JP2004149566A - 燃料用ホース - Google Patents
燃料用ホース Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004149566A JP2004149566A JP2002313158A JP2002313158A JP2004149566A JP 2004149566 A JP2004149566 A JP 2004149566A JP 2002313158 A JP2002313158 A JP 2002313158A JP 2002313158 A JP2002313158 A JP 2002313158A JP 2004149566 A JP2004149566 A JP 2004149566A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- manufactured
- rubber
- innermost layer
- parts
- hose
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Rigid Pipes And Flexible Pipes (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Abstract
【課題】耐ガソリン透過性、耐サワー性、耐アミン性、低温性等に優れ、しかも優れた導電性を有する燃料用ホースを提供する。
【解決手段】下記の(A)を用いて形成された最内層1と、その外周に形成されたフッ素樹脂層2との積層構造を有する燃料用ホースとする。
(A)アクリルゴムとアクリロニトリル−ブタジエンゴムとのブレンドゴムであって、アクリロニトリル含有量が15〜30重量%の範囲に設定されているブレンドゴム。
【選択図】図1
【解決手段】下記の(A)を用いて形成された最内層1と、その外周に形成されたフッ素樹脂層2との積層構造を有する燃料用ホースとする。
(A)アクリルゴムとアクリロニトリル−ブタジエンゴムとのブレンドゴムであって、アクリロニトリル含有量が15〜30重量%の範囲に設定されているブレンドゴム。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の燃料〔ガソリン、アルコール混合ガソリン(ガソホール)、アルコール、水素、軽油、ジメチルエーテル、LPG、CNG等〕の輸送等に用いられる燃料用ホースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
世界的な環境意識の高まりから、自動車用燃料系ホース等からの炭化水素蒸散量の規制が強化されてきており、なかでも米国ではかなり厳しい蒸散規制が法制化されている。このような状況の中で、炭化水素蒸散量の規制に対応するため、ゴム層,樹脂層,補強糸層等が積層された多層構造をとる燃料用ホースが各種提案されており、また、それらホースの最内層には、耐燃料油性に優れることから、通常、ポリアミド樹脂,アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),ニトリル・塩化ビニルゴム(NBR・PVC),フッ素樹脂等の材料が用いられる。
【0003】
しかしながら、ポリアミド樹脂は、燃料用途で重要特性である耐サワー性(ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性)に劣るという問題がある。また、NBRも同様に耐サワー性に劣る。さらに、NBR・PVCは、環境負荷物質であるPVCを含んでおり、しかも、低温性に劣り、上記蒸散規制にも対応しきれないという問題がある。
【0004】
そこで、耐ガソリン透過性の向上を図るため、フッ素樹脂層を組合わせた多層構造の燃料ホースが提案されている。そして、例えば、フッ素樹脂をホース最内層の材料に用いた場合、その剛性によりシール性やホース組み付け性に不都合が生じ、燃料の漏出等が懸念されるものの、例えば、フッ素樹脂層の内周面に対し、NBRやフッ素ゴム(FKM)からなる最内層を形成しホースを作製すると、上記フッ素樹脂層による優れた耐ガソリン透過性〔ガソリン燃料およびガソホールに対するバリア性〕と、NBRやFKMによるシール性等とを兼ね備えたものとすることができる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−169085号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1にて提案のホースであっても、その最内層がNBRからなる場合では、先述のようにサワーガソリンに対する物性低下が著しく、また、上記最内層がFKMからなる場合では、FKMとフッ素樹脂層との接着性が悪いことから接着剤による層間接着が必須であり、ホース成形が複雑化するとともに製造コストの増大が懸念され、しかも、低温性〔極寒地(−30℃程度)での使用時におけるホースのシール性〕にも劣っているため、これらの点で改善が求められていた。
【0007】
さらに、燃料用ホースには、燃料ポンプで発生した静電気をホース外部へ放電して逃がし、静電気による燃料(ガソリン等)への引火等の事故を防止することを目的として、導電性を付与することが極めて重要であるが、例えば上記のようにFKMにより最内層を形成する場合、FKM自体が本質的に電気抵抗が大きいことから、カーボンブラック等の導電剤の配合によっても充分な導電性を付与することが困難であり、また、充分な導電性付与のために導電剤の配合量を増加させると、最内層の機械的強度が低下し、シール性も悪化するおそれがあるため、このような導電剤の配合によらずとも優れた導電性を有し、かつシール性にも優れた最内層とすることが求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐ガソリン透過性、耐サワー性、耐アミン性、低温性等に優れ、しかも優れた導電性を有する燃料用ホースの提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の燃料用ホースは、下記の(A)を用いて形成された最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造を有するという構成をとる。
(A)アクリルゴムとアクリロニトリル−ブタジエンゴムとのブレンドゴムであって、アクリロニトリル含有量が15〜30重量%の範囲に設定されているブレンドゴム。
【0010】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決すべく、燃料用ホースの最内層を中心に鋭意研究を重ねた。その過程で、NBRやFKMよりも低温性に優れ、さらに耐サワー性にも優れ、しかも導電性が良好であるといった性質を有する材料として、アクリルゴムに着目した。しかしながら、通常のアクリルゴムは、NBRやFKMよりも耐燃料油性に劣るため、燃料用ホースの最内層材料としては使用できないというのが技術常識であった。そこで、本発明者らは、低温性等のアクリルゴム由来の優れた特性を損なうことなく耐燃料油性を向上させるべく更に鋭意研究を重ねた結果、最内層材料を、アクリルゴムとNBRとのブレンドゴムとし、そのアクリロニトリル含有量を、NBR由来の結合アクリロニトリルにより所定割合となるよう設定したところ、低温性や導電性等が良好なまま耐燃料油性が向上することが確認され、しかも、耐ガソリン透過性に優れるフッ素樹脂層との接着性も良好となり、場合によっては接着剤レスであっても充分な層間接着力を得ることも可能であることを突き止めた。これらのことから、上記特定のブレンドゴムを用いて形成された最内層と、その外周に積層形成されたフッ素樹脂層とを備えた燃料用ホースとすることにより、所期の目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明の燃料用ホースは、多層構造のホースであり、特殊なブレンドゴムを用いて形成された最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造を有することを最大の特徴とする。
【0013】
本発明の燃料用ホースの一例を、図1に示す。この燃料用ホースは、特殊なブレンドゴムを用いて形成された最内層1の外周に、フッ素樹脂層2,外皮ゴム層3が順次積層形成されて、三層構造をとっている。
【0014】
