JP2004155688A - シャペロン活性を有する合成ペプチド、脱炭酸活性の測定方法、伝達性海綿状脳症用薬剤及びその探索方法 - Google Patents
シャペロン活性を有する合成ペプチド、脱炭酸活性の測定方法、伝達性海綿状脳症用薬剤及びその探索方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】分子シャペロン活性を有する新規な合成ペプチドや伝達性海綿状脳症用薬剤及びその探索方法等を提供する。
【解決手段】アミノ酸配列Val−Pro−Val−Ala−Pro−Gly−Ala−Pro−Ala−Ala−Pro−Ala−X1(X1はAsp又はGluである。)を少なくとも一部に有するペプチド、又はIle−Ser−X2−Gly−Ser−Gly−X3−Thr−Trp−Ser−Asn−X4−Tyr(X2、X3及びX4はAsp、Glu又はArgである。)を少なくとも一部に有するペプチドを、プリオン蛋白質のアミノ酸配列由来のLys−Thr−Asn−Met−Lys−His−Met−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Val−Val−Gly−Gly−Leu−Glyを少なくとも一部に有するペプチドに加えることによって、後者のペプチドの脱炭酸活性を観測することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】アミノ酸配列Val−Pro−Val−Ala−Pro−Gly−Ala−Pro−Ala−Ala−Pro−Ala−X1(X1はAsp又はGluである。)を少なくとも一部に有するペプチド、又はIle−Ser−X2−Gly−Ser−Gly−X3−Thr−Trp−Ser−Asn−X4−Tyr(X2、X3及びX4はAsp、Glu又はArgである。)を少なくとも一部に有するペプチドを、プリオン蛋白質のアミノ酸配列由来のLys−Thr−Asn−Met−Lys−His−Met−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Val−Val−Gly−Gly−Leu−Glyを少なくとも一部に有するペプチドに加えることによって、後者のペプチドの脱炭酸活性を観測することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリオン蛋白質の部分アミノ酸配列(セグメント)に対してシャペロン活性を有する新規な合成ペプチド、脱炭酸活性の測定方法、伝達性海綿状脳症用薬剤及びその探索方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
伝達性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病、スクレイピー、牛海綿状脳症など)の治療薬の開発には、社会からの強力な要請がある。これまでに幾つかの低分子化合物が開発されてきているが、効力性と副作用の点から、より優れた活性をもつ化合物の開発が望まれている(K.T. Adjou et al., CNS Drugs 10, 83−89 (1998))。
【0003】
伝達性海綿状脳症と高分子シャペロン(Protein X)との関連性は既に指摘されているが、高分子シャペロンの単離同定には到っていない(F.E. Cohen & S.B. Prusiner, Annu. Rev. Biochem., 67, 793−819 (1998))。但し、13個のアミノ酸残基からなる合成ペプチド(iPrp13)によるヒト(又はマウス)感染性プリオン蛋白質(PrpSc)の正常プリオン蛋白質(PrpC)への変換が既に報告されている(C. Soto et al., Lancet 355, 192−197 (2000), C. Soto et al., Biochem. Biophys. Chem. Commun., 226, 672−680 (1996))。
【0004】
所望の分子シャペロン活性を有する短鎖ペプチド又は低分子有機化合物を開発するためには、生物活性を有する既存のアミノ酸配列中のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換するという方法や自然界からのランダムスクリーニング方法が採用される。例えば、前者の方法では、その配列中のアミノ酸残基の親媒性に着目して、似たような性質をもつほかのアミノ酸残基と入れ替える。また、N末端のアセチル化、C末端のアミド化、あるいはペプチド結合(−CONH−)を−CH2−NH−、−CH=CH−、−NHCO−のように変換したり、適当な位置に2つのシステイン残基を導入して直線型から環状型にしたり、あるいはその逆方向(環状型から直線型)へ変換したり、またL−アミノ酸残基をD−アミノ酸残基と交換したりする改変方法もある。更に、新しい1つの合成方法として、天然型アミノ酸配列の逆配列合成法もある(B−L. Lie et al., Biol. Pharm. Bull., 19, 1602−1606 (1996))。
【0005】
そのような既知手段の中で、Soto らはiPrp13の逆配列ペプチドに関する分子シャペロン活性を全く言及していない(C. Soto et al., Lancet 355, 192−197 (2000), C. Soto et al., Biochem. Biophys. Chem. Commun., 226, 672−680 (1996))。
【0006】
