JP2004150860A - ワイヤレス温度計測モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電波を送受信するアンテナ部1と、該アンテナ部に励振電極2が接続された表面弾性波素子3とを備えたワイヤレス温度計測モジュールであって、誘電体材料のパッケージ本体5を備え、前記アンテナ部は、前記パッケージ本体に形成された電極パターンで構成され、前記表面弾性波素子は、前記パッケージ本体に搭載されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面弾性波デバイスを用いたワイヤレス温度計測モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体、セラミックス等の製造プロセスでは、チャンバ内やトンネル電気炉内の加工されるワークの位置における温度を動的にかつ精密に測定する必要がある。従来、このような温度計測の手段として、熱電対やサーミスタ等がよく用いられている。このような計測方法はセンサからの信号を取り込むためのケーブル及びセンサに電力を供給するためのケーブルが必要なため、真空のチャンバ内やトンネル炉内のようなワークが移動する場所の測定は非常に困難である。
【0003】
電池を使用したワイヤレス或いは記憶による温度測定方法もあるが、回路が複雑で高価であり、回路及び電池が耐えられる温度限界があるため、測定できる温度範囲は制限される。また、回路を保温材で保護する方法もあるが、その場合は長時間の測定が困難である。このため、ワイヤレスによる遠隔計測可能なかつセンサ本体に電源を必要としない温度センサの開発が望まれている。
【0004】
近年、この研究の一環として、例えば下記特許文献1及び特許文献2に記載されているように、表面弾性波(以下、SAWとも略称する)デバイスを用いるワイヤレスセンサシステムが提案されている。なお、SAWデバイスとして水晶基板が用いられている。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4,620,191号明細書
【特許文献2】
特開平7−12654号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には、以下の課題が残されていた。すなわち、上記従来のワイヤレスセンサでは、センサとアンテナとが別々であるために、小型化が難しいと共に、半導体やセラミックス等のプロセスにおける雰囲気ガスによりSAWデバイスが劣化しやすく、信頼性が低かった。また、SAWデバイスの基板として相転移点が573℃の水晶を用いているため、これ以上の温度で計測することができなかった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、小型化が可能で、信頼性も向上でき、そして高温計測を行うことができるワイヤレス温度計測モジュールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のワイヤレス温度計測モジュールは、電波を送受信するアンテナ部と、該アンテナ部に励振電極が接続された表面弾性波素子とを備えたワイヤレス温度計測モジュールであって、誘電体材料のパッケージ本体を備え、前記アンテナ部は、前記パッケージ本体に形成された電極パターンで構成され、前記表面弾性波素子は、前記パッケージ本体に搭載されていることを特徴とする。
【0009】
このワイヤレス温度計測モジュールでは、誘電体材料のパッケージ本体を備え、アンテナ部が、パッケージ本体に形成された電極パターンで構成され、表面弾性波素子が、パッケージ本体に搭載されているので、パッケージ本体にアンテナ部と表面弾性波素子とが一体になっていると共に、アンテナ部が誘電体材料の誘電性を利用したいわゆるチップアンテナタイプとなるため、全体として大幅な小型化を図ることができる。
【0010】
また、本発明のワイヤレス温度計測モジュールは、前記表面弾性波素子が、前記パッケージ本体内に密封されていることを特徴とする。すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールでは、表面弾性波素子がパッケージ本体内に密封されているので、測定環境の雰囲気ガスによってSAWデバイスが劣化することがなく、高い信頼性を得ることができる。
【0011】
また、本発明のワイヤレス温度計測モジュールは、前記アンテナ部と前記励振電極とが、整合回路部を介して接続されていることを特徴とする。すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールでは、アンテナ部と励振電極とが、整合回路部を介して接続されているので、整合回路部によりインピーダンスマッチングを行うことができ、効率的に信号伝達を行うことができる。
