JP2004161028A - ステアリングコラム装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステアリングコラム装置において、チルティング機構及びテレスコピック機構の各クランプ/アンクランプをステアリングホィールの近傍に設けられた2本のレバーによって操作できるようにすることによって、必要な調整単独あるいは同時に行うことができるようにすることを課題とする。
【解決手段】チルト操作レバー7Aを手前に引いてレバー中心軸72を中心として揺動させるとチルトヘッド4のクランプが解除され、テレスコ操作レバー7Bを手前に引いてレバー中心軸72を中心として揺動させると、この揺動は、プッシャープレート73の揺動、プッシャーロッド74の押圧、揺動アーム61を介してのコラムクランプシャフト6の回動を起こし、コラムヘッド31のクランプが解除される。2つの操作レバーは選択的あるいは同時に操作できる。
【選択図】 図3
【解決手段】チルト操作レバー7Aを手前に引いてレバー中心軸72を中心として揺動させるとチルトヘッド4のクランプが解除され、テレスコ操作レバー7Bを手前に引いてレバー中心軸72を中心として揺動させると、この揺動は、プッシャープレート73の揺動、プッシャーロッド74の押圧、揺動アーム61を介してのコラムクランプシャフト6の回動を起こし、コラムヘッド31のクランプが解除される。2つの操作レバーは選択的あるいは同時に操作できる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はステアリングコラム装置、特にテレスコピック機構、及び、チルティング機構を備えた車両のためのステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレスコピック機構及びチルティング機構は、それぞれ運転者の体型及び好みにあわせて最も運転しやすい位置にステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するための機構である。
【0003】
テレスコピック機構及びチルティング機構には、ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときに操作されるクランプ/アンクランプ機構が備えられており、この調整時には、一旦、それぞれのためのクランプ/アンクランプ機構が解除され、その状態で前後方向位置、及び、傾斜角度を調整したのち、再度クランプ状態にされる。
【0004】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整は、ステアリングホィールを手で操作することによって行うため、ステアリングホィールから手を離すことなくクランプ/アンクランプ機構を操作できる方が好ましい。英国特許出願公開2281375号には、ステアリングホィールに手をかけたまま操作できる単一の操作ハンドルを設けたステアリングコラム装置が開示されている。
【0005】
上記英国特許のステアリングコラム装置においては、操作ハンドルの動きはフレキシブルチューブ内を移動可能なケーブルを介して前後方向位置調整用のクランプ装置に伝達される。このケーブルとそのチューブはステアリングホィールの全調整範囲においてケーブルが自由に移動できる程度に曲率を充分小さくするため、大きなたわみが与えられている。このため、一部がステアリングコラム装置の外側に向かって飛び出すようになり見苦しいだけでなく、トラブルの原因ともなる。更に、ケーブルとそのチューブからなる伝動機構は信頼性に乏しいだけでなく、ケーブルが伸び縮みするため操作性が良好とはいえないものである。
【0006】
このような問題に対処するため、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるようにし、ステアリングコラム装置から外側に大きくはみ出す部分が無く、信頼性が高く、操作性が良好なクランプ/アンクランプ機構を備えたステアリングコラム装置が提案(特願2002−273484号)されている。
【0007】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整機能は運転時だけでなく、乗降のためにも使用される。これは、特に肥満あるいは妊婦運転者にとって、ステアリングホィールは腹部にぶつかり乗降の障害となるため、乗降時にこれを退避させることにより乗降を容易にするためである。ステアリングホィールをこのような目的のために退避させる場合には、チルティング(傾斜)機構によってステアリングホィールを車両前方に押しやれば十分である。ところが、上記英国特許あるいは上記日本出願のステアリングコラム装置においては、調整時にチルティング機構だけでなくテレスコピック機構のアンクランプがレバーの操作によって同時平行的に行われる構造となっている。そのため、レバーを操作するために大きい力が必要となるばかりでなく、アンクランプされたテレスコピック機構が動きやすいため動いたときには運転開始前に再度調整することが必要となる。
【0008】
このような問題に対処するため、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーの操作を2段階とし、最初の第1段階目でチルティング機構をアンクランプし、続く第2段階目でテレスコピック機構をアンクランプするようにしたステアリングコラム装置が提案されている(特願2002−319765号)。
【0009】
このステアリングコラム装置においては、チルティング機構をアンクランプした後ではじめてテレスコピック機構をアンクランプすることができる。つまり、テレスコピック機構による調整のみが必要な場合であっても、必ずチルティング機構をアンクランプしなければならない。ところが、肥満者や妊婦がいない環境、例えば、背丈の違いはあるが体型があまり変わらないような家族、の場合には、これとは逆にチルティング機構よりもむしろテレスコピック機構のアンクランプが容易にできる方が好ましい。また、上述の2段階目のレバー操作にはどうしてもを強い力を要するため、婦人、老人など非力な者にとって、少なからず大きい負担となっている。
【0010】
【特許文献1】
英国特許出願公開2281375号明細書
【特許文献2】
米国特許第6237438号明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ステアリングホィールの近傍に互いに隣接して設けられた一対のレバーによって、テレスコピック機構及びチルティング機構のそれぞれのクランプ/アンクランプ機構を独立して操作できるようにするとともに、場合に応じてその両方を同時に操作することもできるようにしたステアリングコラム装置を提供することを課題とする。
【0012】
更に、これによりテレスコピック機構又はチルティング機構の調整は任意の必要なものだけを行えるようにし、任意の一方のみを単独で操作する場合には軽微な力で操作できるようにしたステアリングコラム装置を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、ステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、上記ホィールシャフトの傾斜を調整することによって上記ステアリングホィールの傾斜を調整するためのチルトクランプ機構、上記ホィールシャフトの前後方向位置を調整することによって上記ステアリングホィールの前後方向位置を調整するテレスコクランプ機構、及び、上記各クランプ機構を操作するためのチルト操作レバーとテレスコ操作レバーからなる操作レバー対を備えたステアリングコラム装置において、上記操作レバー対の各レバー中心軸を共通の軸線上においたことを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0014】
第2番目の発明は、車体に取り付けるための車体取付部を備えた固定コラム部材、中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に上記固定コラム部材に支持された移動コラム部材、上記移動コラム部材の一端側に備えられたコラムヘッド、上記コラムヘッドにチルト可能に支持されたチルトヘッド、上記チルトヘッドに回転可能に支持され、一端にステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、上記コラムヘッドに備えられ、上記移動コラム部材の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能なコラムクランプシャフト、上記コラムクランプシャフトに対して移動可能であり、このコラムクランプシャフトの回転によって、上記移動コラム部材を上記固定コラム部材に対してクランプ/アンクランプ状態にするためのコラムクランプ、上記チルトヘッドを上記コラムヘッドに対してクランプ/アンクランプするためのチルトヘッドクランプ、上記チルトヘッドに共通のレバー中心軸を有してその操作端が互いに接近して設けられたチルト操作レバー及びテレスコ操作レバーからなる操作レバー対、上記チルト操作レバーの揺動を上記チルトヘッドクランプに伝動するためのチルトアンクランプ力伝動装置、及び、上記テレスコ操作レバーの揺動を上記コラムクランプシャフトの回転に変換して上記コラムクランプに伝動するためのコラムアンクランプ力伝動装置を備えたステアリングコラム装置である。
