JP2004196038A - ステアリングコラム装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるステアリングコラム装置において、どのクランプ/アンクランプ機構をアンクランプするかを自由に選択できるようにするとともに、操作の力が少なくて済むようにすることを課題とする。
【解決手段】チルト調整のため、操作レバー7を車体前方に押すとこれに設けられたロックプレート作動ピン707がチルトロックプレート8の円弧穴81の端部に当接して押す。チルトロックプレート8の突出部71が右に揺動するので、チルトヘッドのクランプのみが解除される。操作レバー7を手前に引くと、操作レバー7に設けられたプラープレート83がプラー鍔745を引っ張り、コラムクランプシャフト6を揺動させるので、移動コラム部材3のクランプのためのコラムクランプ21のみが解除される。
【選択図】 図4
【解決手段】チルト調整のため、操作レバー7を車体前方に押すとこれに設けられたロックプレート作動ピン707がチルトロックプレート8の円弧穴81の端部に当接して押す。チルトロックプレート8の突出部71が右に揺動するので、チルトヘッドのクランプのみが解除される。操作レバー7を手前に引くと、操作レバー7に設けられたプラープレート83がプラー鍔745を引っ張り、コラムクランプシャフト6を揺動させるので、移動コラム部材3のクランプのためのコラムクランプ21のみが解除される。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はステアリングコラム装置、特にテレスコピック機構、及び、チルティング機構を備えた車両のためのステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレスコピック機構及びチルティング機構は、それぞれ運転者の体型及び好みにあわせて最も運転しやすい位置にステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するための機構である。
【0003】
テレスコピック機構及びチルティング機構には、ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときに操作されるクランプ/アンクランプ機構が備えられており、この調整時には、一旦、それぞれのためのクランプ/アンクランプ機構が解除され、その状態で前後方向位置、及び、傾斜角度を調整したのち、再度クランプ状態にされる。
【0004】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整は、ステアリングホィールを手で操作することによって行うため、ステアリングホィールから手を離すことなくクランプ/アンクランプ機構を操作できる方が好ましい。英国特許出願公開第2281375号明細書には、ステアリングホィールに手をかけたまま操作できる単一の操作ハンドルを設けたステアリングコラム装置が開示されている。
【0005】
上記英国特許出願公開のステアリングコラム装置においては、操作ハンドルの動きはフレキシブルチューブ内を移動可能なケーブルを介して高さ調整用のクランプ装置に伝達される。このケーブルとそのチューブはステアリングホィールの全調整範囲においてケーブルが自由に移動できる充分小さな曲率を与えるため、大きなたわみが与えられている。このため、一部がステアリングコラム装置の外側に向かって飛び出すようになり見苦しいだけでなく、トラブルの原因ともなる。更に、ケーブルとそのチューブからなる伝動機構は信頼性に乏しいだけでなく、ケーブルが伸び縮みするため操作性が良好とは言えないものである。
【0006】
このような問題に対処するため、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるようにし、ステアリングコラム装置からはみ出す部分が無く、信頼性が高く、操作性が良好なクランプ/アンクランプ機構を備えたステアリングコラム装置が提案(特願2002−273484号)されている。
【0007】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整機能は運転時だけでなく、乗降のためにも使用される。ステアリングをこのような目的のために退避させる場合には、チルティング(傾斜)機構によってステアリングホィールを車両上方に押しやれば十分である。
【0008】
ところが、上記英国特許あるいは上記日本出願のステアリングコラム装置においては、チルティング機構だけでなくテレスコピック機構のアンクランプがレバーの操作によって平行、同時に行われる構造となっている。そのため、レバーを操作するために大きい力や複雑な多くの操作が必要となるばかりでなく、アンクランプされたテレスコピック機構が動きやすいため意に反して動いたときには運転開始前に再度調整することが必要となる。
【0009】
【特許文献1】
英国特許出願公開第2281375号明細書
【特許文献2】
米国特許第6237438号明細書
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるようにしたステアリングコラム装置において、レバーを操作する方向によって一方のクランプ/アンクランプ機構のみのアンクランプが行われ、かつ、どのクランプ/アンクランプ機構をアンクランプするかを自由に選択できるようにするとともに、どちらの場合でも、操作のための力が少なくて済むようにすることを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明の解決手段は、取り付けられるステアリングホィールの回転を車体側操舵機構に伝達することができるホィールシャフト、上記ステアリングホィールの車体前後方向位置を調整するためのテレスコピック機構、上記ステアリングホィールの傾斜角度を調整するためのチルティング機構、上記テレスコピック機構及び上記チルティング機構をそれぞれクランプ/アンクランプするためのクランプ/アンクランプ機構、及び、上記ステアリングホィールの近傍に操作端が位置し、上記各クランプ/アンクランプ機構のクランプ/アンクランプを操作することが可能な単一の操作レバーを備えたステアリングコラム装置において、上記操作レバーはその中立位置において、上記2つのクランプ/アンクランプ機構がクランプ状態に維持され、この操作レバーが上記中立位置から一つの方向に操作されたとき、上記クランプ/アンクランプ機構の内の一方のみがアンクランプされ、反対の方向に操作されたときには、上記クランプ/アンクランプ機構の内の他方のみがアンクランプされることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0012】
第2番目の発明の解決手段は、第1番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作レバーの操作方向が、上記ステアリングホィールに向けてこの操作レバーの操作端が接近あるいは離隔する方向であることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0013】
第3番目の発明の解決手段は、第2番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作レバーは、その操作端が上記ステアリングホィールに向けて接近する方向に操作されたとき、上記テレスコピック機構のためのクランプ/アンクランプ機構のみがアンクランプされ、上記ステアリングホィールに向けて離隔する方向に操作されたとき、上記チルティング機構のためのクランプ/アンクランプ機構のみがアンクランプにされるものであることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0014】
第4番目の発明の解決手段は、車体に取り付けるための車体取付部を備えた固定コラム部材、中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に上記固定コラム部材に支持された移動コラム部材、上記移動コラム部材の一端側に備えられたコラムヘッド、上記コラムヘッドにチルト可能に支持されたチルトヘッド、上記チルトヘッドに回転可能に支持され、一端にステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、上記コラムヘッドに備えられ、上記移動コラム部材の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能なコラムクランプシャフト、上記コラムクランプシャフトに対して移動可能であり、このコラムクランプシャフトの回転によって、上記移動コラム部材を上記固定コラム部材に対してクランプ/アンクランプ状態にするためのコラムクランプ、上記チルトヘッドに揺動可能に設けられたチルトロックプレート、上記チルトロックプレートが備える突出部が出入り自在であって、突出部の出入りによって上記チルトヘッドを上記コラムヘッドに対してクランプ/アンクランプするためのチルトヘッドクランプ、上記チルトヘッドに揺動支軸を有し、その揺動に関して中立位置をとることが可能であるとともに、これを挟んで2つの互いに反対の方向に揺動操作することが可能である操作レバー、上記操作レバーの揺動を上記コラムクランプ及び上記チルトヘッドクランプに伝動するための機械的伝動装置であって、上記操作レバーの一方の方向の揺動を、上記コラムクランプにのみ伝動し、上記操作レバーの他方の方向の揺動を、上記チルトヘッドクランプにのみ伝動する機械伝動装置を備えることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0015】
