圧力センサ、25は横Gセンサ、26はヨーレートセンサ、27は舵角センサ、28はVDCオフスイッチ(車両挙動制御非作動選択手段)、29はABS警告灯、30はVDC OFF表示灯、31はSLIP表示灯、32はデフロック制御コントローラ(差動制限制御手段)、33はデフロック切替えスイッチ(作動制限制御切替え手段)である。
【0022】
前記VDC/TCS/ABSコントローラ17とエンジン制御コントローラ18とA/T制御コントローラ19とデフロック制御コントローラ32は、互いにCAN通信線により接続されている。
【0023】
前記VDC/TCS/ABSコントローラ17は、各車輪速センサ20,21,22,23と、ブレーキ圧力センサ24と、横Gセンサ25と、ヨーレートセンサ26と、舵角センサ27と、VDCオフスイッチ28からのセンサ信号やスイッチ信号を入力し、VDC/TCS/ABSアクチュエータ12に対しVDC/TCS/ABSアクチュエータ駆動信号を出力する。このVDC/TCS/ABSコントローラ17では、VDCオフスイッチ28からのスイッチ信号と、CAN通信線を介して入力されるデフロック切替えスイッチ33からのスイッチ信号に基づいて、デフロックの実施を許可するか否かの協調制御が実行され、デフロック制御コントローラ32に対しデフロック実施処理の指令、または、デフロック解除処理の指令を出力する。
【0024】
前記エンジンコントローラ18は、VDC制御での燃料カット制御時にエンジン1に対しインジェクタ駆動信号を出力され、スロットル開閉制御時にスロットルモータ3に対しスロットルモータ制御信号が出力される。
【0025】
前記デフロック制御コントローラ32は、VDC/TCS/ABSコントローラ17からのデフロック実施処理の指令を受けて前記デフロック機構4aを締結し、また、VDC/TCS/ABSコントローラ17からのデフロック解除処理の指令を受けて前記デフロック機構4aを解放する。
【0026】
次に、作用を説明する。
【0027】
[VDCとデフロックの協調制御処理]
図2は第1実施例のVDC/TCS/ABSコントローラ17にて実行されるVDCとデフロックの協調制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
【0028】
ステップS40では、VDCオフスイッチ28からスイッチ信号によりVDCオフスイッチ状態(ONでVDCオフ要求状態、OFFでVDC許可状態)が読み込まれ、ステップS41へ移行する。
【0029】
ステップS41では、ステップS40で読み込まれたVDCオフスイッチ状態に基づいて、VDCオフ要求か否かが判断され、Yesの場合はステップS42へ移行し、Noの場合はステップS43へ移行する。
【0030】
ステップS42では、VDC制御を禁止するVDCオフ処理が行われ、ステップS44へ移行する。
【0031】
ステップS43では、デフロック中(後述するステップS47でのデフロック実施処理の指令中)であるか否かが判断され、Yesの場合はステップS42へ移行し、Noの場合はステップS44へ移行する。
【0032】
ステップS44では、デフロック切替えスイッチ33からのスイッチ信号によりデフロック状態(ONでデフロックオン要求状態、OFFでデフロックオフ要求状態)が読み込まれ、ステップS45へ移行する。
【0033】
ステップS45では、デフロックオン要求有りか否かが判断され、Yesの場合はステップS46へ移行し、Noの場合はステップS48へ移行する。
【0034】
ステップS46では、VDCオフ中(ステップS42でのVDCオフ処理中)か否かが判断され、Yesの場合はステップS47へ移行し、Noの場合はステップS48へ移行する。
【0035】
ステップS47では、デフロック実施処理の指令がデフロック制御コントローラ32に対し出力され、リターンへ移行する。
【0036】
ステップS48では、デフロック解除処理の指令がデフロック制御コントローラ32に対し出力され、リターンへ移行する。
【0037】
なお、ステップS45とステップS46とステップS47は、請求項2の協調制御手段に相当する。また、ステップS41→ステップS43→ステップS42の流れは、請求項3の協調制御手段に相当する。
【0038】
[VDCとデフロックの協調制御作用]
