JP2004145282A - 位相差板及びその製造方法、それを用いた円偏光板及び1/2波長板、並びに、反射型液晶表示装置 - Google Patents

位相差板及びその製造方法、それを用いた円偏光板及び1/2波長板、並びに、反射型液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板を、簡易な工程により効率的に、連続的に低コストで製造可能で、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため、原材料の選択性の大きい位相差板の製造方法等の提供。
【解決手段】固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成する縦延伸フィルム形成工程、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する横延伸フィルム形成工程、及び、前記縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる積層工程、を有する位相差板の製造方法等である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パソコン、AV機器、携帯型情報通信機器、ゲームやシミュレーション機器、及び車載用のナビゲーションシステム等、種々の分野の表示装置に利用可能な、位相差板、その製造方法、及びそれを利用した円偏光板、1/2波長板並びに反射型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レターデーション(Re)が波長の1/4である1/4波長板は、反射型液晶表示装置、光ディスク用ピックアップ及び防眩フィルム等の種々の用途に用いられている。一方、レターデーション(Re)が波長の1/2である1/2波長板も、液晶プロジェクター等の種々の用途を有する。
前記1/4波長板及び1/2波長板は、種々の用途において、可視光領域の全ての入射光に対して、その機能が充分に発揮されることが望まれる。この場合、可視光領域全域の入射光に対してその機能を充分に発揮し得る広帯域位相差板としては、相互に異なる光学異方性を有する2枚のポリマーフィルムを積層して形成したものなどが挙げられる(例えば、特許文献1〜4等参照)。
【0003】
しかしながら、従来の積層型位相差板では、その製造のために、一方向に延伸した延伸複屈折フィルムを延伸方向に対して相互に異なる角度を為す方向にカットした2種のチップを形成し、このチップを粘着材によって貼合し、積層する必要があった。また、2枚のチップを貼合させる際には、粘着材塗工、チップ化、貼合に伴うコストアップだけでなく、チップ貼合に伴う角度ズレによる性能低下など、性能上に及ぼす影響も無視できないという問題があり、その改善が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−27118号公報
【特許文献2】
特開平5−100114号公報
【特許文献3】
特開平10−68816号公報
【特許文献4】
特開平10−90521号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題に鑑みてなされたものであって、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、簡易な工程により効率的に、連続的に、低コストで製造可能であり、連続的に巻き取り可能であるため保管も簡便かつ容易で、更に、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板、特に広帯域1/4波長板、広帯域1/2波長板、及び、広帯域円偏光板、並びに前記位相差板を利用した表示の明るさが改善された反射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板を、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能であると共に、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため、原材料の選択性の大きい位相差板の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)、及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)であることを特徴とする位相差板である。
<2> 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の位相差板である。
<3> 2種以上の材料における固有複屈折値が負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の位相差板である。
<4> 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であり、各層における遅相軸が互いに直交した前記<1>に記載の位相差板である。
<5> 各層における分子鎖の配向軸が互いに直交した前記<1>から<3>のいずれかに記載の位相差板である。
<6> 各層における分子鎖の配向軸が互いに平行である前記<1>及び<4>のいずれかに記載の位相差板である。
<7> 接着層を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の位相差板である。
<8> 材料が樹脂である前記<1>から<7>のいずれかに記載の位相差板である。
<9> 材料のうち少なくとも1種が、ノルボルネン系ポリマーである前記<1>から<8>のいずれかに記載の位相差板である。
<10> 材料のうち少なくとも1種が、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー及びポリカーボネート系ポリマーから選択される少なくともいずれかである前記<1>から<9>のいずれかに記載の位相差板である。
<11> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値の差が互いに0.03以上である2種の層を含む前記<1>から<10>のいずれかに記載の位相差板である。
<12> 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値が互いに異なる2種の層を含み、該2種の層のうち、Re(450)/Re(550)の値が小さい層におけるRe(550)の値が、Re(450)/Re(550)の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きい前記<1>から<11>のいずれかに記載の位相差板である。
<13> 光弾性が20ブルースター以下である前記<9>に記載の位相差板である。
<14> 波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、λ=450nm、550nm、及び650nmにおいて、各々下記関係式を満たす前記<1>から<13>のいずれかに記載の位相差板である。
0.2≦Re(λ)/λ≦0.3
<15> 波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、λ=450nm、550nm、及び650nmにおいて、各々下記関係式を満たす前記<1>から<14>のいずれかに記載の位相差板である。
0.4≦Re(λ)/λ≦0.6
<16> 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、該2種以上の材料のうち材料Aが、搬送されつつ搬送方向と同方向に延伸されて縦延伸フィルムとされ、前記2種以上の材料のうち材料Bが、搬送されつつ搬送方向と直交する方向に延伸されて横延伸フィルムとされる前記<1>から<2>のいずれかに記載の位相差板である。
<17> 2種以上の材料における固有複屈折値が負であって、該2種以上の材料のうち材料Cが、搬送されつつ搬送方向と同方向に延伸されて縦延伸フィルムとされ、前記2種以上の材料のうち材料Dが、搬送されつつ搬送方向と直交する方向に延伸されて横延伸フィルムとされる前記<1>及び<3>のいずれかに記載の位相差板である。
<18> 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であって、該2種以上の材料が、搬送されつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸されて、縦延伸フィルム又は横延伸フィルムとされる前記<1>及び<4>のいずれかに記載の位相差板である。
<19> 延伸フィルムが、共に同方向に搬送されつつ貼り合わされた前記<16>から<18>のいずれかに記載の位相差板である。
<20> 延伸フィルムが、遅相軸を互いに直交させて貼り合わされた前記<16>から<19>のいずれかに記載の位相差板である。
<21> 偏光板と、前記<15>に記載の位相差板とを積層してなり、前記偏光板の偏光板透過軸と前記位相差板の遅相軸とが交差してなることを特徴とする1/2波長板である。
<22> 偏光板透過軸と遅相軸とが30度以上60度以下の角度で交差してなる前記<21>に記載の1/2波長板である。
<23> 偏光板と、前記<14>に記載の位相差板とを積層してなり、前記偏光板の偏光板透過軸と前記位相差板の遅相軸とが交差してなることを特徴とする円偏光板である。
<24> 偏光板透過軸と遅相軸とが30度以上60度以下の角度をなして交差してなる前記<23>に記載の円偏光板である。
<25> 反射板、液晶セル及び偏光板をこの順に積層してなり、該反射板と該偏光板との間に前記<1>から<20>のいずれかに記載の位相差板を有する反射型液晶表示装置である。
<26> 前記<1>及び<2>のいずれかに記載の位相差板の製造方法であって、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成する縦延伸フィルム形成工程、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する横延伸フィルム形成工程、及び、前記縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる積層工程、を有することを特徴とする位相差板の製造方法である。
<27> 前記<1>及び<3>のいずれかに記載の位相差板の製造方法であって、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成する縦延伸フィルム形成工程、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する横延伸フィルム形成工程、及び、前記縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる積層工程、を有することを特徴とする位相差板の製造方法である。
