JP2004146147A - 燃料電池システム及びその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池の温度変化や気圧変動を許容しながら水分の外部流出を防止し、固体高分子電解質膜の乾燥を防止する。
【解決手段】燃料電池スタック1の空気極に空気を供給する空気供給配管14に対し、内部に高分子吸収体23が配されたバイパス配管24を並列に設け、これら空気供給配管14とバイパス配管24との合流位置に、これらの流路を切り替えるための第1のシャッタ25を設ける。さらに、燃料電池スタック1の排気側には、排気を遮断するための第2のシャッタ28を設ける。そして、燃料電池スタック1の運転停止時には、燃料電池スタック1の排気側は遮断、吸気側は高分子吸収体23が配されたバイパス配管24に連通されるように、第1のシャッタ25及び第2のシャッタ28を切り替え制御する。
【選択図】 図2
【解決手段】燃料電池スタック1の空気極に空気を供給する空気供給配管14に対し、内部に高分子吸収体23が配されたバイパス配管24を並列に設け、これら空気供給配管14とバイパス配管24との合流位置に、これらの流路を切り替えるための第1のシャッタ25を設ける。さらに、燃料電池スタック1の排気側には、排気を遮断するための第2のシャッタ28を設ける。そして、燃料電池スタック1の運転停止時には、燃料電池スタック1の排気側は遮断、吸気側は高分子吸収体23が配されたバイパス配管24に連通されるように、第1のシャッタ25及び第2のシャッタ28を切り替え制御する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車等の駆動源として用いられる燃料電池システム及びその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池システムは、燃料電池の燃料極(水素極)に水素ガス、酸化剤極(空気極)に空気をそれぞれ供給し、燃料電池において水素と酸素とを電気化学的に反応させて発電電力を得るものである。このような燃料電池システムは、例えば自動車の動力源等としての実用化に大きな期待が寄せられており、現在、実用化に向けての研究開発が盛んに行われている。
【0003】
燃料電池システムに用いられる燃料電池としては、例えば車載用に好適なものとして、固体高分子タイプの燃料電池が知られている。この固体高分子タイプの燃料電池は、燃料極と空気極との間に膜状の固体高分子が設けられたものであり、この固体高分子電解質膜が水素イオン伝導体として機能するようになっている。この固体高分子タイプの燃料電池では、燃料極で水素ガスが水素イオンと電子とに分離される反応が起き、空気極で酸素ガスと水素イオンと電子とから水を生成する反応が行われる。このとき、固体高分子電解質膜がイオン伝導体として機能し、水素イオンは固体高分子電解質膜中を空気極に向かって移動することになる。
【0004】
ところで、固体高分子電解質膜をイオン伝導体として機能させるためには、この固体高分子電解質膜にある程度の水分を含ませておく必要がある。このため、このような固体高分子タイプの燃料電池を用いた燃料電池システムでは、水素ガスや空気等の供給ガスを加湿装置により加湿した状態で燃料電池に供給することで、燃料電池の固体高分子電解質膜を加湿することが一般に行われている。
【0005】
この場合、水分管理が重要であり、燃料電池の固体高分子電解質膜が常に最適な加湿状態となるように系内の水分を制御することが必要である。特に、車載用の燃料電池システム等においては、走行や停車、駐車等に伴って作動停止と再始動が繰り返し行われることから、これらに対応した水分制御を行うことが必要になる。例えば、燃料電池を作動停止して系内の雰囲気温度が低下すると、燃料電池内や配管内の水分が凝縮し、結露を起こす。この状態で再始動しようとすると、結露による燃料電池内の湿度の低下に起因して、必要な発電効率が得られないという問題が生ずる。
【0006】
そこで、作動停止した燃料電池を再始動する場合にも最適な状態で運転を行うことのできる燃料電池用加湿システムが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の技術では、燃料電池内の固体高分子電解質膜の乾燥防止のため、燃料電池給排気経路に閉ループを形成し、外部への水分拡散を防止している。具体的には、燃料電池の停止時に前記閉ループを形成した状態とし、再始動時にはこの状態で加給装置により空気を循環させて燃料電池内の露点を調整した後、閉ループを解除して燃料電池を通常運転とする制御を行っている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−216989号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際には、例えば燃料電池システムを長期間停止させた場合、燃料電池に温度変化や気圧変動等が生じるので、給排気系に完全な閉ループを形成するのは技術的に困難である。そればかりか、長期間乾燥雰囲気中に放置された状態での燃料電池本体からの水分の拡散に対しては、その解決手段として十分でないという問題もある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の欠点を解消するために提案されたものであり、燃料電池の温度変化や気圧変動を許容しながら水分の外部流出を防止することができ、長期間に亘って固体高分子電解質膜の乾燥を防止することができる燃料電池システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、燃料電池スタックの運転停止時においては、燃料電池スタックの排気側が遮断されると共に、燃料電池スタックの吸気側には内部に高分子吸収体が配された流路が連通されるようにしたことを特徴としている。
【0011】
これを実現するための構成として、燃料電池スタックへ空気等の酸化剤ガスを供給する酸化剤供給流路に対し、内部に高分子吸収体が配されたバイパス流路を並列に設け、これら酸化剤供給流路とバイパス流路との合流位置にこれらの流路を切り替えるための流路切り替え手段を設ける。さらに、燃料電池スタックの排気側には、排気を遮断するための排気遮断機構を設ける。そして、流路切り替え手段及び排気遮断機構を制御することにより、燃料電池スタックの排気側の遮断/開放の切り替え及び吸気側の流路の切り替えを行い、運転停止時には、燃料電池スタックの排気側を遮断すると共に、燃料電池スタックの吸気側に内部に高分子吸収体が配されたバイパス流路が連通されるようにする。