感染性プリオン蛋白質(PrpSc)と伝達性海綿状脳症との関連性は多くの研究者に依って議論されているが、正常なプリオン蛋白質(PrpC)については、銅結合蛋白質やストレス応答蛋白質以外の機能は不明である。但し、プリオン蛋白質の部分ペプチドがトリフロロエタノール存在下、オキザロアセテートに対して脱炭酸活性を発現するかもしれないことが推測されているが実証されていない(特開2002−22736号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分子シャペロン活性を有する新規なシャペロン活性を有する合成ペプチド、脱炭酸活性の測定方法、伝達性海綿状脳症用薬剤及びその探索方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討した結果、プリオン蛋白質のアミノ酸配列由来のアミノ酸配列R4NH−Lys−Thr−Asn−Met−Lys−His−Met−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Val−Val−Gly−Gly−Leu−Gly−COR5(配列表中の配列番号13)又はR4NH−Gly−Leu−Gly−Gly−Val−Val−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Met−His−Lys−Met−Asn−Thr−Lys−COR5(配列表中の配列番号14)(R4は水素原子又はアセチル基であり、R5はOH又はNH2である。)で表されるアミノ酸配列の何れか1つが、トリフロロエタノール(TFE)存在下で、オキザロアセテートの脱炭酸活性を促進することを見出し、更にそのアミノ酸配列はアミノ酸配列R1NH−Val−Pro−Val−Ala−Pro−Gly−Ala−Pro−Ala−Ala−Pro−Ala−X1−COR2(配列表中の配列番号10)(X1はAsp又はGluであり、R1は水素原子又はアセチル基であり、R2はOH又はNH2である。)で表されるペプチドか、又はR3NH−Ile−Ser−X2−Gly−Ser−Gly−X3−Thr−Trp−Ser−Asn−X4−Tyr−COR4(配列表中の配列番号11)若しくはR3NH−Tyr−X4−Asn−Ser−Trp−Thr−X3−Gly−Ser−Gly−X2−Ser−Ile−COR4(配列表中の配列番号12)(X2、X3及びX4はAsp、Glu又はArgであり、R1は水素原子又はアセチル基であり、R2はOH又はNH2である。)で表されるペプチドのうち何れか1つのペプチド又はクロルプロマジンを加えると、TFE非存在下でも、オキザロアセテートの脱炭酸活性を促進することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
更に好ましい態様としては、X1はAsp、X2、X3及びX4はAsp又はArgである。
【0010】
また、本願発明に係る伝達性海綿状脳症用薬剤の探索方法は、上記のいずれかの合成ペプチドを用いるか、又はカルシトニン等の塩基性アミノ酸リジン残基を少なくとも1個含む両親媒性アミノ酸配列を用いることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のペプチドは活性化エステル法、混合酸無水物法、アジド法などのC端活性化法、カルボジミドなどのカップリング法、N−カルボキシ無水物(NCA)法、酸化還元法あるいは固相合成法等の方法により合成することができる。
【0012】
本発明のペプチドの有効成分として含む分子シャペロン剤においては該ペプチドに代えてあるいは該ペプチドと共に、上記のペプチドの生理学的に許容される塩を有効成分として含んでいてもよく、生理学的に許容される塩としてはアルカリ、無機酸または有機酸、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、オレイン酸、フマール酸等との塩を挙げることができる。
【0013】
本発明におけるペプチドまたはその塩は治療または予防のための経口的あるいは非経口的に投与することができる。
【0014】
経口投与剤としては散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤などの固形製剤あるいはシロップ剤、エリキシル剤などの液状製剤とすることができる。また、非経口投与剤としては注射剤、直腸投与剤、皮膚外用剤、吸入剤とすることができる。これらの製剤は活性成分に薬学的に認容できる製造助剤を加えることにより常法に従って製造される。更に、公知の技術により持続性製剤とすることも可能である。
【0015】
経口投与用の固形製剤を製造するには活性成分と賦形剤、例えば乳糖、澱粉、結晶セルロース、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、更に必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式または乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するにはこれらの散剤及び顆粒剤をそのままあるいはステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒または錠剤はヒドロキシメチルセルロースフタレート、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチルコポリマーなど腸溶性基剤で被覆して腸溶性製剤、あるいはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには散剤又は顆粒剤などの硬カプセルに充填するか、活性成分をグリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解したのちゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。
【0016】
経口投与用の液状製剤を製造するには活性成分と白糖、ソルビトール、グリセリンなどの甘味剤とを水に溶かして透明なシロップ剤、更に精油、エタノールなどを加えてエリキシル剤とするか、アラビアゴム、トラガント、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを加えて乳剤または懸濁剤としてもよい。これらの液状製剤には所望により矯味剤、着色剤、保存剤などを加えてもよい。
【0017】