<28> 前記<1>及び<4>のいずれかに記載の位相差板の製造方法であって、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸して縦延伸フィルム又は横延伸フィルムを形成する延伸フィルム形成工程、及び、該延伸フィルムを積層させる積層工程、を有することを特徴とする位相差板の製造方法である。
<29> 積層工程が、延伸フィルムを、共に同方向に搬送して行われる前記<26>から<28>のいずれかに記載の位相差板の製造方法である。
<30> 積層工程が、延伸フィルムにおける遅相軸を互いに直交させて貼り合わせることにより行われる前記<26>から<29>のいずれかに記載の位相差板の製造方法である。
<31> 縦延伸フィルム形成工程、横延伸フィルム形成工程、及び、積層工程が、連続的に行われる前記<26>から<30>のいずれかに記載の位相差板の製造方法である。
<32> 積層工程が、接着剤を用いて貼り合わせることにより行われる前記<26>から<31>のいずれかに記載の位相差板の製造方法である。
【0007】
本発明の位相差板は、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)、及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)である。その結果、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を有し、広帯域1/4波長板、広帯域1/2波長板、及び、広帯域円偏光板、並びに表示の明るさが改善された反射型液晶表示装置に好適に用いることができる高品質な位相差板が得られる。
【0008】
本発明の位相差板の製造方法は、本発明の前記位相差板の製造方法であって、第一の態様として、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成する縦延伸フィルム形成工程、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する横延伸フィルム形成工程、及び、前記縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる積層工程、を有すること、また、第二の態様として、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成する縦延伸フィルム形成工程、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する横延伸フィルム形成工程、及び、前記縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる積層工程、を有すること、また、第三の態様として、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向及び直交する方向のいずれかに延伸して縦延伸フィルム及び横延伸フィルムのいずれかを形成する延伸フィルム形成工程、及び、該延伸フィルムを積層させる積層工程、を有すること、のいずれかである。
前記第一の態様から第三の態様に係る位相差板の製造方法によれば、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板を、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能であると共に、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため、原材料の選択性の大きい位相差板を効率よく製造することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(位相差板及び位相差板の製造方法)
本発明の位相差板は、固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)、及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)である。本発明の位相差板において、入射光は、前記固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層した層によって位相差特性を与えられる。
【0010】
本発明の位相差板においては、固有複屈折値が正同士の2種以上の材料を積層した第1の態様、固有複屈折値が負同士の2種以上の材料を積層した第2の態様、及び、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を積層した第3の態様、の3種類の態様が含まれる。
【0011】
−第1の態様の位相差板−
前記第1の態様の位相差板は、2種以上の固有複屈折値が正の材料を積層した態様である。第1の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0012】
尚、前記第1の態様において、固有複屈折値が正の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が正の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(450)/Re(550)の値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0013】
前記第1の態様においては、このように位相差板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第1の態様の位相差板においては、共に固有複屈折値が正の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0014】
<第1の態様における材料>
前記第1の態様における材料としては、前記固有複屈折値が正である材料(以下、単に「正の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記、「固有複屈折値が正である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に正の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記正の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなる樹脂をいう。
前記正の材料としては、樹脂、棒状液晶、棒状液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0015】
前記樹脂としては、例えば、オレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマーなど)、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が負であるものもある)、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明においては、これらの中でも、(Re(450)/Re(550))の値が低い方の層に用いる材料としては、オレフィン系ポリマーが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でも、光透過率特性、耐熱性、寸度安定性、光弾性特性等の観点から、ノルボルネン系ポリマーが特に好ましい。前記オレフィン系ポリマーとしては、日本合成ゴム社製の「アートソー」、日本ゼオン社製の「ゼオネックス」及び「ゼオノア」、三井石油化学製の「APO」等が好適に利用される。
【0017】
前記ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有してなり、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好適に利用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0019】
【化1】
Figure 2004145282
【0020】
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0021】
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)又は(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0022】
【化2】
Figure 2004145282
【0023】
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0024】
前記ノルボルネン系ポリマーの質量平均分子量としては、5,000〜1,000,000程度であり、8,000〜200,000が好ましい。
【0025】
前記第1の態様における材料として、含有可能なその他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
尚、本発明の位相差板(第1〜第3の態様の位相差板)を光学用途(表示素子等)に利用する場合、前記材料(固有複屈折値が正の材料又は負の材料)が樹脂である場合のガラス転移点としては、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0027】
<第1の態様における位相差板の構成等>
前記第1の態様における位相差板は、前述したように、固有複屈折値が正で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第1の態様においては、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、使用しても、発現されるレターデーションの波長分散性に影響を与えないのが好ましく、特に、可視光全域の入射光に対して、影響を与えない材料が好ましい。
【0028】
前記接着層の材料としては、各層における材料と親和性がある材料が好適に使用される。具体的には、前記固有複屈折値が正の樹脂としてノルボルネン系ポリマーを使用した場合、接着層の材料としては、脂肪族エステル系、脂肪族エステルウレタン系、芳香族エステル系、芳香族エステルウレタン系、及び、エーテル系等のポリマーを含む接着剤等が挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記第1の態様における位相差板の厚みとしては、30〜300μmが好ましく、50〜250μmがより好ましい。前記各層の厚みとしては、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましい。前記接着層の厚みとしては、該接着層の複屈折と厚みとの積が小さくなる程好ましく、具体的には、0.2〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。
【0030】
<第1の態様における位相差板の製造方法等>
