JP2004156674A - 中空回転軸用ダイナミックダンパ - Google Patents

中空回転軸用ダイナミックダンパ Download PDF

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Noriaki Yoshii
教明 吉井
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Abstract

【課題】生産性の向上と低コスト化を図ることができる中空回転軸用ダイナミックダンパを提供する。
【解決手段】ダイナミックダンパは、円柱状に形成されてその外周面に周方向に延びる環状の2本の保持溝2a、2aを有する質量部材2と、ゴム材料を単独で加硫成形することによりリング状に形成されて質量部材2の保持溝2a、2a内にそれぞれ圧入により固定保持されたゴム弾性体3、3とからなる。このダイナミックダンパは、プロペラシャフト1の中空部内に圧入されて取付けられることにより、ゴム弾性体3、3がプロペラシャフト1と質量部材2とに圧接する状態に配置される。ゴム弾性体3、3は、単独で加硫成形されていることから、インサート成形する場合に比べて加硫成形時間を大幅に短縮することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両の中空部を有するドライブシャフトやプロペラシャフト等の中空回転軸に取付けられて、その中空回転軸に発生する有害振動を抑制する中空回転軸用ダイナミックダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両においては、例えばエンジンの駆動力をデファレンシャルに伝達するトルク伝達部材として中空部を有する円筒状のプロペラシャフトが使用されている。このプロペラシャフトは、高速で回転し、変動を伴う高トルクを伝達するものであることから、曲げ振動や捩じり振動等の本来発生しない方が望ましい有害振動が発生し易い。そこで、例えば特許文献1や特許文献2等に開示されているように、プロペラシャフトの中空部内にダイナミックダンパを設けて有害振動の発生を抑制するようにしたものが知られている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2に開示されたダイナミックダンパは、円柱状の質量部材と、質量部材の外側に同軸状に配置された外筒部材と、外筒部材と質量部材との間に介在して両者を一体的に連結するゴム弾性体と、外筒部材の外周面に設けられたゴム層(弾性体層)とから構成されている。これらのダイナミックダンパは、プロペラシャフト内に圧入されることにより取付けられ、ゴム層(弾性体層)の外周面がプロペラシャフトの内周面に圧接する状態で所定位置に固定される。
【0004】
このダイナミックダンパが取付けられたプロペラシャフトは、それが回転することによって有害振動が発生すると、質量部材が固有振動数(共振周波数)で共振することにより、その共振周波数付近の有害振動が効果的に抑制される。なお、ダイナミックダンパの固有振動数は、質量部材の質量とゴム弾性体のばね定数とによって基本的に決まる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−260681号公報
【特許文献2】
特許第3195949号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のダイナミックダンパは、通常、金型にインサートされた質量部材や外筒部材とともにゴム材料を加硫成形してゴム弾性体及びゴム層を形成することにより、ゴム弾性体及びゴム層が質量部材や外筒部材に加硫接着された状態で一体的に形成されている。この場合、ゴム弾性体及びゴム層を形成するのと同時に、それらと質量部材や外筒部材とを加硫接着して一体化することができるので、製造工数の上で有利となる。
【0007】
しかし、このようにゴム弾性体及びゴム層を加硫成形して形成する場合には、金型を加熱して所定温度(ゴム材料の加硫適正温度)に暖め、更に金型にインサートされた金属製の質量部材や外筒部材を所定温度に暖めた後、ゴム材料を射出して加硫成形しなければならない。そのため、1個の製品を作製するのに非常に長い時間が必要となることから、生産性が低く、コスト高を招いていた。
【0008】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、生産性の向上と低コスト化を図ることができる中空回転軸用ダイナミックダンパを提供することを解決すべき課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段、発明の作用及び効果】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明に係る中空回転軸用ダイナミックダンパは、中空部を有する円筒状の回転軸の前記中空部内に挿入されて前記回転軸と距離を隔てた状態に配置される質量部材と、ゴム材料を加硫成形することによりリング状に形成されて前記質量部材の外周に圧入固定され、前記質量部材とともに前記回転軸の前記中空部内に圧入されて前記回転軸と前記質量部材とに圧接する状態に配置されるゴム弾性体と、から構成されているという手段を採用している。
