JP2004144178A - 能動型動吸振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】所望のダイナミックレンジを得ることができて、しかも、高性能化かつコスト低減を図り得る能動型動吸振装置を提供すること。
【解決手段】能動型動吸振装置1は、重錘2と、重錘2を隙間X1及びY1をもって取り囲んだ内側枠体3と、重錘2を内側枠体3に対してX方向に可動に保持する一方、Y方向及び垂直方向Vに不動に保持する保持機構4と、内側枠体3の外側に隙間X2及びY2をもって配された外側枠体5と、内側枠体3を外側枠体5に対してY方向に相対的に可動に保持する一方、X方向及び垂直方向Vに不動に保持する保持機構6と、重錘2の内側枠体3に対するX方向の相対的な移動を許容する一方、重錘2を内側枠体3に対してX方向に相対的に移動させる移動手段8と、重錘2の外側枠体5に対するY方向の相対的な移動を許容する一方、重錘2を外側枠体5に対してY方向に相対的に移動させる移動手段9とを具備している。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強風、地震等により構造物に生起する振動を低減する能動型動吸振装置(アクティブマスダンパ)に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献】
特許第2966146号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
能動型動吸振装置としては上記の特許文献に記載されているものが知られており、この能動型動吸振装置は、夫々が一対の極を隙間をもって配置してなる一対の電磁石に交互に通電を行って反発力を発生して水平面内の一方の方向に対する振動の低減を行うようにしたものである。
【0004】
ところで、電磁石による反発力は距離の二乗に反比例するので、大きな反発力を電磁石によって得るためには、一対の極間の隙間を狭くするか、電磁石に流す電流を大きくする必要があるが、一対の極間の隙間を狭くすると、能動型動吸振装置のダイナミックレンジが狭くなって大振幅の振動に対して動作しなくなる虞がある一方、電磁石に流す電流を大きくするには、大容量の電流源を必要とする上に、大電流を処理できる電気回路を用いる必要がある結果、コストアップを招来する虞がある。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、所望のダイナミックレンジを得ることができて、しかも、高性能化かつコスト低減を図り得る能動型動吸振装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様の能動型動吸振装置は、重錘と、この重錘を取り囲んだ内側枠体と、重錘と内側枠体との間に介在されていると共に、重錘を内側枠体に対して水平面内のX方向に可動に保持する一方、水平面内のX方向に交差する水平面内のY方向並びにX方向及びY方向に直交する垂直方向に不動に保持する第一の保持機構と、内側枠体の外側に配された外側枠体と、内側枠体と外側枠体との間に介在されていると共に、内側枠体を外側枠体に対してY方向に相対的に可動に保持する一方、X方向及び垂直方向に不動に保持する第二の保持機構と、内側枠体又は外側枠体に対する重錘のX方向及びY方向の所定値の相対的振動を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号に基づいて、重錘の内側枠体に対するX方向の相対的な移動を許容する一方、重錘の内側枠体に対するX方向の振動変位を減少させるように重錘を内側枠体に対してX方向に相対的に移動させる第一の移動手段と、検出手段からの検出信号に基づいて、重錘の内側枠体に対するY方向の相対的な移動を許容する一方、重錘の外側枠体に対するY方向の振動変位を減少させるように重錘を外側枠体に対してY方向に相対的に移動させる第二の移動手段とを具備しており、ここで、内側枠体は、重錘を間にしてX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部を有しており、第一の移動手段は、内側枠体の一対のX方向縦壁部に関して固定されていると共に、重錘に対してX方向に相対的に可動なX方向走行体と、このX方向走行体を重錘に対して相対的にX方向に走行させる作用力を与えるようにX方向走行体に係合していると共に重錘に設けられたX方向走行駆動源とを具備している。
【0007】
第一の態様の能動型動吸振装置によれば、第一の移動手段が、一対のX方向縦壁部に関して固定されたX方向走行体と、このX方向走行体を重錘に対して相対的にX方向に走行させる作用力を与えると共に重錘に設けられたX方向走行駆動源とを具備しているために、重錘と内側枠体とのX方向の相対位置に拘わらずX方向走行体とX方向走行駆動源との係合部での位置関係を夫々一定にできる結果、重錘と内側枠体の一対のX方向縦壁部との間の距離を大きくしてダイナミックレンジを広くしても、それに応じてX方向の作用力を大きくする必要がなく、而して、X方向に関して所望のダイナミックレンジを得ることができて、しかも、高性能化かつコスト低減を図り得る。
【0008】
本発明の能動型動吸振装置において、X方向走行駆動源とX方向走行体との係合としては、電磁的係合であっても機械的係合であってもよく、要は、X方向走行駆動源によってX方向走行体を重錘に対して相対的にX方向に走行させる作用力を与える係合であればよい。
【0009】
X方向走行体は、内側枠体に関して固定されていればよいのであって、例えば内側枠体がその下縁で構造物の屋上床等の床部に固着される一方、外側枠体が重錘と同様に構造物の屋上床等の床部から浮いて配される場合には、能動型動吸振装置が設置される構造物の屋上床等の床部又は内側枠体に固定されていてもよく、これに代えて、例えば内側枠体が重錘と同様に構造物の屋上床等の床部から浮いて配される一方、外側枠体がその下縁で構造物の屋上床等の床部に固着される場合には、内側枠体に固定され、特に好ましくは本発明の第二の態様の能動型動吸振装置のように、その一端部では一方のX方向縦壁部に、その他端部では他方のX方向縦壁部に夫々固着されて内側枠体に固定される。
【0010】
本発明の第三の態様の能動型動吸振装置では、内側枠体は、重錘を間にしてY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部を有しており、第一の保持機構は、内側枠体に対する重錘のX方向の移動を許容する一方、内側枠体に対する重錘のY方向の移動を阻止するように、一対のX方向縦壁部と重錘との間の夫々に介在された横置きのU字状の板ばねと、内側枠体に対する重錘のX方向の移動を許容する一方、重錘を内側枠体に対して垂直方向に不動に保持するように、重錘と一対のY方向縦壁部との間の夫々に介在された縦置きのU字状の板ばねとを具備している。
【0011】