【0015】
第3番目の発明は、第2番目の発明のステアリングコラム装置において、上記コラムアンクランプ力伝動装置は、プッシャープレート、プッシャーロッド、及び、揺動アームを備えており、上記プッシャープレートは上記テレスコ操作レバーに設けられて、上記プッシャーロッドの一端に当接可能であり、上記プッシャーロッドは、上記チルトヘッドのチルト中心軸と平行な方向に摺動可能であって、上記コラムヘッドに支持されており、上記揺動アームは、上記プッシャーロッドに一端が係合し他端が上記コラムクランプシャフトに固定されており、上記テレスコ操作レバーの揺動が、上記プッシャープレートの揺動運動、上記プッシャーロッドの軸方向運動、上記揺動アームの揺動運動、及び上記コラムクランプシャフトの回転運動へと順次変換されて、上記コラムクランプがアンクランプ状態にされることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0016】
第4番目の発明は、第2番目又は第3番目の発明のステアリングコラム装置において、上記チルトアンクランプ力伝動装置は、上記チルト操作レバーの揺動を直接上記チルトヘッドクランプに伝動することにより、上記チルトヘッドクランプをアンクランプ状態にするものであることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0017】
第5番目の発明は、第3番目又は第4番目の発明のステアリングコラム装置において、上記チルトヘッドクランプにクランプ力を付与するため、上記チルトヘッドには上記チルト操作レバーを付勢する第1の付勢バネが設けられており、上記コラムクランプにクランプ力を付与するため、上記コラムヘッドには上記プッシャーロッドを付勢する第2の付勢バネが設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0018】
第6番目の発明は、第1番目から第5番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記チルト操作レバー及びテレスコ操作レバーは、ステアリングホィールに手を掛けたままその手の同一の指あるいは異なる指により同時に操作可能であることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は、本発明実施例にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【0020】
* 全体概要
ステアリングコラム装置1は、固定コラム部材2、移動コラム部材3、コラムヘッド31、チルトヘッド4、ホィールシャフト5、コラムクランプ21、チルトヘッドクランプ41(図2参照)、操作レバー対7、及び、機械的伝動装置を備えている。
【0021】
固定コラム部材2には、車体取付部221、222が備えられており、この車体取付部221、222によって車体91に取り付けられる。上記固定コラム部材2には、移動コラム部材3が中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に支持されている。上記移動コラム部材3の一端側にはコラムヘッド31が備えられており、このコラムヘッド31にはチルトヘッド4がチルト中心軸43を中心としてチルト可能に支持されている。このチルトヘッド4にはホィールシャフト5が回転可能に支持されており、その一端にはステアリングホィール92が固定される。
【0022】
上記コラムヘッド31には、上記移動コラム部材3の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能にコラムクランプシャフト6が設けられている。固定コラム部材2には、コラムクランプ21が備えられており、このコラムクランプ21は、上記コラムクランプシャフト6に対して相対的に移動可能であり、このコラムクランプシャフト6の回転によって、上記移動コラム部材3をクランプ/アンクランプ状態にすることができる。
【0023】
また、上記コラムヘッド31には、チルトヘッドクランプ41が設けられており、上記チルトヘッド4をコラムヘッド31に対してクランプ/アンクランプする。上記チルトヘッド4には、レバー中心軸によって操作レバー対7が支持されている。この操作レバー対7は、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bの対からなり、これらをステアリングホィール92に手をかけたまま操作可能となっている。以下に示す例ではチルト操作レバー7Aがテレスコ操作レバー7Bの上側に配置されている。テレスコ操作レバー7Bの揺動は、機械的伝動装置を介して上記コラムクランプシャフト6の回転に変換され、この回転は上記コラムクランプ21に伝動され、移動コラム部材3のクランプ/アンクランプが行われる。また、チルト操作レバー7Aの揺動は上記チルトヘッドクランプ41に直接伝動され、チルトヘッド4のクランプ/アンクランプが行われる。
【0024】
ホィールシャフト5の一端は、ステアリングコラム装置1内でユニバーサルジョイント931(図3)に接続され、更に、スプライン結合された一対の上中間軸941と下中間軸942(図3)、及び下側のユニバーサルジョイント932を介して、前車輪の方向を操作する機構へと接続されている。なお、図1中の点線は調整によってステアリングホィール92が取りうる位置と姿勢の幾例かを示している。
【0025】
* チルトヘッドクランプ
図2は、ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。図3は、ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。図4、図5は、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。ここで、図4における実線は、テレスコ操作レバー7Bが引かれる前の状態を、また、点線はこれが引かれた状態を示している。また、図5における実線は、チルト操作レバー7Aが引かれる前の状態を、また、点線はこれが引かれた状態を示している。図6、図7及び図8は、それぞれ図2におけるA−A、B−B及びC−C断面図である。
【0026】
チルトヘッドクランプ41は次のような構成を備える。移動コラム部材3には、チルト中心軸43にその中心を持つセグメントギヤ33がボルト34によって固定されており、セグメントギヤ33との間に空間を置いて背当部材341が設けられている。一方、上記空間内には、チルトヘッド4に軸441を中心として回動可能に支持されたギヤアーム44のギヤ部分442と、チルト操作レバー7Aに設けられた突出部71が入り込んでいる。
【0027】
上記ギヤアーム44は2本の脚からなるL字形状(図2)をなしており、一方の脚には上記ギヤ部分442が形成されている。上記ギヤアーム44の他方の脚443と上記突出部71の背部との間には付勢バネ711が介在し、突出部71の背部と脚443との間隔を押し広げるようなバイアスを与えている。
【0028】
このバイアスによって、突出部71が左方向(図2)に押され、ギヤ部分442を背後から押すため、ギヤ部分442がセグメントギヤ33に向けて押し付けられ、それぞれの歯が相互に噛合する。なお、ギヤ部分442がセグメントギヤ33を押すとき、突出部71にかかる反力は背当部材341が受ける(図2、図6、図7)。これにより、チルト操作レバー7Aが実線(図3、図5)の位置にあるときチルトヘッド4が固定される。チルトヘッド4は、ギヤ部分442とセグメントギヤ33が噛合可能な角度位置において段階的な位置で固定される。
【0029】
チルト操作レバー7Aの突出部71が図2中で右方向(図2、図3)に動くとき、付勢バネ711の押圧力によってギヤアーム44は図2において反時計回りに回転するため、これらの歯の噛合が外れる。したがって、チルト位置の調整時にチルト操作レバー7Aを引くと、突出部71が右方向に動き、チルトヘッドクランプ41がアンクランプ状態に入る。
【0030】
* ユニバーサルジョイント及び中間軸
図3に示されるように、上中間軸941の端部とホィールシャフト5の端部との間には、上側のユニバーサルジョイント931が構成されている。ユニバーサルジョイント931の中心はチルト中心軸43の軸線上にあるため、チルトヘッド4がチルトしてもその影響を受けないようになっている。
【0031】
下中間軸942は固定コラム部材2に回転自在に支持されており、下中間軸942と上中間軸941がスプライン結合しているため、移動コラム部材3は図3の左右方向に移動可能になっている。スプライン結合によって移動位置に関わらず上中間軸941の回転は下中間軸942に伝達することが可能であり、ステアリングホィール92の前後方向位置を調整しても、ステアリングホィール92の回転を下中間軸942に伝達することができる。
【0032】
* 固定コラム部材と移動コラム部材
