JP2004145036A - トナー、そのトナーを用いた画像形成装置、及び赤外線吸収剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】赤外線吸収剤の添加量の低減を図ると共に、良好な定着性及び優れた色再現性を有するトナーおよびそのトナーを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナーの結着樹脂に添加される赤外線吸収剤をカップリング剤で処理して結着樹脂中での分散性を高める。上記赤外線吸収剤には、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つを用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】トナーの結着樹脂に添加される赤外線吸収剤をカップリング剤で処理して結着樹脂中での分散性を高める。上記赤外線吸収剤には、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つを用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法で使用されるトナー及びそのトナーを用いる画像形成装置に関し、特にフラッシュ光からの光エネルギーを使用して記録媒体上に定着されるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法は、電子写真ファクシミリ、電子写真プリンタ等の画像形成装置において広く使用されている技術である。電子写真法としては、光導電性絶縁体を用いた方式が一般的に使用されている。この方式では、顔料や染料により着色した樹脂粉末であるトナーを光導電性絶縁体上に一旦形成し、トナー画像を紙などの記録媒体上に転写し、熱、圧力、光などによって、トナーを記録媒体上で溶融した後に固化して、最終的に記録媒体上に定着したトナー画像を得ている。この定着方式には大別してヒートロール定着方式とフラッシュ定着方式がある。
【0003】
フラッシュ定着方式では、キセノンフラッシュランプなどの放電管の閃光からの光エネルギーを熱エネルギーに変換することによってトナーを溶融し記録媒体上に定着させる。したがって、高速かつ非接触で定着を行えるので高速化が容易であるという利点を有する。フラッシュ定着用の放電管として一般に用いられているキセノンランプの分光分布は、800nm〜1000nmの近赤外波長領域における発光強度が顕著に強く、400nm〜800nmの可視領域における発光強度は比較的小さい。このためフラッシュ定着が行われるトナーは近赤外波長領域において光吸収性が高いことが要求される。そこで、フラッシュ定着が行われるトナーには、光吸収性を向上し定着性を向上するため、赤外線吸収剤が添加されている。
【0004】
また、近年、マークや情報を不可視にして、特別な検知器を用いた場合のみ検出あるいは読み出し可能な印刷物等が用いられている。例えば、商品のパッケージに印刷されているバーコードや、OHPシートの紙送り検出用マークなどである。これらのバーコード等は、発光ダイオードより赤外光を照射して、赤外光を検出するフォトディテクタにより読み出される。このような印刷の用途に赤外線吸収剤が用いられている。
【0005】
赤外線吸収剤としては、有機系化合物では、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ニッケル錯体などが知られている(例えば特開昭61−132959号公報、特開平7−191492号公報、特開平10−39535号公報など)。また、無機系化合物では、リン酸イッテルビウム、酸化スズ等が知られている。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−209110号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フラッシュ定着が行われるトナーにおいては、赤外線吸収剤の赤外線吸収効率、すなわち、赤外線吸収剤の単位質量当たりの吸収する光量が高い程、トナーへの添加量を低減することができる。一般に、赤外線吸収剤は、トナーに添加する他の材料よりかなり高価なため、赤外線吸収剤の添加量を低減することにより、製造コストの大幅な低減が可能となる。そこで、従来より、赤外線吸収効率を向上するために、赤外線吸収剤の微粉末化が行われてきた。しかしながら、微粉末化をすると凝集しやすくなり、トナーの結着樹脂中などの分散性が低下し、赤外線吸収効率が逆に低下してしまうという問題を生ずる。
【0008】
また、赤外線吸収剤は近赤外のみならず、赤色の波長領域にも吸収を有するため、赤色の補色である緑色を発色する。したがってフラッシュ定着用が行われるトナーに添加すると、トナー全体の色相が変化してしまい、シフトしたままの色相では、電子写真プリンタ等の画像形成装置による調整を行っても、十分な色再現性を得ることができないという問題が生ずる。
【0009】
さらに、上述した不可視情報の印刷のために着色された赤外線吸収剤を使用すると、隠すべき情報が可視化されてしまうという問題を生ずる。
【0010】
したがって、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、赤外線吸収剤の添加量の低減を図ると共に、良好な定着性及び優れた色再現性を有するトナーおよびそのトナーを用いた画像形成装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、赤外線吸収効率の向上を図ると共に添加量の低減が可能な赤外線吸収剤を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、結着樹脂と赤外線吸収剤とを含むトナーであって、前記赤外線吸収剤は、下記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、下記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、下記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、下記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および下記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つであり、かつカップリング剤で処理されているトナーが提供される。
【0012】
【化7】
(上記式(1)、(2)において、R1〜R8のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表し、Aはp−フェニレン基又はp−ビフェニレン基を、X−は陰イオンを表す。)
【0013】
【化8】
(上記式(3)において、R1〜R4のそれぞれはアルキル基、R5及びR6のそれぞれは水素原子、3級アミン又は4級アミンを表し、X−は陰イオンを表す。)
【0014】
【化9】
(上記式(4)において、Mは金属、酸化金属又はハロゲン化金属を表し、R1〜R24のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表す。)
【0015】
【化10】
(上記式(5)、(6)において、Aは第四級アンモニウム基を表す。)
【0016】
【化11】
(上記式(7)において、Xは水素原子、アルキル基、又はハロゲン基を、nは1〜4の整数を表す。)
【0017】
【化12】
(上記式(8)において、R1〜R20のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はジアリールアミノ基を表す。)本発明によれば、上記一般式(1)〜(8)に示される、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物及びニッケル錯体は、750nm〜1600nmの波長領域の赤外線吸収効率、すなわち単位質量当たりの赤外線吸収量が、無機系化合物の赤外線吸収剤、例えばリン酸イッテルビウム等より高い。アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物及びニッケル錯体をカップリング剤で表面処理することにより、赤外線吸収剤が添加される結着樹脂中での凝集を抑制されるので、カップリング剤で処理されていない従来の赤外線吸収剤より分散性が向上し、赤外線吸収効率が向上する。したがって、フラッシュ光を用いて定着を行うトナーにおいては、フラッシュ光の光エネルギーを効率良く熱に変換して溶融され記録媒体に浸透・定着される。その結果、定着性の良好な定着画像を形成することができる。また、赤外線吸収効率の向上により、トナーへの赤外線吸収剤の添加量を低減することができる。その結果、不可視印刷物に使用する無色のトナーにおいては、印刷文字等への着色を防止することができる。
【0018】
本発明のトナーは着色剤を更に含んでもよい。上述したように本発明のトナーは、赤外線吸収剤の添加量を低減することができるので、イエロー、マゼンタ、シアンなどの色の着色剤が含まれるカラートナーの色相の変化を防止することができ、優れた色再現が可能となる。
【0019】
前記カップリング剤が、チタン系カップリング剤であってもよい。チタン系カップリング剤に処理された赤外線吸収剤を添加したトナーは、最も良好な定着性を有する。赤外線吸収剤の表面に密着することにより、結着樹脂中での赤外線吸収剤の凝集を防止するとともに分散性を向上させて、トナーの定着性を向上することができる。
【0020】
本発明の他の観点によれば、上記のいずれかのトナーを使用する画像形成装置が提供される。
【0021】
本発明によれば、赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されたことにより結着樹脂中で良く分散され、赤外線吸収効率が向上されている。したがって、定着性が良好であり、結着樹脂への添加量が低減可能であるので色再現性の優れた画像を形成することができる。
【0022】
本発明のその他の観点によれば、上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つの化合物であり、カップリング剤で処理された赤外線吸収剤が提供される。
【0023】
本発明によれば、上記一般式(1)〜(8)に示される、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物及びニッケル錯体は、750nm〜1600nmの波長領域の赤外線吸収効率、すなわち単位質量当たりの赤外線吸収量が、無機系化合物の赤外線吸収剤、例えばリン酸イッテルビウム等より高い。アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物及びニッケル錯体をカップリング剤で表面処理することにより、赤外線吸収剤の凝集が抑制されるので、カップリング剤で処理されていない従来の赤外線吸収剤より分散性が向上し、赤外線吸収効率が向上する。したがって、赤外線吸収剤の添加量を低減することが可能である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトナーの一例である、本実施の形態のフラッシュ定着用のカラートナーについて具体的に説明する。
【0025】
本実施の形態のフラッシュ定着用のカラートナーは、結着樹脂、カップリン剤により処理された赤外線吸収剤、着色剤などを含有している。
【0026】
ここで、上記赤外線吸収剤は画像形成装置の定着部において、フラッシュ光の光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有している。この赤外線吸収剤は結着樹脂の溶融を促進するために添加されている。