第5番目の発明の解決手段は、第4番目の発明のステアリングコラム装置において、上記機械的伝動装置は、プラープレート、プラーロッド、揺動アーム、を備えており、上記プラープレートは、上記操作レバーに設けられているとともに、上記プラーロッドが備えるプラー鍔に係合するための係合穴を備えており、上記プラーロッドは、上記チルトヘッドのチルト中心軸と平行な方向に摺動可能であって、上記コラムヘッドに支持されており、上記揺動アームは、上記プラーロッドに一端が係合し他端が上記コラムクランプシャフトに固定されており、上記チルトロックプレートと上記操作レバーとには係合長穴とこれに係合する係合ピンとが互いに対として設けられており、上記操作レバーを操作するとき、この操作レバーの一方の方向の揺動だけが、上記プラープレートの揺動運動、上記プラー鍔と係合穴との係合による上記プラーロッドの軸方向運動、上記揺動アームの揺動運動、及び、上記コラムクランプシャフトの回転運動へと順次変換されることによって上記コラムクランプのみがアンクランプされ、上記操作レバーの他方の方向の揺動だけが、上記チルトロックプレートの揺動へと変換されることによって上記チルトクランプのみがアンクランプされることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0016】
第6番目の発明の解決手段は、第5番目の発明のステアリングコラム装置において、上記プラーロッドには、上記コラムクランプをクランプ方向に向けて付勢するための付勢バネが、また、上記チルトロックプレートには、上記チルトヘッドクランプをクランプ方向に向けて付勢するための付勢バネが、それぞれ設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
* 全体概要
図1は、本発明の実施形態にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。ステアリングコラム装置1は、固定コラム部材2、移動コラム部材3、コラムヘッド31、チルトヘッド4、ホィールシャフト5、コラムクランプ21、チルトヘッドクランプ41(図2参照)、操作レバー7、及び、機械的伝動装置を備えている。
【0018】
固定コラム部材2には、車体取付部221、222が備えられており、この車体取付部221、222によって車体91に取り付けられる。上記固定コラム部材2には、移動コラム部材3が中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に支持されている。上記移動コラム部材3の一端側にはコラムヘッド31が備えられており、このコラムヘッド31にはチルトヘッド4がチルト中心軸43を中心としてチルト可能に支持されている。このチルトヘッド4にはホィールシャフト5が回転可能に支持されており、その一端にはステアリングホィール92が固定される。
【0019】
上記コラムヘッド31には、上記移動コラム部材3の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能にコラムクランプシャフト6が設けられている。固定コラム部材2には、コラムクランプ21が備えられており、このコラムクランプ21に対して、上記コラムクランプシャフト6が移動可能であり、このコラムクランプシャフト6の回転によって、上記移動コラム部材3をクランプ/アンクランプ状態にすることができる。
【0020】
また、上記コラムヘッド31には、チルトヘッドクランプ41が設けられており、上記チルトヘッド4をコラムヘッド31に対してクランプ/アンクランプする。上記チルトヘッド4には、揺動支軸によって操作レバー7が支持されており、この操作レバー7は、両手操作が必要なテレスコ操作を行うときには、ステアリングホィール92に手をかけたまま操作可能となっている。操作レバー7の車体前方向への揺動(図1、図3、図5の矢印f)は、この方向の揺動に限って、機械的伝動装置を介して上記コラムクランプシャフト6の回転に変換され、この回転は上記コラムクランプ21に伝動され、移動コラム部材3のアンクランプが行われる。更に、この操作レバー7の車体後方向への揺動(図1、図3、図4の矢印b)は、この方向の揺動に限って、上記チルトヘッドクランプ41に伝動され、チルトヘッド4のアンクランプが行われる。また、手を離すと自然に操作レバー7は中立位置に戻る。
【0021】
ホィールシャフト5の一端は、ステアリングコラム装置1内でユニバーサルジョイント931に接続され、更に、スプライン結合された一対の上中間軸941と下中間軸942(図3)、及び、下側のユニバーサルジョイント932を介して、前車輪の方向を操作する機構へと接続されている。なお、図1中の点線は調整によってステアリングホィール92が取りうる位置と姿勢の幾例かを示している。
【0022】
* チルトヘッドクランプ
図2は、ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。図3は、ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。図4、図5は、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。図6、図7及び図8は、それぞれ図2におけるA−A、B−B及びC−C断面図である。
【0023】
チルトヘッドクランプ41は次のような構成を備える。移動コラム部材3には、チルト中心軸43にその中心を持つセグメントギヤ33(図2)がボルト34によって固定されており、セグメントギヤ33との間に空間を置いて背当部材341が設けられている。一方、上記空間内には、チルトヘッド4に軸441を中心として回動可能に支持されたギヤアーム44のギヤ部分442と、チルトロックプレート8に設けられた突出部71が入り込んでいる。チルトロックプレート8は操作レバー7と共通のレバー中心軸72に揺動可能に軸支されている。
【0024】
上記ギヤアーム44は2本の脚からなるL字形状をなしており、一方の脚には上記ギヤ部分442が形成されている。上記ギヤアーム44の他方の脚443と上記突出部71の背部との間には付勢バネ711が介在し、突出部71の背部と脚443との間隔を押し広げるようなバイアスを与えている。
【0025】
このバイアスによって、突出部71が左方向に押され、ギヤ部分442を背後から押すため、ギヤ部分442がセグメントギヤ33に向けて押し付けられ、それぞれの歯が相互に噛合する。なお、ギヤ部分442をセグメントギヤ33を押すとき、突出部71にかかる反力は背当部材341が受ける(図2、図7)。これにより、チルトヘッド4が固定される。チルトヘッド4は、ギヤ部分442とセグメントギヤ33が噛合可能な角度位置において段階的な位置で固定される。
【0026】
チルトロックプレート8の突出部71が図2中で右方向に動くとき、付勢バネ711の押圧力によってギヤアーム44は図2において反時計回りに回転するため、これらの歯の噛合が外れる。チルト位置の調整時には、操作レバー7をステアリングホィールから離隔する方向(車体前方向、図1、図3、図5の矢印f)に揺動操作することによって、次に示すように突出部71が右方向に動くようになっている。
【0027】
レバー中心軸72回りに揺動可能に軸支されているチルトロックプレート8は、レバー中心軸72を中心とする円弧穴81を有している(図4、図5)。操作レバー7が中立位置にあるとき、操作レバー7に設けられたロックプレート作動ピン707が円弧穴81の一方の端部に極めて接近した位置にあるかあるいは軽く接触している(図4、図5における実線の位置)。操作レバー7が矢印b方向図4点線のように揺動したとき、上記円弧穴81の反対側にある遊びによってチルトロックプレート8は不動であるが、操作レバー7が矢印f方向、図5点線のように揺動したときには、ロックプレート作動ピン707が上記端部に当接しこれを押すことによってチルトロックプレート8が揺動する。このようにチルトロックプレート8は操作レバー7の一方の方向の揺動に一体的に追従するのに対し、これと反対の方向の方向の揺動には追従しない構成となっている。
【0028】
* ユニバーサルジョイント及び中間軸
図3に示されるように、上中間軸941の端部とホィールシャフト5の端部との間には、上側のユニバーサルジョイント931が構成されている。ユニバーサルジョイント931の中心はチルト中心軸43の軸線上にあるため、チルトヘッド4がチルトしてもその影響を受けないようになっている。
【0029】
下中間軸942は固定コラム部材2に回転自在に支持されており、下中間軸942と上中間軸941がスプライン結合しているため、移動コラム部材3は図3の左右方向に移動可能になっている。スプライン結合によって移動位置に関わらず上中間軸941の回転は下中間軸942に伝達することが可能であり、ステアリングホィール92の前後方向を調整しても、ステアリングホィール92の回転を下中間軸942に伝達することができる。