まず、デフロック機構4aの解放状態で、VDCオフスイッチ28とデフロック切替えスイッチ33とが共にOFFであるときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS40→ステップS41→ステップS43→ステップS44→ステップS45→ステップS48へと進む流れとなり、ステップS48において、デフロック機構4aの解放が維持される。
【0039】
このデフロック解放状態でドライバーがデフロック切替えスイッチ33をONとしたときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS40→ステップS41→ステップS43→ステップS44→ステップS45→ステップS46→ステップS48へと進む流れとなり、ステップS48において、デフロック機構4aの解放が維持される。つまり、ドライバーのデフロックオン要求があっても、VDCオフスイッチ28をONにしない限りは、デフロック解放状態が維持される。
【0040】
次いで、ドライバーがVDCオフスイッチ28をONとすると、図2のフローチャートにおいて、ステップS40→ステップS41→ステップS42→ステップS44→ステップS45→ステップS46→ステップS47へと進む流れとなり、ステップS47において、デフロック実施処理の指令がデフロック制御コントローラ32に対し出力され、デフロック機構4aが締結される。つまり、デフロックオン要求とVDCオフ要求に基づくVDCオフ処理を開始条件としてデフロック機構4aの締結が許可される。
【0041】
このデフロック中にドライバーがVDCオフスイッチ28をOFFとすると、図2のフローチャートにおいて、ステップS40→ステップS41→ステップS43→ステップS42→ステップS44→ステップS45→ステップS46→ステップS47へと進む流れとなり、ステップS47において、デフロック機構4aの締結が維持される。つまり、デフロック中は、ドライバーがVDCオフスイッチ28をOFFにしてもVDCオンに復帰させることなく、デフロック機構4aの締結を維持する。
【0042】
さらに、デフロック中にドライバーがデフロック切替えスイッチ33をOFFとすると、図2のフローチャートにおいて、ステップS40→ステップS41→ステップS43→ステップS42→ステップS44→ステップS45→ステップS48へと進む流れとなり、ステップS48において、デフロック解除処理の指令がデフロック制御コントローラ32に対し出力され、デフロック機構4aが解放される。つまり、デフロック機構4aが締結されると、VDCオフスイッチ28の選択位置にかかわらず、デフロック切替えスイッチ33をOFFにすることを終了条件としてデフロック機構4aが解放される。
【0043】
[VDC制御作用]
VDC制御は、舵角センサ27から得られるドライバーのステアリング操作量と、ブレーキ圧力センサ24から得られるブレーキ操作量とによって目標横滑り量を演算する。併せて、横Gセンサ25やヨーレートセンサ26や各車輪速センサ20,21,22,23等から送られてくる情報により車両の実横滑り量を演算する。そして、目標横滑り量と車両の実横滑り量の偏差に応じて、VDC/TCS/ABSアクチュエータ12に対しVDC/TCS/ABSアクチュエータ駆動信号を出力してブレーキ制動力の調整を行うと共に、燃料カットやスロットル開閉によりエンジン出力を制御して、自動的に車両の走行安定性を向上させる。
【0044】
すなわち、目標横滑り量と車両の実横滑り量の偏差により、車両のアンダーステア程度やオーバーステア程度が判断され、車両がアンダーステア傾向の場合やオーバーステア傾向の場合には、ブレーキ制動力の調整とエンジン出力制御により、車両の横滑り量を目標横滑り量に一致させる制御が行われる。
【0045】
例えば、滑りやすい路面でのレーンチェンジ時において、オーバーステア傾向が大きいと判断されると、その程度に応じてエンジン出力を制御すると共に4輪のブレーキ力を制御し、オーバーステア抑制モーメントを発生させて、オーバーステア傾向を軽減する。ここで、オーバーステア抑制モーメント(オーバーステアを抑制する力)は、旋回外輪側の前輪と後輪とにブレーキ力を与えることで発生する。
【0046】
