JP2004159640A - 悪性腫瘍の予想、診断、予後判定、予防および治療のための方法および組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】乳癌患者と正常人の胸部組織に差異的に発現する遺伝子を開示する。
【選択図】なし
Description
【0001】
本発明は、腫瘍性疾患の予測、診断、予知、予防および治療用方法および組成物に関する。腫瘍性疾患は、再配列された遺伝子の過剰または過小発現につながる染色体再配列により起こることが多い。本発明は、腫瘍組織において過剰発現される遺伝子を開示し、診断マーカーおよび治療の標的として有用である。腫瘍性疾患の予測、診断および予知ならびに予防および治療のための方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
染色体異常(増幅、欠失、転位、挿入、転座および/またはウイルス組み入れ)は、それぞれの領域の調節解除の原因となるので、ガンおよび腫瘍病巣の発生に重要である。成長特性、分化、侵襲性または治療的介入に対する耐性について重要な遺伝子を位置決めするゲノム領域の増幅が記載されている。染色体異常を有するこれらの領域の一つは、乳ガン患者において増幅されるHER−2/neu遺伝子を有する領域である。乳ガン患者の約25%において、HER−2/neu遺伝子が、遺伝子増幅のために過剰発現される。HER−2/neu過剰発現は、不十分な予後(再発、全体的な生存率、治療法に対する敏感性)と相関する。疾患進行の予後に関するHER−2/neuの重要性は記載されている[Gustersonら、1992,(1)]。HER−2/neuに対して生じる遺伝子特異的抗体(Herceptin)は各ガン患者を治療するために作られてきた。しかしながら、ほとんどの場合、化学療法レジメと組み合わせられるHerceptinでの抗体治療からは、患者のわずか約50%しか恩恵を享受しない。HER−2/neu陽性腫瘍(同様の程度までHER−2/neuを過剰発現する)の治療法に対する反応性に関しての不一致から、各腫瘍組織の成長およびアポトーシス特性に関与するさらなる因子または遺伝子が存在する可能性があることが示唆される。成長因子レセプターHER−2/neuの過剰発現と治療成果の間には一因的な関係は無いようである。通常用いられる腫瘍マーカー、たとえば、エストロジェンレセプターのこの測定と調和して、プロゲステロンレセプター、p53およびKi−67は特定の治療的決定の臨床的成果に関して非常に限られた情報しか提供しない。従って、患者の向上された治療決定および生存率の予想を可能にするために、さらに詳細な腫瘍の診断および兆候の分類が非常に必要とされている。本発明は、その発現が腫瘍において緩和され、臨床的成果と相関する遺伝子を提供することにより、さらなるマーカーの必要性に対応する。一つの点は、特定の染色体領域に存在する遺伝子および疾患発症および薬剤反応性におけるその相互作用の調節解除(緩和)である。
【0003】
腫瘍性疾患のHER−2/neuおよび他のマーカーは通常、診断法、たとえば、免疫組織学(ICH)(たとえば、DAKO Incから得られるHercepTest)および蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)(たとえば、HER−2/neuおよびトポイソメラーゼIIアルファのVYSISから得られる蛍光インサイチュハイブリダイゼーションキットでの定量的測定)で分析される。さらに、HER−2/neuは、血清におけるHER−2/neu断片をELISA試験(BAYER Corp.)またはHER−2/neu遺伝子増幅を検出するために非増幅対照遺伝子の量とHER−2/neu遺伝子の量を比較する定量的PCRキット(ROCHE)で検出することにより分析できる。しかしながら、これらの方法は感度、特異性、技術および人員労力、費用、時間、実験室間の再現性に関していくつかの欠点を示す。これらの方法はまた、一つの患者サンプル内の複数のパラメーターの測定に関して制限される(「マルチプレクシング」)。通常、組織スライドあたりわずかに約3から4のパラメータ(たとえば、遺伝子または遺伝子産物)しか検出できない。従って、一つのサンプルにおいて複数のパラメータを同時に測定するための迅速で簡単な試験法の開発が必要とされる。本発明は、複数の診断および予後マーカーを同時に検出できる迅速で簡単な高分解法に対する必要性に関する。
【0004】
(発明の概要)
本発明は、ガン組織における染色体改変は改変された染色体領域によりコードされる遺伝子の発現における変化につながり得るという発見に基づく。乳ガン組織から得られる腫瘍病巣において同時増幅され、その結果これらの遺伝子のいくつかにおいて発現が改変される例示的な43ヒト遺伝子が同定されている(表1から4)。これらの43遺伝子は、正常、または非乳ガン状態におけるその発現に関して。乳ガン状態において差次的に発現される。本発明は、これらの遺伝子の誘導体、断片、類似体およびその使用または使用法に関する。
本発明はさらに、悪性腫瘍、特に乳ガンの新規予防、予測、診断、予後判定および治療的組成物および使用にも関する。特に細胞該領域を含む膜結合マーカー遺伝子産物は治療法並びに診断および臨床的モニター法の標的として特に有用であり得る。
これらの遺伝子のいくつかは、その遺伝子産物が互いに直接的または間接的に影響を及ぼすことによりシグナリングカスケードにおいて機能的に相互作用することを特徴とするということは、本発明により見いだされた。この相互作用は、非腫瘍組織(たとえば、脳または神経原性組織)の通常の生理組織について重要である。しかしながら、このこれらが異なるレベルの活性を示すかまたは活性でない腫瘍病巣におけるこれらの遺伝子の緩和の結果、病気になり、疾患関連組織の特性に影響を及ぼす。
【0005】
本発明はさらに、DNAおよびmRNAレベルに関する悪性腫瘍におけるこれらの緩和を検出する方法にも関する。
本発明はさらに、改変された染色体領域において位置する遺伝子によりコードされる個々のmRNAの相対的量において特徴づけられる染色体改変の方法にも関する。
本発明はさらに、定量的PCRまたはDNAアレイおよびDNAシーケンシングによりDNAコピー数を測定することにより、記載された染色体改変のフランキング中断点を検出する方法にも関する。
記載されたゲノム中断点の側面に位置するかまたはその内部に位置するDNA配列の検出により悪性腫瘍を予測、診断または予知する方法。
本発明はさらに、改変された染色体領域内に位置する1以上のゲノム核酸配列のコピー数を定量的PCR技術(たとえば、TaqMan、LightcyclerおよびiCycler)により検出することを特徴とする染色体改変を検出する方法にも関する。
【0006】
本発明はさらに、少なくとも2つのマーカーを検出することによる悪性腫瘍の予測、診断または予知の方法(マーカーは、悪性腫瘍および特に乳ガンにおいて改変された一つの染色体領域上に位置する遺伝子およびその断片またはゲノム核酸配列である)にも関する。
本発明はさらに、少なくとも2つのマーカーの検出により悪性腫瘍を予測、診断または予知する方法を開示し、これにより、マーカーは、悪性腫瘍において改変された1以上の染色体領域上に位置し;マーカーは、(i)レセプターおよびリガンドまたは(ii)同じシグナル伝達経路のメンバーまたは(iii)相乗シグナル伝達経路のメンバーまたは(iv)拮抗シグナル伝達経路のメンバーまたは(v)転写因子および転写因子結合部位として相互作用する。
少なくとも一つのマーカーの検出により悪性腫瘍を予測、診断または予知する方法も開示され、マーカーは、増幅のために悪性腫瘍において改変された一つの染色体領域上に位置するVNTR、SNP、RFLPまたはSTSであり、マーカーは同じ個体から得られる(a)ガンおよび(b)非ガン組織または生物学的サンプルにおいて検出される。好ましい具体例は、表6の少なくとも一つのVNTRマーカーまたは表4の少なくとも一つのSNPマーカーまたはその組み合わせの検出である。かかる多型マーカーの検出、定量およびサイジングが(a)PCR増幅およびそれに続くキャピラリー電気泳動による比較測定、(b)ゲル電気泳動(たとえば、SSCP、DGGE)、リアルタイム運動PCR、直接DNAシーケンシング、ピロシーケンシング、質量特異的対立分解(allelic discrimination)またはDNAアレイ技術による再配列化による配列決定および対立分解、(c)特定の制限パターンの測定およびそれに続く電気邸動による分離および(d)対立特異的PCR(たとえばASO)による対立分解の方法により達成されるのもさらに好ましい。ヘテロ接合VNTRマーカー、SNP、RFLPまたはSATSのさらに好ましい検出は、様々な標識されたプライマー(たとえば、蛍光、放射性、生活性)および適当なキャピラリー電気泳動(CE)電気泳動システムを用いて多様な方法において行われる。
【0007】
もう一つの具体例において、これらの遺伝子の発現は、WO9727317およびUS6379895に記載されているようなDNAアレイで検出できる。
さらにもう一つの具体例において、これらの遺伝子の発現は、WO9714029およびWO9952708において記載されているようなビーズベースの直接蛍光リードアウト技術で検出することができる。
一具体例において、本発明は、配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19または21から26または53から75を含む少なくとも一つのポリヌクレオチドの、正常または未処理細胞と比較して、異なる発現を検出することを含む、細胞または組織の発現型を決定する方法に関し、ここにおいて、ポリヌクレオチドは少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍または少なくとも約3倍により差次的に発現される。
さらにもう一つの態様において、本発明は配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19または21から26または53から75のポリヌクレオチドの一つとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成し、各ポリヌクレオチドに関して表2または3において示すのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドの、正常または未処理細胞と比較しての差次的発現を検出することを含む、細胞または組織の発現型を決定する方法に関し、ここにおいてポリヌクレオチドは少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍または少なくとも約3倍により差次的に発現される。
【0008】
本発明のもう一つの態様において、配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19または21から26または53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むか、または配列番号:28から32、34、35、37から42、44、45または47から52または76から98を有するポリペプチドの一つをコードするポリヌクレオチドを、乳ガンにかかりやすくした発現型または罹患した発現型を示す個体における細胞または組織を同定するために用いることができ、これにより(a)個体が発症の危険にあるかどうかを予測し、または(b)個体が罹患しているかどうかを診断し、または(c)悪性腫瘍および特に乳ガンの進行または治療の成果を予測することができる。
さらにもう一つの具体例において、本発明は染色体レベルに関して改変され、機能により結合し、悪性腫瘍および特に乳ガンにおいて差次的に発現される遺伝子をコードするゲノム領域を同定する方法を提供する。
さらにもう一つの具体例において、本発明は、悪性腫瘍および乳ガンの予測、診断および予知ならびに予知および治療において用いられるゲノム領域17q12、3p21および12q13を提供する。特に、前記染色体領域の遺伝子内領域だけでなく遺伝子間領域、疑似遺伝子または非転写遺伝子も診断、予測、予知および予防および治療用組成物および方法に用いることができる。
【0009】
さらにもう一つの具体例において、本発明は、配列番号:28から32、34、35、37から42、44、45または47から52または76から98から選択されるか、または配列番号:1から26および53なしい75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを含むポリペプチドの活性を調節する物質に関してスクリーニングする方法を提供する。試験化合物を、配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むか、または配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させる。試験化合物のポリペプチドとの結合が検出される。ポリペプチドと結合する試験化合物は、したがって悪性腫瘍、さらに詳細には乳ガンの治療のための有効な治療薬であることが明らかになった。
【0010】
さらにもう一つの具体例において、本発明は、配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むか、または配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの活性を調節する物質をスクリーニングするもう一つの方法手を提供する。試験化合物を、配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むかまたは配列番号1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させる。ポリペプチドにより媒介される生物学的活性を検出する。生物学的活性を減少させる試験化合物はこれにより配列番号:27から52および76から98を含むポリペプチドを含むポリペプチドによりコードされるかまたは、悪性腫瘍、特に乳ガンにおける配列番号:1から26および53なしい75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの活性を減少させるための有効な治療薬であることが明らかになった。生物学的活性を増大させる試験化合物は、従って、配列番号:27から52および76から98を有するポリペプチドの一つから選択されるポリペプチドによりコードされるか、または悪性腫瘍、特に乳ガンにおける配列番号:1から26および53なしい75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの活性を増大させる有効な治療薬であることが明らかになった。
【0011】
もう一つの具体例において、本発明は、配列番号:1なしい26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの活性を調節する物質をスクリーニングする方法を提供する。試験化合物を、配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドと接触させる。配列番号1から26および53から75から選択させるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドとの試験化合物の結合が検出される。ポリヌクレオチドと結合する試験化合物は、これにより悪性腫瘍、特に乳ガンにおける配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの活性を調節する有効な治療薬であることが明らかになった。
【0012】
本発明は従って、配列番号:27から52および76から98を有するポリペプチドの一つから選択されるか、または配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドであって、たとえば、配列番号:27から52および76から98から選択されるかまたは配列番号:1から26および53から98から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのレギュレーターまたはモジュレーター、たとえば、作用物質およびアンタゴニスト、部分作用物質、逆作用物質、アクチベーター、コアクチベーターおよび抑制物質として作用し得る化合物を同定するために用いることができる。従って、本発明は、悪性腫瘍、特に乳ガンにおける配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むかまたは配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを調節するための試薬および方法を提供する。調節は、増加調節または低下調節であり得る。配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むか、または配列番号:1から26および53なしい75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドの発現、安定性または量を調節する試薬は、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸、核酸類似体(たとえば、ペプチド核酸、ロックされた核酸)または小分子であり得る。配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの発現、安定性または量、あるいは配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むかまたは配列番号:1なしい26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの活性を調節する方法は、遺伝子置換両方、アンチセンス、リボザイムおよびトリプレックス核酸法であり得る。
【0013】
本発明の一態様において、配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むか、または配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされる完全長または部分ポリペプチドまたは配列番号:1なしい26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドと特異的に結合する、悪性腫瘍、特に乳ガンの予測、予防、診断、予知および治療において使用される抗体を提供する。
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドあるいは配列番号:27なしい52および76から98から選択されるポリペプチドを含むかまたは配列番号1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと特異的に結合する試薬の、悪性腫瘍、特に乳ガンの治療用医薬の調製における使用である。
【0014】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1から26および53なしい75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドまたは配列番号:27から52および76から98を含むかまたは配列番号1から26および53なしい75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドと特異的に結合する試薬の、悪性腫瘍、特に乳ガンの治療用医薬の調製における使用である。
さらにもう一つの態様は、配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むかまたは配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの活性または安定性、あるいは配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの発現、量または安定性を調節する試薬の、悪性腫瘍、特に乳ガンの治療用医薬の調製における使用である。
【0015】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドまたは配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むかまたは配列番号1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと特異的に結合する試薬、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物である。
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むかまたは配列番号:26から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物である。
【0016】
一態様において、配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むかまたは配列番号:27なしい52および76から98から選択されるポリペプチド、またはこれと相補的な配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞における発現のレベルを改変する試薬は、細胞を提供し、該細胞を試験試薬で処理し、配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むかまたは配列番号:27から52および76なしい98から選択されるポリペプチドまたはこれと相補的な配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞における発現のレベルを測定し、処理された細胞におけるポリヌクレオチドの発現のレベルを、未処理細胞におけるポリヌクレオチドの発現のレベルと比較することにより同定され、ここにおいて、未処理細胞におけるポリヌクレオチドの発現のレベルと比較して、処理された細胞におけるポリヌクレオチドの発現のレベルにおける変化は、細胞におけるポリヌクレオチドの発現のレベルを改変する物質を示す。
本発明はさらに、この方法により同定される試薬を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明のもう一つの態様は、配列番号:27から52および76から98から選択されるポリペプチドを含むポリペプチドを包含するか、または配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされる医薬組成物である。
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1から26および53から75から選択されるポリヌクレオチドを含み、表2または3におけるアックポリヌクレオチドについて示されたのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物である。本発明において有用な医薬組成物は、配列番号:27なしい52および76から98から選択されるポリヌクレオチド、またはその断片、抗体、または抗体断片を含むポリペプチドを含むタンパク質をさらに含む。
【0018】
(図面の簡単な説明)
図1は、G−バンディングパターンおよび細胞遺伝学的位置を有する染色体17のスケッチを示す。図面の下の部分での吹き出しにおいて、染色体17の長いアームの染色体部分の詳細図(17q12−21.1)を示す。中間の灰色で示すそれぞれの上下の長方形は、各位置の上下で標識された遺伝子を表す。この図において示される遺伝子の順序は、過剰発現の増幅を探求する実験および好適に入手可能なデータ(たとえば、UCSC、NCBIまたはEnsemble)から推論した。
図2は、図1においてすでに示したのと同じ領域およびDNA−チップハイブリダイゼーションにより測定された個々の発現値のクラスター図を示す。遺伝子を表す正方形は点線により示される。クラスター図の上部において、4つの腫瘍細胞系で、その内の2つが公知のHER−2/neu過剰発現(SKBR3およびAU565)を有するものを各発現特性に関して図示する。HER−2/neu遺伝子だけでなく、本発明により提供されるいくつかの他の遺伝子も明らかな過剰発現を示す。クラスター図の中間部に、免疫組織化学的に特徴づけられた腫瘍サンプルから得られる発現データを示す。図示されたプローブの内の2つは白い長方形により印を付けた遺伝子の明らかな過剰発現を示す。追加の情報および比較のために、いくつかの病気にかかっていないヒト組織(Clontech Inc.から入手したRNA)の発現特性を示す。ヒト脳および神経組織がHER−2/neu陽性腫瘍の発現特性と最も近接した関係を示す。
図3は、qPCR(たとえば、TaqMan)によるDNA増幅測定から得られるデータを示す。データは、いくつかの分析された乳ガンにおいて、細胞系はすでに記載された領域(ARCHEON)に位置する遺伝子の増幅を有することを示す。データは、x−軸上に各遺伝子、y−軸に40−Ctについて示した。データは、カラムの第一群においてみられるAGAPDHの発現レベルに対して標準化した。
図4は、増幅された領域についての概略図を示し、各増幅の長さおよび分析された腫瘍細胞系における過剰発現についての情報を提供する。増幅の長さおよび遺伝子の組成は、他の場所でも記載するように、ガン細胞の性質およびある種の薬剤に対する反応性に対して著しい影響を及ぼす。
【0019】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書において用いられる「特異的発現」とは、異なる発生および/または腫瘍増殖による遺伝子の発現パターンにおける量ならびに質的な差の両方を意味する。特異的に発現された遺伝子は、「マーカー遺伝子」および/または「標的遺伝子」に相当する。本発明において開示される特異的に発現された遺伝子の発現パターンは、予後または診断的乳ガンの評価の一部として用いることができる。別法として、本発明において開示される特異的に発現された遺伝子は、試薬および化合物を同定するための方法、これらの試薬および化合物の乳ガンの治療における使用並びに治療法において用いることができる。
「生物学的活性」または「生活性」または「活性」または「生物学的機能」は、本明細書において交換可能に用いられ、ポリペプチド(その本来のまたは変性されたコンフォメーションのいずれにおいても)、またはその任意の断片により、インビボまたはインビトロで、直接または間接的に機能するエフェクターまたは抗原性機能を意味する。生物学的活性としては、これらに限定されないが、ポリペプチドとの結合、他のタンパク質または分子との結合、酵素活性、シグナル伝達、DNA結合タンパク質、転写レギュレーターとしての活性、損傷したDNAと結合する能力などが挙げられる。生活性は、患者のポリペプチドに直接影響を及ぼすことにより調節できる。別法として、生活性は、ポリペプチドのレベルを調節すること、たとえば、対応する遺伝子の発現を調節することにより改変できる。
【0020】
「マーカー」または「バイオマーカー」なる用語は、その存在または濃度が検出でき、既知の状態と関連する、たとえば疾患状態と関連する生物学的分子、たとえば、核酸、ペプチド、ホルモンなどを意味する。
本明細書において用いられる「マーカー遺伝子」とは、その発現パターンを、悪性腫瘍の予測、予後判定または診断または乳ガン評価の一部として利用できるか、または別法として悪性腫瘍、特に乳ガンの治療または予防に有用な化合物を同定する方法において用いることができる、特異的に発現された遺伝子を意味する。マーカー遺伝子は、標的遺伝子の特徴を有していてもよい。
本明細書において用いられる「標的遺伝子」とは、標的遺伝子発現または標的遺伝子産物の活性のレベルの調節が悪性腫瘍、特に乳ガンの症状を緩和するように作用し得るように乳ガンにおいて関与する特異的に発現された遺伝子を意味する。標的遺伝子は、マーカー遺伝子の特徴を有していてもよい。
本明細書において用いられる「生物学的サンプル」なる用語は、生物または生物の成分(たとえば、細胞)から得られるサンプルを意味する。サンプルは、任意の生物組織または液体のものであってもよい。サンプルは患者から得られる「臨床」サンプルであることが多い。かかるサンプルとしては、これらに限定されないが、喀痰、血液、血液細胞(たとえば、白血球)、組織または微細穿針生検、細胞含有体液、浮動性核酸、尿、腹水、および胸水、またはこれから得られる細胞が挙げられる。生物サンプルは、組織の部分、たとえば、組織学的目的のために採取された凍結セクションを含んでもよい。
【0021】
「アレイ」または「マトリックス」とは、装置上のアドレスで呼び出せる位置または「アドレス」の配置を意味する。位置は、二次元アレイ、三次元アレイ、または他のマトリックスフォーマットにおいて配列させることができる。位置の数は、2、3から少なくとも100,000の範囲まで可能である。最も重要なことには、各位置は、全体的に独立した反応部位を表す。アレイは、これらに限定されないが、核酸アレイ、タンパク質アレイおよび抗体アレイを包含する。「核酸アレイ」は、核酸プローブ、たとえば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは遺伝子のさらに大きな部分を含むアレイを意味する。アレイ上の核酸は、好ましくは一本鎖である。プローブがオリゴヌクレオチドでアレイは、「オリゴヌクレオチドアレイ」または「オリゴヌクレオチドチップ」と呼ばれる。本明細書において「ミクロアレイ」とは、「バイオチップ」または「生物学的チップ」、少なくとも約100/cm2の独立した密度領域を有する領域のアレイを意味する。ミクロアレイにおける領域は、約10〜250μmの間の範囲の直径などの典型的な寸法を有し、ほぼ同じ間隔でアレイにおいて他の領域と隔てられている。「タンパク質アレイ」とは、本来の形態または変性されたポリペプチドプローブまたはタンパク質プローブを含むアレイを意味する。「抗体アレイ」とは、これらに限定されないが、モノクローナル抗体(たとえば、マウスから得られるもの)、キメラ抗体、ヒト化抗体またはファージ抗体および一本さ抗体ならびに抗体から得られる断片を含む抗体を含むアレイを意味する。
【0022】
本明細書において用いられる「アゴニスト」なる用語は、タンパク質の生活性を模倣するかまたは増加調節する作用物質を意味する。アゴニストは、野生型タンパク質の少なくとも一つの生活性を有する様々なタンパク質またはその誘導体である。アゴニストは、遺伝子の発現を増加調節するか、またはタンパク質の少なくとも一つの生活性を増大させる化合物でもある。アゴニストは、ポリペプチドともう一つ別の分子、たとえば、標的ペプチドまたは核酸との相互作用を増大させる化合物でもある。
本明細書において用いられる「アンタゴニスト」なる用語は、タンパク質の少なくとも一つの生活性を減少調節(たとえば、抑制または制御)する物質を意味する。アンタゴニストは、タンパク質ともう一つの分子、たとえば標的タンパク質、リガンドまたは酵素基質管の相互作用を抑制または減少させる化合物である。アンタゴニストは、遺伝子の発現を現象調節するか、または存在する発現されたタンパク質の量を減少させる化合物でもある。
【0023】
本明細書において用いられる「小分子」とは、約5kD未満、最も好ましくは約4kD未満の分子量を有する組成物を意味する。小分子は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、炭水化物、脂質または他の有機(炭素含有)または無機分子であり得る。多くの製薬会社が化学および/または生物学的混合物、多くは真菌、細菌、または藻類抽出物の大規模なライブラリーを有しており、これは、生活性を調節する化合物を同定するために本発明の分析でスクリーニングできる。
本明細書において用いられる「調節された」または「調節」あるいは「調整された」または「調整」および「特異的に調整された」なる用語は、増加調節[すなわち、活性化または刺激(たとえば、アゴナイジングまたは増強による)]および減少調節[すなわち、制御また抑制(たとえば、拮抗、減少または抑制による)]の両方を意味する。
【0024】
「転写調節単位」とは、DNA配列、たとえば、開始シグナル、エンハンサー、およびプロモーターであって、これらが操作可能に連結されたタンパク質コーディング配列の転写を誘発または制御するものを意味する。好ましい具体例において、遺伝子の一つの転写は、発現が意図されるセルタイプにおける組み換え遺伝子の発現を制御するプロモーター配列(または他の転写調節配列)の制御下にある。として処方することができる。組み換え遺伝子は、ポリペプチドの天然に存在する形態の転写を調節する配列と同じかまたは異なる転写dちょうせつは胃列の制御下にある。
「誘導体」なる用語は、ポリペプチド配列、またはポリヌクレオチド配列の化学的修飾を意味する。ポリヌクレオチド配列の化学的修飾は、たとえば、アルキル、アシル、またはアミノ基による水素の置換を含む。誘導体ポリヌクレオチドは、天然の分子の少なくとも一つの生物学的または免疫学的機能を保持するポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドは、グリコシル化、pegylation、あるいはこれが由来するポリペプチドの少なくとも一つの生物学的または免疫学的機能を保持する任意の同様のプロセスにより修飾されたものである。
【0025】
「ヌクレオチド類似体」なる用語は、少なくとも一つの性質において天然に存在するヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと異なるが、それぞれの天然に存在するヌクレオチドの機能的特徴(たとえば、塩基対、ハイブリダイゼーション、コーディング情報)を示し、前記組成に関して用いることができるオリゴマーまたはポリマーを意味する。ヌクレオチド類似体は、天然に存在しない塩基またはポリマー主鎖を含んでもよく、その例は、LAN、PNAおよびモルホリノである。ヌクレオチド類似体は、その天然に存在するカウンターパートまたは等価物と異なる少なくとも一つの分子を有する。
本明細書において用いられる「乳ガン遺伝子」とは、配列番号:1から26および53から75のポリヌクレオチド、並びにその誘導体、断片、類似体および相同体、これによりコードされるポリペプチド、配列番号:27から52および76から98のポリペプチド、その誘導体、断片、類似体および相同体ならびに表1から5および図1から4において開示された情報を用いて当該分野において周知の標準的技術で誘導化または同定できる対応するゲノム転写単位を意味する。配列番号:1から26および53から75のポリヌクレオチド配列および配列番号:27から52および76から98のポリペプチドのGenBank Locuslink IDおよびUniGene受け入れ番号を表1に示し、遺伝子種類、遺伝子機能および細胞レベル下の局在化を表2および3に示す。
【0026】
本明細書において用いられる「染色体領域」なる用語は、制限酵素DNA断片長多型(RFLP)、一塩基多型(SNP)、発現遺伝子配列座(EST)、配列タグ部位(STS)、ミクロサテライト、タンデムリピートの繰り返し数(VNTR)および遺伝子などの細胞遺伝学または他の遺伝子マーカーにより定義できる染色体上の連続DNA鎖を意味する。典型的には、染色体領域は、2メガベース(MB)まで、4MBまで、6MBまで、8MBまで、10MBまで、20MBまでまたはさらに大きなMBからなる。
「改変された染色体領域」または「異常な染色体領域」なる用語は、染色体組成およびDNA配列の構造の変化を意味し、これは次の事象により起こり得る:増幅、欠失、反転、挿入、転座および/または組み入れ。所定の細胞が染色体の2以上のコピーを有する三染色体は、染色体または染色体領域の「増幅」なる用語の意味に含まれる。
【0027】
本発明は、ポリヌクレオチド配列およびこれによりコードされるタンパク質、並びにポリヌクレオチド配列、コードされたタンパク質に向けられる抗体、および悪性腫瘍、特に乳ガンの危険性があるかまたはかかっている個人についての予測、予防、診断、予後判定および治療的使用を提供する。本発明において開示される配列は、乳ガンから得られるサンプルにおいて特異的に発現されることが見いだされている。
本発明は、乳ガンの臨床的徴候を示す患者の腫瘍生検において特異的に調節(増加または減少調節)される43の遺伝子の同定に基づく。乳ガン状態において特異的に調節される43のヒト遺伝子の同定およびその疾患についての重要性は本明細書の実施例に記載する。これらの遺伝子の同時発現のキャラクタライゼーションにより、乳ガンにおける役割が新たに確認された。遺伝子の名前、データベース受入番号(GenBankおよびUniGene)並びにコードされたタンパク質およびその細胞レベル下の局在化の推定または既知の機能を表1から4に示す。遺伝子増幅に用いられるプライマー配列を表5に示す。
【0028】
いずれかの状況において、正常な発現と比較して過剰または低いレベルにおけるこれらの遺伝子の検出発現により、悪性腫瘍および乳ガンの診断の基礎が提供される。さらに、臨床試験中の化合物の有効性の試験において、これらの遺伝子の発現レベルの減少は、疾患状態から正常な状態へ戻ることに相当し、従って化合物の正の効果を示す。
本発明のもう一つの態様は、所定のゲノム領域内の隣接する遺伝子は互いに直接または間接的に機能的に相互作用し、影響を及ぼしあうという観察に基づく。腫瘍病巣において同時増幅され、同時発現される機能的に相互作用する遺伝子をコードするゲノム領域は、「ARCHEON」と定義されている。(ARCHEON=腫瘍において観察される変化した染色体発現の改変された領域)。染色体の変化は1以上の遺伝子に影響を及ぼすことが多い。これは、増幅、複製、挿入、組み込み、反転、転座、および欠質に関して当てはまる。これらの変化は、一つまたは複数の遺伝子の発現レベルに影響を及ぼし得る。ガン診断および治療の分野において最も一般的なことに、発現レベルの変化は一つのすいていされる関連する標的遺伝子、たとえば、MLVI2(5p14)、NRASL3(6p12)、EGFR(7p12)、c−myc(8q23)、Cyclin D1(11q13)、IGF1R(15q25)、HER−2/neu(17q12)、PCNA(20q12)について調査されている。ARCHEONの遺伝子は、組織特異的発現パターンを有する遺伝子クラスターを形成する。ARCHEONを表すと推定されるかかる遺伝子クラスター内の個々の遺伝子の相互作用の様式は、タンパク質−タンパク質またはタンパク質−核酸相互作用のいずれかであり、これは以下の例により説明されるが、限定されない:ARCHEON遺伝子相互作用は、同じシグナル伝達経路であり、リガンド結合に対するレセプター、レセプターキナーゼおよびSH2またはSH3結合、プロモーター結合に対する転写因子、転写因子結合に対する核ホルモンレセプター、ホスホ基供与(たとえば、キナーゼ)および受容(たとえば、リンタンパク質)、mRNA安定化タンパク質結合および転写プロセスである。対になった遺伝子および/またはこれによりコードされるタンパク質またはこのようなさらに高次の基の個々の活性および特異性は、当業者により周知のデータベース内で公開または寄託されている論文から容易に推論できる。しかしながら、ARCHEONに関連して、ARCHEONの一部であるメンバーの相互作用はその個別の機能を増強、悪化または減少させる。この相互作用は、これらは通常同時発現される所定の正常な組織において重要である。従ってこれらのクラスターは発生中に共通して保存される。しかしながら、腫瘍病巣におけるこれらのARCHEONのメンバーの異常な発現は、(特にこれらが通常発現されない組織内で)腫瘍特性、たとえば、増殖、侵襲性および薬剤反応性に対して影響を及ぼす。これらの隣接する遺伝子の相互作用のために、デレギュレーション事象に関与するARCHEONのメンバーを決定することが重要である。この点に関して、腫瘍病巣における増幅および欠失事象は、特に興味深い。
【0029】
本発明は、(a)各mRNA種の相対的mRNA量を測定するか、または(b)定量的PCRにより1以上の染色体領域のコピー数を測定することにより、染色体の変化を検出する方法に関する。一具体例において、ゲノム構成および染色体領域の空間制御に関する情報は、ヒトゲノムの配列情報(UCSC、NCBI)の生物情報分析により評価し、次いでGeneChip DNA−アレイ(Affymetrix)から得られるRNA発現データおよび/またはRNA−サンプルまたはゲノムDNAから得られる定量的PCR(TaqMan)と組み合わせられる。
さらにもう一つの例において、改変(増殖または欠失)された染色体領域上に位置する遺伝子の機能的関係が確立されている。この改変された染色体領域は、該領域上に位置する遺伝子が機能的に相互作用するならば、ARCHEONと定義される。
【0030】
17q12座を、HER−2/neu遺伝子を有する一モデル型として調査した。隣接する遺伝子における増幅事象を検出するために高分解能分析を確立することにより、乳ガン細胞型において一般に同時増幅される43遺伝子および患者サンプルを同定した。遺伝子アレイ技術および免疫学的方法により、腫瘍サンプルにおけるその同時過剰発現を証明した。驚くべきことに、組織サンプルをHER−2/neu遺伝子陽性腫瘍サンプルと凝集させることにより、この大きなゲノム領域(43遺伝子を含む)の発現パターンは、脳を制御するために非常に類似している。HER−2/neu遺伝子腫瘍組織は、類似した発現パターンを示さなかった。実際、これらのクラスター内の遺伝子の一部はマウスモデル型において神経発生(HER−2/neu、THRA)に重要であるか、または神経細胞(NeuroD2)において発現されることが記載されている。さらに、ヒトよび齧歯類ゲノムにおいて類似した遺伝子の組み合わせを探すことにより、各遺伝子のいくつかのイソ型を有する3p21および12q13上のさらなるホモローガスな染色体領域が見つかった。同じ経路の一部である(HER−2、neu、GRB7、CrkRS、CDC6)、互いの発現に影響を及ぼす(HER−2/neu、THRA、RARA)、互いに相互作用する(PPARGBP、THRA、RARA、NR1D1またはHER−2/neu、GRB7)、あるいは所定の組織において発現される(CACNB1、PPARGBP等)43候補遺伝子間の複数の相互作用についての強力な証拠がある。興味深いことに、同定されたARCHEONのゲノム領域はHER−2/neu陰性細胞(MCF7)(通常タモキシフェン処置に対して感受性)の獲得タモキシフェン耐性において増幅される[Achuthanら、2001、(2)]。
【0031】
さらに、これらのARCHEON内の遺伝子の改変により治療に対する反応性が改変されることが観察された。驚くべきことに、ARCHEON内の遺伝子は、HER−2/neu相同対の不在下でさえも重要である。ARCHEON内の遺伝子のいくつかは、治療介入の標的としてすでに知られている。たとえば、TOP2アルファはアントラサイクリンの標的である。THRAおよびRARAはホルモンおよびホルモン類似体(たとえば、T3、rT3、RA)により標的とされ得る。その高い親和結合部位および利用可能なスクリーニング分析(その転写可能性に基づくリポーター分析)のために、腫瘍病原生理学と関連することが示されているホルモンレセプターは薬剤スクリーニングおよび悪性腫瘍、特に乳ガンの治療についての理想的な標的である。この点に関して、ARCHEONのどのメンバーが腫瘍病巣において改変されているかを知ることは本質的である。特に、ARCHEON遺伝子が増幅される性質、数および程度を知ることが重要である。ARCHEONは類似した内因性レトロウイルス(たとえば、HERV−K=「ヒト内因性レトロウイルス」)と隣接しており、そのいくつかは乳ガンにおいて活性化される。これらのウイルスはARCHEONの進化複製に関与する。
17q12領域の分析により、ICHにより得られたデータおよびHER−2/neu遺伝子と共に動じ増幅されるいくつかの追加の遺伝子が同定された。RNAベースの定量的RT−PCR(TaqMan)を腫瘍細胞系から得られるDNAベースのqPCRとのを比較分析することにより、同じ増幅された領域が同定された。17q11.2〜21領域の遺伝子を制限のためではなく例示のために示す。前記染色体領域の図を図1に示す。
【0032】
17q12ARCHEONの一部である遺伝子の生物学的関連性
MLN50
乳ガン由来の転位性腋窩リンパ節、traf4および3からのcDNAの差次的スクリーニングにより、乳ガンにおいて過剰発現される他の新規遺伝子(MLN51、MLN62、MLN64)を同定した[Tomasettoら、1995,(3)]。MLN50と表される一つの遺伝子を、放射性インサイチュハイブリダイゼーションにより17q11−q21.3にマップした。乳ガン細胞系において、4kb MLN50mRNAの過剰発現を、遺伝子の増幅ならびに同じ領域にマップされるERBB2の増幅および過剰発現と相関させた。筆者らは2遺伝子が同じアンプリコン(amplicon)に属すると示唆している。染色体領域17q11−q21の増幅は、ヒト乳ガンにおいて起こる最も一般的な事象である。予想される261アミノ酸MNL50タンパク質はN末端LIM領域およびC末端SH3領域を含む。彼らはタンパク質LASP1を「LIMおよびSH3タンパク質」と名付けた。ノザンブロット分析により、LASP1mRNAは試験された全ての正常な組織において規定レベルで発現され、原発乳ガンの8%において過剰発現された。これらのガンのほとんどにおいて、LASP1およびERBB2は同時に過剰発現された。