注射剤を製造するには活性成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤とともに注射用蒸留水に溶解し、無菌ろ過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空下凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよいし、活性成分にレシチン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化蓖麻子油などを加えて水中で乳化せしめ注射用乳剤とすることもできる。
【0018】
直腸投与剤を製造するには活性成分及びカカオ脂、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、ポリエチレングリコールなどの坐剤用基剤とを加湿して溶融し、型に流し込んで冷却するか、活性成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解したのちゼラチン膜で被覆すればよい。
【0019】
皮膚外用剤を製造するには活性成分を白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどに加えて必要ならば加湿して練合し軟膏剤とするか、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体などの粘着剤と練合したのちポリエチレンなどの不織布に展延してテープ剤としてもよい。
【0020】
吸入剤を製造するには活性成分をフロンガスなどの噴射剤に溶解または分散して耐圧容器に充填しエアゾール剤としてもよい。
【0021】
本発明のペプチドの投与量は伝達性海綿状脳症の患者(牛、羊などの動物も含め)の年齢、体重及び病態に依ってことなるが、通常一日当たり約1〜500mgであり、1乃至数回に分けて投与することが望ましい。
【0022】
以下に、本発明について、実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本活性測定方法を全種プリオン蛋白質の全長アミノ酸配列に応用したり、アミノ酸親媒性などの分類法に関する既知知見を用いて蛋白質データベース等から本発明のシャペロン活性を有する合成ペプチドのアミノ酸配列と相同性の高い(40%以上)配列を持つ蛋白質を探索し、その相同性の高いアミノ酸配列を含む該蛋白質のアミノ酸配列全体又は部分を同一目的(例えば、伝達性海綿状脳症の治療、予防又は検査薬の開発)に利用することも容易に類推でき、本発明範囲に含まれる。更に、本活性測定法は、伝達性海綿状脳症の治療、予防又は検査用の薬剤の探索方法にも利用できることは明白であり、その用途法が本実施例に限定されるものではない。
【0023】
【実施例】
先ず、種々の合成ペプチドを準備した。本実施例に用いた合成ペプチドは下記表1に示すとおりである。
【0024】
【表1】
【0025】
配列番号1、2、3及び5に記載のアミノ酸配列は公知である(A. Iwahori et al., Biol. Pharm. Bull. 20, 267−270 (1997); K. Johnsson et al., Nature365, 530−532 (1993); G. Forioni et al, Nature 362, 543−546 (1993); C. Soto et al., Lancet 355, 192−197 (2000))。一方、配列番号4、6、7、8及び9に記載のアミノ酸配列は本発明範囲に含まれるものである。また、配列番号1、2、3、4及び9に記載のアミノ酸配列は、塩基性アミノ酸リジン残基を少なくとも1個含む両親媒性アミノ酸配列であり、このような両親媒性アミノ酸配列としては、他にカルシトニンが挙げられる。
【0026】
次に、脱炭酸酵素活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。2.98mMオキザロアセテート(1.7ml; 50mM MOPS, 0.15M NaCl, pH7.5)とトリフロロエタノール(TFE)(0.2ml)を分光器セルに加え、室温で、5分間攪拌した。攪拌後、その溶液に2.0mM濃度の測定用サンプルを0.1ml加えて反応溶液全量を2mlとし、室温で、1分間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。その後、攪拌を停止し、分光器(Ultroaspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度を測定した。対照サンプルとしては2.0mM配列番号2(0.2mM)を用いた。
【0027】
反応開始後、2500秒後の配列番号2に記載のアミノ酸配列存在下での吸光度減少量aを求めた。同様にして、配列番号2に記載のアミノ酸配列非存在下でのオキザロアセテートの吸光度減少量bを求めた。試験ペプチド(配列番号1、3、4、5、6、7及び8)についても同様にして吸光度減少量cを求め、下記の数式1により試験ペプチドの配列番号2に記載のアミノ酸配列に対する相対比活性を求めた。
【0028】
【数1】
【0029】
この測定結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
この結果より配列番号3及び4に記載のアミノ酸配列はTFE存在下脱炭酸活性を有していることが明らかとなった。
【0032】
次に、合成ペプチドのシャペロン活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。2.98mMオキザロアセテート(1.7ml; 50mM MOPS, 0.15M NaCl, pH7.5)とTFE(0.2ml)を分光器セルに加え、室温で、5分間攪拌した。攪拌後、その溶液に2.0mM濃度の測定用サンプルを0.1ml加えて反応溶液全量を2mlとし、室温で、1分間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。その後、攪拌を停止し、分光器(Ultroaspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度を測定した。対照サンプルとしては2.0mM配列番号3(又は4)に記載のアミノ酸配列(0.2mM)を用いた。反応開始後、2500秒後の配列番号3に記載のアミノ酸配列存在下での吸光度減少量dを求めた。同様にして、配列番号3に記載のアミノ酸配列非存在下でのオキザロアセテートの吸光度減少量eを求めた。
