JP2004155709A - 有機金属錯体化合物及びこれを用いた有機発光素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記式(1)
【化20】
に示される有機金属錯体であり、中心金属MはIr,Pt、Pd等の重金属、アセチルアセナト誘導体配位子は配位数mが0又は1、式(i)の配位子の配位数nは1〜3、式(i)のXは15族元素、R1、R2は水素又は任意の独立した置換基又はR1とR2とが互いに環の一部を構成した置換基、Arは芳香族環、Lは式(ii)で表される2官能性基、式(ii)において、YはC又はSi、R3及びR4は、H、アルキル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシ基のいずれかの独立した置換基、又はR3とR4とが互いに環の一部を構成した置換基である。この化合物は色純度の高い青色燐光発光が可能となる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、新規な有機金属錯体化合物及びこれを用いた有機発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機発光素子、特に電界発光機能を備えた有機電界発光素子(以下、有機EL素子という)は、省電力で、高視野角かつ高輝度発光が可能であるという特性を備えており、次世代平面ディスプレイ素子や、その平面光源として注目されている。
【0003】
最近では、燐光型発光材料として用い、蛍光型発光材料よりも原理的に高効率発光の可能な燐光EL素子の開発が進められており、燐光型発光材料を用いることで従来の蛍光素子の外部量子効率における理論限界の5%を超え、量子効率が8%にも達する高効率素子が報告されている。
【0004】
燐光発光材料としては、緑色発光を示す下記式(2)
【化3】
に示されるフェニルピリジンのイリジウム錯体[トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(tris(2−phenylpyridine)iridium(III):[Ir(ppy)3])]が知られている。しかし、このIr(ppy)3は耐久性などが低いため、耐久性の向上などの研究が進められており、最近では、他の緑色燐光材料、赤色燐光材料についても報告があり、色純度、発光効率、耐久性などの向上が試みられている。また、青色の燐光発光材料としては、下記非特許文献1や特許文献1にイリジウム錯体の報告がある。
【0005】
【非特許文献1】
Adachi et al., Appl. Phys. Lett. 79 (2001)2082−2084
【特許文献1】
特開2002−170684号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
有機EL素子において、フルカラー表示を実現するには、現在の有機層の発光効率、寿命(耐久性)を改良することに加え、発光色の色純度を向上させることが必須である。このため、燐光発光型の有機EL素子においても、色純度の高い発光材料が必要となる。
【0007】
しかし、従来提案されている上記青色燐光発光材料を用いた有機EL素子、例えば上記非特許文献1に記載されているFIrpic(Iridium (III) bis[2−(4, 6 − difluorohpenyl) pyridinato − N, C2’] picolinate)は、下記式
【化4】
に示すような構造を備え青色燐光発光を示すが、その青色の純度が非常に低く、実用輝度レベルにおいては、水色に近い発光色しか得られていなかった。また、蛍光発光を示す青色材料は報告されているが、より高効率発光を示す燐光発光の青色材料はまだほとんど報告されていない。
【0008】
上記課題を解決するために、この発明では、青以下の短波長の発光が可能でその色純度が高く、また安定性に優れた化合物を提案することを目的とする。また、他の目的はこのような化合物を用いた有機発光素子等を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、下記式(1)
【化5】
で表される有機金属錯体化合物である。
【0010】