図2に示すように、移動コラム部材3の円筒部には、軸方向に沿った長穴32が形成されており、この長穴32内に固定コラム部材2に設けられたストッパ部材22が係合している。移動コラム部材3は、長穴32とストッパ部材22によって、固定コラム部材2からの抜け出しとこれに対する回転が防止されているため、固定コラム部材2内を長穴32の範囲で軸方向に移動可能となっている。
【0033】
固定コラム部材2は円筒状部231を備えており、円筒状部231の内部の2箇所にはリング状の摺動案内部232が設けられている(図3)。移動コラム部材3の円筒部外面はこの摺動案内部232によって移動コラム部材3の軸方向にがたつき無く移動可能になっている。コラムヘッド31の端面に設けられた緩衝ストッパ311は、調整時に移動コラム部材3が固定コラム部材2の端面に衝突したとき、金属同士の衝撃的な衝突を防止するために設けられた、ゴム、合成樹脂等でできた緩衝材である。
【0034】
* コラムクランプ
コラムクランプ21の構成を図8、図9、及び、図10を用いて説明する。図8は、既述のように図2におけるC−C断面図、図9、図10は図8における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。コラムクランプ21は、固定コラム部材2に設けられており、第1ウェッジ211、第2ウェッジ212、クランプバー213、及び、反力部材2141、2142を備えている。固定コラム部材2には横方向からウェッジ穴215があけられており、このウェッジ穴215の一部は固定コラム部材2の空洞に開口している。第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は、それぞれが傾斜面2111、2112を備えており、この傾斜面2111、2112の側を向かい合わせるようにウェッジ穴215内に納められている。2つのウェッジの傾斜面2111、2112は移動コラム部材3の円筒部外周と向き合うことになる。
【0035】
第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212には、それぞれクランプバー穴2113、2114があけられており、この穴にクランプバー213が貫通している。クランプバー213の両端にはクランプバー穴2113、2114よりも外径の大きな反力部材2141、2142が固定されている。クランプバー213には一方の反力部材2142に接するようにコラムクランプシャフト穴216があけられており、この穴にコラムクランプシャフト6の実質的に楕円をなす非円形形状断面部が貫通している。
【0036】
コラムクランプシャフト6の一端には揺動アーム61が固定されている。コラムクランプシャフト6の非円形形状断面部は、アンクランプ時には図9のように楕円長径方向が大きく傾斜し、クランプ時には図10に示すように長径方向がクランプバー213の軸方向にほぼ近い方向を向く。この構成により、図9の状態から揺動アーム61に揺動回転を与えると、コラムクランプシャフト6が回転し、図10の状態になる。このとき、楕円長径部の一方の近傍が反力部材2142が左方向に押されることにより、クランプバー213が左方に引っ張られ、更に反力部材2141が第1ウェッジを左方に押すことになる。一方、第2ウェッジは楕円長径部の他方の近傍によって右方に押される。この結果2つのウェッジが相互に接近するため、それぞれの傾斜面2111、2112が移動コラム部材3の円筒部外周を押圧することになり、移動コラム部材3が固定コラム部材2に対してクランプされる。なお、第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は一体となってわずかながら左右に移動可能なため、一方のウェッジのみが移動コラム部材3を強く押圧するようなアンバランスは生じない。
【0037】
揺動アーム61を反対方向に揺動回転すると、上とは逆の動きによって第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212が離反し、移動コラム部材3のクランプが解除される。
【0038】
* 操作レバー対の操作
次に操作レバー対7の動きとこれに連動する各部材について説明する。操作レバー対7はステアリングコラム装置1の下側に設けられており、図3には、この操作レバー対7(チルト操作レバー7A、テレスコ操作レバー7B)、この揺動の共通の中心となるレバー中心軸72(図6)、テレスコ操作レバー7Bに固定されたプッシャープレート73、及びプッシャーロッド74が部分的に見えている。これを下から見たときの図4、図5には、操作レバー対7の全体、及び、前後方向位置又は傾き調整するためにチルト操作レバー7Aあるいはテレスコ操作レバー7Bが操作されたとき(つまり、それぞれの操作端がステアリングホィール92に向けて引きつけられたとき)の2つの状態がそれぞれ点線で示されている。
【0039】
鍔742を備えているプッシャーロッド74(図11)は、コラムヘッド31上にチルト中心軸43と平行な方向に摺動自在に支持されている。プッシャーロッド74には鍔742を図11において左方向に付勢する付勢バネ741を貫通しており、その端部にはその直角方向に長い小さな長穴743が設けられている。プッシャーロッド74の端部は、この長穴743を介して揺動アーム61(図11)の一端と軸係合している。長穴743はプッシャーロッド74が軸方向に移動したときに揺動アーム61との関係位置がずれる量を吸収するためのものである。
【0040】
付勢バネ741がプッシャーロッド74を左方向(図11)に付勢している。その右側先端で軸係合する揺動アーム61は時計方向の回転付勢力が付与されている。揺動アーム61に与えられた揺動付勢力はコラムクランプシャフト6をクランプ位置(図10、なお、図10と図11では向きが異なるため左右が反転している点に注意)に維持する。このときの揺動アーム61の位置がそれぞれ実線で示されている。
【0041】
* プッシャープレート
チルトヘッド4は、コラムヘッド31上をチルトするため、チルトの量(角度)に応じて、プッシャープレート73に対するプッシャーロッド74の位置関係が変化する。図12には、チルトヘッド4をチルトさせた2つの位置を点線と実線で示す。プッシャーロッド74はコラムヘッドに支持されているためチルトによって位置を変えないが、プッシャープレート73はチルト中心軸43から離れているため、チルトヘッド4をチルトさせるときプッシャーロッド74との相対位置が変化する。このため、図12上で見てどの角度位置でもプッシャーロッド74がプッシャープレート73に当接可能なようにプッシャープレート73にはホッケーのスティックのように曲がった広い当接面形状を持たせている。プッシャーロッド74は付勢バネ741によって図11左方向に付勢されてプッシャープレート73に当接している。クランプに関しては、チルトヘッド4は付勢バネ711の付勢力によってクランプされ、移動コラム部材3は付勢バネ741によってクランプされることになる。
【0042】
* ステアリングホィールの調整操作
以下、ステアリングホィール92の前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときの操作と各部材の動作について説明する。
【0043】
** 傾斜角度の調整
ステアリングホィール92の角度を調整するとき、運転者はステアリングホィール92に手(親指)を掛けたまま、人差し指から小指までを伸ばしてチルト操作レバー7Aを手前に引く(図3)。これによりチルト操作レバー7Aは、図5(図5は下から見た図であるため左右逆転している。)に示すようにレバー中心軸72を中心として揺動する。
【0044】
チルト操作レバー7Aを揺動させることによって、突出部71が図2における右側に移動しギヤアーム44が反時計方向に回動する。ギヤアーム44の回動によって、セグメントギヤ33の歯とギヤアーム44のギヤ部分の歯との噛合が外れ、チルトヘッド4はチルト調整可能になる(図5)。この段階では、移動コラム部材3はクランプ状態であるため、チルティング機構のみの調整を行うことができる。単に乗降のためだけの場合はステアリングホィールを車両前方に押して退避させて容易に降車することができ、更にチルト操作レバー7Aは小さい力で操作できるため、頻繁に行われる乗降は非常に楽に行うことができる。
【0045】
** 前後方向位置(ステアリングコラムの長さ)の調整
ステアリングホィール92の前後方向位置(ステアリングコラムの長さ)を調整するとき、テレスコ操作レバー7Bを揺動させると、プッシャープレート73が図4の点線の位置まで揺動し、付勢バネ741にうち勝ってプッシャーロッド74を図11の右方向、点線の位置にまで押す。
【0046】
プッシャーロッド74の右方向の動きは、図11における揺動アーム61の揺動を、したがって、コラムクランプシャフト6の反時計回り回動を起こす。コラムクランプシャフト6が回動すると、それまで図10に示すように長径部がほぼ水平の状態であったコラムクランプシャフト6は図9に示すように傾斜した状態になる。これによって図8のように接近していた第1ウェッジ211と第2ウェッジ212は、互いに離間するため移動コラム部材のクランプが解除される。この状態でステアリングホィール92の前後方向位置を調整する。
【0047】