【0030】
* 固定コラム部材と移動コラム部材
図2に示すように、移動コラム部材3の円筒部には、軸方向に沿った長穴32が形成されており、この長穴32内に固定コラム部材2に設けられたストッパ部材22が係合している。移動コラム部材3は、長穴32とストッパ部材22によって、固定コラム部材2からの抜け出しとこれに対する回転が防止されているため、固定コラム部材2内を長穴32の範囲で軸方向に移動可能となっている。
【0031】
固定コラム部材2は円筒状部231を備えており、円筒状部231の内部の2箇所にはリング状の摺動案内部232が設けられている(図3)。移動コラム部材3の円筒部外面はこの摺動案内部232によって移動コラム部材3の軸方向にがたつき無く移動可能になっている。コラムヘッド31の端面に設けられた緩衝ストッパ311は、調整時に移動コラム部材3が固定コラム部材2の端面に衝突したとき、金属同士の衝撃的な衝突を防止するために設けられた、ゴム、合成樹脂等でできた緩衝材である。
【0032】
* コラムクランプ
コラムクランプ21の構成を図8、図9、図10、及び、図11を用いて説明する。図8は、既述のように図2におけるC−C断面図、図9、図10は図8における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。コラムクランプ21は、固定コラム部材2に設けられており、第1ウェッジ211、第2ウェッジ212、クランプバー213、及び、反力部材2141、2142を備えている。固定コラム部材2には横方向からウェッジ穴215があけられており、このウェッジ穴215の一部は固定コラム部材2の空洞に開口している。第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は、それぞれが傾斜面2111、2112を備えており、この傾斜面2111、2112の側を向かい合わせるようにウェッジ穴215内に納められている。2つのウェッジの傾斜面2111、2112は移動コラム部材3の円筒部外周と向き合うことになる。
【0033】
第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212には、それぞれクランプバー穴2113、2114があけられており、この穴にクランプバー213が貫通している。クランプバー213の両端にはクランプバー穴2113、2114よりも外径の大きな反力部材2141、2142が固定されている。クランプバー213には一方の反力部材2142に接するようにコラムクランプシャフト穴216があけられており、この穴にコラムクランプシャフト6の実質的に楕円をなす非円形形状断面部が貫通している。
【0034】
コラムクランプシャフト6の一端には揺動アーム61が固定されている。コラムクランプシャフト6の非円形形状断面部は、アンクランプ時には図9のように楕円長径方向が傾斜し、クランプ時には図10に示すように長径方向がクランプバー213の軸方向を向く。この構成により、図9の状態から揺動アーム61に揺動回転を与えると、コラムクランプシャフト6が回転し、図10の状態になる。このとき、楕円長径部の一方が反力部材2142が左方向に押されることにより、クランプバー213が左方に引っ張られ、更に反力部材2141が第1ウェッジを左方に押すことになる。一方、第2ウェッジは楕円長径部の他方によって右方に押される。この結果2つのウェッジが相互に接近するため、それぞれの傾斜面2111、2112が移動コラム部材3の円筒部外周を押圧することになり、移動コラム部材3が固定コラム部材2に対してクランプされる。なお、第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は一体となってわずかながら左右に移動可能なため、一方のウェッジのみが移動コラム部材3を強く押圧するようなアンバランスは生じない。
【0035】
揺動アーム61を反対方向に揺動回転すると、上とは逆の動きによって第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212が離反し、移動コラム部材3のクランプが解除される。
【0036】
* 操作レバーと連動運動
次に操作レバー7の動きによって連動する各部材について説明する。操作レバー7はステアリングコラム装置1の下側にあり、図3には、この操作レバー7、この揺動の中心となるレバー中心軸72、操作レバー7に固定されたプラープレート83、及びプラーロッド84が部分的に見えている。これを下から見たときの図4、図5には、操作レバー7の全体、及び、前後方向位置及び傾き調整するために操作レバー7が操作されたときの状態が点線で示されている(実線は非操作時中立位置)。
【0037】
中央にバネ鍔742(図11)を備えているプラーロッド84は、コラムヘッド31上にチルト中心軸43と平行な方向に摺動自在に支持されている。プラーロッド84にはバネ鍔742を図11において左方向に付勢する付勢バネ741が貫通しており、その端部にはその直角方向に長い小さな長穴743が設けられている。プラーロッド84の端部は、この長穴743を介して揺動アーム61の一端と軸係合している。長穴743はプラーロッド84が軸方向に移動したときに揺動アーム61との関係位置がずれる量を吸収するためのものである。付勢バネ741がプラーロッド84を左方向(図11)に付勢しているため、揺動アーム61には揺動付勢力が付与されコラムクランプシャフト6がクランプ位置に維持される。
【0038】
プラープレート83には円弧状のチルト円弧穴831(図2)が形成されており、このチルト円弧穴831にはプラーロッド84が貫通している。プラーロッド84は端部にもう一つの鍔、すなわちプラー鍔745が設けられている。この構造によって、操作レバー7をステアリングホィール92に向けて引き、これを揺動させたとき、プラー鍔745にプラープレート83が係合し、プラーロッド84が付勢バネ741に抗して図4点線のように引っ張られる。これにより揺動アーム61が揺動し、コラムクランプシャフト6が回転し、コラムクランプ21がアンクランプされる。操作レバー7が操作されない中立位置では、付勢バネ741によって揺動アーム61に与えられた揺動付勢力はコラムクランプシャフト6をクランプ位置に維持する。
【0039】
* プラープレート
チルトヘッド4は、コラムヘッド31上をチルトするため、チルトの量(角度)に応じて、プラープレート83に対するプラーロッド84の位置関係が変化する。図12には、チルトヘッド4をチルトさせた2つの位置を点線と実線で示す。プラーロッド84はコラムヘッドに支持されているためチルトによって位置を変えないが、プラープレート83はチルト中心軸43から離れているため、チルトヘッド4をチルトさせるときプラーロッド84との相対位置が変化する。このため、チルトヘッド4がどの角度位置に在るときでも、干渉を避けてプラーロッド84をプラープレート83が引っ張ることができるようにチルト円弧穴831は円弧状をなしている。また、このため、プラープレート83にはホッケーのスティックのように曲がった広い面形状を持たせている。
【0040】
* ステアリングホィールの調整操作
以下、ステアリングホィール92の前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときの操作と各部材の動作について説明する。最初に、ステアリングホィール92の傾斜角度(チルティング)を調整するときについて説明する。運転者は操作レバー7を車体前方に向けて押す(矢印f、図1、図3、図5)。これにより操作レバー7は、図5点線(図4、図5は下から見た図であるため図3と比べるとステアリングホィール92の位置が逆転している。)に示すようにレバー中心軸72を中心として揺動する。
【0041】
操作レバー7の揺動によって、操作レバー7に設けられたロックプレート作動ピン707が円弧穴81端部に係合し、チルトロックプレート8が操作レバー7と一体となって図5点線のように揺動する。この揺動によってチルトロックプレート8に設けられた突出部71が右側に移動しギヤアーム44が図2において反時計方向に回動する。ギヤアーム44の回動によって、セグメントギヤ33の歯とギヤアーム44のギヤ部分の歯との噛合が外れ、チルトヘッド4はチルト調整可能になる(図2、図5、図7)。このとき、プラープレート83の揺動が反対であるため、チルト円弧穴831がプラー鍔745と係合しない。このため、コラムクランプ21はクランプ状態を維持したままである。操作レバー7を中立位置に戻すと、逆の動作により、セグメントギヤ33の歯とギヤアーム44のギヤ部分の歯とが噛合し、チルトヘッド4がクランプされる。
【0042】
ステアリングホィール92の前後方向位置を調整するときには、図1、図3、図4に示されるように操作レバー7をステアリングホィール92に向かって矢印b方向に引き、プラープレート83を時計方向に揺動させる。この揺動によってプラープレート83のチルト円弧穴831とプラー鍔745とが係合し、付勢バネ741に抗してプラーロッド84を図4上方向に引く。このプラーロッド84の動きは図11ではプラーロッド84の右方向の動きとなる。