上記最内層1の形成材料である特殊なブレンドゴムは、先にも述べたように、アクリルゴム(ACM)とアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とのブレンドゴムであって、アクリロニトリル含有量が15〜30重量%の範囲に設定されたものである。すなわち、このブレンドゴムにおいて用いられるACMには、通常の、アクリロニトリル不含のACMが用いられるため、上記アクリロニトリル含有量は全て、NBR由来の結合アクリロニトリルによるものである。そして、このブレンドにより、ACMにアクリロニトリルが導入される。
【0015】
上記特殊なブレンドゴムに用いられるACMとしては、アクリロニトリル不含のものであって、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステルを主成分とするものであれば特に限定するものではなく、各種のアクリルゴムを使用することができる。なお、上記主成分とするとは、好適には、例えば、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステルが、全体の90%以上であることを意味する。上記アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が1〜20のアクリル酸アルキルエステルがあげられる。
【0016】
上記アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシエトキシエチル等のアルコキシ基あるいはアルキレン基の炭素数が1〜4のアクリル酸アルコキシアルキルエステルがあげられる。
【0017】
また、上記ACMには、上述のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステルの各成分以外に、エチレン、プロピレン等のモノマーを共重合したものを用いることもできる。
【0018】
さらに、架橋活性基として、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のようなエポキシ基含有モノマー、2−クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル、サイクロールクロロアセテート等のような塩素含有モノマー、エチリデンノルボルネン等のような不飽和基含有モノマー、アクリル酸等のようなカルボキシ基含有モノマー等の各成分(モノマー)を共重合させたものを用いることもできる。
【0019】
上記特殊なブレンドゴムに用いられるNBRとしては、特に限定されるものではなく、燃料用ホースの分野で一般的に使用されているものを用いることができるが、特に、結合アクリロニトリル量が通常グレードのもの(27〜35重量%程度のもの)が好適に用いられる。
【0020】
上記特殊なブレンドゴムのアクリロニトリル含有量は、前述のように15〜30重量%の範囲に設定されている必要がある。すなわち、上記アクリロニトリル含有量が15重量%未満であると、耐燃料油性が悪くなるからであり、逆に、上記アクリロニトリル含有量が30重量%を超えると、低温性が悪くなるからである。
【0021】
上記特殊なブレンドゴムにおいて、ACMとNBRとの混合割合は、重量比で、ACM:NBR=3:7〜7:3の範囲になるよう設定するのが好ましい。すなわち、ACMの混合割合が上記範囲未満である(NBRの混合割合が上記範囲を超える)と、低温性および耐サワー性に劣る傾向がみられるからである。逆に、ACMの混合割合が上記範囲を超える(NBRの混合割合が上記範囲未満である)と、耐燃料油性および樹脂接着性に劣る傾向がみられるからである。
【0022】
上記特殊なブレンドゴムは、導電性が良好であるため、場合によってはカーボンブラック等の導電剤を不含とすることも可能だが、通常、所望する電気抵抗を得るためにも、導電剤が適宜配合される。このように導電剤を配合する場合であっても、その配合量は、通常よりも減少させることが可能であることから、導電剤により最内層1の機械的強度等が低下されることなく、優れたシール性が得られ、かつ所望する電気抵抗を有するホースを得ることができる。
【0023】
上記最内層1の体積抵抗率は、108 Ω・cm以下の範囲が好ましく、特に好ましくは105 Ω・cm以下の範囲である。そして、上記導電剤の配合割合は、最内層1の体積抵抗率が上記の範囲になるよう配合され、通常、ポリマーゴム(ACMおよびNBRの総和)100重量部(以下「部」と略す)に対し、10〜80部の範囲であり、好ましくは20〜70部の範囲である。
【0024】
また、上記特殊なブレンドゴムには、充分な低温性を確保するため、エーテル−エステル系、エーテル系、エステル系等の可塑剤が適宜添加されるが、この可塑剤の配合量も、上記カーボンブラック配合量の減少に起因し、通常よりも減少させることが可能となる。なお、上記可塑剤の配合割合は、上記ポリマーゴム100部に対し、通常、0〜30部の範囲であり、好ましくは5〜20部の範囲である。
【0025】
上記特殊なブレンドゴムには、上述のような導電剤や可塑剤以外にも、必要に応じ、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等を適宜配合することができる。ここで、上記特殊なブレンドゴムに対し、1.8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩(以下「DBU塩」という)を配合すると、フッ素樹脂層との接着性がより良好となり、接着剤レスであっても層間接着性に優れるようになるため、好ましい。なかでも、カルボン酸のDBU塩あるいはフェノール樹脂のDBU塩が、フッ素樹脂層との接着性の点で、より好適に用いられる。さらにシリカを配合することにより、未加硫時のフッ素樹脂との密着力が増し、より安定した接着性が得られるため、適宜加えても良い。
【0026】
上記DBU塩等の最内層1への配合割合は、前記ポリマーゴム100部に対し、好ましくは0.5〜10部の範囲であり、より好ましくは0.5〜7部の範囲である。すなわち、上記範囲内に設定することにより、上記最内層1の機械的強度等が劣ることなく、フッ素樹脂層との充分な層間接着力が得られるからである。すなわち、上記配合割合が0.5部未満であると、フッ素樹脂層との充分な接着性が得られないからである。逆に、上記配合割合が10部を超えると、上記最内層1の機械的強度が劣る傾向がみられるからである。
【0027】
上記最内層1の外周に形成されるフッ素樹脂層2の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンと6−フッ化プロピレンとの三元共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体にフッ化ビニリデンをグラフトした重合体、ポリフッ化ビニリデン、エチレンと4−フッ化エチレンとの共重合体等があげられ、なかでも、柔軟性が良好という点で、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンと6−フッ化プロピレンとの三元共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体にフッ化ビニリデンをグラフトした重合体等が特に好ましい。これらは、単独であるいは2種類以上併用することができる。
【0028】
上記フッ素樹脂層2の外周に形成される外皮ゴム層3は、ホースに耐摩耗性等の特性を付与するために適宜形成されるものであり、その形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヒドリンゴム,クロロスルホン化ポリエチレンゴム,ニトリル・塩化ビニルゴムが使用される。
【0029】
そして、前記図1に示した本発明の燃料用ホースは、例えば、つぎのようにして製造することができる。
【0030】
すなわち、まず、前記最内層1用材料、フッ素樹脂層2用材料および外皮ゴム層3用材料を準備し、これらを各々混練機を用いて混練し、押出成形機を用いて、これら三層を同時に押出成形することにより、目的とする三層構造の燃料用ホースを得ることができる(図1参照)。このように各層を同時に押出成形することにより、各層の界面が接着剤レスで強固に接着し、積層一体化がなされるようになる。
【0031】
また、真空サイジング法等でストレート形状や、コルゲーターを用いて蛇腹構造のホースができる。