本発明の第四の態様の能動型動吸振装置では、外側枠体は、内側枠体の一対のX方向縦壁部を間にしてX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部と、内側枠体の一対のY方向縦壁部を間にしてY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部とを有しており、第二の保持機構は、外側枠体に対する内側枠体のY方向の移動を許容する一方、外側枠体に対する内側枠体のX方向の移動を阻止するように、内側枠体と外側枠体との夫々の一対のY方向縦壁部間の夫々に介在された横置きのU字状の板ばねと、外側枠体に対する内側枠体のY方向の移動を許容する一方、内側枠体を外側枠体に対して垂直方向に不動に保持するように、内側枠体と外側枠体との夫々の一対のX方向縦壁部間の夫々に介在された縦置きのU字状の板ばねとを具備している。
【0012】
本発明の第五の態様の能動型動吸振装置では、内側枠体は、重錘を間にしてY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部を有しており、外側枠体は、内側枠体の一対のX方向縦壁部を間にしてX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部と、内側枠体の一対のY方向縦壁部を間にしてY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部とを有しており、第二の保持機構は、外側枠体に対する内側枠体のY方向の移動を許容する一方、外側枠体に対する内側枠体のX方向の移動を阻止するように、内側枠体と外側枠体との夫々の一対のY方向縦壁部間の夫々に介在された横置きのU字状の板ばねと、外側枠体に対する内側枠体のY方向の移動を許容する一方、内側枠体を外側枠体に対して垂直方向に不動に保持するように、内側枠体と外側枠体との夫々の一対のX方向縦壁部間の夫々に介在された縦置きのU字状の板ばねとを具備している。
【0013】
第三から第五の態様の能動型動吸振装置のように、第一及び第二の保持機構がU字状の板ばねをもって構成されていると、重錘及び内側枠体又は外側枠体を摩擦抵抗なしにX方向及びY方向に可動に保持できる結果、能動型動吸振機能をほぼ理想的な態様で得ることができる。
【0014】
本発明の第六の態様の能動型動吸振装置では、第二の移動手段は、外側枠体の一対のY方向縦壁部に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっており、本発明の第七の態様の能動型動吸振装置では、第一の移動手段は、内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている。
【0015】
本発明の第八の態様の能動型動吸振装置では、第一の移動手段は、重錘に固定された固定子からなるX方向走行駆動源と、この固定子に対してX方向に相対的に可動であって内側枠体の一対のX方向縦壁部に掛け渡されていると共に、内側枠体に固定された可動子からなるX方向走行体とを有したリニアモータを具備しており、リニアモータは、検出手段の検出信号に基づいて、その固定子に対するその可動子のX方向の相対的な移動を許容する一方、その固定子に対してその可動子をX方向に相対的に移動させて内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている。
【0016】
本発明の第九の態様の能動型動吸振装置では、第一の移動手段は、重錘に固定された電動モータからなるX方向走行駆動源と、この電動モータの出力回転軸に直接的に又は間接的に巻き付けられていると共に、X方向に伸びて張設されており、一端で内側枠体の一方のX方向縦壁部に、他端で内側枠体の他方のX方向縦壁部に夫々固着された紐状体からなるX方向走行体とを具備しており、電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を回転させて紐状体の巻き付け位置を変えて内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっており、ここで、紐状体は、好ましくは本発明の第十の態様の能動型動吸振装置のように、ワイヤー、ベルト又はチェーンである。
【0017】
本発明の第十一の態様の能動型動吸振装置では、第一の移動手段は、重錘に固定された電動モータ及びこの電動モータの出力回転軸に固着されたピニオンからなるX方向走行駆動源と、このピニオンに噛み合っていると共に、X方向に伸びて配されており、一端で内側枠体の一方のX方向縦壁部に、他端で内側枠体の他方のX方向縦壁部に夫々固着されたラックからなるX方向走行体とを具備しており、電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を介してピニオンを回転させてピニオンとラックとの噛み合わせ位置を変えて内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている。
【0018】
本発明の第十二の態様の能動型動吸振装置では、第一の移動手段は、重錘に固定された電動モータ及びこの電動モータの出力回転軸の回転と共に回転するように当該出力回転軸に連結されたボールナットからなるX方向走行駆動源と、このボールナットに螺合されていると共に、X方向に伸びて配されており、一端で内側枠体の一方のX方向縦壁部に、他端で内側枠体の他方のX方向縦壁部に夫々固着されたボールねじからなるX方向走行体とを具備しており、電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を介してボールナットを回転させてボールナットとボールねじとの螺合位置を変えて内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている。
【0019】
本発明の第十三の態様の能動型動吸振装置では、第二の移動手段は、外側枠体に関して固定されていると共に、重錘に対してY方向に相対的に可動なY方向走行体と、このY方向走行体を重錘に対して相対的にY方向に走行させる作用力を与えるようにY方向走行体に係合していると共に内側枠体に関して固定されているY方向走行駆動源とを具備している。
【0020】
第十三の態様の能動型動吸振装置において、Y方向走行体は、外側枠体に関して固定されていればよいのであって、例えば外側枠体に固着されていても、これに代えて、能動型動吸振装置が設置される構造物の屋上床等の床部に固定されていてもよく、これと同様に、Y方向走行駆動源は、内側枠体に関して固定されていればよいのであって、例えば内側枠体に固着されていても、これに代えて、能動型動吸振装置が設置される構造物の屋上床等の床部に固定されていてもよいのである。
【0021】
本発明の第十四の態様の能動型動吸振装置では、第二の移動手段は、内側枠体に関して固定されている固定子からなるY方向走行駆動源と、このY方向走行駆動源の固定子に対してY方向に相対的に可動であって外側枠体に関して固定された可動子からなるY方向走行体とを有したリニアモータを具備しており、第二の移動手段のリニアモータは、検出手段の検出信号に基づいて、その固定子に対するその可動子のY方向の相対的な移動を許容する一方、その固定子に対してその可動子をY方向に相対的に移動させて外側枠体に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっている。
【0022】
