JP2004148158A - チップ用フィルターおよびチップ - Google Patents
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Abstract
【課題】サブミクロン粒子を遮蔽でき浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止し、高精度の定量分注を保証できるチップ用フィルターおよびチップを提供する。
【解決手段】本発明のチップ用フィルターは、JIS Z 8901の13種として規定されたDOPエアロゾル(平均粒径0.27μm)の捕集効率が95%以上である多孔質体からなる。また、本発明のチップは、当該チップ用フィルター6をチップ本体3に装填したものである。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のチップ用フィルターは、JIS Z 8901の13種として規定されたDOPエアロゾル(平均粒径0.27μm)の捕集効率が95%以上である多孔質体からなる。また、本発明のチップは、当該チップ用フィルター6をチップ本体3に装填したものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吸引装置、ピペット等に装着して使用するチップに装填するためのチップ用フィルター、及び該フィルターを用いたチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
血液等の体液や尿の検査においては、液体吸引装置のノズル部にチップを装着し、吸引によりチップ内に所定量の試液を吸引溜液し、この試液を吸引解除により試験分注プレートに分注し、更に、この分注試液に上記と同様にして試薬を分注している。上記試液や試薬の分注では、吸引装置のノズル部が試液や試薬等で付着汚損されないこと、更にクリーン室でない場合は、ノズルが空気中の塵等で付着汚損されないことが必要である。
【0003】
そこで、従来よりプラスチック焼結多孔質体を汚染通路に設けて、塵等を遮断するようにしていた。例えば、平均孔径3.0〜19.0μmのプラスチック焼結多孔質体をチップ本体に装填したものが知られており、粒径10μm以上のエアロゾルに対しては有効である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−148441号公報(USP5364595号)(第2頁、図1)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のプラスチック焼結多孔質体では、浮遊バクテリア等の微粒子菌(0.3μm)を遮蔽することができないものがほとんどである。そして、これを装填したピペットでは、バクテリア培養スープ等の反復分注において、バクテリア培養スープから遊離した浮遊バクテリア等が遮蔽できず、潜在的にサンプルとピペットをクロス汚染する可能性を有する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、サブミクロン粒子を遮蔽でき浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止し、高精度の定量分注を保証できるチップ用フィルターおよびチップを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、次の如き本発明により達成することができる。
即ち、本発明のチップ用フィルターは、JIS Z 8901の13種として規定されたDOP(ジオクチルフタレート)エアロゾル(平均粒径0.27μm)の捕集効率が95%以上である多孔質体からなることを特徴とする。本発明において、捕集効率等の物性は、具体的には実施例に記載の方法で測定される値である。
【0008】
一方、本発明のチップは、上記のチップ用フィルターをチップ本体に装填したことを特徴とする。
【0009】
〔作用効果〕
本発明のチップ用フィルターによると、DOPエアロゾルの捕集効率が95%以上であるため、サブミクロン粒子を遮蔽でき浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止し、高精度の定量分注を保証できる。
【0010】
一方、本発明のチップは、上記の如き作用効果を奏するチップ用フィルターをチップ本体に装填してあるため、サブミクロン粒子を遮蔽でき浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止し、高精度の定量分注を保証できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のチップ用フィルターを装填したチップの使用状態の一例を示す断面図である。
【0012】
本発明のチップ用フィルターは、DOPエアロゾル(平均粒径0.27μm)の捕集効率が95%以上である多孔質体からなることを特徴とするが、この多孔質体としては、単一層又は複数層で形成された多孔質体の何れでもよい。また、多孔質体としては、多孔質焼結体、繊維集合体、多孔質膜、連通気泡発泡体などが使用できるが、多孔質焼結体を主な材料として用いるのが好ましい。
