JP2004156081A - 電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents

電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Takeshi Matsuda
武士 松田
Akira Matsuzaki
晃 松崎
Kazuhisa Okai
和久 岡井
Naoto Yoshimi
直人 吉見
Masaaki Yamashita
正明 山下
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Abstract

【課題】本発明は、耐食性を低下することなく、電磁波シールド特性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板であって、前記皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaをx(μm)、皮膜平均厚さをy(μm)とするとき、xとyは、(1)式を満足することを特徴とする電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板である。y≦0.64x+0.12・・・(1)。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、家電、建材用途に最適な表面処理鋼板に関し、製品を取扱う作業者やユーザーへの影響、製造時の排水処理対策、さらには使用環境下における製品からの有害物質の揮発・溶出などの環境問題に適応するために、製造時および製品中に環境・人体に有害なクロム、鉛、カドミウム、水銀などの重金属を全く含まない環境適応型表面処理鋼板およびその製造方法に関する。特に、電気・電子機器など、電磁波漏れ(EMI)を防止する必要がある用途に好適で、電磁波シールド特性に優れるとともに、耐食性にも優れる環境適応型表面処理鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板には、従来から亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸又はその塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は耐食性に優れ、且つ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。
【0003】
クロメート処理は公害規制物質である6価クロムを使用するものであるが、この6価クロムは処理工程においてクローズドシステムで処理され、完全に還元・回収されて自然界には放出されていないこと、また、有機皮膜によるシーリング作用によってクロメート皮膜中からのクロム溶出もほぼゼロにできることから、実質的には6価クロムによって環境や人体が汚染されることはない。しかしながら、最近の地球環境問題から、6価クロムを含めた重金属の使用を自主的に削減しようとする動きが高まりつつある。また、廃棄製品のシュレッダーダストを投棄した場合に環境を汚染しないようにするため、製品中にできるだけ重金属を含ませない若しくはこれを削減しようとする動きも始まっている。
【0004】
このようなことから、亜鉛系めっき鋼板の白錆の発生を防止するために、クロメート処理によらない無公害な表面処理鋼板、所謂クロムフリー処理鋼板が数多く提案されている。このうち有機系化合物や有機樹脂を利用した技術がいくつか提案されており、例えば、以下のような技術を挙げることができる。
(1)カルボキシルキシル基と水酸基とを有する有機樹脂とアミノ基および/またはメルカプト基を有するシリコーン樹脂を用いる技術(例えば、特許文献1参照)。
(2)水分散性シリカを含むSiおよびLi系無機化合物と有機樹脂、シランカップリング剤を用いる技術(例えば特許文献2参照)。
(3)チオ硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素を含有する水性樹脂を用いる技術(例えば特許文献3参照)。
(4)また、下層に酸化物を含有するリン酸及び/又はリン酸化合物皮膜、その上層に樹脂皮膜からなる有機複合被覆を形成させる技術(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
【0005】
以下、先行文献情報について記載する。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−199070号公報([特許請求の範囲])
【0007】
【特許文献2】
特開2000−45078号公報([特許請求の範囲])
【0008】
【特許文献3】
特開2000−17466号公報([特許請求の範囲])
【0009】
【特許文献4】
特開2002−53980号公報([特許請求の範囲])
【0010】
【特許文献5】
特開2002−53979号公報([特許請求の範囲])
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
電気・電子機器が発生する電磁波は周囲の環境に様々な影響をおよぼすため、外部への電磁波もれ(EMI)を防ぐための電磁波シールドが必要である。OA・AV機器などのシャーシ、底板などに用いられている表面処理鋼板についても、近年、電磁波シールド特性が要求されるようになってきた。電磁波シールド特性を良好にするには、シャーシ、底板の継ぎ目部分や接合部分のシールド効果を高めることが必要であり、係る観点から、該鋼板表面の導電性を今まで以上に良好にすることが要求され始めた。
【0012】
しかし、前記(1)〜(3)には、電磁波シールド特性について全く記述されていない。
【0013】
表面処理鋼板表面の導電性は、表面に被覆する絶縁性皮膜の膜厚に依存するので、良好な導電性を得るには前記皮膜の膜厚を薄くすることで、導電性を良好にできる。例えば、特許文献4や5では、有機皮膜の付着量が0.5g/m以下になると導電性が低下、すなわち電磁波シールド特性が良好になることが示されている。しかしながら、特許文献4や特許文献5にも記載されるように、有機系化合物や有機樹脂を用いた前記クロムフリー鋼板においては、膜厚を薄くすると耐食性が低下するため、導電性と耐食性がともに優れた表面処理鋼板を得ることは困難であった。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決し、耐食性を低下することなく、電磁波シールド特性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させるとともに、該皮膜形成後の表面の中心線粗さRaと皮膜厚を適正な範囲に組み合わせること、すなわち、該皮膜形成後の表面の中心線粗さRaを予め設定された皮膜厚によって決定される一定値以上とするか、または前記皮膜厚さを予め設定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaによって決定される一定値以下の皮膜厚さとすることで、電磁波シールド特性と耐食性に極めて優れた表面処理鋼板が得られることを見いだした。
【0016】
上記課題を解決する本発明の手段は下記の通りである。
【0017】
[1]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板であって、前記皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaをx(μm)、皮膜平均厚さをy(μm)とするとき、xとyは、下記(1)式を満足することを特徴とする電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。(第1発明)
y≦0.64x+0.12 (1)
[2]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板であって、前記皮膜形成後の表面の中心線粗さRaを予め設定された皮膜厚によって決定される一定値以上の粗さとするか、または前記皮膜厚さを予め設定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaによって決定される一定値以下の厚さとしたことを特徴とする表面処理鋼板。(第2発明)
[3]前記予め設定された皮膜厚をy(μm)、前記皮膜形成後の一定値以上の粗さを、表面の中心線粗さRaでx(μm)、また、前記予め設定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaをx(μm)、前記一定値以下の皮膜厚さをy(μm)とするとき、xとyは下記(1)式を満足し、またxとyは下記(2)式を満足することを特徴とする[1]に記載の表面処理鋼板。(第3発明)
≦0.64x+0.12 (1)
y≦0.64x+0.30 (2)
[4]前記クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜は、単層または2層以上からなる皮膜であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。(第4発明)
[5]前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板の表面に形成された前記皮膜は、第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸及び/又はリン酸化合物と、
(γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる一種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
を含有する複合酸化物皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂(A)を基体樹脂とし、該基体樹脂100重量部(固形分)に対して下記(a)〜(f)のうちのいずれかの防錆添加成分(B)を合計で1〜100重量部(固形分)含有する有機皮膜を形成させた複層皮膜であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。(第5発明)
(a)Caイオン交換シリカおよびリン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩および酸化ケイ素
(c)カルシウム化合物および酸化ケイ素
(d)カルシウム化合物、リン酸塩および酸化ケイ素
(e)モリブデン酸塩
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる一種以上の有機化合物
[6]前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板の表面に形成された前記皮膜は、第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸及び/又はリン酸化合物と、
(γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる一種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、を含有する複合酸化物皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(f)のうちのいずれかの防錆添加成分(Y)とを含み、
前記防錆添加成分(Y)の合計の含有量が前記反応生成物(X)100重量部(固形分)に対して1〜100重量部(固形分)である、有機皮膜を形成させた複層皮膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。(第6発明)
(a)Caイオン交換シリカおよびリン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩および酸化ケイ素
(c)カルシウム化合物および酸化ケイ素
(d)カルシウム化合物、リン酸塩および酸化ケイ素
(e)モリブデン酸塩
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる一種以上の有機化合物
[7]前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板の表面に形成された前記皮膜は、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第1〜3アミノ基及び第4アンモニウム塩基、から選ばれる少なくとも1種のカチオン性官能基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基及びメタクリロキシ基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する1種以上のシランカップリング剤(C)と、Ti化合物若しくはZr化合物の少なくとも1種(D)と、リン酸、硝酸及び酢酸、若しくはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(E)とを含有し、且つ、カチオン性ウレタン樹脂(B)及びシランカップリング剤(C)の含有量が樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)の合計量の全固形分に対して、それぞれ1〜20質量%及び45〜85質量%である表面処理剤を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの項に記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。(第7発明)
【0018】
【化4】
Figure 2004156081
【0019】
式中、ベンゼン環に結合しているY1およびY2は、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
【0020】
【化5】
Figure 2004156081
【0021】
【化6】
Figure 2004156081
【0022】
式(II)および(III)中、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、A−は水酸イオン又は酸イオンを表す。
【0023】
[8]前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板の表面に形成された前記皮膜は、
(a)数平均分子量400〜20,000のポリアルキレングリコール、ビスフェノール型エポキシ樹脂、活性水素含有化合物及びポリイソシアネート化合物を反応させて得られるポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)と、(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)と、必要に応じて(C)以外の活性水素含有化合物(D)とを反応させる事により得られる樹脂を水中に分散してなる水性エポキシ樹脂分散液と、
(b)シランカップリング剤と、
(c)リン酸および/またはヘキサフルオロ金属酸と、
を含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。(第8発明)
[9]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させる表面処理鋼板の製造方法であって、前記皮膜を形成後の表面の中心線粗さRaを予め設定された皮膜厚によって決定される一定値以上の粗さとするか、または前記皮膜厚さを予め設定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaによって決定される一定値以下の皮膜厚さとすることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。(第9発明)
[10]前記[9]に記載の表面処理鋼板の製造方法は、
皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaまたは皮膜厚さの設定値を決定する決定工程と、
前記決定工程で、皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値を決定した場合は、下記(1)〜(3)の工程を備え、
(1)前記決定工程で決定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値に基いて、皮膜形成前の亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面の中心線平均粗さRaを調整する粗さ調整工程
(2)前記決定工程で決定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値、及び予め求めた皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRa、皮膜厚さと導電性の関係に基いて、皮膜厚さの設定値を決定する膜厚設定工程
(3)前記膜厚設定工程で決定された皮膜厚の設定値に基いて、皮膜の膜厚を調整する膜厚調整工程
また、前記決定工程で皮膜厚さの設定を決定した場合は、下記の(4)〜(6)の工程を備える
(4)前記決定工程で決定された皮膜厚さの設定値、及び予め求めた皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRa、皮膜厚さと導電性の関係に基いて、皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値を決定する粗さ設定工程
(5)前記粗さ設定工程で決定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値に基き、皮膜形成前の亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面の中心線平均粗さRaを調整する粗さ調整工程
(6)前記決定工程で決定された皮膜厚の設定値に基いて、皮膜の膜厚を調整する膜厚調整工程
ことを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。(第10発明)
[11]前記(3)の膜厚調整工程は、前記(2)の膜厚設定工程で決定した皮膜厚の設定値以下の膜厚に調整し、前記(5)の粗さ調整工程は、前記(4)の粗さ設定工程で決定した中心線平均粗さRa以上の粗さに調整することを特徴とする[10]に記載の表面処理鋼板の製造方法。(第11発明)
[12]前記決定工程の皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値をx(μm)、前記(2)の膜厚設定工程の皮膜厚の設定値をy(μm)としたとき、xとyは下記(1)式を満足するように設定され、また前記決定工程の皮膜厚の設定値をy(μm)、前記(4)の粗さ設定工程の粗さの設定値をx(μm)としたとき、xとyは下記(2)式を満足するように設定されることを特徴とする[10]または[11]に記載の表面処理鋼板の製造方法。(第12発明)