【0027】
赤外線吸収剤は、フラッシュ光を効率的に吸収するため、光の波長が750nm〜1600nmの近赤外領域に少なくとも1つ以上の強い光吸収ピークを有するものである。本実施の形態の赤外線吸収剤としては、上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、上記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、上記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、上記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物、並びに上記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体を用いる。これらの一般式(1)〜(8)に示される赤外線吸収剤は、無機系化合物のリン酸化イッテルビウムなどのランタノイド化合物、インジウムチンオキサイド、酸化スズなどの赤外線吸収剤より、赤外線吸収効率が高く、本実施の形態のカラートナーに好適である。
【0028】
上記ニッケル錯体においては、上記一般式(5)で表されるメルカプトフェノール系ニッケル錯体のうち好適なものは、例えば、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)テトラ−n−ブチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)テトラエチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)トリメチルフェニルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)トリエチルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)ジエチルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)ラウリルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)トリエタノールアミンが挙げられる。
【0029】
また、上記一般式(6)で表されるメルカプトフェノール系ニッケル錯体のうち好適なものは、例えば、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)テトラ−n−ブチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)テトラエチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)テトラメチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)トリメチルフェニルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)トリエチルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)ジエチルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)ラウリルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)トリエタノールアミンが挙げられる。
【0030】
また、上記一般式(7)で表される芳香族ジアミン系ニッケル錯体では、例えばビス(4−クロロ−1,2−フェニレンジアミノ)ニッケル、ビス(4−メチル−1,2−フェニレンジアミノ)が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)〜(8)に示される赤外線吸収剤のうち、特に上記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物が、より赤外線吸収効率が高い点で更に好ましい。
【0032】
赤外線吸収剤は、カラートナー100重量部に対して0.01〜15重量部添加され、好ましくは0.1から5重量部である。15重量部より多いと色が濁るなど変化してしまうので不適であり、また、0.01重量部より少ないとフラッシュ光の光エネルギーを十分に吸収できず、その結果熱量が十分でないため結着樹脂を溶融することができない。
【0033】
本実施の形態のカラートナーの赤外線吸収剤はカップリング剤により処理されていることを特徴としている。カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、チタン系カップリング剤等を用いることができる。なお、本発明の目的である赤外線吸収剤の分散性を向上可能なカップリング剤であれば上記カップリング剤に限定されない。
【0034】
シラン系カップリング剤としては公知のものを用いることができるが、本実施の形態のシラン系カップリング剤として好適なものは、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられ、市販の各種シランカップリング剤を用いることができる。市販のシランカップリング剤の具体例は、トーレ・シリコーン社製のSH6020、SZ6023、SH6026、SH6030、SZ6032、SH6040、SZ6050、SH6062、SZ6070、SZ6072、SH6075、SH6076、SZ6079、SZ6083、SZ6300、AY43−021、信越シリコーン社製のKBS1003、KBE1003、KBM1003、KBM503、KBM502、KBM403、KBE402、KBE903、KBE902、KBM603、KBM602、KBM803、KBM802、KBM703など、及び日本ユニカー社製のA−150、A−151、A−171、A−172、A−174、A−186、A−187、A−1100、A−1120、A−1160、A−143、A−189などが挙げられる。
【0035】
また、アルミニウム系カップリング剤としては公知のものを用いることができるが、本実施の形態のアルミニウム系カップリング剤として好適なものは、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートで市販品はAL−M(味の素社製)等を用いることができる。
【0036】
ジルコアルミネート系カップリング剤としては公知のものを用いることができるが、本実施の形態のジルコアルミネート系カップリング剤として好適なものは、例えば、CAVECOMOD(米国CAVEDON CHEMICAL Co. inc.社製)を用いることができる。
【0037】
チタン系カップリング剤としては公知のものを用いることができるが、本実施の形態のチタン系カップリング剤として好適なものは、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。また、味の素社製のプレンアクト(商品名)を用いることができる。具体的にはKRTTS、KR38S、KR44、KR46B、KR55、KR138SS、KR238S、338X、KR2S、KR7、KR9S、KR11、KR12、KR34S、KR41Bなどが挙げられる。
【0038】
上記シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤及びチタン系カップリング剤のうち、チタン系カップリング剤が上記赤外線吸収剤との密着性が良好な点でより好ましい。更にチタン系カップリング剤の中でも、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート(KR46B:味の素社商品)が淡黄色と色が薄く、カラートナーの色相への影響が最も少なく、かつ分散性向上に最も効果がある点で特に好ましい。
【0039】
カップリング剤の添加量は、赤外線吸収剤100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部である。
【0040】
赤外線吸収剤のカップリング剤による処理は、例えば乾式混合により行われる。赤外線吸収剤及びカップリング剤を混合し、ヘンシェルミキサー等を用いて例えば1〜10分間撹拌する。また、カップリング剤を例えばアセトン溶液中に分散あるいは溶解し、次いで赤外線吸収剤を分散させ、次いで乾燥させる湿式法を用いてもよい。さらに、約100℃〜200℃、5〜60分間の加熱により焼成してもよい。カップリング剤が赤外線吸収剤の表面に密着するので、さらに分散性を向上することができる。
【0041】
上記カップリング剤により表面処理を行うことにより赤外線吸収剤の分散性を向上し、より少量の赤外線吸収剤で所望の光エネルギーを吸収することができる。その結果、赤外線吸収剤の発色による色相の変化を抑制することができる。
【0042】
本実施の形態のカラートナーに含有される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、チタンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコオイルブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン6Cレーキ、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、マラカイトグリーン、マラカイトグリーンヘキサレート、オイルブラック、アゾオイルブラック、ローズベンガル、モノアゾ系染顔料、ジスアゾ系染顔料、トリスアゾ系染顔料などが挙げられる。これらの着色剤はトナー100重量部に対して、0.1〜20重量部(好ましくは0.5〜15重量部)添加される。着色剤が20重量部を超えると発色が黒っぽくなるので好ましくない。
【0043】
本実施の形態のカラートナーに含有される結着樹脂として、各種の熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、スチレン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリエステル樹脂等を使用することができるが、フラッシュ定着時に発生する臭気が少ない点でポリエステルが好ましい。特に数平均分子量が1000〜2500であるポリエステルがトナーの定着性の点で更に好ましい。さらに、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナバワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラワックス、木蝋、蜜蝋、鯨蝋、モンタンワックス、オゾケライト、セシレン、アミドワックス、カスターワックスなどの汎用ワックス類を併用することができる。
【0044】
また、本発明のカラートナーには、帯電性付与や異なる温湿度環境下での帯電量変化を小さくすることを目的として、帯電制御剤を添加してもよい。帯電制御剤は無色ないし淡色のものが好ましい。帯電制御剤としては、例えばカリックスアレン、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、アミノ基含有のポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸の錯化合物、フェノール化合物、アゾクロム系、アゾ亜鉛系など公知の正帯電性、負帯電性の帯電制御剤を使用することができる。
【0045】