本発明の第十五の態様の能動型動吸振装置では、第二の移動手段は、内側枠体に関して固定された電動モータからなるY方向走行駆動源と、このY方向走行駆動源の電動モータの出力回転軸に直接的に又は間接的に巻き付けられていると共に、Y方向に伸びて張設されており、一端及び他端で外側枠体に関して固定された紐状体からなるX方向走行体とを具備しており、第二の移動手段の電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を回転させて第二の移動手段の紐状体の巻き付け位置を変えて外側枠体に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっており、ここで、第二の移動手段の紐状体は、好ましくは本発明の第十六の態様の能動型動吸振装置のように、ワイヤー、ベルト又はチェーンである。
【0023】
本発明の第十七の態様の能動型動吸振装置では、第二の移動手段は、内側枠体に関して固定された電動モータ及びこの電動モータの出力回転軸に固着されたピニオンからなるY方向走行駆動源と、このY方向走行駆動源のピニオンに噛み合っていると共に、Y方向に伸びて配されており、一端及び他端で外側枠体に関して固定されたラックからなるY方向走行体とを具備しており、第二の移動手段の電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を介して第二の移動手段のピニオンを回転させて第二の移動手段のピニオンとラックとの噛み合わせ位置を変えて外側枠体に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっている。
【0024】
本発明の第十八の態様の能動型動吸振装置では、第二の移動手段は、内側枠体に関して固定された電動モータ及びこの電動モータの出力回転軸の回転と共に回転するように当該出力回転軸に連結されたボールナットからなるY方向走行駆動源と、このY方向走行駆動源のボールナットに螺合されていると共に、Y方向に伸びて配されており、一端及び他端で外側枠体に関して固定されたボールねじからなるY方向走行体とを具備しており、第二の移動手段の電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を介して第二の移動手段のボールナットを回転させて第二の移動手段のボールナットとボールねじとの螺合位置を変えて外側枠体に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっている。
【0025】
本発明において、検出手段は、好ましくは本発明の第十九の態様の能動型動吸振装置のように、外側枠体に対する重錘のX方向及びY方向の所定値の相対的振動を検出するようになっており、また好ましくは本発明の第二十の態様の能動型動吸振装置のように、相対的振動の加速度、速度及び変位のうちの少なくとも一つを検出するようになっており、そしてまた好ましくは本発明の第二十一の態様の能動型動吸振装置のように、外側枠体に対するX方向及びY方向の一定以上の相対的振動を検出するようになっている。
【0026】
本発明においては、X方向とY方向とは互いに交差していればよいのであるが、好ましくは本発明の第二十二の態様の能動型動吸振装置のように、互いに直交している。
【0027】
次に本発明及びその実施の形態を構造物に用いた例について、図を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何等限定されないのである。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1から図5において、本例の能動型動吸振装置1は、直方体からなる重錘2と、重錘2を水平面内のX方向の隙間X1及びX方向に交差、本例では直交する水平面内のY方向の隙間Y1をもって取り囲んだ平面形状において四角形の内側枠体3と、重錘2と内側枠体3との間に介在されていると共に、重錘2を内側枠体3に対してX方向に可動に保持する一方、Y方向並びにX方向及びY方向に直交する垂直方向Vに不動に保持する保持機構4と、内側枠体3の外側にX方向の隙間X2及びY方向の隙間Y2をもって配された平面形状において八角形の外側枠体5と、内側枠体3と外側枠体5との間に介在されていると共に、内側枠体3を外側枠体5に対してY方向に相対的に可動に保持する一方、X方向及び垂直方向Vに不動に保持する保持機構6と、内側枠体3又は外側枠体5、本例では外側枠体5に対する重錘2のX方向及びY方向の所定値の相対的振動を検出する検出手段7と、検出手段7からの検出信号に基づいて、重錘2の内側枠体3に対するX方向の相対的な移動を許容する一方、重錘2の内側枠体3に対するX方向の振動変位を減少させるように重錘2を内側枠体3に対してX方向に相対的に移動させる移動手段8と、検出手段7からの検出信号に基づいて、重錘2の外側枠体5に対するY方向の相対的な移動を許容する一方、重錘2の外側枠体5に対するY方向の振動変位を減少させるように重錘2を外側枠体5に対してY方向に相対的に移動させる移動手段9とを具備している。
【0029】
内側枠体3は、重錘2を間にしてしかも重錘2との間に隙間X1をもってX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部21及び22と、重錘2を間にしてしかも重錘2との間に隙間Y1をもってY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部23及び24と、X方向縦壁部21及び22に夫々ねじ、ナット25を介して連結された中央枠部26とを有しており、一対のX方向縦壁部21及び22並びに一対のY方向縦壁部23及び24は、四角形の内側枠体3を形成するように一体的に互いに連結されている。
【0030】
構造物の屋上床等の床部27に下縁で固定されている外側枠体5は、内側枠体3の一対のX方向縦壁部21及び22を間にしてしかも一対のX方向縦壁部21及び22の夫々との間に隙間X2をもってX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部31及び32と、内側枠体3の一対のY方向縦壁部23及び24を間にしてしかも一対のY方向縦壁部23及び24の夫々との間に隙間Y2をもってY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部33及び34と、Y方向縦壁部33及び34に夫々ねじ、ナット35を介して連結された中央枠部36と、一対のX方向縦壁部31及び32と一対のY方向縦壁部33及び34との夫々の間に配された角部縦壁部37、38、39及び40とを有しており、一対のX方向縦壁部31及び32、一対のY方向縦壁部33及び34並びに角部縦壁部37、38、39及び40は、八角形の外側枠体5を形成するように一体的に互いに連結されている。
【0031】
保持機構4は、内側枠体3に対する重錘2のX方向の移動を許容する一方、内側枠体3に対する重錘2のY方向の移動を阻止するように、一対のX方向縦壁部21及び22と重錘2との間の夫々に介在された横置きのU字状の板ばね51及び52と、内側枠体3に対する重錘2のX方向の移動を許容する一方、重錘2を内側枠体3に対して垂直方向Vに不動に保持するように、重錘2と一対のY方向縦壁部23及び24との間の夫々に介在された縦置きのU字状の板ばね53及び54とを具備している。