【0033】
MLLT6
MLIT6(AF17)遺伝子は、融合点の3−プライマーに位置するロイシン−ジッパー二量化モチーフおよび末端のシステイン豊富な領域を含む。AF17は転写抑制または活性化に関与する領域とあらかじめ結合したアミノ酸鎖を含むことが見いだされた。
バンド11q23を含む染色体転移は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者のほぼ10%および急性骨髄性白血病(AML)の患者の5%以上と関連する。転移に関与する11q23の遺伝子はALL1、HRX、MLL、およびTRX1とさまざまに表される。まれな転移の一つにおけるパートナー遺伝子、t(11;17)‘q23;q21)は17q12に関してMLLT6と表される。
【0034】
ZNF144(Mel18)
Mel18cDNAは新規なシスリッチな亜鉛フィンガーモチーフをコードする。該遺伝子は、ほとんどの腫瘍細胞系において強力に発現されるが、その正常な組織発現は、神経起源の細胞に限定され、胎児神経細胞において特に豊富であった。これは、BMI1を含むRING−フィンガーモチーフファミリーに属する。MEL18/BMI1遺伝子ファミリーは、ショウジョウバエ「ポリコーム(polycomb)」遺伝子群の哺乳動物ホモログの代表であり、重要な調節因子、たとえば、マウスPc−G遺伝子の代表例として、Hox遺伝子、Bmil、Mel18およびM22遺伝子の発現パターンの維持に関与する記憶メカニズムに属する。これらの遺伝子のそれぞれのノックアウトマウス突然変異体において観察される共通の発現型は、Hox遺伝子発現および中軸骨格発生の調節においてだけでなく、造血細胞系の増殖および生存の制御においてもの重要な役割を示す。これは、観察される増殖の減少調節と一致して、リンパ芽球性白血病において観察される。MEL18遺伝子は、脊椎動物間で保存される。そのmRNAは胎盤、肺、および腎臓において高レベルで発現され、肝臓、膵臓、および骨格筋において低レベルで発現される。興味深いことに、子宮頸管および腰仙−HOX遺伝子発現は、HoxB遺伝子クラスターが17q12座に対して遠位の17q上に存在する正常乳房組織に関していくつかの原発乳ガンにおいて異なる。さらに、増殖する細胞の持続性ネストを有する分化の遅れが、HOXB7変換SkBr3細胞とともに同時培養された内皮細胞において見いだされ、これは17q12増殖を示す。これらの細胞の発ガン性はインビボで評価されている。無胸腺ヌードマウスにおける異種移植片は、照射されるかまたは照射しないかのいずれかでSkBr3/HOXB7細胞が血管の数が増加した腫瘍を発達させ、一方、マウスが実質的に照射されなければ親SkBr3細胞は任意の腫瘍を発生させなかった。本発明の一部として、本発明者らは、MEL18がHer−2/neu遺伝子増幅を有する腫瘍において特異的に過剰発現されることを見いだし、これはHox発現について重要である。
【0035】
ホスファチジルイノシトール−4−ホスフェート5−キナーゼII型ベータ;PIP5K2B
ホスホイノシチドキナーゼはシグナル伝達において中心的な役割を果たす。ホスファチジルイノシトール−4−ホスフェート5−キナーゼ(PIP5K)ホスホリレーとホスファチジルイノシトール−4−ホスフェートはホスファチジルイノシトール4,5−ビホスフェートを生じる。PIP5K酵素は、様々な免疫反応性、および分子量を有する多数のイソ型として存在する。これらは、他のホスファチジルイノシトール、タンパク質、および脂質キナーゼにおいて存在するキナーゼのチーフとほとんど相同性を有さないという点でユニークである。ヒト胎児脳cDNAライブラリーをPIP5K2B ESTでスクリーニングすることにより、完全長遺伝子を単離できる。推測される416アミノ酸タンパク質はPIP5K2Aと78%同一である。SDS−PAGEを用いて、著者らは細菌により発現されたPIP5K2Bは47kDの分子量を有すると推定した。ノザンブロット分析は、いくつかのヒト組織において豊富に発現された6.3kb PIP5K2B転写物を検出した。PIP5K2Bはp55TNFレセプター(TNFR1)の膜近接領域と特異的に相互作用し、PIP5K2B活性はTNF−アルファでの処置により哺乳動物において増大する。膜結合基体とATPとのモデルの複合体は、どのようにしてホスホイノシチドキナーゼは膜界面でインサイチュでその基体をリン酸化できるかを示す。基体結合部位は、1側でオープンであり、ホスファチジルイノシトール3−および5−ホスフェートについての二重特異性と一致する。PIP5K2Aのアミノ酸配列は公知キナーゼと同一性を示さないが、組み換えPIP5K2Aはキナーゼ活性を示した。PIP5K2Aは推定Src同一性3(SH3)領域−結合配列を含む。COS7細胞におけるマウスPIP5K1Bの過剰発現は、ショートアクチンファイバーの増大およびアクチンストレスファイバーの減少を誘発した。
【0036】
TEM7
遺伝子発現の連続的な分析(SAGE)を用いて、腫瘍血管形成中に向上した発現を示すいくつかの腫瘍内皮マーカー(TEM)に対応する部分的cDNAを同定できた。同定された遺伝子にはTEM7があった。データベース検索と5−プライムRACEを用いて、500アミノ酸タイプI貫膜タンパク質をコードする全体的なコーティング領域が記載されている。TEM7の細胞外領域はプレキシン様領域を含み、ECMタンパク質nidogenに対して弱い相同性を有する。分泌された細胞外マトリックス分子において通常見いだされるこれらの領域の機能は未知である。nidogenはそれ自体エンタクチンタンパク質ファミリーに属し、周辺から縦方向への移動に切り替えることにより遊走軸策の経路を決定する助けとなる。RGD認識部位により媒介されるメカニズムによりトロホブラストの成長を促進するので、エンタクチンは細胞遊走に関与し、着床に際して子宮内基底膜の侵入時に重要な役割を果たす。エンタクチンは胸腺細胞接着を促進するので、胸腺遊走に少しだけ影響を及ぼすが、エンタクチンはT細胞発生時に胸腺局在化における役割を果たし得ることが示唆される。
【0037】
ヒト結腸直腸のインサイチュハイブリダイゼーション分析により、TEM7が腫瘍ストロマの内皮細胞において明らかに発現されるが、正常な結腸組織の内皮細胞においては発現されなかったことが明らかになった。様々な正常成体マウス組織における発現を分析するためにインサイチュハイブリダイゼーションを用いて、TEM7は主にマウス組織または腫瘍において検出できなかったが、マウス脳においては豊富に発現されていたことが観察された。
【0038】
ZNFN1A3
B細胞cDNAライブラリーをマウスAiolosN−末端cDNAプローブでスクリーニングすることにより、ヒトAiolos、またはZNFN1A3をコードするcDNAが得られた。そのマウスカウンターパートと86%同一である推定509アミン酸のタンパク質は、そのN末端において4つのDNA−結合亜鉛フィンガーとそのC末端においてタンパク質二量化を媒介する2の全フィンガーを有する。これら領域は、それぞれマウスタンパク質における対応する領域に対して100%および96%相同性である。ノザンブロット分析により、末梢血白血球、脾臓、および胸腺において主な11.0−とわずかの4.4−kb ZNFN1A3転写物の強力な発現が明らかになり、肝臓、小腸、および肺において発現は低かった。
造血亜鉛フィンガーDNA−結合タンパク質であるイカロス(ZNFN1A1)は、リンパ球分化の主な調節因子であり、白血病発生に関与する。Ikarosの正常な機能を実行するためには、配列特性DNA結合、トランスアクチベーション、および二量化領域が必要である。関連する亜鉛フィンガータンパク質において突然変異、Aiolosを有するマウスは、B細胞リンパ腫にかかりやすい。化学的に誘発されたネズミリンパ腫において、Znfn1a1遺伝子を取り巻くマーカー上の対立遺伝子損失が分析された腫瘍の27%において検出された。さらに、特異的Ikaros発現は、主にマウスホルモン産生下垂体前葉細胞あり、それ自体が多数のエンドクリン細胞ホルモンおよび増殖特性に関与する繊維芽細胞成長因子レセプター4(FGFR4)発現に関して重要であり、これ自体FGFR4は正常および腫瘍性下垂体において異なった発現される。さらに、ポリコーム機能を拮抗するIkarosは、SWI/SNFタンパク質を含むクロマチンリモデリング複合体と結合する。興味深いことに、開示されたARCHEONのテロメア末端で、SWI/SNF複合体メンバーSMARCE1(=クロマチンのSWI/SNF−関連、マトリックス−関連、アクチン−依存性レギュレーター)があり、記載された増幅の一部である。Ikarosとパリンドローム結合タンパク質(PBP)の関連する結合特異性のために、ZNFN1A3はHer2/neuエンハンサーを調節することができることが示唆される。
【0039】
PPP1R1B
中脳ドーパミン作用性ニューロンは多数の脳機能において重要な役割を果たし、ドーパミン作用性経路による異常なシグナリングはいくつかの主要な神経および精神障害に関与する。ドーパミンの作用について一つのよく研究された標的は、DARPP32である。極端にドーパミンおよびグルタメートで刺激されたラット尾状核−皮殻において、DARPP32は、ドーパミンD1レセプターを発現する中程度のサイズのとげ状ニューロンにおいて発現される。DARPPの伊能は、レセプター刺激により調節されるようである。どーぱm員作用性およびグルタメート作用性(NMDA)レセプター刺激はいずれもDARPP32リン酸化の程度を調節するが、反対方向である。
【0040】
ヒトDARPP32は、線条体cDNAライブラリーから単離された。204アミノ酸DARPP32タンパク質は、ウシおよびラットDARPP32タンパク質とそれぞれ88%と85%の配列同一性を共有する。DARPP32配列は、タンパク質の活性部分の代表であるN末端により特に保存される。ノザンブロット分析により、2.1kbのDARPP32mRNAがヒト尾状核において皮質におけるよりも高度に発現されることが証明された。死後のヒト脳に対するインサイチュハイブリダイゼーションは、全ての大脳新皮質においてDARPP32発現のレベルは低く、表面層においてハイブリダイゼーションは最強であることが示した。CDK5はインビトロおよび無傷の脳細胞におけるDARPP32をリン酸化した。phospho−thr75DARPP32は競合的メカニズムによりPKAをインビトロで抑制する。線条体細胞において、CDK5−特異的抑制物質によるか、または遺伝子組み換えマウスを使用することによりphospho−thr75DARPP32を減少させると、結果としてPKAのドーパミン誘発性リン酸化が増大し、ピーク電圧でゲートされたカルシウム電流が増大した。かくして、DARPP32は、別個のメカニズムにより、セリン/トレオニンキナーゼおよびセリン/トレオニンホスファターゼを制御する二機能シグナル伝達分子である。
【0041】
DARPPおよびt−DARPPは胃ガンにおいて過剰発現される。これらの2つのタンパク質の胃ガンにおける過剰発現は、腫瘍細胞に対して重要な生存のために有利な条件を提供し得ることが示唆される。Darpp32は、メスラットおよびマウスにおいてプロゲステロンにより促進される性的受容性において必須の中間体である。メスラットにおける性的受容性に対するプロゲステロンの促進効果は、Darpp32に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによりブロックされる。Darpp32遺伝子に対して突然変異を有さないホモ接合マウスは、野生型同腹子と比較した場合、プロゲステロンにより促進される性的受容性が最低レベルであり、プロゲステロンは視床下部cAMPレベルおよびcAMP−依存性タンパクキナーゼ活性を著しく増大させた。
【0042】
CACNB1
1991年、cDNAクローンは、ラット脳cDNAライブラリーからウサギ骨格筋ジヒドロピリジン感受性カルシウムチャンネルベータサブユニットと高い相同性でタンパク質をコードする[Pragnellら、(1991)、(4)]。このラット脳ベータサブユニットcDNAは、大脳半球と海馬において高レベルで発現された3.4−kbメッセージにおいて高レベルで発現されるが、小脳においてはずっと低いレベルで発現される3.4−kbメッセージとハイブリッド形成した。オープンリーディングフレームは、骨格筋ベータサブユニットと82%相同性である、予想される量が65679Daの597のアミノ酸をコードする。対応するヒトベータサブユニット遺伝子は、体細胞ハイブリッドの分析により染色体17に局在化していた。著者らは、コードされた脳ベータサブユニットは、骨格筋においてそのイソ型と非常に類似している一次構造を有するが、ニューロンカルシウムチャンネルの全体的調節成分としての類似した役割を有し得ることを示唆した。
【0043】
RPL19
リボソームは、原核生物と真核生物間で保存される唯一の細胞器官である。真核細胞において、この細胞器官は60S大サブユニットと40S小サブユニットから成る。哺乳動物リボソームは、4種のRNAと約80の異なるリボソームタンパク質を含み、そのほとんどは等モル量で存在するようである。哺乳動物細胞において、リボソームタンパク質は全体の細胞タンパク質の15%を占め、全細胞mRNAの7から9%を占め得る異なるリボソームタンパク質遺伝子の発現は、タンパク質合成についての細胞の様々な要件にあうように同等に調節される。哺乳動物リボソームタンパク質遺伝子は多重遺伝子ファミリーのメンバーであり、そのほとんどが多数の処理された偽遺伝子と単機能イントロンガン入遺伝子からなる。多数の偽遺伝子の存在は、機能的リボソームタンパク質遺伝子の研究の妨げであった。体細胞ハイブリッドの研究により、6の哺乳動物リボソームタンパク質cDNAと相補性のDNA配列は、染色体5、8および17に割り当てられることが解明された。10の断片が3染色体にマップされた[Nakamichiら、1986、(5)]。これらはおそらくは機能性(発現された)遺伝子と偽遺伝子の混合物である。5q23−q33に位置するものは、種間ハイブリッドにおけるチャイニーズハムスターエメチン耐性突然変異を援助し、従って、転写的に活性なRPS14遺伝子である。1989年に、多数の偽遺伝子の存在下でイントロン含有遺伝子を検出するためのPCRベースの方法が記載された。この技術は、7のヒトリボソームタンパク質遺伝子のイントロン含有PCRまたはDNAアレイおよび産物を同定するため、およびヒト/齧歯類体細胞ハイブリッドに対するハイブリダイゼーションによりその染色体位置をマップするために用いられた[Feoら、1992、(6)]。すべての7のリボソームタンパク質遺伝子は、異なる染色体上にあることが見いだされた:RPL19は17p12−q11上;RPL30は8上;RPL35Aは18上;RPL36Aは14上;RPS6は9peter−p13上;RPS11は19cen−qter上;RPS17は11pter−p13上。これらは、すでにマップされたリボソームタンパク質遺伝子(染色体5上のS14、XqおよびYp上のS4、および9q3−q34上のRP117A)の染色体位置と異なる部位でもある。蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより、RPL19遺伝子の位置が17q11にマップされた[Daviesら、1989、(7)]。
【0044】
PPARBP、PBP、CRSP1、CRSP200、TRIP2、TRAP220、RB18A、DRIP230
甲状腺ホルモンレセプター(TR)は、様々な特異的標的遺伝子の発現を調節するホルモン依存性転写因子である。これらは、そのはじめの翻訳および核転移からレチノイドXレセプター(RXR)とのヘテロ二量化、他の転写因子との機能的相互作用および基本的転写器官、および最後に分解へと進行する際に、多くのタンパク質と特異的に相互作用する。TRの転写効果および他の潜在的な機能の基礎となるメカニズムの解明を助けるために、酵母相互作用トラップ、酵母2−ハイブリッド系のバージョンを用いて、TR−ベータ−1(THRAB)のリガンド結合領域と特異的に相互作用するタンパク質を同定した [Leeら、1995、(8)]。著者らは、TRIP2を含むいくつかの異なるTR−相互作用タンパク質(TRIP)をコードするHeLa細胞cDNAを単離した。TRIP2は甲状腺ホルモンの存在下のみでラットThrbと相互作用した。これは、RXR−アルファとリガンド−独立性相互作用を示すが、どのような条件下でもグルココルチコイドレセプター(NR3C1)とは相互作用しなかった。ヒトBリンパ腫細胞cDNA発現ライブラリーを、抗p53モノクローナル抗体1801を用いてイムノスクリーニングすることにより、PPARBPが同定され、これを「PAb1801モノクローナル抗体により認識された」としてRP18Aと呼んだ[Draneら、1997、(9)]。予想される1566アミノ酸RB18Aタンパク質はいくつかの潜在的な核局在化シグナル、13の潜在的なN−グリコシル化部位、および多数の潜在的なリン酸化部位を含む。p53との共通の抗原性決定因子を共有するにもかかわらず、RB18Aはp53と著しいヌクレオチドまたはアミノ酸配列類似性を示さない。RB18Aはp53の分子量の計算値は166kDであるが、組み換えRB18Aの見かけの分子量はSDS−PAGE分析によると205kDであった。著者らは、RB18Aはp53とDNA結合、p53結合、および自己オリゴマー化を含む機能的特性を共有することを示した。さらに、RB18Aは、p53のDNAに対する配列特異的結合を活性化でき、これは量タンパク質間の不安定な相互作用により誘発された。ヒト組織のノザンブロット分析により、腎臓をのぞく試験されたすべての組織において8.5kbのRB18A転写物が検出され、心臓において最も発現が高かった。さらに、マウスPparbpは、「Ppar−結合タンパク質」としてPbpとよばれるが、酵母2−ハイブリッドシステムにおいてPpar−ガンマ(PPARG)リガンド−結合領域と相互作用するタンパク質として同定された[Zhuら、1997、(10)]。本発明者らは、PbpはPPAR−アルファ(PPARA)、RAR−アルファ(RARA)、RXR、およびTR−ベータ−1とインビトロで結合することも見いだした。Pbpのこれらのレセプターとの結合は、特定のリガンドの存在下で増大した。PPAR−ガンマのC末端のから最後の12アミノ酸が欠失している結果として、PbpとPPAR−ガンマ間の相互作用がなくなった。Pbpは適度にPPAR−ガンマの転写活性を増大させ、Pbpの切形は主な負のリプレッサーとして作用し、このことは、PbpがPPARの真性転写コアクチベーターであることを示唆する。予想される1560のアミノ酸Pbpタンパク質は2のLXXLLモチーフを含み、これは核レセプターに対するいくつかの子アクチベーターの結合に必要であり、十分であると考えられる。ノザンブロット分析は、試験されたすべてのマウス組織においてPbp発現を検出し、肝臓、腎臓、肺、および精巣において高レベルであった。インサイチュハイブリダイゼーションは、マウス個体発生中にPbpが発現されることを示し、このことは、Pbpの細胞増殖および文化における可能な役割を示唆する。成体マウスにおいて、インサイチュハイブリダイゼーションは肝臓、肺における気管支上皮、腸粘膜、腎皮質、胸腺皮質、脾臓小胞、および精巣における精上皮においてPbp発現を検出した。TRAP220とよばれるラテロンPPARBPが免疫精製されたTR−アルファ(THRA)−TRAP複合体から同定された[Yuanら、1998、(11)]。著者らは、TRAP220をコードするJurkat細胞cDNAをクローンした。予想される1581のアミノ酸TRAP220タンパク質はLXXLL領域を含み、これは他の核レセプター相互作用タンパク質において見いだされる。TRAP220はほとんどRB18Aと同一であり、これらのタンパク質は主に延長されたTRAP220上N末端により異なる。TR−アルファの非存在下で、TRAP220は他のTRAPとの一つの複合対中に存在するようである。TRAP220はTR−アルファと直接リガンド依存性相互作用を示し、これはTR−アルファのC末端と、少なくとも一部にはTRAP220のLXXLL領域により媒介された。TRAP220はまた、ビタミンDレセプター、RARA、RXRA、PPARA、PPARG、およびエストロゲンレセプター−アルファ(ESR1;133430)を含む他の核レセプターと、リガンド二位損した方法で相互作用した。TRAP220はトランスフェクトされた細胞においてヒトTR−アルファにより媒介される転写を適度に刺激したのに対して、LXXLLモチーフを含む断片は、トランスフェクトされた細胞および無細胞転写システムの両方においてトーパミン陰性インヒビターとして作用した。さらなる研究により、TRAP220はTR−アルファ−TRAP複合体の機能時に他のTRAPをTR−アルファに固定する際に主要な役割を果たすこと、およびTRAP220が核レセプター超科の包括的な子アクチベーターであり得ることが示された。核レセプターコアクチベーターであるPBPは、エストロゲンの非存在下でエストロゲンレセプター−アルファ(ESR1)と相互作用する。この相互作用は、エストロゲンの存在下で向上されるが、抗エストロゲンタモキシフェンの存在下で低減される。PBPの培養細胞中へのトランスフェクションの結果、エストロゲン依存性転写が向上され、このことはPBPがエストロゲンレセプターシグナリングにおいてコアクチベーターとしての働きをすることを示す。PBPの過剰発現が、エストロゲンレセプターシグナリングにおけるそのコアクチベーター機能のために乳ガンにおいて役割を果たすかどうかを調べるために、乳房腫瘍におけるPBP発現のレベルを測定した[Zhu ら、1999、(12)]。リボヌクレアーゼ保護分析、インサイチュハイブリダイゼーション、およびイムノペルオキシダーゼ染色によりほぼ50%の原発乳ガンおよび乳ガン細胞系において高いレベルのPBP発現が検出された。FISHを使用することにより、著者らはPBP遺伝子をいくつかの乳ガンにおいて増幅される領域である17q12にマップした。約24%(25のうち6)の乳房腫瘍および約30%(6のうち2)の乳ガン細胞系においてPBP遺伝子増幅が見いだされ、これはPBP遺伝子過剰発現が遺伝子の増幅と関係なく起こり得ることを意味する。PBP遺伝子は全部で37kb以上におよぶ17のエキソンを含むことが確認された。この知見、特にPBP遺伝子増幅は、PBPがそのエストロゲンレセプター−アルファコアクチベーターとして機能する能力により乳房上皮分化および乳房発ガン性において役割を果たし得ることを示唆した。
【0045】
NEUROD2
基本的なへリックス−ループ−へリックス(bHLH)タンパク質は、発生中に細胞のタイプを決定することに関与する転写因子である。1995年に、神経発生時に機能するbHLHタンパク質が記述され、NeuroDと命名された(「神経原性分化」)[Leeら、1995、(13)]。ヒトNEUROD遺伝子は染色体2q32にマップされる。2の追加のNEUROD遺伝子、NEUROD2およびNEUROD3のクローニングおよびキャラクタライゼーションは1996年に記載された[McCormickら、1996,(14)]。マウスおよびヒト相同体の配列が提示された。NEUROD2はNEURODのbHLH領域と高度の相銅製を示すが、NEUROD3は関連性がうすい。著者らは、マウスneuroD2はまず胎生11日で発現され、成体神経系においても発現が存続することを見いだした。neuroDと同様に、neuroD2もニューロン分化を媒介するようである。ヒトNEUROD2は蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより17q12にマップされ、マウス相同体は染色体11にマップされた[Tamimiら、1997、(15)]。
【0046】
テレソニン
テレソニン(telethonin)は、もっぱら横紋筋および心筋においてみられる19kDのサルコメアタンパク質である。これは成人骨格筋および培養された筋細胞のZディスクに局在化するようである。テレソニンは、他のサルコメアタンパク質の空間的に規定された結合部位を提供することによりサルコメアの組み立てについての分子の「定規」として作用するチチン(titin)の基質である。リン酸化およびカルシウム/カルモジュリン結合による活性化の後、チチンは早期分化筋細胞においてテレソニンのC−末端領域をリン酸化する。テレソニン遺伝子はフェニルエタノールアミンN−メチルトランスフェラーゼ遺伝子に隣接する17q12にマップされている[Valleら、1997、(16)]。
【0047】
PENT、PNMT
フェニルエタノールアミンN−メチルトランスフェラーゼは、カテコールアミンの生合成の最終段階である、ノルエピネフリンからのエピネフリンの合成を触媒する。cDNAクローンは1998年に、その合成がウシの酵素から得られるトリプシンペプチドの部分アミノ酸配列に基づく混合オリゴデオキシリボヌクレオチドプローブを用いてウシ副腎髄質PNMTについて最初に単離され[Kanedaら、1988、(17)]。ウシcDNAをプローブとして使用して、著者らはヒト褐色細胞腫cDNAライブラリーをスクリーニングし、約1.0kbの装入物を有するcDNAクローンを単離し、これは、酵素の完全コーディング領域を含んでいた。ヒト褐色細胞腫のノザンブロット分析により、約1000ヌクレオチドの一つのRNA種が明らかになり、このクローンは完全長cDNAであることを示唆する。ヌクレオチド配列は、ヒトPNMTが予想される分子量が30853の、最初のメチオニンを含む282のアミノ酸残基を有することを示した。アミノ酸亜卑劣はウシ酵素のものと88%相同性であった。PNMT遺伝子は約2100塩基対である3のエキソンと2のイントロンからなることが見いだされた。トランスジェニックマウスにおいて遺伝子は副腎髄質および網膜において発現されることが示された。サルウイルス40初期領域と融合した2kbのPNMT5−プライム−フランキング領域を含むハイブリッド遺伝子は、結果として副腎および眼において腫瘍抗原mRNA発現が生じ;さらに、免疫細胞化学により、腫瘍抗原が副腎髄質細胞の核および網膜の内部核細胞層の細胞(両方ともエピネフリン合成の顕著な部位)に局在化していることが示された。この結果は、これらの細胞タイプにおける遺伝子の適当な発現のエンハンサーは遺伝子の2kb5−プライム−フランキング領域にあることを示す。
Kanedaら、1988(17)は、マウス−ヒト体細胞ハイブリッドからのDNAのサザンブロット分析によりヒトPNMT遺伝子を染色体17に割り当てた。1992年に、PNMT遺伝子に関連するRFLPおよびいくつかの17qDNAマーカーを用いた結合分析により局在化は17q21−22に絞られた[Hoecheら、1992,(18)]。この知見は、ヒト染色体17q22−q24に対応する保存された結合シンテニー基においてラット染色体10上に卒中の傾向にある自発的高血圧ラット(SHR−SP)における血圧調節と関連する遺伝子座の説明の点で興味深い。
【0048】
MGC9753
この遺伝子はRefSeqにしたがって染色体17上、17q12でマップされる。これは非常に高レベルで発現される。これは、cDNAクローンにより定義され、交互スプライシングにより産生され、7の異なる転写物を得ることができ(配列番号:60〜66および83〜89、表1)、一緒になって7の異なるタンパク質イソ型をコードする。特に興味深いのは、2.55kbのmRNAによりコードされる推定分泌イソ型である。そのプレメッセンジャーはゲノム上の16.94kbを包含する。これは非常に長い3’UTRを有する。タンパク質(266aa、MW24.6kDa、pI8.5)はPfamモチーフを含まない。MGC9753遺伝子は、交互スプライシングにより、7の異なるタンパク質をコードすることが予想される7種の転写物を産生する。これは13の確認されたイントロンを含み、そのうちの10は交互である。ゲノム配列との比較により、11のイントロンは共感性[gt−ag]則に従うことが示され、1は良好な支持体[tg cg]に関して不定型である。6の最も豊富なイソ型は、a)からi)により表され、次のようにタンパク質をコードする:
a)このmRNAは3.03kbの長さであり、そのプレメッセンジャーはゲノム上の16.95kbを包含する。これは非常に長い3’UTRである。タンパク質(190aa、MW21.5kDa、pI7.2)はPfamモチーフを含まない。これは小胞体において局在化することが予想される。
c)このmRNAは1.17kbの長さであり、そのプレメッセンジャーはゲノム上の16.93kbを包含する。これはN末端で不完全である。タンパク質(368aa、MW41.5kDa、pI7.3)はPfamモチーフを含まない。
d)このmRNAは3.17kbの長さであり、そのプレメッセンジャーはゲノム上の16.94kbを包含する。これは非常に長い3’UTRおよび5’UTRを有する。タンパク質(190aa、MW21.5kDa、pI7.2)はPfamモチーフを含まない。これは小胞体において局在化することが予想される。
g)このmRNAは2.55kbの長さであり、そのプレメッセンジャーはゲノム上の16.94kbを包含する。これは非常に長い3’UTRを有する。タンパク質(226aa、MW24.6kDa、pI8.5)はPfamモチーフを含まない。これは分泌されることが予想される。
h)このmRNAは2.68kbの長さであり、そのプレメッセンジャーはゲノム上の16.94kbを包含する。これは非常に長い3’UTRを有する。タンパク質(320aa、MW36.5kDa、pI6.8)はPfamモチーフを含まない。これは小胞体において局在化することが予想される。
i)このmRNAは2.34kbの長さであり、そのプレメッセンジャーはゲノム上の16.94kbを包含する。これはN末端で不完全である可能性がある。タンパク質(217aa、MW24.4kDa、pI5.9)はPfamモチーフを含まない。
【0049】
MCG9753遺伝子は染色体17q12上に位置するCAB2遺伝子と相同性である。、DNA二本鎖切断を修復するために必要な酵母COS16のヒト相同対であるCAB2をクローンした。そのGFP融合タンパク質でトランスフェクトされた細胞の自己蛍光分析により、CAB2が小胞中に移動することが示され、CAB2の過剰発現は、酵母と同様に、小胞中に蓄積することにより細胞内Mn−(2+)を減少させることができる。
【0050】
Her−2/neu、ERBB2、NGL、TKR1
本来NEUと呼ばれる腫瘍遺伝子はラット神経/神経膠芽細胞腫細胞型由来であった。これは腫瘍抗原p185をコードし、これは血清学的に表皮成長因子レセプターEGFRに関連する。1985年に、NGL(ノイラミニダーゼとの混同を避けるために、NEUとも表す)と表されるヒト相同体は、インサイチュハイブリダイゼーションにより17q12−q22および体細胞ハイブリッドにおいて17q21−qterにマップされる[Yang−Fengら、1985、(19)]。従って、SROは17q21−q22である。さらに、1985年に、チロシンキナーゼ遺伝子ファミリーの潜在的な細胞表面レセプターが同定され、遺伝子をクローニングすることにより特徴づけられた[Coussens、1985、(20)]。その主な配列は、ヒト表皮成長因子レセプターと非常に類似している。そのヒトEGFレセプターに対する外観上の密接な関連性のために、著者らはこの遺伝子をHER2と呼んだ。体細胞ハイブリッドDNAのサザンブロット分析およびインサイチュハイブリダイゼーションにより、この遺伝子は17q12−q22に割り当てら得た。この遺伝子の染色体位置は、NEU腫瘍遺伝子と一致し、このことは、二つの遺伝子が実際に同じであることを示唆し;配列決定はこれらが同一であることを示す。1988年に、NEUタンパク質の過剰発現と大細胞面皰成長タイプの管ガンの間の相互関係が見いだされた[van de Vijverら、1988、(21)]。しかしながら、著者らはリンパ節状態または腫瘍再発との相互関係は見いださなかった。乳ガンおよび卵巣ガンにおけるHER2/NEUの役割は、1989年に記載され、これは合わせて女性における全てのガンの1/3および女性におけるガンに関連した死の1/4の原因である[Slamonら、1989、(22)]。
【0051】
ERBB遺伝子と別個のERBB1と呼ばれるERBB関連遺伝子が1985年に見いだされた。ERBB2は陰門ガン細胞においてEGFR増幅で増幅されず、EGFレセプターmRNAと反応しなかった。約30倍のERBB2の増幅が唾液腺のヒト腺ガンにおいて観察された。速度沈殿およびサザンハイブリダイゼーションと組み合わせた染色体選別により、ERBB2遺伝子は染色体17に割り当てられた[Fukushigeら、1986、(23)]。選別された染色体およびゲノムプローブについて中期のものに対するハイブリダイゼーションにより、ERBB2座を17q21にマップした。これは急性前骨髄細胞性白血病(APL)における染色体17ブレークポイントである。さらに、胃ガン細胞系におけるERBB2遺伝子の増幅および向上された発現が観察された。ERABAB2ヌクレオチド配列由来のタンパク質のCOOH末端の14アミノ酸残基に対応する合成ペプチドに対する抗体は、1986年に得られた。これらの抗体に関して、腺ガンから得られるERBB2遺伝子産物は、沈殿され、チロシンキナーゼ活性を有する185kD糖タンパク質であることが示された。ERBB2のcDNAプローブおよび15;17染色体転座を有するAPL細胞に対するインサイチュハイブリダイゼーションにより遺伝子はこのブレークポイントの近位の側に位置にあることが確認された[Kanekoら、1987、(24)]。著者らは、遺伝子とブレークポイントの両方ともバンド17q21.1に位置し、さらにERBB2遺伝子は白血病発症において関与することを見いだした。1987年に、実験によりNEUおよびHER2は両方ともERBB2と同じであることが示された[Di Fioreら、1987、(25)]。著者らは、過剰発現単独で正常な成長因子レセプターの遺伝子、すなわちERBB2を腫瘍遺伝子に変換できることを示した。ERBB2はインサイチュハイブリダイゼーションにより17q12−q21にされた[Popescuら、1989、(26)]。15と17の間に構造上の転移を有する繊維芽細胞由来の染色体に対するインサイチュハイブリダイゼーションにより、ERBB2遺伝子は誘導染色体に移転されることが示され;従って遺伝子は17q12−q21.32に局在化することができる。17q12−q21領域において多数のDNAマーカーを用いたファミリーリンケージ研究により、ERBB2遺伝子はこの領域の遺伝子マップ上に配置された。
【0052】
インターロイキン−6は、免疫および炎症応答のレギュレーターとして初めて認識されたサイトカインであるが、前立腺ガンを含む多くの腫瘍細胞の成長も調節する。ERBB2およびERBB3の過剰発現は、前立腺ガンの腫瘍変換において関与する。前立腺ガン細胞系をIL6で治療すると、ERBB2およびERBB3のチロシンリン酸化が誘発されたが、ERBB1/EGFRは誘発されなかった。ERBB2はIL6に依存した方法でIL6レセプターのgp130サブユニットと複合体を形成する。ERBB2活性の抑制の結果、IL6により誘発されたMAPK活性化が中止されるので、この関連は重要である。従って、ERBB2はMAPKキナーゼ経路によりILシグナリングの重要な成分である[Qiuら、1998、(27)]。これらの発見により、成長因子レセプターキナーゼと組み合わせることによりサイトカインレセプターがどれくらいそのシグナリング経路を多様化させることができるかが示された。
【0053】
ERBB2の過剰発現は、乳ガンにおけるタキソール(Taxol)耐性を付与する。ERBB2の過剰発現は、タキソール誘発アポトーシスを抑制する[Yuら、1998、(28)]。タキソールはMDA−MB−435乳ガン細胞においてCDC2キナーゼを活性化し、G2/M期での細胞サイクル停止、その後アポトーシスに至る。CDC2の化学的インヒビターおよびCDC2のドミナント−ネガティブ突然変異体は、これらの細胞においてタキソール誘発アポトーシスをブロックした。トランスフェクションによるMDA−MB−435細胞におけるERBB2の過剰発現はCDC2と関連するCDKN1Aを増加調節し、タキソール媒介CDC2活性化を抑制し、細胞がG2/M期へ入るのを遅らせ、これによりタキソールにより誘発されるアポトーシスを抑制する。CDKN1Aにおいて、アンチセンスでトランスフェクトされたMDA−MB−435細胞またはp21−/−MEF細胞において、ERBB2はタキソールにより誘発されるアポトーシスを抑制できなかった。従って、CDKN1Aは、ERBB2−過剰発現乳ガン細胞におけるタキソールによるアポトーシスに対する耐性に貢献するG2/Mチェックポイントの調節に関与する。
【0054】
ヘルスタチンと称する約68kDの分泌されたタンパク質がイントロン8を保持する交互ERBB2転写物の産物として記載された[Dohertyら、1999、(29)]。この交互転写物は、その後にイントロン8によりコードされる79のアミノ酸の独自のC末端配列が続くp185ERBB2の細胞外領域からのサブ領域IおよびIIと同一の340残基を特定する。交互転写物の組み換え産物はERBB2でトランスフェクトされた細胞と特異的に結合し、p185ERBB2と化学的に架橋し、一方イントロンでコードされる配列は単独でトランスフェクトされた細胞と高い親和性で結合し、細胞抽出物から可溶化されるp185と結合した。ヘルスタチンmRNAは正常なヒト胎児腎臓および肝臓において発現されたが、増幅されたERBB2遺伝子を含むガン細胞におけるp185ERBB2と比べて低いレベルであった。ヘルスタチンは、二量体を分裂させ、p185のチロシンリン酸化を減少させ、ERBB2を過剰発現する形質転換された細胞のアンカレッジインデペンデントな成長を抑制するので、p185ERABB2のインヒビターであると思われる。HER2遺伝子は増幅され、HER2は乳ガンの25〜30%において過剰発現され、腫瘍の攻撃性を増大させる。最後に、HER2に対する組み換えモノクローナル抗体はHERを過剰発現する転移性乳ガンにおける最も重要な化学療法の臨床的利益を増大させた[Slamonら、2001、(30)]。
【0055】
GRB7
成長因子レセプターチロシンキナーゼ(GF−RTK)は細胞サイクルの活性化に関与する。GF−RTKのいくつかの基質はSrc−相同性2(SH2)およびSH3ドメインを含む。SH2ドメイン含有タンパク質はチロシンキナーゼシグナリングにおいて重要な様々な分子である。高発現マウスライブラリーをスクリーニングするためのCORT(レセプター標的のクローニング)法を用いて、535のアミノ酸のタンパク質をコードするネズミGrb7の遺伝子を単離した[Margolisら、1992、(31)]。GRB7はras−GAP(ras−GTPase−活性化タンパク質)と相同性である。これはSH2ドメインを含み、肝臓および腎臓において高度に発現される。この遺伝子は、GRB7ファミリーを規定し、そのメンバーはマウス遺伝子Grb10とヒト遺伝子GRB14を含む。
【0056】
推定GRBシグナル伝達分子および侵襲性ヒト食道ガンからのGRB7V新規スプライス変異体が単離された[Tanakaら、1998、(32)]。両GRB7イソ型はCaenorhabditis elegansのMig−10細胞移動遺伝子と相同性を共有するが、GRB7Vイソ型はC末端において88塩基対が欠失し;結果として得られるフレームシフトにより短疎水性配列でSH2ドメインが置換された。GRB7Vイソ型ではなく野生型GRB7タンパク質は食道ガン細胞においてEGF刺激に応答して迅速に地路知るリン酸化された。ヒト食道腫瘍細胞および転移を有する所属リンパ節の分析により、GRB7Vは40%のGRB7−陽性食道ガンにおいて発現されたことが明らかになった。GRB7V発現は、もとの腫瘍組織と比較して、転移がリンパ節に広がった後に向上された。アンチセンスGRB7RNA発現構築物のトランスフェクションは内因性GRB7タンパク質レベルを低下させ、食道ガン細胞により示される侵襲性発現型を抑制した。これらの発見により、GRB7イソ型は細胞侵襲およびヒト食道ガンの転移進行に関与することが示唆された。配列分析により、GRB7遺伝子はトポイソメラーゼ−2遺伝子の近くの、染色体17q21−q22にマップされた[Dongら、1997、(33)]。GRB−7はHER2と協力していくつかの乳ガン細胞系において過剰発現され、このGRB−7は細胞系および乳房腫瘍の両者において過剰発現される。GRB−7はそのSH2ドメインによりHER2としっかりと結合し、SKBR−3細胞におけるチロシンリン酸化HER2の大フラクションはGRB−7と結合する[Steinら、1994、(34)]。
【0057】
GCSF、CSF3
顆粒球コロニー刺激因子(またはコロニー刺激因子−3)は顆粒球の先祖細胞の増殖および分化を特異的に刺激する。精製されたGCSFタンパク質の部分的アミノ酸配列を決定し、プローブとしてオリゴヌクレオチドを用いて、いくつかのGCSFcDNAクローンをヒト扁平上皮ガン細胞から単離した[Nagataら、1986、(35)]。ヒトGCSFcDNAのクローニングは、一つの遺伝子が分子量19600の177または180アミノ酸成熟タンパク質をコードすることを示す。著者らは、GCSF遺伝子が4のイントロンを有し、mRNAの差次的スプライシングにより2の異なるポリペプチドが同じ遺伝子から合成されることを見いだした。2のポリペプチドはアミノ酸の存在または不在により異なる。発現の研究により、両者は真性GCSF活性を有することが示される。神経膠芽細胞腫多形細胞系からの刺激活性は、泡状細胞系により産生されるGCSFから生物学的、生化学的に区別できることが1987年に見いだされた。体細胞ハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションにより、GCSF遺伝子は急性前骨髄細胞性白血病の15;17転座特性におけるブレークポイントの領域において17q11にマップされた[Le Beauら、1987,(36)]。さらなる研究により、遺伝子は前記ブレークポイントに近接し、再配列された染色体17上に残存することが示された。公知のパルスフィールド電気泳動法を用いたサザンブロット分析により、再配列された制限断片は示されなかった。完全長cDNAクローンをヒト−マウス体細胞ハイブリッドおよびフロー分別されたヒト染色体においてハイブリダイゼーションプローブとして用いることにより、GCSFの遺伝子は17q21−q22ラテロンにマップされた。
【0058】
THRA、THRA1、ERBA、EAR7、ERBA2、ERBA3
ヒトおよびマウスDNAは両方とも2つの関連性の少ない種類のERBAを有し、ヒトゲノムにおいてこのクラスの一つの多数のコピーが存在することが証明された[Janssonら、1983、(37)]。cDNAはヒト甲状腺レセプター遺伝子に対する相同性に基づいてラット脳メッセンジャーRNAから単離された[Thompsonら、1987、(38)]。このcDNAの発現は甲状腺ホルモンの高親和性結合タンパク質を産生した。この遺伝子から得られるメッセンジャーRNAは組織特異的方法で発現され、中枢神経系で最高レベルであり、肝臓においては発現されなかった。証拠が増えつつあることは、多数の甲状腺ホルモンレセプターの存在を示す。著者らは、5の異なるが関連する座があることを示唆した。多くの臨床および生理学的研究により、多数のレセプターの存在が示唆された。たとえば、患者が、ニューロンの機能は維持されるが、甲状腺ホルモンに対するその末梢応答が失われるかまたは減少している家族性の甲状腺ホルモン耐性を有することが確認された。甲状腺学者は、神経系が非常に影響を受けるクレチン病の一つの形態と甲状腺ホルモンの末梢機能がさらに多大な影響を受けるもう一つの形態を認識している。
【0059】
ヒト肝臓、腎臓、胎盤、および脳において発現される甲状腺ホルモンレセプターの特定の形態をコードするcDNAが単離された[Nakaiら、1988、(39)]。同じクローンがヒト胎盤において見いだされた。cDNAは490のアミノ鎖および分子量54824を有するタンパク質をコードする。甲状腺ホルモンレセプターアルファ−2型(THRA2)と表されるこのタンパク質は、肝臓および腎臓において異なるサイズのmRNAにより表され、これは一次転写物の組織特異的処理を表す。
