JP2004148271A - 回転型膜分離装置の物理洗浄方法 - Google Patents
回転型膜分離装置の物理洗浄方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004148271A JP2004148271A JP2002319298A JP2002319298A JP2004148271A JP 2004148271 A JP2004148271 A JP 2004148271A JP 2002319298 A JP2002319298 A JP 2002319298A JP 2002319298 A JP2002319298 A JP 2002319298A JP 2004148271 A JP2004148271 A JP 2004148271A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- membrane
- liquid
- rotary
- container
- treated
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
Abstract
【課題】膜体を劣化させたり、破損させることなく、簡単にして効果的に回転型膜分離装置の膜体を物理洗浄する方法を提供すること。
【解決手段】被処理液の供給入口12を有する円筒状容器13の中心部を貫通するように中空の回転軸14を配している。板体の両面に透過性膜を有する多数の膜体を回転軸14に装着し、透過性膜で透過された液体を出口15、16から排出し、回転軸14とともに膜体を回転させるモータ18を容器外に備え、被処理液の供給入口12に接続された液体流路を容器内壁面に有している。円筒状容器13内を空にした状態で回転軸14を回転させて膜体に付着した固形物を剥離する。
【選択図】 図2
【解決手段】被処理液の供給入口12を有する円筒状容器13の中心部を貫通するように中空の回転軸14を配している。板体の両面に透過性膜を有する多数の膜体を回転軸14に装着し、透過性膜で透過された液体を出口15、16から排出し、回転軸14とともに膜体を回転させるモータ18を容器外に備え、被処理液の供給入口12に接続された液体流路を容器内壁面に有している。円筒状容器13内を空にした状態で回転軸14を回転させて膜体に付着した固形物を剥離する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固液分離、イオン除去、溶解性有機物除去、ラテックス濃縮、コロイドシリカ濃縮、有価物回収、廃液処理、金属分級、水道水濾過、活性汚泥処理、上水汚泥処理、食品廃液処理、COD低減、BOD低減、スラリーおよびコロイド成分のダイアフィルトレーション等に好適に用いることができる回転型膜分離装置の物理洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水の中に様々な物質を溶解した液(被処理液)を、清浄な水(透過液)と、粒子濃度の高い濃縮液とに分離するために膜分離装置が用いられている。膜分離装置には様々な形式のものがあるが、本発明の適用される回転型膜分離装置は、一般的に、容器の中心部を貫通するように回転軸を配し、この回転軸の軸長手方向に多数の膜体を装着し、回転軸とともに膜体を回転させつつ膜分離を行う方式である。その膜体は、一定以上の大きさの粒子の通過を妨げる小孔が表面に形成された多孔質の構造を備えて透過液体を移送可能な経路を有する透過性膜を板体の両面に取り付けた構造で、容器内に投入された被処理液中の極く微細な物質のみが膜体の小孔(膜孔)を透過することによって透過液を得ることができる。この場合、被処理液中の一定以上の大きさの粒子が膜孔を閉塞するのを防ぐために、回転軸を回転させて回転軸とともに膜体を回転させることが行われている。
【0003】
しかし、回転させるだけでは、被処理液が膜体と共回りして膜体の回転効果が十分に発揮されないので、膜孔の閉塞防止効果は不十分であることが多い。そのため、より効果的に膜孔の閉塞防止を図るための手段として、膜体表面に乱流を生じさせることにより共回りを防止し、膜体表面の被処理液を効率的に入れ替える膜分離装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された回転型膜分離装置によれば、乱流を発生させることにより、濃度分極の低減も可能となり、このことによって、高濃縮が可能となって、膜の阻止性能も向上させることができる。そこで、図7に基づいて、特許文献1に記載された膜分離装置の構造を説明する。図7(b)に示すように、加圧された被処理液の供給入口41を有する円筒状容器42の中心部を貫通するように中空の回転軸43を配し、透過された液体を移送することの可能な構造を有する多数の膜体44を回転軸43に装着し、膜体44で透過された液体を、膜体44から回転軸43に設けた小孔を経て中空の回転軸43内を通過させて出口45、46から排出し、濃縮液を出口47から排出し、膜体44の両側に、膜体44をほぼ全面的に覆うリング状のバッフル48を膜体44との間に間隙を設けて容器42に固定する構造である。
【0005】
特許文献1に記載された膜分離装置によれば、図示しないモータによって回転軸43とともに膜体44を回転させると、回転する膜体44の表面と静止したリング状のバッフル48との間の間隙に積極的に乱流を生じさせることができ、膜孔閉塞防止効果は期待できる。しかしながら、バッフル48を膜体44と44の間に介在させたとしても、一定時間以上膜分離を継続すると、やがて、膜体44の膜表面が固形物により覆われるので、その固形物を除去するための洗浄を行わざるを得なくなる。
【0006】
その洗浄方法としては、次に説明するような方法が知られている。
(1)透過性膜を透過した透過液を使用して透過液側から被処理液側に逆圧をかけて洗浄する方法(以下、逆圧洗浄という)
逆圧洗浄を回転型膜分離装置に適用する場合、十分に洗浄効果を上げるためには、ある程度の逆圧(例えば、0.05MPa以上の圧力)を付加する必要がある。ところが、この逆圧により透過性膜が破損する恐れがある。というのは、図5(a)に示すように、一般的に回転軸に装着する膜体23は心体(板体20)の両面または片面に中間構造物(スペーサクロス21)を介在させてまたは中間構造物を介在させずに透過性膜22を積層した構造のものが多く用いられている。回転型膜分離装置内に導入された加圧された被処理液中の透過成分は、図3(b)に示す膜体23を透過して中空回転軸14に達し、中空回転軸14内の透過液は出口15または16から排出される。この場合、透過に有効に利用できる面積をできるだけ多く確保するという理由で、図5(a)に示すように、透過性膜22とスペーサクロス21を板体20に固定してシールする部分の面積を極力少なくするために、このシール部材35は膜体の外周縁部に沿って透過性膜22とスペーサクロス21と板体20を覆っている。従って、このような構造の膜体の透過液側から被処理液側に逆圧をかけると、膜体の支持力が十分でないため、透過性膜が破損しやすいのである。