また、本実施の形態のカラートナーの流動性を向上するために、流動性向上剤として、白色の無機微粒子を添加・混合することもできる。このような白色の無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素等を微粒子化したものが挙げられる。これらの中で特にシリカ微粒子が特に好ましい。また、これらの無機微粒子は併用しても良い。流動性向上剤の添加量は、トナー100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0046】
さらに、本実施の形態のカラートナーにはクリーニング活剤としてステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末を添加してもよい。また、鉄粉、マグネタイト、フェライト等の磁性材料を混合し磁性トナーとしても使用することができる。
【0047】
以上により、本実施の形態のカラートナーは、トナー全体として100重量部とした場合、例えば結着樹脂は70〜97重量部、カップリング処理された赤外線吸収剤は0.01〜15重量部(好ましくは0.1〜5重量部)、着色剤は0.1〜20重量部(好ましくは0.5〜15重量部)、を含む。
【0048】
本発明のカラートナーは、従来公知の製造法により製造することができ、上述したカップリング剤により処理された赤外線吸収剤、結着樹脂、着色剤を準備し、さらに必要により帯電制御剤、ワックスを添加して原材料とする。この原材料を例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダ、ロールミル、ボールミル、押出機などにより混練して均一分散させる。その後、粉砕機、ジェットミルなどにより粉砕、微粉末化し、風力分級機などにより分級して、所望の粒度のカラートナーを得る。なお、混練の際に、カップリング剤により処理された赤外線吸収剤と帯電制御剤を別々の樹脂に混練した後、この両者を再度混練する方法を用いてもよい。
【0049】
以下、実施例に基づき本実施の形態のカラートナーについてより具体的に説明する。
【0050】
[実施例]
(赤外線吸収剤のカップリング剤による処理)
図1は、本発明の実施例及び本発明によらない比較例の赤外線吸収剤及びカップリング剤の配合、並びに評価結果を示す図である。
【0051】
本発明の実施例1〜9及び本発明によらない比較例1〜8は、図1に示す赤外線吸収剤及びカップリング剤を用いて、赤外線吸収剤をカップリング剤により処理を行った。図1に示す赤外線吸収剤及びカップリング剤の具体的な製品名及び製造会社を以下に示した。
[赤外線吸収剤]
IR1:ナフタロシアニン系 YKR−5010 山本化成
IR2:アミニウム系 AM1 帝国化学
IR3:ニッケル錯体 SIR−130 三井化学
IR4:ポリメチン系 CY−10 日本化薬
IR5:リン酸イッテルビウム UU−HP 信越化学
[カップリング剤]
CP1:シラン系 SH6020 トーレ・シリコーン
CP2:アルミニウム系 AL−M 味の素
CP3:チタン系 KR46B(テトラオクチルビスチタネート) 味の素
CP4:チタン系 KR44 味の素
赤外線吸収剤のカップリング剤による表面処理は以下のように行った。図1の実施例及び比較例に示す組み合わせの赤外線吸収剤2000重量部とカップリング剤20重量部をヘンシェルミキサーに投入し、600RPM、10分間混合を行った後、150℃10分間焼成した。微粉末のカップリング剤により処理をされた赤外線吸収剤を得た。
【0052】
(カラートナーの製造)
以下に示す配合により、カラートナーを製造した。実施例及び比較例のカラートナーは上述した赤外線吸収剤及びカップリング剤以外は、配合される材料及び配合割合を同一とした。
[カラートナーの配合]
着色剤:Brilliant Yellow 2G×70(クラリアント) 5.0重量部
バインダー:ポリエステル樹脂FN119(花王) 93.0重量部
帯電制御剤:カリックスアレンE−89 (オリエント) 1.0重量部
ワックス:NP105(三井化学) 0.5重量部
カップリング剤により処理された赤外線吸収剤 0.5重量部
上記のカラートナーの配合に示す材料をヘンシェルミキサーに投入し、600RPM、10分間予備混練を行った後、エクストルーダーにより混練した。その際の条件は、200RPMで押出量は20kg/時間、200RPM、150℃に設定した。次いで、ハンマーミルにて粗粉砕し、ジェットミルにて微粉砕して気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が8.5μmの着色微粒子を得た。次いで、疎水性シリカ微粒子であるR974(日本エアロジル社商品名)1.5重量部をヘンシェルミキサーで外添処理し、図1に示す実施例及び比較例のカラートナーを得た。
【0053】
(カラートナーの定着試験及び定着性評価)
実施例及び比較例のカラートナーをフラッシュ定着型のプリンタを使用して記録媒体上にトナー画像の形成を行い定着性を評価した。
【0054】
1成分現像剤を使用するレーザプリンタGL8300(富士通社製)にフラッシュプリンタPS2160(富士通社製)のフラッシュ定着機を搭載した改造機を用いた。このフラッシュ定着機のフラッシュランプは図2に示す分光分布を有し、記録媒体(用紙)の単位面積当たりの光エネルギーを3J/cm2とした。
【0055】
また、定着性の評価は、テープ剥離試験により行った。テープ剥離試験は、定着画像を粘着テープ(スコッチメンディングテープ:住友3M社商品名)を軽く貼り、直径50mm、幅30mmの円柱ブロックに500gfの荷重を印可して、円柱ブロックを円周方向に転がすことにより該テープを密着させ、しかる後、該テープを90°の角度で引き剥がす試験方法であり、定着率は、定着率(%)=(テープ剥離後の定着画像の光学濃度)/(定着画像の光学濃度)×100で表される。定着率が80%以上を良(図1に示す「○」)、60%以上80%未満をやや良(図1に示す「△」)、60%未満を不良(図1に示す「×」)とした。ここで、定着画像の光学濃度は、分光測色計(X−Rite社製色差計938Spectrodentitometer(測定光源をCIE−D65)を使用して、波長400nmの反射光を測定し光学濃度とした。
【0056】
なお、カップリング剤により処理した赤外線吸収剤の色調の評価を目視により行った。
【0057】
以下、図1を参照しながら、好ましい実施例のカラートナーについて説明する。
【0058】
まず、実施例1〜3及び比較例1のカラートナーについて、各カラートナーの定着性に基づいて、カップリング剤による処理の有無、及びカップリング剤の種類の点から、好ましいカラートナーが確認できる。実施例1〜3及び比較例1のカラートナーは、赤外線吸収剤としてナフタロシアニン系化合物IR1が共通に用いられている。そして、実施例1〜3についてカップリング剤がそれぞれ異なり、比較例1はカップリング剤による処理がなされていないものである。
【0059】
実施例1〜3のカラートナーを見ると、比較例1のカラートナーに対して、定着性が著しく高くなっていることが分かる。実施例1〜3のカラートナーは、カップリング剤により処理されたナフタロシアニン系化合物IR1の赤外線吸収剤IR1がバインダー中で良く分散し、赤外線吸収効率が向上しているためである。
【0060】
実施例1〜3のカラートナー同士を比較すると、チタン系カップリング剤CP3によって処理された赤外線吸収剤が添加された実施例3のカラートナーの定着性が最も高くなっていることが分かる。チタン系カップリング剤は、赤外線吸収剤との密着性が他のカップリング剤と比較して良好であるので、バインダー中の分散性がより良好であるためと推察される。
【0061】
次に、実施例4〜6及び比較例2〜4のカラートナーについて、各カラートナーの定着性に基づいて、赤外線吸収剤の種類、及びカップリング剤による処理の有無の点から、好ましいカラートナーが確認できる。実施例4〜6のカラートナーは、赤外線吸収剤がそれぞれアミニウム系化合物IR2、ニッケル錯体IR3、ポリメチン系化合物IR4が用いられ、総てチタン系カップリング剤CP3により処理されている。一方、比較例2〜4のカラートナーは、実施例4〜6のカラートナーの赤外線吸収剤がそれぞれ用いられ、カップリング剤による処理がなされていないものである。
【0062】
実施例4〜6のカラートナーを見ると、比較例2〜4のカラートナーに対して、定着性が著しく高くなっていることが分かる。実施例4〜6のカラートナーに用いられているアミニウム系化合物IR2、ニッケル錯体IR3及びポリメチン系化合物IR4の赤外線吸収剤のいずれもが、カップリング剤により処理されることにより、バインダー中での分散性が向上しているためである。
【0063】
次に、実施例3,8,9及び比較例5,6のカラートナーについて、各カラートナーの定着性に基づいて、カップリング剤添加量の点から、好ましいカラートナーが確認できる。実施例3,8,9及び比較例5,6のカラートナーは、カップリング処理剤の添加量が、赤外線吸収剤100重量部に対して、それぞれ5重量部,0.01重量部,20重量部,0.005重量部,25重量部である。なお、赤外線吸収剤IR1及びカップリング剤CP3が共通して用いられている。
【0064】
実施例3,8,9及び比較例5,6のカラートナーを見ると、カップリング剤CP3の添加量が0.01重量部〜20重量部において定着性が良好であることが分かる。0.005重量部では、カップリング剤の添加量が不足してバインダー中での分散が不十分であると推察される。また、25重量部では、カップリング剤の量が多すぎて、カップリング剤を介して赤外線吸収剤の粒子が凝集してしまい、分散性が悪化していると推察される。
【0065】
次に、実施例7のカラートナーは、赤外線吸収剤がナフタロシアニン系化合物IR1にチタン系カップリング剤CP4により処理したものが用いられている。実施例7のカラートナーは、定着性の点では良好であるが、定着後の色調が他の実施例のカラートナーより劣っていた。カップリング剤による処理後の赤外線吸収剤の色が赤褐色になっていたためである。
【0066】
最後に、実施例1〜9及び比較例7,8のカラートナーについて、各カラートナーの定着性に基づいて、赤外線吸収剤の種類の点から、好ましいカラートナーが確認できる。実施例1〜9のカラートナーは上述した赤外線吸収剤IR1〜IR4が用いられているのに対し、比較例7,8のカラートナーは赤外線吸収剤がリン酸イッテルビビウムである。また、実施例1〜9及び比較例7のカラートナーは、赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されているのに対して、比較例8のカラートナーは、赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されていない。
【0067】
比較例7,8のカラートナーを見ると、実施例1〜9のカラートナーに対して、定着性が著しく劣っていることが分かる。比較例7,8のカラートナーに用いられている赤外線吸収剤のリン酸イッテルビビウムの赤外線吸収効率が、実施例1〜9のカラートナーに用いられているナフタロシアニン系化合物IR1、アミニウム系化合物IR2、ニッケル錯体IR3及びポリメチン系化合物IR4より低いためである。また、比較例7,8のカラートナー同士を比較すると、定着性は両方とも低く、カップリング剤により処理の効果が見られない。リン酸イッテルビビウムの赤外線吸収効率が低いため、分散性の効果が少ないためであると推察される。
【0068】
次に、本発明の実施の形態であるカラー画像形成装置について簡単に説明する。
【0069】