【0033】
次に、上記操作のTFEの代わりに試験ペプチド(配列番号5、6、7又は8)を0.2ml加え、室温で5分間攪拌した。攪拌後、その溶液に2.0mM濃度の測定用サンプル(配列番号3)を0.1ml加えて反応溶液全量を2mlとし、室温で、1分間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。攪拌を停止後、分光器で285nmの吸光度減少量fを測定した。下記の数式2により試験ペプチドの配列番号3(又は4)に記載のアミノ酸配列に対する相対比活性を求めた。
【0034】
【数2】
【0035】
この測定結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
この結果より、本発明のペプチド(配列番号6)はシャペロン活性を有していることが明らかとなった。
【0038】
更に、他の方法により、合成ペプチドのシャペロン活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。分光器セル中、2mM配列番号3(又は4)(0.2ml)、緩衝液(50mM MOPS, 0.15M NaCl, pH7.0)(1.4ml)の混合溶液に、2mM測定用サンプル(配列番号5,6,7,8)(0.2ml)を加え、室温で48時間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。攪拌後、2.98mMオキザロアセテート(0.2ml)を加えて全量を2.0mlとし、更に1分間攪拌した。攪拌を停止し、分光器(Ultraspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度減少量を反応開始後5000秒間測定した。対照サンプルとしては、測定用サンプル非存在下、トリフロロエタノール(TFE)存在下の配列番号3で測定した吸光度減少量を1.00とした。
【0039】
この測定結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
この結果より、本発明のペプチド(配列番号6及び7)はシャペロン活性を有していることが明らかとなった。
【0042】
次に、上記の方法とは異なる方法により、脱炭酸活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。分光器セル中、2mM配列番号9(0.2ml)、緩衝液(50mM MOPS, 0.15MNaCl, pH7.0)(1.4ml)の混合溶液に、TFE(0.2ml)を加え、室温で48時間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。攪拌後、2.98mMオキザロアセテート(0.2ml)を加えて全量を2.0mlとし、更に1分間攪拌した。攪拌を停止し、分光器(Ultraspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度減少量を反応開始後5000秒間測定した。対照サンプルとしては、測定用サンプル非存在下、トリフロロエタノール(TFE)存在下の配列番号2で測定した吸光度減少量を1.00とした。
【0043】
この測定結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
この結果より、配列番号9に記載のアミノ酸配列はTFE存在下で脱炭酸活性を有していることが明らかとなった。
【0046】
次に、抗精神病薬等として使用されるクロルプロマジンのシャペロン活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。分光器セル中、2mM配列番号9(0.2ml)、緩衝液(50mM MOPS, 0.15MNaCl, pH6.0)(1.4ml)の混合溶液に、2mM測定用サンプル(例えば、クロルプロマジン)を加え、室温で48時間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。攪拌後、2.98mMオキザロアセテート(0.2ml)を加えて全量を2.0mlとし、更に1分間攪拌した。攪拌を停止し、分光器(Ultraspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度減少量を反応開始後5000秒間測定した。対照サンプルとしては、配列番号9非存在下、探索用サンプル(クロルプロマジン)存在下で測定した吸光度減少量を1.00とした。
【0047】
この測定結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
この結果より、本発明のシャペロン活性測定法は伝達性海綿状脳症用治療薬としての低分子有機化合物を探索できることが明らかとなった。
【0050】
【発明の効果】
上記ペプチドは分子シャペロン活性を有し、伝達性海綿状脳症の治療、予防又は検査薬としての用途を有する。
【0051】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリオン蛋白質の部分アミノ酸配列(セグメント)に対してシャペロン活性を有する新規な合成ペプチド、脱炭酸活性の測定方法、伝達性海綿状脳症用薬剤及びその探索方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
伝達性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病、スクレイピー、牛海綿状脳症など)の治療薬の開発には、社会からの強力な要請がある。これまでに幾つかの低分子化合物が開発されてきているが、効力性と副作用の点から、より優れた活性をもつ化合物の開発が望まれている(K.T. Adjou et al., CNS Drugs 10, 83−89 (1998))。