上記式(1)において、中心金属Mは、重金属であり、アセチルアセナト誘導体の配位子は、その配位数mが0又は1であり、式(i)で表される配位子の配位数nは1〜3である。また、式(i)において、Xは15族元素、R1、R2は、水素、又は任意の独立した置換基又はR1とR2とが互いに環の一部を構成した置換基、Arは芳香族環、Lは、式(ii)で表される2官能性基であり、式(ii)において、Yは炭素又は珪素、R3及びR4は、水素、アルキル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシ基のいずれかの独立した置換基、又はR3とR4とが互いに環の一部を構成した置換基である。
【0011】
本発明の他の態様では、上記有機金属錯体において、前記mと前記nとの和が、前記中心金属Mの価数に等しい。
【0012】
本発明の他の態様では、上記有機金属錯体において、前記中心金属Mは、イリジウム、白金、パラジウムのいずれかとする。
【0013】
また、本発明の他の態様において、前記Arは、下記式
【化6】
のいずれかの芳香族環とすることができる。
【0014】
以上のような有機金属錯体化合物では、従来知られている化学式(2)に示すようなフェニルピリジン誘導体を配位子とした有機金属錯体と異なり、フェニルピリジンのピリジル基部分が炭素などの単結合よりなる。このため、上記フェニルピリジン誘導体の錯体と比較して分子内での共役系が短く、より短波長での発光、即ち青色系の発光機能が得られる。さらに、本発明の錯体は、単に青色発光が可能なだけでなく、高い色純度の光を得ることができる。また、このような金属錯体化合物では中心金属の重原子効果により発光効率の高い燐光型発光を実現することができる。
【0015】
また、本発明に係る有機金属錯体は、化学的にも安定した化合物であるため、長時間安定した発光を行うことができる。
【0016】
本発明の他の態様は、有機薄膜を備える有機発光素子であり、上記のような有機金属錯体を前記有機薄膜中に含む。特に、上記有機金属錯体の内発光機能を示す化合物は、有機発光素子の発光層に用いることが好適である。さらに、上記有機金属錯体は、発光層中においてホスト材料中にドープして用いるドーパント材料として用いることができ、高効率で信頼性の高い素子を実現することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
本発明の実施形態に係る金属錯体化合物は、下記式(1)
【化7】
で表される有機金属錯体である。式(1)において、中心金属Mは、イリジウム、白金、パラジウムなどの重金属、アセチルアセナト誘導体の配位子は、その配位数mが0又は1である。式(i)で表される配位子の配位数nは1〜3であり、中心金属Mの価数と、配位子の配位数mとnとの和が等しいことが好適である。
【0018】
Xは15族元素、R1、R2は、水素、又は任意の独立した置換基又はR1とR2とが互いに環の一部を構成した置換基、Arは芳香族環、Lは、式(ii)で表される2官能性基である。式(ii)において、Yは炭素、珪素のいずれか、R3及びR4は、水素、アルキル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシ基のいずれかの独立した置換基、又はR3とR4とが互いに環の一部を構成した置換基であることが好ましい。
【0019】
また、前記Arは、下記式
【化8】
のいずれかの芳香族環である。ここで、芳香族環の数は、共役結合が長くなると発光波長が長くなるため、青色発光或いはそれ以下の波長光を実現するという目的のために多すぎないことが好ましく、例えば4以下の芳香族環で構成されることが好ましい。
【0020】
このような有機金属錯体化合物は、中心金属Mの重原子効果により高効率発光の可能な燐光発光機能を備え、特に、式(i)の配位子のLで示される部分が単結合であることから、青色又は青よりも短波長の発光をすることができる。
【0021】
上記有機金属錯体としては、例えば、下記化学式(3)
【化9】
に示されるイリジウム錯体[{ビス(1−ナフチルメチル)ジメチルアミノ−N,C2’}イリジウム(III):Iridium(III)[bis(1−naphthylmethyl)dimethylamino−N,C2’]]や、
下記化学式(4)
【化10】
に示されるイリジウム錯体[{ビス(ベンジルジメチルアミノ)−N,C2’}イリジウム(III):Iridium(III)[bis(benzyldimethylamino−N,C2’]]等、上記化学式(i)の配位子中のXが窒素、Lが炭素の単結合よりなる化合物が挙げられる。
【0022】
また、他の具体例としては、下記式(5)
【化11】
に示される上記化学式(i)で表される配位子中のXがリン、Lは同様に炭素の単結合よりなる化合物が挙げられる。
【0023】