【0032】
板ばね51は、一縁部55で重錘2の側面61に、他縁部56で中央枠部26に夫々固着されており、板ばね52は、一縁部55で重錘2の側面62に、他縁部56で中央枠部26に夫々固着されており、一対の板ばね53の夫々は、一縁部55で重錘2の側面63に、他縁部56でY方向縦壁部23に夫々固着されており、他の一対の板ばね54の夫々は、一縁部55で重錘2の側面64に、他縁部56でY方向縦壁部24に夫々固着されている。
【0033】
保持機構6は、外側枠体5に対する内側枠体3のY方向の移動を許容する一方、外側枠体5に対する内側枠体3のX方向の移動を阻止するように、内側枠体3と外側枠体5との夫々の一対のY方向縦壁部23及び24並びに33及び34間の夫々に介在された横置きのU字状の板ばね71及び72と、外側枠体5に対する内側枠体3のY方向の移動を許容する一方、内側枠体3を外側枠体5に対して垂直方向Vに不動に保持するように、内側枠体3と外側枠体5との夫々の一対のX方向縦壁部21及び22並び31及び32に間の夫々に介在された縦置きのU字状の板ばね73及び74とを具備している。
【0034】
板ばね71は、一縁部55でY方向縦壁部23に、他縁部56でY方向縦壁部33に夫々固着されており、板ばね72は、一縁部55でY方向縦壁部24に、他縁部56でY方向縦壁部34に夫々固着されており、一対の板ばね73の夫々は、一縁部55でX方向縦壁部21に、他縁部56でX方向縦壁部31に夫々固着されており、他の一対の板ばね74の夫々は、一縁部55でX方向縦壁部22に、他縁部56でX方向縦壁部32に夫々固着されている。
【0035】
重錘2のX方向及びY方向の所定値の外側枠体5に対する相対的振動を検出するようになっている検出手段7は、相対的振動の加速度、速度及び変位のうちの少なくとも一つ、本例では加速度を電気的に検出するセンサ81と、センサ81からの検出加速度のうちからX方向の加速度を時間積分してX方向の変位及び変位方向を電気的に求めて、このX方向の変位が一定以上になる際には移動手段8を駆動する駆動信号及び変位方向信号を送出するX方向変位判定回路82と、センサ81からの検出加速度のうちからY方向の加速度を時間積分してY方向の変位及び変位方向を電気的に求めて、このY方向の変位が一定以上になる際には移動手段9を駆動する駆動信号及び変位方向信号を送出するY方向変位判定回路83とを具備している。
【0036】
センサ81は床部27と重錘2との間に取り付けられており、これにより、検出手段7は、重錘2に対する外側枠体5のX方向及びY方向の一定以上の相対的振動を検出して、重錘2に対する構造物の相対的振動を検出するようになっている。
【0037】
検出手段7のセンサ81としては、重錘2に対する内側枠体3のX方向の相対的振動の加速度、速度及び変位のうちの少なくとも一つと、重錘2又は内側枠体3に対する外側枠体5のY方向の相対的振動の加速度、速度及び変位のうちの少なくとも一つとを検出して、これにより、重錘2の外側枠体5に対するX方向及びY方向の相対的振動の加速度、速度及び変位のうちの少なくとも一つを検出するようにしてもよい。
【0038】
X方向変位判定回路82は、センサ81からの検出加速度から重錘2がX方向においてX方向縦壁部21側に相対的に変位したか、X方向縦壁部22側に相対的に変位したかを判断して、重錘2がX方向においてX方向縦壁部21側に相対的に変位した場合には、重錘2をX方向においてX方向縦壁部22側に相対的に移動させ、重錘2がX方向においてX方向縦壁部22側に相対的に変位した場合には、重錘2をX方向においてX方向縦壁部21側に相対的に移動させることを示す変位方向信号を送出するようになっている。
【0039】
Y方向変位判定回路83も同様であって、センサ81からの検出加速度から重錘2がY方向においてY方向縦壁部33側に相対的に変位したか、Y方向縦壁部34側に相対的に変位したかを判断して、重錘2がY方向においてY方向縦壁部33側に相対的に変位した場合には、重錘2をY方向においてY方向縦壁部34側に相対的に移動させ、重錘2がY方向においてY方向縦壁部34側に相対的に変位した場合には、重錘2をY方向においてY方向縦壁部33側に相対的に移動させることを示す変位方向信号を送出するようになっている。
【0040】
内側枠体3の一対のX方向縦壁部21及び22に対して重錘2を相対的にX方向に移動させるようになっている移動手段8は、一端部91ではX方向縦壁部21に、他端部92ではX方向縦壁部22に夫々固着されていると共に、重錘2に対してX方向に相対的に可動なX方向走行体93と、X方向走行体93を重錘2に対して相対的にX方向に走行させる作用力を与えるようにX方向走行体93に係合していると共に重錘2に設けられたX方向走行駆動源94と、X方向変位判定回路82からの駆動信号及び変位方向信号でもってX方向走行駆動源94に駆動電流を供給する駆動回路95とを具備している。
【0041】
X方向走行駆動源94は、重錘2に固定された固定子96からなっており、X方向走行体93は、固定子96に対してX方向に相対的に可動であって一対のX方向縦壁部21及び22に掛け渡されていると共に、内側枠体3に固定された可動子97からなっており、而して、本例の移動手段8は、互いに電磁的に係合された固定子96及び可動子97を有したリニアモータ98を具備している。
【0042】
リニアモータ98は、検出手段7の検出信号に基づいて駆動回路95がX方向変位判定回路82から駆動信号を受信しないで固定子96に駆動電流を供給しない場合には、換言すれば、駆動回路95からの駆動電流の供給がない場合には、固定子96に対する可動子97のX方向の相対的な移動を許容する一方、検出手段7の検出信号に基づいて駆動回路95がX方向変位判定回路82から駆動信号及び変位方向信号を受信し固定子96に駆動電流を供給する場合には、換言すれば、駆動回路95からの駆動電流の供給がある場合には、固定子96に対して可動子97をX方向に相対的に移動させて内側枠体3の一対のX方向縦壁部21及び22に対して重錘2を相対的にX方向に移動させるようになっている。
【0043】
駆動回路95は、X方向変位判定回路82からの駆動信号と同時に当該X方向変位判定回路82から重錘2がX方向においてX方向縦壁部21側に相対的に変位したことを示す変位方向信号を受信すると、重錘2をX方向においてX方向縦壁部22側に相対的に移動させる駆動電流を固定子96に供給し、これに代えて、X方向変位判定回路82からの駆動信号と同時に当該X方向変位判定回路82から重錘2がX方向においてX方向縦壁部22側に相対的に変位したことを示す変位方向信号を受信すると、重錘2をX方向においてX方向縦壁部21側に相対的に移動させる駆動電流を固定子96に供給するようになっている。
【0044】
外側枠体5の一対のY方向縦壁部33及び34に対して内側枠体3を介して重錘2を相対的にY方向に移動させるようになっている移動手段9は、一端部101ではY方向縦壁部33に、他端部102ではY方向縦壁部34に夫々固着されて外側枠体5に関して固定されていると共に、重錘2に対してY方向に相対的に可動なY方向走行体103と、Y方向走行体103を重錘2に対して相対的にY方向に走行させる作用力を与えるようにY方向走行体103に係合していると共に内側枠体3に関して固定されたY方向走行駆動源104と、Y方向変位判定回路83からの駆動信号及び変位方向信号でもってY方向走行駆動源104に駆動電流を供給する駆動回路105とを具備している。