本発明における位相差板の製造方法のうち、第1の態様における位相差板の製造方法では、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成し(縦延伸フィルム形成工程)、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する(横延伸フィルム形成工程)。
【0031】
尚、前記「材料A」及び「材料B」は、互いに固有複屈折値が異なる材料である。第1の態様における位相差板の製造方法において、固有複屈折値が正の3種類以上の材料を各々積層させる場合、固有複屈折値が正の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料によって2種類に分け、各々の材料を「材料A」、「材料B」として延伸する。
【0032】
前記延伸の方法としては、一軸延伸でもよく、厚み方向を制御する目的から、二軸延伸を行ってもよい。
尚、二軸延伸を行う場合には、得られる位相差板において、縦及び横のいずれかの方向に主に分子鎖を配向させることにより、各層における配向軸同士が互いに直交するように延伸することが必要である。
【0033】
前記延伸の後、形成された縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる(積層工程)のが好ましい。該積層工程においては、効率及び省スペース化の点で、延伸フィルムを共に同方向に搬送しつつ積層させるのが好ましい。該積層の方法としては、各延伸フィルムを貼り合わせるのが好ましく、各延伸フィルムの遅相軸を互いに直交させて貼り合わせるのが特に好ましい。このようにして位相差板を製造することにより、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板を、固有複屈折値が正同士の原材料を用いて、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能である。
【0034】
前記貼り合わせの方法としては、特に制限はないが、接着剤を塗布して貼り合わせる方法、接着フィルムを各層間に挟んで貼り合わせる方法、接着剤を利用してドライラミネート法により貼り合わせる方法、などが挙げられる。
【0035】
前記接着剤、接着フィルムの材料としては、前述した接着層の材料と同様である。接着剤の塗布量としては、固形分の質量で1〜10g/m程度が好ましい。また接着フィルムの厚みとしては、0.5〜10μm程度が好ましい。
【0036】
前記ドライラミネート法は、一般的に、接着剤を一方の接着対象物に均一に塗布し、乾燥させた後、他方の接着対象物に加圧条件で圧着して行われる。該ドライラミネート法においては、接着剤が貼り合わせ用のロール等に付着しないよう、接着対象物の両側に接着剤を塗布しない部分を残して貼合せたり、ロール間の押圧の解除が自動的に行われるのが好ましい。該ドライラミネート法に用いる接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂系の接着剤が好ましく、特に、主剤(OH基含有化合物)及び硬化剤(NCO基含有化合物)を混合して反応させる二液硬化型の接着剤が好ましい。該接着剤は、溶剤に溶解して接着剤溶液として使用してもよく、溶剤を使用しない無溶剤型の接着剤であってもよいが、省エネルギー化、残留溶剤量の低減、及び高速化の観点からは、無溶剤型が好ましい。溶剤を用いる場合、該溶剤としては、例えば、トルオール酢酸エチレン、酢酸エチル等の溶剤が好ましい。この場合、接着剤溶液における固形分濃度としては、20〜40質量%程度が好ましい。前記加圧の圧力としては、1〜50kg/cm程度が好ましい。また、該ドライラミネート法によって3種以上の材料を積層して3層以上の積層体からなる位相差板を作製する場合には、2種の層を貼り合わせて積層させた段階で、積層体の巻き取り工程を設けずに3層目の貼り合わせ工程に移す等の方法によって作業の効率化を図るのが好ましい。
【0037】
ここで、前記ドライラミネート法の一例を、図1を用いて具体的に説明する。図1に示すドライラミネート機200は、第一の延伸フィルム供給手段と、第二の延伸フィルム供給手段と、接着剤塗布手段と、搬送手段と、加熱乾燥手段と、貼り合わせ手段と、巻き取り手段とを有する。
【0038】
第一の延伸フィルム供給手段は、第一の延伸フィルム208aを供給する第一フィルム送り出し機203を有する。
第二の延伸フィルム供給手段は、第二の延伸フィルム208bを供給する第二フィルム送り出し機204を有する。
接着剤塗布手段は、接着剤を収容する接着剤収容器202と、接着剤塗布ローラ206a,206bと、ドクターブレード209とを有する。該接着剤塗布手段において、接着剤塗布ローラ206aは、その表面が、前記接着剤及び第一の延伸フィルム208aと当接するように配され、接着剤塗布ローラ206bは、その表面が、第一の延伸フィルム208aと当接するように配されている。該接着剤塗布手段においては、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が、ローラの矢印方向への回転に伴い、ドクターブレード209によって適宜掻き落とされて均一な厚みに調整され、第一の延伸フィルム208aに均一に塗布される。
前記搬送手段は、回転により第一の延伸フィルム208aを搬送可能な搬送ローラ207a、搬送ローラ207bを有する。
前記加熱乾燥手段は、第一の延伸フィルム208aに塗布された接着剤を乾燥可能な加熱乾燥器201を有する。
前記貼り合わせ手段は、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bを貼り合わせ可能な貼り合わせ・ニップローラ210a,210bを有する。
【0039】
ドライラミネート機200においては、先ず、矢印方向に回転する第一フィルム送り出し機203から、第一の延伸フィルム208aが供給され矢印方向に搬送される。接着剤塗布ローラ206a,206bまで搬送された第一の延伸フィルム208aは、接着剤塗布ローラ206a,206b間を、ロールに当接しつつ搬送される際に、接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が均一に塗布される。その後、更に矢印方向に搬送されて搬送ローラ207a上を通って加熱乾燥器201まで搬送される。加熱乾燥器201まで搬送された第一の延伸フィルム208aにおいては、表面に均一に塗布された接着剤が加熱により乾燥される。更に、第一の延伸フィルム208aは矢印方向に搬送され、搬送ローラ207b上を通って、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。一方、矢印方向に回転する第二フィルム送り出し機204からは、第二の延伸フィルム208bが供給され、矢印方向に、貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。貼り合わせ・ニップローラ210a,210bにおいては、ニップ部での加圧により、第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bが貼り合わせられ、これらが積層された位相差板が製造される。製造された位相差板は、巻き取り機205まで搬送され、巻き取られる。
【0040】
前記固有複屈折値が正の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0041】
前記第1の態様における位相差板の製造方法の一実施態様を、図2を用いて概略的に説明する。
図2に示す延伸・貼り合わせ機10は、縦延伸部1と、貼り合わせ部2と、横延伸部3とを備えている。
縦延伸部1は、縦延伸低速ローラ1a,1bと、縦延伸高速ローラ1c,1dとからなる。
貼り合わせ部2は、貼り合わせ・ニップローラ2a,2b及び接着剤塗布ローラ2c,2dからなる。
横延伸部3は、搬送方向調整ローラ3a及び横延伸機3bからなる。
延伸・貼り合わせ機10において、縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1d、貼合わせ・ニップローラ2a,2b、接着剤塗布ローラ2c,2d、及び、搬送方向調整ローラ3aは、各々不図示の駆動部により回転可能である。縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dは、上流から下流に向かってこの順に配されている。縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dの周辺及びその内部には、各々不図示の加熱手段が設置され、延伸対象物の延伸温度を適宜制御可能である。
【0042】
延伸・貼り合わせ機10においては、まず、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aと、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bとが、図2の矢印方向(搬送方向)に搬送されてくる。ここで、縦延伸高速ローラ1c及び縦延伸高速ローラ1dは、縦延伸低速ローラ1a及び縦延伸低速ローラ1bより高速で回転するように設定されており、また、縦延伸低速ローラ1a及び縦延伸高速1cは、縦延伸低速ローラ1b及び縦延伸高速ローラ1dと逆方向(図に示す矢印方向)に回転するように設定されている。
【0043】
延伸・貼り合わせ機10における縦延伸部1に搬送されてきた、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、各縦延伸低速ローラ1a,1b、縦延伸高速ローラ1c,1dに順次当接し、図示した搬送方向に搬送されつつ、縦延伸低速ローラ1a,1bと、縦延伸高速ローラ1c,1dとの回転速度差により張力を付与され、この回転速度差によって搬送方向(フィルムの長手方向)に延伸される。またこのとき、前記加熱手段により、材料Aの延伸時に温度制御が可能であるため、材料Aは、材質、延伸速度(ローラの速度差)等に応じて好適な延伸条件に容易に調整される。延伸後、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aは、図示した方向に回転する貼合せ・ニップローラ2a,2bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
【0044】
一方、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bは、搬送方向調整ローラ3a下を通って、図示した搬送方向に搬送されつつ、横延伸部3における横延伸機(テンター延伸機)3bにより横延伸(テンター延伸等)され、貼り合わせ部2における接着剤塗布ローラ2c,2dにより接着剤が塗布された後、貼り合わせ・ニップローラ2a,2bにおいて、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bと接着剤を介して貼り合わせられ、更に図示した搬送方向に搬送されていく。