=0.64x+0.12 (1)
=0.64x+0.12 (2)
[13]前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板は、電気亜鉛系めっき鋼板または電気アルミニウム系めっき鋼板であり、前記粗さ調整工程は、電気めっき工程前に行うことを特徴とする[10]〜[12]のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。(第13発明)
[14]前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板は、溶融亜鉛系めっき鋼板または溶融アルミニウム系めっき鋼板であり、前記粗さ調整工程は、溶融めっき工程後に行うことを特徴とする[10]〜[12]のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。(第14発明)
[15]前記クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜は、[5]に記載の複層皮膜、[6]に記載の複層皮膜、[7]に記載の皮膜および[8]に記載の皮膜のいずれかであることを特徴とする、[9]〜[14]のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。(第15発明)
なお、本発明で規定する皮膜厚さは平均皮膜厚さを意味しており、皮膜が複層皮膜である場合、各々の皮膜厚さを合計した合計皮膜厚さの平均値である。また、本明細書では、第5発明〜第8発明に記載する有機皮膜を形成させた表面処理鋼板を、有機被覆鋼板とも記載する。また表面の中心線平均粗さRaを表面粗さRaとも記載する。
【0024】
【発明の実施の形態】
前記従来技術に記載した先行技術の中で、特許文献4および5に記載される下層にリン酸化合物、酸化物微粒子の無機系化合物の皮膜、その上層に樹脂皮膜からなる有機複合被覆を形成させた表面処理鋼板は、従来のクロメート処理鋼板に充分代替出来る特性を有している。
【0025】
そこで、本発明者らは、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、特許文献4または5に記載される複層皮膜(有機複合皮膜)を形成した表面処理鋼板について、電磁波シールド特性と耐食性を両立させるべく、鋭意研究した。その結果、中心線平均粗さRaが小さい鋼板よりも、中心線平均粗さRaが大きい鋼板の方が良好な導電性が得られること、また耐食性については、平均皮膜厚さが同程度であれば、ほぼ同程度の耐食性が得られ、従って優れた電磁波シールド特性が示されることを見出した。さらに、皮膜形成後の表面テクスチャーを特定範囲に設定すること、具体的には、皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaと皮膜厚さの組み合わせを特定範囲に設定することで、電磁波シールド特性と耐食性に優れる表面処理鋼板が得られることを見出した。
【0026】
中心線平均粗さRaを大きくすることで、導電性が良好になるのは、次のように考えられる。図1は、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板において、表面粗さが異なる場合の皮膜厚さの変動状態を説明する皮膜断面模式図で、(A)は中心線平均粗さRaの小さい表面処理鋼板、(B)は中心線平均粗さRaの大きい表面処理鋼板である。図1において、1はめっき鋼板、2はめっき表面に形成された皮膜である。
【0027】
めっき鋼板表面に凹凸があることに起因して、皮膜厚の分布が不均一になる。すなわち、表面の凸部(粗さ曲線の山頂部分)では相対的に皮膜厚さが薄く、表面の凹部(粗さ曲線に谷部部分)では相対的に皮膜厚さが厚くなる。皮膜の導電性は、凸部部分の皮膜の膜厚で決定されると考えられる。平均皮膜厚さが同程度の場合、(B)に示される中心線平均粗さRaが大きい鋼板の凸部部分の膜厚d2は、(A)に示される中心線平均粗さRaが小さい鋼板の凸部部分の膜厚d1よりも薄い。そのため、皮膜形成後の皮膜表面の中心線平均粗さRaを大きくすることで皮膜の導電性が良好になると考えられる。一方、本発明者らの調査結果によると、平均皮膜厚が同程度であれば、(A)および(B)の表面処理鋼板では、ほぼ同程度の耐食性が得られる。これは、本発明の表面処理鋼板では、後記するような防錆機構によって高度な耐食性を有するため、表面粗さの凸部におけるような部分的な皮膜厚さの不均一があっても良好な耐食性が得られるためと考えられる。
【0028】
皮膜表面の導電性を良好にすることで、電磁波シールド特性を良好にできる。表面処理鋼板が使用される用途において要求される電磁波シールド特性に基き、必要な導電性レベルを設定する。一方、皮膜表面の導電性は、皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaと皮膜厚さ(平均皮膜厚さ)と関係する。そこで、表面粗さ、皮膜厚さの異なる表面処理鋼板について、皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaおよび皮膜厚さ(平均皮膜厚さ)と、皮膜表面の導電性の関係を実験的に求め、これらの関係を関数化、あるいはテーブル化する。
【0029】
そして、前記で求めた皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaおよび皮膜厚さ(平均皮膜厚さ)と皮膜表面の導電性の関係、および電磁波シールド特性を考慮して設定された導電性レベルに基き、前記導電性レベルを確保するのに必要な最大膜厚と最小中心線平均粗さRaの関係式を求める。そして、前記関係式に基き、前記皮膜形成後の表面の中心線粗さRaを予め設定された皮膜厚によって決定される一定値以上の粗さとするか、または前記皮膜厚さを予め設定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaによって決定される一定値以下の皮膜厚さとする。前記のようにして皮膜を形成することで、電磁波シールド特性に優れた表面処理鋼板が得られる。前記で設定される皮膜厚さは適宜耐食性を考慮して決定される。
【0030】
第5発明および第6発明に係る表面処理鋼板について、表面の中心線平均粗さRa、複層皮膜の皮膜厚さ(第1層皮膜と第2層皮膜の合計皮膜厚さ(平均皮膜厚さ))と皮膜表面の導電性を調査した結果から、中心線平均粗さRa;x(μm)と合計皮膜厚さ;y(μm)が、y≦0.64x+0.12を満足すると、導電性は10Ω未満となり優れた電磁波シールド特性を示し、前記xとyが、y≦0.56x−0.10を満足すると、導電性は10−4Ω以下となりさらに優れた電磁波シールド特性が示されることがわかった。
【0031】
図2は、実施例2に記載される第6発明に係る表面処理鋼板の表面の中心線平均粗さRa、皮膜厚さと、導電性の関係を示した図である。膜厚は第1層皮膜と第2層皮膜の合計膜厚(平均値)である。図2中に記載される(1)および(2)の線は、各々、y=0.64x+0.12、およびy=0.56x−0.10の関係を示す一次式である。ここで、xは皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRa(μm)、yは第1層皮膜と第2層皮膜を合わせた合計皮膜厚(μm)である。導電性は、皮膜表面の導電率で評価され、図2中の符号は、◎:10−4Ω以下、○:10−4Ω超、10Ω未満、×:10Ω以上を示す。
【0032】
図2に示されるように、導電率は、中心線平均粗さRaおよび合計膜厚の両方の影響を受け、膜厚を薄くすると、導電率が低下し、また中心線平均粗さRaを大きくすると導電率が低下する。そして膜厚と中心線平均粗さRaが図中に示される(1)の線より右側の領域では導電性の評価は「○」以上であり、膜厚と中心線平均粗さRaが(2)の線より右側の領域では導電性の評価は「◎」であることが分かる。
【0033】
皮膜形成後の表面テクスチャーは皮膜形成前のめっき鋼板の表面テクスチャーと相関があり、皮膜形成後の表面粗さRaは、皮膜形成前のめっき鋼板の表面粗さRaを調整することで調整され、皮膜形成工程では、皮膜厚さが調整される。表面粗さ調整と膜厚調整は、異なる工程で行われるので、皮膜厚さの設定値、表面粗さRaの設定値のいずれか一方を予め決定し、前記で決定した設定値に基き、他方の設定値を決定する。
【0034】
めっき鋼板の表面テクスチャー(表面粗さRa)を制御する手法としては、▲1▼調質圧延のロール種類・圧延法により冷延鋼板の表面テクスチャーを制御する、▲2▼めっき方法・条件などめっき後の表面テクスチャーを制御する手法等がある。
【0035】
第5発明および第6発明に係る表面処理鋼板において、導電率を10Ω未満にする場合、膜厚(y:μm)と中心線平均粗さRa(x:μm)が、y≦0.64x+0.12の関係を満足するようにする。具体的には、皮膜形成後の表面粗さRaの設定値、皮膜厚さの設定値のいずれか一方を決定する。
【0036】
皮膜厚さの設定値を決定した場合は、次のようにする。設定した皮膜厚さをy、皮膜厚yがyであるときに、y=0.64x+0.12を満足するxを求める。前記xがxである場合、皮膜形成後の表面粗さRaをx(μm)以上とする。そして皮膜形成後の表面粗さRaが前記x(μm)以上となるように皮膜形成前のめっき鋼板の表面粗さRaを調整する。通常、皮膜形成後の表面粗さRaは皮膜形成前のめっき鋼板の表面粗さRaとほぼ同程度(但し、膜厚が厚い場合は若干低下する。)であるので、皮膜形成前の表面粗さRaは、x以上(膜厚が厚い場合は、その低下量を考慮して前記より幾分粗め)に調整される。めっき層を電気めっき工程で形成する電気めっき鋼板は、めっき工程の前に調質圧延工程があるので、そこで表面粗さRaを調整する。めっき層を溶融めっき工程で形成する溶融めっき鋼板は、溶融めっき工程後に、調質圧延工程で表面粗さRaを調整する。皮膜形成工程は、前記設定値に基いて皮膜厚が設定値yになるように膜厚を調整する。
【0037】
皮膜形成後の表面粗さRaの設定値を決定した場合は、次のようにする。設定した皮膜形成後の表面粗さRaの設定値をx、皮膜厚xがxであるときに、y=0.64x+0.12を満足するyを求める。yがyである場合、前記皮膜厚をy(μm)以下とする。そして皮膜形成後の表面粗さRaが前記x(μm)以上となるように皮膜形成前のめっき鋼板の表面粗さRaを調整する。皮膜形成前の表面粗さRaは、x以上(膜厚が厚い場合は、その低下量を考慮して前記より幾分粗め)に調整される。めっき層を電気めっき工程で形成する電気めっき鋼板は、めっき工程の前に調質圧延工程があるので、そこで表面粗さRaを調整する。めっき層を溶融めっき工程で形成する溶融めっき鋼板は、溶融めっき工程後に、調質圧延工程で表面粗さRaを調整する。皮膜形成工程は、皮膜厚をy(μm)以下に調整する。
【0038】
導電率を10−4Ω以下にする場合は、式y=0.64x+0.12に代えて、式y=0.56x−0.10を用いて、前述の導電率を10以下にする場合と同様にして行うことができる。
【0039】
前記のようにして、表面粗さと皮膜厚を設定、調整することで、導電性と耐食性に優れた表面処理鋼板を確実に製造することが可能になる。
【0040】
クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板において前記した作用効果が奏されるが、前記したように、先行技術の中で、特許文献4および5に記載される下層にリン酸化合物、酸化物微粒子の無機系化合物の皮膜、その上層に樹脂皮膜からなる有機複合被覆を形成させた表面処理鋼板は、従来のクロメート処理鋼板に充分代替出来る特性を有している。
【0041】
そのため、本発明では、第5発明において、前記クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板は、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸及び/又はリン酸化合物と、
(γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる一種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、を含有する複合酸化物皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂(A)を基体樹脂とし該基体樹脂100重量部(固形分)に対して下記(a)〜(f)のうちのいずれかの防錆添加成分(B)を合計で1〜100重量部(固形分)含有するの有機皮膜を形成させた表面処理鋼板であることを規定する。
(a)Caイオン交換シリカおよびリン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩および酸化ケイ素
(c)カルシウム化合物および酸化ケイ素
(d)カルシウム化合物、リン酸塩および酸化ケイ素
(e)モリブデン酸塩
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる一種以上の有機化合物
また、第6発明において、前記クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板は、第1層皮膜として、
(α)酸化物微粒子と、
(β)リン酸及び/又はリン酸化合物と、
(γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる一種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、を含有する複合酸化物皮膜を有し、
その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(f)のうちのいずれかの防錆添加成分(Y)とを含み、
(a)Caイオン交換シリカおよびリン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩および酸化ケイ素
(c)カルシウム化合物および酸化ケイ素
(d)カルシウム化合物、リン酸塩および酸化ケイ素
(e)モリブデン酸塩
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる一種以上の有機化合物、
前記防錆添加成分(Y)の合計の含有量が前記反応生成物(X)100重量部(固形分)に対して1〜100重量部(固形分)である、有機皮膜を形成させた表面処理鋼板であることを規定する。
【0042】
前記のような特定の複合酸化物皮膜と有機皮膜とからなる二層皮膜構造による防食機構は必ずしも明らかでないが、特許文献4および5に記載されているように、次のように考えられる。すなわち、第1層皮膜の複合酸化物皮膜による以下に述べるような腐食抑制効果と第2層皮膜の皮膜形成樹脂によるバリヤー作用とが複合化することにより、薄膜でありながらクロメート皮膜に匹敵する耐食性が得られるものと考えられる。
【0043】
以下、第5発明および第6発明について詳しく説明する。
【0044】
先ず第5発明について説明する。第5発明における第1層皮膜である複合酸化物皮膜の防食機構については、緻密で難溶性の複合酸化物皮膜がバリヤー性皮膜として腐食因子を遮断すること、酸化ケイ素などの酸化物微粒子が、リン酸及び/又はリン酸化合物とMg、Mn、Alの中から選ばれる1種以上の金属と共に安定で緻密なバリヤー皮膜を形成すること、酸化物微粒子が酸化ケイ素である場合にケイ酸イオンが腐食環境下で塩基性塩化亜鉛の形成を促し、バリヤー性を向上させること、などにより優れた防食性能が得られるものと考えられる。
【0045】
さらに皮膜に欠陥が生じた場合でも、カソード反応によってOHイオンが生成して界面がアルカリ性になることにより上記成分(γ)がMe(OH)として沈殿し、緻密で難溶性の生成物として欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制するものと考えられる。また、上述したようにリン酸および/またはリン酸化合物は複合酸化物皮膜の緻密性の向上に寄与するとともに、皮膜欠陥部で腐食反応であるアノード反応によって溶解した亜鉛イオンをリン酸成分が捕捉し、難溶性のリン酸亜鉛化合物としてそこに沈殿生成物を形成するものと考えられる。以上のように、成分(γ)とリン酸および/またはリン酸化合物は皮膜欠陥部での自己補修作用を示すものと考えられる。
【0046】
また、上記成分(γ)の中でも、マグネシウム成分を含有する場合に特に優れた耐食性が得られる。これは、Mgは他の金属に較べて水酸化物の溶解度が低く、難溶塩を形成しやすいためであると考えられる。また、上記のような作用効果は、上述したように複合酸化物皮膜の成分(α)としてSiO微粒子を特定の付着量で、成分(β)としてリン酸および/またはリン酸化合物を特定の付着量で、成分(γ)としてマグネシウム成分を特定の付着量で、それぞれ含有させた場合に特に顕著に得られる。
【0047】
第5発明における第2層皮膜である有機皮膜の防食機構については、次のように考えられる。すなわち、OH基及び/又はCOOH基を有する有機高分子樹脂(A)(好ましくは熱硬化性樹脂、さらに好ましくはエポキシ樹脂及び/又は変性エポキシ樹脂)が架橋剤との反応により緻密なバリヤー皮膜を形成し、このバリヤー皮膜は、酸素などの腐食因子の透過抑制能に優れ、また分子中のOH基やCOOH基により素地との強固な結合力が得られるため、特に優れた耐食性(バリヤー性)が得られるものと考えられる。
【0048】
また、第5発明の表面処理鋼板では、上記のような特定の有機高分子樹脂からなる有機皮膜中に、
(a)Caイオン交換シリカ及びリン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩及び酸化ケイ素
(c)カルシウム化合物及び酸化ケイ素
(d)カルシウム化合物、リン酸塩及び酸化ケイ素
(e)モリブデン酸塩
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
のうちのいずれかを複合添加した防錆添加成分(B)(自己補修性発現物質)を適量配合することにより、特に優れた防食性能(自己修復効果)を得ることができる。この特定の有機皮膜中に上記(a)〜(f)の成分を配合したことにより得られる防食機構は以下のように考えられる。
【0049】
まず、上記(a)〜(d)の成分は沈殿作用によって自己補修性を発現するもので、その反応機構は以下のステップで進むと考えられる。
[第1ステップ]:腐食環境下において、めっき金属である亜鉛やアルミニウムよりも卑なカルシウムが優先溶解する。
