JP2004154889A - 研削方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加工後の形状が回転軸対称となる被加工物の加工完了時における所望の面形状データと、中間工程終了時の面形状の測定データとを比較して偏差を求め、この偏差を反映して次加工時の加工機の移動軸座標を作成することにより形状修正を施しながら研削加工を行う。中間工程加工時の移動軸座標に偏差を加算して偏差加算移動軸座標を求め、この偏差加算移動軸座標に次加工時の切り込み量を加算して次加工時最終パス移動軸絶対座標を求めた後、中間工程の加工時の移動軸座標と前記次加工時最終パス移動軸絶対座標との差分を次加工時のパス数で等分し、等分した点を補間して連続データとし、この連続データの移動軸座標に基づいて研削加工を行う。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸対称形状のレンズ等の光学素子やその成形用金型の成形面を形成するために用いる研削方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は、上述した研削を行うために使用される研削装置を示す。Z軸を中心に回転可能及びZ軸方向に移動可能なようにワークスピンドル101の先端に被加工物100が取り付けられる。この被加工物100を研削する砥石102は円盤状となっており、その端面が所定の曲率の加工面102aとなっている。砥石102はZ軸と同一平面内で直交するY軸方向に移動可能で、且つY軸を中心に回転可能に配置される。研削に際しては、被加工物100が保持されるZ軸の進退と、砥石102が保持されるY軸の進退の動作によって位置決めがなされて加工が行われる。砥石102の加工面102aは球面形状にツルーイングされており、図8に示すように被加工物100の中心部を加工するときと外周部を加工するときとにおいて、砥石102の作用点Qが移動する。
【0003】
このような装置によって被加工物の形状補正加工を行う場合には、中間工程の加工終了後の断面形状を測定し、この断面形状と所望の断面形状とから図9に示すように、その差分tを求める。この被加工物の径方向の各位置(Y軸座標で示される)に対して求められた差分tを、形状を測定した直前の加工時における移動軸座標に加減する。すなわち、径方向の各位置での被加工物の位置(Z軸座標で示される)に差分tを加減する。この移動軸座標に設定切り込みを与えた座標が形状補正加工時の最終パスにおける砥石と被加工物の軌跡となる。そして、この最終パスに予め設定された1パス当たりの切り込み量をZ軸座標に加減し、これに基づいた数パスに分けて加工が行われる(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58−45846号公報(第2〜3頁、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法により形状補正を行った場合、補正前の形状と所望の形状の差とが大きいときには、図10に示すように最終パスに至るまでに被加工物の特定の部分しか加工しないパスが多く存在する。このように被加工物の特定の部分しか加工しないパスが多く存在すると、被加工物の径方向位置によって砥石の作用点が決まる加工方法においては、砥石の特定の部分の磨耗が大きくなり、砥石の形状の乱れが発生する。そして、この砥石の形状の乱れが生じることにより、被加工物の研削加工後の形状に大きな影響を与える問題を有している。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、形状補正を行う研削加工において、砥石の偏磨耗を避けることができ、これにより高精度な面形状を有する回転軸対称の被加工物を加工することが可能な研削方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の研削方法は、加工後の形状が回転軸対称となる被加工物の加工完了時における所望の面形状データと、中間工程終了時の面形状の測定データとを比較して偏差を求め、この偏差を反映して次加工時の加工機の移動軸座標を作成することにより形状修正を施しながら研削加工を行う研削方法において、前記中間工程加工時の移動軸座標に前記偏差を加算して偏差加算移動軸座標を求め、この偏差加算移動軸座標に次加工時の切り込み量を加算して次加工時最終パス移動軸絶対座標を求めた後、前記中間工程の加工時の移動軸座標と前記次加工時最終パス移動軸絶対座標との差分を次加工時のパス数で等分し、等分した点を補間して連続データとし、この連続データの移動軸座標に基づいて研削加工を行うことを特徴とする。
【0008】