延伸・貼り合わせ機10において、延伸倍率や延伸温度等を、各ロールの回転速度、加熱手段等によって適宜調整することにより、目的のレターデーションを有する第1の態様における位相差板を効率的に製造することができる。
【0045】
前記加熱手段としては、延伸対象物を適切な温度に加温することができれば特に制限はなく、公知の加熱手段を総て好適に用いることができるが、例えば、熱風、加熱ロール等のほか、近赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ等の赤外線ヒータ、などの各種熱源が挙げられる。これらの加熱手段としては、加熱のみならず、温度を制御可能な装置を備えているのが好ましい。これらの加熱手段は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
縦延伸部1におけるローラ数としては、特に制限はなく、延伸対象物の材質、延伸速度等により適宜選択可能である。
【0047】
また、図2に示す実施態様においては、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸、及び、貼り合わせを連続的に行っているが、本発明においては、これに何ら限定されることはなく、例えば、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Aの延伸と、固有複屈折値が正の樹脂からなる材料Bの延伸とを、別途独立して行ってもよい。また各フィルムの延伸と貼り合わせとを別途独立して行ってもよい。これらの場合には、延伸した各フィルムを一時的に巻き取っておく等によって、省スペースの点で有利となる。
【0048】
また、前述の実施形態において、接着方法としてドライラミネート法を採用する場合には、接着剤塗布ローラ2c,2d及び貼り合わせ・ニップローラ2a,2bの間に、接着剤を乾燥させる乾燥手段を設けるのが好ましい。該乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法、例えば、温風乃至熱風による乾燥、脱湿風による乾燥、等が挙げられる。
【0049】
また前記延伸温度としては、特に制限はないが、各層における基本材料(固有複屈折値が正の材料)の最低ガラス転移温度をTg(min)としたとき、(Tg(min)−30)℃〜(Tg(min)+30)℃に設定するのが好ましい。
【0050】
第1の態様における位相差板の製造方法においては、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第1の態様の位相差板は、固有複屈折値が正の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体の遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型位相差板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に位相差板の製造が行われる。また、製造された位相差板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0051】
−第2の態様の位相差板−
前記第2の態様の位相差板は、2種以上の固有複屈折値が負の材料を積層した態様である。第2の態様においては、前記第1の態様の位相差板と同様に、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに直交させることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0052】
尚、前記第2の態様において、固有複屈折値が負の3種類以上の材料を各々積層させる場合、これらの各層における分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸を互いに直交させるには、これら固有複屈折値が負の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料を1種類の材料と見なすことにより、Re(450)/Re(550)の値によって概ね2種類の材料に分類し、これらの2種類の材料同士が、その分子鎖の配向方向(配向軸)乃至遅相軸が互いに直交するように各層を材料毎に積層するのが好ましい。
【0053】
前記第2の態様においては、このように位相差板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第2の態様の位相差板においては、共に固有複屈折値が負の異なる値である2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0054】
<第2の態様における材料>
前記第2の態様における材料としては、前記固有複屈折値が負である材料(以下、単に「負の材料」と称することがある。)のほか、所望により含有可能なその他の成分等が挙げられる。前記「固有複屈折値が負である材料」とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した際に、光学的に負の一軸性を示す特性を有する材料をいう。
例えば、前記負の材料が樹脂である場合、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる樹脂をいう。
前記負の材料としては、樹脂、ディスコティック液晶、ディスコティック液晶ポリマー等種々のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも樹脂が好ましい。
【0055】
前記樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー(スチレン及び/又はスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合体)、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が正であるものもある)、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記ポリスチレン系ポリマーとしては、スチレン及び/又はスチレン誘導体と、アクリルニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート及びブタジエンから選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましい。本発明においては、これらの中でも、ポリスチレン、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー及びポリメチルメタクリレート系ポリマーの中から選択される少なくとも1種が好ましく、これらの中でも、複屈折発現性が高いという観点から、ポリスチレン及びポリスチレン系ポリマーがより好ましく、耐熱性が高い点で、スチレン及び/又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。
【0057】
<第2の態様における位相差板の構成等>
前記第2の態様における位相差板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第2の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第2の態様における位相差板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0058】
<第2の態様における位相差板の製造方法等>
本発明における位相差板の製造方法のうち、第2の態様における位相差板の製造方法では、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成し(縦延伸フィルム形成工程)、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する(横延伸フィルム形成工程)。
【0059】
尚、前記「材料C」及び「材料D」は、互いに固有複屈折値が異なる材料である。第2の態様における位相差板の製造方法において、固有複屈折値が負の3種類以上の材料を各々積層させる場合、固有複屈折値が負の材料のうち、Re(450)/Re(550)の値が近い材料によって2種類に分け、各々の材料を、「材料C」、「材料D」として延伸する。
【0060】
前記第2の態様における位相差板の製造方法において、延伸の方法や、積層工程等の好ましい態様は、第1の態様における位相差板の製造方法と総て同様である。また前記固有複屈折値が負の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0061】
前記第2の態様における位相差板の製造は、前記第1の態様における位相差板の製造方法と同様に、例えば、図2に概略的に示した延伸・貼り合わせ機10を用い、固有複屈折値が負の各材料を、各層における遅相軸が互いに直交するように縦延伸及び横延伸を行うことにより、効率的に行うことができる。
【0062】
第2の態様における位相差板の製造方法において、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を直交させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第2の態様の位相差板は、固有複屈折値が負の同符号である2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各層の延伸方向を直交させることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型位相差板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に位相差板の製造が行われる。また、製造された位相差板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0063】
−第3の態様の位相差板−
前記第3の態様の位相差板は、2種以上の固有複屈折値が正及び負の材料を積層した態様である。第3の態様においては、各層における分子鎖の配向方向(配向軸)を互いに平行にすることにより、各層の遅相軸を互いに直交させるのが好ましい。
【0064】
前記第3の態様においては、延伸条件等を調整することによってこのように位相差板を作製することにより、発現するレターデーションが、各層が有する特性が相殺された結果の複合体としてのレターデーションとなる。第3の態様の位相差板においては、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を組合せ、更に、延伸方向、延伸倍率等の延伸条件を調整することにより、発現するレターデーションの波長分散特性が制御され、可視光全域の入射光に対して、Re/λが略均一な位相差特性が与えられる。
【0065】
<第3の態様における材料>