【0012】
また、本発明のワイヤレス温度計測モジュールは、前記パッケージ本体がセラミックスで形成されていることが好ましい。すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールでは、パッケージ本体がセラミックスで形成されているので、測定環境の雰囲気ガスによる腐食作用に強く、劣化し難くなる。
【0013】
また、本発明のワイヤレス温度計測モジュールは、前記表面弾性波素子が、前記励振電極を表面に有する圧電基板がLa3Ga5SiO1(Langasite:ランガサイト)4単結晶で形成されていることが好ましい。すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールでは、表面弾性波素子における励振電極を表面に有する圧電基板がランガサイト単結晶で形成されているので、LiTaO3や水晶等とは異なり、融点(1480℃)まで相転移の発生はなく、安定な圧電性を保持するため、より高い温度計測が可能になる。
【0014】
また、本発明のワイヤレス温度計測モジュールは、前記励振電極が、対向して配された一対の櫛形電極を備え、各櫛形電極には、それぞれ別の前記アンテナ部が接続されていることを特徴とする。すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールでは、励振電極が、対向して配された一対の櫛形電極を備え、各櫛形電極には、それぞれ別のアンテナ部が接続されているので、いわゆる2つのアンテナで構成されたダイポール構造となり、金属以外の物体の遠隔温度測定に適している。
【0015】
また、本発明のワイヤレス温度計測モジュールは、前記パッケージ本体の裏面にグラウンド電極部が形成され、前記励振電極が、対向して配された一対の櫛形電極であり、一方の櫛形電極には、前記アンテナ部が接続され、他方の櫛形電極には、前記グラウンド電極部が接続されていることを特徴とする。すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールでは、一方の櫛形電極に、アンテナ部が接続され、他方の櫛形電極に、グラウンド電極部が接続されているので、アンテナ部が一方だけであり、さらに小型化ができると共に、グラウンド電極部が測定対象の金属物体に導通することにより、アンテナ送受信効率を向上させることができ、金属物体の遠隔温度測定に適している。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールの第1実施形態を、図1を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールは、図1に示すように、電波を送受信するアンテナ部1と、該アンテナ部1に励振電極2が接続された表面弾性波素子3と、アンテナ部1と励振電極2との間に解された整合回路部4と、これらを搭載した誘電体材料のパッケージ本体5とを備えている。
【0018】
上記アンテナ部1は、パッケージ本体5に形成された白金等の電極パターンで構成され、送受信を効率よく行うように誘電体焼成物のパッケージ本体5外周を螺旋状に配されている。
上記表面弾性波素子3は、パッケージ本体5の中央部に形成された溝部5a内に接着固定されて搭載され、該溝部5a上部を蓋部材6により塞いでセンターキャブセル5bを形成している。なお、この際、センターキャブセル5b内は真空或いは不活性ガスで充填され密封されている。
【0019】
上記パッケージ本体5は、アルミナ等のセラミックス(誘電体焼成物)で形成されている。また、表面弾性波素子3は、励振電極2を表面に有する圧電基板7がLa3Ga5SiO14(ランガサイト)単結晶で形成されている。
上記励振電極2は、対向して配された一対の櫛形電極であり、各櫛形電極には、それぞれ別のアンテナ部1が整合回路部4を介して接続されている。すなわち、このワイヤレス温度計測モジュールは、2つのアンテナ部で構成されたダイポール構造を有している。なお、パッケージ本体5の溝部5aには、整合回路部4の端子8が設けられ、該端子8と励振電極2とがボンディングワイヤ9にて電気的に接続される。
【0020】
上記圧電基板7の表面には、励振電極2の櫛形に平行にかつ離間した位置にそれぞれ所定距離を開けて棒状金属パターンの反射子10が複数本形成されている。
上記整合回路部4は、パッケージ本体5の焼成物の誘電性を利用し、導電体の形状を制御して必要なコンデンサ及びインダクタとして電極板及びコイルを構成して作製されている。
【0021】
上記パッケージ本体5は、いわゆるセラミックスのグリーンシートに励振電極2や整合回路部4となる金属パターンをスクリーン印刷したものを積層し、さらに焼結させて構成されている。なお、予めグリーンシートには、溝部5aとなる領域に孔が形成されており、積層状態で溝部5aを構成するようになっている。また、グリーンシート上下層の電気的接続は、金属パターンに接続形成されたスルーホールや積層したグリーンシート側面へスクリーン印刷した金属パターン等で行っている。
