JP2004146358A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性有機重合体の微粒子を電極触媒とし、高出力と高電圧を有する燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明によれば、電解質膜を挟んでカソードとアノードとを配設し、このカソードに酸化剤を気体で供給し、アノードに還元剤を気体で供給する燃料電池において、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体の粒径10μm以下の微粒子を電極触媒として少なくとも一方の電極に有せしめてなることを特徴とする燃料電池が提供される。
【選択図】なし
【解決手段】本発明によれば、電解質膜を挟んでカソードとアノードとを配設し、このカソードに酸化剤を気体で供給し、アノードに還元剤を気体で供給する燃料電池において、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体の粒径10μm以下の微粒子を電極触媒として少なくとも一方の電極に有せしめてなることを特徴とする燃料電池が提供される。
【選択図】なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体を電極触媒としてカソードとアノードの少なくとも一方に有せしめてなる、高い出力を有する燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体高分子電解質を挟んでアノードとカソードとを配設して固体電解質/電極構造を構成し、これをセパレータにより挟んで単位セルを構成し、この単位セルを複数積層し、電気的に直列に接続してなる燃料電池が開発されている。この燃料電池は、クリーンで且つ高効率という特徴から、種々の用途、特に、電気自動車用電源や家庭用分散型電源等として注目されている。
【0003】
より詳細に説明すれば、このような固体高分子型燃料電池は、その基本構成として、プロトン伝導性イオン交換膜を挟んで、それぞれ電極触媒を有するアノードとカソードの一対の電極を配設してなり、このアノードの表面に水素等の還元剤(燃料)を接触させ、カソードの表面に酸化剤(酸素)を接触させて、電気化学反応を起こさせ、この反応を利用して、上記一対の電極の間から電気エネルギーを取り出すものである。上記プロトン伝導性イオン交換膜としては、フッ素樹脂系イオン交換膜が基本特性にすぐれているものとして、従来、よく知られており、また、アノードとカソードとしては、電極触媒として白金を担持させたカーボンシート等が広く知られている。
【0004】
一方、例えば、ポリアセチレンやポリピロール、ポリアニリン等に代表されるように、ドーパントを有し、酸化還元機能(レドックス能)を備えた導電性有機重合体は、リチウム二次電池等における電極活物質として注目されていると共に(特許文献1参照)、速やかな放電機能を有する導電性高分子キャパシタとしての用途も提案されている(非特許文献1及び2参照)。
【0005】
しかしながら、上述したような導電性有機重合体は、現在、実用化されている電極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2 )やリチウムのような無機酸化物や金属材料に比べてエネルギー密度が低い。そこで、このような導電性有機重合体の低いエネルギー密度を補うために、導電性有機重合体を電極触媒として用い、この導電性有機重合体が接する電解液中に酸化剤や還元剤を溶解させて、電池を燃料電池のように使用する試みが提案されている(特許文献3及び4参照)。
【0006】
しかし、これらの電池によれば、酸化剤と還元剤が共に溶液として供給されるので、電極への活物質の拡散が遅く、その放電特性は数mA/cm2 程度であって、高い出力電圧を得ることができないほか、電池システムも複雑であり、実用的ではない。
【0007】
他方、上述したように、従来の固体高分子型燃料電池は、電極触媒として白金を用いるので、コストが高く、また、酸性の液体の溶出や、アノードでの一酸化炭素被毒等、実用化に重要な障害となっており、しかも、白金以外に実用的な電極触媒は、未だ見出されていない。
【0008】
そこで、本発明者らは、既に、導電性有機重合体を電極触媒として用いた固体高分子型燃料電池を提案しているが(特許文献5参照)、しかし、この燃料電池においては、導電性有機重合体を数十μmという大きい粒径を有する粒子のまま、電極触媒として用いるので、これと併用する電極触媒である無機酸化還元触媒や、更には、プロトン交換性樹脂、還元剤(水素ガス)や酸化剤(酸素や空気)等との接触面積が十分に大きくはないので、導電性有機重合体の酸化還元反応(レドックス反応)に基づく電気エネルギーを必ずしも有効に取り出すことができない憾みがある。
【0009】
【特許文献1】特許第1845557号明細書
【非特許文献1】第39回電池討論会予稿集第173頁(1998年)
【非特許文献2】電気化学会第67回大会講演要旨集第147頁(2000年)
【特許文献3】特開昭59−60967号公報
【特許文献4】特開昭61−124070号公報)
【特許文献5】国際出願公開公報WO01/43215A1
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の燃料電池における上述した問題を解決するためになされたものであって、導電性有機重合体の微粒子を電極触媒とし、高出力と高電圧を有する燃料電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、電解質膜を挟んでカソードとアノードとを配設し、このカソードに酸化剤を気体で供給し、アノードに還元剤を気体で供給する燃料電池において、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体の平均粒径10μm以下の微粒子を電極触媒として少なくとも一方の電極に有せしめてなることを特徴とする燃料電池が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、カソードとアノードの少なくとも一方の電極に、酸化還元機能(レドックス能)を備え、好ましくは、ドーパントを有する、平均粒径10μm以下の導電性有機重合体の微粒子を電極触媒として有せしめる。
【0013】
このような導電性有機重合体としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリ(イソキノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等を挙げることができる。これらの導電性有機重合体は、種々の置換基を有していてもよい。このような置換基の具体例として、例えば、アルキル基、水酸基、アルコキシル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホン酸基、ジアルキルアミノ基等を挙げることができる。これらの置換基は、導電性有機重合体の酸化還元電位を調整するのに有用である。
【0014】
また、上記ドーパントは、一般に、プロトン酸である。このプロトン酸としては、塩酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、ホウフッ化水素酸等の無機酸のほか、種々の有機酸を挙げることができる。このような有機酸は、脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、脂環式等の一又は多塩基酸であってよく、例えば、酢酸、酒石酸、安息香酸等、種々の有機カルボン酸を挙げることができる。
【0015】
しかし、本発明によれば、プロトン酸は、スルホン酸基を有するものが好ましく、例えば、ポリビニルスルホン酸、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂、ナフトールスルホン酸ノボラック樹脂等のようなイオン性のポリマースルホン酸や、また、ドデシルベンゼンスルホン酸等の低分子量有機スルホン酸を挙げることができるが、なかでも、前者のようなイオン性のポリマー、特に、ポリマースルホン酸であることが好ましい。ここに、ポリマースルホン酸とは、分子中にスルホン酸基を有するポリマーをいうものとする。
【0016】
しかし、本発明においては、スルホン酸基を分子中に有するスルホン化ポリアニリンのような自己ドープ型の導電性有機重合体も、ドーパントを有する導電性有機重合体に含めることとする。
【0017】