[第2ステップ]:リン酸塩の場合、加水分解反応により解離したリン酸イオンと上記第1ステップで優先溶解したカルシウムイオンが錯形成反応を起こし、また酸化ケイ素の場合、表面に上記第1ステップで優先溶解したカルシウムイオンが吸着し、表面電荷を電気的中和して凝集する。その結果、いずれの場合も緻密且つ難溶性の保護皮膜が生成し、これが腐食起点を封鎖することによって腐食反応を抑制する。
【0050】
また、上記(e)の成分は不動態化効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食環境下で溶存酸素と共にめっき皮膜表面に緻密な酸化物を形成し、これが腐食起点を封鎖することによって腐食反応を抑制する。
【0051】
また、上記(f)の成分は吸着効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食によって溶出した亜鉛やアルミニウムが、上記(f)の成分が有する窒素や硫黄を含む極性基に吸着して不活性皮膜を形成し、これが腐食起点を封鎖することによって腐食反応を抑制する。
【0052】
一般の有機皮膜中に上記(a)〜(f)の成分を配合した場合でも、ある程度の防食効果は得られるが、本発明のように特定の有機高分子樹脂からなるバリア性に優れた有機皮膜中に上記(a)〜(f)の自己補修性発現物質を配合したことにより、両者の効果(バリア性と自己補修性)が複合化し、これにより極めて優れた防食効果が発揮されるものと考えられる。
【0053】
次に、第5発明において、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される第1層皮膜である複合酸化物皮膜について説明する。この複合酸化物皮膜は、従来の酸化リチウムと酸化ケイ素からなる皮膜組成物に代表されるアルカリシリケート処理皮膜とは全く異なり、(α)酸化物微粒子(好ましくは、酸化ケイ素)と、(β)リン酸及び/又はリン酸化合物と、(γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる1種以上の金属(但し、化合物及び/又は複合化合物として含まれる場合を含む)と、を含有する(好ましくは、主成分として含有する)複合酸化物皮膜である。
【0054】
前記成分(α)である酸化物微粒子としては、耐食性の観点から特に酸化ケイ素(SiO微粒子)が好ましい。また、酸化ケイ素の中でもコロイダルシリカが最も好ましい。コロイダルシリカは、特許文献4および特許文献5に記載されるものが使用される。
【0055】
前記成分(β)であるリン酸及び/又はリン酸化合物は、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸などこれらの金属塩や化合物などの1種又は2種以上を皮膜組成物中に添加することにより皮膜成分として配合することができる。また、皮膜組成物に有機リン酸やそれらの塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びこれらの金属塩)の1種以上を添加してもよい。また、そのなかでも第一リン酸塩が皮膜組成物溶液の安定性の面から好適である。また、リン酸塩として第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第三リン酸アンモニウムの1種以上を皮膜組成物溶液に添加すると、耐食性がより改善される傾向が認められた。その理由は明らかでないが、これらのアンモニウム塩を使用した場合には、皮膜組成物溶液のpHを高くしても液がゲル化しない。一般に、アルカリ域では金属塩が不溶性となるため、pHの高い皮膜組成物溶液から皮膜が形成される場合に、より難溶性の化合物が乾燥過程で生じるものと考えられる。
【0056】
皮膜中でのリン酸、リン酸化合物の存在形態も特別な限定はなく、また、結晶若しくは非結晶であるか否かも問わない。また、皮膜中でのリン酸、リン酸化合物のイオン性、溶解度についても特別な制約はない。耐食性および溶接性などの観点から上記成分(β)の好ましい付着量はP量換算で0.01〜3000mg/m、より好ましくは0.1〜1000mg/m、さらに好ましくは1〜500mg/mである。また、耐食性と高度の導電性及びスポット溶接性を同時に得るという観点からは、上記成分(β)の好ましい付着量は1〜600mg/mである。
【0057】
前記成分(γ)であるMg、Mn、Alの中から選ばれる1種以上の金属が皮膜中に存在する形態は特に限定されず、金属として、或いは酸化物、水酸化物、水和酸化物、リン酸化合物、配位化合物などの化合物若しくは複合化合物として存在してよい。これらの化合物、水酸化物、水和酸化物、リン酸化合物、配位化合物などのイオン性、溶解度などについても特に限定されない。成分(γ)である上記各元素は皮膜中でリン酸、リン酸化合物及び酸化物微粒子と複合化合物を形成し、緻密なバリヤー性皮膜を形成して耐食性向上に寄与する。
【0058】
これらの元素のうちMgは、腐食環境下でカソード反応によってOHイオンが生成して界面がアルカリ性になり、緻密で難溶性のMg(OH)として沈殿することにより皮膜の欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制するものと考えられる。Mnは、腐食環境下でカソード反応によってOHイオンが生成して界面がアルカリ性になり、緻密で難溶性のリン酸塩若しくは水酸化物として沈殿することにより皮膜の欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制するものと考えられる。また、ユーザーで鋼板表面の加工油、防錆油、揮発油等をアルカリ脱脂で洗浄する場合には、Mnのリン酸塩はアルカリ環境下で溶解し難いので、極めて好適である。Alは、腐食環境下でカソード反応によってOHイオンが生成して界面がアルカリ性になり、緻密で難溶性のリン酸塩として沈殿することにより皮膜の欠陥を封鎖し、腐食反応を抑制するものと考えられる。また、ユーザーで鋼板表面の加工油、防錆油、揮発油等をアルカリ脱脂で洗浄する場合には、Alのリン酸塩はアルカリ環境下で溶解し難いので、極めて好適である。
【0059】
皮膜中に成分(γ)を導入する方法としては、Mg、Mn、Alのリン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物などとして皮膜組成物に添加すればよい。耐食性および皮膜外観の低下防止の観点から上記成分(γ)の好ましい付着量は金属量換算で0.01〜1000mg/m、より好ましくは0.1〜500mg/m、さらに好ましくは1〜100mg/mある。また、耐食性と高度の導電性及びスポット溶接性を同時に得るという観点からは、上記成分(γ)の好ましい付着量は1〜600mg/mである。
【0060】
複合酸化物皮膜の構成成分である、(α)酸化物微粒子と、(γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる1種以上の金属(但し、化合物及び/又は複合化合物として含まれる場合を含む)のモル比(α)/(γ)(但し、成分(γ)は前記金属の金属換算量)は0.1〜20、望ましくは0.1〜10とすることが好ましい。このモル比(α)/(γ)が0.1未満では酸化物微粒子の添加効果が十分に得られず、一方、20を超えると酸化物微粒子が皮膜の緻密化を阻害してしまう。また、複合酸化物皮膜の構成成分である、(β)リン酸及び/又はリン酸化合物と、(γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる1種以上の金属(但し、化合物及び/又は複合化合物として含まれる場合を含む)のモル比(γ)/(β)(但し、成分(β)はP換算、成分(γ)は前記金属の金属量換算)は0.1〜1.5とすることが好ましい。このモル比が0.1未満では、可溶性のリン酸によって複合酸化物皮膜の難溶性が損なわれ、耐食性が低下するため好ましくない。また、モル比が1.5を超えると処理液安定性が著しく低下するため好ましくない。
【0061】
複合酸化物皮膜の膜厚は0.005〜3μm、好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.1〜1μm、さらに好ましくは0.2〜0.5μmとする。複合酸化物皮膜の膜厚が0.005μm未満では耐食性が低下する。一方、膜厚が3μmを超えると、導電性が低下する。また、複合酸化物皮膜をその付着量で規定する場合、上記成分(α)、上記成分(β)のP換算量、上記成分(γ)の金属換算量を含めた合計付着量を6〜3600mg/m、好ましくは10〜1000mg/m、さらに好ましくは50〜500mg/m、特に好ましくは100〜500mg/m、最も好ましくは200〜400mg/mとすることが適当である。この合計付着量が6mg/m未満では耐食性が低下し、一方、合計付着量が3600mg/mを超えると、導電性が低下するため溶接性などが低下する。また、耐食性とともに高度の導電性及びスポット溶接性を得たい場合には、上記成分(α)とP換算量での上記成分(β)とMg、Mn及びAlの金属換算量での上記(γ)の合計付着量を6〜1000mg/m、好ましくは10〜600mg/mとすることが適当である。この合計付着量が6mg/m未満では耐食性が不十分であり、一方、合計付着量が1000mg/mを超えると所望とする極めて高度な導電性及びスポット溶接性が得られない。
【0062】
次に、第5発明において、上記複合酸化物皮膜(第1層皮膜)の上部に第2層皮膜として形成される有機皮膜について説明する。
【0063】
第5発明では、第1層皮膜の上部に形成される有機皮膜は、OH基及び/又はCOOH基を有する有機高分子樹脂(A)を基体樹脂とし、これに自己補修性発現物質である下記(a)〜(f)のうちのいずれかの防錆添加成分(B)、
(a)Caイオン交換シリカ及びリン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩及び酸化ケイ素
(c)カルシウム化合物及び酸化ケイ素
(d)カルシウム化合物、リン酸塩及び酸化ケイ素
(e)モリブデン酸塩
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
が配合された防錆添加成分(B)が配合され、さらに、必要に応じて固形潤滑剤(C)が配合された膜厚が0.1〜5μmの有機皮膜である。
【0064】
有機皮膜の基体樹脂としては、OH基及び/又はCOOH基を有する有機高分子樹脂(A)を用いる。また、そのなかでは熱硬化性樹脂が好ましく、特にエポキシ樹脂又は変性エポキシ樹脂が好ましい。さらにその中でも、酸素などの腐食因子に対して優れた遮断性を有する熱硬化性のエポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂が最適であり、とりわけ高度な導電性及びスポット溶接性を得るために皮膜の付着量を低レベルにする場合には特に有利である。OH基及び/又はCOOH基を有する有機高分子樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、アルキッド樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミン樹脂、ポリフェニレン樹脂類及びこれらの樹脂の2種以上の混合物若しくは付加重合物などが挙げられる。前記樹脂としては、特許文献4に記載されるものを使用できる。
【0065】
第2層皮膜の有機皮膜中の成分(a)〜(f)による防食機構については先に述べた通りである。
【0066】
上記成分(a)、(b)中に含まれるCaイオン交換シリカは、カルシウムイオンを多孔質シリカゲル粉末の表面に固定したもので、腐食環境下でCaイオンが放出されて沈殿膜を形成する。Caイオン交換シリカとしては任意のものを用いることができるが、平均粒子径が6μm以下、望ましくは4μm以下のものが好ましく、例えば、平均粒子径が2〜4μmのものを用いることができる。Caイオン交換シリカの平均粒子径が6μmを超えると耐食性が低下するとともに、塗料組成物中での分散安定性が低下する。Caイオン交換シリカ中のCa濃度は1質量%以上、望ましくは2〜8質量%であることが好ましい。Ca濃度が1質量%未満ではCa放出による防錆効果が十分に得られない。なお、Caイオン交換シリカの表面積、pH、吸油量については特に限定されない。以上のようなCaイオン交換シリカは、特許文献4および特許文献5に記載されるものを使用できる。
【0067】
上記成分(a)、(b)、(d)中に含まれるリン酸塩は、単塩、複塩などの全ての種類の塩を含む。また、それを構成する金属カチオンに限定はなく、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどのいずれの金属カチオンでもよい。また、リン酸イオンの骨格や縮合度などにも限定はなく、正塩、二水素塩、一水素塩又は亜リン酸塩のいずれでもよく、さらに、正塩はオルトリン酸塩の他、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。
【0068】
上記成分(c)、(d)中に含まれるカルシウム化合物は、カルシウム酸化物、カルシウム水酸化物、カルシウム塩のいずれでもよく、これらの1種または2種以上を使用できる。また、カルシウム塩の種類にも特に制限はなく、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのようなカチオンとしてカルシウムのみを含む単塩のほか、リン酸カルシウム・亜鉛、リン酸カルシウム・マグネシウムなどのようなカルシウムとカルシウム以外のカチオンを含む複塩を使用してももよい。
【0069】
上記成分(b)、(c)、(d)中に含まれる酸化ケイ素は、コロイダルシリカ、乾式シリカのいずれでもよい。コロイダルシリカとしては、特許文献4または特許文献5に記載されるものが使用される。
【0070】
前記成分(e)のモリブデン酸塩は、その骨格、縮合度に限定はなく、例えばオルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩などが挙げられる。また、単塩、複塩などの全ての塩を含み、複塩としてはリン酸モリブデン酸塩などが挙げられる。
【0071】
上記の防錆添加成分(a)〜(f)は、先に述べたように腐食環境下において沈殿効果(成分(a)〜(d)の場合)、不動態化効果(成分(e)の場合)、吸着効果(成分(f)の場合)により、それぞれ保護皮膜を形成する。特に本発明では、特定の有機高分子樹脂に上記成分(a)〜(f)のいずれかを配合することにより、特定の有機高分子樹脂によるバリア効果と上記成分(a)〜(f)による自己補修効果とが複合化することによって極めて優れた防食効果が発揮される。
【0072】
有機樹脂皮膜中での上記防錆添加成分(B)の合計の配合量(上記成分(a)〜(f)のうちのいずれかを添加した自己補修性発現物質の合計の配合量)は、基体樹脂100重量部(固形分)に対して、1〜100重量部(固形分)、好ましくは5〜80重量部(固形分)、さらに好ましくは10〜50重量部(固形分)とする。防錆添加成分(B)の配合量が1重量部未満では耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100重量部を超えると、耐食性が低下するので好ましくない。
【0073】
有機皮膜中には、さらに必要に応じて、皮膜の加工性を向上させる目的で固形潤滑剤(C)を配合することができる。固形潤滑剤(C)は、特許文献4に記載されるものを使用できる。
【0074】
有機皮膜の乾燥膜厚は0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2μmとする。有機皮膜の膜厚が0.1μm未満では耐食性が不十分であり、一方、膜厚が5μmを超えると導電性、加工性が低下する。
【0075】
そして、前述したように、前記第1層皮膜と第2層皮膜を形成した第5発明の表面処理鋼板においては、電磁波シールド特性と耐食性を良好にする観点から、皮膜形成後の中心線平均粗さRaをx(μm)、第1層と第2層を合わせた全平均皮膜厚をy(μm)とするとき、xとyが下記(1)式を満足することで電磁波シールド特性と耐食性を良好にすることができる。xとyが下記(2)式を満足することで電磁波シールド特性と耐食性ををさらに良好にすることができるので、より好ましい。
y≦0.64x+0.12 (1)
y≦0.56x−0.10 (2)
次に第6発明について説明する。
【0076】
第6発明において、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される第1層皮膜である複合酸化物皮膜は、第5発明の第1層皮膜の複合酸化物皮膜と同じものである。第6発明の第1層皮膜である複合酸化物皮膜の防食機構については、第5発明における第1層皮膜の作用と同様と考えられる。
【0077】
次に、第6発明において、上記複合酸化物皮膜(第1層皮膜)の上部に第2層皮膜として形成される有機皮膜の防食機構については、次のように推定される。すなわち、単なる低分子量のキレート化剤ではなく、皮膜形成有機樹脂にヒドラジン誘導体を付与することによって、(1)緻密な有機高分子皮膜により酸素や塩素イオンなどの腐食因子を遮断する効果が得られること、(2)ヒドラジン誘導体が第1層皮膜の表面と安定で強固に結合して不動態化層を形成できること、(3)腐食反応によって溶出した亜鉛イオンを皮膜中のフリーのヒドラジン誘導体基がトラップし、安定な不溶性キレート化合物層を形成するため、界面でのイオン伝導層の形成が抑制されて腐食の進行が抑制されること、などの作用効果により腐食の進行が効果的に抑制され、優れた耐食性が得られるものと考えられる。
【0078】
また、皮膜形成有機樹脂(A)として、特にエポキシ基含有樹脂を用いた場合には、エポキシ基含有樹脂と架橋剤との反応により緻密なバリヤー皮膜が形成され、このバリヤー皮膜は酸素などの腐食因子の透過抑制能に優れ、また、分子中の水酸基により素地との優れた結合力が得られるため、特に優れた耐食性(バリヤー性)が得られる。さらに、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)として、特に活性水素を有するピラゾール化合物及び/又は活性水素を有するトリアゾール化合物を用いることにより、より優れた耐食性(バリヤー性)が得られる。
【0079】
従来技術のように皮膜形成有機樹脂に単にヒドラジン誘導体を混合しただけでは、腐食抑制の向上効果はほとんど認められない。その理由は、皮膜形成有機樹脂の分子中に組み込まれていないヒドラジン誘導体は、第1層皮膜中の金属とキレート化合物を形成するものの、そのキレート化合物は低分子量のため緻密なバリヤー層にはならないためであると考えられる。これに対して、本発明のように皮膜形成有機樹脂の分子中にヒドラジン誘導体を組み込むことにより、格段に優れた腐食抑制効果が得られる。
【0080】
また、第6発明の表面処理鋼板では、上記のような特定の反応生成物からなる有機皮膜中に、
(a)Caイオン交換シリカ及びリン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩及び酸化ケイ素