また、滑りやすい路面での旋回時において、アンダーステア傾向が大きいと判断されると、その程度に応じて4輪のブレーキ力を制御し、アンダーステア抑制モーメントを発生させて、アンダーステア傾向を軽減する。ここで、アンダーステア抑制モーメント(アンダーステアを抑制する力)は、旋回内輪側の後輪にブレーキ力を与えることで発生する。
【0047】
[デフロック制御作用]
上記のように、VDC制御においては、制御車両のアンダーステアやオーバーステア等の不安定挙動を抑制するために、各輪の制動力(ブレーキ力)を独立に制御することが必要である。
一方、オフロード等での走破性を向上させるために設けられているデフロック機構4aは、左右後輪7,8間での差動を制限することを目的とするものであるため、例えば、VDC制御において左右後輪7,8の一方に制動力が付与されているときに、デフロック機構4aを締結すると、一方の後輪に作用している制動力が、デフロック機構4aを介して他方の後輪に伝達され、左右後輪7,8の両方に制動力が作用し、車両挙動を安定させる適切なVDC制御効果を得ることができない。
つまり、VDC制御とデフロック制御とは、同時期に両制御が行われるという制御干渉を確実に避ける必要がある。
【0048】
これに対し、第1実施例装置では、図2のフローチャートの協調制御ステップであるステップS45、ステップS46、ステップS46から明らかなように、ステップS45において、デフロックオン要求有りと判断されても、ステップS46のVDCオフ中であるという条件が成立しないことにはステップS47のデフロック実施処理へ移行しないため、図3のデフロック制御タイミングチャートに示すように、toの時点でVDCオフとし、t1の時点でVDCオフ中にデフロック要求があるとデフロック状態となり、t2の時点でVDCオフ中にデフロック要求が解除されると、デフフリー状態となり、その後、t3の時点でVDC制御が許可されるというように、VDC制御可能な領域(toの時点までとt3の時点以降)とデフロック制御領域(t1の時点からt2の時点まで)とはオーバーラップすることなく、VDC制御とデフロック制御との制御干渉を確実に避けることができる。
【0049】
次に、従来技術において、例えば、デフ内部スイッチからの信号により、「デフロック状態」であるのに「デフフリー状態」と判定してしまう異常時には、デフロック制御領域(t1の時点からt2の時点まで)においてVDC制御が行われる可能性がある。しかし、第1実施例装置では、図4のデフロック状態誤判定時のタイムチャートに示すように、デフ内部スイッチ等を用いることなく、VDCオフ中においてデフロックオン要求有りの場合にのみデフロック制御領域とするので、VDC制御とデフロック制御との制御干渉を確実に避けることができる。
【0050】
次に、従来技術において、例えば、デフ内部スイッチからの信号により、デフロックの途中で「デフフリー状態」と誤判定をし始めた場合には、誤判定をし始めたt1’の時点からt2の時点までのデフロック制御領域においてVDC制御が行われる可能性がある。しかし、第1実施例装置では、図5のデフロック状態誤判定時のタイムチャートに示すように、デフ内部スイッチ等を用いることなく、VDCオフ中においてデフロックオン要求有りの場合にのみデフロック制御領域とするので、VDC制御とデフロック制御との制御干渉を確実に避けることができる。
【0051】
次に、従来技術において、例えば、デフ内部スイッチからの信号により、「デフフリー状態」であるのに「デフロック状態」と判定してしまう異常時には、デフロック状態との誤判定領域(t4の時点からt5の時点まで)においてVDC制御が禁止される可能性がある。しかし、第1実施例装置では、図6のデフロック状態誤判定時のタイムチャートに示すように、デフ内部スイッチ等を用いることなく、VDC許可中においてはデフロックオン要求の有無にかかわらずVDC許可をそのまま維持するので、必要に応じてVDC制御を実行することができる。
【0052】
次に、効果を説明する。
第1実施例の車両挙動と差動制限の協調制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0053】