(2)フラッシング水による洗浄
フラッシング水による洗浄を行う場合、膜分離装置内に残った被処理液を同伴しつつ洗浄することになるので、洗浄効果を上げるためには、その残留被処理液をフラッシング水とともに極力装置外に排出して清浄なフラッシング水による洗浄を行うことが好ましく、洗浄水量が増大するのは避けられない。また、フラッシング水による洗浄を行う場合、膜体は水中に浸漬した状態になるため、膜体の回転に対する水の抵抗力が大きく、膜体表面に付着した固形物の剥離効果はあまりよくない。
(3)分解洗浄
膜分離装置の容器外套部を取り外し、膜体を露出させて高圧水による洗浄を行う方法では、膜分離装置が大きい場合は非常に手間がかかる。また、回転軸に装着した膜体の数量が多い場合は、膜体間を洗浄するのに長時間を要する。また、洗浄水が膜分離装置の周囲に飛散するため、被処理液の性状によっては人体や環境に悪影響を及ぼすことがある。
(4)薬品洗浄
薬品による洗浄を行う場合、洗浄廃液の処理方法が問題である。また、薬品により膜体が劣化するため、膜体の寿命が短くなる。
(5)間欠運転
一定時間回転軸を回転させて膜分離し、短時間回転軸を停止して膜分離を中断し、また、回転軸を回転させて膜分離し、次いで回転軸を停止して膜分離を中断するという間欠運転を行って、回転から停止に移る瞬間あるいは停止から回転に移る瞬間の衝撃により膜体表面に付着した固形物を剥離するという方法は、洗浄効果が低く、さらに、通常運転時の膜分離性能が低下する。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−115759号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上の詳細な説明で明らかなように、回転型膜分離装置の膜体を効果的に洗浄する方法は提案されていない。
【0009】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、膜体を劣化させたり、破損させることなく、簡単にして効果的に回転型膜分離装置の膜体を物理的に洗浄する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、容器内を空にした状態で回転軸を回転させることにより、回転に対する抵抗力が小さいので、回転により発生する遠心力により膜体に付着した固形物を容易に剥離することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明は、被処理液の供給入口を有する容器を貫通するように回転軸を配し、上記容器内にあって透過された液体を移送することの可能な構造を有する膜体を上記回転軸に装着し、上記膜体に接続されて透過液体を排出する出口を有し、被処理液の供給入口に接続された液体流路を容器内壁面に有してなる回転型膜分離装置を洗浄する方法であって、容器内を空にした状態で回転軸を回転させて膜体に付着した固形物を剥離することを特徴とする。
【0012】
回転型膜分離装置で一定時間膜分離を継続することにより、やがて膜体表面が固形物のケークで覆われることは避けられない。そこで、本発明に従って、容器内を空にした状態で回転軸を回転させれば(空運転すると)、回転に対する抵抗力が小さいので、比較的低い回転数で発生する遠心力により膜体表面に付着したファウリング物質やケークなどの固形物を剥離することができる。その結果、透過流束が大幅に向上する。
【0013】
本発明の物理洗浄時の膜体の回転数は、低くても洗浄効果をあげることができるが、あまりに低速では洗浄効果が得られないことがある。従って、膜体をある速度以上で回転させる必要があるが、膜体の半径や膜体表面に付着した固形物(特に、被処理液中の固形物であるケークの密度)により物理洗浄に必要な膜体の回転数の下限値は変化する。膜体に付着した固形物を剥離させる力は、回転で発生する遠心力であると考えられるので、本発明者は以下の式2を着想した。
【0014】
すなわち、膜体が回転することにより生成する遠心力による圧力損失を△Pとし、膜体の半径をr(m)とし、膜体の回転角速度をω (rad/sec) とし、膜体に付着した固形物の密度をρ(kg/m3)とした場合に、△Pは以下の式2で表され、
【0015】
【式2】
【0016】
式2で表される△Pが1000Pa以上になるように膜体を回転させれば、膜体に付着した固形物を容易に剥離することができるのである。
【0017】
このように本発明の物理洗浄による膜体の洗浄効果は大きいが、膜分離開始時の膜体性状(透過流束)に回復するためには薬品洗浄も必要である。しかし、本発明の物理洗浄による透過流束の回復量は大きく、薬品による洗浄回数を顕著に減少できるため、薬品による膜体の劣化が少なく、洗浄薬品の使用量も大幅に低減できる。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の好適な実施例について、図面を参照しながら説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、適宜変更と修正が可能である。
【0019】
図1は、回転型膜分離装置を含む膜分離システムの概略配置図である。図1において、1は被処理液のタンク、2はストレーナ、3はポンプ、4は回転型膜分離装置である。このように、タンク1とポンプ3の間にストレーナ2を設けることにより、回転型膜分離装置4内に被処理液の凝集物が混入しないようにすることができる。回転型膜分離装置4で分離した透過液は経路5を経て排出される。また、濃縮液は経路6と7を経てそのまま排出することもできるし(1パス濃縮)、経路8を経てタンク1に戻すこともできる(循環濃縮)。9はタンク1に被処理液を供給する経路、10は流量調整弁である。タンク1に撹拌機11を設置すれば、タンク1内の被処理液を均一に混合することができるが、必ずしも撹拌機は必要なものではない。
【0020】
図2は、本発明の洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の斜視図である。12は被処理液の供給入口で、円筒状容器13の中心部を貫通するように中空の回転軸14を配し、中空の回転軸14に装着した多数の膜体(図3の番号23)で透過された液体は、中空の回転軸14内を通過して出口15、16から排出され、濃縮液は出口17から排出される。18は回転軸14とともに膜体を回転させるモータであり、モータ18の回転力は、ベルト19により回転軸14に伝達される。回転力の伝達はこれに限られるものではなく、モータ直結型、歯車減速機、巻き掛け伝導装置等を用いてもよい。モータ18は、インバータ制御により速度可変なものか又は膜分離用回転数と物理洗浄用回転数の2種類の回転数を選択することが可能な構造のものが好ましい。
【0021】
