JP2004143374A - 光硬化性樹脂組成物及びその硬化樹脂積層体 - Google Patents

光硬化性樹脂組成物及びその硬化樹脂積層体 Download PDF

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川合 治
Tomoji Onda
恩田 智士
Hiroki Hatakeyama
畠山 宏毅
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Abstract

【課題】耐擦傷性及び透明性に優れ、抗菌性を併せ持つ樹脂積層体を得るための光硬化性樹脂組成物及びその硬化樹脂積層体を提供する。
【解決手段】分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基を有する重合性化合物(a−1)50〜100質量%と分子中に1個のα、β−エチレン系不飽和結合を有する化合物(a−2)0〜50質量%とからなる混合物(A)100質量部に対し、平均粒径200nm以下の無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌性微粒子(B)0.001〜10質量部及び光重合開始剤(C)0.1〜10質量部を含有する光硬化性樹脂組成物によって、および該組成物を基体樹脂表面に積層し、硬化することによって、上記課題は達成される。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐擦傷性及び透明性に優れ、抗菌性を併せ持つ樹脂積層体を得るための光硬化性樹脂組成物及びその硬化樹脂積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂は、透明性、耐衝撃性、電気絶縁性等に優れていることから、工業用資材、建築用資材等に広く使用されている。しかし、これら合成樹脂よりなる成形品は、表面硬度が低いため、引掻き等による傷が発生し易いという問題点を有し、その改善が望まれている。
【0003】
一方、最近の清潔志向を背景に、多数の人が利用する場所に設置される機器・製品には細菌や黴の発生防除機能をもつ材料からなるものが望まれている。特に、病院、幼稚園、保育園等で使用される機器・製品には、細菌の防除対策が強く求められている。
【0004】
これらの要求に応えるために、これまでにも樹脂自体に抗菌剤を添加することにより抗菌性能を付与する検討がなされている。
【0005】
抗菌性を付与する抗菌剤としては、ゼオライト、アパタイト、アルミナ、シリカゲルなどの多孔質体に抗菌作用を有する金属を担持せしめたものが一般的に使用されている。例えば、銀を保持せしめたゼオライトを含有する被覆用材料が開示されている(特許文献1参照。)。また、カップリング剤で表面処理した、銀、亜鉛等の抗菌性金属を含むセラミック抗菌剤を樹脂シートに固着せしめた抗菌性樹脂シートも開示されている(特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−327622号公報
【特許文献2】
特開平8−73633号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の抗菌性樹脂は耐擦傷性が不十分であるものが多く、また無機系抗菌剤を粉砕等により造粒するため粒径が大きいことから、透明性が低下しやすく、樹脂中で凝集や沈降を起こして樹脂積層体の外観が悪くなるという問題があった。更には凝集や沈降により抗菌剤の持っている抗菌活性が有効に発現されないという問題もあった。すなわち、本発明の課題は、耐擦傷性に優れ、抗菌活性に優れた、透明性の良好な樹脂積層体を与える抗菌剤含有光硬化性樹脂組成物および該光硬化性樹脂組成物の皮膜を有する積層体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記抗菌性樹脂のもつ問題点を改善するため鋭意研究を進めた結果、抗菌性を有する無機酸化物コロイド粒子及び特定の2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する架橋反応性化合物を含む光重合性樹脂組成物を用いることにより、透明性、抗菌性、耐擦傷性に優れた樹脂積層体が得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基を有する重合性化合物(a−1)50〜100質量%と分子中に1個のα、β−エチレン系不飽和結合を有する化合物(a−2)0〜50質量%とからなる混合物(A)100質量部に対し、平均粒径200nm以下の無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌性微粒子(B)0.001〜1質量部及び光重合開始剤(C)0.1〜10質量部を含有する光硬化性樹脂組成物であり、該光硬化性樹脂組成物の光硬化物からなる樹脂層と基材樹脂層とからなる耐擦傷性に優れた抗菌性樹脂積層体を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明で使用する重合性化合物(a−1)は、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する架橋反応性化合物であり、(メタ)アクリロイルオキシ基を結合する残基が、炭化水素またはその誘導体であり、その残基内にはエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等を含むことができる。