図3は、本発明の実施の形態であるカラー画像形成装置を模式的に示す図である。本装置10は、画像読取/処理ユニット11、画像書込ユニット12、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色について設けられた現像部13Y、13M、13C、13K、感光体14、帯電器15、一次転写部16、中間転写体18、二次転写部19、キセノンフラッシュランプ20を有するフラッシュ定着器21、感光体クリーニング手段22、中間転写体クリーニング手段23、一次及び二次転写電圧供給手段24、25などより構成されている。本装置はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを使用して、フルカラーの画像を記録媒体上に形成するものである。
【0070】
現像部13Y、13M、13C、13Kは、図示されない現像剤容器と現像ローラ26を含み、現像剤容器内には本発明のカラートナーからなる一成分現像剤が収納されている。また、画像書込ユニット12によって静電潜像が感光体14に書込まれ、現像ローラ22よりカラートナーが供給され、カラートナーが静電潜像に対応して感光体14に付着する。感光体14は、一般にアモルファスシリコン、セレンなどの無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチンなどの有機感光体などを用いることができる。特に長寿命の点からアモルファスシリコンが好ましい。
【0071】
感光体に形成されたトナー画像は、一次転写部16において中間転写体18に転写され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーがこの順に転写されて形成されたトナー画像は、二次転写部19において記録媒体に転写され、記録媒体は定着器21に搬送される。
【0072】
定着器21はフラッシュ定着方式により、例えばキセノンフラッシュランプ20を用いて定着を行う。定着は、例えばキセノンフラッシュランプ20のフラッシュ光を1回照射する。その際のフラッシュ光のエネルギーは、記録媒体上で1〜7J/cm2に設定する。なお、各色を記録媒体に転写するごとに定着を行ってもよく、その際のフラッシュ光のエネルギーは、1回ごとに記録媒体上で1〜3J/cm2に設定する。これらの範囲より小さいカラートナーが溶融せず定着不良となり、逆に大きすぎるとトナーのボイドや記録媒体のこげが発生しやすくなる。なお、キセノンフラッシュランプを用いる場合のフラッシュ光1回の単位面積当たりの照射エネルギーは、S={(1/2)CV2/ul/nf}と表され、ここでCはコンデンサ容量(μF)、Vは入力電圧(V)、uは記録媒体搬送速度(mm/s)、lは印字幅(mm)、nはランプ本数(本)、fはフラッシュランプの点灯周波数(Hz)である。
【0073】
このような画像形成装置によれば、赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されたことにより結着樹脂中で良く分散され、赤外線吸収効率が向上されている。したがって、定着性が良好であり、結着樹脂への添加量が低減可能であるので色再現性の優れた画像を形成することができる。また、定着性が良好であるのでさらなる印刷速度の高速化が可能である。
【0074】
なお、上述したカラー画像形成装置10は、まず4色の転写後に定着を行ってフルカラー画像を形成するものであるが、1色を転写及び定着する画像形成装置を4台使用して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色をそれぞれ独立してフルカラー画像を形成する画像形成装置であってもよい。このような構成によれば、4色のそれぞれの画像情報を対応する画像形成装置に送りさえすれば、容易にフルカラーの画像を記録媒体上に形成することができる。図3に示す4色を同時に定着する画像形成装置と比較して、装置コストを低減することができる。
【0075】
さらに、これらの4色総てを使用することは必須ではない。すなわち、印刷物の種類あるいは形成する画像の色彩に応じてこれらの4色のうちのいずれかの色を使用せずに画像を形成する画像形成装置であってもよい。
【0076】
以上、カラートナーおよびカラートナーを用いたカラー画像形成装置について詳述したが、無色透明の本発明による実施の形態のトナーを不可視印刷物、不可視パターン等の印刷に用いることができる。
【0077】
具体的には、不可視印刷物等に用いられる本実施の形態のトナーの配合は、上述したカラートナーの配合において、着色剤を添加しない以外は同様とする。この配合では、着色剤が添加されておらず、かつ、上記一般式(1)〜(6)に示される赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されており、結着樹脂中の分散性が良いのでトナーへの添加量を低減することができる。その結果、赤外線吸収剤自体は発色するものの、添加量が微少量であるので、かかるトナーが定着されて形成された画像は無色透明となる。なお、定着方式はフラッシュ光によるフラッシュ定着方式に特に限定されず、ヒートロール定着方式であってもよい。
【0078】
本実施の形態のトナーは以下の不可視印刷物、不可視パターン等に適用可能である。例えば、不可視パターンとしては、例えば、OHPシートの紙送り検知マーク等の非情報パターンやコードパターン等の情報パターンが挙げられ、さらに情報パターンとしては、バーコード等のコードパターンが挙げられる。例えばバーコードの1次元あるいは2次元バーコードを、対象となる商品パッケージに印刷することにより、商品説明等の商品パッケージに印刷された情報を隠蔽せずに、バーコードを付与することができる。本実施の形態のトナーは、微粉末であるので分解能が良く、精緻な2次元バーコードに好適である。
【0079】
なお、かかる不可視パターンの読み出しは、従来から用いられている赤外LED(発光ダイオード)や赤外レーザ等の赤外線光源をそのまま用いることができ、その受光も例えば赤外線受光用のフォトダイオード、フォトトランジスター等を用いることができる。
【0080】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0081】
また、上述したように、本発明のトナーに用いられるカップリング剤により処理された赤外線吸収剤は、赤外線を遮断する目的に使用することができる。例えば書き換え型又は追記型のCD、DVD等の記録媒体の記録剤、プラズマディスプレーのフィルター、熱線遮蔽ガラス、熱線遮蔽フィルム、農業用フィルムなどへ適用することもできる。
【0082】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 結着樹脂と赤外線吸収剤とを含むトナーであって、
前記赤外線吸収剤は、上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、上記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、上記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、上記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および上記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つであり、かつカップリング剤で処理されていることを特徴とするトナー。
(付記2) 着色剤を更に含むことを特徴とする付記1記載のトナー。
(付記3) 前記カップリング剤の添加量が、赤外線吸収剤100重量部に対して0.01重量部〜20重量部の範囲内であることを特徴とする付記1または2記載のトナー。
(付記4) 前記カップリング剤が、チタン系カップリング剤であることを特徴とする付記1〜3のうち、いずれか一項記載のトナー。
(付記5) 前記チタン系カップリング剤が、テトラオクチルビスチタネートであることを特徴とする付記1〜4のうち、いずれか一項記載のトナー。
(付記6)前記結着樹脂は、数平均分子量が1000〜2500のポリエステル樹脂であることを特徴とする付記1〜5のうち、いずれか一項記載のトナー。
(付記7) 付記1〜6のうち、いずれか一項記載のトナーを使用することを特徴とする画像形成装置。
(付記8) 上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、上記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、上記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、上記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および上記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つの化合物であり、カップリング剤で処理されたことを特徴とする赤外線吸収剤。
(付記9) ナフタロシアニン系化合物が、カップリング剤で処理されたことを特徴とする付記8記載の赤外線吸収剤。
(付記10) 前記カップリング剤が、チタン系カップリング剤であることを特徴とする付記8または9記載の赤外線吸収剤。
【0083】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明によれば、赤外線吸収剤の添加量の低減を図ると共に、良好な定着性及び優れた色再現性を有するトナーおよびそのトナーを用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び本発明によらない比較例を示す図である。
【図2】キセノンフラッシュランプの分光分布の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態であるカラー画像形成装置を模式的に示す図である。
【符号の説明】
10 画像形成装置
11 画像読取/処理ユニット
12 画像書込ユニット
13Y、13M、13C、13K 現像部
14 感光体
16 一次転写部
18 中間転写体
19 二次転写部
20 キセノンフラッシュランプ
21 フラッシュ定着器
22 現像ローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法で使用されるトナー及びそのトナーを用いる画像形成装置に関し、特にフラッシュ光からの光エネルギーを使用して記録媒体上に定着されるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法は、電子写真ファクシミリ、電子写真プリンタ等の画像形成装置において広く使用されている技術である。電子写真法としては、光導電性絶縁体を用いた方式が一般的に使用されている。この方式では、顔料や染料により着色した樹脂粉末であるトナーを光導電性絶縁体上に一旦形成し、トナー画像を紙などの記録媒体上に転写し、熱、圧力、光などによって、トナーを記録媒体上で溶融した後に固化して、最終的に記録媒体上に定着したトナー画像を得ている。この定着方式には大別してヒートロール定着方式とフラッシュ定着方式がある。
【0003】
フラッシュ定着方式では、キセノンフラッシュランプなどの放電管の閃光からの光エネルギーを熱エネルギーに変換することによってトナーを溶融し記録媒体上に定着させる。したがって、高速かつ非接触で定着を行えるので高速化が容易であるという利点を有する。フラッシュ定着用の放電管として一般に用いられているキセノンランプの分光分布は、800nm〜1000nmの近赤外波長領域における発光強度が顕著に強く、400nm〜800nmの可視領域における発光強度は比較的小さい。このためフラッシュ定着が行われるトナーは近赤外波長領域において光吸収性が高いことが要求される。そこで、フラッシュ定着が行われるトナーには、光吸収性を向上し定着性を向上するため、赤外線吸収剤が添加されている。