【0010】
本発明の中空回転軸用ダイナミックダンパにおいては、質量部材の外周に圧入固定されているゴム弾性体が、ゴム材料を加硫成形することにより質量部材と別体で単独に形成されている。このゴム弾性体が加硫成形により形成される際には、形成されるゴム弾性体と一体化するために金型にインサートされる物が無いので、金型を加熱して所定温度(ゴム材料の加硫適正温度)に暖めた後、更にインサート物を暖める必要がなくなる。そのため、金型のみを所定温度に暖めればよいため、加硫成形に必要な時間が大幅に短縮され、1個の製品を作製するのに必要な時間が大幅に短縮される。また、金型の温度管理も容易になるため、加硫成形時における不良品の発生も低減する。よって、生産性が向上し、コストの低減化が可能となる。
【0011】
したがって、本発明の中空回転軸用ダイナミックダンパによれば、ゴム弾性体を形成する際の加硫成形時間を大幅に短縮することができるため、生産性の向上と低コスト化を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る中空回転軸用ダイナミックダンパは、請求項1に記載の発明における質量部材の外周面に、前記ゴム弾性体が保持される環状の保持溝が設けられているという手段を採用している。
【0013】
この手段によれば、質量部材の外周に圧入により取付けられたゴム弾性体が保持溝に係合した状態で保持されるため、ゴム弾性体が質量部材から容易に離脱しないようにすることができる。よって、ダイナミックダンパを回転軸の中空部内に圧入して取付ける際にも、圧入作業を容易に行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る中空回転軸用ダイナミックダンパは、請求項2に記載の発明における保持溝の底面が、前記回転軸に対する前記質量部材及び前記ゴム弾性体の圧入方向先端側から後端側に向かって次第に大径となるテーパ状に形成されているという手段を採用している。
【0015】
この手段によれば、ダイナミックダンパを回転軸の中空部内に圧入して取付ける際に、ゴム弾性体に掛かる圧入反力を保持溝のテーパ状の底面で受けるようにすることができるため、ゴム弾性体の保持溝からの離脱を効果的に防止することができる。また、保持溝は、ダイナミックダンパの圧入方向先端側の側面とテーパ状の底面とによって形成される角部が鋭角になることから、ダイナミックダンパの圧入時にその角部からゴム弾性体が浮き上がり難くなるため、ゴム弾性体の保持溝からの離脱を相乗的に防止することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明に係る中空回転軸用ダイナミックダンパは、請求項2又は3に記載の発明における保持溝の側面が、開口側から底面側に向かって該底面の幅が次第に拡がる方向に傾斜するアンダカット形状に形成されているという手段を採用している。
【0017】
この手段によれば、保持溝に取付けられるゴム弾性体が保持溝のアンダカット部に入り込んだ状態に取付けられる。これにより、ダイナミックダンパを回転軸の中空部内に圧入する際に、保持溝のアンダカット部によってゴム弾性体の浮き上がりが規制されるため、ゴム弾性体の保持溝からの離脱をより確実に防止することができる。よって、回転軸の中空部内へのダイナミックダンパの圧入作業を容易に行うことができる。なお、この保持溝のアンダカット形状は、少なくとも一方の側面に設けることができるが、ダイナミックダンパの圧入方向先端側となる側面に設ける方が好ましい。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る中空回転軸用ダイナミックダンパは、請求項1〜4に記載の発明におけるゴム弾性体が、前記質量部材の一方の軸端面に係合する係合部を有するという手段を採用している。
【0019】
この手段によれば、ダイナミックダンパを回転軸の中空部内に圧入して取付ける際に、係合部を圧入方向先端側に配置することにより、ゴム弾性体の質量部材からの離脱や位置ずれを確実に防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明に係る中空回転軸用ダイナミックダンパは、請求項1〜5に記載の発明におけるゴム弾性体の外周面に、周方向に延びる環状凹部が設けられているという手段を採用している。
【0021】
この手段によれば、ダイナミックダンパを回転軸の中空部内に圧入して取付ける際に、ゴム弾性体外周部の弾性変形する部分の逃げスペースが環状凹部によって確保されることから、ゴム弾性体外周部の弾性変形が容易になる。そのため、小さな圧入力で円滑に圧入することが可能となり、圧入作業をより一層容易に行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
〔実施形態1〕
図1は本発明の実施形態1に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【0024】
本実施形態の中空回転軸用ダイナミックダンパは、図1に示すように、中空回転軸としてのプロペラシャフト1の中空部内に圧入されて取付けられるものであって、プロペラシャフト1の中空部内に挿入配置される質量部材2と、単独でリング状に形成されて質量部材2の外周に圧入固定され、質量部材2とともにプロペラシャフト1の中空部内に圧入配置される2個のゴム弾性体3、3と、から構成されている。