【0043】
プラーロッド84の右方向の動きは、揺動アーム61の揺動を、したがって、コラムクランプシャフト6の回動を起こす。コラムクランプシャフト6が回動すると、それまで図10に示すように長径部が水平の状態であったコラムクランプシャフト6は図9に示すように傾斜した状態になる。これによって図8のように接近していた第1ウェッジ211と第2ウェッジ212は、互いに離間するため移動コラム部材3のクランプが解除される。移動コラム部材3がアンクランプされたので、ステアリングホィールの前後方向の位置を調整する。なお、このとき、操作レバー7のロックプレート作動ピン707は、操作レバー7の揺動方向が反対であるため、円弧穴81の端部を押さない。このため、チルトロックプレート8は揺動せず、チルトヘッド4はクランプされた状態を維持する。
【0044】
つまり、操作レバー7は中立位置において、2つのクランプ/アンクランプ機構がクランプ状態に維持され、この操作レバー7が中立位置から一つの方向に操作されたとき、クランプ/アンクランプ機構の内の一方のみがアンクランプされ、反対の方向に操作されたときには、他のクランプ/アンクランプ機構のみがアンクランプされる。こうして、操作レバー7を、例えば、押すあるいは引くことによって、チルトヘッド4はチルト可能に、あるいは、コラムヘッド31は前後方向に移動可能になるので、運転者は、操作レバー7の操作方向を選択することによってステアリングホィール92の前後方向位置とチルト位置を独立に調整することができる。なお、チルトヘッドクランプ41が解除されたとき、チルトヘッド4には、その重量によりあたかも人が首をうなだれるときのような下向きの力が働く。このため、カウンターバランス用の強めのバネ45(図4)が設けられている。これにより下向きの力を相殺し、あるいは、さらには運転者の乗降を容易にするためステアリングホィール92を最も上側の傾斜位置に維持するような力をチルトヘッド4に与える。
【0045】
付勢バネ741はコラムクランプのクランプ状態を、また、付勢バネ711はチルトヘッドクランプ41のクランプ状態を、維持するのにそれぞれ充分な付勢力が与えられており、ともに操作レバー7を中立位置に維持する機能も果たす。操作レバー7を操作するとき、付勢バネ741及び付勢バネ711の一方のみの付勢力に抗する力を与えればよいため、この操作に大きな力は必要とされない。
【0046】
以上に示した実施形態によれば、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるとともに、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができる。更に、操作レバーの操作によって2つのクランプ/アンクランプ機構の一方のみのアンクランプが行われ、かつ、どのクランプ/アンクランプ機構をアンクランプするかはその方向によって自由に選択できる。そして、どちらの場合でも、操作のための力が少なくて済む。
【0047】
【発明の効果】
以上のとおり本発明は、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるとともに、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができるという効果を奏する。更に、操作レバーの操作によってクランプ/アンクランプ機構の一方のみのアンクランプが行われ、かつ、どのクランプ/アンクランプ機構をアンクランプするかを自由に選択できるうえ、どちらの場合でも、操作のための力が少なくて済むため、操作がしやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【図2】ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。
【図3】実施形態のステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。
【図4】実施形態のステアリングコラム装置1において、テレスコ位置調整時の様子を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。
【図5】実施形態のステアリングコラム装置1において、チルト調整時の様子を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。
【図6】ステアリングコラム装置の図2におけるA−A断面図である。
【図7】ステアリングコラム装置の図2におけるB−B断面図である。
【図8】ステアリングコラム装置の図2におけるC−C断面図である。
【図9】アンクランプ時におけるコラムクランプ21の一部断面図である。
【図10】クランプ時におけるコラムクランプ21の一部断面図である。
【図11】ステアリングコラム装置の図2におけるD−D断面図である。
【図12】チルトヘッド4のチルト位置による2つの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ステアリングコラム装置
2 固定コラム部材
21 コラムクランプ
211 第1ウェッジ
2111、2112 傾斜面
2113、2114 クランプバー穴
212 第2ウェッジ
213 クランプバー
2141、2142 反力部材
215 ウェッジ穴
216 コラムクランプシャフト穴
22 ストッパ部材
221、222 車体取付部
231 円筒状部
232 摺動案内部
3 移動コラム部材
31 コラムヘッド
311 緩衝ストッパ
32、743 長穴
33 セグメントギヤ
34 ボルト
341 背当部材
4 チルトヘッド
41 チルトヘッドクランプ
43 チルト中心軸
44 ギヤアーム
441 軸
442 ギヤ部分
443 脚
45 バネ
5 ホィールシャフト
6 コラムクランプシャフト
61 揺動アーム
7 操作レバー
707 ロックプレート作動ピン
71 突出部
711 付勢バネ
72 レバー中心軸
741 付勢バネ
742 バネ鍔
745 プラー鍔
8 チルトロックプレート
81 円弧穴
83 プラープレート
831 チルト円弧穴
84 プラーロッド
91 車体
92 ステアリングホィール
931、932 ユニバーサルジョイント
941 上中間軸
942 下中間軸
【発明の属する技術分野】
本発明はステアリングコラム装置、特にテレスコピック機構、及び、チルティング機構を備えた車両のためのステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレスコピック機構及びチルティング機構は、それぞれ運転者の体型及び好みにあわせて最も運転しやすい位置にステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するための機構である。
【0003】
テレスコピック機構及びチルティング機構には、ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときに操作されるクランプ/アンクランプ機構が備えられており、この調整時には、一旦、それぞれのためのクランプ/アンクランプ機構が解除され、その状態で前後方向位置、及び、傾斜角度を調整したのち、再度クランプ状態にされる。
【0004】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整は、ステアリングホィールを手で操作することによって行うため、ステアリングホィールから手を離すことなくクランプ/アンクランプ機構を操作できる方が好ましい。英国特許出願公開第2281375号明細書には、ステアリングホィールに手をかけたまま操作できる単一の操作ハンドルを設けたステアリングコラム装置が開示されている。
【0005】
上記英国特許出願公開のステアリングコラム装置においては、操作ハンドルの動きはフレキシブルチューブ内を移動可能なケーブルを介して高さ調整用のクランプ装置に伝達される。このケーブルとそのチューブはステアリングホィールの全調整範囲においてケーブルが自由に移動できる充分小さな曲率を与えるため、大きなたわみが与えられている。このため、一部がステアリングコラム装置の外側に向かって飛び出すようになり見苦しいだけでなく、トラブルの原因ともなる。更に、ケーブルとそのチューブからなる伝動機構は信頼性に乏しいだけでなく、ケーブルが伸び縮みするため操作性が良好とは言えないものである。
【0006】
このような問題に対処するため、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるようにし、ステアリングコラム装置からはみ出す部分が無く、信頼性が高く、操作性が良好なクランプ/アンクランプ機構を備えたステアリングコラム装置が提案(特願2002−273484号)されている。
【0007】
ステアリングホィールの前後方向位置、及び、傾斜角度の調整機能は運転時だけでなく、乗降のためにも使用される。ステアリングをこのような目的のために退避させる場合には、チルティング(傾斜)機構によってステアリングホィールを車両上方に押しやれば十分である。
【0008】