【0012】
重合性化合物(a−1)の主な例としては、多価アルコール1モルに対し2モル以上の(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体を反応して得られるエステル化物、多価アルコール、多価カルボン酸またはそれの無水物および(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物等を挙げることができる。なお、本発明においては、通常の用法に従いアクリル基及びメタクリル基を併せて(メタ)アクリル基といい、適宜変形して用いる。
【0013】
多価アルコール1モルに対し2モル以上の(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体を反応して得られるエステル化物の例としては、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0014】
多価アルコール、多価カルボン酸またはそれの無水物および(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物において、多価カルボン酸またはそれの無水物/多価アルコール/(メタ)アクリル酸の好ましい組合せとしては、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0015】
重合性化合物(a−1)の他の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の3量化により得られるポリイソシアネートと活性水素を有するアクリルモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を、ポリイソシアネート1モル当たり3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジあるいはトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート;公知のエポキシポリアクリレート;公知のウレタンポリアクリレート等を挙げることができる。
【0016】
なお、重合性化合物(a−1)の含有量としては、塗膜の十分な耐擦傷性を実現するために、混合物(A)の全体に対して50質量%以上100質量%以下とされる。
【0017】
本発明で使用する化合物(a−2)は、分子内に1個のα,β−エチレン系不飽和結合を有する単量体である、光硬化性樹脂組成物の粘度調整や抗菌性微粒子(B)の分散性の向上等の目的で使用する。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらのアミド、アミドのメチロール化物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0018】
化合物(a−2)の含有量としては、塗膜の十分な耐擦傷性を実現するために、混合物(A)の全体に対して0質量%以上50質量%以下とされる。なお、本発明においては重合性化合物(a−1)100質量%からなるものであっても、便宜的に混合物(A)という。
【0019】
本発明において、抗菌性微粒子(B)としては無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌性微粒子を用いることが肝要である。
【0020】
無機酸化物コロイド粒子としては、通常知られているコロイド溶液で負の電荷を有する無機酸化物コロイド粒子を用いることができ、単一または複合酸化物コロイド粒子、あるいはこれらの混合物を用いることが可能である。
【0021】
単一の酸化物コロイド粒子としては、SiO、TiO、ZrO、Fe、Sb、WOなどが例示され、複合酸化物コロイド粒子としては、前記各酸化物と他の無機酸化物の複合酸化物コロイド粒子、例えば、SiO・Al、SiO・B、SiO・P、TiO・CeO、SnO・Sb、SiO・Al・TiO、SiO・TiO・CeO、SiO・Al・MgO、SiO・Al・CaO、SiO・TiO・Feなどを挙げることができる。中では抗菌性金属成分の付着効率で複合酸化物コロイド粒子を用いることが好ましい。
【0022】
無機酸化物コロイド粒子の好ましい平均粒子径は200nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。無機酸化物コロイド粒子の平均粒子径が200nmより大きくなると、得られる塗膜の透明性が低下しやすくなる。また、無機酸化物コロイド粒子の平均粒子径の下限は1nmであることが好ましい。