【0013】
本発明では、チップ用フィルターとしての吸引作業性の観点から、樹脂製の多孔質焼結体と、孔径のより小さい多孔質膜とを積層した積層多孔質体が好ましい。その場合、積層する多孔質膜は、チップ用フィルター6の内部、上面、又は下面の少なくとも何れかに設ければよいが、吸引する液面に近い方がシール性が良い理由から、チップ用フィルター6の下面に設けるのがより好ましい。より具体的には、超高分子量ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンの粉末および繊維を原料とする焼結樹脂多孔質体に、サブミクロン粒子の捕集性能を向上させる多孔質膜を積層した積層多孔質体が好ましい。
【0014】
本発明のチップ用フィルター6を装填したチップを用いて、試液や試薬を分注するには、図1に示すように、吸引装置のノズルの口管部2に対し、チップ本体3を装着し、吸引装置のピストン1の作動により試液5等をチップ内に吸引していく。この場合、フィルター6が試液5のエアロゾル4の通過を阻止し、且つ浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止することができる。
【0015】
チップ用フィルターの形状は、図1に示すように、チップ本体3の内周面の形状に応じた形状が採用されるが、略円柱状の形状が一般的である。略円柱状のチップ用フィルター6は、チップ本体3への装填(嵌入)により、多少変形して、その際の弾性復元力によって、チップ本体3の内周面に固定することができる。上記多孔質体の外径(円柱状でない場合は最大部の外径)は5〜10mmが一般的であり、多孔質体の厚みは、後述するように通常0.5〜3mmの範囲内が好ましい。
【0016】
上記の積層多孔質体を製造するには、ポリオレフィン粉末、特に超高分子量ポリエチレン(粘度平均分子量50万〜1000万、好ましくは100万〜700万のもの)を金型に充填し、この粉末を所定の圧力で加圧し、次いで超高分子量ポリエチレンの融点以上の温度に維持された加熱炉で焼結した後、冷却して金型から取り出してブロック状多孔質体を得、このブロック状多孔質体をシート状に切削し、このシートにサブミクロン粒子の捕集効率95%以上の多孔質膜を熱融着加工し所定形状に打抜く方法を使用できる。
【0017】
また、超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、このポリエチレンの融点よりも低い温度で加熱した後、加圧することにより予備成形物を得、この予備成形物を減圧雰囲気中に置き該成形物内の空気を除去し、次いで前記ポリエチレンの融点以上に加熱された水蒸気中で焼結した後冷却することによりブロック状多孔質体を得、このブロック状多孔質体をシート状に切削し、このシートにサブミクロン粒子の捕集効率95%以上の多孔質膜を熱融着加工し所定形状に打抜く方法を使用できる。
【0018】
上記多孔質焼結体の平均孔径は、超高分子量ポリエチレン粉末の粒子径により調製できるが、例えば、30〜170μmの平均粒子径のものが使用できる。超高分子量ポリエチレンとしては、たとえば、商品名ハイゼックスミリオン(三井化学 (株)製)や商品名ホスタレンGUR(タイコナ社製)等の市販品などを入手可能である。
【0019】
焼結多孔質体を形成するための樹脂粉末としては、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、衛生性、無発塵性、耐放射線性、耐オートクレーブ性、機械的強度等からして超高分子量ポリエチレンが好適であるが、ポリプロピレン粉末の使用も可能である。
【0020】
上記多孔質体の厚みは、ピペットの形態や、分注しようとする試液や試薬に応じて設定されるが、通常、0.5〜5mm、好ましくは1.5〜3.5mmとされる。多孔質体に電子線照射により架橋密度を増大させて耐熱性の向上を図ることもできる。
【0021】
一方、多孔質膜の材質としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、その他の製膜可能な樹脂などが挙げられるが、フッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等があげられる。
【0022】
上記積層多孔質体のサブミクロン粒子捕集効率は、PTFE膜などの多孔質膜の平均孔径により調製でき、多孔質膜の平均孔径は0.1〜3.0μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましい。また、多孔質膜の厚みは、5〜30μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
【0023】
上記積層多孔質体のサブミクロン粒子捕集効率は95%以上で、好ましくは98.0〜99.99%とされる。また、積層多孔質体の通気性フラジールは、通常0.1〜20cm3 /cm2 ・sec、好ましくは1〜5cm3 /cm2 ・secとされる。0.1cm3 /cm2 ・sec未満では、上記分注時での吸引圧をかなり高くする必要があり吸引作業が困難になり、20cm3 /cm2 ・secを越えると試液等の完全な通過阻止が困難になるからである。