【0032】
なお、図1に示した燃料用ホースの製法は、上記のように各層を同時に押出成形して積層する製法に限定されるものではなく、例えば、まず、上記最内層1用材料を混練機を用いて混練し、押出成形機を用いて上記最内層1用材料からなる単層構造のホースを作製し、このホースの外周面に、フッ素樹脂層2、外皮ゴム層3を順次、押出成形機を用いて押出成形することにより、目的とする三層構造の燃料用ホースを作製してもよい。なお、上記燃料用ホースにおける各層の界面は、通常、接着剤レスで接着するが、場合によって接着剤を補助的に用いてもよい。
【0033】
このようにして得られる燃料用ホースにおいて、ホース内径は4〜50mmの範囲が好ましく、特に好ましくは4〜45mmの範囲であり、ホース外径は6.1〜63mmの範囲が好ましく、特に好ましくは6.2〜53.6mmの範囲である。また、最内層1の厚みは0.5〜3mmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmの範囲であり、フッ素樹脂層2の厚みは0.05〜0.5mmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.1〜0.3mmの範囲であり、外皮ゴム層3の厚みは0.5〜3mmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmの範囲である。
【0034】
なお、図1では、上記のように三層構造ではあるが、本発明においては、特定材料からなる最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造が最大の特徴であるため、それ以外の層は任意であり、図1のように最外層の材料をゴム材に限定するものではない。また、例えば、図1におけるフッ素樹脂層2と外皮ゴム層3の層間に対し、中間ゴム層、ポリエステル系樹脂層、補強糸層、補強ワイヤー層等の層を一層以上介在させ、四層以上の多層構造の燃料用ホースとしてもよい。
【0035】
また、本発明の燃料用ホースは、自動車の燃料用ホースとして好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、例えば、トラクターや耕運機等の燃料用ホース等にも用いることができる。
【0036】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0037】
【実施例1】
〔最内層材料の調製〕
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)40部と、NBR(結合アクリロニトリル量:31重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN202)60部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は18.6重量%であった。
【0038】
〔中間層材料〕
フッ素樹脂(ダイニオン社製、THV−500G)。
【0039】
〔最外層材料〕
ヒドリンゴム(ダイソー社製、エピクロマーCG)100部と、加硫促進助剤剤(協和化学工業社製、協和マグ#150)1.5部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)50部と、可塑剤(大八化学工業社製、DOP)10部と、老化防止剤(大内新興化学工業社製、ノクラックNBC)1部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加硫剤(三新化学工業社製のサンセラー22−Cを0.6部と、ゼオン化成社製のレビタルマスターP−CHR−1100を1部)とを、混練機を用いて混練し、最外層材料を調製した。
【0040】
〔ホースの作製〕
上記のようにして予め調製された各層の材料を準備し、ついで、これらの材料を、各々、混練機を用いて混練した後、押出成形機を用いて各層を同時に押出成形することにより、厚み1mmの最内層と、厚み0.2mmの中間層と、厚み2mmの最外層とを有する三層構造の燃料用ホース(内径22mm、外径28.4mm)を作製した。
【0041】
【実施例2】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)30部と、NBR(結合アクリロニトリル量:42.5重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN101)70部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は29.8重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0042】
【実施例3】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)70部と、NBR(結合アクリロニトリル量:50重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN009)30部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は15重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0043】
【比較例1】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0044】
【比較例2】
NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN−202)100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)30部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(大八化学工業社製、DOP)15部と、老化防止剤(大内新興化学工業社製、ノクラックNBC)1部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加硫促進剤(三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種)5部と、加硫剤(日本油脂社製、パークミルD−40)5部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は31.0重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0045】
【比較例3】
NBR・PVC(JSR社製、NV−72)100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)30部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(大八化学工業社製、DOP)15部と、老化防止剤(大内新興化学工業社製、ノクラックNBC)1部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加硫促進剤(三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種)5部と、加硫剤(日本油脂社製、パークミルD−40)5部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は24.5重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0046】
【比較例4】
FKM(住友スリーエム社製、フローレルFE5731Q)100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストS)15部と、酸化マグネシウム(協和化学工業社製、協和マグ#150)3部と、水酸化カルシウム(近江化学社製、Cal−Z)6部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0047】