THRA遺伝子は27kbのDNAを含む10のエキソンを含む。この遺伝子の最後の2のエキソンは、交互にスプライスされる。5kgのTHRA1mRNAは予想される410アミノ酸タンパク質をコードし;2.6kbTHRA2mRNAは490アミノ酸タンパク質をコードする。す第三のイソ型、TR−アルファ−3は交互スプライシングにより得られる。TH−アルファ−3特異的配列の約39アミノ酸がTR−アルファ−3において欠失している。第二の遺伝子、染色体3上のTHRBは、交互スプライシングによりTR−ベータのイソ型をコードする。1989年に、EAR1およびEAR7遺伝子の構造および機能が解明され、両方とも17q21上にあった[Miyajimaら、1989、(40)]。著者らは、EAR7コーディング配列におけるエキソンの一つはEAR1のエキソンと重複し、2つの遺伝子が相対するDNA鎖から転写されることを確認した。加えて、EAR7mRNAは、2つの交互スプライスされたイソ型(EAR71およびEAR72と称する)を生じ、そのうち、EAR71タンパク質はトリc−erbAタンパク質のヒトカウンターパートである。
【0060】
甲状腺ホルモンレセプター、アルファ−1,およびアルファ−2 3RNAは調べた全ての組織において発現され、3つのmRNAの相対量はおよそ類似していた。3つのmRNAのうちのいずれも、主な甲状腺ホルモン−応答器官であるの肝臓においては豊富にない。これにより、もう一つの甲状腺ホルモンレセプターが肝臓に存在する可能性があるという仮説が導かれる。ERBBを増強するERBAは、他の公知の腫瘍細胞産物と異なり、炭酸脱水酵素と関連するアミノ酸配列を有することが見いだされた[Debuireら、1984、(41)]。ERBAは未分化期の赤芽細胞の分化をブロックすることによりERBBを増強する。炭酸脱水酵素は赤血球における二酸化炭素の輸送に関与する。1986年に、ERBAタンパク質は甲状腺ホルモンの高親和性レセプターであることが示された。cDNA配列はステロイドホルモンレセプターとの関連性を示し、結合研究により、甲状腺ホルモンのレセプターであることが示される。これは核に位置し、ここでDNAと結合し、転写を活性化する。
【0061】
母体の甲状腺ホルモンは妊娠早期に胎児に移され、脳発生を制御すると仮定されている。9の3半期最初の胎児の脳におけるTRイソ型および関連するスプライス変異体の個体発生は、半定量的RT−PCR分析により調べられている。TR−ベータ−1、TR−アルファ−1、およびTR−アルファ−2イソ型の発現は妊娠8.1週から検出された。追加の切型種がTR−アルファ−2プライマーセットに関して検出され、ラットにおいて記載されているTR−アルファ−3スプライス変異体と一致した。TR−アルファ−由来の転写物は対応して発現され、妊娠8.1週と13.9週間で約8倍に増大した。より複雑な個体発生パターンがTR−ベータ−1について観察され、これは妊娠8.4週と12.0週間の最下点を示唆する。著者らは、これらの発見は、3半期の最初の胎児脳発生時に母体の甲状腺ホルモン作用を媒介する際のTR−アルファ−1イソ型の重要な役割を示すと結論づけた。
いくつかの種類の甲状腺ホルモンレセプターの同定は、様々な器官の甲状腺ホルモン反応性における正常なバリエーションおよび甲状腺ホルモン耐性症候群においてみられる選択的組織異常を説明できる。甲状腺ホルモン作用に対して耐性の兄弟姉妹のメンバーは、成長が遅れ、先天性難聴、および骨の異常があったが、知能および性的成熟は正常であり、心血管活性は増強されていた。この家族において、血球中の異常なT3核レセプターおよび繊維芽細胞が示された。様々な甲状腺ホルモンレセプターをコードするcDNAの有効性は、この家族における根元的な遺伝子欠損を決定するのに有用であると考えられた。
【0062】
ERBA腫瘍遺伝子は、染色体17に割り当てられている。ERBA座は急性前骨髄細胞性白血病(APL)のt(15;17)転座において染色体17上に残存する。チミジンキナーゼ座はおそらくは染色体15に移転され;t(17;21)および見かけ上同じブレークポイントを有する白血病の研究により、TKは21q+上にあることが示された。c−erb−AのクローンされたDNAプローブの未培養精母細胞から得られる減数分裂パキテン期に対するインサイチュハイブリダイゼーションにより、ERBAはAPLにおいてみられるt(15;17)を生じるブレークと同じ領域において、17q21.33−17q22に位置すると結論づけられた。ほとんどの粒状物は17q22においてみられるので、ERBAはおそらくは17q22に近い領域または17q22と17q21.33の接合点にあることが示唆された。インサイチュハイブリダイゼーションにより、ERBAはAPLにおいて17q11−q12で残存し、一方、17q21−q22のTP53は染色体15の転移されることが示された。このように、TRBAはAPL転座におけるブレークポイントのすぐ近くで、構造転移から離れた17q11.2になければならない。
【0063】
非機能性下垂体腫瘍における迷走性THRA発現は、レセプターコーディングおよび調節配列における突然変異を反映すると仮説が立てられている。THRA mRNAおよびTHRB応答エレメントおよび配列以上のリガンド結合ドメインがスクリーニングされた。RNAseミスマッチにより23の腫瘍から得られるTHRAmRNAのスクリーニングおよび候補断片の配列決定により、1サイレントおよび3ミスセンス突然変異が確認され、このうち2つは共通のTHRA領域にあり、1つはアルファ−2イソ型について特異性であった。14の非機能性腫瘍においてTHRB応答エレメントの差は検出されず、THRBリガンド結合ドメインの差は23の非機能性腫瘍において検出された。従って、新規甲状腺レセプター突然変異は甲状腺レセプター作用の点で機能的に重要であり、さらにその機能的特性の定義は下垂体細胞における成長制御における甲状腺レセプターの役割を解明することが示唆される。
【0064】
RAR−アルファ
高親和性でレチノイン酸を結合するタンパク質をコードするcDNAがクローンされた[Petkovichら、1987、(42)]。タンパク質はステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、およびビタミンD3のレセプターと相同性であることが判明し、レチノイン酸トランス作用性エンハンサー因子であると思われる。従って、胚発生に対するビタミンAの効果、分化作用および腫瘍細胞成長の分子メカニズムは、この核レセプターファミリーの他のメンバーについて記述されたもの類似している可能性がある。一般に、DNA−結合ドメインは、共にレセプター(ステロイドと甲状腺)の2つのグループの中およびその間で高度に保存される;cDNAプローブを使用して、RAR−アルファ遺伝子は、インサイチュハイブリダイゼーションにより17q21にマップされた[Matteiら、1988、(43)]。それぞれ染色体17q21.1および3p24にマップされる2つのレチノイン酸レセプター、RAR−アルファおよびRAR−ベータの存在についての証拠が提示されている。RARのアルファおよびベータ形は、核レセプターファミリーのほかのどのメンバーよりも、それぞれ17q11.2および3p25−p21に位置する2つの密接に関連した甲状腺ホルモンレセプターアルファおよびベータとより相同性であることが見いだされた。これらの観測は、甲状腺ホルモンとレチノイン酸レセプターが遺伝子によって、おそらくは染色体により、それ自体がファミリーのステロイドレセプターの共通の祖先からの進化においてかなり早期に分岐した、共通の祖先からの複製を発達させたことを示唆する。ヒトRARAおよびRARB遺伝子のカウンターパートがマウスとニワトリの両方に存在していることが指摘された。APLブレークポイントにおいてのRARAの関与は、急性骨髄性白血病の治療において治療用分化剤としてのレチノイン酸の使用がなぜAPLに限定されているかを証明できる。ほとんどすべてのAPL患者は染色体の転座t(15;17)(q22;q21)を有している。分子の研究により、染色体15上のPML遺伝子と染色体17上のRARA遺伝子の間の融合により、転座の結果、キメラ遺伝子が得られることが明らかになる。核レセプターRARAとRXRAのCLOCKおよびMOP4とのホルモンに依存する相互作用が提示されている。
【0065】
CDC18 L、CDC6
酵母において、Cdc6(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))とCdc18(シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))がDNA複製のために細胞を、免疫応答を起こし得るようにするためにオリジン認識複合体(ORC)タンパク質と結合する。従って、Cdc6は酵母においてcDNA複製の開始おいて重要な調節の役割を果たす。ツメガエル属(Xenopus)および酵母CDC6のヒト相同体をコードするcDNAが単離されている[Williamsら、1997、(44)]。彼らは、ヒトおよびツメガエルタンパク質をp62(cdc6)と表した。独立して、PCNAをエサとして用いる酵母菌2−ハイブリッド分析で、ヒトCDC6/Cdc18相同体をコードするcDNAが単離された[Sahaら、1998、(45)]。これらの著者は予測された560アミノ酸のヒトタンパク質が2つの酵母菌タンパクと約33%の配列同一性を共有すると報告した。HeLa細胞抽出物のウェスタンブロットに関して、ヒトCDC6/cdc18が66kDタンパク質として移動する。ノザンブロットは、CDC6/Cdc18mRNAレベルがS期の開始でピークに達し、HeLa細胞における有糸分裂の開始で減少することを示したが、著者は全体的なCDC6/Cdc18タンパク質レベルが細胞サイクル全体を通じて変化しないことを見いだした。エピトープ標識されたタンパク質の免疫蛍光分析により、ヒトCDC6/Cdc18がG1期細胞において核、S期細胞において細胞質であることが明らかになり、DNA複製が核と細胞質の間のこのタンパク質の転座あるいは核におけるタンパク質の選択的な分解により制御されることを示唆する。免疫沈降研究は、ヒトCDC6/Cdc18がインビボでサイクリン(cyclin)A、CDK2、およびORC1と結合することを示した。このサイクリン−CDK2とCDC6/Cdc18の結合は融資分裂細胞抽出物において存在するファクターにより特異的に抑制された。従って、CDC6/Cdc18とS期促進ファクターサイクリン−CDK2間の相互作用がDNA複製の開始に必須であるならば、この相互作用の有糸分裂インヒビターがG1における適当な時期までに早発の相互作用を防止できる。Cdc6は、培地および未処理動物における組織内のどちらにおいても、増殖する哺乳動物細胞において発現されるが、静止哺乳動物においては発現されない[Yanら、1998、(46)]。成長阻止された状態から増殖状態への遷移中、ヒトCdc6プロモーターの機能分析により、また内因性Cdc6遺伝子を刺激するための外因的に発現されたE2Fタンパク質の能力により明らかになるように、哺乳動物Cdc6の転写はE2Fタンパク質により制御される。抗Cdc6抗体の微量注入法によるCdc6のイムノデプリーションは、ヒト腫瘍細胞系におけるDNA複製の開始をブロックした。著者は、E2Fを含む転写制御メカニズムによりヒトCdc6が有糸分裂促進シグナルに応答して制御され、Cdc6は哺乳動物細胞におけるDNA複製に必要であると結論づけた。
【0066】
酵母菌の2つのハイブリッドのシステム、組換タンパク質の同時精製と免疫沈降を使用して、CDC6のN末端セグメントであるラテロンは、タンパクホスファターゼ2A(PP2A)の調節サブユニットであるPR48と特異的に結合することが示された。著者らは、`R48または関連するB−ダブルプライムタンパク質との特異的相互作用により媒介されるPP2AによるCDC6の脱リン酸化は哺乳動物細胞におけるDNAふくせいの開始を制御する調節事象であると仮定した。体細胞ハイブリッドの分析および蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより、ヒトp62(cdc6)遺伝子は17q21.3にある。
【0067】
TOP2A、TOP2
DNAトポイソメラーゼは原核生物と真核生物両方においてDNAの位相状態を制御糸、改変する酵素である。真核細胞から得られるトポイソメラーゼIIは高次コイルDNA分子の緩和、カートネーション、デカートネーション、環状DNAのノッティングおよびアンノッティングを触媒する。これは多分トポイソメラーゼIIにより触媒された反応が2つのDNAセグメントの乗換を含むと思われる。核抽出物の約0.1%を構成するHeLa細胞あたり約100,000の分子のトポイソメラーゼIIがあると推定された。毛細血管拡張性運動失調症の異常な特性のいくつかはDNA処理における欠陥によると考えられ、5AT細胞系におけるこれらの酵素活性についてのスクリーニングが行なわれた[Singhら、1988、(47)]。対照と比較して、P4期DNAのアンノッティングにより決定されるDNAトポイソメラーゼIIのレベルはこれらの細胞系の4つにおいて実質的に、5分の1に減少した。高次コイルDNAの緩和により分析されたDNAトポイソメラーゼIは正常なレベルで存在することが判明した。
【0068】
ヒトTOP遺伝子の全コーディング配列は決定されている[Tsai−Pflugfelderら、1988、(48)]。
加えて、ショウジョウバエTopIIcDNAを有するメクロレタミン耐性バーキットリンパ腫細胞系(Raji−HN2)由来のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより単離されたヒトcDNAsはすでに配列決定されていた[Chungら、1989、(49)]。著者は2つのTOP2イソ酵素を表す2つのクラスを同定し、これをTOP2AおよびTOP2Bと命名した。TOP2AcDNAの一つの配列はTsai−Pflugfelderら、1988(48)により単離されたTOP2cDNAの内部断片と同一である。サザンブロット分析は、TOP2AとTOP2BcDNAが別の遺伝子から得られることを示した。TOP2A特異的プローブを用いたノザンブロット分析は、ヒト細胞系U937において6.5kb転写物を検出した。TOP2Aペプチドに対する抗体はU937細胞溶解物で170kDのタンパク質を認識した。従って、このデータが2つのTOP2イソ酵素の遺伝的、免疫化学的証拠を提供すると結論された。TOP2AおよびTOP2B遺伝子の完全な構造が報告されている[Langら、1998、(50)]。TOP2A遺伝子は約30kbにおよび、35のエキソンを含む。
【0069】
Tsai−Pflugfelderら、1988(48)は、中期染色体に対するクローンされた断片のインサイチュハイブリダイゼーションの組み合わせにより、またマウス−ヒトハイブリッド細胞系のパネルについてのサザンハイブリダイゼーション分析により、17q21−q22にマップされた一つのコピーの遺伝子によってコードされるということを示した。染色体17への割り当ては、体細胞ハイブリッドの研究に確認されている。腺癌細胞系における同時増幅のために、TOP2AおよびERBB2遺伝子は染色体17と密接に関連し得ると結論づけられた[Keithら、1992、(51)]。TOP2AおよびTOP2B座の両方でRFLPを検出したプローブを使って、示されたヘテロ接合性は、アルファおよびベータ座についてそれぞれ0.17および0.37の度数であった。マウス相同体は染色体11にマップされた[Kingsmoreら、1993、(52)]。II型DNAトポイソメラーゼの構造および機能は考察されている[Wattら、1994、(53)]。DNAトポイソメラーゼII−アルファはpolIIホロ酵素と結合し、クロマチン依存性コアクチベーションの必要とされる成分である。トポイソメラーゼIIの特異的インヒビターはクロマチンテンプレートに関する転写をブロックしたが、裸のテンプレートに関する転写には影響を及ぼさなかった。精製されたトポイソメラーゼII−アルファはコアpolIIとの反応において、クロマチン依存性活性化活性を再構成した。従って、クロマチンテンプレートに関する転写は結果として高次コイル張力の蓄積をもたらすようであり、トポイソメラーゼIIの緩和活性をヌクレオソームDNAに関する生産性RNA合成について必須にする。
【0070】
IGFBP4
6つの構造的に別個のインシュリン様成長因子結合タンパク質が単離され、cDNAsがクローンされた:IGFBP1、IGFBP2、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP5およびIGFBP6。強い配列相同性を示し、これらは密接に関連する遺伝子のファミリーによりコードされることを示唆する。IGFBPは3つの構造的に別個のドメインを含み、それぞれ分子のおよそ3分の1を構成している。6のヒトIGFBPのN末端ドメイン1とC末端ドメイン3は6人の人間のIGFBPsの3人が見せるC末端ドメインは、ドメイン1と3にそれぞれ12と6つの不変のシステイン残基を含む中程度から高レベルまでの配列同一性を示し(IGFBP6はドメイン1において10のシステイン残基を含む)、IGF結合ドメインであると考えられる。ドメイン2は、IGFBP4において2のシステインを含むが、主に6つのIGFBPの間の配列同一性の欠失により、またシステイン残基の欠失によって定義される。ドメイン3はチログロブリンタイプI繰り返しユニットに対して相同性である。組み換えヒトインシュリン様成長因子結合タンパク質4、5、および6は、ユビキチンとの融合タンパク質としての酵母におけるその発現により特徴づけられる[Kieferら、1992、(54)]。研究の結果から、著者らは3のタンパク質の主な効果は、IGF活性の減水であり、これらはIGFにより媒介される細胞成長および代謝の制御に寄与することを示唆した。
【0071】
精製されたインシュリン様成長因子−結合タンパク質(IGFBP)のペプチド配列に基づいて、PCRを用いることによりラットIGFBP4がクローンされた[Shimasakiら、1990、(55)]。ラットcDNAを用いて肝臓cDNAライブラリーからヒトオルトログ(ortholog)をクローンした。ヒトIGFBP4は21アミノ酸のシグナル配列を含む258アミノ酸のポリペプチドをコードする。タンパク質は非常に親水性であり、これは血液中でIGFのキャリアタンパク質としての能力を促進し得る。ラット組織のノザンブロット分析により、すべての試験された組織における発現を明らかにし、肝臓において最高の発現が得られた。IGFBP4がIGFによって誘発される骨細胞増殖のインヒビターとしての働きをすることが記載された。ゲノム領域は約15kbのゲノムDNAに及ぶ4のエキソンからなる[Zazziら、1998、(56)]。遺伝子の上流領域はTATAボックスおよびcAMP−感受性プロモーターを含む。
インサイチュハイブリダイゼーションにより、IGFBP4遺伝子は17q12−q21にマップされた[Bajalicaら、1992、(57)]。遺伝的乳ガン−卵巣がん遺伝子 BRCA1は同じ領域にマップされていたので、IGFBP4が、22BRCA1ファミリーの結合分析により候補遺伝子であるかどうかを調べ;遺伝子組み替えの発見は、これはBRCA1遺伝子でないことを示唆する[Toninら、1993、(58)]。
【0072】
EBI1、CCR7、CMKBR7
縮重オリゴヌクレオチドを用いたPCRを使用して、Gタンパク質結合レセプターファミリーのリンパ球特異的メンバーが、ヒト/マウス体細胞ハイブリッドDNAと蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより17q12−q21.2にマップされた。このレセプターはが(すでに)独立してエプスタイン−バー誘発性cDNA(記号EBII)として独立して同定されたことが示された[Birkenbachら、1993、(59)]。EBI1は正常なリンパ組織およびいくつかのB−およびT−リンパ球細胞系において発現される。EBI1の機能およびリガンドはわからないままであるが、その配列と遺伝子構造はそれがインターロイキン−8、RANTES、C5a、およびfMet−Leu−Pheのような、化学誘引物質を認識するレセプターと関係があることを示唆する。化学誘引物質レセプターと同様、EBI1はその5−プライム末端付近に介在配列を含んでいる;しかしながら、そのイントロンの両方ともが最初の細胞外ドメインのコーディング領域を中断するという点で、EBI1はユニークである。マウスEbi1 cDNAは単離されており、ヒト相同体と86%同一性を有するタンパク質をコードすることが判明した。
【0073】
ネズミCD+T細胞のサブセットは養子移入後に脾臓の異なる領域に局在化する。CCR7を発現するナイーブなTヘルパー−1(TH1)細胞は、動脈周辺リンパ鞘に向かい、一方、CCR7が欠失した活性化されたTH2細胞は、B細胞小胞付近のT細胞ゾーンの末梢において環を形成する。CCR7でのTH2細胞のレトロウイルス変換がこれらをTH1様パターンにおいて局在化させ、それらがインビトロでなくインビボにおいてB細胞の助けで沈降するのを抑制することが判明した。明らかに、ケモカインレセプターの差次的発現の結果、有効な免疫反応のために重要な独自の細胞移動パターンが得られる。
CCR7発現は、ヒト記憶T細胞を2つの機能的に別個のサブセットに分ける。CCR7−記憶細胞は移動のレセプターを発現し、組織の炎症を起こさせ、即時エフェクター機能を示す。対照的に、CCR7+記憶細胞はリンパ節接着因子(homing receptor)を発現し、即時エフェクター機能が欠失しているが、効率的に樹状細胞を刺激して、二次刺激によりCCR7−エフェクター細胞に分化する。それぞれ中心記憶(T−CM)およびエフェクター記憶(T−EM)と呼ばれるCCR7+およびCCR7−は段階的にナイーブT細胞から分化し、免疫後数年にわたって存続し、記憶レスポンスにおいて分業を許容する。
【0074】
HIVおよびサイトメガロウイルス(CMV)四量体に対する記憶CD8+リンパ球反応におけるCCR7発現を評価した。ほとんどの記憶Tリンパ球がCD45ROを発現するが、その代わりにCD45RA標的を発現するものがわずかにある。標的発現のフローサイトメトリー分析および細胞分裂により、系列分化パターンを示すHIV−およびCMV−特異的CD8+T細胞の4つのサブセットが同定された:CD45RA+CCR7+(ダブルポジティブ);CD45RA−CCR7+;CD45RA−CCR7−(ダブルネガティブ);CD45RA+CCR7−。5−(および6−)カルボキシル−フルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル、およびKi67核抗原についての細胞内染色により測定される細胞分裂能は、主にCCR7+サブセットに限定され、CD45RA+でもある細胞においてより急速に起こった.ダブルネガティブ細胞は刺激後に分裂するかまたは膨張しなかったが、これらはCD45RAまたはCCR7または両方についてポジティブに逆戻りした。末端で分化すると考えられるCD45RA+CCR7−細胞は、分裂しないが、インターフェロン−ガンマを産生し、高いレベルのパーフォリンを発現すると考えられる。CMVおよびHIVについて特異的なサブセットの表示は別個である。CMV−特異的細胞は40%であるの対して、HIV特異的CD8+記憶T細胞の約70%はダブルネガティブであるか、または死の前に分化する。CMV特異的CD8+記憶T細胞のおよそ50%が末端で分化するのに対して、HIV特異的細胞は10%以下である。末端分化CMV特異的細胞は迅速に介入するが、ダブルポジティブ前駆細胞は膨張とエフェクター細胞プールの補充のために残存することが提案されている。さらに、高い抗原耐性とHIV特異的CD4+ヘルパーT細胞活性耐性の減少はHIV特異的記憶CD8+T細胞を、末端エフェクター状態に分化できないダブルネガティブ期に保持し得る。Bリンパ球は、二次リンパ系器官におけるB細胞が豊富な区画(小胞あるいはBゾーン)間で再循環し、抗原について調べる。抗原結合後、B細胞はT−ヘルパー細胞と相互に作用するためにBとTゾーンの境界に移動する。さらに、抗原結合B細胞は、T−ゾーンケモカインCCL19のレセプター(ELCともいう)であるCCR7およびCCL21の発現を増大させ、両化学誘引物質に対して増大した応答性を示すことが証明された。リンパ球CCL19およびCCL21ケモカインが欠失しているか、またはCCR7が欠失したB細胞を有するマウスにおいて、抗原結合はTゾーンへの移動を起こすことができない。レトロウイルスにより媒介される遺伝子移入を用いて、著者らは、増大したCCR7の発現がB細胞をTゾーンへ向けるために十分であることを示した。相互に、B−ゾーンケモカインCXCL13のレセプターであるCXCR5の過剰発現は、抗原により誘発されるB細胞のTゾーンへの移動を克服するために十分である。これは、抗原に応答してB細胞再局在化のメカニズムの証拠になり、インビボでの細胞位置は、別であるが隣接したゾーンで作られた化学誘引物質の反応のバランスによって決定されることができることを確認した。【0075】
BAF57、SMARCE 1
エス・セレビシエ(S.cerevisiae)とショウジョウバエにおけるSWI/
SNF複合体、クロマチンにより媒介される転写抑制により特定の胃遠視の転写活性を促進すると考えられる。複合体は、転写因子の結合の向上につながり得るATP依存性ヌクレオソーム中断活性を含む。哺乳動物におけるBRG1/brm関連因子、すなわちBAF複合体は、機能的にSWI/SNFと関連し、9から12のサブユニットから成り、このうちのいくつかはSWI/SNFサブユニットと相同性である。57kDのBAFサブユニット、BAF57は、酵母菌においてではなく、より高等な真核生物に存在している。部分的なコーディング配列は、ヒト細胞系の抽出物から精製されたBAF57から得られる[Wangら、1998、(60)]。ペプチド配列に基づいて、BAF57をコードするcDNAを同定した。予測される411アミノ酸タンパク質はキネシン様領域に隣接したHMGドメインを含む。組換BAF57および全BAFf複合体はいずれも、4ウェイジャンクション(4WJ)DNAと結合し、これはヌクレオソームに入るかまたは出る際に、DNAの位相を模倣すると考えられる。BAF57 DNA結合活性は、他のHMGタンパク質と類似した特性を有する。BAF57 HMGドメインにおいて突然変異を有する複合体はそのDNA結合およびヌクレオソーム−中断活性を保持することが判明した。哺乳動物SWI/SNF様複合体がクロマチンと相互作用するメカニズムは、2またはそれ以上のDNA結合ドメインによる高次クロマチン構造の認識を含むことが示唆された。RNase保護研究およびウェスタンブロット分析により、BAF57は偏在して発現されることが明らかになった。いくつかの証拠ががん発生におけるSWI/SNFファクターの関与を指摘する[Klochendler−Yeivinら、2002、(61)]。さらに、SWI/SNF関連遺伝子はしばしばヒト癌における体細胞再配列に関与する染色体領域に割り当てられる[Ringら、1998、(62)]。この点に関して、SWI/SNFファミリーメンバー((すなわち、SMARCC1、SMARCC2、SMARCD1およびSMARCD22)は、我々が同定した真核ARCHEONのうちの3つ(すなわちそれぞれ3p21−p24、12q13−q14および17q)に隣接することは興味深く、これは本発明の一部をなす。本発明において、本発明者らはPCR核形分析によりSMARCE1/BAF57も17q12領域にマップすることができた。
【0076】
KRT 10、 K10
ケラチン10は酸性のタイプIファミリーに属する中間径繊維(IF)鎖であり、末端分化表皮細胞において発現される。表皮細胞はほとんど常にタイプIおよびタイプIIケラチンの対を同時発現し、この同時発現された対は所定の表皮組織に非常に特徴的である。例えば、ヒト表皮において、異なった3対のケラチンが発現される:基底または増殖細胞に特徴的なケラチン5(タイプII)および14(タイプI);超基底末端分化細胞に特徴的なケラチン1(タイプII)および10(タイプI);ならびに疾患または障害により超増殖性にされた細胞、および細胞培養物において成長させた表皮細胞に特徴的なケラチン6(タイプII)および16(タイプI)(およびケラチン17[タイプI])。ヒト表皮ケラチン10(56.5のkD)をコードする1700bpcDNAのヌクレオチド配列[Darmonら、1987、(63)]は、ヒトケラチン10の完全アミノ酸配列[Zhouら、1988、(64)]と同様に開示されている。C末端ドメインにおいてグリシン−ループモチーフを形成するグリシン、広範囲に記述されたグリシン−リッチ準ペプチド繰り返しの挿入および欠失に限定されたKRT10遺伝子の多型性がよく記載されている[Korgeら、1992、(65)]。
【0077】
特異的cDNAクローンを体細胞ハイブリッド分析およびインサイチュハイブリダイゼーションと組み合わせて使用することにより、KRT10遺伝子が、ある形態の急性白血病と関連するt(17;21)(q21;q22)転座に関与する17q21のブレークポイントに近位の領域における17q12−q21にマップされた。KRT10は同じ領域にマップされる3つの他の座:CSF3、ERBA1およびHER2に対してtelomericであるようであった[Lessinら、1988、(66)]。NGFRおよびHOX2はK9に対して遠位である。KRT10、KRT13、およびKRT15遺伝子は同じ大パルスフィールドゲル電気泳動断片に位置する[Romanoら、1991、(67)]。3つの遺伝子の帰属の相関関係は17q21−q22をクラスターの適当な位置にする。突然変異ケラチン10遺伝子を発現するトランスジェニックマウスは表皮剥離性角化症の表現型を有し、したがってヒトの障害についての遺伝的基礎は超基底ケラチンKRT1またはKRT10をコードする遺伝子のける突然変異にあることが示唆される[Fuchsら、1992、(68)]。著者らはまた、基底細胞増殖の刺激が超基底細胞における欠損に起因し、核の変異体または細胞質分裂における変化は、中間径繊維網目構造が摂動しているときに起こることを示した。自発的または軽い機械的または熱的ストレスに反応してのいずれかによる水疱がなく、手のひらおよび足裏以外の体の部分および皮膚に影響のない掌蹠角化症の家族において、KRT10遺伝子のC末端コーディング領域の挿入−欠失多型性についての密接なつながり(シータ=0.00での極大ロッドスコア=8.36)が見いだされた[Rogaevら、1993、(69)]。障害に関して分離されたのはKRT10多型性のまれな高分子量対立遺伝子であったことは注目すべきである。対立遺伝子は影響されない白色人種から得られる96の独立した染色体において観察された。KRT10多型は、コーディング領域中の不完全な(CCG)n繰り返しの挿入/欠失から生じて、ケラチン10タンパク質のC末端においてさまざまなグリシンループモチーフのもとであった。不完全なトリヌクレオチド繰り返しの増幅に関して発病させる役割がある可能性がある。
【0078】
KRT12、K12
ケラチンは上皮細胞における10ナノメートルの中間径繊維を形成する水不溶性タンパクのグループである。およそ30の異なったケラチン分子が同定されている。これらはそれぞれ相対的な電荷、免疫反応性およびタイプIおよびIIウールケラチンによって酸性および塩基性−中性サブファミリーに分類することができる。インビボで、塩基性ケラチンは通常特定の酸性ケラチンと同時発現され、「対合」されて、ヘテロダイマーを形成する。種々のケラチン対の発現は組織特異性であり、分化作用依存性で、発達を促進するように調節される。特異的ケラチン対の存在は、上皮の統合性の維持に欠くことができない。例えば、ヒトK14/K5対とK10/K1対における突然変異はそれぞれ皮膚病、単純型先天性表皮水疱症と表皮剥離性角質増殖症の根底にある。K3およびK12ケラチン対の発現は、ヒト、ネズミおよびニワトリを含む多数の種の角膜において見いだされており、角膜タイプの上皮分化作用のマーカーと見なされる。ネズミKrt12(Krt1.12)遺伝子とその発現は角膜上皮細胞特異性であり、分化依存性であり、発達を促進するように調節される[Liuら、1993、(70)]。ケラチン12遺伝子発現の角膜特異性は、ケラチン12が正常な角膜の上皮機能の持続において独自の役割を果たすことを示す。にもかかわらず、ケラチン12の厳密な機能はわからないままであり、遺伝的なヒト角膜の上皮障害でケラチン12遺伝子における突然変異と直接関連づけられるものはなかった。ヒト角膜上皮細胞の発現特性の研究の一部として、オープンリーディングフレームがケラチン特異的マウスケラチン12遺伝子と高度に相同性であるcDNAが単利された[Nishidaら、1996、(71)]。ケラチン12の機能を説明するために、Krt1.12遺伝子に欠けている12のノックアウトマウスが遺伝子標的技術によって作られた。ヘテロ接合マウスは正常であるように見えた。ホモ接合マウスは正常に発育し、軽い角膜上皮びらんにかかっていた。角膜上皮は脆弱で、目を軽くこするかまたはなでることにより除去することができた。ホモ接合体の角膜上皮は免疫組織化学、エピトープ特異的抗ケラチン12抗体を用いたウェスタンブロット分析、ノザンハイブリダイゼーション、およびアンチセンスケラチン12リボプローブを用いたインサイチュハイブリダイゼーションにより判断されるようにケラチン12を発現しなかった。KRT12遺伝子は放射線ハイブリッドの研究により17qにマップされ、D17S800とD17S930(17q12−q21)の間におけるタイプIケラチンクラスターに局在化された[Nishidaら、1997、(72)]。著者は、KRT12遺伝子のエキソン−イントロン境界構造を提示し、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより遺伝子を17q12にマップした。遺伝子は、コーディング配列を包含する8つのエキソンを規定する7つのイントロンを含む。エキソンとイントロンは一緒になって約6kbのゲノムDNAに及ぶ。
【0079】
Meesmann角膜ジストロフィーは前角膜上皮の易損性を起こす常染色体優性障害であり、角膜特異的ケラチンK3およびK12が発現される。これらのケラチンにおける優性ネガティブな突然変異はMeesmann角膜ジストロフィーの原因である可能性がある。実際、シータ=0.0においてZ(最大)=7.53を有するMeesmannのオリジナルのドイツ人家系においてK12座への障害の関連性が見いだされた[MeesmannおよびWilke、1939、(73)]。北アイルランドからの2家系において、障害が一つの家系においてK12、他の家系においてK12に関して同時に分離されることが判明した。核家族においてK3またはK12(R135T、V143L)におけるヘテロ接合体ミスセンス突然変異が確認された。これらすべての突然変異は高度に保存されたケラチンへリックス境界モチーフにおいて生じ、他のケラチンにおける優性突然変異は細胞骨格機能をひどく損ない、ケラチノサイト易損性つながることが判明した。
ヒトKRT12遺伝子の領域は配列決定され、ゲノムDNAを鋳型として使用して全てのエキソンについて突然変異検出が可能になった[Cordenら、2000、(74)]。著者らは、ヒトゲノム配列が5,919bpに及び、8つのエキソンからなることを見いだした。ミクロサテライト次ヌクレオチドリピートがイントロン3内で同定され、これは高度に多型性であり、遺伝子型分析のために使用するために開発された。加えて、K12のヘリックス開始モチーフでの2の突然変異がMeesmann角膜ジストロフィーを有する家系において見いだされた。アメリカの家系において、ミスセンスM129T突然変異がKRT12遺伝子において見いだされた。KRT12遺伝子において合計8の突然変異が報告されていたということであった。
【0080】
ARCHEONsの中の遺伝子の干渉
ゲノム改変(増幅、挿入、転座、欠失など)に関与する遺伝子はその発現パターンにおいて変化を示す。特に興味深いのは遺伝子増幅であり、これは細胞あたり2より多いコピー数または細胞当たり2より少ない遺伝子コピー数の原因である欠失の原因である。それぞれの遺伝子の遺伝子コピー数と遺伝子発現は必ずしも相互に関係しない。転写過剰発現は染色体の座(プロモーター、エンハンサーおよびサイレンサー)での調節領域により決定される未処理の転写状況および有効な組み合わせにおいて提示される十分な量の転写レギュレーターを必要とする。これはゲノム領域について特に当てはまり、その発現は特定の組織において、または特定の発育段階の間に厳しく調節される。ARCHEONは直接隣接するかまたは染色体の順番で、最大10、好ましくは7、より好ましくは5または少なくとも1つの遺伝子により散在させられた2以上の遺伝子の遺伝子クラスターにより特定される。散在している遺伝子は同時増幅されるが、直接ARCHEONと相互作用しない。このようなARCHEONは最大限20、より好ましくは10または少なくとも6つのメガベースの染色体領域上に広がっている。ARCHEONの性質は特定の組織、細胞タイプ、細胞または発達状態あるいは時点において包含される遺伝子の同時増幅および/または欠失および関連する発現(すなわちそれぞれ増加調節または減少調節)により特徴づけられる。このようなARCHEONは、細胞発生中に重要な役割をするので、進化中に通常保存される。これらのARCHEONの場合に、全遺伝子クラスターは、異常な生物学的環境でも遺伝子発現および/または生物学的エフェクター機能を安定化させる自己調節フィードバックループを有するので、増幅により過剰発現されるか、または非常に類似した転写因子の組み合わせにより調節され、ある発達段階での特定の組織におけるその同時に起こる機能を反映する。したがって、遺伝子コピー数は、特にARCHEONとして機能する遺伝子クラスターにおける遺伝子についての発現レベルと相関する。腫瘍病巣における異常な遺伝子発現の場合に、自己調節フィードバックループがARCHEON遺伝子メンバーの生物学的活性を決める際に保存されるかどうかを知ることは非常に重要である。
【0081】
ARCHEONにおける遺伝子間の強い相互作用を制限ではなく説明のために17q12ARCHEON(図1)について記載する。1つの具体例において、乳がん細胞株について例示されるように、別のゲノム領域中の遺伝子の改変の存在または不在は互いに関連づけられる(図3および図4)。これにより、所定の染色体局在化の前記遺伝子産物の複数の相互作用顔こること、異常な組織におけるそのそれぞれの改変は予測、診断、予後判定及び/または予防および治療的価値があることという本発明の発見が得られる。これらの相互作用は、それぞれの遺伝子が相互に連結しているかまたは独立したシグナリングネットワークの一部であるかまたは細胞挙動(分化状態、増殖及び/またはアポトーシス容量、侵襲性、薬剤反応性、免疫調節活性)を相乗的、拮抗的または独立した方法において調節するという事実のために、直接または間接的に媒介される。ARCHEON内の機能上重要な遺伝子の順序は進化中に保存される(例えばヒト染色体17q12はマウス染色体11上に存在している)。さらに、17q12ARCHEONは3p21と12q13上に存在し、その同じく増幅事象および腫瘍発生に関与することが判明した。おそらくこれらの相同ARCHEONは脊つい動物進化中に重複と再配列により形成された。相同ARCHEONは特定の遺伝子ファミリーの相同遺伝子および/またはイソ型からなる(例えばRARAまたはRARBまたはRARG、THRAまたはTHRB、TOP2AまたはTOP2B、RAB5AまたはRAB5B、BAF170またはBAF155、BAF60AまたはBAF60B、WNT5AまたはWNT5B、IGFBP4またはIGFBP6)。さらにこれらの領域は相同染色体遺伝子クラスター(例えばCACN、SCYA、HOX、Keratins)に隣接している。これらのARCHEONは別の組織においてそのそれぞれの機能を満たすために進化中に分かれた(例えば、17q12ARCHEONは中枢神経系においてその主な機能の1つを有する)。その組織特異性機能のために大規模な調節ループはそれぞれのARCHEONのメンバーの発現を制御する。腫瘍発生中、これらの制御は、分化、増殖、薬剤反応性、侵襲性に関して異常な組織の特性について重要になる。ARCHEON内の遺伝子の同時増幅はそれぞれの遺伝子産物の同時発現につながり得ることが見いだされた。前記遺伝子のいくつかも追加の突然変異あるいは多型の特定のパターンを示し、これはこれらのARCHEONの発ガン性について実質的である。これはこのようなampliconsの重要な特徴の1つであり、ARCHEONのメンバーは腫瘍形成中(たとえば増幅及び欠失事象中)に保存され、これにより遺伝子を診断標識遺伝子と定義する。さらに、ARCHEON内のある遺伝子の発現は、ARCHEONの他のメンバーによって影響され、これにより治療的介入のための標的遺伝子として調節および調節された遺伝子を定義する。ARCHEONのある特定のメンバーの発現は、これらの遺伝子を「マーカー遺伝子」と定義する薬物療法(例えばTOPO2アルファ、RARA、THRA、HER−2)に敏感であることも観察された。さらにいくつかの他の遺伝子が抗体(CACNB1、EBI1)、リガンド(CACNB1)または薬剤様、たとえばキナーゼインヒビター(CrkRS、CDC6)による治療的介入に適している。ARCHEONのメンバーの間の相互作用の次の例は、制限のためではなく例示のために提示される。
【0082】
EBI1/CCR7はGタンパク質結合レセプターファミリーのリンパ球特異的メンバーである。EBI1はインターロイキン−8、SCYA、Rantes、C5a、およびfMet−Leu−Pheなどの化学誘引物質を認識する。細胞分裂の能力はリンパ球において主としてCCR7+サブセットに限定される。亜ダブルネガティブ細胞は刺激後に分裂または膨張しなかった。末端で分化すると考えられるCCR7−細胞は、分裂しないが、インターフェロンガンマを酸性紙、高レベルのパーフォリンを発現する。EBI1はエプスタイン−バー−ウイルスのようなウイルス活性により誘発される。従って、EBI1はリンパ球における変換事象と関連づけられる。非リンパ組織における腫瘍形成中のEBI1の機能的役割を本発明において調べた。興味深いことに、同じゲノム領域に位置するERBAおよびERBBもリンパ球変換と関連する。さらに、レセプターのリガンド(すなわちSCYA5/Rantes)は17q上でゲノム近接にある。リンパおよび非リンパ組織におけるこれらのファクターの両方の異常な発現は、自己調節フィードバックループを確立し、それぞれの細胞内でシグナリング事象を誘発する。リンパ球ファクターの発現は免疫細胞に影響を及ぼし、細胞挙動を調節する。これはリンパ球により浸潤される異常な乳房組織に関して特に興味深い。これと一致して、もう1つの免疫調節および増殖因数が17q12上の近くに位置する。顆粒球コロニー刺激因子(GCSF3)は顆粒球の先祖細胞の増殖および分化を特異的に刺激する。泡状細胞系統により産生されたGCSFから生物学的、生化学的に識別できない多形性グリア芽細胞腫細胞系から刺激活性が見いだされた。コロニー刺激因子は単に免疫細胞に影響を与えるだけではなく、非免疫細胞の細胞応答も誘発し、異常な発現に際して腫瘍発生において関与する可能性があることが示される。加えて、17q12ARCHEONのいくつかの他の遺伝子が、MLLT6、ZNF144とZNFN1A3などの免疫細胞および/またはリンパ芽球性リンパ腫の増殖、生存、分化に関与し、ここでも特定の細胞タイプ内で連結した重要なプロセスにおける遺伝子産物の関連した機能が示される。非免疫細胞において1以上のこれらの遺伝子の異常な発現は、Her−2/neu遺伝子の過剰発現のみから生じる腫瘍形成活性に寄与するシグナリング活性を構成する。
【0083】
PPARBPはp53ファミリーの腫瘍サプレッサー遺伝子とともに複合体において見いだされた。さらに、PPARBPはPPAR−アルファ(PPARA)、RAR−アルファ(RARA)、RXR、THRAおよびTR−beta−1とも結合する。その甲状腺ホルモンレセプターと結合する能力のために、これはTRIP2およびTRAP220と命名された。この複合体において、PPARBPは遺伝子調節活性に影響を与える。興味深いことに、PPARBPはその相互作用パートナーTHRAおよびRARAにゲノムが近接した位置にある。本発明者らは、腫瘍組織においてPPARBPはTHRAおよびRARAと同時増幅されることを見いだした。THRAはERBBとともに鳥類の赤芽球症ウイルスから単離され、従ってERBAと命名された。未熟な段階での赤芽球の分化をブロックすることにより、ERBAはERBBを増強する。ERBAはERBB発現に影響を与えることが示された。この状況において、THRA遺伝子産物のC末端部の欠失は影響力がある。異常なTHRA発現は非機能性脳下垂体腫瘍においても見いだされ、これはレセプターコーディングおよび調節配列における突然変異を反映すると仮定された。調節遺伝子の遺伝子発現を調節することにより、また(例えば、リンゴ酸酵素などの腫瘍における代替代謝経路の重要な酵素および脂質生成の原因である遺伝子の)代謝活性に影響を与えることによって、THRA機能は腫瘍細胞発生を促進する。核レセプターの観察された活性は、そのトランス活性化可能性を反映するだけではなく、リガンドの存在下または不在下での転写後活性にもよる。THRA/ERBAおよびERBBの同時増幅が示されたが、過剰発現が乳ガンにおいて示されなかったので、その腫瘍発生に対する影響は疑われている[van de Vijverら、1987、(75)]。THRAとRARAはその機能がモノマー、ホモダイマーあるいはヘテロダイマーとして媒介されることができる核レセプターファミリーの一部である。RARAは広範囲の細胞の分化を調節する。ホルモンのERBBとの相互作用が調査されている。RARAのリガンドは乳ガンにおける増幅されたERBB遺伝子の発現を抑制することができる[Offterdingerら、1998、(76)]。本発明の一部として、THRAとRARAの同時増幅及び同時発現を示すことができる。甲状腺ホルモンレセプターおよびレチノイン酸レセプターファミリーのメンバーにより調節される多数の遺伝子は腫瘍サンプルにおいて差次的に発現され、そのゲノム変化(増幅、突然変異、欠失)に対応することが見いだされた。これらのホルモン受容体遺伝子およびそれぞれの標的遺伝子は臨床特性に関して患者サンプルを区別するために有用である。