本実施例で用いた膜体は、図4(a)(b)に示すように、SUS304製の板体20の両面に織布のスペーサクロス21を介してポリエーテルスルホン製の透過性膜22を取り付けた構造である。なお、透過性膜を取り付ける板としては本実施例で用いたステンレス鋼以外の他の金属板やセラミック板やプラスチック板を用いることも可能であり、容易に変形せず、破損に強い材質を採用するのが好ましい。
【0022】
本明細書において、透過性膜とは、多孔質の構造を有し、多孔質部分を経由することによって透過された液体を移送することの可能な経路(多孔質部分を接続することによって形成される流路)が内部に形成されたものをいい、このような機能を有するものであれば、上記の有機膜以外に、セラミック膜や金属膜を採用することもできる。
【0023】
スペーサクロス21も透過液体を移送可能であるが、スペーサクロス21内の透過液体の流路は後記する透過性膜22の透過液体移送経路34より大径であって、透過液体はスペーサクロス21内を流れやすくなっている。
【0024】
SUS304製の板体20とスペーサクロス21と透過性膜22からなる膜体23を、図3(b)に示すように回転軸14に装着し、膜体23の両側に膜体との間に間隙を設けて、それぞれ2本のステンレス鋼製の長方形状バッフル24を回転軸14を挟んで容器13の一方の内壁近傍から他方の内壁近傍まで互いに平行に配置し(図3(a)参照)、複数の長方形状バッフル24の両端部は容器13の左右の蓋面13aと13bを接続する貫通ボルト25によって支持固定されている。また、被処理液の供給入口12に接続された液体流路27が容器13の内壁面26に沿うように形成されている。
【0025】
回転軸14は中空であって、図4(a)に示すように、軸長手方向の膜体23装着部分に小孔28を設け、膜体23を構成する透過性膜22の透過液体移送経路とスペーサクロス21の透過液体移送流路は小孔28に連通している。29は、膜体23の回転軸装着部分で、上下で隣接する膜体23、23の間に介装したスペーサである。また、図4(b)に示すように、スペーサ29と膜体23が回転軸14に装着される部分の軸長手方向に複数のスリット30を設け、このスリット30を透過液体移送流路として利用して、回転軸14に小孔28を設け、透過性膜22の透過液体移送経路とスペーサクロス21の透過液体移送流路をスリット30を経て小孔28に通じるような構成を採用することもできる。これにより図4(a)の場合に比べて小孔28の数を少なくすることができ、また小孔28をスペーサクロス21に連通させる必要がなくなる。図4(b)では省略しているが、回転軸14の数カ所に小孔28が設けられている。なお、バッフルの材質は、上記した金属製以外にプラスチックやセラミックを採用することも可能である。
【0026】
以上のように構成される膜分離装置の容器13内に加圧(約0.01MPa以上の圧力)された被処理液を供給するか又は容器13内を被処理液で満たして回転軸14を通して減圧もしくは吸引し、回転軸14を回転させると、図5(a)の矢印31に示すように、遠心力によって半径方向外方への流れを生じる。しかも、膜体23の両側にはバッフル24が存在するので、膜体23の膜孔を閉塞しようとする粒子の作用や濃度分極を妨げるような流れ32が発生し、図5(b)に示すように、膜孔33が閉塞されることはなく、多孔質部分を接続することによって形成される経路34からスペーサクロス21内の流路を経た透過液は、図4(a)(b)に示す小孔28から中空回転軸14内を経由して、図2に示す出口15、16から排出され、一方、濃縮液は出口17から排出される。透過液は透過性膜内の狭い透過液体移送経路34よりスペーサクロス21内の広い流路を流れやすいので、透過液体移送経路34から直接小孔28に向かう透過液は少なく、スペーサクロス21内の広い流路を経て小孔28に達する透過液の方が多い。この点で、透過液が流れやすい流路を確保するために、板体20に透過液の流路を形成することも可能であって、この場合にはスペーサクロス21は不要である。しかし、板体20に透過液の流路を形成することはコストが高くつくので、経済性の点でスペーサクロス21を採用するのが好ましい。図5(a)において、35は板体20とスペーサクロス21と透過性膜22の外周縁部を覆って、透過性膜22とスペーサクロス21を板体20に固定してシールするシール部材である。
【0027】
次に、本発明の物理洗浄方法を回転型膜分離装置に適用した試験結果について説明する。なお、以下の試験に用いた円筒状容器13の内径は350mmであり、膜体の直径は300mmであり、これらの数値は各試験において共通である。
(1)ラテックス濃縮後の本発明の物理洗浄方法による透過流束の回復
図3に示すような長方形状バッフル24を有する回転型膜分離装置を用いて図1に示すような膜分離システム(循環濃縮)を使用し、膜体23の回転数600rpm、 操作圧力0.5MPa、操作温度25℃の条件で、初期濃度が45重量%のラテックスを濃縮すると、初期の透過流束35L(リットル)/m2/hr が、20時間後には15リットル/m2/hr に低下した(透過性膜22に付着したケーク密度は1300kg/m3 である)。
【0028】
そこで、容器13内のラテックスをタンク1に戻して、回転数100rpm で膜体23を約5秒間空回転させると、透過流束は初期と同じ35L/m2/hr に回復した。本明細書において、操作圧力とは、被処理液の供給圧力から遠心力を差し引いた有効圧力をいい、実際に被処理液の透過に有効に利用された圧力をいう。操作温度とは、膜分離時の被処理液の温度をいう。なお、本試験における透過性膜22はナノ濾過膜(NF膜)である。
(2)操作圧力と透過流束
図3に示すような長方形状バッフル24を有する回転型膜分離装置を用いて図1に示すような膜分離システム(循環濃縮)を使用して、操作圧力と透過流束の関係について調査したので、以下に説明する。なお、透過性膜はナノ濾過膜(NF膜)である。
a.新しい膜体における操作圧力と透過流束の関係
膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で、操作圧力を変えて濃度が45重量%のラテックスを膜分離すると、操作圧力と透過流束との間に、図6の線A(直線)に示すような関係を得た。
b.濃縮後の膜体における操作圧力と透過流束の関係
そして、膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で、操作圧力を変えて20時間上記初期濃度のラテックスの濃縮を継続すると、操作圧力と透過流束との間に、図6の線B(長破線)に示すような関係を得、透過流束がかなり低下したことが分かった。
c.フラッシングによる透過流束の回復
線Bで示す濃縮操作後の透過流束は線Aで示す初期の透過流束よりかなり低下したので、図1のタンク1にフラッシング水を導入して、膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で操作圧力を変えてフラッシングを行うと、操作圧力と透過流束との間に、図6の線C(短破線)に示すような関係を得、フラッシング水による洗浄では、低下した透過流束の回復量は少ないことが分かった。d.本発明の物理洗浄方法による透過流束の回復