【0045】
Y方向走行駆動源104は、一端部111ではY方向縦壁部23に溶接等により固着され、他端部112ではY方向縦壁部24に同じく溶接等により固着された支持部材110にねじ等により固着された固定子106からなっており、こうして固定子106は、Y方向縦壁部23及び24を橋絡した支持部材110を介して内側枠体3に固定されており、Y方向走行体103は、固定子106に対してY方向に相対的に可動であって一対のY方向縦壁部33及び34に掛け渡されていると共に、外側枠体5に固定された可動子107からなっており、而して、本例の移動手段9は、互いに電磁的に係合された固定子106及び可動子107を有したリニアモータ108を具備している。
【0046】
リニアモータ108は、検出手段7の検出信号に基づいて駆動回路105がY方向変位判定回路83から駆動信号を受信しないで固定子106に駆動電流を供給しない場合には、換言すれば、駆動回路105からの駆動電流の供給がない場合には、固定子106に対する可動子107のY方向の相対的な移動を許容する一方、検出手段7の検出信号に基づいて駆動回路105がY方向変位判定回路83から駆動信号及び変位方向信号を受信し固定子106に駆動電流を供給する場合には、換言すれば、駆動回路105からの駆動電流の供給がある場合には、固定子106に対して可動子107をY方向に相対的に移動させて外側枠体5の一対のY方向縦壁部33及び34に対して重錘2を相対的にY方向に移動させるようになっている。
【0047】
駆動回路105は、Y方向変位判定回路83からの駆動信号と同時に当該Y方向変位判定回路83から重錘2がY方向においてY方向縦壁部33側に相対的に変位したことを示す変位方向信号を受信すると、内側枠体3を介して重錘2をY方向においてY方向縦壁部34側に相対的に移動させる駆動電流を固定子106に供給し、これに代えて、Y方向変位判定回路83からの駆動信号と同時に当該Y方向変位判定回路83から重錘2がX方向においてY方向縦壁部34側に相対的に変位したことを示す変位方向信号を受信すると、内側枠体3を介して重錘2をY方向においてY方向縦壁部33側に相対的に移動させる駆動電流を固定子106に供給するようになっている。
【0048】
外側枠体5が構造物の床部27に固定されている以上の能動型動吸振装置1では、構造物がX方向及びY方向に振動しない際には、重錘2は、保持機構4及び6によりX方向及びY方向には可動に、垂直方向Vには不動に保持されており、移動手段8及び9におけるその可動子97及び107もまた、重錘2のこのX方向及びY方向の可動性を阻害しないように、その固定子96及び106に対してX方向及びY方向に対して相対的に可動となっている。
【0049】
そして能動型動吸振装置1では、地震、強風等で構造物の床部27がX方向及びY方向に大きく振動して、例えば重錘2がX方向縦壁部21に相対的に一定以上近接すると、固定子96からなるX方向走行駆動源94に駆動電流を供給して、可動子97からなるX方向走行体93をX方向走行駆動源94に対して相対的にX方向に走行させて重錘2をX方向縦壁部21から離反させ、これにより、重錘2をX方向縦壁部21に相対的に近接させる構造物の床部27のX方向の振動に対して反力を与えて構造物の床部27のX方向の振動を減少させるようになっている。地震、強風等で重錘2がX方向縦壁部22に相対的に一定以上近接する場合及び重錘2、換言すれば、Y方向縦壁部23及び24がY方向縦壁部33及び34の夫々に相対的に一定以上近接する場合も同様であって、而して、能動型動吸振装置1は、構造物の床部27のX方向及びY方向の振動を減少させるようになっている。
【0050】
ところで、能動型動吸振装置1では、移動手段8が、一対のX方向縦壁部21及び22に夫々固着されたX方向走行体93と、X方向走行体93を重錘2に対して相対的にX方向に走行させる作用力を与えると共に重錘2に設けられたX方向走行駆動源94とを具備しているために、重錘2と内側枠体3とのX方向の相対位置に拘わらずX方向走行体93とX方向走行駆動源94との電磁的な係合部での位置関係を夫々一定にできる結果、重錘2と内側枠体3との間のX方向の距離、本例では隙間X1を大きくしてダイナミックレンジを広くしても、それに応じてX方向の作用力を大きくする必要がなく、而して、X方向に関して所望のダイナミックレンジを得ることができて、しかも、コスト低減を図り得、Y方向についても同様に、移動手段9が、一対のY方向縦壁部33及び34に夫々固着されたY方向走行体103と、Y方向走行体103を重錘2に対して、本例では内側枠体3に対して相対的にY方向に走行させる作用力を与えると共に内側枠体3に関して固定されたY方向走行駆動源104とを具備しているために、内側枠体3と外側枠体5との間のY方向の距離を大きくしてダイナミックレンジを広くしても、それに応じてY方向の作用力を大きくする必要がなく、而して、Y方向に関しても所望のダイナミックレンジを得ることができて、これまたコスト低減を図り得る。
【0051】
また能動型動吸振装置1では、保持機構4及び6がU字状の板ばね51〜54及び71〜74をもって構成されているために、重錘2及び内側枠体3を摩擦抵抗なしにX方向及びY方向に可動に保持できる結果、能動型動吸振機能をほぼ理想的な態様で得ることができる。
【0052】
上記の能動型動吸振装置1では、移動手段8及び9をリニアモータ98及び108を具備して構成したが、これに代えて又はこれと共に、図6に示すように構成してもよい。即ち、図6に示す能動型動吸振装置1では、移動手段8は、重錘2に固定された可逆の電動モータ121からなるX方向走行駆動源94と、電動モータ121の出力回転軸122に直接的に又は間接的に、本例では直接的に巻き付けられて電動モータ121に機械的に係合していると共に、X方向に伸びて張設されており、一端123で内側枠体3の一方のX方向縦壁部21に、他端124で内側枠体3の他方のX方向縦壁部22に夫々に固着された紐状体、本例ではワイヤー125からなるX方向走行体93とを具備しており、電動モータ121は、検出手段7の検出信号に基づいて、駆動回路95からの駆動電流の供給がない場合には、その出力回転軸122の自由回転を許容する一方、駆動回路95からの駆動電流の供給がある場合には、その出力回転軸122を回転させてワイヤー125の巻き付け位置を変えて内側枠体3の一対のX方向縦壁部21及び22に対して重錘2を相対的にX方向に移動させるようになっており、移動手段9は、支持部材110に固着されて、支持部材110を介して内側枠体3に関して固定された可逆の電動モータ131からなるY方向走行駆動源104と、Y方向走行駆動源104の電動モータ131の出力回転軸132に直接的に又は間接的に、本例では直接的に巻き付けられて電動モータ131に機械的に係合していると共に、Y方向に伸びて張設されており、一端133及び他端134で外側枠体5に関して固定された紐状体、本例では一端133で外側枠体5の一方のY方向縦壁部33に、他端134で外側枠体5の他方のY方向縦壁部34に夫々に固着されたワイヤー135からなるY方向走行体103とを具備しており、電動モータ131は、検出手段7の検出信号に基づいて、駆動回路105からの駆動電流の供給がない場合には、その出力回転軸132の自由回転を許容する一方、駆動回路105からの駆動電流の供給がある場合には、その出力回転軸132を回転させてワイヤー135の巻き付け位置を変えて外側枠体5に対して内側枠体3を介して重錘2を相対的にY方向に移動させるようになっている。