前記固有複屈折値が正である材料及び負である材料は前述した通りである。
【0066】
<第3の態様における位相差板の構成等>
前記第3の態様における位相差板の構成としては、前述したように、固有複屈折値が正及び負で、異なる2種以上の材料を積層した構成である。第3の態様においても、前記第1の態様と同様、更に、各層間を良好に接着可能な接着層を有するのが好ましい。該接着層の材料としては、前記第1の態様と同様である。
前記第3の態様における位相差板の厚み、各層の厚み、接着層の厚みとしては各々、前記第1の態様と同様である。
【0067】
<第3の態様における位相差板の製造方法等>
本発明における位相差板の製造方法のうち、第3の態様における位相差板の製造方法では、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸して縦延伸フィルム又は横延伸フィルムを形成する(延伸フィルム形成工程)。
前記延伸の方法、積層工程等の好ましい態様は、第1の態様における方法と総て同様である。また前記固有複屈折値が正及び負の材料としては、前述した通りであり、好ましい材料等も前述した通りである。
【0068】
第3の態様における位相差板の製造方法において、効率的に前記遅相軸を直交させて積層するには、各延伸フィルムの搬送方向を一致させると共に延伸方向を一致させて延伸すればよく、敢えてチップを切り出す等の工程を省くことができる。即ち、前記第3の態様の位相差板は、固有複屈折値が正及び負の2種以上の樹脂を各々用いた層の積層体であるため、各延伸フィルムの延伸方向を平行にすることにより、2層以上の積層体における遅相軸を必然的に直交させることができる。これにより、従来の積層型位相差板の製造に必要であった延伸フィルムのチップ切り取り時やチップ貼合時の微妙且つ煩雑な角度合わせ等の操作を経る必要がなく、簡易な工程により効率的に、且つ連続的に位相差板の製造が行われる。また、製造された位相差板を連続的に巻き取り可能であるため、保管も簡便かつ容易である。
【0069】
−本発明の位相差板の諸物性等−
本発明の位相差板における光弾性としては、20ブルースター以下が好ましく、10ブルースター以下がより好ましく、5ブルースター以下が更に好ましい。これは、以下の理由による。
一般的に、位相差板は表示素子の部材等に用いられる際に他の部材(例えば、偏光板)と貼合される。貼合の際にかかる応力には偏りがあり、中央部と比較して端部においてより大きな応力がかかる。その結果、レターデーションに違いが生じ、端部は白っぽく光抜けし、表示素子においては表示特性を低下させる場合がある。したがって、位相差板の光弾性が前記数値範囲内にあると、貼合の際に応力の偏りがあっても、部分的にレターデーション(Re)に差が生じるのを抑制でき、表示素子等の部材としてより有益である。
【0070】
−本発明の位相差板における材料の好ましい組合せ−
本発明の位相差板においては、可視光全域における波長分散特性の観点から、波長450nm、550nm及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)、及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たしていれば特に制限はないが、下記諸物性を具備するのが更に好ましい。
【0071】
波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)値の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が有する特性が好適に相殺された結果のレターデーションを得る観点から、積層された各層が、少なくとも、(Re(450)/Re(550))の値の差が、互いに0.03以上である2種の層の組合せを含むのがより好ましい。また、互いに0.05以上である2種の層の組合せを含むのが更に好ましい。
更に、波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、特に1/4波長板、1/2波長板として好適な位相差板を得る観点から、積層された各層が、少なくとも(Re(450)/Re(550))の値が互いに異なる2種の層の組み合せを含み、該2種の層のうち、(Re(450)/Re(550))の値が小さい層におけるRe(550)の値が、(Re(450)/Re(550))の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きいのが好ましい。
以上のように組み合わされる層の、位相差板における位置としては、特に制限はなく、上下で互いに接して積層された層でもよく、互いに接していなくてもよい。
前記材料の好ましい組合せとしては、波長450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、各々、Re(450)、Re(550)、及びRe(650)としたとき、これらがRe(450)<Re(550)<Re(650)を効果的に満たす観点から、固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有屈折値の波長分散が小さい材料を選択し、且つ、他の固有複屈折値が正又は負の樹脂として、その固有複屈折値の波長分散が大きい材料を選択して組合せるのが特に好ましい。
【0072】
例えば、前記第1の態様において、前記固有複屈折値が正で、かつレターデーション(Re)が高い材料として、前記ノルボルネン系ポリマーを使用する場合、前記他の固有複屈折値が正の材料(レターデーション(Re)が小さい材料)としては、その固有複屈折値の波長分散が大きいものが好ましく、具体的には、波長450nm、波長550nmの固有複屈折値(Δn)を、各々、Δn(450)、Δn(550)としたとき、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのが好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)|≧1.02
さらに、下記関係式を満たす樹脂から選ばれるのがより好ましい。
|Δn(450)/Δn(550)|≧1.05
尚、|Δn(450)/Δn(550)|の値は大きい程好ましいが、樹脂の場合、一般的には2.0以下である。
【0073】
より具体的に、前記(Re(450)/Re(550))の値が大きい材料としては、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー(例えば、ポリフェニレンサルファイドなど)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリアリルサルホン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、などが好ましく、特に、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、及びポリアリレート系ポリマーなどが好ましい。
また、前記(Re(450)/Re(550))の値が小さい材料としては、オレフィン系ポリマー及びシクロオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等)、セルロースエステル系ポリマー、などが好ましく、オレフィン系ポリマーの中でもノルボルネン系ポリマーとの組合せが特に好ましい。
【0074】
また本発明の位相差板においては、各層に用いる材料の質量比、延伸温度及び延伸倍率等を調整することで、前記Re(450)<Re(550)<Re(650)の特性を満たすことができる。
例えば、本発明の位相差板が前記第1の態様であって、固有複屈折値が正の材料(樹脂)として、ノルボルネン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリカーボネートを各々用いる場合には、短波長側が大きくレターデーション減少し、結果としてRe(450)<Re(550)<Re(650)の特性が得られる。延伸温度を前述の範囲内に制御することで、特に可視光波長全域にわたってRe(λ)/λを一定とし、広帯域にわたって均一な位相差特性を示す位相差板が得られる。また、延伸倍率の調整により、広帯域1/4波長、1/2波長の特性を得ることができる。
【0075】
以上のように、本発明の位相差板は、広帯域(可視光域)の光に対して均一な位相差特性を与えることができると共に、積層体であるにもかかわらず、簡易な工程によって効率的、かつ、低コストで製造可能である。また本発明の位相差板は、原材料を選択する際に材料の相溶性を考慮する必要がなく、更に、固有複屈折値が正同士、負同士、及び正及び負の組合せ、など、いずれの組合せでも製造可能であるため材料の選択の幅が広く好ましい。更に、コストが安い等の点でも有利である。
【0076】
−本発明の位相差板の実施形態等−
本発明における位相差板の実施形態の一例を図3に示す。
位相差板100は、前記第1の態様の位相差板であり、固有複屈折値が正の樹脂からなる層101と、該樹脂とは異なる正の固有複屈折値を有する樹脂からなる層102とが積層されている。
層101及び層102は、各々複屈折を有し、その遅相軸を互いに直交させて積層されている。即ち、層101に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向と、層102に含有される、前記固有複屈折値が正の樹脂における分子鎖の配向方向とは直交している。位相差板100のレターデーションは、層101及び層102における各レターデーションの和となるので、層101と層102とを遅相軸を互いに直交させて積層することによって、位相差板100の短波長側のレターデーションを小さく、且つ長波長側のレターデーションを大きくすることができる。その結果、位相差板100の波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長との比Re(λ)/λを、可視光全域において略一定にすることができる。
【0077】
尚、前記実施形態においては、固有複屈折値が正の異なる2種の樹脂からなる層を、各々1層有する構成の位相差板の具体例を示したが、本発明の位相差板はこれに限定されることはなく、更に、3層、4層と、3層以上が積層された構成であってもよい。3層以上の多層が積層された構成とすることにより、位相差板の物理的特性がより改良され好ましい。
【0078】
−本発明の位相差板の用途等−
本発明の位相差板は、Re(λ)/λを調整することにより、広帯域1/4波長板とすることができ、パソコン、AV機器、携帯型情報通信機器、ゲームやシミュレーション機器、車載用のナビゲーションシステム等、種々の分野の表示装置として用いられ反射型液晶表示装置に利用可能である。また、本発明の位相差板は、Re(λ)/λを調整することにより、広帯域1/2波長板とすることができ、プロジェクター用PBS等に利用可能である。
【0079】