【0084】
多数の正常な組織、腫瘍サンプルおよび腫瘍細胞系の発現分析とその後に続く17q12領域のクラスター化により、Her−2/neu陽性腫瘍細胞および腫瘍細胞の発現は、中枢神経系からの組織の発現パターンと類似性を示す(図2)。これは観察された奇形と一致して、Her−2/neuおよびTHRAノックアウトマウスの中枢神経系にある。さらに、神経発生に関与する核ファクターであるNEUROD2は、それぞれのサンプルにおいて一般に発現されることが判明した。その正常な臓器発達における主要な機能が中枢神経系に基底される「ARCHEON」であるとして、これは17q12座が定義された。驚くべきことに、NEUROD2の発現は治療の介入によって影響を受けた。極めて印象的なことには、ZNF144、TEM7、PIP5KおよびPPP1R1Bは、多様な組織特異性の機能を示す神経細胞において発現される。
【0085】
加えて、Her−2/neuは、腫瘍の侵襲性に関与するシグナリング化スケートの顆粒のメンバーであるGRB7と共にしばしば同時増幅される。驚くべきことに、本発明者らはHer−2/neuシグナリングカスケードのもう一つのメンバーが原発乳ガンTOB1(=「ERBBシグナリングののトランスデューサー」)。TOB1の強力な過剰発現は、Her−2/neuのより弱い過剰発現と関連し、これが発ガン性に関与することを示す。Her−2/neuの増幅が、シグナリングカスケードの同定された下流成分(例えばRas−Raf−MAPK)のために、向上された増殖能の原因である。この点に関して、細胞周期依存性キナーゼであるいくつかのcdc遺伝子がampliconsの一部であることは驚くべきことであった、これは発現の改変により細胞周期進行に大きな影響を与える。
上記の観察によれば3q21−26の遺伝子の次の例は制限のためでなく、例示のために提示される。
⇒WNT5A、CACNA1D、THRB、RARB、TOP2B、RAB5B、SMARCC1(BAF155)、RAF、WNT7A
12q13においての遺伝子の次の例は制限のためでなく、例示のために提示される。
⇒CACNB3、Keratins、NR4A1、RAB5/13、RARgamma、STAT6、WNT10B、(GCN5)、(SAS:肉腫増幅配列)、SMARCC2(BAF170)、SMARCD1(BAF60A)、(GAS41:神経膠腫増幅配列)、(CHOP)、Her3、KRTHB、HOXC、IGFBP6、WNT5B
【0086】
上記の増幅されたARCHEON間にはクロストークがあり、いくつかの他の高度に増幅されたゲノム領域はおよそ1p13、1q32、2p16、2q21、3p12、5p13、6p12、7p12、7q21、8q23、11q13、13q12、19q13、20q13および21q11の位置にある。増幅された領域はこれらの染色体位置で更に大きいおよび/または重複した位置を含むので、前記染色体領域は限定のためでなく、例示のために記載する。
前記染色体位置の非転写遺伝子、偽遺伝子または遺伝子間領域の追加の改変は、悪性腫瘍、特に乳ガンの予測、診断、予後判定、予防および治療のために測定することができる。遺伝子あるいはゲノム領域のいくつかはARCHEONのメンバまたは別の染色体領域の中の遺伝子に直接影響しないが、それでも機能的に重要な遺伝子(例えばHer−2/neu遺伝子に隣接しているTelethonin)の近傍でのその染色体の位置のためにマーカー遺伝子機能を保持する。
【0087】
発明はさらに使用に:
a)配列番号:1から26または53から75配列の少なくとも1つを含むポリヌクレオチド;
b)表2または3のそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)で指定したポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチド;
c)表2または3のそれぞれの配列について特定されたのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードが生成(縮重)するために、その配列が(a)および(b)で指定されたポリヌクレオチドから逸脱しているポリヌクレオチド;
d)(a)から(c)において特定されたポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチド;
e)(a)から(d)において指定されたポリヌクレオチド配列の1つを特異的に標的とするアンチセンス分子;
f)(a)から(d)において特定されたポリヌクレオチドによりコードされる精製されたポリペプチドが数列;
g)配列番号:27から52または76から98の配列の少なくとも一つを含む精製されたポリペプチド;
h)(a)から(d)において特定されたポリヌクレオチドまたは(f)および(g)において特定されたポリペプチドの一つと結合できる抗体;
i)(a)から(d)において特定されたポリヌクレオチドまあは(f)および(g)において特定されたポリペプチドの量または活性を調節する請求項14から16の方法のいずれかにより同定される試薬の、悪性腫瘍、特に乳ガンの予防、予測、診断、予後判定用組成物または治療用医薬の調製における使用に関する。
【0088】
ポリヌクレオチド
「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であり、「乳がん遺伝子」ポリペプチドのコーディング配列またはコーディング配列の補体を含む。ヒト「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする縮重ヌクレオチド配列、ならびに配列番号:1から26または53から75のヌクレオチド配列と少なくとも約50、55、60、65、70、好ましくは約75、90、96、または98%同一であるホモローガスなヌクレオチド配列も、「乳がん遺伝子」である。2つのポリヌクレオチドの配列間の配列同一性(%)は、ギャップオープンペナルティー−12で、ギャップエクステンションペナルティー−2のアフィンギャップ検索を用いて、FASTAアルゴリズムを使用するALIGNなどのコンピュータ・プログラムを用いて決定される。している。相補的DNA(cDNA)分子、ホモローガスな種、および生物学的に活性な「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドの変異体も「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドである。
【0089】
ポリヌクレオチドの調製
自然に存在する「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドは、他の細胞成分、たとえば、膜成分、タンパク質、および脂質を含まないで単離できる。ポリヌクレオチドは細胞によって作られて、標準的核酸精製技術を使って単離されるか、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅技術を使って、または自動合成器を用いて合成することができる。ポリヌクレオチドを単離するための方法は慣例どおりであって、当該分野において公知である。ポリヌクレオチドを得るためのこのような技術を用いて、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、制限酵素およびプローブを「乳がん遺伝子」ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド断片を単離するために用いることができる。ことができる。単離されたポリヌクレオチドは、少なくとも70、80、または90%他の分子がない。
【0090】
「乳がん遺伝子」cDNA分子は、「乳がん遺伝子」mRNAを鋳型として使用して、標準的分子生物学的技術で作ることができる。mRNAの単離に対して選択しない任意のRNA単離技術をこのようなRNAサンプルの精製のために用いることができる。例えば、Sambrookら、1989、(77);およびAusubel、F・M.ら、1989、(78)(両方ともが出典明示により本発明の一部とされる)参照。さらに、たとえばChomczynski、P.(1989、米国特許第4,843,155)(出典明示によりその全体を本発明の一部とする)の一段RNA単離法などの当業者に周知の技術を用いて多数の組織サンプルを処理できる。
「乳がん遺伝子」cDNA分子はその後当該分野において知られ、Sambrookら、1989(77)などのマニュアルに開示されている分子生物学的技術を使って複製できる。PCRなどの増幅技術を、ヒトゲノムDNAまたはcDNAのいずれかを鋳型として使用して、本発明のポリヌクレオチドの追加のコピーを得るために用いることができる。
別法として、合成化学技術を、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドを合成するために用いることができる。遺伝子コードの縮重により、「乳がん遺伝子」ポリペプチドまたはその生物学的に活性な変異体をコードする別のヌクレオチド配列を合成することが可能になる。
【0091】
差次的発現の同定
当業者らによく知られている様々な方法を利用することにより、差次的に発現された遺伝子により産生されたRNAを代表する集められたRNAサンプル中のコピーを同定できる。例えば、差次的スクリーニング[Tedder、T・F.ら、1988、(79)]、消去式ハイブリダイゼーション[Hedrick、S・M.ら、1984、(80);Lee、S・W.ら、1984、(81)]、および好ましくは、差次的ディスプレイ(Liang、P.およびPardee、A・B.、1993、米国特許第5,262,311号、その全体を出典明示により本発明の一部とする)を差次的に発現された遺伝子から得られるポリヌクレオチド同定を識別するために利用できる。
差別的スクリーニングが、ライブラリーの1つのコピーは、一つのセルタイプのmRNA集団に対応する完全な細胞cDNAプローブについてスクリーニングされ、一方、cDNAライブラリーの複製コピーは、第二のセルタイプのmRNA集団に対応する全cDNAプローブに関してスクリーニングされるcDNAライブラリーの重複スクリーニングを含む。例えば、1つのcDNAプローブは対照から得られるセルタイプの全細胞cDNAプローブに対応し、第二のcDNAプローブは実験対象から得られる同じセルタイプの全細胞cDNAプローブに対応する。一つのプローブとハイブリッド形成するが、他のものとはハイブリッド形成しないクローンは、実験対象に対する対照における興味のあるセルタイプにおいて差次的に発現された遺伝子から得られるクローンの代表である。
【0092】
消去式ハイブリダイゼーション技術は一般に2つの異なった供給源、たとえば対照および実験組織からのmRNAの単離、mRNAまたは単離されたmRNAから逆転写された一本鎖cDNAのハイブリダイゼーション、および全てのハイブリッド形成され、従って二本鎖になった配列の除去を含む。残存するハイブリッド形成されていない一本鎖cDNAは2つのmRNA供給源において差次的に発現された遺伝子から得られるクローンを表す。このような一本鎖cDNAと次いで差次的に発現された遺伝子から得られるクローンを含むライブラリーの構築用出発物質として用いる。
【0093】
差次的ディスプレイ技術は、差次的に発現された遺伝子から得られる配列の同定を可能にするよく知られているポリメラーゼ連鎖反応(PCR;Mullis、K.B.、1987、米国特許第4,683,202号に記載された実施例)を用いた方法である。最初に、単離されたRNAを当業者に周知の標準的技術を用いて一本鎖cDNA中に逆転写する。逆転写酵素反応のプライマーは、これらに限定されるわけではないが、オリゴdT含有プライマー、好ましくは後述の逆プリマータイプのオリゴヌクレオチドを包含する。次に、後述されるように、この技術はPCRプライマー対を使い、これにより任意の所定の細胞内に存在するRNA転写物のランダムなサブセットを代表するクローンの増幅が可能になる。このような増幅された転写物のうち、差次的に発現された遺伝子から産生されるものを同定することができる。
【0094】
プライマー対の逆のオリゴヌクレオチドプライマーは、mRNAのポリ(A)テールまたはmRNAポリ(A)テールから逆転写されたcDNAの補体とハイブリッド形成する、その5’末端で好ましくは11ヌクレオチド長のヌクレオチドのオリゴdT鎖を含んでもよい。第二に、逆プライマーの特異性を増大させるために、プライマーは1以上、好ましくは2の追加のヌクレオチドをその3’末端に含んでもよい。統計的に、興味のあるサンプル中に存在するmRNA由来の配列のサブセットのみがこのようなプライマーとハイブリッド形成するので、追加のヌクレオチドはプライマーに興味のあるサンプルにおいて存在するmRNA由来の配列のサブセットのみを増幅させる。これにより増幅され他配列を表すバンドのそれぞれの更に正確で完全な可視化とキャラクタライゼーションが可能になる点でこれは好ましい。
【0095】
順プライマーは、統計学的に、興味のある組織から得られるcDNA配列とハイブリッド形成する能力を有すると考えられるヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列は任意のものであってよく、順オリゴヌクレオチドプライマーの長さは約9から約13ヌクレオチドの範囲であり、約10ヌクレオチドが好ましい。任意のプライマー配列は産生された増幅部分的cDNAの長さを多様にし、標準的変性シーケンシングゲル電気泳動を用いることにより異なるクローンが分離される。増幅産物の収率および特異性を最適にするPCR反応条件が選択され、さらに標準的ゲル電気泳動技術を用いて分割できる長さの増幅産物を産生する。このような反応条件は当業者らにはよく知られており、重要な反応パラメータは、たとえば、前記のオリゴヌクレオチドプライマーの長さとヌクレオチド配列、およびアニーリングおよび延長段階温度および反応時間を包含する。2つの異なるセルタイプのmRNAの逆転写および増幅から得られるクローンのパターンはシーケンシングゲル電気泳動により表示され、比較される。2つのバンドパターンは、潜在的に差次的に発現された遺伝子を示す。
【0096】
標準的な長さの完全長cDNAについてスクリーニングする場合、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリーを用いるのが好ましい。ランダムにプライムされたライブラリーは、遺伝子の5’領域を含むより多くの配列を含む点で好ましい。ランダムにプライムされたライブラリーは、オリゴd(T)ライブラリーが完全長cDNAを産生しない状況に関して特に好ましい。ゲノムライブラリーは5’非転写調節領域中に配列を伸長するために有用である。
商業的に入手可能なキャピラリー電気泳動システムを、大きさを分析するか、またはPCRのヌクレオチド配列またはシーケンシング産物を確認するために用いることができる。例えば、キャピラリーシーケンシングは電気泳動分離用の流動可能なポリマー、レーザーで活性化された4つの異なる蛍光色素(それぞれのヌクレオチドについて一つ)、および電荷結合素子カメラによる発光波長の検出を用いることができる。アウトプット/光強度は適当なソフトウェア(例えばGENOTYPERと配列NAVIGATOR、PerkinElmer;ABI)、を用いて電気信号に変換でき、サンプルのローディングからコンピューター分析までの全プロセスおよび電子データ表示はコンピューター制御できる。キャピラリー電気泳動は、特定のサンプル中に限られた量で存在するDNAの小片のシーケンシングに特に好ましい。
【0097】
一旦潜在的に差次的に発現された遺伝子配列が、例えば、前記のもののようなバルク技術により同定されると、このような推定上差次的に発現された遺伝子は確認されるべきである。確認は、例えばノザン分析および/またはRT−PCRのようなよく知られている技術によって達成することができる。確認により、差次的に発現された遺伝子はさらに特徴づけられ、後述する標的および/またはマーカー遺伝子として同定することができる。
また、差次的ディスプレーにより得られる差次的に発現された遺伝子の増幅された配列は、対応する遺伝子の完全長クローンを単離するために用いることができる。遺伝子の完全長コーディング部分は当該分野においてよく知られた分子生物学的技術により不適当な実験を行うことなく容易に単離できる。例えば、単離された差次的に発現された増幅された断片を標識し、cDNAライブラリーをスクリーニングするために用いることができる。別法として、標識された断片を、ゲノムライブラリーをスクリーニングするために用いることができる。
【0098】
同定された遺伝子により産生されたmRNAの組織分布の分析を、当業者二種うちの標準的技術を用いて行うことができる。このような技術は、例えば、ノザン分析およびRT−PCRを含む。このような分析は、同定された遺伝子が乳がんの一因になると予想される組織において発現されるかどうかについての情報を提供する。このような分析はまた定常状態mRNA調節に関する定量的情報を提供し、どの同定された遺伝子が、好ましくは乳がんに寄与することを予想される組織において高レベルの調節を示すかに関するデータを得る。
このような分析を、所定の組織から得られる特定のセルタイプの単離された細胞集団に関して行うことができる。加えて、所定の組織内のどの細胞が同定された遺伝子を発現するかに関する情報を提供するために、標準的インサイチュハイブリダイゼーション技術を用いることができる。このような分析は、組織内の細胞のサブセットのみが乳ガンに関連すると考えられる場合において乳ガンに対して同定された遺伝子の生物学的機能に関する情報を提供する。
【0099】
同時増幅された遺伝子の同定
ゲノム改変(増幅、挿入、転座、欠失など)に関与する遺伝子がデータベース分析と組み合わせてPCRベースの核型分析によって同定される。特に興味深いのは、細胞あたり2より大きな遺伝子コピー数毎に遺伝子コピー数>2の原因となる遺伝子増幅である。それぞれの遺伝子の遺伝子コピー数と遺伝子発現がしばしば相互に関係する。したがって、遺伝子増幅のために同時に過剰発現される遺伝子のクラスターをDNAチップ技術または定量的RTPCRによる配列分析によって同定することができる。例えば、遺伝子コピー数の増大または減少により改変された遺伝子の発現は、AffymetrixからのGeneArrayTM技術またはTaqManまたはiCyclerシステムを用いたqRT−PCRによって測定することができる。さらにRNAのDNAとの組み合わせにより、組織または単細胞サンプルにおいて高解像度の様々な長さの多数のゲノム領域の非常に相関した自動化キャラクタライゼーションを可能にする。さらに、これら分析は標的遺伝子の遺伝子コピー数と比較して遺伝子転写の相関関係を可能にする。必ずしも発現レベルと遺伝子コピー数の線形相関関係がなく、ある特定の遺伝子クラスターにおいて相乗的または拮抗効果があるので、RNAレベルに関する同定は特に腫瘍組織における改変の生物学的結果に関してより容易で、おそらくいっそう適切である。
【0100】
悪性腫瘍における同時増幅された遺伝子の検出
染色体の変化は一般にFISH(=蛍光−インサイチュハイブリダイゼーション)およびCGH(=の比較ゲノムハイブリダイゼーション)により検出される。ゲノム領域の定量化のために遺伝子または遺伝子内領域を使用することができる。このような定量化がお互いに関して多数の遺伝子の相対的存在量を測る(例えば標的遺伝子対対動原体領域またはハウスキーピング遺伝子)。相対存在量の変化はRNAまたはゲノムRNAの抽出後にさえパラフィン包埋物質において検出できる。ゲノムDNAの測定は、遡及的研究を行なう可能性のもとであり、多数の内部のコントロール(改変されて、増幅されるか、または欠失されない遺伝子)を提供するDNAの安定性のために、RNA分析と比較して有利である。さらに、ゲノムDNAのPCR−分析は遺伝子間の非常に可変的な領域またはSNP(=一塩基多形性)、RFLP、VNTRおよびSTR(一般的な多形マーカー)の組み合わせを調査するための利点を提供する。所定のゲノム領域内のSNPまたは多形マーカーの定量(例えば「PyrosequencingTM」によるSNP分析)はゲノム改変の表現型に影響を与える。例えば増幅された対立遺伝子の一部である遺伝子の生物学的可能性を特徴づけるために多型性またはハプロタイプの化合を決定することは有利である。遺伝子のブレークポイント領域、コーディング領域または調節領域あるいは遺伝子間領域において多形性マーカーが特に重要である。定義された生物学的または臨床結果について予測されるハプロタイプを決定することにより、患者からの非腫瘍サンプルを用いて診断と予後徴候分析を確立することが可能である。好ましくは1つの対立遺伝子または両対立遺伝子がある程度まで増幅(=線形または非線形増幅)されるかどうかによってハプロタイプを決定できる。例えば1人の患者の正常組織、体液または生物学のサンプルから単離された核酸における異種接合体多形性マーカーの組み合わせはまさしくその同じ患者の腫瘍組織でほとんどホモ接合性になるので、遺伝子増幅を有する細胞または組織において特定の多形性マーカー組み合わせの過剰提示はハプロタイプ決定を容易にする。この「ホモ接合性の獲得」は、増幅事象による異なるゲノム領域の測定に対応し、「機能の獲得」−腫瘍における改変の同定に適していて、結果として、例えば発ガン性または成長促進活性が得られる。対照的に、「ヘテロ接合性の喪失」の検出は、発ガン性を抑制して、細胞の成長プロセスを減少調節する発ガン抑制遺伝子、ゲートキーパー遺伝子またはチェックポイント遺伝子の同定に用いられる。この本質的な差は腫瘍発生のためのそれぞれのゲノム領域の影響を明らかに妨害し、本発明において開示された「ホモ接合性の獲得」測定の重要性を強調する。SNPに関する分析に加えて、VNTR検出に基づく血液白血球DNAと腫瘍DNAの比較法により、すでに記載されたARCHEONの存在を解明できる。SNPおよびVNTR配列およびARCHEONの検出に最も適した17q11−21においてプライマーセットを表4および表6に記載する。このような多形性マーカーの検出、定量化およびサイジングは当業者らに公知の方法によって達成できる。本発明の1つの具体化において、本発明者はPCR増幅とキャピラリー電気泳動による記載にされたVNTR(表6)のいずれかの量と大きさの比較を開示する。PCRは線形増幅範囲(少ないサイクル数)で有利に標準的プロトコルによって実行でき、CEによる検出は供給元プロトコル(例えばAgilent)によって実行されるべきである。さらに有利には、表6に記載されたVNTRの検出は、さまざまな標識されたプライマー(例えば、蛍光、放射性、生活性)および適当なCE検出システム(例えばABI310)を利用して多様な方法で実行できる。しかしながら、検出は、モノクローナルDNA染色を有する高度に濃縮されたアガロースまたはポリアクリルアミドからなるスラブゲル上でも行うことができる。解像度の向上は、適当なプライマーデザインおよび長さの多様性により達成でき、多重PCRにおいて最良の結果が得られる。
遺伝子の転写活性に対して影響を与える、改変されたゲノム領域内でDNA(例えばメチル化または関連づけられたクロマチン(例えば関連づけられたタンパクのアセチル化またはメチル化)の共有結合修飾を決定することも重要である。一般に、多数の短い配列(60−300のbp)を測定することにより、これらの技術は分析的なFISH分析法(2−100のkb)のような従来の方法によって得ることができない標的領域の高分解能分析が可能になる。さらにPCRベースのDNA分析技術は、感度、特異性、多重性、時間消費量と必要とされる患者サンプルの量が少ないことに関して利点を提供する。これらの技術は分析のためにさらに純粋な出発物質を得るための顕微手術またはマクロ解剖と組み合わせることにより最適化できる。
【0101】
ポリヌクレオチドの伸長
完全長遺伝子配列の同定およびクローニングのためのこのような手順の一具体例において、RNAを適当な組織または細胞供給源から標準的手順に従って単離できる。逆転写反応を次いで、第一鎖合成のプライミングのために、増幅された断片に対応するmRNAに対して相補性のオリゴヌクレオチドプライマーを使用するRNAに関して行うことができる。プライマーはmRNAに対して逆平行性であるので、伸長は増築がmRNAの5’末端へ向かって進行する。結果として得られるRNAハイブリッドを次いで標準的末端トランスフエラーゼ反応を使用してグアニンを有する「テール」にしてもよく、ハイブリッドをRNA分解酵素Hで消化し、第二のストランド合成を次にポリ−Cプライマーでプライムすることができる。2つのプライマーを使って、遺伝子の5’部分はPCRを使って増幅される。得られた配列を次いで単離し、あらかじめ単離された配列と再結合させて、本発明の差次的に発現された遺伝子の完全長cDNAが生じる。クローニング法および組換えDNA技術の論評については、たとえば、Sambrookら、(77);およびAusubelら、(78)参照。
【0102】
プロモーターおよび調節エレメントなどの上流配列を検出するために本明細書において開示されたポリヌクレオチド配列を拡張するために種々のPCRベースの方法を使用することができる。例えば、制限部位PCRは、公知の座[Sarkar、1993、(82)]に隣接する未知の配列を修復するために普遍的なプライマーを使用する。ゲノムDNAをまずリンカー配列に対するプライマーおよび公知領域に対して特異的なプライマーの存在下で増幅させる。増幅されたプライマーを次いで同じリンカープライマーおよび第一のものの内部の別の特異的プライマーを用いたPCRの第二ラウンドに供する。PCRの各ラウンドの生成物を適当なRNAポリメラーゼで転写し、逆転写酵素を用いて配列決定する。
逆PCRも、公知領域に基づいて多種多様なプライマーを使って配列を増幅するか、または延長するために使用することができる[Trigliaら、1988、(83)]。プライマーは、OLIGO4.06プライマーソフトウェア(National Biosciences Inc.、プリマス、Minn.)のような、商業的に入手可能なソフトウェアを使って、例えば2230ヌクレオチドの長さであり、50%以上のGC含有率を有し、約68−72℃の温度で標的配列とアニールするように設計できる。この方法は遺伝子の周知の領域で適当な断片を生成するためにいくつかの制限酵素を使う。断片は次に分子内結紮によって環状化されて、PCR鋳型として使用される。
【0103】
使用できるもう1つの方法は捕獲PCRであり、これはヒトおよび酵母菌の人工の染色体DNAにおいて周知の配列に隣接しているDNA断片のPCR増幅を含む[Lagerstromら、1991、(84)]。この方法において、多数の制限酵素消化および結紮を、PCRを行なう前にDNA分子の未知の断片中に操作された二本鎖配列を配置するために使用できる。
加えて、PCR、ネステッドプライマー、およびPROMOTERFINDERライブラリー(CLONTECH、Palo Alto,Calif.)はゲノムDNA(CLONTECH、パロアルト、Calif.)を歩行させるために使用できる。このプロセスはライブラリーをスクリーニングする必要を回避し、イントロン/エキソンジャンクションを見いだすことにおいて有用である。
同定された遺伝子の配列を、標準的技術を利用して、遺伝子マップ、たとえばマウス[Copeland&Jenkins、1991、(85)]およびヒト遺伝マップ[コーエンら、1993、(86)]上に遺伝子を配置するために用いることができる。このようなマッピング情報は、例えば、既知の遺伝乳がん傾向がマップされる遺伝子領域の近くにマップされる遺伝子を同定することによりヒトの疾患に対する遺伝子の重要性に関する情報が得られる。
【0104】
ポリヌクレオチド変異体および相同体またはスプライス変異体の同定
前記の「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドの変異体および相同体もまた、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドである。典型的には、ホモローガスな「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下で公知「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドとの候補ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより同定できる。例えば、次の洗浄条件を使用して:2XSSC(0.3MのNaCl、0.03Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1%のSDS、室温で2回、それぞれ30分;次いで2XSSC、0.1%SDS、50EC、30分;次いで2XSSC、室温で2回、10分、多くで約25〜30%塩基対ミスマッチを含むそれぞれのホモローガスな配列を同定することができる。さらに好ましくは、ホモローガスなポリヌクレオチドストランドは15−25%の塩基対ミスマッチを含み、さらにいっそう好ましくは5−15%の塩基対ミスマッチを含んでいる。
【0105】
適当なプローブまたはプライマーを産生し、cDNA発現ライブラリーをマウス、サル、または酵母菌などの他の種からスクリーニングすることによって、本発明において開示される「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドのホモローガスな種を同定できる。「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドのヒト変異体は、たとえば、ヒトcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることにより同定できる。二本鎖DNAのTmは相同性が1%減少するのに対して1〜1.5℃低下することはよく知られている[Bonnerら、1973、(87)]。ヒト「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドまたは他の種の「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドの変異体は、推定相同性「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドを配列番号:1から26または53から75の配列の一つのヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとハイブリッド形成させて、試験ハイブリッドを形成することにより同定できる。試験ハイブリッドの融点は、完全な相補性ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含むハイブリッドの融点に匹敵し、完全に補足的なヌクレオチド配列を持っているポリヌクレオチドを含み、テストハイブリッドの中の塩基対のミスマッチの数またはパーセントが計算される。
【0106】
ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件に従って、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドまたはその補体とのハイブリッド形成するヌクレオチド配列もまた「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドである。ストリンジェントな洗浄条件は周知であり、当該分野において理解され、例えば、Sambrookら、(77)において開示されている。典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件について、温度と塩濃度の組み合わせを洗濯しなければならず、すなわち、研究されているハイブリッドのTm計算値は約12−20℃以下ある。配列番号:1から26または53から75の配列の一つのヌクレオチドまたはその補体を有する「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドとこれらのヌクレオチド配列の一つと少なくとも約50、好ましくは75、90、96、または98同一であるポリヌクレオチド配列間のハイブリッドのTmを、たとえば、下記の式を用いて計算できる[BoltonとMcCarthy、1962、(88):
Tm=81.5−℃−16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/l)
(式中、l=ハイブリッドの長さ(塩基対)である。)
【0107】
ストリンジェントな洗浄条件は、たとえば、65℃で4×SSC、または50%ホルムアミド、28℃で4×SSC、または0.5×SSC、65℃の0.1%SDSを含む。非常にストリンジェントな洗浄条件は、たとえば、65℃で0.2×SSCを含む。
関連するインビボおよびインビトロシステムを用いることにより、同定された遺伝子の生物学的機能をさらに直接的に評価できる。インビボシステムは、これらに限定されないが、自然に乳癌素因を示すか、またはこのような症状を示すように処理された動物型を含み、これらに限定されないが、apoE−欠損悪性腫瘍マウスモデルを包含する[Plumpら、1992、(89)]。
【0108】
相同性検索についてすでに記載したハイブリダイゼーション条件により、同じプレmRNAによりコードされた同じゲノム領域から得られるスプライス変異体を同定することができる。同じ前転写物のスプライス変態によりコードされる変異体タンパク質の特異的性質は異なり、開示されたようにして分析できる。配列番号:1から26または53から75の配列の一つのヌクレオチド配列またはその補体を有する「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドはしたがって配列番号:60について示される全配列野市部および配列番号:61から66のコードされたスプライス変異体と異なる。これらは配列番号:83から89の個々のタンパク質と称する。スプライシング事象の予想およびプレmRNA内の使用されるアクセプターおよびドナー部位の同定はコンピューターで計算でき(例えばソフトウェアパッケージGRAILまたはGenomeSCAN)、当業者によりPCR法により検証できる。
【0109】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは特定のDNAまたはRNA配列と相補的なヌクレオチド配列である。いったん細胞中に導入されると、相補的なヌクレオチドは細胞により産生される天然の配列と結合して複合体を形成し、転写または翻訳のいずれかをブロックする。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは長さにおいて少なくとも6つのヌクレオチドであるが、少なくとも7、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、または50またはそれ以上のヌクレオチド長であり得る。より長い配列も使用できる。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は細胞の「乳がん遺伝子」遺伝子産物のレベルを減少させるために前記のようにDNA構築物中に供給されて、細胞中に導入することができる。
【0110】
アンチセンスオリゴヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA;米国特許第5,714,331号に記載)、ロック核酸(LAN;WO99/12826に記載)、またはその組み合わせでありえる。オリゴヌクレオチドは、手作業または自動化合成器により、ヌクレオチドの5’末端を、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホネート、ホスホルアミデート、リン酸塩エステル、カーバメート、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、炭酸エステルおよびリン酸エステルと化合させるもう1つの非phosphodiesterのinternucleotide連鎖を持っているヌクレオチドとリン酸トリエステルなどの非ホスホジエステルヌクレオチド間結合を有するもうひとつのヌクレオチドの3’末端と共有結合させることにより合成することができる[Brown、1994、(126);Sonveaux、1994、(127)およびUhlmannら、1990、(128)]。
【0111】
「乳がん遺伝子」の制御、5’、または調節領域に対して日本鎖を形成するアンチセンスオリゴヌクレオチドをデザインすることにより、「乳がん遺伝子」発現の修飾を得ることができる。転写開始部位、たとえば10位と出発部位から+10位の間から得られるオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、「トリプルへリックス」塩基対合法を用いて抑制を達成できる。トリプルへリックス対は、ダブルへリックスをポリメラーゼ、転写因子、またはシャペロンの結合のために十分開くための能力を抑制するので有用である。トリプレックスDNAを使用した治療の進歩が文献において記載されている[Geeら、1994、(129)]。転写物がリボソームと結合するのを防止することにより、アンチセンスオリゴヌクレオチドがmRNAの翻訳を阻止するようデザインすることができる。
【0112】
正確な相補性はアンチセンスオリゴヌクレオチドと「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドの相補配列間に複合体を形成するために必要とされない。例えば、それぞれ隣接した「乳がん遺伝子」ヌクレオチドと相補性でない連続したヌクレオチド鎖により分離された「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドと正確に相補性である2、3、4、または5またはそれ以上の連続したヌクレオチド鎖を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、2「乳がん遺伝子」mRNAに対する十分な標的特異性を提供することができる。好ましくは、相補性の連続したヌクレオチドのそれぞれの鎖は長さにおいて少なくとも4、5、6、7、または8かそれ以上のヌクレオチドである。非相補性介在配列は好ましくは長さにおいて1、2、3、または4のヌクレオチドである。当業者らは、特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドと特定の「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチド配列の間に許容されるミスマッチの程度を決定するためにアンチセンス対の融点の計算うちを容易に用いることができる。
【0113】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドとハイブリッド形成するその能力に影響を与えないで修飾できる。これらの修飾は内部であるか、またはアンチセンス残基の数が変わる。分子の一端または両端であり得る。例えば、ヌクレオシド間ホスフェート結合は、アミノ基と末端リボースの間の炭素残基の数をさまざまに変えてコレステリルナまたはジアミン部分を加えることにより修飾できる。修飾された塩基および/または糖、たとえばリボースの代わりにアラビノース、または3’ヒドロキシル基または5’ホスフェート基が置換されている3’,5’置換オリゴヌクレオチドも、修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて使用できる。これらの修飾されたオリゴヌクレオチドは当該分野において周知の方法により調製できる[Agrawalら、1992、(130);Uhlmannら、1987、(131)およびUhlmannら、(128)]。
【0114】
リボザイム
リボザイムは触媒活性を有するRNA分子である[Cech、1987、(132);Cech、1990、(133)およびCouture&Stinchcomb、1996、(134)]。リボザイムは、当該分野において公知のように、RNA配列を開裂することにより遺伝子機能を抑制するために用いることができる(例えば、Haseloffら、米国特許第5,641,673号)。リボザイム作用のメカニズムは、リボザイム分子の相補性標的RNAに対する配列特異的ハイブリダイゼーション、続いて内ヌクレオチド結合分解性開裂を含む。例は、特定のヌクレオチド配列の内ヌクレオチド結合分解会列を特異的かつ有効に触媒することできる処理されたハンマーヘッドモチーフリボザイム分子を含む。
「乳がん遺伝子」の転写された配列は、「乳がん遺伝子」ゲノム座から転写されたmRNAと特異的に結合するリボザイムを生成するために使用できる。高度に配列特異的な方法でトランスにおいて他のRNA分子を開裂させることができるリボザイムをデザインして、構築する方法が開発されて、当該分野において記載されている[Haseloffら、1988、(135)]。例えば、リボザイム中に別々の「ハイブリダイゼーション」領域を作ることにより、リボザイムの開裂活性は特定のRNAを標的とすることができる。ハイブリダイゼーション領域は標的RNAに対して相補性の配列を含み、したがって標的と特異的にハイブリッド形成する[例えば、Gerlachら、EP0321201]。
【0115】
次の配列を含むリボザイム開裂部位について標的分子を調べることにより、「乳がん遺伝子」RNA標的中の特定のリボザイム開裂部位を同定できる:GUA、GUUおよびGUC。開裂部位を含む標的RNAの領域に対応する15から20の間のリボヌクレオチドの同定された短いRNA配列を、標的を実行不能にし得る二次構造特性について評価することができる。候補「乳がん遺伝子」RNA標的の適合性もまたリボヌクレアーゼ保護分析を用いる相補性オリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションの実施容易性を試験することにより評価できる。より長い相補配列が標的に対するハイブリダイゼーション配列の親和性を増大するために使用できる。相補性領域により標的RNAとハイブリッド形成する際に、リボザイムの触媒領域が標的を開裂させることができるように、リボザイムのハイブリッド形成および開裂領域は全体的に関連し得る。
【0116】
リボザイムはDNA構築物の一部として細胞に導入できる。微量注入法、リポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはリン酸カルシウム沈降のような機械的方法を、「乳がん遺伝子」発現を減少させることが望ましい細胞中にリボザイム含有DNA構築物を導入するために使用できる。別法として、もし細胞が安定してDNA構築物を保持することが望ましいならば、構築物はプラスミドの上に供給されて、別個の要素として維持されるか、または、当該分野において知られているように細胞のゲノム中に統合できる。リボザイム−エンコーディングDNA構築物は、細胞におけるリボザイムの転写を制御するために、プロモーターエレメント、エンハンサーまたはUASエレメントおよび転写ターミネーターシグナルのような転写調節エレメントを含むことができる。
Haseloffら、米国特許第5,641,673号により示唆されるように、リボザイム発現が標的遺伝子の発現を誘発するファクターに応えて起こるように、リボザイムを設計することができる。リボザイムと標的遺伝子の両方が細胞において誘発されるときだけmRNAの破壊が起こるように追加レベルの変動率を提供するためにリボザイムを処理することができる。
【0117】
ポリペプチド
本発明の「乳がん遺伝子」ポリペプチドは配列番号:27から52および76から98から選択されるか、または配列番号:1から26および53から75のポリヌクレオチド配列または誘導体のいずれかによりコードされるポリペプチドを含む。本発明の「乳がん遺伝子」ポリペプチドは従って、「乳がん遺伝子」ポリペプチドのすべてまたは一部を構成する部分、完全長、または融合タンパク質であり得る。
【0118】
タンパク質精製