次に、本発明の物理洗浄方法を適用するために、再度、図1のタンク1に上記と同じ濃度(45重量%)のラテックスを導入し、膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で、操作圧力を変えて20時間ラテックスの濃縮を継続した後、容器13内のラテックスをタンク1に戻して、操作圧力を変えて回転数100rpm で膜体23を約5秒間空回転させると、操作圧力と透過流束との間に、図6の線D(一点鎖線)に示すような関係を得、本発明の物理洗浄方法による透過流束の回復量は顕著であることが分かった。
(3)物理洗浄に必要な膜体の回転数
a.本発明の着想
空運転による物理洗浄時の膜体の回転数は、低くても洗浄効果をあげることができるが、あまりに低速では遠心力が不十分で膜体上の固形物を剥離できない。従って、膜体をある速度以上で回転させる必要があるが、膜体の半径や膜体表面に付着した固形物(特に、被処理液中の固形物であるケークの密度)により物理洗浄に必要な膜体の回転数の下限値は変化すると考えられる。
【0029】
そこで、本発明者は、膜体に付着した固形物の剥離に有効に働く遠心力による圧力損失がある数値以上になれば、洗浄効果(固形物の剥離効果)を得られるものと考え、膜体が回転することにより生成する遠心力による圧力損失を△Pとし、膜体の半径をr(m)とし、膜体の回転角速度をω (rad/sec) とし、膜体に付着した固形物の密度をρ(kg/m3)とした場合に、△Pを以下の式3で定義した。
【0030】
【式3】
【0031】
b.物理洗浄試験用膜体サンプルの作製
次に、物理洗浄試験用の膜体サンプルを得るために、図3に示すような長方形状バッフル24を有する回転型膜分離装置を用いて図1に示すような膜分離システム(循環濃縮)を使用して、膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で、45重量%の濃度のラテックスを用いて操作圧力を変えて20時間濃縮試験を行い、ケーク付着状況が様々に異なる透過性膜(NF膜)を得た(NF膜に付着したケーク密度は、1300kg/m3)。
c.物理洗浄試験
そこで、容器13内のラテックスをタンク1に戻して、式3で表される△Pが1000Pa以上になるように膜体23を約5秒間空回転させると、すべてのNF膜に付着した固形物(ケーク)が剥離され、良好に洗浄できたことが分かった。
【0032】
なお、透過性膜が有機膜である場合、回転数が高すぎると、膜体が保有している水分の殆どが失われて、その有機膜が乾燥してしまい、使用に耐えなくなる。この点から透過性膜が有機膜である場合の膜体の回転数は、約1000rpm 以下であるのが好ましい。さらに、当然のことながら、膜体の回転数はその機械的強度によって規制される数値以下に抑えるのが好ましい。
【0033】
なお、容器13は円筒状以外の形状、例えば、四角形以上の多角形または上蓋の無い槽形を採用することも可能である。
【0034】
本実施例においては、膜分離装置を横にして用いる例を挙げているが、これに限られるものではなく、装置を縦にして用いることもできる。
【0035】
【発明の効果】
本発明は上記のとおり構成されているので、膜体を破損させることなく、簡単にして効果的に回転型膜分離装置の膜体を物理洗浄することができる。これにより、物理洗浄前の透過流束を大幅に向上することができる。また、洗浄薬品の使用量も大幅に低減できるので、薬品による膜体の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転型膜分離装置を含む膜分離システムの概略配置図である。
【図2】本発明の物理洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の一実施例の斜視図である。
【図3】図3(a)は、本発明の物理洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の一実施例の長方形状バッフルと膜体と容器とを示す一実施例の断面図、図3(b)はその長方形状バッフルを用いた回転型膜分離装置の断面を含む側面図であり、回転手段は省略しており、図3(c)は図3(a)のIII−III矢視断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の物理洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の一実施例において、膜体が回転軸に装着される箇所を拡大して示す断面図であり、図4(b)はその別の実施例の膜体が回転軸に装着される箇所を拡大して示す断面図である。
【図5】図5(a)は本発明の物理洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の一実施例において、容器内壁近傍の膜体と長方形状バッフルを拡大して示す断面図であり、図5(b)は、透過性膜内の透過液体移送経路を拡大して示す図である。
【図6】操作圧力と透過流束との関係を示す図である。
【図7】図7(a)は、従来の回転型膜分離装置のリング状バッフルと膜体と容器とを示す断面図、図7(b)はそのリング状バッフルを用いた回転型膜分離装置の断面を含む側面図であり、回転手段は省略している。
【符号の説明】
1…被処理液のタンク
2…ストレーナ
3…ポンプ
4…回転型膜分離装置
10…流量調整弁
11…撹拌機
12…被処理液の供給入口
13…円筒状容器
14…回転軸
15、16…透過液出口
17…濃縮液出口
18…モータ
20…板体
21…スペーサクロス
22…透過性膜
23…膜体
24…長方形状バッフル
25…貫通ボルト
26…容器の内壁面
27…液体流路
28…小孔
29…スペーサ
30…スリット
33…膜孔
34…透過液体移送経路
35…シール部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、固液分離、イオン除去、溶解性有機物除去、ラテックス濃縮、コロイドシリカ濃縮、有価物回収、廃液処理、金属分級、水道水濾過、活性汚泥処理、上水汚泥処理、食品廃液処理、COD低減、BOD低減、スラリーおよびコロイド成分のダイアフィルトレーション等に好適に用いることができる回転型膜分離装置の物理洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水の中に様々な物質を溶解した液(被処理液)を、清浄な水(透過液)と、粒子濃度の高い濃縮液とに分離するために膜分離装置が用いられている。膜分離装置には様々な形式のものがあるが、本発明の適用される回転型膜分離装置は、一般的に、容器の中心部を貫通するように回転軸を配し、この回転軸の軸長手方向に多数の膜体を装着し、回転軸とともに膜体を回転させつつ膜分離を行う方式である。その膜体は、一定以上の大きさの粒子の通過を妨げる小孔が表面に形成された多孔質の構造を備えて透過液体を移送可能な経路を有する透過性膜を板体の両面に取り付けた構造で、容器内に投入された被処理液中の極く微細な物質のみが膜体の小孔(膜孔)を透過することによって透過液を得ることができる。この場合、被処理液中の一定以上の大きさの粒子が膜孔を閉塞するのを防ぐために、回転軸を回転させて回転軸とともに膜体を回転させることが行われている。