【0053】
図6に示す能動型動吸振装置1でも、地震、強風等で構造物の床部27がX方向及びY方向に大きく振動して、例えば重錘2がX方向縦壁部21に相対的に一定以上近接すると、X方向走行駆動源94の電動モータ121に駆動電流を供給して、その出力回転軸122を回転させてX方向走行体93のワイヤー125の巻き付け位置を変え、これによりワイヤー125を重錘2に対して相対的にX方向に走行させて重錘2をX方向縦壁部21から離反させ、而して、重錘2をX方向縦壁部21に相対的に近接させる構造物の床部27のX方向の振動に対して反力を与えて構造物の床部27のX方向の振動を減少させるようになっている。能動型動吸振装置1において、重錘2がX方向縦壁部22に相対的に一定以上近接する場合及び重錘2、換言すれば、内側枠体3がY方向縦壁部33及び34の夫々に相対的に一定以上近接する場合も同様であって、而して、図6に示す能動型動吸振装置1でも、構造物の床部27のX方向及びY方向の振動を減少させるようになっている。
【0054】
したがって、図6に示す能動型動吸振装置1でも図1に示す能動型動吸振装置1と同様の効果を得ることができる。
【0055】
図6に示す能動型動吸振装置1において、紐状体として、ワイヤー125及び135に代えてベルト又はチェーンを用いてもよく、また出力回転軸122及び132に斯かるワイヤー125及び135等の紐状体を直接に巻き付ける代わりに出力回転軸122及び132の夫々にプーリ等を固着してこのプーリ等にワイヤー125及び135等の紐状体を巻き付け、こうしてプーリ等を介して間接的に紐状体を出力回転軸122及び132に巻き付けるようにしてもよい。
【0056】
図6に示す能動型動吸振装置1では、X方向走行駆動源94及びY方向走行駆動源104を電動モータ121及び131から構成し、X方向走行体93及びY方向走行体103をワイヤー125及び135から構成したが、これに代えて、X方向走行駆動源94を電動モータ121及び電動モータ121の出力回転軸122に固着されたピニオン(図示せず)から構成し、Y方向走行駆動源104も電動モータ131及び電動モータ131の出力回転軸132に固着されたピニオン(図示せず)から構成し、X方向走行体93を、出力回転軸122に固着されたピニオンに噛み合って電動モータ121に機械的に係合していると共に、X方向に伸びて配されており、一端で内側枠体3の一方のX方向縦壁部21に、他端で内側枠体3の他方のX方向縦壁部22に夫々固着されたラック(図示せず)から構成し、Y方向走行体103もまた、出力回転軸132に固着されたピニオンに噛み合って電動モータ131に機械的に係合していると共に、Y方向に伸びて配されており、一端及び他端で外側枠体5に関して固定されたラックから構成し、電動モータ121が、検出手段7の検出信号に基づいて、駆動回路95からの駆動電流の供給がない場合には、その出力回転軸122の自由回転を許容する一方、駆動回路95からの駆動電流の供給がある場合には、その出力回転軸122を介してピニオンを回転させてピニオンとラックとの噛み合わせ位置を変えて内側枠体3の一対のX方向縦壁部21及び22に対して重錘2を相対的にX方向に移動させるようになっているように構成し、電動モータ131が、検出手段7の検出信号に基づいて、駆動回路105からの駆動電流の供給がない場合には、その出力回転軸132の自由回転を許容する一方、駆動回路105からの駆動電流の供給がある場合には、その出力回転軸132を介してピニオンを回転させてピニオンとラックとの噛み合わせ位置を変えて外側枠体5に対して内側枠体3を介して重錘2を相対的にY方向に移動させるようになっているように構成してもよい。
【0057】
更にピニオン及びラックを用いる代わりにボールナット及びボールねじを用いて能動型動吸振装置1を構成してもよい。即ち、X方向走行駆動源94を電動モータ121及び電動モータ121の出力回転軸122の回転と共に回転されるように出力回転軸122に連結されたボールナット(図示せず)から構成し、Y方向走行駆動源104も電動モータ131及び電動モータ131の出力回転軸132の回転と共に回転されるように出力回転軸132に連結されたボールナット(図示せず)から構成し、X方向走行体93を、出力回転軸122に連結されたボールナットに螺合されて電動モータ121に機械的に係合していると共に、X方向に伸びて配されており、一端で内側枠体3の一方のX方向縦壁部21に、他端で内側枠体3の他方のX方向縦壁部22に夫々固着されたボールねじ(図示せず)から構成し、Y方向走行体103もまた、出力回転軸132に連結されたボールナットに螺合されて電動モータ131に機械的に係合していると共に、Y方向に伸びて配されており、一端及び他端で外側枠体5に関して固定されたボールねじから構成し、電動モータ121が、検出手段7の検出信号に基づいて、駆動回路95からの駆動電流の供給がない場合には、その出力回転軸122の自由回転を許容する一方、駆動回路95からの駆動電流の供給がある場合には、その出力回転軸122を介してボールナットを回転させてボールナットとボールねじとの螺合位置を変えて内側枠体3の一対のX方向縦壁部21及び22に対して重錘2を相対的にX方向に移動させるようになっているように構成し、電動モータ131が、検出手段7の検出信号に基づいて、駆動回路105からの駆動電流の供給がない場合には、その出力回転軸132の自由回転を許容する一方、駆動回路105からの駆動電流の供給がある場合には、その出力回転軸132を介してボールナットを回転させてボールナットとボールねじとの螺合位置を変えて外側枠体5に対して内側枠体3を介して重錘2を相対的にY方向に移動させるようになっているように構成してもよい。
【0058】
このようにピニオン及びラック又はボールナット及びボールねじを用いた能動型動吸振装置1でも、図1に示す能動型動吸振装置1と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、上記のいずれの能動型動吸振装置1も、Y方向走行体103を外側枠体5のY方向縦壁部33及び34に固着したが、本発明は、これに限定されないのであって、例えば、Y方向走行駆動源104を重錘2の底面側において内側枠体3に関して固定して設けて、Y方向走行体103を床部27に固着してもよく、したがって、Y方向走行体103は、要は、外側枠体5に関して固定されていればよいのである。更に、上記の例では、外側枠体5をその下縁で床部27に固定したが、本発明は、これに限定されず、外側枠体5を重錘2と同様に床部27から浮かす一方、内側枠体3をその下縁で床部27に固定してもよく、この場合には、X方向走行体93及びY方向走行駆動源104を内側枠体3に固着する必要はなく、X方向走行体93及びY方向走行駆動源104は、要は、内側枠体3に関して固定されていればよいのである。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、所望のダイナミックレンジを得ることができて、しかも、高性能化かつコスト低減を図り得る能動型動吸振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様の好ましい例の平面図である。