【0004】
また、近年、マークや情報を不可視にして、特別な検知器を用いた場合のみ検出あるいは読み出し可能な印刷物等が用いられている。例えば、商品のパッケージに印刷されているバーコードや、OHPシートの紙送り検出用マークなどである。これらのバーコード等は、発光ダイオードより赤外光を照射して、赤外光を検出するフォトディテクタにより読み出される。このような印刷の用途に赤外線吸収剤が用いられている。
【0005】
赤外線吸収剤としては、有機系化合物では、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ニッケル錯体などが知られている(例えば特開昭61−132959号公報、特開平7−191492号公報、特開平10−39535号公報など)。また、無機系化合物では、リン酸イッテルビウム、酸化スズ等が知られている。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−209110号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フラッシュ定着が行われるトナーにおいては、赤外線吸収剤の赤外線吸収効率、すなわち、赤外線吸収剤の単位質量当たりの吸収する光量が高い程、トナーへの添加量を低減することができる。一般に、赤外線吸収剤は、トナーに添加する他の材料よりかなり高価なため、赤外線吸収剤の添加量を低減することにより、製造コストの大幅な低減が可能となる。そこで、従来より、赤外線吸収効率を向上するために、赤外線吸収剤の微粉末化が行われてきた。しかしながら、微粉末化をすると凝集しやすくなり、トナーの結着樹脂中などの分散性が低下し、赤外線吸収効率が逆に低下してしまうという問題を生ずる。
【0008】
また、赤外線吸収剤は近赤外のみならず、赤色の波長領域にも吸収を有するため、赤色の補色である緑色を発色する。したがってフラッシュ定着用が行われるトナーに添加すると、トナー全体の色相が変化してしまい、シフトしたままの色相では、電子写真プリンタ等の画像形成装置による調整を行っても、十分な色再現性を得ることができないという問題が生ずる。
【0009】
さらに、上述した不可視情報の印刷のために着色された赤外線吸収剤を使用すると、隠すべき情報が可視化されてしまうという問題を生ずる。
【0010】
したがって、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、赤外線吸収剤の添加量の低減を図ると共に、良好な定着性及び優れた色再現性を有するトナーおよびそのトナーを用いた画像形成装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、赤外線吸収効率の向上を図ると共に添加量の低減が可能な赤外線吸収剤を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、結着樹脂と赤外線吸収剤とを含むトナーであって、前記赤外線吸収剤は、下記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、下記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、下記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、下記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および下記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つであり、かつカップリング剤で処理されているトナーが提供される。
【0012】
【化7】
(上記式(1)、(2)において、R1〜R8のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表し、Aはp−フェニレン基又はp−ビフェニレン基を、X−は陰イオンを表す。)
【0013】
【化8】
(上記式(3)において、R1〜R4のそれぞれはアルキル基、R5及びR6のそれぞれは水素原子、3級アミン又は4級アミンを表し、X−は陰イオンを表す。)
【0014】
【化9】
(上記式(4)において、Mは金属、酸化金属又はハロゲン化金属を表し、R1〜R24のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表す。)
【0015】
【化10】
(上記式(5)、(6)において、Aは第四級アンモニウム基を表す。)
【0016】
【化11】
(上記式(7)において、Xは水素原子、アルキル基、又はハロゲン基を、nは1〜4の整数を表す。)
【0017】
【化12】
(上記式(8)において、R1〜R20のそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はジアリールアミノ基を表す。)本発明によれば、上記一般式(1)〜(8)に示される、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物及びニッケル錯体は、750nm〜1600nmの波長領域の赤外線吸収効率、すなわち単位質量当たりの赤外線吸収量が、無機系化合物の赤外線吸収剤、例えばリン酸イッテルビウム等より高い。アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物及びニッケル錯体をカップリング剤で表面処理することにより、赤外線吸収剤が添加される結着樹脂中での凝集を抑制されるので、カップリング剤で処理されていない従来の赤外線吸収剤より分散性が向上し、赤外線吸収効率が向上する。したがって、フラッシュ光を用いて定着を行うトナーにおいては、フラッシュ光の光エネルギーを効率良く熱に変換して溶融され記録媒体に浸透・定着される。その結果、定着性の良好な定着画像を形成することができる。また、赤外線吸収効率の向上により、トナーへの赤外線吸収剤の添加量を低減することができる。その結果、不可視印刷物に使用する無色のトナーにおいては、印刷文字等への着色を防止することができる。
【0018】
本発明のトナーは着色剤を更に含んでもよい。上述したように本発明のトナーは、赤外線吸収剤の添加量を低減することができるので、イエロー、マゼンタ、シアンなどの色の着色剤が含まれるカラートナーの色相の変化を防止することができ、優れた色再現が可能となる。
【0019】
前記カップリング剤が、チタン系カップリング剤であってもよい。チタン系カップリング剤に処理された赤外線吸収剤を添加したトナーは、最も良好な定着性を有する。赤外線吸収剤の表面に密着することにより、結着樹脂中での赤外線吸収剤の凝集を防止するとともに分散性を向上させて、トナーの定着性を向上することができる。
【0020】
本発明の他の観点によれば、上記のいずれかのトナーを使用する画像形成装置が提供される。
【0021】
本発明によれば、赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されたことにより結着樹脂中で良く分散され、赤外線吸収効率が向上されている。したがって、定着性が良好であり、結着樹脂への添加量が低減可能であるので色再現性の優れた画像を形成することができる。
【0022】
本発明のその他の観点によれば、上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つの化合物であり、カップリング剤で処理された赤外線吸収剤が提供される。
【0023】
本発明によれば、上記一般式(1)〜(8)に示される、アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物及びニッケル錯体は、750nm〜1600nmの波長領域の赤外線吸収効率、すなわち単位質量当たりの赤外線吸収量が、無機系化合物の赤外線吸収剤、例えばリン酸イッテルビウム等より高い。アミニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物及びニッケル錯体をカップリング剤で表面処理することにより、赤外線吸収剤の凝集が抑制されるので、カップリング剤で処理されていない従来の赤外線吸収剤より分散性が向上し、赤外線吸収効率が向上する。したがって、赤外線吸収剤の添加量を低減することが可能である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトナーの一例である、本実施の形態のフラッシュ定着用のカラートナーについて具体的に説明する。
【0025】
本実施の形態のフラッシュ定着用のカラートナーは、結着樹脂、カップリン剤により処理された赤外線吸収剤、着色剤などを含有している。
【0026】
ここで、上記赤外線吸収剤は画像形成装置の定着部において、フラッシュ光の光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有している。この赤外線吸収剤は結着樹脂の溶融を促進するために添加されている。
【0027】
赤外線吸収剤は、フラッシュ光を効率的に吸収するため、光の波長が750nm〜1600nmの近赤外領域に少なくとも1つ以上の強い光吸収ピークを有するものである。本実施の形態の赤外線吸収剤としては、上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、上記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、上記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、上記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物、並びに上記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体を用いる。これらの一般式(1)〜(8)に示される赤外線吸収剤は、無機系化合物のリン酸化イッテルビウムなどのランタノイド化合物、インジウムチンオキサイド、酸化スズなどの赤外線吸収剤より、赤外線吸収効率が高く、本実施の形態のカラートナーに好適である。
【0028】
上記ニッケル錯体においては、上記一般式(5)で表されるメルカプトフェノール系ニッケル錯体のうち好適なものは、例えば、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)テトラ−n−ブチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)テトラエチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)トリメチルフェニルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)トリエチルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)ジエチルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)ラウリルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−ナフトレート)ニッケル(II)トリエタノールアミンが挙げられる。
【0029】