(1) 運転者の操作によるVDCオフスイッチ28を持ち、各車輪に独立に制動力を付与することで、車両の挙動を制御するVDC/TCS/ABSコントローラ17と、左右後輪7,8間の差動制限を制御するデフロック制御コントローラ32と、を備えた車両において、前記VDCオフスイッチ28によりVDC非作動状態が選択されているときにのみ、前記デフロック制御コントローラ32によるデフロック制御の実施を許可する協調制御手段を設けたため、差動制限状態を誤判断して車両挙動制御を許可したり禁止したりすることなく、車両挙動と差動制限の制御干渉を確実に防止することができる。
【0054】
(2) 運転者の操作によりデフロック制御の実施と非実施とを選択するデフロック切替えスイッチ33を設け、前記協調制御手段は、ステップS45にてデフロック切替えスイッチ33によりデフロックオン要求があるとの判断時で、かつ、ステップS46にてVDCオフスイッチ28によるVDCオフの選択により、VDCオフ中であるとの判断時のみ、ステップS47へ進んでデフロック実施処理を行うようにしたため、2つのスイッチ28,33からの信号判断を用いた処理により確実にVDC制御とデフロック制御の制御干渉を防止することができる。
【0055】
(3) 前記協調制御手段は、ステップS47でのデフロック実施処理に基づき、ステップS43にてデフロック機構4aがデフロック中であると判定された場合、VDCオフスイッチ28によりVDC制御許容が選択されていてもVDC制御許容へは復帰させず、ステップS42へ進んでVDCオフ処理を行うようにしたため、デフロック機構4aを締結してのデフロックが開始されると、VDCオフスイッチ28をVDC制御許容側に切替えてもデフロック状態を維持することができる。
【0056】
(第2実施例)
第1実施例は、既存のVDCオフスイッチ28とデフロック切替えスイッチ33をそのまま利用し協調制御プログラムにより制御干渉を防止する例を示した。
これに対し、第2実施例及び第3実施例は、これら2つのスイッチ28,33に代え新たに1つの切替えスイッチを設けることで協調制御を達成するようにした例である。
【0057】
第2実施例では、図7に示すように、ロータリー式の1つの切替えスイッチ50(協調制御手段)を採用した。
【0058】
前記切替えスイッチ50は、デフロックの実施/解除の切替え機能と、VDC制御の禁止/許可の切替え機能を持ち、VDC制御が許可されているスイッチ位置から、デフロック位置に切り替えるためには、必ずVDC禁止位置を経由するスイッチ構造となっている。
【0059】
すなわち、前記切替えスイッチ50は、デフロック解除かつVDC制御許可である第1スイッチ位置50aと、デフロック解除かつVDC制御禁止である第2スイッチ位置50bと、デフロックかつVDC制御禁止である第3スイッチ位置50cと、の3つのスイッチ位置を持ち、前記第1スイッチ位置50aと前記第3スイッチ位置50cをロータリースイッチ操作部50d(スイッチ操作部材)の両端部に配置し、前記第2スイッチ位置50bをロータリースイッチ操作部50dの中央部に配置した。なお、他の構成は第1実施例と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0060】
作用を説明すると、切替えスイッチ50のロータリースイッチ操作部50dを把持し、VDC制御が許可されている第1スイッチ位置50aからデフロック位置である第3スイッチ位置50c(図7)に回しながら切り替えるには、VDC制御禁止である第2スイッチ位置50bを必ず通らなければならない。
【0061】
次に、効果を説明する。
この第2実施例の車両挙動と差動制限の協調制御装置にあっては、第1実施例の(1)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0062】
(4) 切替えスイッチ50は、デフロックの実施/解除の切替え機能と、VDC制御の禁止/許可の切替え機能を持ち、VDC制御が許可されているスイッチ位置から、デフロック位置に切り替えるためには、必ずVDC禁止位置を経由するスイッチ構造としたため、切替えスイッチ50による1つの操作により、容易にデフロックの実施/解除の切替えとVDC制御の禁止/許可の切替えを行うことができると共に、確実にVDC制御とデフロック制御の制御干渉を防止することができる。加えて、VDCシステムとデフロックシステムが個別に持っていた2つのスイッチを一体化することにより、スイッチの搭載スペース、部品点数、スイッチコストを削減することができる。