【図2】図1に示す例のII−II線矢視断面図である。
【図3】図1に示す例のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図1に示す例に用いた板ばねの斜視図である。
【図5】図1に示す例の電気回路のブロック図である。
【図6】本発明の実施態様の好ましい他の例の平面図である。
【符号の説明】
1 能動型動吸振装置
2 重錘
3 内側枠体
4 保持機構
5 外側枠体
6 保持機構
7 検出手段
8、9 移動手段

Claims (24)

  1. 重錘と、この重錘を取り囲んだ内側枠体と、重錘と内側枠体との間に介在されていると共に、重錘を内側枠体に対して水平面内のX方向に可動に保持する一方、水平面内のX方向に交差する水平面内のY方向並びにX方向及びY方向に直交する垂直方向に不動に保持する第一の保持機構と、内側枠体の外側に配された外側枠体と、内側枠体と外側枠体との間に介在されていると共に、内側枠体を外側枠体に対してY方向に相対的に可動に保持する一方、X方向及び垂直方向に不動に保持する第二の保持機構と、内側枠体又は外側枠体に対する重錘のX方向及びY方向の所定値の相対的振動を検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号に基づいて、重錘の内側枠体に対するX方向の相対的な移動を許容する一方、重錘の内側枠体に対するX方向の振動変位を減少させるように重錘を内側枠体に対してX方向に相対的に移動させる第一の移動手段と、検出手段からの検出信号に基づいて、重錘の外側枠体に対するY方向の相対的な移動を許容する一方、重錘の外側枠体に対するY方向の振動変位を減少させるように重錘を外側枠体に対してY方向に相対的に移動させる第二の移動手段とを具備しており、内側枠体は、重錘を間にしてX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部を有しており、第一の移動手段は、内側枠体の一対のX方向縦壁部に関して固定されていると共に、重錘に対してX方向に相対的に可動なX方向走行体と、このX方向走行体を重錘に対して相対的にX方向に走行させる作用力を与えるようにX方向走行体に係合していると共に重錘に設けられたX方向走行駆動源とを具備している能動型動吸振装置。
  2. X方向走行体は、その一端部では一方のX方向縦壁部に、その他端部では他方のX方向縦壁部に夫々固着されている請求項1に記載の能動型動吸振装置。
  3. 内側枠体は、重錘を間にしてY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部を有しており、第一の保持機構は、内側枠体に対する重錘のX方向の移動を許容する一方、内側枠体に対する重錘のY方向の移動を阻止するように、一対のX方向縦壁部と重錘との間の夫々に介在された横置きのU字状の板ばねと、内側枠体に対する重錘のX方向の移動を許容する一方、重錘を内側枠体に対して垂直方向に不動に保持するように、重錘と一対のY方向縦壁部との間の夫々に介在された縦置きのU字状の板ばねとを具備している請求項1又は2に記載の能動型動吸振装置。
  4. 外側枠体は、内側枠体の一対のX方向縦壁部を間にしてX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部と、内側枠体の一対のY方向縦壁部を間にしてY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部とを有しており、第二の保持機構は、外側枠体に対する内側枠体のY方向の移動を許容する一方、外側枠体に対する内側枠体のX方向の移動を阻止するように、内側枠体と外側枠体との夫々の一対のY方向縦壁部間の夫々に介在された横置きのU字状の板ばねと、外側枠体に対する内側枠体のY方向の移動を許容する一方、内側枠体を外側枠体に対して垂直方向に不動に保持するように、内側枠体と外側枠体との夫々の一対のX方向縦壁部間の夫々に介在された縦置きのU字状の板ばねとを具備している請求項2又は3に記載の能動型動吸振装置。
  5. 内側枠体は、重錘を間にしてY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部を有しており、外側枠体は、内側枠体の一対のX方向縦壁部を間にしてX方向において互いに対向する一対のX方向縦壁部と、内側枠体の一対のY方向縦壁部を間にしてY方向において互いに対向する一対のY方向縦壁部とを有しており、第二の保持機構は、外側枠体に対する内側枠体のY方向の移動を許容する一方、外側枠体に対する内側枠体のX方向の移動を阻止するように、内側枠体と外側枠体との夫々の一対のY方向縦壁部間の夫々に介在された横置きのU字状の板ばねと、外側枠体に対する内側枠体のY方向の移動を許容する一方、内側枠体を外側枠体に対して垂直方向に不動に保持するように、内側枠体と外側枠体との夫々の一対のX方向縦壁部間の夫々に介在された縦置きのU字状の板ばねとを具備している請求項1又は2に記載の能動型動吸振装置。
  6. 第二の移動手段は、外側枠体の一対のY方向縦壁部に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっている請求項4又は5に記載の能動型動吸振装置。
  7. 第一の移動手段は、内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている請求項1から6のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  8. 第一の移動手段は、重錘に固定された固定子からなるX方向走行駆動源と、この固定子に対してX方向に相対的に可動であって、内側枠体の一対のX方向縦壁部に掛け渡されていると共に、内側枠体に固定された可動子からなるX方向走行体とを有したリニアモータを具備しており、リニアモータは、検出手段の検出信号に基づいて、その固定子に対するその可動子のX方向の相対的な移動を許容する一方、その固定子に対してその可動子をX方向に相対的に移動させて内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている請求項1から7のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  9. 第一の移動手段は、重錘に固定された電動モータからなるX方向走行駆動源と、この電動モータの出力回転軸に直接的に又は間接的に巻き付けられていると共に、X方向に伸びて張設されており、一端で内側枠体の一方のX方向縦壁部に、他端で内側枠体の他方のX方向縦壁部に夫々固着された紐状体からなるX方向走行体とを具備しており、電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を回転させて紐状体の巻き付け位置を変えて内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている請求項1から8のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  10. 紐状体は、ワイヤー、ベルト又はチェーンである請求項9に記載の能動型動吸振装置。