こうして、チルトヘッド4はチルト操作レバー7Aを引くことによってチルト可能に、また、コラムヘッド31はテレスコ操作レバー7Bを引くことによって前後方向に移動可能になるので、任意の操作レバーを選んで操作することにより運転者はステアリングホィール92及び操作レバーから手を離すことなくステアリングホィール92の前後方向位置とチルト位置の両方を選択的にあるいは同時に調整することができる。つまり、チルト操作レバー7A及びテレスコ操作レバー7Bは、ステアリングホィールに手を掛けたままその手の同一の指あるいは異なる指により同時に操作可能である。
【0048】
なお、チルトヘッドクランプ41が解除されたとき、チルトヘッド4には、その重量によりあたかも人が首をうなだれるときのような下向きの力が働く。このため、カウンターバランス用の強めのバネ45(図4、図5)が設けられており、このような力を相殺し、あるいは、さらに乗降を容易にするためステアリングホィール92を最も上側の傾斜位置に維持するような力をチルトヘッド4に与えるようにすることができる。
【0049】
調整が終わり、各操作レバーに掛けた指を離すと、付勢バネ711及び付勢バネ741の力によって、チルト操作レバー7A及びテレスコ操作レバー7Bはもとの位置(図3の実線の位置)に戻る。これら操作レバーが元の位置に戻るとき、上と逆の動作により最初にコラムヘッド31(移動コラム部材3)及びチルトヘッド4がクランプされる。付勢バネ711は、上記チルト操作レバー7Aが操作されないとき、このチルト操作レバー7Aをステアリングホィール92から離れた位置に維持するための力も付与している。また、付勢バネ741はコラムクランプ21をクランプ位置に維持するための力を付与している。
【0050】
なお、各操作レバーの先端部分をステアリングホィール92に過度に接近させると手あるいは指との干渉により運転時のハンドル操作の妨げとなる可能性がある。このためステアリングホィールの前後方向位置・角度を調整しないときには、この操作部がステアリングホィールから適宜の距離だけ離れた位置をとるようにする。更に、このような干渉をより確実に防止するため、各操作レバーを折り畳み可能、あるいは、伸縮可能な構造としてもよい。また、以上の例では、チルト操作レバー7Aが上側に、テレスコ操作レバー7Bが下側に配置されているが逆の順にすることも可能である。
【0051】
以上の実施例によれば、ステアリングホィールの近傍に設けられた独立した2つの操作レバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を任意に操作できるとともに、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができる。
【0052】
また、このようなステアリングコラム装置において、上記2つの操作レバーを近接して設けたことにより任意の操作レバーを択一的に操作することができるだけでなく、同時に操作することも可能となっている。更に、乗降毎に頻繁に行われるレバー操作は、一方だけを操作する限りは非常に小さな力でもって操作できる。更に、チルト操作レバー7A、テレスコ操作レバー7Bは共通のレバー中心軸72回りに揺動するので、2つのレバーを同時に操作したときに操作端には相対的な動きが生じないため違和感なく同時操作できる。
【0053】
【発明の効果】
本発明のステアリングコラム装置では、ステアリングホィールの近傍に互いに隣接して設けられた一対の操作レバーによって、テレスコピック機構及びチルティング機構のそれぞれのクランプ/アンクランプ機構が独立して選択的に操作でき、また、場合に応じてその両方を同時に操作することもできるので、これによりテレスコピック機構又はチルティング機構の調整は任意の必要なものだけを行うことができるという効果を奏する。更に、操作レバーを一方ずつ操作する限りは小さい力でもって操作することができるので、婦人、老人など非力な者への負担を軽減することができるという効果を奏する。チルティング機構とテレスコピック機構の調整が単独で行えるため、多様な使用環境に対応することができるという効果を奏する。更に、操作レバー対は共通のレバー中心軸回りに揺動するので、これらを同時に操作したときにも操作端に相対的な動きが生じないようになっているため違和感のない同時操作が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【図2】ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。
【図3】ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。
【図4】テレスコ操作レバー7Bを操作する場合、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。
【図5】チルト操作レバー7Aを操作する場合、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。
【図6】図2におけるA−A断面図である。
【図7】図2におけるB−B断面図である。
【図8】図2におけるC−C断面図である。
【図9】図8における一部拡大図であって、アンクランプ状態のときのコラムクランプシャフト6の回転位置を示している。
【図10】図8における一部拡大図であって、クランプ状態のときのコラムクランプシャフト6の回転位置を示している。
【図11】図2におけるD−D断面図である。
【図12】チルトヘッド4をチルトさせたときの2つの位置を点線と実線で示す説明図である。
【符号の説明】
1 ステアリングコラム装置
2 固定コラム部材
21 コラムクランプ
211 第1ウェッジ
2111、2112 傾斜面
2113、2114 クランプバー穴
212 第2ウェッジ
213 クランプバー
2141、2142 反力部材
215 ウェッジ穴
216 コラムクランプシャフト穴
22 ストッパ部材
221、222 車体取付部
231 円筒状部
232 摺動案内部
3 移動コラム部材
31 コラムヘッド
311 緩衝ストッパ
32 長穴
33 セグメントギヤ
34 ボルト
341 背当部材
4 チルトヘッド
41 チルトヘッドクランプ
43 チルト中心軸
44 ギヤアーム
441 軸
442 ギヤ部分
443 脚
45 バネ
5 ホィールシャフト
6 コラムクランプシャフト
61 揺動アーム
7 操作レバー対
7A チルト操作レバー
7B テレスコ操作レバー
71 突出部
711 付勢バネ
72 レバー中心軸
73 プッシャープレート
74 プッシャーロッド
741 付勢バネ
742 鍔
743 長穴
91 車体
92 ステアリングホィール
931、932 ユニバーサルジョイント
941 上中間軸
942 下中間軸
【発明の属する技術分野】
本発明はステアリングコラム装置、特にテレスコピック機構、及び、チルティング機構を備えた車両のためのステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレスコピック機構及びチルティング機構は、それぞれ運転者の体型及び好みにあわせて最も運転しやすい位置にステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するための機構である。
【0003】
テレスコピック機構及びチルティング機構には、ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときに操作されるクランプ/アンクランプ機構が備えられており、この調整時には、一旦、それぞれのためのクランプ/アンクランプ機構が解除され、その状態で前後方向位置、及び、傾斜角度を調整したのち、再度クランプ状態にされる。
【0004】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整は、ステアリングホィールを手で操作することによって行うため、ステアリングホィールから手を離すことなくクランプ/アンクランプ機構を操作できる方が好ましい。英国特許出願公開2281375号には、ステアリングホィールに手をかけたまま操作できる単一の操作ハンドルを設けたステアリングコラム装置が開示されている。
【0005】
上記英国特許のステアリングコラム装置においては、操作ハンドルの動きはフレキシブルチューブ内を移動可能なケーブルを介して前後方向位置調整用のクランプ装置に伝達される。このケーブルとそのチューブはステアリングホィールの全調整範囲においてケーブルが自由に移動できる程度に曲率を充分小さくするため、大きなたわみが与えられている。このため、一部がステアリングコラム装置の外側に向かって飛び出すようになり見苦しいだけでなく、トラブルの原因ともなる。更に、ケーブルとそのチューブからなる伝動機構は信頼性に乏しいだけでなく、ケーブルが伸び縮みするため操作性が良好とはいえないものである。
【0006】
このような問題に対処するため、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるようにし、ステアリングコラム装置から外側に大きくはみ出す部分が無く、信頼性が高く、操作性が良好なクランプ/アンクランプ機構を備えたステアリングコラム装置が提案(特願2002−273484号)されている。