【0012】
以上のような本発明の燃料電池システム及びその制御方法では、運転停止時に燃料電池スタックの排気側は遮断(密閉)されるが、吸気側は高分子吸収体を介して開放されている。したがって、燃料電池に温度変化や圧力変動が生じた場合にも、吸気側の開放によってこれが許容される。また、高分子吸収体の有する水分保持機能により、水分の外部流出が抑制される。さらに、長期間の運転停止等により燃料電池からの水分の拡散が進んだ場合、高分子吸収体に保持された水分によって逆に水分補給され、燃料電池スタック内の乾燥が抑制される。
【0013】
【発明の効果】
本発明においては、燃料電池スタックの運転停止時に、燃料電池スタックの排気側が遮断されると共に、燃料電池スタックの吸気側には内部に高分子吸収体が配された流路が連通されるようにしているので、作動停止期間中における燃料電池スタック内の温度変化や気圧変動を許容することができ、同時に水分の外部流出を防止することができる。
【0014】
また、燃料電池からの水分の拡散に対しても、安定した水分の補給が可能であり、長期間に亘って乾燥を防止することができる。さらに、酸化剤供給流路が目詰まり等を起こした場合には、バイパス流路を介して燃料電池スタックに空気を供給することができ、燃料電池スタックの発電不能を回避することができる。
【0015】
これらによって、良好な水分制御、水分管理が実現され、燃料電池システムを常に最適な状態で運転することができ、例えば長期間作動停止した後の再始動等も円滑に行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した燃料電池システム及びその制御方法について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、燃料電池システム全体の基本構成を示すものである。この燃料電池システムは、燃料電池スタック1と、この燃料電池スタック1に燃料である水素ガス(あるいは水素リッチガス)を供給する燃料供給系と、燃料電池スタック1に酸化剤ガスである空気を供給する空気供給系と、燃料電池スタック1を加湿するための加湿手段と、燃料電池スタック1を冷却する冷却機構とからなる。
【0018】
そして、燃料電池スタック1の発電電力により、例えば車両の駆動用モータを駆動する。なお、この燃料電池システムには、制御コントローラ20が設けられており、これによりアクセルペダルからのアクセルペダル信号等に基づいて燃料供給系や空気供給系が制御され、燃料電池スタック1の発電電力が制御される。さらに、この制御コントローラ20は、加湿手段の制御等も行う。
【0019】
前記構成の燃料電池システムにおいて、燃料電池スタック1は、燃料である水素が供給される燃料極(水素極)と酸化剤ガスである酸素(空気)が供給される空気極とが電解質・電極触媒複合体を挟んで重ね合わされてなる発電セルが多段に積層された構造を有し、電気化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。燃料極では、水素が供給されることで水素イオンと電子に解離し、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、空気極にそれぞれ移動する。空気極では、供給された空気中の酸素と前記水素イオン及び電子が反応して水が生成し、生成した水は外部に排出される。
【0020】
燃料電池スタック1の電解質としては、高エネルギー密度化、低コスト化、軽量化等を考慮して、固体高分子電解質膜が用いられる。固体高分子電解質膜は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能することから、この燃料電池スタック1においては水を供給して加湿することが必要になる。
【0021】
そこで、前記燃料電池システムにおいては、前記燃料電池スタック1に加湿水を供給する加湿手段が設けられている。この加湿手段は、水を循環する加湿水循環経路2、加湿水を貯留する純水タンク3、純水タンク3内の水を加湿水循環経路2に循環させる純水ポンプ4、及び純水タンク3内の水が凍結したときにこれを加熱して解凍する電熱ヒータ5とからなる。
【0022】
前記加湿手段においては、燃料電池スタック1の化学反応で生成された水が純水タンク3内に蓄えられると共に、純水ポンプ4にて燃料電池スタック1へと供給され、燃料電池スタック1の固体高分子電解質膜の加湿に利用される。氷点下では純水タンク3内に蓄えた水が凍結するが、純水タンク3には電熱ヒータ5が設置されており、この電熱ヒータ5に通電することにより凍結した生成水を解凍して燃料電池スタック1の固体高分子電解質膜の加湿に利用する。なお、加湿水は、燃料電池スタック1に直接供給しないで、燃料電池スタック1に供給するガス(水素リッチガスや空気)を加湿する加湿器を用い、ここに供給するようにしてもよい。
【0023】
前記燃料電池スタック1においては、燃料となる水素や酸化剤である空気を燃料極や空気極に供給する必要があり、そのための機構が水素供給系及び空気供給系である。
【0024】
水素供給系は、高圧水素タンク6、水素調圧弁7、エゼクタ8、水素供給配管9、及び水素循環配管10を有している。そして、水素供給源である高圧水素タンク6から供給される水素ガスは、前記水素調圧弁7及びエゼクタ8を通って水素供給配管9へと送り込まれ、燃料電池スタック1の燃料極に供給される。このとき、前記水素調圧弁は、燃料電池スタック1の燃料極通路内の圧力が負荷に応じた圧力になるように、供給される水素の圧力を制御している。
【0025】
燃料電池スタック1では、供給された水素ガスが全て消費されるわけではなく、消費されなかった水素ガス(燃料電池スタック1から排出される水素ガス)は、水素循環配管10を通ってエゼクタ8により循環され、新たに供給される水素ガスと混合されて、再び燃料電池スタック1の燃料極に供給される。これにより、水素のストイキ比(供給流量/消費流量)を1以上にすることができ、セル電圧が安定化する。
【0026】