【0025】
プロペラシャフト1は、円筒状に形成された筒状本体部1aと、筒状本体部1aの両端にそれぞれ固着された連結部(図示せず)とからなり、筒状本体部1aの内部には密閉された中空部が形成されている。
【0026】
質量部材2は、鉄系金属により円柱状に形成されており、ゴム弾性体3のばね定数との関係により設定された所定の質量を有する。この質量部材2は、プロペラシャフト1の筒状本体部1aの内径よりも所定寸法小さい外径を有し、プロペラシャフト1の中空部内に挿入されて、筒状本体部1aの内周面と距離を隔てた状態に配置されている。この質量部材2の外周面には、周方向に延びて環状に形成された2本の保持溝2a、2aが設けられている。この保持溝2a、2aは、質量部材2の外周に取付けられるゴム弾性体3、3を係合保持するためのものであり、その幅及び深さが略一定となるように形成されている。
【0027】
ゴム弾性体3、3は、ゴム材料を単独で加硫成形することによりリング状に形成されている。このゴム弾性体3、3は、質量部材2の保持溝2a、2aが設けられた部分の外径と同じかそれよりも少し小さい内径を有し、筒状本体部1aの内径よりも少し大きい外径を有する。ゴム弾性体3、3の幅は、保持溝2a、2aの幅と略同じである。なお、このゴム弾性体3、3は、単独で加硫成形されていることから、従来のようにインサート成形する場合に比べて加硫成形時間が大幅に短縮されている。
【0028】
このゴム弾性体3、3は、保持溝2a、2a内にそれぞれ嵌着されることにより保持溝2a、2aに固定保持されている。この場合、接着剤等は使用されずに非接着とされている。このゴム弾性体3、3の径方向におけるばね定数は、プロペラシャフト1の抑制すべき振動の周波数に合わせて、質量部材2の質量との関係により所定の値に設定されている。
【0029】
以上のように構成されたダイナミックダンパは、プロペラシャフト1の中空部内に圧入治具等で圧入されることにより、図1に示すように、プロペラシャフト1の振動を抑制すべき所定部位に取付けられる。ダイナミックダンパが圧入されるときには、ゴム弾性体3、3は、保持溝2a、2a内に入り込んだ内周側部分が保持溝2a、2aと係合しているため、保持溝2a、2aからの離脱や軸方向への位置ずれが確実に防止される。これにより、ダイナミックダンパは、ゴム弾性体3、3がプロペラシャフト1の筒状本体部1aの内周面と質量部材2の外周面とに圧接する状態となって、筒状本体部1aの内周面に固定保持される。なお、ダイナミックダンパをプロペラシャフト1の中空部内に圧入する際に、例えば石鹸水やオイル等の潤滑液をゴム弾性体3、3の外周面に塗布しておくことによって、圧入作業を円滑に行えるようにすることができる。
【0030】
以上のように構成されたプロペラシャフト1が車両に取付けられて使用される際に、プロペラシャフト1の回転に伴って曲げ振動や捩じり振動等の有害振動が発生すると、質量部材2が固有振動数(共振周波数)で共振することにより、その共振周波数付近の有害振動が効果的に抑制される。
【0031】
以上のように、本実施形態の中空回転軸用ダイナミックダンパは、質量部材の外周に圧入固定されるゴム弾性体3、3が加硫成形により単独で形成されているため、従来のようにインサート成形する場合に比べて加硫成形時間を大幅に短縮することができる。また、金型の温度管理も容易になるため、加硫成形時における不良品の発生を低減することができる。これにより、生産性の向上と低コスト化を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態の中空回転軸用ダイナミックダンパにおいては、質量部材2の外周面に、ゴム弾性体3、3を保持する保持溝2a、2aが設けられていることから、質量部材2の外周に圧入により取付けられたゴム弾性体3、3が保持溝2a、2aに係合した状態で固定保持されるため、ゴム弾性体3、3が質量部材2から容易に離脱しないようにすることができる。そのため、プロペラシャフト1の中空部内へのダイナミックダンパの圧入作業を容易に行うことができる。
【0033】
なお、プロペラシャフト1の中空部内へのダイナミックダンパの圧入作業をより一層容易に行うことができるようにするため、図2に示すように、ゴム弾性体3の外周面に、周方向に延びる環状凹部3aを設けることができる。このようにすれば、ゴム弾性体3外周部の弾性変形する部分の逃げスペースが環状凹部3aによって確保されることから、ゴム弾性体3外周部の弾性変形が容易になるため、小さな圧入力で円滑に圧入することが可能となる。
【0034】
〔変形例1〕
図3は変形例1に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【0035】
本変形例のダイナミックダンパは、図3に示すように、質量部材12の外周面に設けられた2本の保持溝12a、12aの底面が、プロペラシャフト1に対する質量部材12及びゴム弾性体13、13の圧入方向先端側(図3の左側)から後端側(図3の右側)に向かって次第に大径となるテーパ状に形成されているものである。即ち、この保持溝12a、12aは、質量部材12の圧入方向先端側から後端側に向かって深さが次第に浅くなるように形成されている。よって、この保持溝12a、12aの圧入方向先端側の側面とテーパ状の底面とによって形成される角部は鋭角になっている。保持溝12a、12aの幅は略一定である。