【0007】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整機能は運転時だけでなく、乗降のためにも使用される。これは、特に肥満あるいは妊婦運転者にとって、ステアリングホィールは腹部にぶつかり乗降の障害となるため、乗降時にこれを退避させることにより乗降を容易にするためである。ステアリングホィールをこのような目的のために退避させる場合には、チルティング(傾斜)機構によってステアリングホィールを車両前方に押しやれば十分である。ところが、上記英国特許あるいは上記日本出願のステアリングコラム装置においては、調整時にチルティング機構だけでなくテレスコピック機構のアンクランプがレバーの操作によって同時平行的に行われる構造となっている。そのため、レバーを操作するために大きい力が必要となるばかりでなく、アンクランプされたテレスコピック機構が動きやすいため動いたときには運転開始前に再度調整することが必要となる。
【0008】
このような問題に対処するため、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーの操作を2段階とし、最初の第1段階目でチルティング機構をアンクランプし、続く第2段階目でテレスコピック機構をアンクランプするようにしたステアリングコラム装置が提案されている(特願2002−319765号)。
【0009】
このステアリングコラム装置においては、チルティング機構をアンクランプした後ではじめてテレスコピック機構をアンクランプすることができる。つまり、テレスコピック機構による調整のみが必要な場合であっても、必ずチルティング機構をアンクランプしなければならない。ところが、肥満者や妊婦がいない環境、例えば、背丈の違いはあるが体型があまり変わらないような家族、の場合には、これとは逆にチルティング機構よりもむしろテレスコピック機構のアンクランプが容易にできる方が好ましい。また、上述の2段階目のレバー操作にはどうしてもを強い力を要するため、婦人、老人など非力な者にとって、少なからず大きい負担となっている。
【0010】
【特許文献1】
英国特許出願公開2281375号明細書
【特許文献2】
米国特許第6237438号明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ステアリングホィールの近傍に互いに隣接して設けられた一対のレバーによって、テレスコピック機構及びチルティング機構のそれぞれのクランプ/アンクランプ機構を独立して操作できるようにするとともに、場合に応じてその両方を同時に操作することもできるようにしたステアリングコラム装置を提供することを課題とする。
【0012】
更に、これによりテレスコピック機構又はチルティング機構の調整は任意の必要なものだけを行えるようにし、任意の一方のみを単独で操作する場合には軽微な力で操作できるようにしたステアリングコラム装置を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、ステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、上記ホィールシャフトの傾斜を調整することによって上記ステアリングホィールの傾斜を調整するためのチルトクランプ機構、上記ホィールシャフトの前後方向位置を調整することによって上記ステアリングホィールの前後方向位置を調整するテレスコクランプ機構、及び、上記各クランプ機構を操作するためのチルト操作レバーとテレスコ操作レバーからなる操作レバー対を備えたステアリングコラム装置において、上記操作レバー対の各レバー中心軸を共通の軸線上においたことを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0014】
第2番目の発明は、車体に取り付けるための車体取付部を備えた固定コラム部材、中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に上記固定コラム部材に支持された移動コラム部材、上記移動コラム部材の一端側に備えられたコラムヘッド、上記コラムヘッドにチルト可能に支持されたチルトヘッド、上記チルトヘッドに回転可能に支持され、一端にステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、上記コラムヘッドに備えられ、上記移動コラム部材の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能なコラムクランプシャフト、上記コラムクランプシャフトに対して移動可能であり、このコラムクランプシャフトの回転によって、上記移動コラム部材を上記固定コラム部材に対してクランプ/アンクランプ状態にするためのコラムクランプ、上記チルトヘッドを上記コラムヘッドに対してクランプ/アンクランプするためのチルトヘッドクランプ、上記チルトヘッドに共通のレバー中心軸を有してその操作端が互いに接近して設けられたチルト操作レバー及びテレスコ操作レバーからなる操作レバー対、上記チルト操作レバーの揺動を上記チルトヘッドクランプに伝動するためのチルトアンクランプ力伝動装置、及び、上記テレスコ操作レバーの揺動を上記コラムクランプシャフトの回転に変換して上記コラムクランプに伝動するためのコラムアンクランプ力伝動装置を備えたステアリングコラム装置である。
【0015】
第3番目の発明は、第2番目の発明のステアリングコラム装置において、上記コラムアンクランプ力伝動装置は、プッシャープレート、プッシャーロッド、及び、揺動アームを備えており、上記プッシャープレートは上記テレスコ操作レバーに設けられて、上記プッシャーロッドの一端に当接可能であり、上記プッシャーロッドは、上記チルトヘッドのチルト中心軸と平行な方向に摺動可能であって、上記コラムヘッドに支持されており、上記揺動アームは、上記プッシャーロッドに一端が係合し他端が上記コラムクランプシャフトに固定されており、上記テレスコ操作レバーの揺動が、上記プッシャープレートの揺動運動、上記プッシャーロッドの軸方向運動、上記揺動アームの揺動運動、及び上記コラムクランプシャフトの回転運動へと順次変換されて、上記コラムクランプがアンクランプ状態にされることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0016】
第4番目の発明は、第2番目又は第3番目の発明のステアリングコラム装置において、上記チルトアンクランプ力伝動装置は、上記チルト操作レバーの揺動を直接上記チルトヘッドクランプに伝動することにより、上記チルトヘッドクランプをアンクランプ状態にするものであることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0017】
第5番目の発明は、第3番目又は第4番目の発明のステアリングコラム装置において、上記チルトヘッドクランプにクランプ力を付与するため、上記チルトヘッドには上記チルト操作レバーを付勢する第1の付勢バネが設けられており、上記コラムクランプにクランプ力を付与するため、上記コラムヘッドには上記プッシャーロッドを付勢する第2の付勢バネが設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0018】
第6番目の発明は、第1番目から第5番目までのいずれかの発明のステアリングコラム装置において、上記チルト操作レバー及びテレスコ操作レバーは、ステアリングホィールに手を掛けたままその手の同一の指あるいは異なる指により同時に操作可能であることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は、本発明実施例にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【0020】
* 全体概要
ステアリングコラム装置1は、固定コラム部材2、移動コラム部材3、コラムヘッド31、チルトヘッド4、ホィールシャフト5、コラムクランプ21、チルトヘッドクランプ41(図2参照)、操作レバー対7、及び、機械的伝動装置を備えている。
【0021】
固定コラム部材2には、車体取付部221、222が備えられており、この車体取付部221、222によって車体91に取り付けられる。上記固定コラム部材2には、移動コラム部材3が中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に支持されている。上記移動コラム部材3の一端側にはコラムヘッド31が備えられており、このコラムヘッド31にはチルトヘッド4がチルト中心軸43を中心としてチルト可能に支持されている。このチルトヘッド4にはホィールシャフト5が回転可能に支持されており、その一端にはステアリングホィール92が固定される。
【0022】
上記コラムヘッド31には、上記移動コラム部材3の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能にコラムクランプシャフト6が設けられている。固定コラム部材2には、コラムクランプ21が備えられており、このコラムクランプ21は、上記コラムクランプシャフト6に対して相対的に移動可能であり、このコラムクランプシャフト6の回転によって、上記移動コラム部材3をクランプ/アンクランプ状態にすることができる。