【0003】
しかし、回転させるだけでは、被処理液が膜体と共回りして膜体の回転効果が十分に発揮されないので、膜孔の閉塞防止効果は不十分であることが多い。そのため、より効果的に膜孔の閉塞防止を図るための手段として、膜体表面に乱流を生じさせることにより共回りを防止し、膜体表面の被処理液を効率的に入れ替える膜分離装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された回転型膜分離装置によれば、乱流を発生させることにより、濃度分極の低減も可能となり、このことによって、高濃縮が可能となって、膜の阻止性能も向上させることができる。そこで、図7に基づいて、特許文献1に記載された膜分離装置の構造を説明する。図7(b)に示すように、加圧された被処理液の供給入口41を有する円筒状容器42の中心部を貫通するように中空の回転軸43を配し、透過された液体を移送することの可能な構造を有する多数の膜体44を回転軸43に装着し、膜体44で透過された液体を、膜体44から回転軸43に設けた小孔を経て中空の回転軸43内を通過させて出口45、46から排出し、濃縮液を出口47から排出し、膜体44の両側に、膜体44をほぼ全面的に覆うリング状のバッフル48を膜体44との間に間隙を設けて容器42に固定する構造である。
【0005】
特許文献1に記載された膜分離装置によれば、図示しないモータによって回転軸43とともに膜体44を回転させると、回転する膜体44の表面と静止したリング状のバッフル48との間の間隙に積極的に乱流を生じさせることができ、膜孔閉塞防止効果は期待できる。しかしながら、バッフル48を膜体44と44の間に介在させたとしても、一定時間以上膜分離を継続すると、やがて、膜体44の膜表面が固形物により覆われるので、その固形物を除去するための洗浄を行わざるを得なくなる。
【0006】
その洗浄方法としては、次に説明するような方法が知られている。
(1)透過性膜を透過した透過液を使用して透過液側から被処理液側に逆圧をかけて洗浄する方法(以下、逆圧洗浄という)
逆圧洗浄を回転型膜分離装置に適用する場合、十分に洗浄効果を上げるためには、ある程度の逆圧(例えば、0.05MPa以上の圧力)を付加する必要がある。ところが、この逆圧により透過性膜が破損する恐れがある。というのは、図5(a)に示すように、一般的に回転軸に装着する膜体23は心体(板体20)の両面または片面に中間構造物(スペーサクロス21)を介在させてまたは中間構造物を介在させずに透過性膜22を積層した構造のものが多く用いられている。回転型膜分離装置内に導入された加圧された被処理液中の透過成分は、図3(b)に示す膜体23を透過して中空回転軸14に達し、中空回転軸14内の透過液は出口15または16から排出される。この場合、透過に有効に利用できる面積をできるだけ多く確保するという理由で、図5(a)に示すように、透過性膜22とスペーサクロス21を板体20に固定してシールする部分の面積を極力少なくするために、このシール部材35は膜体の外周縁部に沿って透過性膜22とスペーサクロス21と板体20を覆っている。従って、このような構造の膜体の透過液側から被処理液側に逆圧をかけると、膜体の支持力が十分でないため、透過性膜が破損しやすいのである。
(2)フラッシング水による洗浄
フラッシング水による洗浄を行う場合、膜分離装置内に残った被処理液を同伴しつつ洗浄することになるので、洗浄効果を上げるためには、その残留被処理液をフラッシング水とともに極力装置外に排出して清浄なフラッシング水による洗浄を行うことが好ましく、洗浄水量が増大するのは避けられない。また、フラッシング水による洗浄を行う場合、膜体は水中に浸漬した状態になるため、膜体の回転に対する水の抵抗力が大きく、膜体表面に付着した固形物の剥離効果はあまりよくない。
(3)分解洗浄
膜分離装置の容器外套部を取り外し、膜体を露出させて高圧水による洗浄を行う方法では、膜分離装置が大きい場合は非常に手間がかかる。また、回転軸に装着した膜体の数量が多い場合は、膜体間を洗浄するのに長時間を要する。また、洗浄水が膜分離装置の周囲に飛散するため、被処理液の性状によっては人体や環境に悪影響を及ぼすことがある。
(4)薬品洗浄
薬品による洗浄を行う場合、洗浄廃液の処理方法が問題である。また、薬品により膜体が劣化するため、膜体の寿命が短くなる。
(5)間欠運転
一定時間回転軸を回転させて膜分離し、短時間回転軸を停止して膜分離を中断し、また、回転軸を回転させて膜分離し、次いで回転軸を停止して膜分離を中断するという間欠運転を行って、回転から停止に移る瞬間あるいは停止から回転に移る瞬間の衝撃により膜体表面に付着した固形物を剥離するという方法は、洗浄効果が低く、さらに、通常運転時の膜分離性能が低下する。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−115759号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上の詳細な説明で明らかなように、回転型膜分離装置の膜体を効果的に洗浄する方法は提案されていない。
【0009】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、膜体を劣化させたり、破損させることなく、簡単にして効果的に回転型膜分離装置の膜体を物理的に洗浄する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、容器内を空にした状態で回転軸を回転させることにより、回転に対する抵抗力が小さいので、回転により発生する遠心力により膜体に付着した固形物を容易に剥離することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明は、被処理液の供給入口を有する容器を貫通するように回転軸を配し、上記容器内にあって透過された液体を移送することの可能な構造を有する膜体を上記回転軸に装着し、上記膜体に接続されて透過液体を排出する出口を有し、被処理液の供給入口に接続された液体流路を容器内壁面に有してなる回転型膜分離装置を洗浄する方法であって、容器内を空にした状態で回転軸を回転させて膜体に付着した固形物を剥離することを特徴とする。
【0012】
回転型膜分離装置で一定時間膜分離を継続することにより、やがて膜体表面が固形物のケークで覆われることは避けられない。そこで、本発明に従って、容器内を空にした状態で回転軸を回転させれば(空運転すると)、回転に対する抵抗力が小さいので、比較的低い回転数で発生する遠心力により膜体表面に付着したファウリング物質やケークなどの固形物を剥離することができる。その結果、透過流束が大幅に向上する。
【0013】