「乳がん遺伝子」ポリペプチドは、「乳がん遺伝子」発現構築物でトランスフェクトされた宿主細胞を含む、酵素を発現するすべての細胞から精製することができる。乳房組織は「乳がん遺伝子」ポリペプチドの特に有用な供給源である。精製された「乳がん遺伝子」ポリペプチドは、当該分野においてよく知られている方法を使用して、ある種のタンパク失、炭水化物、または脂質などの細胞において「乳がん遺伝子」ポリペプチドと正常に関連する他の化合物から分離される。このような方法は、これらに限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび分取ゲル電気泳動を包含する。精製された「乳がん遺伝子」ポリペプチドの調製物は、少なくとも80%の純度であり;好ましくは、調製物は90%、95%、または99%の純度である。調製物の純度は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法のような、当該分野において公知の手段により評価することができる。
Polypeptidesの取得
「乳がん遺伝子」ポリペプチドは、例えば、乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドの発現によるか、または直接の化学合成により、ヒト細胞から精製することによ得ることができる。
【0119】
生物学的に活性な変異体
生物学的に活性な、すなわち「乳がん遺伝子」活性を保持する「乳がん遺伝子」ポリペプチド変異体も、「乳がん遺伝子」ポリペプチドである。好ましくは、当然に存在するかまたは天然に存在しない「乳がん遺伝子」は、配列番号:27から52または76から98のポリペプチドまたは配列番号:1から26または53から75のポリヌクレオチドのいずれかによりコードされるペプチドまたはその断片のアミノ酸配列と少なくとも約60、65、または70、好ましくは約75、80、85、90、92、94、について96、または98%同一である。推定「乳がん遺伝子」ポリペプチド変異体と配列番号:27から52または76から98のポリペプチドまたは配列番号:1から26または53から75のポリヌクレオチドのいずれかによりコードされるポリペプチドまたはその断片の間の同一性(%)は慣用の方法によりに決定される[例えば、Altschulら、1986、(90)およびHenikoff&Henikoff、1992、(91)参照]。簡単にいうと、2つのアミノ酸配列は10のギャップオープニングペナルティー、1とギャップエクステンションペナルティー、およびHenikoff&Henikoffの「BLOSUM62」スコアリングマトリックスを用いてアラインメンとスコアを最適にするために整列させる。
【0120】
当業者らは2つのアミノ酸配列を整列させるために利用可能な多くの確立されたアルゴリズムがあることを理解している。Pearson&Lipmanの「FASTA」類似性検索アルゴリズムは、本明細書に開示されたアミノ酸配列および推定変異体のアミノ酸配列によって共有される同一性のレベルを調べるための適当なタンパク質整列方法である[Pearson&Lipman、1988、(92)とPearson、1990、(93)]。簡単にいうと、FASTAはまず、問題の配列(例えば、配列番号:1から26または53から75まで)および最高の同一性(ktup変数が1である場合)または同一性の対(ktup=2である場合)のいずれかを有するテスト配列により共有される領域を同定することによって、保存的アミノ酸置換、挿入、または欠失を考慮せずに、配列類似性を特徴づける。アミノ酸置換マトリックスを用いてすべての対にされたアミノ酸の類似性を比較することにより、最高の同一性を有する10の領域を次に再び採点し、領域の末端を、最高得点に寄与する残基のみを含むために「縁取り」される。もし「カットオフ」値よりも高い得点を有するいくつかの領域があるならば(配列の長さに基づいてあらかじめ決められた式により計算、ktup値)、縁取りされた初期領域を次いで調べて、この領域が結合してギャップを有する適当なアラインメントを形成できるかどうかを決定する。最終的に、2つのアミノ酸配列の最高得点領域はNeedleman−Wunsch−Sellertsアルゴリズム[Needleman&Wunsch、1970、(94)、およびSellers、1974、(95)]を用いて整列され、これによりアミノ酸挿入および欠失が可能になる。FASTA分析の望ましいパラメータは:ktup=1、ギャップオープニングペナルティー=10、ギャップエクステンションペナルティー=1、置換マトリックス=BLOSUM62。Pearson、(93)の補遺2において説明するように、これらのパラメータはスコアリングマトリックスファイル(「SMATRIX」)を修飾することによって、FASTAプログラム中に導入することができる。
【0121】
FASTAはまた、前記の比を用いて核酸分子の配列同一性を決定するために使用できる。ヌクレオチド配列比較のために、ktup値は他のパラメータをデフォルトにセットして、1から6の範囲、好ましくは3から6、最も好ましく3である。
同一性の変動(%)は、たとえば、アミノ酸置換、挿入、または欠失に帰せられ得る。アミノ酸置換は1対1アミノ酸置換と定義される。置換されたアミノ酸は類似した構造的および/または化学的特性を有しているとき、これらは本質的に保存的である。保存的な置換の例は、ロイシンをイソロイシンまたはバリンで、アスパラギン酸塩をグルタミン酸塩で、またはトレオニンのセリンでの置換である。
【0122】
アミノ酸の挿入または欠失は、アミノ酸配列に対するかまたはアミノ酸内の変化である。これらは典型的に約1から5のアミノ酸の範囲にある。「乳がん遺伝子」ポリペプチドの生物学的または免疫学的活性を廃することなく、どのアミノ酸残基が置換、挿入、または欠失できるか決定することにおいての手引きは、DNASTARソフトウェアなどの当該分野においてよく知られているコンピュータープログラムを用いて見いだすことができる。アミノ酸変化の結果、生物学的に有効な「乳がん遺伝子」ポリペプチドが得られるかどうかは、例えば、後期実施例において記述されるように、「乳がん遺伝子」活性について分析することによって容易に決定できる。より大きな挿入または欠失も、交互スプライシングによって引き起こすことができる。タンパク質ドメインは、タンパク質の主な活性を変えないで挿入されるか、または欠失させることができる。
【0123】
融合タンパク質
融合タンパク質は、「乳がん遺伝子」ポリペプチドアミノ酸配列に対する抗体の生成のため、および様々な分析システムにおける使用のために有用である。例えば、融合タンパク質は、「乳がん遺伝子」ポリペプチドの部分と相互作用するタンパクを同定するために使用できる。タンパク質アフィニティークロマトグラフィーまたはタンパク−タンパク相互作用についてのライブラリーベースの分析、たとえば、酵母菌2ハイブリッドまたはファージディスプレーシステムをこの目的のために用いることができる。このような方法は当該分野においてよく知られていて、同じく薬剤スクリーニングとしても使用できる。
「乳がん遺伝子」ポリペプチド融合タンパク質は、ペプチド結合により一緒に融合された2つのポリペプチドセグメントを含む。第一のポリペプチド部分は、少なくとも25、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700の、配列番号:1から26または53から75の任意のポリヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸または生物学的に活性な変異体、たとえば前記のような連続したアミノ酸を含む。第一のポリペプチドセグメントは完全長の「乳がん遺伝子」も含むことができる。
【0124】
第二のポリペプチドセグメントは完全長のタンパク質またはタンパク質断片であり得る。融合タンパク質構築において用いられるタンパク質は、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色螢光タンパク質(GFP)、青色螢光タンパク質(BFP)を含む自己螢光タンパク質、グルタチオン−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)を含む。さらに、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV−Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグを含むエピトープタグを融合タンパク質構築において用いることができる。他の融合構築物は、マルトース結合タンパク質(MBP)、S−タグ、LexDNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4DNA結合ドメイン融合物、および単純疱疹ウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物を含むことができる。融合タンパク質は、「乳がん遺伝子」ポリペプチド−エンコーディング配列とヘテロローガスなタンパク質配列の間に位置している開裂部位を含むようにすることができ、「乳がん遺伝子」ポリペプチドはヘテロローガスな部分から開裂され、精製することができる。
【0125】
当該分野で知られているように、融合タンパク質は化学的に合成できる。好ましくは、融合タンパク質は2つのポリペプチドセグメントを共有結合させるかまたは分子生物学の分野における標準的手順により産生される。たとえば、当該分野において公知のように、第二のポリペプチドセグメントをコードし、宿主細胞においてDNA構築物を発現するヌクレオチドとともに適当なリーディングフレーム中で配列番号:1から26および53から75のポリヌクレオチド配列から選択されるコーディング配列を含むDNA構築物を作ることにより、融合タンパク質を調製するために、組換えDNA法を用いることができる。融合タンパクを構築するための多くのキットがPromega Corporation(マジソン、WI)、Stratagene(ラホーヤ、CA)、CLONTECH(マウンテンビュー、CA)、Santa Cruz Biotechnology(サンタクルス、CA)、MBL International Corporation(MIC;Watertown、MA)、およびQuantum Biotechnologies(モントリオール、カナダ;1−888の−DNA−KITS)から入手可能である。
【0126】
ホモローガスな種の同定
ヒト「乳がん遺伝子」ポリペプチドのホモローガスな種は、(後述の)「乳がん遺伝子」ポリペプチドポリヌクレオチドを用いて、マウス、サル、または酵母などの他の種からcDNA発現ライブラリーをスクリーニングし、「乳がん遺伝子」ポリペプチドポリペプチドの相同体をコードするcDNAを同定し、当該分野において公知のcDNAを発現するための適当なプローブまたはプライマーを作ることができる。
ポリヌクレオチドの発現
「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドを発現するために、挿入されたコーディング配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含む発現ベクター中にポリヌクレオチドを挿入することができる。当業者らによく知られている方法を、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列および適当な転写および翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを構築するために用いることができる。これらの方法はインビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えを含む。このような技術は、例えば、Sambrookら、(77)およびAusubelら、(78)において記載されている。
【0127】
「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を含み、発現するために、いろいろな発現ベクター/宿主システムを利用することができる。これらは組換バクテリオファージ、プラスミド、またはコスミッドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母菌、ウイルス発現ベクターに感染している昆虫細胞系(例えば、バクロウイルス)、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞、あるいは動物細胞系を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0128】
制御エレメントまたは調節配列は、宿主細胞と相互作用して、転写および翻訳を行うベクターエンハンサー、プロモーター、5’および3’未翻訳領域の領域である。このようなエレメントはその強度と特異性の点で異なる。使用されるベクター系および宿主によって、構成性および誘導性プロモーターを含む任意の数の適当な転写および翻訳エレメントを用いることができる。例えば、細菌系におけるクローニングの場合、BLUESCRIPTファージミド(Stratagene、LaJolla、Calif.)またはpSPORT1プラスミド(Life Technologies)などのハイブリッドlacZプロモーターなどの誘発性プロモーターが使用できる。バクロウイルスポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞において用いることができる。植物細胞(例えば、熱ショック、RUBISCO、および貯蔵タンパク遺伝子)または植物ウイルス(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)のゲノムから得られるプロモーターまたはエンハンサーをベクター中にクローンすることができる。哺乳動物細胞系において、哺乳動物遺伝子または哺乳動物ウイルスからのプロモーターが好ましい。「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の多数のコピーを含む細胞系を生成する必要があるならば、SV40またはEBVに基づくベクターを適当な選択可能なマーカーとともに用いることができる。
【0129】
細菌および酵母菌発現系
細菌系において、「乳がん遺伝子」ポリペプチドのために意図された使用により多くの発現ベクターを選択することができる。例えば、大量の「乳がん遺伝子」ポリペプチドが抗体の誘導に必要な場合、容易に精製される融合タンパクの高レベルの発現を行うベクターを使用できる。このようなベクターは。これらに限定されないが、多機能的な大腸菌クローニングおよびBLUESCRIPT(Stratagene)などの発現ベクターを含む。BLUESCRIPTベクターにおいて、ハイブリッドタンパク質が産生されるように、アミノ末端Metおよびそれに続くβ−ガラクトシダーゼの7残基の配列とともにフレーム内でベクター中に「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を結紮できる。pINベクター[Van Heeke&Schuster、(17)]またはpGEXベクター(Promega、マジソン、Wis.)もグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)で融合タンパクとして外来ポリペプチドを発現するために使用できる。一般に、このような融合タンパクは可溶性であって、グルタチオンアガロースビーズに吸着させ、続いて遊離グルタチオンの存在下で溶焦ることにより、溶解した細胞から精製することができる。興味のあるクローンされたポリペプチドが随意にGST部分から放出され得るように、このような系において作られたタンパク質は、ヘパリン、トロンビン、またはファクターXaプロテアーゼ開裂部位を含むよう意図されることができる。
酵母菌サッカロミセス・セレビシエにおいて、多くの構成性または誘導性プロモーター、たとえば、アルファファクター、アルコールオキシダーゼ、およびPGHを含む多くのベクターを用いることができる。論評については、Ausubelら、(4)およびGrantら、(18)参照。
【0130】
植物と昆虫発現系
もし植物発現ベクターが使われるなら、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列の発現は、多くのプロモーターのいずれによってでも駆動できる。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターなどのウイルスプロモーターを単独またはTMVからのオメガリーダー配列と組み合わせて用いることができる[Takamatsu、1987、(96)]。別法として、植物プロモーター、たとえば、RUBISCOの小サブユニットまたは熱ショックプロモーターを使用できる[Coruzziら、1984、(97);Broglieら、1984、(98);Winterら、1991、(99)]。これらの構築物は直接DNA形質転換により、または病原体により媒介されるトランスフェクションにより植物細胞に導入できる。このような技術は多くの一般に利用可能な論評において記述されている。
【0131】
昆虫システムも「乳がん遺伝子」ポリペプチドを発現するために使用できる。例えば、1つのそのような系においてAutographa californica核多角体ウイルス(AcNPV)は、ハスモンヨトウ近似種(Spodoptera frugiperda)細胞またはTrichoplusia幼生において外来遺伝子を発現するためにベクターとして使われる。「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列は、ポリヘドリン遺伝子などのウイルスの必須でない領域中にクローンされ、ポリヘドリンプロモーターの制御下に置かれる。「乳がん遺伝子」ポリペプチドの成功した挿入により、ポリヘドリン遺伝子は不活性にされ、外殼タンパク質がない組換型ウイルスを産生する。組換ウイルスは次いで「乳がん遺伝子」ポリペプチドを発現できるS.frugiperda細胞またはTrichoplusia幼生に感染するために使用できる[Engelhardら、1994、(100)]。
【0132】
哺乳動物の発現システム
多くのウイルスベースの発現システムは哺乳動物の宿主細胞において「乳がん遺伝子」ポリペプチドを発現するために用いることができる。例えば、もしアデノウイルスが発現ベクターとして使用されるなら、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列は、後期プロモーターおよび三連リーダー配列を含むアデノウイルス転写/翻訳複合体中に結紮することができる。ウイルスのゲノムの必須でないE1またはE3領域中への挿入を、感染している宿主細胞において「乳がん遺伝子」ポリペプチドを発現することができる生存可能なウイルスを得るために用いることができる[ローガン&Shenk、1984、(101)]。もし望ましいなら、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーのような転写エンハンサーは、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させるために用いることができる。
ヒト人工染色体(HACs)も、プラスミドにおいて含まれ、発現され得るより大きいDNAの断片を送達するために用いることができる。6Mから10MのHACが構築され、従来の送達方法によって細胞に送達される(例えば、リポソーム、多カチオン性アミノフェノールポリマー、または小胞)。
【0133】
特定の開始シグナルも「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列のいっそう効率的な翻訳を達成するために用いることができる。このようなシグナルはATG開始コドンと隣接した配列を含む。「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列、その開始コドンおよび上流の配列が適切な発現ベクターに挿入される場合において、追加の転写または翻訳制御シグナルは必要とされない場合もある。しかしながら、コーディング配列、またはその断片のみが挿入される場合においては、外因性翻訳制御シグナル(ATG開始シグナルを含む)が提供されるべきである。開始コドンは全部の挿入の翻訳を保証するために正しいリーディングフレーム中にあるべきである。外因性翻訳エレメントおよび開始コドンは種々の起源のものであり、天然および合成の両方であり得る。発現の効率は、使用される特定の細胞系について適切なエンハンサーを含めることによって向上させることができる[Scharfら、1994、(102)]。
【0134】
宿主細胞
宿主細胞種は、挿入された配列の発現を調整するか、または望ましい方法で発現された「乳がん遺伝子」ポリペプチドを処理するその能力のために選択することができる。このようなポリペプチドの修飾は、これらに限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、糖鎖形成、リン酸化反応、脂質化、およびアシル化を包含する。ポリペプチドの「プレプロ」形態を開裂する翻訳後プロセッシングが正しい挿入、フォールディングおよび/または機能を促進するために用いることができる。翻訳後活性(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、およびWI38)についての特定の細胞機構および特有のメカニズムを有する異なる宿主細胞は、アメリカ・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC;10801 University Boulevard,Manassas、VA、20110−2209)から入手可能であり、正しい修飾および外来タンパクのプロセッシングを保証するように選択することができる。
【0135】
安定した発現が組換タンパクの長期の、高収率の生産のために好ましい。例えば、安定して「乳がん遺伝子」ポリペプチドを発現する細胞系は、同一または別のベクター上に複製のウイルス起源および/または内因性発現エレメントおよび選択可能なマーカー遺伝子を含むことができる発現ベクターを使って形質転換することができる。ベクターの導入の後に、選択培地に切り替えられる前に強化培地中、12日間、細胞を成長させることができる。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在により、成功裏に導入された「乳がん遺伝子」配列を発現する細胞の成長と回復が許容される。安定して形質転換された細胞の耐性クローンは、セルタイプについて適当なで組織培養技術を用いて増殖させることができる[Freshneyら、1986、(103)]。
【0136】
任意の数の選択システムを形質転換された細胞系を回復するために用いることができる。これらは、それぞれtk−またはaprt−細胞において用いることができる単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ[Wiglerら、1977、(104)]およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ[Lowyら、1980、(105)]遺伝子を含むが、これらに制限されるわけではない。また、代謝アンタゴニスト、抗生物質、または除草剤耐性を選択の基礎として用いることができる。例えば、dhfrはメトトレキセートに対する耐性を付与し[Wiglerら、1980、(106)]、nptはアミノグリコシド、ネオマイシンおよびG418に対する耐性を付与し[Colbere−Garapinら、1981、(107)]、alsとおよびpatはそれぞれクロロスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する。追加の選択可能な遺伝子が記載されている。例えば、trpBは、細胞がトリプトファンのかわりにインドールを利用することを許容し、hisDは細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを許容する[Hartman&Mulligan、1988、(108)]。アントシアニン、β−グルクロニダーゼおよびその基質GUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質ルシフェリンなどの可視マーカーは、形質転換体を同定し、特定のベクターシステムに起因する一時的または安定したタンパク質発現の量を定量化するために用いることができる[Thodesら、1995、(109)]。
【0137】
発現および遺伝子産物の検出
マーカー遺伝子発現の存在は、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドも存在していることを示唆するが、その存在および発現は確認される必要があるかもしれない。例えば、もし「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列がマーカー遺伝子配列中に挿入されるなら、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を含む形質転換された細胞はマーカー遺伝子機能の欠如により同定することができる。別法として、マーカー遺伝子は、一つのプロモーターの制御かで、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列と一列に配置することができる。誘発または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は、通常「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドの発現を示す。
【0138】
別法として、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドを含み、「乳がん遺伝子」ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者らに公知のいろいろな方法によって同定することができる。これらの方法は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の検出および/または定量化のためのDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質バイオアッセイあるいは膜、溶液、またはチップベースの技術を含むイムノアッセイを包含するが、これらに限定されるわけではない。例えば、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の存在は、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションまたは「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの断片を使用する増幅により検出できる。核酸増幅ベース分析は、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列から、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドを含む形質転換体を検出するよう選択されたオリゴヌクレオチドの使用を含む。
【0139】
ポリペプチドに対して特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれかを用いて「乳がん遺伝子」ポリペプチドの発現を検出し、測定するためのいろいろなプロトコルが当該分野において公知である。例は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光標示式細胞分取器(FACS)を含む。「乳がん遺伝子」ポリペプチド上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる二部位モノクローナルベースのイムノアッセイを用いることができるか、または競合結合測定法を用いることができる。これらおよび他の分析法は、Hamptonら、(110)およびMaddoxら、111において記載されている。
【0140】
多種多様な標識と結合技術が当業者らによって知られていて、種々の核酸とアミノ酸分析において用いることができる。「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための標識されたハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを産生するための手段は、oligo標識、ニックトランスレーション、末端標識、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅を含む。別法として、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を、mRNAプローブの産生のためにベクターの中にクローンすることができる。このようなベクターは当該分野で公知であり、商業的に入手可能であって、標識されたヌクレオチドおよびT7、T3、またはSP6のような適切なRNAポリメラーゼの添加によってインビトロでRNAプローブを合成するために用いることができる。これらの手順はいろいろな商業的に入手可能なキット(Amersham Pharmacia Biotech、PromegaおよびUS Biochemical)を使って行なうことができる。検出の容易にするために用いることができる適当なリポーター分子または標識は、放射性核種、酵素および螢光、化学発光法、または、色素産生剤、ならびに色素産生因子、コファクター、阻害剤、磁気粒子などを含む。
【0141】
ポリペプチドの発現と精製
「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培養からのタンパク質の発現および回収に適した条件下で培養できる。形質転換された細胞により産生されたポリペプチドは使用される配列および/またはベクターによって分泌され、分子内で貯蔵できる。当業者らによって理解されるように、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核生物または真核生物細胞膜を通して可溶性「乳がん遺伝子」ポリペプチドを分泌させるか、または膜結合「乳がん遺伝子」ポリペプチドの膜挿入を行うシグナル配列を含むようにデザインすることができる。
【0142】
前記のように、他の構築物を、可溶性タンパクの精製を促進するポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を血尾久させるために用いることができる。このような精製促進ドメインは、これらに限定されないが、固定化金属上の精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュールなどの金属キレート化ペプチド、固定化イムノグロブリンプロテインAドメイン、およびFLAGSエクステンション/アフィニティー精製システム(Immunex Corp.,シアトル、Wah.)において利用されるドメインを含む。精製ドメインと「乳ガン遺伝子」ポリペプチド間にファクターXaまたはエンテロキナーゼ(Invitrogen、サンディエゴ、CA)に対して特異的なものなどの開裂可能なリンカー配列を含めることを、精製を促進するために用いることができる。1つのこのような発現ベクターは、「乳がん遺伝子」ポリペプチドおよびチオレドキシンまたはエンテロキナーゼ開列部位の前にある6のヒスチジン残基を含む融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基はiMac(固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー[Porathら、1992、(112)]による開列を促進し、一方、エンテロキナーゼ開裂部位は融合タンパク質から「乳がん遺伝子」ポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパクを含むベクターがKrollら、(113)において開示されている。
【0143】
化学合成
「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列は、当該分野でよく知られている化学的方法を使って全部または部分的に合成される(Caruthersら、(114)とHornら、(115)参照)。別法として、「乳がん遺伝子」ポリペプチドそれ自身を、固相技術[Merrifield、1963、(116)およびRobergeら、1995、(117)]を用いた直接ペプチド合成によるなどの、そのアミノ酸配列を合成するための化学的方法を使って生産することができる。タンパク合成は、手動の技術を使用するか、または自動化により行なうことができる。自動化された合成は、例えば、Applied Biosystems 431ペプチド合成器(Perkin Elmer)を使って達成することができる。所望により、「乳がん遺伝子」ポリペプチドの断片を別に合成して、化学的方法を用いて組み合わせて、完全長分子を産生することができる。
【0144】
新たに合成されたペプチドを、分取高速液体クロマトグラフィーによって実質的に精製することができる[Creighton、1983、(118)]。合成の「乳がん遺伝子」ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列決定によって確認できる(例えば、Edman分解法;およびCreighton、(118)参照。さらに、「乳がん遺伝子」ポリペプチドのアミノ酸配列の任意の部分を直接の合成の間に改変、および/または他のタンパク質からの配列を用いた化学的方法を用いて組み合わせることができ、変異体ポリペプチドまたは融合タンパク質を得る。
【0145】
改変されたポリペプチドの産生
当業者らにより理解されるように、天然に存在しないコドンを有する「乳がん遺伝子」ペプチドをコードするヌクレオチド配列を産生することが有利である。例えば、特定の原核生物または真核生物宿主により好まれるコドンは、タンパク質発現の速度を増大させるか、または天然に存在する配列から生じる転写物よりも長い半減期などの望ましい性質を有するRNA転写物を産生するために選択することができる。
「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードする配列を、ポリペプチドまたはmRNA産物のクローニング、プロセッシング、および/または発現を修飾する改変を含むが、これに限定されない様々な理由から改変するために、当該分野において一般的に公知の方法を用いて本発明において開示されたヌクレオチド配列を処理することができる。遺伝子断片および合成のオリゴヌクレオチドのランダム断片化によるDNAシャッフリングおよびPCR再構築を用いてヌクレオチド配列を処理することができる。例えば、新しい制限部位を挿入し、糖鎖形成パターンを改変し、コドン選択を改変し、スプライス変異体を産生し、突然変異を導入するなどするために、部位指向性突然変異を用いることができる。
【0146】
予測、診断および予後分析
本発明は、悪性腫瘍、特に乳ガンに関して、配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19または21から26または53から75のポリヌクレオチドおよび/またはこれによりコードされるポリペプチドまたは配列番号:28から32、34、35、37から42、44、45または47から52または76から98のポリペプチド配列のいずれかまたは配列番号:1から26および53から75から選択される少なくとも2の開示されたポリヌクレオチドまたは配列番号:28から32および76から98から選択される少なくとも2の開示されたポリペプチドを含む開示されたポリヌクレオチドマーカーの一つを検出することにより、患者が悪性腫瘍、特に乳ガンを発症する危険にあるかどうかを決定するための方法を提供する。
【0147】
臨床用途において、生物学的サンプルを、本発明において同定されたバイオマーカーの存在および/または欠如に関してスクリーニングすることができる。このようなサンプルは例えば針生検コア、外科切除サンプル、または血清、細針ニップル吸引物および尿のような体液である。例えば、これらの方法は生検を得、これを、全体の細胞集団のおよそ80%に疾患細胞を濃縮するために、任意に低温保持装置で切断することによって細分することを含む。ある具体例において、これらのサンプルから抽出されるポリヌクレオチドは当該分野でよく知られている技術を使って増幅できる。検出された選択されたマーカーの発現レベルは、統計的に有効な疾患および健康なサンプル群と比較される。
【0148】
一つの具体例において、診断方法は、たとえば、ノザンブロット分析、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫沈降、ウェスタンブロットハイブリダイゼーション、または免疫組織化学により、患者が開示されたマーカーの異常なmRNAおよび/またはタンパク質レベルを有するかどうかを決定する事を含む。この方法によれば、細胞は患者から得られ、開示されたバイオマーカーのレベル、タンパク質またはmRNAレベルを測定し、健康な対象におけるこれらのマーカーのレベルと比較される。異常なレベルバイオマーカーポリペプチドまたはmRNAレベルは乳がんなどの悪性腫瘍を示している可能性が高い。
【0149】
もう一つの具体例において、診断方法は、例えば、サザンブロット分析、ドットブロット分析、蛍光または比色インサイチュハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション、VNTR、STS−PCRまたは定量的PCRによる遺伝子型決定により、患者が前記遺伝子または前記ゲノム座の異常なDNA含有量を持っているかどうか決定することを含む。一般に、これらの分析は、代表的なゲノム領域から得られるプローブの使用を含む。プローブは前記ゲノム領域または前記領域に対して相補性または類似の配列の少なくとも一部を含む。特に、前記遺伝子またはゲノム領域の遺伝子間または遺伝子内領域。プローブは、ハイブリダイゼーションによって標的領域に結合することができるヌクレオチド配列または類似した機能を有する配列(例えばPNAs、Morpholinoオリゴマー)からなる。一般に、前記患者サンプルにおいて改変されているゲノム領域は、影響されない対照サンプル(同一または異なる患者から得られる正常な組織、周囲の影響されない組織、末梢血)または前記改変を有さず、したがって内部対照としての働きをすることができる同じサンプルのゲノム領域と比較される。好ましい具体例において、同じ染色体上に位置する領域が使用される。別法として、ゴノソーム領域および/またはサンプルにおいて所定の様々な量の領域が使用される。一つの好ましい具体例において、DNA含量、構造、組成または修飾を、別のゲノム領域内にあるものと比較する。特に好ましいのは、標的領域の量が増幅およびまたは欠失により改変されている前記サンプルのDNA含量を検出する方法である。もう一つの具体例において、診断、予後徴候または治療的価値がある、臨床面に関して前記サンプルにおける細胞に影響を及ぼすかまたは罹患しやすくする多形性(例えば、一塩基多形または突然変異)の存在について標的領域を分析する。好ましくは、配列変化の同定は、前記臨床点を有する前記サンプルの特徴的挙動をもたらすハプロタイプを定義するために使われる。
【0150】
17q12−21.2における遺伝子の次の例は、制限のためではなく、例示のために提示する。
本発明の一つの具体例は、少なくとも10、少なくとも5、または少なくとも4,または少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも2のマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後判定の方法であって、これにより、マーカーは悪性腫瘍において改変されている一つの染色体領域上に位置する遺伝子およびその断片および/またはゲノム核酸である。
本発明のさらにもう一つの具体例は、少なくとも10、少なくとも5、または少なくとも4、または少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも2のマーカーの検出による悪性腫瘍の予測、診断または予後判定の方法であって、これによりマーカーは、(a)悪性腫瘍において改変されている1以上の染色体領域上に位置する遺伝子およびその断片および/またはゲノム核酸配列であり、(b)(i)レセプターおよびリガンドまたは(ii)同じシグナル伝達経路のメンバーまたは(iii)相乗シグナル伝達経路のメンバーまたは(iv)拮抗シグナル伝達経路のメンバーまたは(v)変換因子および転写因子結合部位として機能的に相互作用する。
【0151】
一つの具体例において、悪性腫瘍、特に乳ガンの予測、診断または予後判定の方法は、生物学的サンプルにおいて:
a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75のポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチド;
b)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されたポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチド;
c)表2または3の各配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチド;
d)(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立変異体を表すポリヌクレオチド
を検出することにより行われ、次の工程を含む:(a)から(d)において特定された任意のポリヌクレオチドまたは類似のオリゴマーを生物学的サンプルのポリヌクレオチド物質とハイブリッド形成させ;前記ハイブリダイゼーション複合体を検出する。
【0152】
もう一つの具体例において、悪性腫瘍の予測、診断または予後判定の方法は、記載したとおりに行われるが、生物学的サンプルのポリヌクレオチド物質がハイブリダイゼーション前に増幅される。
もう一つの具体例において、悪性腫瘍、特に乳ガンの診断または予後判定の方法は:
a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75のポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチド;
b)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチド;
c)表2または3の各配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチド;
d)(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立変異体を表すポリヌクレオチド;
(e)(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド;
(f)配列番号:28から32、34、35、37から42、44、45、47から52または76から98の任意のポリペプチドを含むポリペプチド
を検出することにより行われ、生物学的サンプルを(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチドまたは(e)において特定されるポリペプチドと特異的に相互作用する試薬と接触させる工程を含む。
【0153】
DNAアレイ技術
1つの具体例において、本発明はポリヌクレオチドプローブが整列されたアレイにおいて固定化されたDNAチップである方法を提供する。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む様々な方法により固体支持体に結合させることができる。例えばチップは最高410000のオリゴヌクレオチド(GeneChip、Affymetrix)を保持できる。本発明は、一つのチップに一列のポリヌクレオチドマーカーを供給することにより、試験の信頼性を増大させるので、乳がんなどの悪性腫瘍に利用可能な試験よりも重大な利点を提供する。
この方法は、所望により低温保持装置で切断することによって細分されて、病気にかかった細胞集団を全細胞集団の約80%に濃縮される病気にかかった人の生検を得ること、体液、たとえば、血清または尿、液体を含む血清または細胞(例えば、細針吸飲物から得られる)の使用を含む。DNAまたはRNAを次に抽出し、増幅し、DNAチップを用いて分析して、マーカーポリヌクレオチド配列の存在または欠如を決定する。1つの具体例において、ポリヌクレオチドプローブを2次元マトリックスまたはアレイにおいて基体上にスポットする。ポリヌクレオチドサンプルは、標識し、次いでプローブとハイブリッド形成させることができる。プローブヌクレオチドと結合した標識されたサンプルポリヌクレオチドを含む二本鎖ポリヌクレオチドは、サンプルの未結合部分が洗い流されると検出できる。
【0154】