(c)カルシウム化合物及び酸化ケイ素
(d)カルシウム化合物、リン酸塩及び酸化ケイ素
(e)モリブデン酸塩
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
のうちのいずれかを添加した防錆添加成分(Y)(自己補修性発現物質)を適量配合することにより、特に優れた防食性能(自己修復効果)を得ることができる。この特定の有機皮膜中に上記(a)〜(f)の成分を配合したことにより得られる防食機構は、前述した第5発明の第2層皮膜における作用と同様の作用に基づくと考えられる。
【0081】
次に、第6発明において、上記第複合酸化物皮膜(第1層皮膜)の上部に第2層皮膜として形成される有機皮膜について説明する。
【0082】
第6発明においては、複合酸化物皮膜(第1層皮膜)の上部に形成される有機皮膜(第2層皮膜)は、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、自己補修性発現物質である下記(a)〜(f)のうちのいずれかの防錆添加成分(Y)、
(a)Caイオン交換シリカ及びリン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩及び酸化ケイ素
(c)カルシウム化合物及び酸化ケイ素
(d)カルシウム化合物、リン酸塩及び酸化ケイ素
(e)モリブデン酸塩
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
が配合された有機皮膜である。
【0083】
皮膜形成有機樹脂(A)の種類としては、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(B)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はない。この皮膜形成有機樹脂(A)としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの樹脂の付加物又は縮合物などを挙げることができ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0084】
また、皮膜形成有機樹脂(A)としては、反応性、反応の容易さ、防食性などの点から、樹脂中にエポキシ基を含有するエポキシ基含有樹脂(D)が特に好ましい。このエポキシ基含有樹脂(D)としては、一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(B)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はなく、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂、及びこれらの樹脂の付加物若しくは縮合物などが挙げられ、これらのエポキシ基含有樹脂の1種を単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0085】
また、これらのエポキシ基含有樹脂(D)の中でも、めっき表面との密着性、耐食性の点からエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂が特に好適である。またその中でも、酸素などの腐食因子に対して優れた遮断性を有する熱硬化性のエポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂が最適であり、とりわけ高度な導電性及びスポット溶接性を得るために皮膜の付着量を低レベルにする場合には特に有利である。
【0086】
第6発明では皮膜形成有機樹脂(A)の分子中にヒドラジン誘導体を付与することを狙いとしており、このため活性水素含有化合物(B)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)であることが必要である。
【0087】
第2皮膜中の成分(a)〜(f)による防錆機構は、前述した通りである。また成分(a)〜(f)については、第5発明と同様のものを使用できる。
【0088】
有機樹脂皮膜中での上記防錆添加成分(Y)の配合量(上記成分(a)〜(f)のうちのいずれかを添加した自己補修性発現物質の合計の配合量)は、皮膜形成用の樹脂組成物である反応生成物(X)(皮膜形成有機樹脂(A)と一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物)100重量部(固形分)に対して、1〜100重量部(固形分)、好ましくは5〜80重量部(固形分)、さらに好ましくは10〜50重量部(固形分)とする。防錆添加成分(Y)の配合量が1重量部未満では耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100重量部を超えると、耐食性が低下するので好ましくない。
【0089】
以上述べたような有機皮膜は上記複合酸化物皮膜の上部に形成される。有機皮膜の乾燥膜厚は0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2μmとする。有機皮膜の膜厚が0.1μm未満では耐食性が不十分であり、一方、膜厚が5μmを超えると導電性、加工性が低下する。
【0090】
前記したように、前記第1層皮膜と第2層皮膜を形成した第6発明の表面処理鋼板においても、電磁波シールド特性と耐食性を良好にする観点から、皮膜形成後の中心線平均粗さRaをx(μm)、第1層と第2層を合わせた全平均皮膜厚をy(μm)とするとき、xとyは、第5発明の場合と同様、下記(1)式を満足することが好ましく、下記(2)式を満足することがさらに好ましい。
y≦0.64x+0.12 (1)
y≦0.56x−0.10 (2)
また、本発明者等によるクロムフリー化成処理鋼板に関する種々の研究の結果、第7発明または第8発明に記載される表面処理鋼板であっても、従来のクロメート処理鋼板に充分代替出来る特性を有していることが見い出された。以下、第7発明、第8発明の表面処理鋼板の皮膜について説明する。先ず、第7発明の皮膜について説明する。
【0091】
第7発明において、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される皮膜は、一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第1〜3アミノ基及び第4アンモニウム塩基、から選ばれる少なくとも1種のカチオン性官能基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基及びメタクリロキシ基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する1種以上のシランカップリング剤(C)と、Ti化合物若しくはZr化合物の少なくとも1種(D)と、リン酸、硝酸及び酢酸、若しくはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(E)とを含有する表面処理剤(以下、「本発明の表面処理剤」と言う)を塗布し、乾燥することにより形成され、所定の膜厚を有する。
【0092】
第7発明の表面処理剤組成物において樹脂化合物(A)は下記一般式(I)により表される。
【0093】
【化7】
Figure 2004156081
【0094】
式中、ベンゼン環に結合しているY1およびY2は、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは平均重合度を表し、2〜50の整数である。ここで、Z基の置換数の平均値とは、全Z基導入数を全ベンゼン環数(即ち2n)で除した数値のことである。
また、平均重合度nが2未満では耐食性付与効果が不十分で、50を越えると水溶性の低下、増粘などにより、処理剤中での安定性が低下し、保存安定性が不十分である。
【0095】
【化8】
Figure 2004156081
【0096】
【化9】
Figure 2004156081
【0097】
式(II)および(III)中のR、R、R、RおよびRは、それぞれお互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基又はヒドロキシアルキル基の炭素数が10を越えると樹脂(A)を十分に水溶化することができず、処理剤中で不安定となり適用できない。R、R、R、RおよびRは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソブチルなどが挙げることができる。
【0098】
は水酸イオン又は酸イオンを表す。酸イオンの具体例としては、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオンなどを挙げることができる。
【0099】
一般式(I)で表せる樹脂化合物(A)はビスフェノール−ホルマリン縮合物で、その合成方法は特定しないが、例えば、アルカリ触媒存在下、ビスフェノールAにホルマリンとアミンを作用させることで得ることができる。
【0100】
第7発明における表面処理剤組成物中のカチオン性ウレタン樹脂(B)は、カチオン性官能基として第1〜3アミノ基、又は第4アンモニウム塩基から選ばれる少なくとも1種のカチオン性官能基を有するものであれば、構成されるモノマー成分であるポリオール、イソシアネート成分および重合方法を特に限定されるものではない。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基などがあげられるが、第1〜3アミノ基、又は第4アンモニウム塩基であれば本発明の性能を損なわない限り限定しない。
【0101】
第7発明の表面処理剤は、カチオン性ウレタン樹脂(B)を、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)の合計量の全固形分に対して1〜20質量%含有する。好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは4〜10質量%である。このカチオン性ウレタン樹脂を1〜20質量%含有することにより、未添加の場合に発生しやすい、腐食初期のごく薄い白錆を効果的に防ぐことができる。この理由は必ずしも明らかではないが、カチオン性ウレタン樹脂を特定比率、配合することにより造膜性が向上し、腐食初期のごく薄い白錆発生を改善することができると考えられる。しかしながら、1質量%未満では初期の薄錆発生の抑制効果が不十分であり、20質量%を越えると長期の耐食性と耐黒変性が不十分となる。
【0102】
第7発明における表面処理剤組成物中のシランカップリング剤(C)は、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基およびメタクリロキシ基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する1種以上のシランカップリング剤であれば特に限定されるものではないが、具体例を挙げると、N−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトエリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが使用できる。
【0103】
第7発明の表面処理剤は、シランカップリング剤(C)を、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)の合計量の全固形分に対して45〜85質量%含有する。好ましくは55〜75質量%、さらに好ましくは60〜70質量%である。45質量%未満では耐食性および塗料密着性が不十分であり、85質量%を越えると皮膜の耐指紋性が低下する。
【0104】
第7発明における表面処理組成物中のTi化合物若しくはZr化合物の少なくとも1種(D)は、Tiの供給源となるのもであれば特に対となるアニオンを限定するものではないが、具体例をあげると、酢酸チジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、りん酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム水素酸、酢酸チタン、硝酸チタン、硫酸チタン、りん酸チタン、炭酸チタン、チタンフッ化水素酸などが使用できる。
【0105】
第7発明の表面処理剤はTi化合物若しくはZr化合物の少なくとも1種(D)を、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)の合計量の全固形分に対して1〜20質量%含有することが望ましい。より好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。1質量%未満では耐食性および耐黒変性が不十分であり、20質量%を越えると表面処理剤の可使時間が短くなる。
【0106】
第7発明における表面処理剤組成物中の酸化合物(E)は、りん酸、硝酸及び酢酸、もしくはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の酸化合物を含むものであれば特に限定するものではないが、具体例を挙げると、オルソりん酸、ピロりん酸、トリメタりん酸、テトラメタりん酸、ヘキサメタりん酸、りん酸二水素アンモニウム、りん酸水素二アンモニウム、りん酸三アンモニウム、りん酸二水素ナトリウム、りん酸水素二ナトリウム、りん酸三ナトリウム、硝酸、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウムなどが使用できる。
【0107】
第7発明の表面処理剤は、りん酸、硝酸及び酢酸、もしくはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(E)を、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)の合計量の全固形分に対して1〜30質量%含有することが望ましい。より好ましくは3〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。1質量%未満では耐食性が不十分であり、30質量%を越えると塗料密着性が不十分である。
【0108】
また、第7発明の表面処理剤は、前記組成物(A)ないし(E)に加え、充填剤や潤滑剤などを含有し得る。
【0109】
以上のような第7発明の表面処理剤組成物により形成される皮膜は乾燥膜厚が0.01〜5μm、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.3〜2μmである。乾燥膜厚が0.01μm未満では耐食性が不十分であり、一方、5μmを超えると導電性や加工性が低下する。
【0110】
第7発明においても、電磁波シールド特性と耐食性を良好にする観点からは、皮膜形成後の中心線平均粗さRaをx(μm)、皮膜厚さをy(μm)とするとき、xとyは、下記(1)式を満足することが好ましく、下記(2)式を満足することがさらに好ましいことが確認された。
y≦0.64x+0.12 (1)
y≦0.56x−0.10 (2)
第7発明においては、前述した皮膜の上層に、第2層皮膜として、有機樹脂皮膜を形成することができる。この場合、第2層皮膜形成後の表面の中心粗さRa;x(μm)と、前述した皮膜と第2層皮膜の合計膜厚(平均値);y(μm)が前記(1)式を満足させることで、電磁波シールド特性と耐食性を良好にすることができ、前記(2)式を満足することがより好ましい。この場合、第2層である有機樹脂皮膜の皮膜厚を0.01μm以上5μm未満にするとともに、第1層皮膜である上記表面処理皮膜の膜厚を0.01μm以上5μm未満とし、両皮膜の合計膜厚が5μmを超えないようにすることが好ましい。より好ましくは、第一層皮膜の上層にさらに第二層有機樹脂皮膜を形成する場合の膜厚は、第一層皮膜の膜厚が0.01〜2μmとなるように形成し、さらに第二層有機樹脂皮膜を膜厚0.01〜3μmの膜厚とし、合計の膜厚が5μmを超えないようにする。
【0111】
次に第8発明について説明する。第8発明の表面処理鋼板において亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される皮膜は、
(a)数平均分子量400〜20,000のポリアルキレングリコール、ビスフェノール型エポキシ樹脂、活性水素含有化合物及びポリイソシアネート化合物を反させて得られるポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)と、(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)と、必要に応じて(C)以外の活性水素含有化合物(D)とを反応させる事により得られる樹脂を水中に分散してなる水性エポキシ樹脂分散液と、
(b)シランカップリング剤と、
(c)リン酸および/またはヘキサフルオロ金属酸と、
を含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜である。
【0112】
第8発明の(a)成分である水性エポキシ樹脂分散液について説明する。水性エポキシ樹脂分散液(a)は、ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)、(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)及び必要に応じて(C)以外の活性水素含有化合物(D)を反応させ得られる樹脂(以下、単に「水分散性樹脂」ともいう)を水中に分散してなるものである。
【0113】
さらに、上記ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)は、数平均分子量400〜20,000のポリアルキレングリコール、ビスフェノール型エポキシ樹脂、活性水素含有化合物及びポリイソシアネート化合物を反応させて得ることができる。
【0114】
上記ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどがあり、中でもポリエチレングリコールが好適に用いられる。ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、得られる樹脂の水分散性、貯蔵性などの点から400〜20,000、好ましくは500〜10,000の範囲内が適している。
【0115】
また、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するビスフェノール系化合物であって、特に、ビスフェノール系化合物とエピハロヒドリン、例えばエピクロルヒドリンとの縮合反応によって得られるビスフェノールのジグリシジルエーテルが可撓性及び防食性に優れた塗膜が得やすく好適である。
【0116】