【0003】
伝達性海綿状脳症と高分子シャペロン(Protein X)との関連性は既に指摘されているが、高分子シャペロンの単離同定には到っていない(F.E. Cohen & S.B. Prusiner, Annu. Rev. Biochem., 67, 793−819 (1998))。但し、13個のアミノ酸残基からなる合成ペプチド(iPrp13)によるヒト(又はマウス)感染性プリオン蛋白質(PrpSc)の正常プリオン蛋白質(PrpC)への変換が既に報告されている(C. Soto et al., Lancet 355, 192−197 (2000), C. Soto et al., Biochem. Biophys. Chem. Commun., 226, 672−680 (1996))。
【0004】
所望の分子シャペロン活性を有する短鎖ペプチド又は低分子有機化合物を開発するためには、生物活性を有する既存のアミノ酸配列中のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換するという方法や自然界からのランダムスクリーニング方法が採用される。例えば、前者の方法では、その配列中のアミノ酸残基の親媒性に着目して、似たような性質をもつほかのアミノ酸残基と入れ替える。また、N末端のアセチル化、C末端のアミド化、あるいはペプチド結合(−CONH−)を−CH2−NH−、−CH=CH−、−NHCO−のように変換したり、適当な位置に2つのシステイン残基を導入して直線型から環状型にしたり、あるいはその逆方向(環状型から直線型)へ変換したり、またL−アミノ酸残基をD−アミノ酸残基と交換したりする改変方法もある。更に、新しい1つの合成方法として、天然型アミノ酸配列の逆配列合成法もある(B−L. Lie et al., Biol. Pharm. Bull., 19, 1602−1606 (1996))。
【0005】
そのような既知手段の中で、Soto らはiPrp13の逆配列ペプチドに関する分子シャペロン活性を全く言及していない(C. Soto et al., Lancet 355, 192−197 (2000), C. Soto et al., Biochem. Biophys. Chem. Commun., 226, 672−680 (1996))。
【0006】
感染性プリオン蛋白質(PrpSc)と伝達性海綿状脳症との関連性は多くの研究者に依って議論されているが、正常なプリオン蛋白質(PrpC)については、銅結合蛋白質やストレス応答蛋白質以外の機能は不明である。但し、プリオン蛋白質の部分ペプチドがトリフロロエタノール存在下、オキザロアセテートに対して脱炭酸活性を発現するかもしれないことが推測されているが実証されていない(特開2002−22736号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分子シャペロン活性を有する新規なシャペロン活性を有する合成ペプチド、脱炭酸活性の測定方法、伝達性海綿状脳症用薬剤及びその探索方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討した結果、プリオン蛋白質のアミノ酸配列由来のアミノ酸配列R4NH−Lys−Thr−Asn−Met−Lys−His−Met−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Val−Val−Gly−Gly−Leu−Gly−COR5(配列表中の配列番号13)又はR4NH−Gly−Leu−Gly−Gly−Val−Val−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Met−His−Lys−Met−Asn−Thr−Lys−COR5(配列表中の配列番号14)(R4は水素原子又はアセチル基であり、R5はOH又はNH2である。)で表されるアミノ酸配列の何れか1つが、トリフロロエタノール(TFE)存在下で、オキザロアセテートの脱炭酸活性を促進することを見出し、更にそのアミノ酸配列はアミノ酸配列R1NH−Val−Pro−Val−Ala−Pro−Gly−Ala−Pro−Ala−Ala−Pro−Ala−X1−COR2(配列表中の配列番号10)(X1はAsp又はGluであり、R1は水素原子又はアセチル基であり、R2はOH又はNH2である。)で表されるペプチドか、又はR3NH−Ile−Ser−X2−Gly−Ser−Gly−X3−Thr−Trp−Ser−Asn−X4−Tyr−COR4(配列表中の配列番号11)若しくはR3NH−Tyr−X4−Asn−Ser−Trp−Thr−X3−Gly−Ser−Gly−X2−Ser−Ile−COR4(配列表中の配列番号12)(X2、X3及びX4はAsp、Glu又はArgであり、R1は水素原子又はアセチル基であり、R2はOH又はNH2である。)で表されるペプチドのうち何れか1つのペプチド又はクロルプロマジンを加えると、TFE非存在下でも、オキザロアセテートの脱炭酸活性を促進することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
更に好ましい態様としては、X1はAsp、X2、X3及びX4はAsp又はArgである。
【0010】
また、本願発明に係る伝達性海綿状脳症用薬剤の探索方法は、上記のいずれかの合成ペプチドを用いるか、又はカルシトニン等の塩基性アミノ酸リジン残基を少なくとも1個含む両親媒性アミノ酸配列を用いることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のペプチドは活性化エステル法、混合酸無水物法、アジド法などのC端活性化法、カルボジミドなどのカップリング法、N−カルボキシ無水物(NCA)法、酸化還元法あるいは固相合成法等の方法により合成することができる。
【0012】