【0036】
なお、この保持溝12a、12aに非接着で固定保持されているゴム弾性体13、13の内周面は、保持溝12a、12aのテーパ状の底面と符合するように形成されている。
【0037】
以上のように構成された本変形例のダイナミックダンパによれば、ダイナミックダンパをプロペラシャフト1の中空部内に圧入して取付ける際に、ゴム弾性体13、13に掛かる圧入反力を保持溝12a、12aのテーパ状の底面で受けるようにすることができるため、ゴム弾性体13、13の保持溝12a、12aからの離脱を効果的に防止することができる。
【0038】
また、保持溝12a、12aは、ダイナミックダンパの圧入方向先端側の角部が鋭角になっていることから、ダイナミックダンパの圧入時にその角部からゴム弾性体13、13が浮き上がり難くなるため、ゴム弾性体13、13の保持溝12a、12aからの離脱を相乗的に防止することができる。
【0039】
〔変形例2〕
図4は変形例2に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【0040】
本変形例のダイナミックダンパは、図4に示すように、質量部材22の外周面に設けられた2本の保持溝22a、22aの一方の側面が、開口側から底面側に向かって底面の幅が次第に拡がる方向に傾斜するアンダカット形状に形成されているものである。即ち、本実施形態においては、保持溝22a、22aのアンダカット形状は、ダイナミックダンパを回転軸の中空部内に圧入する際の、ダイナミックダンパの圧入方向先端側となる側面に設けられている。
【0041】
また、この保持溝22a、22aに非接着で固定保持されているゴム弾性体23、23一方の側面は、保持溝22a、22aのアンダカット形状の側面と符合するように形成されている。これにより、ゴム弾性体23、23は、保持溝22a、22aのアンダカット部に入り込んだ状態に取付けられている。
【0042】
以上のように構成された本変形例のダイナミックダンパによれば、ダイナミックダンパをプロペラシャフト1の中空部内に圧入する際に、保持溝22a、22aのアンダカット部によってゴム弾性体23、23の浮き上がりが規制されるため、ゴム弾性体23、23の保持溝22a、22aからの離脱をより確実に防止することができる。よって、プロペラシャフト1の中空部内へのダイナミックダンパの圧入作業を容易に行うことができる。
【0043】
〔変形例3〕
図5は変形例3に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【0044】
本変形例のダイナミックダンパは、図5に示すように、変形例1と変形例2の構造を合体させたものである。即ち、質量部材32の外周面に設けられた2本の保持溝32a、32aの底面は、プロペラシャフト1に対するダイナミックダンパの圧入方向先端側(図5の左側)から後端側(図5の右側)に向かって次第に大径となるテーパ状に形成されている。よって、この保持溝32a、32aは、ダイナミックダンパの圧入方向先端側から後端側に向かって深さが次第に浅くなるように形成されている。
【0045】
そして、この保持溝32a、32aのダイナミックダンパの圧入方向先端側の側面は、開口側から底面側に向かって底面の幅が次第に拡がる方向に傾斜するアンダカット形状に形成されている。したがって、本変形例の場合には、保持溝32a、32aの圧入方向先端側の側面とテーパ状の底面とによって形成される角部は、変形例1の場合よりも小さい鋭角になっている。
【0046】
以上のように構成された本変形例のダイナミックダンパによれば、変形例1及び変形例2の場合よりも更に効果的に、ゴム弾性体43、43の保持溝42a、42aからの離脱を防止することができるので、プロペラシャフト1の中空部内へのダイナミックダンパの圧入作業もより一層容易に行うことができる。
【0047】
〔実施形態2〕
図6は実施形態2に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【0048】
本実施形態の中空回転軸用ダイナミックダンパは、図6に示すように、プロペラシャフト1の中空部内に挿入配置される円柱状の質量部材42と、単独でリング状に形成されて質量部材42の外周に圧入固定され、質量部材42とともにプロペラシャフト41の中空部内に圧入配置されるゴム弾性体43と、から構成されている。なお、プロペラシャフト1は、実施形態1のものと同じである。
【0049】
質量部材42は、外径が略一定の円柱状に形成されたものであって、外周面に保持溝が形成されていない点で実施形態1の質量部材2と異なる。
【0050】
ゴム弾性体43は、ゴム材料を単独で加硫成形することによりリング状に形成されており、円筒部43aと、円筒部43aの一端から径方向内方に延出するリング状の係合部43bとからなる。円筒部43aは、質量部材42の外径と同じかそれよりも少し小さい内径を有し、プロペラシャフト1の筒状本体部1aの内径よりも少し大きい外径を有する。この円筒部43aは、質量部材42よりも少し短い長さに形成されている。なお、このゴム弾性体43は、単独で加硫成形されていることから、実施形態1の場合と同様に加硫成形時間が大幅に短縮されている。