なお、燃料電池スタック1の出口側には、パージ弁11及びパージ配管12が設けられている。水素を循環させることによって水素循環配管10内には不純物や窒素等の不活性ガスが蓄積し、水素分圧が降下していくため燃料電池1の効率が低下する。これらパージ弁11やパージ配管12を設けることで、水素循環配管10内から不純物や窒素等の不活性ガスを除去することができる。前記パージ弁11は、通常は閉じられており、燃料電池スタック1の水詰まりや不活性ガスの蓄積等によるセル電圧の低下を検知すると開けられる。
【0027】
空気供給系は、空気を送り込むコンプレッサ13、空気供給配管14、及び燃料電池スタック1の空気極の出口側に設けられた空気調圧弁15を有している。コンプレッサ13は、酸化剤としての空気を燃料電池スタック1の空気極に供給するもので、例えばモータ駆動により圧縮された空気が空気供給配管14より燃料電池スタック1の空気極に供給される。燃料電池スタック1で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、燃料電池スタック1から空気調圧弁15を介して排出される。前記空気調圧弁15は、燃料電池スタック1の空気極通路内の圧力が負荷に応じた圧力になるように、コンプレッサ13によって供給される空気の圧力を制御している。
【0028】
なお、前記構成の燃料電池システムにおいて、固体高分子電解質型の燃料電池スタック1は、適正な作動温度が80℃前後と比較的低く、過熱時には冷却することが必要である。したがって、前記燃料電池システムにおいては、通常、冷却水を循環して燃料電池スタック1を冷却し、これを最適な温度に維持する冷却機構が設けられている。
【0029】
この冷却機構は、冷媒を燃料電池スタック1に循環する冷却水循環配管16を有し、冷却水により燃料電池スタック1を冷却し、これを最適な温度に維持する。前記冷却機構の冷却水循環配管16の途中位置には、ラジエータ17が設けられており、前記燃料電池スタック1の冷却により加熱された冷却水は、ここで冷却される。また、前記ラジエータ17と並列にバイパス配管18が設けられており、冷却水バイパス流量制御弁19を制御することにより、バイパス配管18を流れる冷却水の流量が制御される。
【0030】
以上が燃料電池システム全体の基本構成であるが、本発明を適用した燃料電池システムでは、特に運転停止時の燃料電池スタック1の乾燥を防止するための機構が空気供給系に設けられている。以下、本発明の特徴部分である燃料電池スタック1の乾燥を防止するための機構について説明する。
【0031】
図2は、燃料電池スタック1空気極の吸気側及び排気側の配管構成を示すものである。燃料電池スタック1空気極の吸気側入口21には、酸化剤である空気の流路となる空気供給配管14(酸化剤供給流路)が接続されており、この空気供給配管14には、空気中の微粒子や化学物質を除去することを目的としたフィルタ22が設置されている。
【0032】
また、燃料電池スタック1空気極の吸気側入口21には、前記空気供給配管14と並列にバイパス配管24(バイパス流路)が接続されており、このバイパス配管24の内部には、水分保持機能を有する高分子吸収体23が配設されている。そして、このバイパス配管24と空気供給配管14とが吸気側入口21付近で合流する部分には、吸気側入口21と接続される経路をバイパス配管24または空気供給配管14の何れかに切り替えるための第1のシャッタ25(流路切り替え手段)が設置されている。
【0033】
ここで、高分子吸収体23としては、吸水性、水分放出速度、耐熱性、耐腐食性等を考慮し、アクリル系吸水ポリマー、ビニルアセトアミド系吸水ポリマー、セルロース系吸水ポリマー等の吸水ポリマーを用いることが望ましい。
【0034】
前記バイパス配管24の高分子吸収体23が配される位置よりも燃料電池スタック1の吸気側入口21に近い位置には、バイパス配管24を通過する空気流量を検出するための流量計26(流量検出手段)が設置されている。
【0035】
一方、燃料電池スタック1空気極の排出側出口27には、排気を遮断する機能を有する第2のシャッタ28(排気遮断機構)が設置された排気路29が接続されている。
【0036】
燃料電池スタック1空気極の吸気側及び排気側の配管構成は前述の通りであり、前記第1のシャッタ25や第2のシャッタ28は燃料電池スタック1の運転状態に応じて次のように制御される。
【0037】
燃料電池スタック1の運転状態では、第1のシャッタ25は空気供給配管14側が開放された状態に制御され、第2のシャッタ28は排気路29が開放された状態に制御される。したがって、燃料電池スタック1には、空気供給配管14を通して空気が供給され、排気ガスは排気路29から排出される。
【0038】
このとき、フィルタ22を通過するガスの圧損は、高分子吸収体23を通過するガスの圧損に対して充分に小さく設定されており、さらに燃料電池スタック1の運転時には高分子吸収体23から吸気側入口21に向かう流路(バイパス配管24)が第1のシャッタ25で遮断されているため、高分子吸収体23を通過するガス流量(空気流量)は無視できるレベルになる。
【0039】
燃料電池スタック1の停止状態では、第1のシャッタ25はバイパス配管24側が開放された状態となるように制御され、第2のシャッタ28は排気路29を遮断する状態に制御される。
【0040】
この状態では、燃料電池スタック1の雰囲気温度や気圧の変化等によって出入りするガス(空気)は、全て高分子吸収体23を通過するよう制御されており、ガスに含まれる水分は高分子吸収体23に吸収・保持される。したがって、燃料電池スタック1内の水分が外部に流出することはない。また、燃料電池スタック1の長期間の運転停止等によって燃料電池スタック1内の水の拡散が進行した場合には、高分子吸収体23に保持されている水分が逆に燃料電池スタック1内に供給され、燃料電池スタック1内の固体高分子電解質膜は保湿状態が保たれる。なお、この高分子吸収体23への水分の補給手段については、燃料電池スタック1からの排出ガスを有効利用するようにしてもよい。
【0041】
以上が本発明に特徴的な部分の基本的な制御であり、これによって燃料電池スタック1の運転時、及び燃料電池スタック1の運転停止時の何れにおいても良好な水分制御、水分管理が実現され、燃料電池システムを常に最適な状態で運転することができ、例えば長期間作動停止した後の再始動等も円滑に行うことができる。
【0042】