【0024】
一方、本発明のチップは、図1に示すように、以上のようなチップ用フィルター6をチップ本体3装填したものである。チップ本体3は、テーパ状(スポイド状)又はテーパ状部と直管部からなる形状が一般的である。チップ本体3は、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、衛生性、無発塵性、耐放射線性、耐オートクレーブ性、機械的強度等に優れた樹脂、例えばポリカーボネートの射出成形により製造できる。また、汎用のチップとして、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂なども使用できる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における物性の測定、評価などは下記のようにして行った。
【0026】
(1)平均孔径
水銀ポロシメータ(水銀圧入法)により測定した。
【0027】
(2)通気性フラジール
JIS L1096 8.27.1A 法により、通気度(単位:cm3 /c m2 ・sec)を測定した。
【0028】
(3)捕集効率
JIS Z 8901の13種として規定されたDOPエアロゾル(平均粒径0.27μm)を用い、JIS K0901−1981「6.2捕集率試験」に記載の方法に準拠して、捕集率測定装置を用いて5.3cm/secのろ過速度でろ過材を通過するようにして、捕集効率を測定した。
【0029】
(4)汚染評価
得られたフィルターを、96個の100μl用ポリプロピレン製ピペットチップにピンセットで装着し、バクテリア水溶液の反復分注評価を下記の要領で実施した。即ち、培地スープ(Difbo)に培養菌(単球菌 luteus)入れ108cfu/ml調整した水溶液をサンプル水溶液とした。つぎに、サンプル水溶液分注作業を500回反復した後、ピペット先端を無菌0.9%食塩水、1.5mlで洗浄し、その洗浄液をBHIアーガプレート上にプレーテイングしバクテリア数をカウントした。
【0030】
実施例1
粘度平均分子量450万、平均粒径120μmの超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、前記超高分子量ポリエチレンの融点よりもやや低い温度で6時間加熱し、この充填粉末を加圧して密度を調製し、次いで焼結した後、室温で徐冷して丸棒多孔質体を得た。これを切削して厚み3mm、通気量フラジール3.0cm3 /cm2 ・sec、気孔率30%、平均孔径35μm、捕集効率42%の超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得た。これに、日東電工社製、平均孔径3.0μm、気孔率82%、捕集効率98%のPTFE多孔質体NTF1133を熱ラミネートし、これを2.4mmφに打ち抜いてフィルターを作製した。
【0031】
実施例2
粘度平均分子量450万、平均粒径120μmの超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、前記超高分子量ポリエチレンの融点よりもやや低い温度で6時間加熱し、この充填粉末を加圧して密度を調製し、次いで焼結した後、室温で徐冷して丸棒多孔質体を得た。これを切削して厚み3mm、通気量フラジール3.0cm3 /cm2 ・sec、気孔率30%、平均孔径35μm、捕集効率42%の超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得た。これに、日東電工社製、平均孔径0.2μm、気孔率75%、捕集効率99.99%のPTFE多孔質体NTF1122を熱ラミネートし、これを2.4mmφに打ち抜いてフィルターを作製した。
【0032】
比較例1
粘度平均分子量450万、平均粒径120μmの超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、前記超高分子量ポリエチレンの融点よりもやや低い温度で6時間加熱し、この充填粉末を加圧して密度を調製し、次いで焼結した後、室温で徐冷して丸棒多孔質体を得た。これを切削して厚み3mm、通気量フラジール3.0cm3 /cm2 ・sec、気孔率30%、平均孔径35μm、捕集効率42%の超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得、これを2.4mmφに打ち抜いてフィルターを作製した。
【0033】
比較例2
粘度平均分子量450万、平均粒径60μmの超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、前記超高分子量ポリエチレンの融点よりもやや低い温度で6時間加熱し、この充填粉末を加圧して密度を調製し、次いで焼結した後、室温で徐冷して丸棒多孔質体を得た。これを切削して厚み5mm、通気量フラジール0.1cm3 /cm2 ・sec、気孔率28%、平均孔径18μm、捕集効率94%の超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得、これを2.4mmφに打ち抜いてフィルターを作製した。