この発明では、中間工程の加工時の移動軸座標と前記次加工時最終パス移動軸絶対座標との差分を次加工時のパス数で等分した点を補間して連続データとし、この連続データの移動軸座標に基づいて研削加工を行うため、形状補正時の研削加工に伴う砥石の偏磨耗を抑制することができる。このため、偏摩耗に起因した形状誤差を抑制でき、高精度な面形状を加工することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は研削加工機の概要を示す側面図、図2〜図4は補正研削加工時の移動軸座標を説明する特性図である。なお、この実施の形態では、被加工物としてガラスレンズを研削する場合に適用するものである。
【0010】
図1に示すように、概ねの形状が創成されたガラスレンズ1をワーク軸10のスピンドル2の先端に保持する。ガラスレンズ1は研削加工の完了時に回転軸対称の形状となるものである。ワーク軸10はZ軸7を中心にして回転自在であると共に、Z軸7の方向に移動自在となっている。研削加工に用いる砥石3としては、レジンボンドダイヤモンド砥石♯3000が用いられる。この砥石3は工具軸20のスピンドル4の先端に取り付けられる。工具軸20はY軸8を中心にして回転自在であると共に、Y軸8の方向に移動自在となっている。また、ガラスレンズ1に当接して加工を行う砥石3の加工面3aは球面形状にツルーイング・ドレッシングされ、その曲率が測定されている。
【0011】
ガラスレンズ1の研削加工時においては、ワーク軸10および工具軸20のスピンドル2,4はそれぞれ図示しないモーターにより回転する。研削液吐出口5から水溶性研削液6が作用点に向けて吐出される。Z軸7に沿った移動を行う図示せぬモーターによって必要な切り込み量が与えられた後、加工面3aの曲率・ガラスレンズ1の所望の断面形状より求められたYZ座標に従ってZ軸とY軸とが図示せぬモーターによって同期して動作することにより研削が行われる。
【0012】
この実施の形態の研削では、ガラスレンズ1の中心部を加工するときと外周部を加工するときとでは砥石3の作用点が異なっており、中心部を加工するときには砥石3の径の最も大きい部分が作用点となり、外周部を加工する際には砥石3の球面に沿って作用点が径の小さくなる方向に移動するようになっている。
【0013】
次に、補正加工の手順について、図2〜図4を用いて説明する。
【0014】
中間工程の加工が終了したレンズ表面の形状を、その回転中心を通る断面の形状として測定する。次に、その断面形状データAを所望の断面形状データBと重ね合わせる。なお、比較を容易にするために、図2では、所望の断面形状データBをフラットな線で示している。このとき、回転中心位置でデータが重なり合うようにし、加工後の断面形状データAと所望の断面形状Bデータとの偏差を各径方向位置の値として求める。偏差は、図2の回転軸の右側(tR)・左側(tL)のそれぞれで算出し、その平均値を偏差tの代表値とする。
【0015】
図3は、移動軸座標の補正を示す。終了した中間工程の加工の最終パスに使用した移動軸座標C(Y=0が回転中心)に対して、求められた偏差tを加減して移動軸座標Dを作成し、次の加工時の設定切り込み量Lを考慮する。これにより、次の加工の最終パスに使用する移動軸座標Eを求めることができる。
【0016】
図4は、最終パスに至るまでの各パスでの移動軸座標の設定を示す。この実施の形態では、仕上げ研削加工に使用している砥石3の1パス当たりの加工能力は0.5μmなので、本加工における最大必要切り込み量(tmax+L)が2μmとすると、4パスの加工で最終形状の加工が終了するように設定することになる。これまでに終了した加工の最終パスに使用した移動軸座標Cと次の加工の最終パスに使用する移動軸座標Eとの間のZ軸座標間隔を、Y方向の各位置において4等分する。なお、図4では、簡易的にY軸方向の4箇所について4等分している。この4等分された各点を連結した線が各パス毎の移動軸座標となる、すなわち、移動軸座標C側から1つ目同士の点を連結した線が1パス目、2つ目同士を連結した線が2パス目の移動軸座標となるものである。
【0017】
以上のようにして、次加工時の最終パスおよび最終パスに至るまでの各パス毎の移動軸座標を設定した後においては、研削液6を吐出し、工具軸20のスピンドル4及びワーク軸10のスピンドル2を所定の回転数で回転させ、Y軸7およびZ軸8を設定された座標列に従って所定の速度で移動させながら加工を行う。そして、加工後に断面形状の測定を行い、所望の面精度が得られるまで上記の加工を繰り返す。
【0018】
この実施の形態の研削方法によれば、補正研削加工において、砥石3の作用面がガラスレンズ1の回転軸から最外周部にかけての区間でガラスレンズから離れることなく研削加工が行われる。このため、加工前の形状と所望の形状に大きな差がある場合であっても、ガラスレンズのほぼ決まった部分しか加工しないパスがないため、砥石3の偏磨耗を抑えることができる。これにより、砥石3の偏磨耗に起因した加工形状誤差が発生しないため、高精度な研削加工面を容易に得ることができる。