本発明においては、導電性有機重合体としては、水素ガスから生成するプロトンを容易に移動させるために、酸化反応においてプロトンを放出し、還元反応においてプロトンを消費するものが好ましく、このような導電性有機重合体として、上述したなかでも、特に、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリインドール、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル等のように、分子内に窒素原子を有する導電性有機重合体が好ましく用いられる。
【0018】
本発明においては、カソードとアノードの両方に同じ導電性有機重合体を電極触媒として有せしめてもよく、相互に相違する導電性有機重合体を電極触媒として有せしめてもよい。しかし、本発明によれば、より高い電圧を得るために、カソードにはp型の導電性有機重合体を用い、アノードにはn型の導電性有機重合体を用いるのが好ましい。ここに、前述した導電性有機重合体のうち、p型のものは、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリインドール及びポリ−1,5−ジアミノアントラキノンであり、n型のものは、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリピリジン、ポリキノキサリン及びポリフェニルキノキサリンである。
【0019】
一般に、ある導電性有機重合体がp型とn型のいずれであるかを判定するには、既に、知られているように、例えば、導電性有機重合体の粉末をディスクに成形し、その2か所に電極を取付け、この電極に温度差を与えたときの低温側の電極の電位の正負を調べればよい。即ち、低温側の電極に正の電位が現れたとき、その導電性有機重合体はp型であり、反対に、低温側の電極に負の電位が現れたとき、その導電性有機重合体はn型である。
【0020】
このような導電性有機重合体は、一般的な化学酸化重合法にて合成すれば、その平均粒径は、通常、数十μm程度である。しかし、本発明によれば、このような導電性有機重合体を微粒子にして電極触媒として用いられる。本発明において、導電性有機重合体の粒径は、小さい程好ましく、通常、平均粒径10μm以下であればよいが、平均粒径1nm〜10μmの微粒子として用いることが好ましく、特に、平均粒径1nm〜1μmの微粒子として電極触媒に用いることが好ましい。本発明において、このような導電性有機重合体の微粒子の平均粒径は、液相沈降法によるものとする。
【0021】
上述したような導電性有機重合体は、既に知られている方法によって得ることができる。ポリマースルホン酸をドーパントとして有する導電性ポリアニリンを例にとって説明する。
【0022】
特開平3−28229号公報に記載の方法に従って、プロトン酸の存在下に酸化剤にてアニリンを化学酸化重合することによって、上記プロトン酸によってドープされた導電性ポリアニリン(導電性ポリアニリン組成物)粉末を得ることができ、これを適宜のアルカリ水溶液、例えば、アンモニア水中で脱ドープし、得られた粉末を濾過、乾燥すれば、脱ドープ状態で有機溶剤に可溶性のポリアニリン、即ち、酸化脱ドープ状態のポリアニリンの粉末を得ることができる。
【0023】
より詳細には、適宜のプロトン酸、例えば、塩酸の存在下に適宜の溶剤中、例えば、水やメタノール中にて、アニリンにペルオキソ二硫酸アンモニウムのような酸化剤を反応させ、析出した粉末を濾取することによって、上記プロトン酸でドープされた導電性ポリアニリン組成物を得る。次いで、この粉末を、例えば、アンモニアのようなアルカリ物質の水溶液に加えて、導電性ポリアニリン組成物を中和(即ち、脱ドープ)することによって、一般式(I)
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、m及びnはそれぞれ繰り返し単位中のキノンジイミン構造単位及びフェニレンジアミン構造単位のモル分率を示し、0<m≦1、0≦n<1、m+n=1である。)
で表わされる繰返し単位からなる酸化脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得る。
【0026】
このようにして得られる脱ドープ状態のポリアニリンは、高分子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解する。通常、N−メチルピロリドン中、30℃で測定した極限粘度〔η〕が0.40dL/g以上を有し、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等の有機溶剤に溶解する。このような有機溶剤への脱ドープ状態のポリアニリンの溶解度は、その平均分子量や溶剤にもよるが、通常、ポリアニリンの0.5〜100%が溶解し、1〜30重量%濃度の溶液を得ることができる。特に、この脱ドープ状態のポリアニリンは、N−メチル−2−ピロリドンに高い溶解性を示し、通常、ポリアニリンの20〜100%が溶解し、3〜30重量%溶液を得ることができる。
【0027】
また、上記脱ドープ状態のポリアニリンにおいて、m及びnの値は、ポリアニリンを酸化又は還元することによって調整することができる。即ち、還元することによって、mを低減させ、nを増大させることができる。逆に、酸化すれば、mを増大させ、nを低減させることができる。ポリアニリンの還元によって、ポリアニリン中のキノンジイミン構造単位が減少すると、ポリアニリンの有機溶剤への溶解性が高められる。また、還元前に比べて、溶液の粘度は低下する。このような溶剤可溶性のポリアニリンの還元のためには、例えば、N−メチル−2−ピロリドンに溶解するが、N−メチル−2−ピロリドンを還元しない点から、フェニルヒドラジンが最も好ましく用いられる。
【0028】
他方、溶剤可溶性ポリアニリンの酸化のために用いられる酸化剤は、フェニレンジアミン構造単位を酸化し得るものであれば、特に、限定されるものではないが、例えば、穏和な酸化銀が好ましく用いられる。必要に応じて、過マンガン酸カリウムや重クロム酸カリウム等も用いることができる。
【0029】
次いで、強酸性型カチオン交換樹脂にて酸型としたポリマースルホン酸水溶液中に上記酸化脱ドープ状態のポリアニリンの粉末を投入し、数時間加熱すれば、上記ポリアニリンにポリマースルホン酸をドープすることができ、この後、このドープ状態のポリアニリン粉末を濾過、洗浄した後、真空乾燥することによって、ポリマースルホン酸をドーパントとする導電性ポリアニリン粉末を得ることができる。このようにして得られる導電性ポリアニリン粉末は、その平均粒径が7〜25μm程度である。
【0030】
このような導電性ポリアニリン粉末を濃硫酸に溶解させ、得られた溶液を、例えば、100重量倍の蒸留水中にゆっくりと滴下して、再沈殿させると、平均粒径0.1〜2μm程度の微粒子を得ることができる。これを濾取し、乾燥すれば、本発明において電極触媒として好ましく用いることができる。
【0031】
しかし、本発明においては、上述したようにして得られる導電性ポリアニリン粉末を微粒子化するための手段は、特に限定されるものではなく、例えば、市販されている種々の湿式粉砕装置を用いることによっても、本発明において用いるに好適な微粒子ポリアニリンを得ることができる。
【0032】
更に、本発明によれば、一方の電極にのみ、導電性有機重合体を担持させた導電性粉体を電極触媒として有せしめ、他方の電極には、従来のように、白金触媒を電極触媒として有せしめてもよい。また、本発明によれば、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒と担持させた導電性粉体を電極触媒としてカソードとアノードの少なくとも一方の電極に有せしめてもよい。この場合、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒とを共に導電性粉体に担持させて、これを電極触媒として用いてもよく、また、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒を別々に導電性粉体に担持させ、これらの混合物を電極触媒として用いてもよい。
【0033】
このように、微粒子化した導電性有機重合体を電極触媒として用いるに際して、その電極への担持量は、特に、限定されるものではないが、電極面積当り、通常、0.5〜100mg/cm2 の範囲である。
【0034】
また、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒を担持させた導電性粉体を少なくとも一方の電極に電極触媒として有せしめる場合、上記無機酸化還元触媒としては、接触水素添加触媒として、又は酸素自動酸化触媒として知られている白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、ニッケル、鉄、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又はその酸化物等を用いることができる。このような無機酸化還元触媒は、微粉末としてそのまま、導電性有機重合体粉末と混合してもよく、また、上記遷移金属の水溶性塩の水溶液に導電性有機重合体粉末を分散させ、攪拌、混合した後、還元又は酸化処理を行なって、上記遷移金属塩を金属又は酸化物に変換してもよい。