プローブポリヌクレオチドは、ガラス、ニトロセルロースなどを包含する基体上にスポットすることができる。プローブは共有結合または疎水性相互作用などの非特異的相互作用のいずれかにより基体に結合させることができる。サンプルポリヌクレオチドは放射性ラベル、蛍光体、発色団などを用いて標識することができる。アレイを構築するための技術およびこれらのアレイを使用する方法は、EP0799897;WO97/29212;WO97/27317;EP0785280;WO97/02357;米国特許第5,593,839号;米国特許第5,578,832号;EP0728520;米国特許第5,599,695号;EP0721016;米国特許第5,556,752号;WO95/22058;米国特許第5,631,734号に記載されている。さらにアレイは、遺伝子の差次的発現を調べるために使用でき、遺伝子機能を決定するために使用できる。例えば、本発明のポリヌクレオチド配列のアレイは、任意のポリヌクレオチド配列は、例えば、正常細胞と病気にかかった細胞間で差次的に発現されるかどうかを決定するために用いることができる。対応する正常なサンプルにおいて観察されない病気にかかったサンプルにおける特別のメッセージの高い発現が乳がん特異的タンパク質を示すことができる。
【0155】
したがって、一態様において、本発明は本明細書において開示するユニークなポリヌクレオチドマーカーに特異的なプローブおよびプライマーを提供する。
1つの具体例において、方法は患者から得られる組織において、悪性または乳ガン細胞の存在を確認するためにポリヌクレオチドプローブを使用することを含む。特に、この方法は:
1)少なくとも12のヌクレオチド長、好ましくは少なくとも15のヌクレオチド、いっそう好ましくは25のヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも40のヌクレオチド、最高全てまたはほとんど全ての、配列番号:1から26および53から75のポリヌクレオチドまたはこれに対して相補性の配列から選択されるポリヌクレオチドのコーディング配列の一部と相補性のコーディング配列を含むポリヌクレオチドプローブを提供し;
2)乳がんなどの悪性腫瘍において差次的に発現し;
3)悪性腫瘍を有する患者から組織サンプルを得;
4)悪性腫瘍がない患者から第二の組織サンプルを提供し;
5)ポリヌクレオチドプローブをストリンジェントな条件下で前記第一および第二の組織サンプルと接触させ(例えば、ノザンブロットまたはインサイチュハイブリダイゼーション分析において);
6)(a)プローブの第一の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量を、(b)プローブの第二の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量と比較することを含み、
ここにおいて、第二の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量と比較した第一の組織サンプルのRNAとのハイブリダイゼーションの量における統計学的に有意な相違は、第一の組織サンプルにおける悪性腫瘍、特に乳ガンを示す。
【0156】
データ分析法
1つ以上の「乳がん遺伝子」の発現レベルの参考発現レベル、例えば、乳がんにかかった細胞のまたは正常なカウンターパート細胞における発現レベ好ましくはコンピュータシステムを使って行なわれる。1つの具体例において、発現レベルは2つの細胞で得られ、発現レベルのこれらの2つのセットは比較のためにコンピュータシステムに導入される。望ましい具体例において、1セットの発現レベルは、すでにコンピュータシステムにおいて存在するか、または次にコンピュータシステムに入力されるコンピュータ読みとり可能な形態において存在している値と比較するためにコンピュータシステムに入力される。
1つの具体例において、本発明は、本発明の遺伝子発現特性データ、または病気にかかった細胞における少なくとも1つの「乳がん遺伝子」の発現のレベルに対応している値のコンピュータ読みとり可能な形態を提供する。値は実験、例えば、ミクロアレイ分析から得られるmRNA発現レベルであり得る。値は、その発現が多数の条件下で多数の細胞において一定である参考遺伝子、例えば、GAPDHに関して標準化されたmRNAレベルであり得る。他の具体例において、コンピュータにおける値が、異なるサンプルにおける標準化または非標準化mRNAレベルの比または差である。
【0157】
遺伝子発現特性データは表の形態、たとえばエクセルの表であり得る。データは単独であるか、または例えば他の発現特性を含むより大きなデータベースの一部であり得る。例えば、発明の発現特性データは公開のデータベースの一部であり得る。コンピュータ読みとり可能な形態はコンピュータにあり得る。もう1つの具体例において、本発明は遺伝子発現特性データを表示するコンピュータを提供する。
一具体例において、本発明は第一の細胞、例えば、患者の細胞における1以上の「乳ガン遺伝子」の発現のレベルと、第二の細胞におけるモノの間の類似性を決定する方法であって、第一の細胞における1以上の「乳ガン遺伝子」の発現レベルを得、これらの値を、第二の細胞における1以上の「乳ガン遺伝子」の発現レベルに対応する値、およびコンピューター中に記憶されているデータと比較する目的で1以上の値の選択を受容できる、例えばユーザーインターフェースなどのプロセッサインストラクションを含む記録を含むデータベースを含むコンピューターに入力することを含む。コンピューターはさらに比較データをダイアグラムまたはチャートまたは他の種類の出力に変換する手段を含むことができる。
【0158】
もう1つの具体例において、「乳がん遺伝子」の発現レベルを表す値が、1以上の細胞から得られた参考発現レベルについての1つ以上のデータベースを含むコンピュータシステムに入力される。例えば、コンピュータは病気にかかった細胞および正常な細胞の発現データを含む。インストラクションがコンピュータに提供され、コンピュータは入力されたデータが正常な細胞または病気にかかった細胞により類似しているかどうかを決定するためにコンピュータ中のデータと入力されたデータとを比較することができる。
もう1つの具体例において、コンピュータは乳がんの異なる段階の患者の細胞における発現レベルの値を含み、コンピュータはコンピュータ中に入力された発現データを記憶されたデータと比較でき、例えば患者における乳ガンの段階を決定するために、コンピューター中の発現特性のどれに入力されたものが最も類似しているかを示す結果をもたらす。
【0159】
さらにもう1つの具体例において、コンピュータにおける参考発現特性は1以上の患者の乳がんの細胞からの発現特性であり、その細胞は乳がんの治療のために用いられる薬でインビボまたはインビトロで処理される。薬でインビトロまたはインビボで処置された患者の細胞の発現データを入力すると、コンピュータは、コンピュータ中のデータを入力されたデータと比較し、コンピュータ中への発現データ入力が薬に反応する患者の細胞のものとより類似しているか、または薬に反応しない患者の細胞のものにより類似しているかどうかを示す結果を提供するよう指示される。かくして、結果は患者が薬での治療に反応しやすいか、またはそれに反応しにくいかどうかを示す。
1つの具体例において、発明は1または複数の遺伝子の遺伝子発現データを受け取るための手段;前記の1または複数の遺伝子それぞれから得られる遺伝子発現データを一般的な参考フレームと比較する手段;および比較の結果を提示するための手段を含むシステムを提供する。このシステムはさらにデータをひとまとめにするための手段を含むことができる。
【0160】
もう1つの具体例において、本発明は(i)複数の遺伝子についての入力遺伝子発現データを受け取るコンピューターコードおよび(ii)前記の複数の遺伝子のそれぞれから得られる前記遺伝子発現データを含んでいる遺伝子発現データを通常の参考フレームと比較するコンピューターコードを含む遺伝子発現データを分析するためのコンピュータプログラムを提供する。
本発明はまた、次の段階を実行するためのプログラムインストラクションを含む機械読みとり可能またはコンピューター読みとり可能な媒体を提供する:(i)問題の細胞における乳ガンに特徴的な1以上の遺伝子の発現レベルに対応する複数の値を、1以上の参考細胞の参考発現または発現特性データおよび細胞の種類の注釈を含む記録を含むデータベースと比較し;(ii)発現特性の類似性に基づいてどの細胞と問題の細胞が最も類似しているかを示す。参考細胞は、乳ガンの異なる段階の患者から得られる細胞であり得る。参考細胞はまた、特定の薬物療法に反応するかまたは反応しない患者から得られ、任意に薬とともにインビトロまたはインビボでインキュベートしてもよい細胞であり得る。
【0161】
参考細胞はまた、いくつかの異なった処理に反応するかまたは反応しない対象から得られる細胞であってもよく、コンピュータシステムは対象に対する好ましい処理を示す。したがって、本発明は乳がんの患者についての治療法を選択するための方法であって:(i)患者の病気にかかった細胞における乳ガンに特徴的な1以上の遺伝子の発現レベルを提供し;(ii)複数の参考特性であって、それぞれが療法と関連する(ここにおいて、患者の発現特性および各参考特性は複数の値を有し、各値は乳ガンに特徴的な遺伝子の発現レベルを表す);(iii)対象の発現特性に最も類似した参考特性を選択して、これにより前記患者についての療法を選択することを含む方法を提供する。好ましい具体例において、段階(iii)はコンピュータによって行なわれる。対応する発現データと関連される重量値を使って複数の値の考察することにより最も類似した参考特性を選択することができる。
【0162】
2つの生物学的サンプルにおけるmRNAの相対的量は、摂動とその測定された大きさ(すなわち、存在量はテストされるmRNAの2つの供給源において異なっている)、または摂動していない(すなわち、相対的存在量は同じである)として採点できる。種々の具体例において、少なくとも約25%(一つの供給源から得られるRNAが、他の供給源よりも1つの供給源において25%多い)、より一般的には約50%、さらに一層頻繁には約2倍(2倍豊富)、3倍(3倍豊富)、または5倍(5倍豊富)が摂動として得点される。摂動は、計算と発現比較のためにコンピュータによって用いることができる。
好ましくは、摂動をプラスまたはマイナスと判断することに加えて、摂動の等級を決定することは有利である。これは、前記のように、差次的標識に用いられる2つの蛍光体の発光比を計算することにより、実行することができる。
【0163】
コンピュータ読み取り可能な媒体は乳がんの段階のデスクリプターたは乳がんに対する治療の指針をさらに含むことができる。
操作の際に、遺伝子発現データを受け取るための手段、遺伝子発現データを比較するための手段、提示する手段、標準化するための手段、および本発明のシステムのコンテクスト内にまとめるための手段を、ハードウェアまたはハードウェアおよびソフトウェアにおいて実装される、本明細書において記載するそれぞれの機能性についてプログラムされたコンピューター;コンピュータープログラムにより支持される、本明細書において特に記載された操作を実行するプログラムされたコンピューターの論理回路または他の成分;または本明細書において記述された特定の方法でコンピュータを機能させることができる実行可能な命令がコード化された内部記憶装置を含んでもよい。
【0164】
当業者らは現在の発明のシステムおよび方法が、MS−DOSまたはマイクロソフトウインドウズを実行させるIBMコンパチブルのパーソナルコンピュータを含むさまざまなシステムに適用できることを理解するであろう。
コンピュータは外部の部品に結合した内部成分を有していてもよい。内部成分はメイン記憶装置と相互に連結させられたプロセッサ要素を含んでもよい。コンピュータシステムは200MHzまたはそれ以上のクロックレイトを有し、32MB以上のメイン記憶装置を有しているインテルPentiumRベースのプロセッサであり得る。外部成分は(プロセッサおよび記憶装置と共に典型的にパッケージされる)1つ以上のハードディスクであり得る大容量記憶装置を含んでもよい。このようなハードディスクは典型的には1GB以上の容量である。他の外部成分は、モニターであり得るユーザインタフェースデバイスを「マウス」であり得る入力装置、または他のグラフィック入力装置、および/またはキーボードと共に含む。であり得る、印刷装置もコンピュータに取り付けることができる。
典型的に、コンピュータシステムは他のローカルなコンピュータシステム、リモートコンピュータシステム、またはインターネットなどの広いエリアの通信網であり得るネットワークへのイーサネットリンクの一部であり得るネットワークリンクにリンクされる。このネットワークリンクはコンピュータシステムが他のコンピュータシステムとデータと処理タスクを共有することを可能にする。
【0165】
共に当該分野で標準的で、本発明に特別ないくつかのソフトウェアコンポーネントがこのシステムのオペレーションの間に記憶装置にロードされる。これらのソフトウェアコンポーネントは集合的にコンピュータシステムを本発明の方法に従って作用させる。これらのソフトウェアコンポーネントは典型的には大容量記憶装置に記憶される。ソフトウェアコンポーネントはコンピュータシステムとそのネットワーク系統連系の管理に責任があるオペレーティングシステムを表す。このオペレーティングシステムは、例えば、マイクロソフトのWindowsのファミリーの、Windows95、Windows98、またはWindowsNTなどであり得る。ソフトウェアコンポーネントは、本発明に特殊な方法を実行するプログラムを支援するこのシステムで公共の言語と好都合に存在している機能を表す。多くの高または低レベルのコンピュータ言語を、本発明の分析法をプログラムするために用いることができる。インストラクションをランタイムの間に翻訳するかまたは編集することができる。望ましい言語はC/C++とJAVAを含む。最も好ましくは、本発明の方法は方程発現と処理の、使用されるアルゴリズムを含む式の記号入力およびレベルが高い仕様のプロセッシングを可能にする数学的のソフトウェアパッケージにおいてプログラムされ、これによりユーザーは手続き上個別の方程式またはアルゴリズムをプログラムする必要がなくなる。このようなパッケージはMathworksから得られるMatlab(Natick、Mass.)、Wolfram Researchから得られるMathematica(Champaign,Ill)、または手続き型言語またはシンボルパッケージにおいてプログラムされた本発明の分析法を表す。したがって、手続き型言語またはシンボルパッケージでプログラムされるので、ソフトウェアコンポーネントは本発明の解析的な方法を表す。好ましい具体例において、コンピュータシステムはまた、乳がんに特徴的な1つ以上の遺伝子の発現のレベルを表す値を含むデータベースも含んでいる。データベースは異なった細胞において乳がんに特徴的な1つ以上の遺伝子の発現特性を含んでもよい。
【0166】
実行の例において、本の発明の方法を実施するためには、使用者は最初にコンピュータシステムに発現特性データをロードする。これらのデータはモニターとキーボードから、またはネットワーク接続によってリンクされた他のコンピュータシステムから、あるいはCD−ROMまたはフロッピーディスクのような取外し可能な記憶装置媒体上に、またはネットワークを通して直接使用者によって入力されることができる。次に使用者は、比較する段階と、例えば、遺伝子のグループの中に共に変化する遺伝子をひとまとめにすることを行なう発現特性分析ソフトウェアを実行する。
【0167】
もう1つの実行例において、発現特性は米国特許第No.6,203,987号において記述された方法を使って比較される。使用者は最初にコンピュータシステムに発現特性データをロードする。Geneset特性定義が記憶媒体からまたはリモートコンピュータから、好ましくはダイナミックなgenesetデータベースシステムから、ネットワークを通して記憶装置にロードされる。次に使用者は発現特性を予測される発現特性に変換する段階を実行するプロジェクトソフトウェアを実行する。予測される発現特性はそれから示される。
さらにもう1つの実行例において、使用者は最初に記憶装置中に予測される特性を導入する。使用者は次いで記憶装置の中に参考特性をロードする。次に、使用者は客観的に特性を比較する段階を実行する比較ソフトウェアを実行する。
【0168】
変異体ポリヌクレオチド配列の検出
さらにもう1つの具体例において、本発明は、任意の配列番号:1から26または53から75のポリペプチドによりコードされる任意のポリヌクレオチドの異常な活性と関連する、悪性腫瘍、例えば乳がんを発生させる傾向などの、対象が病気を発症する危険にあるかどうか決定する方法であって、ポリペプチドの異常な活性は、これらの少なくとも1つによって特徴づけられる遺伝子の病変の存在または欠如を検出することにより特徴づけられる:
(i)マーカーポリペプチドをコードする遺伝子の完全性に影響を与える変化、または
(ii)エンコーディングポリヌクレオチドの誤発現。
【0169】
説明のために、このような遺伝子病変は、これらの少なくとも1つの存在を確かめることにより検出することができる:
I.ポリヌクレオチド配列からの1つ以上のヌクレオチドの欠失
II.ポリヌクレオチド配列に対する1以上のヌクレオチドの付加
III.ポリヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの置換
IV.ポリヌクレオチド配列の全体的な染色体の再配列
V.ポリヌクレオチド配列のメッセンジャーRNA転写のレベルにおける全体的な改変
VI.ゲノムDNAのメチル化パターンなどのポリヌクレオチド配列の異常な修飾
VII.遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非野生型スプライシングパターンの存在
VIII.マーカーポリペプチドの非野生型レベル
IX.遺伝子の対立遺伝子喪失
X.遺伝子の対立遺伝子獲得
XI.マーカーポリペプチドの不適当な翻訳後修飾
【0170】
本発明は、エンコーディングポリヌクレオチド配列において突然変異を検出するための分析技術を提供する。これらの方法は、これらに限定されないが、配列分析を含む方法、サザンブロットハイブリダイゼーション、制限酵素部位のマッピングおよび分析されるポリヌクレオチドとプローブ間のヌクレオチド対の欠如の検出を含む方法を包含する。
特定の病気または障害、例えば遺伝病または障害は、必ずしも突然変異させられたタンパク質をコードしないある特定の遺伝子の多形性領域の特定の対立遺伝子変異体と関連付けられる。それで、対象における遺伝子の多形性領域の特定の対立遺伝子変異体の存在は、対象を特異的疾患または障害の発生に反応しやすくすることができる。個人の集団における遺伝子のヌクレオチド配列を決定することによって、遺伝子における多形性領域を同定できる。もし多形性領域が同定されるなら、特定の疾患とのつながりは、個人、例えば乳がんなどの特定の疾患を発症した個人の特定の集団を研究することにより決定することができる。多形性領域は、エキソン、イントロン、およびプロモーター領域における遺伝子の任意の位置に配置することができる。
【0171】
具体例において、遺伝子またはその天然に存在する変異体のセンスまたはアンチセンス配列、5’または3’フランキング配列あるいは対象の遺伝子と自然に関連するイントロン配列またはその天然に存在する変異体とハイブリッド形成できるヌクレオチド配列の領域を含むポリヌクレオチドプローブを含むポリヌクレオチド組成物が提供される。細胞のポリヌクレオチドはハイブリダイゼーションのために利用可能にされ、プローブはサンプルのポリヌクレオチドと接触され、サンプルポリヌクレオチドに対するプローブのハイブリダイゼーションが検出される。このような技術は、欠失、置換などを含むゲノムまたはmRNAレベルのいずれかで病巣または対立遺伝子変異体を検出し、mRNA転写レベルを決定するために用いることができる。
【0172】
好ましい検出方法は、突然変異または多形性部位と重複し、突然変異または多形性領域付近におよそ5、10、20、25、または30のヌクレオチドを有するプローブを用いた対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションである。本発明の望ましい具体例において、対立遺伝子変異体に特異的にハイブリッド形勢することができるいくつかのプローブを固相支持体、例えば、「チップ」に取り付ける。「DNAプローブアレイ」とも呼ばれるオリゴヌクレオチドを含むこれらのチップを用いた突然変異検出分析は、例えば、Croninら、(119)において記載されている。1つの具体例において、チップは遺伝子の少なくとも1つの多形性領域のすべての対立遺伝子変異体を含む。固相支持体を次いで試験ポリヌクレオチドと接触させ、特定のプローブに対するハイブリダイゼーションが検出される。したがって、1以上の遺伝子の多数の対立遺伝子変異体の同定は単純なハイブリダイゼーション実験で検出することができる。
【0173】
ある具体例において、病変の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,1954号、第683,202号参照)、例えば、アンカーPCRまたはRACE PCR、あるいは別法としてリガーゼ連鎖反応(LCR))[Landegranら、1988、(120)とNakazawaら、1994(121)]においてプローブ/プライマーを利用することを含み、後者は遺伝子における点突然変異の検出に特に有用であり得る[Abravayaら、1995、(122)]。単なる例において、方法は、(i)患者から細胞の差プルを集める工程、(ii)サンプルの細胞からポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、mRNAまたは療法)を単離する工程、(iii)ポリヌクレオチドサンプルをポリヌクレオチド(もし存在するなら)のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下でポリヌクレオチドと特異的にハイブリッド形成する1以上のプライマーと接触させる工程、(iv)増幅産物の存在または欠如を検出するか、または増幅産物の大きさを検出し、対照サンプルに対して長さを比較する工程を含む。PCRおよび/またはLCRは本明細書に記載された突然変異を検出するために使用される任意の技術ととも使用するのが望ましいと予想される。
【0174】
別の増幅方法は:自己支持配列複製[Guatelli、J.C.ら、1990、(123)]、転写増幅システム[Kwoh、D.Y.ら、1989、(124)]、Q−ベータレプリカーゼ[Lizardi、P.M.ら、1988、(125)]、または任意の他のポリヌクレオチド増幅方法と、それに続く当業者らに一般的な技術を用いる増幅された分子の検出を含む。もしこのような分子が非常に少ない数に存在しているなら、これらの検出スキームは特にポリヌクレオチド分子の検出に有用である。
対象分析の好ましい具体例において、制限酵素開裂パターンにおける改変により、サンプル細胞から得られる遺伝子における突然変異、または対立遺伝子変異体が同定される。例えば、サンプルおよび対照DNAが単離され、増幅され(任意)、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼで消化され、断片の長さがゲル電気泳動によって決定される。さらに、配列特異的なリボザイムの使用は(例えば、米国特許第5,498,531号参照)、リボザイム開裂サイトの発生または損失により特定の突然変異の存在について採点するために用いることができる。
【0175】
インサイチュハイブリダイゼーション
1つの態様において、方法は所定のマーカーポリヌクレオチドから得られるプローブとのインサイチュハイブリダイゼーションを含み、該配列は、配列番号:1から9、または11から19または21から26および53から75の任意のポリヌクレオチド配列またはこれに対して相補的な配列から選択される。該方法は、悪性腫瘍、特に乳ガンを潜在的に有する患者から得られる所定のタイプの組織、ならびに悪性腫瘍がない個人から得られる正常な組織のサンプルと標識されたハイブリダイゼーションプローブを接触させ、プローブが正常な組織が標識される程度よりも著しく異なる程度(例えば、少なくとも2倍、または少なくとも5倍、または少なくとも20倍、または少なくとも50倍)まで患者の組織を標識するかどうかを決定することを含む。
【0176】
ポリペプチド検出
本発明はさらに、対象から得られる細胞サンプルが異常な量のマーカーポリペプチドを有するかどうかを決定する方法であって、(a)対象から細胞サンプルを得、(b)このようにして得られたサンプルにおけるマーカーポリペプチドの量を定量し、(c)このように決定されたマーカーポリペプチド量を既知の標準と比較して、対象から得られる細胞サンプルが異常な量のマーカーポリペプチドを有するかどうかを決定することを含む方法を提供する。このようなマーカーポリペプチドは、免疫組織化学的分析、ドット−ブロット分析、ELISAなどにより検出できる。
抗体
任意のタイプの当該分野で知られている抗体は、「乳がん遺伝子」ポリペプチドのエピトープと特異的に結合させるために生成されることができる。本明細書において用いられる抗体は、未処理のイムノグロブリン分子、ならびにその断片、例えばFab、F(ab)2およびFvを含み、これらは「乳がん遺伝子」ポリペプチドのエピトープを結合できる。典型的には、少なくとも6、8、10、または12の連続したアミノ酸がエピトープを形成するために必要とされる。しかしながら、非連続的アミノ酸を含むエピトープはさらに多く、例えば少なくとも15、25、または50のアミノ酸を必要とするかもしれない。
【0177】
「乳がん遺伝子」ポリペプチドのエピトープと特異的に結合する抗体を、治療的に、ならびに免疫化学的分析、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫阻止科学的分析、免疫沈降、または当該分野において公知の他の免疫科学的分析において用いることができる。種々の免疫学的検定を、望ましい特異性を有する抗体を同定するために用いることができる。競合的結合または免疫放射線検定法のための多くのプロトコルは当該分野において一般的である。このような免疫学的検定は典型的には、免疫原と特異的に結合する抗体と免疫原間の複合体形勢の測定を含む。
典型的には、「乳がん遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、免疫科学的分析において用いられる場合他のタンパク質に関して提供される検出シグナルよりも少なくとも5倍、10倍、または20倍高い検出シグナルを提供する。好ましくは、「乳がん遺伝子」ポリペプチドと特異的に結合する抗体は、免疫化学的分析において他のタンパク質を検出せず、溶液から「乳がん遺伝子」ポリペプチドを免疫沈降させる。
【0178】
「乳がん遺伝子」ポリペプチドは、ポリクロナール抗体を産生するために、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒトなどの哺乳類を免疫するために用いることができる。もし望ましいならば、「乳がん遺伝子」ポリペプチドは、担体タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン、チログロブリンおよびキーホールリンペットヘモシアニンと接合させることができる。宿主種によって、免疫応答を増やすために種々のアジュバントを用いることができる。このような補助剤は、これらに限定されないが、フロインドアジュバント、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)および界面活性剤(例えばリソレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール)を包含する。ヒトにおいて使用されるアジュバントのなかで、BCG(Calmette−Guerin桿菌)およびコリネバクテリウム・パルブムは特に有用である。
【0179】
「乳がん遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体は、培地における連続継代細胞系による抗体分子の生産の任意の技術を用いて調製することができる。これらの技術はハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術[Kohlerら、1985、(136);Kozborら、1985、(137);Coteら、1983、(138)およびColeら、1984、(139)]を含むが、これらに限定されるわけではない。
加えて、キメラ抗体の産生のために開発された技術、適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るためにヒト抗体に対するマウス抗体遺伝子のスプライシングを用いることができる[Morrisonら、1984、(140);Neubergerら、1984、(141);Takedaら、1985、(142)]。モノクローナル抗体および他の抗体は、治療的に用いられる場合に、患者が抗体に対して免疫反応を起こすのを防止するためにヒト化することができる。このような抗体は、治療において直接使用するためにヒト抗体に対して配列が十分類似しているか、または少数の重要な残基の改変を必要とする。個々の残基の部位指向性突然変異誘発によるか、または全体的な相補決性定領域のグレーティングにより、ヒト配列におけるものと異なる残基置換することにより、齧歯類抗体とヒト配列間の配列の違いを最小限に抑えることができる。別法として、GB2188638Bにおいて記載されるように、組換法を使ってヒト化抗体を産生することができる。「乳がん遺伝子」ポリペプチドと特異的に結合する抗体は、米国特許第5,565,332号において開示されるように、部分的にまたは完全のいずれかでヒト化される抗原結合部を含むことができる。
【0180】
別法として、単鎖抗体の生産について記載された技術を、「乳がん遺伝子」ポリペプチドと特異的に結合する単鎖抗体を産生するために当該分野で知られる方法を用いて採用することができる。関連した特異性を有しているが、別のイディオタイプ組成を有する抗体を、ランダムイムノグロブリンライブラリーからチェーンシャッフリングにより生成することができる[Burton、1991、(143)]。
単鎖抗体はまた、鋳型としてハイブリドーマcDNAを用いて、PCRなどのDNA増幅法を用いて構築することができる[Thirionら、1996、(144)]。単鎖抗体は一重または二重特異性であり、二価または三価であり得る。四価二重特異性単鎖抗体の構築は、例えば、Coloma&モリソン(145)において示唆されている。二価染色体二重特異性、単鎖抗体の構築はMallender&Voss、(146)において示唆される。
【0181】
単鎖抗体をコードするヌクレオチド配列は、後述のように、手動または自動化されたヌクレオチド合成を用いて構築され、標準的組換えDNA法を用いて発現構築物中にクローンされ、コーディング配列を発現するために細胞中に導入することができる。別法として、単鎖抗体は、例えば、繊維状ファージ技術[Verhaarら、1995、(147);Nichollsら、1993、(148)]を使って直接産生することができる。
リンパ球集団におけるインビボ産生を誘発することによって、あるいは、イムノグロブリンライブラリーまたは文献[Orlandiら、1989、(149)とWinterら、1991、(150)]において開示されている高特異的結合試薬のパネルをスクリーニングすることにより、「乳がん遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生することができる。
【0182】
他のタイプの抗体を本発明の方法において構築し、治療的に用いることができる。例えば、WOで93/03151において開示されるようにキメラ抗体を構築することができる。免疫グロブリンから得られ、WO94/13804で記述された抗体などの、多価、多重特異的である結合タンパク質も調製することができる。
本発明の抗体は、当該分野でよく知られている方法によって精製することができる。例えば、抗体は「乳がん遺伝子」ポリペプチドが結合するカラム上に通す頃により、アフィニティー精製することができる。結合した抗体は次に高い塩濃度を有する緩衝液を使ってカラムからよりさせることができる。
【0183】
免疫学的検定が通常、細胞サンプルにおけるタンパク質のレベルを定量するために用いられ、多くの他の免疫測定法技術が当該分野で知られている。発明は特定の分析法に限定されず、従って、同種および異種の両方の方法を含むことを意図される。本発明に従って実施できる免疫学的検定の例は、蛍光極性化免疫測定法(FPIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、酵素免疫測定法(EIA)、比濁阻害免疫測定法(NIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、および放射免疫定量法(RIA)を包含する。インジケーター部分、または標識基は対象抗体に結合させ、分析装置および適合性免疫学的検定法の利用可能性により規定されることが多い方法の様々な使用の要件にあうように選択される。前記の様々な免疫学的検定の実施において用いられる一般的技術は当業者には知られている。
【0184】
もう1つの具体例において、患者の生物学的液体(例えば、血液または尿)中の配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19または21から26または53から75のポリヌクレオチド配列の任意のもによりコードされる少なくとも1つの産物、または配列番号:1から26および53から75またはその相補的な配列によりコードされる配列のレベルは、該患者の細胞におけるマーカーポリヌクレオチド配列の発現のレベルをモニターすることにより定量できる。このような方法は、患者から得られる生物学的流体のサンプルを得、コードされたマーカーポリペプチドについて特異的な抗体とサンプル(またはサンプルからのタンパク)を接触させ、抗体による免疫複合体形成の量を定量する工程を含み、免疫複合体形成の量はサンプル中のマーカーコード化産物のレベルを示す。この定量法は、定常な個体から得られる対照サンプル、または同じ個人からすでにまたは後に得る1以上のサンプルにおける同じ抗体による免疫複合体の量と比較した場合に特に有益である。
階段を含むであろう。標準的な個人からとられたコントロールサンプルでまたは前に、またはその後同じ人から得られた1つ以上のサンプルで同じ抗体によって免疫複合体形成の量と比較されるとき、この決定は特に教育的である。
【0185】
もう1つの具体例において、細胞中に存在するマーカーポリペプチドの量を定量するために用いることができ、これは次にプラーク形成などの障害の進行に関連づけることができる。マーカーポリペプチドのレベルは、細胞のサンプルが、プラーク関連細胞であるか、またはなりやすくされた細胞を含むかどうかを予測的に評価するために用いることができる。マーカーポリペプチドレベルの観察は、さらに厳しい療法の使用などに関する決断において用いることができる。
前記のように、本発明の一態様は、患者から単離される細胞に関して、マーカーポリペプチドのレベルがサンプル細胞において著しく低下しているかどうかを決めるための診断分析に関する。「著しく低下」なる用語は、細胞が類似した組織起源の正常細胞に対して低下した細胞量のマーカーポリペプチドを有する細胞表現型を意味する。例えば、細胞は、正常な対照細胞よりも約50%以下、25%、10%、または5%のマーカーポリペプチドを有する。特に、分析は、試験細胞中のマーカーポリペプチドのレベルを評価し、好ましくは測定されたレベルを少なくとも一つの対照細胞、例えば正常細胞および/または既知の表現型の形質転換された細胞において検出されるマーカーポリペプチドと比較する。
【0186】
本発明について特に重要なのは、正常または異常なマーカーポリペプチドレベルに関連する細胞の数により決められるマーカーポリペプチドのレベルを定量する能力である。特定のマーカーポリペプチド発現型を有する細胞の数を次に患者予後と関連づけることができる。本発明の1つの具体例において、病変のマーカーポリペプチド発現型は、以上に高い/低いマーカーポリペプチドを有することが見いだされる生検における細胞のパーセンテージとして定量される。このような発現がは免疫組織化学的分析法、ドットブロット分析、ELISAなどにより検出できる。
【0187】
免疫組織化学
組織サンプルが使用される場合、マーカーポリペプチド表現型を有する細胞の数を定量するために、免疫組織化学染色を用いることができる。このような染色に関して、
組織のマルチブロックを生検または他の組織サンプルから得、プロテアーゼKまたはペプシンなどの物質を利用して、タンパク質加水分離に供する。ある具体例において、核フラクションを試料細胞から単離して、核フラクション中のマーカーポリペプチドのレベルを検出することは望ましい。
組織サンプルはホルマリン、グルタルアルデヒド、メタノールなどの試薬での処理によって固定される。サンプルは次にマーカーポリペプチドに対する結合特異性を有する抗体、好ましくはモノクローナル抗体と共にインキュベートされる。この抗体は、その後の結合の検出のために標識と結合させることができる。サンプルを免疫複合体の形成に十分な時間インキュベートする。抗体の結合を次にこの抗体に結合した標識により検出する。抗体が標識されていない場合、第二の標識された抗体、例えば抗マーカーポリペプチド抗体のイソタイプについて特異性のものを使用することができる。使用される標識の例は、放射性核種、蛍光、化学ルミネセンス、および酵素を含む。
【0188】
酵素が利用されている場合、酵素の基質をサンプルに添加して、着色または螢光性生成物を得ることができる。接合体においての使用に適当な酵素の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸脱水素酵素などを含む。商業的に入手可能でない場合は、このような抗体酵素接合体は容易に当業者らに公知の技術により容易に産生される。
1つの具体例において、分析はドットブロットとして行なわれ。ドットブロット分析は、あらかじめ決められた数の細胞から産生される無細胞抽出物におけるマーカーポリペプチドの量を相関させることにより一つの細胞と関連するマーカーポリペプチドの平均量の定量を可能にするので、組織サンプルが使用される場合に特に有用である。
【0189】
さらにもう1つの具体例において、本発明は、1以上の本発明のマーカーポリペプチドに対して生成される1以上の抗体を使用することを包含し、該ポリペプチドは配列番号:1から26または53から75までの任意のポリヌクレオチド配列によってでもコードされる。このような抗体のパネルは、乳がんについて信頼性が高い診断プローブとして使用できる。本発明の分析法は、細胞、例えばマクロファージを含む生検サンプルを、1以上のコードされた産物に対する抗体のパネルと接触させて、マーカーポリペプチドの存在または欠如を決定することを含む。
本発明の診断法はまた、治療の追跡としても用いることができる。例えばマーカーペプチドのレベルの定量は、悪性腫瘍、特に乳ガンについて現行のまたは従来用いられていた療法の有効性、ならびに患者の予後に際してのこれらの療法の効果を示す。
【0190】
診断は、予後分析法として使用するためにも採用できる。このような用途は、悪性腫瘍のプラーク生成の進行において特徴的な段階で起こる事象に対して本発明の分析法の感度を利用する。例えば、所定のマーカー遺伝子が、非常に早い段階で、おそらくは細胞が泡沫細胞に進化する前に増加または減少調節することができ、一方、もう一つのマーカー遺伝子はずっと後の段階でのみ特徴的に増加または減少調節される。このような方法は、試験細胞のmRNAを、悪性腫瘍進行の異なる段階で乳ガン組織において異なる特徴的なレベルで発現される所定のマーカーポリペプチドから得られるポリヌクレオチドプローブと接触させる段階、および細胞のmRNAに対するプローブのハイブリダイゼーションのおよその量を定量する段階を含み、このような量は細胞における遺伝子の発現のレベルを示すものであり、したがって細胞の疾患の進行の段階を示すものである;別法として、分析は、試験細胞のタンパク質と接触させた、所定のマーカーポリヌクレオチドの遺伝子産物について特異的な抗体を用いて行うことができる。このような一連の試験は、ある種の動脈硬化斑の存在を明らかにするだけでなく、医師が疾患について最も適切な治療様式を選択し、治療の成功率を予測できるようにする。
【0191】
発明の方法はまた、所定の乳がん素因の臨床的経過を追跡するためにも用いることができる。例えば、本発明の分析法は、患者からの血液サンプルについて適用することができ;乳ガンについての患者を治療した後、別の血液サンプルを採取し、試験を繰り返す。治療が成功すると、乳ガン組織細胞の特徴的な明らかな異なる発現が除かれ、おそらくは正常なレベルに近づくか、または正常なレベルを越える。
【0192】
ポリペプチド活性
一つの具体例において、本発明は、もし、悪性腫瘍、特に乳ガンを有するか、または危険性がある対象における「乳ガン遺伝子」の増加調節の結果としてポリペプチドの活性が増大するならば、治療物質は悪性腫瘍、または特に乳ガンを有さないかまたはその危険性がなく、治療薬で治療されていない対象におけるいくつかのポリペプチドの活性に対してポリペプチドの活性を減少させるように、1以上の「乳ガン遺伝子」ポリペプチドの活性を調節する潜在的な治療薬をスクリーニングする方法を提供する。同様に、もし「乳がん遺伝子」の減少調節の結果としてのポリペプチドの活性が、悪性腫瘍または特に乳ガンを有するか、またはその危険性のある対象において減少するならば、治療薬は、悪性腫瘍または特に乳ガンを有さないかまたはその危険性がなく、治療薬で治療されていない対象における同じペプチドの活性に対してポリペプチドの活性を増大させるであろう。
【0193】
表2または3に示す「乳ガン遺伝子」の活性は、当業者らに公知の、特定のポリペプチドにより示される活性の種類について特別な任意の手段により測定できる。特定のポリヌクレオチドの活性を測定するために用いることができる特定の分析法の例を以下に示す:
a)Gタンパク質結合レセプター
1つの具体例において、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドはGタンパク質結合レセプターをコードできる。1つの具体例において、本発明は、候補モジュレーターの存在下でレセプターの活性における変化を測定することにより、Gタンパク質結合レセプターの潜在的なモジュレーター(インヒビターまたはアクチベーター)をスクリーニングする方法を提供する。
【0194】
1、Gi結合レセプター
細胞(CHO細胞または一次細胞など)は適切なレセプターおよび誘発可能なCRE−−ルシフェラーゼ構築物で安定にトランスフェクトされる。細胞は、50%Dulbeccoの修飾イーグル培地/10%FBSで補足された50%F12(DMEM/F12)(37℃、10%のCO2を含む加湿大気中)中で成長させ、2または3日ごとに定期的に1:10に比で分割する。試験培養は、DMEM/F12とFBS中で適切な濃度(例えば35μlの細胞培養培地中1ウェルあたりの2000個の細胞)で384−ウェルプレート中にシードされ、48時間(細胞系によって〜24から60時間の範囲)成長させる。成長培地を次に、0,1%BSAを含む無血清培地(SFM;例えば超CHO)に対して交換する。DMSO中に溶解された試験化合物をSFMで希釈し、試験培地(最大最終濃度10μモル)へ移し、つづいて10分後にSFM+0,1%BSA中フォルスコリン(〜1μモル、最終濃度)を添加する。両方をスクリーニングするアンタゴニストの場合、適当な濃度の作用物質、およびフォルスコリンを添加する。プレートを10%CO2中、37℃で3時間インキュベートする。次に、上清を除去し、細胞を溶解試薬(25ミリモルのリン酸塩緩衝液、pH7.8、2ミリモルのDDT、10%グリセロールおよび3%のTritonX100を含む)で溶解させる。ルシフェラーゼ反応は基質−緩衝液(例えばルシフェラーゼ分析試薬、Promega)の添加によって開始され、発光をすぐに定量する(例えばBerthold照度計またはHamamatzuカメラシステム)。【0195】
2.Gs結合レセプター
細胞(CHO細胞または一次細胞など)は適切なレセプターおよび誘発可能なCRE−−ルシフェラーゼ構築物で安定にトランスフェクトされる。細胞は、50%Dulbeccoの修飾イーグル培地/10%FBSで補足された50%F12(DMEM/F12)(37℃、10%のCO2を含む加湿大気中)中で成長させ、2または3日ごとに定期的に1:10に比で分割する。試験培養は、DMEM/F12とFBS中で適切な濃度(例えば35μlの細胞培養培地中1ウェルあたりの1000または2000個の細胞)で384−ウェルプレート中にシードされ、48時間(細胞系によって〜24から60時間の範囲)成長させる。0,1%BSAを含む無血清培地(SFM;例えば超CHO)に試験化合物を添加することにより分析を開始する:試験化合物をDMSO中に溶解させ、SFMで希釈し、試験培地(最大最終濃度10μモル、DMSO濃度<0.6%)へ移す。プレートを10%CO2中、37℃で3時間インキュベートする。次に、1ウェルあたり10μlの試薬(25ミリモルのリン酸塩緩衝液、pH7.8、2ミリモルのDDT、10%グリセロールおよび3%のTritonX100を含む)で溶解させる、ルシフェラーゼ反応は1ウェルあたり20μl基質−緩衝液(例えばルシフェラーゼ分析試薬、Promega)の添加によって開始される。発光の定量をすぐに開始する(例えばBerthold照度計またはHamamatzuカメラシステム)。【0196】