これらの有機金属錯体化合物は、中心金属Mの重原子効果により高効率発光の可能な燐光発光機能を備える。また、燐光発光材料として知られる上記フェニルピリジン誘導体のイリジウム錯体(上記化学式(2)参照)などでは、ピリジン基とイリジウムとの配位結合と、フェニル基とイリジウムとの配位結合とのそれぞれの結合が発光に寄与していると考えられ、その上、フェニル基とピリジン基との間にもπ電子が非局在化して分子内の共役系が長くつながる。従って、発光波長が長く、また、青色発光が得られたとしてもその色純度も低い。これに対し、本実施形態に係る錯体では、中心金属Mに結合する式(i)の置換基Xと置換基Arとが、炭素又は珪素の2官能性基(炭素又は珪素の単結合)を介してつながっており、置換基Xと置換基Arとの間で共役系が分断されているため、短波長の発光を実現することができる。また、発光色の色純度が向上する理由は、置換基Xと置換基Arとの共役系が分断されていることで、中心金属Mに配位結合する置換基Xの発光への寄与率が低下し、発光色が主として中心金属Mとの配位結合する置換基Arに寄与するためすると考えられる。
【0024】
[実施形態2]
図1は、燐光型発光材料を用いた有機EL素子の概略断面構造を示している。ガラスなどの透明基板10には、ITO(Indium Tin Oxide)などを用い、ここでは陽極として機能する透明電極12が形成され、透明電極12上には積層構造の有機層20が形成されている。
【0025】
有機層20は、少なくとも発光層24を備え、用いる有機化合物の機能等によって層構造が異なる。発光層単層構造の他、正孔輸送層/発光層、発光層/電子輸送層、正孔輸送層/発光層/電子輸送層などの多層構造が採用可能である。本実施形態2では、透明電極12側から順に正孔輸送層22/発光層(燐光発光層)24/正孔ブロック層26/電子輸送層28が積層されている。
【0026】
有機層20上には、ここでは陰極として機能する金属電極14が形成されており、例えばこの金属電極14は、図示するようにLiF層(電子注入層)とAl電極等との積層体により構成することができる。また、Al電極単独層により金属電極14を構成することもできる。また、Alの他、例えばMg−Ag合金、Al−Li合金などを使用することができる。また、図示しないが、透明電極12と正孔輸送層14との間にはCuPcやスターバーストアミン、バナジウム酸化物等をホール注入層として挿入してもよい。
【0027】
本実施形態2では、以上のような構成の有機EL素子において上記有機層20の材料、特に発光層材料として、上記実施形態1で説明した化学式(1)に示すような有機金属錯体を用いる。ここで、上述のように化学式(1)の化合物は、高効率な燐光発光が可能であり、この化合物を発光材料として用いることで燐光発光型の有機EL素子を実現することができる。なお、上記化学式(1)に示す錯体化合物は、単独で発光層24の材料として用いることもできるが、発光効率、駆動電力の低減、発光色の色純度向上などの観点より、ホスト材料中に所定量ドープして発光層24とすることが好ましい。
【0028】
次に、上記化学式(1)に示す本発明に係る有機金属錯体と共に有機EL素子の有機層20に使用可能な材料の例を説明する。まず、発光層24のドーピング材料として、上記化学式(1)に示す有機金属錯体(例えば上記化学式(3)〜(5)のいずれか)をドーパント材料として用いる場合に、ホスト材料としては、カルバゾール基を含む例えば下記式(6)〜(10)に示されるような化合物が挙げられる。
【0029】
【化12】
ここで、上記化学式(6)に示される化合物は、バイポーラ性のCBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル:4,4’−N,N’−dicarbazole−biphenyl)、化学式(7)に示される化合物は、TCPB(1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニルベンゼン:1,3,5−tris [4−(N−carbazolyl)phenyl]benzene])、化学式(8)に示される化合物は、AdPCz(2,2−ビス[4−(N−カルバゾイル)フェニル]アダマンタン:2,2−Bis[4−(N−Carbazolyl)phenyl]adamantane)、化学式(9)に示される化合物は、AdBPCz(2,2−ビス{4−[4’−(N−カルバゾイル)ビフェニル]}アダマンタン:2,2−Bis[4−[4’−(N−Carbazolyl)biphenyl)]]adamantane)、化学式(10)に示される化合物は、ホール輸送性のTCTA(4,4’,4”−トリス(カルバゾリル)−トリフェニルアミン:4,4’,4’’−tris(carbazolyl)−triphenylamine)である。