本発明の位相差板を円偏光板(λ/4板)として用いる場合、波長450nm〜650nmまでの広い範囲で、少なくとも波長450nm、550nm、及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/波長)の値が0.2〜0.3であるのが好ましい。少なくとも波長450nm、550nm及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/波長)の値が0.23〜0.27であるのがより好ましく、0.24〜0.26が更に好ましい。
【0080】
また、本発明の位相差板をλ/2板として用いる場合、波長450nm〜650nmまでの広い範囲で、少なくとも波長450nm、550nm、及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/波長)の値が0.40〜0.60が好ましく、少なくとも波長450nm、550nm、及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/波長)の値が0.46〜0.54がより好ましく、0.48〜0.52が更に好ましい。
【0081】
以上説明した本発明によれば、簡易な工程により効率的に、連続的に、低コストで製造可能であり、且つ可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板を、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能であると共に、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため、原材料の選択性の大きい位相差板の製造方法を提供することができる。
【0082】
(円偏光板及び1/2波長板)
次に、本発明の前記位相差板を用いた円偏光板及び1/2波長板について説明する。
本発明の前記円偏光板は、偏光板と、本発明の前記位相差板とを積層してなる。
前記位相差板としては、波長450nm〜650nmまでの広い範囲で、少なくとも波長450nm、550nm、及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/波長(λ))の値が0.2〜0.3であるのが好ましく、少なくとも前記3波長において0.23〜0.27であるのがより好ましく、少なくとも前記3波長において0.24〜0.26であるのが更に好ましい。
【0083】
本発明の前記1/2波長板は、偏光板と、本発明の前記位相差板とを積層してなる。前記位相差板は、波長450nm〜650nmまでの広い範囲で、少なくとも波長450nm、550nm、及び650nmにおいて、(レターデーション(Re)/波長(λ))の値が0.40〜0.60であるのが好ましく、少なくとも前記3波長において0.46〜0.54であるのがより好ましく、少なくとも前記3波長において0.48〜0.52であるのが更に好ましい。
【0084】
−偏光板−
前記偏光板としては、特に制限はなく、従来公知のものを好適に使用することができ、例えば、ヨウ素系偏光板、二色性染料を用いる染料系偏光板、ポリエン系偏光板などが好適に挙げられる。
これらの偏光板のうち、前記ヨウ素系偏光板及び前記染料系偏光板は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを延伸し、これにヨウ素あるいは二色性染料を吸着することによって製造できる。この場合、該偏光板の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向となる。
【0085】
前記偏光板は、保護層を有していてもよい。
前記保護層は、光学的等方性が高い材料からなるのが好ましく、そのような材料としては、例えば、セルロースエスエル、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0086】
−積層−
前記偏光板と前記位相差板とは、該偏光板の偏光透過軸と、該位相差板の遅相軸(最大屈折率方向)とが交差するようにして積層される。該交差の角度としては、30度以上60度以下が好ましく、40度以上50度以下がより好ましく、43度以上47度以下が特に好ましい。
【0087】
−用途−
本発明の円偏光板は、構造が簡単で製造が容易であり、広帯域λ/4板として機能し各種分野において好適に利用可能であり、後述する本発明の反射型液晶表示装置に特に好適に使用することができる。また、本発明のλ/2板は広帯域λ/2板として機能し、各種分野において利用可能であり、プロジェクター用PBS等に特に好適である。
【0088】
(反射型液晶表示装置)
本発明の反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル及び偏光板をこの順に積層してなり、該反射板と該偏光板との間に、本発明の前記位相差板を有している。
前記反射型液晶表示装置の好ましい例としては、反射板と、液晶セルと、前記本発明の位相差板と、偏光板とをこの順に積層してなる構造、あるいは、反射板と、前記本発明の位相差板と、液晶セルと、偏光板とをこの順に積層してなる構成、が挙げられる。
前記位相差板としては、λ/4特性を有する位相差板を使用することができ、そのRe/λの好ましい数値範囲としては、前述した円偏光板に使用される位相差板における好ましい数値範囲と同様である。また、本発明の反射型液晶表示装置は、更に必要に応じてその他の部材等を有していてもよい。
尚、前記反射型液晶表示装置において、前記位相差板と前記偏光板とが積層されている場合、この積層体が本発明の前記円偏光板に相当する。
【0089】
−反射板−
前記反射板としては、特に制限はなく、従来公知のものを好適に使用することができる。
前記反射板は、一般に後述する液晶セルの裏側透明基板の外側に配置される。
【0090】
−液晶セル−
前記液晶セルとしては、特に制限はなく、従来公知のものを好適に使用することができ、例えば、表側透明基板と裏側透明基板との間に、TN型液晶層が充填されて構成されているものが好適に挙げられる。この場合、前記表側透明基板の内側と、前記裏側透明基板の内側とには、ITO(インジウム錫酸化物)の導電膜からなる電極層が形成されている。なお、本発明においては、液晶層として前記TN型液晶層のみならず、STN型液晶層を採用してもよい。
【0091】
前記液晶セルの駆動は、マトリックス駆動であっても、セグメント駆動であってもよく、前記マトリックス駆動の場合、単純マトリックス駆動方式であってもよいし、アクティブマトリックス駆動方式であってもよい。
【0092】
−偏光板−
前記偏光板としては、特に制限はなく、従来公知のものを好適に使用することができ、上述したものが挙げられる。
前記偏光板は、一般に、本発明の前記位相差板と共に、前記液晶セルの表側透明基板の外側に配置される。
【0093】
以上の反射型液晶表示装置は、白黒表示用のものであるが、本発明においては更に、前記表側透明基板と前記本発明の位相差板との間にカラーフィルター層を配置し、前記表側透明基板上にカラーフィルター層を形成することにより、カラー表示用のものとしてもよい。
【0094】
以下、本発明の反射型液晶表示装置の白黒表示機能について説明する。
前記電極層に電圧を印加しない状態(白表示)において、前記偏光板に光が入射されると、この入射光は、該偏光板によって偏光軸方向の直線偏光となる。この直線偏光は、本発明の前記位相差板によって円偏光に変換され、前記液晶セルに入射する。この円偏光は、前記液晶層の液晶性分子により、偏光軸と平行の直線偏光として前記反射板に到達し、前記反射板で反射されて再び液晶セルに入射する。入射した直線偏光は、再び前記液晶層により、円偏光となり、前記位相差板を経て、再び偏光軸と平行の直線偏光に変換され、前記偏光板を透過して、白表示となる。
【0095】
次に、前記電極層に液晶飽和電圧より高い電圧を印加した状態(黒表示)においては、前記偏光板を透過した直線偏光は、前記本発明の位相差板により円偏光に変換される。そして、この円偏光はそのまま前記反射板によって反射され、前記液晶セルをそのまま透過し、前記本発明の位相差板を透過する。即ち、前記偏光板に再び到達するまでに、直線偏光は前記反射板を挟んで、前記本発明の位相差板を2回透過するので、直線偏光の位相差が90°ずれ、該反射板からの反射光は前記偏光板を透過せず、黒表示となる。
【0096】
本発明の反射型液晶表示装置においては、広帯域の前記本発明の位相差板によって、可視光領域ほぼ全域の直線偏光が円偏光に変換される。その結果、前記液晶セルに入射する光の波長分散性に起因する着色及びコントラストの低下が軽減され、高コントラストな表示が可能となる。
【0097】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度135℃で横延伸(テンター延伸)し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は341.6nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で縦延伸しレターデーション(Re(550))が477.1nm、厚みが60μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み155μmの積層フィルムを得た。尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=122.8nm、Re(550)=145.7nm、Re(650)=160.1nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0099】
(実施例2)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.1倍、延伸温度140℃で縦延伸し、厚み92μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550)で表す。)は316.4nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み142μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=121.1nm、Re(550)=147.0nm、Re(650)=160.3nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0100】
(実施例3)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:45μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸倍率1.15倍、延伸温度90℃で縦延伸し、厚み40μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は303.9nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=124.4nm、Re(550)=154.1nm、Re(650)=165.1nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0101】