【0063】
(5) 切替えスイッチ50は、デフロック解除かつVDC制御許可である第1スイッチ位置50aと、デフロック解除かつVDC制御禁止である第2スイッチ位置50bと、デフロックかつVDC制御禁止である第3スイッチ位置50cと、の3つのスイッチ位置を持ち、前記第1スイッチ位置50aと前記第3スイッチ位置50cをロータリースイッチ操作部50dの両端部に配置し、前記第2スイッチ位置50bをロータリースイッチ操作部50dの中央部に配置したため、デフロック実施かつVDC制御許可という組み合わせを除いた3位置スイッチにより容易なスイッチ操作でVDC制御とデフロック制御の制御干渉を防止することができる。
【0064】
(第3実施例)
第3実施例では、図8に示すように、シーソー式の1つの切替えスイッチ60(協調制御手段)を採用した。
【0065】
前記切替えスイッチ60は、デフロックの実施/解除の切替え機能と、VDC制御の禁止/許可の切替え機能を持ち、VDC制御が許可されているスイッチ位置から、デフロック位置に切り替えるためには、必ずVDC禁止位置を経由するスイッチ構造となっている。
【0066】
すなわち、前記切替えスイッチ60は、デフロック解除かつVDC制御許可である第1スイッチ位置60aと、デフロック解除かつVDC制御禁止である第2スイッチ位置60bと、デフロックかつVDC制御禁止である第3スイッチ位置60cと、の3つのスイッチ位置を持ち、前記第1スイッチ位置60aと前記第3スイッチ位置60cをシーソースイッチ操作部60d(スイッチ操作部材)の両端部に配置し、前記第2スイッチ位置60bをシーソースイッチ操作部60dの中央部に配置した。なお、他の構成は第1実施例と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0067】
作用を説明すると、切替えスイッチ60のシーソースイッチ操作により、VDC制御が許可されている第1スイッチ位置60aからデフロック位置である第3スイッチ位置60cに切り替えるには、VDC制御禁止である第2スイッチ位置50b(図8)を必ず通らなければならない。
【0068】
第3実施例の車両挙動と差動制限の協調制御装置の効果については、第2実施例と同様であるので説明を省略する。
【0069】
以上、本発明の車両挙動と差動制限の協調制御装置を第1実施例〜第3実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0070】
例えば、第1実施例〜第3実施例では、車両挙動制御手段としてVDCシステムの例を示したが、各輪の制動力を独立に制御するシステムであればVDCシステムに限定されない。
【0071】
また、第1実施例〜第3実施例では、差動制限制御手段として、左右後輪のデフロックシステムの例を示したが、手動操作により制御される左右前輪のデフロックシステムや、前後輪のセンターデフロックシステムや、前後輪回転速度差や等により前後輪への伝達トルク配分が可変制御される前後輪トルク配分制御システムや、左右輪回転速度差等により差動制限トルクが可変制御される差動制限トルク制御システム等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の車両挙動と差動制限の協調制御装置が適用された後輪駆動車を示す全体システム図である。
【図2】第1実施例のVDC/TCS/ABSコントローラにて実行されるVDCとデフロックの協調制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1実施例装置でのデフロックタイミングチャートである。
【図4】従来技術において常にデフフリーと誤判定してしまうデフロック状態誤判定時の場合と第1実施例装置による場合との比較タイムチャートである。
【図5】従来技術においてデフロック中にデフフリーと誤判定し始めたデフロック状態誤判定時の場合と第1実施例装置による場合との比較タイムチャートである。
【図6】従来技術において常にデフロックと誤判定してしまうデフロック状態誤判定時の場合と第1実施例装置による場合との比較タイムチャートである。
【図7】第2実施例の車両挙動と差動制限の協調制御装置で採用された切替えスイッチを示す斜視図である。