【0019】
(実施の形態2)
図5及び図6は、本発明の実施の形態2を示す。この実施の形態では、加工前の被加工物の形状の違いに対する補正後の座標列の作成方法について説明する。
【0020】
図5に示すように、加工完了時の所望の断面形状に対して、補正加工前の断面形状が凹形状になっている場合(F)と凸形状になっている場合(G)がある。これらの断面形状に対し、それぞれ所望の形状に向けて形状補正を行ったとき、Fの場合は最外周部近傍の必要切り込み量が最大となり、Gの場合は回転中心軸近傍の必要切り込み量が最大となる。
【0021】
所望の形状に対して補正前の断面形状が凸形状(G)となっている場合、回転軸上の必要切り込み量が最大となるため、実施の形態1で説明したように設定切り込み量Lを回転軸上の加工量として設定しても、加工面上にそれ以上の加工量を必要とする部分はないので、各パス毎の加工量は、L/パス数で設定しても問題はない。
【0022】
しかしながら、所望の断面形状に対して加工前の断面形状が凹形状(F)となっている場合、最外周部の必要切り込み量が最大であるために、設定切り込み量を回転軸上で設定してしまうと、外周部はそれよりも多くの加工を実際に行うことになる。これにより、外周部の各パス毎の加工量は中心部よりも大きくなってしまう。実施の形態1で述べたように、1パスあたりの切り込み量は加工に使用する砥石の能力によって決定され、この1パスあたりの加工量を前提として設定切り込み量が設定される。従って、設定切り込み量を回転軸上で設定しているときに、1パスあたりの加工量が回転軸上よりも最外周部のほうが大きくなってしまうと、砥石に過大な加工負荷を与えることになり、砥石の磨耗を増長させる。
【0023】
この点を改善するために、この実施の形態では、所望の断面形状と加工前の断面形状の差(必要切り込み量)が最大の部分で切り込み量Lを設定するようにし、この設定切り込み量Lを設定する際の前提となる1パスあたりの加工量を上回る加工量を必要とする部分が被加工物の全面で存在しないようにしている。
【0024】
図6は、以上に基づいたこの実施の形態の移動軸座標の設定を示す。同図においては、所望の断面形状に対して加工前の断面形状が凹形状の場合と凸形状の場合を分けて示しており、同図(a)は凹形状の場合、(b)は凸形状の場合である。図6のように設定切り込み量Lを与えることにより、1パスあたりの加工量が設定切り込み量Lを与えた部分を上回る部分を発生させることがない。このように所望の断面形状に対して最も変位の大きい部分で切り込み量を設定することにより、砥石へのダメージがより少なく、従って、被加工物を高精度に加工することが可能となる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、形状補正研削加工に伴う砥石の偏磨耗を最小限に抑えることができ、砥石の偏磨耗に起因した被加工物の加工形状誤差を抑制でき、高精度な加工面を研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研削加工に用いられる研削加工機の側面図である。
【図2】中間工程の加工が終了した断面形状データ及び所望の断面形状データを示す特性図である。
【図3】移動軸座標の補正を示す特性図である。
【図4】最終パスに至るまでの各パスでの移動軸座標の設定するための特性図である。
【図5】凸及び凹の断面形状データと所望の断面形状データを示す特性図である。
【図6】(a)及び(b)は図5の場合における設定切り込み量を設定するための特性図である。
【図7】従来の研削加工に用いる研削加工機の側面図である。
【図8】研削時の作用点の移動を示す側面図である。
【図9】所望の断面形状データと中間工程で得た断面形状データとを比較して示す特性図である。
【図10】従来の補正方法を示す特性図である。
Claims (1)
- 加工後の形状が回転軸対称となる被加工物の加工完了時における所望の面形状データと、中間工程終了時の面形状の測定データとを比較して偏差を求め、この偏差を反映して次加工時の加工機の移動軸座標を作成することにより形状修正を施しながら研削加工を行う研削方法において、
前記中間工程加工時の移動軸座標に前記偏差を加算して偏差加算移動軸座標を求め、この偏差加算移動軸座標に次加工時の切り込み量を加算して次加工時最終パス移動軸絶対座標を求めた後、前記中間工程の加工時の移動軸座標と前記次加工時最終パス移動軸絶対座標との差分を次加工時のパス数で等分し、等分した点を補間して連続データとし、この連続データの移動軸座標に基づいて研削加工を行うことを特徴とする研削方法。
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