(実施例4)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、ポリエチレンテレフタレートを290℃にてTダイにより溶融押し出しし、30℃のキャスティングドラム上にて冷却固化し、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:400μm)を作製した。該未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、延伸温度90℃で、縦延伸(延伸倍率:3.3倍)し、続いて延伸温度120℃で横延伸(テンター延伸、延伸倍率:3.3倍)し、厚み40μmの二軸延伸フィルムを得た。この二軸延伸フィルムは、主に縦方向に配向が進んでおり、波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は309.2nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み90μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=120.3nm、Re(550)=148.3nm、Re(650)=162.8nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
実施例4より、二軸に延伸して積層させても、縦又は横方向のいずれか一方に主に配向が進んでいる場合には、縦又は横の一軸に延伸した場合と同様の優れた特性が得られることが解った。
【0102】
(実施例5)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を延伸倍率1.2倍、延伸温度135℃で縦延伸し、厚み86μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は634.1nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:200μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が915.4nm、厚みが90μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み181μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=246.1nm、Re(550)=280.8nm、Re(650)=311.9nmであり、広帯域λ/2フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0103】
(比較例1)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム((三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を、延伸倍率1.1倍、延伸温度140℃で縦延伸し、レターデーション(Re(550))が316.4nm、厚み92μmのフィルムを得た。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を、同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で縦延伸し、レターデーション(Re(550))が477.1nm、厚み60μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み155μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=817.1nm、Re(550)=792.3nm、Re(650)=777.1nmであり、レターデーション(Re)の値は非常に高かった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0104】
(比較例2)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリカーボネートフィルム((三菱ガス化学社製、厚み:100μm)を、延伸倍率1.1倍、延伸温度135℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が341.6nm、厚み92μmのフィルムを得た。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を、同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚み45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み141μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=823.1nm、Re(550)=798.3nm、Re(650)=784.4nmであり、レターデーション(Re)の値は非常に高かった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0105】
(比較例3)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚み45μmのフィルムを得た。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を、同方向に搬送しつつ、延伸倍率1.7倍、延伸温度130℃で縦延伸し、レターデーション(Re(550))が316.3nm、厚み73μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み123μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及び、Re(650)は、各々、Re(450)=143.9nm、Re(550)=141.7nm、Re(650)=140.8nmであり、レターデーション(Re)の値は、Re(450)>Re(550)>Re(650)を満たし、広帯域λ/4フィルムとしては不向きのフィルムとなった。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
比較例3より、同種の樹脂を、延伸方向を変えて延伸・積層しても、実施例のような優れた特性は得られないことが解った。
【0106】
(実施例6)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリスチレン(厚み:100μm)を延伸倍率2.1倍、延伸温度105℃で縦延伸し、厚み62μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は453.2nmであった。
同時に、ポリメチレンアクリレートフィルム(厚み:100μm)を、同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.4倍、延伸温度110℃で横延伸(テンター延伸)し、厚み58μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション(Re(550))は602.8nmであった。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み123μmの積層フィルムを得た。
尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=121.3nm、Re(550)=149.8nm、Re(650)=169.7nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、及びRe(650)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0107】
(実施例7)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリスチレン(厚み:100μm)を延伸倍率2.0倍、延伸温度110℃で縦延伸し、厚み64μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は339.9nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で縦延伸し、レターデーション(Re(550))が477.1nm、厚みが60μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み128μmの積層フィルムを得た。尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=121.3nm、Re(550)=142.6nm、Re(650)=154.2nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0108】
(実施例8)
図2に示した延伸・貼り合わせ機10を用いて以下のようにして積層フィルムを作製した。
先ず、未延伸ポリスチレン(厚み:100μm)を延伸倍率2.1倍、延伸温度110℃で横延伸し、厚み49μmのフィルムを得た。波長550nmにおけるレターデーション値(Re(550))は305.9nmであった。
同時に、ノルボルネンフィルム(日本ゼオン社製、ZEONOA;厚み:100μm)を同方向に搬送しつつ、延伸倍率2.2倍、延伸温度130℃で横延伸(テンター延伸)し、レターデーション(Re(550))が457.1nm、厚みが45μmのフィルムを得た。
次いで、上記2種類のフィルムを、長手方向(フィルムの搬送方向)に沿ってドライラミネート法により接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、ディックドライ、5g/m)を用いて貼り合わせ、厚み98μmの積層フィルムを得た。尚、乾燥手段としては、接着剤塗布後、貼り合わせ前に、温風(50℃、0.2m/s)を当てる手段を採用した。
450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、各々、Re(450)=133.3nm、Re(550)=149.8nm、Re(650)=165.2nmであり、広帯域λ/4フィルムとしての特性を有したフィルムが得られた。
Re(450)、Re(550)、Re(650)、及びRe(750)における各サンプルのレターデーション(Re)と、Re(450)/Re(550)の値をそれぞれ表1に示す。
【0109】
【表1】
Figure 2004145282
【0110】
(実施例9) 円偏光板
実施例1で得た位相差板と、偏光板とを、該位相差板の遅相軸と、該偏光板の透過軸とが45°の交差角で交差するようにして貼合させた。この貼合体について、レターデーション測定器(王子計測社製、KOBRA21DH)を用いて、そのRe値の波長分散を計測した。