ところが、上記英国特許あるいは上記日本出願のステアリングコラム装置においては、チルティング機構だけでなくテレスコピック機構のアンクランプがレバーの操作によって平行、同時に行われる構造となっている。そのため、レバーを操作するために大きい力や複雑な多くの操作が必要となるばかりでなく、アンクランプされたテレスコピック機構が動きやすいため意に反して動いたときには運転開始前に再度調整することが必要となる。
【0009】
【特許文献1】
英国特許出願公開第2281375号明細書
【特許文献2】
米国特許第6237438号明細書
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるようにしたステアリングコラム装置において、レバーを操作する方向によって一方のクランプ/アンクランプ機構のみのアンクランプが行われ、かつ、どのクランプ/アンクランプ機構をアンクランプするかを自由に選択できるようにするとともに、どちらの場合でも、操作のための力が少なくて済むようにすることを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明の解決手段は、取り付けられるステアリングホィールの回転を車体側操舵機構に伝達することができるホィールシャフト、上記ステアリングホィールの車体前後方向位置を調整するためのテレスコピック機構、上記ステアリングホィールの傾斜角度を調整するためのチルティング機構、上記テレスコピック機構及び上記チルティング機構をそれぞれクランプ/アンクランプするためのクランプ/アンクランプ機構、及び、上記ステアリングホィールの近傍に操作端が位置し、上記各クランプ/アンクランプ機構のクランプ/アンクランプを操作することが可能な単一の操作レバーを備えたステアリングコラム装置において、上記操作レバーはその中立位置において、上記2つのクランプ/アンクランプ機構がクランプ状態に維持され、この操作レバーが上記中立位置から一つの方向に操作されたとき、上記クランプ/アンクランプ機構の内の一方のみがアンクランプされ、反対の方向に操作されたときには、上記クランプ/アンクランプ機構の内の他方のみがアンクランプされることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0012】
第2番目の発明の解決手段は、第1番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作レバーの操作方向が、上記ステアリングホィールに向けてこの操作レバーの操作端が接近あるいは離隔する方向であることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0013】
第3番目の発明の解決手段は、第2番目の発明のステアリングコラム装置において、上記操作レバーは、その操作端が上記ステアリングホィールに向けて接近する方向に操作されたとき、上記テレスコピック機構のためのクランプ/アンクランプ機構のみがアンクランプされ、上記ステアリングホィールに向けて離隔する方向に操作されたとき、上記チルティング機構のためのクランプ/アンクランプ機構のみがアンクランプにされるものであることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0014】
第4番目の発明の解決手段は、車体に取り付けるための車体取付部を備えた固定コラム部材、中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に上記固定コラム部材に支持された移動コラム部材、上記移動コラム部材の一端側に備えられたコラムヘッド、上記コラムヘッドにチルト可能に支持されたチルトヘッド、上記チルトヘッドに回転可能に支持され、一端にステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、上記コラムヘッドに備えられ、上記移動コラム部材の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能なコラムクランプシャフト、上記コラムクランプシャフトに対して移動可能であり、このコラムクランプシャフトの回転によって、上記移動コラム部材を上記固定コラム部材に対してクランプ/アンクランプ状態にするためのコラムクランプ、上記チルトヘッドに揺動可能に設けられたチルトロックプレート、上記チルトロックプレートが備える突出部が出入り自在であって、突出部の出入りによって上記チルトヘッドを上記コラムヘッドに対してクランプ/アンクランプするためのチルトヘッドクランプ、上記チルトヘッドに揺動支軸を有し、その揺動に関して中立位置をとることが可能であるとともに、これを挟んで2つの互いに反対の方向に揺動操作することが可能である操作レバー、上記操作レバーの揺動を上記コラムクランプ及び上記チルトヘッドクランプに伝動するための機械的伝動装置であって、上記操作レバーの一方の方向の揺動を、上記コラムクランプにのみ伝動し、上記操作レバーの他方の方向の揺動を、上記チルトヘッドクランプにのみ伝動する機械伝動装置を備えることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0015】
第5番目の発明の解決手段は、第4番目の発明のステアリングコラム装置において、上記機械的伝動装置は、プラープレート、プラーロッド、揺動アーム、を備えており、上記プラープレートは、上記操作レバーに設けられているとともに、上記プラーロッドが備えるプラー鍔に係合するための係合穴を備えており、上記プラーロッドは、上記チルトヘッドのチルト中心軸と平行な方向に摺動可能であって、上記コラムヘッドに支持されており、上記揺動アームは、上記プラーロッドに一端が係合し他端が上記コラムクランプシャフトに固定されており、上記チルトロックプレートと上記操作レバーとには係合長穴とこれに係合する係合ピンとが互いに対として設けられており、上記操作レバーを操作するとき、この操作レバーの一方の方向の揺動だけが、上記プラープレートの揺動運動、上記プラー鍔と係合穴との係合による上記プラーロッドの軸方向運動、上記揺動アームの揺動運動、及び、上記コラムクランプシャフトの回転運動へと順次変換されることによって上記コラムクランプのみがアンクランプされ、上記操作レバーの他方の方向の揺動だけが、上記チルトロックプレートの揺動へと変換されることによって上記チルトクランプのみがアンクランプされることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0016】
第6番目の発明の解決手段は、第5番目の発明のステアリングコラム装置において、上記プラーロッドには、上記コラムクランプをクランプ方向に向けて付勢するための付勢バネが、また、上記チルトロックプレートには、上記チルトヘッドクランプをクランプ方向に向けて付勢するための付勢バネが、それぞれ設けられていることを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
* 全体概要
図1は、本発明の実施形態にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。ステアリングコラム装置1は、固定コラム部材2、移動コラム部材3、コラムヘッド31、チルトヘッド4、ホィールシャフト5、コラムクランプ21、チルトヘッドクランプ41(図2参照)、操作レバー7、及び、機械的伝動装置を備えている。
【0018】
固定コラム部材2には、車体取付部221、222が備えられており、この車体取付部221、222によって車体91に取り付けられる。上記固定コラム部材2には、移動コラム部材3が中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に支持されている。上記移動コラム部材3の一端側にはコラムヘッド31が備えられており、このコラムヘッド31にはチルトヘッド4がチルト中心軸43を中心としてチルト可能に支持されている。このチルトヘッド4にはホィールシャフト5が回転可能に支持されており、その一端にはステアリングホィール92が固定される。
【0019】
上記コラムヘッド31には、上記移動コラム部材3の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能にコラムクランプシャフト6が設けられている。固定コラム部材2には、コラムクランプ21が備えられており、このコラムクランプ21に対して、上記コラムクランプシャフト6が移動可能であり、このコラムクランプシャフト6の回転によって、上記移動コラム部材3をクランプ/アンクランプ状態にすることができる。
【0020】
また、上記コラムヘッド31には、チルトヘッドクランプ41が設けられており、上記チルトヘッド4をコラムヘッド31に対してクランプ/アンクランプする。上記チルトヘッド4には、揺動支軸によって操作レバー7が支持されており、この操作レバー7は、両手操作が必要なテレスコ操作を行うときには、ステアリングホィール92に手をかけたまま操作可能となっている。操作レバー7の車体前方向への揺動(図1、図3、図5の矢印f)は、この方向の揺動に限って、機械的伝動装置を介して上記コラムクランプシャフト6の回転に変換され、この回転は上記コラムクランプ21に伝動され、移動コラム部材3のアンクランプが行われる。更に、この操作レバー7の車体後方向への揺動(図1、図3、図4の矢印b)は、この方向の揺動に限って、上記チルトヘッドクランプ41に伝動され、チルトヘッド4のアンクランプが行われる。また、手を離すと自然に操作レバー7は中立位置に戻る。