さらに、本例では、高分子吸収体23が配されたバイパス配管24を通過する空気流量が流量計26により検出される構成としているので、フィルタ22の目詰まりやシャッタ25の作動不良を検出し、緊急待避的に流路切り替えを行い、発電不能を回避することも可能である。
【0043】
すなわち、フィルタ22が正常な状態では、高分子吸収体23の圧損が充分に大きく、また下流に設けた第1のシャッタ25により空気はフィルタ22を通過するように流路が選択される。この状態でフィルタ22が目詰まりを起したり第2のシャッタ25が異常作動すると、燃料電池スタック1に十分な量の空気が供給されず、燃料電池スタック1が発電不能となる虞れがある。
【0044】
そこで、この状態を流量計26の空気流量から判断し、第1のシャッタ25をバイパス配管24側が開放されるように制御する。これにより、十分な量の空気がバイパス配管24を通過して燃料電池スタック1に供給されるので、フィルタ22の目詰まり等による発電不能を回避することができる。
【0045】
フィルタ22が目詰まりを起こした場合、フィルタ22の圧力損失が大きくなり、高分子吸収体23を通過してバイパス配管24に流入する空気の流量が増加する。したがって、前記流量計26によって計測される空気流量から前記フィルタ22の目詰まりを把握することが可能である。
【0046】
ここで、燃料電池スタック1の運転時に第1のシャッタ25をスプリング力により空気供給配管14側が開放(バイパス配管24側が遮断)されるようにしておき、フィルタ22の目詰まりや破損等、何らかの理由によりバイパス配管24側のガス圧>空気供給配管14側のガス圧となった場合に、これらのガス圧差によってスプリング力に抗して第1のシャッタ25をバイパス配管24側が開放されるようにし、前記異常が発生した場合に自動的に空気がバイパス配管24を通過するようにしてもよい。
【0047】
図3は、以上の流路切り替え制御における制御フローを示すものである。この制御フローでは、先ず、燃料電池スタック1が発電中であるか否かを検出する(ステップS1)。その結果、燃料電池スタック1が運転停止中であった場合には、第2のシャッタ28により排気路29を遮断すると共に、第1のシャッタ25はバイパス配管24側が開放されるように設定する(ステップS2)。一方、燃料電池スタック1が発電中であった場合には、第2のシャッタ28を開放すると共に、第1のシャッタ25は空気供給配管14側が開放されるように設定する(ステップS3)。
【0048】
そして、燃料電池スタック1の運転中には、バイパス配管24の空気流量を流量計26によってモニタリングし、バイパス配管24の空気流量を所定値K1(空気がほとんど流れていない状態)と比較する(ステップS4)。そして、バイパス配管24の空気流量が所定値K1以下である場合には、正常と判断して(ステップS5)、そのまま燃料電池スタック1の運転を続ける。
【0049】
バイパス配管24の空気流量が所定値K1を越えたときには、さらにその空気流量が異常事態の判断基準となる閾値K2を越えているか否かを判定する(ステップS6)。そして、バイパス配管24の空気流量が閾値K2を越えていなければ、フィルタ22の目詰まりと判断する(ステップS7)。一方、バイパス配管24の空気流量が閾値K2を越えている場合には、第1のシャッタ25の故障と判断する(ステップS8)。そして、これらの異常事態が生じた場合には、燃料電池スタック1に十分な空気が供給されない可能性があるので、第1のシャッタ25をバイパス配管24側が開放されるように切り替える(ステップS9)。
【0050】
本発明を適用した燃料電池システムでは、以上のような手順で流路の切り替え制御を行うことにより、燃料電池スタック1の運転時、及び燃料電池スタック1の運転停止時の何れにおいても良好な水分制御、水分管理が実現されると共に、フィルタ22の目詰まり等の異常事態が生じた場合でも、十分な量の空気を燃料電池スタック1に供給して、燃料電池スタック1が発電不能状態となる不都合を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池システム全体の基本構成を示す図である。
【図2】燃料電池スタック空気極の吸気側及び排気側の配管構成を示す図である。
【図3】流路切り替え制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 燃料電池スタック
2 制御コントローラ
13 コンプレッサ
14 空気供給配管(酸化剤供給流路)
21 吸気側入口
22 フィルタ
23 高分子吸収体
24 バイパス配管(バイパス流路)
25 第1のシャッタ(流路切り替え手段)
26 流量計(流量検出手段)
27 排気側出口
28 第2のシャッタ(排気遮断機構)
29 排気路
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車等の駆動源として用いられる燃料電池システム及びその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池システムは、燃料電池の燃料極(水素極)に水素ガス、酸化剤極(空気極)に空気をそれぞれ供給し、燃料電池において水素と酸素とを電気化学的に反応させて発電電力を得るものである。このような燃料電池システムは、例えば自動車の動力源等としての実用化に大きな期待が寄せられており、現在、実用化に向けての研究開発が盛んに行われている。
【0003】
燃料電池システムに用いられる燃料電池としては、例えば車載用に好適なものとして、固体高分子タイプの燃料電池が知られている。この固体高分子タイプの燃料電池は、燃料極と空気極との間に膜状の固体高分子が設けられたものであり、この固体高分子電解質膜が水素イオン伝導体として機能するようになっている。この固体高分子タイプの燃料電池では、燃料極で水素ガスが水素イオンと電子とに分離される反応が起き、空気極で酸素ガスと水素イオンと電子とから水を生成する反応が行われる。このとき、固体高分子電解質膜がイオン伝導体として機能し、水素イオンは固体高分子電解質膜中を空気極に向かって移動することになる。
【0004】
ところで、固体高分子電解質膜をイオン伝導体として機能させるためには、この固体高分子電解質膜にある程度の水分を含ませておく必要がある。このため、このような固体高分子タイプの燃料電池を用いた燃料電池システムでは、水素ガスや空気等の供給ガスを加湿装置により加湿した状態で燃料電池に供給することで、燃料電池の固体高分子電解質膜を加湿することが一般に行われている。