【比較例5】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)25部と、NBR(結合アクリロニトリル量:42.5重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN101)75部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は31.9重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0048】
【比較例6】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)75部と、NBR(結合アクリロニトリル量:50重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN009)25部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は12.5重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0049】
このようにして得られた実施例品および比較例品の燃料用ホース(または、各ホースの最内層材料を160℃×45分間プレス加硫した厚み2mmの加硫シート)を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1および表2に併せて示した。
【0050】
〔最内層抵抗〕
JIS K 6271に準じて、加硫シートを用いて各最内層材料の体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0051】
〔引張強さ(TB)、伸び(EB)〕
各最内層材料の加硫シートについて、JIS 5号ダンベルを打ち抜き、JIS K 6251に準じ、引張強さ(TB)および伸び(EB)を評価した。
【0052】
〔層間接着性〕
各ホースを長手方向に半割して、長さ100mmに切り出した。そして、このホースの最内層と中間層との層間接着性を、引張試験機(JIS B 7721)を用いて、毎分50mmの速度で引っ張り、層間の剥離状態を目視にて観察した。そして、最内層のゴムが中間層にとられ剥離したものを○、界面で剥離したものを×として、層間接着性の評価を行った。
【0053】
〔耐サワー性〕
各ホースの最内層から切り出した試験片を、2.5重量%のラウロイルパーオキサイド(LPO)を含むFuel Cに、40℃×72時間の条件で2サイクル浸漬した。その結果、試験片に硬化や軟化等の異常がみられなかったものを○、異常がみられたものを×として、耐サワー性の評価を行った。
【0054】
〔耐燃料油性〕
各ホースの最内層から切り出した試験片を、Fuel Cに40℃×48時間浸漬し、その体積変化率(%)を測定した。その結果、上記体積変化率が30%未満であったものを○、30%以上であったものを×として耐燃料油性の評価を行った。
【0055】
〔耐アミン性〕
Fuel Cに0.005mol/Lのドデカメチレンジアミンを混合してなる模擬変性ガソリンを調製した。そして、各ホースの最内層から切り出した試験片を、上記模擬変性ガソリンに80℃×72時間浸漬した。その結果、試験片に硬化や軟化等の異常がみられなかったものを○、異常がみられたものを×として耐アミン性の評価を行った。
【0056】
〔低温性〕
各最内層材料の加硫シートについて、JIS K6261に規定する低温衝撃脆化試験によって、低温脆化温度(℃)を測定した。そして、低温脆化温度が−25℃未満を示したものを○、−25℃以上を示したものを×として、低温性の評価を行った。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
上記結果から、実施例品はいずれも、導電性に優れ、層間も強固に接着されており、さらに、耐サワー性をはじめ、耐燃料油性、耐アミン性および低温性にも優れていることがわかる。これに対して、比較例1品は、その最内層のポリマーゴムがACMのみであるため、耐燃料油性に劣ることがわかる。また、比較例2品は、その最内層ポリマーゴムがNBRのみであるため、耐サワー性および導電性に劣ることがわかる。さらに、比較例3品は、その最内層のポリマーゴムにNBR・PVCを用いているため、実施例品と比べ、耐サワー性、低温性および導電性に劣ることがわかる。また、比較例4品は、その最内層のポリマーゴムにFKMを用いているため、耐アミン性、低温性、導電性および層間接着性に劣ることがわかる。そして、最内層材料におけるアクリロニトリル含有量が本発明の規定範囲を超える比較例5品は、やや導電性に劣り、かつ耐サワー性や低温性、導電性にも劣ることがわかり、上記規定範囲未満である比較例6品は、耐燃料油性に劣ることがわかる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明の燃料用ホースは、NBR由来のアクリロニトリルを所定の割合で含有するブレンドゴム(アクリルゴムとNBRとのブレンド)により形成された最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造を備えている。したがって、最内層であるゴム層と、フッ素樹脂層との接着性が良好で、さらに、耐ガソリン透過性、耐サワー性、耐アミン性、低温性および導電性にも優れているため、特に、自動車用燃料配管用ホースとして優れた機能を発揮することができる。しかも、その優れた導電性により、最内層材料へのカーボンブラック等の配合を不要化あるいは減少化させることが可能となることから、シール性も良好であり、燃料の漏出等を効果的に防ぐことができる。さらに、上記最内層への可塑剤の配合も不要化あるいは減少化させることができるため、ブリード性が向上し、最内層材料のブレンドの自由度も高くなる。
【0061】
特に、上記最内層材料であるブレンドゴムのアクリルゴムとNBRとのブレンド比率を特定の割合に設定すると、低温性、耐サワー性、耐燃料油性等の特性が、より効果的に得られるようになる。
【0062】
また、上記ブレンドゴム中に、1.8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩を含有すると、フッ素樹脂層との接着性がより良好となり、接着剤レスであっても層間接着性に優れるようになる。さらに、シリカを含有すると、未加硫時のフッ素樹脂層との密着力が増し、より安定した接着性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料用ホースの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 最内層
2 フッ素樹脂層
3 外皮ゴム層
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の燃料〔ガソリン、アルコール混合ガソリン(ガソホール)、アルコール、水素、軽油、ジメチルエーテル、LPG、CNG等〕の輸送等に用いられる燃料用ホースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
世界的な環境意識の高まりから、自動車用燃料系ホース等からの炭化水素蒸散量の規制が強化されてきており、なかでも米国ではかなり厳しい蒸散規制が法制化されている。このような状況の中で、炭化水素蒸散量の規制に対応するため、ゴム層,樹脂層,補強糸層等が積層された多層構造をとる燃料用ホースが各種提案されており、また、それらホースの最内層には、耐燃料油性に優れることから、通常、ポリアミド樹脂,アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),ニトリル・塩化ビニルゴム(NBR・PVC),フッ素樹脂等の材料が用いられる。
【0003】
しかしながら、ポリアミド樹脂は、燃料用途で重要特性である耐サワー性(ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性)に劣るという問題がある。また、NBRも同様に耐サワー性に劣る。さらに、NBR・PVCは、環境負荷物質であるPVCを含んでおり、しかも、低温性に劣り、上記蒸散規制にも対応しきれないという問題がある。
【0004】