【0021】
ホィールシャフト5の一端は、ステアリングコラム装置1内でユニバーサルジョイント931に接続され、更に、スプライン結合された一対の上中間軸941と下中間軸942(図3)、及び、下側のユニバーサルジョイント932を介して、前車輪の方向を操作する機構へと接続されている。なお、図1中の点線は調整によってステアリングホィール92が取りうる位置と姿勢の幾例かを示している。
【0022】
* チルトヘッドクランプ
図2は、ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。図3は、ステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。図4、図5は、ステアリングコラム装置1を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。図6、図7及び図8は、それぞれ図2におけるA−A、B−B及びC−C断面図である。
【0023】
チルトヘッドクランプ41は次のような構成を備える。移動コラム部材3には、チルト中心軸43にその中心を持つセグメントギヤ33(図2)がボルト34によって固定されており、セグメントギヤ33との間に空間を置いて背当部材341が設けられている。一方、上記空間内には、チルトヘッド4に軸441を中心として回動可能に支持されたギヤアーム44のギヤ部分442と、チルトロックプレート8に設けられた突出部71が入り込んでいる。チルトロックプレート8は操作レバー7と共通のレバー中心軸72に揺動可能に軸支されている。
【0024】
上記ギヤアーム44は2本の脚からなるL字形状をなしており、一方の脚には上記ギヤ部分442が形成されている。上記ギヤアーム44の他方の脚443と上記突出部71の背部との間には付勢バネ711が介在し、突出部71の背部と脚443との間隔を押し広げるようなバイアスを与えている。
【0025】
このバイアスによって、突出部71が左方向に押され、ギヤ部分442を背後から押すため、ギヤ部分442がセグメントギヤ33に向けて押し付けられ、それぞれの歯が相互に噛合する。なお、ギヤ部分442をセグメントギヤ33を押すとき、突出部71にかかる反力は背当部材341が受ける(図2、図7)。これにより、チルトヘッド4が固定される。チルトヘッド4は、ギヤ部分442とセグメントギヤ33が噛合可能な角度位置において段階的な位置で固定される。
【0026】
チルトロックプレート8の突出部71が図2中で右方向に動くとき、付勢バネ711の押圧力によってギヤアーム44は図2において反時計回りに回転するため、これらの歯の噛合が外れる。チルト位置の調整時には、操作レバー7をステアリングホィールから離隔する方向(車体前方向、図1、図3、図5の矢印f)に揺動操作することによって、次に示すように突出部71が右方向に動くようになっている。
【0027】
レバー中心軸72回りに揺動可能に軸支されているチルトロックプレート8は、レバー中心軸72を中心とする円弧穴81を有している(図4、図5)。操作レバー7が中立位置にあるとき、操作レバー7に設けられたロックプレート作動ピン707が円弧穴81の一方の端部に極めて接近した位置にあるかあるいは軽く接触している(図4、図5における実線の位置)。操作レバー7が矢印b方向図4点線のように揺動したとき、上記円弧穴81の反対側にある遊びによってチルトロックプレート8は不動であるが、操作レバー7が矢印f方向、図5点線のように揺動したときには、ロックプレート作動ピン707が上記端部に当接しこれを押すことによってチルトロックプレート8が揺動する。このようにチルトロックプレート8は操作レバー7の一方の方向の揺動に一体的に追従するのに対し、これと反対の方向の方向の揺動には追従しない構成となっている。
【0028】
* ユニバーサルジョイント及び中間軸
図3に示されるように、上中間軸941の端部とホィールシャフト5の端部との間には、上側のユニバーサルジョイント931が構成されている。ユニバーサルジョイント931の中心はチルト中心軸43の軸線上にあるため、チルトヘッド4がチルトしてもその影響を受けないようになっている。
【0029】
下中間軸942は固定コラム部材2に回転自在に支持されており、下中間軸942と上中間軸941がスプライン結合しているため、移動コラム部材3は図3の左右方向に移動可能になっている。スプライン結合によって移動位置に関わらず上中間軸941の回転は下中間軸942に伝達することが可能であり、ステアリングホィール92の前後方向を調整しても、ステアリングホィール92の回転を下中間軸942に伝達することができる。
【0030】
* 固定コラム部材と移動コラム部材
図2に示すように、移動コラム部材3の円筒部には、軸方向に沿った長穴32が形成されており、この長穴32内に固定コラム部材2に設けられたストッパ部材22が係合している。移動コラム部材3は、長穴32とストッパ部材22によって、固定コラム部材2からの抜け出しとこれに対する回転が防止されているため、固定コラム部材2内を長穴32の範囲で軸方向に移動可能となっている。
【0031】
固定コラム部材2は円筒状部231を備えており、円筒状部231の内部の2箇所にはリング状の摺動案内部232が設けられている(図3)。移動コラム部材3の円筒部外面はこの摺動案内部232によって移動コラム部材3の軸方向にがたつき無く移動可能になっている。コラムヘッド31の端面に設けられた緩衝ストッパ311は、調整時に移動コラム部材3が固定コラム部材2の端面に衝突したとき、金属同士の衝撃的な衝突を防止するために設けられた、ゴム、合成樹脂等でできた緩衝材である。
【0032】
* コラムクランプ
コラムクランプ21の構成を図8、図9、図10、及び、図11を用いて説明する。図8は、既述のように図2におけるC−C断面図、図9、図10は図8における一部拡大図であって、コラムクランプシャフト6の回転位置とクランプ/アンクランプ状態の関係を示している。コラムクランプ21は、固定コラム部材2に設けられており、第1ウェッジ211、第2ウェッジ212、クランプバー213、及び、反力部材2141、2142を備えている。固定コラム部材2には横方向からウェッジ穴215があけられており、このウェッジ穴215の一部は固定コラム部材2の空洞に開口している。第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は、それぞれが傾斜面2111、2112を備えており、この傾斜面2111、2112の側を向かい合わせるようにウェッジ穴215内に納められている。2つのウェッジの傾斜面2111、2112は移動コラム部材3の円筒部外周と向き合うことになる。
【0033】
第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212には、それぞれクランプバー穴2113、2114があけられており、この穴にクランプバー213が貫通している。クランプバー213の両端にはクランプバー穴2113、2114よりも外径の大きな反力部材2141、2142が固定されている。クランプバー213には一方の反力部材2142に接するようにコラムクランプシャフト穴216があけられており、この穴にコラムクランプシャフト6の実質的に楕円をなす非円形形状断面部が貫通している。
【0034】
コラムクランプシャフト6の一端には揺動アーム61が固定されている。コラムクランプシャフト6の非円形形状断面部は、アンクランプ時には図9のように楕円長径方向が傾斜し、クランプ時には図10に示すように長径方向がクランプバー213の軸方向を向く。この構成により、図9の状態から揺動アーム61に揺動回転を与えると、コラムクランプシャフト6が回転し、図10の状態になる。このとき、楕円長径部の一方が反力部材2142が左方向に押されることにより、クランプバー213が左方に引っ張られ、更に反力部材2141が第1ウェッジを左方に押すことになる。一方、第2ウェッジは楕円長径部の他方によって右方に押される。この結果2つのウェッジが相互に接近するため、それぞれの傾斜面2111、2112が移動コラム部材3の円筒部外周を押圧することになり、移動コラム部材3が固定コラム部材2に対してクランプされる。なお、第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212は一体となってわずかながら左右に移動可能なため、一方のウェッジのみが移動コラム部材3を強く押圧するようなアンバランスは生じない。
【0035】
揺動アーム61を反対方向に揺動回転すると、上とは逆の動きによって第1ウェッジ211、及び、第2ウェッジ212が離反し、移動コラム部材3のクランプが解除される。
【0036】
* 操作レバーと連動運動