【0005】
この場合、水分管理が重要であり、燃料電池の固体高分子電解質膜が常に最適な加湿状態となるように系内の水分を制御することが必要である。特に、車載用の燃料電池システム等においては、走行や停車、駐車等に伴って作動停止と再始動が繰り返し行われることから、これらに対応した水分制御を行うことが必要になる。例えば、燃料電池を作動停止して系内の雰囲気温度が低下すると、燃料電池内や配管内の水分が凝縮し、結露を起こす。この状態で再始動しようとすると、結露による燃料電池内の湿度の低下に起因して、必要な発電効率が得られないという問題が生ずる。
【0006】
そこで、作動停止した燃料電池を再始動する場合にも最適な状態で運転を行うことのできる燃料電池用加湿システムが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の技術では、燃料電池内の固体高分子電解質膜の乾燥防止のため、燃料電池給排気経路に閉ループを形成し、外部への水分拡散を防止している。具体的には、燃料電池の停止時に前記閉ループを形成した状態とし、再始動時にはこの状態で加給装置により空気を循環させて燃料電池内の露点を調整した後、閉ループを解除して燃料電池を通常運転とする制御を行っている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−216989号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際には、例えば燃料電池システムを長期間停止させた場合、燃料電池に温度変化や気圧変動等が生じるので、給排気系に完全な閉ループを形成するのは技術的に困難である。そればかりか、長期間乾燥雰囲気中に放置された状態での燃料電池本体からの水分の拡散に対しては、その解決手段として十分でないという問題もある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の欠点を解消するために提案されたものであり、燃料電池の温度変化や気圧変動を許容しながら水分の外部流出を防止することができ、長期間に亘って固体高分子電解質膜の乾燥を防止することができる燃料電池システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、燃料電池スタックの運転停止時においては、燃料電池スタックの排気側が遮断されると共に、燃料電池スタックの吸気側には内部に高分子吸収体が配された流路が連通されるようにしたことを特徴としている。
【0011】
これを実現するための構成として、燃料電池スタックへ空気等の酸化剤ガスを供給する酸化剤供給流路に対し、内部に高分子吸収体が配されたバイパス流路を並列に設け、これら酸化剤供給流路とバイパス流路との合流位置にこれらの流路を切り替えるための流路切り替え手段を設ける。さらに、燃料電池スタックの排気側には、排気を遮断するための排気遮断機構を設ける。そして、流路切り替え手段及び排気遮断機構を制御することにより、燃料電池スタックの排気側の遮断/開放の切り替え及び吸気側の流路の切り替えを行い、運転停止時には、燃料電池スタックの排気側を遮断すると共に、燃料電池スタックの吸気側に内部に高分子吸収体が配されたバイパス流路が連通されるようにする。
【0012】
以上のような本発明の燃料電池システム及びその制御方法では、運転停止時に燃料電池スタックの排気側は遮断(密閉)されるが、吸気側は高分子吸収体を介して開放されている。したがって、燃料電池に温度変化や圧力変動が生じた場合にも、吸気側の開放によってこれが許容される。また、高分子吸収体の有する水分保持機能により、水分の外部流出が抑制される。さらに、長期間の運転停止等により燃料電池からの水分の拡散が進んだ場合、高分子吸収体に保持された水分によって逆に水分補給され、燃料電池スタック内の乾燥が抑制される。
【0013】
【発明の効果】
本発明においては、燃料電池スタックの運転停止時に、燃料電池スタックの排気側が遮断されると共に、燃料電池スタックの吸気側には内部に高分子吸収体が配された流路が連通されるようにしているので、作動停止期間中における燃料電池スタック内の温度変化や気圧変動を許容することができ、同時に水分の外部流出を防止することができる。
【0014】
また、燃料電池からの水分の拡散に対しても、安定した水分の補給が可能であり、長期間に亘って乾燥を防止することができる。さらに、酸化剤供給流路が目詰まり等を起こした場合には、バイパス流路を介して燃料電池スタックに空気を供給することができ、燃料電池スタックの発電不能を回避することができる。
【0015】
これらによって、良好な水分制御、水分管理が実現され、燃料電池システムを常に最適な状態で運転することができ、例えば長期間作動停止した後の再始動等も円滑に行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した燃料電池システム及びその制御方法について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、燃料電池システム全体の基本構成を示すものである。この燃料電池システムは、燃料電池スタック1と、この燃料電池スタック1に燃料である水素ガス(あるいは水素リッチガス)を供給する燃料供給系と、燃料電池スタック1に酸化剤ガスである空気を供給する空気供給系と、燃料電池スタック1を加湿するための加湿手段と、燃料電池スタック1を冷却する冷却機構とからなる。
【0018】
そして、燃料電池スタック1の発電電力により、例えば車両の駆動用モータを駆動する。なお、この燃料電池システムには、制御コントローラ20が設けられており、これによりアクセルペダルからのアクセルペダル信号等に基づいて燃料供給系や空気供給系が制御され、燃料電池スタック1の発電電力が制御される。さらに、この制御コントローラ20は、加湿手段の制御等も行う。
【0019】
前記構成の燃料電池システムにおいて、燃料電池スタック1は、燃料である水素が供給される燃料極(水素極)と酸化剤ガスである酸素(空気)が供給される空気極とが電解質・電極触媒複合体を挟んで重ね合わされてなる発電セルが多段に積層された構造を有し、電気化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。燃料極では、水素が供給されることで水素イオンと電子に解離し、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、空気極にそれぞれ移動する。空気極では、供給された空気中の酸素と前記水素イオン及び電子が反応して水が生成し、生成した水は外部に排出される。