【0034】
以上の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のチップ用フィルターを装填したチップの使用状態の一例を示す断面図
【符号の説明】
3 チップ本体
6 チップ用フィルター
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吸引装置、ピペット等に装着して使用するチップに装填するためのチップ用フィルター、及び該フィルターを用いたチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
血液等の体液や尿の検査においては、液体吸引装置のノズル部にチップを装着し、吸引によりチップ内に所定量の試液を吸引溜液し、この試液を吸引解除により試験分注プレートに分注し、更に、この分注試液に上記と同様にして試薬を分注している。上記試液や試薬の分注では、吸引装置のノズル部が試液や試薬等で付着汚損されないこと、更にクリーン室でない場合は、ノズルが空気中の塵等で付着汚損されないことが必要である。
【0003】
そこで、従来よりプラスチック焼結多孔質体を汚染通路に設けて、塵等を遮断するようにしていた。例えば、平均孔径3.0〜19.0μmのプラスチック焼結多孔質体をチップ本体に装填したものが知られており、粒径10μm以上のエアロゾルに対しては有効である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−148441号公報(USP5364595号)(第2頁、図1)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のプラスチック焼結多孔質体では、浮遊バクテリア等の微粒子菌(0.3μm)を遮蔽することができないものがほとんどである。そして、これを装填したピペットでは、バクテリア培養スープ等の反復分注において、バクテリア培養スープから遊離した浮遊バクテリア等が遮蔽できず、潜在的にサンプルとピペットをクロス汚染する可能性を有する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、サブミクロン粒子を遮蔽でき浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止し、高精度の定量分注を保証できるチップ用フィルターおよびチップを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、次の如き本発明により達成することができる。
即ち、本発明のチップ用フィルターは、JIS Z 8901の13種として規定されたDOP(ジオクチルフタレート)エアロゾル(平均粒径0.27μm)の捕集効率が95%以上である多孔質体からなることを特徴とする。本発明において、捕集効率等の物性は、具体的には実施例に記載の方法で測定される値である。
【0008】
一方、本発明のチップは、上記のチップ用フィルターをチップ本体に装填したことを特徴とする。
【0009】
〔作用効果〕
本発明のチップ用フィルターによると、DOPエアロゾルの捕集効率が95%以上であるため、サブミクロン粒子を遮蔽でき浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止し、高精度の定量分注を保証できる。
【0010】
一方、本発明のチップは、上記の如き作用効果を奏するチップ用フィルターをチップ本体に装填してあるため、サブミクロン粒子を遮蔽でき浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止し、高精度の定量分注を保証できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のチップ用フィルターを装填したチップの使用状態の一例を示す断面図である。
【0012】
本発明のチップ用フィルターは、DOPエアロゾル(平均粒径0.27μm)の捕集効率が95%以上である多孔質体からなることを特徴とするが、この多孔質体としては、単一層又は複数層で形成された多孔質体の何れでもよい。また、多孔質体としては、多孔質焼結体、繊維集合体、多孔質膜、連通気泡発泡体などが使用できるが、多孔質焼結体を主な材料として用いるのが好ましい。
【0013】
本発明では、チップ用フィルターとしての吸引作業性の観点から、樹脂製の多孔質焼結体と、孔径のより小さい多孔質膜とを積層した積層多孔質体が好ましい。その場合、積層する多孔質膜は、チップ用フィルター6の内部、上面、又は下面の少なくとも何れかに設ければよいが、吸引する液面に近い方がシール性が良い理由から、チップ用フィルター6の下面に設けるのがより好ましい。より具体的には、超高分子量ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンの粉末および繊維を原料とする焼結樹脂多孔質体に、サブミクロン粒子の捕集性能を向上させる多孔質膜を積層した積層多孔質体が好ましい。
【0014】