そこで、耐ガソリン透過性の向上を図るため、フッ素樹脂層を組合わせた多層構造の燃料ホースが提案されている。そして、例えば、フッ素樹脂をホース最内層の材料に用いた場合、その剛性によりシール性やホース組み付け性に不都合が生じ、燃料の漏出等が懸念されるものの、例えば、フッ素樹脂層の内周面に対し、NBRやフッ素ゴム(FKM)からなる最内層を形成しホースを作製すると、上記フッ素樹脂層による優れた耐ガソリン透過性〔ガソリン燃料およびガソホールに対するバリア性〕と、NBRやFKMによるシール性等とを兼ね備えたものとすることができる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−169085号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1にて提案のホースであっても、その最内層がNBRからなる場合では、先述のようにサワーガソリンに対する物性低下が著しく、また、上記最内層がFKMからなる場合では、FKMとフッ素樹脂層との接着性が悪いことから接着剤による層間接着が必須であり、ホース成形が複雑化するとともに製造コストの増大が懸念され、しかも、低温性〔極寒地(−30℃程度)での使用時におけるホースのシール性〕にも劣っているため、これらの点で改善が求められていた。
【0007】
さらに、燃料用ホースには、燃料ポンプで発生した静電気をホース外部へ放電して逃がし、静電気による燃料(ガソリン等)への引火等の事故を防止することを目的として、導電性を付与することが極めて重要であるが、例えば上記のようにFKMにより最内層を形成する場合、FKM自体が本質的に電気抵抗が大きいことから、カーボンブラック等の導電剤の配合によっても充分な導電性を付与することが困難であり、また、充分な導電性付与のために導電剤の配合量を増加させると、最内層の機械的強度が低下し、シール性も悪化するおそれがあるため、このような導電剤の配合によらずとも優れた導電性を有し、かつシール性にも優れた最内層とすることが求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐ガソリン透過性、耐サワー性、耐アミン性、低温性等に優れ、しかも優れた導電性を有する燃料用ホースの提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の燃料用ホースは、下記の(A)を用いて形成された最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造を有するという構成をとる。
(A)アクリルゴムとアクリロニトリル−ブタジエンゴムとのブレンドゴムであって、アクリロニトリル含有量が15〜30重量%の範囲に設定されているブレンドゴム。
【0010】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決すべく、燃料用ホースの最内層を中心に鋭意研究を重ねた。その過程で、NBRやFKMよりも低温性に優れ、さらに耐サワー性にも優れ、しかも導電性が良好であるといった性質を有する材料として、アクリルゴムに着目した。しかしながら、通常のアクリルゴムは、NBRやFKMよりも耐燃料油性に劣るため、燃料用ホースの最内層材料としては使用できないというのが技術常識であった。そこで、本発明者らは、低温性等のアクリルゴム由来の優れた特性を損なうことなく耐燃料油性を向上させるべく更に鋭意研究を重ねた結果、最内層材料を、アクリルゴムとNBRとのブレンドゴムとし、そのアクリロニトリル含有量を、NBR由来の結合アクリロニトリルにより所定割合となるよう設定したところ、低温性や導電性等が良好なまま耐燃料油性が向上することが確認され、しかも、耐ガソリン透過性に優れるフッ素樹脂層との接着性も良好となり、場合によっては接着剤レスであっても充分な層間接着力を得ることも可能であることを突き止めた。これらのことから、上記特定のブレンドゴムを用いて形成された最内層と、その外周に積層形成されたフッ素樹脂層とを備えた燃料用ホースとすることにより、所期の目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明の燃料用ホースは、多層構造のホースであり、特殊なブレンドゴムを用いて形成された最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造を有することを最大の特徴とする。
【0013】
本発明の燃料用ホースの一例を、図1に示す。この燃料用ホースは、特殊なブレンドゴムを用いて形成された最内層1の外周に、フッ素樹脂層2,外皮ゴム層3が順次積層形成されて、三層構造をとっている。
【0014】
上記最内層1の形成材料である特殊なブレンドゴムは、先にも述べたように、アクリルゴム(ACM)とアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とのブレンドゴムであって、アクリロニトリル含有量が15〜30重量%の範囲に設定されたものである。すなわち、このブレンドゴムにおいて用いられるACMには、通常の、アクリロニトリル不含のACMが用いられるため、上記アクリロニトリル含有量は全て、NBR由来の結合アクリロニトリルによるものである。そして、このブレンドにより、ACMにアクリロニトリルが導入される。
【0015】
上記特殊なブレンドゴムに用いられるACMとしては、アクリロニトリル不含のものであって、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステルを主成分とするものであれば特に限定するものではなく、各種のアクリルゴムを使用することができる。なお、上記主成分とするとは、好適には、例えば、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステルが、全体の90%以上であることを意味する。上記アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が1〜20のアクリル酸アルキルエステルがあげられる。
【0016】
上記アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシエトキシエチル等のアルコキシ基あるいはアルキレン基の炭素数が1〜4のアクリル酸アルコキシアルキルエステルがあげられる。
【0017】
また、上記ACMには、上述のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステルの各成分以外に、エチレン、プロピレン等のモノマーを共重合したものを用いることもできる。
【0018】
さらに、架橋活性基として、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のようなエポキシ基含有モノマー、2−クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル、サイクロールクロロアセテート等のような塩素含有モノマー、エチリデンノルボルネン等のような不飽和基含有モノマー、アクリル酸等のようなカルボキシ基含有モノマー等の各成分(モノマー)を共重合させたものを用いることもできる。
【0019】
上記特殊なブレンドゴムに用いられるNBRとしては、特に限定されるものではなく、燃料用ホースの分野で一般的に使用されているものを用いることができるが、特に、結合アクリロニトリル量が通常グレードのもの(27〜35重量%程度のもの)が好適に用いられる。
【0020】
上記特殊なブレンドゴムのアクリロニトリル含有量は、前述のように15〜30重量%の範囲に設定されている必要がある。すなわち、上記アクリロニトリル含有量が15重量%未満であると、耐燃料油性が悪くなるからであり、逆に、上記アクリロニトリル含有量が30重量%を超えると、低温性が悪くなるからである。
【0021】
上記特殊なブレンドゴムにおいて、ACMとNBRとの混合割合は、重量比で、ACM:NBR=3:7〜7:3の範囲になるよう設定するのが好ましい。すなわち、ACMの混合割合が上記範囲未満である(NBRの混合割合が上記範囲を超える)と、低温性および耐サワー性に劣る傾向がみられるからである。逆に、ACMの混合割合が上記範囲を超える(NBRの混合割合が上記範囲未満である)と、耐燃料油性および樹脂接着性に劣る傾向がみられるからである。
【0022】
上記特殊なブレンドゴムは、導電性が良好であるため、場合によってはカーボンブラック等の導電剤を不含とすることも可能だが、通常、所望する電気抵抗を得るためにも、導電剤が適宜配合される。このように導電剤を配合する場合であっても、その配合量は、通常よりも減少させることが可能であることから、導電剤により最内層1の機械的強度等が低下されることなく、優れたシール性が得られ、かつ所望する電気抵抗を有するホースを得ることができる。