【0020】
燃料電池スタック1の電解質としては、高エネルギー密度化、低コスト化、軽量化等を考慮して、固体高分子電解質膜が用いられる。固体高分子電解質膜は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能することから、この燃料電池スタック1においては水を供給して加湿することが必要になる。
【0021】
そこで、前記燃料電池システムにおいては、前記燃料電池スタック1に加湿水を供給する加湿手段が設けられている。この加湿手段は、水を循環する加湿水循環経路2、加湿水を貯留する純水タンク3、純水タンク3内の水を加湿水循環経路2に循環させる純水ポンプ4、及び純水タンク3内の水が凍結したときにこれを加熱して解凍する電熱ヒータ5とからなる。
【0022】
前記加湿手段においては、燃料電池スタック1の化学反応で生成された水が純水タンク3内に蓄えられると共に、純水ポンプ4にて燃料電池スタック1へと供給され、燃料電池スタック1の固体高分子電解質膜の加湿に利用される。氷点下では純水タンク3内に蓄えた水が凍結するが、純水タンク3には電熱ヒータ5が設置されており、この電熱ヒータ5に通電することにより凍結した生成水を解凍して燃料電池スタック1の固体高分子電解質膜の加湿に利用する。なお、加湿水は、燃料電池スタック1に直接供給しないで、燃料電池スタック1に供給するガス(水素リッチガスや空気)を加湿する加湿器を用い、ここに供給するようにしてもよい。
【0023】
前記燃料電池スタック1においては、燃料となる水素や酸化剤である空気を燃料極や空気極に供給する必要があり、そのための機構が水素供給系及び空気供給系である。
【0024】
水素供給系は、高圧水素タンク6、水素調圧弁7、エゼクタ8、水素供給配管9、及び水素循環配管10を有している。そして、水素供給源である高圧水素タンク6から供給される水素ガスは、前記水素調圧弁7及びエゼクタ8を通って水素供給配管9へと送り込まれ、燃料電池スタック1の燃料極に供給される。このとき、前記水素調圧弁は、燃料電池スタック1の燃料極通路内の圧力が負荷に応じた圧力になるように、供給される水素の圧力を制御している。
【0025】
燃料電池スタック1では、供給された水素ガスが全て消費されるわけではなく、消費されなかった水素ガス(燃料電池スタック1から排出される水素ガス)は、水素循環配管10を通ってエゼクタ8により循環され、新たに供給される水素ガスと混合されて、再び燃料電池スタック1の燃料極に供給される。これにより、水素のストイキ比(供給流量/消費流量)を1以上にすることができ、セル電圧が安定化する。
【0026】
なお、燃料電池スタック1の出口側には、パージ弁11及びパージ配管12が設けられている。水素を循環させることによって水素循環配管10内には不純物や窒素等の不活性ガスが蓄積し、水素分圧が降下していくため燃料電池1の効率が低下する。これらパージ弁11やパージ配管12を設けることで、水素循環配管10内から不純物や窒素等の不活性ガスを除去することができる。前記パージ弁11は、通常は閉じられており、燃料電池スタック1の水詰まりや不活性ガスの蓄積等によるセル電圧の低下を検知すると開けられる。
【0027】
空気供給系は、空気を送り込むコンプレッサ13、空気供給配管14、及び燃料電池スタック1の空気極の出口側に設けられた空気調圧弁15を有している。コンプレッサ13は、酸化剤としての空気を燃料電池スタック1の空気極に供給するもので、例えばモータ駆動により圧縮された空気が空気供給配管14より燃料電池スタック1の空気極に供給される。燃料電池スタック1で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、燃料電池スタック1から空気調圧弁15を介して排出される。前記空気調圧弁15は、燃料電池スタック1の空気極通路内の圧力が負荷に応じた圧力になるように、コンプレッサ13によって供給される空気の圧力を制御している。
【0028】
なお、前記構成の燃料電池システムにおいて、固体高分子電解質型の燃料電池スタック1は、適正な作動温度が80℃前後と比較的低く、過熱時には冷却することが必要である。したがって、前記燃料電池システムにおいては、通常、冷却水を循環して燃料電池スタック1を冷却し、これを最適な温度に維持する冷却機構が設けられている。
【0029】
この冷却機構は、冷媒を燃料電池スタック1に循環する冷却水循環配管16を有し、冷却水により燃料電池スタック1を冷却し、これを最適な温度に維持する。前記冷却機構の冷却水循環配管16の途中位置には、ラジエータ17が設けられており、前記燃料電池スタック1の冷却により加熱された冷却水は、ここで冷却される。また、前記ラジエータ17と並列にバイパス配管18が設けられており、冷却水バイパス流量制御弁19を制御することにより、バイパス配管18を流れる冷却水の流量が制御される。
【0030】
以上が燃料電池システム全体の基本構成であるが、本発明を適用した燃料電池システムでは、特に運転停止時の燃料電池スタック1の乾燥を防止するための機構が空気供給系に設けられている。以下、本発明の特徴部分である燃料電池スタック1の乾燥を防止するための機構について説明する。
【0031】
図2は、燃料電池スタック1空気極の吸気側及び排気側の配管構成を示すものである。燃料電池スタック1空気極の吸気側入口21には、酸化剤である空気の流路となる空気供給配管14(酸化剤供給流路)が接続されており、この空気供給配管14には、空気中の微粒子や化学物質を除去することを目的としたフィルタ22が設置されている。
【0032】
また、燃料電池スタック1空気極の吸気側入口21には、前記空気供給配管14と並列にバイパス配管24(バイパス流路)が接続されており、このバイパス配管24の内部には、水分保持機能を有する高分子吸収体23が配設されている。そして、このバイパス配管24と空気供給配管14とが吸気側入口21付近で合流する部分には、吸気側入口21と接続される経路をバイパス配管24または空気供給配管14の何れかに切り替えるための第1のシャッタ25(流路切り替え手段)が設置されている。