本発明のチップ用フィルター6を装填したチップを用いて、試液や試薬を分注するには、図1に示すように、吸引装置のノズルの口管部2に対し、チップ本体3を装着し、吸引装置のピストン1の作動により試液5等をチップ内に吸引していく。この場合、フィルター6が試液5のエアロゾル4の通過を阻止し、且つ浮遊バクテリア等のクロス汚染を防止することができる。
【0015】
チップ用フィルターの形状は、図1に示すように、チップ本体3の内周面の形状に応じた形状が採用されるが、略円柱状の形状が一般的である。略円柱状のチップ用フィルター6は、チップ本体3への装填(嵌入)により、多少変形して、その際の弾性復元力によって、チップ本体3の内周面に固定することができる。上記多孔質体の外径(円柱状でない場合は最大部の外径)は5〜10mmが一般的であり、多孔質体の厚みは、後述するように通常0.5〜3mmの範囲内が好ましい。
【0016】
上記の積層多孔質体を製造するには、ポリオレフィン粉末、特に超高分子量ポリエチレン(粘度平均分子量50万〜1000万、好ましくは100万〜700万のもの)を金型に充填し、この粉末を所定の圧力で加圧し、次いで超高分子量ポリエチレンの融点以上の温度に維持された加熱炉で焼結した後、冷却して金型から取り出してブロック状多孔質体を得、このブロック状多孔質体をシート状に切削し、このシートにサブミクロン粒子の捕集効率95%以上の多孔質膜を熱融着加工し所定形状に打抜く方法を使用できる。
【0017】
また、超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、このポリエチレンの融点よりも低い温度で加熱した後、加圧することにより予備成形物を得、この予備成形物を減圧雰囲気中に置き該成形物内の空気を除去し、次いで前記ポリエチレンの融点以上に加熱された水蒸気中で焼結した後冷却することによりブロック状多孔質体を得、このブロック状多孔質体をシート状に切削し、このシートにサブミクロン粒子の捕集効率95%以上の多孔質膜を熱融着加工し所定形状に打抜く方法を使用できる。
【0018】
上記多孔質焼結体の平均孔径は、超高分子量ポリエチレン粉末の粒子径により調製できるが、例えば、30〜170μmの平均粒子径のものが使用できる。超高分子量ポリエチレンとしては、たとえば、商品名ハイゼックスミリオン(三井化学 (株)製)や商品名ホスタレンGUR(タイコナ社製)等の市販品などを入手可能である。
【0019】
焼結多孔質体を形成するための樹脂粉末としては、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、衛生性、無発塵性、耐放射線性、耐オートクレーブ性、機械的強度等からして超高分子量ポリエチレンが好適であるが、ポリプロピレン粉末の使用も可能である。
【0020】
上記多孔質体の厚みは、ピペットの形態や、分注しようとする試液や試薬に応じて設定されるが、通常、0.5〜5mm、好ましくは1.5〜3.5mmとされる。多孔質体に電子線照射により架橋密度を増大させて耐熱性の向上を図ることもできる。
【0021】
一方、多孔質膜の材質としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、その他の製膜可能な樹脂などが挙げられるが、フッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等があげられる。
【0022】
上記積層多孔質体のサブミクロン粒子捕集効率は、PTFE膜などの多孔質膜の平均孔径により調製でき、多孔質膜の平均孔径は0.1〜3.0μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましい。また、多孔質膜の厚みは、5〜30μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
【0023】
上記積層多孔質体のサブミクロン粒子捕集効率は95%以上で、好ましくは98.0〜99.99%とされる。また、積層多孔質体の通気性フラジールは、通常0.1〜20cm3 /cm2 ・sec、好ましくは1〜5cm3 /cm2 ・secとされる。0.1cm3 /cm2 ・sec未満では、上記分注時での吸引圧をかなり高くする必要があり吸引作業が困難になり、20cm3 /cm2 ・secを越えると試液等の完全な通過阻止が困難になるからである。
【0024】
一方、本発明のチップは、図1に示すように、以上のようなチップ用フィルター6をチップ本体3装填したものである。チップ本体3は、テーパ状(スポイド状)又はテーパ状部と直管部からなる形状が一般的である。チップ本体3は、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、衛生性、無発塵性、耐放射線性、耐オートクレーブ性、機械的強度等に優れた樹脂、例えばポリカーボネートの射出成形により製造できる。また、汎用のチップとして、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂なども使用できる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における物性の測定、評価などは下記のようにして行った。