【図8】第3実施例の車両挙動と差動制限の協調制御装置で採用された切替えスイッチを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 スロットルバルブ
3 スロットルモータ
4 リヤディファレンシャル
5 左前輪
6 右前輪
7 左後輪
8 右後輪
9 ブレーキペダル
10 ブースタ
11 マスターシリンダ
12 VDC/TCS/ABSアクチュエータ
13 左前輪ホイールシリンダ
14 右前輪ホイールシリンダ
15 左後輪ホイールシリンダ
16 右後輪ホイールシリンダ
17 VDC/TCS/ABSコントローラ(車両挙動制御手段)
18 エンジン制御コントローラ
19 A/T制御コントローラ
20 左前輪速センサ
21 右前輪速センサ
22 左後輪速センサ
23 右後輪速センサ
24 ブレーキ圧力センサ
25 横Gセンサ
26 ヨーレートセンサ
27 舵角センサ
28 VDCオフスイッチ(車両挙動制御非作動選択手段)
29 ABS警告灯
30 VDC OFF表示灯
31 SLIP表示灯
32 デフロック制御コントローラ(差動制限制御手段)
33 デフロック切替えスイッチ(差動制限制御切替え手段)
50 切替えスイッチ(協調制御手段)
50a 第1スイッチ位置
50b 第2スイッチ位置
50c 第3スイッチ位置
50d ロータリースイッチ操作部(スイッチ操作部材)
60 切替えスイッチ(協調制御手段)
60a 第1スイッチ位置
60b 第2スイッチ位置
60c 第3スイッチ位置
60d シーソースイッチ操作部(スイッチ操作部材)

Claims (5)

  1. 運転者の操作による車両挙動制御非作動選択手段を持ち、各車輪に独立に制動力を付与することで、車両の挙動を制御する車両挙動制御手段と、
    前後輪間の差動制限、或いは、左右輪間の差動制限を制御する差動制限制御手段と、
    を備えた車両において、
    前記車両挙動制御非作動選択手段により車両挙動制御非作動状態が選択されているときにのみ、前記差動制限制御手段による差動制限制御の実施を許可する協調制御手段を設けたことを特徴とする車両挙動と差動制限の協調制御装置。
  2. 請求項1に記載された車両挙動と差動制限の協調制御装置において、
    運転者の操作により差動制限制御の実施と非実施とを選択する差動制限制御切替え手段を設け、
    前記協調制御手段は、前記差動制限制御切替え手段により差動制限制御の実施要求があり、かつ、前記車両挙動制御非作動選択手段により車両挙動制御非作動が選択されているときのみ、差動制限制御の実施を許可することを特徴とする車両挙動と差動制限の協調制御装置。
  3. 請求項2に記載された車両挙動と差動制限の協調制御装置において、
    前記協調制御手段は、差動制限制御の実施の許可に基づき、差動制限制御機構が差動制限中であると判定された場合、前記車両挙動制御非作動選択手段により車両挙動制御許容が選択されても車両挙動制御許容へは復帰させないことを特徴とする車両挙動と差動制限の協調制御装置。
  4. 請求項1に記載された車両挙動と差動制限の協調制御装置において、
    前記協調制御手段は、差動制限制御の実施/解除の切替え機能と、車両挙動制御の禁止/許可の切替え機能を持つ1つの切替えスイッチであり、
    前記切替えスイッチは、車両挙動制御が許可されているスイッチ位置から、差動制限制御の実施位置に切り替えるためには、必ず車両挙動制御の禁止位置を経由するスイッチ構造となっていることを特徴とする車両挙動と差動制限の協調制御装置。
  5. 請求項4に記載された車両挙動と差動制限の協調制御装置において、
    前記切替えスイッチは、差動制限解除かつ車両挙動制御許可である第1スイッチ位置と、差動制限解除かつ車両挙動制御禁止である第2スイッチ位置と、差動制限実施かつ車両挙動制御禁止である第3スイッチ位置と、の3つのスイッチ位置を持ち、
    前記第1スイッチ位置と前記第3スイッチ位置をスイッチ操作部材の両端部に配置し、前記第2スイッチ位置をスイッチ操作部材の中央部に配置したことを特徴とする車両挙動と差動制限の協調制御装置。
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