【0030】
また、下記式(11)
【化13】
に示されるようなTPBIも採用可能である。
【0031】
また、下記一般式(12)
【化14】
に示される基本骨格を備える例えばカルバゾール系化合物などであって、ガラス転移温度が100℃以上の化合物を用いることも好適である。このような一般式(12)で表される化合物を採用することで、燐光発光効率と有機EL素子の耐熱性を向上させることができる。
【0032】
また、正孔輸送層22の材料としては、正孔輸送機能を備えていれば特に限定されないが、例えば、トリフェニルアミンの多量体を採用することができ、一例としては下記式(13)
【化15】
に示すα−NPDを使用することができる。
【0033】
電子輸送層28としては、電子輸送機能を備えていれば特に限定されないが、一例として下記式(14)
【化16】
に示すようなアルミキノリノール錯体(Alq3)を用いることができる。
【0034】
ところで、上述のように燐光発光層24のホスト材料としてバイポーラ性のCBPや、ホール輸送性のTCTAなどの化合物を用いる場合、発光層24から電子輸送層28に正孔が流れ出てしまうことを防止するため発光層24と電子輸送層28との間に正孔ブロック層26を形成することが好適である。上述のように電子輸送層28にAlq3等を用いている場合、電子輸送層に正孔が流れ込むことでこのAlq3が発光したり、正孔を発光層に閉じこめることができずに発光効率が低下するなどといった問題を防止することができる。正孔ブロック層26の材料としては、上記式(11)に示されるTPBIや、下記式(15)
【化17】
に示されるバソクプロイン(BCP)や、下記式(16)
【化18】
に示されるBAlq(4−biphenyloxolato aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate)などを用いることができる。
【0035】
次に、上述したような金属錯体化合物を燐光発光のためのドーパントとして用いた本実施形態2に係る有機電界発光素子の発光原理について説明する。
【0036】
陽極である透明電極12と、陰極である金属電極14から正孔及び電子を有機層20に注入すると、正孔は正孔輸送層22を介し、電子は電子輸送層28及び正孔ブロック層26を介して輸送され、発光層24に到達し、再結合する。この電子とホールとの再結合によりまず発光層24のホスト材料が励起状態となる。ここで、分子の励起状態には、電子スピンの向きが反平行の一重項励起状態と、電子スピンの向きが平行となる三重項励起状態とがあり、単純な量子力学的推論から、一重項励起状態と三重項励起状態の生成比率は1:3である。蛍光は一重項励起状態のみが寄与する発光形態であるが、燐光は、一重項励起状態から遷移したものを含め三重項励起状態が発光に寄与する。上記ホスト材料の励起状態は、一重項励起状態が25%、三重項励起状態が75%となっている。このような割合のホスト材料の励起エネルギは、本発明に係る上述の金属錯体化合物に移動し、金属錯体化合物は、それぞれ一重項励起状態及び三重項励起状態となる。金属錯体化合物の一重項励起状態は、さらに三重項励起状態に移動し、最終的に全て三重項励起状態からの燐光発光となる。これによって、発生した励起状態のエネルギのほぼ全てが発光エネルギとして使用されることとなる。本実施形態2において、上述の本発明に係る金属錯体化合物に起因した燐光は、ホスト材料として例示したいずれかの材料を用いた場合においても、青色で色純度が高く、高効率で燐光発光を得ることができ、また耐久性にも優れている。従って、以上のような有機電界発光素子は、コンピュータや携帯電話、PDA、カーナビゲーション装置の表示装置や、例えば液晶表示装置のバックライトや、照明、インテリア、交通信号機など光源などとして用いることができる。
【0037】
以上においては、実施形態1で説明した有機金属錯体を有機電界発光素子に採用した場合を例に説明したが、有機電界発光素子に限らず、上記有機金属錯体の用途は、医療用などの色素(例えば放射線検出用色素)、色変換フィルタ(CCM)、写真機、フィルム、複写機などの色変換材料(波長変換材料)や感光材料、光ディスクなどの色素などとしても有用である。
【0038】
【実施例】
次に、上記実施形態の具体例を実施例として説明する。