【0023】
本発明では上記無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌性微粒子(B)を用いる。ここで抗菌性金属成分としては、通常知られている抗菌性金属成分を用いることができるが、中でも銀、銅、亜鉛から選択される1種以上の抗菌性金属成分が、抗菌作用、変色及び人体に対する安全性などの観点から好ましい。
【0024】
本発明の抗菌性無機酸化物コロイド粒子中の付着抗菌性金属成分の量は、酸化物換算で0.1〜25質量%の範囲内であることが望ましい。抗菌性金属成分が0.1質量%よりも少ない場合は、抗菌作用が十分に発現しない。また、抗菌性金属成分を25質量%よりも多くしても、25質量%の場合と比較して抗菌性作用に大差がなく、また、銀成分などでは、付着量が多くなると変色しやすくなるという欠点が現われやすい。従って、好ましい付着抗菌性金属成分の量は、酸化物換算で0.1〜15質量%の範囲である。なお、このような抗菌性無機酸化物コロイド粒子は、触媒化成工業(株)よりAtomyBall(商品名)が市販されており、好ましく用いることができる。
【0025】
本発明における抗菌性微粒子(B)の好ましい含有量は、混合物(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部、更に好ましくは0.001〜1質量部である。添加量が10質量部以下であれば硬化樹脂層の透明性を損なうことはなく、耐擦傷性の低下も起こさない。また、0.001質量部以上であれば抗菌性能を得ることができる。
【0026】
本発明で使用する光重合開始剤(C)は特に限定しないが、具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0027】
光重合開始剤(C)の使用量は、光硬化性樹脂組成物の十分な硬化性を実現するために、混合物(A)100質量部に対し、0.1質量部以上とされ、硬化後の着色を抑制するために、10質量部以下とされる。なお、本発明においては、上記光重合開始剤を単独で用いるだけでなく、複数の光重合開始剤を併用して用いてもよい。
【0028】
更に、本発明における光硬化性樹脂組成物には、従来から使用されている種々の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、界面活性剤、レベリング剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、可塑剤等を挙げることができる。
【0029】
本発明の光硬化性樹脂組成物を用い、抗菌性及び耐擦傷性を有する樹脂積層体を得る方法としては、基材樹脂層表面に光硬化性樹脂組成物の硬化物からなるフィルムを積層する方法、あるいは、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、ディッピング法等の方法で、本発明の光硬化性樹脂組成物を基材樹脂層表面に塗布したのち光で硬化する方法、ガラスと基材樹脂層との間に本発明の光硬化性樹脂組成物を挟込んで光硬化したのち基材樹脂層表面に被膜を転写する方法、鋳型表面に上記方法で光硬化性樹脂組成物を塗布し、光で硬化した後、得られた被膜を内側として鋳型を作製し、樹脂原料を注入して、重合硬化せしめ鋳型から剥離する方法等を例示することができる。
【0030】
また、表面に微少な凹凸を有するガラスや鋳型を用いたり、光硬化性樹脂組成物に溶解や膨潤をしないで、且つ、表面に微少な凹凸を有するフィルムをガラスや鋳型にはりつけたりすることによって、表面に微少な凹凸を有する樹脂積層体を得ることもできる。
【0031】
本発明で使用される基材樹脂層を構成する樹脂は特に限定されないが、好ましい例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩ビ樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂等を挙げることができる。
【0032】
本発明において、光硬化性樹脂組成物よりなる樹脂層の厚みは、十分な耐擦傷性を実現するために、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、被膜にクラックが発生したり、樹脂積層体の切断時に被膜が欠けたりする等の不具合を抑制するために、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、特に記さない限り、部は質量部を意味する。
【0034】
(ア)抗菌性評価方法
試験菌として黄色ブドウ球菌および大腸菌を用い、JIS Z2801に従い抗菌性能を評価した。なお、24時間後の生菌数が無加工試験片の1%未満のものを「○」、1%以上のものを「×」とした。
【0035】
(イ)全光線透過率およびヘーズ
全光線透過率およびヘーズは、日本電色社製のHAZE METER NDH2000を使用し、測定した。