【0023】
また、上記コラムヘッド31には、チルトヘッドクランプ41が設けられており、上記チルトヘッド4をコラムヘッド31に対してクランプ/アンクランプする。上記チルトヘッド4には、レバー中心軸によって操作レバー対7が支持されている。この操作レバー対7は、チルト操作レバー7Aとテレスコ操作レバー7Bの対からなり、これらをステアリングホィール92に手をかけたまま操作可能となっている。以下に示す例ではチルト操作レバー7Aがテレスコ操作レバー7Bの上側に配置されている。テレスコ操作レバー7Bの揺動は、機械的伝動装置を介して上記コラムクランプシャフト6の回転に変換され、この回転は上記コラムクランプ21に伝動され、移動コラム部材3のクランプ/アンクランプが行われる。また、チルト操作レバー7Aの揺動は上記チルトヘッドクランプ41に直接伝動され、チルトヘッド4のクランプ/アンクランプが行われる。
【0024】
ホィールシャフト5の一端は、ステアリングコラム装置1内でユニバーサルジョイント931(図3)に接続され、更に、スプライン結合された一対の上中間軸941と下中間軸942(図3)、及び下側のユニバーサルジョイント932を介して、前車輪の方向を操作する機構へと接続されている。なお、図1中の点線は調整によってステアリングホィール92が取りうる位置と姿勢の幾例かを示している。
【0025】
* チルトヘッドクランプ
図2は、ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。図3は、ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。図4、図5は、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。ここで、図4における実線は、テレスコ操作レバー7Bが引かれる前の状態を、また、点線はこれが引かれた状態を示している。また、図5における実線は、チルト操作レバー7Aが引かれる前の状態を、また、点線はこれが引かれた状態を示している。図6、図7及び図8は、それぞれ図2におけるA−A、B−B及びC−C断面図である。
【0026】
チルトヘッドクランプ41は次のような構成を備える。移動コラム部材3には、チルト中心軸43にその中心を持つセグメントギヤ33がボルト34によって固定されており、セグメントギヤ33との間に空間を置いて背当部材341が設けられている。一方、上記空間内には、チルトヘッド4に軸441を中心として回動可能に支持されたギヤアーム44のギヤ部分442と、チルト操作レバー7Aに設けられた突出部71が入り込んでいる。
【0027】
上記ギヤアーム44は2本の脚からなるL字形状(図2)をなしており、一方の脚には上記ギヤ部分442が形成されている。上記ギヤアーム44の他方の脚443と上記突出部71の背部との間には付勢バネ711が介在し、突出部71の背部と脚443との間隔を押し広げるようなバイアスを与えている。
【0028】
このバイアスによって、突出部71が左方向(図2)に押され、ギヤ部分442を背後から押すため、ギヤ部分442がセグメントギヤ33に向けて押し付けられ、それぞれの歯が相互に噛合する。なお、ギヤ部分442がセグメントギヤ33を押すとき、突出部71にかかる反力は背当部材341が受ける(図2、図6、図7)。これにより、チルト操作レバー7Aが実線(図3、図5)の位置にあるときチルトヘッド4が固定される。チルトヘッド4は、ギヤ部分442とセグメントギヤ33が噛合可能な角度位置において段階的な位置で固定される。
【0029】
チルト操作レバー7Aの突出部71が図2中で右方向(図2、図3)に動くとき、付勢バネ711の押圧力によってギヤアーム44は図2において反時計回りに回転するため、これらの歯の噛合が外れる。したがって、チルト位置の調整時にチルト操作レバー7Aを引くと、突出部71が右方向に動き、チルトヘッドクランプ41がアンクランプ状態に入る。
【0030】
* ユニバーサルジョイント及び中間軸
図3に示されるように、上中間軸941の端部とホィールシャフト5の端部との間には、上側のユニバーサルジョイント931が構成されている。ユニバーサルジョイント931の中心はチルト中心軸43の軸線上にあるため、チルトヘッド4がチルトしてもその影響を受けないようになっている。
【0031】
下中間軸942は固定コラム部材2に回転自在に支持されており、下中間軸942と上中間軸941がスプライン結合しているため、移動コラム部材3は図3の左右方向に移動可能になっている。スプライン結合によって移動位置に関わらず上中間軸941の回転は下中間軸942に伝達することが可能であり、ステアリングホィール92の前後方向位置を調整しても、ステアリングホィール92の回転を下中間軸942に伝達することができる。
【0032】
* 固定コラム部材と移動コラム部材
図2に示すように、移動コラム部材3の円筒部には、軸方向に沿った長穴32が形成されており、この長穴32内に固定コラム部材2に設けられたストッパ部材22が係合している。移動コラム部材3は、長穴32とストッパ部材22によって、固定コラム部材2からの抜け出しとこれに対する回転が防止されているため、固定コラム部材2内を長穴32の範囲で軸方向に移動可能となっている。
【0033】
固定コラム部材2は円筒状部231を備えており、円筒状部231の内部の2箇所にはリング状の摺動案内部232が設けられている(図3)。移動コラム部材3の円筒部外面はこの摺動案内部232によって移動コラム部材3の軸方向にがたつき無く移動可能になっている。コラムヘッド31の端面に設けられた緩衝ストッパ311は、調整時に移動コラム部材3が固定コラム部材2の端面に衝突したとき、金属同士の衝撃的な衝突を防止するために設けられた、ゴム、合成樹脂等でできた緩衝材である。
【0034】
* コラムクランプ
コラムクランプ21の構成を図8、図9、及び、図10を用いて説明する。図8は、既述のように図2におけるC−C断面図、図9、図10は図8における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。コラムクランプ21は、固定コラム部材2に設けられており、第1ウェッジ211、第2ウェッジ212、クランプバー213、及び、反力部材2141、2142を備えている。固定コラム部材2には横方向からウェッジ穴215があけられており、このウェッジ穴215の一部は固定コラム部材2の空洞に開口している。第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は、それぞれが傾斜面2111、2112を備えており、この傾斜面2111、2112の側を向かい合わせるようにウェッジ穴215内に納められている。2つのウェッジの傾斜面2111、2112は移動コラム部材3の円筒部外周と向き合うことになる。
【0035】
第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212には、それぞれクランプバー穴2113、2114があけられており、この穴にクランプバー213が貫通している。クランプバー213の両端にはクランプバー穴2113、2114よりも外径の大きな反力部材2141、2142が固定されている。クランプバー213には一方の反力部材2142に接するようにコラムクランプシャフト穴216があけられており、この穴にコラムクランプシャフト6の実質的に楕円をなす非円形形状断面部が貫通している。
【0036】
コラムクランプシャフト6の一端には揺動アーム61が固定されている。コラムクランプシャフト6の非円形形状断面部は、アンクランプ時には図9のように楕円長径方向が大きく傾斜し、クランプ時には図10に示すように長径方向がクランプバー213の軸方向にほぼ近い方向を向く。この構成により、図9の状態から揺動アーム61に揺動回転を与えると、コラムクランプシャフト6が回転し、図10の状態になる。このとき、楕円長径部の一方の近傍が反力部材2142が左方向に押されることにより、クランプバー213が左方に引っ張られ、更に反力部材2141が第1ウェッジを左方に押すことになる。一方、第2ウェッジは楕円長径部の他方の近傍によって右方に押される。この結果2つのウェッジが相互に接近するため、それぞれの傾斜面2111、2112が移動コラム部材3の円筒部外周を押圧することになり、移動コラム部材3が固定コラム部材2に対してクランプされる。なお、第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は一体となってわずかながら左右に移動可能なため、一方のウェッジのみが移動コラム部材3を強く押圧するようなアンバランスは生じない。
【0037】
揺動アーム61を反対方向に揺動回転すると、上とは逆の動きによって第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212が離反し、移動コラム部材3のクランプが解除される。
【0038】
* 操作レバー対の操作