【0039】
[実施例1]
上記化学式(3)に示す有機金属錯体を燐光発光材料として用いて有機電界発光素子を作製した。この素子について図1を参照して説明する。ITOの透明電極12が予め形成されているガラス基板10に対して有機洗浄、純水洗浄、乾燥及びUVオゾン処理を行った。その基板10を直ちに真空チャンバーへ導入し、ArとO2のプラズマ処理を行った。
【0040】
次に、真空蒸着により(真空度:5×10−7Torr;1Torr≒133Pa)、α−NPDを40nm堆積して正孔輸送層22を形成した。次に、発光層24のホスト材料としてバイポーラ性の上記化学式(6)に示したCBPを用い、ドーパントとして上記化学式(3)に示す本発明に係るイリジウム錯体[Iridium(III)bis[(1−naphthylmethyl)dimethylamino−N,C2’]]が7重量(wt)%の割合となるように同時蒸着して発光層24を20nmの厚さに形成した。
【0041】
さらに、上記化学式(11)に示すTPBIを用いて正孔ブロック層26を20nm積層し、電子輸送層28としてAlq3を30nm蒸着した。さらに、この後LiF層(電子注入層)を0.5nm、Alを150nm蒸着して金属電極14を形成し、以上により素子部を得た。
【0042】
このような素子部の形成された基板を連続して(in−situ)高真空に排気したチャンバーへ搬送し、そのチャンバー内を孤立系にした後、1気圧の窒素で置換した。その後、紫外線硬化樹脂を用いて封止ガラスの端部を端子部では透明電極12、端子部以外ではガラス基板10の素子形成側表面に接着し、UVランプを用いて紫外線をこの樹脂部に照射し、素子部を密封した。
【0043】
このようにして得られた有機EL素子に直流電流を流し、連続駆動させてその発光効率、ELスペクトルの測定を行った。図2は、上記発光効率を示しており、本実施例1の有機EL素子の外部量子効率は、最大1.4%に到達することが分かる。また、この最大効率を含め高い効率が得られる電流密度が0.5mA/cm2〜10mA/cm2付近であり、実用的な電流密度条件下で高い発光効率が実現されている。
【0044】
図3は、実施例1の素子のELスペクトルを示しており、5.5mA/cm2、5.5Vの駆動条件において、435nmをメインピークとする青色発光(燐光)が得られていることが分かる。また、この実施例1のEL素子は、注入電流の増加に伴って上記435nmの青色ピークがメインピークとなり、実用輝度領域では、図4の色度座標に示すように、非常に色純度の高い青色発光が得られた。また、図4には、非特許文献1に開示されているFIrpicを青色の燐光発光材料として用いた素子の色度座標も参考として示しており、本実施例1の素子では、上記従来素子の座標と比較して青色の色純度が飛躍的に向上していることが分かる。
【0045】
[実施例2]
次に、上記化学式(3)に示される本発明のイリジウム錯体[Iridium(III)[bis[(1−naphthylmethyl)dimethylamino−N,C2’]]の他の特性について実施例2として説明する。図5は、この錯体を石英基板上に100nmの厚さに成膜(真空蒸着にて)した試料の吸収スペクトルの測定結果を示している。最長吸収波長(ピーク)は、348nmである。
【0046】
図6は、上記化学式(3)のイリジウム錯体のクロロホルム溶液(溶液濃度:1.0×10−5mol/l)を上記348nmの励起波長で励起させた時のPL(photoluminescence)スペクトルである。図6からこのイリジウム錯体が、413nm、437nm及び465nmという波長領域に発光ピークを示す青色発光していることが分かる。
【0047】
[実施例3]
実施例3として、上記化学式(5)に示すリンを含むイリジウム錯体[Iridium(III) tris(benzyldiisopropylphosphino−P,C2’)]を合成した。以下にその手順を示す。
【0048】
(i)配位子:ベンゾイルジイソプロピルホスフィン(Benzyldiisopropylphosphine)の合成
窒素雰囲気下で塩化ベンジルマグネシウム(Benzylmagnesium Chloride)溶液(1.0M/Et2O中)8.2ml(8.2mmol)をEt2O 33mlに加え、0℃に冷却した。塩化ジイソプロピルホスフィン(Chlorodiisopropylphosphine)1.0g(6.55mmol)をEt2O 20mlに溶解し、Benzylmagnesium Chloride溶液に10分かけて滴下した。滴下後、室温まで温度を上げ、一晩撹拌した。反応溶液を濃縮し、Arを吹きこんだCH2Cl2 100mlを加えた。このCH2Cl2溶液をArを吹きこんだ水50mlで3回洗浄し、Na2SO4で乾燥後、減圧下で濃縮することにより、下記化学式(17)