【0022】
次に、本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールを用いた温度計測方法について、説明する。
【0023】
まず、測定対象のワークに直接又はその近傍に本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールを取り付け、チャンバ内やトンネル炉内等の所定位置に設置する。また、遠隔計測するための基地局(図示略)を設置し、該基地局から表面弾性波素子3の周波数と一致したバースト信号を出力する。
ワイヤレス温度計測モジュールは、アンテナ部1によりバースト信号を受信すると共に、励振電極2の一方の櫛形電極により電気エネルギーをSAWに変換し、このSAWが圧電基板7の表面に伝搬して他方の櫛形電極を通り再び電磁波に変換して放射する。
【0024】
したがって、バースト信号が放射されてしばらく後に返信波が基地局に返ってくることになる。圧電基板7上のSAWは温度によって伝搬速度が変化するため、上記返信波が返ってくる時間を測定することにより、基地局の演算回路においてSAWの温度遅延から温度を算出する。
【0025】
なお、本実施形態では、反射子10を圧電基板7上に設けているので、一方の櫛形電極で発生したSAWは、各反射子10で反射して他方の櫛形電極でそれぞれ電磁波に変換されて放出される。したがって、各反射子10と櫛形電極との距離の相違により、反射信号にパルス序列が得られるので、ワイヤレス温度計測モジュール個別の返信波信号を得ることができる。これにより、複数のワイヤレス温度計測モジュールで別々の反射子10構成を採用することで、各ワイヤレス温度計測モジュールを個別認識することができる。
【0026】
本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールでは、誘電体材料のパッケージ本体5を備え、アンテナ部1が、パッケージ本体5に形成された電極パターンで構成され、表面弾性波素子3が、パッケージ本体5に搭載されているので、パッケージ本体5にアンテナ部1と表面弾性波素子3とが一体になっていると共に、アンテナ部1が誘電体材料の誘電性を利用したいわゆるチップアンテナタイプとなるため、全体として大幅な小型化を図ることができる。
【0027】
また、表面弾性波素子3がパッケージ本体5内に密封されているので、測定環境の雰囲気ガスによってSAWデバイス(表面弾性波素子3)が劣化することがなく、高い信頼性を得ることができる。
また、アンテナ部1と励振電極2とが、整合回路部4を介して接続されているので、整合回路部4によりインピーダンスマッチングを行うことができ、効率的に信号伝達を行うことができる。
【0028】
また、パッケージ本体5がセラミックスで形成されているので、測定環境の雰囲気ガスによる腐食作用に強く、劣化し難くなる。
また、表面弾性波素子3の圧電基板7がランガサイト単結晶で形成されているので、相転移は発生しなく、より高い温度計測が可能になる。
さらに、励振電極2の一対の櫛形電極には、それぞれ別のアンテナ部1が接続されているので、いわゆる対称的な2つのアンテナで構成されたダイポール構造となり、金属以外の物体の遠隔温度測定に適している。
【0029】
次に、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールの第2実施形態を、図2を参照しながら説明する。
【0030】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態ではアンテナ部1が一対の櫛形電極の両方にそれぞれ接続されているのに対し、第2実施形態では、図2に示すように、電極パターンのアンテナ部1は一つであると共にパッケージ本体15の裏面にグラウンド電極部Gが形成され、さらに一対の櫛形電極うち一方にアンテナ部1が接続され、他方の櫛形電極にはグラウンド電極部Gが接続されている点である。
【0031】
なお、他方の櫛形電極とグラウンド電極部Gとの電気的接続は、他方の櫛形電極にワイヤボンディング9で接続された端子8とグラウンド電極部Gとをスルーホール部8aを介して行っている。
また、本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールでは、測定対象として金属物体を想定しており、当該金属物体にグラウンド電極部Gを接触させた状態で設置される。
【0032】