エポキシ樹脂の調製に使用しうるビスフェノール系化合物の代表例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)−2,2−プロパン等が挙げられる。かかるビスフェノール系化合物を用いて形成されるエポキシ樹脂のうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、可撓性、防食性などに優れた塗膜を得られるという点で特に好適である。
【0117】
また、エポキシ樹脂はポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂製造時の製造安定性などの点から、一般に、約310〜約10,000、特に約320〜約2,000の範囲内の数平均分子量を有していることが好ましく、また、エポキシ当量は約155〜約5,000、特に約160〜約1,000の範囲内にあるのが好ましい。
【0118】
さらに、上記活性水素含有化合物は上記ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)中のイソシアネート基のブロッキングのために使用されるものである。その代表的なものとしては、例えば、メタノール、エタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の1価アルコール;酢酸、プロピオン酸等の1価カルボン酸;エチルメルカプタン等の1価チオールが挙げられ、それ以外のブロッキング剤(活性水素含有化合物)としては、ジエチルアミン等の第2級アミン;ジエチレントリアミン、モノエタノールアミン等の1個の2級アミノ基又はヒドロキシル基と1個以上の第1級アミノ基を含有するアミン化合物の第1級アミノ基を、ケトン、アルデヒドもしくはカルボン酸と、例えば100〜230℃の温度で加熱反応させることによりアルジミン、ケチミン、オキサゾリンもしくはイミダゾリンに変性した化合物;メチルエチルケトキシムのようなオキシム;フェノール、ノニルフェノール等のフェノール類等が挙げられる。これらの化合物は一般に30〜2,000、特に30〜200の範囲内の分子量を有することが望ましい。
【0119】
上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上、好ましくは2個または3個有する化合物であり、ポリウレタン樹脂の製造に一般に用いられるものが同様に使用できる。そのようなポリイソシアネート化合物としては、脂肪族系、脂環式系、芳香族系などのポリイソシアネート化合物が包含され、代表的には以下のものを例示することができる。
ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、HMDIのビウレット化合物、HMDIのイソシアヌレート化合物などの脂肪族系ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、IPDIのビウレット化合物、IPDIのイソシアヌレート化合物、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式系ポリイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族系ポリイソシアネート化合物。
【0120】
ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)製造時の各成分の配合割合は一般には下記の範囲内とするのが適当である。
【0121】
ポリアルキレングリコールの水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比:1/1.2〜1/10、好ましくは1/1.5〜1/5、更に好ましくは1/1.5〜1/3、活性水素含有化合物の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比:1/2〜1/100、好ましくは1/3〜1/50、更に好ましくは1/3〜1/20、ポリアルキレングリコール、エポキシ樹脂及び活性水素含有化合物の水酸基の合計量とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比:1/1.5以下、好ましくは1/0.1〜1/1.5、更に好ましくは1/0.1〜1/1.1とするのが適当である。
【0122】
上記ポリアルキレングリコール、ビスフェノール型エポキシ樹脂、活性水素含有化合物及びポリイソシアネート化合物の反応は通常公知の方法により行うことができる。
【0123】
上記で得られたポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)、(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)及び必要に応じて(C)以外の活性水素含有化合物(D)を反応させることにより容易に水中に分散することができ、かつ素材との付着性のよいエポキシ樹脂を得ることができる。
【0124】
(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)としてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか、このグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂;さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられ、これらは1種で、または2種以上混合して使用する事ができる。これらのエポキシ樹脂は、特に低温での皮膜形成性を必要とする場合には数平均分子量が1,500以上であることが好適である。
【0125】
また、(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)として、上記エポキシ基含有樹脂中のエポキシ基または水酸基に各種変性剤を反応させた樹脂を挙げることができ、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分で変性したエポキシアクリレート樹脂;イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0126】
さらに、(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)として、エポキシ基を有する不飽和モノマーとアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを必須とする重合性不飽和モノマー成分を溶液重合法、エマルション重合法または懸濁重合法などによって合成したエポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂を挙げることができ、上記重合性不飽和モノマー成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−、iso−もしくはtert―ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C24のアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのC1〜4アルキルエーテル化物、N、N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることができる。エポキシ基を有する不飽和モノマーとしてはグリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、3,4エポキシシクロヘキシル−1−メチル(メタ)アクリレーなど、エポキシ基と重合性不飽和基を持つものであれば、特に制限されるものではない。
【0127】
また、このアクリル系共重合体樹脂はポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などによって変性させた樹脂とすることもできる。
【0128】
上記(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)として特に好ましいのは、ビスフェノールAとエピパロヒドリンとの反応生成物である下記式に代表される樹脂であり、耐食性に優れているため特に好適である。
【0129】
【化10】
Figure 2004156081
【0130】
上記構造式中、qは0〜50の整数、好ましくは1〜40の整数、特に好ましくは2〜20の整数である。
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂は、当業界において広く知られた製造法により得ることができる。
【0131】
上記エポキシ基含有樹脂のエポキシ基と反応する活性水素含有化合物としては下記のものが挙げられる。
・活性水素を有するヒドラジン誘導体
・活性水素を有する第1級または第2級のアミン化合物
・アンモニア、カルボン酸などの有機酸
・塩化水素等のハロゲン化水素類
・アルコール類、チオール類
・活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤。
【0132】
第8発明では、これらの1種または2種以上を使用できるが、優れた耐食性を得るために、活性水素含有化合物の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体であることが必要である。
【0133】
上記活性化水素を有するアミン化合物の代表例としては、以下のものを挙げることができる。
(1)ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどの1個の2級アミノ基と1個以上の1級アミノ基を含有するアミン化合物の1級アミノ基を、ケトン、アルデヒドもしくはカルボン酸と例えば100〜230℃程度の温度で加熱反応させてアルジミン、ケチミン、オキサゾリン、もしくはイミダゾリンに変性した化合物
(2)ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−または−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン
(3)モノエタノールアミンなどのようなモノアルカノールアミンとジアルキル(メタ)アクリルアミドとをミカエル付加反応により付加させて得られる第2級アミン含有化合物
(4)モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−ヒドロキシ−2´(アミノプロポキシ)エチルエーテルなどのアルカノールアミンの1級アミン基をケチミンに変性した化合物
また、活性水素含有化合物の一部として使用できる(すなわち、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)以外の活性水素含有化合物(D)としての)上記4級塩化剤は、活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンはそれ自体ではエポキシ基と反応性を有しないので、これらをエポキシ基と反応可能とするために酸との混合物としたものである。4級塩化剤は、必要に応じて水の存在下でエポキシ基と反応し、エポキシ基含有樹脂と4級塩を形成する。4級塩化剤を得るために使用される酸は、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれでもよい。また、4級塩化剤を得るために使用される活性水素を有しないヒドラジン誘導体としては、例えば3,6−ジクロロピリダジンなどを、また、第3級アミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0134】
上述のように活性水素含有化合物で最も有用で耐食性に優れた性能を発揮するのが活性水素を有するヒドラジン誘導体であるが、活性水素を有するヒドラジン誘導体の具体例としては、例えば以下のものを挙げることができる。
▲1▼カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物;
▲2▼ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物;
▲3▼1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなどのトリアゾール化合物;
▲4▼5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなどのテトラゾール化合物;
▲5▼5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物;
▲6▼マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾン等などのピリダジン化合物;
また、これらのなかでも、5員環または6員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適である。これらのヒドラジン誘導体は1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0135】
このように、ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)、(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)及び必要に応じて(C)以外の活性水素含有化合物(D)を好ましくは10〜300℃、より好ましくは50〜150℃の温度で約1〜8時間反応させることにより得られる樹脂(すなわち、第8発明の水分散性樹脂)を水中に分散させることにより水性エポキシ樹脂分散液(a)を得ることができる。
【0136】
この反応は有機溶剤を加えて行ってもよく、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の水酸基を含有するアルコール類やエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素等を例示でき、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂との溶解性、塗膜形成性等の面からは、ケトン系またはエーテル系の溶剤が特に好ましい。
【0137】
ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)及び(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)と活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)との配合は、ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)及び(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)中のエポキシ基に対するヒドラジン誘導体(C)中の活性水素基の当量比が0.01〜10、好ましくは0.1〜8、さらに好ましくは0.2〜4となるようにすることが耐食性、水分散性などの点から適当である。
【0138】
また、ヒドラジン誘導体(C)の一部を活性水素含有化合物(D)に置き換えることもできるが、置き換える量としては90モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは10〜60モル%の範囲内とすることが防食性、付着性の観点から適している。
【0139】
また、第8発明では緻密なバリア皮膜を形成するために、水性エポキシ樹脂分散液(a)中に硬化剤を配合し、有機皮膜を加熱硬化させることが望ましい。樹脂組成物皮膜を形成する場合の硬化方法としては、(1)イソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を利用する硬化方法、(2)メラミン、尿素およびベンゾグアナミンの中から選ばれた1種または2種以上にホルムアルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させてなるアルキルエーテル化アミノ樹脂と基体樹脂中の水酸基との間のエーテル化反応を利用する硬化方法が適当であるが、このうちイソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を主反応とすることが特に好適である。
【0140】
上記(1)の硬化方法で用い得る硬化剤としてのポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環族(複素環を含む)または芳香族イソシアネート化合物、若しくはそれらの化合物を多価アルコールで部分反応させた化合物である。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば以下のものが例示できる。
【0141】
▲1▼m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、o−またはp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート
▲2▼上記▲1▼の化合物単独またはそれらの混合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートが残存する化合物
これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用できる。
【0142】
また、ポリイソシアネート化合物の保護剤(ブロック剤)としては、例えば、
▲1▼メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類
▲2▼エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)などのモノエーテル
▲3▼フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール
▲4▼アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム
などが使用でき、これらの1種または2種以上と前記ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常温下で安定に保護された硬化剤としてのポリイソシアネート化合物を得ることができる。
【0143】