また、上記一般式(6)で表されるメルカプトフェノール系ニッケル錯体のうち好適なものは、例えば、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)テトラ−n−ブチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)テトラエチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)テトラメチルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)トリメチルフェニルアンモニウム、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)トリエチルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)ジエチルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)ラウリルアミン、ビス(1−メルカプトレート−2−フェノレート)ニッケル(II)トリエタノールアミンが挙げられる。
【0030】
また、上記一般式(7)で表される芳香族ジアミン系ニッケル錯体では、例えばビス(4−クロロ−1,2−フェニレンジアミノ)ニッケル、ビス(4−メチル−1,2−フェニレンジアミノ)が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)〜(8)に示される赤外線吸収剤のうち、特に上記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物が、より赤外線吸収効率が高い点で更に好ましい。
【0032】
赤外線吸収剤は、カラートナー100重量部に対して0.01〜15重量部添加され、好ましくは0.1から5重量部である。15重量部より多いと色が濁るなど変化してしまうので不適であり、また、0.01重量部より少ないとフラッシュ光の光エネルギーを十分に吸収できず、その結果熱量が十分でないため結着樹脂を溶融することができない。
【0033】
本実施の形態のカラートナーの赤外線吸収剤はカップリング剤により処理されていることを特徴としている。カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、チタン系カップリング剤等を用いることができる。なお、本発明の目的である赤外線吸収剤の分散性を向上可能なカップリング剤であれば上記カップリング剤に限定されない。
【0034】
シラン系カップリング剤としては公知のものを用いることができるが、本実施の形態のシラン系カップリング剤として好適なものは、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられ、市販の各種シランカップリング剤を用いることができる。市販のシランカップリング剤の具体例は、トーレ・シリコーン社製のSH6020、SZ6023、SH6026、SH6030、SZ6032、SH6040、SZ6050、SH6062、SZ6070、SZ6072、SH6075、SH6076、SZ6079、SZ6083、SZ6300、AY43−021、信越シリコーン社製のKBS1003、KBE1003、KBM1003、KBM503、KBM502、KBM403、KBE402、KBE903、KBE902、KBM603、KBM602、KBM803、KBM802、KBM703など、及び日本ユニカー社製のA−150、A−151、A−171、A−172、A−174、A−186、A−187、A−1100、A−1120、A−1160、A−143、A−189などが挙げられる。
【0035】
また、アルミニウム系カップリング剤としては公知のものを用いることができるが、本実施の形態のアルミニウム系カップリング剤として好適なものは、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートで市販品はAL−M(味の素社製)等を用いることができる。
【0036】
ジルコアルミネート系カップリング剤としては公知のものを用いることができるが、本実施の形態のジルコアルミネート系カップリング剤として好適なものは、例えば、CAVECOMOD(米国CAVEDON CHEMICAL Co. inc.社製)を用いることができる。
【0037】
チタン系カップリング剤としては公知のものを用いることができるが、本実施の形態のチタン系カップリング剤として好適なものは、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。また、味の素社製のプレンアクト(商品名)を用いることができる。具体的にはKRTTS、KR38S、KR44、KR46B、KR55、KR138SS、KR238S、338X、KR2S、KR7、KR9S、KR11、KR12、KR34S、KR41Bなどが挙げられる。
【0038】
上記シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤及びチタン系カップリング剤のうち、チタン系カップリング剤が上記赤外線吸収剤との密着性が良好な点でより好ましい。更にチタン系カップリング剤の中でも、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート(KR46B:味の素社商品)が淡黄色と色が薄く、カラートナーの色相への影響が最も少なく、かつ分散性向上に最も効果がある点で特に好ましい。
【0039】
カップリング剤の添加量は、赤外線吸収剤100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部である。
【0040】
赤外線吸収剤のカップリング剤による処理は、例えば乾式混合により行われる。赤外線吸収剤及びカップリング剤を混合し、ヘンシェルミキサー等を用いて例えば1〜10分間撹拌する。また、カップリング剤を例えばアセトン溶液中に分散あるいは溶解し、次いで赤外線吸収剤を分散させ、次いで乾燥させる湿式法を用いてもよい。さらに、約100℃〜200℃、5〜60分間の加熱により焼成してもよい。カップリング剤が赤外線吸収剤の表面に密着するので、さらに分散性を向上することができる。
【0041】
上記カップリング剤により表面処理を行うことにより赤外線吸収剤の分散性を向上し、より少量の赤外線吸収剤で所望の光エネルギーを吸収することができる。その結果、赤外線吸収剤の発色による色相の変化を抑制することができる。
【0042】
本実施の形態のカラートナーに含有される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、チタンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコオイルブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン6Cレーキ、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、マラカイトグリーン、マラカイトグリーンヘキサレート、オイルブラック、アゾオイルブラック、ローズベンガル、モノアゾ系染顔料、ジスアゾ系染顔料、トリスアゾ系染顔料などが挙げられる。これらの着色剤はトナー100重量部に対して、0.1〜20重量部(好ましくは0.5〜15重量部)添加される。着色剤が20重量部を超えると発色が黒っぽくなるので好ましくない。
【0043】
本実施の形態のカラートナーに含有される結着樹脂として、各種の熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、スチレン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリエステル樹脂等を使用することができるが、フラッシュ定着時に発生する臭気が少ない点でポリエステルが好ましい。特に数平均分子量が1000〜2500であるポリエステルがトナーの定着性の点で更に好ましい。さらに、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナバワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラワックス、木蝋、蜜蝋、鯨蝋、モンタンワックス、オゾケライト、セシレン、アミドワックス、カスターワックスなどの汎用ワックス類を併用することができる。
【0044】
また、本発明のカラートナーには、帯電性付与や異なる温湿度環境下での帯電量変化を小さくすることを目的として、帯電制御剤を添加してもよい。帯電制御剤は無色ないし淡色のものが好ましい。帯電制御剤としては、例えばカリックスアレン、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、アミノ基含有のポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸の錯化合物、フェノール化合物、アゾクロム系、アゾ亜鉛系など公知の正帯電性、負帯電性の帯電制御剤を使用することができる。
【0045】
また、本実施の形態のカラートナーの流動性を向上するために、流動性向上剤として、白色の無機微粒子を添加・混合することもできる。このような白色の無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素等を微粒子化したものが挙げられる。これらの中で特にシリカ微粒子が特に好ましい。また、これらの無機微粒子は併用しても良い。流動性向上剤の添加量は、トナー100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0046】
さらに、本実施の形態のカラートナーにはクリーニング活剤としてステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末を添加してもよい。また、鉄粉、マグネタイト、フェライト等の磁性材料を混合し磁性トナーとしても使用することができる。
【0047】
以上により、本実施の形態のカラートナーは、トナー全体として100重量部とした場合、例えば結着樹脂は70〜97重量部、カップリング処理された赤外線吸収剤は0.01〜15重量部(好ましくは0.1〜5重量部)、着色剤は0.1〜20重量部(好ましくは0.5〜15重量部)、を含む。
【0048】
本発明のカラートナーは、従来公知の製造法により製造することができ、上述したカップリング剤により処理された赤外線吸収剤、結着樹脂、着色剤を準備し、さらに必要により帯電制御剤、ワックスを添加して原材料とする。この原材料を例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダ、ロールミル、ボールミル、押出機などにより混練して均一分散させる。その後、粉砕機、ジェットミルなどにより粉砕、微粉末化し、風力分級機などにより分級して、所望の粒度のカラートナーを得る。なお、混練の際に、カップリング剤により処理された赤外線吸収剤と帯電制御剤を別々の樹脂に混練した後、この両者を再度混練する方法を用いてもよい。
【0049】
以下、実施例に基づき本実施の形態のカラートナーについてより具体的に説明する。
【0050】
[実施例]
(赤外線吸収剤のカップリング剤による処理)
図1は、本発明の実施例及び本発明によらない比較例の赤外線吸収剤及びカップリング剤の配合、並びに評価結果を示す図である。
【0051】
本発明の実施例1〜9及び本発明によらない比較例1〜8は、図1に示す赤外線吸収剤及びカップリング剤を用いて、赤外線吸収剤をカップリング剤により処理を行った。図1に示す赤外線吸収剤及びカップリング剤の具体的な製品名及び製造会社を以下に示した。