【0035】
導電性有機重合体と無機酸化還元触媒を担持させた導電性粉体を電極触媒として用いる場合、無機酸化還元触媒は、導電性有機重合体100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部の範囲で用いられる。また、電極への無機酸化還元触媒の担持量は、電極面積当たり、通常、0.001〜5mg/cm2 の範囲であるが、好ましくは、0.005〜1mg/cm2 の範囲であり、特に、好ましくは、0.01〜0.5mg/cm2 の範囲である。
【0036】
このように、本発明に従って、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒とを共に、又は別々に担持させた導電性粉体を電極触媒として電極に有せしめることによって、導電性有機重合体のみを導電性粉体に担持させ、これを電極触媒として用いた場合に比べて、高出力の燃料電池を得ることができる。
【0037】
次に、本発明による燃料電池において用いる電極の製造について説明する。前述したようにして得られた導電性有機重合体の微粒子を結着剤(例えば、ナフィオン(登録商標)のようなデュポン社製パーフルオロスルホン酸樹脂溶液)を用いてペーストとし、このペーストを導電性多孔質基材(例えば、東レ(株)製カーボンペーパー)上に塗布し、乾燥して、電極を調製し、次いで、必要に応じて、この電極を電気化学的に酸化(又は還元)して、カソード(又はアノード)を得る。
【0038】
上記電極を酸化(又は還元)する方法は、特に限定されるものではないが、しかし、好ましい一例を挙げれば、電極を20重量%濃度のフェノールスルホン酸ノボラック樹脂の水溶液に浸漬し、適宜の参照電極を用いてサイクリックボルタモグラムを測定し、酸化(又は還元)ピークが観察された電位にて電極を電気化学的に酸化(又は還元)するのが簡便である。
【0039】
このようにして得られたカソードとアノードとで電解質膜(即ち、プロトン交換膜)を挟み、必要に応じて、ホットプレス等により一体成形して、燃料電池用の電極−プロトン交換膜接合体を得る。
【0040】
本発明による燃料電池においては、電解質膜には、従来の固体高分子膜型電池に用いられているようなパーフルオロスルホン酸樹脂からなる陽イオン交換膜、例えば、ナフィオン(登録商標)が好適に用いられるが、しかし、これに限定されるものではない。従って、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を含浸させたものや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜や不織布に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を担持させたものでもよい。
【0041】
本発明による燃料電池においては、カソードに酸化剤が気体で供給され、アノードに還元剤が気体で供給される。ここに、本発明によれば、好ましくは、酸化剤として酸素ガスや空気が用いられると共に、還元剤として水素ガスが用いられる。また、還元剤として、メタノールやジメチルエーテル等を用いることもできる。
【0042】
本発明による燃料電池は、40℃以上の温度で作動される。用いる導電性有機重合体や電解質膜によって適宜に選ばれるが、50〜120℃の範囲が好ましく、特に、60〜100℃の範囲が好ましい。作動温度が低すぎるときは、導電性有機重合体の反応速度が遅いために、高い出力を得ることができず、他方、作動温度が高すぎるときは用いる材料の劣化や剥離等が起こるおそれがある。
【0043】
【実施例】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
参考例1
(アニリンの酸化重合による導電性ポリアニリン組成物の調製)
攪拌装置、温度計及び直管アダプターを備えた10L容量セパラブルフラスコに蒸留水6000g、36%塩酸360mL及びアニリン400g(4.295モル)をこの順序にて仕込み、アニリンを溶解させた。別に、氷水にて冷却しながら、ビーカー中の蒸留水1493gに97%濃硫酸434g(4.295モル)を加え、混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を上記セパラブルフラスコに加え、フラスコ全体を低温恒温槽にて−4℃まで冷却した。
【0045】
次に、ビーカー中にて蒸留水2293gにペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モル)を加え、溶解させて、酸化剤水溶液を調製した。
【0046】
フラスコ全体を低温恒温槽で冷却して、反応混合物の温度を−3℃以下に保持しつつ、攪拌下にアニリン塩の酸性水溶液に、チュービングポンプを用いて、直管アダプターから上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を1mL/分以下の割合にて徐々に滴下した。最初、無色透明の溶液は、重合の進行に伴って緑青色から黒緑色となり、次いで、黒緑色の粉末が析出した。
【0047】
この粉末析出時に反応混合物において温度の上昇がみられるが、この場合にも、高分子量のポリアニリンを得るためには、反応系内の温度を0℃以下、好ましくは、−3℃以下に抑えることが肝要である。粉末析出後は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下速度を例えば8mL/分程度とやや速くしてもよい。しかし、この場合にも、反応混合物の温度をモニターしつつ、温度を−3℃以下に保持するように、滴下速度を調整することが必要である。かくして、7時間を要して、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下を終了した後、更に1時間、−3℃以下の温度にて攪拌を続けた。
【0048】
得られた粉末を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、黒緑色の導電性ポリアニリン組成物の粉末430gを得た。これを直径13mm、厚さ700μmのディスクに加圧成形し、ファン・デル・ポー法によって、その電導度を測定したところ、14S/cmであった。
【0049】
(導電性ポリアニリン組成物の脱ドーピングによる有機溶剤に可溶性のポリアニリン(酸化脱ドープ型のポリアニリン)の製造)
上記ドープされている導電性ポリアニリン組成物の粉末350gを2Nアンモニア水4L中に加え、オートホモミキサーにて回転数5000rpmにて5時間攪拌した。混合物は、黒緑色から青紫色に変化した。
【0050】
ブフナー漏斗にて粉末を濾別し、ビーカー中にて攪拌しながら、蒸留水にて濾液が中性になるまで繰り返して洗浄し、続いて、濾液が無色になるまでアセトンにて洗浄した。この後、粉末を室温にて10時間真空乾燥して、黒褐色の脱ドーピングしたポリアニリン(酸化脱ドープ型のポリアニリン)の粉末280gを得た。この酸化脱ドープ状態のポリアニリンの平均粒径は20μmであった。
【0051】
このポリアニリンはN−メチル−2−ピロリドンに可溶性であって、溶解度は同溶剤100gに対して8g(7.4%)であった。また、これを溶剤として30℃で測定した極限粘度〔η〕は1.23dL/gであった。
【0052】
このポリアニリンは、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドには1%以下の溶解度であった。テトラヒドロフラン、ピリジン、80%酢酸水溶液、60%ギ酸水溶液及びアセトニトリルには実質的に溶解しなかった。
【0053】
更に、上記酸化脱ドープ型の有機溶剤に可溶性のポリアニリンについて、N−メチル−2−ピロリドン用のGPCカラムを用いて、GPC測定を行なった結果、数平均分子量23000、重量平均分子量160000(いずれも、ポリスチレン換算)であった。
【0054】
実施例1
上記参考例1で得た平均粒径20μmの酸化脱ドープ型のポリアニリンを純度97%の濃硫酸中に加え、攪拌して、溶解させた。このようにして得られた溶液を100重量倍の蒸留水中に滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下して、ポリアニリンを再沈殿させた。このポリアニリンを吸引濾過し、室温で3日間乾燥させて、微粒子ポリアニリンを得た。この微粒子ポリアニリンの平均粒径を液相沈降法で測定したところ、0.5μmであった。
【0055】