このようなポリイソシアネート化合物(a2)は、エポキシ基含有樹脂と上記特定の活性水素含有化合物との反応生成物(a1)(すなわち、上記(a)の成分である水分散性樹脂)に対して、硬化剤として好ましくは(a1)/(a2)=95/5〜55/45(不揮発分の質量比)、好ましくは(a1)/(a2)=90/10〜65/35の割合で配合するのが適当である。ポリイソシアネート化合物には吸水性があり、これを(a1)/(a2)=55/45を超えて配合すると有機皮膜の密着性を劣化させてしまう。さらに、有機皮膜上に上塗り塗装を行った場合、未反応のポリイソシアネート化合物が塗膜中に移動し、塗膜の硬化阻害や密着性不良を起こしてしまう。このような観点から、ポリイソシアネート化合物(a2)の配合量は(a1)/(a2)=55/45以下とすることが好ましい。
【0144】
なお、エポキシ基含有樹脂と上記特定の活性水素含有化合物との反応生成物である水分散性樹脂は以上のような架橋剤(硬化剤)の添加により十分に架橋するが、さらに低温架橋性を増大させるため、公知の硬化促進触媒を使用することが望ましい。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマスなどが使用できる。また、付着性など若干の物性向上を狙いとして、エポキシ基含有樹脂とともに公知のアクリル、アルキッド、ポリエステル等の樹脂を混合して用いることもできる。
【0145】
次に、上記(b)の成分であるシランカップリング剤について説明する。このシランカップリング剤としては、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメエキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジルアミン)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができ、これらの1種を単独でまたは2種類以上を混合して使用することができる。これらのシランカップリング剤を含む皮膜が耐食性に優れる理由は、水溶液中のシランカップリグ剤が加水分解することにより生じたシラノール基(Si−OH)がめっき皮膜表面と水素結合をし、さらには脱水縮合反応により優れた密着性を付与することと考えられる。
【0146】
このようにシランカップリング剤を配合することによりめっき金属と水分散性樹脂および/または水溶性樹脂との密着性を高めることが可能であるが、第8発明の場合には表面処理組成物に含まれる酸成分が不活性な金属表面を活性化し、さらにシランカップリング剤が活性化されためっき金属と水分散性樹脂の両方と化学結合することで、めっき金属と水分散性樹脂との密着性を格段に高めることができる。そして、このようにめっき金属と皮膜形成樹脂との密着性を高めることにより、めっき金属の腐食の進行が効果的に抑制され、特に優れた耐食性が得られる。
【0147】
また、上記シランカップリング剤の中でも、上記(a)の水分散性樹脂と反応性が高い官能基を有するという観点から、特に反応性官能基としてアミノ基を有すシランカップリング剤が特に好ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメエキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、具体的には、信越化学(株)製「KBM−903」、「KBE−903」、「KBM−603」、「KBE−602」、「KBE−603」などを用いることができる。
【0148】
シランカップリング剤の配合量は、上記(a)の成分である水分散性樹脂の固形分100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは、15〜50質量部とするのが適当である。シランカップリング剤の配合量が1質量部未満では耐食性が劣り、一方300質量部を超えると十分な皮膜が形成できないため、水分散性樹脂との密着性とバリア性を高める効果が発揮できず耐食性が低下する。
【0149】
次に上記(c)の成分であるリン酸および/またはヘキサフルオロ金属酸は、不活性なめっき皮膜表面に作用して金属表面を活性化させる作用を有する。そして、このように活性化されためっき金属表面と皮膜形成樹脂との密着性がシランカップリング剤を介して著しく向上する結果、耐食性が顕著に改善される。このリン酸とヘキサフルオロ金属酸は単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0150】
ヘキサフルオロ金属酸の種類は特に限定されないが、より優れた耐食性を発現させるという観点から、特にフッ化チタン酸、フッ化ジルコン酸、けいフッ酸などのようなTi,Si,Zrの中から選ばれる1種または2種以上の元素を含むヘキサフルオロ金属酸が好ましく、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0151】
リン酸および/またはヘキサフルオロ金属酸の配合量(併用する場合は合計の配合量)は、上記(a)の成分である水分散性樹脂の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜80質量部、より好ましくは1〜60質量部、さらに好ましくは5〜50質量部とするのが適当である。リン酸および/またはヘキサフルオロ金属酸の配合量が0.1質量部未満では耐食性が劣り、一方、80質量部超では皮膜形成後の外観ムラが生じやすい。
【0152】
表面処理組成物には、耐食性向上を目的として、必要に応じて水溶性リン酸塩を配合することができる。この水溶性リン酸塩としては、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸などの金属塩の1種又は2種以上を用いることができる。また、有機リン酸の塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩およびこれらの金属塩)の1種以上を添加してもよい。また、それらのなかでも第一リン酸塩が表面処理組成物の安定性などの面から好適である。
【0153】
皮膜中でのリン酸塩の存在形態も特別な限定はなく、また、結晶若しくは非結晶であるか否かも問わない。また、皮膜中でのリン酸塩のイオン性、溶解度についても特別な制約はない。水溶性リン酸塩を配合することにより耐食性が向上する理由は、水溶性リン酸塩が皮膜形成時に緻密な難溶性化合物を形成するためであると考えられる。
【0154】
シランカップリング剤は活性化されためっき金属と皮膜形成樹脂の両方と化学結合することで、めっき金属と皮膜形成樹脂との優れた密着性と耐食性が得られるが、めっき金属表面には不可避的に不活性な部分が存在し、このような不活性なサイトでは上記化学結合が生じにくく防錆効果を十分発揮できない。水溶性リン酸塩はこのようなめっき皮膜の部分に対して、皮膜形成時に緻密な難溶性化合物を形成する。すなわち、水溶性リン酸塩のリン酸イオンによるめっき皮膜の溶解に伴いめっき皮膜/表面処理組成物界面でpHが上昇し、その結果、水溶性リン酸塩の沈殿物皮膜が形成され、これが耐食性の向上に寄与する。
【0155】
また、特に優れた耐食性を得るというの観点からは、水溶性リン酸塩のカチオン種としてはAl、Mn、Ni、Mgが特に望ましく、これらの中から選ばれる1種以上の元素を含む水溶性リン酸塩を用いることが好ましい。このような水溶性リン酸塩としては、例えば、第一リン酸アルミニウム、第一リン酸マンガン、第一リン酸ニッケル、第一リン酸マグネシウムが挙げられ、これらのうちでも特に第一リン酸アルミニウムが最も好ましい。また、そのカチオン成分とP成分のモル比[カチオン]/[P]は0.4〜1.0であることが好ましい。モル比[カチオン]/[P]が0.4未満では可溶性のリン酸によって皮膜の難溶性が損なわれ、耐食性が低下するので好ましくない。一方、1.0を超えると処理液安定性が著しく失われるので好ましくない。
【0156】
この水溶性リン酸塩の配合量は、上記(a)の成分である水分散性樹脂および/または水溶性樹脂の固形分100重量部に対して、固形分で0.1〜60重量部、好ましくは0.5〜40重量部、さらに好ましくは1〜30重量部とするのが適当である。水溶性リン酸塩の配合量が0.1重量部未満では耐食性の向上効果が十分でなく、一方、60重量部を超えると処理液のpHが低下するため反応性が強くなり、外観ムラを生じやすくなる。
【0157】
表面処理組成物には、耐食性向上を目的として、必要に応じて非クロム系防錆添加剤を配合することができる。表面処理組成物中にこのような非クロム系防錆添加剤を配合することにより、特に優れた防食性能(自己補修性)を得ることができる。
【0158】
この非クロム系防錆添加剤は、特に下記(e1)〜(e5)の群の中から選ばれる1つ以上を用いることが好ましい。
(e1)酸化ケイ素
(e2)カルシウム又はカルシウム化合物
(e3)難溶性リン酸化合物
(e4)モリブデン酸化合物
(e5)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の、S原子を含有する有機化合物
これら(e1)〜(e5)の非クロム系防錆添加剤の詳細及び防食機構は以下の通りである。
【0159】
まず、上記(e1)の成分としては微粒子シリカであるコロイダルシリカや乾式シリカを使用することができるが、耐食性の観点からは特に、カルシウムをその表面に結合させたカルシウムイオン交換シリカを使用するのが望ましい。
【0160】
コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学(株)製のスノーテックスO、20、30、40、C、S(いずれも商品名)を用いることができ、また、ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル(株)製のAEROSIL R971、R812、R811、R974、R202、R805、130、200、300、300CF(いずれも商品名)を用いることができる。また、カルシウムイオン交換シリカとしては、W.R.Grace&Co.製のSHIELDEX C303、SHIELDEX AC3、SHIELDEX AC5(いずれも商品名)、富士シリシア化学(株)製のSHIELDEX、SHIELDEX SY710(いずれも商品名)などを用いることができる。これらシリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制する。
【0161】
また、上記(e2)、(e3)の成分は沈殿作用によって特に優れた防食性能(自己補修性)を発現する。
【0162】
上記(e2)の成分であるカルシウム化合物は、カルシウム酸化物、カルシウム水酸化物、カルシウム塩のいずれでもよく、これらの1種または2種以上を使用できる。また、カルシウム塩の種類にも特に制限はなく、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのようなカチオンとしてカルシウムのみを含む単塩のほか、リン酸カルシウム・亜鉛、リン酸カルシウム・マグネシウムなどのようなカルシウムとカルシウム以外のカチオンを含む複塩を使用してももよい。この(e2)の成分は、腐食環境下においてめっき金属である亜鉛やアルミニウムよりも卑なカルシウムが優先溶解し、これがカソード反応により生成したOH−と緻密で難溶性の生成物として欠陥部を封鎖し、腐食反応を抑制する。また、上記のようなシリカとともに配合された場合には、表面にカルシウムイオンが吸着し、表面電荷を電気的に中和して凝集する。その結果、緻密で且つ難溶性の保護皮膜が生成して腐食が封鎖し、腐食反応を抑制する。
【0163】
また、上記(e3)である難溶性リン酸化合物としては、難溶性リン酸塩を用いることができる。この難溶性リン酸塩は単塩、複塩などの全ての種類の塩を含む。また、それを構成する金属カチオンに限定はなく、難溶性のリン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどのいずれの金属カチオンでもよい。また、リン酸イオンの骨格や縮合度などにも限定はなく、正塩、二水素塩、一水素塩または亜リン酸塩のいずれでもよく、さらに、正塩はオルトリン酸塩の他、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。この難溶性リン化合物は、腐食によって溶出しためっき金属の亜鉛やアルミニウムが、加水分解により解離したリン酸イオンと錯形成反応により緻密で且つ難溶性の保護皮膜を生成して腐食起点を封鎖し、腐食反応を抑制する。
【0164】
また、上記(e4)のモリブデン酸化合物としては、例えば、モリブデン酸塩を用いることができる。このモリブデン酸塩は、その骨格、縮合度に限定はなく、例えばオルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩などが挙げられる。また、単塩、複塩などの全ての塩を含み、複塩としてはリン酸モリブデン酸塩などが挙げられる。モリブデン酸化合物は不動態化効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食環境下で溶存酸素と共にめっき皮膜表面に緻密な酸化物を形成することで腐食起点を封鎖し、腐食反応を抑制する。
【0165】
また、上記(e5)の有機化合物としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。すなわち、トリアゾール類としては、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾールなどが、またチオール類としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2−メルカプトベンツイミダゾールなどが、またチアジアゾール類としては、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどが、またチアゾール類としては、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール類などが、またチウラム類としては、テトラエチルチウラムジスルフィドなどが、それぞれ挙げられる。これらの有機化合物は吸着効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食によって溶出した亜鉛やアルミニウムがこれらの有機化合物が有する硫黄を含む極性基に吸着して不活性皮膜を形成することで腐食起点を封鎖し、腐食反応を抑制する。
【0166】
非クロム系防錆添加剤の配合量は、上記(a)の成分である水分散性樹脂および/または水溶性樹脂の固形分100重量部に対して、固形分で0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部とするのが適当である。この非クロム系防錆添加剤の配合量が0.1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が十分に得られず、一方、50重量部を超えると塗装性及び加工性が低下するだけでなく、耐食性も低下するので好ましくない。
【0167】
なお、上記(e1)〜(e5)の防錆添加剤を2種以上複合添加してもよく、この場合にはそれぞれ固有の防食作用が複合化されるため、より高度の耐食性が得られる。特に、上記(e1)の成分としてカルシウムイオン交換シリカを用い、且つこれに(e3)、(e4)、(e5)の成分の1種以上、特に好ましくは(e3)〜(e5)の成分の全部を複合添加した場合に特に優れた耐食性が得られる。
【0168】
表面処理組成物には、皮膜の加工性を向上させる目的で、必要に応じて固形潤滑剤を配合することができる。
【0169】
以上のような成分を含む表面処理組成物により形成される第8発明の表面処理鋼板の皮膜は、乾燥膜厚が0.02〜5μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.3〜3μm、さらに好ましく0.5〜2μmとする。乾燥膜厚が0.02μm未満では耐食性が不十分であり、一方、5μmを超えると導電性や加工性が低下する。
【0170】
第8発明においても、電磁波シールド特性と耐食性を良好にする観点からは、皮膜形成後の中心線平均粗さRaをx(μm)、皮膜厚さをy(μm)とするとき、xとyは、下記(1)式を満足することが好ましく、下記(2)式を満足することがさらに好ましいことが確認された。
y≦0.64x+0.12 (1)
y≦0.56x−0.10 (2)
第8発明においては、前述した皮膜の上層に、第2層皮膜として、有機樹脂皮膜を形成することができる。この場合、第2層皮膜形成後の表面の中心粗さRa;x(μm)と、前述した皮膜と第2層皮膜の合計膜厚(平均値);y(μm)が前記(1)式を満足させることで、電磁波シールド特性と耐食性を良好にすることができ、前記(2)式を満足することがより好ましい。この場合、第2層皮膜である有機樹脂皮膜の皮膜厚を0.02μm以上5μm未満、好ましくは0.05μm以上5μm未満とするとともに、第1層皮膜である上記表面処理皮膜の膜厚を0.02μm以上5μm未満、好ましくは0.05μm以上5μm未満とし、且つ両皮膜の合計が5μmを超えないようにすることが好ましい。
【0171】
本発明の表面処理鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)、Zn−Mg合金めっき鋼板、Zn−Al−Mgめっき鋼板、さらにはこれらのめっき鋼板のめっき皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散した亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO分散めっき鋼板)などを用いることができる。また、上記のようなめっきのうち、同種又は異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。
【0172】
また、本発明の表面処理鋼板のベースとなるアルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、Al−Si合金めっき鋼板などを用いることができる。また、めっき鋼板としては、鋼板面に予めNiなどの薄目付めっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解又は非水溶媒中での電解)、溶融法及び気相法のうち、実施可能ないずれの方法を採用することもできる。
【0173】
また、後述するような二層皮膜をめっき皮膜表面に形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて、予めめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(アルカリ性の表面調整処理、酸性の表面調整処理)などの処理を施しておくことができる。また、有機被覆鋼板の使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、必要に応じて予めめっき皮膜表面に鉄族金属イオン(Niイオン、Coイオン、Feイオン)を含む酸性又はアルカリ性水溶液による表面調整処理を施しておくこともできる。また、電気亜鉛めっき鋼板を下地鋼板として用いる場合には、黒変を防止する目的で電気めっき浴に鉄族金属イオン(Niイオン、Coイオン、Feイオン)を添加し、めっき皮膜中にこれらの金属を1〜2000ppm含有させておくことができる。この場合、めっき皮膜中の鉄族金属濃度の上限については特に制限はない。