本発明の物理洗浄時の膜体の回転数は、低くても洗浄効果をあげることができるが、あまりに低速では洗浄効果が得られないことがある。従って、膜体をある速度以上で回転させる必要があるが、膜体の半径や膜体表面に付着した固形物(特に、被処理液中の固形物であるケークの密度)により物理洗浄に必要な膜体の回転数の下限値は変化する。膜体に付着した固形物を剥離させる力は、回転で発生する遠心力であると考えられるので、本発明者は以下の式2を着想した。
【0014】
すなわち、膜体が回転することにより生成する遠心力による圧力損失を△Pとし、膜体の半径をr(m)とし、膜体の回転角速度をω (rad/sec) とし、膜体に付着した固形物の密度をρ(kg/m3)とした場合に、△Pは以下の式2で表され、
【0015】
【式2】
【0016】
式2で表される△Pが1000Pa以上になるように膜体を回転させれば、膜体に付着した固形物を容易に剥離することができるのである。
【0017】
このように本発明の物理洗浄による膜体の洗浄効果は大きいが、膜分離開始時の膜体性状(透過流束)に回復するためには薬品洗浄も必要である。しかし、本発明の物理洗浄による透過流束の回復量は大きく、薬品による洗浄回数を顕著に減少できるため、薬品による膜体の劣化が少なく、洗浄薬品の使用量も大幅に低減できる。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の好適な実施例について、図面を参照しながら説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、適宜変更と修正が可能である。
【0019】
図1は、回転型膜分離装置を含む膜分離システムの概略配置図である。図1において、1は被処理液のタンク、2はストレーナ、3はポンプ、4は回転型膜分離装置である。このように、タンク1とポンプ3の間にストレーナ2を設けることにより、回転型膜分離装置4内に被処理液の凝集物が混入しないようにすることができる。回転型膜分離装置4で分離した透過液は経路5を経て排出される。また、濃縮液は経路6と7を経てそのまま排出することもできるし(1パス濃縮)、経路8を経てタンク1に戻すこともできる(循環濃縮)。9はタンク1に被処理液を供給する経路、10は流量調整弁である。タンク1に撹拌機11を設置すれば、タンク1内の被処理液を均一に混合することができるが、必ずしも撹拌機は必要なものではない。
【0020】
図2は、本発明の洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の斜視図である。12は被処理液の供給入口で、円筒状容器13の中心部を貫通するように中空の回転軸14を配し、中空の回転軸14に装着した多数の膜体(図3の番号23)で透過された液体は、中空の回転軸14内を通過して出口15、16から排出され、濃縮液は出口17から排出される。18は回転軸14とともに膜体を回転させるモータであり、モータ18の回転力は、ベルト19により回転軸14に伝達される。回転力の伝達はこれに限られるものではなく、モータ直結型、歯車減速機、巻き掛け伝導装置等を用いてもよい。モータ18は、インバータ制御により速度可変なものか又は膜分離用回転数と物理洗浄用回転数の2種類の回転数を選択することが可能な構造のものが好ましい。
【0021】
本実施例で用いた膜体は、図4(a)(b)に示すように、SUS304製の板体20の両面に織布のスペーサクロス21を介してポリエーテルスルホン製の透過性膜22を取り付けた構造である。なお、透過性膜を取り付ける板としては本実施例で用いたステンレス鋼以外の他の金属板やセラミック板やプラスチック板を用いることも可能であり、容易に変形せず、破損に強い材質を採用するのが好ましい。
【0022】
本明細書において、透過性膜とは、多孔質の構造を有し、多孔質部分を経由することによって透過された液体を移送することの可能な経路(多孔質部分を接続することによって形成される流路)が内部に形成されたものをいい、このような機能を有するものであれば、上記の有機膜以外に、セラミック膜や金属膜を採用することもできる。
【0023】
スペーサクロス21も透過液体を移送可能であるが、スペーサクロス21内の透過液体の流路は後記する透過性膜22の透過液体移送経路34より大径であって、透過液体はスペーサクロス21内を流れやすくなっている。
【0024】
SUS304製の板体20とスペーサクロス21と透過性膜22からなる膜体23を、図3(b)に示すように回転軸14に装着し、膜体23の両側に膜体との間に間隙を設けて、それぞれ2本のステンレス鋼製の長方形状バッフル24を回転軸14を挟んで容器13の一方の内壁近傍から他方の内壁近傍まで互いに平行に配置し(図3(a)参照)、複数の長方形状バッフル24の両端部は容器13の左右の蓋面13aと13bを接続する貫通ボルト25によって支持固定されている。また、被処理液の供給入口12に接続された液体流路27が容器13の内壁面26に沿うように形成されている。
【0025】
回転軸14は中空であって、図4(a)に示すように、軸長手方向の膜体23装着部分に小孔28を設け、膜体23を構成する透過性膜22の透過液体移送経路とスペーサクロス21の透過液体移送流路は小孔28に連通している。29は、膜体23の回転軸装着部分で、上下で隣接する膜体23、23の間に介装したスペーサである。また、図4(b)に示すように、スペーサ29と膜体23が回転軸14に装着される部分の軸長手方向に複数のスリット30を設け、このスリット30を透過液体移送流路として利用して、回転軸14に小孔28を設け、透過性膜22の透過液体移送経路とスペーサクロス21の透過液体移送流路をスリット30を経て小孔28に通じるような構成を採用することもできる。これにより図4(a)の場合に比べて小孔28の数を少なくすることができ、また小孔28をスペーサクロス21に連通させる必要がなくなる。図4(b)では省略しているが、回転軸14の数カ所に小孔28が設けられている。なお、バッフルの材質は、上記した金属製以外にプラスチックやセラミックを採用することも可能である。
【0026】
以上のように構成される膜分離装置の容器13内に加圧(約0.01MPa以上の圧力)された被処理液を供給するか又は容器13内を被処理液で満たして回転軸14を通して減圧もしくは吸引し、回転軸14を回転させると、図5(a)の矢印31に示すように、遠心力によって半径方向外方への流れを生じる。しかも、膜体23の両側にはバッフル24が存在するので、膜体23の膜孔を閉塞しようとする粒子の作用や濃度分極を妨げるような流れ32が発生し、図5(b)に示すように、膜孔33が閉塞されることはなく、多孔質部分を接続することによって形成される経路34からスペーサクロス21内の流路を経た透過液は、図4(a)(b)に示す小孔28から中空回転軸14内を経由して、図2に示す出口15、16から排出され、一方、濃縮液は出口17から排出される。透過液は透過性膜内の狭い透過液体移送経路34よりスペーサクロス21内の広い流路を流れやすいので、透過液体移送経路34から直接小孔28に向かう透過液は少なく、スペーサクロス21内の広い流路を経て小孔28に達する透過液の方が多い。この点で、透過液が流れやすい流路を確保するために、板体20に透過液の流路を形成することも可能であって、この場合にはスペーサクロス21は不要である。しかし、板体20に透過液の流路を形成することはコストが高くつくので、経済性の点でスペーサクロス21を採用するのが好ましい。図5(a)において、35は板体20とスペーサクロス21と透過性膜22の外周縁部を覆って、透過性膜22とスペーサクロス21を板体20に固定してシールするシール部材である。