[赤外線吸収剤]
IR1:ナフタロシアニン系 YKR−5010 山本化成
IR2:アミニウム系 AM1 帝国化学
IR3:ニッケル錯体 SIR−130 三井化学
IR4:ポリメチン系 CY−10 日本化薬
IR5:リン酸イッテルビウム UU−HP 信越化学
[カップリング剤]
CP1:シラン系 SH6020 トーレ・シリコーン
CP2:アルミニウム系 AL−M 味の素
CP3:チタン系 KR46B(テトラオクチルビスチタネート) 味の素
CP4:チタン系 KR44 味の素
赤外線吸収剤のカップリング剤による表面処理は以下のように行った。図1の実施例及び比較例に示す組み合わせの赤外線吸収剤2000重量部とカップリング剤20重量部をヘンシェルミキサーに投入し、600RPM、10分間混合を行った後、150℃10分間焼成した。微粉末のカップリング剤により処理をされた赤外線吸収剤を得た。
【0052】
(カラートナーの製造)
以下に示す配合により、カラートナーを製造した。実施例及び比較例のカラートナーは上述した赤外線吸収剤及びカップリング剤以外は、配合される材料及び配合割合を同一とした。
[カラートナーの配合]
着色剤:Brilliant Yellow 2G×70(クラリアント) 5.0重量部
バインダー:ポリエステル樹脂FN119(花王) 93.0重量部
帯電制御剤:カリックスアレンE−89 (オリエント) 1.0重量部
ワックス:NP105(三井化学) 0.5重量部
カップリング剤により処理された赤外線吸収剤 0.5重量部
上記のカラートナーの配合に示す材料をヘンシェルミキサーに投入し、600RPM、10分間予備混練を行った後、エクストルーダーにより混練した。その際の条件は、200RPMで押出量は20kg/時間、200RPM、150℃に設定した。次いで、ハンマーミルにて粗粉砕し、ジェットミルにて微粉砕して気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径が8.5μmの着色微粒子を得た。次いで、疎水性シリカ微粒子であるR974(日本エアロジル社商品名)1.5重量部をヘンシェルミキサーで外添処理し、図1に示す実施例及び比較例のカラートナーを得た。
【0053】
(カラートナーの定着試験及び定着性評価)
実施例及び比較例のカラートナーをフラッシュ定着型のプリンタを使用して記録媒体上にトナー画像の形成を行い定着性を評価した。
【0054】
1成分現像剤を使用するレーザプリンタGL8300(富士通社製)にフラッシュプリンタPS2160(富士通社製)のフラッシュ定着機を搭載した改造機を用いた。このフラッシュ定着機のフラッシュランプは図2に示す分光分布を有し、記録媒体(用紙)の単位面積当たりの光エネルギーを3J/cm2とした。
【0055】
また、定着性の評価は、テープ剥離試験により行った。テープ剥離試験は、定着画像を粘着テープ(スコッチメンディングテープ:住友3M社商品名)を軽く貼り、直径50mm、幅30mmの円柱ブロックに500gfの荷重を印可して、円柱ブロックを円周方向に転がすことにより該テープを密着させ、しかる後、該テープを90°の角度で引き剥がす試験方法であり、定着率は、定着率(%)=(テープ剥離後の定着画像の光学濃度)/(定着画像の光学濃度)×100で表される。定着率が80%以上を良(図1に示す「○」)、60%以上80%未満をやや良(図1に示す「△」)、60%未満を不良(図1に示す「×」)とした。ここで、定着画像の光学濃度は、分光測色計(X−Rite社製色差計938Spectrodentitometer(測定光源をCIE−D65)を使用して、波長400nmの反射光を測定し光学濃度とした。
【0056】
なお、カップリング剤により処理した赤外線吸収剤の色調の評価を目視により行った。
【0057】
以下、図1を参照しながら、好ましい実施例のカラートナーについて説明する。
【0058】
まず、実施例1〜3及び比較例1のカラートナーについて、各カラートナーの定着性に基づいて、カップリング剤による処理の有無、及びカップリング剤の種類の点から、好ましいカラートナーが確認できる。実施例1〜3及び比較例1のカラートナーは、赤外線吸収剤としてナフタロシアニン系化合物IR1が共通に用いられている。そして、実施例1〜3についてカップリング剤がそれぞれ異なり、比較例1はカップリング剤による処理がなされていないものである。
【0059】
実施例1〜3のカラートナーを見ると、比較例1のカラートナーに対して、定着性が著しく高くなっていることが分かる。実施例1〜3のカラートナーは、カップリング剤により処理されたナフタロシアニン系化合物IR1の赤外線吸収剤IR1がバインダー中で良く分散し、赤外線吸収効率が向上しているためである。
【0060】
実施例1〜3のカラートナー同士を比較すると、チタン系カップリング剤CP3によって処理された赤外線吸収剤が添加された実施例3のカラートナーの定着性が最も高くなっていることが分かる。チタン系カップリング剤は、赤外線吸収剤との密着性が他のカップリング剤と比較して良好であるので、バインダー中の分散性がより良好であるためと推察される。
【0061】
次に、実施例4〜6及び比較例2〜4のカラートナーについて、各カラートナーの定着性に基づいて、赤外線吸収剤の種類、及びカップリング剤による処理の有無の点から、好ましいカラートナーが確認できる。実施例4〜6のカラートナーは、赤外線吸収剤がそれぞれアミニウム系化合物IR2、ニッケル錯体IR3、ポリメチン系化合物IR4が用いられ、総てチタン系カップリング剤CP3により処理されている。一方、比較例2〜4のカラートナーは、実施例4〜6のカラートナーの赤外線吸収剤がそれぞれ用いられ、カップリング剤による処理がなされていないものである。
【0062】
実施例4〜6のカラートナーを見ると、比較例2〜4のカラートナーに対して、定着性が著しく高くなっていることが分かる。実施例4〜6のカラートナーに用いられているアミニウム系化合物IR2、ニッケル錯体IR3及びポリメチン系化合物IR4の赤外線吸収剤のいずれもが、カップリング剤により処理されることにより、バインダー中での分散性が向上しているためである。
【0063】
次に、実施例3,8,9及び比較例5,6のカラートナーについて、各カラートナーの定着性に基づいて、カップリング剤添加量の点から、好ましいカラートナーが確認できる。実施例3,8,9及び比較例5,6のカラートナーは、カップリング処理剤の添加量が、赤外線吸収剤100重量部に対して、それぞれ5重量部,0.01重量部,20重量部,0.005重量部,25重量部である。なお、赤外線吸収剤IR1及びカップリング剤CP3が共通して用いられている。
【0064】
実施例3,8,9及び比較例5,6のカラートナーを見ると、カップリング剤CP3の添加量が0.01重量部〜20重量部において定着性が良好であることが分かる。0.005重量部では、カップリング剤の添加量が不足してバインダー中での分散が不十分であると推察される。また、25重量部では、カップリング剤の量が多すぎて、カップリング剤を介して赤外線吸収剤の粒子が凝集してしまい、分散性が悪化していると推察される。
【0065】
次に、実施例7のカラートナーは、赤外線吸収剤がナフタロシアニン系化合物IR1にチタン系カップリング剤CP4により処理したものが用いられている。実施例7のカラートナーは、定着性の点では良好であるが、定着後の色調が他の実施例のカラートナーより劣っていた。カップリング剤による処理後の赤外線吸収剤の色が赤褐色になっていたためである。
【0066】
最後に、実施例1〜9及び比較例7,8のカラートナーについて、各カラートナーの定着性に基づいて、赤外線吸収剤の種類の点から、好ましいカラートナーが確認できる。実施例1〜9のカラートナーは上述した赤外線吸収剤IR1〜IR4が用いられているのに対し、比較例7,8のカラートナーは赤外線吸収剤がリン酸イッテルビビウムである。また、実施例1〜9及び比較例7のカラートナーは、赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されているのに対して、比較例8のカラートナーは、赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されていない。
【0067】
比較例7,8のカラートナーを見ると、実施例1〜9のカラートナーに対して、定着性が著しく劣っていることが分かる。比較例7,8のカラートナーに用いられている赤外線吸収剤のリン酸イッテルビビウムの赤外線吸収効率が、実施例1〜9のカラートナーに用いられているナフタロシアニン系化合物IR1、アミニウム系化合物IR2、ニッケル錯体IR3及びポリメチン系化合物IR4より低いためである。また、比較例7,8のカラートナー同士を比較すると、定着性は両方とも低く、カップリング剤により処理の効果が見られない。リン酸イッテルビビウムの赤外線吸収効率が低いため、分散性の効果が少ないためであると推察される。
【0068】
次に、本発明の実施の形態であるカラー画像形成装置について簡単に説明する。
【0069】
図3は、本発明の実施の形態であるカラー画像形成装置を模式的に示す図である。本装置10は、画像読取/処理ユニット11、画像書込ユニット12、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色について設けられた現像部13Y、13M、13C、13K、感光体14、帯電器15、一次転写部16、中間転写体18、二次転写部19、キセノンフラッシュランプ20を有するフラッシュ定着器21、感光体クリーニング手段22、中間転写体クリーニング手段23、一次及び二次転写電圧供給手段24、25などより構成されている。本装置はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを使用して、フルカラーの画像を記録媒体上に形成するものである。
【0070】
現像部13Y、13M、13C、13Kは、図示されない現像剤容器と現像ローラ26を含み、現像剤容器内には本発明のカラートナーからなる一成分現像剤が収納されている。また、画像書込ユニット12によって静電潜像が感光体14に書込まれ、現像ローラ22よりカラートナーが供給され、カラートナーが静電潜像に対応して感光体14に付着する。感光体14は、一般にアモルファスシリコン、セレンなどの無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチンなどの有機感光体などを用いることができる。特に長寿命の点からアモルファスシリコンが好ましい。
【0071】
感光体に形成されたトナー画像は、一次転写部16において中間転写体18に転写され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーがこの順に転写されて形成されたトナー画像は、二次転写部19において記録媒体に転写され、記録媒体は定着器21に搬送される。
【0072】
定着器21はフラッシュ定着方式により、例えばキセノンフラッシュランプ20を用いて定着を行う。定着は、例えばキセノンフラッシュランプ20のフラッシュ光を1回照射する。その際のフラッシュ光のエネルギーは、記録媒体上で1〜7J/cm2に設定する。なお、各色を記録媒体に転写するごとに定着を行ってもよく、その際のフラッシュ光のエネルギーは、1回ごとに記録媒体上で1〜3J/cm2に設定する。これらの範囲より小さいカラートナーが溶融せず定着不良となり、逆に大きすぎるとトナーのボイドや記録媒体のこげが発生しやすくなる。なお、キセノンフラッシュランプを用いる場合のフラッシュ光1回の単位面積当たりの照射エネルギーは、S={(1/2)CV2/ul/nf}と表され、ここでCはコンデンサ容量(μF)、Vは入力電圧(V)、uは記録媒体搬送速度(mm/s)、lは印字幅(mm)、nはランプ本数(本)、fはフラッシュランプの点灯周波数(Hz)である。