すなわち、本実施形態のワイヤレス温度計測モジュールでは、一方の櫛形電極に、アンテナ部1が接続され、他方の櫛形電極に、グラウンド電極部Gが接続されているので、アンテナ部1が一方だけであり、さらに小型化ができると共に、グラウンド電極部Gが測定対象の金属物体に導通することにより、アンテナ送受信効率を向上させることができ、金属物体の遠隔温度測定に適している。
【0033】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
【実施例】
次に、本発明に係るワイヤレス温度計測モジュールを、実施例により図3及び図4を参照して具体的に説明する。
【0035】
上記第1実施形態のワイヤレス温度計測モジュールを電気炉により30〜1100℃の範囲で校正し、図3に示すように、SAWの伝搬速度と温度との関係を予め調べておいた。この関係に基づいて、実際に本発明のワイヤレス温度計測モジュールをトンネル電気炉内に配置してその温度分布を測定した結果を、図4に示す。なお、比較として従来の熱電対で測定した結果も併せて示す。
【0036】
この測定結果からわかるように、温度測定の精度は従来の熱電対と同程度であった。なお、従来の熱電対の測定点数は熱電対の数に限られることに対し、本発明のワイヤレス温度計測モジュールでの測定では、測定点に制限が特になく、詳細な温度分布測定が可能になる。
【0037】
【発明の効果】
本発明のワイヤレス温度計測モジュールによれば、誘電体材料のパッケージ本体を備え、アンテナ部が、パッケージ本体に形成された電極パターンで構成され、表面弾性波素子が、パッケージ本体に搭載されているので、パッケージ本体にアンテナ部と表面弾性波素子とが一体構造になっていると共に、アンテナ部がチップアンテナタイプとなるため、全体として大幅な小型化を図ることができ、測定対象の適用範囲が広くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールの一部を破断した側面図及び蓋部取り付け前の平面図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態におけるワイヤレス温度計測モジュールの一部を破断した側面図及び蓋部取り付け前の平面図である。
【図3】本発明に係る実施例におけるSAW伝搬時間の温度依存性を示すグラフである。
【図4】本発明に係る実施例におけるトンネル炉中の温度分布測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 アンテナ部
2 励振電極
3 表面弾性波素子
4 整合回路部
5、15 パッケージ本体
7 圧電基板
G グラウンド電極部
Claims (7)
- 電波を送受信するアンテナ部と、該アンテナ部に励振電極が接続された表面弾性波素子とを備えたワイヤレス温度計測モジュールであって、
誘電体材料のパッケージ本体を備え、
前記アンテナ部は、前記パッケージ本体に形成された電極パターンで構成され、
前記表面弾性波素子は、前記パッケージ本体に搭載されていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、前記表面弾性波素子は、前記パッケージ本体内に密封されていることを特徴とするワイヤレス温度モジュール。
- 請求項1又は2に記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記アンテナ部と前記励振電極とは、整合回路部を介して接続されていることを特徴とするワイヤレス温度モジュール。 - 請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記パッケージ本体は、セラミックスで形成されていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記表面弾性波素子は、前記励振電極を表面に有する圧電基板がLa3Ga5SiO14単結晶で形成されていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1から5のいずれかに記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記励振電極は、対向して配された一対の櫛形電極を備え、
各櫛形電極には、それぞれ別の前記アンテナ部が接続されていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。 - 請求項1から5のいずれかに記載のワイヤレス温度計測モジュールにおいて、
前記パッケージ本体は、裏面にグラウンド電極部が形成され、
前記励振電極は、対向して配された一対の櫛形電極であり、一方の櫛形電極には、前記アンテナ部が接続され、他方の櫛形電極には、前記グラウンド電極部が接続されていることを特徴とするワイヤレス温度計測モジュール。
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