3.Gq結合レセプター
細胞(CHO細胞または一次細胞など)は適切なレセプターで安定にトランスフェクトされる。細胞は、50%Dulbeccoの修飾イーグル培地/10%FBSで補足された50%F12(DMEM/F12)(37℃、5%のCO2を含む加湿大気中)中で成長させ、3または4日ごとに定期的に1:10に比で分割する。試験培養は、DMEM/F12とFBS中で適切な濃度(例えば35μlの細胞培養培地中1ウェルあたりの2000個の細胞)で384−ウェルプレート中にシードされ、48時間(細胞系によって〜24から60時間の範囲)成長させる。成長培地を次に生理学的塩溶液(例えば、Tyrode溶液)に対して交換する。DMSO中に溶解させた試験化合物を、0.1%BSAを含むTyrode溶液で希釈し、試験培地(最大最終濃度10μモル)へ移す。レセプター特異性作用物質の添加後、結果後して得られるGqにより媒介される細胞内カルシウム増加を、適当な読みとりシステム(例えば、カルシウム感受性色素)を用いて測定する。【0197】
b)イオンチャネル
イオンチャネルは電気信号、貫膜シグナル伝達、ならびに電解質および溶質輸送に関与する内在性膜タンパク質である。膜脂質二重層を貫通する巨大分子ポアを形成することにより、イオンチャンネルはイオンの浸透のための電気化学ポテンシャル勾配により促進させられる特定のイオン種の流れの原因となる。一つの分子レベルで、個々のチャンネルは、「開」状態(イオンを運ぶ)と「閉」状態(運ばない)の間に構造的移行(「ゲーティング」)を経験する。典型的な一つのチャネル開放は数ミリ秒の間続いて、10−9−10−12アンペアの範囲で基礎膜電流をもたらす。チャネルゲーティングは神経伝達物質および細胞内の第二メッセンジャー(「リガンド−ゲート制御」チャネル)または膜電位(「電圧−ゲート制御」チャネル)などの種々の化学的および/または生物物理学的パラメータにより制御される。イオンチャネルは、そのイオン選択性、ゲーティング特性、およびホルモンおよび薬剤による調節により機能的に特徴づけられる。シグナリングおよび輸送プロセスにおけるその中心的な役割とのために、イオンチャネルは種々の病態生理学的状況において薬理学的療法のために理想的な標的を提示する。
【0198】
1つの具体例において、「乳がん遺伝子」はイオンチャンネルをコード化することができる。1つの具体例において、本発明は、「乳がん遺伝子」ポリペプチドのチャンネル活性の潜在的なアクチベーターまたはインヒビターをスクリーニングする方法を提供する。その活性を抑制するかまたは促進するかのいずれかのためのイオンチャンネルとの化合物の相互作用のスクリーニングは、生体細胞における(1)結合および(2)機能分析に基づく[Hille(183)]。
1.リガンドによりゲート制御されたチャンネルについて、例えば向イオン性神経伝達物質/ホルモンレセプターについて、化合物と標識されたリガンド間の競合により標的との結合を検出する分析をデザインすることができる。
2.イオンチャンネル機能を生きている細胞において機能的に試験することができる。標的タンパクが内因的に適切なリポーター細胞において発現されるかまたは組み替えにより導入される。チャネル活性は、(2.1)イオン透過(最も顕著には、Ca2+イオン)の濃度変化、(2.2)貫膜電気ポテンシャル勾配における変化、および(2.3)標的活性により誘発または調節される細胞応答(例えば、リポーター遺伝子の発現、神経伝達物質の分泌)の測定によりモニターすることができる。
2.1 チャンネル活性の結果、貫膜流動が生じる。したがって、イオンチャンネルの活性化は、発光または蛍光インジケーターを用いて、結果として得られる細胞内イオン濃度の変化によりモニターすることができる。その広い動的範囲と適当なインジケーターの利用可能性のために、これは特に細胞内Ca2+イオン濃度([Ca2+]i)の変化に当てはまる。[Ca2+]iは、例えば、エクオリン発光または蛍光色素技術(例えばFluo−3、Indo−1、Fura−2を使用)により測定できる。標的チャンネル自体を通るCa2+流を直接測定するか、または標的チャンネルの調節が膜電位に影響を及ぼし、それにより同時発現された電圧ゲート制御されたCa2+チャンネルの活性に影響を及ぼす細胞分析を設計することができる。
2.2 イオンチャネル電流の結果、電位差蛍光プローブを用いて直接モニターできる膜電位(Vm)の変化が生じる。これらの荷電したインジケーター(例えばアニオン性オキソノール色素DiBAC4(3))は電圧の変化に対応して細胞外および細胞内区画の間に再分配する。平衡分配はネルンストの式に適用される。したがって膜電位の変化は、細胞の蛍光において同時に起こる変化をもたらす。ここでも、Vmの変化は、直接標的イオンチャネルの活性によるかまたは増幅および/または同じ細胞において動じ発現されたチャンネルによるシグナル延長により引き起こされる。
2.3 標的チャネル活性は、直接または追加のCa2+チャネルの活性化により細胞Ca2+流入を引き起こすことができる(2.1参照)。結果として得られる細胞内Ca2+シグナルは、様々な細胞応答、例えば、分泌または細胞転写を調節する。従って、標的チャンネルの調節は、標的発現細胞からの公知のホルモン/伝達物質の分泌をモニターするか、またはCa2+−感受性プロモーターエレメント(例えば、環状AMP/Ca2+−感受性エレメント;CRE)により制御されるリポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)の発現により検出できる。
【0199】
c)DNA−結合タンパク質と転写ファクター
1つの具体例において、「乳がん遺伝子」はDNA−結合タンパク質または転写ファクターをコード化することができる。このようなDNA−結合タンパク質または転写ファクターの活性は、例えば、特定のプロモーターと結合した試験配列の転写を開始するためのDNA−結合タンパク質または転写ファクターの能力を測定するプロモーター分析により測定することができる。1つの具体例において、本発明は、転写ファクターに対して反応性のプロモーターにより調節される試験遺伝子の発現における変化を測定することにより、試験化合物を、このようなDNA−結合タンパク質または転写ファクターの活性を調節するその能力についてスクリーニングする方法を提供する。
【0200】
d)プロモーター分析
プロモーター分析は、興味のある(例えば、甲状腺ホルモン)調節プロモーターの制御かで、ルシフェラーゼで安定にトランスフェクトされたヒト肝細胞ガン細胞HepG2で開始された。トランスフェクションのために使用されたベクター2xIROlucは、tk最小プロモーターとルシフェラーゼの遺伝子の前に8bpのスペーサーで分離された2つの12bp逆パリンドローム配列の甲状腺ホルモン反応性エレメント(TRE)を有する。試験培養物を、グルタミン、トリシン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、インシュリン、セレン、トランスフェリンで補足された無血清イーグル最小基本培地中、96−ウェルプレート中に接種し、10%CO2、37℃で加湿された大気中、培養した。48時間インキュベーションした後、試験化合物または参照化合物(例えば、LT3、L−T4)および適当ならば共同刺激因子(最終濃度1nM)の連続希釈を細胞培養物に添加し、最適時間(例えばさらに4−72時間)インキュベーションを続けた。細胞を次に、TritonX100およびルシフェリンを含む緩衝液の添加により溶解させ、T3によって誘発されたルシフェラーゼまたは他の化合物の発光は照度計で測定した。試験化合物のそれぞれの濃度について、4回の反復試験を行った。各試験化合物についてのEC50値をGraph Pad Prism Sientficソフトウェアの使用により計算した。
【0201】
スクリーニング法
本発明は、「乳がん遺伝子」ポリペプチドまたは「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドと結合するかまたは活性を調整する試験化合物をスクリーニングする分析法を提供する。試験化合物は、好ましくは「乳がん遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと結合する。さらに好ましくは、試験化合物は、試験化合物の欠如に比例して、「乳がん遺伝子」活性を少なくとも約10%、好ましくは約50、いっそう好ましくは約75、90、または100%減少または増大させる。
【0202】
試験化合物
試験化合物は当該分野ですでに知られている薬剤であるか、または任意の薬理学的活性を有することがあらかじめ知られていない化合物である。化合物は天然に存在するか、または研究室で設計することができる。これらは微生物、動物、または植物から単離でき、組み換えにより産生することができるか、または当該分野で知られている化学的方法により合成することができる。もし望ましいなら、試験化合物を当該分野で公知の、生物学的ライブラリー、空間的にアドレス可能な平行した固相または溶液相ライブラリー、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法、1ビーズ1化合物ライブラリー法、およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を含むが、これらに限定されない多数のコンビナトリアルライブラリー法のいずれかを用いて得ることができる。生物学的ライブラリー法はポリペプチドライブラリーに限定され、一方、他の4角方法はポリペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用できる。[論評については、Lam、1997、(151)参照]。
【0203】
分子のライブラリーの合成法は当該分野において一般的である[例えば、DeWittら、1993、(152);Erbら、1994、(153);Zuckermannら、1994、(154);Choら、1993、(155);Carellら、1994、(156)とGallopら、1994、(157)参照]。化合物のライブラリーは溶液中[例えば、Houghten、1992、(158)参照]、またはビーズ上[Lam、1991、(159)]、DNAチップ[Fodor、1993、(160)]、細菌または胞子(Ladner、米国特許第5,223,409号)、プラスミド[Cullら、1992、(161)]、またはファージ[スコット&スミス、1990、(162);Devlin、1990、(163);Cwirlaら、1990、(164);Felici、1991、(165)]で提示できる。
【0204】
高スループットスクリーニング
試験化合物は、「乳がん遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと結合する能力、または高スループットスクリーニングを使って「乳がん遺伝子」活性または「乳がん遺伝子」発現に影響を与える能力についてスクリーニングすることができる。高スループットスクリーニングを使って、多数の試験化合物を速く検査できるように、多くの別々の化合物を平行して試験することができる。最も広く確立された技術は96ウェル、384ウェル、または1536ウェルのマイクロタイタプレートを利用する。マイクロタイタプレートのウェルは典型的に5から500μlまで及ぶ分析容積を必要とする。プレートに加えて、多くの器具、材料、ピペット、ロボット、プレート洗浄装置およびプレートリーダーは商業的入手可能で、マイクロウェルフォーマットに装着する。
【0205】
別法として、自由なフォーマット分析、またはサンプル間に物理的障壁がない分析を用いることができる。例えば、コンビナトリアルペプチドライブラリーの単純な同種分析において色素細胞(メラニン細胞)を用いる分析法が、Jayawickremeら、(166)により記載されている。細胞を培養皿中アガロースの下に配置し、次いでコンビナトリアル化合物を有するビーズをアガロースの表面上に置く。コンビナトリアル化合物はビーズから部分的に放出された化合物である。活性化合物がゲルマトリックス中に局所的に拡散すると、活性化合物は細胞の色を変化させるので、暗色顔料領域として可視化することができる。
【0206】
もう1つの自由なフォーマット分析の例は、Chelsky、(167)によって記載されている。Chelskyは、炭酸脱水酵素についての単純な同種酵素分析をアガロースゲルの内部に設置して、ゲル中の酵素がゲル全体にわたって色の変化を引き起こすようにした。その後、フォトリンカーによりコンビナトリアル化合物を有するビーズをゲル内部に起き、化合物をUV光により部分的に放出させた。酵素を抑制する化合物は、色の変化が少ない抑制部分として観察された。
もう1つの例において、コンビナトリアルライブラリーを、寒天中で成長するガン細胞に細胞毒性効果を及ぼす化合物についてスクリーニングした[Salmonら、1996、(168)]。
もう1つの高スループットスクリーニング法は、Beutelら、米国特許第5,976,813号において記載されている。この方法において、試験サンプルは多孔性マトリックス中に設置される。1以上の分析成分を次に、例えば、ゲル、プラスチックシート、フィルターまたは操作が容易な固体支持体の他の形態などのマトリックス内、マトリックス上、またはマトリックスの底部に置く。サンプルが多孔性マトリックスに導入される場合、これらは、試験サンプルが混合しないで分析を行うことができるように十分ゆっくりと拡散する。
【0207】
結合分析
結合分析について、試験化合物は、好ましくは、通常の生物学的な活性が妨げられるように、例えば、酵素のATP/GTP結合部位または「乳がん遺伝子」ポリペプチドの活性部位と結合し、占拠する小分子である.このような小分子の例は、小ペプチドまたはペプチド様分子を含むが、これらに限定されない。
結合分析において、試験化合物または「乳がん遺伝子」ポリペプチドのいずれかは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼなどの螢光性、放射性同位元素、化学ルミネッセンス、または酵素標識などの検出可能な標識を含むことができる。「乳がん遺伝子」ポリペプチドと結合する試験化合物の検出は、例えば、放射性発光の直接計測、シンチレーションカウンティング、または検出可能な生成物への適当な基質の変換を測定することにより達成することができる。
【0208】
別法として、「乳がん遺伝子」ポリペプチドへの試験化合物の結合は、いずれかの相互作用を標識せずに測定することができる。例えば、ミクロフィジオメーターは、「乳がん遺伝子」ポリペプチドとの試験化合物の結合を検出するために用いることができる。ミクロフィジオメーター(例えば、CytosensorJ)は、光走査型化学顕微鏡(LAPS)を用いて細胞がその環境を酸性化させる割合を測定する分析機器である。この酸性化率における変化を、試験化合物および「乳がん遺伝子」ポリペプチド間の相互作用のインジケーターとして用いることができる[McConnelら、1992、(169)]。
【0209】
「乳がん遺伝子」ポリペプチドと結合する試験化合物の能力を決定することは、リアルタイム生体分子相互作用解析(BIA)[Sjolander&Urbaniczky、1991、(170)およびSzaboら、1995、(171)]などの技術を使って達成できる。BIAは、いずれの反応体(例えば、BIAcore)も標識することなく、リアルタイムの生物特異的相互作用を研究するための技術である。光学現象表面プラズモン共鳴(SPR)における変化は、生体分子の間のリアルタイム反応のインジケーターとして使用できる。
本発明のさらにもう1つの態様において、「乳がん遺伝子」ポリペプチドは、「乳がん遺伝子」ポリペプチドと結合するか、または相互作用する他のタンパクを同定し、その活性を調整するために、2−ハイブリッド分析または3−ハイブリッド分析において「えさタンパク質」として用いることができる[例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら、1993、(172);Maduraら、1993、(173);Bartelら、1993、(174);Iwabuchiら、1993、(175)およびBrentWO94/10300参照]。
【0210】
2ハイブリッドのシステムはたいていの転写ファクターのモジュラー性に基づき、分離できるDNA−結合および活性化ドメインからなる。簡単にいうと、分析は2つの異なったDNA構築物を利用する.例えば、1つの構築物において、「乳がん遺伝子」ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが周知の転写ファクター(例えば、GAL4)のDNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドと融合させることができる。他の構築物において、同定されていないタンパク質(「獲物」または「サンプル」)をコードするDNA配列を、周知の転写ファクターの活性化ドメインをコードするポリヌクレオチドと融合させることができる。もし「えさ」および「獲物」タンパク質が、タンパク質依存性複合体を形成するためにインビボで相互作用することができるならば、転写ファクターのDNA結合および活性化ドメインは近接させられる。この近接により、転写ファクターに反応しやすい転写調節部位と操作可能に結合されるリポーター遺伝子(例えば、LacZ)の転写が可能になる。リポーター遺伝子の発現を検出することができ、機能的な転写ファクターを含む細胞コロニーを単離し、「乳がん遺伝子」ポリペプチドと相互に作用するタンパク質をコードするDNA配列を得るために用いることができる。
【0211】
「乳がん遺伝子」ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかを、反応体の一方または双方の未結合形態からの結合の分離を促進するため、また分析の自動化に適応するために固定化するのが望ましい。したがって、「乳がん遺伝子」ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかを固体支持体に結合させることができる。適当な固体支持体は、これらに限定されないが、ガラスまたはプラスチックのスライド、組織培養プレート、マイクロタイターウェル、チューブ、シリコンチップ、またはビーズなどの粒子(ラッテクス、ポリスチレン、またはガラスビーズを含むが、これに限定されない)を包含する。共有結合および非共有結合の使用、受動的吸収、またはそれぞれポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物および固体支持体と結合した結合部分の対を含む当該分野で知られる任意の方法を、「乳がん遺伝子」ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物を固体支持体に結合させるために用いることができる。試験化合物は好ましくは個々の試験化合物の位置を追跡できるように一列で固体支持体と結合させる。試験化合物の「乳がん遺伝子」ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)との結合は、反応物質を入れるために適した任意の容器中で行うことができる。このような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管、および極小遠心管を包含する。
【0212】
1つの具体例において、「乳がん遺伝子」ポリペプチドは、「乳がん遺伝子」ポリペプチドが固体支持体と結合することを可能にするドメインを含む融合タンパク質である。例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、セントルイス、Mo.)、またはグルタチオン誘導化マイクロタイタープレート上に吸着させることができ、これを次に試験化合物または非吸着「乳ガン遺伝子」ポリペプチドと組み合わせ;混合物を次に複合体形成を行うことができる条件下(例えば、塩についての生理学的条件およびpH)でインキュベートする。インキュベーション後ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して未結合成分を除去する。反応体の結合は、前記のように直接または間接的に定量することができる。別法として、結合が定量される前に、複合剤を固体支持体から分離することができる。
【0213】
タンパク質またはポリヌクレオチドを固体支持体上に固定化するための他の技術も本発明のスクリーニング分析において用いることができる。例えば、「乳がん遺伝子」ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物のいずれかをビオチンおよびストレプトアビジンの結合を用いて固定化することができる。ビオチニル化された「乳がん遺伝子」ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)または試験化合物は、当該分野において一般的な技術(例えば、ビオチニル化キット、Pierce Chemicals、ロックフォード、Ill.)を使ってビオチンNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンでコートされた96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定化することができる。別法として、「乳がん遺伝子」ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または試験化合物に特異的に結合するが、ATP/GTP結合部位または「乳がん遺伝子」ポリペプチドの活性部位などの望ましい結合部位と干渉しない抗体を、プレートのウェルに誘導化することができる。未結合標的またはタンパク質を抗体接合によってウェル中にトラップすることができる。
【0214】
このような複合体の検出法は、GST固定化複合体についてすでに記載したものに加えて、「乳ガン遺伝子」ポリペプチドまたは試験化合物と特異的に結合する抗体を用いた複合体の免疫検出、「乳がん遺伝子」ポリペプチドの活性を検出することに依存する酵素結合検定、および非還元条件下でのSDSゲル電気泳動を包含する。
「乳がん遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと結合する試験化合物のスクリーニングは、未処理細胞において行うこともできる。「乳がん遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む任意の細胞を、細胞ベースの分析システムにおいて用いることができる。「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドは細胞において自然に発生し得るかまたは前記のような技術を用いて導入することができる。前記のように、「乳がん遺伝子」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドへの試験化合物の結合が定量される。
【0215】
遺伝子発現の調整
もう1つの具体例において、「乳がん遺伝子」発現を増大させるか、または減少させる試験化合物が同定される。「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドを試験化合物と接触させ、RNAの発現または「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドのポリペプチド生成物を定量する。試験化合物の存在下での適当なmRNAまたはポリペプチドの発現のレベルを、試験化合物が存在しないときのmRNAまたはポリペプチドの発現のレベルと比較する。試験化合物を次にこの比較に基づいて発現のモジュレーターとして認知することができる。例えば、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験化合物の存在下で、存在しない場合よりも大きい場合、試験化合物はmRNAまたはポリペプチド発現の刺激物質またはエンハンサーであると認知される。別法として、mRNAまたはポリペプチドの発現が、試験化合物の存在下で、存在しない場合よりも少ない場合は、試験化合物はmRNAまたはポリペプチド発現の抑制物質であると認知される。
【0216】
mRNAまたはポリペプチドの検出ために、細胞の「乳がん遺伝子」mRNAまたはポリペプチド発現のレベルを当該分野で一般的な方法により定量することができる。定性的または定量的方法のいずれかを用いることができる。「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドのポリペプチド生成物の存在は、例えば、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティング、および免疫組織化学などの免疫化学的方法を含む当該分野で公知のさまざまな技術を用いて定量できる。別法として、「乳がん遺伝子」ポリペプチド中の標識されたアミノ酸の組み込みを検出することによって、ポリペプチド合成を、インビボ、細胞培養物中、またはインビトロ翻訳システムにおいて定量することができる。
【0217】
このようなスクリーニングが無細胞分析または未処理細胞のいずれかにおいて実行することができる。「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドを発現する任意の細胞を細胞ベースの分析システムにおいて用いることができる。「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチドは細胞において自然に発生し得るか、または前記のような技術を用いて導入することができる。初代培養または、確立された細胞系、例えば、CHOまたはヒト胚性腎293細胞を用いることができる。
【0218】
治療の指標と方法
乳ガンの治療法は、主に細胞増殖、細胞成長または血管形成について介入する有効な化学療法剤に依存する。ゲノムによって引き起こされる分子の標的同定法の出現は特に悪性腫瘍患者、特に乳がん患者により安全で、より有効な治療法を提供する治療的介入のための新規乳ガン特異的標的を同定する可能性を開いた。かくして、新たに発見された乳がん関連遺伝子およびその生成物は、革新的な治療を開発するための手段として用いることができる。前記のように、Her2/neuレセプターキナーゼの同定は、ある腫瘍患者のサブセットの治療の刺激的な新しい機会を提供する。すでに概説された生理学のプロセスのいずれかにおいて重要な役割を演じる遺伝子を乳がん標的として特徴づけることができる。ゲノムにより同定された遺伝子または遺伝子断片は、1以上のヘテロローガスな発現システムにおいて容易に発現することができ、機能的組み換えタンパク質が賛成される。これらのタンパクは、その生化学的特性によりインビボで特徴づけられ、次にその生化学的活性の化学モジュレーターを同定する高スループット分子スクリーニングプログラムにおいてツールとして使用される。標的遺伝子発現またはタンパク質活性のモジュレーターをこの方法で同定し、続いて治療活性の細胞およびインビボ疾患モデルにおいて試験することができる。生物学的モデルにおける鉛化合物の反復試験での最適化および詳細な薬物速度論および毒物学分析は薬剤開発およびその後のヒトにおける試験の基礎を形成する。
【0219】
本発明はさらに前記のスクリーニング分析により同定される新規薬剤の使用に関する。したがって、適当な動物モデルにおいて本明細書において記載されるように同定された試験化合物を使用することは、本発明の範囲内に含まれる。例えば、本明細書に記載したように同定された物質(例えば、調節剤、アンチセンスポリヌクレオチド分子、特異的抗体、リボザイム、またはヒト「乳がん遺伝子」ポリペプチド結合分子)を、かかる物質での治療の有効性、有毒性、または副作用を決定するために動物モデルにおいて用いることができる。別法として、本明細書において記載されるように同定された薬を、かかる物質の作用のメカニズムを決定するために動物モデルにおいて使用することができる。さらに、本発明は本明細書において記載された治療について前記スクリーニング分析により同定される新規物質の使用に関する。
【0220】
ヒト「乳がん遺伝子」活性に影響を与える試薬は、ヒト「乳がん遺伝子」活性を増大させるかまたは減少させるために、インビトロまたはインビボのいずれかでヒト細胞に投与することができる。試薬は好ましくはヒト「乳がん遺伝子」の発現生成物と結合する。もし発現生成物がタンパク質であるなら、試薬は好ましくは抗体である。ヒト細胞のエクスビボの処理のために、抗体を、身体から取り出された幹細胞の調製物に添加することができる。細胞を次に当該分野で知られているように、クローンの増殖の有無にかかわらず、同一またはもう1つの人体において置換することができる。
1つの具体例において、試薬はリポソームを使って送達される。好ましくは、リポソームは少なくとも約30分、さらに好ましくは少なくとも約1時間、さらにいっそう好ましくは少なくとも約24時間、これが投与される動物において安定である。リポソームは、試薬、特にポリヌクレオチドをヒトなどの動物における特定の部位に向けることができる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームの脂質組成物は、肺、肝臓、脾臓、心臓脳、リンパ節、および皮膚などの動物の特定の器官を標的とすることができる。
【0221】
本発明において有用なリポソームは、その内容物を細胞に送達するために標的細胞の原形質膜と融合することができる脂質組成物を含む。好ましくは、リポソームのトランスフェクション効率は、約106の細胞に送達される16ナノモルのリポソームにつき0.5μgのDNAであり、さらに好ましくは約106の細胞に配達される16ナノモルのリポソームにつき約1.0μgのDNAであり、さらにいっそう好ましくは、約106の細胞に送達される16ナノモルあたり約2.0μgのDNAであり、さらに一層好ましくは約106の細胞に送達される16ナノモルのリポソーム当たり約2.0μgのDNAである。好ましくは、リポソームは直径が約100から500nmの間であり、さらに好ましくは約150から450nmの間であり、さらにいっそう好ましくは約200から400nmの間である。
【0222】
本発明における使用に適当なリポソームは、例えば、当業者らに公知の遺伝子送達法において通常用いられるリポソームを含む。さらに好ましいリポソームは、多カチオン性脂質組成物および/またはポリエチレングリコールと結合したコレステロール主鎖を有するリポソーム脂質組成物を有するリポソームを包含する。任意に、リポソームは、リポソームを特定のセルタイプ、例えばリポソームの外部表面上にさらされた細胞特異的リガンドに向かわせることができる化合物を含む。
【0223】
アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムなどの試薬とのリポソームの複合体形成は、当該分野において標準的な方法を用いて達成できる(例えば、米国特許第5,705,151号参照)。好ましくは、約0.1μgから約10μgのポリヌクレオチドを約8ナノモルのリポソーム、さらに好ましくは約0.5μgから約5μgのポリヌクレオチドを約8ナノモルのリポソームと組み合わせ、いっそうさらに好ましくは、約1.0μgのポリヌクレオチドを約8ナノモルのリポソームと組み合わせる。
もう1つの具体例において、抗体をレセプターにより媒介される標的送達を用いてインビボで特定の組織に送達できる。レセプターにより媒介されたDNA送達技術は、例えば、Findeisら、1993、(176);Chiouら、1994、(177);Wu&Wu、1988、(178);Wuら、1994、(179);Zenkeら、1990、(180);Wuら、1991、(181)。
【0224】
治療上有効な用量の決定
治療上有効な量の決定は当業者らの能力範囲内である。治療上有効な用量は、治療上有効な量が存在しない場合に起こるヒト「乳がん遺伝子」活性に対してヒト「乳がん遺伝子」活性を増大または減少させる活性成分の量を意味する。
任意の化合物について、治療上有効な量は、細胞培養分析または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、またはブタにおいて最初に評価できる。動物モデルはまた、適当な濃度範囲および投与経路を決定するために用いることができる。このような情報は次にヒトにおいて有用な用量および投与経路を決定するために用いることができる。
【0225】
治療の有効性と毒性、例えば、ED50(集団の50%に治療上効率的な用量)およびLD50(集団の50%にとって致命的な用量)は、細胞培養または実験動物において標準的製薬手順により決定することができる。毒性と治療効果の用量比は治療指数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。
高い治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養分析および動物研究から得られるデータは、ヒトの使用についての用量範囲の処方において用いられる。このような組成物に含まれる量は、好ましくはほとんどまたは全く毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は使用された投与形態、患者の感受性、および投与経路によってこの範囲内で変化する。
【0226】
正確な用量は、治療を必要とする対象に関連するファクターを考慮に入れて開業医により決定されるであろう。用量と投与は、活性成分の十分なレベルを提供するため、または望ましい効果を維持するために調整される。考慮に入れられるファクターは、病状の重さ、対象の全体的な健康状態、対象の年齢、体重、および性、食餌、投与の時間および頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、および治療に対する寛容性/反応を包含する。長期間作用する医薬組成物は、特定の処方の半減期および浄化率によって、3から4日ごと、毎週、または2週ごとに投与することができる。
標準的な用量は、投与経路によって、約0.1gから100000マイクログラムから合計用量約1gまで変化し得る。特定の用量および送達法についての手引きは、文献に記載され、当該分野における従業者により一般に利用可能である。当業者らは、タンパク質またはそのインヒビターと異なるヌクレオチドの処方を用いる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、特定の細胞、条件、位置設定など対して特異的である。
【0227】
もし試薬が単鎖抗体であるなら、抗体をコードするポリヌクレオチドを組み立て、これらに限定されないが、トランスフェリン−多カチオンにより媒介されたDNA移動、覆いがないかまたは封入された核酸でのトランスフェクション、リポソームによって媒介された細胞融合、DNAでコートされたラテックスビーズの細胞内輸送、原形質体融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、遺伝子銃、およびDEAEまたはリン酸カルシウムによって媒介されたトランスフェクションを含むよく確立された技術を用いてエクスビボまたはインビボのいずれかで細胞中に導入することができる。
抗体の有効なインビボ用量は、患者の体重1kgあたり約5μgから約50μg、約50μgから約5mg、約100μgから約500μg、および約200から約250μgの範囲である。単鎖抗体をコードするポリヌクレオチドの投与について、有効なインビボ用量は、約100ngから約200ng、500ngから約50mg、約1μgから約2mg、約5μgから約500μg、および約20μgから約100μgのDNAの範囲である。
【0228】
もし発現産物がmRNAであるなら、試薬は好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムである。アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを発現するポリヌクレオチドを前記のようにいろいろな方法によって細胞に導入することができる。
好ましくは、試薬は、試薬が存在しない場合と比較して「乳がん遺伝子」遺伝子の発現または「乳がん遺伝子」ポリペプチドの活性を少なくとも約10、好ましくは約50、いっそう好ましくは約75、90、または100%減少させる。「乳がん遺伝子」遺伝子の発現または「乳がん遺伝子」ポリペプチドの活性のレベルを減少させるために選択されたメカニズムの有効性はヌクレオチドプローブの「乳がん遺伝子」特異的なmRNAとのハイブリダイゼーション、定量的RT−PCR、「乳がん遺伝子」ポリペプチドの免疫学的検出、または「乳がん遺伝子」活性の測定などの当該分野において一般定な方法を用いて算定することができる。
【0229】
前記の任意の具体例において、本発明の任意の医薬組成物は、他の適切な治療薬との組み合わせにおいて投与することができる。従来の製薬の原理によれば、結合治療における使用に適切な薬剤の選択は当業者が行うことができる。治療薬の組み合わせは、前記の種々の障害の治療または予防を行うために相乗的に作用することができる。この方法を使って、低用量の各薬剤で治療効果を達成することができ、有害な副作用の可能性を減らすことができる。
【0230】
任意の前記の治療法をこのような治療を必要としている、例えば、トリおよび哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ、サル、最も好ましくは、ヒトを含む任意の対象に適用することができる。
本開示において引用されるすべての特許および特許出願は特に本発明において参考文献として含まれる。前記開示は一般的に現在の発明を説明する。例示のみの目的で提供されて、本発明の範囲を制限することを意図されない次の具体的な実施例を参照してさらによく理解できる。
【0231】
医薬組成物
本発明はまた治療の効果を達成するために患者に投与することができる医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、例えば、「乳がん遺伝子」ポリペプチド、「乳がん遺伝子」ポリヌクレオチド、リボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド、「乳がん遺伝子」ポリペプチドに特異的に結合する抗体、または模倣物、「乳がん遺伝子」ポリペプチド活性の作用物質、アンタゴニスト、または阻害剤を含むことができる。組成物は単独でまたは少なくとも1つの他の物質、例えば安定剤との組み合わせにおいて投与することができ、これは、生理食塩水、緩衝塩溶液、デキストロース、および水を含むが、これらに限定されない滅菌、生体適合性医薬担体中で投与することができる。組成物は単独で、または他の作用物質、医薬またはホルモンと組み合わせて患者に投与することができる。
【0232】
活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、製薬に用いることができる製剤中の活性化合物の処理を容易にする賦形剤および助剤を含む適当な医薬的に許容される担体を含むことができる。本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、腹膜組織内、鼻内、非経口、局所、舌下、または直腸手段を含むが、これらに限定されない任意の数の経路により投与することができる。経口投与用医薬組成物は、経口投与に適した用量において当該分野で一般的な、医薬的に許容される担体を用いて処方することができる。このような担体により、医薬組成物は患者が摂取するために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ジェル、シロップ剤、syラリー、懸濁剤などとして処方することが可能になる。
【0233】
経口用医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、所望により得られる混合物を粉砕し、望ましいならば錠剤または糖衣錠コアを得るために適当な助剤を添加した後、顆粒混合物を加工することにより得ることができる。適当な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質フィラー、例えば、ラクトース、シュークロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;トウモロコシからのでんぷん、麦、米、ジャガイモ、または他の植物;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントを含むゴム;ゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパクである。もし望ましいなら、崩壊剤または可溶化剤、たとえば架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムを添加することができる。
【0234】
糖衣錠コアは、適当なコーティング、例えば、濃縮糖溶液と組み合わせて用いることができ、これもまた、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶剤または溶剤混合物を含むことができる。製品の識別または活性化合物の量、すなわち用量を特徴づけるために、色素または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加することができる。
経口で用いることができる医薬製剤は、ゼラチンでできたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンおよびコーティング、例えば、グリセロールまたはソルビトールからできたソフトシールドカプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、フィラーまたはバインダー、例えば、ラクトースまたはデンプン、滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および任意に安定剤を含むことができる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、適当な液体、例えば、脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコール(安定剤を含むかまたは含まない)中に溶解または検濁させることができる。
【0235】
非経口投与に適した医薬処方は、水溶液、好ましくはハンクス溶液、リンガー溶液、または生理的緩衝塩溶液などの生体適合性緩衝液中で処方することができる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増大させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含むことができる。加えて、活性化合物の懸濁液は適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適当な親油性溶剤またはビヒクルは、ゴマ油などの脂肪油、または合成脂肪酸エステル、たとえばオレイン酸エチルまたはトリグリセリド、またはリポソームを含む。非脂質多カチオン性アミノポリマーも送達のために用いることができる。任意に、懸濁液は、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大させる適当な安定剤または物質も含むことができる。局所または経鼻投与のために、浸透される特定のバリヤに適当な浸透剤を処方において用いることができる。このような浸透剤は当該分野において一般的に知られている。
【0236】
本発明の医薬組成物は、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスにより、当該分野において公知の方法で製造することができる。医薬組成物は、塩として提供することができ、これらに限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの酸を用いて形成することができる。塩は対応する遊離塩基形態よりも水性または多のプロトン性溶剤中により可溶性である傾向がある。他の場合においては、好ましい製剤は:150mMのヒスチジン、0.1%2%のシュークロース、および27%のマンニトール(4.5から5.5までのpH範囲)のうちのいずれかまたは全部を含むことができる凍結乾燥粉末であり、これは使用の前に緩衝液と組み合わせられる。
処方および投与のための技術に関しての詳細は、レミントンの製薬の科学(182)の最新版において記載されている。医薬組成物は調製された後、適切な容器中に入れ、適応症の治療のためにラベルをはることができる。このようなラベルは、投与量、頻度および方法を含む.