【0073】
このような画像形成装置によれば、赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されたことにより結着樹脂中で良く分散され、赤外線吸収効率が向上されている。したがって、定着性が良好であり、結着樹脂への添加量が低減可能であるので色再現性の優れた画像を形成することができる。また、定着性が良好であるのでさらなる印刷速度の高速化が可能である。
【0074】
なお、上述したカラー画像形成装置10は、まず4色の転写後に定着を行ってフルカラー画像を形成するものであるが、1色を転写及び定着する画像形成装置を4台使用して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色をそれぞれ独立してフルカラー画像を形成する画像形成装置であってもよい。このような構成によれば、4色のそれぞれの画像情報を対応する画像形成装置に送りさえすれば、容易にフルカラーの画像を記録媒体上に形成することができる。図3に示す4色を同時に定着する画像形成装置と比較して、装置コストを低減することができる。
【0075】
さらに、これらの4色総てを使用することは必須ではない。すなわち、印刷物の種類あるいは形成する画像の色彩に応じてこれらの4色のうちのいずれかの色を使用せずに画像を形成する画像形成装置であってもよい。
【0076】
以上、カラートナーおよびカラートナーを用いたカラー画像形成装置について詳述したが、無色透明の本発明による実施の形態のトナーを不可視印刷物、不可視パターン等の印刷に用いることができる。
【0077】
具体的には、不可視印刷物等に用いられる本実施の形態のトナーの配合は、上述したカラートナーの配合において、着色剤を添加しない以外は同様とする。この配合では、着色剤が添加されておらず、かつ、上記一般式(1)〜(6)に示される赤外線吸収剤がカップリング剤により処理されており、結着樹脂中の分散性が良いのでトナーへの添加量を低減することができる。その結果、赤外線吸収剤自体は発色するものの、添加量が微少量であるので、かかるトナーが定着されて形成された画像は無色透明となる。なお、定着方式はフラッシュ光によるフラッシュ定着方式に特に限定されず、ヒートロール定着方式であってもよい。
【0078】
本実施の形態のトナーは以下の不可視印刷物、不可視パターン等に適用可能である。例えば、不可視パターンとしては、例えば、OHPシートの紙送り検知マーク等の非情報パターンやコードパターン等の情報パターンが挙げられ、さらに情報パターンとしては、バーコード等のコードパターンが挙げられる。例えばバーコードの1次元あるいは2次元バーコードを、対象となる商品パッケージに印刷することにより、商品説明等の商品パッケージに印刷された情報を隠蔽せずに、バーコードを付与することができる。本実施の形態のトナーは、微粉末であるので分解能が良く、精緻な2次元バーコードに好適である。
【0079】
なお、かかる不可視パターンの読み出しは、従来から用いられている赤外LED(発光ダイオード)や赤外レーザ等の赤外線光源をそのまま用いることができ、その受光も例えば赤外線受光用のフォトダイオード、フォトトランジスター等を用いることができる。
【0080】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0081】
また、上述したように、本発明のトナーに用いられるカップリング剤により処理された赤外線吸収剤は、赤外線を遮断する目的に使用することができる。例えば書き換え型又は追記型のCD、DVD等の記録媒体の記録剤、プラズマディスプレーのフィルター、熱線遮蔽ガラス、熱線遮蔽フィルム、農業用フィルムなどへ適用することもできる。
【0082】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 結着樹脂と赤外線吸収剤とを含むトナーであって、
前記赤外線吸収剤は、上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、上記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、上記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、上記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および上記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つであり、かつカップリング剤で処理されていることを特徴とするトナー。
(付記2) 着色剤を更に含むことを特徴とする付記1記載のトナー。
(付記3) 前記カップリング剤の添加量が、赤外線吸収剤100重量部に対して0.01重量部〜20重量部の範囲内であることを特徴とする付記1または2記載のトナー。
(付記4) 前記カップリング剤が、チタン系カップリング剤であることを特徴とする付記1〜3のうち、いずれか一項記載のトナー。
(付記5) 前記チタン系カップリング剤が、テトラオクチルビスチタネートであることを特徴とする付記1〜4のうち、いずれか一項記載のトナー。
(付記6)前記結着樹脂は、数平均分子量が1000〜2500のポリエステル樹脂であることを特徴とする付記1〜5のうち、いずれか一項記載のトナー。
(付記7) 付記1〜6のうち、いずれか一項記載のトナーを使用することを特徴とする画像形成装置。
(付記8) 上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、上記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、上記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、上記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および上記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つの化合物であり、カップリング剤で処理されたことを特徴とする赤外線吸収剤。
(付記9) ナフタロシアニン系化合物が、カップリング剤で処理されたことを特徴とする付記8記載の赤外線吸収剤。
(付記10) 前記カップリング剤が、チタン系カップリング剤であることを特徴とする付記8または9記載の赤外線吸収剤。
【0083】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明によれば、赤外線吸収剤の添加量の低減を図ると共に、良好な定着性及び優れた色再現性を有するトナーおよびそのトナーを用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び本発明によらない比較例を示す図である。
【図2】キセノンフラッシュランプの分光分布の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態であるカラー画像形成装置を模式的に示す図である。
【符号の説明】
10 画像形成装置
11 画像読取/処理ユニット
12 画像書込ユニット
13Y、13M、13C、13K 現像部
14 感光体
16 一次転写部
18 中間転写体
19 二次転写部
20 キセノンフラッシュランプ
21 フラッシュ定着器
22 現像ローラ
Claims (5)
- 結着樹脂と赤外線吸収剤とを含むトナーであって、
前記赤外線吸収剤は、下記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、下記一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、下記一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、下記一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および下記一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つであり、かつカップリング剤で処理されていることを特徴とするトナー。
- 着色剤を更に含むことを特徴とする請求項1記載のトナー。
- 前記カップリング剤が、チタン系カップリング剤であることを特徴とする請求項1または2記載のトナー。
- 請求項1〜3のうち、いずれか一項記載のトナーを使用することを特徴とする画像形成装置。
- 請求項1記載の上記一般式(1)で示されるアミニウム系化合物、一般式(2)で示されるジイモニウム系化合物、一般式(3)で示されるポリメチン系化合物、一般式(4)で示されるナフタロシアニン系化合物および一般式(5)〜(8)で示されるニッケル錯体からなる群から選択された少なくとも一つの化合物であり、カップリング剤で処理されたことを特徴とする赤外線吸収剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002310427A JP2004145036A (ja) | 2002-10-25 | 2002-10-25 | トナー、そのトナーを用いた画像形成装置、及び赤外線吸収剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002310427A JP2004145036A (ja) | 2002-10-25 | 2002-10-25 | トナー、そのトナーを用いた画像形成装置、及び赤外線吸収剤 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004145036A true JP2004145036A (ja) | 2004-05-20 |
Family
ID=32455916
Family Applications (1)
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JP2002310427A Pending JP2004145036A (ja) | 2002-10-25 | 2002-10-25 | トナー、そのトナーを用いた画像形成装置、及び赤外線吸収剤 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004145036A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010113368A (ja) * | 2010-01-12 | 2010-05-20 | Fuji Xerox Co Ltd | 電子写真用トナーセット、電子写真用現像剤セット及びそれを用いた画像形成方法 |
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2002
- 2002-10-25 JP JP2002310427A patent/JP2004145036A/ja active Pending
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JP2010113368A (ja) * | 2010-01-12 | 2010-05-20 | Fuji Xerox Co Ltd | 電子写真用トナーセット、電子写真用現像剤セット及びそれを用いた画像形成方法 |
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