  11. 第一の移動手段は、重錘に固定された電動モータ及びこの電動モータの出力回転軸に固着されたピニオンからなるX方向走行駆動源と、このピニオンに噛み合っていると共に、X方向に伸びて配されており、一端で内側枠体の一方のX方向縦壁部に、他端で内側枠体の他方のX方向縦壁部に夫々固着されたラックからなるX方向走行体とを具備しており、電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を介してピニオンを回転させてピニオンとラックとの噛み合わせ位置を変えて内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている請求項1から10のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  12. 第一の移動手段は、重錘に固定された電動モータ及びこの電動モータの出力回転軸の回転と共に回転するように当該出力回転軸に連結されたボールナットからなるX方向走行駆動源と、このボールナットに螺合されていると共に、X方向に伸びて配されており、一端で内側枠体の一方のX方向縦壁部に、他端で内側枠体の他方のX方向縦壁部に夫々固着されたボールねじからなるX方向走行体とを具備しており、電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を介してボールナットを回転させてボールナットとボールねじとの螺合位置を変えて内側枠体の一対のX方向縦壁部に対して重錘を相対的にX方向に移動させるようになっている請求項1から10のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  13. 第二の移動手段は、外側枠体に関して固定されていると共に、重錘に対してY方向に相対的に可動なY方向走行体と、このY方向走行体を重錘に対して相対的にY方向に走行させる作用力を与えるようにY方向走行体に係合していると共に内側枠体に関して固定されているY方向走行駆動源とを具備している請求項1から12のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  14. 第二の移動手段は、内側枠体に関して固定されている固定子からなるY方向走行駆動源と、このY方向走行駆動源の固定子に対してY方向に相対的に可動であって外側枠体に関して固定された可動子からなるY方向走行体とを有したリニアモータを具備しており、第二の移動手段のリニアモータは、検出手段の検出信号に基づいて、その固定子に対するその可動子のY方向の相対的な移動を許容する一方、その固定子に対してその可動子をY方向に相対的に移動させて外側枠体に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっている請求項13に記載の能動型動吸振装置。
  15. 第二の移動手段は、内側枠体に関して固定された電動モータからなるY方向走行駆動源と、このY方向走行駆動源の電動モータの出力回転軸に直接的に又は間接的に巻き付けられていると共に、Y方向に伸びて張設されており、一端及び他端で外側枠体に関して固定された紐状体からなるX方向走行体とを具備しており、第二の移動手段の電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を回転させて第二の移動手段の紐状体の巻き付け位置を変えて外側枠体に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっている請求項13又は14に記載の能動型動吸振装置。
  16. 第二の移動手段の紐状体は、ワイヤー、ベルト又はチェーンである請求項15に記載の能動型動吸振装置。
  17. 第二の移動手段は、内側枠体に関して固定された電動モータ及びこの電動モータの出力回転軸に固着されたピニオンからなるY方向走行駆動源と、このY方向走行駆動源のピニオンに噛み合っていると共に、Y方向に伸びて配されており、一端及び他端で外側枠体に関して固定されたラックからなるY方向走行体とを具備しており、第二の移動手段の電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を介して第二の移動手段のピニオンを回転させて第二の移動手段のピニオンとラックとの噛み合わせ位置を変えて外側枠体に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっている請求項11から16のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  18. 第二の移動手段は、内側枠体に関して固定された電動モータ及びこの電動モータの出力回転軸の回転と共に回転するように当該出力回転軸に連結されたボールナットからなるY方向走行駆動源と、このY方向走行駆動源のボールナットに螺合されていると共に、Y方向に伸びて配されており、一端及び他端で外側枠体に関して固定されたボールねじからなるY方向走行体とを具備しており、第二の移動手段の電動モータは、検出手段の検出信号に基づいて、その出力回転軸の自由回転を許容する一方、その出力回転軸を介して第二の移動手段のボールナットを回転させて第二の移動手段のボールナットとボールねじとの螺合位置を変えて外側枠体に対して重錘を相対的にY方向に移動させるようになっている請求項11から16のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  19. 検出手段は、外側枠体に対する重錘のX方向及びY方向の所定値の相対的振動を検出するようになっている請求項1から18のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  20. 検出手段は、相対的振動の加速度、速度及び変位のうちの少なくとも一つを検出するようになっている請求項19に記載の能動型動吸振装置。
  21. 検出手段は、外側枠体に対する重錘のX方向及びY方向の一定以上の相対的振動を検出するようになっている請求項1から20のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  22. X方向とY方向とは、互いに直交している請求項1から21のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置。
  23. 請求項1から22のいずれか一項に記載の能動型動吸振装置を具備した構造物であって、能動型動吸振装置の内側枠体又は外側枠体が構造物の屋上床等の床部に固定されている構造物。
  24. 検出手段は、構造物に対する重錘の相対的振動を検出するようになっている請求項23に記載の構造物。
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