【0036】
(ウ)耐擦傷性
耐擦傷性については、擦傷試験の前後におけるヘーズの変化(擦傷ヘーズ)をもって評価した。即ち、#000のスチールウールを装着した直径25.4mmの円形パッドをサンプルの塗膜側表面上に置き、9.8Nの荷重下で、20mmの距離を100回往復擦傷し、擦傷前と擦傷後のヘーズ値の差を下式より求めた。
[擦傷ヘーズ(%)]=[擦傷後のヘーズ(%)]−[擦傷前のヘーズ(%)]
【0037】
実施例1
化合物(a−1)として、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合混合物50部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学(株)製、以下「C6DA」とも記載する)50部、抗菌性微粒子(B)としてSiO・Al複合酸化物コロイドに銀を付着させたAtomyBall UAE4−15(触媒化成工業(株)製、平均粒径15nm、分散媒エタノール、微粒子濃度15質量%)0.1部(微粒子として0.015部)、光重合開始剤(C)として、ベンゾインイソプロピルエーテル(商品名:セイクオールBIP、精工社製、以下「BIP」とも記載する)1.5部を混合し、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0038】
得られた光硬化性樹脂組成物を強化ガラス板に滴下し、その上に厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート製(以下、「PET」とも記載する)の2軸延伸フィルム(帝人社製)を配置し、JIS K6253のデュロメータ硬さ30゜のゴムロールにてしごき、光硬化性樹脂組成物層の厚みを20μmに設定した。その後、出力40Wの蛍光紫外線ランプ(東芝製、FL40BL)の下10cmの位置を、PETフィルム面を上にして、0.6m/分のスピードで通過させ前硬化した後、PETフィルムを剥離した。次いで出力30W/cmの高圧水銀灯下20cmの位置を、塗膜を上にして0.6m/分のスピードで通過させ硬化させた。
【0039】
この様に処理した2枚の強化ガラス板を硬化被膜が内側になるように対向させ、周囲を軟質塩ビ樹脂製のガスケットで封じ、注型重合用の鋳型を作製した。この鋳型に、ポリメタクリル酸メチル20質量%とメタクリル酸メチル80質量%とからなるシラップ100部、アゾビスジメチルバレロニトリル0.05部およびジオクチルスルフォサクシネートのナトリウム塩0.005部とからなる樹脂原料を注入し、対向するガラスの間隔を2mmに調整し、80℃の水浴中で1時間、次いで、130℃の空気炉で1時間重合した。冷却後ガラス板から樹脂板を剥離することにより表面に硬化被膜を有する樹脂積層体を得た。
【0040】
得られた樹脂積層体は全光線透過率93%、ヘーズ0.1%で透明性に優れており、擦傷ヘーズは0%であった。また、抗菌性を評価した結果十分な抗菌性能を有するものであった。評価結果を表1および2に示す。
【0041】
実施例2、3
抗菌性微粒子(B)の添加量をそれぞれ0.3部(実施例2)、1.0部(実施例3)に変更する以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。評価結果を表1および2に示す。
【0042】
実施例4
化合物(a−1)として、トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学工業(製)、以下「TMPTA」とも記載する)100部、抗菌性微粒子(B)としてAtomyBall UAE4−15 0.1部(微粒子として0.015部)および光重合開始剤(C)として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:LucirinTPO、BASF社製、以下「TPO」とも記載する)2部を用い、光硬化性樹脂組成物を調製した。得られた光硬化性樹脂組成物をガラス板に塗布し、次いで、厚さ1.5mmのアクリル樹脂板(三菱レイヨン製、アクリライトL)とガラス板とで光硬化性樹脂組成物を挟込むように重ね合わせた後、ゴムローラーでしごくことにより、光硬化性樹脂組成物層の厚みを15μmに設定した。この重ね合わせた状態で、ガラス面より遠赤外線ヒーターで加熱し、ガラス表面温度を70℃まで昇温させ、その状態で1分間保持した。次いで出力120W/cmの高圧水銀灯の下20cmの位置を、ガラス面を上にして2m/分のスピードで通過させ光硬化性樹脂組成物を硬化させた。硬化後ガラスからアクリル樹脂板を剥離することにより、樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表1および2に示す。
【0043】
実施例5