この微粒子ポリアニリン粉末720mgと導電性カーボンブラック粉末(アクゾ社製ケッチェンブラックEC)80mgを5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製)16gに加え、攪拌して、ペーストとした。このペーストを5.8cm角のカーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−90、膜厚260μm)上に塗布し、80℃で60分間加熱、乾燥させて、電極を得た。
【0056】
フェノールスルホン酸ノボラック樹脂水溶液(小西化学工業(株)製、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム標準のGPCによる樹脂の重量平均分子量22000)を固形分濃度20重量%に調整した後、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂水溶液中に上記電極を浸漬した。飽和カロメル電極(SCE)を参照電極として用い、直径0.5mmの白金線を対極として、北斗電工(株)製ポテンショスタット/ガルバノスタット(HA−501)及びファンクション・ジェネレータ(HB−105)を用いて、電位範囲−0.2〜0.6V vs. SCE、掃引速度20mV/秒の条件下にサイクリックボルタモグラムを得た。ポリアニリンの酸化ピークが0.5V vs. SCEに、また、ポリアニリンの還元ピークが−0.1V vs. SCEに観察された。
【0057】
そこで、ポテンショスタットの電位を0.5Vに固定して、上記電極を電気化学的に酸化して、カソードを調製し、また、ポテンショスタットの電位を−0.1Vに固定して、上記電極を電気化学的に還元して、アノードを調製した。
【0058】
このようにして調製したカソードとアノードとの間に酸型ナフィオン膜(デュポン社製ナフィオン(登録商標)117)をプロトン交換膜として置き、金型を用いて、温度130℃、圧力3MPaの条件下、ホットプレスにて電極/プロトン交換膜接合体を調製し、試験用の単層の燃料電池セルを組み立てた。
【0059】
この燃料電池セルを燃料電池評価装置(東陽テクニカ(株)製)に組み込み、セル温度70℃とし、加湿器温度70℃で酸素ガスを500mL/分の割合でカソードに供給すると共に、加湿器温度80℃で水素ガスを1000mL/分の割合でアノードに供給した。そこで、先ず、電流を流さずに、起電力(開路電圧)のみを測定したところ、0.69Vであった。次に、燃料電池に負荷を加えたところ、電圧0.4Vのとき、2.55Aの電流を得た。
【0060】
比較例1
前記参考例1で得た平均粒径20μmの酸化脱ドープ型のポリアニリンをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして、カソードとアノードを調製し、試験用の単層の燃料電池セルを組み立て、その特性を評価したところ、回路電圧は0.69Vであり、燃料電池セルに負荷を加えたとき、電圧0.4Vで電流0.85Aを得た。
【0061】
実施例2
実施例1と同様にして、得られた微粒子ポリアニリンを吸引濾過し、真空乾燥機中、40℃で2時間乾燥させて、微粒子ポリアニリンを得た。この微粒子ポリアニリンは、乾燥中に再凝集したためとみられるが、その平均粒径は、液相沈降法で測定したところ、6μmであった。
【0062】
このポリアニリンを用いた以外は、実施例1と同様にして、カソードとアノードを調製し、試験用の単層の燃料電池セルを組み立て、その特性を評価したところ、回路電圧は0.69Vであり、燃料電池セルに負荷を加えたとき、電圧0.4Vで電流1.28Aを得た。
【0063】
実施例3
実施例1と同じ平均粒径0.5μmの微粒子ポリアニリン粉末720mgと白金20重量%を担持させたカーボンブラック(米国エレクトロケム社製EC−20−PTC)80mgを5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製)174gに加え、攪拌して、ペーストとした。この後、実施例1と同様にして、カソードとアノードを調製した。白金の担持量(計算値)は、電極面積当たり、0.10mg/cm2 であった。
【0064】
上記カソードとアノードを用いて、実施例1と同様にして試験用の単層の燃料電池セルを組み立て、その特性を評価したところ、回路電圧は0.69Vであり、燃料電池セルに負荷を加えたとき、電圧0.4Vで電流12.7Aを得た。このように電流値が大幅に増加した理由は、水素又は酸化ガスに対する白金の触媒作用によって、導電性有機重合体へのプロトン又は酸素イオンの供給量が大幅に増加したことにあるとみられる。
【0065】
実施例4
前記参考例1で得た平均粒径20μmの酸化脱ドープ型のポリアニリン粉末を、分散媒体としてイソプロピルアルコールを用いて、アルティマイザーシステムと呼ばれる湿式粉砕システム((株)スギノマシン製HJP−25005)にて微粉砕して、微粒子ポリアニリンを得た。この微粒子ポリアニリンの平均粒径を遠心沈降式粒度分布測定装置((株)島津製作所製)にて測定したところ、1.9μmであった。
【0066】
この微粒子ポリアニリン粉末720mgと白金20重量%を担持させたカーボンブラック(米国エレクトロケム社製EC−20−PTC)48mgを5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製)174gに加え、攪拌して、ペーストとした。このペーストを5.8cm角のカーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−90、膜厚260μm)上に塗布し、80℃で60分間加熱、乾燥させて、電極を得た。
【0067】
ナフトールスルホン酸ノボラック樹脂水溶液(小西化学工業(株)製、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム標準のGPCによる樹脂の重量平均分子量18000)を固形分濃度20重量%に調整した後、このナフトールスルホン酸ノボラック樹脂水溶液中に上記電極を浸漬した。飽和カロメル電極(SCE)を参照電極として用い、直径0.5mmの白金線を対極として、北斗電工(株)製ポテンショスタット/ガルバノスタット(HA−501)及びファンクション・ジェネレータ(HB−105)を用いて、電位範囲−0.2〜0.6V vs. SCE、掃引速度20mV/秒の条件下にサイクリックボルタモグラムを得た。ポリアニリンの酸化ピークが0.5V vs. SCEに、また、ポリアニリンの還元ピークが−0.1V vs. SCEに観察された。
【0068】
そこで、ポテンショスタットの電位を0.5Vに固定して、上記電極を電気化学的に酸化して、カソードを調製し、また、ポテンショスタットの電位を−0.1Vに固定して、上記電極を電気化学的に還元して、アノードを調製した。白金の担持量(計算値)は、電極面積当たり、0.06mg/cm2 であった。
【0069】
このようにして調製したカソードとアノードとの間に酸型ナフィオン膜(デュポン社製ナフィオン(登録商標)112、膜厚50μm)をプロトン交換膜として置き、金型を用いて、温度130℃、圧力2MPaの条件下、ホットプレスにて電極/プロトン交換膜接合体を調製し、試験用の単層の燃料電池セルを組み立てた。
【0070】
実施例1と同様にして、この燃料電池の特性を評価した。電流を流さずに、起電力(開路電圧)のみを測定したところ、0.69Vであった。次に、燃料電池に負荷を加えたところ、電圧0.4Vのとき、9.5Aの電流を得た。
【0071】
【発明の効果】
以上のように、本発明による燃料電池は、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体の微粒子を電極触媒として電極に有せしめたものであって、カソードに酸化剤を気体で供給し、アノードに還元剤を気体で供給することによって、高い起電力を示し、高い電流密度で放電することができ、かくして、高出力の燃料電池特性を示す。更に、電極触媒として、導電性有機重合体の微粒子と共に無機酸化還元触媒を併用することによって、一層、高出力の燃料電池を得ることができる。
【産業上の利用分野】
本発明は、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体を電極触媒としてカソードとアノードの少なくとも一方に有せしめてなる、高い出力を有する燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体高分子電解質を挟んでアノードとカソードとを配設して固体電解質/電極構造を構成し、これをセパレータにより挟んで単位セルを構成し、この単位セルを複数積層し、電気的に直列に接続してなる燃料電池が開発されている。この燃料電池は、クリーンで且つ高効率という特徴から、種々の用途、特に、電気自動車用電源や家庭用分散型電源等として注目されている。