次に操作レバー7の動きによって連動する各部材について説明する。操作レバー7はステアリングコラム装置1の下側にあり、図3には、この操作レバー7、この揺動の中心となるレバー中心軸72、操作レバー7に固定されたプラープレート83、及びプラーロッド84が部分的に見えている。これを下から見たときの図4、図5には、操作レバー7の全体、及び、前後方向位置及び傾き調整するために操作レバー7が操作されたときの状態が点線で示されている(実線は非操作時中立位置)。
【0037】
中央にバネ鍔742(図11)を備えているプラーロッド84は、コラムヘッド31上にチルト中心軸43と平行な方向に摺動自在に支持されている。プラーロッド84にはバネ鍔742を図11において左方向に付勢する付勢バネ741が貫通しており、その端部にはその直角方向に長い小さな長穴743が設けられている。プラーロッド84の端部は、この長穴743を介して揺動アーム61の一端と軸係合している。長穴743はプラーロッド84が軸方向に移動したときに揺動アーム61との関係位置がずれる量を吸収するためのものである。付勢バネ741がプラーロッド84を左方向(図11)に付勢しているため、揺動アーム61には揺動付勢力が付与されコラムクランプシャフト6がクランプ位置に維持される。
【0038】
プラープレート83には円弧状のチルト円弧穴831(図2)が形成されており、このチルト円弧穴831にはプラーロッド84が貫通している。プラーロッド84は端部にもう一つの鍔、すなわちプラー鍔745が設けられている。この構造によって、操作レバー7をステアリングホィール92に向けて引き、これを揺動させたとき、プラー鍔745にプラープレート83が係合し、プラーロッド84が付勢バネ741に抗して図4点線のように引っ張られる。これにより揺動アーム61が揺動し、コラムクランプシャフト6が回転し、コラムクランプ21がアンクランプされる。操作レバー7が操作されない中立位置では、付勢バネ741によって揺動アーム61に与えられた揺動付勢力はコラムクランプシャフト6をクランプ位置に維持する。
【0039】
* プラープレート
チルトヘッド4は、コラムヘッド31上をチルトするため、チルトの量(角度)に応じて、プラープレート83に対するプラーロッド84の位置関係が変化する。図12には、チルトヘッド4をチルトさせた2つの位置を点線と実線で示す。プラーロッド84はコラムヘッドに支持されているためチルトによって位置を変えないが、プラープレート83はチルト中心軸43から離れているため、チルトヘッド4をチルトさせるときプラーロッド84との相対位置が変化する。このため、チルトヘッド4がどの角度位置に在るときでも、干渉を避けてプラーロッド84をプラープレート83が引っ張ることができるようにチルト円弧穴831は円弧状をなしている。また、このため、プラープレート83にはホッケーのスティックのように曲がった広い面形状を持たせている。
【0040】
* ステアリングホィールの調整操作
以下、ステアリングホィール92の前後方向位置、及び、傾斜角度を調整するときの操作と各部材の動作について説明する。最初に、ステアリングホィール92の傾斜角度(チルティング)を調整するときについて説明する。運転者は操作レバー7を車体前方に向けて押す(矢印f、図1、図3、図5)。これにより操作レバー7は、図5点線(図4、図5は下から見た図であるため図3と比べるとステアリングホィール92の位置が逆転している。)に示すようにレバー中心軸72を中心として揺動する。
【0041】
操作レバー7の揺動によって、操作レバー7に設けられたロックプレート作動ピン707が円弧穴81端部に係合し、チルトロックプレート8が操作レバー7と一体となって図5点線のように揺動する。この揺動によってチルトロックプレート8に設けられた突出部71が右側に移動しギヤアーム44が図2において反時計方向に回動する。ギヤアーム44の回動によって、セグメントギヤ33の歯とギヤアーム44のギヤ部分の歯との噛合が外れ、チルトヘッド4はチルト調整可能になる(図2、図5、図7)。このとき、プラープレート83の揺動が反対であるため、チルト円弧穴831がプラー鍔745と係合しない。このため、コラムクランプ21はクランプ状態を維持したままである。操作レバー7を中立位置に戻すと、逆の動作により、セグメントギヤ33の歯とギヤアーム44のギヤ部分の歯とが噛合し、チルトヘッド4がクランプされる。
【0042】
ステアリングホィール92の前後方向位置を調整するときには、図1、図3、図4に示されるように操作レバー7をステアリングホィール92に向かって矢印b方向に引き、プラープレート83を時計方向に揺動させる。この揺動によってプラープレート83のチルト円弧穴831とプラー鍔745とが係合し、付勢バネ741に抗してプラーロッド84を図4上方向に引く。このプラーロッド84の動きは図11ではプラーロッド84の右方向の動きとなる。
【0043】
プラーロッド84の右方向の動きは、揺動アーム61の揺動を、したがって、コラムクランプシャフト6の回動を起こす。コラムクランプシャフト6が回動すると、それまで図10に示すように長径部が水平の状態であったコラムクランプシャフト6は図9に示すように傾斜した状態になる。これによって図8のように接近していた第1ウェッジ211と第2ウェッジ212は、互いに離間するため移動コラム部材3のクランプが解除される。移動コラム部材3がアンクランプされたので、ステアリングホィールの前後方向の位置を調整する。なお、このとき、操作レバー7のロックプレート作動ピン707は、操作レバー7の揺動方向が反対であるため、円弧穴81の端部を押さない。このため、チルトロックプレート8は揺動せず、チルトヘッド4はクランプされた状態を維持する。
【0044】
つまり、操作レバー7は中立位置において、2つのクランプ/アンクランプ機構がクランプ状態に維持され、この操作レバー7が中立位置から一つの方向に操作されたとき、クランプ/アンクランプ機構の内の一方のみがアンクランプされ、反対の方向に操作されたときには、他のクランプ/アンクランプ機構のみがアンクランプされる。こうして、操作レバー7を、例えば、押すあるいは引くことによって、チルトヘッド4はチルト可能に、あるいは、コラムヘッド31は前後方向に移動可能になるので、運転者は、操作レバー7の操作方向を選択することによってステアリングホィール92の前後方向位置とチルト位置を独立に調整することができる。なお、チルトヘッドクランプ41が解除されたとき、チルトヘッド4には、その重量によりあたかも人が首をうなだれるときのような下向きの力が働く。このため、カウンターバランス用の強めのバネ45(図4)が設けられている。これにより下向きの力を相殺し、あるいは、さらには運転者の乗降を容易にするためステアリングホィール92を最も上側の傾斜位置に維持するような力をチルトヘッド4に与える。
【0045】
付勢バネ741はコラムクランプのクランプ状態を、また、付勢バネ711はチルトヘッドクランプ41のクランプ状態を、維持するのにそれぞれ充分な付勢力が与えられており、ともに操作レバー7を中立位置に維持する機能も果たす。操作レバー7を操作するとき、付勢バネ741及び付勢バネ711の一方のみの付勢力に抗する力を与えればよいため、この操作に大きな力は必要とされない。
【0046】
以上に示した実施形態によれば、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるとともに、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができる。更に、操作レバーの操作によって2つのクランプ/アンクランプ機構の一方のみのアンクランプが行われ、かつ、どのクランプ/アンクランプ機構をアンクランプするかはその方向によって自由に選択できる。そして、どちらの場合でも、操作のための力が少なくて済む。
【0047】
【発明の効果】
以上のとおり本発明は、ステアリングホィールの近傍に設けられた単一のレバーによってテレスコピック機構及びチルティング機構の各クランプ/アンクランプ機構を操作できるとともに、ケーブルを用いていないためステアリングコラム装置から見苦しくはみ出す部分が無く、トラブルの発生も抑制でき、信頼性、操作性も向上させることができるという効果を奏する。更に、操作レバーの操作によってクランプ/アンクランプ機構の一方のみのアンクランプが行われ、かつ、どのクランプ/アンクランプ機構をアンクランプするかを自由に選択できるうえ、どちらの場合でも、操作のための力が少なくて済むため、操作がしやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかるステアリングコラム装置1の外観図である。
【図2】ステアリングコラム装置1の一部を切り欠いた図1の要部拡大図である。
【図3】実施形態のステアリングコラム装置1を図2の上から(P方向)から見たときの一部切り欠き上面図である。
【図4】実施形態のステアリングコラム装置1において、テレスコ位置調整時の様子を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。
【図5】実施形態のステアリングコラム装置1において、チルト調整時の様子を図2の下から(Q方向から)見たときの、下面図である。
【図6】ステアリングコラム装置の図2におけるA−A断面図である。
【図7】ステアリングコラム装置の図2におけるB−B断面図である。
【図8】ステアリングコラム装置の図2におけるC−C断面図である。