次に操作レバー対7の動きとこれに連動する各部材について説明する。操作レバー対7はステアリングコラム装置1の下側に設けられており、図3には、この操作レバー対7(チルト操作レバー7A、テレスコ操作レバー7B)、この揺動の共通の中心となるレバー中心軸72(図6)、テレスコ操作レバー7Bに固定されたプッシャープレート73、及びプッシャーロッド74が部分的に見えている。これを下から見たときの図4、図5には、操作レバー対7の全体、及び、前後方向位置又は傾き調整するためにチルト操作レバー7Aあるいはテレスコ操作レバー7Bが操作されたとき(つまり、それぞれの操作端がステアリングホィール92に向けて引きつけられたとき)の2つの状態がそれぞれ点線で示されている。
【0039】
鍔742を備えているプッシャーロッド74(図11)は、コラムヘッド31上にチルト中心軸43と平行な方向に摺動自在に支持されている。プッシャーロッド74には鍔742を図11において左方向に付勢する付勢バネ741を貫通しており、その端部にはその直角方向に長い小さな長穴743が設けられている。プッシャーロッド74の端部は、この長穴743を介して揺動アーム61(図11)の一端と軸係合している。長穴743はプッシャーロッド74が軸方向に移動したときに揺動アーム61との関係位置がずれる量を吸収するためのものである。
【0040】
付勢バネ741がプッシャーロッド74を左方向(図11)に付勢している。その右側先端で軸係合する揺動アーム61は時計方向の回転付勢力が付与されている。揺動アーム61に与えられた揺動付勢力はコラムクランプシャフト6をクランプ位置(図10、なお、図10と図11では向きが異なるため左右が反転している点に注意)に維持する。このときの揺動アーム61の位置がそれぞれ実線で示されている。
【0041】
* プッシャープレート
チルトヘッド4は、コラムヘッド31上をチルトするため、チルトの量(角度)に応じて、プッシャープレート73に対するプッシャーロッド74の位置関係が変化する。図12には、チルトヘッド4をチルトさせた2つの位置を点線と実線で示す。プッシャーロッド74はコラムヘッドに支持されているためチルトによって位置を変えないが、プッシャープレート73はチルト中心軸43から離れているため、チルトヘッド4をチルトさせるときプッシャーロッド74との相対位置が変化する。このため、図12上で見てどの角度位置でもプッシャーロッド74がプッシャープレート73に当接可能なようにプッシャープレート73にはホッケーのスティックのように曲がった広い当接面形状を持たせている。プッシャーロッド74は付勢バネ741によって図11左方向に付勢されてプッシャープレート73に当接している。クランプに関しては、チルトヘッド4は付勢バネ711の付勢力によってクランプされ、移動コラム部材3は付勢バネ741によってクランプされることになる。
【0042】
* ステアリングホィールの調整操作
以下、ステアリングホィール92の前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときの操作と各部材の動作について説明する。
【0043】
** 傾斜角度の調整
ステアリングホィール92の角度を調整するとき、運転者はステアリングホィール92に手(親指)を掛けたまま、人差し指から小指までを伸ばしてチルト操作レバー7Aを手前に引く(図3)。これによりチルト操作レバー7Aは、図5(図5は下から見た図であるため左右逆転している。)に示すようにレバー中心軸72を中心として揺動する。
【0044】
チルト操作レバー7Aを揺動させることによって、突出部71が図2における右側に移動しギヤアーム44が反時計方向に回動する。ギヤアーム44の回動によって、セグメントギヤ33の歯とギヤアーム44のギヤ部分の歯との噛合が外れ、チルトヘッド4はチルト調整可能になる(図5)。この段階では、移動コラム部材3はクランプ状態であるため、チルティング機構のみの調整を行うことができる。単に乗降のためだけの場合はステアリングホィールを車両前方に押して退避させて容易に降車することができ、更にチルト操作レバー7Aは小さい力で操作できるため、頻繁に行われる乗降は非常に楽に行うことができる。
【0045】
** 前後方向位置(ステアリングコラムの長さ)の調整
ステアリングホィール92の前後方向位置(ステアリングコラムの長さ)を調整するとき、テレスコ操作レバー7Bを揺動させると、プッシャープレート73が図4の点線の位置まで揺動し、付勢バネ741にうち勝ってプッシャーロッド74を図11の右方向、点線の位置にまで押す。
【0046】
プッシャーロッド74の右方向の動きは、図11における揺動アーム61の揺動を、したがって、コラムクランプシャフト6の反時計回り回動を起こす。コラムクランプシャフト6が回動すると、それまで図10に示すように長径部がほぼ水平の状態であったコラムクランプシャフト6は図9に示すように傾斜した状態になる。これによって図8のように接近していた第1ウェッジ211と第2ウェッジ212は、互いに離間するため移動コラム部材のクランプが解除される。この状態でステアリングホィール92の前後方向位置を調整する。
【0047】
こうして、チルトヘッド4はチルト操作レバー7Aを引くことによってチルト可能に、また、コラムヘッド31はテレスコ操作レバー7Bを引くことによって前後方向に移動可能になるので、任意の操作レバーを選んで操作することにより運転者はステアリングホィール92及び操作レバーから手を離すことなくステアリングホィール92の前後方向位置とチルト位置の両方を選択的にあるいは同時に調整することができる。つまり、チルト操作レバー7A及びテレスコ操作レバー7Bは、ステアリングホィールに手を掛けたままその手の同一の指あるいは異なる指により同時に操作可能である。
【0048】
なお、チルトヘッドクランプ41が解除されたとき、チルトヘッド4には、その重量によりあたかも人が首をうなだれるときのような下向きの力が働く。このため、カウンターバランス用の強めのバネ45(図4、図5)が設けられており、このような力を相殺し、あるいは、さらに乗降を容易にするためステアリングホィール92を最も上側の傾斜位置に維持するような力をチルトヘッド4に与えるようにすることができる。
【0049】
調整が終わり、各操作レバーに掛けた指を離すと、付勢バネ711及び付勢バネ741の力によって、チルト操作レバー7A及びテレスコ操作レバー7Bはもとの位置(図3の実線の位置)に戻る。これら操作レバーが元の位置に戻るとき、上と逆の動作により最初にコラムヘッド31(移動コラム部材3)及びチルトヘッド4がクランプされる。付勢バネ711は、上記チルト操作レバー7Aが操作されないとき、このチルト操作レバー7Aをステアリングホィール92から離れた位置に維持するための力も付与している。また、付勢バネ741はコラムクランプ21をクランプ位置に維持するための力を付与している。
【0050】
なお、各操作レバーの先端部分をステアリングホィール92に過度に接近させると手あるいは指との干渉により運転時のハンドル操作の妨げとなる可能性がある。このためステアリングホィールの前後方向位置・角度を調整しないときには、この操作部がステアリングホィールから適宜の距離だけ離れた位置をとるようにする。更に、このような干渉をより確実に防止するため、各操作レバーを折り畳み可能、あるいは、伸縮可能な構造としてもよい。また、以上の例では、チルト操作レバー7Aが上側に、テレスコ操作レバー7Bが下側に配置されているが逆の順にすることも可能である。
【0051】
以上の実施例によれば、ステアリングホィールの近傍に設けられた独立した2つの操作レバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を任意に操作できるとともに、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができる。
【0052】
また、このようなステアリングコラム装置において、上記2つの操作レバーを近接して設けたことにより任意の操作レバーを択一的に操作することができるだけでなく、同時に操作することも可能となっている。更に、乗降毎に頻繁に行われるレバー操作は、一方だけを操作する限りは非常に小さな力でもって操作できる。更に、チルト操作レバー7A、テレスコ操作レバー7Bは共通のレバー中心軸72回りに揺動するので、2つのレバーを同時に操作したときに操作端には相対的な動きが生じないため違和感なく同時操作できる。
【0053】
【発明の効果】
本発明のステアリングコラム装置では、ステアリングホィールの近傍に互いに隣接して設けられた一対の操作レバーによって、テレスコピック機構及びチルティング機構のそれぞれのクランプ/アンクランプ機構が独立して選択的に操作でき、また、場合に応じてその両方を同時に操作することもできるので、これによりテレスコピック機構又はチルティング機構の調整は任意の必要なものだけを行うことができるという効果を奏する。更に、操作レバーを一方ずつ操作する限りは小さい力でもって操作することができるので、婦人、老人など非力な者への負担を軽減することができるという効果を奏する。チルティング機構とテレスコピック機構の調整が単独で行えるため、多様な使用環境に対応することができるという効果を奏する。更に、操作レバー対は共通のレバー中心軸回りに揺動するので、これらを同時に操作したときにも操作端に相対的な動きが生じないようになっているため違和感のない同時操作が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【図2】ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。