【化19】
に示すBenzyldiisopropylphosphineを淡黄色オイルとして1.0626g(77.9%)得た。この化合物のNMRの測定結果は以下の通りである。
【0049】
1H−NMR(CDCl3):7.35−7.02(m,5H),3.03(d,2H),2.00−1.85(m,2H),1.20−0.95(m,12H)ppm
31P−NMR(CDCl3):51ppm
1H/31P−2D NMR:1Hの3.03(benzyl基のメチレン)、2.00−1.85(isopropyl基のメチン)、1.20−0.95(isopropyl基のメチル)ppmと31Pの51ppmに相関あり。
【0050】
(ii)化学式(5)のIridium(III) tris(benzyldiisopropylphosphino−P,C2’)の合成
Ar雰囲気下で上記化学式(17)に示されるBenzyldiisopropylphosphineを526mg(2.53mmol,4eq./Ir)、3塩化イリジウム1水和物(Irdium Chloride Monohydrate:IrCl3・H2O)を200mg(0.63mmol)、KHCO3を190mg(1.90mmol,3eq./Ir)を2−メトキシエタノール(2−Methoxyethanol)10mlに加えて90℃で8.5時間撹拌した。反応溶液を冷却したところ、黄色針状結晶が析出した。この黄色針状結晶をアセチルアセトン(Acetylacetone)95mg(0.95mmol,1.5eq./Ir)と、KHCO3 90mg(0.9mmol, 1.5eq./Ir)を加えて溶解し、90℃で8時間撹拌した。冷却後、黄色針状結晶が析出した。この結晶を含む残さをろ過により取り出し、CH2Cl2を10ml加えた。不溶分をろ過し、ろ液を濃縮した。残さにCHCl310mlとヘキサン20mlを加え溶解し、エパポレーターで10mlぐらいまで濃縮した。析出した結晶をろ化し、真空乾燥器で室温、一晩乾燥させることにより、上記化学式(5)に示したIridium(III)tris(benzyldiisopropylphosphino−P,C2’)を黄色粉末として88.7mg(17.3%)得た。このイリジウム錯体のNMRの測定結果は以下の通りである。
【0051】
1H−NMR(CDCl3):7.66(d,3H,A),7.33(d,1.8H,B),7.30−7.19(m,4.8H,A+B),3.74(t,2H,A),3.44(dd,1.2H,B),2.72−2.59(m,1.2H,B),2.52−2.44(m,2H,A),1.38−1.13(m,57.6H,A+B)ppm
31P−NMR(CDCl3):35(A),8(B)ppm
得られた錯体には、2種類の異性体(mer体(A)、fac体(B)が混合しており、(A):(B)= 1.0:0.6の存在比であった。
【0052】
[実施例4]
実施例4として、上記化学式(4)に示すイリジウム錯体[Iridium(III)bis(benzyldimethylaminato−N,C2’)(acetylacetonate)]を合成した。以下にその手順を示す。
【0053】
不活性ガス雰囲気下、Irdium Chloride Monohydrate(IrCl3・H2O)(Ir含有量:52.64%,1.10g,3.00mmol)、ベンゾイルジメチルアミン(Benzyldimethylamine)(2.43g,18.0mmol)、およびKHCO3(3.00g,30.0mmol)を、十分に脱気した2−エトキシエタノール(2−Ethoxyethanol)(60ml)中60oCで24時間加熱撹拌した。加熱終了後、反応溶液を室温まで冷却し、アセチルアセトン(0.600g,6.00mmol)とKHCO3(1.50g,15.0mmol)を加え、さらに60oCで10時間加熱撹拌した。加熱終了後、減圧下反応溶媒を留去し、得られた残渣にCH2Cl2(100mL)を加え固体(KHCO3)を濾別、CH2Cl2(200mL)で洗浄した。母液から減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製(展開液:20%酢酸エチル−ヘキサン)することにより上記化学式(4)に示すIridium(III) bis(benzyldimethylaminato−N,C2’) (acetylacetonate)を淡黄色粉末として0.242g(0.404mmol,13%)得た。