【0174】
次に、本発明の表面処理鋼板の製造方法について説明する。
【0175】
予め、めっき鋼板表面に形成する皮膜について、皮膜形成後の表面の中心線粗さRa、皮膜厚さ、導電性の関係を調査し、これらの関係を求めておく。例えば、所要の導電性を確保できる皮膜形成後の表面の中心線粗さRaと皮膜厚さの関係を求めておく。前記で求めた関係に基き、必要な導電性レベルを考慮して、皮膜形成後の表面粗さRaの設定値(x)、皮膜厚さの設定値(y)のいずれか一方を決定し、前記で決定した設定値に基き、他方の設定値を決定する。塗布膜の設定値は、耐食性、その他必要な特性を考慮して設定される。
【0176】
皮膜形成後の表面粗さRaの設定値(x)を決定し、前記設定値に基き皮膜厚さ(y)を決定する場合、表面粗さRaが前記設定値(x)になるように、めっき鋼板の表面粗さRaを調整する。電気めっき鋼板の場合、めっき工程前後で表面粗さRaはほぼ同程度であるので、めっき工程前で調質圧延を行い、被めっき鋼板の表面粗さRaを調整することで、めっき鋼板の表面粗さRaを調整する。溶融めっき鋼板の場合、めっき工程後に調質圧延を行い、めっき鋼板の表面粗さRaを調整する。めっき鋼板の上に皮膜を形成する皮膜形成工程では、皮膜厚さがy以下になるように膜厚を調整する。
【0177】
皮膜厚の設定値(y)を先に決定し、前記設定値(y)に基き皮膜形成後の表面粗さRaの設定値(x)を決定する場合、表面粗さRaが前記設定値(x)以上になるように、めっき鋼板の表面粗さRaを調整する。電気めっき鋼板の場合、めっき工程前で調質圧延を行い、被めっき鋼板の表面粗さRaを調整し、溶融めっき鋼板の場合、めっき工程後に調質圧延を行い、めっき鋼板の表面粗さRaを調整する。めっき鋼板の上に皮膜を形成する皮膜形成工程では、皮膜厚さがyになるように膜厚を調整する。
【0178】
第5発明の表面処理鋼板を製造する場合、前述したようにして、めっき鋼板の表面粗さRaを調整し、次いで皮膜形成工程で、上述した第1層の複合酸化物皮膜の構成成分を含む処理液で亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面を処理(処理液を塗布)した後、加熱乾燥させ、次いでその上層に、上述した有機高分子樹脂(A)を基体樹脂とし、(a)Caイオン交換シリカ及びリン酸塩、(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩及び酸化ケイ素、(c)カルシウム化合物及び酸化ケイ素、(d)カルシウム化合物、リン酸塩及び酸化ケイ素、(e)モリブデン酸塩、(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物のうちのいずれかを添加した防錆添加成分(B)が添加され、さらに必要に応じて固形潤滑剤(C)などが添加された塗料組成物を塗布し、加熱乾燥させて第2層皮膜を形成することにより製造される。
【0179】
なお、めっき鋼板の表面は、上記処理液を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理などの前処理を施すことができる。
【0180】
第1層皮膜を形成する処理液をコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。処理液の温度に特別な制約はないが、常温〜60℃程度が適当である。常温以下では冷却などのための設備が必要となるため不経済であり、一方、60℃を超えると水分が蒸発し易くなるため処理液の管理が難しくなる。
【0181】
上記のように処理液をコーティングした後、通常、水洗することなく加熱乾燥を行うが、本発明で使用する処理液は下地めっき鋼板との反応により難溶性塩を形成するため、処理後に水洗を行ってもよい。コーティングした処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などの手段を用いることができる。この加熱乾燥処理は到達板温で50〜300℃、望ましくは80〜200℃、さらに望ましくは80〜160℃の範囲で行うことが好ましい。加熱乾燥温度が50℃未満では皮膜中に水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。一方、加熱乾燥温度が300℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じやすくなり、耐食性が低下する。
【0182】
第2層皮膜を形成する塗料組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法などの任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0183】
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく、加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施しても構わない。加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱処理は、到達板温で50〜350℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜中の水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
【0184】
第6発明の表面処理鋼板では、第2層皮膜を形成するための塗料組成物として、前述の第6発明で規定する皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)を含み(好ましくは主成分とする)、これに(a)Caイオン交換シリカ及びリン酸塩、(b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩及び酸化ケイ素、(c)カルシウム化合物及び酸化ケイ素、(d)カルシウム化合物、リン酸塩及び酸化ケイ素、(e)モリブデン酸塩、(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物のうちのいずれかを添加した防錆添加成分(Y)が添加され、さらに必要に応じて固形潤滑剤(Z)などが添加された塗料組成物を使用する。
【0185】
そして、第6発明の表面処理鋼板を製造する場合、前述したようにして、めっき鋼板の表面粗さRaを調整し、次いで皮膜形成工程で、前記第5発明の表面処理鋼板の製造方法と同様にして皮膜が形成される。すなわち、第5発明の表面処理鋼板の製造方法において、第2皮膜を形成するための塗料組成物を、前記第6発明で規定する塗料組成物に代えて塗布し、加熱乾燥させて第2層皮膜を形成することにより製造される。
【0186】
また、第7発明の表面処理鋼板の製造方法では、前記の第7発明で規定する塗料組成物、さらに必要に応じて固形潤滑剤などが添加された塗料組成物を塗布し、水洗を行わず加熱乾燥させることにより所定の皮膜が形成される。
【0187】
また、第8発明の表面処理鋼板の製造方法では、前記の第8発明で規定する塗料組成物、さらに必要に応じて水溶性リン酸塩、非クロム系防錆添加剤、固形潤滑剤などが添加された塗料組成物を塗布し、水洗を行わず加熱乾燥させることにより所定の皮膜が形成される。
【0188】
第7発明、第8発明の表面処理鋼板の製造方法において、皮膜形成工程では、前記第5発明、第6発明の表面処理鋼板の製造方法に準じた方法で、塗料組成物の塗布処理が行われる。すなわち、塗料組成物のコーティング方法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーターなどいずれの方法でもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、あるいは浸せき処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0189】
前記第7発明または第8発明の塗料組成物をコーティングした後は、水洗することなく加熱乾燥を行う。加熱乾燥手段としては、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱処理は、到達板温で30〜300℃、好ましくは、40℃〜250℃の範囲で行うことが適当である。この加熱温度が30℃未満では皮膜中の水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、300℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じ耐食性が低下する。
【0190】
【実施例】
(実施例1)
表面処理組成物用の樹脂組成物として、表1に示すエポキシ系樹脂、添加剤としてシランカップリング剤、リン酸からなる樹脂組成物を調整した。
【0191】
【表1】
Figure 2004156081
【0192】
家電、建材、自動車部品用の有機被覆鋼板を得るため、板厚0.8mmの冷延鋼板に、焼鈍、調質圧延を施し、さらに電気亜鉛めっき(めっき量(片面あたり);20g/m)を施しためっき鋼板を処理原板として作成した。前記処理原板の表面粗さは、調質圧延時に圧延ロールの表面粗さRaを調整し、鋼板表面粗さを種々の粗さに調整することで調整した。この処理原板を用い、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理及び水洗乾燥した後、上記処理液(皮膜組成物)をバーコーターで塗布し、加熱乾燥させて皮膜を形成させ、皮膜形成後の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが0.88〜1.49μmの有機被覆鋼板を製造した。皮膜の膜厚は、塗料組成物の固形分(加熱残分)により調整した。
【0193】
得られた表面処理鋼板について、品質性能(導電性、耐白錆性)の評価を行った。有機被覆鋼板の品質性能の評価は以下のようにして行った。
(1)耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、72時間経過後の白錆面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:白錆面積率5%未満
○:白錆面積率5%以上、25%未満
×:白錆面積率25%以上、50%未満
(2)導電性
各サンプルについて、三菱油化製ロレスタAP、ASP端子を用い表面抵抗値を測定して評価した。表面抵抗値は8点測定し、表面抵抗値が最も高い測定値に基き、次のように評価した。
◎:10−4Ω以下
○:10−4Ω超、10Ω未満
×:10Ω以上。
評価結果を表2に示す。
【0194】
【表2】
Figure 2004156081
【0195】
y≦0.64x+0.12の条件を満たす発明例1〜14は、前記条件を満たさない比較例1、2に比べて、導電性が良好である。発明例1〜14の中で、y≦0.56x−0.10の条件を満たすものは導電性がさらに良好である。また、発明例1〜14は耐食性にも優れる。
(実施例2)
第6発明で規定される複層皮膜を形成する処理液として、表3に示す第1層皮膜形成用の処理液(皮膜組成物)と、表6に示す第2層皮膜形成用の樹脂組成物を調整した。表6に示す樹脂組成物には、第6発明で規定される防錆添加成分のうち、表4に示す(d)、(e)および(f)の防錆添加成分(自己補修性発現物質)、表5に示す固形潤滑剤を表7の通り配合し、必要時間撹拌し所望の塗料組成物とした。ここで、表6中、基体樹脂(1)は、下記[合成例1]で得たものである。
[合成例1]
EP828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量187)1870部とビスフェノールA912部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2部、メチルイソブチルケトン300部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル1500部を加えてから100℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(分子量96)を96部とジブチルアミン(分子量129)を129部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン205部を加えて、固形分60%のピラゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂(1)とする。この基体樹脂(1)は、皮膜形成有機樹脂(A)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)を50mol%含む活性水素含有化合物との生成物である。
【0196】
【表3】
Figure 2004156081
【0197】
【表4】
Figure 2004156081
【0198】
【表5】
Figure 2004156081
【0199】
【表6】
Figure 2004156081
【0200】
【表7】
Figure 2004156081
【0201】
家電、建材、自動車部品用の有機被覆鋼板を得るため、板厚0.8mmの冷延鋼板に、焼鈍、調質圧延を施し、さらに電気亜鉛めっき(めっき量(片面あたり);20g/m)を施しためっき鋼板を処理原板として作成した。前記処理原板の表面粗さは、調質圧延時に圧延ロールの表面粗さRaを調整し、鋼板表面粗さを種々の粗さに調整することで調整した。この処理原板を用いて、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理及び水洗乾燥した後、表3に示す処理液(皮膜組成物)をバーコーターで塗布し、加熱乾燥させて第1層皮膜を形成させた。この第1層皮膜の膜厚は、処理液の固形分(加熱残分)により調整した。次いで、表7に示す塗料組成物をバーコーターにより塗布し、加熱乾燥して第2層皮膜を形成させ、皮膜形成後の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが0.88〜1.49μmの有機被覆鋼板を製造した。第2層皮膜の膜厚は、塗料組成物の固形分(加熱残分)により調整した。
【0202】
得られた有機被覆鋼板について、品質性能(導電性、耐白錆性)の評価を行った。有機被覆鋼板の品質性能の評価は以下のようにして行った。
【0203】
(1)耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、144時間経過後の白錆面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:白錆面積率5%未満
○:白錆面積率5%以上、25%未満
×:白錆面積率25%以上、50%未満。
【0204】
(2)導電性
表面抵抗値を実施例1と同様にして評価した。
【0205】
評価結果を表8に示す。また中心線平均粗さRa(x)と樹脂膜厚(第1層+第2層の合計膜厚;y)、導電性の関係を図2に示す。図2中、(1)はy=0.64x+0.12、(2)はy=0.56x−0.10の関係を示す一次式である。
【0206】
【表8】
Figure 2004156081
【0207】
y≦0.64x+0.12の条件を満たす発明例1〜19は、前記条件を満たさない比較例1、2に比べて、導電性が良好である。発明例1〜19の中で、y≦0.56x−0.10の条件を満たすものは導電性がさらに良好である。また、発明例1〜19は耐食性にも優れる。
【0208】
(実施例3)
第7発明の皮膜を形成する表面処理組成物用の樹脂組成物(A)として、表9に示す水分散性樹脂を用い、これに表10に示すカチオン性ウレタン樹脂(B)、表11に示すシランカップリング剤(C)、表12に示すZr化合物(D)、およびリン酸、硝酸及び酢酸、若しくはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(E)(以下、本実施例3では「酸化合物(E)」とも記載する。)として硝酸(表13)を、各々表14に示す割合で配合し、攪拌機を用いて所要時間攪拌し、表面処理剤を調製した。
【0209】
【表9】
Figure 2004156081
【0210】
【表10】
Figure 2004156081
【0211】
【表11】
Figure 2004156081
【0212】
【表12】
Figure 2004156081
【0213】
【表13】
Figure 2004156081
【0214】
【表14】
Figure 2004156081
【0215】
家電、建材、自動車部品用の有機被覆鋼板を得るため、板厚0.8mmの冷延鋼板に焼鈍、調質圧延を施し、さらに電気亜鉛めっき(めっき量(片面あたり);20g/m)を施しためっき鋼板を処理原板として作成した。前記処理原板の表面粗さは、調質圧延時に圧延ロールの表面粗さRaを調整し、鋼板表面粗さを種々の粗さに調整することで調整した。この処理原板を用い、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理及び水洗乾燥した後、上記で調整した表面処理剤をロールコーターにより塗布し、水洗することなく各種温度で加熱乾燥し、皮膜形成後の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが0.88〜1.49μmの表面鋼板を製造した。皮膜の付着量は、表面処理組成物の固形分(加熱残分)により調整した。
【0216】
得られた表面処理鋼板の皮膜組成、および品質性能(耐白錆性、導電性)の各試験を行った結果を表15に示す。なお、品質性能の評価は、以下のようにして行った。
(1)耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、96時間経過後の白錆面積率で評価した。
評価基準は以下の通りである。
◎:白錆面積率5%未満
○:白錆面積率5%以上、25%未満
×:白錆面積率25%以上、50%未満
(2)導電性
表面抵抗値を実施例1と同様にして評価した。
【0217】
【表15】
Figure 2004156081
【0218】
y≦0.64x+0.12の条件を満たす発明例1〜14は、前記条件を満たさない比較例1、2に比べて、導電性が良好である。発明例1〜14の中で、y≦0.56x−0.10の条件を満たすものは導電性がさらに良好である。また、発明例1〜14は耐食性にも優れる。
【0219】
(実施例4)
第8発明の皮膜を形成する表面処理組成物用の樹脂組成物として、表16に示す水性エポキシ樹脂分散液を用い、これにシランカップリング剤(表17)、リン酸またはヘキサフルオロ金属酸(表18)、さらに水溶性リン酸塩(表19)、非クロム系防錆添加剤(表20)、固形潤滑剤(表21)を表22に示す割合で配合し、さらにアンモニア水又は硝酸でpHが0.5〜6にした後、攪拌機を用いて所要時間攪拌し、表面処理剤を調製した。