【0023】
上記最内層1の体積抵抗率は、108 Ω・cm以下の範囲が好ましく、特に好ましくは105 Ω・cm以下の範囲である。そして、上記導電剤の配合割合は、最内層1の体積抵抗率が上記の範囲になるよう配合され、通常、ポリマーゴム(ACMおよびNBRの総和)100重量部(以下「部」と略す)に対し、10〜80部の範囲であり、好ましくは20〜70部の範囲である。
【0024】
また、上記特殊なブレンドゴムには、充分な低温性を確保するため、エーテル−エステル系、エーテル系、エステル系等の可塑剤が適宜添加されるが、この可塑剤の配合量も、上記カーボンブラック配合量の減少に起因し、通常よりも減少させることが可能となる。なお、上記可塑剤の配合割合は、上記ポリマーゴム100部に対し、通常、0〜30部の範囲であり、好ましくは5〜20部の範囲である。
【0025】
上記特殊なブレンドゴムには、上述のような導電剤や可塑剤以外にも、必要に応じ、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等を適宜配合することができる。ここで、上記特殊なブレンドゴムに対し、1.8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩(以下「DBU塩」という)を配合すると、フッ素樹脂層との接着性がより良好となり、接着剤レスであっても層間接着性に優れるようになるため、好ましい。なかでも、カルボン酸のDBU塩あるいはフェノール樹脂のDBU塩が、フッ素樹脂層との接着性の点で、より好適に用いられる。さらにシリカを配合することにより、未加硫時のフッ素樹脂との密着力が増し、より安定した接着性が得られるため、適宜加えても良い。
【0026】
上記DBU塩等の最内層1への配合割合は、前記ポリマーゴム100部に対し、好ましくは0.5〜10部の範囲であり、より好ましくは0.5〜7部の範囲である。すなわち、上記範囲内に設定することにより、上記最内層1の機械的強度等が劣ることなく、フッ素樹脂層との充分な層間接着力が得られるからである。すなわち、上記配合割合が0.5部未満であると、フッ素樹脂層との充分な接着性が得られないからである。逆に、上記配合割合が10部を超えると、上記最内層1の機械的強度が劣る傾向がみられるからである。
【0027】
上記最内層1の外周に形成されるフッ素樹脂層2の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンと6−フッ化プロピレンとの三元共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体にフッ化ビニリデンをグラフトした重合体、ポリフッ化ビニリデン、エチレンと4−フッ化エチレンとの共重合体等があげられ、なかでも、柔軟性が良好という点で、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンと6−フッ化プロピレンとの三元共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体にフッ化ビニリデンをグラフトした重合体等が特に好ましい。これらは、単独であるいは2種類以上併用することができる。
【0028】
上記フッ素樹脂層2の外周に形成される外皮ゴム層3は、ホースに耐摩耗性等の特性を付与するために適宜形成されるものであり、その形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヒドリンゴム,クロロスルホン化ポリエチレンゴム,ニトリル・塩化ビニルゴムが使用される。
【0029】
そして、前記図1に示した本発明の燃料用ホースは、例えば、つぎのようにして製造することができる。
【0030】
すなわち、まず、前記最内層1用材料、フッ素樹脂層2用材料および外皮ゴム層3用材料を準備し、これらを各々混練機を用いて混練し、押出成形機を用いて、これら三層を同時に押出成形することにより、目的とする三層構造の燃料用ホースを得ることができる(図1参照)。このように各層を同時に押出成形することにより、各層の界面が接着剤レスで強固に接着し、積層一体化がなされるようになる。
【0031】
また、真空サイジング法等でストレート形状や、コルゲーターを用いて蛇腹構造のホースができる。
【0032】
なお、図1に示した燃料用ホースの製法は、上記のように各層を同時に押出成形して積層する製法に限定されるものではなく、例えば、まず、上記最内層1用材料を混練機を用いて混練し、押出成形機を用いて上記最内層1用材料からなる単層構造のホースを作製し、このホースの外周面に、フッ素樹脂層2、外皮ゴム層3を順次、押出成形機を用いて押出成形することにより、目的とする三層構造の燃料用ホースを作製してもよい。なお、上記燃料用ホースにおける各層の界面は、通常、接着剤レスで接着するが、場合によって接着剤を補助的に用いてもよい。
【0033】
このようにして得られる燃料用ホースにおいて、ホース内径は4〜50mmの範囲が好ましく、特に好ましくは4〜45mmの範囲であり、ホース外径は6.1〜63mmの範囲が好ましく、特に好ましくは6.2〜53.6mmの範囲である。また、最内層1の厚みは0.5〜3mmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmの範囲であり、フッ素樹脂層2の厚みは0.05〜0.5mmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.1〜0.3mmの範囲であり、外皮ゴム層3の厚みは0.5〜3mmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmの範囲である。
【0034】
なお、図1では、上記のように三層構造ではあるが、本発明においては、特定材料からなる最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造が最大の特徴であるため、それ以外の層は任意であり、図1のように最外層の材料をゴム材に限定するものではない。また、例えば、図1におけるフッ素樹脂層2と外皮ゴム層3の層間に対し、中間ゴム層、ポリエステル系樹脂層、補強糸層、補強ワイヤー層等の層を一層以上介在させ、四層以上の多層構造の燃料用ホースとしてもよい。
【0035】
また、本発明の燃料用ホースは、自動車の燃料用ホースとして好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、例えば、トラクターや耕運機等の燃料用ホース等にも用いることができる。
【0036】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0037】
【実施例1】
〔最内層材料の調製〕
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)40部と、NBR(結合アクリロニトリル量:31重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN202)60部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は18.6重量%であった。
【0038】
〔中間層材料〕
フッ素樹脂(ダイニオン社製、THV−500G)。
【0039】
〔最外層材料〕
ヒドリンゴム(ダイソー社製、エピクロマーCG)100部と、加硫促進助剤剤(協和化学工業社製、協和マグ#150)1.5部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)50部と、可塑剤(大八化学工業社製、DOP)10部と、老化防止剤(大内新興化学工業社製、ノクラックNBC)1部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加硫剤(三新化学工業社製のサンセラー22−Cを0.6部と、ゼオン化成社製のレビタルマスターP−CHR−1100を1部)とを、混練機を用いて混練し、最外層材料を調製した。
【0040】
〔ホースの作製〕
上記のようにして予め調製された各層の材料を準備し、ついで、これらの材料を、各々、混練機を用いて混練した後、押出成形機を用いて各層を同時に押出成形することにより、厚み1mmの最内層と、厚み0.2mmの中間層と、厚み2mmの最外層とを有する三層構造の燃料用ホース(内径22mm、外径28.4mm)を作製した。