【0003】
より詳細に説明すれば、このような固体高分子型燃料電池は、その基本構成として、プロトン伝導性イオン交換膜を挟んで、それぞれ電極触媒を有するアノードとカソードの一対の電極を配設してなり、このアノードの表面に水素等の還元剤(燃料)を接触させ、カソードの表面に酸化剤(酸素)を接触させて、電気化学反応を起こさせ、この反応を利用して、上記一対の電極の間から電気エネルギーを取り出すものである。上記プロトン伝導性イオン交換膜としては、フッ素樹脂系イオン交換膜が基本特性にすぐれているものとして、従来、よく知られており、また、アノードとカソードとしては、電極触媒として白金を担持させたカーボンシート等が広く知られている。
【0004】
一方、例えば、ポリアセチレンやポリピロール、ポリアニリン等に代表されるように、ドーパントを有し、酸化還元機能(レドックス能)を備えた導電性有機重合体は、リチウム二次電池等における電極活物質として注目されていると共に(特許文献1参照)、速やかな放電機能を有する導電性高分子キャパシタとしての用途も提案されている(非特許文献1及び2参照)。
【0005】
しかしながら、上述したような導電性有機重合体は、現在、実用化されている電極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2 )やリチウムのような無機酸化物や金属材料に比べてエネルギー密度が低い。そこで、このような導電性有機重合体の低いエネルギー密度を補うために、導電性有機重合体を電極触媒として用い、この導電性有機重合体が接する電解液中に酸化剤や還元剤を溶解させて、電池を燃料電池のように使用する試みが提案されている(特許文献3及び4参照)。
【0006】
しかし、これらの電池によれば、酸化剤と還元剤が共に溶液として供給されるので、電極への活物質の拡散が遅く、その放電特性は数mA/cm2 程度であって、高い出力電圧を得ることができないほか、電池システムも複雑であり、実用的ではない。
【0007】
他方、上述したように、従来の固体高分子型燃料電池は、電極触媒として白金を用いるので、コストが高く、また、酸性の液体の溶出や、アノードでの一酸化炭素被毒等、実用化に重要な障害となっており、しかも、白金以外に実用的な電極触媒は、未だ見出されていない。
【0008】
そこで、本発明者らは、既に、導電性有機重合体を電極触媒として用いた固体高分子型燃料電池を提案しているが(特許文献5参照)、しかし、この燃料電池においては、導電性有機重合体を数十μmという大きい粒径を有する粒子のまま、電極触媒として用いるので、これと併用する電極触媒である無機酸化還元触媒や、更には、プロトン交換性樹脂、還元剤(水素ガス)や酸化剤(酸素や空気)等との接触面積が十分に大きくはないので、導電性有機重合体の酸化還元反応(レドックス反応)に基づく電気エネルギーを必ずしも有効に取り出すことができない憾みがある。
【0009】
【特許文献1】特許第1845557号明細書
【非特許文献1】第39回電池討論会予稿集第173頁(1998年)
【非特許文献2】電気化学会第67回大会講演要旨集第147頁(2000年)
【特許文献3】特開昭59−60967号公報
【特許文献4】特開昭61−124070号公報)
【特許文献5】国際出願公開公報WO01/43215A1
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の燃料電池における上述した問題を解決するためになされたものであって、導電性有機重合体の微粒子を電極触媒とし、高出力と高電圧を有する燃料電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、電解質膜を挟んでカソードとアノードとを配設し、このカソードに酸化剤を気体で供給し、アノードに還元剤を気体で供給する燃料電池において、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体の平均粒径10μm以下の微粒子を電極触媒として少なくとも一方の電極に有せしめてなることを特徴とする燃料電池が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、カソードとアノードの少なくとも一方の電極に、酸化還元機能(レドックス能)を備え、好ましくは、ドーパントを有する、平均粒径10μm以下の導電性有機重合体の微粒子を電極触媒として有せしめる。
【0013】
このような導電性有機重合体としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリ(イソキノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等を挙げることができる。これらの導電性有機重合体は、種々の置換基を有していてもよい。このような置換基の具体例として、例えば、アルキル基、水酸基、アルコキシル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホン酸基、ジアルキルアミノ基等を挙げることができる。これらの置換基は、導電性有機重合体の酸化還元電位を調整するのに有用である。
【0014】
また、上記ドーパントは、一般に、プロトン酸である。このプロトン酸としては、塩酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、ホウフッ化水素酸等の無機酸のほか、種々の有機酸を挙げることができる。このような有機酸は、脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、脂環式等の一又は多塩基酸であってよく、例えば、酢酸、酒石酸、安息香酸等、種々の有機カルボン酸を挙げることができる。
【0015】
しかし、本発明によれば、プロトン酸は、スルホン酸基を有するものが好ましく、例えば、ポリビニルスルホン酸、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂、ナフトールスルホン酸ノボラック樹脂等のようなイオン性のポリマースルホン酸や、また、ドデシルベンゼンスルホン酸等の低分子量有機スルホン酸を挙げることができるが、なかでも、前者のようなイオン性のポリマー、特に、ポリマースルホン酸であることが好ましい。ここに、ポリマースルホン酸とは、分子中にスルホン酸基を有するポリマーをいうものとする。
【0016】
しかし、本発明においては、スルホン酸基を分子中に有するスルホン化ポリアニリンのような自己ドープ型の導電性有機重合体も、ドーパントを有する導電性有機重合体に含めることとする。
【0017】
本発明においては、導電性有機重合体としては、水素ガスから生成するプロトンを容易に移動させるために、酸化反応においてプロトンを放出し、還元反応においてプロトンを消費するものが好ましく、このような導電性有機重合体として、上述したなかでも、特に、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリインドール、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル等のように、分子内に窒素原子を有する導電性有機重合体が好ましく用いられる。
【0018】
本発明においては、カソードとアノードの両方に同じ導電性有機重合体を電極触媒として有せしめてもよく、相互に相違する導電性有機重合体を電極触媒として有せしめてもよい。しかし、本発明によれば、より高い電圧を得るために、カソードにはp型の導電性有機重合体を用い、アノードにはn型の導電性有機重合体を用いるのが好ましい。ここに、前述した導電性有機重合体のうち、p型のものは、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリインドール及びポリ−1,5−ジアミノアントラキノンであり、n型のものは、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリピリジン、ポリキノキサリン及びポリフェニルキノキサリンである。
【0019】
一般に、ある導電性有機重合体がp型とn型のいずれであるかを判定するには、既に、知られているように、例えば、導電性有機重合体の粉末をディスクに成形し、その2か所に電極を取付け、この電極に温度差を与えたときの低温側の電極の電位の正負を調べればよい。即ち、低温側の電極に正の電位が現れたとき、その導電性有機重合体はp型であり、反対に、低温側の電極に負の電位が現れたとき、その導電性有機重合体はn型である。
【0020】