本発明のペプチドの有効成分として含む分子シャペロン剤においては該ペプチドに代えてあるいは該ペプチドと共に、上記のペプチドの生理学的に許容される塩を有効成分として含んでいてもよく、生理学的に許容される塩としてはアルカリ、無機酸または有機酸、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、オレイン酸、フマール酸等との塩を挙げることができる。
【0013】
本発明におけるペプチドまたはその塩は治療または予防のための経口的あるいは非経口的に投与することができる。
【0014】
経口投与剤としては散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤などの固形製剤あるいはシロップ剤、エリキシル剤などの液状製剤とすることができる。また、非経口投与剤としては注射剤、直腸投与剤、皮膚外用剤、吸入剤とすることができる。これらの製剤は活性成分に薬学的に認容できる製造助剤を加えることにより常法に従って製造される。更に、公知の技術により持続性製剤とすることも可能である。
【0015】
経口投与用の固形製剤を製造するには活性成分と賦形剤、例えば乳糖、澱粉、結晶セルロース、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、更に必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式または乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するにはこれらの散剤及び顆粒剤をそのままあるいはステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒または錠剤はヒドロキシメチルセルロースフタレート、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチルコポリマーなど腸溶性基剤で被覆して腸溶性製剤、あるいはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには散剤又は顆粒剤などの硬カプセルに充填するか、活性成分をグリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解したのちゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。
【0016】
経口投与用の液状製剤を製造するには活性成分と白糖、ソルビトール、グリセリンなどの甘味剤とを水に溶かして透明なシロップ剤、更に精油、エタノールなどを加えてエリキシル剤とするか、アラビアゴム、トラガント、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを加えて乳剤または懸濁剤としてもよい。これらの液状製剤には所望により矯味剤、着色剤、保存剤などを加えてもよい。
【0017】
注射剤を製造するには活性成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤とともに注射用蒸留水に溶解し、無菌ろ過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空下凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよいし、活性成分にレシチン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化蓖麻子油などを加えて水中で乳化せしめ注射用乳剤とすることもできる。
【0018】
直腸投与剤を製造するには活性成分及びカカオ脂、脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリド、ポリエチレングリコールなどの坐剤用基剤とを加湿して溶融し、型に流し込んで冷却するか、活性成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解したのちゼラチン膜で被覆すればよい。
【0019】
皮膚外用剤を製造するには活性成分を白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどに加えて必要ならば加湿して練合し軟膏剤とするか、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体などの粘着剤と練合したのちポリエチレンなどの不織布に展延してテープ剤としてもよい。
【0020】
吸入剤を製造するには活性成分をフロンガスなどの噴射剤に溶解または分散して耐圧容器に充填しエアゾール剤としてもよい。
【0021】
本発明のペプチドの投与量は伝達性海綿状脳症の患者(牛、羊などの動物も含め)の年齢、体重及び病態に依ってことなるが、通常一日当たり約1〜500mgであり、1乃至数回に分けて投与することが望ましい。
【0022】
以下に、本発明について、実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本活性測定方法を全種プリオン蛋白質の全長アミノ酸配列に応用したり、アミノ酸親媒性などの分類法に関する既知知見を用いて蛋白質データベース等から本発明のシャペロン活性を有する合成ペプチドのアミノ酸配列と相同性の高い(40%以上)配列を持つ蛋白質を探索し、その相同性の高いアミノ酸配列を含む該蛋白質のアミノ酸配列全体又は部分を同一目的(例えば、伝達性海綿状脳症の治療、予防又は検査薬の開発)に利用することも容易に類推でき、本発明範囲に含まれる。更に、本活性測定法は、伝達性海綿状脳症の治療、予防又は検査用の薬剤の探索方法にも利用できることは明白であり、その用途法が本実施例に限定されるものではない。
【0023】
【実施例】
先ず、種々の合成ペプチドを準備した。本実施例に用いた合成ペプチドは下記表1に示すとおりである。
【0024】
【表1】
【0025】