【0041】
【実施例2】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)30部と、NBR(結合アクリロニトリル量:42.5重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN101)70部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は29.8重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0042】
【実施例3】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)70部と、NBR(結合アクリロニトリル量:50重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN009)30部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は15重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0043】
【比較例1】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0044】
【比較例2】
NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN−202)100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)30部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(大八化学工業社製、DOP)15部と、老化防止剤(大内新興化学工業社製、ノクラックNBC)1部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加硫促進剤(三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種)5部と、加硫剤(日本油脂社製、パークミルD−40)5部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は31.0重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0045】
【比較例3】
NBR・PVC(JSR社製、NV−72)100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)30部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(大八化学工業社製、DOP)15部と、老化防止剤(大内新興化学工業社製、ノクラックNBC)1部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加硫促進剤(三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種)5部と、加硫剤(日本油脂社製、パークミルD−40)5部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は24.5重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0046】
【比較例4】
FKM(住友スリーエム社製、フローレルFE5731Q)100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストS)15部と、酸化マグネシウム(協和化学工業社製、協和マグ#150)3部と、水酸化カルシウム(近江化学社製、Cal−Z)6部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0047】
【比較例5】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)25部と、NBR(結合アクリロニトリル量:42.5重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN101)75部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は31.9重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0048】
【比較例6】
ACM(電気化学工業社製、デンカER−3400)75部と、NBR(結合アクリロニトリル量:50重量%、日本ゼオン社製、ニポールDN009)25部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト116)50部と、DBU塩(ダイソー社製、DA−500)1部と、加工助剤(花王社製、ルーナックS−30)1部と、シリカ(塩野義製薬社製、カープレックス1120)20部と、可塑剤(旭電化工業社製、アデカサイザーRS−107)10部と、加硫剤(電気化学工業社製、CN−25)2部と、硫黄0.5部と、加硫促進助剤(大内新興化学工業社製、バルノックAB−S)0.3部とを、混練機を用いて混練し、最内層材料を調製した。なお、このようにして得られた最内層材料のアクリロニトリル含有量は12.5重量%であった。そして、これを実施例1の最内層材料に代えて用いたこと以外は、実施例1と同様にして、三層構造の燃料用ホースを作製した。
【0049】
このようにして得られた実施例品および比較例品の燃料用ホース(または、各ホースの最内層材料を160℃×45分間プレス加硫した厚み2mmの加硫シート)を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1および表2に併せて示した。
【0050】
〔最内層抵抗〕
JIS K 6271に準じて、加硫シートを用いて各最内層材料の体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0051】
〔引張強さ(TB)、伸び(EB)〕
各最内層材料の加硫シートについて、JIS 5号ダンベルを打ち抜き、JIS K 6251に準じ、引張強さ(TB)および伸び(EB)を評価した。
【0052】
〔層間接着性〕
各ホースを長手方向に半割して、長さ100mmに切り出した。そして、このホースの最内層と中間層との層間接着性を、引張試験機(JIS B 7721)を用いて、毎分50mmの速度で引っ張り、層間の剥離状態を目視にて観察した。そして、最内層のゴムが中間層にとられ剥離したものを○、界面で剥離したものを×として、層間接着性の評価を行った。
【0053】
〔耐サワー性〕
各ホースの最内層から切り出した試験片を、2.5重量%のラウロイルパーオキサイド(LPO)を含むFuel Cに、40℃×72時間の条件で2サイクル浸漬した。その結果、試験片に硬化や軟化等の異常がみられなかったものを○、異常がみられたものを×として、耐サワー性の評価を行った。
【0054】
〔耐燃料油性〕
各ホースの最内層から切り出した試験片を、Fuel Cに40℃×48時間浸漬し、その体積変化率(%)を測定した。その結果、上記体積変化率が30%未満であったものを○、30%以上であったものを×として耐燃料油性の評価を行った。
【0055】
〔耐アミン性〕
Fuel Cに0.005mol/Lのドデカメチレンジアミンを混合してなる模擬変性ガソリンを調製した。そして、各ホースの最内層から切り出した試験片を、上記模擬変性ガソリンに80℃×72時間浸漬した。その結果、試験片に硬化や軟化等の異常がみられなかったものを○、異常がみられたものを×として耐アミン性の評価を行った。
【0056】
〔低温性〕
各最内層材料の加硫シートについて、JIS K6261に規定する低温衝撃脆化試験によって、低温脆化温度(℃)を測定した。そして、低温脆化温度が−25℃未満を示したものを○、−25℃以上を示したものを×として、低温性の評価を行った。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