化合物(a−1)として、新中村化学製ウレタンアクリレートNKエステルU−6HA 30部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成製アロニックスM400、以下「DPHA」と略す)20部およびC6DA 50部、抗菌性微粒子(B)としてAtomyBall UAE4−15 0.1部(微粒子として0.015部)および光開始剤(C)としてTPO 2.8部とベンゾフェノン1部を混合し、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0044】
得られた光硬化性樹脂組成物を、厚さ50μmのPETの2軸延伸フィルム(帝人(株)製)に滴下した。次いで、60℃に加温した厚さ2mmのアクリル樹脂板(三菱レイヨン製、アクリライトEX)に光硬化性樹脂組成物を樹脂板側として、JIS K6253デュロメータ硬さ40゜のゴムロールでしごきながら、光硬化性樹脂組成物層の厚みが5μmになるように貼り合わせた。貼り合わせ後1分放置した後に、PETフィルム面を上側とし、出力120W/cmのメタルハライドランプの下20cmの位置を2.0m/分のスピードで通過させて硬化させた後、PETフィルムを剥ぎ取った後、更に高圧水銀灯の下20cmの位置を2.0m/分のスピードで通過させ硬化させることにより、表面に硬化被膜を有する樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表1および2に示す。
【0045】
比較例1(無加工試験片)
抗菌剤性微粒子(B)を使用しない以外は、実施例1と同様にして、樹脂積層体を作製した。得られた樹脂積層体を評価した結果、抗菌性は全く有していなかった。評価結果を表1および2に示す。
【0046】
比較例2
AtomyBall UAE4−15の添加量を66.7部と増やす以外は実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。得られた光硬化性樹脂組成物を強化ガラス板にバーコーターで塗布し、5分間放置して溶剤を乾燥した後、その上に厚さ12μmのPET製の2軸延伸フィルム(帝人社製)を配置し、JIS K6253デュロメータ硬さ30゜のゴムロールにてしごき、光硬化性樹脂組成物層の厚みを20μmに設定した。その後、出力40Wの蛍光紫外線ランプ(東芝製、FL40BL)の下10cmの位置を、PETフィルム面を上にして、0.6m/分のスピードで通過させ前硬化した後、PETフィルムを剥離した。次いで出力30W/cmの高圧水銀灯下20cmの位置を、塗膜を上にして0.6m/分のスピードで通過させ硬化させた。得られた塗膜付きのガラス板を用いて実施例1と同様にして樹脂積層体を作成した。得られた樹脂積層体は抗菌性微粒子の凝集により透明性が低下した。評価結果を表1および2に示す。
【0047】
比較例3
抗菌性微粒子として無機イオン交換体に銀イオンを保持させた抗菌剤(東亞合成製 ノバロンAG300)0.015部を使用する以外は、実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体は抗菌材により若干曇りが生ずるとともに十分な抗菌性能が得られなかった。評価結果を表1および2に示す。
【0048】
比較例4
被膜を形成していないアクリル樹脂板(商標;アクリライトL)の評価を実施例1と同様に行った。表1および2に示した評価結果より明らかな通り抗菌性を有さず、耐擦傷性も不十分であった。
【0049】
【表1】
Figure 2004143374
【0050】
【表2】
Figure 2004143374
【0051】
【発明の効果】
本発明の光硬化性樹脂組成物を光硬化させることにより得られる樹脂層を有する樹脂積層体は、抗菌性を有するため菌の繁殖が抑えられ、着色等もなく透明性が良好であり、耐擦傷性を有するため取り扱い等によって傷が付きにくいため、良好な外観が維持される。
【0052】
従って、本発明の樹脂積層体は、抗菌性を要求される病院、幼稚園、あるいは保育園等で使用される機器・製品や多数の人が利用する場所に設置される機器・製品の部品カバー、グレージング材、ディスプレー材、照明材、銘板等として有用である。

Claims (2)

  1. 分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基を有する重合性化合物(a−1)50〜100質量%と分子中に1個のα、β−エチレン系不飽和結合を有する化合物(a−2)0〜50質量%とからなる混合物(A)100質量部に対し、平均粒径200nm以下の無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌性微粒子(B)0.001〜10質量部及び光重合開始剤(C)0.1〜10質量部を含有する光硬化性樹脂組成物。
  2. 基材樹脂層の少なくとも一方の表面に請求項1記載の光硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂層を有することを特徴とする樹脂積層体
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