【0051】
このゴム弾性体43は、円筒部43aが質量部材42の外周面に嵌着され、係合部43bが質量部材42の一方の軸端面に当接して係合する状態で質量部材42に固定保持されている。この場合にも、接着剤等は使用されずに非接着とされている。このゴム弾性体43(円筒部43a)の径方向におけるばね定数は、プロペラシャフト1の抑制すべき振動の周波数に合わせて、質量部材42の質量との関係により所定の値に設定されている。
【0052】
以上のように構成されたダイナミックダンパは、プロペラシャフト1の中空部内に圧入治具等で圧入されることにより、図6に示すように、プロペラシャフト1の振動を抑制すべき所定部位に取付けられる。この場合、ダイナミックダンパを係合部43b側から圧入するようにすれば、係合部43bが質量部材42の軸端面に係合することによって、ゴム弾性体43の質量部材42からの離脱や位置ずれが確実に防止される。これにより、ダイナミックダンパは、ゴム弾性体43の円筒部43aがプロペラシャフト1の筒状本体部1aの内周面と質量部材2の外周面とに圧接する状態となって、筒状本体部1aの内周面に固定保持される。
【0053】
このようにして本実施形態のダイナミックダンパが取付けられたプロペラシャフト1は、実施形態1の場合と同様に車両に取付けられて使用され、プロペラシャフト1の回転に伴って発生する有害振動が、実施形態1の場合と同様にダイナミックダンパにより効果的に抑制される。
【0054】
以上のように、本実施形態の中空回転軸用ダイナミックダンパは、質量部材42の外周に圧入固定されるゴム弾性体43が加硫成形により単独で形成されていることから、実施形態1の場合と同様に、加硫成形時間を大幅に短縮することができため、生産性の向上と低コスト化を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態の中空回転軸用ダイナミックダンパにおいては、ゴム弾性体43は質量部材42の一方の軸端面に係合する係合部43bを有するため、ダイナミックダンパをプロペラシャフト1の中空部内に圧入して取付ける際に、ゴム弾性体43の質量部材42からの離脱や位置ずれを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態1の変形例に係るゴム弾性体の上半分を断面で示す側面図である。
【図3】本発明の変形例1に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の変形例2に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の変形例3に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るダイナミックダンパを中空回転軸に取付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1…プロペラシャフト(回転軸)
1a…筒状本体部
2、12、22、32、42…質量部材
2a、12a、22a、32a…保持溝
3、13、23、33、43…ゴム弾性体
3a…環状凹部
43a…係合部

Claims (6)

  1. 中空部を有する円筒状の回転軸の前記中空部内に挿入されて前記回転軸と距離を隔てた状態に配置される質量部材と、
    ゴム材料を加硫成形することによりリング状に形成されて前記質量部材の外周に圧入固定され、前記質量部材とともに前記回転軸の前記中空部内に圧入されて前記回転軸と前記質量部材とに圧接する状態に配置されるゴム弾性体と、
    から構成されていることを特徴とする中空回転軸用ダイナミックダンパ。
  2. 前記質量部材の外周面には、前記ゴム弾性体が保持される環状の保持溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の中空回転軸用ダイナミックダンパ。
  3. 前記保持溝の底面は、前記回転軸に対する前記質量部材及び前記ゴム弾性体の圧入方向先端側から後端側に向かって次第に大径となるテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の中空回転軸用ダイナミックダンパ。
  4. 前記保持溝の側面は、開口側から底面側に向かって該底面の幅が次第に拡がる方向に傾斜するアンダカット形状に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の中空回転軸用ダイナミックダンパ。
  5. 前記ゴム弾性体は、前記質量部材の一方の軸端面に係合する係合部を有することを特徴とする請求項1〜4に記載の中空回転軸用ダイナミックダンパ。
  6. 前記ゴム弾性体の外周面には、周方向に延びる環状凹部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5に記載の中空回転軸用ダイナミックダンパ。
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