配列番号1、2、3及び5に記載のアミノ酸配列は公知である(A. Iwahori et al., Biol. Pharm. Bull. 20, 267−270 (1997); K. Johnsson et al., Nature365, 530−532 (1993); G. Forioni et al, Nature 362, 543−546 (1993); C. Soto et al., Lancet 355, 192−197 (2000))。一方、配列番号4、6、7、8及び9に記載のアミノ酸配列は本発明範囲に含まれるものである。また、配列番号1、2、3、4及び9に記載のアミノ酸配列は、塩基性アミノ酸リジン残基を少なくとも1個含む両親媒性アミノ酸配列であり、このような両親媒性アミノ酸配列としては、他にカルシトニンが挙げられる。
【0026】
次に、脱炭酸酵素活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。2.98mMオキザロアセテート(1.7ml; 50mM MOPS, 0.15M NaCl, pH7.5)とトリフロロエタノール(TFE)(0.2ml)を分光器セルに加え、室温で、5分間攪拌した。攪拌後、その溶液に2.0mM濃度の測定用サンプルを0.1ml加えて反応溶液全量を2mlとし、室温で、1分間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。その後、攪拌を停止し、分光器(Ultroaspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度を測定した。対照サンプルとしては2.0mM配列番号2(0.2mM)を用いた。
【0027】
反応開始後、2500秒後の配列番号2に記載のアミノ酸配列存在下での吸光度減少量aを求めた。同様にして、配列番号2に記載のアミノ酸配列非存在下でのオキザロアセテートの吸光度減少量bを求めた。試験ペプチド(配列番号1、3、4、5、6、7及び8)についても同様にして吸光度減少量cを求め、下記の数式1により試験ペプチドの配列番号2に記載のアミノ酸配列に対する相対比活性を求めた。
【0028】
【数1】
【0029】
この測定結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
この結果より配列番号3及び4に記載のアミノ酸配列はTFE存在下脱炭酸活性を有していることが明らかとなった。
【0032】
次に、合成ペプチドのシャペロン活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。2.98mMオキザロアセテート(1.7ml; 50mM MOPS, 0.15M NaCl, pH7.5)とTFE(0.2ml)を分光器セルに加え、室温で、5分間攪拌した。攪拌後、その溶液に2.0mM濃度の測定用サンプルを0.1ml加えて反応溶液全量を2mlとし、室温で、1分間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。その後、攪拌を停止し、分光器(Ultroaspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度を測定した。対照サンプルとしては2.0mM配列番号3(又は4)に記載のアミノ酸配列(0.2mM)を用いた。反応開始後、2500秒後の配列番号3に記載のアミノ酸配列存在下での吸光度減少量dを求めた。同様にして、配列番号3に記載のアミノ酸配列非存在下でのオキザロアセテートの吸光度減少量eを求めた。
【0033】
次に、上記操作のTFEの代わりに試験ペプチド(配列番号5、6、7又は8)を0.2ml加え、室温で5分間攪拌した。攪拌後、その溶液に2.0mM濃度の測定用サンプル(配列番号3)を0.1ml加えて反応溶液全量を2mlとし、室温で、1分間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。攪拌を停止後、分光器で285nmの吸光度減少量fを測定した。下記の数式2により試験ペプチドの配列番号3(又は4)に記載のアミノ酸配列に対する相対比活性を求めた。
【0034】
【数2】
【0035】
この測定結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
この結果より、本発明のペプチド(配列番号6)はシャペロン活性を有していることが明らかとなった。
【0038】
更に、他の方法により、合成ペプチドのシャペロン活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。分光器セル中、2mM配列番号3(又は4)(0.2ml)、緩衝液(50mM MOPS, 0.15M NaCl, pH7.0)(1.4ml)の混合溶液に、2mM測定用サンプル(配列番号5,6,7,8)(0.2ml)を加え、室温で48時間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。攪拌後、2.98mMオキザロアセテート(0.2ml)を加えて全量を2.0mlとし、更に1分間攪拌した。攪拌を停止し、分光器(Ultraspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度減少量を反応開始後5000秒間測定した。対照サンプルとしては、測定用サンプル非存在下、トリフロロエタノール(TFE)存在下の配列番号3で測定した吸光度減少量を1.00とした。
【0039】
この測定結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
この結果より、本発明のペプチド(配列番号6及び7)はシャペロン活性を有していることが明らかとなった。
【0042】