このような導電性有機重合体は、一般的な化学酸化重合法にて合成すれば、その平均粒径は、通常、数十μm程度である。しかし、本発明によれば、このような導電性有機重合体を微粒子にして電極触媒として用いられる。本発明において、導電性有機重合体の粒径は、小さい程好ましく、通常、平均粒径10μm以下であればよいが、平均粒径1nm〜10μmの微粒子として用いることが好ましく、特に、平均粒径1nm〜1μmの微粒子として電極触媒に用いることが好ましい。本発明において、このような導電性有機重合体の微粒子の平均粒径は、液相沈降法によるものとする。
【0021】
上述したような導電性有機重合体は、既に知られている方法によって得ることができる。ポリマースルホン酸をドーパントとして有する導電性ポリアニリンを例にとって説明する。
【0022】
特開平3−28229号公報に記載の方法に従って、プロトン酸の存在下に酸化剤にてアニリンを化学酸化重合することによって、上記プロトン酸によってドープされた導電性ポリアニリン(導電性ポリアニリン組成物)粉末を得ることができ、これを適宜のアルカリ水溶液、例えば、アンモニア水中で脱ドープし、得られた粉末を濾過、乾燥すれば、脱ドープ状態で有機溶剤に可溶性のポリアニリン、即ち、酸化脱ドープ状態のポリアニリンの粉末を得ることができる。
【0023】
より詳細には、適宜のプロトン酸、例えば、塩酸の存在下に適宜の溶剤中、例えば、水やメタノール中にて、アニリンにペルオキソ二硫酸アンモニウムのような酸化剤を反応させ、析出した粉末を濾取することによって、上記プロトン酸でドープされた導電性ポリアニリン組成物を得る。次いで、この粉末を、例えば、アンモニアのようなアルカリ物質の水溶液に加えて、導電性ポリアニリン組成物を中和(即ち、脱ドープ)することによって、一般式(I)
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、m及びnはそれぞれ繰り返し単位中のキノンジイミン構造単位及びフェニレンジアミン構造単位のモル分率を示し、0<m≦1、0≦n<1、m+n=1である。)
で表わされる繰返し単位からなる酸化脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得る。
【0026】
このようにして得られる脱ドープ状態のポリアニリンは、高分子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解する。通常、N−メチルピロリドン中、30℃で測定した極限粘度〔η〕が0.40dL/g以上を有し、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等の有機溶剤に溶解する。このような有機溶剤への脱ドープ状態のポリアニリンの溶解度は、その平均分子量や溶剤にもよるが、通常、ポリアニリンの0.5〜100%が溶解し、1〜30重量%濃度の溶液を得ることができる。特に、この脱ドープ状態のポリアニリンは、N−メチル−2−ピロリドンに高い溶解性を示し、通常、ポリアニリンの20〜100%が溶解し、3〜30重量%溶液を得ることができる。
【0027】
また、上記脱ドープ状態のポリアニリンにおいて、m及びnの値は、ポリアニリンを酸化又は還元することによって調整することができる。即ち、還元することによって、mを低減させ、nを増大させることができる。逆に、酸化すれば、mを増大させ、nを低減させることができる。ポリアニリンの還元によって、ポリアニリン中のキノンジイミン構造単位が減少すると、ポリアニリンの有機溶剤への溶解性が高められる。また、還元前に比べて、溶液の粘度は低下する。このような溶剤可溶性のポリアニリンの還元のためには、例えば、N−メチル−2−ピロリドンに溶解するが、N−メチル−2−ピロリドンを還元しない点から、フェニルヒドラジンが最も好ましく用いられる。
【0028】
他方、溶剤可溶性ポリアニリンの酸化のために用いられる酸化剤は、フェニレンジアミン構造単位を酸化し得るものであれば、特に、限定されるものではないが、例えば、穏和な酸化銀が好ましく用いられる。必要に応じて、過マンガン酸カリウムや重クロム酸カリウム等も用いることができる。
【0029】
次いで、強酸性型カチオン交換樹脂にて酸型としたポリマースルホン酸水溶液中に上記酸化脱ドープ状態のポリアニリンの粉末を投入し、数時間加熱すれば、上記ポリアニリンにポリマースルホン酸をドープすることができ、この後、このドープ状態のポリアニリン粉末を濾過、洗浄した後、真空乾燥することによって、ポリマースルホン酸をドーパントとする導電性ポリアニリン粉末を得ることができる。このようにして得られる導電性ポリアニリン粉末は、その平均粒径が7〜25μm程度である。
【0030】
このような導電性ポリアニリン粉末を濃硫酸に溶解させ、得られた溶液を、例えば、100重量倍の蒸留水中にゆっくりと滴下して、再沈殿させると、平均粒径0.1〜2μm程度の微粒子を得ることができる。これを濾取し、乾燥すれば、本発明において電極触媒として好ましく用いることができる。
【0031】
しかし、本発明においては、上述したようにして得られる導電性ポリアニリン粉末を微粒子化するための手段は、特に限定されるものではなく、例えば、市販されている種々の湿式粉砕装置を用いることによっても、本発明において用いるに好適な微粒子ポリアニリンを得ることができる。
【0032】
更に、本発明によれば、一方の電極にのみ、導電性有機重合体を担持させた導電性粉体を電極触媒として有せしめ、他方の電極には、従来のように、白金触媒を電極触媒として有せしめてもよい。また、本発明によれば、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒と担持させた導電性粉体を電極触媒としてカソードとアノードの少なくとも一方の電極に有せしめてもよい。この場合、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒とを共に導電性粉体に担持させて、これを電極触媒として用いてもよく、また、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒を別々に導電性粉体に担持させ、これらの混合物を電極触媒として用いてもよい。
【0033】
このように、微粒子化した導電性有機重合体を電極触媒として用いるに際して、その電極への担持量は、特に、限定されるものではないが、電極面積当り、通常、0.5〜100mg/cm2 の範囲である。
【0034】
また、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒を担持させた導電性粉体を少なくとも一方の電極に電極触媒として有せしめる場合、上記無機酸化還元触媒としては、接触水素添加触媒として、又は酸素自動酸化触媒として知られている白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、ニッケル、鉄、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属及び/又はその酸化物等を用いることができる。このような無機酸化還元触媒は、微粉末としてそのまま、導電性有機重合体粉末と混合してもよく、また、上記遷移金属の水溶性塩の水溶液に導電性有機重合体粉末を分散させ、攪拌、混合した後、還元又は酸化処理を行なって、上記遷移金属塩を金属又は酸化物に変換してもよい。
【0035】
導電性有機重合体と無機酸化還元触媒を担持させた導電性粉体を電極触媒として用いる場合、無機酸化還元触媒は、導電性有機重合体100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部の範囲で用いられる。また、電極への無機酸化還元触媒の担持量は、電極面積当たり、通常、0.001〜5mg/cm2 の範囲であるが、好ましくは、0.005〜1mg/cm2 の範囲であり、特に、好ましくは、0.01〜0.5mg/cm2 の範囲である。
【0036】
このように、本発明に従って、導電性有機重合体と無機酸化還元触媒とを共に、又は別々に担持させた導電性粉体を電極触媒として電極に有せしめることによって、導電性有機重合体のみを導電性粉体に担持させ、これを電極触媒として用いた場合に比べて、高出力の燃料電池を得ることができる。
【0037】
次に、本発明による燃料電池において用いる電極の製造について説明する。前述したようにして得られた導電性有機重合体の微粒子を結着剤(例えば、ナフィオン(登録商標)のようなデュポン社製パーフルオロスルホン酸樹脂溶液)を用いてペーストとし、このペーストを導電性多孔質基材(例えば、東レ(株)製カーボンペーパー)上に塗布し、乾燥して、電極を調製し、次いで、必要に応じて、この電極を電気化学的に酸化(又は還元)して、カソード(又はアノード)を得る。
【0038】
上記電極を酸化(又は還元)する方法は、特に限定されるものではないが、しかし、好ましい一例を挙げれば、電極を20重量%濃度のフェノールスルホン酸ノボラック樹脂の水溶液に浸漬し、適宜の参照電極を用いてサイクリックボルタモグラムを測定し、酸化(又は還元)ピークが観察された電位にて電極を電気化学的に酸化(又は還元)するのが簡便である。