【0027】
次に、本発明の物理洗浄方法を回転型膜分離装置に適用した試験結果について説明する。なお、以下の試験に用いた円筒状容器13の内径は350mmであり、膜体の直径は300mmであり、これらの数値は各試験において共通である。
(1)ラテックス濃縮後の本発明の物理洗浄方法による透過流束の回復
図3に示すような長方形状バッフル24を有する回転型膜分離装置を用いて図1に示すような膜分離システム(循環濃縮)を使用し、膜体23の回転数600rpm、 操作圧力0.5MPa、操作温度25℃の条件で、初期濃度が45重量%のラテックスを濃縮すると、初期の透過流束35L(リットル)/m2/hr が、20時間後には15リットル/m2/hr に低下した(透過性膜22に付着したケーク密度は1300kg/m3 である)。
【0028】
そこで、容器13内のラテックスをタンク1に戻して、回転数100rpm で膜体23を約5秒間空回転させると、透過流束は初期と同じ35L/m2/hr に回復した。本明細書において、操作圧力とは、被処理液の供給圧力から遠心力を差し引いた有効圧力をいい、実際に被処理液の透過に有効に利用された圧力をいう。操作温度とは、膜分離時の被処理液の温度をいう。なお、本試験における透過性膜22はナノ濾過膜(NF膜)である。
(2)操作圧力と透過流束
図3に示すような長方形状バッフル24を有する回転型膜分離装置を用いて図1に示すような膜分離システム(循環濃縮)を使用して、操作圧力と透過流束の関係について調査したので、以下に説明する。なお、透過性膜はナノ濾過膜(NF膜)である。
a.新しい膜体における操作圧力と透過流束の関係
膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で、操作圧力を変えて濃度が45重量%のラテックスを膜分離すると、操作圧力と透過流束との間に、図6の線A(直線)に示すような関係を得た。
b.濃縮後の膜体における操作圧力と透過流束の関係
そして、膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で、操作圧力を変えて20時間上記初期濃度のラテックスの濃縮を継続すると、操作圧力と透過流束との間に、図6の線B(長破線)に示すような関係を得、透過流束がかなり低下したことが分かった。
c.フラッシングによる透過流束の回復
線Bで示す濃縮操作後の透過流束は線Aで示す初期の透過流束よりかなり低下したので、図1のタンク1にフラッシング水を導入して、膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で操作圧力を変えてフラッシングを行うと、操作圧力と透過流束との間に、図6の線C(短破線)に示すような関係を得、フラッシング水による洗浄では、低下した透過流束の回復量は少ないことが分かった。d.本発明の物理洗浄方法による透過流束の回復
次に、本発明の物理洗浄方法を適用するために、再度、図1のタンク1に上記と同じ濃度(45重量%)のラテックスを導入し、膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で、操作圧力を変えて20時間ラテックスの濃縮を継続した後、容器13内のラテックスをタンク1に戻して、操作圧力を変えて回転数100rpm で膜体23を約5秒間空回転させると、操作圧力と透過流束との間に、図6の線D(一点鎖線)に示すような関係を得、本発明の物理洗浄方法による透過流束の回復量は顕著であることが分かった。
(3)物理洗浄に必要な膜体の回転数
a.本発明の着想
空運転による物理洗浄時の膜体の回転数は、低くても洗浄効果をあげることができるが、あまりに低速では遠心力が不十分で膜体上の固形物を剥離できない。従って、膜体をある速度以上で回転させる必要があるが、膜体の半径や膜体表面に付着した固形物(特に、被処理液中の固形物であるケークの密度)により物理洗浄に必要な膜体の回転数の下限値は変化すると考えられる。
【0029】
そこで、本発明者は、膜体に付着した固形物の剥離に有効に働く遠心力による圧力損失がある数値以上になれば、洗浄効果(固形物の剥離効果)を得られるものと考え、膜体が回転することにより生成する遠心力による圧力損失を△Pとし、膜体の半径をr(m)とし、膜体の回転角速度をω (rad/sec) とし、膜体に付着した固形物の密度をρ(kg/m3)とした場合に、△Pを以下の式3で定義した。
【0030】
【式3】
【0031】
b.物理洗浄試験用膜体サンプルの作製
次に、物理洗浄試験用の膜体サンプルを得るために、図3に示すような長方形状バッフル24を有する回転型膜分離装置を用いて図1に示すような膜分離システム(循環濃縮)を使用して、膜体23の回転数600rpm、 操作温度25℃の条件で、45重量%の濃度のラテックスを用いて操作圧力を変えて20時間濃縮試験を行い、ケーク付着状況が様々に異なる透過性膜(NF膜)を得た(NF膜に付着したケーク密度は、1300kg/m3)。
c.物理洗浄試験
そこで、容器13内のラテックスをタンク1に戻して、式3で表される△Pが1000Pa以上になるように膜体23を約5秒間空回転させると、すべてのNF膜に付着した固形物(ケーク)が剥離され、良好に洗浄できたことが分かった。
【0032】
なお、透過性膜が有機膜である場合、回転数が高すぎると、膜体が保有している水分の殆どが失われて、その有機膜が乾燥してしまい、使用に耐えなくなる。この点から透過性膜が有機膜である場合の膜体の回転数は、約1000rpm 以下であるのが好ましい。さらに、当然のことながら、膜体の回転数はその機械的強度によって規制される数値以下に抑えるのが好ましい。
【0033】
なお、容器13は円筒状以外の形状、例えば、四角形以上の多角形または上蓋の無い槽形を採用することも可能である。
【0034】
本実施例においては、膜分離装置を横にして用いる例を挙げているが、これに限られるものではなく、装置を縦にして用いることもできる。
【0035】
【発明の効果】
本発明は上記のとおり構成されているので、膜体を破損させることなく、簡単にして効果的に回転型膜分離装置の膜体を物理洗浄することができる。これにより、物理洗浄前の透過流束を大幅に向上することができる。また、洗浄薬品の使用量も大幅に低減できるので、薬品による膜体の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転型膜分離装置を含む膜分離システムの概略配置図である。