【0237】
材料および方法
乳がんに関与している遺伝子を同定するための一つの方法は、病気と関連する状況非疾患状態の下で差次的に発現される遺伝子を検出することである。以下のサブセクションは、このような差次的に発現された遺伝子を検出するために用いることができる多くの実験的システムを記載する。一般に、これらの実験的なシステムは、このような疾患に関連する治療が欠けている少なくとも一つの実験対照条件に加えて、対象またはサンプルが乳がんと関連する方法において治療される少なくとも一つの実験条件を含む。後述されるように、差次的に発現された遺伝子は、実験および対照条件間で遺伝子発現のパターンを比較することにより検出される。
【0238】
特定の遺伝子が1つのこのような実験の使用により同定されると、その発現パターンは、異なった実験においてその発現を調査することによってさらに特徴づけることができ、知見は独自の技術によって実証できる。乳がんにおける特定の遺伝子の役割と相対的な重要性をすることにおいて、このような多数の実験の使用は有用である。乳がん患者から得られる細胞における遺伝子発現パターンを、インビトロ細胞培養モデルにおけるパターンと比較する複合法により、乳がんの発生および/または進行に関連する経路についての重要なヒントが得られる。
悪性腫瘍および乳ガンに関与する差次的に発現された遺伝子の同定のために利用できる実験には、たとえばシグナル伝達に関与する遺伝子を分析するために設計された実験がある。このような実験は細胞の増殖に関与する遺伝子を同定するのに役立つ。
【0239】
乳がんに関与する遺伝子の同定のための方法を以下に記載する。これは、正常、または非乳ガン状態または臨床観察に基づく実験的操作による発現と比較して、乳ガン状態において差次的に発現される遺伝子を表す。このような差次的に発現された遺伝子は、「標的」および/または「マーカー」遺伝子を表す。このような差次的に発現された遺伝子のさらなるキャラクタライゼーションのための方法、および標的および/またはマーカー遺伝子としての同定のための方法を以下に記載する。
別法として、差次的に発現された遺伝子は、正常対乳ガン状態、または対照対実験条件下で、調節された、すなわち、量的に増大または減少された発現を有する。発現が正常対乳がんまたは対照対実験状態において異なる程度は、標準的キャラクタライゼ
ーション技術、例えば、後述のディファレンシャルディスプレー技術により可視化されるために十分大きければよい。発現の差を可視化できる他のこのような標準的キャラクタライゼーション技術は、定量的RT−PCRおよびノザン分析を含むが、これに限定されるわけではなく、これらは当業者には一般的である。
【0240】
発現のプロファイリング
a)定量的RT−PCRを用いた発現のプロファイリング
定量的PCR法による遺伝子発現の詳細な分析のために、興味のあるゲノム領域に隣接するプライマーおよび中間をハイブリダイズする蛍光標識されたプローブを利用する。PE Applied Biosystems(PerkinElmer、フォスターシティー、CA、USA)のPRISM7700配列検出システムと蛍光リポーター色素およびクエンチャー色素の両方で標識されたオリゴヌクレオチドからなる螢光原プローブの技術を用いて、このような発現測定を行なうことができる。プローブ特異的生成物の増幅はプローブの開裂を引き起こし、リポーター蛍光の増加を生み出す。プライマーおよびプローブは、プライマーエクスプレスソフトウェアを使って選択されて、AffymetrixHG_U95A−EまたはHG−U133ABDNAチップの構築のために用いられるプローブ配列の相対的位置に従ってコーディング配列の3’領域または3’未翻訳領域(プライマーと調査連続のために表5参照)にほとんど局在化していた。すべてのプライマー対は慣用のPCR反応により特異性についてチェックされた。サンプルRNAの量を標準化するために、GAPDHは分析されたサンプルにおいて差次的に調節されていないので、GAPDHを基準として選択した。TaqMan確認実験が行われ、標的および対照増幅の効率はほぼ等しいことが示され、このことは当業者に公知の比較のΔΔCT法による遺伝子発現の相対的定量化のために必須条件である。
PerkinElmerにより提供される技術と同様に、Roche Inc.から得られるLightcyclerまたはStratagene Inc.から得られるiCyclerのような他の器具を用いることができる。
【0241】
b)DNAミクロアレイを用いた発現プロファイリング
発現プロファイリングは、Affymetrix Array Technologyを用いて行うことができる。mRNAのこのようなDNAアレイまたはDNAチップとのハイブリダイゼーションによって、アレイのある特定の位置でのシグナルの強さによりそれぞれの転写物の発現値を同定することが可能である。通常、これらのDNAアレイはcDNA、オリゴヌクレオチドまたはサブクローンされたDNA断片のスポッティングにより得られる。Affymetrix技術の場合、約400.000の個々のオリゴヌクレオチド配列が別個の位置においてシリコンウエハーの表面で合成された。オリゴマーの最小の長さは12ヌクレオチド、好ましくは25ヌクレオチド、または問題となる転写物の完全長である。発現のプロファイリングは、ナイロンまたはニトロセルロース膜に結合したDNAまたはオリゴヌクレオチドとのにハイブリダイゼーションにより行うことができる。ハイブリダイゼーションから得られるシグナルの検出は、比色、蛍光、電気化学的、電子、光学または放射性読出装置のいずれかにより得ることができる。アレイ構築の詳細な説明はすでに記載され、また引用された他の特許において記載されている。分析するために染色体領域における量的および質的な変化を決定するために、このようなゲノム改変を含んでいると思われる腫瘍組織から得られるRNAを、全トランスクリプトム(transcriptome)の発現プロファイリングに基づいて、良性組織(例えば上皮乳房組織、または顕微解剖された管組織)から抽出されたRNAと比較しなければならない。わずかに改変して、サンプル調製プロトコルは、AffymetrixGeneChip発現分析マニュアル(サンタクララ、CA)に従った。良性組織、生検、細胞単離物または細胞を含む体液からの全RNA抽出および単離は、TRIzol(Life Technologie、ロックビル、MD)およびOligotexmRNA Midiキット(Qiagen、Hilden、ドイツ)を使って行うことができ、濃度を1mg/mlにするためにエタノール沈降工程を行うべきである。第一のストランドcDNA合成はT7−(dT24)オリゴヌクレオチドを用いてプライムされた。cDNAはフェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させて、最終濃度1mg/mlにすることができる。生成したcDNAから、Enzo(Enzo Diagnostics Inc.、Farmingdale、NY)インビトロ転写キットを使ってcRNAを合成することができる。同じ工程の中で、cRNAはビオチンヌクレオチドBio−11−CTPおよびBio−16−UTP(EnzoDiagnostics Inc.、Farmingdale、NY)で標識することができる。標識およびクリーンアップ(Qiagen、Hilden(ドイツ))後、cRNAを次に適当な細分緩衝液(例えば、40ミリのTris−酢酸塩、pH8.1、100mM KOAc、30mMのMgOAc、94℃で35分間)中で細分化する。Affymetrixプロトコルにより、細分化されたcRNAを、それぞれ約40.000のプローブされた転写物を含むHG_U133アレイ上で、24時間、60rpmで、45℃のハイブリダイゼーションオーブン中でハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション工程後、チップ表面を洗浄し、Affymetrixフルイディクスステーションにおいてストレプトアビジンフィコエリトリン(SAPE;Molecular Probes、Eugene、OR)で染色しなければならない。染色を増幅するために、第二の標識工程を導入することができ、これはされていないが、強制ではない。抗ストレプトアビジンビオチニル化抗体をSAPE溶液に2回添加する。プローブアレイへのハイブリダイゼーションは、蛍光分析スキャニング(Hewlett Packard遺伝子アレイスキャナー;Hewlett Packard Corporation、パロアルト、CA)により検出できる。
【0242】
ハイブリダイゼーションとスキャニングの後に、ミクロアレイ像は、ハイブリダイゼーションシグナルにおける主要なチップ欠陥または異常を探して、品質管理のために解析することができる。そのためにAffymetrixGeneChip MAS 5.0ソフトウェアまたは他のミクロアレイ画像解析ソフトウェアを利用することができる。基本データ分析は製造業者により提供されたソフトウェアによって実行されるべきである。
遺伝子分析の場合、本発明の1つの具体例において、基本データは別の生物情報手段ツールおよび追加のフィルター基準によって分析された。生物情報分析は以下に詳細に記述される。
【0243】
c)データ解析
Affymetrix測定技術(Affymetrix GeneChip Expression Analysis Manual、サンタクララ、CA)に従って、1つのチップに関する一つの遺伝子発現測定により平均の差値と絶対の判定が得られる。それぞれのチップは、遺伝子またはcDNAクローンにつき16から20のオリゴヌクレオチドプローブ対を含む。これらのプローブ対は完全にマッチするセットおよびミスマッチするセットを含み、その双方が、完ぺきなマッチの強度からミスマッチの強度を引くことにより計算される、各プローブ対の強度さの尺度である、平均的差、または発現値の計算に必要である。これは、蛍光強度に影響を与えることができるプローブ対および他のハイブリダイゼーション人為要素間でのハイブリダイゼーションで変動性を考慮に入れる。平均の差は該遺伝子の発現値を表すと思われる数値である。絶対的コールは値「A」(欠如している)、「M」(ほとんどない)、または「P」(存在する)をとることができて、一つのハイブリダイゼーションの質を示す。本発明者らは平均の差によって与えられた量的な情報と絶対的コールによって与えられた質的な情報の両方を、正常な集団からの生物学的サンプルに対して乳がんにかかった個人からの生物学的サンプルにおいて差次的に発現される遺伝子を識別するために使用した。Affymetrix以外のアルゴリズムを用いて、本発明者らは比較により同じ発現値と発現差を表す異なった数の値を得た。
【0244】
正常な集団と比較した乳がんグループの1つにおける差次的発現Eは次のようにして計算される:乳ガン集団におけるnの平均の差d1、d2、・・・、dnと正常集団におけるmの平均の差c1、c2、・・・、cmが与えられると、次式によりコンピューターで計算される:
【数式1】
もしiとjの1つ以上の値についてdj<50またはci<50であるならば、これらの特定の値ciおよび/またはdjは「人工の」発現値50にセットされる。これらのEの特定の計算によりTaqMan結果に正しい比較ができる。
もしE>1.5であるなら、またもし乳ガン集団における「P」に等しい絶対的コールの数がn/2より大きいなら、遺伝子は乳がん対正常において増大調節されるとよばれる。
【0245】
もしE<1.5であるなら、またもし正常集団における「P」に等しい絶対的コールの数がm/2より大きいなら、遺伝子は乳がん対正常において減少調節されると呼ばれる。
差次的に調節された遺伝子の最終のリストは、正常な集団から得られる生物学的サンプルに対して乳ガンにかかった個人から得られる生物学的サンプルにおけるすべての増加調節された遺伝子および減少調節された遺伝子からなる。製薬用途について興味深いこのリストの遺伝子は、最終的にTaqManによって実証された。もし転写物の発現値/行動の間に良好な相関関係が両方の技術で観察できるなら、このような遺伝子は表1から3に記載する。
【0246】
同定されたARCHEONの中の一人の遺伝子の差別的な発現についての情報だけでなく、いくつかのメンバーの共同調節に関する情報も予測、診断、予防および治療目的のために重要であるので、本発明者らは所定の腫瘍サンプルの全体的なトランスクリプトムの像を明らかにするために発現データを公開の利用可能なデータベースから得た染色体の位置(例えばゴールデンパス)についての情報と組み合わせた。この技術により、ゲノムの既知の領域または予想される領域を調査できるだけでなく、さらに価値のある、染色体結合の新規を同定できる。これは他のタイプの腫瘍またはウイルスの組み入れおよび染色体の再配列で価値がある。SQLベースのデータベース検索によって、発現、測定の質的な値(Affymetrixマス5.0ソフトウェアによって示される)、DNAチップハイブリダイゼーション以外の他の技術から得られる発現値および染色体結合に関する情報を得ることができる。
【0247】
実施例2
ARCHEONの同定
a)遺伝子または遺伝子プローブ(AffymetrixアレイHG−U95A−EまたはHG−U133A−Bに関するいわゆるプローブセットにより表される)のその染色体状態およびヒトゲノムについての状態における同定および局在化
より大きな染色体の改変または異常の同定のために、上記の詳細な記述のように、十分な数の遺伝子、転写物またはDNA断片が必要とされる。染色体の領域を含むプローブの密度はアレイベースのCGHを使用する場合には、必ずしも転写された遺伝子に限定されず、RNAをプローブ材料として利用することによって、密度は染色体上に遺伝子の距離によって与えられる。Affymetrix Inc.により提供されるDNAミクロアレイは従来の公知ヒトゲノムから得られるすべての転写物含み、これは40.000〜60.000のプローブセットにより表される。カリフォルニアの大学(Santa Cruz)またはNCBIから入手可能ないわゆる「ゴールデンパス」により表されるヒトゲノムの公共の利用可能な配列に対するこれらの短DNAオリゴマーの配列のBLASTマッピングおよびソーティングにより、組織標本の全トランスクリプトムの染色体表示が得られる。個別の染色体領域のグラフィックディスプレイおよび表される転写物の上または下のカラーコーディングにより、参考トランスクリプトム領域をDNAに関して比較して、増加および喪失を確定できる。
【0248】
b)組み合わされたIHCおよび定量的PCR(PCR核型分析)によるかまたは直接定量的PCRによる遺伝子コピー数の定量化
通常5μmの厚さの1から3のパラフィンに埋め込まれた組織を用いて、サンプルからゲノムDNAを得る。組織断片を、病気関連する細胞を含む領域を識別するために脱パラフィンの後に比色IHCによって染色する。染色された領域を小刀で切開し、ミクロ遠心分離管中に移す。これらの単離された組織断片のゲノムDNAを、適当な緩衝液を用いて抽出する。単離されたDNAを次いで適当なプライマーおよびプローブを用いて定量的PCRのために用いる。所望により、IHC染色は省略することができ、ゲノムDNAは適切な緩衝液を用いた事前の脱パラフィンの有無にかかわらず直接分離することができる。当業者らは同等の結果を得るために以下に記載された条件および緩衝液を変えてもよい。
【0249】
DAKOから得られる試薬(HercepTestコード番号K5204)およびTaKaRaをは製造プロトコルに従って(BiomedicalsCat.:9091)使用した。
染色前に、次の試薬を準備するのが都合良い:
溶液No.7
エピトープ回収溶液(クエン酸緩衝液+抗菌剤)(10xconc)
200ミリリットルの蒸留水に対して20ml(2−8℃で1ヶ月安定)
溶液No.8
洗浄緩衝液(Tris−HCl+抗菌剤)(10xconc)
300ミリリットルの蒸留水に対して30ml(2−8℃で1ヶ月安定)
染色溶液:DAB
10のスライドについて1mlの溶液で十分である。溶液は使用直前に調製した。
1mlのDAB緩衝液(基質緩衝液、pH7.5、H2O2、安定剤、エンハンサーおよび抗菌剤を含む)+1滴(25−3μl)DAB−クロモゲン((3,3’−ジアミノベンジジンクロモゲン溶液)。この溶体は2−8℃で最高5日の間安定である。沈殿させられた物質は染色結果に影響を与えない。さらに次のものが必要である:2x約100mlのキシロール、2x約100mlのエタノール100%、2xエタノール95%、蒸留水。これらの溶液は、40回までの染色に用いることができる。エピトープ回収工程のために水浴が必要である。
【0250】
染色法:
すべての試薬は免疫染色の前に室温(20−25℃)に前もって暖められる。同様に、すべてのインキュベーションは室温において行なわれた。95℃の水浴中で行なわれるエピトープ回収は除く。ステップ間で過剰の液体を無リント組織(Kim Wipe)でスライドから取り出す。
脱パラフィン
スライドをキシレン浴中に入れ、5分間インキュベートする。浴を換え、工程を1回繰り返す。過剰の液体を取り出し、スライドを無水メタノール中に3分間入れる。浴を換え、は変えられる、ステップは1度繰り返した。液体の過剰が離れて利用し始められる、スライドは3分間95%のエタノールに工程を1回繰り返す。過剰の液体を取り出し、スライドを95%エタノール中に3分間入れる。浴を換え、工程を1回繰り返す。過剰の液体を取り出し、スライドを蒸留水中に30秒間入れる。
【0251】
エピトープ回収
染色ジャーを希釈されたエピトープ回収溶液で満たし、水浴中、95℃で予熱する。脱パラフィンされた断片を予熱された液体中に浸し、95℃で40分間インキュベートする。全部のジャーを水浴から取り出し、室温で20分間冷却させた。エピトープ回収溶液をデカントし、断片を蒸留水ですすぎ、最終的に5分間洗浄緩衝液中浸漬する。
ペルオキシダーゼブロッキング:
過剰のバッファを除去し、組織断片をDAKOpenで取り囲んだ。標本を3滴(100μl)のペルオキシダーゼ−ブロッキング溶液でカバーし、5分間インキュベートする。スライドを蒸留水ですすぎ、新しい洗浄緩衝液浴中に入れる。
【0252】
抗体インキュベーション
過剰の液体を除去し、標本を3滴(100μl)の抗Her−2/neu試薬(0.05モル/LのTris/HCl、0.1モル/LのNaCl、安定化タンパク質を含む15mmol/L pH7.2のNaN3中ウサギ抗ヒトHerタンパク質)または負の対照試薬(=Her2 Abとして等しいタンパク質濃度の標準的なウサギ血清のIGGフラクション)でカバーする。30分のインキュベーションの後、スライドを水中ですすぎ、新しい水浴中に入れる。
視覚化
過剰の液体を除去し、標本を過剰が離れて利用し始められる、見本は3滴(100μl)の可視化試薬でカバーする。30分のインキュベーションの後、スライドを水中ですすぎ、新しい水浴中に入れる。過剰の液体を除去し、標本を3滴(100μl)の基質−クロモゲン溶液(DAB)で10分間カバーする。標本を蒸留水ですすいだ後、通常のオリンパス電子顕微鏡で写真を撮影し、標本内の染色強度および腫瘍領域を示す。所望により、ヘマトキシリンを用いて対比染色が行なわれた。
【0253】
DNA抽出
全標本または切開された小区画をミクロ遠心分離管に移す。所望により、少量(10μl)の予熱されたTaKaRa溶液(DEXPATTM)を予熱し、標本上において、小刀を用いたサンプルの変形を容易にする。選択された組織サンプルの大きさによって、50から150μlのTaKaRa溶液を添加した。サンプルを100℃で10分間ブロックヒーター中でインキュベートし、続いて12.000rpmでミクロ遠心分離器中で遠心分離する。ミクロペットを用いて上清を集め、別のミクロ遠心分離管に入れる。もし脱パラフィン工程が行われなければ、組織デブリスおよび樹脂が回収されないことを確実にしなければならない。無樹脂TaKaRa緩衝液を添加し、さらに加熱し、遠心分離工程によりペレット中に残るゲノムDNAを回収することができる。サンプルを−20℃で貯蔵する。
【0254】
定量的なPCR
患者サンプル中の遺伝子の遺伝子コピー数を測定するために、それぞれのプライマー/プローブ(以下の表参照)を、25μlの100μMストック溶液「アッパープライマー」、25μlの100μMストック溶液「ローアープライマー」を12.5μlの100μMストック溶液Taq Manプローブ(QuencherTamra)と混合し、蒸留水で500μlに調整する。各反応について、1.25μlの患者サンプルのDNA抽出物または1.25μlの細胞系から得られるDNAを8.75μlの無核酸水と混合し、96ウェルOptical Reaction Plate(Applied Biosystems Part No.4306737)の1つのウェルに添加した。1.5μlのプライマー/プローブミックス、12μlTaq Man Universal−PCRミックス(2x)(Applied Biosystems Part No.4318157)および1μlの水を次に添加した。96ウェルプレートを8キャップ/ストリップ(Applied Biosystems Part No.4323032)で閉じ、3分間遠心分離機にかける。PCR反応の測定を、適切な条件下(2分、50℃、10分。95℃、0.15分。95℃、1分。60℃;40サイクル)で製造業者の指示に従ってApplied Biosystemsから得られるTaqMan7900HT(No.20114)を用いて行う。Applied BiosysrtemsからのSoftwareSDS2.0をそれぞれの支持に従って用いる。CT−値を、適切なソフトウェア(Mirosoft Excel)でさらに分析する。
【0255】
引例
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(183)Hille,ExcitableMembranes,Sunderland,MA,SinauerAssociates,Inc.
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1】G−バンディングパターンおよび細胞遺伝学的位置を有する染色体17のスケッチを示す。
【図2】図1においてすでに示したのと同じ領域およびDNA−チップハイブリダイゼーションにより測定された個々の発現値のクラスター図を示す。
【図3】qPCR(たとえば、TaqMan)によるDNA増幅測定から得られるデータを示す。
【図4】増幅された領域についての概略図を示し、各増幅の長さおよび分析された腫瘍細胞系における過剰発現についての情報を提供する。
Claims (27)
- 少なくとも2個のマーカーの検出による悪性腫瘍の予想、診断または予後判定の方法であって、該マーカーが悪性腫瘍において改変された1つの染色体領域上に位置する遺伝子およびその断片またはゲノム核酸配列であることを特徴とする方法。
- 少なくとも2個のマーカーの検出による悪性腫瘍の予想、診断または予後判定の方法であって、該マーカーが:
a)悪性腫瘍において改変されている1またはそれ以上の染色体領域上に位置する遺伝子;および
b)i)レセプターおよびリガンド;または
ii)同じシグナル伝達経路のメンバー;または
iii)相乗シグナル伝達経路のメンバー;または
iv)拮抗シグナル伝達経路のメンバー;または
v)転写因子および転写因子結合部位である、ことを特徴とする方法。 - 良性腫瘍が、乳ガン、卵巣ガン、胃ガン、結腸ガン、食道ガン、間葉ガン、膀胱ガンまたは非小細胞肺ガンである請求項1または2記載の方法。
- 少なくとも1つの染色体領域が、細胞遺伝領域lp13、lp32、3p21p24、5p13−p14、8q23−q24、11q13、12q13、17q12−q24または20q13と定義される請求項1または2記載の方法。
- 少なくとも1つの染色体領域が、細胞遺伝領域17q11.2−21.3として定義され、悪性腫瘍が乳ガン、卵巣ガン、胃ガン、結腸ガン、食道ガン、間葉ガン、膀胱ガンまたは非小細胞肺ガンである請求項1または2記載の方法。
- 少なくとも1つの染色体領域が、細胞遺伝領域3p21−24として定義され、悪性腫瘍が、乳ガン、卵巣ガン、胃ガン、結腸ガン、食道ガン、間葉ガン、膀胱ガンまたは非小細胞肺ガンである請求項1または2記載の方法。
- 少なくとも1つの染色体領域が、細胞遺伝領域12q13として定義され、悪性腫瘍が、乳ガン、卵巣が、胃ガン、結腸ガン、食道ガン、間葉ガン、膀胱ガンまたは非小細胞肺ガンである請求項1または2記載の方法。
- VNTR、SNP、RFLPまたはSTSである少なくとも1個のマーカーの検出による悪性腫瘍の予想、診断または予後判定の方法であって、該マーカーが増幅のために悪性腫瘍において改変された1つの染色体領域上に位置し、該マーカーが同じ個体の癌性および非癌性組織または生物学的サンプルにおいて検出されることを特徴とする方法。
- マーカーが、D17S946、D17S946、D17S1181、D17S2026、D17S838、D17S250、D17S1818、D17S614、D17S2019、D17S608、D17S1655、D17S2147、D17S754、D17S1814、D17S2007、D17S1246、D17S1979、D17S1984、D17S1984、D17S1867、D17S1788、D17S1836、D17S1787、D17S1660、D17S2154、D17S1955、D17S2098、D17S518、D17S1851、D11S4358、D17S964、D19S1091、D17S1179、D10S2160、D17S1230、D17S1338、D17S2011、D17S1237、D17S2038、D17S2091、D17S649、D17S1190およびM87506のVNTRからなる群から選択される請求項8記載の方法。
- マーカーが、rs2230698、rs2230700、rs1058808、rs1801200、rs903506、rs2313170、rs1136201、rs2934968、rs2172826、rs1810132、rs1801201、rs2230702、rs2230701、rs1126503、rs3471、rs13695、rs471692、rs558068、rs1064288、rs1061692、rs520630、rs782774、rs565121、rs2586112、rs532299、rs2732786、rs1804539、rs1804538、rs1804537、rs1141364、rs12231、rs1132259、rs1132257、rs1132256、rs1132255、rs1132254、rs1132252、rs1132268およびrs1132258のSNPからなる群から選択される請求項8記載の方法。
- マーカーが:
a)配列番号2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
b)(a)において特定されたポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下ハイブリッド形成し、表2または3における各配列について特定された同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
c)表2または3における各配列について特定されたものと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(c)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱したポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
d)(a)から(d)において特定されたポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
e)(a)から(e)において特定されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体配列によりコードされる精製されたポリペプチド;
f)配列番号:28から32、34、35、37から42、44、45、47から52または76から98の配列の少なくとも一つを含む精製されたポリペプチド、
から選択され、それらを検出することを特徴とする、少なくとも一つのマーカーの検出による悪性腫瘍の予想、診断または予後判定の方法。 - 少なくとも2つのマーカーが:
a)配列番号:1から26または53から75の配列の少なくとも一つを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
b)(a)において特定されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成し、表2または3における各配列について特定されたものと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
c)表2または3における各配列について特定されたものと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重により(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
d)(a)から(c)において特定されたポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
e)(a)から(d)において特定されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体によりコードされる精製されたポリペプチド;
f)配列番号:27から52または76なし98の少なくとも一つを含む精製されたポリペプチド、から選択され、それらを検出することを特徴とする、少なくとも2つのマーカーの検出による悪性腫瘍の予想、診断または予後判定の方法。 - 検出法が、PCR、アレイまたはビーズの使用を含む、請求項1または12記載の方法。
- 請求項1から13のいずれか一つに記載の方法を行うための使用説明書を含む診断キット。
- a)i)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含む任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
ii)表2または3における各配列について特定されたのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されたポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
iii)表2または3における各配列について特定されたものと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重により(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
iv)(a)から(c)において特定されたポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
v)(a)から(d)において特定されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体配列によりコードされるポリペプチド;
vi)配列番号:28から32、34、35、37から42、44、45、47から52または76なしい98の配列の少なくとも一つを含むポリペプチド、に対する検出試薬、または
b)i)配列番号:1から26または53なしい75の配列の少なくとも一つを含む任意のポリヌクレオチド;
ii)表2または3における各配列について特定されたものと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されたポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する任意のポリヌクレオチド;
iii)表2または3における各配列について特定されたものと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重により(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱したポリヌクレオチド;
iv)(a)から(c)において特定されたポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチド;
v)(a)から(d)において特定されたポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド;
vi)配列番号:27から52または76から98の配列の少なくとも一つを含むポリペプチド、から選択される少なくとも2つのマーカーに対する少なくとも2つの検出試薬、を含む、悪性腫瘍の予想、診断または予後判定のための組成物。 - 複数のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体を含むアレイであって、該ポリヌクレオチドは、
a)配列番号:1から26または53から75の配列の少なくとも一つを含む任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
b)表2または3における各配列について特定されたのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されたポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
c)表2または3における各配列について特定されたものと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重により(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
d)(a)から(c)において特定されたポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
から選択され、それぞれが固体支持体に結合しているアレイ。 - a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
b)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
c)表2または3の各配列について特定されたのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
d)(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体
からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体によりコードされるポリペプチドの活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって:
i)試験化合物を(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチドによりコードされる少なくとも一つのポリペプチドと接触させる工程;および
ii)試験化合物とポリペプチドとの結合を検出する工程(ここにおいて、該ポリペプチドと結合する該試験化合物は、悪性腫瘍の治療を防止するためのポリペプチドの活性を調節するための可能性のある治療薬として同定される)
を含む方法。 - a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
b)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
c)表2または3の各配列について特定されたのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
d)(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体
からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体によりコードされるポリペプチドの活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって:
i)試験化合物を(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチドによりコードされる少なくとも一つのポリペプチドと接触させる工程;および
ii)表2または3の各配列について特定されるポリペプチドの活性を検出する工程(ここにおいて、活性を減少させる試験化合物は、悪性腫瘍におけるポリペプチド活性を増大させる潜在的な予防または治療薬として同定され、ポリペプチドの活性を減少させる試験化合物は、悪性腫瘍におけるポリペプチド活性を減少させるための潜在的な治療薬として同定される)
を含む方法。 - a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
b)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
c)表2または3の各配列について特定されたのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
d)(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体
からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体の活性を調節する物質をスクリーニングする方法であって:
i)試験化合物を(a)から(d)において特定される少なくとも一つのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体と接触させる工程;および
ii)試験化合物とポリヌクレオチドとの結合を検出する工程(ここにおいて、該ポリヌクレオチドと結合する試験化合物は、悪性腫瘍におけるポリヌクレオチドの活性を調節するための潜在的な予防または治療薬として同定される)
を含む方法。 - a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
b)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体とストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチド;
c)表2または3の各配列について特定されたのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
d)(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
e)(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチド配列の一つを特異的に標的とするアンチセンス分子;
f)(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体によりコードされる精製されたポリペプチド;
g)配列番号:28から32、34、35、37から42、44、45、47から52または76から98の配列の少なくとも一つを含む精製されたポリペプチド;
h)(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチドまたは(f)および(g)において特定されるポリペプチドの一つと結合できる抗体;
i)(a)から(d)において特定されるポリヌクレオチドまたは(f)および(g)において特定されるポリペプチドの量または活性を調節する請求項17から19のいずれか記載の法法により同定される試薬;
における悪性腫瘍の予防、予測、診断、予後判定のための組成物または悪性腫瘍の治療用医薬の調製における使用。 - 該疾患が乳ガンである請求項20記載の使用。
- a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含む任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体によりコードされるポリペプチド;
b)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含む任意のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体によりコードされるポリペプチド;
c)表2または3の各配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱している任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体によりコードされるポリペプチド;
d)表2または3における各配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表す任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体によりコードされるポリペプチド;
e)または配列番号:28から32、34、35、37から42、44、45、47から52または76から98の配列の少なくとも一つを含むポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドの活性を調節する試薬であって、請求項17から19のいずれか記載の方法により同定される試薬。 - a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含む任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
b)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
c)表2または3の各配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱している任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
d)表2または3における各配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表す任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
からなる群から選択されるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性を調節する試薬であって、請求項17から19のいずれか記載の方法により同定される試薬。 - a)i)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75の配列の少なくとも一つを含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
ii)表2または3におけるそれぞれの配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)において特定されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
iii)表2または3の各配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)において特定されたポリヌクレオチドからその配列が逸脱しているポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
iv)表2または3における各配列について特定されるのと同じ生物学的機能を示すポリペプチドをコードする(a)から(c)において特定されるポリヌクレオチド配列の特定の断片、誘導体または対立遺伝子変異を表すポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体;
からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド類似体の少なくとも一つを含む発現ベクター、または請求項22または23記載の試薬、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。 - 悪性腫瘍の危険があるかまたは悪性腫瘍を有する患者から得られる細胞における、
a)配列番号:2から6、8、9、11から16、18、19、21から26または53から75のポリヌクレオチド配列の少なくとも一つの発現レベルを表す少なくとも一つのデジタルコード化された値、
b)配列番号:1から26または53から75から選択される少なくとも2つのポリヌクレオチドの発現のレベルを表す少なくとも2つのデジタルコード化された値、を含むコンピューター読みとり可能な媒体。 - 改変された染色体領域に位置する遺伝子によりコードされる個々のmRNAの相対的な量を検出することを特徴とする、染色体の改変を検出する方法。
- 1またはそれ以上の染色体領域のコピー数を定量的PCRにより検出することを特徴とする、染色体改変を検出する方法。
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