【0039】
このようにして得られたカソードとアノードとで電解質膜(即ち、プロトン交換膜)を挟み、必要に応じて、ホットプレス等により一体成形して、燃料電池用の電極−プロトン交換膜接合体を得る。
【0040】
本発明による燃料電池においては、電解質膜には、従来の固体高分子膜型電池に用いられているようなパーフルオロスルホン酸樹脂からなる陽イオン交換膜、例えば、ナフィオン(登録商標)が好適に用いられるが、しかし、これに限定されるものではない。従って、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を含浸させたものや、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜や不織布に上記ナフィオンや他のイオン伝導性物質を担持させたものでもよい。
【0041】
本発明による燃料電池においては、カソードに酸化剤が気体で供給され、アノードに還元剤が気体で供給される。ここに、本発明によれば、好ましくは、酸化剤として酸素ガスや空気が用いられると共に、還元剤として水素ガスが用いられる。また、還元剤として、メタノールやジメチルエーテル等を用いることもできる。
【0042】
本発明による燃料電池は、40℃以上の温度で作動される。用いる導電性有機重合体や電解質膜によって適宜に選ばれるが、50〜120℃の範囲が好ましく、特に、60〜100℃の範囲が好ましい。作動温度が低すぎるときは、導電性有機重合体の反応速度が遅いために、高い出力を得ることができず、他方、作動温度が高すぎるときは用いる材料の劣化や剥離等が起こるおそれがある。
【0043】
【実施例】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
参考例1
(アニリンの酸化重合による導電性ポリアニリン組成物の調製)
攪拌装置、温度計及び直管アダプターを備えた10L容量セパラブルフラスコに蒸留水6000g、36%塩酸360mL及びアニリン400g(4.295モル)をこの順序にて仕込み、アニリンを溶解させた。別に、氷水にて冷却しながら、ビーカー中の蒸留水1493gに97%濃硫酸434g(4.295モル)を加え、混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を上記セパラブルフラスコに加え、フラスコ全体を低温恒温槽にて−4℃まで冷却した。
【0045】
次に、ビーカー中にて蒸留水2293gにペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モル)を加え、溶解させて、酸化剤水溶液を調製した。
【0046】
フラスコ全体を低温恒温槽で冷却して、反応混合物の温度を−3℃以下に保持しつつ、攪拌下にアニリン塩の酸性水溶液に、チュービングポンプを用いて、直管アダプターから上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を1mL/分以下の割合にて徐々に滴下した。最初、無色透明の溶液は、重合の進行に伴って緑青色から黒緑色となり、次いで、黒緑色の粉末が析出した。
【0047】
この粉末析出時に反応混合物において温度の上昇がみられるが、この場合にも、高分子量のポリアニリンを得るためには、反応系内の温度を0℃以下、好ましくは、−3℃以下に抑えることが肝要である。粉末析出後は、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下速度を例えば8mL/分程度とやや速くしてもよい。しかし、この場合にも、反応混合物の温度をモニターしつつ、温度を−3℃以下に保持するように、滴下速度を調整することが必要である。かくして、7時間を要して、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下を終了した後、更に1時間、−3℃以下の温度にて攪拌を続けた。
【0048】
得られた粉末を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、黒緑色の導電性ポリアニリン組成物の粉末430gを得た。これを直径13mm、厚さ700μmのディスクに加圧成形し、ファン・デル・ポー法によって、その電導度を測定したところ、14S/cmであった。
【0049】
(導電性ポリアニリン組成物の脱ドーピングによる有機溶剤に可溶性のポリアニリン(酸化脱ドープ型のポリアニリン)の製造)
上記ドープされている導電性ポリアニリン組成物の粉末350gを2Nアンモニア水4L中に加え、オートホモミキサーにて回転数5000rpmにて5時間攪拌した。混合物は、黒緑色から青紫色に変化した。
【0050】
ブフナー漏斗にて粉末を濾別し、ビーカー中にて攪拌しながら、蒸留水にて濾液が中性になるまで繰り返して洗浄し、続いて、濾液が無色になるまでアセトンにて洗浄した。この後、粉末を室温にて10時間真空乾燥して、黒褐色の脱ドーピングしたポリアニリン(酸化脱ドープ型のポリアニリン)の粉末280gを得た。この酸化脱ドープ状態のポリアニリンの平均粒径は20μmであった。
【0051】
このポリアニリンはN−メチル−2−ピロリドンに可溶性であって、溶解度は同溶剤100gに対して8g(7.4%)であった。また、これを溶剤として30℃で測定した極限粘度〔η〕は1.23dL/gであった。
【0052】
このポリアニリンは、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドには1%以下の溶解度であった。テトラヒドロフラン、ピリジン、80%酢酸水溶液、60%ギ酸水溶液及びアセトニトリルには実質的に溶解しなかった。
【0053】
更に、上記酸化脱ドープ型の有機溶剤に可溶性のポリアニリンについて、N−メチル−2−ピロリドン用のGPCカラムを用いて、GPC測定を行なった結果、数平均分子量23000、重量平均分子量160000(いずれも、ポリスチレン換算)であった。
【0054】
実施例1
上記参考例1で得た平均粒径20μmの酸化脱ドープ型のポリアニリンを純度97%の濃硫酸中に加え、攪拌して、溶解させた。このようにして得られた溶液を100重量倍の蒸留水中に滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下して、ポリアニリンを再沈殿させた。このポリアニリンを吸引濾過し、室温で3日間乾燥させて、微粒子ポリアニリンを得た。この微粒子ポリアニリンの平均粒径を液相沈降法で測定したところ、0.5μmであった。
【0055】
この微粒子ポリアニリン粉末720mgと導電性カーボンブラック粉末(アクゾ社製ケッチェンブラックEC)80mgを5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製)16gに加え、攪拌して、ペーストとした。このペーストを5.8cm角のカーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−90、膜厚260μm)上に塗布し、80℃で60分間加熱、乾燥させて、電極を得た。
【0056】
フェノールスルホン酸ノボラック樹脂水溶液(小西化学工業(株)製、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム標準のGPCによる樹脂の重量平均分子量22000)を固形分濃度20重量%に調整した後、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂水溶液中に上記電極を浸漬した。飽和カロメル電極(SCE)を参照電極として用い、直径0.5mmの白金線を対極として、北斗電工(株)製ポテンショスタット/ガルバノスタット(HA−501)及びファンクション・ジェネレータ(HB−105)を用いて、電位範囲−0.2〜0.6V vs. SCE、掃引速度20mV/秒の条件下にサイクリックボルタモグラムを得た。ポリアニリンの酸化ピークが0.5V vs. SCEに、また、ポリアニリンの還元ピークが−0.1V vs. SCEに観察された。
【0057】
そこで、ポテンショスタットの電位を0.5Vに固定して、上記電極を電気化学的に酸化して、カソードを調製し、また、ポテンショスタットの電位を−0.1Vに固定して、上記電極を電気化学的に還元して、アノードを調製した。
【0058】
このようにして調製したカソードとアノードとの間に酸型ナフィオン膜(デュポン社製ナフィオン(登録商標)117)をプロトン交換膜として置き、金型を用いて、温度130℃、圧力3MPaの条件下、ホットプレスにて電極/プロトン交換膜接合体を調製し、試験用の単層の燃料電池セルを組み立てた。
【0059】