【図2】本発明の物理洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の一実施例の斜視図である。
【図3】図3(a)は、本発明の物理洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の一実施例の長方形状バッフルと膜体と容器とを示す一実施例の断面図、図3(b)はその長方形状バッフルを用いた回転型膜分離装置の断面を含む側面図であり、回転手段は省略しており、図3(c)は図3(a)のIII−III矢視断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の物理洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の一実施例において、膜体が回転軸に装着される箇所を拡大して示す断面図であり、図4(b)はその別の実施例の膜体が回転軸に装着される箇所を拡大して示す断面図である。
【図5】図5(a)は本発明の物理洗浄方法を好適に実施しうる回転型膜分離装置の一実施例において、容器内壁近傍の膜体と長方形状バッフルを拡大して示す断面図であり、図5(b)は、透過性膜内の透過液体移送経路を拡大して示す図である。
【図6】操作圧力と透過流束との関係を示す図である。
【図7】図7(a)は、従来の回転型膜分離装置のリング状バッフルと膜体と容器とを示す断面図、図7(b)はそのリング状バッフルを用いた回転型膜分離装置の断面を含む側面図であり、回転手段は省略している。
【符号の説明】
1…被処理液のタンク
2…ストレーナ
3…ポンプ
4…回転型膜分離装置
10…流量調整弁
11…撹拌機
12…被処理液の供給入口
13…円筒状容器
14…回転軸
15、16…透過液出口
17…濃縮液出口
18…モータ
20…板体
21…スペーサクロス
22…透過性膜
23…膜体
24…長方形状バッフル
25…貫通ボルト
26…容器の内壁面
27…液体流路
28…小孔
29…スペーサ
30…スリット
33…膜孔
34…透過液体移送経路
35…シール部材
Claims (2)
- 被処理液の供給入口を有する容器を貫通するように回転軸を配し、上記容器内にあって透過された液体を移送することの可能な構造を有する膜体を上記回転軸に装着し、上記膜体に接続されて透過液体を排出する出口を有し、被処理液の供給入口に接続された液体流路を容器内壁面に有してなる回転型膜分離装置を洗浄する方法であって、容器内を空にした状態で回転軸を回転させて膜体に付着した固形物を剥離することを特徴とする回転型膜分離装置の物理洗浄方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002319298A JP2004148271A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 回転型膜分離装置の物理洗浄方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002319298A JP2004148271A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 回転型膜分離装置の物理洗浄方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004148271A true JP2004148271A (ja) | 2004-05-27 |
Family
ID=32462184
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002319298A Pending JP2004148271A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 回転型膜分離装置の物理洗浄方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004148271A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015066495A (ja) * | 2013-09-30 | 2015-04-13 | 三菱化工機株式会社 | ディスク回転式膜ろ過装置を使用したろ過方法 |
-
2002
- 2002-11-01 JP JP2002319298A patent/JP2004148271A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015066495A (ja) * | 2013-09-30 | 2015-04-13 | 三菱化工機株式会社 | ディスク回転式膜ろ過装置を使用したろ過方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JPH11156166A (ja) | 中空糸膜モジュールの洗浄方法 | |
WO2014103854A1 (ja) | バラスト水処理装置およびバラスト水処理装置の逆洗浄方法 | |
WO2013191245A1 (ja) | 濁水処理システムおよび濁水処理方法 | |
JP3627810B2 (ja) | 汚泥濃縮装置および汚泥濃縮装置の洗浄方法 | |
JP2004148271A (ja) | 回転型膜分離装置の物理洗浄方法 | |
JPH07204474A (ja) | 膜分離装置及びその洗浄方法 | |
JP4029263B2 (ja) | 複合精密ろ過方法並びにろ過装置 | |
JPH05309242A (ja) | 濾過素子及び液体処理装置 | |
JP3741685B2 (ja) | 回転型膜分離装置 | |
JPH07108110A (ja) | スラリー濃縮方法及び濃縮装置 | |
JP2002292258A (ja) | 膜分離方法及び膜分離装置 | |
JP4599633B2 (ja) | 膜分離装置 | |
JP2000117264A (ja) | 浄水システム | |
JP2003225517A (ja) | 固液分離装置の洗浄方法 | |
WO2024154319A1 (ja) | 濾過膜洗浄装置 | |
JP2002028652A (ja) | 膜分離装置 | |
JPH11300178A (ja) | 膜分離装置の膜の洗浄方法 | |
JP2001120915A (ja) | 懸濁液濃縮方法及び濃縮装置 | |
JPH1157329A (ja) | セラミック濾過装置及び逆洗排水処理装置並びに逆洗排水処理方法 | |
JP7216542B2 (ja) | 排水処理装置、膜エレメント及び排水処理方法 | |
JP2011183320A (ja) | 膜ろ過装置の逆洗方法 | |
JP2005021739A (ja) | 流体ノズル構造及び汚泥除去方法 | |
JPS6233509A (ja) | 遠心式自浄フイルタ装置 | |
JP2005046684A (ja) | 溶解性有機物含有液の処理方法 | |
JP4346345B2 (ja) | 膜濾過方法 |