その結果、該貼合体は、そのRe値が可視光全域において(Re/波長)値がほぼ0.25であり、広帯域で1/4波長特性を示す円偏光板であった。また、貼合体は、中央部及び端部においてほぼ均一なRe値を示し、端部における白色化等は生じていなかった。
【0111】
(実施例10) 反射型液晶表示装置
任天堂(株)製「ゲームボーイカラー」を分解し、観察者側の偏光板及び位相差板を取外し、これに代えて実施例9の円偏光板を装着させて、反射型液晶表示装置を作製した。
その結果、この反射型液晶表示装置においては、白表示の鮮明な表示が得られた。また、白表示は、端部から中央部の全領域にかけて、均一で鮮明な表示であった。
【0112】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができ、簡易な工程により効率的に、連続的に、低コストで製造可能であり、連続的に巻き取り可能であるため保管も簡便かつ容易で、更に、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板、特に広帯域1/4波長板、広帯域1/2波長板、及び、広帯域円偏光板、並びに前記位相差板を利用した表示の明るさが改善された反射型液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明によると、可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板を、簡易な工程により効率的に、連続的に、且つ低コストで製造可能であると共に、固有複屈折値の正負に関わらず原材料を選択可能であるため、原材料の選択性の大きい位相差板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ドライラミネート法を具体的に説明するための説明図である。
【図2】図2は、本発明の位相差板の製造方法の一例を概略的に説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の位相差板の一実施形態を表す概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・縦延伸部
1a,1b・・・・・縦延伸低速ローラ
1c,1d・・・・・縦延伸高速ローラ
2・・・・・・・・・貼り合わせ部
2a,2b・・・・・貼り合わせ・ニップローラ
2c,2d・・・・・接着剤塗布ローラ
3・・・・・・・・・横延伸部
3a・・・・・・・・搬送方向調整ローラ
3b・・・・・・・・横延伸機
10・・・延伸・貼り合わせ機
100・・・位相差板
101・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
102・・・固有複屈折値が正の樹脂からなる層
200・・・ラミネート機
201・・・加熱乾燥器
202・・・接着剤収容器
203・・・第一フィルム送り出し機
204・・・第二フィルム送り出し機
205・・・巻き取り機
206a,206b・・・接着剤塗布ローラ
207a,207b・・・搬送ローラ
208a・・・第一の延伸フィルム
208b・・・第二の延伸フィルム
209・・・・ドクターブレード
210a・・・貼り合わせ・ニップローラ
210b・・・貼り合わせ・ニップローラ

Claims (32)

  1. 固有複屈折値が異なる2種以上の材料を積層してなり、波長450nm、550nm、及び650nmにおけるレターデーション(Re)の値を各々Re(450)、Re(550)、及びRe(650)としたとき、Re(450)<Re(550)<Re(650)であることを特徴とする位相差板。
  2. 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載の位相差板。
  3. 2種以上の材料における固有複屈折値が負であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載の位相差板。
  4. 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であり、各層における遅相軸が互いに直交した請求項1に記載の位相差板。
  5. 各層における分子鎖の配向軸が互いに直交した請求項1から3のいずれかに記載の位相差板。
  6. 各層における分子鎖の配向軸が互いに平行である請求項1及び4のいずれかに記載の位相差板。
  7. 接着層を有する請求項1から6のいずれかに記載の位相差板。
  8. 材料が樹脂である請求項1から7のいずれかに記載の位相差板。
  9. 材料のうち少なくとも1種が、ノルボルネン系ポリマーである請求項1から8のいずれかに記載の位相差板。
  10. 材料のうち少なくとも1種が、ポリエステル系ポリマー、ポリアリーレンサルファイド系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー及びポリカーボネート系ポリマーから選択される少なくともいずれかである請求項1から9のいずれかに記載の位相差板。
  11. 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値の差が互いに0.03以上である2種の層を含む請求項1から10のいずれかに記載の位相差板。
  12. 波長450nm、波長550nmにおけるレターデーション(Re)の絶対値を各々Re(450)、Re(550)としたとき、各層が、少なくともRe(450)/Re(550)の値が互いに異なる2種の層を含み、該2種の層のうち、Re(450)/Re(550)の値が小さい層におけるRe(550)の値が、Re(450)/Re(550)の値が大きい層におけるRe(550)の値より大きい請求項1から11のいずれかに記載の位相差板。
  13. 光弾性が20ブルースター以下である請求項9に記載の位相差板。
  14. 波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、λ=450nm、550nm、及び650nmにおいて、各々下記関係式を満たす請求項1から13のいずれかに記載の位相差板。
    0.2≦Re(λ)/λ≦0.3
  15. 波長λにおけるレターデーションRe(λ)と波長λとが、λ=450nm、550nm、及び650nmにおいて、各々下記関係式を満たす請求項1から14のいずれかに記載の位相差板。
    0.4≦Re(λ)/λ≦0.6
  16. 2種以上の材料における固有複屈折値が正であり、該2種以上の材料のうち材料Aが、搬送されつつ搬送方向と同方向に延伸されて縦延伸フィルムとされ、前記2種以上の材料のうち材料Bが、搬送されつつ搬送方向と直交する方向に延伸されて横延伸フィルムとされる請求項1から2のいずれかに記載の位相差板。
  17. 2種以上の材料における固有複屈折値が負であって、該2種以上の材料のうち材料Cが、搬送されつつ搬送方向と同方向に延伸されて縦延伸フィルムとされ、前記2種以上の材料のうち材料Dが、搬送されつつ搬送方向と直交する方向に延伸されて横延伸フィルムとされる請求項1及び3のいずれかに記載の位相差板。
  18. 2種以上の材料における固有複屈折値が正及び負であって、該2種以上の材料が、搬送されつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸されて、縦延伸フィルム又は横延伸フィルムとされる請求項1及び4のいずれかに記載の位相差板。
  19. 延伸フィルムが、共に同方向に搬送されつつ貼り合わされた請求項16から18のいずれかに記載の位相差板。
  20. 延伸フィルムが、遅相軸を互いに直交させて貼り合わされた請求項16から19のいずれかに記載の位相差板。
  21. 偏光板と、請求項15に記載の位相差板とを積層してなり、前記偏光板の偏光板透過軸と前記位相差板の遅相軸とが交差してなることを特徴とする1/2波長板。
  22. 偏光板透過軸と遅相軸とが30度以上60度以下の角度で交差してなる請求項21に記載の1/2波長板。
  23. 偏光板と、請求項14に記載の位相差板とを積層してなり、前記偏光板の偏光板透過軸と前記位相差板の遅相軸とが交差してなることを特徴とする円偏光板。
  24. 偏光板透過軸と遅相軸とが30度以上60度以下の角度をなして交差してなる請求項23に記載の円偏光板。
  25. 反射板、液晶セル及び偏光板をこの順に積層してなり、該反射板と該偏光板との間に請求項1から20のいずれかに記載の位相差板を有する反射型液晶表示装置。
  26. 請求項1及び2のいずれかに記載の位相差板の製造方法であって、固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成する縦延伸フィルム形成工程、前記2種以上の材料のうち材料Bを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する横延伸フィルム形成工程、及び、前記縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる積層工程、を有することを特徴とする位相差板の製造方法。
  27. 請求項1及び3のいずれかに記載の位相差板の製造方法であって、固有複屈折値が負で異なる2種以上の材料のうち材料Cを、搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成する縦延伸フィルム形成工程、前記2種以上の材料のうち材料Dを、搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する横延伸フィルム形成工程、及び、前記縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる積層工程、を有することを特徴とする位相差板の製造方法。
  28. 請求項1及び4のいずれかに記載の位相差板の製造方法であって、固有複屈折値が正及び負の2種以上の材料を、搬送しつつ、共に、搬送方向と同方向又は直交する方向に延伸して縦延伸フィルム又は横延伸フィルムを形成する延伸フィルム形成工程、及び、該延伸フィルムを積層させる積層工程、を有することを特徴とする位相差板の製造方法。
  29. 積層工程が、延伸フィルムを、共に同方向に搬送して行われる請求項26から28のいずれかに記載の位相差板の製造方法。
  30. 積層工程が、延伸フィルムにおける遅相軸を互いに直交させて貼り合わせることにより行われる請求項26から29のいずれかに記載の位相差板の製造方法。
  31. 縦延伸フィルム形成工程、横延伸フィルム形成工程、及び、積層工程が、連続的に行われる請求項26から30のいずれかに記載の位相差板の製造方法。
  32. 積層工程が、接着剤を用いて貼り合わせることにより行われる請求項26から31のいずれかに記載の位相差板の製造方法。
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