【0033】
ここで、高分子吸収体23としては、吸水性、水分放出速度、耐熱性、耐腐食性等を考慮し、アクリル系吸水ポリマー、ビニルアセトアミド系吸水ポリマー、セルロース系吸水ポリマー等の吸水ポリマーを用いることが望ましい。
【0034】
前記バイパス配管24の高分子吸収体23が配される位置よりも燃料電池スタック1の吸気側入口21に近い位置には、バイパス配管24を通過する空気流量を検出するための流量計26(流量検出手段)が設置されている。
【0035】
一方、燃料電池スタック1空気極の排出側出口27には、排気を遮断する機能を有する第2のシャッタ28(排気遮断機構)が設置された排気路29が接続されている。
【0036】
燃料電池スタック1空気極の吸気側及び排気側の配管構成は前述の通りであり、前記第1のシャッタ25や第2のシャッタ28は燃料電池スタック1の運転状態に応じて次のように制御される。
【0037】
燃料電池スタック1の運転状態では、第1のシャッタ25は空気供給配管14側が開放された状態に制御され、第2のシャッタ28は排気路29が開放された状態に制御される。したがって、燃料電池スタック1には、空気供給配管14を通して空気が供給され、排気ガスは排気路29から排出される。
【0038】
このとき、フィルタ22を通過するガスの圧損は、高分子吸収体23を通過するガスの圧損に対して充分に小さく設定されており、さらに燃料電池スタック1の運転時には高分子吸収体23から吸気側入口21に向かう流路(バイパス配管24)が第1のシャッタ25で遮断されているため、高分子吸収体23を通過するガス流量(空気流量)は無視できるレベルになる。
【0039】
燃料電池スタック1の停止状態では、第1のシャッタ25はバイパス配管24側が開放された状態となるように制御され、第2のシャッタ28は排気路29を遮断する状態に制御される。
【0040】
この状態では、燃料電池スタック1の雰囲気温度や気圧の変化等によって出入りするガス(空気)は、全て高分子吸収体23を通過するよう制御されており、ガスに含まれる水分は高分子吸収体23に吸収・保持される。したがって、燃料電池スタック1内の水分が外部に流出することはない。また、燃料電池スタック1の長期間の運転停止等によって燃料電池スタック1内の水の拡散が進行した場合には、高分子吸収体23に保持されている水分が逆に燃料電池スタック1内に供給され、燃料電池スタック1内の固体高分子電解質膜は保湿状態が保たれる。なお、この高分子吸収体23への水分の補給手段については、燃料電池スタック1からの排出ガスを有効利用するようにしてもよい。
【0041】
以上が本発明に特徴的な部分の基本的な制御であり、これによって燃料電池スタック1の運転時、及び燃料電池スタック1の運転停止時の何れにおいても良好な水分制御、水分管理が実現され、燃料電池システムを常に最適な状態で運転することができ、例えば長期間作動停止した後の再始動等も円滑に行うことができる。
【0042】
さらに、本例では、高分子吸収体23が配されたバイパス配管24を通過する空気流量が流量計26により検出される構成としているので、フィルタ22の目詰まりやシャッタ25の作動不良を検出し、緊急待避的に流路切り替えを行い、発電不能を回避することも可能である。
【0043】
すなわち、フィルタ22が正常な状態では、高分子吸収体23の圧損が充分に大きく、また下流に設けた第1のシャッタ25により空気はフィルタ22を通過するように流路が選択される。この状態でフィルタ22が目詰まりを起したり第2のシャッタ25が異常作動すると、燃料電池スタック1に十分な量の空気が供給されず、燃料電池スタック1が発電不能となる虞れがある。
【0044】
そこで、この状態を流量計26の空気流量から判断し、第1のシャッタ25をバイパス配管24側が開放されるように制御する。これにより、十分な量の空気がバイパス配管24を通過して燃料電池スタック1に供給されるので、フィルタ22の目詰まり等による発電不能を回避することができる。
【0045】
フィルタ22が目詰まりを起こした場合、フィルタ22の圧力損失が大きくなり、高分子吸収体23を通過してバイパス配管24に流入する空気の流量が増加する。したがって、前記流量計26によって計測される空気流量から前記フィルタ22の目詰まりを把握することが可能である。
【0046】
ここで、燃料電池スタック1の運転時に第1のシャッタ25をスプリング力により空気供給配管14側が開放(バイパス配管24側が遮断)されるようにしておき、フィルタ22の目詰まりや破損等、何らかの理由によりバイパス配管24側のガス圧>空気供給配管14側のガス圧となった場合に、これらのガス圧差によってスプリング力に抗して第1のシャッタ25をバイパス配管24側が開放されるようにし、前記異常が発生した場合に自動的に空気がバイパス配管24を通過するようにしてもよい。
【0047】
図3は、以上の流路切り替え制御における制御フローを示すものである。この制御フローでは、先ず、燃料電池スタック1が発電中であるか否かを検出する(ステップS1)。その結果、燃料電池スタック1が運転停止中であった場合には、第2のシャッタ28により排気路29を遮断すると共に、第1のシャッタ25はバイパス配管24側が開放されるように設定する(ステップS2)。一方、燃料電池スタック1が発電中であった場合には、第2のシャッタ28を開放すると共に、第1のシャッタ25は空気供給配管14側が開放されるように設定する(ステップS3)。
【0048】
そして、燃料電池スタック1の運転中には、バイパス配管24の空気流量を流量計26によってモニタリングし、バイパス配管24の空気流量を所定値K1(空気がほとんど流れていない状態)と比較する(ステップS4)。そして、バイパス配管24の空気流量が所定値K1以下である場合には、正常と判断して(ステップS5)、そのまま燃料電池スタック1の運転を続ける。
【0049】
バイパス配管24の空気流量が所定値K1を越えたときには、さらにその空気流量が異常事態の判断基準となる閾値K2を越えているか否かを判定する(ステップS6)。そして、バイパス配管24の空気流量が閾値K2を越えていなければ、フィルタ22の目詰まりと判断する(ステップS7)。一方、バイパス配管24の空気流量が閾値K2を越えている場合には、第1のシャッタ25の故障と判断する(ステップS8)。そして、これらの異常事態が生じた場合には、燃料電池スタック1に十分な空気が供給されない可能性があるので、第1のシャッタ25をバイパス配管24側が開放されるように切り替える(ステップS9)。