【図3】ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。
【図4】テレスコ操作レバー7Bを操作する場合、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。
【図5】チルト操作レバー7Aを操作する場合、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。
【図6】図2におけるA−A断面図である。
【図7】図2におけるB−B断面図である。
【図8】図2におけるC−C断面図である。
【図9】図8における一部拡大図であって、アンクランプ状態のときのコラムクランプシャフト6の回転位置を示している。
【図10】図8における一部拡大図であって、クランプ状態のときのコラムクランプシャフト6の回転位置を示している。
【図11】図2におけるD−D断面図である。
【図12】チルトヘッド4をチルトさせたときの2つの位置を点線と実線で示す説明図である。
【符号の説明】
1 ステアリングコラム装置
2 固定コラム部材
21 コラムクランプ
211 第1ウェッジ
2111、2112 傾斜面
2113、2114 クランプバー穴
212 第2ウェッジ
213 クランプバー
2141、2142 反力部材
215 ウェッジ穴
216 コラムクランプシャフト穴
22 ストッパ部材
221、222 車体取付部
231 円筒状部
232 摺動案内部
3 移動コラム部材
31 コラムヘッド
311 緩衝ストッパ
32 長穴
33 セグメントギヤ
34 ボルト
341 背当部材
4 チルトヘッド
41 チルトヘッドクランプ
43 チルト中心軸
44 ギヤアーム
441 軸
442 ギヤ部分
443 脚
45 バネ
5 ホィールシャフト
6 コラムクランプシャフト
61 揺動アーム
7 操作レバー対
7A チルト操作レバー
7B テレスコ操作レバー
71 突出部
711 付勢バネ
72 レバー中心軸
73 プッシャープレート
74 プッシャーロッド
741 付勢バネ
742 鍔
743 長穴
91 車体
92 ステアリングホィール
931、932 ユニバーサルジョイント
941 上中間軸
942 下中間軸
Claims (6)
- ステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、
上記ホィールシャフトの傾斜を調整することによって上記ステアリングホィールの傾斜を調整するためのチルトクランプ機構、
上記ホィールシャフトの前後方向位置を調整することによって上記ステアリングホィールの前後方向位置を調整するテレスコクランプ機構、及び、
上記各クランプ機構を操作するためのチルト操作レバーとテレスコ操作レバーからなる操作レバー対
を備えたステアリングコラム装置において、
上記操作レバー対の各レバー中心軸を共通の軸線上においたこと
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 車体に取り付けるための車体取付部を備えた固定コラム部材、
中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に上記固定コラム部材に支持された移動コラム部材、
上記移動コラム部材の一端側に備えられたコラムヘッド、
上記コラムヘッドにチルト可能に支持されたチルトヘッド、
上記チルトヘッドに回転可能に支持され、一端にステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、
上記コラムヘッドに備えられ、上記移動コラム部材の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能なコラムクランプシャフト、
上記コラムクランプシャフトに対して移動可能であり、このコラムクランプシャフトの回転によって、上記移動コラム部材を上記固定コラム部材に対してクランプ/アンクランプ状態にするためのコラムクランプ、
上記チルトヘッドを上記コラムヘッドに対してクランプ/アンクランプするためのチルトヘッドクランプ、
上記チルトヘッドに共通のレバー中心軸を有してその操作端が互いに接近して設けられたチルト操作レバー及びテレスコ操作レバーからなる操作レバー対、
上記チルト操作レバーの揺動を上記チルトヘッドクランプに伝動するためのチルトアンクランプ力伝動装置、及び、
上記テレスコ操作レバーの揺動を上記コラムクランプシャフトの回転に変換して上記コラムクランプに伝動するためのコラムアンクランプ力伝動装置
を備えたステアリングコラム装置。 - 請求項2に記載されたステアリングコラム装置において、
上記コラムアンクランプ力伝動装置は、
プッシャープレート、プッシャーロッド、及び、揺動アームを備えており、
上記プッシャープレートは上記テレスコ操作レバーに設けられて、上記プッシャーロッドの一端に当接可能であり、
上記プッシャーロッドは、上記チルトヘッドのチルト中心軸と平行な方向に摺動可能であって、上記コラムヘッドに支持されており、
上記揺動アームは、上記プッシャーロッドに一端が係合し他端が上記コラムクランプシャフトに固定されており、
上記テレスコ操作レバーの揺動が、上記プッシャープレートの揺動運動、上記プッシャーロッドの軸方向運動、上記揺動アームの揺動運動、及び上記コラムクランプシャフトの回転運動へと順次変換されて、上記コラムクランプがアンクランプ状態にされること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項2又は請求項3のいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記チルトアンクランプ力伝動装置は、上記チルト操作レバーの揺動を直接上記チルトヘッドクランプに伝動することにより、上記チルトヘッドクランプをアンクランプ状態にするものであること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項3又は請求項4のいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記チルトヘッドクランプにクランプ力を付与するため、上記チルトヘッドには上記チルト操作レバーを付勢する第1の付勢バネが設けられており、
上記コラムクランプにクランプ力を付与するため、上記コラムヘッドには上記プッシャーロッドを付勢する第2の付勢バネが設けられていること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項1から請求項5までのいずれかに記載されたステアリングコラム装置において、
上記チルト操作レバー及びテレスコ操作レバーは、ステアリングホィールに手を掛けたままその手の同一の指あるいは異なる指により同時に操作可能なように互いに接近していること
を特徴とするステアリングコラム装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002325930A JP2004161028A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | ステアリングコラム装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002325930A JP2004161028A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | ステアリングコラム装置 |
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JP2004161028A true JP2004161028A (ja) | 2004-06-10 |
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JP2002325930A Pending JP2004161028A (ja) | 2002-11-08 | 2002-11-08 | ステアリングコラム装置 |
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JP (1) | JP2004161028A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100992695B1 (ko) | 2007-11-13 | 2010-11-05 | 기아자동차주식회사 | 틸팅 및 텔레스코픽 스티어링컬럼의 록킹장치 구조 |
-
2002
- 2002-11-08 JP JP2002325930A patent/JP2004161028A/ja active Pending
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