次に、上記の方法とは異なる方法により、脱炭酸活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。分光器セル中、2mM配列番号9(0.2ml)、緩衝液(50mM MOPS, 0.15MNaCl, pH7.0)(1.4ml)の混合溶液に、TFE(0.2ml)を加え、室温で48時間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。攪拌後、2.98mMオキザロアセテート(0.2ml)を加えて全量を2.0mlとし、更に1分間攪拌した。攪拌を停止し、分光器(Ultraspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度減少量を反応開始後5000秒間測定した。対照サンプルとしては、測定用サンプル非存在下、トリフロロエタノール(TFE)存在下の配列番号2で測定した吸光度減少量を1.00とした。
【0043】
この測定結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
この結果より、配列番号9に記載のアミノ酸配列はTFE存在下で脱炭酸活性を有していることが明らかとなった。
【0046】
次に、抗精神病薬等として使用されるクロルプロマジンのシャペロン活性測定を行った。この測定方法は以下のとおりである。分光器セル中、2mM配列番号9(0.2ml)、緩衝液(50mM MOPS, 0.15MNaCl, pH6.0)(1.4ml)の混合溶液に、2mM測定用サンプル(例えば、クロルプロマジン)を加え、室温で48時間攪拌(Iuchi, HS−3B, 回転スピード4)した。攪拌後、2.98mMオキザロアセテート(0.2ml)を加えて全量を2.0mlとし、更に1分間攪拌した。攪拌を停止し、分光器(Ultraspec 3100pro, Amersham Bioscienes corp.)で285nmの吸光度減少量を反応開始後5000秒間測定した。対照サンプルとしては、配列番号9非存在下、探索用サンプル(クロルプロマジン)存在下で測定した吸光度減少量を1.00とした。
【0047】
この測定結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
この結果より、本発明のシャペロン活性測定法は伝達性海綿状脳症用治療薬としての低分子有機化合物を探索できることが明らかとなった。
【0050】
【発明の効果】
上記ペプチドは分子シャペロン活性を有し、伝達性海綿状脳症の治療、予防又は検査薬としての用途を有する。
【0051】
【配列表】
Claims (10)
- 下記のアミノ酸配列
Val−Pro−Val−Ala−Pro−Gly−Ala−Pro−Ala−Ala−Pro−Ala−X1(X1はAsp又はGluを表す。)を少なくとも一部に有することを特徴とするシャペロン活性を有する合成ペプチド。 - 下記のアミノ酸配列
Ile−Ser−X2−Gly−Ser−Gly−X3−Thr−Trp−Ser−Asn−X4−Tyr又は
Tyr−X4−Asn−Ser−Trp−Thr−X3−Gly−Ser−Gly−X2−Ser−Ile
(X2、X3及びX4はAsp、Glu又はArgである。)を少なくとも一部に有することを特徴とするシャペロン活性を有する合成ペプチド。 - 前記アミノ酸配列のN末端がNH2又はNHCOCH3であり、C末端がCOOH又はCONH2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャペロン活性を有する合成ペプチド。
- 下記のアミノ酸配列
Ile−Ser−X2−Gly−Ser−Gly−X3−Thr−Trp−Ser−Asn−X4−Tyr又は
Tyr−X4−Asn−Ser−Trp−Thr−X3−Gly−Ser−Gly−X2−Ser−Ile
(X2、X3及びX4はAsp、Glu又はArgである。)を少なくとも一部に有するペプチドを、トリフロロエタノールとオキザロアセテートを含む緩衝液に加える工程を有することを特徴とする脱炭酸活性の測定方法。 - プリオン蛋白質のアミノ酸配列由来の下記のアミノ酸配列
Lys−Thr−Asn−Met−Lys−His−Met−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Val−Val−Gly−Gly−Leu−Gly又は
Gly−Leu−Gly−Gly−Val−Val−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Met−His−Lys−Met−Asn−Thr−Lys
を少なくとも一部に有するペプチドを、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の合成ペプチドとオキザロアセテートを含む緩衝液に加える工程を有することを特徴とする脱炭酸活性の測定方法。 - 前記アミノ酸配列のN末端をNH2又はNHCOCH3とし、C末端をCOOH又はCONH2とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の脱炭酸活性の測定方法。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の合成ペプチドを用いたことを特徴とする伝達性海綿状脳症用薬剤。
- プリオン蛋白質のアミノ酸配列由来の下記のアミノ酸配列
Lys−Thr−Asn−Met−Lys−His−Met−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Val−Val−Gly−Gly−Leu−Gly又は
Gly−Leu−Gly−Gly−Val−Val−Ala−Gly−Ala−Ala−Ala−Ala−Gly−Ala−Met−His−Lys−Met−Asn−Thr−Lys
を少なくとも一部に有するペプチドを用いることを特徴とする伝達性海綿状脳症用薬剤の探索方法。 - 前記アミノ酸配列のN末端をNH2又はNHCOCH3とし、C末端をCOOH又はCONH2とすることを特徴とする請求項8に記載の伝達性海綿状脳症用薬剤の探索方法。
- 塩基性アミノ酸リジン残基を少なくとも1個含む両親媒性アミノ酸配列を用いることを特徴とする伝達性海綿状脳症用薬剤の探索方法。
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-
2002
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