【0220】
ここで、表16の水性エポキシ樹脂分散液は、以下のようにして得られた。
[製造例1:ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂の製造]
温度計、撹拌機、冷却管を備えたガラス製4ツ口フラスコに、数平均分子量4,000のポリエチレングリコール1688gとメチルエチルケトン539g加え、60℃で撹拌混合し均一透明になった後、トリレンジイソシアネート171gを加え、2時間反応させた後、エピコート834X90(エポキシ樹脂、シェルジャパン社製、エポキシ当量250) 1121g、ジエチレングリコーリエチルエーテル66g及び1%ジブチルチンジラウレート溶液1.1gを添加しさらに2時間反応させた。その後80℃まで昇温し、3時間反応させてイソシアネート価が0.6以下になったことを確認した。その後90℃まで昇温し、減圧蒸留により固形分濃度が81.7%になるまでメチルエチルケトンを除去した。除去後、プロピレングリコールモノメチルエーテル659g、脱イオン水270gを加えて希釈し、固形分濃度76%のポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂溶液A1を得た。
【0221】
[製造例2:水性エポキシ樹脂分散液の製造]
EP1004(エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ社製,エポキシ当量1000)2029gとプロピレングリコールモノブチルエーテル697gを四つ口フラスコに仕込み、110℃まで昇温して1時間で完全にエポキシ樹脂を溶解した。このものに、製造例1で得たポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂溶液A1を1180g及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(分子量84)311.7g加えて100℃で5時間反応させた後、プロピレングリコールモノブチルエーテル719.6gを加えて樹脂溶液D1を得た。
【0222】
該樹脂溶液D1を257.6gにMF−K60X(イソシアネート硬化剤、旭化成工業社製)50g及びScat24(硬化触媒)0.3gを混合しよく攪拌した後、水692.1gを少しずつ滴下・混合撹拌し、水性エポキシ樹脂分散液E1を得た。
【0223】
【表16】
Figure 2004156081
【0224】
【表17】
Figure 2004156081
【0225】
【表18】
Figure 2004156081
【0226】
【表19】
Figure 2004156081
【0227】
【表20】
Figure 2004156081
【0228】
【表21】
Figure 2004156081
【0229】
【表22】
Figure 2004156081
【0230】
家電、建材、自動車部品用の有機被覆鋼板を得るため、板厚0.8mmの冷延鋼板に焼鈍、調質圧延を施し、さらに電気亜鉛めっき(めっき量(片面あたり);20g/m)を施しためっき鋼板を処理原板として作成した。前記処理原板の表面粗さは、調質圧延時に圧延ロールの表面粗さRaを調整し、鋼板表面粗さを種々の粗さに調整することで調整した。この処理原板を用い、このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理及び水洗乾燥した後、所定の上記表面処理剤をロールコーターにより塗布し、水洗することなく各種温度で加熱乾燥し、皮膜形成後の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが0.88〜1.49μmの表面鋼板を製造した。皮膜の付着量は、表面処理組成物の固形分(加熱残分)により調整した。
【0231】
得られた表面処理鋼板の皮膜組成、および品質性能(耐白錆性、導電性)の各試験を行った結果を表23に示す。なお、品質性能の評価は、以下のようにして行った。
【0232】
(1)耐白錆性
実施例3と同様にして評価した。
(2)導電性
表面抵抗値を実施例1と同様にして評価した。
【0233】
【表23】
Figure 2004156081
【0234】
y≦0.64x+0.12の条件を満たす発明例1〜14は、前記条件を満たさない比較例1、2に比べて、導電性が良好である。発明例1〜14の中で、y≦0.56x−0.10の条件を満たすものは導電性がさらに良好である。また、発明例1〜14は耐食性にも優れる。
【0235】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の表面処理鋼板は、皮膜中にクロムを含まないにもかかわらず非常に優れた導電性と耐食性を有している。本発明の鋼板は、耐食性と優れた電磁波シールド特性が要求される用途、例えば電気・電子機器用途への使用に適する。
【図面の簡単な説明】
【図1】クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板において、表面粗さが異なる場合の皮膜厚さの不均一状態を説明する皮膜断面模式図で、(A)は中心線平均粗さRaの小さい表面処理鋼板、(B)は中心線平均粗さRaの大きい表面処理鋼板を示す。
【図2】実施例おける中心線平均粗さRaおよび膜厚(平均膜厚)と、導電率の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 めっき鋼板
2 クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜

Claims (15)

  1. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板であって、前記皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaをx(μm)、皮膜平均厚さをy(μm)とするとき、xとyは、下記(1)式を満足することを特徴とする電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
    y≦0.64x+0.12 (1)
  2. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させた表面処理鋼板であって、前記皮膜形成後の表面の中心線粗さRaを予め設定された皮膜厚によって決定される一定値以上の粗さとするか、または前記皮膜厚さを予め設定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaによって決定される一定値以下の厚さとしたことを特徴とする表面処理鋼板。
  3. 前記予め設定された皮膜厚をy(μm)、前記皮膜形成後の一定値以上の粗さを、表面の中心線粗さRaでx(μm)、また、前記予め設定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaをx(μm)、前記一定値以下の皮膜厚さをy(μm)とするとき、xとyは下記(1)式を満足し、またxとyは下記(2)式を満足することを特徴とする請求項2に記載の表面処理鋼板。
    ≦0.64x+0.12 (1)
    y≦0.64x+0.30 (2)
  4. 前記クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜は、単層または2層以上からなる皮膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
  5. 前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板の表面に形成された前記皮膜は、第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸及び/又はリン酸化合物と、
    (γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる一種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、
    を含有する複合酸化物皮膜を有し、
    その上部に第2層皮膜として、OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂(A)を基体樹脂とし、該基体樹脂100重量部(固形分)に対して下記(a)〜(f)のうちのいずれかの防錆添加成分(B)を合計で1〜100重量部(固形分)含有する有機皮膜を形成させた複層皮膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
    (a)Caイオン交換シリカおよびリン酸塩
    (b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩および酸化ケイ素
    (c)カルシウム化合物および酸化ケイ素
    (d)カルシウム化合物、リン酸塩および酸化ケイ素
    (e)モリブデン酸塩
    (f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる一種以上の有機化合物
  6. 前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板の表面に形成された前記皮膜は、第1層皮膜として、
    (α)酸化物微粒子と、
    (β)リン酸及び/又はリン酸化合物と、
    (γ)Mg、Mn、Alの中から選ばれる一種以上の金属(但し、化合物および/または複合化合物として含まれる場合を含む)と、を含有する複合酸化物皮膜を有し、
    その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂(A)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)からなる活性水素含有化合物(B)との反応生成物(X)と、下記(a)〜(f)のうちのいずれかの防錆添加成分(Y)とを含み、
    前記防錆添加成分(Y)の合計の含有量が前記反応生成物(X)100重量部(固形分)に対して1〜100重量部(固形分)である、有機皮膜を形成させた複層皮膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
    (a)Caイオン交換シリカおよびリン酸塩
    (b)Caイオン交換シリカ、リン酸塩および酸化ケイ素
    (c)カルシウム化合物および酸化ケイ素
    (d)カルシウム化合物、リン酸塩および酸化ケイ素
    (e)モリブデン酸塩
    (f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる一種以上の有機化合物
  7. 前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板の表面に形成された前記皮膜は、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第1〜3アミノ基及び第4アンモニウム塩基、から選ばれる少なくとも1種のカチオン性官能基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基及びメタクリロキシ基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する1種以上のシランカップリング剤(C)と、Ti化合物若しくはZr化合物の少なくとも1種(D)と、リン酸、硝酸及び酢酸、若しくはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(E)とを含有し、且つ、カチオン性ウレタン樹脂(B)及びシランカップリング剤(C)の含有量が樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)の合計量の全固形分に対して、それぞれ1〜20質量%及び45〜85質量%である表面処理剤を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
    Figure 2004156081
    式中、ベンゼン環に結合しているY1およびY2は、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
    Figure 2004156081
    Figure 2004156081
    式(II)および(III)中、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、A−は水酸イオン又は酸イオンを表す。
  8. 前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板の表面に形成された前記皮膜は、
    (a)数平均分子量400〜20,000のポリアルキレングリコール、ビスフェノール型エポキシ樹脂、活性水素含有化合物及びポリイソシアネート化合物を反応させて得られるポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂(A)と、(A)以外のエポキシ基含有樹脂(B)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(C)と、必要に応じて(C)以外の活性水素含有化合物(D)とを反応させる事により得られる樹脂を水中に分散してなる水性エポキシ樹脂分散液と、
    (b)シランカップリング剤と、
    (c)リン酸および/またはヘキサフルオロ金属酸と、
    を含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の電磁波シールド特性と耐食性に優れた表面処理鋼板。
  9. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜を形成させる表面処理鋼板の製造方法であって、前記皮膜を形成後の表面の中心線粗さRaを予め設定された皮膜厚によって決定される一定値以上の粗さとするか、または前記皮膜厚さを予め設定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaによって決定される一定値以下の皮膜厚さとすることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
  10. 請求項9に記載の表面処理鋼板の製造方法は、
    皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaまたは皮膜厚さの設定値を決定する決定工程と、
    前記決定工程で、皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値を決定した場合は、下記(1)〜(3)の工程を備え、
    (1)前記決定工程で決定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値に基いて、皮膜形成前の亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面の中心線平均粗さRaを調整する粗さ調整工程
    (2)前記決定工程で決定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値、及び予め求めた皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRa、皮膜厚さと導電性の関係に基いて、皮膜厚さの設定値を決定する膜厚設定工程
    (3)前記膜厚設定工程で決定された皮膜厚の設定値に基いて、皮膜の膜厚を調整する膜厚調整工程
    また、前記決定工程で皮膜厚さの設定を決定した場合は、下記の(4)〜(6)の工程を備える
    (4)前記決定工程で決定された皮膜厚さの設定値、及び予め求めた皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRa、皮膜厚さと導電性の関係に基いて、皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値を決定する粗さ設定工程
    (5)前記粗さ設定工程で決定された皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値に基き、皮膜形成前の亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面の中心線平均粗さRaを調整する粗さ調整工程
    (6)前記決定工程で決定された皮膜厚の設定値に基いて、皮膜の膜厚を調整する膜厚調整工程
    ことを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
  11. 前記(3)の膜厚調整工程は、前記(2)の膜厚設定工程で決定した皮膜厚の設定値以下の膜厚に調整し、前記(5)の粗さ調整工程は、前記(4)の粗さ設定工程で決定した中心線平均粗さRa以上の粗さに調整することを特徴とする請求項10に記載の表面処理鋼板の製造方法。
  12. 前記決定工程の皮膜形成後の表面の中心線平均粗さRaの設定値をx(μm)、前記(2)の膜厚設定工程の皮膜厚の設定値をy(μm)としたとき、xとyは下記(1)式を満足するように設定され、また前記決定工程の皮膜厚の設定値をy(μm)、前記(4)の粗さ設定工程の粗さの設定値をx(μm)としたとき、xとyは下記(2)式を満足するように設定されることを特徴とする請求項10または11に記載の表面処理鋼板の製造方法。
    =0.64x+0.12 (1)
    =0.64x+0.12 (2)
  13. 前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板は、電気亜鉛系めっき鋼板または電気アルミニウム系めっき鋼板であり、前記粗さ調整工程は、電気めっき工程前に行うことを特徴とする請求項10〜12のいずれかの項に記載の表面処理鋼板の製造方法。
  14. 前記亜鉛系めっき鋼板または前記アルミニウム系めっき鋼板は、溶融亜鉛系めっき鋼板または溶融アルミニウム系めっき鋼板であり、前記粗さ調整工程は、溶融めっき工程後に行うことを特徴とする請求項10〜12のいずれかの項に記載の表面処理鋼板の製造方法。
  15. 前記クロムを含有しない有機および/または無機系皮膜は、請求項5に記載の複層皮膜、請求項6に記載の複層皮膜、請求項7に記載の皮膜および請求項8に記載の皮膜のいずれかであることを特徴とする、請求項9〜14のいずれかの項に記載の表面処理鋼板の製造方法。
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