この燃料電池セルを燃料電池評価装置(東陽テクニカ(株)製)に組み込み、セル温度70℃とし、加湿器温度70℃で酸素ガスを500mL/分の割合でカソードに供給すると共に、加湿器温度80℃で水素ガスを1000mL/分の割合でアノードに供給した。そこで、先ず、電流を流さずに、起電力(開路電圧)のみを測定したところ、0.69Vであった。次に、燃料電池に負荷を加えたところ、電圧0.4Vのとき、2.55Aの電流を得た。
【0060】
比較例1
前記参考例1で得た平均粒径20μmの酸化脱ドープ型のポリアニリンをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして、カソードとアノードを調製し、試験用の単層の燃料電池セルを組み立て、その特性を評価したところ、回路電圧は0.69Vであり、燃料電池セルに負荷を加えたとき、電圧0.4Vで電流0.85Aを得た。
【0061】
実施例2
実施例1と同様にして、得られた微粒子ポリアニリンを吸引濾過し、真空乾燥機中、40℃で2時間乾燥させて、微粒子ポリアニリンを得た。この微粒子ポリアニリンは、乾燥中に再凝集したためとみられるが、その平均粒径は、液相沈降法で測定したところ、6μmであった。
【0062】
このポリアニリンを用いた以外は、実施例1と同様にして、カソードとアノードを調製し、試験用の単層の燃料電池セルを組み立て、その特性を評価したところ、回路電圧は0.69Vであり、燃料電池セルに負荷を加えたとき、電圧0.4Vで電流1.28Aを得た。
【0063】
実施例3
実施例1と同じ平均粒径0.5μmの微粒子ポリアニリン粉末720mgと白金20重量%を担持させたカーボンブラック(米国エレクトロケム社製EC−20−PTC)80mgを5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製)174gに加え、攪拌して、ペーストとした。この後、実施例1と同様にして、カソードとアノードを調製した。白金の担持量(計算値)は、電極面積当たり、0.10mg/cm2 であった。
【0064】
上記カソードとアノードを用いて、実施例1と同様にして試験用の単層の燃料電池セルを組み立て、その特性を評価したところ、回路電圧は0.69Vであり、燃料電池セルに負荷を加えたとき、電圧0.4Vで電流12.7Aを得た。このように電流値が大幅に増加した理由は、水素又は酸化ガスに対する白金の触媒作用によって、導電性有機重合体へのプロトン又は酸素イオンの供給量が大幅に増加したことにあるとみられる。
【0065】
実施例4
前記参考例1で得た平均粒径20μmの酸化脱ドープ型のポリアニリン粉末を、分散媒体としてイソプロピルアルコールを用いて、アルティマイザーシステムと呼ばれる湿式粉砕システム((株)スギノマシン製HJP−25005)にて微粉砕して、微粒子ポリアニリンを得た。この微粒子ポリアニリンの平均粒径を遠心沈降式粒度分布測定装置((株)島津製作所製)にて測定したところ、1.9μmであった。
【0066】
この微粒子ポリアニリン粉末720mgと白金20重量%を担持させたカーボンブラック(米国エレクトロケム社製EC−20−PTC)48mgを5重量%ナフィオン溶液(アルドリッチ社製)174gに加え、攪拌して、ペーストとした。このペーストを5.8cm角のカーボンペーパー(東レ(株)製TGP−H−90、膜厚260μm)上に塗布し、80℃で60分間加熱、乾燥させて、電極を得た。
【0067】
ナフトールスルホン酸ノボラック樹脂水溶液(小西化学工業(株)製、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム標準のGPCによる樹脂の重量平均分子量18000)を固形分濃度20重量%に調整した後、このナフトールスルホン酸ノボラック樹脂水溶液中に上記電極を浸漬した。飽和カロメル電極(SCE)を参照電極として用い、直径0.5mmの白金線を対極として、北斗電工(株)製ポテンショスタット/ガルバノスタット(HA−501)及びファンクション・ジェネレータ(HB−105)を用いて、電位範囲−0.2〜0.6V vs. SCE、掃引速度20mV/秒の条件下にサイクリックボルタモグラムを得た。ポリアニリンの酸化ピークが0.5V vs. SCEに、また、ポリアニリンの還元ピークが−0.1V vs. SCEに観察された。
【0068】
そこで、ポテンショスタットの電位を0.5Vに固定して、上記電極を電気化学的に酸化して、カソードを調製し、また、ポテンショスタットの電位を−0.1Vに固定して、上記電極を電気化学的に還元して、アノードを調製した。白金の担持量(計算値)は、電極面積当たり、0.06mg/cm2 であった。
【0069】
このようにして調製したカソードとアノードとの間に酸型ナフィオン膜(デュポン社製ナフィオン(登録商標)112、膜厚50μm)をプロトン交換膜として置き、金型を用いて、温度130℃、圧力2MPaの条件下、ホットプレスにて電極/プロトン交換膜接合体を調製し、試験用の単層の燃料電池セルを組み立てた。
【0070】
実施例1と同様にして、この燃料電池の特性を評価した。電流を流さずに、起電力(開路電圧)のみを測定したところ、0.69Vであった。次に、燃料電池に負荷を加えたところ、電圧0.4Vのとき、9.5Aの電流を得た。
【0071】
【発明の効果】
以上のように、本発明による燃料電池は、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体の微粒子を電極触媒として電極に有せしめたものであって、カソードに酸化剤を気体で供給し、アノードに還元剤を気体で供給することによって、高い起電力を示し、高い電流密度で放電することができ、かくして、高出力の燃料電池特性を示す。更に、電極触媒として、導電性有機重合体の微粒子と共に無機酸化還元触媒を併用することによって、一層、高出力の燃料電池を得ることができる。
Claims (8)
- 電解質膜を挟んでカソードとアノードとを配設し、このカソードに酸化剤を気体で供給し、アノードに還元剤を気体で供給する燃料電池において、酸化還元機能を備えた導電性有機重合体の平均粒径10μm以下の微粒子を電極触媒として少なくとも一方の電極に有せしめてなることを特徴とする燃料電池。
- 電極触媒が導電性有機重合体と無機酸化還元触媒との混合物からなる請求項1に記載の燃料電池。
- 導電性有機重合体がポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピリジン、ポリインドール、ポリフェニルキノキサリン、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン又はポリアミノジフェニルである請求項1又は2に記載の燃料電池。
- 導電性有機重合体がドーパントを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池。
- ドーパントがポリマースルホン酸である請求項4に記載の燃料電池。
- ポリマースルホン酸がポリビニルスルホン酸、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂及びナフトールスルホン酸ノボラック樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の燃料電池。
- 無機酸化還元触媒が白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、ニッケル、鉄、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属か、又はその酸化物である請求項2に記載の燃料電池。
- 酸化剤が酸素であり、還元剤が水素である請求項1に記載の燃料電池。
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JP2003207044A JP2004146358A (ja) | 2002-08-26 | 2003-08-11 | 燃料電池 |
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Cited By (1)
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CN111146461A (zh) * | 2019-12-31 | 2020-05-12 | 中北大学 | 一种纸-石墨-PANI-Pt电极的制备方法及其在催化H2O2电还原反应中的应用 |
-
2003
- 2003-08-11 JP JP2003207044A patent/JP2004146358A/ja active Pending
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