【図9】アンクランプ時におけるコラムクランプ21の一部断面図である。
【図10】クランプ時におけるコラムクランプ21の一部断面図である。
【図11】ステアリングコラム装置の図2におけるD−D断面図である。
【図12】チルトヘッド4のチルト位置による2つの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ステアリングコラム装置
2 固定コラム部材
21 コラムクランプ
211 第1ウェッジ
2111、2112 傾斜面
2113、2114 クランプバー穴
212 第2ウェッジ
213 クランプバー
2141、2142 反力部材
215 ウェッジ穴
216 コラムクランプシャフト穴
22 ストッパ部材
221、222 車体取付部
231 円筒状部
232 摺動案内部
3 移動コラム部材
31 コラムヘッド
311 緩衝ストッパ
32、743 長穴
33 セグメントギヤ
34 ボルト
341 背当部材
4 チルトヘッド
41 チルトヘッドクランプ
43 チルト中心軸
44 ギヤアーム
441 軸
442 ギヤ部分
443 脚
45 バネ
5 ホィールシャフト
6 コラムクランプシャフト
61 揺動アーム
7 操作レバー
707 ロックプレート作動ピン
71 突出部
711 付勢バネ
72 レバー中心軸
741 付勢バネ
742 バネ鍔
745 プラー鍔
8 チルトロックプレート
81 円弧穴
83 プラープレート
831 チルト円弧穴
84 プラーロッド
91 車体
92 ステアリングホィール
931、932 ユニバーサルジョイント
941 上中間軸
942 下中間軸
Claims (6)
- 取り付けられるステアリングホィールの回転を車体側操舵機構に伝達することができるホィールシャフト、
上記ステアリングホィールの車体前後方向位置を調整するためのテレスコピック機構、
上記ステアリングホィールの傾斜角度を調整するためのチルティング機構、
上記テレスコピック機構及び上記チルティング機構をそれぞれクランプ/アンクランプするためのクランプ/アンクランプ機構、及び、
上記ステアリングホィールの近傍に操作端が位置し、上記各クランプ/アンクランプ機構のクランプ/アンクランプを操作することが可能な単一の操作レバーを備えたステアリングコラム装置において、
上記操作レバーはその中立位置において、上記2つのクランプ/アンクランプ機構がクランプ状態に維持され、この操作レバーが上記中立位置から一つの方向に操作されたとき、上記クランプ/アンクランプ機構の内の一方のみがアンクランプされ、反対の方向に操作されたときには、上記クランプ/アンクランプ機構の内の他方のみがアンクランプされること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項1に記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作レバーの操作方向は、上記ステアリングホィールに向けてこの操作レバーの操作端が接近あるいは離隔する方向であること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項2に記載されたステアリングコラム装置において、
上記操作レバーは、その操作端が上記ステアリングホィールに向けて接近する方向に操作されたとき、上記テレスコピック機構のためのクランプ/アンクランプ機構のみがアンクランプされ、上記ステアリングホィールに向けて離隔する方向に操作されたとき、上記チルティング機構のためのクランプ/アンクランプ機構のみがアンクランプにされるものであること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 車体に取り付けるための車体取付部を備えた固定コラム部材、
中心軸回りに回転不能且つ中心軸方向に移動可能に上記固定コラム部材に支持された移動コラム部材、
上記移動コラム部材の一端側に備えられたコラムヘッド、
上記コラムヘッドにチルト可能に支持されたチルトヘッド、
上記チルトヘッドに回転可能に支持され、一端にステアリングホィールを固定するためのホィールシャフト、
上記コラムヘッドに備えられ、上記移動コラム部材の中心軸と平行な軸のまわりに回転可能なコラムクランプシャフト、
上記コラムクランプシャフトに対して移動可能であり、このコラムクランプシャフトの回転によって、上記移動コラム部材を上記固定コラム部材に対してクランプ/アンクランプ状態にするためのコラムクランプ、
上記チルトヘッドに揺動可能に設けられたチルトロックプレート、
上記チルトロックプレートが備える突出部が出入り自在であって、突出部の出入りによって上記チルトヘッドを上記コラムヘッドに対してクランプ/アンクランプするためのチルトヘッドクランプ、
上記チルトヘッドに揺動支軸を有し、その揺動に関して中立位置をとることが可能であるとともに、これを挟んで2つの互いに反対の方向に揺動操作することが可能である操作レバー、
上記操作レバーの揺動を上記コラムクランプ及び上記チルトヘッドクランプに伝動するための機械的伝動装置であって、上記操作レバーの一方の方向の揺動を、上記コラムクランプにのみ伝動し、上記操作レバーの他方の方向の揺動を、上記チルトヘッドクランプにのみ伝動する機械伝動装置
を備えることを特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項4に記載されたステアリングコラム装置において、
上記機械的伝動装置は、
プラープレート、プラーロッド、揺動アーム、を備えており、
上記プラープレートは、上記操作レバーに設けられているとともに、上記プラーロッドが備えるプラー鍔に係合するための係合穴を備えており、
上記プラーロッドは、上記チルトヘッドのチルト中心軸と平行な方向に摺動可能であって、上記コラムヘッドに支持されており、
上記揺動アームは、上記プラーロッドに一端が係合し他端が上記コラムクランプシャフトに固定されており、
上記チルトロックプレートと上記操作レバーとには係合長穴とこれに係合する係合ピンとが互いに対として設けられており、
上記操作レバーを操作するとき、この操作レバーの一方の方向の揺動だけが、上記プラープレートの揺動運動、上記プラー鍔と係合穴との係合による上記プラーロッドの軸方向運動、上記揺動アームの揺動運動、及び、上記コラムクランプシャフトの回転運動へと順次変換されることによって上記コラムクランプのみがアンクランプされ、上記操作レバーの他方の方向の揺動だけが、上記チルトロックプレートの揺動へと変換されることによって上記チルトクランプのみがアンクランプされること
を特徴とするステアリングコラム装置。 - 請求項5に記載されたステアリングコラム装置において、
上記プラーロッドには、上記コラムクランプをクランプ方向に向けて付勢するための付勢バネが、また、
上記チルトロックプレートには、上記チルトヘッドクランプをクランプ方向に向けて付勢するための付勢バネが、それぞれ設けられていること
を特徴とするステアリングコラム装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002364249A JP2004196038A (ja) | 2002-12-16 | 2002-12-16 | ステアリングコラム装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002364249A JP2004196038A (ja) | 2002-12-16 | 2002-12-16 | ステアリングコラム装置 |
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JP2004196038A true JP2004196038A (ja) | 2004-07-15 |
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Family Applications (1)
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JP2002364249A Pending JP2004196038A (ja) | 2002-12-16 | 2002-12-16 | ステアリングコラム装置 |
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JP (1) | JP2004196038A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100885108B1 (ko) | 2005-08-04 | 2009-02-20 | 한국델파이주식회사 | 자동차 스티어링 장치의 틸트 레버 구조 |
KR100992695B1 (ko) | 2007-11-13 | 2010-11-05 | 기아자동차주식회사 | 틸팅 및 텔레스코픽 스티어링컬럼의 록킹장치 구조 |
-
2002
- 2002-12-16 JP JP2002364249A patent/JP2004196038A/ja active Pending
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