【0050】
本発明を適用した燃料電池システムでは、以上のような手順で流路の切り替え制御を行うことにより、燃料電池スタック1の運転時、及び燃料電池スタック1の運転停止時の何れにおいても良好な水分制御、水分管理が実現されると共に、フィルタ22の目詰まり等の異常事態が生じた場合でも、十分な量の空気を燃料電池スタック1に供給して、燃料電池スタック1が発電不能状態となる不都合を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池システム全体の基本構成を示す図である。
【図2】燃料電池スタック空気極の吸気側及び排気側の配管構成を示す図である。
【図3】流路切り替え制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 燃料電池スタック
2 制御コントローラ
13 コンプレッサ
14 空気供給配管(酸化剤供給流路)
21 吸気側入口
22 フィルタ
23 高分子吸収体
24 バイパス配管(バイパス流路)
25 第1のシャッタ(流路切り替え手段)
26 流量計(流量検出手段)
27 排気側出口
28 第2のシャッタ(排気遮断機構)
29 排気路
Claims (12)
- 燃料電池スタックの運転停止時において、前記燃料電池スタックの排気側が遮断されると共に、前記燃料電池スタックの吸気側には内部に高分子吸収体が配された流路が連通されることを特徴とする燃料電池システム。
- 前記燃料電池スタックへ酸化剤ガスを供給する酸化剤供給流路と、
内部に高分子吸収体が配され前記酸化剤供給流路と並列して設けられるバイパス流路と、
前記酸化剤供給流路と前記バイパス流路との合流位置に設けられ、これらの流路を切り替えるための流路切り替え手段と、
前記燃料電池スタックの排気を遮断するための排気遮断機構とを備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記流路切り替え手段が、バネにより付勢されるシャッタ部材よりなることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
- 前記燃料電池スタックの運転中には、前記シャッタ部材はバネ力によって前記酸化剤供給流路側が開放されるように付勢されており、
前記バイパス流路のガス圧が前記酸化剤供給流路のガス圧よりも高くなったときに前記バイパス流路のガス圧により前記シャッタ部材がバネ力に抗して押し開けられ、前記バイパス流路側が開放されることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。 - 前記酸化剤供給流路には、フィルタが設けられていることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の燃料電池システム。
- 前記バイパス流路には、当該流路におけるガスの流量を検出するための流量検出手段が設けられていることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の燃料電池システム。
- 前記高分子吸収体は、アクリル系吸水ポリマー、ビニルアセトアミド系吸水ポリマー、セルロース系吸水ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載の燃料電池システム。
- 燃料電池スタックの運転停止時に、前記燃料電池スタックの排気側を遮断すると共に、前記燃料電池スタックの吸気側には内部に高分子吸収体が配された流路が連通されるように流路の切り替えを行うことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
- 前記燃料電池スタックの吸気側に、酸化剤ガスを供給する酸化剤供給流路と、内部に高分子吸収体が配されたバイパス流路とを並列して設け、
前記酸化剤供給流路と前記バイパス流路との合流位置にこれら流路を切り替えるための流路切り替え手段を設けると共に、前記燃料電池スタックの排気を遮断するための排気遮断機構を設け、
前記流路切り替え手段及び排気遮断機構を制御することにより、前記燃料電池スタックの排気側の遮断及び吸気側の流路切り替えを行うことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システムの制御方法。 - 前記燃料電池スタックの運転中であって、前記酸化剤供給流路の圧力損失が大きい場合には、前記燃料電池スタックの吸気側に前記バイパス流路が連通されるように、前記流路切り替え手段により流路を切り替えることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記流路切り替え手段による流路の切り替えは、前記バイパス流路のガス圧と前記酸化剤供給流路のガス圧力との差によって自動的に行うことを特徴とする請求項10に記載の燃料電池システムの制御方法。
- 前記バイパス流路のガス流量を検出することにより異常を検知することを特徴とする請求項8乃至11の何れかに記載の燃料電池システムの制御方法。
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JP2006179413A (ja) * | 2004-12-24 | 2006-07-06 | Toshiba Corp | 燃料電池 |
JP2007311305A (ja) * | 2006-05-22 | 2007-11-29 | Toyota Motor Corp | 燃料電池システム、燃料電池車 |
JP2012150945A (ja) * | 2011-01-18 | 2012-08-09 | Toto Ltd | 燃料電池装置 |
JP2016162539A (ja) * | 2015-02-27 | 2016-09-05 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 燃料電池発電装置 |
-
2002
- 2002-10-23 JP JP2002308172A patent/JP2004146147A/ja active Pending
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