上記結果から、実施例品はいずれも、導電性に優れ、層間も強固に接着されており、さらに、耐サワー性をはじめ、耐燃料油性、耐アミン性および低温性にも優れていることがわかる。これに対して、比較例1品は、その最内層のポリマーゴムがACMのみであるため、耐燃料油性に劣ることがわかる。また、比較例2品は、その最内層ポリマーゴムがNBRのみであるため、耐サワー性および導電性に劣ることがわかる。さらに、比較例3品は、その最内層のポリマーゴムにNBR・PVCを用いているため、実施例品と比べ、耐サワー性、低温性および導電性に劣ることがわかる。また、比較例4品は、その最内層のポリマーゴムにFKMを用いているため、耐アミン性、低温性、導電性および層間接着性に劣ることがわかる。そして、最内層材料におけるアクリロニトリル含有量が本発明の規定範囲を超える比較例5品は、やや導電性に劣り、かつ耐サワー性や低温性、導電性にも劣ることがわかり、上記規定範囲未満である比較例6品は、耐燃料油性に劣ることがわかる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明の燃料用ホースは、NBR由来のアクリロニトリルを所定の割合で含有するブレンドゴム(アクリルゴムとNBRとのブレンド)により形成された最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造を備えている。したがって、最内層であるゴム層と、フッ素樹脂層との接着性が良好で、さらに、耐ガソリン透過性、耐サワー性、耐アミン性、低温性および導電性にも優れているため、特に、自動車用燃料配管用ホースとして優れた機能を発揮することができる。しかも、その優れた導電性により、最内層材料へのカーボンブラック等の配合を不要化あるいは減少化させることが可能となることから、シール性も良好であり、燃料の漏出等を効果的に防ぐことができる。さらに、上記最内層への可塑剤の配合も不要化あるいは減少化させることができるため、ブリード性が向上し、最内層材料のブレンドの自由度も高くなる。
【0061】
特に、上記最内層材料であるブレンドゴムのアクリルゴムとNBRとのブレンド比率を特定の割合に設定すると、低温性、耐サワー性、耐燃料油性等の特性が、より効果的に得られるようになる。
【0062】
また、上記ブレンドゴム中に、1.8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩を含有すると、フッ素樹脂層との接着性がより良好となり、接着剤レスであっても層間接着性に優れるようになる。さらに、シリカを含有すると、未加硫時のフッ素樹脂層との密着力が増し、より安定した接着性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料用ホースの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 最内層
2 フッ素樹脂層
3 外皮ゴム層
Claims (3)
- 下記の(A)を用いて形成された最内層と、その外周に形成されたフッ素樹脂層との積層構造を有することを特徴とする燃料用ホース。
(A)アクリルゴムとアクリロニトリル−ブタジエンゴムとのブレンドゴムであって、アクリロニトリル含有量が15〜30重量%の範囲に設定されているブレンドゴム。 - 上記(A)のブレンドゴムにおけるアクリルゴム(ACM)とアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とのブレンド比率が、重量比で、ACM:NBR=3:7〜7:3の範囲に設定されている請求項1記載の燃料用ホース。
- 上記(A)に示すブレンドゴム中に、1.8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩を含有する請求項1または2記載の燃料用ホース。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002313158A JP2004149566A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | 燃料用ホース |
US10/693,862 US20050000582A1 (en) | 2002-10-28 | 2003-10-28 | Fuel hose |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002313158A JP2004149566A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | 燃料用ホース |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004149566A true JP2004149566A (ja) | 2004-05-27 |
Family
ID=32457851
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002313158A Pending JP2004149566A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | 燃料用ホース |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004149566A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006144878A (ja) * | 2004-11-18 | 2006-06-08 | Yokohama Rubber Co Ltd:The | マリンホース |
JP2008265281A (ja) * | 2007-03-23 | 2008-11-06 | Tokai Rubber Ind Ltd | ガソホール燃料用ホース |
-
2002
- 2002-10-28 JP JP2002313158A patent/JP2004149566A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006144878A (ja) * | 2004-11-18 | 2006-06-08 | Yokohama Rubber Co Ltd:The | マリンホース |
JP2008265281A (ja) * | 2007-03-23 | 2008-11-06 | Tokai Rubber Ind Ltd | ガソホール燃料用ホース |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US8329274B2 (en) | Fuel hose | |
US5427831A (en) | Fluoropolymer laminates | |
JPH0464507B2 (ja) | ||
KR101954544B1 (ko) | 적층체 | |
JP5595233B2 (ja) | 燃料系ホースおよびその製法 | |
JP4063046B2 (ja) | 燃料用ホースおよびその製法 | |
JP2005240853A (ja) | 耐熱ホース | |
JP2003287162A (ja) | 耐熱燃料ホース | |
JP6357768B2 (ja) | 積層体 | |
JP5939099B2 (ja) | 積層体 | |
JP5537358B2 (ja) | 積層体 | |
JP2004202865A (ja) | 樹脂チューブ | |
JP2006247883A (ja) | オイルホース | |
JP6126462B2 (ja) | 積層ゴムホース | |
JP2009006575A (ja) | 多層ホース | |
KR20050014726A (ko) | 열가소성 사원공중합체를 함유하는 호스 구조물 | |
US20050000582A1 (en) | Fuel hose | |
JP2004149566A (ja) | 燃料用ホース | |
JP5989005B2 (ja) | 積層体 | |
JP2004042495A (ja) | ガソリン燃料ホース | |
JP3921682B2 (ja) | アクリルゴム組成物及び耐熱ホース | |
JPS6251439A (ja) | ゴム積層体およびそれからなるホ−ス | |
JP2007106083A (ja) | 燃料用ゴムホース | |
JP2012081682A (ja) | 積層体 | |
JP2005199564A (ja) | ゴム積層体およびオイルホース |