【0026】
(1)平均孔径
水銀ポロシメータ(水銀圧入法)により測定した。
【0027】
(2)通気性フラジール
JIS L1096 8.27.1A 法により、通気度(単位:cm3 /c m2 ・sec)を測定した。
【0028】
(3)捕集効率
JIS Z 8901の13種として規定されたDOPエアロゾル(平均粒径0.27μm)を用い、JIS K0901−1981「6.2捕集率試験」に記載の方法に準拠して、捕集率測定装置を用いて5.3cm/secのろ過速度でろ過材を通過するようにして、捕集効率を測定した。
【0029】
(4)汚染評価
得られたフィルターを、96個の100μl用ポリプロピレン製ピペットチップにピンセットで装着し、バクテリア水溶液の反復分注評価を下記の要領で実施した。即ち、培地スープ(Difbo)に培養菌(単球菌 luteus)入れ108cfu/ml調整した水溶液をサンプル水溶液とした。つぎに、サンプル水溶液分注作業を500回反復した後、ピペット先端を無菌0.9%食塩水、1.5mlで洗浄し、その洗浄液をBHIアーガプレート上にプレーテイングしバクテリア数をカウントした。
【0030】
実施例1
粘度平均分子量450万、平均粒径120μmの超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、前記超高分子量ポリエチレンの融点よりもやや低い温度で6時間加熱し、この充填粉末を加圧して密度を調製し、次いで焼結した後、室温で徐冷して丸棒多孔質体を得た。これを切削して厚み3mm、通気量フラジール3.0cm3 /cm2 ・sec、気孔率30%、平均孔径35μm、捕集効率42%の超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得た。これに、日東電工社製、平均孔径3.0μm、気孔率82%、捕集効率98%のPTFE多孔質体NTF1133を熱ラミネートし、これを2.4mmφに打ち抜いてフィルターを作製した。
【0031】
実施例2
粘度平均分子量450万、平均粒径120μmの超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、前記超高分子量ポリエチレンの融点よりもやや低い温度で6時間加熱し、この充填粉末を加圧して密度を調製し、次いで焼結した後、室温で徐冷して丸棒多孔質体を得た。これを切削して厚み3mm、通気量フラジール3.0cm3 /cm2 ・sec、気孔率30%、平均孔径35μm、捕集効率42%の超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得た。これに、日東電工社製、平均孔径0.2μm、気孔率75%、捕集効率99.99%のPTFE多孔質体NTF1122を熱ラミネートし、これを2.4mmφに打ち抜いてフィルターを作製した。
【0032】
比較例1
粘度平均分子量450万、平均粒径120μmの超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、前記超高分子量ポリエチレンの融点よりもやや低い温度で6時間加熱し、この充填粉末を加圧して密度を調製し、次いで焼結した後、室温で徐冷して丸棒多孔質体を得た。これを切削して厚み3mm、通気量フラジール3.0cm3 /cm2 ・sec、気孔率30%、平均孔径35μm、捕集効率42%の超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得、これを2.4mmφに打ち抜いてフィルターを作製した。
【0033】
比較例2
粘度平均分子量450万、平均粒径60μmの超高分子量ポリエチレンを金型に充填し、前記超高分子量ポリエチレンの融点よりもやや低い温度で6時間加熱し、この充填粉末を加圧して密度を調製し、次いで焼結した後、室温で徐冷して丸棒多孔質体を得た。これを切削して厚み5mm、通気量フラジール0.1cm3 /cm2 ・sec、気孔率28%、平均孔径18μm、捕集効率94%の超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得、これを2.4mmφに打ち抜いてフィルターを作製した。
【0034】
以上の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のチップ用フィルターを装填したチップの使用状態の一例を示す断面図
【符号の説明】
3 チップ本体
6 チップ用フィルター
Claims (2)
- JIS Z 8901の13種として規定されたDOPエアロゾル(平均粒径0.27μm)の捕集効率が95%以上である多孔質体からなるチップ用フィルター。
- 請求項1記載のチップ用フィルターをチップ本体に装填したチップ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2002-10-29 JP JP2002314039A patent/JP2004148158A/ja active Pending
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