【0054】
なお、この錯体は、CH2Cl2−ヘキサンで再結晶することにより純度をあげることができる。得られた淡黄色粉末の融点は208℃であった。また、この錯体のIR及びNMR等を測定した結果は以下の通りである。
【0055】
IR(KBr):3042,2987,2923,1578,1516,1467,1442,1408,1392,1256,1202,1054,1018,987,959,923,857,841,771,740,656,588,536,421cm−1
1H NMR(CDCl3):1.81(s,6H),2.02(s,6H),2.83(s,6H),3.40(d,J=12.5Hz,2H),4.77(d,J=12.2Hz,2H),5.36(s,1H),6.71(td,J=7.2,1.0Hz,2H),6.81(d,J=7.3Hz,2H),6.90(dt,J=7.5,0.9Hz,2H),7.51(d,J=7.6Hz,2H)ppm
13C NMR(CDCl3):28.95,51.77,53.16,75.62,101.01,120.49,120.90,124.27,131.81,135.21,150.82,183.54ppm
UV(film)lmax266nm,304(sh)。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る有機金属錯体は、色純度が高く安定な青色燐光発光機能を発揮することができる。
【0057】
また、このような金属錯体化合物を例えば有機電界発光素子の発光材料として用いることで、高い発光効率の表示装置や光源を得ることができる。また本発明に係る金属錯体化合物を用いることで、青色などの短波長の燐光発光が得られ、例えば表示装置としてのフルカラー化などが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態2及び実施例1に係る有機電界発光素子の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1の素子の発光効率を示す図である。
【図3】実施例1の素子の発光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例1および従来の素子のCIE色度座標図である。
【図5】化学式(3)の化合物の吸収スペクトルを示す図である。
【図6】化学式(3)の化合物のPLスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
10 透明基板、12 透明電極(陽極)、14 金属電極(陰極)、20 有機層、22 正孔輸送層、24 燐光発光層、26 正孔ブロック層、28 電子輸送層。
Claims (7)
- 下記式(1)
中心金属Mは、重金属であり、
アセチルアセナト誘導体の配位子は、その配位数mが0又は1であり、
式(i)で表される配位子の配位数nは1〜3であり、
式(i)において、Xは15族元素、R1、R2は、水素又は任意の独立した置換基又はR1とR2とが互いに環の一部を構成した置換基、Arは芳香族環、Lは、式(ii)で表される2官能性基であり、式(ii)において、Yは炭素又は珪素、R3及びR4は、水素、アルキル基、アリール基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシ基のいずれかの独立した置換基、又はR3とR4とが互いに環の一部を構成した置換基、であることを特徴とする有機金属錯体化合物。 - 前記mと前記nとの和が、前記中心金属Mの価数に等しい請求項1に記載の有機金属錯体化合物。
- 前記中心金属Mは、イリジウム、白金、パラジウムのいずれかである請求項1又は請求項2に記載の有機金属錯体化合物。
- 有機薄膜を備える有機発光素子であって、請求項1〜請求項4のいずれかひとつに記載の有機金属錯体を前記有機薄膜中に含むことを特徴とする有機発光素子。
- 有機発光層を備える有機発光素子であって、請求項1〜請求項4のいずれかひとつに記載の有機金属錯体を前記発光層中に含むことを特徴とする有機発光素子。
- 請求項6に記載の有機発光素子において、
前記有機金属錯体を前記発光層のドーパント材料に用いたことを特徴とする有機発光素子。
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